説明

シラン変性ポリビニルアルコール

ビニルアルコール重合体を1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体を用いて高温で処理することで得られるシラン変性ポリビニルアルコール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシラン変性ポリビニルアルコール、シラン変性ポリビニルアルコールの新規な調製方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体にはバインダ、エマルジョン及び懸濁重合における保護コロイド、紙コーティング剤のコバインダ、及び包装産業で使用する酸素バリアとして様々な用途がある。ポリビニルアルコールのシラン基での変性により、より高い強度と顔料、充填剤、ガラス等の鉱物への接着性が向上する。
【0003】
現在に至るまで、シラン変性ポリビニルアルコールは酢酸ビニルとエチレン性不飽和シランとの共重合とそれに続く加水分解により、或いはそれに続くポリビニルアルコールのビニルアルコール単位の少なくとも2つの加水分解性基を有するシリル化剤でのシリル化により調製されてきた。EP0076490A1はシラン化ポリビニルアルコールをベースとした紙コーティング組成物について記載しており、シラン化ポリビニルアルコールは上記2つの方法の応用により得ることができる。EP1127706A1はインクジェット記録材料に関し、この材料はシラン官能性ポリビニルアルコールを含むコーティングを有し、ここで使用のシラン化ポリビニルアルコールは同様に上記記載のこれら2つの方法の応用により得ることができる。保護層を有する感熱記録材料に関するDE3519575C2もビニルアルコール単位のシリル化又は酢酸ビニルとエチレン性不飽和シランの共重合とそれに続く加水分解という別法を適切な調製方法として記載している。
【0004】
EP1380599A1及びEP1380600のシラン化ポリビニルアルコールはビニルエステルとエチレン性不飽和シランとの共重合とそれに続くシラン化ポリビニルエステルの加水分解により得られ、任意でメルカプト化合物の存在下で重合することも可能である。EP1080940A2はシラン化ポリビニルアルコールの調製について3つの代替法、つまり、ビニルエステルのシリル基を有するオレフィン性不飽和単量体との共重合と、それに続く加水分解;ビニルエステルとエポキシ官能性コモノマーとの共重合と、こうして得られた共重合体のメルカプト基とシリル基の双方を含む化合物との反応と、それに続く加水分解;ビニルエステルの化合物の存在下でのメルカプト基及びシリル基との共重合と、それに続く加水分解を記載している。WO2004/013190A1はシラン変性ポリビニルアルコールの調製について記載しており、ビニルエステルをシラン含有アルデヒドの存在下で重合し、こうして得られたビニルエステル重合体を続いて加水分解している。
【0005】
記載の方法は全て比較的複雑であり、これに加え、シラン濃度が上昇するにつれ、水酸基とアルデヒドとの副反応により合成中にゲルが形成され、水に不溶な生成物が生成される可能性がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の目的はシラン変性ポリビニルアルコールをより簡単な手順で提供することであり、高シラン濃度であっても良好な溶解性と貯蔵安定性を有する生成物が得られる。
【0007】
本発明はビニルアルコール重合体を1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体で高温で処理することで得られるシラン変性ポリビニルアルコールを提供する。
【0008】
適切なビニルアルコール重合体は加水分解度が好ましくは50モル%から99.99モル%、より好ましくは70モル%から99モル%、最も好ましくは≧96モル%である部分的又は完全に加水分解したビニルエステル重合体である。ここで言う完全な加水分解とは加水分解度が≧96モル%である重合体を意味している。部分加水分解ビニルエステル重合体とは加水分解度が>50モル%であり<96モル%であるものである。ビニルアルコール重合体の粘度(DIN53015、ホップラー法、4%水溶液)は1から60mPas、好ましくは1から10mPasであり、部分的又は完全に加水分解されたポリビニルアルコールの分子量及び重合度の目安として使用される。
【0009】
適切なビニルアルコール重合体は市販のポリビニルアルコールであり、或いはビニルエステルの重合とそれに続く加水分解で調製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ビニルアルコール重合体の調製に適したビニルエステルは1から18個の炭素原子を有する非分岐又は分岐カルボン酸のビニルエステルである。好ましいビニルエステルは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニル2−エチルヘキサノエート、ラウリン酸ビニル、1−メチルビニル−アセテート、ビニルピバレート及び5から13個の炭素原子を有するα−分岐モノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)、VeoVa10(登録商標)(シェル社の商標)である。酢酸ビニルが特に好ましい。
【0011】
ビニルエステル単位に加えて、1から15個の炭素原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族、及びハロゲン化ビニルを含む群の1つ以上の単量体を任意で共重合することも可能である。アクリル酸又はメタクリル酸のエステル群の適切な単量体は1から15個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルコールのエステルである。好ましいメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−、イソ−及びt−ブチルアクリレート、n−、イソ−及びt−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレートである。メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−、イソ−及びt−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレートが特に好ましい。適切なジエンは1,3−ブタジエンとイソプレンである。重合性オレフィンの例はエテンとプロペンである。共重合されるビニル芳香族はスチレンとビニルトルエンであってもよい。ハロゲン化ビニルの群からは通常、塩化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニルが使用され、好ましくは塩化ビニルである。これらのコモノマーの割合は、ビニルエステル重合体におけるビニルエステル単量体の割合が>50モル%になるようなものである。
【0012】
任意で、更に別のコモノマーがビニルエステル重合体の総重量に対して好ましくは0.02から20重量%の割合で存在することも可能である。これらの例はエチレン性不飽和モノ及びジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、及びマレイン酸;エチレン性不飽和カルボキサミド及びカルボニトリル、好ましくはN−ビニルホルムアミド、アクリルアミド及びアクリロニトリル;フマル酸とマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチル及びジイソプロピルエステル、及び無水マレイン酸、エチレン性不飽和スルホン酸及びその塩、好ましくはビニルスルホン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。更なる例はポリエチレン性不飽和コモノマー等のプレ架橋コモノマー、例えばアジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、アリルメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート又はシアヌル酸トリアリル、又はポスト架橋コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、イソブトキシエーテル等のアルキルエーテル、又はN−メチロールアクリルアミドの、N−メチロールメタクリルアミドの、及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。
【0013】
ビニルエステル重合体は重合、好ましくはバルク重合、懸濁重合、又は有機溶媒中での重合、更に好ましくはアルコール溶液中での重合により既知のやり方で調製可能である。適切な溶媒及び調整剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールである。重合は温度50℃から100℃で還流下で行い、慣用の開始剤を添加することによるフリーラジカルメカニズムにより開始する。一般的な開始剤の例はシクロヘキシルパーオキソジカーボネート等のパーカーボネート、又はt−ブチルパーネオデカノエート又はt−ブチルパーピバレート等のパーエステルである。
【0014】
分子量は溶媒含有量、開始剤濃度の変更、温度変更、及び調整剤の添加による既知のやり方で調節可能である。単量体は全て一緒に最初に装入する、又は全て一緒にメータリングする、又は一部を最初に装入し、残りを重合開始後にメータリングすることが可能である。メータリングによる追加は(空間的及び時間的に)別々に行ってもよく、或いはメータリングする成分の一部又は全てを予備乳化した状態でメータリング可能である。
【0015】
ビニルエステル重合体のポリビニルアルコールへの加水分解はそれ自体が既知のやり方、例えばベルト法又はニーダー法で酸又は塩基の添加によるアルカリ又は酸性条件下で実行可能である。固形ポリビニルエステル樹脂は好ましくはアルコール、例えばメタノールに固形分15から70重量%で溶解させる。加水分解は好ましくはNaOH、KOH又はNaOCHの添加により塩基性条件下で行われる。塩基の使用量は通常、エステル単位1モルあたり1から5モル%である。加水分解は温度30℃から70℃で行われる。加水分解終了後、溶媒を留去すると、粉末状のポリビニルアルコールが得られる。しかしポリビニルアルコールは溶媒を留去しながら水を段階的に添加することで水溶液として得ることも可能である。
【0016】
変性に適したエチレン性不飽和シラン含有単量体は、例えば、一般式RSiR0−2(OR1−3を有するエチレン性不飽和シリコン化合物であり、RはCH=CR−(CH0−1又はCH=CRCO(CH1−3、RはCからC−アルキルラジカル、C−からC−アルコキシラジカル又はハロゲン、好ましくはCl又はBr、Rは非分岐又は分岐の、任意で置換された1から12個の炭素原子、好ましくは1から3個の炭素原子を有するアルキルラジカル、又は2から12個の炭素原子を有するアシルラジカルであり、Rは任意でエーテル基を割り込ませてもよく、RはH又はCHである。
【0017】
好ましいエチレン性不飽和シラン含有単量体はγ−アクリロイルオキシ及びγ−メタクリロイルオキシプロピル−トリ(アルコキシ)シラン、α−メタクリロイルオキシメチルトリ(アルコキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジ(アルコキシ)シラン;ビニルシラン、例えばビニルアルキルジ(アルコキシ)シラン及びビニルトリ(アルコキシ)シランであり、使用するアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、メトキシエチレン、エトキシエチレン、メトキシプロピレングリコールエーテル及び/又はエトキシプロピレングリコールエーテルラジカルである。好ましいシラン含有単量体の例は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(1−メトキシ)イソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリアセトキシビニルシラン、アリルビニルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロピルオキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシルオキシシラン、ビニルメトキシジヘキシルオキシシラン、ビニルトリオクチルオキシシラン、ビニルジメトキシオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジラウリルオキシシラン、ビニルジメトキシラウリルオキシシラン、及びポリエチレングリコール変性ビニルシランである。
【0018】
エチレン性不飽和シラン含有単量体として最も好ましいものはビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(1−メトキシ)イソプロポキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びメタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、及びその混合物である。
【0019】
適切なエチレン性不飽和シラン含有単量体としてはまた、シラン基を含有しその一般式がCH=CR−CO−NR−R−SiR−(R3−mである(メタ)アクリルアミドが挙げられ、ここでn=0から4、m=0から2、RはH又はメチル基のいずれかであり、RはH又は1から5個の炭素原子を有するアルキル基、Rは1から5個の炭素原子を有するアルキレン基又は炭素鎖に酸素又は窒素原子が割り込んだ二価有機基であり、Rは1から5個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1から40個の炭素原子を有し、更なる複素環で置換し得るアルコキシ基である。2つ以上のR又はR基が存在する単量体において、これらは同一又は異なる。
【0020】
こういった(メタ)アクリルアミドアルキルシランの例は:3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、3―(メタ)アクリルアミドプロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチル−トリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミドエチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミドメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル(メタ)アクリルアミド)プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミドメトキシ)−3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミドメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−N−トリメトキシシリルプロピル−3−(メタ)アクリルアミドプロピルアンモニウムクロライド及びN,N−ジメチル−N−トリメトキシシリルプロピル−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルアンモニウムクロライドである。
【0021】
エチレン性不飽和シラン含有単量体の使用量はビニルアルコール重合体の重量に対してそれぞれにおいて好ましくは0.01から40重量%、更に好ましくは1.0から25重量%である。
【0022】
シラン変性ポリビニルアルコールを調製するためには、ビニルアルコール重合体をまず最初に溶液で装入する。ビニルアルコール重合体は、好ましくは水又は水/アルコール混合物に溶解される。適切なアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールである。エチレン性不飽和シラン含有単量体は全て最初に装入又はメータリングする、或いは一部を最初に装入し、残りを重合開始後にメータリングすることが可能である。シラン含有単量体の濃度が比較的低い場合、好ましくはビニルアルコール重合体に対してシラン含有単量体が20重量%までである場合、シラン含有単量体の総量を最初に装入し、開始剤をメータリングする、或いは最初に開始剤を装入し、シラン含有単量体の総量をメータリングするのが好ましい。単量体濃度が高い場合、好ましくはビニルアルコール重合体に対してシラン含有単量体が20重量%を超える場合、シラン含有単量体の一部と開始剤の一部を最初に装入し、残りをそれぞれメータリングする。変性は高温、つまり温度30℃≧で行われ、好ましくは一般的な開始剤の添加によるフリーラジカルメカニズムにより開始される。温度50℃から100℃で変性を行うことが好ましい。開始剤の割合は使用するシラン含有単量体の総量に対して好ましくは0.1から10.0重量%である。一般的な開始剤の例はペルオキソ二硫酸カリウム及びペルオキソ二硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩である。
【0023】
このようにして得られたシラン変性ポリビニルアルコールは溶液で使用可能である。シラン変性ポリビニルアルコールは析出、蒸留又は乾燥、例えば噴霧乾燥による既知の方法で単離し、固体として使用してもよい。本発明のシラン変性ポリビニルアルコールはシラン含有量が比較的高くても高い保存安定性を示すという点で特に有利である。エチレン性不飽和シランとビニルエステルとの共重合とそれに続く加水分解によって得られる慣用のシラン変性ポリビニルアルコールはシラン官能性コモノマー単位の含有量が2重量%であってもゲル化する傾向がある一方で、本発明のシラン変性ポリビニルアルコールは最高40重量%のシラン含有単量体での変性の場合であっても保存安定性を有する。
【0024】
シラン変性ポリビニルアルコールは本発明の方法により無色の形で得ることができ、有利である。これにより、ポリビニルアルコール重合体のエチレン性不飽和シラン単量体での変性中の変色及び黄変が抑制される。これは本発明における反応条件の選択、特には本発明の反応温度と、必要ならば本発明の開始剤使用量の使用により達成される。
【0025】
シラン変性ポリビニルアルコールはポリビニルアルコールに典型的な応用分野での使用に適している。シラン変性ポリビニルアルコールはコーティング組成物及び接着剤組成物用のバインダ又はコバインダとして適している。シラン変性ポリビニルアルコールは紙コーティング剤、特にはインクジェット用紙のコーティング剤のバインダとして適している。シラン変性ポリビニルアルコールは例えば水性分散液及び水性媒体中での反応、及び水に再分散可能な分散粉末の製造における保護コロイドとして適している。更に別の使用分野としては顔料及び充填剤の処理、陶器製造産業におけるバインダとしての使用が挙げられる。更なる用途としては化粧品、特には頭髪用化粧品における使用、及び食品包装及び繊維産業におけるバインダとしての使用が挙げられる。
【実施例1】
【0026】
容量2.5リットルのサーモスタット付き実験機器にまず1000gの20%水性ポリビニルアルコール溶液(Mowiol 8−88、Kuraray Specialities Europe社)を窒素下で装入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。溶液をこの温度で2時間に亘って攪拌し、次に温度を80℃まで低下させ、15gのビニルトリエトキシシラン(Geniosil GF 56、Wacker Chemie社)をポリビニルアルコール溶液に添加した。15分間の均質化後、10gの3%のペルオキシ二硫酸カリウム水溶液の添加により反応を開始した。温度を4時間に亘り80℃に維持し、次に混合物を冷却した。シラン変性ポリビニルアルコールの総量に対して固形分が21重量%、シラン含有量が7.0重量%の透明な重合体溶液が得られた。
【実施例2】
【0027】
容量2.5リットルのサーモスタット付き実験機器にまず1000gの20%水性ポリビニルアルコール溶液(Mowiol 8−88、Kuraray Specialities Europe社)を窒素下で装入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。溶液をこの温度で2時間に亘って攪拌し、次に温度を80℃まで低下させ、36gのビニルトリエトキシシラン(Geniosil GF 56、Wacker Chemie社)をポリビニルアルコール溶液に添加した。15分間の均質化後、30gの3%のペルオキソ二硫酸カリウム水溶液の添加により反応を開始した(メータリング時間20分)。温度を4時間に亘り80℃に維持し、次に混合物を冷却した。シラン変性ポリビニルアルコールの総重量に対して固形分が22重量%、シラン含有量が15.0重量%の透明な重合体溶液が得られた。
【実施例3】
【0028】
容量2.5リットルのサーモスタット付き実験機器にまず1000gの20%水性ポリビニルアルコール溶液(Mowiol 8−88、Kuraray Specialities Europe社)を窒素下で装入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。溶液をこの温度で2時間攪拌し、次に温度を80℃まで低下させ、51gのビニルトリエトキシシラン(Geniosil GF 56、Wacker Chemie社)をポリビニルアルコール溶液に添加した。15分間の均質化後、40gの3%のペルオキソ二硫酸カリウム水溶液の添加により反応を開始した(メータリング時間30分)。温度を4時間に亘り80℃に維持し、次に混合物を冷却した。シラン変性ポリビニルアルコールの総重量に対して固形分が23重量%、シラン含有量が20.0重量%のわずかに不透明な重合体溶液が得られた。
【実施例4】
【0029】
容量2.5リットルのサーモスタット付き実験機器にまず1000gの20%水性ポリビニルアルコール溶液(Mowiol 8−88、Kuraray Specialities Europe社)を窒素下で装入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。溶液をこの温度で2時間に亘って攪拌し、次に温度を80℃まで低下させ、15gのビニルトリエトキシシラン(Geniosil GF 56、Wacker Chemie社)をポリビニルアルコール溶液に添加した。15分間の均質化後、10gの3%のペルオキソ二硫酸カリウム水溶液の添加により反応を開始した。温度を4時間に亘り80℃に維持し、次に温度を40℃にまで低下させ、アンモニアを用いてpHを9にまで調節し、混合物を2時間に亘って攪拌した。冷却後、塩酸を用いてpHを5にまで調節した。シラン変性ポリビニルアルコールの総重量に対して固形分が20重量%、シラン含有量が7.0重量%の透明な重合体溶液が得られた。
【比較例5】
【0030】
初期装入分:
ビニルトリエトキシシラン 8.4g
酢酸ビニル 1.192g
メタノール 240g
tert−ブチルパーオキシピバレート(純度75%) 0.35g
初期装入分を窒素下で攪拌(95rpm)しながら加熱して、還流下で重合した(57℃から60℃)。還流から60分及び120分後、それぞれ0.64gのtert−ブチルパーオキシピバレートを添加した。還流から180分後、400gのメタノールを反応装置に添加して、混合物を還流下で更に4時間に亘って攪拌し、次に重合体溶液を冷却した。
得られた樹脂溶液を以下の手順でポリビニルアルコールに加水分解した。
87gのメタノールを固形分34重量%に調節した1280gの樹脂溶液にブランケットした。次に、96gの4.5%強度メタノール性NaOH溶液の添加後、30℃での攪拌(200rpm)を開始した。120分後、酢酸エチルで加水分解を終了した(pH7へ調整)。
析出したビニルアルコール共重合体を濾別しメタノールで洗浄し、乾燥させた。得られたシラン変性ポリビニルアルコールのホップラー粘度は7.5mPasであった。
【比較例6】
【0031】
126gの3%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を利用したという違いを除き、実施例1の手順と同様であった。
【0032】
固形分17.5重量%の高度に黄変した重合体溶液が得られた。
【0033】
インクジェット記録層におけるシラン変性ポリビニルアルコールの試験。
【0034】
コーティングスリップ組成
沈降シリカ 100重量部
実施例1のSi−PVAL 28重量部
カチオン性分散剤 5重量部
重合体分散剤 12重量部
【0035】
コーティングスリップの固形分:30重量%
【0036】
非表面加工紙
サイズ約80g/mの紙。コーティング約15g/m
【0037】
試験
磨耗試験:
コーティングスリップでコーティングした幅4.5cm、長さ19cmの紙片を、黒色画用紙をダイ(500g)に適用してプリューフバウ(Prufbau)社(Dr.Durnerシステム)の磨耗試験機で50回処理した。次に得られた黒色紙の外観検査を行った。マーク1は最適を表す。
【0038】
白色度
白色度をフィルタ(R457)を用いての反射率測定により求め、外観検査を行った。マーク1は最適を表す。
【0039】
保存安定性
pH5で18%シラン変性ポリビニルアルコール水溶液を14日に亘って保存し、ホップラー粘度(DIN53015に準拠。4%水溶液として)を求めることで保存安定性をそれぞれ試験した。
【0040】
結果を表1にまとめた。
【0041】
【表1】

【0042】
剥離紙での試験
製紙
プライマ(適切なシラン変性ポリビニルアルコールの溶液)を実験室のサイジングプレスにより未表面加工紙に塗布し、適切に乾燥させた(コート重量1.5g/mから3g/m)。100重量部のビニル末端ポリシロキサン(Dehesive920)、2.4重量部の水素含有シロキサン(CrosslinkerV90)及び1重量部のPt触媒(Catalyst OL)から構成される剥離層をこうして下塗りした紙に塗布し、コーティング紙を150℃で7秒間熱処理した。
【0043】
試験法
移行試験
試験粘着テープをシリコーン処理したばかりの側に適用し、次に再度剥離した。粘着テープを、その粘着面が接触するように折り畳んだ。次にその両端を引き剥がした(ループ試験)。互いに粘着していた層が良好な粘着性を有している場合は、シリコーン層の基材への接着性が良好なことを意味している。2つの試験を1から6で評価した。1=非常に良い。6=非常に悪い。
【0044】
摩擦色落ち
シリコーン処理した面を指で強くこすり、この領域を傾斜角を成して入射する光のもとで観察した。この領域で明るさに差異、又は線が生じた場合、シリコーン生成物は最適な状態で付着していない。これに加え、シリコーン層を指でもう一度強くこすると、磨耗物粒子が観察される。両試験を1から6で評価した。
【0045】
結果を表2にまとめた。
【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール重合体を1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体を用いて高温で処理することで得られるシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項2】
使用するビニルアルコール重合体が、加水分解度が50モル%から99.99モル%の部分的又は完全に加水分解されたビニルエステル重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項3】
ビニルアルコール重合体の1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体での処理が温度50℃から100℃で実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項4】
開始剤の割合が使用するシラン含有単量体の総量に対して0.1から10.0重量%であることを特徴とする、請求項1から3に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項5】
1から60mPas(DIN53015、ホップラー法。4%水溶液)の粘度を有するビニルアルコール重合体を使用することを特徴とする、請求項1から4に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項6】
1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体を、一般式RSiR0−2(OR1−3を有するエチレン性不飽和シリコン化合物を含む群から使用し、ここでRはCH=CR−(CH0−1又はCH=CRCO(CH1−3、RはCからC−アルキルラジカル、C−からC−アルコキシラジカル又はハロゲン、Rは非分岐又は分岐の、任意で置換された1から12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、又は2から12個の炭素原子を有するアシルラジカルであり、Rは任意でエーテル基を割り込ませてもよく、RはH又はCHであることを特徴とする、請求項1から5に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項7】
1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体を、シラン基を含有しその一般式がCH=CR−CO−NR−R−SiR−(R3−mである(メタ)アクリルアミドを含む群から使用し、ここでn=0から4、m=0から2、RはH又はメチル基のいずれかであり、RはH又は1から5個の炭素原子を有するアルキル基、Rは1から5個の炭素原子を有するアルキレン基又は炭素鎖に酸素又は窒素原子が割り込んだ二価有機基であり、Rは1から5個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1から40個の炭素原子を有し、更なる複素環で置換し得るアルコキシ基であることを特徴とする、請求項1から5に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項8】
ビニルアルコール重合体の重量に対して2.5から40重量%のエチレン性不飽和シラン含有単量体を使用することを特徴とする、請求項1から7に記載のシラン変性ポリビニルアルコール。
【請求項9】
ビニルアルコール重合体を水溶液で1つ以上のエチレン性不飽和シラン含有単量体を用いて高温で処理することによる、請求項1から8に記載のシラン変性ポリビニルアルコールの調製方法。
【請求項10】
請求項1から8に記載のシラン変性ポリビニルアルコールのコーティング組成物及び接着剤組成物のバインダ又はコバインダとしての使用。
【請求項11】
紙コーティング剤における、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
水性分散液、水性媒体中での重合、及び水に再分散可能な分散粉末の調製のための保護コロイドとしての、請求項1から8に記載のシラン変性ポリビニルアルコールの使用。
【請求項13】
顔料及び充填剤の処理、及び陶器製造産業におけるバインダとしての、請求項1から8に記載のシラン変性ポリビニルアルコールの使用。
【請求項14】
化粧品中、及び食品包装及び繊維産業におけるバインダとしての請求項1から8に記載のシラン変性ポリビニルアルコールの使用。

【公表番号】特表2008−546859(P2008−546859A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516343(P2008−516343)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068422
【国際公開番号】WO2007/057382
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(507366108)ワッカー ポリマー システムズ ジーエムビーエイチ アンド カンパニー ケージー (1)
【Fターム(参考)】