説明

シラン末端ポリマーに基づく組成物

a)少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと、b)式(I):R−Si(OR(式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖もしく分岐の一価炭化水素基であって、任意に、C−C多重結合および/または脂環式部分および/または芳香族部分を1個以上有していてもよい基であり;Rは、6〜10個の炭素原子を有する分岐炭化水素基である)の少なくとも1種のアルキルトリアルコキシシランとを含む組成物に関する。硬化した状態で、本発明の組成物は、良好な機械特性および良好な接着特性を有し、同時に、改良された伸び性および低い弾性率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、接着剤、シーリング材、またはコーティングとして好適な、シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物は知られており、最近、弾性接着剤、シーリング材、またはコーティングとして用いられている。
【0003】
多数の用途、例えば、さまざまな熱膨張係数を有する材料または振動を受ける基材の接合、シーリング、またはコーティングにおける用途では、組成物が、硬化した状態で、良好な機械的特性および良好な接着特性を有することが求められる。特に重要な特性は、高い伸び性(extensibility)、良好な逆反応性、低い弾性率、および高い引き裂き伝播抵抗である。公知の組成物は、これらの要求に適合しないことが多い。
【0004】
低い弾性率を得るためのさまざまなアプローチ、すなわち弾性組成物がすでに採用されている。
【0005】
例えば、欧州特許出願公開第1 877 459号には、シラン官能性ポリマー、アミノシラン、および特定のα-官能性オルガノジアルコキシシランを含む高められた伸び性を有する組成物であって、架橋度が低く、したがって硬化した組成物の弾性率が低められている組成物が記載されている。前記組成物は、反応性が高く、比較的高価であるα-官能性オルガノジアルコキシシランを使用するという点で問題がある。
【0006】
さらに、例えば、国際公開第03/066701号には、アルコキシシラン基およびヒドロキシ末端基を有するポリウレタンポリマーであって、低められた官能性を有する高分子量ポリウレタンポリマーをベースとするものを含むシラン官能性ポリマーをベースとする組成物が記載されている。ここでは、アルコキシシラン基およびヒドロキシ末端基を有する前記ポリウレタンポリマーの比較的複雑な製造が、不利であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
弾性率を低下させるために組成物の可塑剤濃度を増加させることは知られている。しかし、このことにより、可塑剤の移行および/または相分離がもたらされ得る。
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 877 459号
【特許文献2】国際公開第03/066701号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物であって、硬化した状態で、良好な機械特性および良好な接着特性を有し、同時に、改良された伸び性および低い弾性率を示す組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、添付の請求項1に記載の組成物がこの目的を達成することが分かった。
【0011】
シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物の弾性率は、特定のアルキルトリアルコキシシランを用いることによって単純な方法で低くすることができる。硬化した状態では、本発明の組成物は、良好な機械特性および良好な接着特性を有し、同時に、改良された伸び性および低い弾性率を示す。
【0012】
本発明の他の態様は、さらなる独立請求項の主題を構成する。本発明のとりわけ好ましい態様は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
a)少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと、
b)少なくとも1種の下記式(I)のアルキルトリアルコキシシラン:
【化1】

(式中、
は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一価炭化水素部分であって、場合により1個以上のC−C多重結合を有していてもよく、かつ/あるいは、場合により1個以上の脂環式成分および/または芳香族成分を有していてもよい部分を表し;かつ、
は、6〜10個の炭素原子を有する分岐炭化水素部分を表す)と
を含む組成物に関する。
【0014】
本明細書において用いる「ポリ」で始まる物質名、例えば、ポリオールまたはポリイソシアネートなどは、それらの名称にある官能基を1分子当たり2個以上形式的に有する物質をいう。
【0015】
本明細書において用いる用語「ポリマー」は、一方で、化学的に均一な巨大分子の集合体であって、重合度、モル質量、および鎖長に関しては異なり、重合反応(付加重合、重付加、重縮合)により調製されるものを包含する。他方で、この用語は、重合反応から得られるそのような巨大分子の集合体の誘導体、言い換えるなら、例えば、所与の巨大分子上の官能基の付加反応や置換反応などの反応によって得られる化合物をも包含する。これらには、化学的に均一なものも化学的に不均一なものも包含される。さらに、この用語には、いわゆるプレポリマー、すなわち、その官能基が巨大分子の形成に関与する反応性予備付加体も包含される。
【0016】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネート重付加プロセスにより製造される全てのポリマーが包含される。この用語には、ほとんどまたは完全にウレタン基を含まないポリマーも含まれる。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレア、ポリウレア、ポリエステル−ポリウレア、ポリイソシアヌレート、およびポリカルボジイミドである。
【0017】
本明細書において用語「シラン」および「オルガノシラン」は、一方では、ケイ素原子に直接結合した少なくとも1個、通常2または3個のアルコキシ基またはアシロキシ基を有し、かつ、他方では、Si−C結合を介してケイ素原子に直接結合した少なくとも1個の有機基を有する化合物のことを指す。このようなシランは、当業者にオルガノアルコキシシランまたはオルガノアシロキシシランとしても知られている。
【0018】
同様に、用語「シラン基」は、Si−C結合を介してシランの有機基に結合しているケイ素含有基のことを指す。シラン、すなわちそれらのシラン基は、湿気と接触すると加水分解される特性を有する。この加水分解は、オルガノシラノール、すなわち1個以上のシラノール基(Si−OH基)を有するオルガノケイ素の形成、および、それに続く縮合反応による、オルガノシロキサン、すなわち、1個以上のシロキサン基(Si−O−Si基)を含有する有機ケイ素化合物の形成を伴う。
【0019】
用語「シラン官能性」は、シラン基を含有する化合物を指す。したがって、「シラン官能性ポリマー」は、少なくとも1個のシラン基を有するポリマーである。
【0020】
「アミノシラン」および「メルカプトシラン」は、その有機部分が、それぞれ、アミノ基またはメルカプト基を有するオルガノシランを指す。有機部分に結合した第一級アミノ基(すなわちNH基)を有するアミノシランは、「第一級アミノシラン」と称される。有機部分に結合した第二級アミノ基(すなわちNH基)を有するアミノシランは、「第二級アミノシラン」と称される。
【0021】
本明細書において「分子量」は、常に、数平均分子量Mn(数平均)として定義される。
【0022】
用語「室温」は、本明細書において23℃の温度を指す。
【0023】
本発明に係る組成物は、特に、式(II):
【化2】

の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPを有する。
【0024】
このポリマー中、R部分は、直鎖または分岐の、1〜8個のC原子を有する一価の炭化水素部分基、特に、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基を表す。
【0025】
部分は、直鎖または分岐鎖の、2〜12個のC原子を有する二価の炭化水素部分であって、場合により環状部分および/または芳香族部分を有していてもよく、かつ、場合により1個または複数個のヘテロ原子、特に1個または複数個の窒素原子を有していてもよい炭化水素部分を表す
【0026】
部分は、アシル基、または、直鎖または分岐の、1〜5個のC原子を有する一価の炭化水素部分、特に、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基を表す。
指数「a」は、0、1、または2の値、好ましくは0の値を指す。
【0027】
式(II)のシラン基において、RおよびRは、それぞれ互いに独立に上述した部分を表す。したがって、例えば、エトキ-シジメトキシシラン末端基(R=メチル、R=メチル、R=エチル)である式(II)の末端基を有する化合物も可能である。
【0028】
第1の実施態様では、シラン官能性ポリマーPは、イソシアネート基に対して反応性を有する少なくとも1個の基を有するシランと、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーとの反応によって得ることが可能なシラン官能性ポリウレタンポリマーP1である。この反応は、好ましくは、イソシアネート基に対して反応性を有するである基と、イソシアネート基との化学量論比が1:1である比で、あるいはイソシアネート基に対して反応性を有する基がわずかに過剰な量で行い、結果として得られるシラン官能性ポリウレタンポリマーP1はイソシアネート基を全く含まない。
【0029】
イソシアネート基に対して反応性を有する少なくとも1個の基を有するシランと、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーとの反応において、原則として、しかし好ましくはないが、化学量論量に満たない条件でシランを用いて、シラン基およびイソシアネート基の両方の基を有するシラン官能性ポリマーを得ることができる。
【0030】
イソシアネート基に対して反応性を有する少なくとも1個の基を有するシランは、例えば、メルカプトシランまたはアミノシランであり、特にアミノシランである。
【0031】
アミノシランは、式(III)のアミノシランASであることが好ましい。
【化3】

[式中、R、R、R、およびaは、上述した通りであり、
は、水素原子、または直鎖もしくは分岐の、1〜20個の炭素原子を有する一価の炭化水素部分であって、場合により環状部分または式(VI)の部分:
【化4】

(式中、
およびR部分は、それぞれ互いに独立に、水素原子を表すか、あるいはR11、−COOR11、および−CNからなる群からの基を表す、
10部分は、水素原子を表すか、あるいは−CH−COOR11、−COOR11、−CONHR11、−CON(R11、−CN、−NO、−PO(OR11、−SO11、および−SOOR11からなる群からの基を表し、
11部分は、場合により少なくとも1個のヘテロ原子を含有していてもよい、1〜20個のC原子を有する炭化水素部分を表す)
を有していてもよい基を表す。]
【0032】
適切なアミノシランASの例は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどの第一級アミノシラン;N−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどの第二級アミノシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどの第一級アミノシランと、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸ジエステルおよびフマル酸ジエステル、クエン酸ジエステルおよびイタコン酸ジエステルなどのマイケル受容体とのマイケル型付加反応の生成物(例えば、ジメチルおよびジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミノスクシネート);および、前述したアミノシランのケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基を有する類似体である。特に適切なアミノシランA2は、第二級アミノシラン、より具体的には、式(III)においてRがH以外であるアミノシランASである。マイケル型付加物、より特にはジエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミノスクシネートが好ましい。
【0033】
本明細書において用語「マイケル受容体」は、それが有する電子受容性部分により活性化された二重結合に基づいて、マイケル付加(ヘテロマイケル付加)と類似した様式で、一級アミノ基(NH基)と一緒に求核付加反応に関与することができる化合物を指す。
【0034】
シラン官能性ポリウレタンポリマーP1を製造するための、イソシアネート基を有する適切なポリウレタンポリマーの例には、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のポリイソシアネート、特にジイソシアネートとの反応によって得ることができるポリマーが含まれる。この反応は、一般的に用いられる方法、例えば、50℃〜100℃の温度で、場合により適切な触媒を同時に使用して、ポリオールとポリイソシアネートとを、そのイソシアネート基の量をポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在するように選択して、反応させることによって行う。
【0035】
具体的には、ポリイソシアネートの過剰は、ポリオールのヒドロキシル基のすべてが反応した後に得られるポリウレタンポリマーの遊離のイソシアネート含有量が、ポリマー全体を基準として、0.1質量%〜5質量%、好ましくは0.1質量%〜2.5質量%、特に好ましくは0.2質量%〜1質量%残るように選択する。
【0036】
場合により、ポリウレタンポリマーは、柔軟剤を同時に使用して製造することができる。但し、使用する柔軟剤は、イソシアネートに対して反応性を有する基を有さないことを条件とする。
【0037】
好ましいポリウレタンポリマーは、前述した遊離イソシアネート含有量を有し、かつジイソシアネートと高分子量ジオールとのNCO:OH比が1.5:1〜2.2:1である反応から得たポリウレタンポリマーである。
【0038】
ポリウレタンポリマーを製造するために適切なポリオールは、特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオール、ならびにこれらのポリオールの混合物である。
【0039】
適切なポリオキシアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオールまたはオリゴエーテルオールともいわれる)は、とりわけ、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、任意選択により、2個以上の活性水素原子を有する出発分子(例えば、水、アンモニア)、またはいくつかのOHまたはNH基を有する化合物(例えば、1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール異性体類、トリプロピレングリコール異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、へプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、および上述した化合物の混合物を用いて重合されたものであってよい。例えば、いわゆるダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて製造される、(ASTM D−2849−69に準拠して測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和のミリ当量(meq/g))で示される)不飽和度が低いポリオキシアルキレンポリオールだけでなく、例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリ金属アルコキシド等のアニオン触媒を用いて製造される、高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールも使用することができる。
【0040】
特に好適なものは、ポリオキシエチレンポリオールおよびポリオキシプロピレンポリオール、特に、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、およびポリオキシプロピレントリオールである。
【0041】
特に好適なものは、不飽和度が0.02meq/g未満の不飽和度を有し、分子量が1000〜30000g/モルの範囲のポリオキシアルキレンジオールおよびポリオキシアルキレントリオール、ならびに、分子量が400〜200000g/モルのポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、およびポリオキシプロピレントリオールである。
【0042】
いわゆるエチレンオキシド末端化(「EO末端封鎖」、エチレンオキシドで末端キャップされた)ポリオキシプロピレンポリオールも、とりわけ好適である。後者は、特異なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであって、これは例えば、ポリプロポキシル化反応終了後の純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールに、エチレンオキシドを加え、さらにアルコキシル化する方法によって得られ、したがって生成物は、一級ヒドロキシル基を有している。この場合、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンジオールおよびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレントリオールが好ましい。
【0043】
さらに、ヒドロキシル基で末端化されたポリブタジエンポリオール、例えば、1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの重合によって、あるいはポリブタジエンの酸化によって製造されるポリオール類、ならびにその水和生成物が好適である。
【0044】
さらに、スチレン−アクリロニトリルでグラフト化されたポリエーテルポリオールであって、市販の種類のもの、例えば、Elastogran GMBH(独国)から商標名Lupranol(登録商標)の下で販売されているものが好適である。
【0045】
とりわけ好適なポリエステルポリオール類は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリエステル類であって、公知の方法、より具体的には、ヒドロキシカルボン酸の重縮合、または脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸と二価もしくは多価のアルコールとの重縮合によって製造される。
【0046】
ポリエステルポリオールとしてとりわけ好ましいものは、二価〜三価アルコール〔例えば、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、または前述のアルコール類の混合物など〕と、有機ジカルボン酸またはそれらの酸無水物もしくはエステル〔例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、または前述の酸の混合物など〕とから製造されるポリエステルポリオール類、ならびに、ラクトン類(例えば、ε−カプロラクトンなど)からのポリエステルポリオール類である。
【0047】
とりわけ好適なものは、ポリエステルジオール、とりわけ、ジカルボン酸としてのアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、イソフタル酸、およびテトラフタル酸、または例えばε−カプロラクトンなどのラクトン類と、二価アルコールとしてのエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ダイマー脂肪酸ジオール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールとから製造されるポリエステルジオールである。
【0048】
とりわけ好適なポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリエステルポリオールの製造に用いられる上述したアルコール類を、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネートなど)、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネートなど)、またはホスゲンと反応させることによって得ることができるポリカーボネートポリオールである。ポリカーボネートジオール、とりわけ非晶質ポリカーボネートジオールが特に好適である。
【0049】
さらなる好適なポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0050】
さらに、ポリヒドロキシル官能性の脂肪および油、例えば、天然の脂肪および油、特にヒマシ油;または、天然の脂肪および油の化学変性によって得られるポリオール(いわゆる油脂化学ポリオール類)、例えば、不飽和油をエポキシ化し、次いでカルボン酸もしくはアルコールを用いて開環反応させることによって得られるエポキシポリエステル類もしくはエポキシポリエーテル類、または、不飽和油のヒドロキシホルミル化および水素化によって得られるポリオール類である。さらに、分解過程(例えば、アルコール分解、オゾン分解など)およびその後の化学架橋(例えば、こうして得られた分解生成物またはその誘導体の再エステル化または二量化など)によって天然の脂肪および油から得られるポリオール類が好適である。天然の脂肪および油の好ましい分解生成物は、特に、脂肪酸および脂肪アルコール、ならびに脂肪酸エステルであり、例えばヒドロホルミル化および水素化してヒドロキシ脂肪酸エステルを形成させることによって誘導体化され得るメチルエステル類(FAME)である。
【0051】
同様に好適なポリオールは、ポリ炭化水素ポリオール類(いわゆるオリゴヒドロカルボノールとも呼ばれる)、例えば、ポロヒドロキシ−官能性のエチレン−プロピレン−、エチレン−ブチレン−、エチレン−プロピレン−ジエンのコポリマー類(これらは、例えば、Kraton Polymer社(米国)によって製造されている)など、または、ジエン類(例えば、1,3−ブタジエンまたはジエン混合物など)とビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、またはイソブチレンなど)とのポリヒドロキシ官能性ポリマー類、例えば、1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって製造され、水素化されていてもよいポリオールなどである。
【0052】
加えて好適なポリオールは、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー類であって、例えば、エポキシド類またはアミノアルコール類と、カルボキシ末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー類とから製造することができるもの、例えば、Hypro(登録商標)(以前のHycar(登録商標))CTBNの名称で、Emerald Performance Materials LLC(米国)から市販されているものである。
【0053】
上述したこれらのポリオール類は、250〜30,000 g/mol、特に1,000〜30,000 g/molの平均分子量を有することが好ましく、平均OH−官能性が、1.6〜3の範囲であることが好ましい。
【0054】
特に好適なポリオール類は、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール、特に、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオール、好ましくはポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンジオール、およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレントリオールである。
【0055】
上述したこれらのポリオール類に加えて、少量の低分子量の二価または多価アルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコーおよびトリプロピレングリコールの異性体、ブタンジオール異性体、ペンタンジオール異性体、ヘキサンジオール異性体、ヘプタンジオール異性体、オクタンジオール異性体、ノナンジオール異性体、デカンジオール異性体、ウンデカンジオール異性体、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体の脂肪アルコール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、糖アルコール類(例えば、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトールなど)、糖類(例えば、サッカロースなど)、他の多価アルコール類、前述した二価および多価のアルコールの低分子量アルコキシル化生成物、ならびに前述したアルコールの混合物などを、末端イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーの製造において同時に用いることができる。
【0056】
ポリウレタンポリマーを製造するためのポリイソシアネートとして、市販のポリイソシアネート、とりわけジイソシアネートを用いることができる。
【0057】
例えば、好適なジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、パーヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−XDI)、m−およびp−テトラメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、m−およびp−テトラメチル−1,4−キシリレンジイソシアネート、ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ナフタレン、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−、2,4’−および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル(TODI)、上述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、および上述のイソシアネートの所望の混合物である。
【0058】
好適なシラン官能性ポリマーP1は、例えば、商標名PolymerST、例えば、PolymerST50の下でHanse Chemie AG(独国)から、および、商標名Desmoseal(登録商標)の下でBayer MaterialScience AG(独国)から市販されている。
【0059】
第2の実施態様では、シラン官能性ポリマーPは、イソシアナトシランISと、イソシアネート基に対して反応性を有する末端官能基(とりわけヒドロキシ基、メルカプト基、および/またはアミノ基)を有するポリマーとの反応によって得ることができるシラン官能性ポリウレタンポリマーP2である。この反応は、イソシアネート基と、イソシアネート基に対して反応性を有する末端官能基が1:1である化学量論比で、あるいは、イソシアネート基に対して反応性を有する末端官能基がわずかに過剰な量で、例えば20℃〜100℃の温度にて、適切な場合には触媒を併用して行う。
【0060】
好適なイソシアナトシランISは、式(V)の化合物である。
【化5】

式中、R、R、R、およびaは、上述した通りである。
【0061】
式(V)の好適なイソシアナトシランISの例は、イソシアナトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルジメトキシメチルシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、および、ケイ素原子上のメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基を有する上述したα−イソシアナトシランの類似体である。
【0062】
前記ポリマーは、イソシアネート基に対して反応性を有する末端官能基としてヒドロキシル基を有することが好ましい。
【0063】
ヒドロキシル基を有する好ましいポリマーは、一方では、上述した高分子量のポリオキシアルキレンポリオール、特に、不飽和度が0.02meq/g未満であり、分子量が4000〜30000g/モルの範囲、特に、分子量が8000〜30000g/モルの範囲であるポリオキシプロピレンジオールである。
【0064】
他方、式(V)のイソシアナトシランISとの反応のための、ヒドロキシル基を有するポリウレタンポリマー、具体的には、ヒドロキシル基で末端化されたポリウレタンポリマーも好ましい。このようなポリウレタンポリマーは、少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールとの反応によって得ることができる。この反応は、ポリオールとポリイソシアネートとを、一般的に用いられる方法、例えば、50℃〜100℃の温度で、場合により適切な触媒を併用し、ポリオールの量を、そのヒドロキシル基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対して化学量論的に過剰に存在するように選択して反応させることによって行うことができる。ヒドロキシル基と、イソシアネート基との比が、1.3:1〜4:1、特に1.8:1〜3:1であることが好ましい。
【0065】
場合により、ポリウレタンポリマーは、可塑剤を同時に使用して製造することができる。但し、使用する可塑剤が、イソシアネートに対して反応性を有するいかなる基も含有しないことを条件とする。
【0066】
この反応に好ましいのは、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1の製造のために使用するポリウレタンポリマー含有イソシアネート基を調製するために好ましいとして上述したものと同じポリオールおよびポリイソシアネートである。
【0067】
例えば、好適なシラン官能性ポリマーP2は、SPUR+(登録商標)1010LM、1015LM、および1050MM(Momentive Performance Materials Inc.製、米国)、ならびにGeniosil(登録商標)STP−E15、STP−10、およびSTP−E35(共にWacker Chemie AG製、独国)の商標の下で販売されている。
【0068】
第3の実施態様では、シラン官能性ポリマーPは、末端二重結合を有するポリマー〔例えばポリ(メタ)アクリレートポリマーまたはポリエーテルポリマー、特に、アリル末端ポリオキシアルキレンポリマー(例えば、米国特許第3971751号および同第6207766号に記載されているもの)(これらの開示全体を参照により本明細書に組み込む)〕のヒドロシリル化反応によって得ることができる、シラン官能性ポリマーP3である。
【0069】
例えば、好適なシラン官能性ポリマーP3は、商標MS−Polymer(登録商標)S203H、S303H、S227、A810、MA903、およびS943、Silyl(登録商標)SAX220、SAX350、SAX400、およびSAX725、Silyl(登録商標)SAT350およびSAT400、ならびにXMAP(登録商標)SA100SおよびSA310S(カネカ製、日本);ならびに、商標Excestar(登録商標)S2410、S2420、S3430、S3630、W2450、およびMSX931(旭硝子製、日本)の下で販売されている。
【0070】
通常シラン官能性ポリマーPは、組成物全体に基づいて、10質量%〜80質量%、特に15質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜40質量%の量で存在する。
【0071】
好ましくは、本発明の組成物において、式(ii)の末端基におけるR部分は、式(I)のアルキルトリアルコキシシランにおけるR部分に相当する。
【0072】
したがって、最も好ましくは、本発明の組成物シラン官能性ポリマーPは、式(II’)の末端基を有する。
【化6】

ここで、シラン官能性PのRおよび式(I)のアルキルトリアルコキシシランのRの両方が、上で記述した部分と同じ部分を表す。
およびR、および指数aは、上述した通りである。
【0073】
さらに、本発明の組成物は、上述した式(I)のアルキルトリアルコキシシランを少なくとも1種含む。
【0074】
特に、R部分は、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、好ましくはメチル基を表す。
【0075】
特に、R部分は、8個のC原子を有する分岐した炭化水素部分を表す。好ましくは、分岐炭化水素部分は、多分岐アルキル基である。別の好ましい分岐炭化水素部分は、第三級ブチル基を有する。最も好ましくは、R部分は、2,4,4−トリメチルペンチル部分を表す。
【0076】
特に、本発明の組成物における式(I)のアルキルトリアルコキシシランは、トリメトキシ(2,4,4−トリメチルペンチル)シランである。
【0077】
好ましくは、式(I)のアルキルトリアルコキシシランの含量は、組成物全体の0.05質量%〜4質量%である。
【0078】
本組成物は、少なくとも1種のフィラーをさらに含有することが好ましい。このフィラーは、未硬化の組成物のレオロジー特性と、硬化した組成物の機械的特性および表面特性との両方に影響を及ぼす。好適なフィラーは、無機および有機のフィラーであり、例えば、天然の、粉砕または沈降炭酸カルシウムであって場合により脂肪酸(特にステアリン酸)でコーティングされていてよいもの、硫酸バリウム(BaSO、バライトまたはスパーとも称される)、か焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、特に熱分解プロセスからの高分散性シリカ、カーボンブラック、特に工業的に製造されたカーボンブラック、PVC粉末、または中空球である。好ましいフィラーは、炭酸カルシウム、か焼カオリン、カーボンブラック、微粉シリカ、および、ヒドロキシドまたは水和物などの難燃性フィラー、特に、アルミニウムのヒドロキシドまたは水和物、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0079】
異なるフィラーの混合物を用いることも当然に可能であり、有利でさえある。
【0080】
フィラーの好適な量は、例えば、組成物全体に基づいて、20質量%〜60質量%、30質量%〜60質量%である。
【0081】
本発明の組成物は、とりわけ、シラン官能性ポリマーの湿気による架橋のための少なくとも1種の触媒をさらに含有する。そのような触媒は、とりわけ、有機スズ化合物の形態の金属触媒、例えば、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセチルアセトネート、チタニウム触媒、アミノ基含有化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタンおよび2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル)、アミノシラン、ならびに前述の触媒の混合物である。
【0082】
本発明の組成物は、さらなる成分を追加的に含んでいてよい。例えば、そのような成分は、可塑剤、例えば、有機カルボン酸のエステル類またはその無水物類、例えばフタレート(例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、またはジイソデシルフタレートなど)、アジペート(例えば、ジオクチルアジペートなど)、アゼレート、およびセバケート;ポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリエステルポリオールなど);有機リン酸エステル類およびスルホン酸エステル類、ならびにポリブテン類;溶媒;繊維(例えば、ポリエチレン);染料;顔料;レオロジー調節剤〔例えば、増粘剤またはチキソトロピー剤(例えば、国際出願第02/46228号A2の第9頁〜第11頁に「チキソ性付与剤」として記載されているタイプの尿素化合物)、ポリアミドワックス、ベントナイト、または熱分解シリカなど〕;接着促進剤(例えば、エポキシシラン、(メタ)アクリルオキシシラン、シラン無水物または前述したシランと第一級アミノシランとの付加体、およびアミノシランまたはウレアシラン);架橋剤、例えば、シラン官能性のオリゴマーもしくはポリマー;乾燥剤(例えば、ビニルトリメトキシシラン、α−官能性シラン、例えば、N−(シリルメチル)O−メチルカルバメート、特に、N−(メチルジメトキシシリルメチル)O−メチルカルバメート、(メタクリロイルオキシイメチル)シラン、メトキシメチルシラン、N−フェニル−N−シクロヘキシル−およびN−アルキルシラン、オルトギ酸エステル類、酸化カルシウム、またはモレキュラーシーブなど);安定剤ア(例えば、熱、光、およびUV光に対する安定剤;難燃性物質;界面活性剤(例えば、湿潤剤、レベリング剤、脱気剤、または消泡剤など);殺生物剤(例えば、殺藻剤、防かび剤、または真菌の増殖を阻害する物質など);ならびに、湿気硬化性組成物において通常使用されているさらなる物質である。
【0083】
さらに、とりわけシラン基との反応によって組成物の硬化時にポリマーマトリックス内に組み込まれる、いわゆる反応性希釈剤を、場合により使用することもできる。
【0084】
本組成物中に存在していてもよい上述した全ての成分(特に、フィラーおよび触媒)を、これらの成分の存在によって本組成物の貯蔵寿命が損なわれないようにする、すなわち本組成物の性質、特に適用特性および硬化特性が、貯蔵期間中に変化しないかまたは変化が極めてわずかであることが有利である。このために、記載した組成物の化学的な硬化をもたらす反応、特にシラン基の反応が、貯蔵期間中に有意な程度に引き起されないことが要求される。したがって、これらの成分が、水を全く含まないか、多くても痕跡量の水しか含ます、貯蔵期間中に、水を全く放出しないか、多くても痕跡量の水しか放出しないことが特に重要である。特定の成分を組成物に混合する前に、その特定の成分の化学的または物理的な乾燥を行うことが賢明であろう。
【0085】
硬化後、特に、23℃および相対湿度50%で少なくとも14日間の硬化後に、本発明の組成物は、DIN EN 53504に準拠して引張速度200mm/分で測定して、0〜100%伸びでの弾性率が0.4MPa以上であり、DIN 53505に準拠して測定して10以上のショアA硬度を有する。
【0086】
上述した本組成物は、好ましくは、湿気の不存在下で製造し貯蔵される。本組成物は、典型的には、貯蔵安定である。すなわち、適切なパックまたはアレンジメント(例えば、ドラム、バッグ、またはカートリッジ)中で数ヶ月〜1年以上、その性能性質またはその硬化後の特性においてその使用に関連する程度の何らの変化もなく貯蔵することができる。通常、貯蔵安定性は、粘度または押出力によって測定することができる。
【0087】
記述した組成物を少なくとも1種の固体または物品に適用すると、ポリマーのシラン基が湿気と接触する。シラン基は、湿気と接触するとすぐに加水分解される性質を有する。この結果、オルガノシラノールが生成し、その後の縮合反応によってオルガノシロキサンが生成する。触媒の使用によって加速され得るこれらの反応の結果、本組成物は最終的に硬化する。このプロセスは、架橋とも称される。
【0088】
硬化に必要とされる水は、大気(大気中の湿気)から来るものであってよく、上述した組成物を、水を含有する成分と、例えば平滑剤を用いてブラッシングすることによって、あるいは塗布時に組成物に(例えば水性ペースト状の)水含有成分を(例えば静的ミキサーを用いる混合により)添加して、組み入れることもできる。大気中の湿気による硬化の場合、組成物は外側から内側へと硬化する。硬化速度は、さまざまな要素、例えば、水の拡散速度、温度、周囲湿度、および接着形状によって決まり、一般に、硬化の進行にしたがって遅くなる。
【0089】
本発明の組成物は、湿気硬化性の接着剤、シーリング材、またはコーティング、特に建設用シーリング材としての、上述した組成物の使用を含む。継ぎ手の連結および拡張のための低弾性シーリング材としての使用が特に好ましい。
【0090】
特に、本発明の組成物を、2つの基材S1およびS2の接合方法において用いることができる。この方法は、
i) 上述した組成物を、基材S1および/または基材S2に適用する工程と、
ii) 基材S1および基材S2を、上述した組成物を介して、組成物の可使時間内に接触させる工程と、
iii) 前記組成物を水によって硬化させる工程と、
を含み、基材S2と基材S1とが、互いに同じであっても異なっていてもよい方法である。
【0091】
さらに、本発明の組成物を、シーリング方法またはコーティング方法において用いることもできる。この方法は、
i’) 上述した組成物を、基材S1に、かつ/あるいは、2つの基材S1およびS2の間に、適用する工程と、
ii’) 前記組成物を、水、特に大気中の湿気の形態の水によって硬化させる工程と、
を含み、基材S2と基材S1とが、互いに同じであっても異なっていてもよい方法である。
【0092】
好適な基材S1および/またはS2は、特に、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、天然石(例えば、花崗岩または大理石など)、ガラス、ガラスセラミック、金属もしくは金属アロイ、木材、プラスチック、および塗装からなる群から選択される。
【0093】
本発明の組成物は、構造的に粘稠な特性を有するペースト状のコンシステンシーを有する。このような組成物を、基材に、適切な装置を用いて、好ましくはビードの形態、有利には本質的に円形または三角形の断面を有するビードの形態で適用することができる。本組成物を適用するために好適な方法は、例えば、手動または圧縮空気で操作可能な市販のカートリッジからの塗布、またはバレルまたはホボックからの供給ポンプもしくは押出機による塗布であり、場合により、塗布ロボットを使用する塗布であってもよい。良好な適用特性を有する本発明の組成物は、高い寸法安定性を有し、糸引きが少ない。このことは、組成物が適用後に適用された形態のままであることを意味する。このことは、組成物が流動せず、すじが全く残らないかまたはわずかなすじしか残さないため、基材の汚染が回避されることを意味する。
【0094】
本発明はさらに、上述した組成物と水との硬化反応によって得られる、硬化した組成物に関する。
【0095】
本発明の組成物を用いて接合、シーリング、またはコーティングされた物品は、特に、建築物または建築もしくは土木工事における構造物、生産財または消費財、特に窓、家庭電化製品、または輸送手段の内装部品である。
【0096】
加えて、本発明は、本発明の組成物の成分として上述した式(I)のアルキルトリアルコキシシランの、シラン末端ポリマーをベースとする組成物における、前記組成物の硬化した状態における弾性を高め、弾性率を低下させるための使用に関する。
【実施例】
【0097】
以下に、本明細書に記載した発明を例証することを意図した実施形態を、より詳細に記述する。本発明がこれらの記述した実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0098】
[試験方法]
引張強度、破断点伸び、および0〜100%伸び時の弾性率を、DIN EN ISO 53504(引張速度:200mm/分)に準拠して、23℃、相対湿度50%にて14日間硬化させた層厚さ2mmのフィルムを用いて測定した。
【0099】
引張係数を、DIN EN ISO 8340に準拠して、Sika(登録商標)Primer−3N〔Sika(登録商標)Schweiz AGから商業的に入手可能〕を用いて前処理したコンクリート試験サンプル〔コンクリート、生、ISO 13640に準拠、Rocholl GmbH(独国)製、70mm×25mm×12.5mm〕を用いて測定した。この試験サンプルは、23℃、相対湿度50%にて4週間の間硬化させた
【0100】
ショアA硬度は、DIN 53505に準拠して、23℃、相対湿度50%にて14日間硬化させた層厚さ6mmの試験サンプルを用いて測定した。
【0101】
皮膜形成時間(接着しなくなるまでの時間、「不粘着時間」)は、23℃、相対湿度50%で測定した。皮膜形成時間を測定するために、室温の接着剤少量を、段ボールに、およそ2mmの厚さの層で適用し、LDPE製のピペットを接着剤の表面にそっと接触させても残留物が全く付着しなくなるまでの時間を測定した。
【0102】
引き裂き伝播抵抗を、DIN 53515に準拠して、23℃、相対湿度50%にて14日間硬化させた層厚さ2mmのフィルムを用いて測定した。
【0103】
[シラン官能性ポリウレタンポリマーSHの製造]
窒素雰囲気下で、700 gのポリオールAcclaim(登録商標)12200〔Bayer MaterialScience AG(独国)、低モノオールのポリオキシプロピレンジオール、OH価11.0 mg KOH/g、水含有量約0.02質量%〕、24.6 gのイソホロンジイソシアネート〔Vestanat(登録商標)IPDI、Evonik Degussa GmbH(独国)〕、182 gの2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート〔Eastman TXIB(登録商標)、Eastman Chemical Company (米国)〕、および0.1 gのジ-n-ブチル錫ジラウレート〔Martin(登録商標)K 712、Acima AG (スイス)〕を、絶えず撹拌しながら90℃に加熱し、この温度に保った。1時間の反応時間の後に、滴定によって測定した遊離のイソシアネート基の含有量が、0.32質量%の値に達した。その後、24.5 gのN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルエステルを添加し、混合物を90℃にてさらに2〜3時間撹拌した。反応は、遊離のイソシアネートがIR分光法(2275〜2230 cm-1)によって全く検出されなくなった時に終了させた。生成物を室温(23℃)まで冷却し、湿気を排除した条件下に保った(理論ポリマー含有率=80 %)。こうして得られたシラン官能性ポリウレタンポリマーSHは、室温で液体である。
【0104】
N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルエステルを、次のように調製した:49.0 gのマレイン酸ジエチルエステル(Fluka Chemie GmbH、スイス)を、51.0 gの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-1110、Momentive Performance Materials Inc.、米国)に、室温にて激しく撹拌しながらゆっくりと添加し、混合物を室温にて2時間撹拌した。
【0105】
[チキソトロピー剤TMの製造]
真空ミキサーに、1000gのジイソデシルフタレート(Palatinol(登録商標)Z、BASF SE、独国)および160g の4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44 MC L、Bayer MaterialScience AG、独国)を加え、少し加熱した。その後、90gのモノブチルアミンを、激しく撹拌しながら滴下によりゆっくり添加した。得られた白いペーストを、減圧下で冷却しながらさらに1時間撹拌した。このチキソトロピー剤TMは、80質量%のジイソデシルフタレート中に20質量%のチキソトロピー剤を含有している。
【0106】
[接着剤の製造]
真空ミキサー中で、表1および2に質量部で示した量のシラン官能性ポリマー(SHまたはMS)、チキソトロピー剤TM、およびビニルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-171、Momentive Performance Materials Inc.製、米国)を、5分間十分に撹拌した。その後、乾燥させた沈降チョーク〔Socal(登録商標)U1S2、Solvay SA、ベルギーおよびOmyacarb(登録商標)5-GU、Omya AG、スイス〕を添加し、60℃にて15分間練った。加熱器のスイッチをオフにし、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-1120、Momentive Performance Materials Inc.製)および触媒(Metatin(登録商標)K712、DIDP中の10%溶液として)を、減圧下10分間かけて順次加えて均質なペーストに加工した。次いで、このペーストを、内側がアルミニウムコーティングされた塗布用ピストンカートリッジに充填した。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと、
b)少なくとも1種の式(I)のアルキルトリアルコキシシラン:
【化1】

(式中、
は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一価炭化水素部分であって、場合により1個以上のC−C多重結合を有していてもよく、かつ/あるいは、場合により脂環式成分および/または芳香族成分を有していてもよい部分を表し;かつ、
は、6〜10個の炭素原子を有する分岐炭化水素部分を表す)と
を含む組成物。
【請求項2】
が、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、メチル基を表すことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
が、8個の炭素原子を有する分岐炭化水素部分を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記分岐炭化水素部分が、多分岐アルキル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
が、2,4,4−トリメチルペンチル部分を表すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)のアルキルトリアルコキシシランが、トリメトキシ(2,4,4−トリメチルペンチル)シランであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
シラン官能性ポリマーPが、式(II’)の末端基:
【化2】

[式中、
は、シラン官能性ポリマーPおよび式(I)のアルキルトリアルコキシシランの両方における部分と同じ部分を表し;
は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
は、直鎖または分岐鎖、場合により環状の、2〜12個のC原子を有するアルキレン基であって、場合により芳香族部分を有していてもよく、かつ、場合により1個または複数個のヘテロ原子を有していてもよい基を表し;かつ
aは、0または1を表す]
を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)のアルキルトリアルコキシシランの含量が、組成物全体の0/05〜4質量%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、硬化後に、DIN EN 53504に準拠して引張速度200mm/分で測定して、0〜100%の伸び時に0.4Mpa以下の弾性率を有し、かつ、DIN 53505に準拠して測定して10以上のショアA硬度を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
湿気硬化性の接着剤、シーリング材、またはコーティングとしての、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
建設用シーリング材としての、請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物から、これらの組成物を水で硬化させた後に得られることを特徴とする、硬化した組成物。
【請求項14】
シラン末端ポリマーをベースとする組成物における請求項1〜10のいずれか一項で定義した式(I)のアルキルトリアルコキシシランの使用であって、前記組成物の硬化後の状態の弾性を高め、弾性率を低下させるための、使用。

【公表番号】特表2013−502503(P2013−502503A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526037(P2012−526037)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062326
【国際公開番号】WO2011/023691
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】