説明

シリカ系フォトルミネセンスセンサーおよび使用方法

センサー粒子は、シリカ系コアおよび少なくとも一つのフォトルミネセンス色素を含む。前記シリカ系コアは、複数の細孔を含んでもよく、前記少なくとも一つのフォトルミネセンス色素は、その環境および検体に対して感受性を持たない基準色素、および、環境および検体のどちらか、またはその両方に対して感受性を持つセンサー色素を含んでもよい。センサー粒子は、生物系または非生物系における未知の環境状態または検体を、インビトロまたはインビボで認識するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系(silica-based)粒子、より詳細には、センサー物質として使用するのに適応したフォトルミネセンス分子を含むシリカ系粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
生命およびその過程を視像化し理解を深めるための、高解像度、リアルタイム、分子レベル分析へ向けて、フォトルミネセンス画像法の基礎となる技術が、近年大きな進歩を遂げている。フォトルミネセンスによるアッセイの長所は、その優れたコントラスト、高度の特異性、および高速反応時間にある。
【0003】
フォトルミネセンス色素の大部分は、その周辺環境に対しては感受性を持たないように設計されているけれども、ここへきて、化学的検体または環境刺激に対して特異的親和性および反応性を持つ、種々の色素が合成されている。例えば、あるタイプのフォトルミネセンス色素は、化学的検体または環境刺激に対して反応するセンサーとして、溶液において遊離状態で使用されている。
【0004】
多くの場合、感受性を持つフォトルミネセンス化合物と、感受性を持たないフォトルミネセンス化合物の両方が溶液において区別なく使用されるが、ある場合には、これらの化合物は、感受性プラットフォーム、例えば、光ファイバー、薄層フィルムおよび膜の中に組み込まれる。感受性プラットフォームの組成、およびフォトルミネセンス色素の特性が、調査対象である未知の状態のタイプの決定に加えて、色素の性質、その感受性に対しても影響を及ぼすと考えられる。
【0005】
フォトルミネセンス色素の変動し易い性質を最適化し、様々な環境において未知の状態を検出することを可能とする、環境センサーまたは検体センサーが求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、種々の環境状態(environmental condition)および検体を検出するための改良型センサー粒子に関する。本発明はまた、検出用途における、これらの粒子の使用方法に関する。
【0007】
簡単に言うと、本発明のセンサー粒子は、コアと、少なくとも一つのフォトルミネセンス色素を含む。
【0008】
ある実施態様では、前記コアはシリカ系ナノ粒子であり、前記少なくとも一つのフォトルミネセンス色素は、基準色素(reference dye)およびセンサーを含み、それらの内の少なくとも一方は、コアに共有的に結合されていてもよい。基準色素は、コアの内部に配されていてもよく、また、センサー色素は、コアの表面の少なくとも一部の上に配されていてもよい。あるいは、基準色素およびセンサー色素は、コアの上に、またはコアを覆って配されてもよい。さらに、シリカ系粒子は、コアを覆うシリカ系シェルを含んでもよく、ここで、基準色素はコア内部に配され、シリカ系シェルは、基準色素とセンサー色素の間に挟持されてもよい。別の実施態様では、基準色素およびセンサー色素の内の一方が、センサー粒子当たり、約1.0から約1000.0色素分子を含み、基準色素およびセンサー色素は、単一または複数波長励起光源に応答してフォトンを放射する。適切な励起に対する基準色素およびセンサー色素のピーク放射の波長は、通常、それら放射ピークを個別に識別することが可能なほどの十分なギャップによって隔てられる。
【0009】
さらに別の実施態様では、コアは複数の細孔を含み、少なくともその内の一つは、約0.1 nm〜100.0 nm、さらに詳細には約2.0 nm〜約50.0 nmの直径を有する。このシリカ系粒子の直径は、約1.0 nm〜約250.0 nmであってもよい。
【0010】
本発明の方法は、未知の環境状態または検体を検出するためにこのセンサー粒子を使用することを含む。
【0011】
一つの実施態様では、前記方法は、二つ以上のフォトルミネセンス色素を含む少なくとも一つのシリカ系粒子を準備する工程、前記少なくとも一つのシリカ系粒子を、未知の状態または検体を含む環境の中に導入する工程、前記少なくとも一つのシリカ系粒子を励起フォトンに暴露し、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素のそれぞれからフォトンを放射させる工程、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素によって放射されたフォトンを記録する工程、および、これらのデータから前記未知の状態または検体を判定する工程を含む。この方法はさらに、未知の環境状態または検体の存在下にフォトンによって二つ以上のフォトルミネセンス色素を励起し、得られた前記二つ以上のフォトルミネセンス色素の放射波を、既知の環境状態または検体の存在下で比較することを含んでもよい。これらの状況下で、既知の環境状態または検体の存在下に得られた放射を用いて比較データが生成され、これが、前記既知の状態または検体に関連づけられる。したがって、判定工程は、比較データを使用して、未知の状態または検体を判定することを含んでもよい。判定工程はまた、複数のセンサー色素の同時測定(interrogation)を含んでもよく、それらの放射ピークを互いに分離して、複数の未知の状態または検体の品質を解明される。
【0012】
もう一つの実施態様では、生物体における未知の状態を判定する方法は、フォトンを放射するセンサー色素を含むシリカ系ナノ粒子を準備する工程、前記シリカ系ナノ粒子を生物体の内部に挿入する工程、前記センサー色素をフォトンによって励起する工程、センサー色素のフォトルミネセンス放射を検出する工程、および、前記生物体の前記未知の状態を判定する工程を含む。センサー色素は、赤外波長、または近赤外波長においてフォトンを放射してもよい。シリカ系ナノ粒子は、生物体の細胞、組織、血液、またはその他の体液の中に配されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここに請求される本発明のいくつかの実施態様が、付属の図面によって示される。これらの図は、必ずしも実尺に合致しないこと、および、本発明の理解にとって必要でなく、かつ、他の詳細の理解を困難にする詳細は省略されている可能性のあることを理解しなければならない。当然のことながら、本発明は、ここに図示される特定の実施態様に必ずしも限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0014】
本発明のシリカ系粒子は、典型的にはナノ粒子であり、シリカ系コアと二つ以上のフォトルミネセンス色素を含む。本明細書で用いるコアという用語は、中心部分または基本部分を意味する。シリカ系マトリクスを形成するために使用されるシリカは、一般式R4-nSiXnを含んでもよい。前式において、Xは、加水分解可能な基、例えば、エトキシ、メトキシ、または2-メトキシ-エトキシ基であり得、Rは、有機化合物基(例えば、メチルまたはエチル)であり得、nは1から4の整数である。前記二つ以上のフォトルミネセンス色素は、基準色素およびセンサー色素を含む。本明細書で用いる基準色素という用語は、その環境、および/または、その環境内に存在するいかなる検体に対して実質的に感受性を持たないか、あるいは、種々の環境において励起フォトンに暴露されても実質的に同じフォトン放射しか示さない色素を意味する。センサー色素という用語は、その環境および/または検体に対して感受性または反応性を持つか、あるいは、種々の環境または検体においてフォトンに暴露されると種々の異なるフォトン放射を示す任意の色素を意味する。ある実施態様では、基準色素およびセンサー色素は、シリカ系マトリクスに共有的に結合していてもよい。別の実施態様では、色素は、共有結合無しに物理的捕捉を通じてシリカ系マトリクスの中に組み込まれてもよいし、あるいは、マトリクスの表面に吸着されてもよい。
【0015】
一つの実施態様では、基準色素およびセンサー色素をシリカ系マトリクスに連結することによって、色素の輝度が増強され、光褪色が妨げられる(すなわち、色素がより明るい状態でより長く持続する)。これらの実施態様では、本発明のシリカ系粒子は、例えば、フォトルミネセンス相関分光光度計によって測定した場合、溶液の中で遊離した色素に比べ、強調された輝度レベルを示す。
【0016】
もう一つの実施態様では、シリカ系マトリクスは、流体または検体が、シリカ系マトリクスに浸透し、その中に配されるセンサー色素と直接相互作用をもつことが可能となるように、細孔または裂目を有する。このようにすると、検出性能は増強される。細孔は通常、約0.1ナノメートルから100.0ナノメートルの直径を有する。細孔のサイズは、約2.0ナノメートルから約50.0ナノメートル以上の範囲に亘る不均一な分布を示してもよい。
【0017】
もう一つの実施態様では、シリカ系マトリクスを使用することによって、単一の励起波長によって二つ以上の色素を励起することが可能になる。識別可能な放射ピークを示す基準色素およびセンサー色素では、粒子当たりの各色素の分子数を変えることによって、通常は複数の励起波長を必要とする色素の組み合わせを、単一の励起波長に対して応答するようにすることが可能となる。例えば、放射のために、基準色素が、センサー色素よりも長い励起波長を必要とする場合、基準色素の相対的吸収度を増すために、シリカ系マトリクスに対しさらなる基準色素分子を連結し、そうすることによって、二つの色素が、同じ励起波長に対し測定可能な反応を呈するようにすることが可能である。シリカ系マトリクスは、粒子当たり、約1.0から約1000.0色素分子を含んでもよいが、典型的には2.0から100.0色素分子である。
【0018】
さらに別の実施態様では、シリカ系マトリクスは、1種以上の環境状態または検体を検出するために、1種を超えるセンサー色素を含んでもよい。組み込まれた複数の色素の放射波長が、個々の放射ピークを識別することができるほど十分に離れていると想定すれば、分離的信号検出用途のために、約1から約7種、より詳細には約2から約5種のそれぞれ異なるセンサー色素をシリカ系マトリクスと連結させてもよい。
【0019】
本発明のシリカ系粒子はさらに添加物を含んでもよい。超常磁性材料のコア、例えば、ナノサイズの酸化鉄、または、その他の磁性合金または酸化物、および/または、多数の官能基の内の1種以上を、様々の目的のために粒子表面に配置されてもよい。例えば、粒子は、病状または病態を特定および治療するために、抗体または治療剤に接合させることも可能である。治療剤は、シリカ系マトリクスの細孔の中に吸収させてもよいし、粒子の表面にコートしてもよい。
【0020】
最終的なシリカ系粒子の表面には、各種表面修飾剤、例えば、アミン、抗体、微生物、ウィルス、酵素、受容体、ハプテン、ホルモン、またはそれらの組み合わせを含む修飾剤によって官能化されてもよい。アミン基、例えば、アミノプロピル基およびメチルアミノプロピル基を用いることによって、陽性の表面電荷が形成されるが、これは、細胞表面の陰性電荷の方に引きつけられる。アルキル基、例えば、メチルまたはドデシル鎖を用いることによって、非荷電表面が形成されるが、これは、粒子が、疎水性環境−例えば、細胞膜内に存在することを可能とする。さらに、各種分子と反応する、シリカ接合官能基の利用が可能である。例えば、ポリマー:ポリエチレングリコール(PEG)、粒子表面に他の成分、例えば、ペプチド、DNA、抗体、およびアビジン/ストレプトアビジンを付着させるのに使用される架橋剤および他の表面修飾因子、例えば、カルボン酸、エステル、またはビオチンを利用することができる。表面修飾剤は、いくつかの検体に対して選択的に透過性を持つ、粒子を囲む層を含んでもよい。層は、センサー色素と環境の間に介在する。
【0021】
さらに、適切な表面修飾剤によって粒子の表面を官能化することによって多様な標的環境において粒子を用いることが可能になる。例えば、疎水性コーティングを付加することによって、疎水性環境における粒子の分散が可能とされる。この線にそって、適切な表面修飾剤を選択することによって、所望の相互作用をもたらすこと(特定の所望の相互作用の起こる確率の相対的増加と定義される)が可能である。例としては、細胞表面の抗原に対してある親和度を持つ少なくとも一つの抗体を用いて粒子表面を官能化すること、および/または、ビオチン、および、標的環境におけるビオチンと優先的に相互作用を持つアビジン/ストレプトアビジンを含むコーティングの使用が挙げられる。
【0022】
前述したように、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素は、基準色素とセンサー色素と含んでもよい。基準色素とセンサー色素のピーク放射波長は、通常は同じ波長の励起に対してそれぞれのピークを個別に識別するのに十分な波長ギャップによって隔てられる。
【0023】
基準色素は典型的には、シリカ系粒子の内部、通常、そのコアの中に隔絶される。基準色素は、その環境および検体に対し実質的に感受性を持たないが、基準色素を粒子内部に隔絶することは、若干の感受性がある程度存在したとしても、標的環境または検体との相互作用を回避するための予防策として役立つ。好適な基準色素としては、下記が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
【表1】

【0025】
いわゆるMegaStokes(商標)色素は、ここでは、励起波長と放射波長との間に約30.0 nm から約200.0 nmの差を示す色素と定義される。
【0026】
センサー色素は、環境および/または、存在するのであれば、検体との相互作用を増強するために、シリカ系粒子の表面に、または表面近傍に設置される。このように構成されると、センサー色素が、研究中の環境状態または検体と接触する確率が高まる。センサー色素の放射は、環境または検体刺激に依存する。環境のpHに応じて、pHセンサー色素は、例えば、プロトンの加算または減算によるセンサー色素の電子状態の変化に基づいて様々な発光スペクトラムを呈する。金属イオンの存在は、センサー色素の反応を抑えることによって発光の減少をもたらし得る。
【0027】
下記の表は、いくつかの好適なセンサー色素と、それらの環境または検体感度を掲げるリストであるが、網羅的なものではない。
【0028】
【表2】



【0029】
センサー色素として、いわゆるケージ化色素(caged dye)を用いてもよい。ケージ化色素は、そのフォトルミネセンス状態が環境によって活性化される、一群のフォトルミネセンス色素である。言い換えると、ケージ化色素は、非フォトルミネセンス状態で動作環境に入り、該色素の化学構造を改変する外部事象によってスイッチ「オン」される。ケージ化色素は、通常、主体の接合リング構造に対する、特定の基の共有的付着を含む。この共有的付着が環境刺激によって切断されると活性化が起こると考えられる。例えば、レゾルフィン(7-ヒドロキシ-3H-フノキサジン-3-オン)は、切断可能なエーテル付着を利用する、1群のケージ化色素の基幹色素である。
【0030】
前記色素は、シリカ系マトリクスの中に種々の形態で組み込むことが可能である。ここで図1A、1B、1C、および1Dを参照すると、本発明のシリカ系粒子の、様々な構造が示される。図1Aに見られるように、このシリカ系粒子は、シリカ系マトリクスと基準色素を含む内部コア10、シリカ系の中間シェル12、および、センサー色素を含む外部シェル14を含む。この実施態様では、シリカ系中間シェルは、基準色素とセンサー色素の間に挟持される。このシリカ系中間シェルは、フォトルミネセンス色素の存在なしでシリカ系材料のみを含むか、または、最小限のフォトルミネセンス色素(例えば、5重量%未満)の存在下にシリカ系材料を含んでもよい。図1Bに見られるように、このシリカ系粒子は、シリカ系マトリクスと基準色素を含む内部コア10と、センサー色素を含む外部シェル14とを含む。図1Cに見られるように、このシリカ系粒子は、シリカ系マトリクスを含む内部コア10、基準色素を含む第1シェル16、および、第1シェルを覆い、かつ、センサー色素を含む第2シェル14を含む。図1Dに見られるように、このシリカ系粒子は、シリカ系マトリクスを含む内部コア10、基準色素を含む第1シェル16、第1シェルを覆い、かつ、もう一つのシリカ系マトリクスを含む中間シェル12、これらの内部シェルを覆い、かつ、センサー色素を含む外部シェル14を含む。これらの実施態様において、コアの直径は、約2.0ナノメートルから数十ミクロンであってもよいが、典型的には約25.0ナノメートルから200.0ナノメートルである。第1およびそれに続くシェルの厚みは、約1.0ナノメートルから約400.0ナノメートルであってもよいが、典型的には約10.0ナノメートルから約50.0ナノメートルである。第1およびそれに続くシェルは、粒子の表面積の約10.0パーセントから約100.0パーセントを覆ってもよい。従って、粒子のサイズは、約10.0 nmから約数十ミクロンであってよく、さらに詳細には約10.0 nmから約1.0ミクロンであってもよい。
【0031】
本発明のシリカ系粒子を合成するにはいくつかの方法がある。前記粒子は、例えば、ゾル-ゲル法を用いて形成してもよい。ゾル-ゲル化学によって、穏やかな条件下で、例えば、室温で、有毒な薬品を用いることなくシリカ系粒子を合成することが可能である。それとは別に、粒子合成のための反応器として逆転ミセルを用いてもよい。逆転ミセルとは、疎水性溶媒における極性水相であって、両親媒性界面活性分子によって介在される水相の安定な縣濁体である。
【0032】
Stoeberのゾル-ゲル工程は、通常、基準色素およびセンサー色素に対する共有結合を含むシリカ系粒子をもたらす。一般に、本発明のシリカ系粒子は、Stoeberゾル-ゲル工程を用い、反応性基準色素を共反応性有機シラン化合物と混合して、反応性フォトルミネセンス有機シラン化合物を形成し、これらを共縮合してコアを形成し、次いで、コア粒子をセンサー色素および追加の共反応性有機/アルコキシ・シランと混合することによって、該コアにセンサー色素を接合することによって調製される。
【0033】
しかしながら、ゾル-ゲル工程は、粒子の所望の構造に応じて変更することが可能である。前述したように、本発明のシリカ系粒子は、下記を含む様々な形態を示してよい。すなわち、シリカ系マトリクスおよび基準色素を含む内部コアおよびセンサー色素を含む外部シェルを含む形態(図1Aおよび1B)、および、シリカ系マトリクスを含む内部コア、基準色素を含む第1シェル、および、第1シェルを覆い、かつセンサー色素を含む外部シェルを含む形態(図1Cおよび1D)である。
【0034】
図1Aのシリカ系粒子の調製は、コアの合成、それに続くシリカの中間シェルの成長、および、センサー色素リッチなシリカシェルの形成を含む。コアの合成は、通常三つの工程を経て行われる。先ず、不活性ガス雰囲気において、シラン化合物が、脱気したエタノールにおいて約50:1のシラン対基準色素のモル比で基準色素に結合されてフォトルミネセンス化合物を形成する。次に、この産物−基準色素接合体−を、周囲条件下に、活発に攪拌しながらアンモニアと水の絶対エタノール溶液に加える。次に、テトラエトキシシランのようなシリカ前駆体を素早く加え、それぞれ、1.7 x 10-5M, 0.05M, 0.2M 0.855Mの濃度において基準色素接合体、シリカ前駆体、アンモニア、および水から成る最終反応液を生成する。この反応は約12-18時間進行し、約5.0ナノメートルの直径を持つ、色素リッチなケイ酸塩コアを生産する。この溶液に対し、さらに追加のシリカ前駆体を、1分当たり約5.55 x 10-6Mの量でゆっくり加えシリカシェルを成長させ、それぞれ、1.7 x 10-5M, 1.055M, 0.5M 0.855Mの基準色素接合体、シリカ前駆体、アンモニア、および水から成る最終反応条件を実現する。
【0035】
センサー色素と接合するコア/シェル粒子を調製するには、粒子を、一度エタノールに対し約24時間透析する。次に、センサー色素の結合反応の際に粒子の凝集を避けるため、この透析液を希釈する。センサー色素を、基準色素について上に記載したものと同じやり方でシランに接合してセンサー色素接合体を形成する。ただし、この場合、官能化の際に粒子の過剰なアミノ化を避けるため、モル比ははるかに低くなる(すなわち、シラン対センサー色素のモル比は2:1となる)。これは、粒子の凝集を避ける、および、表面のアミンがセンサー色素の検出能力を抑制するのを防止するのに役立つという二つの目的に適う。その後、センサー色素接合体を、シリカ前駆体のエタノール溶液と、センサー色素接合体対シリカ前駆体のモル比が約1.2 x 10-5Mから約0.0125Mにおいて混ぜ合わせる。この混合液を、コア/シェル粒子の透析液に滴下する。溶液を反応させた後、該液を絶対エタノールに対して透析する。この状態で、液を、少なくとも7ヶ月凝集させることなく安定に維持する。最終的粒子は、図2Aにその走査電子顕微鏡像を示すが、直径が約40.0ナノメートルである。
【0036】
ゾル-ゲル工程で製造された粒子では、コアのサイズのみならず、粒子のサイズも変えることが可能である。次に図1Bに示す粒子構造をもたらす合成法を述べる。上述のように、シリカおよび基準色素接合体は、2.13 x 10-5M基準色素接合体、0.2Mシリカ前駆体、0.625Mアンモニア、および1.45M水の濃度でエタノール中で共縮合されて、直径約55.0ナノメートルのコア粒子の均一分散液を生成する。この混合液に、センサー色素接合体および追加のシリカ前駆体が滴下されて、2.13 x 10-5M基準色素接合体、2.13 x 10-5Mセンサー色素接合体、0.254Mシリカ前駆体、0.625Mアンモニア、および1.45M水から成る最終的反応条件を生成する。次に、コアと、センサー色素含有外部シェルとの間に、シリカの中間シェルを欠くこの粒子を遠心し、エタノールに二度、水に二度再縣濁して、過剰な試薬を除去する。図2Bに示すように、最終的粒子は、サイズが約60.0から80.0ナノメートルであり、比較的大型の基準色素リッチなコアと、センサー色素リッチなシェルとを含む。
【0037】
図1Cに示すシリカ粒子の構造を調製するには、前記の工程に若干の改変が必要である。0.17M対1.0M対2.5Mの比を持つシリカ前駆体、アンモニア、および水を、周囲条件下で活発に攪拌しながら絶対エタノール中で合わせる。溶液の反応後、反応産物を遠心によって収集し、超音波処理によって水およびエタノールに再縣濁させる。次に、シリカから成る種粒子を、水およびアンモニアと共に絶対エタノールに再縣濁し、次いで、シリカ前駆体、基準接合体、およびエタノールをあらかじめ混ぜ合わせて成る溶液を滴下し、それぞれ、1.16M, 0.027M, 0.2M, および2.0Mの基準接合体、シリカ前駆体、アンモニア、および水から成る最終的反応条件を生成する。12-18時間の反応後、粒子を遠心し、絶対エタノールおよび脱イオン水によって繰り返し洗浄する。不活性雰囲気下にエタノール中で合成されたセンサー色素接合体、および、50.0対1.0モル比の有機シラン対センサー色素を用い、同様の合成法を用いこれらの粒子の上にセンサー色素シェルを形成する。最終粒子は、図2Cに示すように、サイズが約200.0ナノメートルであり、シリカリッチなコア、該コアを包むセンサー色素リッチな第2シェル、第2シェルを包む基準色素リッチな第1シェルを含む。図1Dに示す第4粒子構造では、基準色素層と、センサー色素層の間にシリカ中間シェルが導入される。導入は、第1シェルの上に純粋なシリカ前駆体を縮合するによって行われ、これによって、カプセル封入された基準色素の保護がさらに確保される。
【0038】
適切な接合化学を欠く色素を取り込むために逆転ミセルを用いて、本発明のシリカ系粒子を調製するには、微小粒子合成プロトコールに従う。基準色素を含むシリカ系種粒子を先ずStoeberゾル-ゲル工程を用いて合成する。これらの種粒子を、透析、または遠心および洗浄を通じて、エタノールから水性環境に移す。十分な表面コーティングに必要な反応濃度を、表面上の利用可能なシラノール基の数に基づいて計算する。この数は、粒子サイズのほか、濃度にも依存する。粒子と、任意のデキストラン結合色素、または親水性色素を、水溶液として、シクロヘキサン中に形成された逆転微小乳剤に、必要に合わせて、荷電性または非荷電性の両親媒性界面活性剤の存在下に、界面活性補因子の存在下または不在下に加える。シリカ前駆体の縮合を触媒するために、最後の添加物としてアンモニア濃縮液を加える。一つの好適な界面活性剤/界面活性補因子の組み合わせは、Triton X-100(商標)およびn-ヘキサノールである。
【0039】
遊離の色素分子またはデキストラン結合色素の存在下に、厚さ約2.0から約10.0ナノメートルのコーティングを、粒子表面に効果的に付着させてもよい。色素は、シリカ系マトリクスが形成される際、該マトリクスに捕捉され、そのため、該マトリクスは、センサー色素分子を封入し、粒子型センサーを形成する。言い換えると、フォトルミネセンス色素は、シリカ系マトリクスに共有的に結合するのではなく、通常、シリカ系マトリクスの中に物理的に捕捉、または封入される。反応pHおよびシリカ前駆体濃度を調整することにより、検体が捕捉された色素分子と接触することが可能となるように、シリカマトリクスの多孔性を、与えられた条件に合わせて調整することが可能である。
【0040】
本発明のシリカ系粒子が合成されたならば、それらを、生物系および非生物系のいずれにおいても検出のために使用してよい。いくつかの検出技術、例えば、比率計測検出法、スペクトラムシフト検出法、および寿命検出法(lifetime sesnsing)を含む方法が可能である。
【0041】
環境状態ばかりでなく、生物系および非生物系における特定の検体の有無および濃度を探索することが可能である。このシリカ系粒子は、細胞、細胞膜、組織、前核細胞系(例えば、大腸菌バイオフイルム)、溶液、反応系、および、川や湖のような水塊の中に導入されてもよい。シリカ系粒子を細胞内に導入するためにはいくつかの方法、例えば、市販される脂質小胞による方法、マイクロインジェクション、および抗体特異的取り込み(その際、細胞表面の受容体が、粒子の細胞内取り込みを仲介する)を含む方法が存在する。食作用細胞およびある種のエンドサイトーシス細胞では、取り込みは自然に起こる。粒子の呈する輝度レベルに基づいて、有利なことに、本発明のシリカ系粒子の僅かに1個を標的環境の中に組み込むだけで測定を実行することが可能である。しかしながら、複数のシリカ系粒子を用いてもよい。
【0042】
未知の環境に、複数のクラスの検体特異的センサーを導入することによって、多重測定を実現することが可能である。多重化によって、複数のフォトルミネセンス分子の同時的探査が可能となり、それら分子の放射ピークを分離することによって、複数の検体の状態が識別される。この方法は、刺激(例えば、新規治療薬)の細胞機能に対する作用の高処理分析に好適と考えられる。
【0043】
前記シリカ系粒子は、様々な生物体、動物細胞または体液、例えば、ヒトの細胞、または、血液または血清のような体液においてセンサーとして用いられてもよい。細胞または流体は、体外で採取して試験してもよい。あるいは、全身画像装置が、体内の色素を励起して、放射光を測定してもよい。インビトロ検出は、通常、可視スペクトラムのフォトルミネセンス色素を含むセンサーに依存する。インビボ試験の場合、センサーは、特定領域の局所に注入されてもよいし、あるいは、ある種の細胞表面受容体と優先的に相互作用を示す抗体によって官能化されてもよい。インビボ試験に使用されるセンサー色素は、通常、赤外または近赤外放射波長を示す。
【0044】
検出される環境状態または検体も変動してよい。環境状態、例えば、pHレベルおよび疎水性または親水性状態を判定してもよい。イオン、例えば、カリウム、リン酸、ナトリウム、カルシウム、銅、マグネシウム、クロム、塩化物、フッ化物および鉄、重金属、例えば、カドミウム、亜鉛、鉛、セレン、水銀、ニッケル等のイオンの外、生体分子物質、例えば、ビタミン類、アミノ酸類の存在または濃度を評価してもよい。
【0045】
さらに、本発明のシリカ系粒子によるインビトロおよびインビボ試験は、生物体の体内の細胞のレドックス状態を確かめるために好適に使用することが可能である。細胞のレドックス状態は、細胞の酸化還元ポテンシャル(すなわち、細胞が電子を失う能力(酸化)、対、細胞が電子を獲得する能力(還元))を記述する。細胞が依存するエネルギーは、主に、酸素に対する有機分子の酸化によって放出されるエネルギーから得られるが、これは、細胞内に全体として還元性の環境を形成するが、この環境は注意深く調節される。正常な酸化/還元バランスに対して内外からのもたらされる攻撃−レドックスストレス−は、否定的な細胞事象、特に、発癌性を示すことが明らかにされているが、例えば、癌や発作のような、病気または傷害状態において重要である可能性がある。
【0046】
以上の未知の状態または検体は、様々の検出法を用いて調査してよい。
【0047】
本明細書で用いる比率計測検出法は、未知の環境状態を、既知の環境状態について確立され、かつ、該既知状態に対応する比率に基づいて判定することを意味する。二つ以上のフォトルミネセンス色素の、主要の放射ピーク強度が、既知の環境状態または検体状態において計測される。この二つの色素(センサー色素/基準色素)におけるピーク放射の比率を計算することによって較正が行われる。すなわち、この比率は、既知の状態に対応する。この較正は、未知の状態において、同じ基準色素およびセンサー色素を含む粒子の励起および放射強度を測定することによって、該未知の状態を判定するための基準となる。
【0048】
スペクトラムシフトによる測定も、同じ原理の下で作用する。未知の環境状態または検体の状態が、既知の状態で励起された基準色素およびセンサー色素によって示される最大放射波長に基づいて作製された較正曲線を用いて調べられる。しかしながら、ピーク放射強度の比率に依存するのではなく、依存する変数として、基準色素およびセンサー色素の最大ピーク波長(λmax)の差を用いる。
【0049】
寿命による検出法は、二つ以上のフォトルミネセンス色素の励起状態寿命を測定する。これらの色素の内の一つは、その寿命が、環境に対して感度を持たないことが知られており、かつ、それらの色素の内の少なくとも一つは、その寿命が、特定の環境状態または検体に依存する。蛍光寿命(τ)は、フォトルミネセンス色素が、最初にフォトンを吸収してからフォトンを放射するまで励起状態で過ごした時間の長さであり、多くの場合、10 psから数ナノ秒の範囲を持つ。複数の検体濃度において蛍光寿命を測定することによって較正を実行し、これを、その後の濃度定量の基準としてもよい。
【0050】
検出法の基礎値を定めるために、先ず、1個以上の粒子を、既知の状態を持つ環境の中に導入する。次に、これらの粒子は、複数フォトンの光源の、1種以上の選ばれた波長によって励起され、通常、粒子の中の基準色素およびセンサー色素の吸収プロフィールに応じて適宜、約250.0 nmから約800.0 nmの励起波長を示す。複数フォトン励起はレーザーを利用する(多くの場合、Ti-サファイア)。レーザーは、各種放射波長に合わせることが可能である。長波長(700.0 nmから>1500.0 nm)フォトンは、組織または媒体によっては簡単に吸収されないが、きわめて高いフォトンフラックスにおいて(すなわち、ビームの焦点において)色素分子の中に複数フォトン励起を誘発する。通常、基準色素は、放射において比較的定常な波長と強度を示す一方、センサー色素は、環境刺激、または、ある検体の存在または濃度に対応する放射を示す。
【0051】
したがって、特定レベルにおいて基準色素およびセンサー色素のそれぞれを励起した後、フォトン放射を測定してよい。測定は、分光光度計または蛍光顕微鏡を用いて実行してよい。フォトルミネセンス寿命は、パルス型レーザー光源および、ゲート付き検出器を用いて測定される。この検出器は、放射を、放射後の時間の関数として測定する。フォトルミネセンス放射は、励起ビームに対して90度に置かれる石英またはプラスチックキュベットにおいて収集され、光増倍管またはアバランシェフォトダイオードにおいてフォトンカウントが放射波長の関数として表される。フォトルミネセンス顕微鏡では、様々の既知の状態に置かれたセンサーを含む、細胞を含まない個別サンプルの画像が採取される。基準色素およびセンサー色素のフォトン放射を測定した後、放射比(γ=Iセンサー/I基準)、スペクトラムシフト、またはフォトルミネセンス寿命を、既知の環境状態に対してプロットし、較正曲線を定める。すなわち、既知の環境状態または検体の存在下に得られた放射を用いて、該既知状態と相関する比較データを生成する。例えば、較正曲線は、既知の環境状態と対応する比の範囲を示す(例えば、一つの実施態様では、約0.5から約0.8の比が、6と7の間のpHに対応すると考えられる)。
【0052】
比較データが作製された後で、未知の環境状態、または検体の存在または濃度を確かめるためにそのデータを用いてもよい。粒子からの放射を、未知の状態または検体の存在下に記録し、そのデータを、既知の状態について定められた比較データと比較することによって前記未知の状態を判定するために使用する。
【0053】
本発明のシリカ系粒子は、他の様々の用途、例えば、名称「シリカ系蛍光粒子」なる、同じ発明者による、係属中の米国出願第10/306,614号に開示されるものと同じ用途に使用することが可能である。前記特許出願に開示される全ての使用を、参照することにより本明細書に含める。
【実施例】
【0054】
下記の実施例は、例示を意図するものであって、いかなる意味でも本発明を限定することを意図するものではない。これらの実施例は、いかなる意味でも、本発明、またはその保護を限定することを意図するものではない。
【0055】
〔実施例1〕
[pH計測]
図1Cに示す構造に基づく、基準色素およびセンサー色素を含む、200.0ナノメートルシリカ系粒子を、環境pHを検知するための比率計測センサーとして使用するために合成した。
【0056】
合成
不活性ガス雰囲気下において、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン(APTS−Sigma Aldrich Chem. Corp)を、脱気エタノールにおいて、基準色素テトラメチルローダミン(TRITC)に対しAPTS:TRITC=50:1のモル比で結合させて、TRITC-接合体を形成した。このTRITC接合体を、周囲雰囲気において、アンモニアと水の絶対エタノール溶液(2.0Mエタノール、Sigma Aldrich Chem. Corp.)に加え、これに、シリカ前駆体テトラエトキシシラン(TEOS−99%、Sigma Aldrich Chem. Corp.)を素早く加え、それぞれ、1.7 x 1-5 M, 0.17M, 1.0Mおよび2.5Mの[TRITC-接合体]、[TEOS]、[NH3]、および[H2O]から成る最終反応液を生成する。この反応を12-18時間進行させ、濁った産物を遠心で収集し、超音波によって水とエタノールにおいて再縣濁した。
【0057】
粒子を、適当な水とNH3濃度を持つ絶対エタノールにおいて0.787 mg/mlとなるように再縣濁し、TEOS、TRITC-接合体、およびエタノールをあらかじめ混ぜ合わせた混合液を滴下し(7.5 x 10-7 MTEOS/分)、それぞれ、1.16 mM, 0.27M, 0.2Mおよび2.0Mの[TRITC-接合体]、[TEOS]、[NH3]、および[H2O]から成る最終反応状態を生成した。12-18時間の反応後、粒子を遠心し、絶対エタノールおよび脱イオン水で繰り返し洗浄した。
【0058】
不活性化雰囲気で合成されたFITCを、4.25 mM FITCにおいて、かつ、APTS対FITCが50:1のモル比で用い、同様の合成法を実行して、これらの粒子の上にフルオレセイン(FITC)シェルを形成した。次に、この接合体を、同様の条件下に、前述のように調製したTRITC接合体混合物に、0.787 mg/mlの粒子密度を実現するために、それぞれ、0.4 mM, 0.029 mM, 0.2Mおよび2.0Mの[FITC-接合体]、[TEOS]、[NH3]、および[H2O]の最終濃度となるように加えた。粒子は、サイズが約200.0ナノメートルであり(図2C)、比較的大きな基準色素リッチなコアと、センサー色素リッチなシェルを含んでいた。
【0059】
較正
粒子を、脱イオン水から、pH5および9の間のリン酸ナトリウムバッファーに、3:20(容量/容量)希釈度において希釈した。次に、単一フォトン光源を導入することによってこの粒子を励起した。すなわち、540.0 nmでテトラメチルローダミンを、490.0 nmでフルオレセインを励起した。放射波長を、分光光度計(Photon Technologiesの国際分光光度計による)によって測定した。最大ピークを図3に示す。比較的大きな波長ピークはセンサーのフルオレセイン色素に対応し、一方、比較的小さいピークは、参照となるテトラメチルローダミン色素に対応する。次に、放射波長のピーク最大値の比(γ=IFITC/ITRITC)をpHに対してプロットし、図4に示す較正曲線を得た。この較正曲線は、各組の試験粒子について5-9のpH範囲において較正直線を与える。
【0060】
検出
前述のように調製したシリカ系粒子が未知のpHを持つ溶液に導入される。これらの粒子は、較正時と同じ励起波長を用い、同じ単一フォトン光源によって励起される。次に、放射波長のピーク最大値の比(γ=IFITC/ITRITC)が計算され、図4の較正曲線と比較される。このようにして溶液のpHが求められてもよい。
【0061】
当業者には、本明細書に記載される内容について、その変法、改良、およびその他の実行法が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく思い浮かぶことであろう。したがって、本発明は、いかなる意味でも前記例示的説明によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】図1Aは、本発明のシリカ系粒子の一実施態様の、一部断面を含む斜視図である。
【図1B】図1Bは、本発明のシリカ系粒子の、もう一つの実施態様の、一部断面を含む斜視図である。
【図1C】図1Cは、本発明のシリカ系粒子の、さらにもう一つの実施態様の、一部断面を含む斜視図である。
【図1D】図1Dは、本発明のシリカ系粒子の、さらにもう一つの実施態様の、一部断面を含む斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1Aのシリカ系粒子の走査電子顕微鏡画像である。
【図2B】図2Bは、図1Bのシリカ系粒子の走査電子顕微鏡画像である。
【図2C】図2Cは、図1Cのシリカ系粒子の走査電子顕微鏡画像である。
【図3】図3は、既知のpHにおいて本発明のシリカ系粒子によって得られた、ピーク波長測定値に対する、フォトルミネセンス強度のプロットである。
【図4】図4は、図3で収集したデータに基づいて作製した、pHと相関する、基準色素およびセンサー色素のピーク波長放射比を示す較正曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系コアおよび、二つ以上のフォトルミネセンス色素を含むシリカ系粒子であって、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素が、少なくとも一つの基準色素および少なくとも一つのセンサー色素を含む、シリカ系粒子。
【請求項2】
前記シリカ系粒子がナノ粒子である、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項3】
前記シリカ系粒子が、約0.1 nmから約100.0 nmの直径を有する細孔を含む、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項4】
前記基準色素およびセンサー色素の内の少なくとも一方が、前記シリカ系コアに共有的に結合される、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項5】
前記基準色素およびセンサー色素の一方が、約1.0から約1000.0の色素分子を含み、かつ、基準色素およびセンサー色素が、予め定めた単一波長で発光する単一励起光源に応答してフォトンを放射する、請求項1記載のシリカ粒子。
【請求項6】
前記基準色素がコアの内部に配され、前記センサー色素が、シリカ系粒子の表面上の少なくとも一部に配される、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項7】
前記基準色素およびセンサー色素が、コアの上、またはコアを覆って配される、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項8】
前記コアを覆うシリカ系シェルをさらに含み、前記基準色素がコアの内部に配され、前記シリカ系シェルが、基準色素とセンサー色素との間に挟持される、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項9】
前記基準色素およびセンサー色素が、予め定めた単一波長で発光する単一励起光源に応答してフォトンを放射する、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項10】
フォトン暴露に応答する基準色素およびセンサー色素のピーク波長が、前記放射ピークを個別に識別するのに十分なギャップによって隔てられている、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項11】
フォトン励起に対する前記基準色素またはセンサー色素の暴露が、赤外放射、または近赤外放射をもたらす、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項12】
前記センサー色素が、pH、イオンおよび化学的または生化学的検体の存在および濃度の内の少なくとも一つに対して反応性を有する、請求項1記載のシリカ粒子。
【請求項13】
標的検体と優先的に相互作用を示す表面修飾因子をさらに含む、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項14】
病態または傷害に対して反応する治療剤をさらに含む、請求項1記載のシリカ系粒子。
【請求項15】
二つ以上のフォトルミネセンス色素および複数の細孔を含むフォトルミネセンス・ナノ粒子であって、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素が、少なくとも一つの基準色素および少なくとも一つのセンサー色素を含む、前記フォトルミネセンス・ナノ粒子。
【請求項16】
前記細孔の少なくとも一つが、約0.1ナノメートルから約100.0ナノメートルの直径を有する、請求項15記載のフォトルミネセンス・ナノ粒子。
【請求項17】
前記ナノ粒子の直径が約1.0から約250.0ナノメートルである、請求項15記載のフォトルミネセンス・ナノ粒子。
【請求項18】
二つ以上のフォトルミネセンス色素を含む少なくとも一つのシリカ系粒子を準備する工程;
前記少なくとも一つのシリカ系粒子を、一つ以上の未知の状態または検体を含む環境の中に導入する工程;
前記少なくとも一つのシリカ系粒子を励起フォトンに暴露し、二つ以上のフォトルミネセンス色素のそれぞれからフォトンを放射させる工程;
この二つ以上のフォトルミネセンス色素によって放射されたフォトンのそれぞれを記録する工程;および、
前記一つ以上の未知の状態または検体を判定する工程を含む方法。
【請求項19】
未知の環境状態または検体の存在下にフォトンによって前記二つ以上のフォトルミネセンス色素を励起することをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
既知の環境状態または検体の存在下で得られた、前記二つ以上のフォトルミネセンス色素の放射を比較して比較データを生成すること、および、前記既知の状態または検体に前記比較データを相関することをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記判定工程が、前記比較データを用いて、前記未知の状態または検体を判定することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記判定工程が、比率計測検出法を含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記判定工程が、スペクトラムシフト検出法を含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記判定工程が、寿命による検出法を含む、請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記判定工程が、インビトロまたはインビボにおいて行われる、請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記判定工程が、レドックス状態を確認するのに適応している、請求項18記載の方法。
【請求項27】
前記二つ以上のフォトルミネセンス色素が、基準色素およびセンサー色素を含み、判定工程では単一シリカ系粒子が使用される、請求項18記載の方法。
【請求項28】
判定工程において全身画像装置が利用される、請求項18記載の方法。
【請求項29】
細胞の中に前記少なくとも一つのシリカ系粒子を導入することをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つのシリカ系粒子によって病態を治療する工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項31】
前記未知の状態または検体が、pH、疎水性または親水性環境、レドックス状態、検体特性、および検体の濃度から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項32】
前記判定工程が、複数のセンサー色素の同時測定を含み、それら色素の放射ピークが分解されて、複数の未知の状態または検体の品質が解明される、請求項18記載の方法。
【請求項33】
生物体における未知の状態を判定する方法であって、
フォトンを放射するように適応されるセンサー色素を含むシリカ系ナノ粒子を準備する工程;
前記シリカ系ナノ粒子を生物体の内部に挿入する工程;
前記センサー色素をフォトンによって励起する工程;
センサー色素の放射を検出する工程;および、
前記生物体の前記未知の状態を判定する工程を含む方法。
【請求項34】
前記シリカ系ナノ粒子が基準色素をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記シリカ系ナノ粒子が、病態を治療するための治療剤をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記未知の状態がレドックス状態である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記シリカ系ナノ粒子が、生物体の細胞または組織の内部に配される、請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記シリカ系ナノ粒子が、生物体の血液、または他の体液の中に配される、請求項33記載の方法。
【請求項39】
前記センサーが、近赤外または赤外波長において放射する、請求項33記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−540308(P2008−540308A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510082(P2008−510082)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016389
【国際公開番号】WO2006/119087
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505294425)コーネル リサーチ ファウンデイション インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】