説明

シリカ分散液の製造方法、及びインクジェット記録媒体の製造方法

【課題】インクジェット記録媒体のインク受容層用塗布液を調製した場合に、該塗布液が塗布適性に優れ、かつ、塗布液が高粘度化しないシリカ分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】気相法シリカ及び分散剤を含む液を予分散する予分散工程と、前記予分散により得られた分散液を、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散する微分散工程と、前記微分散後の分散液を加熱処理する加熱処理工程と、を有するシリカ分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ分散液の製造方法及びインクジェット記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法および記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
このインクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像がにじまないこと(経時ニジミが良好な事))、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記した諸特性の向上を目的として、近年では微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する多孔質構造をインク受容層に有するインクジェット記録媒体が開発され実用化されている。このようなインクジェット記録媒体は多孔質構造を有することで、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性(速乾性)に優れ高い光沢を有するものとなる。
【0005】
通常インクジェット記録媒体は、支持体にインク受容層塗布液を塗布することにより作製される。そしてインク受容層塗布液は、微粒子とカチオンポリマーを含む水性液を予分散した後、さらに微粒子を微粒化して微粒化分散液を調製し、これに水溶性樹脂あるいはこれにさらに架橋剤等を添加して製造される。しかしながら、このようにして製造したインク受容層塗布液は往々にして高粘度化し、塗布適性や濾過適性を失うことがあった。
【0006】
上記特性を改良する方法として、微粒子分散液が高粘度化しないとする、微粒子及びカチオンポリマーを含む液を予分散及び/又は微粒化後に室温より高い温度で加熱処理した分散液が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、高光沢性を有し、インク吸収容量が大きく、塗布面に塗布すじ、ひび割れ等の故障がないとする、微粒子とバインダーと分散剤を含有し、分散剤の飽和吸着量に対して75〜125質量%の分散剤存在下で分散するインクジェット記録用紙の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−43628号公報
【特許文献2】特開2004−276363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2には、塗布液の粘度及び塗布すじ、ひび割れ等を向上するとの記載はあるものの、塗布液の塗布適性及びインクジェット記録媒体の画像濃度の点では必ずしも充分と言えるものではなかった。
本発明は、インクジェット記録媒体のインク受容層用塗布液を調製した場合に、塗布適性に優れた該塗布液の製造が可能で、該塗布液が高粘度化しないシリカ分散液の製造方法を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
また、本発明は、高い画像濃度の実現が可能なインクジェット記録媒体の製造方法を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>
気相法シリカ及び分散剤を含む液を予分散する予分散工程と、
前記予分散により得られた分散液を、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散する微分散工程と、
前記微分散後の分散液を加熱処理する加熱処理工程と、
を有するシリカ分散液の製造方法。
<2>
前記予分散工程は、予分散して得られた前記分散液を25℃以下に冷却した後に、ジルコニウム化合物を添加する<1>に記載のシリカ分散液の製造方法。
<3>
前記加熱処理工程は、温度30〜80℃で、1時間以上加熱処理を行う<1>又は<2>に記載のシリカ分散液の製造方法。
<4>
前記ジルコニウム化合物の添加量が、気相法シリカ全質量に対して、1〜10質量%である<2>又は<3>に記載のシリカ分散液の製造方法。
<5>
<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、水溶性樹脂とを混合して塗布液を調製する塗布液調製工程と、支持体上に前記塗布液を塗布してインク受容層を形成するインク受容層形成工程と、を含むインクジェット記録媒体の製造方法。
<6>
インク受容層形成工程は、(1)前記塗布液を塗布すると同時に、又は、(2)前記塗布液の塗布によって形成される塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なってインク受容層を形成する<5>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット記録媒体のインク受容層用塗布液を調製した場合に、塗布適性に優れた該塗布液の製造が可能で、塗布液が高粘度化しないシリカ分散液の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高い画像濃度の実現が可能なインクジェット記録媒体の製造方法を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪シリカ分散液の製造方法≫
本発明のシリカ分散液の製造方法は、気相法シリカ及び分散剤を含む液を予分散する予分散工程と、
予分散により得られた分散液を、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散する微分散工程と、
前記微分散した分散液を加熱する加熱処理工程と、
を有して構成され、更に、必要に応じて、その他の工程を設けることができる。
本発明のシリカ分散液の製造方法は、特に、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散し、微分散した液を加熱処理する構成をとることにより、インクジェット記録媒体のインク受容層塗布液を調製した場合に、該塗布液が高粘度化しないシリカ分散液を得ることができる。
上記で得られたシリカ分散液は、後述の支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体の製造方法に用いることができる。
【0012】
[予分散工程]
予分散工程は、気相法シリカを溶媒になじませるために微分散前の分散処理を行う工程である。該工程は気相法シリカを含む液(気相法シリカ分散液)をあらかじめ調製し、該分散液を分散剤を含む液(分散剤溶液)に添加してもよいし、分散剤溶液を気相法シリカ分散液に添加してもよいし、両液を同時に混合してもよいし、溶媒に気相法シリカ、分散剤を少量ずつ分割して混合して行ってもよい。中でも、溶媒に気相法シリカ、分散剤を少量ずつ分割して混合するのが特に好ましい。
予分散時の分散剤の添加量は、分散剤の全量を添加してもよいし、分散剤の一部のみを添加して残りの分散剤を後述の微分散時に添加してもよいが、分散剤の全量を添加することが好ましい。
予分散時の分散剤の添加量は、分散剤の全量を添加する場合は、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して、40質量%以上74質量%以下とする。
【0013】
また、本発明のシリカ分散液の製造方法は、予分散して得られた前記気相法シリカと分散剤を含む分散液(予分散液)にジルコニウム化合物を添加することが、後述のインク受容層形成用塗布液の粘度、インクジェット記録媒体の画像濃度向上の観点から好ましい。
更に、画像濃度向上の観点から、本発明のシリカ分散液の製造方法は、予分散液を25℃以下に冷却してからジルコニウム化合物を添加することが好ましく、予分散液の冷却時間の観点から温度15℃〜25℃での添加がより好ましい。
【0014】
予分散工程は、公知の分散方法を利用することができ、公知の分散装置を用いることができる。
分散処理時における回転又は撹拌速度や処理時間などの分散条件については、組成や使用する分散装置などにより適宜選択すればよい。
例えば、予分散するには、気相法シリカと分散剤を溶媒に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、(株)シンマルエンタープライゼス製KDL−PILOTを用いて、分散させる方法等が挙げられる。
【0015】
(気相法シリカ)
予分散する液は、気相法シリカの少なくとも1種を含有して構成される。
気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって合成されたシリカ(無水シリカ微粒子)を意味する。
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0016】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0017】
気相法シリカの平均一次粒子径としては、30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。前記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
気相法シリカの含有量は、予分散液全質量に対して、10〜30質量%が好ましく、13〜25質量%がより好ましい。
気相法シリカの後述のインク受容層中における含有量としては、インク受容層の全固形分に対し、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
【0018】
(分散剤)
本発明においては、予分散する液には分散剤の少なくとも1種を含有する。
分散剤としては、シリカ分散液の経時変化、インク受容層形成用塗布液の高粘度化の抑制及び画像濃度の向上の観点から、カチオンポリマーが好ましい。
カチオンポリマーとしては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適に用いられる。
上記カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(カチオンモノマー)の単独重合体や、該カチオンモノマーと他のモノマー(以下、「非カチオンモノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマーは、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0019】
上記単量体(カチオンモノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0020】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0021】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0022】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0023】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0024】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミンおよびジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0025】
前記非カチオンモノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非カチオンモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非カチオンモノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0027】
更に、カチオンポリマーとして、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー等も好ましいものとして挙げることができる。
【0028】
前記カチオンポリマーとして、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特開平7−118333号、特開2000−344990号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報に記載のもの等が挙げられる。中でもポリアリルアミン及びその誘導体が好ましく、構造的には、ジアリルジメチルカチオンポリマーが好ましい。
【0029】
前記ポリアリルアミン又はその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体及びその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、あるいはこれらの組み合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0030】
ポリアリルアミンおよびその誘導体の具体例としては、特公昭62‐31722号、特公平2‐14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10‐330427号、同11‐21321号、特開2000‐281728号、同2001‐106736号、特開昭62−256801号、特開平7‐173286号、同7‐213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11‐21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11‐506488号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0031】
本発明における分散剤としては、上記の中でも、ジアリルジアルキルカチオンポリマーがより好ましく、ジアリルジメチルカチオンポリマーがさらに好ましい。
また、本発明における分散剤としては、分散性向上、特に増粘防止の観点から、重量平均分子量が60000以下のカチオンポリマーであることが好ましく、特に40000以下のカチオンポリマーが特に好ましい。
【0032】
(ジルコニウム化合物)
本発明に用いられるジルコニウム化合物としては、特に限定されず種々の化合物が使用できる。
本発明に用いられるジルコニウム化合物としては、例えば、ヒドロキシ塩化ジルコニル、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。
これらのジルコニウム化合物の中でも、シリカ分散液の増粘の抑制の観点から、ヒドロキシ塩化ジルコニル、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウムから選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシ塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルがより好ましく、ヒドロキシ塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルが特に好ましい。
前記ジルコニウム化合物の添加量は、気相法シリカ全質量に対して、上記シリカ分散液の経時変化、インク受容層形成用塗布液の高粘度化の抑制、インクジェット記録媒体の画像濃度向上の観点から、1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0033】
(溶媒)
本発明における予分散液に用いることができる溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0034】
[微分散工程]
微分散工程は、前記予分散工程で予分散して得られた分散液を、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散する工程であり、前記予分散液を更に微粒化することができる。
本発明において、「微粒化」とは、予分散後の分散液を分散機により体積平均粒径が5μm以上の粗大粒子の割合が5%以下となるように微粒化することをいう。体積平均粒径は、微粒化後の液を粒径測定機(例えばHORIBA(株)製のLA910)により測定して求められる値である。
微分散時の分散剤の添加量は予分散時の分散剤の添加量を除いた量を添加することとなり、分散剤を含む液として分散剤の全量では、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して、40質量%以上74質量%以下とし、40質量%未満であるとシリカ分散液を用いて得られたインク受容層形成用塗布液の粘度は高くなり、塗布適性が悪くなる。また、74質量%を超えると、シリカ微分散後のシリカ分散液を用いて製造されたインクジェット記録媒体の画像濃度は低く、また、時間経過ともに更に低下するという性能変化を起す。
分散剤を含む液として微分散時の分散剤全体の添加量は、上記シリカ分散液の経時変化、インク受容層形成用塗布液の高粘度化の抑制、インクジェット記録媒体の画像濃度向上の観点から、45質量%以上74質量%以下が好ましく、55質量%以上74質量%以下がより好ましく、55質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
【0035】
微分散に用いる分散機としては高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種分散機を用いることができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なう観点から、媒体攪拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
微分散は、気相法シリカの再凝集抑制の観点から予分散後7日以内に行なうことが好ましく、コスト、生産性の観点から2日以内がより好ましい。
微分散を行なう際の分散剤量は、予分散時に分散剤を分割添加した場合、残りの分散剤を添加して行う。
【0036】
本発明における微分散液(微粒化分散液)には、前記気相法シリカ、分散剤、及び好ましくはジルコニウム化合物が含有されるが、微粒化分散液に含まれる成分はインクジェット記録媒体のインク受容層の構成要素となるものであり、更に、その他の成分を含有することができる。
【0037】
(その他の成分)
−微粒子−
本発明の効果を損なわない範囲で、気相法シリカ以外の微粒子を添加してもよい。
有機微粒子、無機微粒子のいずれでもよいが、インク吸収性及び画像安定性の点から、無機微粒子が好ましい。
【0038】
上記有機微粒子として好ましいものとしては、例えば乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
【0039】
上記無機微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。
【0040】
アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0041】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜25nmが好ましく、2〜10nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0cc/gが好ましく、0.5〜1.5cc/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径は50nm以下であり、20nm以下が更に好ましい。
更に、平均一次粒径が50nm以下のコロイダルシリカも好ましいものとして挙げられる。
すなわち、本発明に用いてもよい無機微粒子としては、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0042】
上述の微粒子をインクジェット記録媒体に用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0043】
<加熱処理工程>
加熱処理工程は、前記微分散した分散液を加熱する工程である。
加熱処理を行うことにより、シリカ分散液の増粘を効果的に抑制することができる。
微分散後の加熱処理は、再凝集や水の蒸発による粘度上昇を抑制する観点で、30℃〜80℃であることが好ましく、35℃〜60℃であることがより好ましい。加熱時間は加熱温度等に依存し、室温に近い温度では加熱時間を長くする必要がある。30℃〜80℃で加熱処理を行う場合、加熱時間は1〜40時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、5〜15時間が更に好ましい。35℃〜60℃で加熱処理を行う場合、加熱時間は1〜20時間が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
加熱処理後、シリカ分散液の増粘抑制の観点から、インク受容層形成用塗布液を作製するまでの時間は、2日以内であることが好ましい。
【0044】
≪インクジェット記録媒体の製造方法≫
次に、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法について説明する。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に少なくとも1層からなるインク受容層を有するインクジェット記録媒体の製造方法であって、支持体上に少なくとも1層のインク受容層を形成するインク受容層形成工程を有している。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、本発明のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と水溶性樹脂とを混合して塗布液を調製する工程(塗布液調製工程)と、支持体上に前記塗布液を塗布してインク受容層を形成する工程(インク受容層形成工程)と、を有する。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、上記構成とすることにより、高粘度化が抑制され、かつ、塗布適性に優れた塗布液を用いて、画像濃度に優れるインク受容層を有するインクジェット記録媒体を製造することができる。
【0045】
更に、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法のインク受容層形成工程は、(1)前記塗布液を塗布すると同時に、又は、(2)前記塗布液塗布によって形成されるインク受容層の乾燥途中であって前記インク受容層が減率乾燥を示す前、の何れかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記インク受容層の架橋硬化を行なう硬化工程、を更に有することが好ましい。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、上記工程以外に、更に、必要に応じてその他の工程を設けてもよい。
以下、本発明のインクジェット記録用媒体の製造方法について説明する。
【0046】
[塗布液調製工程]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、本発明のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、水溶性樹脂とを混合して塗布液を調製する塗布液調製工程を含む。
塗布液は、水溶性樹脂を水溶液としてシリカ分散液に添加して調製することが塗布液の物性(粘度)の変化が少なく、経時安定性に優れる塗布液となる点で好ましい。
【0047】
本発明において塗布液(以下、「インク受容層形成用塗布液」ということがある)は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
本発明のシリカ分散液の製造方法により得られたシリカ分散液に、水溶性樹脂の水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量の水溶性樹脂となるように)を加えて調製することができる。
得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
【0048】
本発明においては、塗布液及び塩基性化合物を含む液を得るためにシリカ分散液の項に記載の分散機等を用いることができる。
【0049】
前記水溶性樹脂の水溶液は、必要に応じて、更にpH調整剤、分散剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【0050】
<塗布液>
本発明における塗布液は、上記シリカ分散液に更に水溶性樹脂を少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
塗布液に用いるシリカ分散液の構成成分は、シリカ分散液の製造方法に記載された成分と同じであり、好ましい例も同様である。
【0051】
(水溶性樹脂)
塗布液は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含んで構成される。
水溶性樹脂としては、特に限定されず用いることができる。例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0052】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の「0011」〜「0014」に記載の化合物なども挙げられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0053】
水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0054】
インク受容層を主として構成する、前記気相法シリカ(以下、シリカ微粒子ともいう。)と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系であってもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、気相法シリカに組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカにおいては、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0055】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記気相法シリカの表面シラノール基とが水素結合を形成するため、気相法シリカの二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層が形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0056】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0057】
−気相法シリカと水溶性樹脂との含有比−
気相法シリカ(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、インク受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0058】
インク受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0059】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、インクジェット記録媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、インク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0060】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該インク受容層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が25nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0061】
(架橋剤)
本発明における塗布液は、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含んでもよい。前記架橋剤の含有により、前記水溶性樹脂の架橋反応によって硬化された多孔質のインク受容層が得られる。
【0062】
上記架橋剤としては、インク受容層に含まれる水溶性樹脂との関係で好適なものを適宜選択すればよいが、中でも、架橋反応が迅速である点でホウ素化合物が好ましく、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、CsB)、六硼酸塩(例えば、Ca11・7HO)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましく、これを添加可能な水溶性樹脂であるポリビニルアルコールと組合わせて使用することが最も好ましい。
【0063】
また前記水溶性樹脂の架橋剤としては、上記ホウ素化合物の他、下記化合物も好適なものとして挙げることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0064】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
【0065】
更に、本発明における水溶性樹脂の架橋剤としては、下記に列挙する多価金属化合物も好ましい。多価金属化合物を用いることにより、架橋剤として働くだけでなく、耐オゾン、画像ニジミ、及び光沢性を一層向上させことができる。
該多価金属化合物としては、水溶性のものが好ましく、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
【0066】
上記の中でも、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物等のアルミニウム含有化合物(水溶性アルミニウム化合物);及び四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等のチタン含有化合物が好ましい。
【0067】
本発明における架橋剤としては、上記に列挙したものの中でも、ホウ素化合物が特に好ましい。
【0068】
本発明において、上記架橋剤は前記水溶性樹脂に対して5〜50質量%含有されることが好ましく、8〜30質量%含有されることがより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲であると、水溶性樹脂が効果的に架橋してインク受容層の硬度を上げ、ひび割れ等を防止すると共に、優れた耐傷性を得ることができ、更に、インク付与前後の前記気相法シリカの二次粒径変化を効果的に抑制し、その結果画像濃度が高く色相変化の少ない画質の優れた記録画像を得ることができる。
【0069】
尚、上記の架橋剤は、1種単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよいが、好適な架橋剤として働くと共に、耐オゾン、画像ニジミ、及び光沢性を一層向上させる観点から、上記多価金属化合物を少なくとも、前記水溶性樹脂に対し、0.1質量%以上含有することが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。また、特に限定されるわけではないが、上記多価金属化合物の含有量の上限は、画像濃度、インク吸収性、記録媒体のカールの抑制などの観点から50質量%以下であることが好ましい。
【0070】
本発明において、上記架橋剤は、インク受容層を形成する際に、塗布液中及び/又はインク受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、或いは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、上記塗布液を塗布する、又は架橋剤非含有の塗布液を塗布し乾燥後に架橋剤をした溶液をオーバーコートする等してインク受容層に架橋剤を供給することができる。好ましくは、製造効率の観点から、塗布液又はこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、インク受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。特に、画像の画像濃度及び光沢感の向上の観点より、塗布液に含有するのが好ましい。また、塗布液中の架橋剤の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。
【0071】
例えば、以下の様にして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。即ち、インク受容層が塗布液を塗布した架橋硬化させた層である場合、該架橋硬化は、(1)上記塗布液を塗布してインク受容層を形成すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成されるインク受容層の乾燥途中であって該インク受容層が減率乾燥速度を示す前、の何れかのときに、塩基性化合物を含む液を上記インク受容層に付与することにより行われる。架橋剤であるホウ素化合物は、上記の塗布液又は溶液の何れかに含有させればよく、塗布液及び溶液の両方に含有させてもよい。
【0072】
(溶媒)
塗布液に用いることができる溶媒としては、前記予分散液に記載された溶媒と同様である。
【0073】
(その他の成分)
本発明における塗布液は、上記成分に加え、必要に応じてその他の添加剤、例えば、特開2003−335043号公報の段落番号[0062]〜[0079]に記載の界面活性剤、媒染剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含んで構成することができる。
【0074】
−界面活性剤−
本発明において、塗布液は界面活性剤を含有しているものが好ましい。該界面活性剤としてはカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)等が挙げられ、これらの中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、塗布液および溶液において使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明において界面活性剤の含有量としては、塗布液全質量に対して0.001〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。
【0076】
−媒染剤−
本発明においては、形成画像の耐水性及び耐経時ニジミの向上を図るために、インク受容層を形成する塗布液に媒染剤の少なくとも1種を含有することができる。
上記媒染剤としては有機媒染剤としてカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)、又は無機媒染剤が好ましく、該媒染剤をインク受容層中に存在させることにより、アニオン性染料をインクとして有する液状インクとの間で相互作用しインクを安定化し、耐水性や耐経時ニジミを向上させることができる。有機媒染剤および無機媒染剤はそれぞれ単独種で使用しても良いし、有機媒染剤および無機媒染剤を併用してもよい。
【0077】
有機媒染剤としては、例えば、特開2003−335043号公報の段落番号[0045]〜[0058]に記載の有機媒染剤を挙げることができる。
本発明における有機媒染剤としては、特に経時滲みの防止の観点から、重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミン及びその誘導体が好ましい。
【0078】
無機媒染剤としては、水溶性多価金属塩等が挙げられる。無機媒染剤の具体例としては、例えば、特開2003−335043号公報の段落番号[0059]〜[0060]に記載の無機媒染剤を挙げることができる。
【0079】
無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩または錯体)が好ましい。
特にアルミニウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物が好ましい。さらに水溶性アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物ウムなど)、水溶性ジルコニウム化合物(酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウムなど)が好ましい。特にポリ塩化アルミニウムが好ましい。
無機媒染剤は単独で使用しても併用してもよい。併用して用いる場合は、少なくともアルミニウム含有化合物またはジルコニウム含有化合物を含むのが好ましい。更にアルミニウム含有化合物及びジルコニウム含有化合物を併用するのが好ましい。
本発明でインク受容層に含まれる上記媒染剤量は、0.01g/m〜5g/mが好ましく、0.1g/m〜3g/mがより好ましい。
【0080】
[インク受容層形成工程]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に前記塗布液を塗布してインク受容層を形成する工程(以下、「インク受容層形成工程」ともいう。)を含む。前記インク受容層形成工程においては、支持体上に、前記塗布液を塗布するが、更に、必要に応じて、塗布液上に、その他の塗布液を塗布してもよい。
【0081】
前記塗布液を塗布する形態としては、特に限定はなく、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布装置を用いて行うことができる。更に、必要に応じて用いられるその他の塗布液も同様に塗布することができる。
【0082】
塗布液の湿分塗布量としては、50〜200ml/mが好ましく、75〜150ml/mがより好ましい。また、塗布液の固形分塗布量としては、5〜25g/mが好ましく、10〜18g/mがより好ましい。
【0083】
[冷却工程及び乾燥工程]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、前記インク受容層形成工程で形成された前記インク受容層を冷却する工程や、前記インク受容層を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」ともいう。)を更に有してもよい。
前記インク受容層を冷却する方法としては、インク受容層が形成された支持体を、0〜10℃に保たれた冷却ゾーンで、5〜30秒冷却させて、インク受容層の冷却温度が0〜20℃となるようにする方法が好適である。
ここで、前記インク受容層の温度は、膜面の温度を測定することにより測定する。
【0084】
[硬化工程]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、(1)前記塗布液を塗布すると同時に、又は、(2)前記塗布液塗布によって形成されるインク受容層の乾燥途中であって前記インク受容層が減率乾燥を示す前、の何れかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記インク受容層の架橋硬化を行なう工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を、更に有することが好ましい。
【0085】
前記「(1)少なくとも前記塗布液を塗布すると同時」に「塩基性化合物を含む液」を付与する方法としては、前記塗布液、(必要に応じその他の塗布液)、及び「塩基性化合物を含む液」を、支持体側からこの順となるように、同時塗布(重層塗布)する形態が好適である。
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等の公知の塗布装置を用いて行うことができる。
【0086】
前記「(2)少なくとも前記塗布液を塗布して形成されたインク受容層の乾燥途中であって該インク受容層が減率乾燥を示す前」に「塩基性化合物を含む液」を付与する方法は、「Wet−On−Wet法」や「WOW法」とよばれている方法である。「Wet−On−Wet法」の詳細については、例えば、特開2005−14593号公報段落番号[0016]〜[0037]に記載されている。
本発明においては、前記塗布液(更に、必要に応じてその他の塗布液)を、支持体側からこの順となるように、同時塗布(同時重層塗布)又は1層ずつ塗布してインク受容層を形成した後、形成されたインク受容層の乾燥途中であって該インク受容層が減率乾燥を示す前に、(i)該インク受容層上に更に「塩基性化合物を含む液」を塗布する方法、(ii)スプレー等により「塩基性化合物を含む液」を噴霧する方法、(iii)前記インク受容層が形成された支持体を「塩基性化合物を含む液」中に浸漬する方法、が挙げられる。
【0087】
<塩基性化合物を含む液>
ここで、硬化工程における前記「塩基性化合物を含む液」について説明する。
〜塩基性化合物〜
本発明における「塩基性化合物を含む液」は、塩基性化合物を少なくとも1種含有する。
塩基性化合物としては、弱酸のアンモニウム塩、弱酸のアルカリ金属塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、弱酸のアルカリ土類金属塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムなど)、ヒドロキシアンモニウム、1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリへキシルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミンなど)、1〜3級アニリン(例えば、ジエチルアニリン、ジブチルアニリン、エチルアニリン、アニリンなど)、置換基を有してもよいピリジン(例えば、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)−アミノピリジンなど)、等が挙げられる。
【0088】
また、上記の塩基性化合物以外に、該塩基性化合物と共に他の塩基性物質及び/又はその塩を併用することもできる。他の塩基性物質としては、例えば、アンモニアや、エチルアミン、ポリアリルアミン等の第一アミン類、ジメチルアミン等の第二アミン類、N−エチル−N−メチルブチルアミン等の第三アミン類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、等が挙げられる。
【0089】
上記のうち特に、弱酸のアンモニウム塩が好ましい。弱酸とは、化学便覧基礎編II(丸善株式会社)等に記載の無機酸および有機酸でpKaが2以上の酸である。前記弱酸のアンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。中でも、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムであり、乾燥後において層中に残存せずインク滲みを低減できる点で効果的である。
なお、塩基性化合物は、2種以上を併用することができる。
【0090】
前記塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の「塩基性化合物を含む液」中の含有量としては、「塩基性化合物を含む液」の全質量(溶媒を含む)に対し、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の含有量を特に上記範囲とすると、充分な硬化度が得られ、またアンモニア濃度が高くなりすぎて作業環境を損なうこともない。
【0091】
前記「塩基性化合物を含む液」は、必要に応じて前記架橋剤、前記媒染剤成分を含有することができる。
「塩基性化合物を含む液」は、アルカリ溶液として用いることで硬膜を促進でき、pH7.1以上に調製されるのが好ましく、より好ましくはpH8.0以上であり、特に好ましくはpH9.0以上である。前記pHが7.1以上であると、第2の塗布液及び/又は第3の塗布液に含まれることがあるバインダーの架橋反応をより進めることができ、ブロンジングやインク受容層のひび割れをより効果的に抑制できる。
【0092】
また、「塩基性化合物を含む液」の調製に用いる溶媒には、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0093】
前記(i)において、「塩基性化合物を含む液」を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されているインク受容層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0094】
硬化工程における「インク受容層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、塗布液(更に、必要に応じその他の塗布液)の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布されたインク受容層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0095】
上記「インク受容層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥」されるための条件としては、一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0096】
−その他の工程等−
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかし、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0097】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0098】
上記インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0099】
また、インク受容層の細孔径は、平均細孔径で0.005〜0.025μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」を用いて測定することができる。
【0100】
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0101】
本発明の製造方法によって得られたインクジェット記録媒体の構成層(例えば、インク受容層あるいはバック層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0102】
<支持体>
本発明におけるインクジェット記録媒体の支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0103】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0104】
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、具体的には、例えば、特開2003−335043号公報の段落番号[0083]〜[0094]に記載の支持体が挙げられる。
【0105】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられ、例えば、特開2003−335043号公報の段落番号[0095]〜[0096]に記載の成分が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表し、「平均分子量」及び「重合度」は、「質量平均分子量」及び「質量平均重合度」を表す。
【0107】
(実施例1)
<支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネス(CSF)で300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿して支持体であるポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。
【0108】
抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100部の樹脂に対して10部のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し、オモテ面とした。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し、ウラ面とした。
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙のオモテ面に高周波コロナ放電処理を施した後、水に下記組成となるように各成分を添加した下塗り層塗布液を、ゼラチン塗布量が50mg/m(約0.05μm)となるように塗布乾燥して支持体を得た。
【0109】
「下塗り層塗布液の組成」
(1)石灰処理ゼラチン 100部
(2)スルホコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
(3)クロム明ばん 10部
【0110】
<シリカ微分散液の作製>
―シリカ予分散液Aの作製―
Conti−TDS(吸引式分散攪拌機、ダルトン(株)製)を用いて、下記組成の成分を混合して予分散を行った。そして予分散終了後の液を25℃に冷却して0.54部のZA―30(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル、固形分濃度50質量%液)を添加して予分散液を得た。
【0111】
「シリカ予分散液の組成」
(1)イオン交換水 39.87部
(2)アエロジル300(一次粒子径7nm) 10.00部
(エボニックデグッサ(株)製、気相法シリカ微粒子)
(3)シャロールDC−902P(51.5%溶液) 0.78部
(第一工業製薬(株)製、分散剤)
【0112】
―シリカ微分散液A―
上記のシリカ予分散液を液液衝突型分散機(アルティマイザー、((株)スギノマシン製)を用いて微分散を行った(分散条件 圧力:100MPa)。このとき分散剤の量は気相法の飽和吸着量に対して73質量%であった。また微分散後の液を45℃の恒温恒湿槽(エスポック(株)製)に10時間保管して加熱処理を行い、微分散液を得た。
【0113】
<ポリビニルアルコール溶解液A>
(1)PVA235 22部
(クラレ(株)製、鹸化度88.0モル%、重合度3500)
(2)イオン交換水 290部
(3)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.4部
(協和発酵ケミカル(株)製、ブチセノール20P)
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 0.4部
(花王(株)製、エマルゲン109P)
【0114】
<インクジェット記録媒体の作製>
(インク受容層の形成)
上記で作製した支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、該オモテ面に、下記組成のインク受容層形成用塗布液の132g/mに対して、下記組成からなるインライン液を9.1g/mの速度でインライン混合した塗布液をエクストルージョンダイコーターを用いて塗布を行い、インク受容層を形成した。
【0115】
「インク受容層形成用塗布液の組成」
(1)シリカ微分散液A 107部
(2)イオン交換水 11.4部
(3)ホウ酸(7.5%溶液) 10.2部
(4)SC−506(6.0%溶液) 0.16部
(ハイモ(株)製)
(5)ポリビニルアルコール溶解液A 60.5部
(6)スーパーフレックス650(25%溶液) 3.1部
(第一工業製薬(株)製、カチオン性ポリウレタン)
(7)エマルゲン109%(10%溶液) 1.3部
(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、界面活性剤)
(8)エタノール(59%水溶液) 16.8部
【0116】
「インライン液」
(1)ポリ塩化アルミニウム水溶液 2.5部
(大明化学工業(株)製、固形分濃度23%、アルファイン83、塩基度83%)
(2)イオン交換水 7.5部
【0117】
塗布により形成されたインク受容層を、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)でインク受容層の固形分濃度が36質量%になるまで乾燥させた。この間、インク受容層は恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して上記インク受容層にその13g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させ(乾燥工程)、水非浸透性の支持体の一方の面にインク受容層を形成した。このインク受容層の厚みは27μmであった。
【0118】
「塩基性化合物を含む液の組成」
(1)ホウ酸 0.65部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製) 5.0部
(3)イオン交換水 88.35部
(4)エマルゲン109%(10%溶液) 6.0部
(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、界面活性剤)
【0119】
<性能評価>
―分散剤の飽和吸着量測定―
分散剤の飽和吸着量は、分散剤の添加量を変えたシリカ分散液を作製し、それぞれ分散剤の吸着量を測定して飽和吸着量を測定した。分散剤吸着量の測定は25℃にて実施し、分散液を80000rpm、30分の条件で遠心分離(ベックマンコールター(株)製、Optima XL−100K Ultracentrifuge)し、上澄み液に含まれるシリカに未吸着の分散剤を分離し、それを24時間凍結乾燥(EYALA(株)製、フリーズドライヤーFDU−540)して水分を除去し、NMR測定(VARIAN(株)製、MERCURY)でN−メチルのピーク強度(3.2ppm)の測定を行った。分散剤を標準試料として、それとのN−メチルのピーク強度比較からシリカに吸着される分散剤の吸着量を算出した。
【0120】
―画像濃度―
フロンティアドライミニラボDL410用インク(富士フイルム(株)製)を用いて、25℃、60%RHの環境下で最高濃度の黒ベタ画像を、上記で得られたインクジェット記録媒体に印画した。得られた画像の画像濃度測定は、分光光度計スペクトロリノ(グレタグマクベス社製)を用いて視野角2°、光源F8、フィルターなしの条件で行なった。実施例1の画像濃度を基準にして下記式に基づき評価を行った。数値が高いほど画像濃度が濃いほど、数値は大きくなる。
画像濃度(%)=(1−(検体の画像濃度)/(実施例1の画像濃度))×100
【0121】
―塗布液粘度―
上記で作製してインク受容層形成用塗布液を、作製から24時間経過後に35℃の液温でB型粘度計を用いて粘度測定を行った。
【0122】
―シリカ分散液の経過時間による性能の変化―
上記で得られたシリカ微分散液を液温度30℃で7日間保管した後に、インク受容層形成用塗布液を作製し、上記記載の方法でインクジェット記録媒体を得た。シリカ微分散液の7日間保管前後のインクジェット記録媒体の画像濃度の差を評価した。
【0123】
(実施例2)
実施例1において、シリカ予分散液のシャロールDC−902P添加量を0.78部から0.73部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0124】
(実施例3)
実施例2において、シリカをアエロジル300からアエロジル300SV(一次粒子径7nm、日本アエロジル(株)製、気相法シリカ微粒子)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0125】
(実施例4)
実施例1において、シリカ分散液のシャロールDC−902P添加量を0.78部から0.57部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0126】
(実施例5)
実施例1において、シリカ分散液のシャロールDC−902P添加量を0.78部から0.47部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0127】
(実施例6)
実施例1において、45℃のシリカ予分散液に対してZA―30を添加した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0128】
(実施例7)
実施例1において、15℃のシリカ予分散液に対してZA−30を添加した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0129】
(実施例8)
実施例1において、30℃のシリカ予分散液に対してZA−30を添加した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0130】
(実施例9)
実施例1において、ZA−30の添加量を気相法シリカに対して0.8質量%に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0131】
(実施例10)
実施例1において、ZA−30の添加量を気相法シリカに対して5.4質量%に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0132】
(実施例11)
実施例1において、ZA−30の添加量を気相法シリカに対して7.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0133】
(実施例12)
実施例1において、ZA−30の添加量を気相法シリカに対して10.3質量%に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0134】
(比較例1)
実施例6において、シリカ分散液のシャロールDC−902P添加量を0.78部から0.98部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0135】
(比較例2)
実施例6において、シリカ分散液のシャロールDC−902P添加量を0.78部から0.39部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0136】
(比較例3)
実施例6において、微分散後の加熱処理を実施しない以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0137】
(比較例4)
比較例1において、微分散後の加熱処理を実施しない以外は、実施例1と同様に行い、同様に評価した。
【0138】
(比較例5)
実施例6において、シリカ予分散液に対してZA−30を添加しなかった以外は、実施例6と同様に行い、評価した。
【0139】
【表1】

【0140】
上記表1から明らかな通り、本発明の構成を有する実施例は、シリカ分散液の性能変化が少なく、インク受容層塗布液の高粘度化が抑制され、得られた画像濃度の濃度は高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法シリカ及び分散剤を含む液を予分散する予分散工程と、前記予分散により得られた分散液を、気相法シリカの飽和吸着量(質量)に対して40質量%以上74質量%以下の分散剤を含む液として微分散する微分散工程と、前記微分散後の分散液を加熱処理する加熱処理工程と、を有するシリカ分散液の製造方法。
【請求項2】
前記予分散工程は、予分散して得られた前記分散液を25℃以下に冷却した後に、ジルコニウム化合物を添加する請求項1に記載のシリカ分散液の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理工程は、温度30〜80℃で、1時間以上加熱処理を行う請求項1又は請求項2に記載のシリカ分散液の製造方法。
【請求項4】
前記ジルコニウム化合物の添加量が、気相法シリカ全質量に対して、1〜10質量%である請求項2又は請求項3に記載のシリカ分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、水溶性樹脂とを混合して塗布液を調製する塗布液調製工程と、支持体上に前記塗布液を塗布してインク受容層を形成するインク受容層形成工程と、を含むインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項6】
インク受容層形成工程は、(1)前記塗布液を塗布すると同時に、又は、(2)前記塗布液の塗布によって形成される塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なってインク受容層を形成する請求項5に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2011−190130(P2011−190130A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55994(P2010−55994)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】