説明

シリカ粒子の製造方法

【課題】超臨界二酸化炭素を接触させる工程を経て得られるシリカ粒子の特性バラツキを抑制したシリカ粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリカ粒子分散液又はシリカ粒子が収容された処理槽に、超臨界二酸化炭素を導入・排出して、前記シリカ粒子分散液又は前記シリカ粒子に前記超臨界二酸化炭素を接触させる第1工程と、前記処理槽から排出した超臨界二酸化炭素の情報を検出し、前記検出した情報に基づいて、前記第1工程を停止する第2工程と、
を有するシリカ粒子の製造方法。
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「骨格が(SiO2m(mは正の整数)で且つシラノール基を有するゲルを、疎水化処理の際に副生成物としてアンモニアを生じるシリル化剤を疎水化処理剤として使用して疎水化処理し、次いで超臨界乾燥することによって疎水性エアロゲルを製造するにあたって、疎水化処理後の処理液を二酸化炭素と接触させ、処理液中のアンモニアを炭酸アンモニウムとして析出させて除去する疎水性エアロゲルの製法」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「液体媒体中でトナー粒子を形成し、該トナー粒子を濾取してウエットケーキを得、該ウエットケーキを超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有するトナーの製造方法」が提案されている。
【0004】
特許文献3には、「液体溶媒中で下記一般式(I)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料粒子を形成し、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を濾取したウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品を、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有するフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法」が提案されている。
【0005】
特許文献4には、「少なくとも1種の界面活性剤を含む水−二酸化炭素系から界面活性剤を回収する方法であって、該水−二酸化炭素系を脱水剤と接触させて水を除き、界面活性剤を回収する方法に関する。また、本発明は、二酸化炭素、二酸化炭素と相溶性を有する界面活性剤及び/又は助溶媒、並びに除去対象物を含む混合系を循環させる循環ライン中に該除去対象物の選択的除去装置を設け、該混合系を循環させて、前記界面活性剤及び/又は助溶媒に取り込まれた該除去対象物を選択的に除去する方法」が提案されている。
その他、循環ライン中に、除去対象物を選択的に除去する装置を設けて、除去対象物を選択的に除去することを特徴とする方法については、特許文献5〜6に提案されている。
【0006】
特許文献7には、「リコピンを含有する野菜類の処理物を最終的には90%以上のエチルアルコールで脱水処理した後、脱水物を超臨界二酸化炭素で抽出処理し、抽出物を植物油に溶解することを特徴とするリコピン油の製造方法」が提案されている。
【0007】
特許文献8には、「モヅクの極性溶媒抽出物を二酸化炭素ガスを溶媒とする超臨界抽出法により低極性画分を除去して得られる精製モヅク抽出物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開11−335115号公報
【特許文献2】特開2006−3513号公報
【特許文献3】特開2007−332350号公報
【特許文献4】国際公開2004/112952パンフレット
【特許文献5】特開2003−249475号公報
【特許文献6】特開2009−297665号公報
【特許文献7】特開平7−147929号公報
【特許文献8】特開2003−342157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、超臨界二酸化炭素を接触させる工程を経て得られるシリカ粒子の特性変動を抑制したシリカ粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
シリカ粒子分散液又はシリカ粒子が収容された処理槽に、超臨界二酸化炭素を導入・排出して、前記シリカ粒子分散液又は前記シリカ粒子に前記超臨界二酸化炭素を接触させる第1工程と、
前記処理槽から排出した超臨界二酸化炭素の情報を検出し、前記検出した情報に基づいて、前記第1工程を停止する第2工程と、
を有するシリカ粒子の製造方法。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記第1工程が、前記処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入して、前記シリカ粒子の疎水化処理を行う工程であり、
前記第2工程が、前記処理槽に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、前記処理槽から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出して、前記検出したアンモニア濃度に基づいて、前記第1工程を停止する工程である請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、処理槽から排出した超臨界二酸化炭素の情報を検出し、検出した情報に基づいて、超臨界二酸化炭素の接触を停止しない場合に比べ、超臨界二酸化炭素を接触させる工程を経て得られるシリカ粒子の特性変動を抑制したシリカ粒子の製造方法が提供できる。
請求項2に係る発明によれば、処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入してシリカ粒子の疎水化処理を行う場合において、処理槽から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出して、検出したアンモニア濃度に基づいて超臨界二酸化炭素の接触を停止しないときに比べ、得られるシリカ粒子の特性変動を抑制したシリカ粒子の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置を示す概略構成図である。
【0016】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置101は、図1に示すように、例えば、シリカ粒子及び分散媒(以下、溶媒と称する)を含むシリカ粒子分散液を収納し、シリカ粒子分散液を処理するための処理槽10と、シリカ粒子又は分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させるために、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出する超臨界二酸化炭素導入・排出機構20(導入・排出機構手段の一例)と、シリカ粒子の表面を疎水化処理するために、処理槽10にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入するヘキサメチルジシラザン導入機構60(ヘキサメチルジシラザン導入手段の一例:以下、HMDS導入機構60と称する)と、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量を検出する溶媒量検出計71(検出手段の一例)と、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出するアンモニア濃度計72(検出手段の一例)と、を備えている。但し、溶媒量検出計71は、必要に応じて備えるものである。
そして、本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置101には、シリカ粒子の製造装置101の動作を制御する制御部80を備えている。
なお、図1中、SAは、シリカ粒子分散液又は溶媒除去後のシリカ粒子を示し、SBは、溶媒を示す。
【0017】
処理槽10は、例えば、シリカ粒子分散液から分散媒を除去する処理(所謂、乾燥処理)、及びシリカ粒子の表面を疎水化する疎水化処理を行う処理槽である。
処理槽10としては、例えば、上記処理を行うために、アンカー等の攪拌翼とヒータ等の加熱源とを有する高圧処理槽が適用される。なお、図中、11は、攪拌翼を示す。
【0018】
超臨界二酸化炭素導入・排出機構20は、例えば、超臨界二酸化炭素導入部30と、超臨界二酸化炭素排出部40と、超臨界二酸化炭素再生部50と、を備えている。
【0019】
超臨界二酸化炭素導入部30は、液化二酸化炭素(液状の二酸化炭素)を収容する液化二酸化炭素収容タンク31と、液化二酸化炭素を超臨界状態とする、つまり超臨界二酸化炭素を発生させる超臨界二酸化炭素発生部32と、を備えている。
また、超臨界二酸化炭素導入部30には、液化二酸化炭素収容タンク31と超臨界二酸化炭素発生部32とを連結する液化二酸化炭素導入管35も設けられている。
また、超臨界二酸化炭素導入部30には、超臨界二酸化炭素発生部32と処理槽10とを連結する超臨界二酸化炭素導入管36も設けられている。この超臨界二酸化炭素導入管36の経路途中には、開閉バルブ37(例えばスウェージロック社製 過酷条件用バルブHNシリーズ等)が設けられている。
【0020】
超臨界二酸化炭素発生部32は、例えば、液化二酸化炭素導入管35の経路途中に設けられた、液化二酸化炭素を加熱する加熱源33(例えばヒータ等)と、液化二酸化炭素に圧力を付与する高圧ポンプ34と、で構成されている。
超臨界二酸化炭素発生部32では、液化二酸化炭素収容タンク31から液化二酸化炭素導入管35を通じて導入された液化二酸化炭素に対して、加熱源33及び高圧ポンプ34により、臨界点を超える温度及び圧力を付与し、液化二酸化炭素を臨界状態して、超臨界二酸化炭素を発生させる。
【0021】
超臨界二酸化炭素排出部40は、処理槽10から排出された超臨界二酸化炭素から、超臨界二酸化炭素とそれに含まれる溶媒とを分離するための分離槽41を備えている。
また、超臨界二酸化炭素排出部40には、分離槽41と処理槽10とを連結する超臨界二酸化炭素排出管42が設けられている。この超臨界二酸化炭素排出管42の経路途中には、開閉バルブ43(例えばスウェージロック社製 過酷条件用バルブHNシリーズ等)が設けられている。
【0022】
分離槽41には、不図示の冷却装置が備えられ、冷却装置により、溶媒を含む超臨界二酸化炭素の圧力低減と共に、温度を低下させ、超臨界状態を解除し、二酸化炭素の溶媒に対する溶解度を低減させ、気体状の二酸化炭素と溶媒とを分離する。
分離された溶媒は、分離槽41の底部に貯留して回収される。一方、気体状の二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素再生部50へ送られる。
【0023】
超臨界二酸化炭素再生部50は、気体状の二酸化炭素を液化する二酸化炭素液化槽51を備えている。
また、超臨界二酸化炭素再生部50には、二酸化炭素液化槽51と分離槽41とを連結する気化二酸化炭素排出管52も設けられている。
また、超臨界二酸化炭素再生部50には、二酸化炭素液化槽51と液化二酸化炭素収容タンク31とを連結する液化二酸化炭素導入管53も設けられている。
【0024】
二酸化炭素液化槽51では、槽内を高圧にし、気体状の二酸化炭素に圧力を付与して、液化させる。そして、液化した液状の二酸化炭素は、液化二酸化炭素導入管53を通じて、液化二酸化炭素収容タンク31へ導入され、再利用する。
【0025】
なお、超臨界二酸化炭素導入・排出機構20として、超臨界二酸化炭素再生部50を設けて、二酸化炭素を再利用する形態を説明するが、これに限られず、例えば、二酸化炭素を再利用しない形態、つまり、液化二酸化炭素収容タンク31へ液状の二酸化炭素を外部から供給、又は液化二酸化炭素収容タンク31を交換する形態であってもよい。
【0026】
HMDS導入機構60は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を収容するHMDS収容タンク61を備えている。
また、HMDS導入機構60には、HMDS収容タンク61と処理槽10とを連結するHMDS導入管62も設けられている。このHMDS導入管62の経路途中には、導入ポンプ63と開閉バルブ64(例えばスウェージロック社製 過酷条件用バルブHNシリーズ等)とが設けられている。
【0027】
溶媒量検出計71は、例えば、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒の割合(溶媒濃度)を測定する濃度センサ、分離して分離槽41の底部に貯留した溶媒の重量を測る計量計、分離して分離槽41の底部に貯留した溶媒の液面を計測するレベル計等が挙げられる。
なお、本実施形態では、溶媒量検出計71として、分離して分離槽41の底部に貯留した溶媒の重量を測る計量計を、分離槽41内に設けた形態を示している。
無論、溶媒量検出計71として、濃度センサ、レベル計、計量計を2つ以上設けてもよい。
【0028】
アンモニア濃度計72は、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出するために、超臨界二酸化炭素排出管42内部に設けられている。
アンモニア濃度計72は、例えば、疎水化処理剤であるヘキサメチルジシラザン(HMDS)によるシリカ粒子の表面の疎水化処理反応により生成するアンモニアが、超臨界二酸化炭素と共に処理槽10から排出される際、当該超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を計測する濃度計であり、例えば、レーザー式ガス分析計(東光計器株式会社製:GM700)等が適用される。
【0029】
制御部80は、シリカ粒子の製造装置101の各部(例えば、各種ポンプ、各種開閉バルブ、各種加熱源、溶媒量検出計、アンモニア濃度計72等)に、信号が授受されるように接続されている。
制御部80は、図示しないが、例えば、コンピュータとして構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース(I/O)を介して各々接続された構成となっており、I/Oには、シリカ粒子の製造装置101の各部(例えば、各種ポンプ、各種開閉バルブ、各種加熱源、溶媒量検出計、アンモニア濃度計72等)が接続される。
また、不揮発性メモリには、処理(例えば、溶媒除去処理、疎水化処理等)の制御プログラムや、各種テーブルデータ等が記憶される。不揮発性メモリに記憶された制御プログラムは、CPUにより読み込まれて実行される。なお、制御プログラムは、CD−ROM、DVD−ROMUSBメモリ等の記録媒体により提供するようにしてもよい。
【0030】
次に、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法について説明する。
ここで、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置の制御部80において実行される処理として行われる。
【0031】
−シリカ粒子分散液収容工程−
まず、処理槽10内に、シリカ粒子分散液を収容する。
【0032】
収容するシリカ粒子分散液は、例えば、シリカ粒子と溶媒(例えばアルコール及び水)とを含有するシリカ粒子分散液である。
シリカ粒子分散液は、例えば、湿式(例えば、ゾルゲル法等)により作製されてものであることがよい。特に、シリカ粒子分散液は、湿式としてゾルゲル法、具体的には、テトラアルコキシランを、アルコール及び水の溶媒にアルカリ溶媒を添加したアルカリ溶媒存在下で、反応(加水分解反応、縮合反応)を生じさせてシリカ粒子を生成して作製されたものであることがよい。
なお、シリカ粒子の形成は、球形状、異型状のいずれであってもよい。
【0033】
ここで、収容するシリカ粒子分散液は、そのアルコールに対する水の質量比が例えば0.01以上0.5以下であることがよく、望ましくは0.05以上0.35以下、より望ましくは、0.1以上0.3以下である。
水の質量比が0.01を下回ると、溶媒除去後の乾燥されたシリカ粒子の水分が低くなってしまうため、疎水化処理を行っても疎水化度がさほど高くならないことがある。また、水の質量比が0.5を超えると、後述する超臨界二酸化炭素による溶媒を除去する工程における減圧時にシリカ粒子分散液中に水が過剰に存在することとなり、大気圧まで圧力を低下した際に水の蒸発により、シリカ粒子の液架橋力が発生し易く、粗粉が発生し易くなる傾向となる。
【0034】
また、収容するシリカ粒子分散液は、そのシリカ粒子に対する水の質量比が例えば0.02以上3以下であることがよく、望ましくは0.05以上1以下、より望ましくは0.1以上0.5以下である。
水の質量比が0.02を下回ると、溶媒除去後の乾燥されたシリカ粒子の揮発分(例えば水分)が低くなってしまうため、疎水化処理時に疎水化処理剤の加水分解が不十分となる事で疎水化度がさほど高くならないことがある。また、水の質量比が3を超えると、後述する超臨界二酸化炭素による溶媒を除去する工程における減圧時にシリカ粒子分散液中に水が過剰に存在することとなり、大気圧まで圧力を低下した際に水の蒸発により、シリカ粒子の液架橋力が発生し易く、粗粉が発生し易くなる傾向となる。
【0035】
また、収容するシリカ粒子分散液は、当該シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が例えば0.05以上0.5以下がよく、望ましくは0.1以上0.45以下、より望ましくは、0.2以上0.4以下である。
シリカ粒子の質量比が0.05を下回ると、生産性が悪くなってしまうことがある。また、このシリカ粒子の質量比が0.5を超えると、後述する超臨界二酸化炭素による溶媒を除去する工程においてシリカ粒子がゲル化し、粗粉が発生し易くなる傾向となる。
【0036】
−溶媒除去処理工程−
次に、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子分散液の分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させて、シリカ粒子分散液の溶媒除去処理を行う。
【0037】
具体的には、例えば、攪拌翼11を回転させ、開閉バルブ37を開くと共に、開閉バルブ43を閉め、高圧ポンプ34を駆動し、超臨界二酸化炭素導入管36を通じて、液化二酸化炭素を処理槽10内に充填する。
次に、高圧ポンプ34を駆動しつつ、超臨界二酸化炭素発生部32の加熱源33と共に、処理槽10の加熱源(不図示)を駆動し、液体二酸化炭素を昇温・昇圧させ、超臨界状態とする。
次に、開閉バルブ43を開き、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出させ、流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素が溶媒(アルコール及び水)を溶解しつつ、これを同伴してシリカ粒子分散液の外部(処理槽10の外部)へと排出され、溶媒が除去される。
【0038】
なお、シリカ粒子分散液の溶媒除去処理の開始は、例えば、シリカ粒子の製造装置101の電源がONされたか、又は、ユーザの操作によりシリカ粒子分散液の溶媒除去処理開始の信号の授受を受けたか等により行う。
【0039】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つものである。
【0040】
溶媒除去処理の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、31℃以上350℃以下がよく、望ましくは60℃以上300℃以下、より望ましくは、80℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し難くなるため、溶媒の除去がし難くなることがある。また溶媒や超臨界二酸化炭素の液架橋力により粗粉が生じ易くなることがある。一方、この温度が上記範囲を超えると、親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じやすくなることがある。
【0041】
また、溶媒除去処理の温度条件は、シリカ粒子分散液中のアルコールに対する水の質量比により適温が異なる。水はアルコールに比べて超臨界二酸化炭素に溶け込み難い傾向があるが、超臨界二酸化炭素の温度を高くすることで溶解度は高くなる傾向がある。
【0042】
一方、溶媒除去処理の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、例えば、7.38MPa以上40MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上35MPa以下、より望ましく15MPa以上25MPa以下である。
この圧力が上記範囲未満であると、超臨界二酸化炭素に溶媒が溶解し難くなる傾向にあり、一方、圧力が上記範囲を超えると、設備が高額となる傾向となる。
【0043】
−溶媒除去処理停止工程−
次に、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量を検出し、検出した溶媒量に基づいて、溶媒除去処理を停止する。
【0044】
具体的には、例えば、まず、溶媒量検出計71により、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量(その積算溶媒量:つまり、シリカ粒子分散液から除去された溶媒除去量)を検出する。
そして、排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量(溶媒除去量)が、予め定めた量に達したか否かを判定し、予め定めた量に達した場合、溶媒除去処理を停止する。
溶媒除去処理の停止は、例えば、開閉バルブ37を閉じ、処理槽10内への超臨界二酸化炭素の導入を停止すると共に、超臨界二酸化炭素発生部32の加熱源33及び高圧ポンプ34の駆動と共に、処理槽10の加熱源(不図示)の駆動を停止し、処理槽10内が予め定められた内圧まで減圧した後、開閉バルブ43を閉じることで行う。
このようにして、溶媒除去処理を停止する。
【0045】
ここで、溶媒除去処理を停止する設定値である溶媒量(溶媒除去量)は、予め、目的とする溶媒除去後のシリカ粒子の水分(残留水分量)を実験等により求めておく。具体的には、溶媒量(溶媒除去量)は、シリカ粒子分散液の総量からシリカ分散液中のシリカ粒子濃度より求めたシリカ粒子固形分量及び溶媒除去後の溶媒量(揮発)分を足した量を差し引くことで求めておく。
そして、予め求めた溶媒除去処理を停止する設定値である溶媒量(溶媒除去量)をROM、RAM、又は不揮発性メモリに記憶しておき、溶媒量検出計71(計量計)により検出された結果と対比させることで、溶媒除去処理の停止か否かの判定がなされる。
なお、本実施形態では、溶媒量検出計71として、分離して分離槽41の底部に貯留した溶媒の重量を測る計量計により、溶媒量(溶媒除去量)を検出する。
【0046】
−疎水化処理工程−
次に、処理槽10に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入すると共に、超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子分散液のシリカ粒子に超臨界二酸化炭素を接触させた状態で(つまり、超臨界二酸化炭素中で)、シリカ粒子の疎水化処理を行う。
【0047】
具体的には、例えば、溶媒除去処理の停止した後、導入ポンプ63の駆動、開閉バルブ64の開きを行い、HMDS収容タンク61からHMDS導入管62を通じて、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を処理槽10へ導入する。
次に、攪拌翼11を回転させ、開閉バルブ37を開くと共に、開閉バルブ43を閉め、高圧ポンプ34を駆動し、超臨界二酸化炭素導入管36を通じて、液化二酸化炭素を処理槽10内に充填する。
その後、高圧ポンプ34を駆動し、処理槽10内の液体二酸化炭素を昇温・昇圧させ、超臨界状態とした後、開閉バルブ37を閉め、超臨界状態とした温度及び圧力を予め定められた時間保持する。
次に、予め定められた時間保持した後、開閉バルブ37及び開閉バルブ43を開くと共に、超臨界二酸化炭素発生部32の加熱源33及び高圧ポンプ34を駆動して、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出させ、流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素中で、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を反応させて、シリカ粒子の疎水化処理を行う。
【0048】
疎水化処理工程において、処理槽10の容積に対するシリカ粒子の量(つまり仕込み量)は、例えば、50g/L以上600g/L以下がよく、望ましくは100g/L以上500g/L以下、より望ましくは150g/L以上400g/L以下である。
この量が上記範囲より少ないと疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が低くなりシリカ表面との接触確率が低下し、疎水化反応が進み難くなる。一方で、この量が上記範囲よりも多いと、疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が高くなり、疎水処理剤が超臨界二酸化炭素へ溶解しきれず分散不良となり、粗大凝集物を発生させやすくなる。
【0049】
超臨界二酸化炭素の密度は、例えば、0.10g/ml以上0.60g/ml以下がよく、望ましくは0.10g/ml以上0.50g/ml以下、より望ましくは0.2g/ml以上0.30g/ml以下)である。
この密度が上記範囲より低いと、超臨界二酸化炭素に対する疎水処理剤の溶解度が低下し、凝集物を発生させる傾向がある。一方で、密度が上記範囲よりも高いと、シリカ細孔への拡散性が低下するため、疎水化処理が不十分となる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記密度範囲での疎水化処理が必要である。
なお、超臨界二酸化炭素の密度は、温度及び圧力等により調整される。
【0050】
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)の導入量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、シリカ粒子に対し、例えば、1質量%以上60質量%以下がよく、望ましくは5質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0051】
ここで、疎水化処理の温度条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは100℃以上300℃以下、より望ましくは150℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、疎水化処理剤と親水性シリカ粒子表面との反応性低下する。一方で、温度が上記範囲を超えると、親水性シリカ粒子のシラノール基間による縮合反応が進み、結果として反応サイトの減少となり疎水化度が向上し難くなる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記温度範囲での疎水化処理が必要である。
【0052】
一方、疎水化処理の圧力条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、上記密度を満足する条件であればよいが、例えば、8MPa以上30MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上25MPa以下、より望ましく15MPa以上20MPa以下である。
【0053】
−疎水化処理停止工程−
次に、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出し、検出したアンモニア濃度に基づいて、疎水化処理を停止する。
具体的には、まず、アンモニア濃度計72により、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出する。
そして、排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度が、予め定めた濃度以下に達したか否かを判定し、予め定めた濃度以下に達した場合、疎水化処理を停止する。
つまり、疎水化処理に伴う、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)の反応は、アンモニアが生成されることから、生成するアンモニアが超臨界二酸化炭素と共に処理槽10から排出される際、流通(導入・排出)する当該超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を計測し、予め定めた濃度以下に達したか否かを判定し、予め定めた濃度以下に達した場合、超臨界二酸化炭素の流通(つまり処理槽10への超臨界二酸化炭素の導入・排出)を停止する。
【0054】
疎水化処理の停止は、例えば、開閉バルブ37を閉じ、処理槽10内への超臨界二酸化炭素の導入を停止すると共に、超臨界二酸化炭素発生部32の加熱源33及び高圧ポンプ34の駆動と共に、処理槽10の加熱源(不図示)の駆動を停止し、処理槽10内が予め定められた内圧まで減圧した後、開閉バルブ43を閉じることで行う。
このようにして、疎水化処理を停止する。
【0055】
ここで、疎水化処理を停止する設定値であるアンモニア濃度は、予め、目的とする疎水化処理後のシリカ粒子のアンモニア濃度から実験等により求められる。具体的には、既知のアンモニア濃度を持つ疎水化処理後のシリカ粒子に対して、超臨界二酸化炭素を流通(接触)させ、流通(接触)後の超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を計測し、その計測値から検量線を作成する。
そして、予め求めた疎水化処理を停止する設定値であるアンモニア濃度(その検量線)をROM、RAM、又は不揮発性メモリに記憶しておき、溶媒量検出計71(計量計)により検出された結果と対比させることで、溶媒除去処理の停止か否かの判定がなされる。
【0056】
−その他工程−
溶媒除去処理、疎水化処理において、処理槽10から排出される超臨界二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素排出管42を通じて、分離槽41へ送られ、分離槽41で超臨界状態が解除され、溶媒及びアンモニアと分離される。
分離された溶媒及びアンモニアは、分離槽41の底部に貯留され、その後、回収される。
なお、排出される超臨界二酸化炭素とそれに含まれるアンモニアとの分離は、分離槽41に移る段階で、温度及び圧力を調節して分離してもよい。
【0057】
超臨界状態が解除され、分離後の気体状の二酸化炭素は、気化二酸化炭素排出管52を通じて、二酸化炭素液化槽51へ送られ、二酸化炭素液化槽51で昇圧され、液化された後、液化二酸化炭素導入管53を通じて、再び、液化二酸化炭素収容タンク31へ導入され、再利用される。
【0058】
以上の工程(処理)を経て、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法を終了する。そして、以上の工程(処理)を一サイクルとして、繰り返し行い、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法を行う。
【0059】
以上説明した本実施形態では、処理槽10に、シリカ粒子分散液を収容した後、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子又は前記分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させる工程(本実施形態では、溶媒除去処理工程、疎水化処理工程)を有している。
そして、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素の情報(本実施形態では、超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量、アンモニア濃度)を検出し、検出した情報に基づいて、超臨界二酸化炭素を接触させる工程を停止する。
【0060】
このため、本実施形態では、繰り返し行われるシリカ粒子の製造において、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素の情報に基づき、超臨界二酸化炭素を接触させる工程(本実施形態では、溶媒除去処理工程、疎水化処理工程)を停止させることから、本工程の停止条件の変動が少なくなる。
したがって、得られるシリカ粒子の特性変動も低減される。
【0061】
特に、本実施形態では、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子分散液の分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させて、シリカ粒子分散液の溶媒除去処理を行う。
そして、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量を検出し、検出した溶媒量に基づいて、溶媒除去処理を停止している。
【0062】
ここで、作製されるシリカ粒子分散液の溶媒量(例えばアルコール及び水の量)は、その作製ロッド毎にバラツキが少なからず発生する。このため、溶媒除去処理の条件を固定にした場合は、溶媒除去後のシリカ粒子に残る溶媒量も変動する。溶媒除去後のシリカ粒子に残る溶媒量が変動すると、次工程での処理(例えば疎水化処理)の際には、疎水化処理剤の加水分解状態が変化するため、疎水化処理剤とシリカ粒子表面との反応性が変わり、結果的に疎水化度、吸湿性、帯電性等の特性が変動することとなる。
【0063】
これに対して、本実施形態では、繰り返し行われるシリカ粒子の製造において、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒量(溶媒除去量)に基づき、溶媒除去処理工程を停止させることから、溶媒除去処理工程の停止条件の変動が少なくなる。つまり、溶媒除去後のシリカ粒子に残る溶媒量も変動する。
したがって、得られるシリカ粒子の特性(例えば、吸湿性、帯電性、疎水化度)の変動が抑制される。
【0064】
ここで、超臨界二酸化炭素を流通させ、超臨界二酸化炭素により、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する場合、超臨界二酸化炭素が「界面張力が働かない」という性質から、溶媒を除去する際の液架橋力による粒子同士の凝集もなく溶媒を除去できるものと考えられる。また超臨界二酸化炭素の「臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つ」といった性質により、比較的低温(例えば250℃以下)で、超臨界二酸化炭素に効率良く接触し、溶媒を溶解することから、この溶媒を溶解した超臨界二酸化炭素を除去することで、シラノール基の縮合による2次凝集体等の粗粉を生じることなくシリカ粒子分散液中の溶媒を除去できるものと考えられる。
このため、粗粉の発生が少ないシリカ粒子が得られると考えられる。
【0065】
また、本実施形態では、処理槽10に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入すると共に、超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子分散液のシリカ粒子に超臨界二酸化炭素を接触させた状態で(つまり、超臨界二酸化炭素中で)、シリカ粒子の疎水化処理を行う。
そして、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出し、検出したアンモニア濃度に基づいて、疎水化処理を停止している。
【0066】
シリカ粒子を形成する際に触媒及び分散安定剤として使用されたり、疎水化処理剤(ヘキサメチルジシラザン)の反応由来の副生成物として発生するアンモニアは、不快な臭気となったり、吸湿する元となる。
一方で、疎水化処理後のシリカ粒子のアンモニア残留を避けるために、疎水化処理に引き続き、十分過ぎる時間、加熱することも考えられるが、加熱のし過ぎに伴うシリカ粒子の特性(BET比表面積、水分残量)を損ねる恐れとなり、エネルギー効率的にも生産効率的にも無駄が多くなるのが現状である。
【0067】
これに対して、本実施形態では、繰り返し行われるシリカ粒子の製造において、処理槽10から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度に基づき、疎水化処理工程を停止させることから、疎水化処理工程の停止条件の変動が少なくなる。
つまり、過剰な加熱を付与することなく、疎水化処理工程の停止が実現され、疎水化処理後のシリカ粒子の特性(BET比表面積、水分残量、アンモニア残留量)の変動が抑制されると共に、アンモニア濃度の低減も図れる。
したがって、得られるシリカ粒子の特性(例えば、吸湿性、帯電性、疎水化度)の変動が抑制される。また、得られるシリカ粒子のアンモニア残留量を低減した状態で、その量の変動が抑制されることから、残留するアンモニアに起因する臭気、及び吸湿性悪化も抑制される。
【0068】
ここで、疎水化処理剤(ヘキサメチルジシラザン)によりシリカ粒子の表面を疎水化処理する際、超臨界二酸化炭素中で行うと、超臨界二酸化炭素中に疎水性処理剤が溶解した状態となると考えられる。超臨界二酸化炭素は界面張力が極めて低いという特性を持つことから、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態の疎水性処理剤は、超臨界二酸化炭素と共に、シリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられる。そして、これにより、シリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、疎水化処理がなされると考えられる。
【0069】
なお、本実施形態では、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子又は前記分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させる工程として、溶媒除去処理工程、疎水化処理工程の双方を行った形態を説明したが、いずれの工程のみを行う形態であってもよい。
また、溶媒除去処理工程と疎水化処理工程とを連続して実施する形態を説明したが、これに限られず、非連続で行う形態(つまり、溶媒除去処理工程を行った後、一旦、処理槽10からシリカ粒子を取り出し、再び、シリカ粒子と疎水化処理剤を処理槽10に収容して、疎水化処理工程を行う形態)であってもよい。
【0070】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置101の構成は、上記構成に限られず、処理槽10に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、シリカ粒子又は前記分散媒に超臨界二酸化炭素を接触させる工程(本実施形態では、溶媒除去処理工程、疎水化処理工程)が実現される構成であればよい。
【0071】
具体的には、本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置101は、
シリカ粒子分散液又はシリカ粒子を収容し、シリカ粒子分散液又はシリカ粒子を処理するための処理槽と、
シリカ粒子分散液又はシリカ粒子に超臨界二酸化炭素を接触させるために、処理槽に超臨界二酸化炭素を導入・排出する超臨界二酸化炭素導入・排出手段と、
処理槽から排出した超臨界二酸化炭素の情報を検出する検出手段と、
検出手段によって検出された情報に基づいて、導入・排出手段を制御し、処理槽への超臨界二酸化炭素の導入を停止する制御手段と、
を備えるシリカ粒子の製造装置であればよい。
【0072】
特に、本実施形態に係るシリカ粒子の製造装置101は、
シリカ粒子の表面に疎水化処理を行うために、処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入するヘキサメチルジシラザン導入手段をさらに備え、
検出手段が、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入後、処理槽から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出する検出手段であり、
制御手段が、検出手段によって検出されたアンモニア濃度に基づいて、導入・排出手段を制御し、処理槽への超臨界二酸化炭素の導入を停止する制御手段である構成であることがよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0074】
(実施例1)
ゾルゲル法で調製したシリカ粒子分散液をDCF(ダイナミック・クロスフロー・フィルター)で濃縮し、シリカ粒子固形分35質量%のシリカ粒子分散液を得た。
このシリカ粒子分散液を300質量部採取した。そして、溶媒除去処理終了時(乾燥終了時)のシリカ粒子の水分(残留水分量)を5質量%と設定し、取り除く溶媒量(溶媒除去量)を189.75(=300質量部−(300質量部×35質量%×1.05)と設定した。
【0075】
次に、採取したシリカ粒子分散液を、アンカー型撹拌機及びヒータ付きの0.65L高圧処理槽に投入し密閉した。
次に、アンカー型の撹拌翼を110rpmで回転させながら、液化二酸化炭素を充填し、高圧処理槽内を温度80℃、圧力20MPaとなるように昇温昇圧し、二酸化炭素を超臨界状態とした。そして、撹拌翼を110rpmで回転させたまま、超臨界二酸化炭素導入・排出機構により高圧処理槽に超臨界二酸化炭素を導入・排出して流通させた。このときの流通速度は20L/minとした。
高圧処理槽から排出された超臨界二酸化炭素を冷却装置付きの分離槽へ送り、分離槽にて冷却して、超臨界二酸化炭素に含まれる溶媒を分離し、分離した溶媒を分離槽に貯留した。
次に、分離槽に設けた計量計により、貯留された溶媒量(溶媒除去量)が設定の189.75gに達した時点で、超臨界二酸化炭素の導入(流通)を停止し、高圧処理槽の内圧を10MPaに下げて、溶媒除去処理を終了した。
【0076】
次に、HMDS導入機構により、高圧処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入した後、高圧処理槽内の昇温昇圧を行い、160℃、20MPaとし、その温度及び圧力を保持して、疎水化処理を30分間行い、30分後、高圧処理槽の圧力を開放して、疎水化処理を終了した。
そして、高圧処理槽から、疎水化処理されたシリカ粒子を取り出し、シリカ粒子の疎水化度や水分(残留水分量)を評価した。
【0077】
また、シリカ粒子固形分(表1記載のシリカ粒子固形分)の異なるシリカ粒子分散液を300g準備し、各シリカ粒子分散液から取り除く溶媒量(表1記載の溶媒除去量)を設定し、上記同様の溶媒除去処理及び疎水化処理を行い、シリカ粒子の疎水化度や水分(残留水分量)を評価した。
【0078】
【表1】

【0079】
(比較例1)
シリカ粒子固形分(表2記載のシリカ粒子固形分)の異なるシリカ粒子分散液を300g準備し、上記同様の溶媒除去処理及び疎水化処理を行い、シリカ粒子の疎水化度や水分(残留水分量)を評価した。
但し、溶媒除去処理(乾燥処理)の停止条件を、シリカ粒子分散液から取り除く溶媒量(表1記載の溶媒除去量)によらず、超臨界二酸化炭素の流通時間を33分と固定して行った。なお、表2中の溶媒除去量は、超臨界二酸化炭素の流通時間を33分と固定して、溶媒除去処理(乾燥処理)の停止したときの溶媒除去量を示している。
【0080】
【表2】

【0081】
上記結果から、実施例1では、比較例1に比べ、得られるシリカ粒子の疎水化度、水分(残留水分量)の変動が少ないことがわかる。
なお、水分(残留水分量)は、シリア粒子の帯電性に影響を与えることから、実施例1では、比較例1に比べ、シリカ粒子の帯電性の変動も少ないことがわかる。
【0082】
(実施例2)
溶媒除去後の乾燥シリカ粒子(シリカ粒子の水分(残留水分量)5%)を準備した。
乾燥シリカ粒子をアンカー型撹拌機及びヒータ付きの0.65L高圧処理槽に投入し密閉した。
次に、アンカー翼を110rpmで回転させながら、HMDS導入機構により、高圧処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)30gを導入した後、液化二酸化炭素を充填し、高圧処理槽内を温度150℃、圧力20MPaとなるように昇温昇圧し、二酸化炭素を超臨界状態とした。そして、温度150℃、圧力20MPaへ到達後、30分間温度及び圧力を保持して、疎水化処理を行った。30分後、超臨界二酸化炭素導入・排出機構により高圧処理槽に超臨界二酸化炭素を導入・排出して流通させた。このときの流通速度は22L/minとした。
高圧処理槽から排出された超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を、レーザー式ガス分析計(東光計器株式会社製:GM700)により計測し、アンモニア濃度が低下し、0.02%に達した時点で、超臨界二酸化炭素の導入(流通)を停止し、高圧処理槽の圧力を開放して、疎水化処理を終了した。
そして、高圧処理槽から、疎水化処理されたシリカ粒子を取り出し、シリカ粒子のアンモニア濃度、及び水分(残留水分量)を評価した。また、超臨界二酸化炭素の流通時間(導入・排出時間)も調べた。
【0083】
また、水分(表3記載の水分:溶媒水分量)の異なる乾燥シリカ粒子を100g準備し、上記同様の疎水化処理を行い、シリカ粒子のアンモニア濃度や水分(残留水分量)を評価した。
【0084】
【表3】

【0085】
(比較例2)
水分(表4記載の水分:残留水分量)の異なる乾燥シリカ粒子を100g準備し、実施例1と同様の疎水化処理を行い、シリカ粒子のアンモニア濃度や水分(残留水分量)を評価した。
但し、疎水化処理の停止条件を、高圧処理槽から排出される超臨界二酸化炭素のアンモニア濃度によらず、超臨界二酸化炭素の流通時間(導入・排出時間)を11.6分と固定して行った。
【0086】
【表4】

【0087】
上記結果から、実施例2では、比較例2に比べ、シリカ粒子のアンモニア濃度、水分(残留水分量)の変動が少ないことがわかる。
また、実施例2では、シリカ粒子のアンモニア濃度を低減した状態で、その変動が少ないこともわかる。
なお、水分(残留水分量)は、シリア粒子の帯電性に影響を与え、アンモニア濃度は吸湿性に影響を与えることから、実施例2では、比較例2に比べ、シリカ粒子の帯電性や吸湿性の変動も少ないことがわかる。
【0088】
なお、シリカ粒子の疎水化度は、イオン交換水50ml、試料となるシリカ粒子0.2質量部をビーカーに入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、試料全量が沈んだ終点におけるメタノール水混合溶液中のメタノール質量分率を疎水化度として求めた。
【0089】
また、シリカ粒子の水分(残留水分量)は、セイコー社製TGA−DTA2000S(商品名)を用いて、窒素気流下、20℃/minの昇温速度で30℃から250℃まで昇温しときの質量減少率を水分(残留水分量)として求めた。
【0090】
また、疎水化処理後のシリカ粒子のアンモニア濃度は、次のようにして求める。
サンプルとなる疎水化処理後のシリカ粒子を50mlをポリプロピレン(PP)製メスフラスコに各々0.1g精秤し、これにテトラヒドロキシフラン(THF)2ml加えてシリカ粒子を濡らす。ここに超純水を加えて50mlにメスアップした後、良く振り混ぜ、6分間超音波分散機に掛ける。ついで、予め超純水で洗浄したシリンジフィルターにてシリカ分散液を濾過し、測定試料とする。そして、測定試料を用いて、以下の条件で、アンモニア濃度を求める。
・測定装置:Dionex社製 ICS2000イオンクロマトグラフ
・測定試料導入量:25μl
・溶離液:メタンスルフォン酸20mM
・分離カラム:IonPac CS12A 4mmφ×250mm
・検出器:電気伝導度計
【符号の説明】
【0091】
10 処理槽
11 攪拌翼
20 超臨界二酸化炭素導入・排出機構
30 超臨界二酸化炭素導入部
31 液化二酸化炭素収容タンク
32 超臨界二酸化炭素発生部
33 加熱源
34 高圧ポンプ
35 液化二酸化炭素導入管
36 超臨界二酸化炭素導入管
37 開閉バルブ
40 超臨界二酸化炭素排出部
41 分離槽
42 超臨界二酸化炭素排出管
43 開閉バルブ
50 超臨界二酸化炭素再生部
51 二酸化炭素液化槽
52 気化二酸化炭素排出管
53 液化二酸化炭素導入管
60 ヘキサメチルジシラザン導入機構
61 HMDS収容タンク
62 HMDS導入管
63 導入ポンプ
64 開閉バルブ
71 溶媒量検出計
72 アンモニア濃度計
80 制御部
101 シリカ粒子の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子分散液又はシリカ粒子が収容された処理槽に、超臨界二酸化炭素を導入・排出して、前記シリカ粒子分散液又は前記シリカ粒子に前記超臨界二酸化炭素を接触させる第1工程と、
前記処理槽から排出した超臨界二酸化炭素の情報を検出し、前記検出した情報に基づいて、前記第1工程を停止する第2工程と、
を有するシリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程が、前記処理槽にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を導入して、前記シリカ粒子の疎水化処理を行う工程であり、
前記第2工程が、前記処理槽に超臨界二酸化炭素を導入・排出して、前記処理槽から排出した超臨界二酸化炭素に含まれるアンモニア濃度を検出して、前記検出したアンモニア濃度に基づいて、前記第1工程を停止する工程である請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67521(P2013−67521A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205354(P2011−205354)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】