説明

シリカ系微粒子、被膜形成用塗料および被膜付基材

【課題】平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、屈折率が1.15〜1.38の範囲にあり、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.0001〜0.2の範囲にあり、アルカリ金属酸化物の含有量がA2O(A:アルカリ金属元素)として5ppm以下であることを特徴とする外殻内部に空洞を有するシリカ系微粒子を提供する。
【解決手段】珪酸塩及び/または酸性珪酸塩と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に同時に添加して、複合酸化物微粒子分散液を調製した後、酸を加え複合酸化物を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空洞を有するシリカ系微粒子およびその製造方法と、該シリカ系微粒子を含む被膜形成用塗料と、該シリカ系微粒子を含む被膜が基材表面上に形成された被膜付基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒径が0.1〜300μm程度の中空シリカ粒子は公知である(特許文献1、特許文献2など参照)。また、珪酸アルカリ金属水溶液から活性シリカをシリカ以外の材料からなるコア上に沈殿させ、該材料をシリカシェルを破壊させることなく除去することによって、稠密なシリカシェルからなる中空粒子を製造する方法が公知である(特許文献3など参照)。
さらに、外周部が殻、中心部が中空で、殻は外側が緻密で内側ほど粗な濃度傾斜構造をもったコア・シェル構造であるミクロンサイズの球状シリカ粒子が公知である(特許文献4など参照)。
【0003】
また、本願出願人は先に、多孔性の無機酸化物微粒子の表面をシリカ等で完全に被覆することにより、低屈折率のナノメーターサイズの複合酸化物微粒子が得られることを提案すると共に(特許文献5参照)、さらに、シリカとシリカ以外の無機酸化物からなる複合酸化物の核粒子にシリカ被覆層を形成し、ついでシリカ以外の無機酸化物を除去し、必要に応じてシリカを被覆することによって、内部に空洞を有する低屈折率のナノメーターサイズのシリカ系微粒子が得られることを提案している(特許文献6参照)。
しかしながら、上記本願出願人の提案に係る粒子では、粒子の使用目的および用途によっては充分な低屈折率効果が得られない場合があった。また、特許文献6記載の製造方法では、前記シリカ以外の無機酸化物の除去に先立ってシリカ被覆層を形成するなど、製造工程が複雑となり、再現性や生産性の点が隘路となっていた。
さらに、前記した従来の微粒子では被膜付基材の製造に用いる被膜形成用塗料の安定性が不充分で、該被膜形成用塗料を用いて得られる被膜は厚さが不均一であったり膜強度が不充分となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6ー330606号公報
【特許文献2】特開平7ー013137号公報
【特許文献3】特表2000ー500113号公報
【特許文献4】特開平11ー029318号公報
【特許文献5】特開平7ー133105号公報
【特許文献6】特開2001−233611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記特許文献6記載の発明に基づきこれを発展させたものであり、低屈折率のシリカ系微粒子を得ることを目的とするものであって、多孔質の複合酸化物粒子(一次粒子)を、電解質塩の存在下で粒子成長させ、ついで電解質塩の存在下でシリカ以外の無機酸化物を除去することにより、外殻内部に空洞を有する中空で球状のシリカ系微粒子の製造方法を提供することを目的としている。
また、本発明は前記中空で球状のシリカ系微粒子と被膜形成用マトリックスとを含有し、安定性、膜形成性等に優れた被膜形成用塗料を提供することを目的とするものである。
また、本発明は前記中空で球状のシリカ系微粒子を含有する被膜を基材の表面に形成して、低屈折率で、樹脂等との密着性、強度、反射防止能等に優れた被膜付きの基材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシリカ系微粒子の製造方法は下記工程(a)、(b)、(d)および(e)からなるものである。
(a)珪酸塩の水溶液および/または酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に、または、必要に応じて種粒子が分散したアルカリ水溶液中に同時に添加して、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.3〜1.0の範囲にある複合酸化物微粒子分散液を調製する際に、複合酸化物微粒子の平均粒子径が5〜300nmになった時点で電解質塩を電解質塩のモル数(ME)とSiO2のモル数(MS)との比(ME/MS)が0.1〜10の範囲で添加する工程
(b)前記複合酸化物微粒子分散液に、必要に応じてさらに電解質塩を加えた後、酸を加えて前記複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去してシリカ系微粒子分散液とする工程
(d)必要に応じて洗浄した後、シリカ系微粒子分散液を常温〜300℃の範囲で熟成する工程
(e)必要に応じて洗浄した後、50〜300℃の範囲で水熱処理する工程
【0007】
工程(e)は複数回繰り返すことが好ましい。
工程(b)と工程(d)の間で下記工程(c)を実施することが好ましい。
(c)前記工程(b)で得られたシリカ系微粒子分散液に、アルカリ水溶液と、下記化学式(1)で表される有機珪素化合物および/またはその部分加水分解物とを添加し、該微粒子にシリカ被覆層を形成する工程
nSiX(4-n) ・・・(1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、アクリル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、CF3基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
【0008】
前記アルカリ水溶液または、必要に応じて種粒子が分散したアルカリ水溶液のpHは、10以上であることが好ましい。
前記シリカ以外の無機酸化物はアルミナであることが好ましい。
前記で得られたシリカ系微粒子分散液を洗浄し、乾燥し、必要に応じて焼成することが好ましい。
前記シリカ系微粒子の平均粒子径は5nm〜500nmの範囲にあることが好ましく、前記シリカ系微粒子におけるアルカリ金属酸化物の含有量がA2O(A:アルカリ金属元素)として5ppm以下であり、アンモニア及び/又はアンモニウムイオンの含有量がNH3として1500ppm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る外殻内部に空洞を有するシリカ系微粒子は、平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、屈折率が1.15〜1.38の範囲にあり、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.0001〜0.2の範囲にあり、アルカリ金属酸化物の含有量がA2O(A:アルカリ金属元素)として5ppm以下であることを特徴とするものである。該シリカ系微粒子におけるアンモニアおよび/またはアンモニウムイオンの含有量はNH3として1500ppm以下であることが好ましい。
本発明に係る被膜形成用塗料は、前記シリカ系微粒子または前記製造方法によって得られたシリカ系微粒子と、被膜形成用マトリックスとを含んでなるものである。
本発明に係る被膜付基材は、前記シリカ系微粒子または前記製造方法によって得られたシリカ系微粒子と被膜形成用マトリックスとを含んでなる被膜が、単独でまたは他の被膜とともに基材表面上に形成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、電解質塩の存在下で複合酸化物粒子(一次粒子)を粒子成長させるので、後続する脱元素工程においても当該複合酸化物微粒子が球状を維持して、破壊されることがなく、極めて簡易な製造工程により非常に低屈折率のシリカ系微粒子を得ることができる。また、シリカ系微粒子の製造再現性や生産性の点でも優れている。
さらに、脱元素工程あるいはシリカ被覆層を形成して熟成した後、高温で水熱処理するのでアルカリ金属酸化物とアンモニア等が低減され、得られるシリカ系微粒子を配合した被膜形成用塗料は安定性が高く、得られる被膜は強度に優れている。
本発明の被膜形成用塗料は、配合するシリカ系微粒子あるいはシリカ系微粒子分散液中のアルカリ金属酸化物とアンモニアの含有量が少ないので、安定性に優れ、これを用いて得られる被膜は強度に優れている。
また、本発明の被膜付基材は、低屈折率で、樹脂等との密着性、強度、透明性、反射防止能等に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
〔シリカ系微粒子の製造方法〕
本発明に係るシリカ系微粒子の製造方法は、下記工程(a)、(b)、(d)および(e)からなる。また、工程(b)と工程(d)の間に工程(c)を実施することもある。以下、工程順に説明する。
(a)珪酸塩の水溶液および/または酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に、または、必要に応じて種粒子が分散したアルカリ水溶液中に同時に添加して、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.3〜1.0の範囲にある複合酸化物微粒子分散液を調製する際に、複合酸化物微粒子の平均粒子径が5〜300nmになった時点で電解質塩を電解質塩のモル数(ME)とSiO2のモル数(MS)との比(ME)/(MS)が0.1〜10の範囲で添加する工程
(b)前記複合酸化物微粒子分散液に、必要に応じてさらに電解質塩を加えた後、酸を加えて前記複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去してシリカ系微粒子分散液とする工程
(c)前記工程(b)で得られたシリカ系微粒子分散液に、アルカリ水溶液と、下記化学式(1)で表される有機珪素化合物および/またはその部分加水分解物とを添加し、該微粒子にシリカ被覆層を形成する工程
nSiX(4-n) ・・・(1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、アクリル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、CF3基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
(d)必要に応じて洗浄した後、シリカ系微粒子分散液を常温〜300℃の範囲で熟成する工程
(e)必要に応じて洗浄した後、50〜300℃の範囲で水熱処理する工程
【0012】
工程(a)
珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、アンモニウム珪酸塩および有機塩基の珪酸塩から選ばれる1種または2種以上の珪酸塩が好ましく用いられる。アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが、有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができ、アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理すること等によって、アルカリを除去して得られる珪酸液を用いることができ、特に、pH2〜pH4、SiO2濃度が約7重量%以下の酸性珪酸液が好ましい。
【0013】
無機酸化物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、Ce23、P25、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等の1種または2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2等を例示することができる。
このような無機酸化物の原料として、アルカリ可溶の無機化合物を用いることが好ましく、前記した無機酸化物を構成する金属または非金属のオキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができ、より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウム等が好適である。
【0014】
複合酸化物微粒子分散液を調製するためには、予め、前記無機化合物のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とするシリカとシリカ以外の無機酸化物の複合割合に応じて、アルカリ水溶液中に、好ましくはpH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加する。
アルカリ水溶液中に添加するシリカ原料と無機化合物の添加割合は、シリカ成分をSiO2 で表し、シリカ以外の無機化合物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0. 3〜1. 0、特に、0. 35〜0. 85の範囲となるようにすることが好ましい。MOX/SiO2が0. 3未満では、最終的に得られるシリカ系微粒子の空洞容積が十分大きくならず、他方、MOX/SiO2が1. 0を越えると、球状の複合酸化物微粒子を得ることが困難となり、この結果、得られる中空微粒子中の空洞容積の割合が低下する。
モル比MOX/SiO2が0. 3〜1. 0の範囲にあれば、複合酸化物微粒子の構造は主として、珪素と珪素以外の元素が酸素を介在して交互に結合した構造となる。即ち、珪素原子の4つの結合手に酸素原子が結合し、この酸素原子にはシリカ以外の元素Mが結合した構造が多く生成し、後述の工程(b)でシリカ以外の元素Mを除去する際、元素Mに随伴させて珪素原子も珪酸モノマーやオリゴマーとして除去することができるようになる。
【0015】
本発明の製造方法では、複合酸化物微粒子分散液を調製する際に種粒子の分散液を出発原料とすることも可能である。この場合には、種粒子として、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2およびCeO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物、例えば、SiO2−Al23、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、SiO2−TiO2、SiO2−TiO2−Al23等の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。このような種粒子の分散液は、従来公知の方法によって調製することができる。例えば、上記無機酸化物に対応する金属塩、金属塩の混合物あるいは金属アルコキシド等に酸またはアルカリを添加して加水分解し、必要に応じて熟成することによって得ることができる。
この種粒子分散アルカリ水溶液中に、好ましくはpH10以上に調整した種粒子分散アルカリ水溶液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に添加する方法と同様にして、攪拌しながら添加する。このように、種粒子を種として複合酸化物微粒子を成長させると、成長粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。種粒子分散液中に添加するシリカ原料および無機酸化物の添加割合は、前記したアルカリ水溶液に添加する場合と同じ範囲とする。
上記したシリカ原料および無機酸化物原料はアルカリ側で高い溶解度をもっている。しかしながら、この溶解度の高いpH領域で両者を混合すると、珪酸イオンおよびアルミン酸イオンなどのオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出してコロイド粒子に成長し、あるいは、種粒子上に析出して粒子成長が起こる。
【0016】
上記複合酸化物微粒子分散液の調製に際し、シリカ原料として後述する化学式(1)に示す有機珪素化合物および/またはその加水分解物をアルカリ水溶液中に添加しても良い。
該有機珪素化合物としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0017】
上記有機珪素化合物でnが1〜3の化合物は親水性に乏しいので、予め加水分解しておくことにより、反応系に均一に混合できるようにすることが好ましい。加水分解には、これら有機珪素化合物の加水分解法として周知の方法を採用することができる。加水分解触媒として、アルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、アミン等の塩基性のものを用いた場合、加水分解後これらの塩基性触媒を除去して、酸性溶液にして用いることもできる。また、有機酸や無機酸などの酸性触媒を用いて加水分解物を調製した場合、加水分解後、イオン交換等によって酸性触媒を除去することが好ましい。なお、得られた有機珪素化合物の加水分解物は、水溶液の形態で使用することが望ましい。ここで水溶液とは加水分解物がゲルとして白濁した状態になく透明性を有している状態を意味する。
【0018】
本発明では、上記工程(a)において、複合酸化物微粒子の平均粒子径が概ね5〜300nmになった時点(このときの複合酸化物微粒子を一次粒子ということがある)で電解質塩を電解質塩のモル数(ME)とSiO2 のモル数(MS)との比(ME/MS)が0.1〜10、好ましくは0.2〜8の範囲で添加する。
電解質塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの水溶性の電解質塩が挙げられる。
なお、電解質塩はこの時点で全量を添加してもよく、アルカリ金属珪酸塩やシリカ以外の無機化合物を添加して複合酸化物微粒子の粒子成長を行いながら連続的にあるいは断続的に添加してもよい。
【0019】
電解質塩の添加量は、複合酸化物微粒子分散液の濃度にもよるが、前記モル比(ME/MS)が0.1未満の場合は、電解質塩を加えた効果が不充分となり、工程(b)で酸を加えて複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去する際に複合酸化物微粒子が球状を維持できず破壊され、内部に空洞を有するシリカ系微粒子を得ることが困難となることがある。このような電解質塩を加える効果についてその理由は明らかではないが、粒子成長した複合酸化物微粒子の表面にシリカが多くなり、酸に不溶性のシリカが複合酸化物微粒子の保護膜的な作用をしているものと考えられる。
【0020】
前記モル比(ME/MS)が10を越えても、前記電解質を添加する効果が向上することもなく、新たな微粒子が生成するなど、経済性が低下する。
また、電解質塩を添加する際の一次粒子の平均粒子径が5nm未満の場合は、新たな微粒子が生成して一次粒子の選択的な粒子成長が起きず、複合酸化物微粒子の粒子径分布が不均一となることがある。電解質塩を添加する際の一次粒子の平均粒子径が300nmを越えると、工程(b)での珪素以外の元素の除去に時間を要したり、困難となることがある。このようにして得られる複合酸化物微粒子は、最終的に得られるシリカ系微粒子と同程度の、平均粒子径が5〜500nmの範囲にある。
【0021】
工程(b)
工程(b)では前記複合酸化物微粒子から、該複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の一部または全部を除去することにより内部に空洞を有する中空球状のシリカ系微粒子を製造する。
元素の除去に際しては、複合酸化物微粒子分散液に、電解質塩のモル数(ME)とSiO2のモル数(MS)との比(ME/MS)が0.1〜10、好ましくは0.2〜8の範囲となるように、必要に応じて再び電解質塩を添加した後、例えば、鉱酸や有機酸を添加することによって溶解除去したり、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去したり、あるいは、これらの方法を組み合わせることによって除去する。
【0022】
このとき、複合酸化物微粒子分散液中の複合酸化物微粒子の濃度は処理温度によっても異なるが、酸化物に換算して0.1〜50重量%、特に0.5〜25重量%の範囲にあることが好ましい。複合酸化物微粒子の濃度が0.1重量%未満では、シリカの溶解量が多くなり、複合酸化物微粒子の形状を維持できないことがあり、できたとしても低濃度のために処理効率が低下する。また、複合酸化物微粒子の濃度が50重量%を越えると、粒子の分散性が不充分となり、珪素以外の元素の含有量が多い複合酸化物微粒子では均一に、あるいは効率的に少ない回数で除去できないことがある。
上記元素の除去は、得られるシリカ系微粒子のMOX/SiO2が、0. 0001〜0. 2、特に、0. 0001〜0. 1となるまで行うことが好ましい。
【0023】
工程(c)
本工程(c)は任意工程である。
前記化学式(1)に示す有機珪素化合物としては、前記工程(a)と同様の有機珪素化合物を用いることができ、化学式(1)において、n=0の有機珪素化合物を用いる場合はそのまま用いることができるが、n=1〜3の有機珪素化合物を用いる場合は前記工程(a)と同様の有機珪素化合物の部分加水分解物を用いることが好ましい。
【0024】
このようなシリカ被覆層は緻密であるために、内部が屈折率の低い気相あるいは液層に保たれ、被膜の形成等に用いる場合、屈折率の高い物質、例えば塗料用樹脂等が内部に進入することがなく、低屈折率効果の高い被膜を形成することができる。
また、上記において、シリカ被覆層の形成にn=1〜3の有機珪素化合物を用いる場合は有機溶媒への分散性が良く、樹脂との親和性の高いシリカ系微粒子分散液を得ることができる。さらに、シランカップリング剤等で表面処理して用いることもできるが、有機溶媒への分散性、樹脂との親和性等に優れているため、このような処理を特別に必要とすることもない。
【0025】
また、シリカ被覆層の形成に含フッ素有機珪素化合物を用いる場合は、F原子を含む被覆層が形成されるために、得られる粒子はより低屈折率となると共に有機溶媒への分散性が良く、樹脂との親和性の高いシリカ系微粒子分散液を得ることができる。このような含フッ素有機珪素化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、下記〔化2〕として化学式(2)で表される化合物、下記〔化3〕として化学式(3)で表される化合物も同様の効果を有することから好適に用いることができる。
【0026】
[化2]
3 5
| |
1O−Si−(X)−Si−OR2 ・・・(2)
| |
4 6
【0027】
[化3]
3

1O−Si−(X)−R7 ・・・(3)

4
【0028】
上記化学式(2)と(3)中、R1とR2およびR1とR7とは互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、水素原子またはハロゲン原子を示す。
3〜R6は互いに同一であっても異なっていてもよく、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、水素原子またはハロゲン原子を示す。
Xは、−(Cabc)−を示し、aは2以上の偶数である整数、bとcは0以上の偶数である整数とする。
例えば、(CH3O)3SiC2461224Si(CH3O)3で表されるメトキシシランは上記化学式(2)で表される化合物の1つである。
【0029】
工程(d)
工程(d)では必要に応じて洗浄した後、シリカ系微粒子分散液を常温〜300℃の範囲で熟成する。
元素を除去した分散液は、必要に応じて限外濾過等の公知の洗浄方法により洗浄することができ、洗浄によって溶解したケイ素以外の元素の一部を除去する。この場合、予め分散液中のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよびアンモニウムイオン等の一部を除去した後に限外濾過すれば、分散安定性の高いシリカ系微粒子が分散したゾルが得られる。
また、元素を除去した分散液は、陽イオン交換樹脂および/または陰イオン交換樹脂と接触させることによっても溶解したケイ素以外の元素の一部あるいはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよびアンモニウムイオン等を除去することができる。また、洗浄する際、加温して行うと効果的に洗浄することができる。
【0030】
このように洗浄することによって、後述する水熱処理して得られるシリカ系微粒子中のアルカリ金属酸化物、アンモニアの含有量を効果的に低減することができ、このため、後述するシリカ系微粒子を用いて得られる被膜形成用塗料の安定性、膜形成等が向上し、得られる被膜は強度に優れている。
ついで、常温〜300℃、好ましくは50〜250℃で通常1〜24時間程度熟成する。熟成を行うとシリカ被覆層が均一でより緻密になり、前述したように屈折率の高い物質が粒子内部に進入することができなくなるため、低屈折率効果の高い被膜を形成することができる。
【0031】
工程(e)
工程(e)では、必要に応じて洗浄した後、50〜300℃の範囲で水熱処理する。
洗浄方法は工程(d)と同様、従来公知の方法を採用することができる。
水熱処理温度が50℃未満の場合は最終的に得られるシリカ系微粒子またはシリカ系微粒子分散液中のアルカリ金属酸化物および/またはアンモニアの含有量を効果的に低減することができず、被膜形成用塗料の安定性、膜形成等の向上効果が不充分となり、得られる被膜の強度の向上も不充分となる。
水熱処理温度が300℃を超えても被膜形成用塗料の安定性、膜形成性、膜強度等がさらに向上することもなく、場合によってはシリカ系微粒子が凝集することがある。
なお、前記水熱処理温度が150℃〜300℃の範囲にあれば、シリカ系微粒子を用いて得られる被膜は耐水性に優れ、被膜上に水滴が落ちた場合に拭き取りやすく、水滴が乾燥した場合にも水滴の跡形が残り難い等の効果が得られる。
【0032】
工程(e)は複数回繰り返しても良い。工程(e)を繰り返すことによって、得られるシリカ系微粒子中のアルカリ金属酸化物および/またはアンモニア(アンモニウムイオンを含む)の含有量を低減することができる。
このようにして得られたシリカ系微粒子は、平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜400nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が5nm未満では、充分な空洞が得られず、低屈折率の効果が充分得られないことがある。平均粒子径が500nmを越えると、安定した分散液が得にくくなり、また、該微粒子を含有する塗膜の表面に凹凸が生じたりヘーズが高くなることがある。なお、本発明のシリカ系微粒子の平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
【0033】
前記シリカ系微粒子中のアルカリ金属酸化物の含有量は、A2O(A:アルカリ金属元素)として5ppm以下、さらには2ppm以下であることが好ましい。前記アルカリ金属酸化物の含有量が5ppmを超えると、シリカ系微粒子を配合した被膜形成用塗料の安定性が不充分で、粘度が高くなり、膜形成性が低下し、得られる被膜の強度が不充分であったり、膜厚が不均一となることがある。
また、前記シリカ系微粒子中のアンモニア(アンモニウムイオンを含む)の含有量は、NH3として1500ppm以下、さらには1000ppm以下であることが好ましい。前記アンモニアの含有量が1500ppmを超えると、前記アルカリ金属酸化物の場合と同様にシリカ系微粒子を配合した被膜形成用塗料の安定性が不充分で、粘度が高くなり、膜形成性が低下し、得られる被膜の強度が不充分であったり、膜厚が不均一となることがある。
【0034】
なお、本発明のシリカ系微粒子の製造方法では、得られたシリカ系微粒子分散液を限外濾過膜、ロータリーエバポレーター等を用いて有機溶媒で置換することによって有機溶媒分散ゾルを得ることができる。
また、本発明のシリカ系微粒子の製造方法では、洗浄後、乾燥し、必要に応じて焼成することができる。
このようにして得られたシリカ系微粒子は、内部に空洞を有し、低屈折率となる。従って、該シリカ系微粒子を用いて形成される被膜は低屈折率となり、反射防止性能に優れた被膜が得られる。
【0035】
本発明に係るシリカ系微粒子は、内部に空洞を有している。このため、通常シリカの屈折率が1.45であるのに対し、シリカ系微粒子の屈折率は、1.15〜1.38であった。なお、空洞については、粒子断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を観察することによって確認することができる。
【0036】
〔被膜形成用塗料〕
続いて、本発明に係る被膜形成用塗料について説明する。
本発明に係る被膜形成用塗料は、前記シリカ系微粒子と、被膜形成用マトリックスと、必要に応じて配合される有機溶媒とからなっている。
被膜形成用マトリックスとは、基材の表面に被膜を形成し得る成分をいい、基材との密着性や硬度、塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、例えば、従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの塗料用樹脂、または、前記アルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物およびこれらの部分加水分解物等が挙げられる。
【0037】
マトリックスとして塗料用樹脂を用いる場合には、例えば、シリカ系微粒子分散液の分散媒をアルコール等の有機溶媒で置換した有機溶媒分散ゾル、好ましくは前記有機基を含む有機ケイ素化合物によりシリカ被覆層を形成したシリカ系微粒子を用いることができ、必要に応じて前記微粒子を公知のカップリング剤で処理した後、有機溶媒に分散させた有機溶媒分散ゾルと塗料用樹脂とを適当な有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。
【0038】
一方、マトリックスとして加水分解性有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、アルコキシシランとアルコールの混合液に、水および触媒としての酸またはアルカリを加えることにより、アルコキシシランの部分加水分解物を得、これに前記ゾルを混合し、必要に応じて有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。
【0039】
被膜形成用塗布液中のシリカ系微粒子とマトリックスの重量割合は、シリカ系微粒子/マトリックス=1/99〜9/1の範囲が好ましい。重量比が9/1を越えると被膜の強度や基材との密着性が低下して実用性に欠ける一方、1/99未満では当該シリカ系微粒子の添加による被膜の低屈折率化、基材との密着性向上、被膜強度向上等の効果が不充分となる。
【0040】
〔被膜付基材〕
本発明に係る被膜付基材は、前記シリカ系微粒子と被膜形成用マトリックスとを含む被膜が単独でまたは他の被膜とともに基材表面上に形成されている。
当該基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に被膜を形成したものであり、用途によって異なるが被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、本発明の被膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
このような被膜は、前記被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法などの周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱あるいは紫外線照射等により硬化して得ることができる。
【0041】
上記基材の表面に形成される被膜の屈折率は、シリカ系微粒子とマトリックス成分等の混合比率および使用するマトリックスの屈折率によっても異なるが、1. 15〜1. 42と低屈折率となる。なお、本発明のシリカ系微粒子自体の屈折率は、1.15〜1.38であった。これは、本発明のシリカ系微粒子が内部に空洞を有し、樹脂等のマトリックス形成成分は粒子外部に止まり、シリカ系微粒子内部の空洞が保持されるからである。
【0042】
さらに、上記した被膜付基材において、基材の屈折率が1. 60以下の場合には、基材表面に屈折率が1. 60以上の被膜(以下、中間被膜という。)を形成した上で、前記本発明のシリカ系微粒子を含む被膜を形成することが推奨される。中間被膜の屈折率が1. 60以上であれば前記本発明のシリカ系微粒子を含む被膜の屈折率との差が大きく反射防止性能に優れた被膜付基材が得られる。中間被膜の屈折率は、中間被膜の屈折率を高めるために用いる金属酸化物微粒子の屈折率、金属酸化物微粒子と樹脂等の混合比率および使用する樹脂の屈折率によって調整することができる。
中間被膜の被膜形成用塗布液は、金属酸化物粒子と被膜形成用マトリックスとの混合液であり、必要により有機溶媒が混合される。被膜形成用マトリックスとしては前記本発明のシリカ系微粒子を含む被膜と同様のものを用いることができ、同一の被膜形成用マトリックスを用いることにより、両被膜間の密着性に優れた被膜付基材が得られる。
【実施例】
【0043】
[実施例1]
シリカ系微粒子(P-1)の調製
平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al23一次粒子分散液を調製した。
この一次粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gを添加し、ついでSiO2として濃度1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液3,000gとAl23としての濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9,000gを添加して複合酸化物微粒子(1)の分散液を得た。
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった複合酸化物微粒子(1)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5重量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-1)の水分散液を得た。
【0044】
つぎに、シリカ系微粒子(P-1-1)分散液にアンモニア水を加えて分散液のpHを10.5に調整し、ついで150℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-2)の水分散液を得た。このとき、シリカ系微粒子(P-1-2)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々6ppm、1200ppmであった。
ついで、再び、シリカ系微粒子(P-1-2)分散液を150℃にて11時間水熱処理した後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-3)の水分散液を得た。このとき、シリカ系微粒子(P-1-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.5ppm、600ppmであった。
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系微粒子(P-1)の平均粒子径、MOx/SiO2(モル比)、および屈折率を、調製条件と共に表1に示す。ここで、平均粒子径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
【0045】
粒子の屈折率の測定方法
(1)シリカ系微粒子分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0046】
透明被膜付基材(A-1)の製造
シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液をエタノールで固形分濃度5重量%に希釈した分散液50gと、アクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)3gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒47gとを充分に混合して塗布液を調製した。
この塗布液をPETフィルムにバーコーター法で塗布し、80℃で、1分間乾燥させて、透明被膜の膜厚が100nmの透明被膜付基材(A-1)を得た。この透明被膜付基材(A-1)の全光線透過率、ヘイズ、波長550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、および鉛筆硬度を表2に示す。全光線透過率およびヘイズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により、反射率は分光光度計(日本分光社、Ubest-55)により夫々測定した。また、被膜の屈折率は、エリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)により測定した。なお、未塗布のPETフィルムは全光線透過率が90. 7%、ヘイズが2. 0%、波長550nmの光線の反射率が7. 0%であった。鉛筆硬度は、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度試験器で測定した。即ち、被膜表面に対して45度の角度に鉛筆をセットし、所定の加重を負荷して一定速度で引っ張り、傷の有無を観察した。
【0047】
また、透明被膜付基材(A-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表2に示す。
残存升目の数90個以上 :◎
残存升目の数85〜89個:○
残存升目の数84個以下 :△
【0048】
透明被膜付基材(B-1)の製造
エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)20g、エタノール45gおよび純水5.33gの混合溶液に少量の塩酸を添加して、エチルシリケートの部分加水分解物を含有したマトリックス分散液を得た。このマトリックス分散液に、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液(固形分濃度18重量%)16.7gを混合して塗布液を調製した。
この塗布液を透明ガラス板の表面に500rpm、10秒の条件でスピナー法により塗布した後、160℃で30分間、加熱処理して透明被膜の膜厚が200nmの透明被膜付基材(B-1)を得た。この透明被膜付基材(B-1)の全光線透過率、ヘイズ、波長550nmの光線の反射率、被膜の屈折率および鉛筆硬度を表3に示す。なお、未塗布のガラス基板は、全光線透過率が92.0%、ヘイズが0. 1%、波長550nmの光線の反射率が4. 5%であった。
【0049】
[実施例2]
シリカ系微粒子(P-2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-1)の水分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)104gを添加してシリカ被膜を形成し、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-2-1)の水分散液を得た。
つぎに、シリカ系微粒子(P-2-1)分散液を200℃にて1時間熟成した後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-2-2)の水分散液を得た。このとき、シリカ系微粒子(P-2-2)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々1ppm、2500ppmであった。
ついで、再び、シリカ系微粒子(P-2-2)分散液を150℃にて11時間水熱処理した後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-2-3)の水分散液を得た。このとき、シリカ系微粒子(P-2-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.5ppm、900ppmであった。
ついで限外濾過膜を用いて分散媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-2)のアルコール分散液を調製した。
透明被膜付基材(A-2)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-2)を得た。
透明被膜付基材(B-2)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-2)を得た。
【0050】
[実施例3]
シリカ系微粒子(P-3)の調製
実施例2において、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gの代わりに濃度0.5重量%の硝酸カリウム30,000gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-3-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.4ppm、800ppmであった。
透明被膜付基材(A-3)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-3)を得た。
透明被膜付基材(B-3)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-3)を得た。
【0051】
[実施例4]
シリカ系微粒子(P-4)の調製
実施例2において、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gの代わりに濃度0.5重量%の硫酸アンモニウム53,200gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-4-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.5ppm、800ppmであった。
透明被膜付基材(A-4)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-4)を得た。
透明被膜付基材(B-4)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-4)を得た。
【0052】
[実施例5]
シリカ系微粒子(P-5)の調製
実施例2において、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gの代わりに濃度0.5重量%の硝酸アンモニウム41,100gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-5)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-5-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.8ppm、700ppmであった。
透明被膜付基材(A-5)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-5)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-5)を得た。
透明被膜付基材(B-5)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-5)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-5)を得た。
【0053】
[実施例6]
シリカ系微粒子(P-6)の調製
実施例2において、エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)104gの代わりにビニルシラン(信越化学(株)製:KBE−1003、濃度62.7重量%)46.4gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-6)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-6-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々1ppm、900ppmであった。
透明被膜付基材(A-6)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-6)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-6)を得た。
透明被膜付基材(B-6)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-6)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-6)を得た。
【0054】
[実施例7]
シリカ系微粒子(P-7)の調製
実施例2において、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gの代わりに濃度0.2重量%の硫酸ナトリウム50,400gを用い、エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)104gの代わりにエポキシシラン(信越化学(株)製:KMB−403、濃度84.9重量%)34.3gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-7)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-7-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.8ppm、800ppmであった。
透明被膜付基材(A-7)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-7)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-7)を得た。
透明被膜付基材(B-7)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-7)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-7)を得た。
【0055】
[実施例8]
シリカ系微粒子(P-8)の調製
実施例2において、エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)104gの代わりにフッ素系アルキルシラン(信越化学(株)製:KBM−7803、濃度83.8重量%)34.75gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-8)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-8-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々0.9ppm、800ppmであった。
透明被膜付基材(A-8)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-8)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-8)を得た。
透明被膜付基材(B-8)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-8)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-8)を得た。
【0056】
[実施例9]
シリカ系微粒子(P-9)の調製
実施例2の工程(a)において、SiO2として0.76重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.25重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加し、濃度0.5重量%の硫酸ナトリウム50,400gの代わりに濃度2.0重量%の硫酸ナトリウム50,400gを用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-9)のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(P-9-3)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々1ppm、800ppmであった。
透明被膜付基材(A-9)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-9)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(A-9)を得た。
透明被膜付基材(B-9)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(P-9)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(B-9)を得た。
【0057】
[比較例1]
シリカ系微粒子(RP-1)の調製
実施例1と同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-1)の水分散液を調製した。なお、シリカ系微粒子(P-1-1)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々1000ppm、10ppm未満であった。
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(RP-1)のアルコール分散液を調製した。
透明被膜付基材(RA-1)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-1)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RA-1)を得た。
透明被膜付基材(RB-1)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-1) のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RB-1)を得た。
【0058】
[比較例2]
シリカ系微粒子(RP-2)の調製
実施例1と同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-1-2)の水分散液を調製し、ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(RP-2)のアルコール分散液を調製した。なお、シリカ系微粒子(P-1-2)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々6ppm、1200ppmであった。
透明被膜付基材(RA-2)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RA-2)を得た。
透明被膜付基材(RB-2)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-2) のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RB-2)を得た。
【0059】
[比較例3]
シリカ系微粒子(RP-3)の調製
比較例1の工程(a) において、SiO2として1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液と、Al23として0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを使用した以外は同様にして固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(RP-3) のアルコール分散液を調製した。
なお、シリカ系微粒子(RP-1-1)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系微粒子当たり各々1200ppm、10ppm未満であった。
明被膜付基材(RA-3)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RA-3)を得た。
透明被膜付基材(RB-3)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RB-3)を得た。
【0060】
[比較例4]
シリカ系微粒子(RP-4)
シリカ系微粒子としてシリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-45P、平均粒子径45nm、SiO2濃度:20重量%)を用い、これを限外濾過膜にてエタノールに分散媒を置換し、固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(RP-4)のアルコール分散液として用いた。
なお、シリカゾルのNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ粒子当たり各々20500ppm、100ppmであった。
透明被膜付基材(RA-4)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-4)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RA-4)を得た。
透明被膜付基材(RB-2)の製造
実施例1において、シリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液の代わりにシリカ系微粒子(RP-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RB-2)を得た。
【0061】
[比較例5]
シリカ系微粒子(RP-5)の調製
実施例1と同様にして固形分濃度20重量%のSiO2・Al23一次粒子分散液を調製した。
この一次粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液3,000gとAl23としての濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9,000gを添加して複合酸化物微粒子(RP-5)の分散液を得た。
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった複合酸化物微粒子(RP-5)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5重量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(RP-5)の水分散液を得た。
シリカ系微粒子(RP-5)について平均粒子径を測定したところ、約5nmであり、屈折率は1.43であった。また、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影して観察したところ、殆どが微小粒子であり、中空粒子は殆ど存在しなかった。
【0062】
[表1]
一次粒子 電解質塩 シリカ被覆 シリカ系微粒子 微量成分
符号 のモル比 種類 ME/MS 種類 層厚 モル比 平均粒径 屈折率 Na2O NH3
(MOX/SiO2) (nm) (MOX/SiO2) (nm) (ppm)(ppm)
P-1 0.35 Na2SO4 1.09 - - 0.0097 40 1.30 0.5 600
P-2 0.35 Na2SO4 1.09 ET 8 0.0019 46 1.28 0.5 900
P-3 0.35 KNO3 0.91 ET 8 0.0019 46 1.27 0.4 800
P-4 0.35 (NH4)2SO4 1.24 ET 8 0.0019 46 1.28 0.5 800
P-5 0.35 NH4NO3 1.58 ET 8 0.0017 47 1.30 0.8 700
P-6 0.35 Na2SO4 1.09 V 8 0.0017 47 1.27 1.0 900
P-7 0.35 Na2SO4 0.44 EP 8 0.0017 47 1.27 0.8 800
P-8 0.35 Na2SO4 1.09 F 8 0.0012 53 1.25 0.9 800
P-9 0.75 Na2SO4 5.39 ET 8 0.0023 60 1.30 1.0 800
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
RP-1 0.35 Na2SO4 1.09 - - 0.0097 40 1.30 1000 10>
RP-2 0.35 Na2SO4 1.09 - - 0.0097 40 1.30 6 1200
RP-3 0.171 Na2SO4 0.94 - - 0.0005 30 1.42 1200 10>
RP-4 0.000 - - - - 0.000 45 1.46 20500 100
RP-5 0.35 - - - - 0.0097 5 1.43 - -
【0063】
[表2]
透明被膜付基材有機樹脂マトリックス
符号 全光線 ヘイズ 反射率 被膜 密着性 鉛筆硬度
透過率 屈折率
(%) (%) (%)
A-1 96.5 0.3 0.5 1.35 ◎ 4H
A-2 95.5 0.3 0.4 1.33 ◎ 3H
A-3 96.1 0.2 0.3 1.32 ◎ 3H
A-4 96.2 0.2 0.4 1.33 ◎ 3H
A-5 95.9 0.3 0.5 1.34 ◎ 3H
A-6 96.8 0.1 0.3 1.32 ◎ 3H
A-7 96.5 0.1 0.4 1.31 ◎ 3H
A-8 96.7 0.1 0.2 1.31 ◎ 3H
A-9 96.7 0.1 0.3 1.34 ◎ 3H
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
RA-1 96.5 0.3 0.5 1.35 △ H
RA-2 95.4 0.3 0.5 1.33 △ H
RA-3 94.3 1.8 1.0 1.45 ○ H
RA-4 94.3 0.3 1.5 1.46 ○ H
【0064】
[表3]
透明被膜付基材シリコン樹脂マトリックス
符号 全光線 ヘイズ 反射率 被膜 鉛筆硬度
透過率 屈折率
(%) (%) (%)
B-1 96.1 0.3 0.5 1.35 8H
B-2 96.4 0.3 0.2 1.31 7H
B-3 96.2 0.2 0.3 1.33 7H
B-4 96.2 0.2 0.3 1.33 7H
B-5 96.5 0.1 0.4 1.34 7H
B-6 96.7 0.1 0.2 1.31 7H
B-7 96.0 0.1 0.3 1.31 7H
B-8 97.0 0.1 0.3 1.32 7H
B-9 96.5 0.1 0.1 1.34 7H
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
RB-1 96.2 0.3 0.5 1.35 5H
RB-2 96.1 0.3 0.5 1.35 5H
RB-3 94.8 0.8 1.2 1.41 5H
RB-4 94.0 0.2 1.3 1.43 5H

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、屈折率が1.15〜1.38の範囲にあり、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機酸化物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.0001〜0.2の範囲にあり、アルカリ金属酸化物の含有量がA2O(A:アルカリ金属元素)として5ppm以下であることを特徴とする外殻内部に空洞を有するシリカ系微粒子。
【請求項2】
前記シリカ系微粒子におけるアンモニアおよび/またはアンモニウムイオンの含有量がNH3として1500ppm以下である請求項2に記載のシリカ系微粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリカ系微粒子と、被膜形成用マトリックスとを含んでなる被膜形成用塗料。
【請求項4】
請求項1または2に記載のシリカ系微粒子と被膜形成用マトリックスとを含んでなる被膜が、単独でまたは他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付基材。

【公開番号】特開2011−46606(P2011−46606A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211073(P2010−211073)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2004−199756(P2004−199756)の分割
【原出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】