説明

シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物に用いるシラン官能性ポリエステル

本発明は、室温で固体状のポリエステルとイソシアナトシランとの反応から得られるシラン官能性ポリエステルであって、シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性組成物、例えば、接着剤、シーリング材、またはコーティング剤などの構成成分として使用されるものに関する。本発明のシラン官能性ポリエステルを使用することによって、特に、高い初期強度を有する接着剤を得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、シラン官能性ポリエステルに関し、このポリエステルは、シランで末端化されたポリマーをベースとする接着剤、シーリング材、またはコーティング等の湿気硬化性組成物の成分として用いられる。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、接着剤、シーリング材、またはコーティングとして高い初期強度を有する湿気硬化性組成物を使用することは望ましいことである。例えば、低い初期強度を有する接着剤の場合には、接着剤で接合した部品が所望の位置に保持されるように強度が高まる時点まで位置を固定し続けなければならないという欠点がある。
【0003】
高い初期強度を有する湿気硬化性組成物を得るための種々の手法が知られている。よくある手法は、2成分形または反応性ウオームもしくはホットメルト組成物、特にウオームもしくはホットメルト接着剤(いわゆる、ウオームもしくはホットメルト)、を使うことである。両方の手法の組み合わせもまた、既知である。
この場合、ウオームまたはホットメルト接着剤には、適用直後に劇的に粘度が増加するという欠点がある。このため、例えば、接合後に、2つの結合される被着物の位置合わせを訂正することは煩雑である。さらに、多くの用途において、これらの接着剤は、通常、熱膨張を補償するだけの十分な柔軟性がない。
【0004】
湿気反応性成分が完全に、または少なくとも大部分が、室温で固体である成分として存在する純粋なウオームまたはホットメルト接着剤のほかに、一部の湿気反応性成分のみが室温で固体であるウオームまたはホットメルト接着剤が知られている。通常、これらは、液体の反応性成分に加えて、反応性または非反応性メルト成分を含む。最良の機械的性質を有する組成物を得るためには、反応性メルト成分を含むことが好ましく、この場合、このメルト成分として使える材料の範囲はかなり広い。シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物としては、任意のポリオールとポリイソシアナートとの反応生成物を用い、アミノまたはメルカプトシランと反応させることが好ましい。例えば、このような組成物が国際公開第2004/005420号A1に記載されている。
【0005】
しかし、既知の反応性メルト成分はいずれも、硬化組成物において獲得される初期強度および機械的性質の面でさらに改良され得る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/005420号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化組成物中の成分として、初期強度の改善された接着剤、シーリング材、またはコーティングとして使用可能な組成物を実現するシラン官能性ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、請求項1に記載の特異なシラン官能性ポリエステルによって、この問題を解決することができることが明らかとなった。
【0009】
シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性組成物に使われる多くの適用可能な成分から、本発明に記載のような、組成物の初期強度および機械的性質に際だった有益な効果をもたらす特異なシラン官能性ポリエステルを選択することは、当業者にも決して容易にできることではない。
【0010】
本発明の他の態様は、追加の独立請求項の主題である。特に、本発明の好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態
最初の態様では、本発明は、式(I)のシラン官能性ポリエステルを対象とする。
【化1】

【0012】
基Yは、室温で固体の、n個のヒドロキシ基を有するポリエステルPから、ヒドロキシル基を除去した後のn価の基である。
【0013】
基Rは、直鎖または分岐の1〜12個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であって、任意選択で1個または複数個のC−C多重結合を有していてもよく、かつ/あるいは、任意選択で脂環式および/または芳香族の部分を有していてもよい基である。特に、Rは、メチル、エチルまたはイソプロピル基である。
【0014】
基Rは、1〜12個の炭素原子を有する、アシル基または直鎖または分岐の一価の炭化水素基であって、任意選択で1個または複数個のC−C多重結合を有しいてもよく、かつ/あるいは、任意選択で脂環式および/または芳香族の部分を有していてもよい基である。好ましくは、基Rは、1〜5個の炭素原子を有するアシルまたはアルキル基、特に、メチルまたはエチルまたはイソプロピル基である。
【0015】
基Rは、直鎖または分岐の1〜12個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であって、任意選択で環式および/または芳香族部を有していてもよく、さらに任意選択で1個または複数個のヘテロ原子を有していてもよい基である。好ましくは、基Rは、1〜3個の炭素原子、特に3個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0016】
さらに、aは、0、1、または2、特に0または1の値である。
【0017】
nは、1〜3、特に2の値である。
【0018】
式(I)のポリエステル中のシラン基のうちの、各RおよびRは、互いに独立している。例えば、エトキシジメトキシシラン末端基(R=メチル、R=メチル、R=エチル)を有する式(I)のポリエステルも可能である。
【0019】
本明細書において、「ポリ」で始まる物質の名前、例えば、ポリオールまたはポリイソシアナートは、形式的には、その名称の一部である官能基を分子当たり2つ以上2含む物質を指す。
【0020】
本明細書では、用語「ポリマー」は、一方では重合度、分子量および鎖長がさまざまであり、ポリ反応(重合、重付加、重縮合)により調製された化学的に均質な高分子群を含む。また、この用語は、ポリ反応により得られた高分子群の誘導体、すなわち、既にある高分子の官能基への付加または置換等の反応によって得られる化合物をも含む。これらの化合物は、化学的に均質であっても不均質であってもよい。この用語は、いわゆるプレポリマー、すなわち、それが有する官能基が高分子の合成に関与する、反応性オリゴマーのプレ付加体も含む。
【0021】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアナート重付加プロセスにより調製された任意のポリマーを含む。さらに、実質的にまたは完全にウレタン基が無いポリマーも包含する。ポリウレタンポリマーの例には、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリ尿素、ポリ尿素、ポリエステルポリ尿素、ポリイソシアヌラートおよびポリカルボジイミドがある。
【0022】
本明細書では、用語「シラン」または「オルガノシラン」は、一方では、少なくとも1つ、通常は2、または3つのアルコキシ基またはアシルオキシ基を有し、Si−O−結合で直接シリコン原子に結合している化合物を指し、他方では、Si−C結合で直接シリコン原子に結合した少なくとも1つの有機基を有する化合物を指す。このようなシランは当業者にはオルガノアルコキシシランまたはオルガノアシルオキシシランとして知られている。
【0023】
従って、用語「シラン基」は、有機基がSi−C結合で結合したシリコン含有基を指す。シランおよびシラン基の特徴は、それぞれ、湿気に接触すると加水分解する点である。このことにより、オルガノシラノール、すなわち、1個または複数個のシラノール基(Si−OH基)を含む有機シリコン化合物、が形成され、また、続く縮合反応によって、オルガノシロキサン、すなわち、1個または複数個のシロキサン基(Si−O−Si基)を含む有機シリコン化合物が形成される。
【0024】
用語の「シラン官能性」は、シラン基を有する化合物を指す。従って、「シラン官能性ポリマー」は少なくとも1つのシラン基を有するポリマーである。
【0025】
有機基がアミノ基またはメルカプト基を有するオルガノシランを「アミノシラン」または「メルカプトシラン」と命名する。一級アミノ基、すなわち、有機基に結合しているNH基を有するアミノシランを「一級アミノシラン」と命名する。二級アミノ基、すなわち、2つの有機基に結合しているNH基を有するアミノシランを「二級アミノシラン」と命名する。
【0026】
本明細書では、用語の「分子量」は、常に、平均分子量M(数平均)を意味すると解される。
【0027】
本明細書では、外部からの何らかの影響を与えないとその形を変化しないかまたは変形が困難である場合、特に易流動性ではない場合に、その物質を「固体」と見なす。従って、粘性およびペースト状の物質を含む、変形可能で易流動性の物質は「液体」と見なされる。
【0028】
本明細書では、「室温」は、23℃の温度を指す。
【0029】
適切なヒドロキシ基で末端化されたポリエステルPは、特に、既知の方法、特に、ヒドロキシカルボン酸の重縮合、または、脂肪族および/または芳香族のポリカルボン酸と、二価または多価アルコールとの重縮合によって調製されたポリエステルである。
【0030】
特に適切なものは、二〜三価のアルコール(例えば、1、2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1、2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1、1、1−トリメチロールプロパンなど)または前記アルコールの混合物と、有機ジカルボン酸またはその無水物またはエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタラート、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリト酸、およびトリメリト酸無水物など)または前記酸の混合物と、から調製されるポリエステルポリオール、ならびに、ε−カプロラクトン等のラクトンから調製されるポリエステルポリオールである。
【0031】
特に適切なものは、ポリエステルジオールであり、特に、ジカルボン酸としての、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸、あるいはε−カプロラクトン等のラクトンと、2価アルコールとしての、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ダイマー脂肪アルコール、および1、4−シクロヘキサンジメタノールとから調製されたものである。
【0032】
好ましくは、ヒドロキシ基末端ポリエステルPは、結晶性ポリエステルである。
【0033】
さらに、好ましくは、ポリエステルPは、2500g/molを超えて7000g/mol以下の平均分子量Mを有する。最も好ましくは、ポリエステルPの平均分子量Mは、3500g/mol〜6000g/molの範囲である。
【0034】
好ましい分子量範囲内で、ポリエステルPは、鎖伸張ポリエステルまたは不均一分子量分布のポリエステルと比較して、改良された結晶化特性を有し、組成物のメルト成分として使用した場合には改良された初期強度を有する組成物をもたらす。
【0035】
ポリエステルPが結晶性ポリエステルである場合、ポリエステルPの結晶化温度は、ポリエステルPの融点より30℃未満低い温度であることが好ましい。
【0036】
ポリエステルPをベースとする反応性メルト成分を含み、ポリエステルPの結晶化温度がポリエステルPの融点より30℃未満低い温度である本発明の組成物は、特に好ましい。この理由は、用いた溶融メルト成分を含む組成物の適用した後、このメルト成分の結晶化によって十分な初期強度が得られるまでの時間を短くすることができるからである。例えば、本発明の反応性メルト成分を含む組成物ベースの接着剤を使って相互に接着される被着材は、十分な接着剤初期強度が達成され、被着材が相互に移動しなくなるまで、固定する必要が無い、または短時間の固定でよい。これは、特に垂直接着の場合、例えば、自動車または交通機関のフロントガラスの接着の場合に、特に好都合である。
【0037】
本発明の式(I)のシラン官能性ポリエステルは、典型的には、式(II)のイソシアナトシランISと上述したポリエステルPとを反応させることによって得られる。
【化2】

式中、R、R、Rおよびaは、上述したとおりである。
【0038】
この反応は、イソシアナート基の、ポリエステルPのヒドロキシ基に対する比率が、1:1の化学量論的比率、またはヒドロキシ基がわずかに過剰の比率で、例えば、温度20℃〜100℃の条件で、任意選択で触媒が存在していてもよい条件の下で行う。
【0039】
式(II)の適切なイソシアナトシランISの例には、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、および、ケイ素上に、メトキシまたはメトキシ基の代わりにエトキシまたはイソプロポキシ基を有するその類似体がある。
【0040】
2番目の態様では、本発明は、シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性接着剤、シーリング材、またはコーティング、特に、湿気硬化性接着剤の成分としての上術したシラン官能性ポリエステルの使用に関する。
【0041】
シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性接着剤、シーリング材、またはコーティングとして好適なものは、特に、特に、式(III)の末端基を有する、少なくとも1種のシラン官能性ポリマーSTPを含む湿気硬化性組成物である。
【化3】

式中、R、R、R、およびaは、上述したとおりである。
【0042】
第1の実施形態では、シラン官能性ポリマーSTPは、シラン官能性ポリウレタンポリマーSTP1であり、少なくとも1個のイソシアナート反応性基を有するシランと、イソシアナート基を有するポリウレタンポリマーとを反応させることによって得られる。1:1のイソシアナート反応性基とイソシアナート基の化学量論的比率、またはイソシアナート反応性基がわずかに過剰である比率を用いて、得られるシラン官能性ポリウレタンポリマーSTP1中にイソシアナート基が全く残らないようにこの反応を行わせることが好ましい。
【0043】
少なくとも1個のイソシアナート反応性基を有するシランは、特に、メルカプトシランまたはアミノシラン、好ましくはアミノシランである。
【0044】
好ましくは、アミノシランASは、式(IV)のアミノシランである。
【化4】

式中、R、R、R、およびaは上述したとおりであり、R11は、水素原子または1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐の炭化水素基であり、任意選択で環式部分を含んでいてもよく、あるいは、R11は、式(V)の基である。
【化5】

ここで、基R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子または−R15、−CN、および−COOR15からなる群より選択される基である。
【0045】
基R14は、水素原子、または、−CH−COOR15、−COOR15、−CONHR15、−CON(R15、−CN、−NO、−CN、−NO、−PO(OR15、−SO15、およびSOOR15からなる群より選択される基である。
【0046】
基R15は、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0047】
適切な式(IV)のアミノシランASの例には、一級アミノシラン(例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなど);第二級アミノシラン(例えば、N−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなど);一級アミノシラン(例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなど)の、マイケル受容体〔例えば、アクリロニトリル、アクリラートおよびメタクリラート、アクリル酸またはメタクリル酸アミド、マレイン酸およびフマル酸のジエステル、シトラコン酸ジエステルおよびイタコン酸ジエステル、例えば、ジメチルおよびジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミノ−スクシナートなど〕へのマイケル型付加生成物;ならびに、メトキシ基の代わりにエトキシまたはイソプロポキシ基をケイ素上に有する前記アミノシランの類似体、が含まれる。特に、アミノシランASとしてふさわしいのは、二級アミノシラン、特に、式(IV)のR11がHではないアミノシランASである。マイケル型付加物、特に、ジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミノ−スクシナートが好ましい。
【0048】
本明細書において、用語「マイケル受容体」は、それらが有する電子受容体基により活性化された二重結合によって、一級アミノ基(NH基)との間でマイケル付加反応に類似した方式(ヘテロマイケル付加)の求核付加反応が起こり得る化合物を意味する。
【0049】
シラン官能性ポリウレタンポリマーSTP1の調製用のイソシアナート基含有ポリウレタンポリマーとして適するポリマーは、例えば、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種のポリイソシアナート、特に、ジイソシアナートとの反応によって得られるポリマーである。この反応は、ポリオールとポリイソシアナートとを、標準的な方法、例えば、50℃〜100℃の温度を使い、任意選択で適切な触媒の存在下、ポリイソシアナートを、そのイソシアナート基がポリオールのヒドロキシ基に対して化学量論的に過剰に存在するように計り入れることによって行わせることができる。
【0050】
特に、ポリイソシアナートの過剰量は、ポリオール中の全てのヒドロキシ基が反応を完了した時点で、得られたポリウレタンポリマー中の遊離イソシアナート基の含量が、ポリマー全体に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜2.5質量%、より好ましくは0.2〜1質量%、残る様に選択する。
【0051】
任意選択で、ポリウレタンポリマーを可塑剤の存在下で調整することも可能であり、この場合、用いる可塑剤は、いかなるイソシアナート反応性基も含まない。
【0052】
ジイソシアナートと、高分子量ジオールとの間の、NCO:OHの比率が1.5:1〜2:1の範囲である反応によって得られた、上述した遊離イソシアナート基含量を有するポリウレタンポリマーであることが好ましい。
【0053】
適切なポリオールは、特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリカルボナートポリオール、ならびにこれらのポリオールの混合物である。
【0054】
適切なポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオール(オリゴエーテロールとも呼ばれる)であり、特に、エチレンオキシド、1、2−プロピレンオキシドまたは2、3−ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物の重合生成物であり、任意選択により、2つ以上の活性水素原子を持つ開始剤分子(例えば、水、アンモニアまたは2つ以上のOHまたはNH基を有する化合物、例えば、1、2−エタンジオール、1、2−および1、3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、イソメル酸ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、イソメル酸ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1、3−および1、4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1、1、1−トリメチロールエタン、1、1、1−トリメチロールプロパン、グリセリン、アニリン、ならびに前記化合物の混合物など)の助けにより重合した重合生成物である。例えば、いわゆる、ダブル金属シアン化物錯体(DMC触媒)を使って調製した低不飽和度(ASTM D−2849−69に従って測定し、グラムポリオール当たりのミリ当量不飽和で表したもの(mEq/g))を有するポリオキシアルキレンポリオールを使用することも、アニオン触媒、例えば、NaOH、KOH、CsOHまたはアルカリアルコラートを用いて調製した高不飽和度のポリオキシアルキレンポリオールを使用することもできる。
【0055】
特に適切なものは、ポリオキシエチレンポリオールおよびポリオキシプロピレンポリオール、とりわけ、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオー、ルおよびポリオキシプロピレントリオールである。
【0056】
特に適切なものは、0.02mEq/g未満の不飽和度および1000〜30、000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、ならびに、400〜8000g/molの分子量のポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、およびポリオキシプロピレントリオールである。
【0057】
同様に、いわゆる、エチレンオキシドで末端キャップされた(「EO末端キャップ」、ethylene oxide end−capped)ポリオキシプロピレンポリオールも、特に適している。EO末端キャップポリオキシプロピレンポリオールは、特殊なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであり、例えば、ポリオキシプロピル化反応の完了後の純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特に、ポリオキシプロピレンジオールを、エチレンオキシドを使いて追加的にアルコキシル化することによって得られ、結果的に一級ヒドロキシ基を有する。この場合、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオールおよびポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールが好ましい。
【0058】
また、スチレンアクリロニトリルグラフト結合ポリエーテルポリオール、例えば、ルプラノール(Lupranol)(登録商標)の商品名で、Elastogran GmbH、独国から市販品として入手できるものも適している。
【0059】
適切なポリエステルポリオールは、特に、ポリエステルPとして上述したポリエステルであり、シラン官能性ポリマーPの調製に使用されるこれらのポリエステルポリオールの分子量は、ポリエステルポリオールが室温で液体である様に選択される。
【0060】
適切なポリカルボナートポリオールは、特に、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いる上述したアルコールを、ジアルキルカルボナート(例えば、ジメチルカルボナート)、ジアリールカルボナート(例えば、ジフェニルカルボナートなど)、またはホスゲン、と反応させることによって調製することができるものである。ポリカルボナートジオール、なかでも、無定型のポリカルボナートジオールが特に適している。
【0061】
さらなる適切なポリオールは、ポリ(メタ)アクリラートポリオールである。
【0062】
ポリヒドロキシ官能性の油脂も適している。例えば、天然油脂(特に、ひまし油)、または、天然油脂の化学的変性によって得られるいわゆる油脂化学ポリオール(例えば、不飽和油のエポキシ化とそれに続くカルボン酸またはアルコールによる開環により得られるエポキシポリエステルまたはエポキシポリエーテル、または不飽和油のヒドロホルミル化および水素添加によって得られるポリオール、さらに、天然油脂から、分解プロセス(例えば、アルコール分解またはオゾン分解など)およびその後に続く化学的架橋(例えば、分解生成物のエステル交換反応または二量体化による架橋)によって得られるポリオールまたはその誘導体がある。適切な天然油脂の分解生成物には、特に、脂肪酸およびおよび脂肪アルコールならびに脂肪酸エステル、特に、メチルエステル(FAME)があり、これらは、例えば、ヒドロホルミル化と水素添加によって誘導体化されてヒドロキシ脂肪酸エステルを形成することができる。
【0063】
また、さらに、オリゴヒドロカルボノールとも呼ばれるポリヒドロ炭素ポリオールも適している。例えば、ポリヒドロキシ官能性のエチレンプロピレン−、エチレンブチレン−またはエチレンプロピレンジエン共重合体であり、例えば、Kraton Polymers、USAにより製造されているもの、またはジエン類(例えば、1、3−ブタンジエン、またはジエン混合物)と、ビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリルまたはイソブチレン)とから調製されるポリヒドロキシ官能性共重合体、またはポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール(例えば、1、3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合により、あるいはポリブタジエンの酸化により調製されたもの)(水素化されていてもよい)が適している。
【0064】
また、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、例えば、エポキシドまたはアミノアルコールと、カルボキシ末端アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(Hypro(登録商標)CTBNの商品名でEmerald Performance Materials、LLC、USAから市販品として入手可能)とから調製可能なものも適している。
【0065】
上述したポリオールは、250〜30、000g/mol、特に1000〜30、000g/molの平均分子量、および1.6〜3の範囲の平均OH官能価を有することが好ましい。
【0066】
特に適するポリオールは、ポリエーテルポリオール、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、およびポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、好ましくは、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール、およびポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0067】
上述したポリオールに加えて、少量の低分子量の二価のまたは多価のアルコールをイソシアナート基を含むポリウレタンポリマーの製造に使用可能である。これらの低分子の二価又は多価アルコールは、例えば、1、2−エタンジオール、1、2−および1、3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、イソメル酸ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、ヘプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1、3−および1、4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、2量体脂肪アルコール、1、1、1−トリメチロールエタン、1、1、1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、糖アルコール、例えば、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトール、糖、例えば、サッカロース、その他の多価アルコール、前述した二価または多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、ならびにこれらのアルコールの混合物である。
【0068】
市販のポリイソシアナート、特に、ジイソシアナート、をポリウレタンポリマーの調製のための好適なポリイソシアナートとして使用可能である。
【0069】
適切なジイソシアナートには、例えば、1、6−ヘキサメチエレンジイソシアナート(HDI)、2−メチルペンタメチレン−1、5−ジイソシアナート、2、2、4−および2、4、4−トリメチル−1、6−ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、1、12−ドデカメチレンジイソシアナート、リシン−およびリシンエステルジイソシアナート、シクロヘキサン−1、3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1、4−ジイソシアナート、1−イソシアナト−3、3、5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナートすなわちIPDI)、ペルヒドロ−2、4’−ジフェニルメタンジイソシアナートおよびペルヒドロ−4、4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、1、4−ジイソシアナト−2、2、6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1、3−および1、4−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレンジイソシアナート(m−およびp−XDI)、m−およびp−テトラメチル−1、3−キシリレンジイソシアナート、m−およびp−テトラメチル−1、4−キシリレンジイソシアナート、ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ナフタレン、2、4−および2、6−トルエンジイソシアナート(TDI)、4、4’−、2、4’−および2、2’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、1、3−および1、4−フェニレンジイソシアナート、2、3、5、6−テトラメチル−1、4−ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン−1、5−ジイソシアナート(NDI)、3、3’−ジメチル−4、4’−ジイソシアナトジフェニル(TODI)、前記イソシアナートのオリゴマーおよびポリマー、および前記イソシアナートの任意の混合物、がある。
【0070】
例えば、適切なシラン官能性ポリマーSTP1は、ポリマーST50の商品名でHanse Chemie AG、独国から、また、Desmoseal(登録商標)の商品名でBayer Material Science AG、独国から市販品として入手可能である。
【0071】
第2の実施形態では、シラン官能性ポリマーSTPは、シラン官能性ポリウレタンポリマーSTP2であり、上述したように、式(II)のイソシアナトシランISを、イソシアナートに対して反応性を有するする末端基、特に、ヒドロキシ基、メルカプト基および/またはアミノ基を有するポリマーと反応させることによって調製することができる。この反応は、イソシアナート基と、イソシアナートと反応する末端基との化学量論的比が1:1となる比率、またはイソシアナートと反応する末端基がわずかに過剰比率を用いて、例えば、20〜100℃の温度で、任意選択で触媒の存在下で、行うことができる。
【0072】
ポリマーは、イソシアナートに対して反応性を有する官能性末端基として、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0073】
適切なヒドロキシ基含有ポリマーは、一方では、高分子量ポリオキシアルキレンポリオール、好ましくは0.02mEq/g未満の不飽和度、および4000〜30、000g/molの範囲の分子量、特に8000〜30、000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオールである。
【0074】
また、他方では、ヒドロキシ基、特に末端ヒドロキシ基を有するポリウレタンポリマーが、イソシアナトシランISとの反応に好適である。このようなポリウレタンポリマーは、少なくとも1つのポリイソシアナートを少なくとも1つのポリオールと反応させて得られる。この反応は、ポリオールとポリイソシアナートとを通常の方法、例えば、50〜100℃の温度下、任意選択で適切な触媒の存在下、そのヒドロキシ基がポリイソシアナートのイソシアナート基に対し化学量論的に過剰に存在する様にポリオールを添加して、行わせることができる。ヒドロキシ基のイソシアナート基に対する比として、1.3:1〜4;1、特に1.8:1〜3:1を使うことが好ましい。任意選択で、ポリエタンポリマーを可塑剤の存在下で調製することが可能である。使用する可塑剤は、いかなるイソシアナート反応性基も含まない。(シラン官能性ポリウレタンポリマーSTP1の調製に用いる)イソシアナート基含有ポリウレタンポリマーの調製に適切であるとしてすでに上述したものと同じポリオールおよびポリイソシアナートは、この反応にも適合する。
【0075】
例えば、適切なシラン官能性ポリマーSTP2は、SPUR(登録商標)1010LM、1015LMおよび1050MMの商品名でMomentive Performance Materials Inc.、USAから、また、Geniosil(登録商標)STP−E15、STP−10およびSTP−E35の商品名でWacker Chemie AG、独国から市販品として入手可能である。
【0076】
第3の実施形態では、シラン官能性ポリマーSTPは、シラン官能性ポリマーSTP3であり、末端二重結合を持ったポリマー〔例えば、ポリ(メタ)アクリラートポリマーまたはポリエーテルポリマー、特にアリル末端ポリオキシアルキレンポリマー(例えば、米国特許第3、971、751号および6、207、766号に記載されているもの:この開示を参照により本明細書に取り込む)〕のヒドロシリル化反応によって得られる。
【0077】
適切なシラン官能性ポリマーSTP3は、例えば、MSポリマー(登録商標)、特にMSポリマー(登録商標)S203H、S303H、S227、S810、MA903およびS943、シリル(登録商標)SAX220、SAX350、SAX400およびSAX725、シリル(登録商標)SAT350およびSAT400、ならびにXMAP(登録商標)SA100SおよびSA310Sの商品名で株式会社カネカ(日本)から、また、Excestar(登録商標)S2410、S2420、S3430、S3630、W2450およびMSX931の商品名で旭硝子株式会社(日本)から、市販品として入手可能である。
【0078】
通常、シラン官能性ポリマーSTPは、組成物全体に対して10〜80質量%、好ましくは、15〜60質量%の量で存在する。
【0079】
シラン官能性ポリウレタンポリマー、特に、STP1型のシラン官能性ポリウレタンポリマーをベースとする湿気硬化性接着剤、シーリング材、またはコーティングポリマー材料には、上記記載のシラン官能性ポリエステルの使用することが最も好ましい。
【0080】
別の態様では、本発明は、上記シラン官能性ポリエステルの湿気硬化性接着剤に使用する成分としての使用に際し、前記接着剤は、少なくとも1種の前記式(I)のシラン官能性ポリエステルと、少なくとも1種のシランで末端化されたポリマーSTPとを含む成分A、および水を含む成分Bからなる2成分形湿気硬化性接着剤である。
【0081】
特に、2成分形湿気硬化性接着剤の成分Aは、前述の湿気硬化性組成物に相当するものであり、従って、大気中の湿気によりそれ自体で完全に硬化できる組成物を有している。このような硬化接着剤は、成分AとBの混合物の硬化後と同等の最終強度を有する。
【0082】
成分Bは、特に、水含有ペーストであり、水は、典型的には、可塑剤、増粘剤および充填剤、からなる群より選択された少なくとも1つのキャリア材料中に濃縮されて含まれている。
【0083】
成分B中の水の含量は、成分Aの実施形態に依存してさまざまであり得る。使用する成分Bの量は、その中に含まれている水の含量次第であることは、当業者には極めて明らかである。例えば、成分Bが50質量%を超える高い水含量を有する場合には、成分Bは、通常、成分Aの量に対して1〜10質量%の量で使われる。他方、成分Bが、例えば、約5質量%しか水を含まない場合には、成分Bは、成分Aの量に対して約50質量%の量で使用可能である。
【0084】
2成分形組成物全体の水の量は、存在する水が、組成物中の全反応性基の50〜100%と反応するのに十分である量であることが好ましい。
【0085】
前述した2成分形組成物は、特に、成分Aと成分Bとの質量比が1:1以上、特に、3:1〜70:1、好ましくは、10:1〜20:1となるようにして使用する。
【0086】
2成分形湿気硬化性組成物において、成分AおよびBは、通常、別のパッケージに、あるいは相互に分離された2つの区画を有する1つのパッケージに貯蔵する。この場合、成分Aをパッケージの1つの区画に入れ、成分Bをもう一つの区画に入れる。適切なパッケージには、例えば、デュアルカートリッジ〔例えば、ツインまたはコアキシャルカートリッジ(twin or coaxial cartridge)〕、またはアダプターを有する多区画チューブバッグ(multi−compartment tube bag)である。2つの成分AとBの混合は、2区画のパッケージに設置することができる静的ミキサーで行うことが好ましい。
【0087】
このような適切なパッケージは、例えば、米国特許第2006/0155045A1、国際公開番号WO2007/096355A1、および米国特許第2003/0051610A1に記載されている。これらの開示を、参照により本明細書に組み込む。
【0088】
大規模の適用においては、通常、2つの成分AとBを別々にドラムまたはバケットに貯蔵し、適用時に押し出して、例えば、ギアポンプを使って混合する。この後、手動により、あるいはロボットを使って自動プロセスにより組成物を被着材に適用することができる。
【0089】
さらなる好ましい態様では、本発明は、前述したシラン官能性ポリエステルの、前述したシランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性ウオームまたはホットメルト接着剤に用いる反応性メルト成分としての使用に関する。ここで、本発明の式(I)のシラン官能性ポリエステルは、室温で固体であり、湿気硬化性ウオームまたはホットメルト接着剤の加熱により溶融する。加熱状態で接着剤を適用した後、一方では、メルト成分の結晶化により冷却時固化し、他方では、水との反応により架橋が起こる。水は、空気(湿気)から供給しても、接着剤に、例えば、前述のように、水含有成分の形で添加してもよい。
【0090】
ウオームメルト接着剤は、通常、約40℃〜80℃の温度で適用される。ホットメルト接着剤の適用温度は、通常、80℃である。当然、これらの範囲がオーバーラップし、ウオームおよびホットメルト接着剤の間に明確な境界線が無いことは当業者には明らかである。
【0091】
ウオームまたはホットメルト接着剤には、ここでは、接着剤が完全に室温で固体であるものみならず、室温で液体であって、しかし室温で固体であるメルト成分を含むものも含まれる。
【0092】
反応性ポリマー成分全体がメルト成分として使われる純粋な反応性ウオームまたはホットメルト接着剤と比較して、このような接着剤は、適用後でも一定の変形能を示すという利点を有し、大きな表面積の接着の際に簡単な修正が可能である。メルト成分を含んでいない湿気硬化性接着剤と比較して、このような接着剤は、明らかに改良された初期強度を有するという利点がある。
【0093】
別の態様では、本発明は、
少なくとも1種の前述の式(I)のシラン官能性ポリエステルと、
湿気硬化性接着剤、シーリング材、またはコーティングの成分としての少なくとも1種の前述のシランで末端化されたポリマーSTPと、を含む組成物に関する。
【0094】
シラン官能性ポリマーSTPは、シラン官能性ポリウレタンポリマー、特に、STP1型シラン官能性ポリウレタンポリマーであることが最も好ましい。
【0095】
さらに、組成物は、少なくとも1種の充填剤を含むことが好ましい。この充填剤は、未硬化組成物のレオロジー特性と、硬化組成物の機械的性質および表面構造との両方に影響を与える。適切な、充填剤には、無機または有機充填剤、例えば、天然由来の炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウム(任意選択で、脂肪酸、特にステアリン酸でコーティングされていてもよい)、硫酸バリウム(BaSO、バライトまたは重晶石とも呼ばれている)、か焼カオリン、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物、ケイ酸(特に熱分解からのヒュームドシリカ)、カーボンブラック、特に工業的に製造したカーボンブラック(カーボンブラック;以下。「カーボンブラック」と呼ぶ)、PVC粉末または中空ビーズが含まれる。好ましい充填剤は、炭酸カルシウム、か焼カオリン、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、ならびに難燃性充填剤、例えば、水酸化物または水和物、特にアルミニウムの水酸化物または水和物、好ましくはアルミニウム水酸化物である。
【0096】
異なる充填剤の混合物を使用することは、全く問題なく、むしろ好都合である。
【0097】
適切な充填剤の量は、例えば、組成物全体に対して20〜60質量%、好ましくは30〜60質量%の範囲である。
【0098】
本発明の組成物は、さらに、特に湿気によって前記シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1つの触媒を含む。このような触媒は、特に有機スズ化合物の形の金属触媒であり、例えば、ジブチルスズジラウラートおよびジブチルスズジアセチルアセトナート、チタン触媒、アミノ基含有化合物、例えば、1、4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび2、2’−ジモルホリノジエチルエーテル、アミノシラン、ならびに前記触媒の混合物、が挙げられる。
【0099】
さらに、本発明の組成物は、さらにほかの成分を含むことができる。例えば、このような成分には、軟化剤、例えば、有機カルボン酸のエステルまたはその無水物、例えば、フタラート(例えば、ジオクチルフタラート、ジイソノニルフタラートまたはジイソデシルフタラート)、アジパート(例えば、ジオクチルアジパート、アジパート)およびセバカート、ポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリエステルポリオール)、有機リン酸およびスルホン酸エステル、またはポリブテン;溶剤;例えば、ポリエチレン製等の繊維;染料;顔料;レオロジー調節材、例えば、増粘剤またはチクソトロピー付与剤、例えば、国際公開番号WO02/48228A2 9〜11ページにチクソトロピー付与剤(「チクソトロピー付与剤」)として記載のタイプの尿素化合物、ポリアミドろう、ベントナイトまたは焼成ケイ酸;接着促進剤、例えば、エポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、または、上述したシランと一級アミノシランとの付加物、ならびにアミノシランまたは尿素シラン;架橋剤、例えば、シラン官能性オリゴマーおよびポリマー;乾燥剤、例えば、ビニルトリメトキシシラン、α−官能性シラン、例えば、N−(シリルメチル)−O−メチルカルバマート、特にN−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチルカルバマート、(メタクリロキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、N−フェニル−、N−シクロヘキシル−およびN−アルキルシラン、オルトギ酸エステル、カルシウムオキシドまたはモレキュラーシーブ;安定剤、例えば、熱、光およびUV照射に対する安定剤;難燃剤;表面活性物質、例えば、湿潤剤、レベリング剤、脱気剤または脱泡剤;殺生物剤、例えば、殺藻剤、殺菌剤、または真菌増殖抑制物質;ならびに通常湿気硬化性組成物に使われる物質が挙げられる。
【0100】
さらに、いわゆる、反応性希釈剤を、任意選択として使用することが可能であり、特に、シラン基との反応によって反応組成物を硬化させる際に、ポリマー基剤中に組み込む。
【0101】
述べてきた組成物中の全ての任意選択の成分、特に、充填剤と触媒を、このような成分の存在により組成物の貯蔵安定性に悪い影響を与えない(すなわち、組成物が、特性、特に、適用と硬化特性に関して、貯蔵の間に変化を受けないか、またはほんのわずかな変化を受けるに過ぎないこ)様に選択することが有利である。これには、組成物の化学的硬化の原因となる反応、特にシラン基の反応、が貯蔵中にそれほどは起こらないことが必要である。従って、前記成分が貯蔵中に水を含まないかまたは含んでいてもせいぜい痕跡程度であり、貯蔵中に水を放出しないか放出してもせいぜい痕跡程度であることが、特に好都合である。従って、組成物を混合する前に特定の成分を化学的または物理的に乾燥することが、有益となる場合がある。
【0102】
前述の組成物は、湿気を排除して調製し、貯蔵することが好ましい。通常は、組成物は貯蔵中安定で、数ヶ月から1年以上の期間、湿気を排除して、適切なパッケージまたは配置、例えば、ドラム、バッグまたはカートリッジに入れて、その適用特性またはその硬化後の特性が使用に関わるほど変化することなく貯蔵可能である。
【0103】
少なくとも1つの固体物品に対し記載した組成物を適用すると、組成物に含まれるシラン基が湿気と接触する。シラン基は、湿気と接触して加水分解する特性がある。これにより、オルガノシラノールが生成し、次に続く縮合反応の結果として、オルガノシロキサンが生成する。触媒を使って加速することができるこれらの反応の結果として、組成物の硬化が起こる。このプロセスは、架橋と呼ばれる。
【0104】
硬化に必要な水は、空気(湿気)によって、あるいは、上述の組成物に対し、例えば平滑剤を、例えばコーティングすることによって、または吹き付けることによって、あるいは水含有成分を適用する際に、例えば混入させる水含有ペーストの形で、例えば静的ミキサーを使って組成物に添加することによって、水含有成分を接触可能な状態で供給することができる。湿気で硬化させる場合、組成物は外側から内側へ硬化する。硬化速度は、種々の因子、例えば、水の拡散速度、温度、環境の湿気、および接着形状により決まり、通常、その速度は硬化の進行につれ低下する。
【0105】
本発明の組成物は、特に、2つの被着材S1およびS2を接着する方法に使用され、
i)被着材S1および/または被着材S2に上述した組成物を適用する工程;
ii)組成物のオープンタイム内に適用した組成物を介して被着材S1とS2とを接触させる工程;および
iii)組成物を水で硬化させる工程;
を含み、被着材S1とS2とは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0106】
さらに、本発明の組成物はシーリングまたはコーティング用の方法としても使用可能であり、
i’)被着材S1および/または被着材S1とS2との間に上記説明の組成物を適用する工程;および
ii’)組成物を水、特に、湿気によって硬化させる工程;
を含み、被着材S1とS2は相互に同じであっても異なっていてもよい。
【0107】
本発明の組成物がウオームまたはホットメルト接着剤のである場合には、組成物の適用の工程i)またはi’)に対して、本発明の式(I)のポリエステルをメルト成分として溶融する接着剤の加熱工程が先行する。
【0108】
本発明の組成物が2成分形組成物である場合には、組成物の適用工程i)またはi’)に対して、2つの成分AとBとの混合工程が先行する。
【0109】
本発明の組成物が2成分形ウオームまたはホットメルト接着剤である場合には、組成物の適用工程i)またはi’)に対して、接着剤、特に成分Aの加熱工程、およびその後の2つの成分AとBの混合工程が先行する。
【0110】
被着材S1および/またはS2として、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、天然石、例えば、花崗岩または大理石、ガラス、セラミック、金属または金属合金、木、プラスチックおよびペンキ、からなる群より選択されたものが特に適している。
【0111】
本発明の組成物は、通常、被着材に取り付けた適切な装置を使って、基本的に丸または三角形の断面のビーズの形態で適用することが好ましい。適切な組成物適用方法には、例えば、手動または圧縮空気により操作される市販のカートリッジからの、またはポンプまたはエクストルーダーを使ってドラムまたはバケットからの、任意選択として、適用ロボットによる、投与が含まれる。優れた適用特性を有する本発明の組成物は、高い安定性および短い糸曳き(stringing)を有する。本発明の組成物は、適用後、適用した形に維持され、すなわち、流れ出ることなく、適用装置の除去後も糸曳きを残さないか、ごく短いものを残すのみであり、被着剤が汚れない。
【0112】
本発明は、さらに、上述した組成物を水、特に、湿気の形態の水、と反応させることにより得られる硬化組成物に関する。
【0113】
本発明の組成物で接着、シールまたはコートされる物品は、特に、工業生産製品、消費材、特に、窓、屋内電気器具、または交通機関、特に、自動車、または自動車の付属部品である。
【実施例】
【0114】
実施例
以下に、代表的実施形態を示すが、これらは、上述した本発明をさらに詳細に説明するものである。当然、本発明は、本明細書記載の前記実施形態に限定されることはない。
【0115】
試験方法
融点(「mp」)および結晶化温度(「cp.」)は、Mettler Toledo、SwitzerlandのDSC822e DSC(示差走査熱量測定)と自動サンプリング装置(Mettler Toledo Sample Robot TS0801RO)を使って測定した。試料を下記サイクルに供した:1)15℃(一定温度)で1分間;2)15℃から100℃に加熱(温度勾配 +10℃/min);3)100℃で1分間(一定温度);4)100℃から15℃へ冷却(温度勾配 −10℃/min)、5)15℃で5分間(一定温度)、6)15℃から100℃へ加熱(温度勾配 +10℃/min)。
【0116】
室温(23℃)未満の結晶化温度を有するメルト成分は、メルト成分の結晶化が室温で起こるはずであるため、その使用は限定されており、好ましくない。また、十分な初期強度を得るまでに比較的長い時間が必要なため、結晶化温度がその融点との差が30℃を超えて低いメルト成分も好ましくない。
【0117】
0〜5%歪みでのE係数(弾性率)をDIN EN53504(引張速度:200mm/min)に従って、23℃および50%の相対湿度下で7日間硬化させた厚さ2mmのフィルムで測定した。ショアA硬度を、DIN53505に従って、23℃と50%の相対湿度下で7日間硬化させた厚さ6mmの試験片で測定した。
【0118】
押し出し力(「APK」)の測定のため、各組成物をカートリッジに充填した。次に、そのカートリッジを開いて、内径5mmのノズルを取り付けた。押し出し装置「Zwick1120」を用いて、60mm/minの押し出し速度で組成物を押し出すのに必要な力を測定した。求めた値は、22mm、24mm、26mmおよび28mmの押し出し後に測定した力の平均である。30mm押し出し後に停止した。同様に、70℃での押し出し力を測定した。この場合は、押し出し力測定の前にカートリッジを70℃の温度に加熱した。
【0119】
組成物の初期強度を、静的荷重下の接着剤の滑り(sliding)挙動を使って測定した。ここでは、三角形接着剤ビード(幅:10mm;高さ:12mm)を、70℃の温度で垂直にしたガラス窓枠上に水平に適用して、30秒後に、120gのガラス対照試料(100x40x6mm)を用いて、ビードがガラス対照試料の最大表面の全体幅40mmの全体にわたるように加圧し(30g/cmに相当)、5mmに圧縮して、30秒保持した。その後、固定を除去し、ガラス対照試料のスリップダウン距離(「スリップダウン」)を2分後に測定した。スリップダウン距離0.5mm以上を有する組成物は、初期強度不足である。
【0120】
メルト成分の調製
調製物1:
3600gのDynacoll(登録商標)7381(Evonik Degussa GmbH、独国、結晶性ポリエステル、M=3500g/mol、OH価29.6)および400gのジイソデシルフタラート(DIDP、Palatinol(登録商標)Z、BASFSE、独国)を、120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、390.66gの3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF−40、Wacker Chemie AG、独国)および5.28gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712、Acima AG、Switzerland)を混合し、遊離イソシアナート基が滴定法により検出されなくなるまで90℃で攪拌した。
【0121】
調製物2:
250gのDynacoll(登録商標)7365(Evonik Degussa GmbH、結晶性ポリエステル、M=6500g/mol、OH価17.9)および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を、120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、16.41gの3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF−40)および0.35gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に加え、遊離イソシアナート基含量が滴定法で0.09質量%になるまで90℃で攪拌した。調整のため、滴定法で遊離イソシアナート基が検出されなくなるまで、20.34gのDynacoll(登録商標)7365を、混合物に加えた。
【0122】
調製物3:
250gのDynacoll(登録商標)7362(Evonik Degussa GmbH、結晶性ポリエステル、M=2000g/mol、OH価60.0)および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、54.99gの3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF−40)および0.40gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に加え、遊離イソシアナート基含量が滴定法で0.26質量%になるまで90℃で攪拌した。調整のため、滴定法で遊離イソシアナート基が検出されなくなるまで、19.52gのDynacoll(登録商標)7362を、混合物に加えた。
【0123】
調製物4:
250gのDynacoll(登録商標)7250(Evonik Degussa GmbH、液体ポリエステル、M=5500g/mol、OH価22.5)および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、20.62gの3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF−40)および0.36gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に加え、遊離イソシアナート基含量が滴定法で0.28質量%になるまで90℃で攪拌した。調整のため、遊離イソシアナート基含量が0.09質量%になるまで、48.99gのDynacoll(登録商標)7250を混合物に添加した。
【0124】
調製物5:
250gのDynacoll(登録商標)PEG4000(ポリエチレングリコール4000、Fluka Chemie GmbH、Switzerland、M=4000g/mol、OH価32.0)および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、29.33gの3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF−40)および0.37gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に加え、滴定法で遊離イソシアナート基が検出されなくなるまで90℃で攪拌した。
【0125】
調製物6:
352gのDynacoll(登録商標)7362および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、64.41gのイソホロンジイソシアナート(Vestanat(登録商標)IPDI、Evonik Degussa GmbH)および0.27gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に加え、遊離イソシアナート基含量が滴定法で2.71質量%になるまで90℃で攪拌した。次に、100.3gのジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミノ−スクシナートを加え、滴定法で遊離イソシアナート基が検出されなくなるまで攪拌した。
【0126】
ジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミノ−スクシナートは次のようにして調製した:室温で、激しく攪拌しながら、12.87gのマレイン酸ジエチルエステル(Fluka Chemie GmbH、Switzerland)を13.4gの3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A−1110、Momentive Performance Materials Inc.、USA)にゆっくり添加し、この混合物を室温で2時間攪拌した。
【0127】
調製物7:
266gのDynacoll(登録商標)7365および27.78gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)を120℃で1時間、真空中で攪拌し、水を除去した。次に、混合物を90℃に冷却し、真空中に窒素を導入した。窒素雰囲気下、19.21gのイソホロンジイソシアナート(Vestanat(登録商標)IPDI)および0.24gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を混合物に添加し、遊離イソシアナート基含量が滴定法で1.0質量%になるまで攪拌した。次に、24.46gのジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミノ−スクシナートを加え、滴定法で遊離イソシアナート基が検出されなくなるまで攪拌した。
【0128】
シラン官能性ポリウレタンポリマーSHの調製
窒素雰囲気下、1000gのPolyol Acclaim(登録商標)12200(Bayer Material Science AG、独国;低モノオールポリオキシプロピレンジオール;OH価11.0mgKOH/g;水含量約0.02質量%)、46.17gのイソホロンジイソシアナート(Vestanat(登録商標)IPDI)、261.72gのジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)、および0.14gのジ−n−ブチルスズジラウラート(Metatin(登録商標)K712)を90℃で連続攪拌し、この温度で保持した。1時間の反応時間後、遊離イソシアナート基含量が0.70質量%になったことを滴定で確認した。その後、69.88gのN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルエステルを添加し、さらに90℃で2〜3時間攪拌を続けた。遊離イソシアナートがIR分光法(2275−2230cm−1)で検出されなくなるとすぐ反応を停止した。生成物を室温(23℃)まで冷却し、湿気を除去して貯蔵した(理論的ポリマー含量=90%)。
【0129】
接着剤の製造
表1に示した質量比率に従って、真空ミキサー中、室温にて、シラン官能性ポリウレタンポリマーSH、ジイソデシルフタラート(Palatinol(登録商標)Z)、およびビニルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A−171、Momentive Performance Materials Inc.、USA)を5分間十分に混合した。その後、乾燥した沈降石灰(Socal(登録商標)U1S2、Solvay SA、Belgium)および乾燥したカーボンブラック(Monarch(登録商標)570、Cabot Corp.、USA)ならびに前もってオーブン中で70℃で2日間溶融したメルト成分(調製物1〜調製物7)を60℃で15分間混練した。ヒーターを切り、N−(2−アミノエチル)−(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A−1120、Momentive Performance Materials Inc.)および触媒(Metatin(登録商標)K712、10%DIDP溶液として)で10分処理し、均質のペーストを得た。次に、これを内面が塗装されたアルミニウムピストンカートリッジに満たした。
【表1】

本発明の組成物である接着剤1および2、および参考例であるRef1〜Ref6の組成物(質量%)、ならびに測定結果を表1に示す。Ref6は、メルト成分を全く含まない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のシラン官能性ポリエステル:
【化1】

(式中、
Yは、n価のヒドロキシ基を有し、室温で固体であるポリエステルPからn個のヒドロキシ基を除去した後の残基であり;
は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一価の炭化水素素基であり、任意選択で1個または複数個のC−C多重結合を有していてよく、かつ/あるいは、任意選択で脂環式および/または芳香族の部分を有していてよく;
は、1〜12個の炭素原子を有するアシル基または直鎖もしくは分岐の一価炭化水素基であり、任意選択で1個または複数個のC−C多重結合を有していてよく、かつ/あるいは、任意選択で脂環式および/または芳香族部の部分を有していてよく;
は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の二価の炭化水素基であり、任意選択で脂環式および/または芳香族部の部分を有していてよく、かつ/あるいは、任意選択で1個または複数個のヘテロ原子を有していてよく;
aは、0、1、または2の値であり;かつ
nは1〜3の値である)。
【請求項2】
ポリエステルPが結晶性ポリエステルであることを特徴とする、請求項1記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項3】
ポリエステルPの平均分子量Mが、2500g/molより大であり、7000g/mol以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項4】
ポリエステルPの平均分子量Mが、3500g/mol〜6000g/molであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項5】
aが0または1の値であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項6】
nが2の値であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項7】
が1〜5個の炭素原子を有するアシル基またはアルキル基、特に、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項8】
が、1〜3個の炭素原子、特に、3個の炭素原子を有するアルキレン基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項9】
ポリエステルPの結晶化温度がポリエステルPの融点より30℃未満低い温度であることを特徴とする、請求項2に記載のシラン官能性ポリエステル。
【請求項10】
シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性接着剤、シーリング材、またはコーティング、特に、湿気硬化性接着剤における成分としての、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステルの使用。
【請求項11】
シランで末端化されたポリマーをベースとする湿気硬化性ウオームまたはホットメルト接着剤における反応性メルト成分としての、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
湿気硬化性接着剤が、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル少なくとも1種と、シランで末端化されたポリマー少なくとも1種とを含む成分A;および
水を含む成分B、
を含む2成分形湿気硬化性接着剤であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
シランで末端化されたポリマーがシラン末端ポリウレタンポリマーSTP1であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシラン官能性ポリエステル少なくとも1種と、
シランで末端化されたポリマーSTP少なくとも1種と、
を含む組成物。
【請求項15】
シランで末端化されたポリマーが、シラン末端ポリウレタンポリマーSTP1であることを特徴とする、請求項14記載の組成物。

【公表番号】特表2012−528220(P2012−528220A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512370(P2012−512370)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057295
【国際公開番号】WO2010/136511
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】