説明

シラン末端ポリウレタンポリマー

本発明は、シラン官能性ポリウレタンポリマーに基づいた、湿気硬化組成物における使用に好適な新規なポリマーに関する。前記組成物は、特に接着剤、封止物質またはコーティングとして使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性接着剤、封止剤およびコーティングにおいて使用される、シラン末端ポリウレタンポリマーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマーに基づく湿気硬化組成物は、弾性接着剤、封止剤およびコーティングとしてしばらく使用されてきた。それらはイソシアネート基を含まないため、毒物学的な視点から、イソシアネートを含むポリウレタン組成物に対して好ましい代替物を構成する。
【0003】
使用される湿気反応性ポリマーは、たいてい、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーと、イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの有機基を有するシランとの反応から得ることができる、シラン末端ポリウレタンポリマーである。シランは通常アミノ-またはメルカプトシランである。このようなシラン末端ポリウレタンポリマー、接着剤、封止剤およびコーティングとしてのその使用、ならびにこのようなポリウレタンポリマーを含む組成物は、広く知られており、先行技術に記載されている。
【0004】
同時に、メルカプトシランを用いて調製されるシラン官能性ポリウレタンポリマーは、非常に不快な臭気の欠点を有する。アミノシランを用いて調製されるシラン官能性ポリウレタンポリマーは、たいてい、比較的少ない伸び、および特に蓄熱後の不十分な保存安定性を有する。さらに、それらはたいてい好ましくない高い粘度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5364955号
【特許文献2】米国特許第6599354 B1号
【特許文献3】国際公開第02/48228 A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、接着剤、封止剤およびコーティングにおける使用のためのシラン官能性ポリウレタンポリマーを提供することであり、これは先行技術と比較して改善された、または少なくとも同等の特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、請求項1に記載したポリマーがこの目的を達成することが分かった。
【0008】
このようなポリマーは、湿気硬化組成物におけるシラン末端ポリウレタンポリマーとしての使用に非常に好適である。新規なシラン末端ポリウレタンポリマーの使用の1つの利点は、その調製のための原料および出発物質の広い選択肢をそれらが使用することができることである。さらなる要因は、発明の組成物は臭気がなく、優れた保存安定性を有することである。
【0009】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一の態様において、本発明は式(I)のポリマーを提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、R1基は、1から12個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、直鎖または分岐状の一価のヒドロカルビル基である。
【0013】
R2基は、1から12個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、アシル基あるいは直鎖または分岐状の一価のヒドロカルビル基である。
【0014】
数aは0、1または2の値である。
【0015】
より詳しくは、R2基は、独立に、メチル基またはエチル基またはイソプロピル基であり、数aは0または1、特に0の値である。
【0016】
さらに、R3基は、1から12個の炭素原子を有する、直鎖または分岐状の一価のヒドロカルビル基である。より詳しくは、R3基は、メチル基またはエチル基である。
【0017】
Xは、1から6個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のヘテロ原子、ならびに任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、直鎖または分岐状の二価のヒドロカルビル基である。より詳しくは、Xは、メチレン基、n-プロピレン基、3-アザ-n-ヘキシレン基、または3-アザ-n-ペンチレン基である。
【0018】
Zは、m個のイソシアネート基を除いた後の、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPURのm価の基である。
【0019】
数mは、1から4の値である。より詳しくは、数mは、1または2の値である。
【0020】
式(I)のポリマーにおけるシラン基の中で、R1およびR2は、それぞれ独立に、記載された基である。例えば、エトキシジメトキシシラン末端基である末端基を有する式(I)のポリマー(R2=メチル、R2=メチル、R2=エチル)も可能である。
【0021】
本明細書において「ポリ」で始まる物質名、例えばポリオールまたはポリイソシアネートは、正式に、分子あたり、その名称に生じる2つ以上の官能基を含む物質を示す。
【0022】
本明細書における用語「ポリマー」は、第一に、化学的に均質であるが、重合度、モル質量および鎖長に関して異なっており、重反応(poly reaction)(重合、重付加、重縮合)によって調製される高分子の集合体を包含する。この用語は、第二に、このような重反応からの高分子、つまり所定の高分子への官能基の反応、例えば付加または置換によって得られる化合物の集合体の誘導体も包含し、これは化学的に均質であってもよく、化学的に不均質であってもよい。この用語は、いわゆるプレポリマー、つまり官能基が高分子の形成において含まれる、反応性のオリゴマーの予備的な付加物も包含する。
【0023】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネートの重付加プロセスによって調製された全てのポリマーを包含する。これには、事実上または全体的にウレタン基を含まないポリマーも含まれる。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌネートおよびポリカルボジイミドである。
【0024】
本明細書において、用語「シラン」および「オルガノシラン」は、第一に、Si-O結合を介してケイ素原子に直接結合した、少なくとも1つ、典型的には2から3つのアルコキシ基またはアシルオキシ基を有し、第二に、Si-C結合を介してケイ素原子に直接結合した、少なくとも1つの有機基を有する化合物を示す。このようなシランは、オルガノアルコキシシランまたはオルガノアシルオキシシランとして、当業者によく知られている。
【0025】
対応して、用語「シラン基」は、Si-C結合を介して有機基に結合したケイ素を含む基を表す。シラン、またはそのシラン基は、湿気と接触して加水分解する特性を有する。これはオルガノシラノール、つまり1つ以上のシラノール基(Si-OH基)を含むオルガノケイ素化合物を形成し、続いての縮合反応によって、オルガノシロキサン、つまり1つ以上のシロキサン基(Si-O-Si基)を含むオルガノケイ素化合物を形成する。
【0026】
用語「シラン官能性」は、シラン基を有する化合物を表す。したがって、「シラン官能性ポリマー」は、少なくとも1つのシラン基を有するポリマーである。
【0027】
「アミノシラン」および「メルカプトシラン」は、それぞれ、有機基がアミノ基およびメルカプト基を有するオルガノシランを表す。「第一級アミノシラン」は、第一級アミノ基、つまり1つの有機基に結合したNH2基を有するアミノシランを表す。「第二級アミノシラン」は、第二級アミノ基、つまり2つの有機基に結合したNH基を有するアミノシランを表す。
【0028】
「分子量」は、本明細書において、常に平均分子量Mn(数平均)を意味するものと理解される。
【0029】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマー(PUR)は、特に、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリイソシアネートとから得ることができる。
【0030】
この転化は、慣習的な方法によって、例えば50℃から100℃の温度で、場合によって好適な触媒をさらに使用して、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって達成することができる。より詳しくは、ポリイソシアネートを、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的過剰量で存在するように計量する。
【0031】
より詳しくは、ポリイソシアネートの過剰量は、ポリオールの全てのヒドロキシル基の転化後に得られるポリウレタンポリマーにおいて、全ポリマーに基づいて、0.1から5質量%、好ましくは0.1から2.5質量%、より好ましくは0.2から1質量%の遊離したイソシアネート基の含有量が残るように選択される。
【0032】
適切な場合、ポリウレタンポリマーPURは、さらに可塑剤を使用して製造されることができ、この場合、使用される可塑剤はイソシアネートに対して反応性であるいかなる基も含まない。
【0033】
特定の含有量の遊離したイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPURが優先され、これは、1.5:1から2.2:1のNCO:OHの比での、高分子量ジオールとジイソシアネートとの反応から得られる。
【0034】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPURの調製のための好適なポリオールは、特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオール、ならびにこれらのポリオールの混合物である。
【0035】
ポリオールは、好ましくは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールである。
【0036】
ポリオキシアルキレンポリオールまたはオリゴエテロール(oligoetherol)としても知られている好適なポリエーテルポリオールは、特に、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物の重合生成物であり、これは場合によって、2つ以上の活性水素原子を有するスターター分子(starter molecule)、例えば水、アンモニアまたは複数のOHもしくはNH基を有する化合物、例えば1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、ならびに前述の化合物の混合物を用いて重合されてもよい。例えば、いわゆる二重金属シアニド(double metal cyanide)錯体触媒(DMC触媒)を用いて調製される、低い不飽和度(ASTM D-2849-69で測定され、ポリオールの1グラムあたりの不飽和ミリ当量(meq/g)で報告される)を有するポリオキシアルキレンポリオール、または、例えば、NaOH、KOH、CsOHまたはアルカリ金属アルコキシドなどのアニオン性触媒を用いて調製される、高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールのどちらかを使用することができる。
【0037】
特に好適なものは、ポリオキシエチレンポリオールおよびポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、およびポリオキシプロピレントリオールである。
【0038】
特に好適なものは、0.02meq/g未満の不飽和度を有し、1000から30000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、ならびに400から20000g/molの分子量を有するポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシプロピレントリオールである。
【0039】
同様に特に好ましいものは、いわゆるエチレンオキシド末端(「EO-エンドキャップされた」、エチレンオキシドでエンドキャップされた)ポリオキシプロピレンポリオールである。もう1つは特定のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであり、これは例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールを、ポリプロポキシ化反応の完了後にエチレンオキシドでさらにアルコキシル化することによって得られ、したがってこれは第一級ヒドロキシル基を有する。この場合、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオールおよびポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールが優先される。
【0040】
さらなる好適なものは、ヒドロキシル基によって末端化されたポリブタジエンポリオール、例えば1,3-ブタジエンとアリルアルコールの重合によって、またはポリブタジエンの酸化によって調製されたもの、およびそれらの水素化生成物である。
【0041】
さらなる好適なものは、例えばElastogran GmbH、ドイツからのLupranol(登録商標)の商品名で商業的に利用可能な、スチレン-アクリロニトリルでグラフト化されたポリエーテルポリオールである。
【0042】
特に好適なポリエステルポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、知られている方法、より詳しくはヒドロキシカルボン酸の重縮合、あるいは脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸と二価もしくは多価アルコールとの重縮合によって調製されるポリエステルである。
【0043】
特に好適なものは、二価から三価のアルコール、例えば1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、または前述のアルコールの混合物と、有機のジカルボン酸またはそれらの無水物もしくはエステル、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、二量体の脂肪酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、およびトリメリット酸無水物、または前述の酸の混合物とから調製されたポリエステルポリオール、ならびにラクトン、例えばε-カプロラクトンからのポリエステルポリオールである。
【0044】
ポリエステルジオール、特にジカルボン酸としてアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、二量体の脂肪酸、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸から、またはラクトン、例えばε-カプロラクトンから、かつ二価のアルコールとしてエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、二量体の脂肪酸ジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールから調製されるものが、特に好適である。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとして特に好適なものは、例えば、ポリエステルポリオールを形成するために使用した前述のアルコールと、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、またはホスゲンとの反応によって得ることができる種類のものである。ポリカーボネートジオール、特に非晶質のポリカーボネートジオールが特に好ましい。
【0046】
さらに好適なポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0047】
さらなる好適なものは、ポリ-ヒドロキシ-官能性脂肪および油、例えば天然の脂肪および油、特にヒマシ油、または天然の脂肪および油の化学変性によって得られるポリオール(油脂化学ポリオールとして知られている)、例えば不飽和油のエポキシ化および続いてのカルボン酸またはアルコールによる開環によって得られるエポキシポリエステルまたはエポキシポリエーテル、あるいは不飽和油のヒドロホルミル化および水素化によって得られるポリオールである。さらに好適なものは、アルコール分解またはオゾン分解などの分解プロセス、および続いての、例えば得られた分解生成物またはそれらの誘導体のトランスエステル化または二量化による化学的結合によって天然の脂肪および油から得られるポリオールである。天然の脂肪および油の好適な分解生成物は、特に、脂肪酸および脂肪アルコール、ならびに脂肪酸エステル、特にメチルエステル(FAME)であり、これらを例えば、ヒドロホルミル化および水素化によって、ヒドロキシ脂肪酸エステルに誘導体化することができる。
【0048】
同様に好適なものは、さらに、オリゴハイドロカーボノール(oligohydrocarbonol)とも呼ばれるポリハイドロカーボンポリオールであり、例は、例えばKraton Polymers、USAにより製造される種類の、ポリ-ヒドロキシ-官能性エチレン-プロピレン、エチレン-ブチレンまたはエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、あるいは1,3-ブタジエンまたはジエンの混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリルまたはイソブチレンなどのビニルモノマーとのポリ-ヒドロキシ-官能性コポリマー、あるいはポリ-ヒドロキシ-官能性ポリブタジエンポリオール、例えば1,3-ブタジエンとアリルアルコールとを共重合することによって調製され、水素化されていてもよいものである。
【0049】
さらなる好適なものは、例えば、Emerald Performance Materials、LLC、USAからHypro(登録商標) CTBNの名称(以前はHycar)で商業的に利用可能な、エポキシドまたはアミノアルコールから調製されることができる種類のポリ-ヒドロキシ-官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、およびカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーである。
【0050】
これらの挙げたポリオールは、好ましくは、250から30000g/mol、特には1000から30000g/molの平均分子量、および1.6から3個の範囲の平均OH官能基を有する。
【0051】
特に好適なポリオールは、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、およびポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、好ましくはポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール、およびポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0052】
これらの記載したポリオールに加えて、末端のイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを調製する場合、少量の低分子量の二価または多価アルコール、例えば1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体の脂肪アルコール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトールなどの糖アルコール、スクロースなどの糖類、他の高級多価アルコール、前述の二価および多価アルコールの低分子量のアルコキシル化生成物、ならびに前述のアルコールの混合物を使用することが可能である。
【0053】
ポリウレタンポリマーの調製のために使用されるポリイソシアネートは、商業的な脂肪族、脂環式、または芳香族のポリイソシアネート、特にジイソシアネートであってもよい。
【0054】
例えば、これらは、イソシアネート基がそれぞれ脂肪族、脂環式、または芳香脂肪族(arylaliphatic)の炭素原子に結合し、「脂肪族ジイソシアネート」とも呼ばれるジイソシアネート、例えばヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、ドデカメチレン1,12-ジイソシアネート、リシンジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(= イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびペルヒドロジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-ジイソシアネート-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、m-およびp-テトラメチル-キシリレン1,3-ジイソシアネート、m-およびp-テトラメチルキシリレン1,4-ジイソシアネート、ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ナフタレン; ならびにイソシアネート基がそれぞれ芳香族の炭素原子に結合し、「芳香族ジイソシアネート」とも呼ばれるジイソシアネート、例えばトリレン2,4-および2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン4,4‘-、2,4'-および2,2'-ジイソシアネート(MDI)、フェニレン1,3-および1,4-ジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジイソシアネートジフェニル(TODI); 前述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに前述のイソシアネートのあらゆる所望の混合物である。
【0055】
ジイソシアネートは、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、または1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(IPDI)である。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、以下の工程:
i) 式(II)のアミノシランAS
【化2】

を、式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステル
【化3】

と反応させる工程
ii) 工程i)からの反応生成物を、m個のイソシアネート基を有する、イソシアネートを含むポリウレタンポリマーと反応させる工程
を含む、上記の式(I)のポリマーを調製するための方法に関する。
【0057】
R1、R2、R3、X基、ならびに数aおよびmは、既に上で記載されている。
【0058】
式(I)のポリマーを調製するための方法の工程i)における、式(II)のアミノシランASと式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステルとの反応は、0から140℃、好ましくは40から100℃の温度範囲内で好ましくは行われる。比は、一般的には、出発化合物を約1:1の化学量論比で使用するように選択される。
【0059】
反応において、最初にアミノシランASのNH2基への式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステルの付加が存在する。第一級アミノシランとマレイン酸またはフマル酸ジエステルとのこのような反応は、マイケル型付加反応としても表され、当業者に知られている。例えば、それは米国特許第5364955号に記載されており、その全体の開示は参照により本明細書に援用される。
【0060】
付加反応後、アルコールR3-OHの除去を伴う分子間の縮合反応が存在する。これは、式(IV)のピペラジノン誘導体を形成する。
【0061】
【化4】

【0062】
このようなピペラジノン誘導体は、当業者に同様に知られており、例えば米国特許第6599354 B1号に記載されており、その全体の開示は参照により本明細書に援用される。
【0063】
式(II)のアミノシランASと式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステルとの反応は、物質中、他には溶媒、例えばジオキサンの存在下で行われることができる。しかしながら、溶媒のさらなる使用はあまり好ましくない。
【0064】
式(II)の異なるアミノシランASの混合物を、フマル酸および/またはマレイン酸エステルの混合物と反応させることも可能であることが理解される。
【0065】
環化縮合反応において形成されるアルコールR3-OHは、必要な場合、蒸留により反応混合物から除去されることができる。得られる式(IV)のシラン官能性ピペラジノン誘導体は無色の液体であり、アルコールR3-OHの蒸留除去後、蒸留の後処理が一般的に不必要な高純度で得られる。
【0066】
工程i)からの反応生成物と、m個のイソシアネート基を有する、イソシアネートを含むポリウレタンポリマーPURとの反応は、当業者に非常に良く知られている方法で、好ましくは、1:1の、ポリウレタンポリマーPURのイソシアネート基に対する、イソシアネート基に対して反応性であるピペラジノン誘導体の第二級アミノ基の化学量論比で、またはイソシアネート基に対して反応性であるアミノ基がわずかに過剰量で行われ、得られる式(I)のシラン官能性ポリマーは全体的にイソシアネート基を含まない。
【0067】
例えば、工程i)からの反応生成物とポリウレタンポリマーPURとの反応は、0から150℃、特には20から80℃の温度範囲内で行われる。反応時間は、使用される出発物質を含む要因、および選択した反応温度に依存し、反応の経過は、典型的には、IR分光法によってモニターされて、反応の終了を決定する。反応は、好ましくは、反応混合物中に遊離したイソシアネート基がもはや検出されなくなるとすぐに停止する。好ましい実施形態において、この反応に触媒は使用しない。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、シラン官能性ポリマーの調製における、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーまたはポリイソシアネートのための反応相手としての、式(II)のアミノシランAS
【化5】

と、式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステル
【化6】

との反応からの反応生成物の使用に関する。
【0069】
R1、R2、R3、X基および数aは、既に上で記載されている。
【0070】
本発明は、さらに、上記の少なくとも1つの式(I)のポリマーを含む、接着剤、封止剤またはコーティングの製造のための組成物に関する。
【0071】
典型的には、シラン官能性ポリマーは、全組成物に基づいて、10から80質量%の量で、好ましくは15から70質量%の量で存在する。
【0072】
組成物は、好ましくは、少なくとも1つのフィラーをさらに含む。フィラーは、未硬化の組成物のレオロジー特性、ならびに硬化した組成物の機械的特性および表面特性の両方に影響を与える。好適なフィラーは、無機および有機のフィラー、例えば、場合によって脂肪酸、特にステアリン酸でコートされていてもよい、天然の、粉状のまたは沈殿した炭酸カルシウム、硫酸バリウム(BaSO4、バライトまたは重晶石とも呼ばれる)、か焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、特に熱分解プロセスからの微粉化されたシリカ、カーボンブラック、特に工業的に製造されたカーボンブラック、PVCパウダー、あるいは中空球である。好ましいフィラーは、炭酸カルシウム、か焼カオリン、カーボンブラック、微粉化されたシリカ、および難燃性のフィラー、例えば水酸化物または水和物、特にアルミニウムの水酸化物または水和物、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0073】
異なるフィラーの混合物を使用することも全体的に可能であり、有利でさえもあり得る。
【0074】
フィラーの好適な量は、例えば、全組成物に基づいて、20から60質量%、好ましくは30から60質量%の範囲内である。
【0075】
発明組成物は、湿気によって式(I)のポリマーを架橋するための、特に少なくとも1つの触媒をさらに含む。このような触媒は、特に、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセチルアセトネートなどの有機スズ化合物の形態の金属触媒、チタン触媒、アミノを含む化合物、例えば1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタンおよび2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、アミノシラン、ならびに挙げた触媒の混合物である。
【0076】
発明組成物は、さらなる成分を追加でさらに含んでもよい。例えば、このような成分は、例えば有機カルボン酸またはその無水物のエステル、例えばジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、またはジイソデシルフタレートなどのフタレート、ジオクチルアジペートなどのアジペート、アゼレート、およびセバケート、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリエステルポリオールなどのポリオール、有機リン酸エステルおよび有機スルホン酸エステル、あるいはポリブテンなどの可塑剤; 溶媒; 例えばポリエチレンのファイバー; 染料; 顔料; 増粘剤またはチキソトロピー剤、例えば国際公開第02/48228 A2号の9から11ページに「チキソトロピー付与剤(thixotropy endowing agent)」として記載されている種類の尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイトまたはフュームドシリカなどのレオロジー調整剤; 接着促進剤、例えばエポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン(anhydridosilane)、または第一級アミノシランと前述のシランとの付加物、およびアミノシランまたはウレアシランなどの; 架橋剤、例えばシラン官能性オリゴ-およびポリマー; 乾燥剤、例えばビニルトリメトキシシラン、N-(シリルメチル)O-メチルカルバメート、特にN-(メチルジメトキシシリルメチル)O-メチルカルバメートなどのα-官能性シラン、(メタクリロイルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、N-フェニル-、N-シクロヘキシル-およびN-アルキルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム、またはモレキュラーシーブ; 例えば熱、光およびUV照射に対する安定化剤; 難燃性物質; 湿潤剤、レベリング剤、脱気剤、または脱泡剤などの表面活性物質; 殺藻剤、殺菌剤または真菌成長阻害物質などの殺生物剤; ならびに湿気硬化組成物に通常使用されるさらなる物質である。
【0077】
さらに、適切な場合、いわゆる反応性希釈剤を使用することが可能であり、これは組成物の硬化中に、特にシラン基との反応によってポリマーマトリクス中に組み込まれる。
【0078】
組成物中に存在してもよい、挙げた全ての成分、特にフィラーおよび触媒を、組成物の保存安定性がこのような成分の存在によって不利な影響を与えないように選択することが有利であり、これは、組成物の特性、特に適用および硬化特性が、保存の間に、たとえあったとしてもわずかにのみ変化することを意味する。これは、特にシラン基の記載した組成物の化学的な硬化を導く反応が、保存の間に十分な程度に起きないことを意味する。それゆえ、挙げた成分は、たとえあったとしても、保存の間に、せいぜい微量の水の水を含む、または放出することが特に有利である。それゆえ、組成物中にそれらを混合する前に、化学的または物理的に特定の成分を乾燥することが望ましい。
【0079】
上記の組成物は、好ましくは、湿気を排除して製造および保存される。組成物は、典型的には、保存で安定であり、これは、好適な包装または配置、例えばドラム、ポーチ、またはカートリッジにおいて、数ヶ月から最大1年以上の期間にわたって、その性能特性または硬化後のその特性におけるこれらの使用に対して、いかなる程度の変化もなく、湿気を除いて保存され得ることを意味する。
【0080】
組成物の保存安定性は、第一に排除力(expulsion force)によって、第二に皮膜形成時間によって見積もることができる。組成物の保存後の排除力および/または皮膜形成時間の十分な増加は、劣った保存安定性を示す。
【0081】
同様に保存安定性は、組成物の粘度によって、または組成物において使用される式(I)の反応性ポリマーの粘度によって決まり得る。
【0082】
記載した組成物が少なくとも1つの固体または物品に適用される場合、ポリマーのシラン基は湿気と接触する。シラン基は湿気と接触して加水分解される特性を有する。これはオルガノシラノールを形成し、続けて縮合反応によってオルガノシロキサンを形成する。触媒の使用によって加速することができるこれらの反応の結果として、組成物は最終的に硬化する。このプロセスは、架橋としても表される。
【0083】
硬化のために必要とされる水は、大気に由来するか(大気湿度)、他には上記の組成物が、例えば平滑剤を塗ることによって、またはスプレーすることによって水を含む成分と接触するか、例えば静的ミキサーによって混合された水性ペーストの形態で、水を含む成分を適用時に組成物に加えることができる。大気湿度によって硬化する場合、組成物は内部の外側から硬化する。硬化の速度は様々な要因、例えば水の拡散速度、温度、周囲の湿度、および接着形状によって決まり、一般的に硬化が進むにつれて遅くなる。
【0084】
本発明は、接着剤、封止剤またはコーティングとしての、上記の組成物の使用をさらに包含する。
【0085】
発明組成物は、2つの基材S1およびS2を結合するためのプロセスにおいて特に使用され、これは以下の工程:
i’) 上記の組成物を基材S1および/または基材S2に適用する工程;
ii’) 組成物の可使時間内に、適用した組成物を介して基材S1とS2を接触する工程;
iii’) 特に大気湿度の形態の水によって組成物を硬化する工程
を含み、ここで、基材S1およびS2は同じであっても異なっていてもよい。
【0086】
好ましくは、発明組成物は、封止またはコーティングのためのプロセスにおいて使用され、これは以下の工程:
i’’) 上記の組成物を基材S1および/または2つの基材S1とS2との間に適用する工程;
ii’’) 特に大気湿度の形態の水によって組成物を硬化する工程
を含み、ここで、基材S1およびS2は同じであっても異なっていてもよい。
【0087】
好適な基材S1および/またはS2は、特に、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石こう、花崗岩または大理石などの天然石、ガラス、ガラスセラミック、金属または金属合金、木材、プラスチック、および塗料からなる群から選択される基材である。
【0088】
発明組成物は、好ましくは、構造的に粘性の特性を有するペースト状の稠度を有する。このような組成物は、例えば本質的に円または三角形の断面積を有利には有するビーズ(bead)の形態で、好適な装置によって基材に適用される。組成物の適用のための好適な方法は、例えば、手動または圧縮空気によって動作する商業的な標準カートリッジから、あるいは場合によって適用ロボットによって、吐出ポンプまたは押出機によるドラムまたはホボック(hobbock)からの適用である。優れた適用特性を有する発明組成物は、高クリープ抵抗を有し、短いストリングを形成する。これは、適用後に適用された形態が残っていること、つまりたとえあったとしても、適用装置の除去後に離れて流動せず、非常に短いスレッドのみを形成し、基材を汚さないことを意味する。
【0089】
本発明は、さらに、上記の組成物と、特に大気湿度の形態の水との反応によって得ることができる、硬化された組成物に関する。
【0090】
発明組成物で接着結合した、封止された、またはコートされた物品は、建設業または土木工学における建造物または建造された構造、工業的に製造された商品または消費財、特に窓、屋内電気器具、あるいは輸送の方法、特に車両、あるいは車両の設置された成分である。
【実施例】
【0091】
本明細書の以下において、実際の実施例を提示し、これらは詳細に記載された本発明の例示を意図する。本発明は、記載されたこれらの実際の実施例に制限されないことが理解される。
【0092】
(試験方法)
引張強度、破断伸び、および0から100%伸張における弾性係数を、2mmの層厚みを有し、23℃(室温、「RT」)および50%の相対大気湿度で7日間にわたって硬化したフィルムで、DIN EN 53504(引き速度: 200mm/min)で定め、表1で特定される条件下で4週間にわたってさらに保存した。
【0093】
ショアA硬さをDIN 53505で定めた。
【0094】
保存安定性を、様々な保存後の特定のシラン官能性ポリウレタンポリマーの粘度の測定によって定めた。この目的のために、シラン官能性ポリウレタンポリマーを、空気を除いたアルミニウムのチューブに分注した。室温で1日(1d RT)、7日(7d RT)および14日(14d RT)保存後、および60℃のオーブン中で14日(14d 60℃)保存後、20℃における粘度を、Rheotec GmbH、ドイツからの温度制御されたRC30コーン-プレートレオメーター(コーン径 20mm、コーン角 1°、コーンチップとプレートの距離 0.05mm、せん断速度 50s-1)で定めた。
【0095】
(式(IV)のピペラジノン誘導体の調製)
約50℃において、1molのアミノシランを最初に入れ、その後1molのマレイン酸ジエステルを徐々に加えた。混合物を、加える間に約60℃まで加熱した。IRスペクトルにおける2つのC=Oバンド比が変化しなくなるまで(ピペラジノン環におけるC=O振動に対する約1650cm-1、およびアルキルエステル基におけるC=O振動に対する約1750cm-1におけるバンド)、攪拌をこの温度で10時間にわたって続けた。
【0096】
以下のピペラジノン誘導体を調製した。
【0097】
二官能性アミノシラン(Momentive Performance Materials Inc.、USAからSilquest(登録商標) A-1120の商品名で得ることができる)およびマレイン酸ジメチル(Fluka Chemie GmbH、スイスから得ることができる)を有するS-1;
二官能性アミノシラン(Silquest(登録商標) A-1120)およびマレイン酸ジエチル(Fluka Chemie GmbH、スイスから得ることができる)を有するS-2;
三官能性アミノシラン(Momentive Performance Materials Inc.、USAからSilquest(登録商標) A-1130の商品名で得ることができる)およびマレイン酸ジエチル(Fluka Chemie GmbH、スイスから得ることができる)を有するS-3。
【0098】
使用した反応性シランは、上記のピペラジノン誘導体S-1、S-2およびS-3に加えて、以下のシランである(参考例)。
【0099】
S-4: 二官能性アミノシラン(Silquest(登録商標) A-1120);
S-5: アミノシラン(Momentive Performance Materials Inc.、USAからのSilquest(登録商標) A-1110);
S-6: メルカプトシラン(Evonik Degussa GmbH、ドイツからのDynasylan(登録商標) MTMO)。
【0100】
(シラン官能性ポリウレタンポリマーPS-1からPS-6の調製)
窒素雰囲気下で、700gのAcclaim(登録商標) 12200ポリオール(Bayer MaterialScience AG、ドイツ; 低級モノオールポリオキシプロピレンジオール; OH数 11.0mg KOH/g; 含水量 約0.02質量%)、31.7gのイソホロンジイソシアネート(IPDI; Vestanat(登録商標) IPDI、Evonik Degussa GmbH、ドイツ)、85.4gの2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(Eastman TXIB; Eastman Chemical Company、USA)、および0.1gのジ-n-ブチルスズジラウレート(Metatin(登録商標) K 712、Acima AG、スイス)を絶えず攪拌しながら90℃に加熱し、この温度で放置した。1時間の反応時間の後、滴定によって、0.70質量%の遊離したイソシアネート基の含有量を得た。続けて、さらに0.14molの反応性シランを加え、攪拌をさらに2から3時間90℃で続けた。IR分光法(2275〜2230cm-1)によって遊離したイソシアネートが検出できなくなるとすぐに、反応を停止した。生成物を室温(23℃)まで冷却し、湿気を除いて保存した(理論的なポリマー含有量 = 90%)。
【0101】
シラン官能性ポリウレタンポリマーPS-1において、反応性シランS-1を使用し、PS-2において反応性シランS-2、PS-3において反応性シランS-3、PS-4(参考例)において反応性シランS-4、PS-5(参考例)において反応性シランS-5、PS-6(参考例)において反応性シランS-6を使用した。
【0102】
【表1】

【0103】
シラン官能性ポリウレタンポリマーPS-4(参考例)は、早ければ生成中にゲル化し、これは、このようなポリマーを接着剤および封止剤のための使用することを不可能にする。
【0104】
シラン官能性ポリウレタンポリマーPS-5(参考例)は、室温で14日間の保存後、既にゲル化した。接着剤または封止剤のために、このような短い保存安定性は好ましくない。
【0105】
(チキソトロピー剤TMの製造)
真空ミキサーを、1000gのジイソデシルフタレート(Palatinol(登録商標) Z、BASF SE、ドイツ)および160gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44 MC L、Bayer MaterialScience AG、ドイツ)と一緒に入れ、徐々に加熱した。その後、90gのモノブチルアミンを、激しく攪拌しながら徐々に滴定で加えた。得られた白色のペーストの攪拌を、減圧下で、さらに1時間冷却しながら続けた。チキソトロピー剤TMは、80質量%のジイソデシルフタレート中に20質量%のチキソトロピー剤を含む。
【0106】
(接着剤の製造)
真空ミキサー中に、表2で特定される質量割合によって、シラン官能性ポリウレタンポリマー(PS-1からPS-3、およびPS-5およびPS-6)、チキソトロピー剤TM、ビニルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標) VTMO、Evonik Degussa GmbH、ドイツ)、UV安定化剤(Tinuvin(登録商標) 292、Ciba SC、スイス)、抗酸化剤(Tinuvin(登録商標) 1130、Ciba SC、スイス)、および可塑剤のジイソデシルフタレート(Jayflex DIDP、Exxon Mobil、USA)を、5分間にわたって十分に混合した。続けて、乾燥した沈殿白亜(Socal(登録商標) U1S2、Solvay SA、ベルギー)、乾燥した親水性フュームドシリカ(Aerosil 200、Evonik、ドイツ)、および白色顔料(二酸化チタン、Kronos 2500、Kronos International、USA)を、15分間にわたって60℃で練ることによって組み込んだ。加熱のスイッチを切り、8gのN-(2-アミノエチル)-(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(Silquest(登録商標) A-1120)および1.6gのジ-n-ブチルスズジラウレート(Metatin(登録商標) K712)を、続けて10分間にわたって減圧下で加工して、均一なペーストを得た。その後、これを最初にコートしたアルミニウムのガンの適用カートリッジに分注した。
【0107】
PS-4は製造中に既にゲル化、つまり架橋したため(表1参照)、シラン官能性ポリウレタンポリマーPS-4(参考例)を、接着剤を製造するために使用しなかった。
【0108】
【表2】

【0109】
例Ref1は、発明組成物と比較して、比較的低い伸び(表1参照)に加えて、低い保存安定性を有するという欠点を有する。
【0110】
例Ref2は、発明組成物と比較して、組成物が非常に不快な臭気を有するという欠点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリマー:
【化1】

ここで、
R1基は、1から12個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、直鎖または分岐状の一価のヒドロカルビル基であり;
R2基は、1から12個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、アシル基あるいは直鎖または分岐状の一価のヒドロカルビル基であり;
数aは0、1または2の値であり;
Xは、1から6個の炭素原子を有し、任意で1つ以上のヘテロ原子、ならびに任意で1つ以上のC-C多重結合、ならびに/あるいは任意で脂環式および/または芳香族の成分を有する、直鎖または分岐状の二価のヒドロカルビル基であり;
Zは、m個のイソシアネート基を除いた後の、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPURのm価の基であり;
数mは、1から4の値である。
【請求項2】
前記R2基が、独立に、メチル基またはエチル基またはイソプロピル基であり、数aが0または1、特に0の値であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記R3基が、メチル基またはエチル基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
Xが、メチレン基、n-プロピレン基、3-アザ-n-ヘキシレン基、または3-アザ-n-ペンチレン基であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記数mが、1または2の値であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリウレタンポリマーPURが、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリイソシアネートとから得ることができ、前記ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的過剰量で存在するように計量することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールであることを特徴とする、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
ジイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、または1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(IPDI)であることを特徴とする、請求項6または7に記載のポリマー。
【請求項9】
以下の工程:
i) 式(II)のアミノシランAS
【化2】

を、式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステル
【化3】

と反応させる工程
ii) 工程i)からの反応生成物を、m個のイソシアネート基を有する、イソシアネートを含むポリウレタンポリマーと反応させる工程
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)のポリマーを調製するための方法。
【請求項10】
シラン官能性ポリマーの調製における、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーのため、またはポリイソシアネートのための反応相手としての、式(II)のアミノシランAS
【化4】

と式(III)のマレイン酸またはフマル酸ジエステル
【化5】

との反応からの反応生成物の使用。
(ここで、R1、R2、R3、X基および数aは、それぞれ請求項1で定義したとおりである)
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(I)のポリマーを含む、接着剤、封止剤またはコーティングの製造のための組成物。
【請求項12】
前記式(I)のポリマーの割合が、全組成物に基づいて、5から80質量%、特に7から70質量%、好ましくは10から50質量%であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのフィラーをさらに含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
湿気による式(I)のポリマーの架橋のための少なくとも1つの触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
接着剤、封止剤またはコーティングとしての、請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2012−518068(P2012−518068A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550556(P2011−550556)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052011
【国際公開番号】WO2010/094725
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】