説明

シリカ粒子及びその製造方法

【課題】付着対象物の流動性を維持するシリカ粒子を提供する。
【解決手段】体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満であるシリカ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子は、トナー、化粧品、ゴム、研磨剤等の添加成分または主成分として用いられ、例えば、樹脂の強度向上、粉体の流動性向上、パッキング抑制などの役割を担っている。シリカ粒子の有する性質は、シリカ粒子の形状に依存し易いと考えられ、種々の形状のシリカ粒子が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1乃至特許文献3では、球状のシリカ粒子が鎖状に連結した非球状のシリカ粒子が開示されている。バインダーを用いずに一次粒子同士を結合しているシリカ粒子も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、突起物を化学結合により母体粒子に結着する等して、表面を突起状にすることにより非球状としたシリカ粒子が提案されている(例えば、特許文献5乃至11参照)。
さらに、例えば、特許文献12及び13に、球状のシリカ粒子を合一させた、繭型ないし落花生様双子型のシリカ粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−317115号公報
【特許文献2】特開平7−118008号公報
【特許文献3】特開平4−187512号公報
【特許文献4】特開2003−133267号公報
【特許文献5】特開2002−38049号公報
【特許文献6】特開2004−35293号公報
【特許文献7】特開2008−169102号公報
【特許文献8】特開2009−78935号公報
【特許文献9】特開2009−137791号公報
【特許文献10】特開2009−149493号公報
【特許文献11】特開2009−161371号公報
【特許文献12】特開平11−60232号公報
【特許文献13】特開2004−203638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は付着対象物の流動性を維持するシリカ粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満であるシリカ粒子である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、
前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランの供給量が、前記準備工程における前記アルコールの量に対し、0.002mol/mol以上0.008mol/mol以下となるまで前記テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する第1の供給工程と、
前記第1の供給工程の後、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒の供給を0.5min以上10min以下の時間停止する供給停止工程と、
前記供給停止工程後、前記アルカリ触媒溶液中に、さらに、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒を供給する第2の供給工程と、を有するシリカ粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満ではない場合に比べ、付着対象物の流動性を維持するシリカ粒子が提供される。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する第1の供給工程および第2の供給工程の間に、上記条件の供給停止工程を有しない場合に比べ、付着対象物の流動性を維持するシリカ粒子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<シリカ粒子>
本実施形態に係るシリカ粒子は、体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さHに対する平面画像解析により求められるシリカ粒子の円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満である。
【0011】
なお、上記円形度は、シリカ粒子の球の度合いを示し、円形度が1であるときに粒子が真球であることを示す。本実施形態に係るシリカ粒子は、一次粒子の形状が、平均円形度が0.85以下であり、真球に比べ凹凸の多い形状である。以下、円形度が0.85以下である形状を「異形状」と称し、円形度が0.85を超える形状を「球状」と称することがある。すなわち、本実施形態に係るシリカ粒子の形状は、異形状である。
本実施形態に係るシリカ粒子を上記構成とすることで、シリカ粒子は付着対象物の流動性を維持する。かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと考えられる。
なお、以下、単に「一次粒子」と称するときは、シリカ粒子の一次粒子を指すものとする。
【0012】
立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さHに対する平面画像解析により求められるシリカ粒子の円相当径Daの比(Da/H)の平均値が、1.5を超え1.9未満であることは、シリカ粒子が特定の厚みを有する扁平状の粒子であることを意味する。DaおよびHの具体的な測定方法については詳述するが、DaおよびHについて説明する。
【0013】
シリカに限らず、扁平状の粒子が平面上に乗るとき、一般に、粒子はぐらつきにくい状態で平面上に乗る。鋭利な角や、辺の端部等の平面を覆う被覆面積が小さくなる表面を平面に接触させて平面上に載ることはあっても、粒子に力を加えると倒れ、または傾き、力を加えても倒れない状態で平面上に乗る傾向にある。換言すると、粒子の表面のうち、平面の被覆面積が大きくなる面、ないし、平面との接着面積が大きくなる面を平面に接触させて、平面上に乗る傾向にある。
【0014】
ここで、立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さHは、そのような、シリカ粒子の表面のうち、平面の被覆面積が大きくなる面、または、平面との接着面積が大きくなる面を底辺Hとし、シリカ粒子の表面を、粗さ解析装置でスキャニングしたときに、Hから最も高い位置Hmaxを測定することにより求められる。すなわち、立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さHは、HmaxからHまでの距離、いわば扁平状シリカ粒子の厚みを表す。
一方、平面画像解析により求められるシリカ粒子の円相当径Daは、Hと同じく、シリカ粒子の表面のうち、平面の被覆面積が大きくなる面、または、平面との接着面積が大きくなる面を底辺として、平面に接触しているシリカ粒子の投影面積からの2次解析から測定される円相当径である。
したがって、立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さHに対する平面画像解析により求められるシリカ粒子の円相当径Daの比(Da/H)の平均値が、1であるときは球状となり、Da/Hが大きいほど厚みの薄い鱗片状粒子となる。
【0015】
つまり、本実施形態に係るシリカ粒子は、所定の平均粒径の異形状の一次粒子が、1.5を超え1.9未満となる厚みで扁平状である構成のシリカ粒子である。
シリカ粒子は、体積平均粒径が小さいほど球形になり易く、付着対象物の表面に分散しにくくなり、大きいほど外部からの機械的負荷に対して欠損し易い。また、シリカ粒子は、平均円形度が大きくなるほど球形に近くなり、シリカ粒子を付着対象物に添加した場合に、付着対象物への密着性が悪く、付着対象物の流動性を維持しにくくなる。一方、シリカ粒子の平均円形度が小さくなるほど異形の度合いが大きくなるため、外部からの機械的負荷が加わった場合に欠損しやすくなる。さらに、扁平状のシリカ粒子は、その扁平形状ゆえに付着対象物の表面に接着し易いものの、厚みが大きいほど外力を受けたときに壊れ易く、また、付着対象物から外れ易くなる。一方で、厚みがあまり薄いと粒子が華奢になり、粒子自体の耐久性が損なわれる。
このため、本実施形態に係るシリカ粒子は、上記構成であることで、付着対象物に付着した場合において、外部から機械的負荷がかかっても、欠損したり外れたりしにくくなるため、シリカ粒子の付着対象物の流動性を維持すると考えられる。
以下、本実施形態のシリカ粒子について詳細に説明する。
【0016】
〔物性〕
−体積平均粒径−
本実施形態のシリカ粒子は、体積平均粒径が100nm以上500nm以下である。
体積平均粒径が100nm未満では、粒子の形状が球形となり易く、円形度が0.5以上0.85以下の形状とし得ない。また、シリカ粒子を樹脂粒子、鉄粉等の付着対象物に被覆する場合に、付着対象物表面に分散しにくい。体積平均粒径が500nmを超えると、シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に、欠損し易い。また、シリカ粒子を付着対象物に被覆した場合に、付着対象物の強度を向上しにくく、シリカ粒子を付着する付着対象物の流動性を上げ難い。
【0017】
体積平均粒径は、100nm以上350nm以下であることが望ましく、100nm以上250nm以下であることがより望ましい。
【0018】
シリカ粒子の体積平均粒径は、LSコールター(ベックマン-コールター社製粒度測定装置)によって測定した体積粒径の累積頻度における50%径(D50v)として得られる。
【0019】
−平均円形度−
本実施形態のシリカ粒子は、一次粒子の平均円形度が0.5以上0.85以下である。
一次粒子の平均円形度が0.85を超えると、一次粒子が球形に近くなる為、シリカ粒子を樹脂粒子や粉体等の付着対象物へ添加した際に、混合性や、付着対象物への密着性が悪く、機械的負荷に弱くなり、流動性を維持しにくくなる。そのため、例えば、シリカ粒子と樹脂粒子とを混合し攪拌した場合や、経時保存後に、シリカ粒子が偏って樹脂粒子等に付着したり、樹脂粒子等から脱離し得る。一次粒子の平均円形度が0.5未満であると、粒子の縦/横比が大きな形状となり、シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に応力集中が生じ、欠損し易くなる。なお、本実施形態に係るシリカ粒子をゾルゲル法により製造する場合は、一次粒子の平均円形度が0.5未満であるシリカ粒子は製造が困難である。
一次粒子の平均円形度は、0.6以上0.8以下であることが望ましい。
【0020】
なお、一次粒子の円形度は、粒径100μmの樹脂粒子(ポリエステル、重量平均分子量Mw=50000)にシリカ粒子を分散させた後の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式(1)により算出される「100/SF2」として得られる。
円形度(100/SF2)=4π×(A/I) 式(1)
〔式(1)中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。
一次粒子の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0021】
−立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比(Da/H)−
本実施のシリカ粒子は、「立体画像解析により求められるシリカ粒子の最大高さH」に対する「平面画像解析により求められるシリカ粒子の円相当径Da」の比(Da/H)の平均値が、1.5を超え1.9未満である。
Da/Hの平均値は、シリカ粒子それぞれについてDaおよびHを測定して得たシリカ粒子それぞれのDa/Hの平均値である。
【0022】
Da/Hの平均値が1.9以上であると、シリカ粒子の形状が鱗片状に近付き、シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に欠損し易くなり、結果として、付着対象物の流動性を維持し得ない。Da/Hの平均値が1.5以下であると、扁平状粒子の厚みが大きくなり、シリカ粒子の形状が扁平状で無くなるため、付着対象物に対する付着面積の低下に加え、シリカ粒子の高さHが増し、外部からの機械的負荷を受けやすい構造となる。従って、付着対象物の流動性を維持し得ない。
Da/Hの平均値は、1.6以上1.85以下であることが好ましく、1.65以上1.8以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、シリカ粒子の最大高さHと円相当径Daは、以下の手順で求める。
粒径100μmの表面が平滑なジルコニアビーズにシリカ粒子を分散付着させた粒子を、電子線三次元粗さ解析装置(ERA−8900:エリオニクス社製)を用いて、倍率10,000倍の視野で10nm毎にX−Y軸方向の高さ解析を行い、高さを求めると同時に、同視野での倍率10,000倍の二次元画像を撮影する。
次に、前記二次元画像を、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)を用いて、0.010000μm/pixel条件で求めた面積から、下記式(2)で円相当径Daを求め、粒子毎に粒子番号を付ける。
円相当径=2√(面積/π) 式(2)
【0024】
更に、前記高さ解析数値を表計算ソフトMicrosoft Excel(Microsoft社製)を用いて、条件付き書式(二色スケール)により画像化することで、粒子毎の前記粒子番号との整合を図り、個々の粒子における粒子番号毎の最大高さHを求める。
また、Da/Hの平均値は、測定したシリカ粒子100個の平均である。
【0025】
〔成分、表面処理〕
本実施形態に係るシリカ粒子は、シリカ、すなわちSiOを主成分とする粒子であればよく、結晶性でも非晶性でもよい。また、水ガラスやアルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
また、シリカ粒子の分散性の観点から、シリカ粒子表面は疎水化処理されていることが望ましい。例えば、シリカ粒子表面がアルキル基で被覆されることにより、シリカ粒子は疎水化される。そのためには、例えば、シリカ粒子にアルキル基を有する公知の有機珪素化合物を作用させればよい。疎水化処理の方法の詳細は後述する。
【0026】
本実施形態に係るシリカ粒子は、既述のように、付着対象物(例えば、樹脂粒子、鉄粉など)の流動性を維持する異形状のシリカ粒子であり、樹脂粒子や鉄粉に混合し、攪拌等しても異形形状を維持し易く、樹脂粒子の流動性に優れる。そのため、本実施形態に係るシリカ粒子は、トナー、化粧品、研磨剤等の種々の分野に適用し得る。
【0027】
<シリカ粒子の製造方法>
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、得られるシリカ粒子が、体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満であるものであれば、特に制限されない。
例えば、粒径が500nmを超えるシリカ粒子を粉砕し、分級する乾式方法によって得てもよいし、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物を原料とし、ゾルゲル法によって粒子を生成する、いわゆる湿式方法によってシリカ粒子を製造してもよい。湿式方法としては、ゾルゲル法のほかに、水ガラスを原料としてシリカゾルを得る方法もある。
【0028】
本実施形態に係る既述の諸物性を有するシリカ粒子を製造するには、次の工程を有する本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法によることが望ましい。
【0029】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランの供給量が、前記準備工程における前記アルコールの量に対し、0.002mol/mol以上0.008mol/mol以下となるまで前記テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する第1の供給工程と、前記第1の供給工程の後、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒の供給を0.5min以上10min以下の時間停止する供給停止工程と、前記供給停止工程後、前記アルカリ触媒溶液中に、さらに、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒を供給する第2の供給工程と、を有して構成される。
【0030】
つまり、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、アルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒とをそれぞれ供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させる途中で、少なくとも1度両者の供給を停止し、その後、両者の供給を再開して、扁平状の異形シリカ粒子を生成する方法である。
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、上記手法により、体積平均粒径が100nm以上500nm以下で、Da/Hの平均値が1.5を超え1.9未満となる平均円形度が0.5以上0.85以下の異形状のシリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0031】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給されたテトラアルコキシシランが反応して、核粒子が生成される。このとき、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、アルカリ触媒が核粒子の表面を均一に覆わないため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異形状の核粒子が生成されると考えられる。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長する。
【0032】
このとき、テトラアルコキシシランの供給量が、上記した特定の濃度となったときに、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を上記した特定の時間だけ停止し、その後、供給を開始する。
テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を停止することで、理由は定かではないが、反応系中の粒子が扁平状に凝集すると考えられる。ここで、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給の停止が早すぎると、すなわち、テトラアルコキシシランの供給量が少ないと、反応系中の粒子濃度が希薄で、粒子同士が衝突する確立が低く、凝集が進みにくいと考えられる。一方、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給の停止が遅く、テトラアルコキシシランの供給量が多いと、核粒子の成長が進み過ぎ、粒子自体が安定し、凝集しないため、扁平状の粒子が形成されないと考えられる。
また、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を停止する時間が短いと、粒子の凝集量が足りず、停止時間が長いと、凝集しすぎてゲル状になる傾向にある。
【0033】
さらに、供給停止工程で異形シリカ粒子を扁平状にすると共に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を再開して、粒子成長を進めることで、Da/Hの平均値が1.5を超え1.9未満となる扁平形状を有し、体積平均粒径が100nm以上500nm以下で、平均円形度が0.5以上0.85以下の異形状のシリカ粒子が得られるものと考えられる。
【0034】
また、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、異形状の核粒子を生成させ、この異形状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高い異形状のシリカ粒子が得られると考えられる。
その上、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、生成した異形状の核粒子が異形状を保ったまま粒子成長され、シリカ粒子が得られると考えられることから、機械的負荷に強く、壊れ難いシリカ粒子が得られると考えられる。
さらに、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、テトラアルコキシシランの反応を生じさせることで、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異形状のシリカ粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ粒子を適用する場合に有利である。
以下、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法の詳細を説明する。
【0035】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、主として、大きく2つの工程に分けられる。1つが、アルカリ触媒溶液を準備する工程(準備工程)であり、もう1つが、アルカリ触媒溶液に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給してシリカ粒子を生成する工程(粒子生成工程)である。
粒子生成工程は、さらに、少なくとも、3段階に別れ、アルカリ触媒溶液に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給してシリカ粒子の生成を開始する第1の供給工程と、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を停止する供給停止工程(熟成工程ともいう)と、その後、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を再開する第2の供給工程とを有する。
【0036】
〔準備工程〕
準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0037】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0038】
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0039】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/Lであることがこのましく、0.63mol/L以上0.78mol/Lであることがより好ましく、0.66mol/L以上0.75mol/Lであることがさらに好ましい。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/L以上であると、粒子生成工程でテトラアルコキシシランを供給したときに、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成を抑制し、ゲル化状となることを抑制し得る。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、平均円形度が0.85以下の異形状の核粒子が得られず、その結果、異形状のシリカ粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0040】
〔粒子生成工程〕
次に、粒子生成工程について説明する。
粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、このように粒子成長を進ませる中で、添加成分の供給を止めて、凝集させ、扁平状の異形粒子を形成する。
【0041】
−第1の供給工程−
第1の供給工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する工程である。テトラアルコキシシランは、準備工程におけるアルコールの量に対し、0.002mol/mol以上0.008mol/mol以下となるまで供給する。
ここで、「準備工程におけるアルコールの量に対し、0.002mol/mol以上0.008mol/mol以下の濃度」とは、『準備工程で用意したアルカリ触媒溶液中のアルコールの単位モル量(1mol)に対して、0.002mol以上0.008mol以下』を意味する。
【0042】
第1の供給工程におけるテトラアルコキシシランの供給量が、準備工程で準備したアルカリ触媒溶液中のアルコールの量に対し0.002mol/molより少ないと、核粒子形成過程での粒子濃度が低いため、粒子同士の合一が進まず、異形化度の低い粒子が形成され、流動維持性が損なわれる。
一方、テトラアルコキシシランの供給量が、準備工程で準備したアルカリ触媒溶液中のアルコールの量に対し0.008mol/molより多いと、核粒子が安定してしまうため粒子同士の合一が進まず、異形化度の低い粒子が形成され、流動維持性が損なわれる。
【0043】
第1の供給工程におけるテトラアルコキシシランの供給量は、準備工程で準備したアルカリ触媒溶液中のアルコールの量に対し、0.003mol/mol以上0.008mol/mol以下であることが好ましく、0.006mol/mol以上0.008mol/mol以下であることがより好ましい。
【0044】
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、4官能性シラン化合物のごときシラン化合物を用いればよい。
具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0045】
第1の供給工程では、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給初期に、テトラアルコキシシランの反応により、核粒子が形成された後(核粒子形成段階)、さらに供給を進めることで、核粒子が成長する(核粒子成長段階)。
既述のように、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する対象であるアルカリ触媒溶液は、アルカリ触媒の濃度(含有量)が、0.6mol/L以上0.85mol/L以下であることがこのましい。
従って、第1の供給工程は、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給して、核粒子を形成する核粒子形成工程を含むことが好ましい。アルカリ触媒溶液のアルカリ触媒の濃度の好ましい範囲は、既述のとおりである。
【0046】
テトラアルコキシシランの供給速度は、アルカリ触媒溶液中のアルコールに対して、0.001mol/(mol・min)以上0.010mol/(mol・min)以下とすることが好ましい。
これは、アルカリ触媒溶液を準備する工程で用いたアルコール1molに対して、1分間当たり0.001mol以上0.010mol以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給することを意味する。
【0047】
テトラアルコキシシランの供給速度を上記範囲とすることで、平均円形度が0.5以上0.85以下の異形状のシリカ粒子が、高い割合(例えば95個数%以上)で生成され易くなる。
なお、シリカ粒子の粒径については、テトラアルコキシシランの種類や、反応条件にもよるが、粒子生成の反応に用いるテトラアルコキシシランの総供給量を、例えばシリカ粒子分散液1Lに対し1.08mol以上とすることで、粒径が100nm以上の一次粒子が得られ、シリカ粒子分散液1Lに対し5.49mol以下とすることで、粒径が500nm以下の一次粒子が得られる。
【0048】
テトラアルコキシシランの供給速度が、0.001mol/(mol・min)より少ないと、核粒子とテトラアルコキシシランとの反応前に、核粒子にテトラアルコキシシランが偏りなく供給され得るため、粒径と形状共に偏りがなく、類似の形状のシリカ粒子が生成すると考えられる。
テトラアルコキシシランの供給速度が0.010mol/(mol・min)以下であれば、核粒子形成段階におけるテトラアルコキシシラン同士の反応や、粒子成長におけるテトラアルコキシシランと核粒子との反応に対する供給量が過大とならず、反応系がゲル化しにくく、核粒子形成及び粒子成長を阻害しにくい。
【0049】
テトラアルコキシシランの供給速度は、0.0065mol/(mol・min)以上0.0085mol/(mol・min)以下が好ましく、0.007mol/(mol・min)以上0.008mol/(mol・min)以下であることがより好ましい。
【0050】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0051】
アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下とすることが好ましく、0.14mol以上0.35mol以下であることがより好ましく、0.18mol以上0.30mol以下であることがさらに好ましい。
アルカリ触媒の供給量が、0.1mol以上であることで、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が安定し、2次凝集物等の粗大凝集物が生成しにくく、ゲル化状となることが抑制される。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4mol以下であることで、生成した核粒子の安定性が過大となりにくく、核粒子生成段階で形成した異形状の核粒子が核粒子成長段階で球状に成長することを抑制する。
【0052】
−供給停止工程(熟成工程)−
供給停止工程では、第1の供給工程により、テトラアルコキシシランが既述の濃度となるまでテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給した後、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を0.5min以上10min以下の時間停止するものである。
供給停止工程は、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を一度停止して、核粒子の凝集を進めて熟成させる、いわば熟成工程である。
【0053】
熟成工程における、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給停止時間を0.5minより短くした場合には、粒子同士の合一が充分に行われないため、異形化度の低い粒子が形成され、流動維持性が損なわれる。
熟成工程における、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給停止時間を10minより長くした場合には、粒子同士の合一が進み過ぎてしまうことから、粒子の分散が損なわれ、良好な異形シリカが得られ難い。
【0054】
熟成工程における、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給停止時間は、0.6min以上5min以下であることが好ましく、0.8min以上3min以下であることがより好ましい。
【0055】
−第2の供給工程−
第2の供給工程は、供給停止工程の後、さらに、テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給するものである。供給停止工程によって停止していたテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の供給を、再開することで、核粒子の凝集体を、さらに粒子成長させ、扁平状、異形シリカ粒子の体積平均粒径をさらに大きくする。
【0056】
第2の供給工程において、反応系に供給するテトラアルコキシシランの濃度および供給量、ならびに、アルカリ触媒の濃度および供給量の好ましい範囲は、第1の供給工程と同様である。
第2の供給工程において、反応系に供給するテトラアルコキシシランの濃度および供給量、ならびに、アルカリ触媒の濃度および供給量は、第1の供給工程において、反応系に供給するテトラアルコキシシランの濃度および供給量、ならびに、アルカリ触媒の濃度および供給量と異なっていてもよい。
【0057】
なお、粒子生成工程(第1の供給工程、熟成工程、第2の供給工程を含む)において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることが好ましく、15℃以上40℃以下の範囲であることがより好ましい。
また、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、第2の供給工程の後に、1回以上の供給停止工程を有していてもよいし、さらにテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する供給工程を有していてもよい。
【0058】
以上の工程を経て、シリカ粒子が得られる。この状態で、得られるシリカ粒子は、分散液の状態で得られるが、そのままシリカ粒子分散液として用いてもよいし、溶媒を除去してシリカ粒子の粉体として取り出して用いてもよい。
【0059】
シリカ粒子分散液として用いる場合は、必要に応じて水やアルコールで希釈したり濃縮することによりシリカ粒子固形分濃度の調整を行ってもよい。また、シリカ粒子分散液は、その他のアルコール類、エステル類、ケトン類などの水溶性有機溶媒などに溶媒置換して用いてもよい。
【0060】
一方、シリカ粒子の粉体として用いる場合、シリカ粒子分散液からの溶媒を除去する必要があるが、この溶媒除去方法としては、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法など、公知の方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、望ましくは200℃以下である。200℃より高いとシリカ粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が起こり易くなる。
乾燥されたシリカ粒子は、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物の除去を行うことがよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0061】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法により得られるシリカ粒子は、疎水化処理剤によりシリカ粒子の表面を疎水化処理して用いていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
【0062】
疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、シリカ粒子に対し、1質量%以上100質量%以下、望ましくは5質量%以上80質量%以下である。
【0063】
疎水化処理剤による疎水化処理が施された疎水性シリカ粒子分散液を得る方法としては、例えば、シリカ粒子分散液に疎水化処理剤を必要量添加し、攪拌下において30℃以上80℃以下の温度範囲で反応させることで、シリカ粒子に疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子分散液を得る方法が挙げられる。この反応温度が30℃より低温では疎水化反応が進行し難く、80℃を越えた温度では疎水化処理剤の自己縮合による分散液のゲル化やシリカ粒子同士の凝集などが起り易くなることがある。
【0064】
一方、粉体の疎水性シリカ粒子を得る方法としては、上記方法で疎水性シリカ粒子分散液を得た後、上記方法で乾燥して疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法、シリカ粒子分散液を乾燥して親水性シリカ粒子の粉体を得た後、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法、疎水性シリカ粒子分散液を得た後、乾燥して疎水性シリカ粒子の粉体を得た後、更に疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法等が挙げられる。
ここで、粉体のシリカ粒子を疎水化処理する方法としては、ヘンシェルミキサーや流動床などの処理槽内で粉体の親水性シリカ粒子を攪拌し、そこに疎水化処理剤を加え、処理槽内を加熱することで疎水化処理剤をガス化して粉体のシリカ粒子の表面のシラノール基と反応させる方法が挙げられる。処理温度は、特に限定されないが、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは120℃以上200℃以下である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。また、「部」、「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0066】
〔実施例1〕
−準備工程〔アルカリ触媒溶液(1)の調製〕−
攪拌翼、滴下ノズル、温度計を有したガラス製反応容器にメタノール200部、10%アンモニア水36部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。こときのアルカリ触媒溶液(1)のアンモニア触媒量:NH量(NH〔mol〕/(NH+メタノール+水)〔L〕)は、0.73mol/Lであった。
【0067】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液(1)の調製〕−
(第1の供給工程)
次に、アルカリ触媒溶液(1)の温度を30℃に調整し、アルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を120rpmで撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH)濃度が3.7%のアンモニア水とを、それぞれ4部/minと、2.4部/minの流量で滴下し、同時に供給を開始した。
テトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給開始後1.5min経過した時点で、テテトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給を同時に停止した。テトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給を停止した時点でのテトラメトキシシランの供給量は、準備工程で反応容器に添加したアルコールの量に対して0.0063mol/molであった。
【0068】
(熟成工程)
テテトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給停止時間は、1minとした。
【0069】
(第2の供給工程)
テテトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給停止から1min後に、テトラメトキシシラン及びアンモニア水の供給を再開した。なお、供給にあたっては、テトラメトキシシラン及びアンモニア水の流量が、それぞれ、4部/min及び2.4部/minになるように調整を行い、テテトラメトキシシラン及びアンモニア水を滴下した。
【0070】
第1の供給工程および第2の供給工程を含めた全工程におけるテトラメトキシシラン及び3.7%アンモニア水の全添加量は、テトラメトキシシランを90部、3.7%アンモニア水を54部とした。
テトラメトキシシラン90部及び3.7%アンモニア水54部を滴下した後、シリカ粒子の懸濁液(1)を得た。
【0071】
(溶媒除去、乾燥)
その後、得られたシリカ粒子懸濁液(1)の溶媒を加熱蒸留により150部留去し、純水を150部加えた後、凍結乾燥機により乾燥を行い、異形状の親水性シリカ粒子(1)を得た。
【0072】
−シリカ粒子の疎水化処理−
さらに、親水性シリカ粒子(1)35gにヘキサメチルジシラザン7部を添加し、150℃で2時間反応させ、シリカ表面が疎水化処理された異形状の疎水性シリカ粒子〔異形シリカ粒子(1)〕を得た。
【0073】
得られた異形シリカ粒子(1)について、既述の手法により、体積平均粒径(D50v)、平均円形度[100/SF2]、およびDa/Hを測定したところ、体積平均粒径は170nm、平均円形度は0.73、Da/Hの平均値は1.72であった。これらの特徴を表1に示す。
【0074】
(樹脂粒子へ分散した際の流動維持性評価)
異形シリカ粒子(1)を付着対象物(樹脂粒子)に分散させたときの流動維持性を、下記手法により評価した。
粒径10μmの樹脂粒子2gに、異形シリカ粒子(1)0.05gを添加し、振とう機を用いて60分間振とうして混合した後、75μmの篩にのせ、振幅1mmで90秒間振動させて、樹脂粒子の落下の様子を観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0075】
−評価基準(流動性)−
◎:篩上に樹脂粒子が全く残らない。
○:篩上に樹脂粒子がほとんど残らない。(全量の0%を超え5%未満)
△:篩上に樹脂粒子が若干残る。 (全量の5%以上20%未満)
×:篩上にかなりの樹脂粒子が残る。 (全量の20%以上)
異形シリカ粒子(1)の製造条件、形状の特徴、及び評価結果を表1に示す。
【0076】
〔実施例2〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を0.6分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0025mol/molにした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(2)を得た。
異形シリカ粒子(2)の体積平均粒径は120nm、平均円形度[100/SF2]は0.82、Da/Hの平均値は1.55であった。
【0077】
〔実施例3〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を1.8分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0076mol/molにした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(3)を得た。
異形シリカ粒子(3)の体積平均粒径は300nm、平均円形度[100/SF2]は0.83、Da/Hの平均値は1.7であった。
【0078】
〔実施例4〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、所定時間滴下後、同時に停止し、再び滴下を開始させるまでの時間を0.6分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(4)を得た。
異形シリカ粒子(4)の体積平均粒径は180nm、平均円形度[100/SF2]は0.83、シリカ粒子最大高さHに対するシリカ粒子円相当径Daの比の平均値が、1.6であった。
【0079】
〔実施例5〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、所定時間滴下後、同時に停止し、再び滴下を開始させるまでの時間を9.5分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(5)を得た。
異形シリカ粒子(5)の体積平均粒径は250nm、平均円形度[100/SF2]は0.55、シリカ粒子最大高さHに対するシリカ粒子円相当径Daの比の平均値が、1.8であった。
【0080】
〔実施例6〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランの添加総量を250部とし、かつ、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、所定時間滴下後、同時に停止し、再び滴下を開始させるまでの時間を6分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(6)を得た。
異形シリカ粒子(6)の体積平均粒径は450nm、平均円形度[100/SF2]は0.8、シリカ粒子最大高さHに対するシリカ粒子円相当径Daの比の平均値が、1.6であった。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランの添加総量を350部とし、かつ、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を0.2分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0008mol/molにし、滴下停止後、再び滴下を開始させるまでの時間を0.3分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(7)を得た。
異形シリカ粒子(7)の体積平均粒径は600nm、平均円形度[100/SF2]は0.8、Da/Hの平均値は1.4であった。
【0082】
〔比較例2〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランの添加総量を40部とし、かつ、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を0.3分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0013mol/molにし、滴下停止後、再び滴下を開始させるまでの時間を0.3分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(8)を得た。
異形シリカ粒子(8)の体積平均粒径は80nm、平均円形度[100/SF2]は0.83、Da/Hの平均値は1.38であった。
【0083】
〔比較例3〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を0.24分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0010mol/molにし、滴下停止後、再び滴下を開始させるまでの時間を0.3分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(9)を得た。
異形シリカ粒子(9)の体積平均粒径は180nm、平均円形度[100/SF2]は0.8、Da/Hの平均値は1.3であった。
【0084】
〔比較例4〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を2.2分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0093mol/molにし、滴下停止後、再び滴下を開始させるまでの時間を0.3分にした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(10)を得た。
異形シリカ粒子(10)の体積平均粒径は160nm、平均円形度[100/SF2]は0.78、Da/Hの平均値は1.35であった。
【0085】
〔比較例5〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を1分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0042mol/molにし、滴下停止後、再び滴下を開始させるまでの時間を12分にした以外は同様にして、シリカ粒子を作製したところ、造粒中にゲル化状態となり、シリカ粒子は得られなかった。
【0086】
〔比較例6〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、途中一時停止させる熟成工程を設けなかったこと以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(11)を得た。
異形シリカ粒子(11)の体積平均粒径は150nm、平均円形度[100/SF2]は0.8、Da/Hの平均値は1.28であった。
【0087】
〔比較例7〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランの添加総量を200部とし、かつ、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、停止させるまでの時間を0.2分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0008mol/molにした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(12)を得た。
異形シリカ粒子(12)の体積平均粒径は400nm、平均円形度[100/SF2]は0.87、Da/Hの平均値は1.35であった。
【0088】
〔比較例8〕
実施例1の異形シリカ粒子(1)の製造において、テトラメトキシシランの添加総量を120部とし、かつ、テトラメトキシシランと3.7%アンモニア水を同時に滴下し始めてから、所定時間滴下後、同時に停止し、再び滴下を開始させるまでの時間を11分にし、この時のテトラメトキシシランの添加量を、準備工程で添加したアルコールに対して、0.0063mol/molにした以外は同様にして、疎水性の異形シリカ粒子(13)を得た。
異形シリカ粒子(13)の体積平均粒径は250nm、平均円形度[100/SF2]は0.84、Da/Hの平均値は2であった。
【0089】
【表1】

【0090】
表1からわかるように、実施例の異形シリカ粒子は、比較例の異形シリカ粒子に比べ、樹脂粒子の流動性を維持する性能に優れた。
例えば、実施例1の異形シリカ粒子(1)と、比較例4の異形シリカ粒子(10)との比較からわかるように、実施例1と同程度の粒径の異形粒子であっても、Da/Hが小さく扁平状でない異形シリカ粒子(10)は、流動性を維持し難いことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒径が100nm以上500nm以下であり、平均円形度が0.5以上0.85以下であり、立体画像解析により求められる最大高さHに対する平面画像解析により求められる円相当径Daの比の平均値が、1.5を超え1.9未満であるシリカ粒子。
【請求項2】
アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、
前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランの供給量が、前記準備工程における前記アルコールの量に対し、0.002mol/mol以上0.008mol/mol以下となるまで前記テトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給する第1の供給工程と、
前記第1の供給工程の後、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒の供給を0.5min以上10min以下の時間停止する供給停止工程と、
前記供給停止工程後、前記アルカリ触媒溶液中に、さらに、前記テトラアルコキシシラン及び前記アルカリ触媒を供給する第2の供給工程と、を有するシリカ粒子の製造方法。

【公開番号】特開2013−14489(P2013−14489A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150121(P2011−150121)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】