説明

シラン末端プレポリマー及び関連する接着剤シーラント組成物

少なくとも1個のケイ素原子上に、少なくとも1個の加水分解性アリールオキシ型官能基を含むシラン末端プレポリマー。シリル−アリールオキシ末端基を含むこれらのプレポリマーを接着剤シーラント組成物において使用すると、これらの反応性が増大する。これによって、ほとんどの場合毒性を生じかつ酸化触媒として作用する金属系触媒の使用を回避することが可能となるか、あるいはその量を従来の組成物において使用される標準的な量と比較して減少させることが可能となるが、さらに公知のシラン末端プレポリマーに基づく組成物よりも架橋時間の大幅な短縮が保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン末端プレポリマー及び前記プレポリマーを含有する湿気硬化型接着剤シーラント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン末端プレポリマーは、主鎖を形成するための公知タイプの重合反応を行い、その主鎖上にシラン官能基が続いて導入されることにより得られるものであるが、そのシラン官能基自体はアルコキシ基などの加水分解可能な一官能性置換基により置換される。これらのシラン基は、好適な触媒の存在下において大気中の湿気との反応により、互いに加水分解し、結合して、シロキサン結合を形成し、これによりプレポリマーを架橋させて、流体状態からゴム状態へと移行する。
【0003】
様々な分類のシラン末端プレポリマーが知られている。例えば、以下のものが挙げられる。
A)特許文献1及び2に記載されるような、シラン末端ポリエステル、
B)特許文献3及び4に記載されるような、シラン末端ポリウレタン、
C)特許文献5乃至9に記載されるような、主鎖がポリエーテルであり、該ポリエーテルは続いてシラン基、Si(OR)(式中、Rは加水分解性基、主にアルキル基である)を含む分子と反応させたシラン末端プレポリマー、
D)本出願人名義のものである特許文献10及び11に記載されているシラン末端プレポリマーであって、ポリマー主鎖が、少なくとも2つの活性水素を含む有機誘導体と、各不飽和に対するアルファ位における電気陰性基の存在により活性化される少なくとも2つのオレフィン性不飽和を有する有機化合物とのマイケル重付加反応(Michael polyaddition reaction)により得られるもの。
【0004】
前記シラン末端プレポリマー種のうち4種すべてにおいてケイ素上に存在する加水分解性基は性質が異なり得るが、形成されるアルコールの中性及び揮発性の性質により、最も注目される基はアルコキシ基である。しかし、市販の製品に関しては、存在する唯一のアルコキシ基はメトキシである。その理由は、この基の加水分解反応は非常に急速であるからである。この基の加水分解反応により、特にその高い揮発性のために非常に毒性が高いメタノールが多量に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,191,714号
【特許文献2】米国特許第4,310,640号
【特許文献3】米国特許第4,656,816号
【特許文献4】米国特許第6,197,912号
【特許文献5】米国特許第5,051,463号
【特許文献6】米国特許第4,507,469号
【特許文献7】米国特許第4,444,974号
【特許文献8】米国特許第3,971,751号
【特許文献9】欧州特許第0844266A2号
【特許文献10】米国特許第6,221,994号
【特許文献11】国際公開第WO03/082958号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、より多くの炭素原子を含むもの、例えばエトキシでこの基を置換すると、架橋反応が大幅に減速し、したがって架橋触媒の量を増やす必要性が生じる。
【0007】
前記プレポリマーの架橋を加速するために使用される触媒は、通常、スズ又は最終製品の酸化的分解サイクルをもたらすというさらなる欠点が生じる他の非常に毒性の高い重金属の塩である。
【0008】
したがって、前記欠点を生じないシラン末端プレポリマーを見出す必要性が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、少なくとも1個のケイ素原子上に少なくとも1個の加水分解性アリールオキシ型官能基を提供することにより特徴づけられるシラン末端プレポリマーを予想外に見出した。
【0010】
この点において、本出願人は、驚くべきことに、これらのアリールオキシ末端プレポリマーを接着剤シーラント組成物において用いることで、その反応性が増大し、毒性のある金属塩系触媒の使用を回避することを可能とし、あるいは、いずれにしても従来の組成物において通常用いられる量に比較して大幅にその量を減少させることを可能とし、その上、短い架橋時間が保証されることを見出した。
【0011】
さらに、アリールオキシ基を導入することにより、エトキシ−シリル末端プレポリマー(またはさらに高分子量のアルコキシ基)の反応性を増加させることができ、かくして接着剤及びシーラント製品を創生する際にこれらプレポリマーは有用であり、したがって、製品使用時に有毒なメタノールを放出するメトキシ基を含有するシラン末端プレポリマーの使用が回避される;実際、エトキシ−末端プレポリマーは大気中の湿気に対して反応性に乏しいことが知られており、非常に揮発性が高くかつ有毒なメタノールの放出は、当該分野においてますます問題であると感じられている。
【0012】
さらに、架橋段階での低分子量アルコキシ基(例えばメトキシ)の好適なアリールオキシ基での置換も、製品使用時において大気中に放出されるVOCの量が大幅に減少する点で環境への影響がより少ない。
【0013】
したがって、また、本発明は、前記シランプレポリマーを含有する湿気硬化型接着剤シーラント組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「アリールオキシ」とは、置換されてもよいフェノキシ基、又は、少なくとも1個の他の芳香環(例えば、ナフチルオキシ)が縮合されている、置換されてもよいフェノキシ基として定義される。
【0015】
好ましくは、アリールオキシ基は、フェノキシ、o−及び/又はm−及び/又はp−位が直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、アルキルアリール(例えば、クミル)、アルコキシ、フェニル、フェノキシ、置換フェニル、チオアルキル、ニトロ、ハロゲン、ニトリル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、NH、NHR基(ここで、Rは直鎖状又は分岐状のC−Cアルキル又はフェニル)で置換されたフェノキシから選択される。
【0016】
なお一層好ましくは、アリールオキシ基は、フェノキシ、直鎖状又は分岐状のp−C1−C12アルキルフェノキシ、フェニル−フェノキシから選択される。
【0017】
特に好ましい実施形態によると、アリールオキシ基は、フェノキシ、p−t−ブチル−フェノキシ、p−ノニルフェノキシ、p−ドデシルフェノキシ、p−t−アミルフェノキシ、p−t−オクチルフェノキシ、p−クミルフェノキシ、3,5−キシレンオキシ、ジ−sec−ブチルフェノキシ、2−sec−4−tert−ブチルフェノキシ、2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ、オルト−クミル−オクチルフェノキシ、3,4−(メチレンジオキシ)−フェノキシ、4’−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボニトリル、4−フェノキシフェノキシ、ポリフェニレンオキサイドフェノキシ末端、4−フェニルフェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシから選択される。
【0018】
いずれの場合であっても、高沸点アリールアルコールを産生することができ、したがってVOC放出が低いアリールオキシ基が好ましい。
【0019】
本発明のシラン末端プレポリマーにおけるアリールオキシ基は、好ましくは、前記シラン末端プレポリマーの全ケイ素原子上に存在する加水分解性置換基の全モル数基準で、0.5〜100モル%の量、より好ましくは5〜100モル%の量で存在する。
【0020】
本発明により当該シラン末端プレポリマーを調製するのに用いられる有機ケイ素誘導体は次の一般式(1)を有することが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
[式中、a=0、1、2;b=0、1であり、かつ、X=アリールオキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、ケトキシイミノ、アミノ、アミド及びメルカプト、
=直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、
=直鎖状又は分岐状のC−C20アルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アミノアルキレン、アルキレンチオエーテル及びアルキレンオキシエーテルからなる群から選択される二価の置換基;
Z=
【化2】


(式中、R’’は一価の炭化水素基、又は窒素原子を有するヘテロシクロアルキルを形成することができる一価の基を表す。)
から選択される置換基である。]
【0023】
本発明にしたがってシラン末端プレポリマーを調製するためには、Xが常にアリールオキシとは異なる有機ケイ素誘導体を用いることができる。
【0024】
続いて、このようにして得られたシラン末端プレポリマーを、対応するアリールアルコールとの反応により、本発明のシラン末端プレポリマーに変換する。
【0025】
好ましくは、本発明において用いられる有機ケイ素誘導体は次の式を示す。
O=C=N−R−Si(R(OR3−a (1a)
N−R−Si(R(OR3−a (1b)
O[CH−CH]−CH−O−R−Si(R(OR3−a (1c)
HS−R−Si(R(OR3−a (1d)
CH=C(R)−COO−R−Si(R(OR3−a (1e)
HL−R−Si(R(OR3−a (1f)
【0026】
(式中、
=1〜8個の炭素原子を含む二価のアルキルラジカル;
及びR=1〜4個の炭素原子を含むアルキルラジカル、及び/又はアリールラジカル;
Lは、少なくとも1個の窒素原子を含む5員又は6員飽和複素環の二価の基;
a=0、1、2。)
【0027】
本明細書において、「アリールラジカル」とは、置換されてもよいフェニル、又は、少なくとも1つの他の芳香環(例えば、ナフチル)が縮合されている、置換されてもよいフェニルを意味する。
【0028】
好ましくは、アリール基は、フェニル、o−及び/又はm−及び/又はp−位が直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、アルキルアリール(例えば クミル)、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、チオアルキル、ニトロ、ハロゲン、ニトリル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、NH、NHR基(ここで、Rは直鎖状又は分岐状のC−Cアルキル又はフェニル)で置換されていてもよいナフチルから選択される。
【0029】
なお一層好ましくは、当該アリール基は、フェニル、直鎖状又は分岐状のp−C−C12アルキルフェニル、p−フェニル−フェニルから選択される。
【0030】
特に好ましい実施形態によると、当該アリール基は、p−t−ブチル−フェニル、p−ノニルフェニル、p−ドデシルフェニル、p−t−アミルフェニル、p−t−オクチルフェニル、p−クミルフェニル、3.5−キシレニル、ジ−sec−ブチルフェニル、2−sec−4−tert−ブチルフェニル、2,4−ジ−tert−アミルフェニル、オルト−クミル−オクチルフェニル、3,4−(メチレンジオキシ)−フェニル、4’−ビフェニル−4−カルボニトリル、4−フェノキシフェニル、ポリフェニレンオオキサイドフェニル末端、4−フェニルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルから選択される。
【0031】
好ましくは、Lはピペラジンの二価残基である。
【0032】
特に好ましい実施形態によると、本発明のシラン末端プレポリマーを調製するために使用される有機ケイ素誘導体は、以下のものから選択される。
【0033】
1.(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、
2.(3−メルカプトプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
3.(3−メルカプトプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
4.(3−メルカプトプロピル)トリフェノキシシラン、
5.(3−メルカプトプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン
6.(3−メルカプトプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
7.(3−メルカプトプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
8.(3−メルカプトプロピル)メチル−ジメトキシシラン、
9.(3−メルカプトプロピル)メチル−メトキシ−フェノキシシラン、
10.(3−メルカプトプロピル)メチル−ジフェノキシシラン、
11.(3−メルカプトプロピル)メチル−メトキシptbutフェノキシシラン、
12.(3−メルカプトプロピル)メチル−ジptbutフェノキシシラン、
13.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、
14.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
15.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
16.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)トリフェノキシシラン、
17.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン、
18.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
19.(3−[メタ]アクリルオキシプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
20.(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、
21.(3−アクリルオキシプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
22.(3−アクリルオキシプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
23.(3−アクリルオキシプロピル)トリフェノキシシラン、
24.(3−アクリルオキシプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン、
25.(3−アクリルオキシプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
26.(3−アクリルオキシプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
27.(N−nブチル,3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、
28.(N−nブチル,3−アミノプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
29.(N−nブチル,3−アミノプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
30.(N−nブチル,3−アミノプロピル)トリフェノキシシラン、
31.(N−nブチル,3−アミノプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン、
32.(N−nブチル,3−アミノプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
33.(N−nブチル,3−アミノプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
34.(N−エチル,3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、
35.(N−エチル,3−アミノプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
36.(N−エチル,3−アミノプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
37.(N−エチル,3−アミノプロピル)トリフェノキシシラン、
38.(N−エチル,3−アミノプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン、
39.(N−エチル,3−アミノプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
40.(N−エチル,3−アミノプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
41.(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、
42.(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシフェノキシシラン、
43.(3−グリシドキシプロピル)メトキシジフェノキシシラン、
44.(3−グリシドキシプロピル)トリフェノキシシラン、
45.(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシ−ptbutフェノキシシラン、
46.(3−グリシドキシプロピル)メトキシ−ジptbutフェノキシシラン、
47.(3−グリシドキシプロピル)トリptbutフェノキシシラン、
48.N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、
49.N−[3−(ジメトキシ−フェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
50.N−[3−(メトキシ−ジフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
51.N−[3−(トリフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
52.N−[3−(ジメトキシ−ptbutフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
53.N−[3−(メトキシ−ジptbutフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
54.N−[3−(トリptbutフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
55.N−[3−(トリエトキシ−シリル)プロピル]ピペラジン、
56.N−[3−(ジエトキシ−フェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
57.N−[3−(エトキシ−ジフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
58.N−[3−(ジエトキシ−ptbutフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
59.N−[3−(エトキシ−ジptbutフェノキシシリル)プロピル]ピペラジン、
60.N−[(トリエトキシ−シリル)メチル]ピペラジン、
61.N−[(ジエトキシ−ptbutフェノキシシリル)メチル]ピペラジン、
62.N−[(ジエトキシ−メチルシリル)メチル]ピペラジン、
63.N−[(エトキシ−メチル−ptbutフェノキシシリル)メチル]ピペラジン。
【0034】
本発明のシラン末端プレポリマーは、好ましくは前述の(A)、(B)、(C)及び(D)の類から選択され、より好ましくは(D)、即ち、特許文献10及び11(本出願人名義のものであり、両文献全体を参照により本明細書に援用される。)に記載されているものから選択され、ここでポリマー主鎖は、少なくとも2個の活性水素原子を含む有機誘導体と、少なくとも2つの二重結合(該二重結合のそれぞれに対するアルファ位における電気陰性基の存在により活性化されている二重結合)を有する有機化合物とのマイケル重付加反応により得られるものである。
【0035】
本発明によってシラン化されるのに有用なマイケル重付加直鎖状ポリマーの構造は、例えばスキーム(2)及びスキーム(3)に示されるようにして調製できる。
【0036】
【化3】

【0037】
式中、
【化4】


は2個の活性化二重結合を有する有機化合物であり、nは1以上の整数であり、HTHは少なくとも2個の活性水素原子を有する有機誘導体である。
【0038】
二より多い活性化二重結合及びHTHを有する少なくとも1つのモノマーから調製され、かつ該モノマー間の比に基づいて異なる末端官能基により特徴づけられる、本発明によりシラン化されるのに有用な分岐状マイケル重付加ポリマーの構造のさらなる例は、スキーム(4)及びスキーム(5)(ここで、この具体例におけるHTH化合物は硫化水素である。)においてと同様に説明できるが、これは現実的な試みではなく、またあり得ない。
【0039】
【化5】

【0040】
式中、
【化6】


は2個の活性化二重結合を有する任意の有機化合物であり、nは1以上の整数であり、
【化7】

は3個の活性化二重結合を有する任意の有機化合物であり、nは1以上の整数であり、かつ、c=3。
【0041】
図示することが明らかに困難なために、2より多い活性化二重結合を有するモノマー及び2より多い官能基を有するモノマーと2以上の官能基を有するモノマーとの組み合わせを用いて得ることができる分岐状構造のすべてを本明細書に記載しているわけではない。しかし、本発明に関して、有機ケイ素誘導体、好ましくは式(1)のシランを用いたその後のシラン化に有用な末端官能基を有する粘稠性流動ポリマーを製造できる、様々な官能性を有するモノマーの任意の組み合わせが(任意の温度で、したがってそのゲル化点より低い温度で)有用であることは明らかである。前記ポリマーの平均分子量は、モノマー間の比に基づいてあらかじめ選択され、かつ、モノマー自体の性質及びポリマーの予定される最終用途に基づいて選択される。その平均分子量の値は200ダルトン〜60000ダルトンの間である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2個の活性化二重結合を有するマイケル重付加に有用な有機化合物は、以下のものから選択される。
【0043】
W’[−C(R)=CH (9)
Q[−W−C(R)=CH (9a)
Q[−W−C(R)=CH (9b)
Q[−W−C(R)=CH (9c)
【0044】
(式中、
W’=−SO−、−SO−、−O−、及び−CO−からなる群から選択される電子吸引基;
W=−SO−、−SO−、−O−、−CO−、及び−O−CO−からなる群から選択される電子吸引基;
=−H又は−CH
Q=繰り返し単位を含み得るので様々な分子量を有する、炭化水素、ヘテロ炭化水素、ポリエーテル、ポリエステルラジカルから選択される二価、三価又は四価の基。)
【0045】
特に好ましい実施形態においては、アクリル及び/又はメタクリル有機化合物は一般式(10)を有する。
【0046】
【化8】

【0047】
[式中、m=2、3、4;R=H又はCH;Rは、化学的に結合した−OR−単位から実質的になる二価、三価又は四価のポリエーテル(ここで、Rは2〜4個の炭素原子を有する二価のアルキル基である。);好ましくは1〜50個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の、直鎖状又は分岐状の脂肪族アルキルラジカル;好ましくは6〜200個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の芳香族ラジカル;好ましくは6〜200個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の、直鎖状又は分岐状のアリールラジカルからなる群から選択されるか、あるいはRは前記ポリエーテル、アルキルラジカル、芳香族ラジカル及びアリールラジカルの1又はそれ以上の組み合わせである。]
【0048】
少なくとも2個の活性化アルキレン結合を有する有機化合物の構造は、以下の通り例示される。
【0049】
C=C(R)−SO−C(R)=CH
C=C(R)−SO−C(R)=CH
C=C(R)−O−C(R)=CH
CHCHC[CHO−CO−C(R)=CH
C[CHO−CO−C(R)=CH
O{CHC(C)(CHO−CO−C(R)=CH
C=C(R)−CO−O−Ph−C(CH−Ph−O−CO−C(R)=CH
C=C(R)−CO−OCHCHO−CO−C(R)=CH
C=C(R)−CO−OCHCH(CH)CHO−CO−C(R)=CH
C[CH[OCHCH(CH)]OCOC(R)=CH
C=C(R)−CO−O(CHCHO)−CO−C(R)=CH
C=C(R)−CO−O[CHCH(CH)O]−CO−C(R)=CH
CH{CHO[CHCH(CH)O]−CO−C(R)=CH
C=CH−SO−(CHCHO)−CHCH−SO−CH=CH
C=C(R)−CO−O−[R−O−CO−R’−CO−O]−R−O−CO−C(R)=CH
【0050】
(式中、R=H又はCH;R及びR’=アルキル又はアリールラジカル。)
【0051】
好ましくは、マイケル重付加に有用な、少なくとも2個の活性化二重結合を有する有機化合物は、ジ−、トリ−及びテトラ−アクリレート;ジ−、トリ−及びテトラ−メタクリレート;ジ−、トリ−及びテトラ−ビニルスルホンから選択される。
【0052】
本発明によると、最も好ましいジアクリレート及びジメタクリレート有機化合物は、一般式(11)
【化9】


(式中、
=H又はCH;R10は、−CH−CH(CH)−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、及び−CH−CH(CH)−CH−からなる群から選択され;n’=1〜400、好ましくは1〜200、なおより好ましくは1〜50の整数。)
の化合物;、及び、
【0053】
式:
【化10】


(式中、nは0〜10の整数であり、R7はH又はCHである。)
の化合物
からなる群から選択される。
【0054】
式(11)の特に好ましい化合物は、Rが水素であり、R10が、−CH−CH(CH)−、及び−CHCHCHCH−、即ちポリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリブチレングリコールジアクリレートから選択される化合物である。
【0055】
有機トリアクリレート及びトリメタクリレートのうちで、好ましいのは、
【化11】


(式中、R7=H又はCH3であり;n’’=0〜400、好ましくは0〜200、なおより好ましくは0〜50の整数である。)である。
【0056】
ビニルスルホン有機化合物のうち好ましいのは、
【化12】


(式中、R11は、CH−CH(CH)−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−から選択され;n’’’=0〜400、好ましくは0〜200、なおより好ましくは0〜50の整数。)である。
【0057】
式H−T−Hの化合物は、少なくとも2個の活性水素原子を有する有機化合物である。
【0058】
かかる化合物は、好ましくは、硫化水素、HS(CHSH、HSPhSH、CH(CHNH、HN(Ph)NH、ピペラジン、HN(CHNH、CHNH(CHNHCH、CH(COOH)から選択される。
【0059】
本発明のシラン末端プレポリマーの調製のいくつかの例について、前記プレポリマーの架橋試験とともに、限定するものではない説明により記載し、さらに、シラン末端プレポリマーを含むが、アリールオキシ基を含まない組成物のものと比較する。
【実施例】
【0060】
[比較例]
(比較例A)
<トリメトキシ−シリル末端プレポリマーの合成>
反応を、機械的撹拌を備えた約300リットル容量のスチール製リアクター中で行う。
2.45kgのピペラジン(28.442モル)を、192.20kg(46.685モル)のポリプロピレングリコールジアクリレート[数平均分子量<Mn>=4117g/mol(ドデシルメルカプタンを用いた二重結合の滴定による)を有する]に、撹拌下、かつ38.44kgのフタル酸ジオクチルの存在下で添加する。反応を、80℃で14時間、すなわち、H−NMR分析によりピペラジンNH基に対してアルファ位でのメチレンに対応する2.84ppmの三重項が消失すること(NH基が全て変換されること)が確認されるまで行う。このようにして得られた二重結合末端プレポリマーを、二重結合濃度分析に供試すると、<Mn>=10456g/molに等しい分子量を示した。その後に、9.71kg(39.09モル)のN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジンを、撹拌下、T=90℃、乾燥窒素雰囲気中でゆっくりと添加する。
【0061】
9時間後、H−NMR分析により、5.6ppm〜6.5ppmの領域でアクリル二重結合に相応するシグナルが完全に消失していることが確認され、所望の生成物が得られる。
【0062】
このようにして得られたプレポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で11600mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0063】
(比較例B)
<トリエトキシ−シリル末端プレポリマーの合成>
機械的撹拌を備えた30リットル容量のガラス製リアクター中で反応を行う。
【0064】
180.93g(2.10モル)のピペラジンを14.32kg(3.60モル)のポリプロピレングリコールジアクリレート(<Mn>=3977g/モル(二重結合の滴定による)を有する)に、撹拌下かつ2.86kgのフタル酸ジオクチルの存在下で添加する。反応を80℃で14時間、すなわち、H−NMR分析によりピペラジンNH基の総変換が確認されるまで行う。二重結合の滴定により、<Mn>=11312に等しい分子量を示した。
【0065】
781.8g(2.69モル)のN−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジンシランを、このようにして得られたプレポリマーに、T=90℃、撹拌下、かつ乾燥窒素雰囲気中で添加する。
【0066】
9時間後、H−NMR分析により、5.6ppm〜6.5ppmの領域のアクリル二重結合に相応するシグナルが完全に消失したことが確認され、所望の生成物が得られる。
【0067】
このようにして得られたプレポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で9400mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0068】
(比較例C)
<トリメトキシ−シリル末端プレポリマー組成物の調製>
100重量部のマイケル重付加ポリマー(比較例A)を、100部の炭酸カルシウム(乾燥機中であらかじめ乾燥したもの)、10部の二酸化チタン、0.5部の酸化防止剤、水スカベンジャーとして10部のビニルトリメトキシシラン、及び所望のレオロジー特性に応じて変化させる量のポリアミドワックスと混合する。プラネットミキサー中、窒素雰囲気下で混合を行い、混合物を80℃で2時間加熱する。次に、触媒DBTL(表3参照)及び接着促進剤として1部の3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加する。このようにして得られたチキソトロピー流体を脱気し、金属パウチ中に投入する。この金属パウチ中では長時間にわたってその特性に著しい変化もないままである。
【0069】
大気中の湿気にさらされた場合、生成物は、添加された触媒の量に応じて弾性非粘着性の膜を形成し、物質の厚さに応じて24時間未満で完全に硬化する。
【0070】
硬化した生成物は以下の機械的特性を有する。
ショアA硬度=35、
破断点伸び>130%、及び、
100%での弾性率=1.0Mpa。
【0071】
(比較例D)
<トリエトキシ−シリル末端プレポリマー組成物の調製>
100重量部のマイケル重付加ポリマー(比較例B)を、100部の炭酸カルシウム(乾燥機中であらかじめ乾燥したもの)、10部の二酸化チタン、0.5部の酸化防止剤、10部の水スカベンジャーとしてのビニルトリエトキシシラン及び種々の量のポリアミドワックスと混合する。混合をプラネットミキサー中、窒素雰囲気下で行い、混合物を80℃で3時間加熱する。次に、触媒DBTL(表3参照)及び接着促進剤として1部のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加する。このようにして得られたチキソトロピー流体を脱気し、金属パウチ中に投入する。この金属パウチ中では長時間にわたってその特性に著しい変化もないままである。
【0072】
大気中の湿気にさらされると、生成物は添加される触媒の量に応じて弾性非粘着性の膜を形成し、物質の厚さに応じて24時間未満で完全に硬化する。
【0073】
硬化した生成物は以下の機械的特性を有する。
ショアA硬度=25、
破断点伸び>150%、及び、
100%での弾性率=0.8Mpa。
【0074】
(実施例1)
<ジメトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=66/33)の合成>
1.98g(0.0054モル)のN−[3−(ジメトキシ−p−tertブチルフェノキシ−シリル)プロピル]ピペラジンを、33.06g(0.00257モル)の比較例Aで得た二重結合末端プレポリマー(<Mn>=10728g/molを有する)に添加する。反応を、機械的攪拌器を備えた100mlのガラス製三口フラスコ中で、T=100℃、撹拌下かつ軽度の窒素圧力下で行う。
【0075】
9時間後、反応を終結させ、これはH−NMR分析により確認され、アクリル二重結合に対応するシグナルが完全に消失したことが示される。
【0076】
このようにして得られたプレポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で15300mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0077】
(実施例2)
<メトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=50/50)の合成>
比較例Aで得られた生成物のバッチ(102.01g)を、機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結された250mlのガラス製三口フラスコ中に投入する。温度を110℃にし、4.35gのp−tertブチルフェノール(約50モル%のメトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0078】
反応を、動的真空(1mbar残留)下、激しく撹拌しながら行い、放出されるメタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0079】
8時間後、理論量に等しい量のメタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0080】
このようにして得られたプレポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で15100mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0081】
(実施例3)
<メトキシ/ジ−p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=33/66)の合成>
2.82g(0.00583モル)のN−[3−(メトキシ−ジ−p−tertブチルフェノキシ−シリル)プロピル]ピペラジンを、35.68g(0.00278モル)の比較Aで得た二重結合末端プレポリマー(<Mn>=10728g/モルを有する)に添加する。
【0082】
T=100℃、窒素ヘッド下、かつ機械的撹拌をしながら、100mlの三口フラスコ中で反応を行う。
【0083】
9時間後、反応は完了し、これはH−NMR分析により確認され、アクリル二重結合に対応するシグナルが完全に消失したことが示される。
【0084】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で17800mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0085】
(実施例4)
<メトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=25/75)の合成>
比較例Aで得られた生成物のバッチ(140.71g)を、機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結した250mlのガラス製フラスコ中に投入する。温度を110℃にし、7.66gのp−tertブチルフェノール(約75モル%のメトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0086】
反応を動的真空(1mbar残留)下、激しく撹拌しながら行い、放出されるメタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0087】
10時間後、理論量と等しい量のメタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0088】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で17200mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0089】
(実施例5)
<p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=0/100)の合成>
比較例Aで得られた生成物のバッチ(28.06g)を、機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結した100mlのガラス製三口フラスコ中に投入する。温度を110℃にし、2.04gのp−tertブチルフェノール(全メトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0090】
反応を動的真空(1mbar残留)下で激しく撹拌しながら行い、放出されるメタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0091】
10時間後、理論量と等しい量のメタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0092】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で20500mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0093】
(実施例6)
<p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(モル/モル=0/100)の合成>
3.33g(0.00554モル)のN−[3−(トリp−tertブチルフェノキシ−シリル)プロピル]ピペラジンを、33.88g(0.00264モル)の比較例Aで得た二重結合末端プレポリマー(<Mn>=10728g/モルを有する)に添加する。
【0094】
反応を、T=100℃、窒素ヘッド下、機械的に撹拌しながら、100mlの三口フラスコ中で行う。9時間後、反応は完了する。
【0095】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で23000mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0096】
(実施例7)
<エトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(40/60)の合成>
比較例Bで得られた生成物のバッチ(138.7g)を、機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結した250mlのガラス製三口フラスコ中に投入する。温度を110℃にし、5.56gのp−tertブチルフェノール(60モル%のエトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0097】
反応を、動的真空(1mbar残留)下、激しく撹拌しながら行い、放出されたエタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0098】
8時間後、理論量と等しい量のエタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0099】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で11300mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0100】
(実施例8)
<エトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(25/75)の合成>
機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結した500mlのガラス製三口フラスコ中に、比較例Bで得られた生成物のバッチ(220.67g)を投入する。温度を110℃にし、11.06gのp−tertブチルフェノール(約75モル%のエトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0101】
反応を動的真空(1mbar残留)下、激しく撹拌しながら行い、放出されたエタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0102】
8時間後、理論量と等しい量のエタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0103】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性があり、23℃で12500mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0104】
(実施例9)
<エトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー(5/95)の合成>
比較例Bで得られた生成物のバッチ(123.77g)を、機械的撹拌を備え、機械的真空ポンプに連結した250mlのガラス製三口フラスコ中に投入する。温度を110℃にし、7.86gのp−tertブチルフェノール(約95モル%のエトキシル基を置換するために必要な量)を添加する。
【0105】
反応を動的真空(1mbar残留)下、激しく撹拌しながら行い、放出されたエタノールを液体窒素トラップ中に集める。
【0106】
9時間後、理論量と等しい量のエタノールが集められれば、反応は完了したものと考えられる。
【0107】
このようにして得られたポリマーは、大気湿度に対して反応性であり、23℃で19500mPasの粘度を有する透明粘稠性流体を呈する。
【0108】
(実施例10)
<メトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー組成物(モル/モル=25/75)の調製>
100重量部のマイケル重付加ポリマー(実施例4)を、100部の炭酸カルシウム(乾燥機中であらかじめ乾燥したもの)、10部の二酸化チタン、0.5部の酸化防止剤、水スカベンジャーとして10部のビニルトリメトキシシラン、及び所望のレオロジー特性に応じて変化させる量のポリアミドワックスと混合する。混合をプラネットミキサー中、窒素雰囲気下で行い、混合物を80℃で2時間加熱する。次に、触媒DBTL又はDBU(表3参照)及び接着促進剤として1.5部の3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加する。このようにして得られたチキソトロピー流体を脱気し、金属パウチ中に投入する。この金属パウチ中では長時間にわたってその特性に著しい変化もないままである。
【0109】
大気中の湿気にさらされると、生成物は添加される触媒の量に応じて弾性非粘着性膜を形成し、物質の厚さに応じて24時間未満で完全に硬化する。
【0110】
硬化した生成物は以下の機械的特性を有する。
ショアA硬度=35、
破断点伸び>150%、及び、
100%での弾性率=1.2Mpa。
【0111】
(実施例11)
<エトキシ/p−tertブチルフェノキシ−シリル末端プレポリマー組成物(5/95)の調製>
100重量部のマイケル重付加ポリマー(実施例9)を、100部の炭酸カルシウム(乾燥機中であらかじめ乾燥もの)、10部の二酸化チタン、0.5部の酸化防止剤、水スカベンジャーとして10部のビニルトリエトキシシラン及び種々の量のポリアミドワックスと混合する。混合は窒素雰囲気下、プラネットミキサー中で行い、混合物を80℃で3.5時間加熱する。次に、触媒DBTL又はDBU(表3参照)及び接着促進剤として2部のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加する。このようにして得られたチキソトロピー流体を脱気し、金属パウチ中に投入する。この金属パウチ中では長時間にわたってその特性に著しい変化もないままである。
【0112】
大気中の湿気にさらされると、生成物は添加される触媒の量に応じて弾性非粘着性膜を形成し、物質の厚さに応じて24時間未満で完全に硬化する。
【0113】
硬化した生成物は以下の機械的特性を有する。
ショアA硬度=30、
破断点伸び>130%、及び、
100%での弾性率=1.0Mpa。
【0114】
<プレポリマーの反応性の評価>
以下は、アリールオキシ基の導入がどのように大気の湿気に対するプレポリマーの反応性を予想外にも増加させるか、また、増加した反応性がより多い置換にどのように相応するかを示す。
【0115】
比較例A及びB並びに実施例1〜9で得られたプレポリマーは、絶乾雰囲気中で保存されるならば、粘度に著しいばらつきもなく、粘稠性流体の形態で安定なままである。しかし、これらの反応性に応じて様々な時間にわたって大気中の湿気にさらされると、シラン基が加水分解反応し、続いてシラノール基が縮合してシロキサン基が形成される結果、ゴム状の固体(ポリマー架橋)に変化する。
【0116】
以下、プレポリマーについて、末端シラン基の加水分解/縮合反応触媒の非存在下の場合と、当該分野において公知の触媒、即ち金属化合物であるジブチルすずジラウレート(DBTL)及びアミン触媒である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)を様々な割合で添加した場合の両方で評価する。
【0117】
約3.5gのポリマー試料を好適な量の触媒(表1及び表2)と窒素雰囲気下で混合し、続いてPTFEディッシュ・タイプ試料ホルダー(直径34mm、高さ5mm)中に入れ;全体を恒温チャンバ(23℃±1℃、相対湿度50%±5%)中に入れる。
【0118】
経時的に表面膜の形成をモニターし、露出表面をポリエチレンシートと接触させることにより、反応性を評価する(表1及び表2)。
【0119】
<組成物の反応性の評価>
比較例C及びD並びに実施例10〜11で得られた組成物は、パウチ中で保存した場合に、チキソトロピー流体の形態で安定なままであり、粘度の著しいばらつきもない。しかし、これらを構成するプレポリマーの反応性に応じて異なる時間にわたり、これらは大気中の湿気にさらされることにより、ゴム状固体(ポリマー架橋)に変化する。
【0120】
以下は、アリールオキシ基を含有するプレポリマーの使用がどのように組成物の反応性を増大させるか、また、これによりどのようにして迅速な硬化速度を維持しつつ、触媒の使用を回避できるか、あるいは標準よりも遙かに少ない量での使用が可能になるかを示す。この事は、市場の要求を満たすものである。この市場の要求により、触媒を多量に使用する欠点を回避しつつ、即効性製品(接着剤分野:不粘着時間20〜30分)が支持される。金属塩が全く無いか、あるいはその量が減少すれば、組成物自体の毒性がより低くなると共に、得られる材料の熱及び紫外線に対する安定性において大きな改善がもたらされ、この特性は当該分野において非常に歓迎される。
【0121】
事実、スズ触媒などの金属塩は、酸化の分解反応を触媒し、非常に毒性が高い製品であって、環境を高度に汚染する。
【0122】
実施例10及び11に記載される製品について、末端シラン基の加水分解/縮合反応触媒が非存在下の場合、また、当該分野で公知の触媒、即ち金属化合物ジブチルすずラウレート(DBTL)及びアミン触媒1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)を実施例10及び11に記載するような様々な割合で添加した場合の両方で評価する。
【0123】
約3.5gの組成物試料をPTFEディッシュ・タイプ試料ホルダー(直径34mm、高さ5mm)中に入れ、全体を温度23℃±1℃及び相対湿度50%±5%に制御されたチャンバ中に入れる。
【0124】
経時的に表面膜の形成をモニターし、露出表面をポリエチレンシートと接触させることにより、反応性を評価する。
表3参照。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素誘導体の添加によりポリマー中にシラン基を導入することによって得られるシラン末端プレポリマーであって、前記シラン末端プレポリマーが、少なくとも1個のケイ素原子上に、少なくとも1個の加水分解性アリールオキシ型の官能基を有することを特徴とするシラン末端プレポリマー。
【請求項2】
前記アリールオキシ基は、置換されていてもよいフェノキシ基、又は、少なくとも1個の他の芳香族環、例えばナフチルオキシが縮合した、置換されていてもよいフェノキシ基から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項3】
前記アリールオキシ基は、フェノキシ、ナフチルオキシ、o−及び/又はm−及び/又はp−位で直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、アルキルアリール、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、チオアルキル、ニトロ、ハロゲン、ニトリル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、NH、NHR基(ここで、Rは直鎖状又は分岐状のC−Cアルキル又はフェニルである)で置換されたフェノキシからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項4】
前記アリールオキシ基は、フェノキシ、p−t−ブチル−フェノキシ、直鎖状又は分岐状のp−C−C12アルキル−フェノキシ、フェニル−フェノキシから選択されることを特徴とする請求項3に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項5】
全てのケイ素原子上に存在する加水分解性置換基の合計モル数に対して、0.5〜100モル%のアリールオキシ基を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項6】
全てのケイ素原子上に存在する加水分解性基の合計モル数基準で5から100モル%の間のアリールオキシ基を含むことを特徴とする、請求項5記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項7】
前記有機ケイ素誘導体は、以下の一般式(1):
【化13】


[式中、a=0、1、2;b=0、1であり、
X=アリールオキシ、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシ、アシルオキシ、ケトキシイミノ、アミノ、アミド及びメルカプトであり、
=直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、
=直鎖状又は分岐状のC−C20アルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アミノアルキレンからなる群から選択される二価の置換基、
Z=
【化14】


(式中、R’’は一価の炭化水素基、又は窒素原子を有するヘテロシクロアルキルを形成できる一価の基を表す。)
からなる群から選択される置換基であるが、ただし、Xが常にアリールオキシと異なる場合に、これらの誘導体を用いて得られる前記シラン末端プレポリマーは、対応するアリールアルコールとの反応により少なくとも1個のケイ素原子上に少なくとも1個のアリールオキシ基を含むシラン末端プレポリマーに変わるものとする。]
を示すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項8】
有機ケイ素誘導体が、以下の式:
O=C=N−R−Si(R(OR3−a (1a)
N−R−Si(R(OR3−a (1b)
O[CH−CH]−CH−O−R−Si(R(OR3−a (1c)
HS−R−Si(R(OR3−a (1d)
CH=C(R)−COO−R−Si(R)a(OR3−a (1e)
HL−R−Si(R(OR3−a (1f)
(式中、
=1〜8個の炭素原子を含む二価のアルキルラジカルであり;
及びR=1〜4個の炭素原子を含むアルキルラジカル及び/又はアリールラジカル;
Lは、少なくとも1個の窒素原子を含む5員又は6員飽和ヘテロ環からなる二価基である。)
を示すものから選択されることを特徴とする請求項7に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項9】
前記アリール基は、置換されていてもよいフェニル、又は、少なくとも1個の他の芳香族環が縮合されている置換されていてもよいフェニルであることを特徴とする請求項8に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項10】
前記アリール基は、フェニル、o−及び/又はm−及び/又はp−位で直鎖状又は分岐状のC−C20アルキル、アルキルアリール(例えば、クミル)、アルコキシ、フェニル、フェノキシ、置換フェニル、チオアルキル、ニトロ、ハロゲン、ニトリル、カルボキシアルキル、カルボキシアミド、NH、NHR基(ここで、Rは直鎖状又は分岐状のC−Cアルキル又はフェニルである)で置換されていてもよいナフチルから選択されることを特徴とする請求項9に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項11】
前記アリールは、フェニル、直鎖状又は分岐状のp−C−C12アルキルフェニル、p−フェニル−フェニルから選択されることを特徴とする請求項10に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項12】
Lは、ピペラジンの二価の残基であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項13】
A)シラン末端ポリエステル、
B)シラン末端ポリウレタン、
C)シラン末端ポリエーテル、
D)シラン末端プレポリマー(ここで、ポリマー主鎖は、少なくとも2個の活性水素を有する有機誘導体と、各不飽和に対するアルファ位における電気陰性基の存在により活性化される少なくとも2個のオレフィン性不飽和を有する有機化合物とのマイケル重付加により得られる。)
から選択されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項14】
前記(D)に属することを特徴とする請求項13に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項15】
前記各不飽和に対するアルファ位における電気陰性基の存在により活性化される少なくとも2つのオレフィン性不飽和を有する有機化合物は、
W’[−C(R)=CH (9)
Q[−W−C(R)=CH (9a)
Q[−W−C(R)=CH (9b)
Q[−W−C(R)=CH (9c)
(式中、
W’=−SO−、−SO−、−O−、−CO−からなる群から選択される電子吸引基;
W=−SO−、−SO−、−O−、−CO−、−O−CO−からなる群から選択される電子吸引基;
=−H又は−CH
Q=繰り返し単位を含むことができ、様々な分子量を有し得る、炭化水素、ヘテロ炭化水素、ポリエーテル、ポリエステルラジカルからなる群から選択される二価、三価、又は四価の基。)
からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項16】
前記各不飽和に対するアルファ位における電気陰性基の存在により活性化される少なくとも2つのオレフィン性不飽和を有する有機化合物は、一般式:
【化15】


[式中、m=2、3、4;R=H又はCH;Rは、化学的に結合した−OR単位(式中、Rは2〜4個の炭素原子を有する二価のアルキル基である)から実質的になる二価、三価又は四価のポリエーテル;好ましくは1〜50個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の直鎖状又は分岐状の脂肪族アルキルラジカル;好ましくは6〜200個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の芳香族ラジカル;好ましくは6〜200個の炭素原子を有する二価、三価又は四価の直鎖状又は分岐状のアリールラジカルからなる群から選択されるか、あるいはRは前記ポリエーテル、アルキルラジカル、芳香族ラジカル及びアリールラジカルの1以上の組み合わせである。]
のアクリル及び/又はメタクリル有機化合物であることを特徴とする請求項14に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項17】
一般式(11)
【化16】

(式中、
=H又はCH;R10は、−CH−CH(CH)−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−からなる群から選択され;n’=1〜400、好ましくは1〜200、なおより好ましくは1〜50の整数)
の化合物;
式:
【化17】

(式中、nは0〜10の整数であり、RはH又はCHである。)
の化合物から選択されることを特徴とする請求項14に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項18】
前記ポリマー(11)が、ポリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリブチレンジアクリレートから選択される請求項17に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項19】
前記少なくとも2個の活性水素を含む有機誘導体が、硫化水素、HS(CHSH、HSPhSH、CH(CHNH、HN(Ph)NH、ピペラジン、HN(CHNH、CHNH(CHNHCH、CH(COOH)から選択されることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載のシラン末端プレポリマー。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の少なくとも1つのシラン末端プレポリマーを含む湿気硬化型接着剤シーラント組成物。

【公表番号】特表2010−503745(P2010−503745A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527836(P2009−527836)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059731
【国際公開番号】WO2008/031895
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509073589)エヌ.ピー.ティ.ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】