説明

シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体及びその製造方法、並びにゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】シリカが微細に分散したシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスから得られるシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体及びその製造方法、並びに該複合体を含むゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの低燃費化のために充填剤としてシリカを配合し、良好な低発熱性を得ることが検討されているが、シリカは、表面にシラノール基を有し、親水性を示すため、一般に疎水性を示すゴムとの親和性が低く、更に自己凝集性も強いため、ゴム中に均一に分散させることは容易ではない。
【0003】
シリカをゴム中に分散させる方法として、天然ゴムラテックスにシリカスラリーを添加、攪拌した後、酸を添加しゴムを凝固させる方法が知られている。この方法によれば、ゴムとシリカをドライ状態で混合する方法に比べて、シリカの分散性が良くなるものの、その分散性は未だ充分とはいえず、シリカのロスも多い。
【0004】
また、特許文献1にもゴムラテックスに水ガラスから製造される微粒子シリカを液体状態で混合し、複合体を製造する方法が開示されているが、スチレンブタジエンゴムラテックスを用いた製法を提案するものではない。また、シリカの分散性、ロスという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−51955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、シリカが微細に分散したシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該複合体を用いたゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
シリカが微細に分散したシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体の調製において、スチレンブタジエンゴムラテックスとシリカスラリーの混合物のpHを酸性側に調整して凝固させる方法では、ゴムが大きなブロックとなり、シリカがゴムに十分に取り込まれないため、シリカとゴムが分離してしまう。その結果、シリカが大きな凝集塊となるので、シリカが均一に微分散した複合体を得られない。また、分離により、シリカの充填量が低くなり、シリカのロスも生じてしまう。
【0008】
これに関し、本発明者らは種々検討した結果、界面活性剤とアルカリを併用した存在下において乳化重合で合成されたスチレンブタジエンゴムラテックスと微粒子シリカの分散液とを混合することにより、シリカとゴムの相互作用を高めた状態で凝固でき、シリカの分散性向上が可能になることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスから得られるシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体に関する。ここで、上記アルカリがアンモニアであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程1、及び上記工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7に調整し、凝固させる工程2を含む上記シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体の製造方法に関する。
【0011】
本発明はまた、上記シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体を含むゴム組成物に関する。本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスを用いているので、ゴム成分中にシリカを微細に分散したシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体を得ることができる。また、製造時のシリカやスチレンブタジエンゴムのロスも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の複合体のろ液の状態を示す写真。
【図2】比較例1の複合体のろ液の状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体>
本発明のシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体(シリカ・SBR複合体)は、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックス(E−SBRラテックス)と、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスから得られる。
【0015】
本発明における検討により、非イオン性界面活性剤の存在下でE−SBRラテックス及び微粒子シリカ分散液を混合した場合、酸などを添加しても凝固しないのに対し、非イオン性界面活性剤とともにアンモニアなどのアルカリを併用することで、シリカとゴムの相互作用を高め、シリカとゴムの分離やシリカの凝集を抑制できるだけでなく、良好な凝固性も得られるため、シリカが均一に微分散した複合体を調製できる。アルカリ添加による凝固メカニズムについては必ずしも明らかではないが、pHの影響、アンモニウムイオンによる電荷の影響などが有効に働く結果、凝固が進行すると推察される。
【0016】
また、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で複合体を調製することで、シリカやスチレンブタジエンゴムのロスも抑制できる。
【0017】
上記複合体は、例えば、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、E−SBRラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程1、及び上記工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7に調整し、凝固させる工程2を含む製造方法により得られる。
【0018】
(工程1)
工程1では、E−SBRラテックスが使用される。ここで、E−SBRラテックスのpHは、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが8.5未満では、E−SBRラテックスが不安定となり、凝固しやすい傾向がある。E−SBRラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。該pHが12を超えると、E−SBRラテックスが劣化するおそれがある。
【0019】
E−SBRラテックスは、従来公知の製法で調製でき、各種市販品も使用できる。
なお、E−SBRラテックスは、ゴム固形分が10〜70質量%のものを使用することが好ましい。
【0020】
工程1では、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液が使用される。即ち、シリカの粉末ではなく、特定粒径のシリカが水中に分散した分散液(スラリー)が使用される。分散液に含まれる微粒子シリカとしては、特に制限はないが、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられ、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。微粒子シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記分散液において、微粒子シリカの平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。1μmを超えると、破壊強度が劣る傾向がある。該平均粒子径は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上である。0.005μm未満であると、微粒子シリカが強く凝集し、分散させることが難しくなるおそれがある。
【0022】
なお、本明細書において、微粒子シリカの平均粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が用いられる。具体的には、微粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、微粒子の形状が球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状又は棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には中心部からの平均粒径を粒子径とし、微粒子100個の粒径の平均値を平均粒子径とする。
【0023】
上記分散液において、微粒子シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、60m/g以上がより好ましく、140m/g以上が更に好ましい。40m/g未満では、破壊強度が劣る傾向がある。また、該NSAは300m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。300m/gを超えると、微粒子シリカが強く凝集し、分散させることが難しくなるおそれがある。
なお、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
【0024】
上記微粒子シリカ分散液は、公知の方法で製造でき、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用いて、微粒子シリカを分散させることで調製できる。ここで、上記分散液中の微粒子シリカの含有量は特に限定されないが、分散液(100質量%)中での均一分散性の点から、1〜10質量%が好ましい。
【0025】
工程1では、非イオン性界面活性剤が使用される。非イオン性界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリブチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;高級脂肪酸アルカノールアミドなど、従来公知のものを使用でき、ポリオキシエチレン基によりシリカ表面との水素結合力を増加できる点から、親水性基としてポリオキシエチレン基、疎水性基として炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤を好適に使用できる。
【0026】
このような非イオン性界面活性剤として、本発明の効果が良好に得られるという点から、下記式(I)で表される化合物を好適に使用できる。
−O−(EO)−H (I)
(式(I)において、Rは炭素数3〜50のアルキル基又は炭素数3〜50のアルケニル基を表す。EOはオキシエチレン基を表す。平均付加モル数xは3〜100である。)
【0027】
上記Rの炭素数は、好ましくは5〜30、より好ましくは8〜20である。
上記xは、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30である。
【0028】
工程1では、アルカリが使用される。これにより、ゴム成分の凝固を充分に進行させ、ゴム成分中にシリカを微細に分散したシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体を得ることができる。アルカリとしては特に限定されず、従来公知の塩基性化合物を使用でき、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。なかでも、凝固性が優れ、シリカが均一に分散した複合体が良好に得られるという理由から、アンモニアが好ましい。
【0029】
工程1の混合工程では、非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、E−SBRラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを公知の方法により混合できる。ブレンダーミルなどの公知の攪拌装置にE−SBRラテックスを入れ、撹拌しながら、微粒子シリカ分散液、非イオン性界面活性剤及びアルカリを滴下する方法や、微粒子シリカ分散液を撹拌しながら、これにE−SBRラテックス、非イオン性界面活性剤及びアルカリを滴下する方法などが挙げられる。均一な分散液になるまで十分に攪拌することで、配合ラテックス(混合液)を調製できる。
【0030】
配合ラテックスのpHは、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが9.0未満では、配合ラテックスが不安定になる傾向がある。配合ラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11.5以下である。該pHが12を超えると、配合ラテックスが劣化するおそれがある。
【0031】
上記混合工程では、SBR100質量部(固形分)に対して微粒子シリカが5〜150質量部(SiO換算)となるように微粒子シリカ分散液を混合することが好ましい。5質量部未満であると、微粒子シリカの配合量が少なく、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。150質量部を超えると、シリカの均一分散性が低下する傾向がある。該微粒子シリカの含有量は、より好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
【0032】
上記混合工程において、界面活性剤の添加量は、SBR100質量部(固形分)に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、非イオン性界面活性剤の配合量が少なく、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。10質量部を超えると、非イオン性界面活性剤が物性の劣化に影響する傾向がある。シリカの均一分散性が低下する傾向がある。該添加量は、より好ましくは0.3質量部以上である。また、該添加量は、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0033】
上記混合工程において、アルカリの添加量は、SBR100質量部(固形分)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。該含有量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下である。また、上記アルカリとしてアンモニアを使用する場合、アンモニアの添加量は、SBR100質量部(固形分)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。該含有量は、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。アルカリやアンモニアの添加量が下限未満であると、ゴムの凝固性が劣り、所望の複合体が得られないおそれがある。上限を超えると、シリカの均一分散性が低下する傾向がある。
【0034】
上記アルカリとしてアンモニアを使用する場合、良好な凝固性が得られる点から、好ましくは2〜20質量%(より好ましくは5〜15質量%)の濃度のアンモニア水を使用することが好ましい。
【0035】
上記混合工程の温度及び時間は、均一な配合ラテックスが調製できる点から、好ましくは10〜40℃で30〜120分、より好ましくは15〜30℃で45〜90分である。
【0036】
(工程2)
工程2では、工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7(好ましくは6〜7)に調整し、凝固させる。pHが5未満であると、シリカの分散が悪化する傾向がある。また該pHが7を超えると、凝固が進行せず、シリカの分散が悪化する傾向がある。
【0037】
pH5〜7に調整し、配合ラテックスを凝固させる方法としては、通常、酸が使用され、これを配合ラテックスに添加することで凝固される。凝固させるための酸としては、硫酸、塩酸、蟻酸、酢酸などが挙げられる。凝固工程の温度は、10〜40℃で行うことが好ましい。
【0038】
得られた凝固物(凝集ゴム及びシリカを含む凝集物)を公知の方法でろ過、乾燥させ、更に乾燥後、2軸ロール、バンバリーなどでゴム練りを行うと、微粒子シリカがSBRマトリックスに均一に分散した複合体を得ることができる。
なお、本発明のシリカ・SBR複合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
【0039】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記シリカ・SBR複合体を含有する。上記シリカ・SBR複合体は、マスターバッチとして使用できる。上記シリカ・SBR複合体はゴム中にシリカが均一に分散しているので、他の成分と混合したゴム組成物においてもシリカを均一に分散できる。そのため、効果的な補強性の発揮が期待できる。
【0040】
本発明のゴム組成物には、上記シリカ・SBR複合体以外に、タイヤ工業において一般的に用いられているSBR以外のゴム成分、カーボンブラックなどの充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤等の各種材料を適宜配合できる。
【0041】
<空気入りタイヤ>
本発明のゴム組成物は空気入りタイヤに好適に使用できる。上記空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0042】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR(E−SBRラテックス):公知の手法により合成した。(スチレン含量:23.5質量%、ゴム固形分濃度:23質量%、pH:10.1)
湿式シリカ:(株)トクヤマ製トクシールUSG(平均粒子径:20nm、NSA:170m/g)
非イオン性界面活性剤:ハンツマン(株)製のteric 16A29(CH(CH15(OC29−OH)
10%硫酸:和光純薬工業(株)製
10質量%アンモニア水:和光純薬工業(株)製
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルーp−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0044】
<実施例1>
(シリカ分散液の調製)
湿式シリカ4.5gに純水85.5gを添加し、シリカ5%懸濁液を作製し、これを攪拌、及び超音波処理を10分間行い、シリカ分散液を得た。
【0045】
(シリカ・SBR複合体の調製)
E−SBRラテックス43.5gに、シリカ分散液90g、界面活性剤0.5g及び10質量%アンモニア水0.5gを添加し、室温で1時間混合、攪拌し、pH9.8の配合ラテックスを得た。次いで、室温下で硫酸を加え、pH6〜7に調整し、凝固物を得た。得られた凝固物をろ過し、乾燥してシリカ・SBR複合体1を得た。
【0046】
<実施例2>
界面活性剤0.05gに変更した以外は、実施例1の方法と同様にして、シリカ・SBR複合体2を得た。
【0047】
<比較例1〜2>
比較例1では、10質量%アンモニア水を添加しなかった他は実施例と同様の方法により、シリカ・SBR複合体を得た。
比較例2では、界面活性剤を添加しなかった他は実施例と同様の方法により、シリカ・SBR複合体を得た。
【0048】
得られたシリカ・SBR複合体を用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
(ろ過操作)
上記複合体の調製におけるろ過操作性について、凝集塊が生成し、ろ過操作が可能であるか否かを評価した。
【0050】
(ろ液の状態(シリカ・SBRロス))
シリカ及びSBRのロスについて、ろ過後のろ液の状態を観察し、下記基準で評価した。
透明又は半透明:ロスがほとんどない。
白濁:ロスが多い。
【0051】
(乾燥後試料(シリカ・SBR複合体))
乾燥後試料におけるシリカ分散性を下記基準により、目視で評価した。
半透明:シリカの分散性が良好である。
不透明:シリカの分散性が悪い。
【0052】
【表1】

【0053】
10質量%アンモニア水及び界面活性剤を用いた実施例では、凝集塊が生成し、ろ過性が良好であったのに対し、比較例ではろ過しても固形分を回収できなかった。また、実施例のろ液の状態は透明であり、シリカとSBRのロスがほとんどなかったが、比較例では白濁し、ロスが多かった(図1、2)。
【0054】
乾燥後試料について、実施例では、試料が半透明であり、シリカが均一に分散していることがわかった。比較例では、試料が不透明であり、シリカの分散性が実施例に比べて劣っていた。
【0055】
<実施例3〜4及び比較例3>
表2に示す配合に従って、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、ロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫して加硫物を得た。得られた加硫物を下記方法により評価し、結果を表2に示した。
【0056】
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)のtanδを測定し、比較例3のゴム試験片のtanδを100として、下記計算式により、各配合を指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)が優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例3のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0057】
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定されたランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例3のゴム試験片の容積損失量を100とし、下記計算式により、各配合を指数表示した(耐摩耗指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗指数)=(比較例3の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0058】
(破断強度・破断時伸び)
加硫物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。比較例3のゴム試験片のTB、EBを100とし、下記計算式により、各配合を指数表示した。TB指数が大きいほど、補強性に優れ、EB指数が大きいほど耐クラック性に優れることを示す。
(TB指数)=(各配合のTB)/(比較例3のTB)×100
(EB指数)=(各配合のEB)/(比較例3のEB)×100
【0059】
【表2】

【0060】
非イオン性界面活性剤とアルカリの存在下において、E−SBRラテックスと微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスから作製したシリカ・SBR複合体を用いた実施例3〜4の配合ゴムは、SBR、シリカなどを混練して作製した比較例3のものに比べて、低燃費性、耐摩耗性、破断強度及び破断時伸びが高い次元でバランスよく得られた。特に、複合体の作成時における界面活性剤を減量した実施例4では、より顕著な効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して調製された配合ラテックスから得られるシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体。
【請求項2】
前記アルカリがアンモニアである請求項1記載のシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤及びアルカリの存在下で、乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスと、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程1、及び前記工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7に調整し、凝固させる工程2を含む請求項1又は2に記載のシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体を含むゴム組成物。
【請求項5】
請求項4記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100479(P2013−100479A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221538(P2012−221538)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】