説明

シリカ濃度測定装置

【課題】サンプル中のシリカ濃度によって分解能が大きく変動し、測定精度が悪化するのを防止することが可能なシリカ濃度測定装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るシリカ濃度測定装置1は、透明容器10、液体吐出装置11、測定器20、試料水の供給ライン30、排出ライン40を備えている。測定器20は、発光素子21、受光素子22及びこれらを制御すると共に各種演算を行う制御手段としての制御回路23を備えている。発光素子21は、制御回路23の制御により発光波長を切換可能な発光素子であり、本実施形態では、430nm(低測定波長)と450nm(高測定波長)の二種類の波長の光を切り替えて発光する。制御回路23は、測定波長毎の検量線をメモリに格納している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルのシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クーリングタワー、ボイラなどの循環水中のシリカ(二酸化ケイ素:SiO2)濃度が一定以上になると、スケールの付着など深刻な問題を引き起こすため、ボイラに供給される給水やボイラ水等の試料水(サンプル)中のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置が提供されている。
【0003】
シリカ濃度測定方法は、日本工業規格(JIS K 0101:1998 44.シリカ)にも定められており、代表的なものとして、モリブデン黄吸光光度法(モリブデンイエロー法)とモリブデン青吸光光度法(モリブデンブルー法)がある。
【0004】
モリブデン黄吸光光度法は、イオン状シリカが、七モリブデン酸六アンモニウムと反応して生成するヘテロポリ化合物の黄色の吸光度を測定してシリカを定量する方法である。また、モリブデン青吸光光度法は、イオン状シリカが、七モリブデン酸六アンモニウムと反応して生成するヘテロポリ化合物をL(+)-アスコルビン酸で還元してモリブデン青に変え、その吸光度を測定してシリカを定量する方法である。
【0005】
従来のシリカ濃度測定装置は、例えば、下記特許文献に開示されている。
【特許文献1】特開平7−43306号公報
【特許文献2】特許第3353096号公報
【0006】
特許文献1には、所定の波長領域のみを透過させる複数の干渉フィルタを切り替えることで、モリブデンイエロー法による高速分析と、モリブデンブルー法による高精度分析の自動切り替えができるシリカ濃度測定装置が開示されている。また、特許文献2には、モリブデン黄吸光光度法において、発光ダイオードを光源として用いるシリカ濃度測定装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のシリカ濃度測定装置では、シリカ濃度が高くなると分解能が低下するといった問題がある。これは、シリカ濃度の変動に対する透過率の変化量が、シリカ濃度が大きくなるにつれて小さくなることに起因している。特に、ある濃度以上に達すると、シリカ濃度の変動に対する透過率の変化が極端に小さくなって、分解能が大幅に低下し、測定精度が悪くなってしまう。
【0008】
例えば、ボイラに供給される給水と、ボイラ水とのシリカ濃度は大きく異なるため、一つのシリカ濃度測定装置で双方のシリカ濃度を測定しようとすると、シリカ濃度の高いボイラ水を測定する際の分解能が低く、測定不能となる場合もあった。しかし、従来のシリカ濃度測定装置は、シリカ濃度が高いときの分解能の低下について考慮していなかった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされた発明であり、サンプル中のシリカ濃度によって分解能が大きく変動し、測定精度が悪化するのを防止することが可能なシリカ濃度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るシリカ濃度測定装置は、試薬を注入したサンプルの透過率又は吸光度から当該サンプルのシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置において、少なくとも高低二種類の測定波長を選択的に発光可能な発光素子と、受光素子と、シリカ濃度が、所定の閾値よりも低い低濃度領域では前記低測定波長を用い、前記所定の閾値よりも高い高濃度領域では前記高測定波長を用いるように前記発光素子を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るシリカ濃度測定方法は、試薬を注入したサンプルの透過率又は吸光度から当該サンプルのシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定方法において、少なくとも高低二種類の測定波長を選択的に発光可能な発光素子と受光素子とを用いて、前記サンプルの透過率を測定する工程と、測定した透過率を用いて前記サンプルのシリカ濃度を算出する工程と、前記低測定波長を使用しているときに、シリカ濃度が所定の閾値よりも高い高濃度領域に入ると、測定波長を前記高測定波長に切り替える工程と、前記高測定波長を使用しているときに、シリカ濃度が所定の閾値よりも低い低濃度領域に入ると、測定波長を前記低測定波長に切り替える工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシリカ濃度測定装置によれば、サンプル中のシリカ濃度によって分解能が大きく変動し、測定精度が悪化するのを防止することが可能なシリカ濃度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、モリブデンイエロー法に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係るシリカ濃度測定装置を概略的に示す断面図である。同図に示すように、シリカ濃度測定装置1は、透明容器10、液体吐出装置11、測定器20、試料水の供給ライン30、排出ライン40を備えている。
【0014】
透明容器10は、アクリル樹脂から成型された透明の筒状のものであって、供給ライン30との連結部に小孔14、排出ライン40との連結部に小孔15が形成されている。透明容器10の上面には液体吐出装置11が裁置されており、液体吐出装置11の吐出液が透明容器10内に注入されるように構成されている。液体吐出装置11は、モリブデン酸アンモニウムを含む試薬を内部に保持しており、所望の量の試薬を透明容器10内に吐出供給する。また、透明容器10の底部には、撹拌装置12が設置されており、容器内のサンプルを撹拌して、濃度の均一化等を図ることができる。
【0015】
測定器20は、発光素子21、受光素子22及びこれらを制御すると共に各種演算を行う制御手段としての制御回路23を備えている。発光素子21は、制御回路23の制御により発光波長を切換可能な発光素子であり、本実施形態では、430nm(低測定波長)と450nm(高測定波長)の二種類の波長の光を切り替えて発光する。測定波長として430nmと450nmを選択した理由は後述する。制御回路23は、後述する検量線を、測定波長毎に内部のメモリに格納している。
【0016】
波長の切換は、発光波長の異なるLED(発光ダイオード)を複数用意しておき、機械的に切り替えれば良い。また、所定の発光帯域をもつ発光素子に対して、透過波長の異なる干渉フィルタを用意しておき、干渉フィルタを切り替えることで、測定波長を切り替えるようにしても良い。また、受光素子(PD:Photodiode)22は、全ての測定波長を受信できる受光素子であれば、一つで良いし、対応できない場合には、複数の受光素子を用意しておいて切り替えたり、各LEDに受光素子をそれぞれ対向配置しておき、出力を選択したりするようにしても良い。
【0017】
受光素子22の出力は、制御回路23へと送信され、制御回路23は、検量線を用いて、測定された透過率からサンプルである試料水中のシリカ濃度を算出する。検量線は、予めシリカ標準液を用いてシリカ濃度と透過率との関係線として作成されており、制御回路23内のメモリに保持されている。
【0018】
供給ライン30は、サンプルとしてボイラ水や給水等の試料水を透明容器10内に供給するものであり、小孔14を介して透明容器10内に試料水を供給する。供給ライン30は、電磁弁31を備えている。排出ライン40は、小孔15を介して透明容器10内の液体を外部へ排出する。
【0019】
次に、本実施形態において、測定波長として、430nmと450nmを選択した理由について説明する。図2は、モリブデンイエロー法における測定波長別のシリカ濃度と透過率との関係(検量線)を示す図であり、横軸がシリカ濃度[mgSiO2/l]、縦軸が透過率[%T]を示している。測定波長として、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nmの7つの測定波長を示している。図2において、それぞれ、太二点鎖線が410nm、太短波線が420nm、二点鎖線が430nm、一点鎖線が440nm、短波線が450nm、波線が460nm、実線が470nmの場合の検量線を示している。
【0020】
同図に示すように、波長が短い測定波長ほど、低濃度領域(例えば、0〜30mgSiO2/l)におけるグラフの傾きが大きく、濃度が変化するときの透過率の変化量も大きい。すなわち、分解能が高いので、低濃度領域では、波長の短い測定波長で測定するのが望ましい。しかし、測定波長が410nm及び420nmの場合には、60mgSiO2/lを超えたあたりから、急激に分解能が低下しており、410nm及び420nmの検量線は、60mgSiO2/l超の濃度測定には適さない。
【0021】
一方、450nm及び460nmの測定波長は、高濃度領域(例えば、100〜200mgSiO2/l)においても、ある程度検量線が傾いており、所望の分解能を維持している。したがって、高濃度領域では、波長の長い測定波長を用いることが望ましい。
【0022】
このように、シリカ濃度が異なると、測定に適した波長も異なる。したがって、複数の測定波長を用意しておいて、シリカ濃度に応じて適切な測定波長を選択するようにすれば、所望の分解能を得ることができる。
【0023】
そこで、本発明者らは、図3を参照して、複数の適切な測定周波数を選択した。図3は、測定波長別の各シリカ濃度における透過率を示す図であり、横軸が測定波長、縦軸がシリカ濃度(ppm=mgSiO2/l。以下、mgSiO2/lをppmと表記する場合もある)を示し、交差する各マスは、その測定波長及びシリカ濃度における透過率[%T]を示している。また、各透過率の右横には、上下に隣接するマス間の透過率の差、すなわち10ppmあたりの透過率の変化量[%T/10ppm]が示されている。
【0024】
本発明者らは、まず、低測定波長の選定にあたって、0〜70ppmの低濃度領域に着目し、この領域における透過率変化量/10ppmが4.5以上であれば、適切な分解能が維持できると考え、430nmと440nmとを候補に挙げた。そして、430nmのほうが、低濃度領域の大部分の領域で変化量が大きいため、低測定波長として、430nmを選択した。
【0025】
続いて、高測定波長の選定にあたっては、70〜200ppmの高濃度領域に着目し、この領域における透過率変化量/10ppmが、2.0以上であれば、適切な分解能が維持できると考え、70〜200ppmの全てにおいて2.0以上の変化率を満たす測定波長は無いが、450nm及び460nmであれば、70〜170ppm又は70〜180ppmにおいて、この条件を満たしており、450nm及び460nmを高測定波長の候補とした。そして、450nmのほうが、変化量が大きい領域が多いため、高測定波長として、450nmを選択した。
【0026】
このようにして、本実施形態では、低波長発光素子として430nmのLEDと、高波長発光素子として450nmのLEDを備えた発光素子21を用意し、これを切り替えることで、なるべく広いシリカ濃度領域で高分解能を維持し、高い測定精度を実現している。
【0027】
もちろん、発光素子21の波長は、430nmと450nmに限定されるものではなく、広いシリカ濃度領域(本実施形態では、0〜200mgSiO2/l)で高分解能を維持できる波長の組み合わせであれば、適宜他の測定波長を用いることができる。また、低測定波長を用いる低濃度領域の範囲や、高測定波長を用いる高濃度領域の範囲も、選択した測定波長に応じて適宜設定可能である。
【0028】
例えば、0〜40ppmの低濃度領域では410nmを低測定波長として、40〜200ppmの高濃度領域では460nmを高測定波長として選択するようにしても良い。さらに、低、中、高の3つの測定波長や、4つ以上の測定波長を設定するように構成しても良い。
【0029】
なお、本実施形態においては、図2及び図3に示すシリカ濃度と透過率との検量線から測定波長を設定したが、シリカ濃度と吸光度(Abs)との検量線を参照して測定波長を選択することもできる。吸光度は、透過率から求めることができ、吸光度=-log(透過率/100)である。したがって、吸光度の検量線の傾きも、上記透過率の変化量と同じように、分解能を表すことになるからである。
【0030】
続いて、発光素子21における測定波長の高低切り替えのタイミングについて説明する。この測定波長の切替は、制御回路23の制御により実行される。上述したように、シリカ濃度0〜70ppmの低濃度領域では、10ppmあたりの透過率[%T]の変化量が4.5以上あることが、分解能の面から望ましく、低測定波長430nmでは、シリカ濃度が70ppmから80ppmの間の領域、すなわち、透過率[%T]が16.84から13.13の間の領域で透過率の変化量[%T/10ppm]が4.5以下になっている。
【0031】
したがって、本実施形態においては、低測定波長(430nm)を使用している際に、透過率が16.5以下になったときに、シリカ濃度が所定の閾値よりも高い高濃度領域であるとして、測定波長を高測定波長(450nm)に切り替えるように構成している。具体的には、制御回路23が受光素子22の出力を監視し、透過率が16.5以下になった場合に、LEDを切り替えるように制御する。
【0032】
もちろん、透過率から検量線によって算出したシリカ濃度を基準にして、シリカ濃度が所定の値よりも大きくなった場合に、測定波長を切り替えるように構成しても良い。例えば、本実施形態では、70ppmを閾値として、シリカ濃度が70ppmを超えた場合に、高測定波長に切り替えるように構成すれば良い。また、同じく透過率から算出される吸光度を基準にして、測定波長を切り替えるように構成しても良い。
【0033】
また、高測定波長から低測定波長への切り替えに関しては、図3を参照すると、測定波長450nmにおけるシリカ濃度80ppmのときの透過率[%T]が48.13であるから、本実施形態では、透過率が48.5以上になった場合に、シリカ濃度が所定の閾値よりも低い低濃度領域であるとして、450nmから430nmへとLEDを切り替えるように構成している。
【0034】
もちろん、高測定波長から低測定波長への切り替えにおいても、シリカ濃度を基準にして切り替えても良い。この場合には、低測定波長から高測定波長への切り替えの場合と同じ70ppmを閾値とすることができ、シリカ濃度が70ppm以下になった場合に、低測定波長へと切り替えれば良い。また、高測定波長から低測定波長への切り替えにおいても吸光度を基準にして切り替えるように構成しても良い。
【0035】
以上、本実施形態に係るシリカ濃度測定装置1の構成について詳細に説明したが、続いて、シリカ濃度測定装置1によりシリカ濃度を測定する際の処理の流れについて説明する。図4は、本実施形態に係るシリカ濃度測定の際の処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、シリカ濃度を基準にして測定波長の切り替えを行う場合を例に挙げて説明し、初期設定では、測定波長として低測定波長(430nm)が設定されているものとする。
【0036】
同図に示すように、まず、S10において、電磁弁31を開いて供給ライン30から試料水サンプルを透明容器10内に流入させる。続いて、S11において、液体吐出装置11から試薬を透明容器10内に注入する。本実施形態では、モリブデンイエロー法によりシリカ濃度を測定しており、試薬は、モリブデン酸アンモニウム水溶液10w%及び47%硫酸溶液24w%からなる試薬を用いている。
【0037】
S11で試薬を注入した後、撹拌装置12で撹拌しながら10分間放置する(S12)。続いて、S13に進み、透過率の測定を行う。発光素子21から発光され、透明容器10内のサンプル中を透過してきた光を受光素子22で受光し、受光素子22の出力から制御回路23において透過率が得られる。
【0038】
S14では、制御回路23が、S13で測定された透過率から、低測定波長の場合の検量線に基づき、シリカ濃度を算出する。S16では、S14で算出したシリカ濃度が70ppmより大きいか否かを判定する。70ppm以下の場合には、低濃度領域であり、上述したように低測定波長による測定で充分な分解能が得られるため、S14で算出したシリカ濃度をそのまま測定値とし、測定が終了する。
【0039】
S16において、算出濃度が70ppmよりも大きい場合には、高濃度領域であり、上述したように低測定波長による測定では分解能が充分ではないから、S17に進み、制御回路23の制御により、測定波長の切り替えを行う。すなわち、発光素子21において、430nmのLEDから450nmのLEDに切り替えることで、測定波長を低測定波長から高測定波長へと切り替える。
【0040】
その後、S18へと進み、高測定波長により透過率の測定を行い、S19において、制御回路23が、S18で測定した透過率から検量線を用いてシリカ濃度を算出し、測定が終了する。なお、このような処理は、制御回路23が、回路内のメモリに格納されているシーケンスプログラムを実行することで、実現される。
【0041】
以上、本実施形態に係るシリカ濃度測定装置1について詳細に説明したが、本実施形態によれば、シリカ濃度の測定において、低濃度領域と高濃度領域に分け、それぞれ所望の分解能を満たす適切な測定波長を設定して濃度測定を行うので、広い濃度領域で、高精度な測定が可能になる。特に、一つの測定波長のみで測定していた従来のシリカ濃度測定装置では、高濃度領域における測定の精度に問題があったが、本実施形態では、高濃度領域においても高精度に測定が可能である。
【0042】
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、モリブデン黄吸光光度法に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、モリブデン青吸光光度法等、他のシリカ濃度測定装置にも適用できる。この場合には、複数の測定波長の設定や、波長切替のための濃度領域の境界である閾値は、それぞれの測定方法の検量線等を参照して、適宜設定する必要がある。
【0043】
(変形例1)
続いて、本実施形態の変形例1について説明する。図5は、本変形例1に係る希釈ユニット50の構成を概略的に示す図である。本変形例1は、本実施形態に係るモリブデンイエロー法では、シリカ濃度が200mgSiO2/lを超える場合には、シリカ濃度の測定が困難であることに鑑み、試料水のシリカ濃度が測定範囲(0〜200mgSiO2/l)内に収まるように、シリカ濃度測定装置1に試料水を希釈するための希釈ユニットを追加設置したことを特徴としている。
【0044】
図5に示すように、希釈ユニット50は、多方バルブ51、シリンジ52、プレフィルタ53,54を備え、図1の供給ライン30の電磁弁31の上流側に接続・配置される。プレフィルタ53の上流側の配管には、試料水が供給され、プレフィルタ54の上流側の配管には、希釈水が供給されるように構成されている。
【0045】
希釈水としては、冷却塔やボイラのように内部で水を濃縮する機器の一次側の供給水(例えば、原水,軟水,薬品を投入していない給水)またはドレン水等を用いることができる。また、希釈ユニット50内に、希釈水を内蔵するように構成しても良い。なお、希釈水を内蔵する場合には、次亜塩素酸ナトリウムを添加した希釈水を使用することで、希釈水中に菌が発生するのを防止できる。
【0046】
このような構成において、多方バルブ51とシリンジ52とを用いることで、透明容器10内に供給するサンプルを、試料水のみ、希釈水のみ、試料水に所望の量の希釈水を混合したもの、とに容易に切り替えることができる。
【0047】
測定においては、まず、希釈水のみのシリカ濃度を測定し、その後、試料水と希釈水との混合サンプルのシリカ濃度を測定する。そして、混合サンプルのシリカ濃度から、混合比に応じて希釈水のシリカ濃度を差し引くことで、試料水のシリカ濃度を算出することができる。
【0048】
なお、希釈水の混合比については、測定可能な上限シリカ濃度(本実施形態では200mgSiO2/l)以下になるように希釈すれば良い。例えば、管理値が600mgSiO2/lのボイラ水の場合には、最初から試料水(ボイラ水)を10倍に希釈するように設定しておけば良い。また、本変形例1に係るシリカ濃度測定装置を適用する用途が決まっているのであれば、希釈倍率を一定に固定し、混合サンプルのシリカ濃度に補正係数をかけることで試薬水のシリカ濃度を測定するように構成すれば良い。
【0049】
本変形例1によれば、上記実施形態に係るシリカ濃度測定装置では測定することが困難なシリカ濃度の高い試料水であっても、シリカ濃度の測定が可能になる。また、大幅な装置の改良をすることなく、シリカ濃度測定装置1の供給ライン30の手前に希釈ユニット50を追加するといった簡単な改良で、高濃度の試料水を測定することが可能である。
【0050】
なお、ボイラ水等のシリカ濃度が高いサンプルの場合には、本変形例1に係る希釈ユニットを用いて、常に10倍程度に希釈して測定を行うことが望ましい。
【0051】
(変形例2)
続いて、本実施形態の変形例2について説明する。本変形例2は、水温による測定誤差を無くすために、測定されたシリカ濃度に対して温度補正を行うことを特徴としている。試料水や試薬の温度が低いと、ケイ酸とモリブデン酸の反応が遅いため、ケイモリブデン酸錯体の生成が鈍くなり、最高呈色に達する時間が長くかかってしまう。したがって、充分な時間をおかずに透過率を測定した場合には、測定結果に誤差が生じる可能性がある。
【0052】
このため、本変形例2では、透明容器10内に温度センサを設置し、サンプルの水温が低い場合には、測定時間は一定で、測定値に水温を考慮した補正係数を掛けることで、温度により測定精度が低下することを防止している。
【0053】
具体的には、15℃以下の水温について、試薬を注入してから充分な時間が経過した状態で測定した各温度の検量線と、上記実施形態のS12と同様に10分間経過した状態での各温度の検量線とから、予め各温度の温度補正係数を求めておく。そして、測定にあたっては、上記実施形態と同様に試薬を注入してから10分経過後に測定を行い、この測定値に当該温度の温度補正係数を掛けることで、最終的なシリカ濃度を求める。
【0054】
なお、10℃以下のように水温が低すぎる場合には、試薬を注入してから充分な時間が経過しても最高呈色に達しない場合がある。このような場合には、加温して測定した検量線を利用すれば、適切な温度補正係数を求めることができる。
【0055】
このように、測定値に対してサンプルの水温を考慮した温度補正を行うことで、反応に時間がかかる低温のサンプルを測定する場合や、充分な時間が経過しても最高呈色に達しないような水温のサンプルを測定する場合でも、短時間で高精度なシリカ濃度測定が可能である。
【0056】
(変形例3)
続いて、本実施形態の変形例3について説明する。本変形例3は、サンプルを加温するための加温装置を追加したことを特徴としている。上述したように、サンプルの水温が低い場合には、最高呈色に達するのに、非常に長い時間がかかる場合がある。また、サンプルの水温が低すぎる場合には、充分な時間が経過しても最高呈色に達しないことがある。
【0057】
このような問題を解決するために、本変形例3に係るシリカ濃度測定装置は、透明容器10内に加熱装置としてのヒータを有しており、上記S12の撹拌・放置工程において、サンプルを例えば40℃に加温するように構成されている。よって、本変形例3によれば、サンプルの水温が低い場合でも、最高呈色に達しないといった問題が生じず、高精度に短時間でシリカ濃度を測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、実施形態に係るシリカ濃度測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、実施形態に係る波長別の検量線を示す図である。
【図3】図3は、実施形態に係る測定波長別の各シリカ濃度における透過率を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係るシリカ濃度測定の際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態の変形例1に係る希釈ユニットの構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 シリカ濃度測定装置
10 透明容器
11 液体吐出装置
12 撹拌装置
14,15 小孔
20 測定器
21 発光素子
22 受光素子
23 制御回路
30 供給ライン
31 電磁弁
40 排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を注入したサンプルの透過率又は吸光度から当該サンプルのシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置において、
少なくとも高低二種類の測定波長を選択的に発光可能な発光素子と、
受光素子と、
シリカ濃度が、所定の閾値よりも低い低濃度領域では前記低測定波長を用い、前記所定の閾値よりも高い高濃度領域では前記高測定波長を用いるように前記発光素子を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするシリカ濃度測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記サンプルの透過率又は吸光度からシリカ濃度を算出するための検量線を、前記測定波長毎に有しており、前記測定波長の切り替えに合わせて前記検量線も切り替えることを特徴とする請求項1記載のシリカ濃度測定装置。
【請求項3】
前記シリカ濃度測定装置は、モリブデン黄吸光光度法によりシリカ濃度を測定する測定装置であって、
前記低測定波長は410nmから440nmの間の波長であり、前記高測定波長は450nmから460nmの間の波長であることを特徴とする請求項1又は2記載のシリカ濃度測定装置。
【請求項4】
前記サンプルを希釈するための希釈装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載のシリカ濃度測定装置。
【請求項5】
試薬を注入したサンプルの透過率又は吸光度から当該サンプルのシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定方法において、
少なくとも高低二種類の測定波長を選択的に発光可能な発光素子と受光素子とを用いて、前記サンプルの透過率を測定する工程と、
測定した透過率を用いて前記サンプルのシリカ濃度を算出する工程と、
前記低測定波長を使用しているときに、シリカ濃度が所定の閾値よりも高い高濃度領域に入ると、測定波長を前記高測定波長に切り替える工程と、
前記高測定波長を使用しているときに、シリカ濃度が所定の閾値よりも低い低濃度領域に入ると、測定波長を前記低測定波長に切り替える工程と、
を備えることを特徴とするシリカ濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−232747(P2008−232747A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71139(P2007−71139)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】