説明

シリカナノチューブの製造方法

【課題】本発明は、焼成工程を必要としないシリカナノチューブの製造方法を提供すること、更には、様々な大きさのシリカナノチューブを選択的に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】その目的を達成するために、本発明は、ノニオン界面活性剤及び自己反応性を有するシリカ前駆体化合物によりミエリン像を形成し、該シリカ前駆体化合物を反応させた後、溶媒洗浄にて該ノニオン界面活性剤を除去する精製工程を行うことを特徴とするシリカナノチューブの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な大きさのシリカナノチューブを高収率で得る新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブの発見以来、種々の材料によるナノチューブが検討され、数々の合成方法が提案されている。シリカナノチューブはこうしたナノチューブの1つであり、軽量材料、吸着剤、分離剤、触媒材料あるいはガス吸蔵材料等としての利用が期待でき、その他の用途においても様々な検討がなされている。
シリカナノチューブの製造方法は一般的に、界面活性剤や脂質、カーボンナノチューブ等をテンプレート(鋳型)としてテトラアルコキシシラン等を反応させた後、焼成することにより得る方法や、珪素粉末と金属酸化物とを焼成させて得る方法等が知られている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。しかしながら、これらの方法はいずれも焼成が必要であり、シリカナノチューブが高温にさらされることにより多くのシリカナノチューブが崩壊して収率が下がることが問題となっていた。
また、安価な物質を鋳型としてシリカナノチューブを製造する方法は、製造コストが安価であるため注目されている。しかしながら多くの場合、鋳型の形状が一様であるため、生成するシリカナノチューブの構造も一様になり、様々な大きさのシリカナノチューブを安価に製造することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−256007号公報
【特許文献2】特開2006−096651号公報
【特許文献3】特開2005−306663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、焼成工程を必要としないシリカナノチューブの製造方法を提供すること、更には、様々な大きさのシリカナノチューブを選択的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者等は鋭意検討し、焼成工程を必要としないシリカナノチューブの製造方法及び様々な大きさのシリカナノチューブを選択的に製造する方法を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、ノニオン界面活性剤及び自己反応性を有するシリカ前駆体化合物によりミエリン像を形成し、該シリカ前駆体化合物を反応させた後、溶媒洗浄にて該ノニオン界面活性剤を除去する精製工程を行うことを特徴とするシリカナノチューブの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果は、焼成工程を必要としないシリカナノチューブの製造方法を提供すること、更には、様々な大きさのシリカナノチューブを選択的に製造する方法を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例のシリカナノチューブ1について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図2】実施例のシリカナノチューブ2について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図3】実施例のシリカナノチューブ3について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図4】実施例のシリカナノチューブ4について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図5】実施例のシリカナノチューブ5について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図6】実施例のシリカナノチューブ6について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図7】実施例のシリカナノチューブ9〜14について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【図8】比較例について、透過型電子顕微鏡でその形態を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のシリカナノチューブの製造方法は、最初に、界面活性剤とシリカ前駆体化合物によりミエリン像を形成させる。ミエリン像とは、両親媒性分子の二分子膜が多重に巻き重なったチューブ状の分子集合体のことである。界面活性剤は両親媒性の化合物であり、種々の条件を選択することにより、多くの界面活性剤でミセルの一種であるミエリン像を形成させることができる。こうした界面活性剤の中でも、容易にミエリン像を形成することができることから、本発明に使用する界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましく、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤がより好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは炭素数3又は4のアルキレン基を表し、x、y及びzは、それぞれ独立して1〜300の数を表す。)
【0011】
一般式(1)のRは炭素数3又は4のアルキレン基であり、こうしたアルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、ブチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、ターシャリブチレン基等が挙げられる。これらの中でも、ミエリン像を形成しやすいことからプロピレン基もしくはブチレン基が好ましい。
【0012】
x、y及びzはそれぞれ独立して1〜300の数を表すが、ミエリン像が形成しやすいことから、x及びzは3〜200の数が好ましく、5〜150の数がより好ましく、5〜100の数が更に好ましく、5〜80が最も好ましい。更に、yは3〜150が好ましく、5〜100がより好ましく、7〜80が更に好ましい。また、一般式(1)で表される化合物は高分子の界面活性剤であり、親水基(x及びzに係る部分)と疎水基(yに係る部分)の比や重量平均分子量は特に指定されないが、ミエリン像が形成しやすいことから、全分子量中の親水基の割合が10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。また重量平均分子量は、2000〜20000が好ましく、2500〜15000がより好ましく、3000〜10000が更に好ましい。
【0013】
一般式(1)に代表されるノニオン界面活性剤を使用することで、ミエリン像は容易に形成できるが、通常、ミエリン像の大きさが最終的に得られるシリカナノチューブの大きさに対応するため、異なる大きさのシリカナノチューブを得るためには、ミエリン像の大きさを制御する必要がある。しかしながら同種の界面活性剤のみを使用すると、一般的にほぼ同じ大きさのミエリン像しか得られない。そこでミエリン像の大きさを制御したい場合は、下記の一般式(2)で表されるカチオン界面活性剤をノニオン界面活性剤と併用することが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aはハロゲン原子を表す。)
【0016】
一般式(2)のR〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜18の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、メチルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。これらの中でも、R〜Rのいずれか1つ又は2つの基が、炭素数8〜20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0017】
一般式(2)のAはカチオン界面活性剤の対イオンであり、Aはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0018】
上記のカチオン界面活性剤は、ノニオン界面活性剤と併用することでミエリン像の大きさを制御することが可能である。この制御に関し、カチオン界面活性剤の配合割合は特に規定されないが、全界面活性剤中のカチオン界面活性剤の割合が0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。0.1質量%未満だとミエリン像の大きさを制御できない場合があり、10質量%を超えるとミエリン像の形成に支障がでる場合がある。
【0019】
本発明に使用する自己反応性を有するシリカ前駆体化合物とは、シリカ前駆体化合物同士が反応してシリカを生成する化合物であり、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩;モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン等のクロロシラン類;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属やクロル原子を含有しないテトラアルコキシシラン類が好ましく、反応性が良好なことから下記の一般式(3)で表されるテトラアルコキシシランがより好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0022】
〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2−メチルエチル基等が挙げられる。これらの中でもシリカを形成しやすいことから、R〜Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0023】
本発明の溶媒洗浄に使用する溶媒は、上記の界面活性剤を除去できる溶媒であればいずれでもよく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、製造時の系は水系であることから水溶性の溶媒が好ましく、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合物がより好ましく、水が最も好ましい。
【0024】
次に製造方法について詳しく記す。ノニオン界面活性剤と自己反応性を有するシリカ前駆体化合物とを混合し、その系に水を一定量添加することでミエリン像を形成させることが製造の基本であるが、ノニオン界面活性剤と一定量の水と混合し、ミエリン像を形成させた後にシリカ前駆体化合物を添加してもよい。また、ミエリン像を効率よく形成するために、有機溶媒を加えることが好ましい。有機溶媒としては、水溶性、非水溶性のいずれの有機溶媒でもよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、モノクロロメタン等のクロロメタン類が挙げられる。
【0025】
具体的な製造方法としては、ノニオン界面活性剤1質量部に対して、有機溶媒を0.1〜2質量部、好ましくは0.2〜1質量部加えて均一化した後、テトラメトキシシラン等のシリカ前駆体化合物をノニオン界面活性剤1モルに対して5〜100モル、好ましく10〜50モル加える。なお、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを併用する場合は、カチオン界面活性剤を全界面活性剤量の0.1〜10質量%になるようにノニオン界面活性剤に配合して、上記と同じ操作を行えばよい。
【0026】
その後、上記の混合物中のノニオン界面活性剤の濃度が0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%になるように水で希釈・混合する。シリカ前駆体化合物の反応を促進させるために水は中性又はアルカリ性であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等でpHを6〜13に調製したものがより好ましく、pHを8〜13に調製したものが更に好ましく、pHを9〜12に調整したものが最も好ましい。
【0027】
水で希釈・混合した後、そのまま静置しておくと外周にシリカ前駆体化合物が配位したミエリン像が形成され、更に20〜60℃で5時間〜1週間静置することで、ミエリン像の外周に配位したシリカ前駆体化合物が自己反応してチューブ状のシリカが形成される。
【0028】
今までシリカナノチューブを製造する際には、シリカ前駆体化合物を反応させる目的及びノニオン界面活性剤を除去する目的で焼成を行なっていた。しかしながら本発明のシリカナノチューブの製造方法では、シリカ前駆体化合物の反応を促進させるために使用する水のpHを調製し、更に、ミエリン像を形成したままシリカ前駆体化合物が完全に反応するまで静置する。これにより、ミエリン像を形成したままシリカナノチューブが形成することとなり、ミエリン像を形成している不必要なノニオン界面活性剤等は洗浄により除去することができる。
【0029】
洗浄方法としては、例えば、反応が終了した系をろ過して反応溶媒を除去した後、少量の溶媒(好ましくは純水)を加えてろ過する洗浄操作を繰り返して行えばよい。しかし、反応が終了した系が増粘している場合やゲル状になっている場合は、ろ過時に大きな圧力がかかりシリカナノチューブが壊れる場合もある。こうしたことを防止するために、反応を終了した系を凍結乾燥、減圧乾燥、あるいは加熱乾燥して反応溶媒を除去することが好ましく、中でも凍結乾燥がより好ましい。凍結乾燥とは、反応終了後の系を液体窒素等で凍結させた後、減圧状態で系内の溶媒を除去する方法である。これにより、シリカナノチューブがほとんど壊れることなく反応溶媒を除去することができる。反応溶媒が除去されると、ミエリン像内のノニオン界面活性剤等は二分子膜を維持できず、その後の溶媒洗浄で容易にノニオン界面活性剤等を除去することが可能になる。
【0030】
本発明の製造方法で得られたシリカナノチューブは、様々な用途に利用できると考えられており、例えば、軽量材料、吸着剤、分離剤、触媒材料あるいはガス吸蔵材料等としての利用が期待できる。
【実施例】
【0031】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
<実験に使用した物質>
(i)界面活性剤
(ノニオン界面活性剤)
P103(BO型):(一般式(1)において、R=ブチレン基、y=45、x=17、z=17)
L152(BO型):(一般式(1)において、R=ブチレン基、y=69、x=14、z=14)
P153(BO型):(一般式(1)において、R=ブチレン基、y=45、x=24、z=24)
P105(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=60、x=37、z=37)
P123(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=70、x=20、z=20)
P103(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=60、x=17、z=17)
P121(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=70、x=7、z=7)
P122(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=70、x=12、z=12)
P124(PO型):(一般式(1)において、R=プロピレン基、y=70、x=29、z=29)
(ii)(カチオン界面活性剤)
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)
(iii)シリカ前駆体化合物
テトラエトキシシリケート(TEOS:一般式(3)において、R〜R=エチル基)
(iv)反応溶媒
超純水
クロロホルム
(v)pH調整剤
アンモニア水
【0032】
<シリカナノチューブ1の製造>
ノニオン界面活性剤P103(BO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.13g(P103(BO型)に対して30倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=12.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、超純水にて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ1を得た。
【0033】
<シリカナノチューブ2の製造>
ノニオン界面活性剤L152(BO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.1g(L152(BO型)に対して30倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=12.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、超純水にて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ2を得た。
【0034】
<シリカナノチューブ3の製造>
ノニオン界面活性剤P153(BO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.09g(P153(BO型)に対して30倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=12.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、超純水にて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ3を得た。
【0035】
<シリカナノチューブ4の製造>
シリカナノチューブ1の製造において、ノニオン界面活性剤P103(BO型)の0.1gを、ノニオン界面活性剤P103(BO型)を0.095g及びCTABを0.005gの混合物に変えた以外は、シリカナノチューブ1と同様の製造方法でシリカナノチューブ4を得た。
【0036】
<シリカナノチューブ5の製造>
シリカナノチューブ2の製造において、ノニオン界面活性剤L152(BO型)の0.1gを、ノニオン界面活性剤L152(BO型)を0.095g及びCTAB0.005gの混合物に変えた以外は、シリカナノチューブ2と同様の製造方法でシリカナノチューブ5を得た。
【0037】
<シリカナノチューブ6の製造>
シリカナノチューブ3の製造において、ノニオン界面活性剤P153(BO型)の0.1gを、ノニオン界面活性剤P153(BO型)を0.095g及びCTAB0.005gの混合物に変えた以外は、シリカナノチューブ3と同様の製造方法でシリカナノチューブ6を得た。
【0038】
<シリカナノチューブ7の製造>
ノニオン界面活性剤P105(PO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.13g(P105(PO型)に対して40倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=10.3に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、超純水にて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ7を得た。
【0039】
<シリカナノチューブ8の製造>
ノニオン界面活性剤P123(PO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.14g(P123(PO型)に対して40倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=9.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、超純水にて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ8を得た。
【0040】
<シリカナノチューブ9の製造方法>
ノニオン界面活性剤P103(PO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOS0.1g(P103(PO型)に対して24倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=9.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、メタノールにて洗浄及びろ過の工程を3回繰り返してノニオン界面活性剤等の不純物を除去し、減圧乾燥をしてシリカナノチューブ9を得た。
【0041】
<シリカナノチューブ10〜14>
シリカナノチューブ10〜14の製造方法は、ノニオン界面活性剤の種類を変えた以外はシリカナノチューブ9の製造方法と同様に行った。P105(PO型)を使用したものがシリカナノチューブ10、P121(PO型)がシリカナノチューブ11、P122(PO型)がシリカナノチューブ12、P123(PO型)がシリカナノチューブ13、P124(PO型)がシリカナノチューブ14である。
なお、シリカナノチューブ10〜14における、ノニオン界面活性剤に対するTEOSの割合は、シリカナノチューブ10が30倍モル、シリカナノチューブ11が22倍モル、シリカナノチューブ12が24倍モル、シリカナノチューブ13が27倍モル、シリカナノチューブ14が30倍モルである。
【0042】
<比較品>
ノニオン界面活性剤P103(BO型)を0.1g、クロロホルムを0.05g、TEOSを0.13g(P103(BO型)に対して30倍モル)を混合した系に、アンモニア水でpH=12.0に調製した超純水を10g加え、25℃で3日間静置して反応させた。反応により構造体を形成した後、凍結乾燥を10時間行って反応溶媒を除去した。その後、550℃で5時間焼成を行なって不純物を除去した。
【0043】
上記のシリカナノチューブ1〜6、9〜14及び比較品を、透過型電子顕微鏡(日立透過型電子顕微鏡 H−7650;株式会社日立ハイテクロノジーズ製)でその形態を観察した。その写真を図面に示した。
シリカナノチューブ1〜3(図1〜3)は、いずれも20〜40nm程度の口径であることが確認できた。また、シリカナノチューブ4〜6(図4〜6)においては、カチオン界面活性剤を使用することにより口径を変化させることが可能であることが確認できた。なお図示していないが、シリカナノチューブ7および8に関しても、シリカナノチューブ1〜6、9〜14と同様に実際に製造できたことを確認した。一方、従来の製造方法である焼成を製造工程に入れた比較例(図8)では、シリカナノチューブは確認できず、チューブが崩壊していると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン界面活性剤及び自己反応性を有するシリカ前駆体化合物によりミエリン像を形成し、該シリカ前駆体化合物を反応させた後、溶媒洗浄にて該ノニオン界面活性剤を除去する精製工程を行うことを特徴とするシリカナノチューブの製造方法。
【請求項2】
ミエリン像を含有する系内のpHを6〜13に調製した後にシリカ前駆体化合物を反応させることを特徴とする請求項1に記載のシリカナノチューブの製造方法。
【請求項3】
精製工程として、凍結乾燥後に溶媒洗浄をすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリカナノチューブの製造方法。
【請求項4】
ノニオン界面活性剤が、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリカナノチューブの製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数3又は4のアルキレン基を表し、x、y及びzは、それぞれ独立して1〜300の数を表す。)
【請求項5】
更に、下記の一般式(2)で表されるカチオン界面活性剤をノニオン界面活性剤と併用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシリカナノチューブの製造方法。
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aはハロゲン原子を表す。)
【請求項6】
全界面活性剤中のカチオン界面活性剤の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項5に記載のシリカナノチューブの製造方法。
【請求項7】
自己反応性を有するシリカ前駆体化合物が下記の一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシリカナノチューブの製造方法。
【化3】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148965(P2012−148965A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285508(P2011−285508)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月 4日 社団法人色材協会発行の「2010年度色材研究発表会 講演要旨集」において文書をもって発表
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】