説明

シラン変性されたポリビニルアルコール

本発明の対象は、次のようなシラン変性ポリビニルアルコールである。すなわち、現在はエポキシド官能性コモノマーの1つまたは複数のビニルエステルをラジカル重合した後に、求核性シラン化合物によってエポキシド基をシリル化し、シラン変性されたビニルエステル共重合体をケン化することによって得られるシラン変性ポリビニルアルコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン変性されたポリビニルアルコールと、その製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
シラン変性されたポリビニルアルコールは、とりわけ紙コーティング剤として知られており、ビニルアセテートとエチレン不飽和シランとを共重合した後に加水分解することによって製造されるか、または、その後でポリビニルアルコールのビニルアルコール単位をシリル化することによって製造される。EP76490A1に、シラン化されたポリビニルアルコールをベースとする紙コーティング剤が記載されている。このポリビニルアルコールは、上記の両変形方法によって生成することができる。EP1127706A1は、シラン官能性ポリビニルアルコールを含有するコーティングを有するインクジェット記録材料に関する。このようなコーティングは、上記の両変形方法によって形成することができる。DE3519575C2に、保護層を有する感熱性の記録材料が記載されている。この保護層はシリコン含有ポリビニルアルコールを含み、これはビニルアルコール単位のシリル化またはビニルシランとの共重合によって製造される。EP1380599A1に記載されたシラン化されたポリビニルアルコールは、エチレン不飽和シランの共重合によって得られ、末端がシラン化された生成物を得るためには、現在はメルカプト化合物によって重合を行う。EP1080940A2に、コーティング剤に含まれるシラン化されたビニルアルコール‐オレフィン‐共重合体が記載されている。ここではシラン基は、エチレン不飽和シランの共重合によって得られるか、またはその後で、ビニルアルコール基のシリル化を行うことによって得られる。
【0003】
WO2004/013190A1に、シラン変性ポリビニルアルコールの製造法が記載されている。ビニルエステルは現在、シラン含有アルデヒドによって重合した後、それによって得られたビニルエステル重合体をケン化する。
【0004】
本発明の基礎となる課題は、次のようなシラン変性ポリビニルアルコールを提供することである。すなわち、コーティング剤の配合で、コーティングの有利なレオロギーと高い耐摩擦性とを実現するシラン変性ポリビニルアルコールを提供することである。
【0005】
本発明の対象は、次のようなシラン変性ポリビニルアルコールである。すなわち、現在はエポキシド官能性コモノマーの1つまたは複数のビニルエステルをラジカル重合した後に、求核性シラン化合物によってエポキシド基をシリル化し、シラン変性されたビニルエステル共重合体をケン化することによって得られるシラン変性ポリビニルアルコールである。
【0006】
好適なビニルエステルは、1〜18個の炭素原子を有する非分枝または分枝されたカルボン酸のビニルエステルである。有利なビニルエステルは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル‐2‐エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルピバレート、および5〜15個の炭素原子を含むα分枝モノカルボン酸のビニルエステル、たとえばVeoVa9(登録商標)またはVeoVa10(登録商標)(Resolutions社の商品名)と、1〜6個の炭素原子を含むアルキル残基を有し1〜6個の炭素原子を含むカルボン酸の1‐アルキルビニルエステルであり、たとえば1‐メチルビニルアセテートである。特にビニルアセテートが好ましい。
【0007】
適切なエポキシド基を含むコモノマーは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシドエーテル、ビニルグリシドエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、ミルセンオキシド、カリオフィレンオキシド、芳香族化合物においてグリシジル残基によって置換されたスチロルおよびビニルトルエン、芳香族化合物においてグリシド基によって置換されたビニルベンゾエートである。有利なのは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートである。有利には、エポキシド官能性コモノマー単位の割合は、コモノマーの総量を基準として0.01〜10.0モル%である。ビニルエステルおよびエポキシ官能性コモノマーの他に、場合によっては更に、1〜15個の炭素原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニルハロゲン化物を含む群からの1種又は複数種のモノマーも共重合されていてもよい。アクリル酸又はメタクリル酸のエステルの群からの好適なモノマーは、1〜15個の炭素原子を有する非分枝または分枝されたアルコールのエステルである。有利なメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、n‐ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、α‐クロロアクリルエステル、α‐シアノアクリルエステルである。特に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート及びt‐ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレートが好ましい。
【0008】
好適なジエンは、1,3‐ブタジエン、クロロプレンおよびイソプレンである。重合可能なオレフィンの例は、エテン、プロペンおよびイソブチレンである。ビニル芳香族化合物として、スチレン及びビニルトルエンを重合によって取り込むことができる。ビニルハロゲン化物の群からは、通常は、塩化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニルが使用され、有利には塩化ビニルが使用される。前記コモノマーの割合は、ビニルエステル重合体中のビニルエステルモノマーの割合>50モル%であるように決定される。
【0009】
場合によっては別のコモノマーも、有利には0.1〜25モル%の割合で含有することができる。その例には、エチレン不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、有利にはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン不飽和のカルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、有利にはN‐ビニルホルムアミド、アクリルアミド及びアクリルニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸、エチレン不飽和のスルホン酸もしくはそれらの塩、有利にはビニルスルホン酸、2‐アクリルアミド‐2‐メチル‐プロパンスルホン酸である。別の例にアルキルビニルエステル、たとえばエチルビニルエーテル、n‐ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、第3級ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ビニルメチルケトン、N‐ビニル‐N‐メチルアセトアミド、N‐ビニルカプロラクタム、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルイミダゾールがある。
【0010】
また、前架橋性コモノマー、例えばポリエチレン不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メタクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドのエステル、N−メチロールメタクリルアミドのエステル及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルも適している。またカチオンモノマーも適しており、たとえばトリメチル‐3‐(1‐(メタ)アクリルアミド‐1,1‐ジメチルプロピル)アンモニウムクロリド、トリメチル‐3‐(1‐(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロリド、1‐ビニル‐2‐メチルイミダゾール、これらの4級化された化合物も適している。
【0011】
ビニルエステル混合重合体は、公知のように重合によって製造することができ、有利には塊状重合、乳化重合、懸濁重合又は有機溶剤、特に有利にはアルコール溶液中での重合によって製造することができる。好適な溶剤及び調節剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールである。該重合は、還流下で温度50℃〜100℃で実施され、そして慣用されている開始剤の添加によってラジカル的に開始される。慣用されている開始剤の例に、ペルカーボネート、例えばシクロヘキシルペルオキシジカーボネート又はペルエステル、例えばt‐ブチルペル‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルペルネオデカノエート又はt‐ブチルペルピバレートである。
【0012】
有利には、100〜5000の重合度まで重合する。分子量の調整は、公知のように溶剤含量によって、開始剤濃度の変更によって、そして温度の変更によって、調節剤の添加によって実施することができる。モノマーはすべて装入するか、またはすべて計量供給するか、または一部装入して残りを重合開始後に計量供給することができる。この計量供給は(空間的かつ時間的に)別個に行うか、または計量供給すべき成分をすべてまたは部分的に、混合または事前に乳化して計量することができる。
【0013】
エポキシド官能性のビニルエステル共重合体は、有利にはアルコール溶液で、たとえばメタノールで、アルコールに応じて20℃〜70℃の温度で、塩基を添加して、たとえばNaOH、KOHまたはNaOCHを添加してシラン化される。この変換後、沈殿物は中性化され、シラン化されたビニルエステル共重合体が固体として分離される。求核性のシラン化合物の使用量は、ビニルエステル共重合体に含まれるエポキシド官能性のモノマー単位の含量がどのくらい多いかに依存する。有利なのは、求核性のシラン化合物をエポキシド官能性コモノマーに対してモル過剰量で使用することであり、とりわけエポキシ官能性コモノマーに対して5〜20%のモル過剰量で使用することである。適切な求核性のシラン化合物は、アミノアルキル残基、ヒドロキシアルキル残基またはメルカプトアルキル残基によって置換され少なくとも1つのアルコキシ基を含むシランであり、1〜6個の炭素原子がアルキル残基ないしはアルコキシ残基に含まれる。有利なのは、アミノアルコキシシラン、アミノアルキルジアルコキシアルキルシラン、アミノアルキルジアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルジアルコキシアルキルシラン、メルカプトアルキルジアルキルアルコキシシラン、ヒドロキシアルキルアルコキシシラン、ヒドロキシアルキルジアルコキシアルキルシラン、ヒドロキシアルキルジアルキルアルコキシシランであり、それぞれアルキル残基ないしはアルコキシ残基に1〜6個の炭素原子を含む。特に有利なのは、3(‐2‐アミノエチルアミノ)‐プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルジエトキシメチルシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0014】
シラン変性されたビニルエステル共重合体のケン化は、自明であるように、例えばベルト法(Bandverfahren)又はニーダー法(Kneterverfahren)により、アルカリ中又は酸中で酸又は塩基を添加しつつ行われる。シラン変性されたビニルエステル共重合体を、アルコール、例えばメタノール中に、15〜70質量%の固体含量に調節して供給するのが好ましい。加水分解を、例えばNaOH、KOH又はNaOCHの添加によって塩基性のもので実施することが好ましい。塩基は一般的に、エステル単位モルあたり1〜5モル%の量で使用される。加水分解は、30℃〜70℃の温度で実施される。加水分解の完了後に、溶剤を留去すると、ポリビニルアルコールが粉末として得られる。しかし、シラン変性されたビニルエステル共重合体は、水を連続的に添加する一方で、溶剤を留去することによって、水溶液としても得ることができる。
【0015】
シラン変性されたポリビニルアルコールは一般的に、50モル%〜99.99モル%の加水分解度、特に有利には70モル%〜99モル%、最も有利には≧96モル%の加水分解度を有する。ここでは、加水分解度≧96モル%である重合体を、完全ケン化されたポリビニルアルコールと称する。加水分解度>50モル%かつ<96モル%であるものを、部分ケン化されたポリビニルアルコールと称する。ポリビニルアルコールの粘度(DIN53015、ヘップラー法;水中4%溶液)は、1〜60mPas、有利には1〜6mPasであり、その粘度は、部分ケン化又は完全ケン化されたポリビニルアルコールの分子量及び重合度の尺度として用いられる。
【0016】
シラン化されたポリビニルアルコールは、シラン変性されたポリビニルアルコールが通用するすべての用途で使用できる。とりわけ、たとえば写真層およびインクビーム記録層等の記録材料を製造するために使用される水性コーティング系に含まれる添加物として、剥離原紙(Trennpapier)用の下塗り剤ないしはサイジング剤を製造するための添加物として使用される。シラン含有ポリビニルアルコールは、重合時の保護コロイドとしても適しており、また、梱包材料、建築材、セラミック、ガラスおよび木材用の接着剤およびコーティング剤、たとえばガラスファイバ結合剤およびガラス接着剤の配合における構成成分としても適している。別の用途として、農薬を配合するための結合剤がある。
【0017】
実施例1
2.5lの充填容積を有する恒温化された実験用装置に、窒素下で、392.1gのメタノールと、6.46gのグリシジルメタクリレートと、322.8gのビニルアセテートとを装入した。攪拌しながら757mgのt‐ブチルペルピバレートを加え、その沈殿物を58℃まで加熱し、反応中は60℃に維持した。
【0018】
反応開始から30分後に、さらに1.30gのt‐ブチルペルピバレートを加えた。さらに30分経過後、18.8gのグリシジルメタクリレートと940gのビニルアセテートとから成る混合物を、165分の時間にわたって348.7ml/hの速度で計量供給した。それと同時に、さらに759mgのt‐ブチルペルピバレートを加えた。反応開始から75分後と105分後にそれぞれ、434mgのt‐ブチルペルピバレートを加え、反応開始から135分経過後に217mgのt‐ブチルペルピバレートを加え、反応開始から165分経過後、195分経過後ないしは230分経過後にそれぞれ、110mgのt‐ブチルペルピバレートを加えた。反応開始から270分後に、その沈殿物に326gのメタノールを加えた。420分後の反応時間経過後に、この沈殿物を冷却した。
【0019】
2.5lの容量を有する実験用反応器内で、230gのメタノール性のポリビニルアセテート溶液を、さらに別の877gのメタノールによって希釈した。この溶液を60℃まで加熱し、5.01gの3‐(2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシランと混合した。2時間の反応時間経過後、その沈殿物を30℃まで冷却し、104.75gのメタノール性のNaOHと混合した(水中に46%存在する7.21gのNaOHが97.54gのメタノールに溶解されている)。この溶液は次第に濁っていった。ゲル相で、ゲルが細かく砕かれるように、攪拌器をより高い回転数に設定した。ゲル相の後、さらに2時間反応させ、酢酸によって中性化し、形成された固体を濾過し、洗浄して乾燥した。
【0020】
完全ケン化されたポリビニルアルコールが、6mPasのヘップラー粘度(DIN53015によれば、水中4質量%の溶液)で得られた。
【0021】
実施例2
2.5lの充填容積を有する恒温化された実験用装置において、窒素下で、612gの水と、61.2mgの銅‐(II)‐アセテートと、61.2gの5%のポリビニルピロリドン水溶液(PVP‐K90)とを装入した。攪拌しながら、620mgのt‐ブチルペル‐2‐エチルヘキサノエート(Peroxid-Chemie GmbHのTBPEH99%)と、322mgのt‐ブチルペルネオデカノエート(Pergan PND95%)と、6.46gのグリシジルメタクリレートと、42.8gのイソプロパノールとが612gのビニルアセテートに溶解された溶液を供給した。反応器を51.5℃まで加熱し、反応が弱まった後、段階的に75℃まで加熱した。この温度でさらに2時間維持した後、冷却した。このようにして生成されたポリマーのパール状物を吸引し、水によってよく洗浄して乾燥した。
【0022】
2.5lの容量を有する実験用反応器内で、90gのポリマーのパール状物を810gのメタノールに、50℃で溶解した。この溶液を60℃まで加熱し、0.603gの3‐(2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシランと混合した。2時間の反応時間の経過後、その沈殿物を30℃まで冷却し、攪拌器を停止して500gのメタノールを塗布し、直ちにメタノール性NaOH(水中46%の10gのNaOHが90gのメタノールに溶解されたもの)と混合し、攪拌器をスイッチオンした。この溶液は次第に濁っていった。ゲル相で、ゲルが細かく砕けるように、攪拌器をより高い回転数に設定した。ゲル相の後、さらに2時間反応させ、酢酸によって中性化し、形成された固体を濾過し、洗浄して乾燥した。
【0023】
完全ケン化されたポリビニルアルコールが、27mPasのヘップラー粘度(水中4%)で得られた。
【0024】
インクビーム記録層での使用試験
塗布材料の処方
沈殿された珪酸 100質量部
Si‐PVAL(実施例1) 28質量部
カチオン分散剤 5質量部
ポリマー分散 12質量部
塗布材料の固体含有量:30質量部
原紙
サイジングされた紙 約80g/m;塗布 約15g/m
【0025】
テスト
摩擦テスト
前記塗布材料が塗布された4.5cm幅かつ19cm長の紙テープを、Pruefbau(System Dr. Duerner)社の摩擦試験装置で、押し型(500g)に被着された黒色の色画用紙によって50ストロークで処理した。その後、得られた黒色の紙を光学的に判定した。ここでは、評価点1が最適であることを示す。
【0026】
白色度:
フィルタ(R457)によって全反射率測定を行うことにより検出し、視覚的に判定した。ここでは、評価点1が最適であることを示す。
【0027】
結果:
【表1】

【0028】
剥離原紙での使用試験
紙の製造
下塗り剤(実施例2に示されたSi‐PVALの溶液)を実験用サイジングプレスによって原紙に塗布し、適切に乾燥した(塗布質量 1.5g/m〜3g/m)このように下塗りされた紙に、100質量部のビニル末端のポリシロキサン(Dehesive 920)と、2.4質量部の水素含有シロキサン(Vernetzer V90)と、1質量部のPt触媒(Katalysator OL)とから成る分離層が施与され、このコーティングされた層を150℃で、7秒間にわたってアニールした。
【0029】
試験法
マイグレーション検査
シリコーン化された直後の面に試験用接着テープを被着し、その後に取り外した。この接着テープを、接着面が相互に接触するように折り畳んだ。その後、端部を引き剥がした(ループテスト)。相互に接着した層が良好な接着性を有するならば、このことは、シリコーン層が基体に良好に付着することに相応する。両試験の評価を、評価点1〜6で行った。1=非常に良い、6=非常に悪い
【0030】
ラブオフ(Rub Off)検査
シリコーン化された表面上を指で強く1回擦り、この場所を、斜めに入射する光で観察する。この場所に、明度差または縞が生じる場合、このシリコーン製品は最適に付着しない。さらに、このシリコーン層を指で強く複数回擦り、摩擦粒子の量を観察する。両試験の評価を、評価点1〜6で行った。
【0031】
結果:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン変性ポリビニルアルコールにおいて、
現在はエポキシド官能性コモノマーの1つまたは複数のビニルエステルをラジカル重合した後に、求核性のシラン化合物によってエポキシド基をシリル化し、シラン変性されたビニルエステル共重合体をケン化することによって得られることを特徴とする、シラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項2】
ビニルエステルとしてビニルアセテートが使用される、請求項1記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項3】
エポキシド官能性コモノマーとして、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートが使用される、請求項1または2記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項4】
エポキシド官能性コモノマーは、コモノマーの総量を基準として0.01〜10.1モル%の割合で使用される、請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項5】
求核性のシラン化合物として、アミノアルキル残基またはヒドロキシアルキル残基またはメルカプトアルキル残基によって置換され少なくとも1つのアルコキシ基を有するシランであって、それぞれアルキル残基ないしはアルコキシ残基に1〜6個の炭素原子を有するシランを含む群のうち1つまたは複数が使用される、請求項1または4記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項6】
求核性のシラン化合物として、それぞれアルキル残基ないしはアルコキシ残基に1〜6個の炭素原子を有するアミノアルコキシシラン、アミノアルキルジアルコキシアルキルシラン、アミノアルキルジアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルジアルコキシアルキルシラン、メルカプトアルキルジアルキルアルコキシシラン、ヒドロキシアルキルアルコキシシラン、ヒドロキシアルキルジアルコキシアルキルシランおよびヒドロキシアルキルジアルキルアルコキシシランを含む群のうち1つまたは複数が使用される、請求項5記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項7】
シラン変性ポリビニルアルコールの製造方法において、
現在はエポキシド官能性コモノマーの1つまたは複数のビニルエステルをラジカル重合した後に、求核性のシラン化合物によってエポキシ基をシリル化し、シラン変性されたビニルエステル共重合体をケン化することによって、請求項1から6までのいずれか1項記載のシラン変性ポリビニルアルコール製造することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
ビニルエステル共重合体を、有機溶剤における重合によって製造し、得られたエポキシド官能性ビニルエステル共重合体を、アミノアルキル残基またはヒドロキシアルキル残基またはメルカプトアルキル残基によって置換され少なくとも1つのアルコキシ基を有するシランであって、それぞれアルキル残基ないしはアルコキシ残基に1〜6個の炭素原子を含むシランを有する群のうち1つまたは複数のシラン化合物を含有する溶液でシラン化し、得られたシラン変性ポリビニルアルコールを、50モル%〜99.99モル%の加水分解度までケン化する、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載のシラン変性ポリビニルアルコールの、記録材料製造用の水性コーティング系中の添加物として、剥離原紙を製造するための添加物としての使用。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項記載のシラン変性ポリビニルアルコールの、梱包材料、建築材、セラミック、ガラスおよび木材用の接着剤およびコーティング剤の配合における構成成分としての使用。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項記載のシラン変性ポリビニルアルコールの、農薬配合用の結合剤としての使用。

【公表番号】特表2008−517124(P2008−517124A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537219(P2007−537219)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011305
【国際公開番号】WO2006/045535
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(300006412)ワッカー ポリマー システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (29)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Polymer Systems GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johannes−Hess−Strasse 24, D−84489 Burghausen, Germany
【Fターム(参考)】