シリカ濃度の測定方法
【課題】被測定物に含まれる僅かな濃度のシリカを、短時間に、かつ高精度、高感度に分
析する方法を提供する。
【解決手段】最初に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を注入する(Sa1)。
次に、この処理液を注入した試料容器を熱処理する(Sa2)。この熱処理は、例えば、
処理液を注入した試料容器をホットプレート上に載置し、50〜300℃の範囲で1時間
以上加熱するのが好ましい。
析する方法を提供する。
【解決手段】最初に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を注入する(Sa1)。
次に、この処理液を注入した試料容器を熱処理する(Sa2)。この熱処理は、例えば、
処理液を注入した試料容器をホットプレート上に載置し、50〜300℃の範囲で1時間
以上加熱するのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料溶液に含まれるシリカ(SiO2)を高精度に分析することが可能なシリカ濃度の測定方法であり詳しくは、超純水中に含まれるpptレベルのシリカを正確、かつ高精度に検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハを用いた半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、半導体デバイスの性能を著しく劣化させる原因となる、シリコンウェーハ上に存在する不純物の低減は重要な課題である。こうした不純物がシリコンウェーハ上に付着する要因として、シリコンウェーハを洗浄する際に用いる薬液や超純水に含まれる不純物、例えば、金属不純物・シリカ・TOC(有機物)などが挙げられる。こうした不純物が洗浄工程などにおいて洗浄に用いる超純水に含まれていると、シリコンウェーハの特性劣化の原因となる。
【0003】
特に、シリコンウェーハを洗浄する超純水にシリカが高い濃度で含まれている場合、シリコンウェーハの表面品質に影響を与えているという懸念があった。従って、こうしたシリコンウェーハを洗浄するための超純水は、シリカの濃度を適切に管理することが非常に重要となっている。
【0004】
しかしながら、こうしたシリコンウェーハの洗浄に用いる超純水に含まれているシリカの濃度は、もとよりpptレベルであり、このような僅かな濃度のシリカを短時間に、かつ高精度、高感度に分析する方法が望まれていた。
【0005】
低濃度のシリカを測定するために、従来より行われている方法を挙げると、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)を用いて、直接Si(シリコン)を分析する方法が挙げられる。この方法は、シリカ(SiO2)をICP−MS内でイオン化し、Si(シリコン)を測定することによりシリカ濃度を定量分析する方法である。こうした、ICP−MSを用いて直接Si(シリコン)を分析する方法では、原子吸光用標準溶液(Si)を濃度調整後に分析して検量線を作成し、この検量線に基づき、被測定試料を分析することによってSi(シリコン)濃度を求めるものである。
【0006】
また、ローダミンB法によりシリカを分析する方法もある。このローダミンB法によりシリカ濃度を分析する方法では、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および数種類のシリカ標準溶液を作製する。そして、蛍光光度計を用いてセル内にこれら薬液を注入し、蛍光光度計のローダミンBの蛍光強度をモニタリングする。そしてシリカ標準溶液の濃度と蛍光強度の消光の度合いにより検量線を作成する。この検量線に基づき、被測定試料を分析することによりシリカ濃度を求めるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−61312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようなICP−MSにより直接Si(シリコン)を分析する方法では、被測定試料、例えば超純水中のN2がSiの干渉分子ピークとして検出されるため、超純水中のSiのイオン強度が高くなり、定量分析するのが難しい。従って、Si(シリコン)の検出感度は1ppb程度が限界であり、pptレベルの高感度分析は困難であった。また、被測定試料を注入する容器に由来するシリカ汚染によって、正確なSi(シリコン)分析が困難であった。
【0009】
一方、ローダミンB法による蛍光光度計を用いたシリカの分析方法では、被測定試料を注入する容器からのシリカ汚染によって、やはりシリカの検出感度は1ppb程度が限界であり、pptレベルの高感度分析は困難であった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被測定物に含まれる僅かな濃度のシリカを、短時間に、かつ高精度、高感度に分析する方法を提供することを目的とする。
【0011】
半導体工場等で使用される超純水には、TOCとして検出される有機物が微量ではあるが含有されており、その種類、濃度は、それぞれの製造システム仕様に依存する。本製造システムの最終水として得られる超純水に含まれる有機物の種類及び含有濃度によっては、その一成分と思われる物質がローダミンBと反応し、ローダミンBの蛍光が失活することで、シリカ分析が困難となる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなシリカ濃度の測定方法を提供する。
すなわち、本発明のシリカ濃度の測定方法は、シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とする。
【0013】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えるのが好ましい。
【0014】
また、本発明のシリカ濃度の測定方法は、シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光開始までの時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光開始までの時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光開始までの時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とする。
【0015】
前記試料溶液の消光開始までの時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えるのが好ましい。
【0016】
前記試料容器は、前記蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸を含む処理液を注入して所定の温度で熱処理する工程と、容器内部に前記処理液を封
入し、所定の期間保持する工程とを更に備えているのが好ましい。
【0017】
前記処理液は、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含むことが好ましい。
【0018】
前記熱処理の温度は、50〜300℃の範囲であることが好ましい。また、前記熱処理の時間は、少なくとも1時間以上であることが好ましい。
【0019】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液と接触しない範囲で前記試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、前記試料溶液に対して紫外光を照射するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、蛍光光度計での測定に使用する試料容器を、フッ化水素酸を含有する処理液で処理し、試料容器に付着したシリカを完全に除去し、シリカフリーの試料容器を得ることができる。そして、このシリカフリーの試料容器を用いて、シリカ標準溶液の検量線を作成し、この検量線によって被測定溶液、例えば超純水に含まれるシリカを測定することにより、含有するシリカが極めて微量、例えば、pptレベルの濃度であっても、確実、かつ正確にシリカ濃度を測定することが可能になる。
【0021】
また、本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、分析に供する試料に対して、紫外光ランプと接触しない出来るだけ近距離で紫外光を一分間以上照射し、超純水中に含有されるTOC成分を分解させる。そして、そのTOCの一成分と思われる物質がローダミンBと反応して、ローダミンBの蛍光を失活させることを抑制した後に、定められたフローに従い試薬添加による反応を開始させることで、シリカ濃度の測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシリカ濃度に基づく消光時間を用いた測定方法を示したフローチャートである。
【図2】本発明のシリカ濃度に基づく消光開始時間を用いた測定方法を示したフローチャートである。
【図3】本発明における経過時間と蛍光強度を示すグラフである。
【図4】本発明におけるシリカ濃度と消光時間を示すグラフである。
【図5】本発明における2/3消光に基づいた検量線を示すグラフである。
【図6】本発明における各純水別の消光時間に基づくシリカ濃度を示すグラフである。
【図7】本発明におけるシリカ濃度に基づく反応開始時間を示すグラフである。
【図8】本発明における消光開始時間に基づいた検量線を示すグラフである。
【図9】本発明におけるフッ化水素酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明における硝酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明における塩酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明における熱処理温度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図13】本発明における熱処理時間と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図14】本発明における紫外線照射時間と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るシリカ濃度の測定方法の最良の実施形態について、図面に基づき説明する。本実施形態は発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明のシリカ濃度の測定方法を段階的に示したフローチャートである。本発明のシリカ濃度の測定方法では、まず、蛍光光度計による分析を行う前工程として、試料容器のシリカ除去処理(前処理工程:S1)を行うことが好ましい。この前処理工程を行うにあたっては、標準シリカ濃度の消光時間を測定する工程や、被測定溶液(超純水)の消光時間を測定する工程で使用する試薬(硫酸、ローダミンB、シリカ標準溶液、モリブデン酸)を調製する際に使用する容器(以下、試料容器と称する)を用意する。この試料容器は、Siを成分として含まず、かつ300℃程度まで耐熱性を有する材料、例えば、テフロン(登録商標)から形成されているのが好ましい。
【0025】
まず、このような試料容器の表面に付着している微量のシリカを完全に除去する。最初に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を注入する(Sa1)。この処理液としては、例えば、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含む溶液が好ましく挙げられる。
【0026】
次に、この処理液を注入した試料容器を熱処理する(Sa2)。この熱処理は、例えば、処理液を注入した試料容器をホットプレート上に載置し、50〜300℃の範囲で1時間以上加熱するのが好ましい。こうした熱処理によって、試料容器の表面に付着している微量のシリカと、処理液とは以下のような化学反応を引き起こす。
SiO2+4HF → SiF4↑+2H2O (1)
SiO2+4H++4e− → Si+H2O (2)
Si → Si2++2e− (3)
Si → Si4++4e− (4)
【0027】
試料容器の表面に付着しているシリカ(SiO2)はフッ化水素酸溶液と反応し、四フッ化ケイ素(SiF4)ガスを生成(式(1)参照)し、試料容器外に放出される。また、硝酸と塩酸を加えることにより、試料容器の表面に付着しているシリカが水素イオン(H+)と電子(e−)と反応し、ケイ素(Si)を生成(式(2)参照)し、フッ化水素酸溶液中に溶解される(式(3)(4)参照)(e−は、金属などがイオン化した場合に生じる)。こうした化学反応によって、試料容器の表面に付着しているシリカは、その殆どが取り除かれる。
【0028】
更に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を封入し、シリカの分析時まで保管する(Sa3)。フッ化水素酸を含む処理液を封入した試料容器内では、前工程である熱処理によっても除去されなかった微量の残留シリカと、処理液とが以下のような化学反応を引き起こす。
SiO2+6HF → SiF62−+2H++2H2O (5)
熱処理により除去できなかった試料容器の表面に付着しているシリカは、フッ化水素酸溶液と反応し六フッ化ケイ素イオン(SiF62−)を生成(式(5)参照)して、フッ化水素酸を含む処理液中でイオン化して溶出する。
【0029】
以上のような前処理工程(S1)を行うことによって、シリカが完全に除去された試料容器を得ることができる。このようにシリカフリーの試料容器を、後述する蛍光光度計での測定に用いることによって、被測定溶液に含まれるシリカ以外のシリカ成分による影響を排除することができる。
【0030】
次に、上述した前処理工程を経た、シリカフリーの試料容器を用いて、検量線作成するためのシリカ標準溶液の消光時間を測定する(S2)。この測定においては、まずシリカフリーの試料容器を用いて、硫酸、ローダミンB、所定の濃度毎のシリカ標準溶液、およびモリブデン酸を調製する(Sb1)。シリカ標準溶液としては、例えば、10,20,40,80,160,400,800(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液を用意する。
【0031】
次に、蛍光光度計を起動し、蛍光光度計の測定用セル内に、試料容器で調製した所定濃度の硫酸を滴下する(Sb2)。また、セル内に、試料容器で調製した所定濃度のローダミンBを滴下する(Sb3)。そして、各濃度のシリカ標準溶液のうちの1つを滴下する(Sb4)。
【0032】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、モリブデン酸を滴下し、撹拌する(Sb5)。すると、以下に示す化学反応が生じる。
SiO2+2[Mo6O19]2− → [SiMo12O40]4− (6)
4RB++[SiMo12O40]4− → (RB)4[SiMo12O40] (7)
n(RB)4[SiMo12O40] → {(RB)4[SiMo12O40]}n,agg(8)
但し、aggは凝集体(aggregate)を示す。
【0033】
最初に、シリカ標準溶液中シリカ(SiO2)とモリブデン酸から錯イオン(モリブドケイ酸)が生成(式(6)参照)する。次に、ローダミンBとモリブドケイ酸から錯体(モリブドケイ酸ローダミンB)が生成(式(7)参照)する。蛍光光度計は、ローダミンBの蛍光強度をモニタリングしているが、モリブドケイ酸ローダミンBが凝集体を生成することにより蛍光強度の消光が始まる(式(8)参照)。
【0034】
こうした反応に基づいて、蛍光光度計のセル内におけるローダミンBの蛍光強度をモニタリングし、各濃度のシリカ標準溶液における、蛍光の消光時間を測定する(Sb6)。なお、測定する消光時間としては、例えば、各濃度のシリカ標準溶液ごとに、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間であればよい。
【0035】
こうして得られた、シリカ標準溶液の濃度と消光時間との関係から、2次方程式または3次方程式で表される検量線を作成する(S3)。この検量線を用いて、未知のシリカ濃度の被測定溶液、例えば超純水中に含まれるシリカ濃度を測定する。
【0036】
次に、上述したシリカ標準溶液を用いた消光時間の測定によって得られた検量線を用いて、被測定溶液、例えば超純水中に含まれるシリカ濃度を測定する(S4)。この測定においては、まずシリカフリーの試料容器を用いて、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸を調製する。また、被測定溶液、例えば超純水中の微量のシリカ濃度を測定する際には、測定対象の超純水を用意する。
【0037】
次に、測定対象の超純水に対して、出力:100W以上、波長:184.9nmの紫外光を1分間以上、紫外光ランプが試料と接触しない範囲で、出来るだけ近距離となるように照射する。
【0038】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、試料容器で調製した所定濃度の硫酸を滴下する(Sc1)。また、セル内に、試料容器で調製した所定濃度のローダミンBを滴下する(Sc2)。そして、測定対象の超純水を滴下する(Sc3)。
【0039】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、モリブデン酸を滴下し、撹拌する(Sb4)。これによって、測定対象の超純水に僅かでもシリカが含まれている場合には、前述した式(6)〜(8)と同様の化学反応が生じる。即ち、測定対象の超純水に僅かでもシリカが含まれていると、モリブドケイ酸ローダミンBが凝集体を生成することにより蛍光強度の消光が始まる(式(8)参照)。
【0040】
こうした反応に基づいて、蛍光光度計のセル内におけるローダミンBの蛍光強度をモニタリングし、測定対象の超純水における、蛍光の消光時間を測定する(Sc5)。なお、測定する消光時間としては、例えば、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間であればよい。
【0041】
このようにして得られた、シリカ濃度の測定対象である超純水の蛍光の消光時間を、前述した工程(S3)で作成した検量線に当てはめて、シリカ濃度を求める(S5)。
【0042】
以上のように、本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、蛍光光度計での測定に使用する試料容器を、フッ化水素酸を含有する処理液で処理し、試料容器に付着したシリカを完全に除去し、シリカフリーの試料容器を得ることができる。そして、このシリカフリーの試料容器を用いて、シリカ標準溶液の検量線を作成し、この検量線によって被測定溶液、例えば超純水に含まれるシリカを測定することにより、含有するシリカが極めて微量、例えば、pptレベルの濃度であっても、確実、かつ正確にシリカ濃度を測定することが可能になる。
【0043】
例えば、超純水(ブランク溶液)の0pptのシリカ濃度と、超純水に標準溶液を滴下した10pptのシリカ溶液との分析プロファイルに有意差ができ、0pptと10pptで消光時間に約100秒の差が得られ、シングルpptレベルのシリカを高感度、高精度に分析が可能になる。
【0044】
なお、前述した実施形態におけるシリカ濃度の測定方法では、検量線を作成するためのシリカ標準溶液を用いた蛍光光度測定、および被測定溶液の蛍光光度測定において、蛍光の消光時間、例えば、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間を測定しているが、これ以外にも、蛍光が消光を始めるまでの時間を測定しても良い。
【0045】
図2は、本発明の別な実施形態におけるシリカ濃度の測定方法を段階的に示したフローチャートである。この実施形態は、図1に示す実施形態と比較して、工程Sb6、工程Sc5が異なっている。即ち、この実施形態の工程Sb6では、硫酸、ローダミンB、シリカ標準溶液、およびモリブデン酸をそれぞれ蛍光光度計のセルに注入した時から、式(8)に示す反応の開始時、即ち消光が始まる(消光開始)までの時間を測定するものである。また、この実施形態の工程Sc5では、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および被測定溶液(例えば超純水)をそれぞれ蛍光光度計のセルに注入した時から、式(8)に示す反応の開始時、即ち消光が始まる(消光開始)までの時間を測定するものである。
【0046】
このように、試薬やシリカ溶液を蛍光光度計のセルに注入した時から、消光が始まる(消光開始)までの時間を測定することによっても、シングルpptレベルのシリカを高感度、高精度に分析することが可能になる。
【実施例】
【0047】
以下、図1または図2に示したシリカ濃度の測定方法に基づいてシリカ濃度を測定した際の、それぞれの工程における具体的な測定例等を、実施例として以下に記載する。
【0048】
(実施例1)
10,20,40,80,160,400,800(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液と超純水(0ppt)を用いて、消光反応開始からの経過時間と、蛍光強度との関係を測定した。この結果を図3に示す。
(実施例2)
試料溶液のシリカ濃度と消光時間(1/2消光、1/3消光、2/3消光)との関係を測定した。この結果を図4に示す。
(実施例3)
シリカ標準溶液を使用して測定した消光時間(2/3消光)に基づいて、2次方程式および3次方程式で表される検量線を作成した。この結果を図5に示す。
(実施例4)
実施例3で作成した検量線を用いて、被測定溶液として4種類の純水(純水A〜D)の消光時間に基づくシリカ濃度を測定した。この結果を図6に示す。
(実施例5)
10,20,40,80,120,160,200,400,600,800,1000(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液と超純水(0ppt)を用いて、セルへの試料注入時から消光が始まる時までの時間(消光開始時間)の測定を3日実施した。(測定日A〜C)この結果を図7に示す。
(実施例6)
実施例5の測定日Aで測定した消光開始時間に基づいて、2次方程式および3次方程式で表される検量線を作成した。この結果を図8に示す。
【0049】
(前処理工程の実験例1)
本発明では、蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含む処理液(前処理液)を試料容器に注入して所定の温度で熱処理し、さらに容器内部にこの処理液を封入し、所定の期間保持するのが好ましい。
こうした処理液を構成するフッ化水素酸の濃度を0〜50(%)まで段階的に変化させた際の、それぞれのフッ化水素酸の濃度と蛍光強度との関係を図9に示す。図9に示す結果によれば、フッ化水素酸濃度が0.1〜50(%)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた0〜0.01(%)では蛍光強度が0.1〜50(%)の範囲と比較して大きく減少している。
また、フッ化水素酸の分量を1として、処理液を構成する硝酸濃度を0.001〜10(mol/リットル)まで段階的に変化させた際の、それぞれの硝酸の濃度と蛍光強度との関係を図10に示す。図10に示す結果によれば、硝酸濃度が0.03〜3(mol/リットル)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた0.001〜0.01(mol/リットル)と5〜10(mol/リットル)では蛍光強度が0.03〜3(mol/リットル)の範囲と比較して大きく減少している。
更に、フッ化水素酸の分量を1として、処理液を構成する塩酸濃度を0.1〜30(mol/リットル)まで段階的に変化させた際の、それぞれの塩酸の濃度と蛍光強度との関係を図11に示す。図11に示す結果によれば、塩酸濃度が1〜20(mol/リットル)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた1(mol/リットル)未満と20(mol/リットル)より大きい範囲では蛍光強度が1〜20(mol/リットル)の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例2)
本発明では、上述した処理液(前処理液)を注入した試料容器を50〜300℃の範囲で熱処理を行うことが好ましい。
こうした処理液を注入した試料容器を、ホットプレートを用いて20〜350℃の範囲で段階的に加熱温度を変化させた際の、熱処理温度と蛍光強度との関係を図12に示す。
図12に示す結果によれば、熱処理が50〜300℃の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた20℃、350℃では蛍光強度が50〜300℃の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例3)
本発明では、上述した処理液(前処理液)を注入した試料容器を少なくとも1時間以上、熱処理を行うことが好ましい。
こうした処理液を注入した試料容器を、全く加熱しない場合、およびホットプレートを用いて30〜480分の範囲で段階的に加熱時間を変化させた際の、熱処理時間と蛍光強度との関係を図13に示す。
図13に示す結果によれば、熱処理時間が60〜480分の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この熱処理時間範囲から外れた、熱処理を行わない場合(処理時間0分)、および30分では、蛍光強度が60分以上の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例4)
本発明では、試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、試料溶液と接触しない範囲で試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、試料溶液に対して紫外光を照射するのが好ましい。
こうした試料溶液の近傍から試料溶液に向けて紫外光を、全く照射しない場合、および紫外線ランプを用いて30〜480秒の範囲で段階的に照射時間を変化させた際の、紫外光照射時間と蛍光強度との関係を図14に示す。
図14に示す結果によれば、紫外光照射時間が60〜480秒の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この照射時間範囲から外れた、照射を行わない場合(照射時間0秒)、および30秒では、蛍光強度が60秒以上の範囲と比較して大きく減少している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料溶液に含まれるシリカ(SiO2)を高精度に分析することが可能なシリカ濃度の測定方法であり詳しくは、超純水中に含まれるpptレベルのシリカを正確、かつ高精度に検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハを用いた半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、半導体デバイスの性能を著しく劣化させる原因となる、シリコンウェーハ上に存在する不純物の低減は重要な課題である。こうした不純物がシリコンウェーハ上に付着する要因として、シリコンウェーハを洗浄する際に用いる薬液や超純水に含まれる不純物、例えば、金属不純物・シリカ・TOC(有機物)などが挙げられる。こうした不純物が洗浄工程などにおいて洗浄に用いる超純水に含まれていると、シリコンウェーハの特性劣化の原因となる。
【0003】
特に、シリコンウェーハを洗浄する超純水にシリカが高い濃度で含まれている場合、シリコンウェーハの表面品質に影響を与えているという懸念があった。従って、こうしたシリコンウェーハを洗浄するための超純水は、シリカの濃度を適切に管理することが非常に重要となっている。
【0004】
しかしながら、こうしたシリコンウェーハの洗浄に用いる超純水に含まれているシリカの濃度は、もとよりpptレベルであり、このような僅かな濃度のシリカを短時間に、かつ高精度、高感度に分析する方法が望まれていた。
【0005】
低濃度のシリカを測定するために、従来より行われている方法を挙げると、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)を用いて、直接Si(シリコン)を分析する方法が挙げられる。この方法は、シリカ(SiO2)をICP−MS内でイオン化し、Si(シリコン)を測定することによりシリカ濃度を定量分析する方法である。こうした、ICP−MSを用いて直接Si(シリコン)を分析する方法では、原子吸光用標準溶液(Si)を濃度調整後に分析して検量線を作成し、この検量線に基づき、被測定試料を分析することによってSi(シリコン)濃度を求めるものである。
【0006】
また、ローダミンB法によりシリカを分析する方法もある。このローダミンB法によりシリカ濃度を分析する方法では、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および数種類のシリカ標準溶液を作製する。そして、蛍光光度計を用いてセル内にこれら薬液を注入し、蛍光光度計のローダミンBの蛍光強度をモニタリングする。そしてシリカ標準溶液の濃度と蛍光強度の消光の度合いにより検量線を作成する。この検量線に基づき、被測定試料を分析することによりシリカ濃度を求めるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−61312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようなICP−MSにより直接Si(シリコン)を分析する方法では、被測定試料、例えば超純水中のN2がSiの干渉分子ピークとして検出されるため、超純水中のSiのイオン強度が高くなり、定量分析するのが難しい。従って、Si(シリコン)の検出感度は1ppb程度が限界であり、pptレベルの高感度分析は困難であった。また、被測定試料を注入する容器に由来するシリカ汚染によって、正確なSi(シリコン)分析が困難であった。
【0009】
一方、ローダミンB法による蛍光光度計を用いたシリカの分析方法では、被測定試料を注入する容器からのシリカ汚染によって、やはりシリカの検出感度は1ppb程度が限界であり、pptレベルの高感度分析は困難であった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被測定物に含まれる僅かな濃度のシリカを、短時間に、かつ高精度、高感度に分析する方法を提供することを目的とする。
【0011】
半導体工場等で使用される超純水には、TOCとして検出される有機物が微量ではあるが含有されており、その種類、濃度は、それぞれの製造システム仕様に依存する。本製造システムの最終水として得られる超純水に含まれる有機物の種類及び含有濃度によっては、その一成分と思われる物質がローダミンBと反応し、ローダミンBの蛍光が失活することで、シリカ分析が困難となる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなシリカ濃度の測定方法を提供する。
すなわち、本発明のシリカ濃度の測定方法は、シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とする。
【0013】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えるのが好ましい。
【0014】
また、本発明のシリカ濃度の測定方法は、シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光開始までの時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光開始までの時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光開始までの時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とする。
【0015】
前記試料溶液の消光開始までの時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えるのが好ましい。
【0016】
前記試料容器は、前記蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸を含む処理液を注入して所定の温度で熱処理する工程と、容器内部に前記処理液を封
入し、所定の期間保持する工程とを更に備えているのが好ましい。
【0017】
前記処理液は、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含むことが好ましい。
【0018】
前記熱処理の温度は、50〜300℃の範囲であることが好ましい。また、前記熱処理の時間は、少なくとも1時間以上であることが好ましい。
【0019】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液と接触しない範囲で前記試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、前記試料溶液に対して紫外光を照射するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、蛍光光度計での測定に使用する試料容器を、フッ化水素酸を含有する処理液で処理し、試料容器に付着したシリカを完全に除去し、シリカフリーの試料容器を得ることができる。そして、このシリカフリーの試料容器を用いて、シリカ標準溶液の検量線を作成し、この検量線によって被測定溶液、例えば超純水に含まれるシリカを測定することにより、含有するシリカが極めて微量、例えば、pptレベルの濃度であっても、確実、かつ正確にシリカ濃度を測定することが可能になる。
【0021】
また、本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、分析に供する試料に対して、紫外光ランプと接触しない出来るだけ近距離で紫外光を一分間以上照射し、超純水中に含有されるTOC成分を分解させる。そして、そのTOCの一成分と思われる物質がローダミンBと反応して、ローダミンBの蛍光を失活させることを抑制した後に、定められたフローに従い試薬添加による反応を開始させることで、シリカ濃度の測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシリカ濃度に基づく消光時間を用いた測定方法を示したフローチャートである。
【図2】本発明のシリカ濃度に基づく消光開始時間を用いた測定方法を示したフローチャートである。
【図3】本発明における経過時間と蛍光強度を示すグラフである。
【図4】本発明におけるシリカ濃度と消光時間を示すグラフである。
【図5】本発明における2/3消光に基づいた検量線を示すグラフである。
【図6】本発明における各純水別の消光時間に基づくシリカ濃度を示すグラフである。
【図7】本発明におけるシリカ濃度に基づく反応開始時間を示すグラフである。
【図8】本発明における消光開始時間に基づいた検量線を示すグラフである。
【図9】本発明におけるフッ化水素酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明における硝酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明における塩酸の濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明における熱処理温度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図13】本発明における熱処理時間と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図14】本発明における紫外線照射時間と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るシリカ濃度の測定方法の最良の実施形態について、図面に基づき説明する。本実施形態は発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明のシリカ濃度の測定方法を段階的に示したフローチャートである。本発明のシリカ濃度の測定方法では、まず、蛍光光度計による分析を行う前工程として、試料容器のシリカ除去処理(前処理工程:S1)を行うことが好ましい。この前処理工程を行うにあたっては、標準シリカ濃度の消光時間を測定する工程や、被測定溶液(超純水)の消光時間を測定する工程で使用する試薬(硫酸、ローダミンB、シリカ標準溶液、モリブデン酸)を調製する際に使用する容器(以下、試料容器と称する)を用意する。この試料容器は、Siを成分として含まず、かつ300℃程度まで耐熱性を有する材料、例えば、テフロン(登録商標)から形成されているのが好ましい。
【0025】
まず、このような試料容器の表面に付着している微量のシリカを完全に除去する。最初に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を注入する(Sa1)。この処理液としては、例えば、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含む溶液が好ましく挙げられる。
【0026】
次に、この処理液を注入した試料容器を熱処理する(Sa2)。この熱処理は、例えば、処理液を注入した試料容器をホットプレート上に載置し、50〜300℃の範囲で1時間以上加熱するのが好ましい。こうした熱処理によって、試料容器の表面に付着している微量のシリカと、処理液とは以下のような化学反応を引き起こす。
SiO2+4HF → SiF4↑+2H2O (1)
SiO2+4H++4e− → Si+H2O (2)
Si → Si2++2e− (3)
Si → Si4++4e− (4)
【0027】
試料容器の表面に付着しているシリカ(SiO2)はフッ化水素酸溶液と反応し、四フッ化ケイ素(SiF4)ガスを生成(式(1)参照)し、試料容器外に放出される。また、硝酸と塩酸を加えることにより、試料容器の表面に付着しているシリカが水素イオン(H+)と電子(e−)と反応し、ケイ素(Si)を生成(式(2)参照)し、フッ化水素酸溶液中に溶解される(式(3)(4)参照)(e−は、金属などがイオン化した場合に生じる)。こうした化学反応によって、試料容器の表面に付着しているシリカは、その殆どが取り除かれる。
【0028】
更に、この試料容器にフッ化水素酸を含む処理液を封入し、シリカの分析時まで保管する(Sa3)。フッ化水素酸を含む処理液を封入した試料容器内では、前工程である熱処理によっても除去されなかった微量の残留シリカと、処理液とが以下のような化学反応を引き起こす。
SiO2+6HF → SiF62−+2H++2H2O (5)
熱処理により除去できなかった試料容器の表面に付着しているシリカは、フッ化水素酸溶液と反応し六フッ化ケイ素イオン(SiF62−)を生成(式(5)参照)して、フッ化水素酸を含む処理液中でイオン化して溶出する。
【0029】
以上のような前処理工程(S1)を行うことによって、シリカが完全に除去された試料容器を得ることができる。このようにシリカフリーの試料容器を、後述する蛍光光度計での測定に用いることによって、被測定溶液に含まれるシリカ以外のシリカ成分による影響を排除することができる。
【0030】
次に、上述した前処理工程を経た、シリカフリーの試料容器を用いて、検量線作成するためのシリカ標準溶液の消光時間を測定する(S2)。この測定においては、まずシリカフリーの試料容器を用いて、硫酸、ローダミンB、所定の濃度毎のシリカ標準溶液、およびモリブデン酸を調製する(Sb1)。シリカ標準溶液としては、例えば、10,20,40,80,160,400,800(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液を用意する。
【0031】
次に、蛍光光度計を起動し、蛍光光度計の測定用セル内に、試料容器で調製した所定濃度の硫酸を滴下する(Sb2)。また、セル内に、試料容器で調製した所定濃度のローダミンBを滴下する(Sb3)。そして、各濃度のシリカ標準溶液のうちの1つを滴下する(Sb4)。
【0032】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、モリブデン酸を滴下し、撹拌する(Sb5)。すると、以下に示す化学反応が生じる。
SiO2+2[Mo6O19]2− → [SiMo12O40]4− (6)
4RB++[SiMo12O40]4− → (RB)4[SiMo12O40] (7)
n(RB)4[SiMo12O40] → {(RB)4[SiMo12O40]}n,agg(8)
但し、aggは凝集体(aggregate)を示す。
【0033】
最初に、シリカ標準溶液中シリカ(SiO2)とモリブデン酸から錯イオン(モリブドケイ酸)が生成(式(6)参照)する。次に、ローダミンBとモリブドケイ酸から錯体(モリブドケイ酸ローダミンB)が生成(式(7)参照)する。蛍光光度計は、ローダミンBの蛍光強度をモニタリングしているが、モリブドケイ酸ローダミンBが凝集体を生成することにより蛍光強度の消光が始まる(式(8)参照)。
【0034】
こうした反応に基づいて、蛍光光度計のセル内におけるローダミンBの蛍光強度をモニタリングし、各濃度のシリカ標準溶液における、蛍光の消光時間を測定する(Sb6)。なお、測定する消光時間としては、例えば、各濃度のシリカ標準溶液ごとに、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間であればよい。
【0035】
こうして得られた、シリカ標準溶液の濃度と消光時間との関係から、2次方程式または3次方程式で表される検量線を作成する(S3)。この検量線を用いて、未知のシリカ濃度の被測定溶液、例えば超純水中に含まれるシリカ濃度を測定する。
【0036】
次に、上述したシリカ標準溶液を用いた消光時間の測定によって得られた検量線を用いて、被測定溶液、例えば超純水中に含まれるシリカ濃度を測定する(S4)。この測定においては、まずシリカフリーの試料容器を用いて、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸を調製する。また、被測定溶液、例えば超純水中の微量のシリカ濃度を測定する際には、測定対象の超純水を用意する。
【0037】
次に、測定対象の超純水に対して、出力:100W以上、波長:184.9nmの紫外光を1分間以上、紫外光ランプが試料と接触しない範囲で、出来るだけ近距離となるように照射する。
【0038】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、試料容器で調製した所定濃度の硫酸を滴下する(Sc1)。また、セル内に、試料容器で調製した所定濃度のローダミンBを滴下する(Sc2)。そして、測定対象の超純水を滴下する(Sc3)。
【0039】
そして、蛍光光度計の測定用セル内に、モリブデン酸を滴下し、撹拌する(Sb4)。これによって、測定対象の超純水に僅かでもシリカが含まれている場合には、前述した式(6)〜(8)と同様の化学反応が生じる。即ち、測定対象の超純水に僅かでもシリカが含まれていると、モリブドケイ酸ローダミンBが凝集体を生成することにより蛍光強度の消光が始まる(式(8)参照)。
【0040】
こうした反応に基づいて、蛍光光度計のセル内におけるローダミンBの蛍光強度をモニタリングし、測定対象の超純水における、蛍光の消光時間を測定する(Sc5)。なお、測定する消光時間としては、例えば、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間であればよい。
【0041】
このようにして得られた、シリカ濃度の測定対象である超純水の蛍光の消光時間を、前述した工程(S3)で作成した検量線に当てはめて、シリカ濃度を求める(S5)。
【0042】
以上のように、本発明のシリカ濃度の測定方法によれば、前処理工程として、蛍光光度計での測定に使用する試料容器を、フッ化水素酸を含有する処理液で処理し、試料容器に付着したシリカを完全に除去し、シリカフリーの試料容器を得ることができる。そして、このシリカフリーの試料容器を用いて、シリカ標準溶液の検量線を作成し、この検量線によって被測定溶液、例えば超純水に含まれるシリカを測定することにより、含有するシリカが極めて微量、例えば、pptレベルの濃度であっても、確実、かつ正確にシリカ濃度を測定することが可能になる。
【0043】
例えば、超純水(ブランク溶液)の0pptのシリカ濃度と、超純水に標準溶液を滴下した10pptのシリカ溶液との分析プロファイルに有意差ができ、0pptと10pptで消光時間に約100秒の差が得られ、シングルpptレベルのシリカを高感度、高精度に分析が可能になる。
【0044】
なお、前述した実施形態におけるシリカ濃度の測定方法では、検量線を作成するためのシリカ標準溶液を用いた蛍光光度測定、および被測定溶液の蛍光光度測定において、蛍光の消光時間、例えば、反応が開始した初期の蛍光強度の1/2消光、または2/3消光、または1/3消光する消光時間を測定しているが、これ以外にも、蛍光が消光を始めるまでの時間を測定しても良い。
【0045】
図2は、本発明の別な実施形態におけるシリカ濃度の測定方法を段階的に示したフローチャートである。この実施形態は、図1に示す実施形態と比較して、工程Sb6、工程Sc5が異なっている。即ち、この実施形態の工程Sb6では、硫酸、ローダミンB、シリカ標準溶液、およびモリブデン酸をそれぞれ蛍光光度計のセルに注入した時から、式(8)に示す反応の開始時、即ち消光が始まる(消光開始)までの時間を測定するものである。また、この実施形態の工程Sc5では、硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および被測定溶液(例えば超純水)をそれぞれ蛍光光度計のセルに注入した時から、式(8)に示す反応の開始時、即ち消光が始まる(消光開始)までの時間を測定するものである。
【0046】
このように、試薬やシリカ溶液を蛍光光度計のセルに注入した時から、消光が始まる(消光開始)までの時間を測定することによっても、シングルpptレベルのシリカを高感度、高精度に分析することが可能になる。
【実施例】
【0047】
以下、図1または図2に示したシリカ濃度の測定方法に基づいてシリカ濃度を測定した際の、それぞれの工程における具体的な測定例等を、実施例として以下に記載する。
【0048】
(実施例1)
10,20,40,80,160,400,800(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液と超純水(0ppt)を用いて、消光反応開始からの経過時間と、蛍光強度との関係を測定した。この結果を図3に示す。
(実施例2)
試料溶液のシリカ濃度と消光時間(1/2消光、1/3消光、2/3消光)との関係を測定した。この結果を図4に示す。
(実施例3)
シリカ標準溶液を使用して測定した消光時間(2/3消光)に基づいて、2次方程式および3次方程式で表される検量線を作成した。この結果を図5に示す。
(実施例4)
実施例3で作成した検量線を用いて、被測定溶液として4種類の純水(純水A〜D)の消光時間に基づくシリカ濃度を測定した。この結果を図6に示す。
(実施例5)
10,20,40,80,120,160,200,400,600,800,1000(ppt)の各濃度のシリカ標準溶液と超純水(0ppt)を用いて、セルへの試料注入時から消光が始まる時までの時間(消光開始時間)の測定を3日実施した。(測定日A〜C)この結果を図7に示す。
(実施例6)
実施例5の測定日Aで測定した消光開始時間に基づいて、2次方程式および3次方程式で表される検量線を作成した。この結果を図8に示す。
【0049】
(前処理工程の実験例1)
本発明では、蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含む処理液(前処理液)を試料容器に注入して所定の温度で熱処理し、さらに容器内部にこの処理液を封入し、所定の期間保持するのが好ましい。
こうした処理液を構成するフッ化水素酸の濃度を0〜50(%)まで段階的に変化させた際の、それぞれのフッ化水素酸の濃度と蛍光強度との関係を図9に示す。図9に示す結果によれば、フッ化水素酸濃度が0.1〜50(%)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた0〜0.01(%)では蛍光強度が0.1〜50(%)の範囲と比較して大きく減少している。
また、フッ化水素酸の分量を1として、処理液を構成する硝酸濃度を0.001〜10(mol/リットル)まで段階的に変化させた際の、それぞれの硝酸の濃度と蛍光強度との関係を図10に示す。図10に示す結果によれば、硝酸濃度が0.03〜3(mol/リットル)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた0.001〜0.01(mol/リットル)と5〜10(mol/リットル)では蛍光強度が0.03〜3(mol/リットル)の範囲と比較して大きく減少している。
更に、フッ化水素酸の分量を1として、処理液を構成する塩酸濃度を0.1〜30(mol/リットル)まで段階的に変化させた際の、それぞれの塩酸の濃度と蛍光強度との関係を図11に示す。図11に示す結果によれば、塩酸濃度が1〜20(mol/リットル)の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた1(mol/リットル)未満と20(mol/リットル)より大きい範囲では蛍光強度が1〜20(mol/リットル)の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例2)
本発明では、上述した処理液(前処理液)を注入した試料容器を50〜300℃の範囲で熱処理を行うことが好ましい。
こうした処理液を注入した試料容器を、ホットプレートを用いて20〜350℃の範囲で段階的に加熱温度を変化させた際の、熱処理温度と蛍光強度との関係を図12に示す。
図12に示す結果によれば、熱処理が50〜300℃の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この温度範囲から外れた20℃、350℃では蛍光強度が50〜300℃の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例3)
本発明では、上述した処理液(前処理液)を注入した試料容器を少なくとも1時間以上、熱処理を行うことが好ましい。
こうした処理液を注入した試料容器を、全く加熱しない場合、およびホットプレートを用いて30〜480分の範囲で段階的に加熱時間を変化させた際の、熱処理時間と蛍光強度との関係を図13に示す。
図13に示す結果によれば、熱処理時間が60〜480分の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この熱処理時間範囲から外れた、熱処理を行わない場合(処理時間0分)、および30分では、蛍光強度が60分以上の範囲と比較して大きく減少している。
(前処理工程の実験例4)
本発明では、試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、試料溶液と接触しない範囲で試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、試料溶液に対して紫外光を照射するのが好ましい。
こうした試料溶液の近傍から試料溶液に向けて紫外光を、全く照射しない場合、および紫外線ランプを用いて30〜480秒の範囲で段階的に照射時間を変化させた際の、紫外光照射時間と蛍光強度との関係を図14に示す。
図14に示す結果によれば、紫外光照射時間が60〜480秒の範囲では、ほぼ一定の範囲の蛍光強度が得られるが、この照射時間範囲から外れた、照射を行わない場合(照射時間0秒)、および30秒では、蛍光強度が60秒以上の範囲と比較して大きく減少している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とするシリカ濃度の測定方法。
【請求項2】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項3】
シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光開始までの時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光開始までの時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光開始までの時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とするシリカ濃度の測定方法。
【請求項4】
前記試料溶液の消光開始までの時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えたことを特徴とする請求項3記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項5】
前記試料容器は、前記蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸を含む処理液を注入して所定の温度で熱処理する工程と、容器内部に前記処理液を封入し、所定の期間保持する工程とを更に備えたこと特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項6】
前記処理液は、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含むことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項7】
前記熱処理の温度は、50〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項8】
前記熱処理の時間は、少なくとも1時間以上であることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項9】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液と接触しない範囲で前記試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、前記試料溶液に対して紫外光を照射することを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載シリカ濃度の測定方法。
【請求項1】
シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とするシリカ濃度の測定方法。
【請求項2】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項3】
シリカを含まない材料で形成された試料容器を用いて、蛍光光度計による分析に用いる硫酸、ローダミンB、モリブデン酸、および複数種のシリカ標準溶液をそれぞれ調製する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のそれぞれについて、前記蛍光光度計による消光開始までの時間を検出する工程と、前記複数種のシリカ標準溶液のシリカ濃度と前記消光開始までの時間との関係に基づき、2次方程式または3次方程式の検量線を作成する工程と、前記蛍光光度計を用いて試料溶液の消光開始までの時間を検出し、前記検量線を参照して前記試料溶液のシリカ濃度を得る工程と、を少なくとも備え、前記検量線はシリカ濃度が0〜1000pptの範囲で作成することを特徴とするシリカ濃度の測定方法。
【請求項4】
前記試料溶液の消光開始までの時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液に対して、紫外光を一定時間、照射する工程を更に備えたことを特徴とする請求項3記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項5】
前記試料容器は、前記蛍光光度計による分析を行う前工程として、容器内部にフッ化水素酸を含む処理液を注入して所定の温度で熱処理する工程と、容器内部に前記処理液を封入し、所定の期間保持する工程とを更に備えたこと特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項6】
前記処理液は、フッ化水素酸の濃度が0.1〜50質量%の範囲であり、かつ、前記フッ化水素酸の分量を1mol/リットルとした時に、硝酸を0.03〜3mol/リットル、塩酸を1〜20mol/リットルの範囲で含むことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項7】
前記熱処理の温度は、50〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項8】
前記熱処理の時間は、少なくとも1時間以上であることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載のシリカ濃度の測定方法。
【請求項9】
前記試料溶液の消光時間を検出する工程の前工程として、前記試料溶液と接触しない範囲で前記試料溶液に対して出来るだけ近距離に配された紫外光ランプから、少なくとも一分間以上、前記試料溶液に対して紫外光を照射することを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載シリカ濃度の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−156683(P2010−156683A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275678(P2009−275678)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
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