説明

シリカ系の蛍光ナノ粒子

【解決すべき課題】
新規なシリカ系のナノ粒子を発見すること。
【解決手段】
本発明は、例えば蛍光シラン化合物を含むコア、及びコアにシリカ殻を含むナノ粒子組成物を提供する。また、蛍光ナノ粒子、リガンド結合蛍光ナノ粒子、治療薬を有するリガンド結合蛍光ナノ粒子、及び検体に結合したリガンド結合蛍光ナノ粒子を含むナノ粒子組成物の調製法も提供する。また、リガンド結合蛍光ナノ粒子を検出する方法、連結した蛍光ナノ粒子を目的の細胞成分と結合させ、その細胞成分の運動を記録又は監視する方法、治療薬と連結した蛍光ナノ粒子を結合させ、その結合物を細胞又は生体に接触若しくは投与することにより治療薬の治療特性を向上させる方法、例えば、様々な検体の検出のための診断薬に蛍光ナノ粒子を製造し、使用する方法、及び類似の適用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月26日に出願された非仮出願米国特許出願番号第10/306614に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的にナノ粒子に関し、そしてより具体的には、リガンド結合した蛍光ナノ粒子(ligated-fluorescent nanoparticles) 、リガンド結合蛍光ナノ粒子の製造方法、及び、リガンド結合蛍光ナノ粒子を例えば細胞系上又は細胞系内での細胞成分の移動や運動を監視するため、そして例えば、無傷の細胞若しくは生細胞の疾病や状態を検出、診断、又は治療するための生物マーカーとして使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
蛍光性及び磁性のポリマー粒子は、様々な生物医学的分析のマーカー及び指標としての有用性が知られている。細胞選別に最も一般的に用いられるマーカーは、免疫複合体や例えば免疫蛍光標識や免疫磁気標識を含む免疫学的標識である。免疫蛍光標識には通常、例えば抗体に連結した蛍光分子が含まれる。免疫磁気標識には通常、例えば一次抗体か二次抗体のいずれかに連結した超常磁性粒子が含まれる。細胞の標識化は、例えば細胞の表面の目的のマーカー(例えば受容体部位)、即ち細胞表面マーカーに抗体を付着させることにより実施することができる。しかしながら、一般的には細胞表面マーカーの化学的、物理的構造、及び細胞表面に付着させた免疫学的標識の密度を正確に測定するのは難しかった。
【0004】
蛍光標識は、例えば蛍光色素をポリマー粒子上に包埋又は共有結合させることによって調製されてきた。その結果得られる蛍光微小粒子は、手作業又は当分野で知られるその他の方法で分析することができるが、例えばマンスールらの米国特許番号第4,665,024号(特許文献1)に開示されているフローサイトメトリーなどの自動化技術を用いるのが好ましい。蛍光粒子の汎用性は、複数の蛍光物質を単一の粒子に取り込むことによりさらに拡大することが可能である。しかしながら、単純に単一の色素を一つの粒子に吸収させることは大抵の目的には適切であり得るが、二つ以上の色素を一つの粒子に吸収させる場合には、例えば分子間の蛍光エネルギー移動に起因する一貫性のない発光、ポリマー・マトリクス内の色素溶解性の差異に起因する発蛍光団取り込み率の差異、及び、基質により誘発されるインターカレートした発蛍光団の吸収スペクトルと発光スペクトルのいずれか又はその両方の変化などの問題が生じることがある。
【0005】
既知の磁気活性物質などの磁性粒子は、例えば特定の細胞型、抗原、若しくは他の標的に対して特異的な単クローン抗体などの抗体に結合又は付着することができる。その結果得られる磁性抗体を、次に例えば未精製の組織試料、反応器で増殖した細胞など、多数の異なる細胞型の大集団と混合することができる。従って、この磁性抗体は事前に選択されたそれらの標的細胞型にのみ付着し、磁性−抗体−細胞抱合体を形成する。その後、磁場を用いてこの抱合体を細胞集団の残りから分離することができる。磁性粒子の欠点は、細胞や他の生体標的検体がいくつかの異なるルートで、例えば特定の常磁性化合物を細胞上の特定のハプテンに結合することにより、金属結合微生物などの細胞に常磁性金属若しくは金属複合体を直接、特異的又は非特異的に結合したりすることにより又は食作用により、常磁性とされてしまいこの方法によって得られる分析情報や診断情報を混乱させる可能性があるという点で磁性標識における特異性が欠如していることである。検出及び診断に用いられる磁性粒子が遭遇する他の問題には、例えば細胞集団の磁化率を極めて正確に定量することの難しさが含まれる。これらの磁性特性(即ち、磁性、常磁性、超常磁性)に加え、磁性抗体は、例えばその粒子の相対的な大きさに基づいて、大きい方から小さい方へ磁性粒子標識、コロイド状磁性標識、及び分子磁性標識という三つの広いカテゴリーに分類することができる。例えば、米国特許番号第6,412,359号(特許文献2)を参照されたい。
【0006】
高分子コア、及び例えば細胞表面と特異的に結合できるリガンド分子で装飾された表面、及び突然変異遺伝子などの遺伝物質で装飾されていても良い表面、を有するラッテクスナノ粒子が知られており、例えば腫瘍の崩壊や関連性のある治療適用のための細胞への遺伝子送達と細胞内での発現で有用性があるかもしれない。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0007】
導電性の殻とシリカコアを有する蛍光ナノ粒子などの光学活性なナノ粒子が知られており、例えば化学物質の送達の調節や治療適用における有用性を有する。例えば米国特許番号第6,344,272号(特許文献3)及び第6,428,811号(特許文献4)を参照されたい。
【特許文献1】米国特許番号第4,665,024号
【特許文献2】米国特許番号第6,412,359号
【特許文献3】米国特許番号第6,344,272号
【特許文献4】米国特許番号第6,428,811号
【非特許文献1】Science,296,2404(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の蛍光プローブナノ粒子の欠点は、特に単一の蛍光ナノ粒子では、分散系における蛍光プローブとしてはその輝度が限定されておりその検出性が減衰することである。
【0009】
現在、分散生体媒質における蛍光マーカー若しくは蛍光プローブとしての使用を含む、蛍光ナノ粒子、並びに蛍光ナノ粒子による検出法及び分析法の改良が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、蛍光性シラン化合物を含むコア、並びにそのコア上のシリカの殻を
【0011】
本発明はまた、蛍光性シラン化合物を含むコア、並びにそのコア上の多孔性シリカの殻を含む、蛍光ナノ粒子も提供する。
【0012】
本発明はまた、蛍光ナノ粒子の表面と結合した又は表面に被覆された抗体などのリガンドをさらに含み、リガンド結合した蛍光ナノ粒子(a ligated-fluorescent nanoparticle) を形成することができる蛍光ナノ粒子を提供する。本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子やリガンドを有する蛍光ナノ粒子は、細胞又は細胞成分と結合すると、例えば高度に標的特異的な診断用薬、並びに運動監視薬として使用することができる。
【0013】
本発明はまた、本発明の蛍光ナノ粒子又はリガンド結合蛍光ナノ粒子を含む、薬学的担体又は薬物送達ビークルを提供する。
含む、蛍光ナノ粒子を提供する。
【0014】
本発明はまた、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子を含む蛍光造影剤を提供する。
【0015】
本発明はまた、薬学的な担体粒子としてのリガンド結合蛍光ナノ粒子を提供する。従って、リガンド結合蛍光ナノ粒子は治療薬をさらに含むことができ、その治療薬は蛍光ナノ粒子の表面にあるか又は蛍光ナノ粒子の表面と結合して薬学的組成物を形成する。
【0016】
本発明はまた、次の工程、即ち
反応性蛍光色素などの蛍光化合物、及び共反応性有機シラン化合物などの有機シラン化合物を混合して蛍光コアを形成する工程、及び、
その結果得られたコアを、テトラアルコキシシランなどのシリカを形成する化合物と混合して、コア上にシリカの殻を形成する工程、
を含む、蛍光ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、次の工程、即ち
細胞をリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させてリガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成する工程、及び、
しばらくの間、蛍光部位の運動を記録する工程、
を含む、細胞の細胞成分の運動を監視する方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、次の工程、即ち
治療が必要な患者に効果的な量のリガンド結合蛍光ナノ粒子を投与してリガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成する工程であり、該ナノ粒子が治療薬を含んでいても良く、該ナノ粒子が細胞の疾病を引き起こす構成素と選択的に結び付くように設計されているものである工程、及び、
装飾された細胞を照射する工程、
を含む、疾病の治療方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、次の工程、即ち
細胞をリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させてリガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成する工程であり、ナノ粒子が治療薬を含んでいても良い工程、及び
その結果得られた装飾された細胞をしばらくの間照射する工程、
を含む、治療方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、検体の検出に利用するキットであって、本明細書に示すリガンド結合蛍光ナノ粒子を含むキットを提供する。
【0021】
本発明はまた、細胞表面成分を検出するためのリガンド結合蛍光ナノ粒子、及び任意選択的に細胞表面成分を監視するためのレコーダーを含む、細胞表面成分を検出及び監視するためのキットを提供する。
【0022】
本発明はまた、細胞を治療薬で処理した際に細胞内又は細胞表面の細胞成分の運動若しくは位置の変化を検出するための検定法であって、次の工程、即ち
細胞をリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させてリガンド結合蛍光ナノ粒子を細胞成分と結合させる工程であり、該ナノ粒子が治療薬を含んでいるものである工程、及び
蛍光シグナルを記録する工程、
を含む、検定法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本出願人らは、様々な生物学的及び非生物学的検体の標識化、検出、同定、運動監視、及び同様の適用に有用な本発明の蛍光ナノ粒子、及び連結若しくはリガンド結合した蛍光ナノ粒子を発見した。本発明の連結若しくはリガンド結合蛍光ナノ粒子はまた、例えば適切な治療薬と組み合わせて薬学的担体として用いると治療上の処置にも有益であり得る。
【0024】
本発明は、例えば任意選択的に磁性成分など他の機能性を含むことができる蛍光ナノサイズコア、モノリシックな滑面や多孔性の高い表面などといったある範囲の有用な厚み及び表面特性を有するように製造できるシリカの殻であり、シリカ表面が例えばリガンドや治療薬で物理的又は化学的にさらに修飾できる、などの有用な多機能性構造を有することができるナノ粒子を提供する。
【0025】
本発明は、単一粒子追跡(SPT)の適用に適した様々なサイズの蛍光ナノ粒子の調製と特性決定を提供する。様々な直径のナノ粒子を、狭いサイズ分布で調製することができる。調製経路の多様性が、意図するナノ粒子の適用に応じて色素など別の蛍光物質を組み込むことを可能にする。表面機能付与の方法も提供する。これは抗体やタンパク質など特定のリガンドを蛍光ナノ粒子上に結合して特異的なSPT実験に有用なプローブを形成することを可能にするものである。ナノ粒子調製法は、インサイチュの体系的なナノ粒子の粒径増加により、例えば約10〜約500nm、及び約25〜約100nmの範囲、及び本明細書に例示するこれらの範囲より狭い範囲の蛍光ナノ粒子の調製を可能にする。
【0026】
蛍光ナノ粒子は、抗体リガンドやリンカーなどの分子若しくは実体と結合して、特定の受容体の存在又は非存在、特定の受容体及び類似の成分の代謝レベルなどといった疾病状況や状態を同定、検出、標的化(即ち、高い確実性をもって突き止める又は特定する)、監視又は改変するのに使用できる連結した若しくはリガンド結合した蛍光ナノ粒子を提供することができる。連結若しくはリガンド結合蛍光ナノ粒子はさらに、例えば治療薬とさらに結合又は結び付けることが可能であり、例えば比較的制御されたやり方で治療薬を放出させながら、極めて特異的な又は局在的な方法で且つ極めて高い濃度で疾病部位に治療薬を送達することなどにより、疾病状況や状態を治療するのに用いることができる。リガンド結合ナノ粒子は、例えば細胞や細胞成分上又はそれらの内部やヒトなどの生物体の体内(例えば脳関門通過など)の様々なシステム内の所望の場所への治療薬の指定送達に用いることができる。
【0027】
実施態様では、治療薬はシリカ殻の粒間孔隙や細孔などの内部に吸収されるか、又は蛍光ナノ粒子のシリカ殻上に被覆されるかのいずれかであり、その両方であることも可能である。シリカ殻が不完全である他の実施態様では、治療薬は物理的吸着や結合相互作用などにより、蛍光コアに結び付けることができる。治療薬はまた、必要に応じてリガンド結合蛍光ナノ粒子のリガンドに結び付けることもできる。
【0028】
本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子は、例えば治療薬のための薬学的担体として、及び、例えばDNA試料を蛍光マーカーで染色し、レーザーを照射すると遺伝子活性がマーカーの有色発光として検出できるような一塩基多型(SNP)実験の蛍光マーカーとしてなど、様々な診断適用及び治療適用に用いることができる。
【0029】
本発明のナノ粒子は、単独で若しくはリガンドと組み合わせて、生体物質、即ち、ハプテン、抗原、抗体、酵素、又は核酸などの検体の受動的結合又は共有結合に用いることができ、免疫検定、核酸(DNA又はRNA)検定、親和性精製、細胞分離、及びその他の医学的、診断的、環境的、及び産業的適用など様々な種類の検体検定に用いることができる。ナノ粒子は、色素、ピグメント、又はそれらの組合せなどの既知の蛍光性応答物質を取り込む。多種の適切な化学反応性蛍光色素が知られている。例えば、「蛍光プローブと化学薬品研究の分子プローブハンドブック」,第6版,R.P.ハウグランド編(1996)参照。通常の発蛍光団は、例えば、蛍光芳香族化合物、又は蛍光複素環式芳香族化合物などであり、例えばピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール又はベンゾインドール、オキサゾール又はベンゾオキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、クマリン(ヒドロキシクマリン及びアミノクマリン類、及びそれらのフッ化誘導体を含む)などの化合物である。例えば、米国特許番号第5,830,912号、第4,774,339号、第5,187,288号、第5,248,782号、第5,274,113号、第5,433,896号、第4,810,636号、第4,812,409号を参照されたい。
【0030】
蛍光コアの形成に用いられる共反応性有機シランは、一般式R(4-n) SiXnを有する。当式において、Xはエトキシ、メトキシ、又は2−メトキシーエトキシなどの加水分解可能基であって良く、Rはメルカプト、エポキシ、アクリリル、メタクリリルやアミノなどの有機官能基を含んでいても良い炭素原子が1〜12個の一価の有機ラジカルであって良く、nは0〜4の整数である。蛍光コアの形成に用いられる共反応性有機シランは、nが3であることが好ましい。シリカ殻を形成するのに用いられる有機シランは、nが4である。官能性モノ−、ビス−、及びトリス−アルコキシシランを共反応性官能基、又はガラス表面を含むヒドロキシ−機能性表面の結合及び修飾に使用することも知られている。カーク−オスマー,「化学技術百科事典」(第20巻,第3版,J.ワイリー,ニューヨーク州)を参照されたい。理論により限定されることは望まないが、この結合はアルコキシシラン基がシラノール基へ加水分解された結果として、及び、表面のヒドロキシル基との縮合の結果として生じる。E.プルーデマン,「シラン結合剤」(プレナム・プレス,ニューヨーク州,1982)参照されたい。従って、上で述べた有機シラン化合物及び類似の結合剤は、コアの製造に、シリカ殻の製造に、結果として得られるシリカ殻で被覆された蛍光コアナノ粒子の表面の修飾に、蛍光ナノ粒子へのリガンドの付着又は結合に、蛍光ナノ粒子への付着の前又は後に行うリガンドの特性の改変に使用することができる。有機シランはゲルを生じ得るため、アルコールや他の既知の安定剤を利用するのが望ましいかもしれない。有機シランが反応性蛍光化合物など別のモノマーと共重合される場合、安定剤は重合を妨げないものを選択することができる。メタノールなどのアルコールはとりわけ有用であり、例えば有機シランの量の約2倍〜約10倍の量で使用することができる。
【0031】
ナノ粒子は、既知の磁石又は超磁性、常磁性、強磁性の金属酸化物などの磁気反応性物質、及びそれらの組合せを取り込むことができる。
【0032】
本発明の蛍光ナノ粒子は、蛍光シラン化合物を含むコア、及びコア上にあるシリカ殻を含む。ナノ粒子のコアは、例えば、反応性蛍光化合物と共反応性有機シラン化合物との反応生成物を含むことができ、該殻は、例えば、シリカ形成化合物の反応生成物を含むことができる。このシリカ形成化合物は、例えば、1〜20層などの一又はそれ以上のシリカ層を製造することができ、そしてそれは、例えば殻層の厚み、コアの厚み又は直径に対する殻の厚みの割合、コアのシリカ殻表面被覆率、シリカ殻の多孔度及び保持能力などの所望の殻の特性に応じて製造することができる。
【0033】
コアを被覆するシリカ殻は、例えばコアの表面積の約10〜約100%を覆うことができる。リガンドは蛍光ナノ粒子の表面に結合している場合は、例えばコアの表面積の約0.1〜約100%を覆うことができる。シリカ殻の厚みに対するコアの厚み又は直径は、例えば約1:1〜約1:100の比率であって良い。蛍光ナノ粒子の直径は、例えば、約1〜約1,000ナノメートルであって良い。リガンド結合蛍光ナノ粒子の直径は、例えば選択されたリガンドの大きさと量に応じて、蛍光ナノ粒子の直径に匹敵するか、それよりも大きくてよい。実施態様では、コアの直径は、例えば約10〜約300ナノメートル、好ましくは約25〜約200ナノメートルであって良く、シリカ殻の厚みは、例えば約25〜約800ナノメートル、好ましくは約25〜約500ナノメートルであって良い。ナノ粒子が担体として選択された場合などの好ましい実施態様では、シリカ殻は例えば治療薬を収容するような、及び本明細書に示すような多孔性とされる。
【0034】
本発明の蛍光ナノ粒子の調製法では、例えばヴァン・ブラーデレンとヴリ,Langmuir, 8, 2921-2925(1992)(色素で被覆し、さらにシリカで被包した単分散球状シリカコア粒子)で報告されているものよりも約1オーダー小さいサイズのナノ粒子が得られる。シリカ殻は固体、即ち比較的非多孔性であるか、又は準多孔性などのメソ多孔性のいずれかであって良い。蛍光ナノ粒子のシリカ殻は、誘電性であるのが好ましい。蛍光ナノ粒子のシリカ殻は、薬学的担体ナノ粒子としての機能するように設計されており、例えばインビボやインビトロの輸送及び送達用の薬物やタンパク質などの治療薬を含むように作られる。従って本発明の蛍光ナノ粒子は、治療薬の制御送達又は制御放出に適した薬学的担体システムを提供することができる。
【0035】
実施態様では、蛍光ナノ粒子の表面に配置されたリガンドはリガンド結合蛍光ナノ粒子を形成する。リガンドの配置は、例えば共有結合による付着や物理的吸着によって達成できる。蛍光ナノ粒子の表面のリガンドは、例えば生体高分子、合成高分子、抗原、抗体、ウイルス又はウイルス性分、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学的化合物、病原体、微生物又はそれらの成分、毒素、ナノ粒子がこれらと結合する際にナノ粒子又は検体の表面特性又は組織適合性を改変する表面活性剤などの表面修飾因子、及びこれらの組合せであって良い。好ましいリガンドは、例えば、単クローン抗体若しくは多クローン抗体である。
【0036】
本発明はまた、例えばリガンド結合蛍光ナノ粒子を直接検体に付着させる結合(例えば共有結合)や他の何らかの既知の方法(単数又は複数)(例えば、イオン結合、水素結合による、単純な吸着による)により、リガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に標識した検体の調製方法も提供する。結果的に得られる結合した若しくは付着したリガンド結合蛍光ナノ粒子(即ち、リガンド結合蛍光ナノ粒子−検体複合体)を有する選択的に標識された検体は、例えば治療法や診断キットにおける真正試料又は参照試料として有用であり得る。
【0037】
本発明の「検体」は、リガンド結合蛍光ナノ粒子が付着又は結合する対象若しくは標的である。検体は、例えば、微生物やそれらの成分、ウイルスやウイルス成分、細胞やそれらの成分、生体高分子、合成高分子、カーボン・ナノチューブなどの合成物質、抗原、抗体、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学的化合物、病原体、毒素、それらの組合せ及びそれらの類似物質であって良い。特に関心のある検体は微生物と細胞であり、ウイルス、原核細胞及び真核細胞、単細胞生物及び多細胞生物(例えば菌類、細菌、哺乳動物など)、及びそれらの断片又は成分が含まれる。特に関心のある他の検体は病原体である。リガンド結合蛍光ナノ粒子の一部である単クローン又は多クローン抗体、又は他の選択的リガンドは、例えば病原体の表面に連結していても良い。
【0038】
本発明の実施態様では、例えば次の工程、即ち
反応性蛍光色素などの蛍光化合物と共反応性有機シラン化合物などの有機シラン化合物を混合して蛍光コアを形成する工程、及び
その結果得られたコアと、テトラアルコキシシランなどシリカを形成する化合物を混合してコア上にシリカ殻を形成し、蛍光ナノ粒子を得る工程、
を含む、蛍光ナノ粒子を製造する方法を提供する。
【0039】
本発明のナノ粒子を製造する方法は、結果的に得られる蛍光ナノ粒子を、リガンド、例えば生体高分子、合成高分子、抗原、抗体、微生物、ウイルス、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学的化合物、病原体、毒素、例えばナノ粒子の表面特性や適合性を変える表面修飾因子、それらの組合せ、及び類似物質などのリガンドと結合させる工程をさらに含む。結果的に得られる蛍光ナノ粒子とリガンドの結合物から、リガンド結合蛍光ナノ粒子が得られる。ナノ粒子の製造法は、結果的に得られたナノ粒子と治療薬を、そのナノ粒子に付着したリガンドと共に又はリガンドなしで、結合させる工程をさらに含んでも良い。ナノ粒子をリガンドや治療薬と結合させる工程は、例えばリガンドや治療薬でナノ粒子の表面を被覆することにより達成できる。その代わりとして、又はこれに加えて、ナノ粒子をリガンドや治療薬と結合させる工程は、例えばリガンドや治療薬をナノ粒子の表面に吸収(imbibe)させることにより達成できる。吸収させる工程は、例えば多孔性ナノ粒子表面に、リガンド、治療薬、又はその両方が吸収される場合には、同化、又は摂取若しくは吸収することを意味する。その代わりとして、又はこれに加えて、ナノ粒子をリガンドや治療薬と結合させる工程は、例えばリガンドや治療薬を結果的に得られるナノ粒子の表面に結合させることにより達成できる。結合させる工程には、例えば、既知の共有結合、イオン結合、水素結合、疎水結合、配位、接着、それらの組合せ、及び同様の結合に関する方法が含まれる。
【0040】
本発明のナノ粒子の大きさが小さいため、及びナノ粒子の均一性のため、及びナノ粒子の明白な溶解性又は高い分散特性のため、該ナノ粒子はリガンドや治療薬など他の実体に容易に結び付き又は結合し、その後、標的検体に容易に輸送され選択的に付着される「分子標識」を提供することができる。選択的な付着により、有用な分析的検出、診断、又は差別化のスキームが可能になる。本発明の実施態様で使用するリガンド結合蛍光ナノ粒子の大きさは、検体に付着させるナノ粒子の数と選択した光学的若しくは分光学的スキームに基づいて選択することができる。
【0041】
実施態様では、本発明は、次の工程、即ち
細胞をリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させて、リガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に修飾された細胞を形成する工程、及び、
しばらくの間、蛍光部位の運動を記録する工程、
を含む、細胞の細胞成分の運動を監視する方法を提供する。
【0042】
上記の蛍光部位は、細胞の一成分に結合した単一のリガンド結合蛍光ナノ粒子に対応し得る。これらの複数の蛍光部位は、該細胞の一成分に結合した2個以上のリガンド結合蛍光ナノ粒子に対応しても良い。この監視法により、技師は、例えばリアルタイムで又は低速度撮影技法によるなどして、単一のリガンド結合ナノ粒子が結合している受容体など一つ又はそれ以上の蛍光部位の拡散を追跡することが可能になる。リガンド結合連結ナノ粒子は、例えばリガンドの適切な選択により細胞の標的細胞成分に選択的に結合するように設計するのが好ましい。
【0043】
細胞成分は、例えば、受容体、抗体、ハプテン、酵素、ホルモン、生体高分子、抗原、微生物、ウイルス、病原体、毒素、それらの組合せ、及び類似の成分であって良い。実施態様では、リガンド結合蛍光ナノ粒子は抗体に結合した蛍光ナノ粒子であって良い。実施態様では、結合した抗体はIgEなどの免疫グロブリンであって良い。
【0044】
本発明の実施態様における検出、記録、測定、又は画像化のための適切な手段は当分野で知られており、これらには、例えばフローサイトメーター、レーザー走査サイトメーター、蛍光マイクロプレートリーダー、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、明視野顕微鏡、ハイコンテンツ・スキャニングシステム、及び類似の装置が含まれる。
【0045】
記録は、例えばビデオ顕微鏡カメラ、デジタルカメラ、ハロゲン化銀単一露光カメラ、及び類似の装置などの顕微鏡装着カメラにより達成できる。記録時間は、例えば1マイクロ秒から約30日の間隔など、注目に値する事象又は減少を観察するのに便利で有用な何らかの時間間隔であって良い。通常の細胞外、細胞表面、又は細胞内の事象では、記録時間は、例えば約1秒〜約60分、より好ましくは約1秒〜約40分、及びさらに好ましくは約1分〜約30分であって良い。記録時間は、試料又はシステムの周囲温度を変えることにより、必要に応じて便利なようにしばしば短縮することも延長することができる。接触及び記録は、従来の顕微鏡撮影技術を用いてインビトロで実施できる。接触及び記録は、例えば顕微鏡カメラや光ファイバーカメラに装着されたカテーテルを用いて実施することもできる。例えば、照射された検体を写真で記録することは、リガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞又は細胞成分などの蛍光部位を同時に検出することもできるので、本発明の実施態様における「記録」が「検出」と同義であって良いことは、通常の当業者にとって容易に明らかとなるであろう。
【0046】
実施態様では、本発明の蛍光ナノ粒子を含み、且つ任意選択的に蛍光ナノ粒子に結合したリガンドを含む薬学的担体を提供する。
【0047】
実施態様では、リガンド結合蛍光ナノ粒子及び蛍光ナノ粒子に結合した治療薬を含む薬学的単体を提供する。
【0048】
実施態様では、例えばリガンド結合蛍光ナノ粒子のリガンドがナノ粒子の表面上にある、リガンド結合蛍光ナノ粒子を含む画像化物質を提供する。この画像化物質は従来の画像化工程に使用することができ、例えば高い蛍光収率や高い蛍光輝度が求められる場合に好ましい。実施態様では、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子は、蛍光ラテックス粒子など従来の表面装飾蛍光粒子と比べて例えば約2〜約10倍高い蛍光輝度の向上をもたらすことができる。
【0049】
実施態様では、次の工程、即ち
ナノ粒子が治療薬を含んでいても良く、ナノ粒子が細胞の疾病誘発成分に選択的に結合してリガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成するように設計されたものであるリガンド結合蛍光ナノ粒子を、治療が必要な患者に効果的な量投与する工程、及び、
装飾された細胞を照射する工程、
を含む、疾病又は障害を治療する方法を提供する
【0050】
リガンド結合蛍光ナノ粒子は、それ自体、又は装飾細胞の一部として、照射すると蛍光を発し、発熱する、又はその両方を行う。従って、蛍光ナノ粒子の調製の際の反応性蛍光化合物の選択、及びリガンドの選択は、所望の蛍光及び非蛍光(熱放散)特性のバランスに応じて、経験的に行なうことができる。例えば希釈システムの場合など検出が最高の目標であるか困難である場合には、より高い蛍光特性が求められることがある。例えば治療薬の遊離の促進や、選択的な顕微鏡的焼灼法又は顕微鏡的温熱療法の実施のために高温加熱が必要な場合に、より高い非蛍光特性が求められることがある。実施態様では、異なる特性の利点を開発するために、例えば、癌腫瘍の検出及び治療などに、同時に又は順番に、異なる蛍光特性及び非蛍光特性を有する2個以上のリガンド結合蛍光ナノ粒子の混合物を使用するのが望ましい場合がある。
【0051】
従って、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子は、感光性又は感熱性の疾病若しくは症状の治療に使用することができる。光線療法は、生体内の一箇所以上の治療部位における医薬を活性化することで知られている。光線療法のある特定の実施態様は、例えば様々な癌の破壊に効果的であることが分かっている二段階の治療工程である光線力学療法(PDT)である。PDTはまず、光増感化合物や同様の化合物を全身投与又は局所投与し、次に治療部位に光増感剤の吸収波長帯に相当する波長帯の光を照射することにより行なう。光エネルギーが光増感化合物を活性化し、患部組織の破壊を引き起こす。例えば、米国特許番号第6,454,789を参照。本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子などの蛍光物質を光増感化合物の代わりに使用できることは、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0052】
温熱療法は、例えば所望の組織を収縮させること(米国特許番号第6,480,746号参照)、皮膚のいぼの局所的治療につき(Arch. Dermatol, (1992年6月), vol. 128, p. 945-948を参照)、マクロファージ・アポトーシスを誘発すること(米国特許番号第6,451,044号を参照)が知られている。これらの適用及び関連適用では、例えば、紫外線照射、赤外線照射、マイクロ波照射などの照射により、温熱療法は体内で又は皮膚を透過して行なうことができる。当業者は本発明を所有すると、光線療法や温熱療法にその物質及び方法をどう適用するのかが容易に分かるであろう。
【0053】
本発明はまた、次の工程、即ち
細胞を、ナノ粒子に結合した治療薬を有していても良いリガンド結合蛍光ナノ粒子に接触させてリガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成する工程、及び、
その結果得られる装飾細胞をしばらくの間照射する工程、
を含む、治療法も提供する。
【0054】
接触の量と期間、並びに照射の量と期間は、例えば疾病の状況若しくは状態の蛍光検出、効果的な治療薬の送達、又はその両方などの治療法の診断目標若しくは治療目標に依存して良い。接触及び照射の量と期間もまた、例えばリガンド結合蛍光ナノ粒子の標的検体に対する相対濃度、及び、インビボ又はインビトロの全細胞、透過細胞、ホモジナイズした細胞、感作細胞等の細胞調製物などの治療用の細胞の状態に依存しても良い。
【0055】
本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子はまた、診断用キットや免疫検定法などの検定、改良型画像化剤における適用、精製工程における、例えば、特に腫瘍を標的とし小さくするため、又は感染物質を同定し分離するための薬物送達などの薬物治療計画又は薬物治療法ににおける適用、及び類似の適用もある。
【0056】
本発明は、検体の検出に使用するためのキットであって、本明細書に示すようなリガンド結合蛍光ナノ粒子を含むキットも提供する。
【0057】
本発明は、細胞表面成分を検出するためのリガンド結合蛍光ナノ粒子を含み、細胞表面成分を監視するための記録計を含んでいても良い、細胞表面成分を検出及び監視するためのキットも提供する。
【0058】
上述のキットには、キットの構成要素(単数又は複数)とキットの使用説明書の包装が含まれる。
【0059】
本発明は、次の工程、即ち
細胞を、治療薬を含むリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させて、リガンド結合蛍光ナノ粒子を細胞成分と結合させる工程、及び、
一箇所又は複数の蛍光部位などの蛍光シグナルを記録し、標的となる細胞成分の相対的な運動又は位置変化を測定する工程、
を含む、細胞を治療薬で処理する際に細胞内又は細胞表面での細胞成分の運動若しくは位置変化を検出するための検定法も提供する。
【0060】
蛍光部位、即ちリガンド結合蛍光ナノ粒子が結合した検体、の移動又は運動は、細胞成分などの結合検体の移動又は運動を表しており、結合検体の移動又は運動に相関させ得る。
【0061】
細胞成分の移動又は位置変化を検出するための検定法には、例えば、リガンド結合蛍光ナノ粒子の記録された位置を任意選択的にマッピング又はプロッティングする工程が含まれていても良い。この検定法は、治療薬が存在する場合と存在しない場合の、検体に結合したリガンド結合蛍光ナノ粒子の移動又は運動の相違を、例えば直列型又は対照実験計画法で測定する工程をさらに含むことができる。
【0062】
リガンド結合蛍光ナノ粒子などのナノ粒子物質及び本発明の使用方法は、例えば酵素、受容体、及び類似成分などの細胞成分の存在を検定するための、例えば標識化検定用試薬として又はそれら試薬から作られる試薬生成物として用いることができる。細胞成分の位置は、例えば代謝的に活性な全細胞の内部において、全細胞溶解物内で、膜透過細胞内で、固定された細胞内で、又は無細胞環境で部分的に生成された細胞成分について、検出及び測定することができる。リガンド結合蛍光ナノ粒子は、抗体など、結合したリガンド又はライゲーター(ligator)を含み、ナノ粒子は目的の特定の細胞成分を標的とし、又はその細胞成分と結合する。リガンド結合蛍光ナノ粒子はまた、ナノ粒子のコア内に蛍光標識又は蛍光成分を含み、ナノ粒子と標的細胞成分が結合し、適切に照射(illuminate)若しくは照射(irradiate)された場合に、その蛍光成分は標的細胞成分の存在を記録し又は報告する。
【0063】
本発明はまた、連結した蛍光ナノ粒子を有効量投与することにより疾病を治療する方法も提供する。この方法には、本明細書に記載する連結した蛍光ナノ粒子を、単独で、医薬組成物内に含めて、又は他の治療薬や医薬組成物と組み合わせて投与する工程を含んでいても良い。
【0064】
本発明はまた、治療薬を蛍光ナノ粒子に連結することによって、治療薬の有効性を増強する方法も提供する。蛍光ナノ粒子及びその医薬組成物は、治療薬の治療効果を増強するために治療薬を結合するのに用いても良い。蛍光ナノ粒子をリガンドと結合させて連結若しくはリガンド結合蛍光ナノ粒子を形成する工程は、例えばリガンドの量や状態を注意深く制御して高純度且つ高品質の生成物を生産することができるインビボで行なうのが好ましい。同様に、連結した蛍光ナノ粒子を治療薬で修飾する工程は、インビトロで行なうのが好ましい。
【0065】
本発明は、蛍光ナノ粒子及びその結合蛍光ナノ粒子、及び、例えば免疫標識、細胞内成分認識手順、診断、又は細胞分別におけるそれらの使用法を提供する。本発明の方法は、本明細書に挙げたような既知の方法論の欠点を克服する利点を提供する。
【0066】
本発明は、分散性が高く、例えば微生物又は細胞内成分を含む生物検体の検出などの化学的及び生化学的分析の改良法に有用なリガンド結合蛍光ナノ粒子を提供する。このリガンド結合蛍光ナノ粒子は、標的選択性若しくは標的親和性が高いため、そして既知の蛍光粒子に比べて輝度が増強されたため、局所濃度が高い蛍光物質を提供できる。この蛍光物質は、多くの従来の物質のように単に表面被覆物質としてだけでなく、ナノ粒子のコア全体に存在する。
【0067】
「治療薬」は、ヒトや他の動物の疾病の診断、治癒、緩和、治療、又は予防に用いることができる。このような治療薬には、公式な米国薬局方(United States Parmacopeia)、公式な米国ホメオパシー薬局方(Homeopathic Pharacopeia of the United States)、公式な米国医薬品集で認可される物質、又はそれらのサプリメントが含まれる。
【0068】
本発明の蛍光ナノ粒子又はリガンド結合蛍光ナノ粒子に組み込み得る治療薬には、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、オリゴペプチド、ポリペプチド、COX−2阻害薬、アポトーシスプロモーター、尿路用薬(urinary tract agent)、膣用薬(vaginal agent)、血管拡張薬、神経変性薬(例えば、パーキンソン病)、肥満症用薬、眼科用薬、骨粗鬆症薬、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、抗麻酔薬、プロスタグランジン、精神療法用薬、呼吸器用薬、鎮静薬、催眠薬、皮膚及び粘膜用薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗悪性腫瘍薬、心臓保護薬、心臓血管用薬、抗血栓薬、中枢神経刺激薬、コリンエステラーゼ阻害薬、避妊薬、ドーパミン受容体アゴニスト、勃起不全用薬、排卵誘発剤、胃腸薬、痛風薬、ホルモン、免疫調節薬、適切に機能付与した鎮痛薬又は全身若しくは局所麻酔、抗痙攣薬、抗糖尿病薬、抗線維薬、抗感染症薬、動揺病薬、筋弛緩薬、免疫抑制薬、偏頭痛用薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、禁煙用薬、又は交感神経遮断薬(「フィジシャンズ・デスク・レファランス」,第55版,2001,メディカル・エコノミクス・カンパニー,Inc.,モントベール,ニュージャージー州,201-202ページ)が含まれる。
【0069】
本発明の蛍光ナノ粒子に連結、リガンド結合(ligate)、又は結合(associate)できる特定の治療薬の例は、フロモキセフ、フォーチミシン(類)、ゲントマイシン(類)、グルコスルホン・ソラスルホン、グラミシジンS、グラミシジン(類)、グレパフロキサシン、グアメサイクリン(guamecycline)、ヘタシリン、イセパマイシン、ジョサマイシン、カナマイシン(類)、フロモキセフ、フォーチミン(類)、ゲントマイシン(類)、グルコスルホンソラスルホン、グラミシジンS、グラミシジン(類)、グレパフロキサシン、グアメサイクリン(guamecycline)、ヘタシリン、イセパマイシン、ジョサマイシン、カナマイシン(類)、バシトラシン、バンバーマイシン(類)、ビアペネム、ブロデモプリム、ブチロシン、カプレオマイシン、カルベニシリン、カルボマイシン、カルモナム、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セフブペラゾン、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフミノクス、クラドリビン、アパラシリン、アピシクリン、アプラマイシン、アルベカシン、アスポキシシリン、アジダムフェニコール(azidamfenicol)、アズトレオナム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフプロジル、セフロキサジン、セフテラム、セフチブテン、セフゾナム、セファレキシン、セファログリシン、セファロスポリンC、セフラジン、クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クロモサイクリン(clomocycline)、コリスチン、シクラシリン、ダプソン、デメクロサイクリン、ジアチモスルホン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、6−メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、トポテカン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テニポシド、メルファラン、メトトレキセート、2−p−スルファニリアニリノエタノール、4,4’−スルフィニルジアニリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、ブトルファノール、ナルブフィン、ストレプトゾシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、プリカマイシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ペントスタチン、ミトキサントロン、シタラビン、リン酸フルダラビン、ブトルファノール、ナルブフィン、ストレプトゾシン、ドキソルビシン、ダウノルイビシン、プリカマイシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ペントスタチン、ミトキサントロン、シタラビン、リン酸フルダラビン、アセジアスルホン、アセトスルホン、アミカシン、アンホテリシンB、アンピシリン、アトルバスタチン、エナラプリル、ラニチジン、シプロフロキサシン、プラバスタチン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、ファモチジン、リュープロライド、アシクロビル、パクリタキセル、アジスロマイシン、ラミブジン、ブデソニド、アルブテロール、インジナビル、メトホルミン、アレンドロネート、ニザチジン、ジドブジン、カルボプラチン、メトプロロール、アモキシシリン、ジクロフェナク、リシノプリル、セフトリアキソン、カプトプリル、サルメテロール、キシナホ酸、イミペネム、シラスタチン、ベナゼプリル、セファクロル、セフタジジム、モルヒネ、ドーパミン、ビアラミコール、フルバスタチン、フェナミジン(phenamidine)、ポドフォリン酸2−エチルドラジン、アクリフラビン、クロロアゾジン、アルスフェナミン、アミカルビリド(amicarbilide)、アミノキヌリド、キナプリル、オキシモルフォン、ブプレノルフィン、フロクスウリジン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エノキサシン、エンビオマイシン、エピシリン、エリスロマイシン、ロイコマイシン(類)、リンコマイシン、ロメフロキサシン、ルセンソマイシン、リメサイクリン、メクロサイクリン(meclocycline)、メロペネム、メタサイクリン、ミクロノマイシン、ミデカマイシン(類)、ミノサイクリン、モキサラクタム、ムピロシン、ナジフロキサシン、ナタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ノルフロキサシン、オレアンドマイシン、オキシテトラサイクリン、p−スルファニリルベンジルアミン、パニペネム、パロモマイシン、バズフロキサシン、ペニシリンN、ピパサイクリン(pipacycline)、ピペミド酸、ポリミキシン、プリマイシン(primycin)、キナシリン(quinacillin)、リボスタマイシン、リファミド(rifamide)、リファンピン、リファマイシン、SV、リファペンチン、リファキシミン、リストセチン、リチペネム、ロキタマイシン、ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン(rosaramycin)、ロキシスロマイシン、サラゾスルファジミジン、サンサイクリン(sancycline)、シソマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピロマイシン、ストレプトマイシン、スクシスルホン、スルファクリソイジン、スルファロクス酸、スルフォキソン、テイコプラニン、テマフロキサシン、テモシリン、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チアゾスルホン、チオストレプトン、チカルシリン、チゲモナム(tigemonam)、トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、トロスペクトマイシン(trospectomycin)、トロバフロキサシン、ツベラクチノマイシン(tuberactinomycin)、バンコマイシン、アザセリン、カンジシジン(類)、クロルフェネシン、デルモスタチン(dermostatin)(類)、フィリピン、フンギクロミン(fungichromin)、メパルトリシン(mepartricin)、ニスタチン、オリゴマイシン(類)、ペリマイシン(perimycin)A、ツベルシジン(tubercidin)、6−アザウリジン、6−ジアゾー5−オキソ−ノルロイシン、アクラシノマイシン(類)、アンシタビン、アントラマイシン(anthramycin)、アザシタジン(azacitadine)、アザセリン、ブレオマイシン(類)、ビスクマセタートエチル、エチリデン・ジクマロール、イロプロスト、ラミフィバン、タプロステン、チオクロマロール、チロフィバン、アミプリロース、ブシラミン、グスペリムス、ゲンチジン酸、グルカメタシン、サリチル酸グリコール、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メサラミン、ニフルム酸、オルサラジン、オキサセプロール、S−エノシルメチオニン(S-enosylmethionine)、サリチル酸、サルサラート、スルファサラジン、トルフェナム酸、カルビシン(carubicin)、カルジノフィリン(carzinophillin)A、クロロゾトシン(chlorozotocin)、クロモマイシン(類)、デノプテリン(denopterin)、ドキシフルリジン、エダトレキサート、エフロルニチン、エリプチニウム(elliptinium)、エノシタビン、エピルビシン、マンノムスチン、メノガリル、ミトブロニトール、ミトラクトール、モピダモール、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(類)、ペプロマイシン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカルバジン、プテロプテリン(pteropterin)、ピューロマイシン、ラニムスチン、ストレプトニグリン、チアミプリン(thiamiprine)、マイコフェノール酸、プロコダゾール、ロムルチド、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、ブテタミン(butethamine)、フェナルコミン、ヒドロキシテトラカイン、ナエパイン(naepaine)、オルトカイン、ピリドカイン、サリチルアルコール、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アセクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、プロンフェナク、ブロモサリゲニン(bromosaligenin)、ブマジゾン、カルプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、ジタゾール、エンフェナム酸、エトドラク、エトフェナマート、フェンドサール、フェプラジノール、フルフェナム酸、トミュデックス(登録商標)(N−[[5−[[(1,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソ−6−キナゾリニル)メチル]メチルアミノ]−2−チエニル]カルボニル]−L−グルタミン酸)、トリメトレキサート、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ビンデシン、ゾルビシン(zorubicin)、アルガトロバン、クメタロール又はジクマロールである。
【0070】
さらなる治療薬のリストは、例えば次の文献に見られる。「フィジシャンズ・デスク・レファランス」55版,2001,メディカル・エコノミクス・カンパニー,Inc.,モントベール,ニュージャージー州)、「USANと国際薬名のUSPN辞典」(2000,ザ・ユナイテッド・ステーツ・ファーマーピアル・コンベンション,Inc.,ロックビル,メリーランド州)、「ザ・メルク・インデックス」(第12版,1996,メルク&Co.,Inc.,ホワイトハウス・ステーション,ニュージャージー州)。
【0071】
例えば標準的な試験や当分野で知られる他の同様の試験を用いて治療活性を測定する方法は、当業者らにすぐに理解されるであろう。
【0072】
「医薬組成物」には、例えば蛍光ナノ粒子が薬学的に許容可能な担体として作用できる場合に本発明の蛍光ナノ粒子と併用される、本明細書で例示する治療薬が含まれる。本発明の医薬組成物は、蛍光ナノ粒子と併用される治療薬に加えて、固体、ゲル状や液状の希釈剤、又は経口摂取用カプセルなどの他の許容可能な担体や投与剤形に含めて又はそれらと共に製剤することができる。本発明の医薬組成物、それらの塩、又はそれらの混合物は、適切な薬学的投与単位剤形で経口投与しても良い。本発明の医薬組成物は、錠剤、硬ゼラチンカプセル又は軟ゼラチンカプセル、水溶液、懸濁液、及びリポソーム、及び、成形したポリマーゲルなど他の徐放製剤を含む、いろいろな剤形に調製して良い。
【0073】
経口液体医薬組成物は、例えば水性又は油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップやエリキシル剤の形状であって良く、又は使用前に水や他の適切な溶媒と合わせるための乾燥製品として提供されても良い。このような液体の医薬組成物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビークル(食用油を含んでも良い)や保存剤などの従来の添加物を含んでも良い。
【0074】
本発明のナノ粒子医薬組成物はまた、非経口投与(例えば、大量瞬時投与や持続注入などの注射による)用に製剤化しても良く、アンプル、充填済みシリンジ(pre-filled syringe)、少量注入容器、又は保存剤を加えた複数投与容器内の投与単位剤形で提供されても良い。医薬組成物は、油性若しくは水性のビークル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液の形状を取って良く、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方薬を含んでも良い。あるいは本発明の医薬組成物は、使用前に適切なビークル(例えば無菌の発熱物質を含まない水)と合わせるための、無菌固体の無菌単離や溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末の形状であっても良い。
【0075】
表皮への局所投与用に、医薬組成物は軟膏、クリーム又はローションとして、又は経皮的パッチの活性成分として製剤化しても良い。適切な経皮送達システムは、例えばA.フィッシャーら(米国特許番号第4,788,603号)や、R.バワら(米国特許番号第4,931,279号、第4,668,596号、及び第4,713,224号)で開示されている。軟膏とクリームは、例えば適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた水性又は油性の基剤で調製して良い。ローションは水性又は油性の基剤で調製して良く、一般的には一つ又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含んでいる。医薬組成物はまた、例えば米国特許番号第4,140,122号、第4,383,529号や、4,051,842号に開示されたように、イオン泳動を介して送達することもできる。
【0076】
口内の局所投与に適した医薬組成物には、通常はショ糖及びアラビアゴム(acadia)又はトラガカントゴムである香味付けした基剤に本発明の医薬組成物を含む薬用キャンディー、ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアラビアゴムなどの不活性基剤に医薬組成物を含むトローチ(pasttile)、適切な液体担体に医薬組成物を含む粘膜付着性ゲル(mucoadherent gel)及びうがい薬などの投与単位剤形が含まれる。
【0077】
目への局所投与に関しては、医薬組成物は点眼薬、ゲル(S.クライら,米国特許番号第4,255,415号)、粘剤(S.L.リンら,米国特許番号第4,136,177号)として、又は長時間放出眼内挿入物(prolonged-releaseocular insert)(A.S.マイケル,米国特許番号第3,867,519号、H.M.ハダドら,米国特許番号第3,870,791号)を介して投与することができる。
【0078】
必要であれば、上述の医薬組成物は、例えば天然ゲル、合成ポリマーゲルや、それらの混合物を含む、ある種の親水性ポリマー媒体と組み合わせることなどにより、採用される治療用化合物の徐放性が得られるように設計することができる。
【0079】
担体が固体である直腸投与に適した医薬組成物は、単位投与坐薬として提供されるのが最も好ましい。適切な担体には、ココアバターや当分野で一般的に用いられる他の物質が含まれ、坐薬は医薬組成物と軟化又は溶融した担体(単数又は複数)とを混合した後、冷却して金型で成形することにより、便利なように成形して良い。
【0080】
膣内投与に適した医薬組成物は、ナノ粒子と治療薬に加えて当分野で周知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫剤、又はスプレーとして提供して良い。
【0081】
吸入による投与については、本発明の医薬組成物は、吹き入れ器、噴霧器や加圧パック、又はエアロゾル噴霧を供給する他の便利な手段から、便利なように供給される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素や、他の適切な気体を含んでも良い。加圧エアロゾルの場合、投与単位は測定した量を供給できるバルブを装備することにより決定しても良い。
【0082】
あるいは、吸入又は吹き入れ法による投与については、本発明の医薬組成物は、例えば医薬組成物とラクトースやデンプンなど適切な粉末基剤の粉末混合物などの乾燥粉末組成物の剤形を取っても良い。この粉末組成物は、カプセルやカートリッジ、又は吸入器や吹き入れ器を用いて粉末を投与できる例えばゼラチン包装やブリスター包装に入った単位投与剤形で提供しても良い。
【0083】
鼻腔内投与については、本発明の医薬組成物はプラスチックボトルの霧吹き器などによる液体スプレーにより投与しても良い。この典型例は、Mistometer(ミストメーター)(登録商標)(イソプロテレノール吸入器,ウィントロップ社)とMedihaler(メジヘラー)(登録商標)(イソプロテレノール吸入器,リカー社)である。
【0084】
本発明の医薬組成物はまた、香料、着色剤、抗微生物剤や保存剤など、他の補助剤を含んでも良い。
【0085】
治療での使用に求められる医薬組成物の量が、選択される特定の塩によってのみでなく、投与経路、治療される状態の性質、及び患者の年齢と状態によっても変化し、最終的には付き添う医師や臨床医の判断によることは、さらに認められるであろう。
【0086】
本発明のリガンド結合経口ナノ粒子と組み合わせて投与可能な治療薬の量と、ヒト患者に投与する頻度は、患者の心理学的側面や健康状態に関する様々な変数に依存することになる。これらの要素の評価については、J.F.ブリエンら,Europ. J. Clin. Pharmacol., 14, 133 (1978)、及び、「フィジシャンズ・デスク・レファランス」(チャールズ E.ベーカー、Jr.,Pub.,メディカル・エコノミクス Co.,オラデル,ニュージャージー州(41版,1987))を参照されたい。一般に、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子と組み合わせて用いる場合の治療薬の用量は、治療薬を単独で又は従来の医薬投与剤形として投与する場合よりも少なくできる。細胞表面に位置する受容体などリガンド結合蛍光ナノ粒子の標的部位への特異性が高いため、治療薬の比較すると高い局所濃度、あるいはより長時間にわたる治療薬の持続的放出が得られる。
【0087】
本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子の「薬学的に許容可能な塩」及び治療薬は、有機酸及び無機酸との無毒な付加塩、例えばクエン酸塩、炭酸水素塩、マロン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び類似の塩などの塩を含むことができるがこれらに限定されない。加えて、ナノ粒子が安定な酸塩又は塩基塩を形成するのに十分な程に塩基性又は酸性である場合には、ナノ粒子を塩として調製するのが妥当であるかもしれない。許容可能な塩の例は、許容可能な陰イオンを形成する酸で形成される有機酸付加塩、例えば、トシレート、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、及びα−グリセロ燐酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸塩を含む適切な無機塩を形成しても良い。許容可能な塩は、例えば、アミンなどの十分に塩基性である化合物を診断に許容可能な陰イオンを生ずる適切な酸と反応させることによるなど、当分野で知られる標準的な手法を用いて得ても良い。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、又はリチウム)や、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)の塩も製造できる。
【0088】
「受容体」は、分子のある特定の空間的及び極的構成、即ちエピトープ基や決定基を認識できる(例えば、それに対し向上した結合親和性を有する)何らかの高分子化合物又は組成物である。受容体の例には、自然発生的な受容体、例えばチロキシン結合グロブリン、抗体、酵素、免疫グロブリン(Fab)断片、レクチン、細胞の表面に見出される様々なタンパク質(分化のクラスターやCD分子)などが含まれる。CD分子は真核細胞の表面に存在する既知及び未知のタンパク質を意味する。例えば、CD4は主にヘルパーTリンパ球を規定する分子である。
【0089】
「ハプテン」には、天然に発生するホルモン、天然に生ずる薬物、合成薬物、汚染物質、アレルゲン、アフェクター分子(affector molecule)、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、オリゴペプチド、化学中間体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなどが含まれる。このような化合物の使用は、薬物乱用の検出、治療量の監視、健康状態、移植目的のためのドナー適合、妊娠(例えば、hCGやアルファ−フェトプロテイン)、例えば内毒素、癌抗原、病原体などの疾病の検出における使用であって良い。
【0090】
「免疫複合体」は、蛍光ナノ粒子に結合した抗体と抗体に結合して抱合体を形成することができる例えば有機薬物分子、放射性核種、酵素、毒素、タンパク質などの通常は生物学的に活性な第二の分子的実体(検体)などの二つの異なる分子又は実体が付着することにより形成される分子である。抗体部分は、付着した蛍光ナノ粒子を標的検体まで誘導又は案内し、蛍光ナノ粒子が生物学的効果や標識効果を効果的に生じることを可能にする。目的の病原体は、例えば、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、及びレトロウイルスなどのウイルスであって良い。病原体には、プリオン、及び大腸菌、緑膿菌、エンテロバクター・クロアケー、黄色ブドウ球菌、腸球菌(Enterococcus faecalis)、肺炎桿菌、ネズミチフス菌、表皮ブドウ球菌、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、ミコバクテリウム・ボービス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、及びプロテウス・ブルガリスなどを含む細菌が含まれるが、これらに限定されない。これら生物体及び関連疾患の網羅的でないリストは、例えば米国特許番号第5,795,158号に見出される。
【0091】
本発明のナノ粒子を使用する検定は、尿、脳脊髄液、胸腺液、滑液、腹膜液、羊膜液、胃液、血液、血清、血漿、リンパ液、間質液、組織ホモジネート、細胞抽出液、唾液、痰、糞、生理学的分泌物、涙、粘液、汗、乳、精液、膣分泌液、潰瘍やその他皮疹、疱疹、膿瘍由来の液体、及び正常組織、悪性組織、及び疑わしい組織、又は目的の検体を含んでいるかもしれない他の身体構成要素などの生検を含む組織抽出物などの分離した又は濾過していない生体液を含む生体液中で行なうことができる。細胞培養液や組織培養液、又は培養ブロスなどの他の同様の検体も対象である。あるいは、試料は、土壌、水、空気などの環境資源から、又は廃水の流れ、水源、供給ラインや生産ロットから得られるような産業資源から得ることもできる。産業資源には、生物反応槽や醸造などの食物発酵過程などに由来する発酵培地、肉などの食料、獲物の肉、農産物、又は酪農製品も含まれる。試験試料は、血液から血漿を調製する、粘性流体を希釈するなど、使用前に前処理しておいても良い。前処理の方法には、濾過、分画、蒸留、濃縮、妨害する物質の不活性化、及び試薬の追加などの工程や、それらの組合せを含むことができる。
【0092】
検体の複数の亜集団を検出する方法は周知であり(例えば、レーネンの米国特許番号第5,567,627号を参照)、本発明に適応できる。例えばマーキンらの米国特許番号第6,417,340号にあるような、レドックス活性分子が付着したオリゴヌクレオチド・プローブによる電気化学検定を含む、オリゴヌクレオチドが付着した一つ又は複数のナノ粒子を用いて核酸を検出する方法は本発明に適応させることができる。遺伝子の点突然変異の電気化学的検出と局在化、及びバートンらの米国特許番号第6,221,586号などの電極上に吸着された二本鎖オリゴヌクレオチド(oligonucleotide duplex)内での他の塩基スタッキング摂動(base-stacking perturbation)は、本発明に適応させることができる。チャンドラーらの米国特許番号第6,268,222号などの試料中の複数の検体を多重蛍光分析する方法は、本発明に適応させることができる。他の検出方法には、紫外分光法や可視分光法の使用が含まれる。例えば、X.ゴングとE.S.ヤン,Anal. Chem., 71, 4989 (1999),「リニアフォトダイオード配列を用いた多重キャピラリー電気泳動法のための吸収検出アプローチ」を参照。ある範囲の磁性標識密度を有する細胞へ磁力を適用することに基づく分画細胞分別工程を通じて流体を用いる細胞分離方法は本発明に適応できる。マソンらの米国特許番号第4,279,617号などの非共有結合とアグロメレーションにより互いに結合した粒子を分離する方法は、本発明に適用させることができる。
【0093】
本発明の目的のために、ナノ粒子の蛍光成分は試料中の検体の存在に関連するシグナルを発しなければならない。同様に、蛍光ナノ粒子を含むリガンドを選択する際には、リガンドは試料中の検体の存在に関連する蛍光シグナルを発しなければならず、そのシグナルは電磁放射、とりわけ紫外線、可視線、又は赤外線領域の放射線として検出することができる。
【0094】
「随意の(optional)」、又は「任意選択的に(optionally)」は、後に記述する事象や状態が発生するかもしれないが発生する必要がなく、その記述にその事象や状態が発生する事例と発生しない事例が含まれることを意味する。例えば、「任意選択的に含む」は、指定の成分が存在しても存在しなくても良いことを意味し、この記述には指定成分が含まれる状態と指定成分が含まれない状態が含まれる。
【0095】
用語「含む(include)」、「例えば(for example)」、「など(such as)」などは、例示的に用いられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0096】
不定冠詞「a」及び「an」は、請求項を含む本出願書で用いる場合、特に記さない限りは「少なくとも一つの」又は「一つ又は複数の」を意味する。
【0097】
本発明のナノ粒子及び複合体又は付加体の調製と評価には、以下の一般法を使用した。
【0098】
蛍光ナノ粒子の調製
本発明の蛍光ナノ粒子を調製するための手順と中間体を本発明の更なる実施態様として提示し、以下の手順で例示する。なお、一般的な遊離基の意味は特に断らない限り定められたとおりである。
【0099】
実施態様では、本発明の蛍光ナノ粒子は、例えば色素(D)などの反応性蛍光物質などの反応性蛍光化合物と既知の有機機能性シラン化合物(OS)などの共反応性有機シラン化合物などを混合して蛍光コア粒子(D−OS)を形成し、その結果得られるコア粒子(D−OS)を(Si(OR)4)などのシリカ形成化合物と混合してコア上にシリカ殻を形成することにより調製することができ、その産物が蛍光ナノ粒子(D−OS)(SiO2)となる。
【0100】
反応性蛍光物質(D)と共反応性有機シラン化合物(OS)のモル当量比は、例えば約1:1〜約1:100であって良い。蛍光コア粒子(D−OS)のシリカ形成化合物(Si(OR)4)に対するモル当量比は、例えば約1:1〜約1:100であって良い。
【0101】
本発明のナノ粒子は、例えばカルボジイミドカップリングなど既知の任意の化学結合反応により、リガンドと検体のいずれか又は両方に選択的に連結できる。他の結合法には、カルボン酸塩、エステル、アルコール、カルバミド、アルデヒド、アミン、硫黄酸化物、窒素酸化物やハロゲン化物の使用が含まれ、当分野で知られる他の方法を使用することができる。蛍光ナノ粒子をリガンドに、又はリガンド結合蛍光ナノ粒子を検体に結合すること、及び類似の結合は、一般に米国特許番号第6,268,222号に開示された手順と原理、又は本発明に適用される当分野で知られた他の手順を適用することにより達成できる。
【0102】
実施態様では、本発明の表面修飾蛍光ナノ粒子などの連結蛍光ナノ粒子は、例えば予め形成された蛍光ナノ粒子蛍光ナノ粒子(D−OS)(SiO2)及び、(式X1−R1−X2の)生物学的に活性な化合物などのリガンドから、及び任意選択的に(式Z1−L−Z2の)リンカー前駆体から、調製できる。なおX1、X2、Z1、及びZ2は下の表の値から選択することができる。任意選択的なリンカー前駆体が存在しない場合は、シリカ殻の表面シラノール(Si−OH)基を用いてリガンドへ連結若しくは結び付けることができる。リガンド及びリンカー前駆体は、周知の合成的技法(例えば、縮合による)を用いて反応又は重合させて、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子又は連結産物を得ることができる。リガンドの反応性官能基(X1又はX2)に応じて、対応する官能基(Z1又はZ2)が下の表から選択され、リガンド結合蛍光ナノ粒子や連結産物内でエステル結合、チオエステル結合、又はアミド結合が得られる。
【0103】
【表1】

【0104】
当業者に明らかなように、連結反応中に適切な保護基を用いることができる。例えば、生物学的に活性な化合物に存在するナノ粒子表面上の他の官能基、又はリンカー前駆体を、連結反応の間、部分的に又は完全に保護することができ、次いで保護基を除去して本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子を得ることができる。適切な保護基とそれらを取りこむ方法及び除去する方法は、当分野では周知である(例えば、グリーン,T.W.;ウッツ.,P.G.M.「有機合成における保護基」(第2版,1991,ニューヨーク州,ジョン・ワイリー&サンズ,Inc.)を参照)。
【0105】
加えて、カルボン酸がヒドロキシ基、メルカプト基、又はアミン基と反応してエステル結合、チオエステル結合、又はアミド結合を生じる場合には、該カルボン酸は反応の前に例えば対応する酸塩化物の形成により、活性化させても良い。カルボン酸を活性化させそしてエステル結合、チオエステル結合、及びアミド結合を調製する多数の方法が、当分野で知られている(例えば、「上級有機化学:反応メカニズムと構造」(第4版,ジェリー・マーチ,ジョン・ワイリーアンドサンズ)419-437ページと1281ページを参照)。
【0106】
ナノ粒子のシリカ殻表面には、必要であれば、例えば既知の架橋結合物質を用いた表面官能基付与反応によりさらに修飾して、本明細書に示すような表面官能基を付与することができる。架橋結合物質は、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコール・ジメタクリレート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド、アルキルエーテル、糖、ペプチド、DNA断片、又は他の既知の機能的に同等な物質である。多数の架橋結合物質が、本発明のリガンド結合蛍光ナノ粒子の形成におけるリガンドと組み合わせて使用できること、又はそういうリガンドとしての使用に適していることは、当業者には直ちに明らかであろう。架橋結合物質を表面修飾反応に使用して、本明細書に示すように、蛍光ナノ粒子、又はリガンド結合蛍光ナノ粒子の表面特性を修飾できることは、本発明を所有する当業者には直ちに明らかである。
【0107】
物質と方法
試薬は全て、さらに精製、蒸留せずに、入手したままの状態で使用した。アンモニアのモル濃度は、各合成工程前にメチルブルーによる滴定で測定した。ガラス製品は文献に記載されている方法で洗浄し、合成手順の前にヒートガンを用いて乾燥した。モル濃度計算では、混合後の容量は無視した。蛍光コアの合成における3−アミノプロピルトリエトキシシシラン(APTS)の量は、表Iのモノマーモル濃度の計算では考慮していない。
【0108】
ナノ粒子合成用物質
無水エタノール(アルドリッチ社)、テトラヒドロフラン(アルドリッチ社)、水酸化アンモニウム(フルカ社、28%)、テトラエトキシシラン(アルドリッチ社、98%)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社、99%)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(ジェレスト社(Gelest)、99%)、テトラエチルローダミン−5−(及び−6−)−イソチオシアネート*混合異性体*(TRITC)(モレキュラープローブ社(Molecular Probes)、88%)、Alexa Fluor(アレクサ・フルーア)(登録商標)488C5 マレイミド(モレキュラープローブ社、97%)、Alexa Fluor(アレクサ・フルーア)(登録商標)488カルボン酸、及びスクシンイミジル・エステル(モレキュラープローブ社、≧50%)。
【0109】
コア(蛍光種)ナノ粒子の調製全般
水、アンモニア、及び溶媒の量は、メスシリンダーで測定した。蛍光種粒子の合成は、1Lのエルレンマイヤーフラスコで実施し、磁気TEFLON(テフロン)(登録商標)で被覆した撹拌子を用いて、約600回転/分で撹拌した。脱イオン水とアンモニア溶液をエタノールに添加し、撹拌した。約2mLの反応色素前駆体を溶解した約425マイクロモルのAPTSを含むエタノール又はTHFを、反応槽に添加した。その結果得られた混合物を室温で約1〜約3時間攪拌した。その間、反応槽は露光を最小限にするためにアルミホイルで覆った。その結果、蛍光種ナノ粒子混合物が得られた。テトラヒドラフラン(THF)と無水エタノール(EtOH)を窒素下で蒸留した。有機色素を約−20℃の保存温度から室温に戻してからグローブボックスに入れた。
【0110】
コア(蛍光種)粒子上のシリカ殻の調製全般
シリカ殻の被覆及び成長工程は、シリカ形成モノマーであるテトラエトキシシラン(TEOS)の添加しながら、溶液のイオン強度の急激な変化を避けるために、エタノール、メタノールや、イソプロパノールなどの溶媒の定期的な添加して、上で述べた蛍光種粒子反応混合物中で行った。これにより合成中の粒子の凝集が避けられ、粒子サイズの分布を広げることができる。
【0111】
蛍光ナノ粒子の特性決定
結果的として得られた蛍光ナノ粒子の粒子サイズと粒子サイズ分布を、電子顕微鏡検査(SEM)と蛍光相関分光法(FCS)により特性決定した。
【0112】
図1は、本発明の蛍光ナノ粒子がUV−Vis吸収スペクトル全体をカバーすることを示す。
【0113】
図2A〜Bは、各部分、即ち単一のTRITC色素、色素が豊富なコア、及びコア/殻構造の流体半径と輝度の一例を示す。図2Aは、各部分のFCS曲線が単一の拡散係数に適合したことを示すものであり、この試料が測定精度の範囲内で単分散であることを示している。TRITCは0.21μm2/msの拡散係数を有し、他の報告と一致して約1.0nmのストークス−アインシュタインの流体半径に合致する(図2A、赤い円)。コアは遊離色素よりもわずかに大きいだけであり、2.2nmの半径である(図2A、緑の円)。シリカ殻を添加した後、粒子の半径は15nmまで増大した。TEM分析中の電子ビーム照射による分解のため、ドライシリカナノ粒子は流体半径よりも小さく表れて良い。
【0114】
図2Bは同じ励起力で3つの合成段階の輝度を示す。自己相関の振幅は拡散種の数を示し、平均計数率は光学的に定義した焦点体積から収集した光子を測定した値である。従って、各々の拡散種に対する分子毎の計数率を得ることができ、それがプローブの輝度の直接的な尺度となる。コアの蛍光は実際には遊離TRITCの蛍光よりも少なく、これは高密度な色素豊富なコアが遊離色素に比べて消光が大きいことを示唆している。しかしながら、色素のない外側のシリカ殻をコアに添加すると、蛍光は30倍だけ増加する。
【0115】
図3A〜Dは、蛍光ナノ粒子合成中間体の溶媒露出度と退色作用を表す図である。コア/殻粒子の溶媒露出度は、溶媒交換の際の励起スペクトルと発光スペクトルのシフトとして図3A〜Cに示す。遊離色素及びコアの励起と発光のスペクトルは、エタノールから水に変えると赤へのシフトを示す(図3A、B)。しかしながら、シリカナノ粒子のスペクトルは、あったとしても僅かなシフトしか示さず(図3C)、ナノ粒子殻の溶媒への不浸透性が大きいことを示唆している。
【0116】
図3Dは色素、コア、コア/殻、及びフルオレセインの光退色挙動を示す図である。コアとコア殻はいずれも遊離TRITCよりも退色が少なく、コア/殻ではコアと比べて光退色の減少が見られる。TRITCがかなり光安定性の発蛍光団であり、従って遊離色素とシリカナノ粒子の間での光安定性の差が小さいということに留意するのは興味深い。しかしながら、退色が速い発蛍光団であるフルオレッセインイソチオシアネートと比べると、ナノ粒子の光安定性がずっと高いことは明白である。溶媒交換結果と合わせて考えると、これらの測定はCUドット中の色素が溶媒に比較的到達できず、この保護作用が光安定性の増大をもたらすことを示している。
【0117】
図4A〜Dは、ラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞のFcεRI受容体を標識化することによる、これらシリカナノ粒子の生体画像化マーカーとしての潜在能力を示す。抗体免疫グロブリンE(IgE)とその細胞表面受容体、FcεRIは、可逆性であるが密な複合体を形成することで知られる。IgEはCUドットの表面に、結合検定を繰り返して確立された1:1の最適比率で吸着される。図4A、Bは抗体吸収シリカナノ粒子による典型的なRBLの標識化を表す。細胞の赤道部では、膜貫通FcεRI受容体で予測されるように、細胞の周囲のみしか標識されない。負の対照として、RBLマスト細胞を裸のシリカナノ粒子とインキュベートする前にIgEで一晩あらかじめ増感させておいた。
【0118】
図4C、Dはごく僅かな周辺染色しか観察されなかったことを示す図であり、シリカナノ粒子と細胞表面間の間の非特異的相互作用が最小であることを表している。
【0119】
図5は遊離色素、シリカナノ粒子、及び量子ドットの輝度を577nm(ナノ粒子と量子ドットについては計数/粒子、及びTRITCについては計数/分子)の蛍光ピークと比較するものである。量子ドットとCUドットは両方とも遊離TRITCよりも1桁明るい。
【0120】
図6は、ポリスチレンラテックスビーズ(20)と比較した、本発明の蛍光ナノ粒子(10)の蛍光輝度特性の一例を示す図である。蛍光相関分光法(FCS)を用いて次のナノ粒子とビーズの計数率を得た。100又は300ナノメートルの蛍光ナノ粒子は1粒子当たり299.1kHzを有し、300ナノメートルのポリスチレンラテックスビーズは1ビーズ当たり69.84kHzを有していた。蛍光計数率は蛍光ナノ粒子(10)がポリスチレンラテックスビーズよりも約4倍明るいことを示した。
【0121】
粒子含有蛍光寿命当たりの色素含有量と作用断面(action cross section)を測定するため、光物理的特徴付けを実施した。作用断面計量は、本質的には量子収量と吸光度特性の産物である。ナノ秒(ns)での蛍光対時間の時間分解測定は、ナノ粒子に組み込まれた色素は溶液中の遊離色素よりも寿命が短いことを示した。ナノ粒子に対する蛍光寿命は1.9nsで測定したが、TRITCに対する寿命を測定すると2.1nsであった。この単独の寿命データからは、色素は密なコア−殻粒子内部で消光するものであると結論付けるかも知れないが、定常状態の測定値は別のことを示唆している。蛍光寿命と量子効率の組合せにより、放射速度と非放射速度の速度定数の固有の測定が可能となる。放射速度の増大は、遊離TRITCよりも2.2倍大きく、全体的に1桁分の蛍光の増加が観察されることにつながる。
【0122】
250〜650ナノメートルの範囲にわたる吸光度測定から、1粒子につき例えば約20個の色素分子があることが立証された。例えば、試料R30には1粒子当たり約23個のTRITC色素分子があり、試料R29には1粒子当たり約21個のTRITC色素分子があった。しかしながら、2つに分けた25nm粒子の調製(試料R29とR30)に対して700〜約1000nmの範囲にわたりσ2p(GM)という作用断面測定は、範囲全体で、及び、とりわけ約700及び約840ナノメートルの最大吸光度で、色素含有量がほぼ同一であるにも関わらず、R30がR29の約2倍明るいことを示した。この観察は、コアと殻の間の交互作用効果に関連する複雑さと、それらが観察された量子効果の増大の原因であるかもしれないことを示唆した。従って、例えば生物マーカーとしての使用するために、本明細書に記載のコア又は殻の厚みを変えるなどの直接的な手法により、本発明のナノ粒子の蛍光特性をさらに最適化することが可能である。
本発明はここに、以下の限定的でない実施例により例を示す。
【実施例1】
【0123】
赤色コアナノ粒子の調製
テトラメチルローダミン−5−(及び−6−)イソチオシアネート(TRITC)10mgをエタノールに溶解した。3−アミノプロピル・トリエトキシシラン(APTS)対TRITCのモル比は50対1であり、APTS1mg当たりのエタノールは2mLであった。TRITCをエタノールに完全溶解した後、APTSを反応槽に添加した。この反応物をグローブボックス内の暗所で約12時間、室温で撹拌した。
【実施例2】
【0124】
緑色コアナノ粒子の調製
5mgのアレクサ・フルーア(登録商標)488C5メレイミド(Meleimide)をエタノールに溶解した。3−メルカプトプロピル・トリエトキシシラン(MPTS)のモル比は100〜1であり、MPTS1mg当たりのエタノールは2mLであった。TRITCをエタノールに完全溶解した後、MPTSを反応槽に添加し、暗所で約12時間、室温で撹拌した。
【0125】
5mgのアレクサ・フルーア(登録商標)488カルボン酸、スクシンイミジル・エステルをTHFに溶解した。3−アミノプロピル・トリエトキシシラン(APTS)対アレクサ・フルーア(登録商標)488カルボン酸、スクシンイミジル・エステルのモル比は100対1であり、APTS1mg当たりのTHFは2mlであった。アレクサ・フルーア(登録商標)488カルボン酸、スクシンイミジル・エステルをTHFに完全溶解した後、APTSを反応槽に添加し、暗所で12時間、室温で撹拌した。微量であるため、蛍光色素−コア付加体はシリカ殻が沈着する前には反応中間体から分離しなかった。
【実施例3】
【0126】
サイズを設定したシリカ被覆蛍光ナノ粒子の調製
サイズの異なるシリカ被覆蛍光ナノ粒子の調製は、上述の異なる相対的なモル量(molar amount)の試薬を用いて達成した。20nm〜200nmの粒子の合成用の試薬のモル量を表Iに挙げる。蛍光ナノ粒子製造法のシリカ被覆は全て、周囲条件、即ち、溶媒にエタノールを用いた室温で達成した。以下に代表的な製造法を記す。
【0127】
色素豊富なシリカコアは、表Iに挙げるように、実施例2と実施例3に従って合成した170μMの前駆体を適量の触媒、水、及び溶媒に添加することにより合成する。添加の後、混合物を一晩反応させた。この混合物を含む蛍光コア粒子に、100mLのさらなる溶媒に溶解した2mLのTEOSを、例えば約20分かけて連続的に滴下した。量が多い方の残ったTEOSをより速い速度で、例えば約45分間かけて添加し、同時に溶媒をさらに400mL添加した。任意選択的に、この段階で水を添加して粒子を約100nmよりも大きくし、表Iに挙げるTEOSに対する水のモル比を維持した。この結果得られる懸濁液を室温で一晩、暗所で撹拌した。
【0128】
【表2】

【0129】
あるいは、約70nmを下回る範囲の小さい粒径を有するナノ粒子を製造するため、TEOSを少量のアリコートに分けて、色素が豊富な蛍光コアを含む混合物に例えば300マイクロリットルを約10〜15分間隔で断続的に添加し、室温で一晩、暗所で撹拌した。脱イオン水対モノマーのモル比は少なくとも約6倍に保たれたが、それ以上にはならなかった。反応混合物中の含水量をより良くモニタリングするために、2.0Mのアンモニアを触媒源として使用し、例えばエタノール中に2.0Mのアンモニアなど合成の一次溶媒に応じて、エタノール、メタノール、又はイソプロパノールに溶解した。色素が豊富なコア/種粒子を調製し、テトラエチル・オルトシリケートモノマーを例えば300マイクロリットルを10分毎など断続的に添加して珪質殻を大きくした。滴下漏斗によりモノマーを連続的に添加するより大きな粒子の製造法とは対照的に、より小さい粒径の製造法(約70nmを下回る粒子)ではTEOSモノマーは断続的に添加される。既知のストーバー手法(J. Collid and Interface Sci., 26 62-69(1968))で調製したシリカナノ粒子の粒径分布には、粒径が70nmを超えて大きくなるとより多くのモノマーが反応混合物に添加されるセルフ・シャープニング特性があるため、シリカ殻被覆蛍光ナノ粒子を調製するための代替手法が考案された。したがって、70nmよりも小さいシリカナノ粒子には一般的にはずっと広いサイズ分布がある。従って、約10〜約70nmの範囲の粒径であると予測できるものよりも粒径分布が狭いナノ粒子が得られるよう、最初に述べた実施例3の製造法を以下のように改変した。
【実施例4】
【0130】
吸着によるナノ粒子のIgEとの結合(ligation, coupling)
実施例3のシリカ被覆蛍光ナノ粒子を、リン酸緩衝食塩水(PBS)又はタイロード緩衝液にpH7で希釈(1:10〜1:20)した。免疫グロブリンE(IgE)(保存濃度0.85mg/mL)を、IgEで約3時間、室温でインキュベートすることにより蛍光ナノ粒子上に吸着させると、例えば約1:1〜約1:4の比率のナノ粒子−IgEが得られた。約50nmよりも大きいナノ粒子については、結合していないIgEを遠心分離で除去した。大きさが50nm以下のナノ粒子に付いては、大きさが1:2ミクロンの0.25wt%ラテックス粒子100マイクロリットル(ナノ粒子−IgEの総容量500マイクロリットル)を添加することにより、結合していないIgEを除去した。未結合のIgEは、例えば4℃で一晩インキュベートすることにより大きなラテックス粒子に固着し、そのラテックス粒子はその後数時間分配しない場合には懸濁液から分離し沈殿した。残ったペレット集団(pellet mass)が主にIgEと結合し破棄されたラテックス粒子であることを確認した。結果的に得られたIgE結合(coupled)ナノ粒子(IgE結合(lgated)蛍光ナノ粒子)を含む上清を慎重に分離しバイアルに入れた。結果的に得られたIgE結合(coupled)ナノ粒子試料(即ち、ナノ粒子に吸着したIgE)を細胞結合実験の間、4℃で保存した。IgE結合ナノ粒子は、細胞結合の前にタイロード−BSAで希釈した。希釈は細胞当たりの所望のIgEと結合したナノ粒子数密度に従った。
【実施例5】
【0131】
ナノ粒子表面機能付与
ナノ粒子の表面は、例えばカルボン酸基などの化学的官能基の導入など、化学的にさらに修飾してナノ粒子の多様性と安定性を向上させることができる。カルボン酸基などの官能基のシリカ被覆ナノ粒子の表面への導入は付着点を供給し、ナノ粒子の表面への生体分子、例えばタンパク質や抗体の共有結合(covalent attachment)を可能にする。表面官能基、とりわけイオン化基は、緩衝培地における電荷安定性など他の望ましい特性をナノ粒子に与える。帯電したカルボン酸表面基は、ナノ粒子の集塊(agglomeration)を避ける又は最小化する単一の粒子コロイド分散としてナノ粒子を維持することができる。ナノ粒子表面機能付与の手順は既知のものであり、例えばカルボジイミド修飾が含まれ、本明細書に記載のとおりである。
【0132】
物質
3−アミノプロピル・ジメチルエトキシシラン(APDMES)(ジェレスト社)、二機能性架橋試薬(ピアス・エンドジェン社):アジピン酸N−スクシンイミジルメチル(MSA)。
【0133】
ナノ粒子表面機能付与は以下のように行った。表Iに記載の径25nmのナノ粒子の懸濁液20mLを使用した。蛍光相関分光法により測定し、乾燥させ、懸濁液の既知量を測定すると、ナノ粒子濃度は4.33mg/mLであった。他のナノ粒子の粒径と濃度は、粒径、表面積、濃度などの事項の違いを考慮して適切に適用すると、この手法に基づいて表面修飾することができる。
【0134】
シリカ殻を有する蛍光ナノ粒子は、上で述べた最初の調製の後、透析により浄化した。シリカ殻ナノ粒子懸濁液の濃度は、ナノ粒子懸濁液のアリコートを真空乾燥機で乾燥し、計量することにより、又は蛍光相関分光法により測定した。ナノ粒子の密度を2g/mL、粒径を既知のものと想定すると、懸濁液1mL当たりの粒子数は約1.78×1016と算出された。固体粒子を想定すると、ナノ粒子の総評面積は、例えば約3.35×1019nm2であった。シラノール基の密度は、文献の値(例えば、R.イラー,「シリカの化学」)に基づいて1平方ナノメートル当たり約1.4−OH基と推定でき、従って100%のアミン被覆率に向けたAPDMESによる反応に利用できる−OH基は、約7.78×10-5モルある。触媒として5mgのフッ化アンモニウムと共に、APDMESを2モル過剰に加え、周囲温度で周囲の光を遮断して約12時間反応させた。反応しなかった過剰なAPDMESをpH7のリン酸緩衝液で12時間掛けて透析して除去した。次いで、その結果得られたアミノ化したナノ粒子のpH7のリン酸緩衝液に懸濁した液を、ジメチル・スルホキシドに溶解した2モル過剰のMSAで、周囲温度で約2〜6時間反応させた。反応しなかった過剰なMSAをpH9.5のリン酸緩衝液で約6〜12時間透析して除去した。なお、リン酸緩衝液はMSA中のエステル基を加水分解し、ナノ粒子の表面にカルボン酸基を共有結合(covalently attach)させることもできる。
【0135】
FTIRによるナノ粒子の特性決定
上述の各機能付け段階におけるナノ粒子産物は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法により特性決定した。一置換アミド基の振幅帯は、1500〜1600cm-1ではシラン化合物APDMESのアミン基とMSA化合物のスクシンイミジル・エステル基間の結合(linkage)を示し、1700cm-1ではカルボン酸の特徴を示した。開始ナノ粒子との比較で観察された分光変化は、表面機能反応の成功を示した。
【実施例6】
【0136】
共有結合(covalent conjugation)によるナノ粒子への結合
他の表面機能付与の実施例は、上述の様々な生体分子と蛍光ナノ粒子の共有結合(covalent conjugation)により達成することができる。
【実施例7】
【0137】
IgE結合(IgE coupled)蛍光ナノ粒子と細胞の結合
ラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞モデルシステムを用いた特異的結合実験は、蛍光シリカ系ナノ粒子の特異的結合特性を実証した。細胞(例えば、ラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞)は、トリプシン−EDTAを用いて収集した。次に細胞をカウントして細胞濃度(mL当たりの細胞数)を測定した。適切な数の細胞をIgE結合ナノ粒子(例えば細胞1個当たりに約2×105個のIgE結合ナノ粒子)で、インターナリゼーションを避けるため、氷上で約1時間インキュベートした。結果的に得られたナノ粒子−IgE結合細胞、即ち、細胞に結合したIgE結合ナノ粒子をタイロード−BSAで洗浄し、共焦点顕微鏡の下でこれらの細胞の特異的結合を観察した。
【0138】
共焦点顕微鏡画像は、例えば赤色ナノ粒子で修飾された細胞の上面を映し、抗体IgEは緑色蛍光で標識されて抗体とナノ粒子の共存を表す。細胞の赤道観から撮影した別セットの画像は別の共焦点像を示した。この像では蛍光ナノ粒子でマークした抗体受容体の拡散運動がSPTでモニタリングできる。非特異的結合をチェックするために、以下の適当な対照実験(controls)を行った。対照細胞は、全ての受容体部位を遮断するよう、IgEを用いて一晩、事前増感させた。次に、これらの遮断された細胞を上で述べたのと同様の方法でトリプシン−EDTAを用いて収集し、細胞濃度が同一のIgE結合ナノ粒子で標識した。続いて、共焦点顕微鏡の下でこれらの細胞の何らかの非特異的結合(又は付着)を観察した。
【0139】
図7Aと7Bでは、例えば細胞計数統計により測定すると、ポリスチレンラテックスビーズ(図7B)と比べて、本発明の径が100〜300ナノメートルの蛍光ナノ粒子(図7A)の生体分子結合特異性が高いという一例が示されている。その結果は、IgE結合ナノ粒子に結合したラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞とポリスチレンラテックスビーズに結合した細胞との特殊な相互作用(二本の棒の左側)はほぼ等しく、一方「付着」相互作用など、あまり望ましくない又は望ましくない非特異的な相互作用(二本の棒の右側)はIgE結合ナノ粒子及び細胞と比べて、ポリスチレンラテックスビーズ及び細胞の方で大きいことを示す。径が25〜100ナノメートルの間である本発明の蛍光ナノ粒子についても、同様の結果が予測される。
【0140】
図7Aと図8Aの凡例は以下のとおりである:
”IgEM”は、ラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞のIgE受容体に特異的に結合するマウスIgEを指し、
”対照:IgEH”は、前記ラット細胞のIgE受容体に結び付かないヒトIgEを指し、
”対照:粒子単独”は、IgE結合蛍光ナノ粒子と細胞、及びポリスチレンラテックスビーズと細胞のそれぞれの結合を指す。
【実施例8】
【0141】
単一粒子追跡法(SPT)
単一蛍光ナノ粒子追跡実験は、選択単一ブライト蛍光スポット(単一受容体結合粒子に対応)の運動を、約20〜30分間共焦点的に追い、単一粒子が結合する先の受容体の拡散を追跡することにより実施した。この代わりに、複数の選択単一ブライト蛍光スポットを追跡しても良い。
【0142】
単一粒子追跡法は細胞表面上の個々の成分の側方拡散を評価する。この方法は、目的のマクロ分子に特異的に結合するブライト蛍光プローブの直接観察に基づくものである。個々の成分の追跡は、小範囲に又は軌跡に沿った移動に限定する工程を含む、興味深い及び有益な様々な挙動を明らかにする。この情報により、成分がどのように細胞内、細胞膜などの構造や成分で相互作用するのかが理解できるようになる。しかしながら、この方法はプローブの品質に高度に依存する。この方法の重大な欠点は、細胞の粒子への非特異性結合であった。本発明の蛍光ナノ粒子とリガンド結合蛍光ナノ粒子は輝度を増大し、目的の成分に対する結合特異性を高める。リガンド結合蛍光ナノ粒子が生体適合性であり非特異性結合相互作用を最小化することが実証された。
【実施例9】
【0143】
治療薬の標的配送と徐放に向けたメソ多孔性シリカナノ粒子
蛍光コアナノ粒子は、例えば実施例1と2に基づいて、及び上記の全般的なコア調製手法に従って調製した。
【0144】
メソ多孔性殻
表面実在物質(surface substantive agent)であるN−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(2.4g、6.6mmol、HDTB)を蛍光種コアナノ粒子を含む反応混合物に溶解した。その混合物をHDTBが完全に溶解されるまで撹拌(450rpm)し、次いで3.4gのTEOS(16mmol)を一気に添加した。HDTBは、その周辺でシリカ殻形成が要請、摂動され、次いで表面に結合するHDTBを除去することにより細孔形成が可能となるテンプレート物質(templating agent)として機能する。その後HDTBをナノ粒子から洗浄又は除去することにより、メソ多孔性シリカ殻を有する蛍光ナノ粒子が得られる。
【0145】
洗浄手順
TEOSで約5時間反応させた後、3回の6000rpmの遠心分離洗浄して固体を回収した。各遠心分離工程で無水エタノールを用いて上清を回復させた。遠心分離処理の後、脱イオン水中での濾過による洗浄を2回行なった。遠心分離と濾過の工程により、HDTB界面活性剤の約90%を除去した。固体を含む回収したナノ粒子は、最終的に無水エタノールに懸濁した。この懸濁液を超音波撹拌により均質にした。
【0146】
減圧蒸留を実施して、エタノール溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)に取り替えた。懸濁液のアリコートを乾燥させ、固体塊の重量を計量して最終濃度を測定した。結果的に得られたDMSO中のメソ多孔性ナノ粒子は、以下に示すように治療薬をロードするのに適していた。
【0147】
治療薬によるメソ多孔性ナノ粒子の装薬
上述のメソ多孔性ナノ粒子のDMSO懸濁液を撹拌し、50mLのファルコンチューブに移した。この溶液を3,000rpmで約5分間遠心分離し、6mLの上澄み液を捨ててDMSOの量を4mLにまで減らした。16mgの治療薬試料、カンプトセシン(CPT)を溶液に添加した。5時間後に溶液を遠心分離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。各洗浄の間、20mLのPBSを添加し、粒子は超音波処理し遠心分離した。超音波処理は30秒間のパルス出力に1.0秒間のオンと1.0秒間のオフというパルス周波数で15%出力で、又はこの溶液が均質になるまで行った。遠心分離は25℃で5分間、3,000rpmで行った。治療薬を装薬した粒子を室温で貯蔵した。
【0148】
全ての出版物、特許、及び特許文献は、個々に参照によりインコーポレートするかのように、参照により本明細書にインコーポレートする。様々な限定的及び好ましい実施態様及び技術に関して、本発明を記載した。しかしながら、本発明の精神及び範囲の範囲にありながら、多くの変形及び修正を行えることを理解すべきである。
【0149】
図8Aは、赤色コア及び緑色色素の両方が488nmのナノ粒子の細孔内部に固定されていることを示す図である。図8Aはさらに、孔内でいくつかの緑色色素に補足された赤色コアを有するメソ多孔性粒子を示しており、これらの粒子から2つの蛍光シグナルが得られる。粒子が緑色色素の吸光が最大となる488nmで励起する場合、赤色色素は最小限でしか吸光されないため、緑色色素のシグナルは赤色コアよりもはるかに増強する。同じ粒子の懸濁液が赤色コアの吸光が最大となる585nmで励起する場合、赤色シグナルは増強し、メソ多孔性粒子内に実際に赤色コアがあるという事実をさらに証明する。赤色コアの最大吸光となる585nmの励起では、赤色コアはやはりナノ粒子内に固定されている。
【0150】
図8Bは、界面活性分子であるN−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドの使用を含むMCM48の合成を示す図である。緑色色素か化学療法薬のいずれかを固定化するためのプロトコルも記載されている。
【0151】
図8Cは、ナノ粒子のTEM特性を示す図である。ナノ粒子(赤色コアなし)はエポキシに包埋し、30nmの薄片に切断し、銅グリッドに載せた。像は、LEO922エネルギーフィルターTEMで、44,000Xの拡大率の弾性明視(elastic bright field)で200KeVで撮影した。立方体二連続性(cubic-bicontinuous ordered)メソ細孔が明確に可視化される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】図1は、本発明の蛍光ナノ粒子がUV−Vis吸収スペクトル全体をカバーすることを表す図である。
【図2】図2は、FCS測定による各成分(species)の流体半径と輝度を示す図である。
【図3】図3のA〜Dは、蛍光ナノ粒子の溶媒露出度を示す図である。
【図4】図4のA〜Dは、ラット好塩基球性白血病(RBL)マスト細胞のFcεRI受容体を標識化することによる、これらシリカナノ粒子の生体画像化マーカーとしての潜在能力を示す図である。
【図5】図5は、577nmの蛍光ピークを有する遊離色素、シリカナノ粒子、及び量子ドットの輝度を比較する図である。
【図6】図6は、ラテックス粒子と比較した本発明の蛍光ナノ粒子の蛍光輝度の一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の蛍光ナノ粒子の生体分子結合特異性の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは、比較用のラテックス粒子の生体分子結合特異性の一例を示す図である。
【図8A】図8Aは、メソ多孔性粒子内部における治療薬の固定化を示す図である。
【図8B】図8Bは、メソ多孔性粒子内部における治療薬の固定化を示す図である。
【図8C】図8Cは、メソ多孔性粒子内部における治療薬の固定化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光シラン化合物を含むコア、及び、
該コア上のシリカの殻
を含む、蛍光ナノ粒子。
【請求項2】
コアが反応性蛍光化合物の反応生成物と有機シランを含み、殻がシリカ形成化合物の反応生成物を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
結合した蛍光ナノ粒子を形成するため、蛍光ナノ粒子の表面にリガンドをさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
蛍光ナノ粒子の表面にあるリガンドが共有結合により、又は物理的吸着により付着しているものである、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
蛍光ナノ粒子の表面にあるリガンドが、生体ポリマー、合成ポリマー、抗原、抗体、微生物、ウイルス、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学化合物、病原体、毒素、表面修飾因子、及びそれらの組合せから成る群から選択されるものである、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項6】
コアの上を被覆しているシリカの殻が、該コアの表面積の約10〜約100パーセントを覆っているものである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
蛍光ナノ粒子の表面上のリガンドが、該コアの表面積の約10〜約100パーセントを覆っているものである、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項8】
シリカの殻に対するコアの厚みが約1:1〜約1:100の比率である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項9】
ナノ粒子の直径が約1〜約1,000ナノメートルである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項10】
治療薬をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項11】
治療薬をさらに含む、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項12】
治療薬が、薬物、生体分子、表面修飾因子、及びそれらの組合せから成る群より選択されるものである、請求項10又は請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
治療薬が、ナノ粒子のシリカの殻中に吸着されているものである、請求項10又は請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項14】
治療薬がナノ粒子のシリカの殻の上に被覆されているものである、請求項10又は請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項15】
治療薬がナノ粒子のリガンドと結合しているものである、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項16】
蛍光ナノ粒子を製造する方法であって、
蛍光化合物と有機シラン化合物を混合して蛍光コアを形成する工程、及び、
その結果得られたコアをシリカ形成化合物と混合してコアの上にシリカの殻を形成し、蛍光ナノ粒子を得る工程、
を含む方法。
【請求項17】
結果的に得られたナノ粒子を、生体ポリマー、合成ポリマー、抗原、抗体、微生物、ウイルス、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学化合物、病原体、毒素、表面修飾因子、及びそれらの組合せから成る群から選択されるリガンドと結合させる工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
結果的に得られたナノ粒子を、薬物、生体分子、表面修飾因子、及びそれらの組合せから成る群から選択される治療薬と結合させる工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
結合工程が、リガンド又は治療薬をナノ粒子の表面に被覆させる工程を含むものである、請求項17又は請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
結合工程が、リガンド又は治療薬をナノ粒子の表面に吸収させる工程をさらに含むものである、請求項17又は請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
結合工程が、リガンド又は治療薬を結果的に得られたナノ粒子の表面に結合(bond)させる工程を含むものである、請求項17又は請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
細胞の細胞成分の動きを監視する方法であって、
細胞を、リガンドに結合した蛍光ナノ粒子(a ligated-fluorescent nanoparticle) と接触させて、リガンド結合した蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成し、蛍光部位を形成する工程、及び、
しばらくの間、該蛍光部位の動きを記録し、細胞成分の動きを監視する工程、
を含む方法。
【請求項23】
蛍光部位が細胞の成分に結合した一つ又は複数のリガンド結合蛍光ナノ粒子に対応するものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
蛍光部位が細胞の成分に結合した単一のリガンド結合蛍光ナノ粒子に対応するものである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
リガンド結合蛍光ナノ粒子が細胞の細胞成分と選択的に結合するように設計されているものである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
細胞成分が、受容体、抗体、ハプテン、酵素、ホルモン、生体ポリマー、抗原、微生物、ウイルス、病原体、毒素、及びそれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
リガンド結合蛍光ナノ粒子が、抗体と結合した蛍光ナノ粒子である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
抗体が免疫グロブリンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗体がIgEである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
記録する工程が顕微鏡に適合するカメラにより達成されるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
しばらくの間記録する工程が、約1マイクロ秒〜約30日である、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
しばらくの間記録する工程が約1秒〜約60分である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
接触させる工程及び記録する工程がインビトロで達成されるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
接触させる工程及び記録する工程がインビボで達成されるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載の蛍光ナノ粒子を含み、且つ、任意選択的にリガンドを含む、薬学的担体。
【請求項36】
請求項3に記載のリガンド結合蛍光ナノ粒子を含み、且つ、任意選択的に治療薬を含む、医薬組成物。
【請求項37】
請求項3に記載のリガンド結合蛍光ナノ粒子を含む、画像化剤。
【請求項38】
疾病又は障害を治療する方法であって、
治療が必要な患者に、任意選択的に治療薬を含むリガンド結合蛍光ナノ粒子の有効量を投与する工程であり、該ナノ粒子が疾病を引き起こす細胞成分と選択的に結び付いて該リガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成するように設計されているものである工程、及び、
該装飾細胞に照射して、疾病又は障害を治療する工程、
を含む方法。
【請求項39】
照射すると、該リガンド結合蛍光ナノ粒子が蛍光を発し、発熱するものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
リガンド結合蛍光ナノ粒子が蛍光ナノ粒子に結合した抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
疾病が癌腫瘍である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
疾病が蛍光、熱、又はその両方に感受性である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
疾病又は障害を治療する方法であって、
細胞を、リガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させて、リガンド結合蛍光ナノ粒子で選択的に装飾された細胞を形成する工程、及び、
その結果得られた装飾細胞をしばらくの間照射して、疾病又は障害を治療する工程、
を含む方法。
【請求項44】
検体の検出に使用するキットであって、リガンド結合蛍光ナノ粒子を含む包装物質を含むキット。
【請求項45】
細胞表層成分を検出及び監視するためのキットであって、細胞表層成分を検出するためのリガンド結合蛍光ナノ粒子を含む包装物質、及び任意選択的に細胞表面成分を監視するための記録計を含むキット。
【請求項46】
治療薬で細胞を治療する際に、細胞の細胞成分の移動又は位置変化を検出するための検定法であって、
細胞をリガンド結合蛍光ナノ粒子(このナノ粒子は治療薬を含む)と接触させてリガンド結合蛍光ナノ粒子を細胞成分に結合させる工程、及び、
蛍光シグナルを記録して、該成分の移動又は位置変化を検出する工程、
を含む方法。
【請求項47】
治療薬の存在下及び非存在下における、細胞成分とリガンド結合結合蛍光ナノ粒子の移動又は運動の差異を検出する工程をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
検体の存在を検出する方法であって、
検体を含んでいる可能性のある試料を、検体と結合するように設計されたリガンド結合蛍光ナノ粒子と接触させ、もし検体が存在すれば、リガンド結合蛍光ナノ粒子−検体複合体を形成させる工程、及び、
複合体を形成していないリガンド結合蛍光ナノ粒子を任意選択的に分離する工程、及び
リガンド結合蛍光ナノ粒子−検体複合体の蛍光シグナルを検出して、検体の存在を確定する工程、
を含む方法。
【請求項49】
リガンド結合蛍光ナノ粒子−検体が、
リガンドが細胞成分、生体ポリマー、合成ポリマー、抗原、抗体、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学化合物、病原体、毒素、及びそれらの組合せから成る群より選択される、リガンド結合蛍光ナノ粒子、及び、
微生物、ウイルス、細胞、細胞成分、生体ポリマー、合成ポリマー、抗原、抗体、受容体、ハプテン、酵素、ホルモン、化学化合物、病原体、毒素、及びそれらの組合せから成る群より選択される検体、
を含むものである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
蛍光ナノ粒子であって、
蛍光シラン化合物を含むコア、及び、
コア上の多孔性シリカの殻
を含む蛍光ナノ粒子。
【請求項51】
治療薬、リガンド、又はそれらの混合物を、蛍光ナノ粒子の表面にさらに含む、請求項50に記載のナノ粒子。
【請求項52】
リガンドを蛍光ナノ粒子の表面にさらに含む、請求項51に記載のナノ粒子。
【請求項53】
治療薬を蛍光ナノ粒子の表面にさらに含む、請求項51に記載のナノ粒子。
【請求項54】
蛍光ナノ粒子のコアに磁性成分をさらに含む、請求項51に記載のナノ粒子。
【請求項55】
コア上にシリカの殻を形成する前に、蛍光コアをテンプレート物質(templatingagent)で処理する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項56】
テンプレート物質が第四級アンモニウム塩である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
コア上にシリカの殻を形成した後にテンプレート物質を除去し、多孔性シリカ殻を得る工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
多孔性シリカ殻をリガンド、治療薬、又はそれらの混合物で処理する工程をさらに含む、請求項57に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図1】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−517985(P2006−517985A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566499(P2004−566499)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/037793
【国際公開番号】WO2004/063387
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(305053525)コーネル リサーチ ファウンデーション,インコーポレーティッド (5)
【出願人】(305059413)
【氏名又は名称原語表記】WIESNER,Ulrich,B.
【出願人】(305055817)
【氏名又は名称原語表記】OW,Hooisweng
【Fターム(参考)】