説明

シリカ系微粒子の分散ゾル、該分散ゾルの製造方法および塗料組成物

【課題】 酸性領域で非常に安定なシリカ系微粒子分散ゾル、該ゾルの製造方法、および該分散ゾルを含む塗料組成物に関する。
【解決手段】 異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルであって、該シリカ系微粒子の表面が負電荷を有し、かつ該シリカ系微粒子の表面がアルミニウムで修飾されており、該アルミニウムの修飾量はAl換算基準でシリカ系微粒子の単位表面積当り0.01×10−6〜2.0×10−6モル/mの範囲にある。前記シリカ系微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルに関する。また、該分散ゾルの製造方法および該分散ゾルを含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカゾルを、例えば屈折率調節材や防汚材等としてコーティング塗膜に配合することが知られているが、従来のシリカゾルを塗料組成物に配合すると、塗料組成物の白濁や増粘が起こりやすく、塗膜の透明性が低下するという問題があった。
そこで、塗料組成物中での安定性が高いシリカゾルを開発することが求められていた。
シリカゾルの安定性を向上させる手段として、シリカ粒子の表面をアルミニウムで改質する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には酸性ケイ酸液とアルミニウム化合物水溶液をSiO含有アルカリ水溶液またはアルカリ金属酸化物水溶液に添加する方法、またはアルミニウム化合物が混在する酸性ケイ酸液をSiO含有アルカリ水溶液またはアルカリ金属水酸化物水溶液に添加する方法により得られたアルミニウム化合物含有アルカリ性シリカゾルを、陽イオン交換樹脂で脱イオンする方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、コロイダルシリカの粒子径が4〜30ミリミクロン、pH2〜9、アルミニウム含有量がAl/SiOモル比で0〜0.0008のシリカゾルに、Al/SiOモル比が0.0006〜0.004の範囲となるように、アルミン酸アルカリ水溶液を添加したのち、80〜250℃で0.5〜20時間加熱し、その後陽イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に接触させてpH2〜5の酸性シリカゾルを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−123807号公報
【特許文献2】特開平06−199515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
即ち、特許文献1および特許文献2に記載の製法で得られる酸性シリカゾルは酸性領域で安定なシリカゾルであるが、この安定性、特に高濃度での安定性にさらに優れたシリカゾルを開発する必要があった。
さらに、シリカゾルを配合した塗膜の性能をさらに向上させることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリカ系微粒子の分散ゾルは異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルであって、該シリカ系微粒子の表面が負電荷を有し、かつ該シリカ系微粒子の表面がアルミニウムで修飾されており、該アルミニウムの修飾量はAl換算基準でシリカ系微粒子の単位表面積当り0.01×10−6〜2.0×10−6モル/mの範囲にあることを特徴とする。
前記シリカ系微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明の塗料組成物は、(A)前記シリカ系微粒子の分散ゾルと、(B)バインダー成分とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のシリカ系微粒子分散ゾルの製造方法は、表面にアルミニウムが修飾された異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルの製造方法であって、
(1)異方形状のシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含む、pH9.0〜11.5のアルカリ性シリカゾルに、アルミン酸塩の水溶液を、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAlで表したとき、そのモル比(Al/SiO)が0.0005〜0.050となるような割合で混合する工程、
(2)前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加熱して、0.5〜20時間、撹拌する工程、
を含むことを特徴とする。
【0010】
前記モル比(Al/SiO)が0.005〜0.050の範囲にあることが好ましい。
さらに、下記工程
(3)前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換除去して、該混合液のpHを3.0〜6.0の範囲に調整する工程
を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルは、シリカ微粒子の表面に非常に高密度のアルミニウムが負の電荷を有する形態で修飾されているために、酸性のpH領域であっても分散安定性が非常に高く、高濃度に濃縮することができ、透明性にも優れる。
このシリカ系微粒子分散ゾルとバインダー成分とを配合した塗料組成物より得られる塗膜は、膜中でのシリカ系微粒子の分散性や濃縮に対する安定性が強いことから膜硬度、耐擦傷性が非常に優れ、密着性、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れる。
さらに、該シリカ系微粒子の形状が異方形状であるために、塗膜の膜硬度を向上させる効果に特に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
シリカ系微粒子の分散ゾル
本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルは、異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルであって、該シリカ系微粒子の表面が負電荷を有し、かつ該シリカ系微粒子の表面がアルミニウムで修飾されており、該アルミニウムの修飾量はAl換算基準でシリカ系微粒子の単位表面積当り0.01×10−6〜2.0×10−6モル/mの範囲にあることを特徴としている。
このようなシリカ系微粒子の分散ゾルは、酸性でも安定で、塗料組成物中での安定性が高く、得られる塗膜の硬度、耐擦傷性および透明性に非常に優れる。
【0013】
前記シリカ系微粒子は、異方形状であることが好ましい。
このような形状のシリカ系微粒子を塗料組成物に配合することによって、得られる塗膜の膜硬度を著しく向上させることができる。
ここで、異方形状とは、等方性に欠ける形状、すなわち、三次元的に非対称な形状であって、例えば粒子がある一方向に伸縮および/または湾曲した形状、あるいは複数の粒子が融合した形状等が挙げられる。
また粒子の一部が欠けた形状や、楕円状、ラグビーボール状、釣鐘状、双球状、ブドウ房状、繭状、勾玉状あるいはこれらに類する形状なども含まれる。
【0014】
前記シリカ系微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にあることが好ましい。
このようなシリカ系微粒子を塗料組成物に配合することによって、得られる塗膜の膜硬度が向上する。
前記平均粒子径(D1)が15nm未満の場合には、塗料組成物が増粘する場合があり、前記平均粒子径(D1)が70nmを超えると塗膜の透明性が低下する場合があるので好ましくない場合がある。
また、前記平均粒子径(D2)が10nm未満の場合には、塗料組成物が増粘する場合があり、前記平均粒子径(D2)が50nmを超えると塗膜の透明性が低下する場合があるので好ましくない。
【0015】
また、前記異形度(D1/D2)が1.55を超えると膜硬度が低下する場合があり、前記異形度(D1/D2)が4.00を超えると耐擦傷性が低下する場合があるので好ましくない。
なお、前記異形度は、シリカ系微粒子の三次元形状の異方性を表す尺度であって、異形度が高いほど、特定の方向への形状的偏りが大きい傾向にあることを意味する。
また、本発明における異方形状には、複数の球状粒子が連結した鎖状粒子は含まないことが望ましい。鎖状粒子は前記異形度が4.00を超える場合があるため好ましくない。
【0016】
前記シリカ系微粒子の表面に修飾された、アルミニウムの修飾量は、該シリカ系微粒子の単位表面積当りで表したときにAl換算基準で0.01×10−6〜2.0×10−6モル/m、より好ましくは0.05×10−6〜1.8×10−6モル/mの範囲にあることが好ましい。前記修飾量が0.01×10−6モル/m未満の場合には、シリカ系微粒子分散ゾルの安定性や塗膜の膜強度が低下するので好ましくない。また前記修飾量が2.0×10−6モル/mを超えるものは、シリカ系微粒子分散ゾルの透明性が低下したり、安定性が低下することがあるため好ましくない。
【0017】
前記シリカ系微粒子は、表面に負の電荷を有することが好ましい。
前記シリカ系微粒子の表面に存在する負の電荷量は、前記分散ゾルのpHが5.0のとき、該シリカ系微粒子の比表面積当り0.01〜1.1μeq/m、より好ましくは0.05〜1.0μeq/mの範囲にあることが好ましい。前記負電荷量が0.01μeq/m未満の場合には、シリカ系微粒子の分散ゾルの安定性が低下したり、塗膜の硬度や耐擦傷性が低下する場合があり、前記負電荷量が1.1μeq/mを超えるとシリカ系微粒子の表面電荷の電荷層が厚くなり分散ゾルの安定性や塗膜の透明性が低下する場合があるので好ましくない。
【0018】
前記シリカ系微粒子の分散ゾルのpHは3.0〜6.0、より好ましくは3.5〜5.0の範囲にあることが好ましい。前記pHが3.0未満の場合には、シリカ系微粒子に修飾されているアルミニウムが溶解してシリカ系微粒子分散ゾルの安定性が低下するので好ましくない。また前記pHが6.0を超えると、シリカ系微粒子分散ゾルがゲル化しやすくなるので好ましくない。
【0019】
前記シリカ系微粒子を修飾しているアルミニウムの少なくとも一部は、下記式(I)で表される結晶構造を含むシリカ・アルミナ系複合酸化物を形成していることが好ましい。
Si



Si−O−Al−X (但しXはOまたはOH) (I)



Si
前記式(I)中のAlの近傍にアルカリ金属イオンまたは水素イオンが存在していてもよい。前記アルミニウムの少なくとも一部が上記式(I)の形態にあることにより、シリカ系微粒子の表面に負の電荷を付与することができる。
【0020】
本発明においては、シリカ・アルミナ系複合酸化物がケイ酸モノマーとアルミン酸イオンから形成されるために、上記(I)のような構造を有する均一な組成のシリカ・アルミナ系複合酸化物をシリカ微粒子表面に形成することができる。
シリカ系微粒子を修飾しているアルミニウムの形態が、上記式(I)の構造を含むようなものでなく、水酸化アルミ二ウムや酸化アルミニウムの構造をとるものであると、シリカ・アルミナ系複合酸化物の均一性が低下したり、シリカ系微粒子の表面が正の電荷を有するものとなるので好ましくない。
【0021】
前記シリカ系微粒子の分散ゾルの固形分濃度は、SiO換算基準で5〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が5重量%未満では、該分散ゾルを含む塗料組成物より得られる硬化性塗膜の膜硬度などが低下し、また前記固形分濃度が60重量%を超えると該分散ゾルの安定性が低下することがあるので好ましくない。
【0022】
前記シリカ系微粒子の分散ゾルのヘーズは、濃度によっても変わるが、該分散ゾルの固形分濃度がSiO換算基準で30重量%であるとき、0.5〜20%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度が30重量%の時の前記ヘーズが0.5%未満にする場合には、少なくとも平均粒子径5nm未満の超微粒子を用いる必要があり、シリカ系微粒子分散ゾルの粘度が増加するため好ましくない。また前記ヘーズが20%を超えると前記分散ゾルおよび該分散ゾルを含む塗料組成物より得られる硬化性塗膜の透明性が低下するので好ましくない場合がある。
【0023】
本発明に係るシリカ系微粒子分散ゾルの分散媒は、水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類から選ばれた有機化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
また本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルの製造方法としては、本明細書中に記載されたシリカ微粒子水分散ゾルの製造方法およびシリカ微粒子有機溶媒分散ゾルの製造方法を用いることが好ましい。
【0024】
また、前記シリカ系微粒子の分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は、さらにシランカップリング剤などの公知の表面処理剤により表面処理されていてもよい。
本発明に係るシリカ系微粒子分散ゾルは、酸性領域で安定に使用できるため、セラミックファイバーの原料またはバインダー、クロム系の表面処理剤、酸性の研磨剤、各種の塗料、樹脂組成物への充填材などに用いることができる。また、有機バインダー中での分散安定性が高く透明性や膜としたときの強度にも優れるためハードコート膜などの硬化性塗膜形成用塗料としては特に好適に使用することができる。
【0025】
シリカ系微粒子水分散ゾルの製造方法
本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルの製造方法は、下記工程(1)および(2)を含むことを特徴としている。
(1)異方形状のシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含む、pH9.0〜11.5のアルカリ性シリカゾルに、アルミン酸塩の水溶液を、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAlで表したとき、そのモル比(Al/SiO)が0.0005〜0.050となるような割合で混合する工程、
(2)前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加熱して、0.5〜20時間、撹拌する工程。
【0026】
このような工程を含む製造方法によって得られたシリカ系微粒子の分散ゾルは、シリカ系微粒子表面にアルミニウムが負電荷を有する形態で高密度に修飾されているため、表面負電荷密度が高く、そのため分散ゾルの安定性や透明性が高く、該分散ゾルを配合した塗料組成物から得られる塗膜は、膜硬度、耐擦傷性、密着性に優れる。
さらに、このような高負電荷密度のシリカ系微粒子の形状として異方形状を選択することによって、塗膜の膜硬度を著しく向上させることができる。
【0027】
次に各工程について具体的に説明する。
工程(1):この工程では、異方形状のシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含む、pH9.0〜11.5のアルカリ性シリカゾルに、アルミン酸塩の水溶液を、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAlで表したとき、そのモル比(Al/SiO)が0.0005〜0.050となるような割合で混合することによって、シリカ微粒子の表面にシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体を形成させる。
【0028】
前記異方形状のシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含む、pH9.0〜11.5のアルカリ性シリカゾルは、公知の方法で製造することができる。
異方形状のシリカ微粒子を含む分散ゾルの製造方法の一例として、例えば特開2007−137972号公報に記載された製造方法またはこれらに準ずる方法を用いることができる。
より好ましくは、特開2007−137972号公報に記載されたシリカゾルの製造方法のうち、第一の製造方法、すなわち、珪酸塩の水溶液を酸で中和して、シリカヒドロゲルを調製し、化学的手段または機械的な手段にて、シリカヒドロゲルをスラリー状ないしは分散溶液にする方法を用いることが好ましい。ここで、化学的手段としては、シリカヒドロゲルにアルカリを添加し、所望により加熱する方法が挙げられる。また、機械的手段としては、攪拌器などの装置を使用する方法を挙げることができる。これらの化学的手段と機械的な手段は併用されても差し支えない。
【0029】
また、このとき、前記アルカリ性シリカゾルに含まれるシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にあるようなものを用いることがさらに好ましい。
このようなシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含むアルカリ性シリカゾルを用いることによって、最終的にアルミニウムを修飾して得られるシリカ系微粒子として異方形状で塗膜硬度の高いシリカ系微粒子を得ることができるのでより好ましい。
【0030】
前記アルカリ性シリカゾルのpHは、9.0〜11.5、より好ましくはpH9.5〜11.0の範囲にあることが好ましい。アルカリ性シリカゾルのpHが9.0〜11.5の範囲にあることにより、シリカの溶解度が高まるため、アルミン酸塩の水溶液を混合したときにシリカ微粒子表面のシリカ骨格内に存在するケイ酸モノマーとアルミン酸イオンとの置換反応が起こりやすくなる。また、pH9.0〜11.5の範囲にあるシリカゾルはシリカの溶解度が高いために溶媒中にケイ酸モノマーとして溶解しているシリカ成分が存在するが、ここにアルミン酸イオンが共存することによってシリカの溶解度が局所的に低下し、前記ケイ酸モノマーとアルミン酸イオンの複合体がシリカ微粒子表面にシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体として析出する。このような反応によって均一なシリカ・アルミナの複合酸化物の前駆体が形成され、このような前駆体を後の工程で脱水・縮重合反応させることにより、従来よりも大量のアルミニウムを負電荷を有する形態でシリカ微粒子表面に均一に修飾することができる。
【0031】
前記アルカリ性シリカゾルのpHが7.0より大きく9.0未満の場合には、シリカの溶解度が低く、ケイ酸モノマーとアルミン酸イオンの置換反応が起こりにくいため、アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミン酸イオンが単独で水酸化物を形成して凝集し、シリカ系微粒子分散ゾルの透明性や安定性が低下するので好ましくない。また前記アルカリ性シリカゾルのかわりにpH7.0以下の酸性シリカゾルを用いるとアルカリ性のアルミン酸塩の水溶液を添加したときに酸性シリカゾルが不安定な中性のpH領域を通過することとなりゲル化するので好ましくない。
また、前記アルカリ性シリカゾルのpHが11.5を超えると、シリカの溶解度が高くなり過ぎるため、シリカ微粒子表面にシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体が形成されにくくなったり、シリカ・アルミナ系複合酸化物の緻密性が低下するので 好ましくない。
【0032】
前記アルカリ性シリカゾルはアルカリ金属イオンを含むことが好ましい。前記アルカリ金属イオンの含有量は、該アルカリ金属イオンをMO(Mはアルカリ金属元素)で表し、さらに該アルカリ性シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表したとき、そのモル比(SiO/MO)が20〜300、より好ましくは30〜200の範囲にあることが好ましい。前記モル比が20未満であると、イオン交換時などにゲル化する場合があり、また前記モル比が300を超えると、シリカの溶解性が低下してアルミン酸塩の水溶液とアルカリ性シリカゾルを混合した際に増粘したり、ゲル化する場合があるので好ましくない。
また、アミンやアンモニウムイオンを含むアルカリ性シリカゾルを用いるとシリカの溶解度が低くなりアルミン酸塩の水溶液を混合するとゲル化する場合があるので好ましくない。
また前記シリカゾルは、製法によってはアルミニウム成分を含む場合があるが、その場合は、アルミニウム含有量がAl/SiOモル比で0.007未満のものを用いることが好ましい。前記Al/SiOモル比が0.007を超えると、シリカゾル内部のアルカリ含有量が多くイオン交換時などにゲル化することがあるので好ましくない。
【0033】
前記アルカリ性シリカゾルの固形分濃度はSiO換算基準で10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が10重量%未満の場合には、シリカ系微粒子の生産性が低下するので好ましくない。また、前記濃度が50重量%を超えると、アルカリ性シリカゾルの粘度が高くなるので好ましくない。
【0034】
前記アルカリ性シリカゾルに対して混合する前記アルミン酸塩の水溶液の量は、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAlで表したとき、そのモル比(Al/SiO)が0.0005〜0.050、より好ましくは0.005〜0.050、さらに好ましくは0.010〜0.050の範囲にあることが好ましい。
前記モル比が0.0005未満であると、シリカ系微粒子表面のアルミニウムの修飾量が少ないため、シリカ系微粒子分散ゾルの安定性が低下し、塗料組成物の安定性や硬化性塗膜の硬度や耐擦傷性、透明性も低下するので好ましくない。また前記モル比が0.050を超えると、シリカ系微粒子分散ゾルの安定性や透明性が低下したり、硬化性塗膜の硬度や耐擦傷性、透明性が低下するので好ましくない。
【0035】
前記アルミン酸塩は、アルミン酸ナトリウムおよび/またはアルミン酸カリウムであることが好ましい。
また前記アルミン酸塩の水溶液の固形分濃度は、Al換算基準で0.5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
前記Al換算基準の濃度が0.5重量%未満の場合にはアルミン酸塩が加水分解して水酸化物を形成し易くなり、前記濃度が30重量%を超えると局所的なpHや塩濃度の上昇によるシリカやアルミニウム成分の凝集が起こることがあるため好ましくない。
【0036】
また、前記アルミン酸塩の水溶液のMO/Alモル比(Mはアルカリ金属元素)は1.0〜1.5の範囲にあることが好ましい。前記モル比が1.0未満の場合には、アルミン酸塩が加水分解して水酸化物を形成し易くなり、また前記モル比が1.5を超えるとシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体が形成されにくくなることがあるので、好ましくない。
【0037】
次に工程(2)について説明する。
工程(2):前記工程(1)により得られた混合液を60〜200℃の温度に加熱して、0.5〜20時間、撹拌する。
シリカ微粒子表面でのケイ酸モノマーとアルミン酸イオンの置換反応やシリカゾル中に溶解したシリカとアルミン酸のシリカ微粒子表面への析出反応が前記工程(1)だけで充分に行われなかった場合には、この工程により上記置換反応および析出反応を充分に行わせる。さらにこの工程により、シリカ微粒子の表面に形成したシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体の脱水・縮重合反応を行わせてシリカ微粒子の表面に安定化させることによってシリカ微粒子の表面をアルミニウムで修飾する。
【0038】
前記混合液の加熱温度が60℃未満であると、シリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体の脱水・縮重合反応が充分起こらずシリカ系微粒子分散ゾルの安定性や高濃縮性が低下する。また前記加熱温度が200℃を超えると、シリカの溶解度が高くなりすぎるため、前記シリカ・アルミナ系複合酸化物の緻密性が低下し、シリカ系微粒子分散ゾルの安定性や高濃縮性が低下することがあるため好ましくない。
【0039】
前記加熱は公知の装置および方法を用いて行うことができる。前記加熱は常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。オートクレーブ装置などを用いて加圧下で加熱を行った場合はシリカ系微粒子分散ゾルの安定性がより向上する。
前記攪拌時間は0.5〜20時間の範囲にあることが好ましい。前記攪拌時間が0.5時間未満の場合には、前記脱水・縮重合反応が充分起こらずシリカ系微粒子分散ゾルの安定性が低下することがあるので好ましくない。前記攪拌時間が20時間を越えると、技術的に特に問題はないものの、製造時間が長くなり経済的でないため好ましくない。
【0040】
さらに、前記工程(2)より得られたシリカ系微粒子の分散ゾルを、下記工程(3)に処することができる。
工程(3):前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換除去して、該混合液のpHを3.0〜6.0の範囲に調整する。
この工程によって、酸性のシリカ系微粒子の分散ゾルを製造することができる。この分散ゾルは、酸性領域でも安定であって、塗料組成物に配合したときに得られる塗膜の硬度や耐擦傷性、密着性を向上させる効果に優れる。
前記pHが3.0未満であると、シリカ系微粒子表面に修飾されたアルミニウムの一部が溶解して陽イオン樹脂によりイオン交換除去され、シリカ系微粒子分散ゾルの安定性や膜硬度が低下することがあるので好ましくない。また前記pHが6.0を超えるとシリカ系微粒子分散ゾルが不安定化しゲル化することがあるので好ましくない。
【0041】
前記混合液と陽イオン交換樹脂を接触させる方法としてはバッチ式(樹脂循環式)、カラム式(樹脂充填式)、その他公知の方法を用いることができる。
また前記工程(3)において、前記混合液を加熱して、60〜95℃の温度条件下で前記陽イオン交換樹脂と接触させると、アルカリ金属イオンのイオン交換除去効果をより高めることができる。
【0042】
これらの工程(1)〜工程(3)を行うことによって、シリカ微粒子の表面をアルミニウムで修飾してなる平均粒子径5〜50nmのシリカ系微粒子を含み、かつpHが3.0〜6.0の酸性域にあるシリカ系微粒子水分散ゾルを得ることができる。
さらに、前記工程(1)と前記工程(2)の間に、
工程(1.1): 前記工程(1)で得られた混合液を60〜95℃の温度に加熱して、0.2〜10時間、撹拌する工程、
工程(1.2): 前記工程(1.1)で得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれる少なくとも一部のアルカリ金属イオンをイオン交換除去して、該混合液のpHを7〜10の範囲に調整する工程、
を含むことが好ましい。
【0043】
上記工程(1.1)および工程(1.2)工程を行うことによって、シリカ微粒子の表面に形成されるシリカ・アルミナ系複合酸化物の緻密性をさらに高め、硬化性塗膜の硬度を高めることができる。また、前記(1.1)および(1.2)工程を行わない場合には、シリカ系微粒子水分散ゾルの溶媒中に溶解したシリカ成分が残存することがあり、濃縮や溶媒置換の方法や条件によってはこれらがシリカ系微粒子水分散ゾルを高濃度に濃縮した際の安定性を低下させる場合があるが、この工程に処することによりシリカ系微粒子水分散ゾルの溶媒中に溶解しているシリカ成分を全てシリカ微粒子表面にシリカ・アルミナ系複合酸化物として析出させることができる。
このようなシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体として析出したシリカ成分は、後の工程(3)によりシリカの溶解度の高い条件で加熱しても再び混合液中に溶解することは殆どない。
【0044】
このような工程により、シリカ・アルミナ系複合酸化物がより緻密になり、得られるシリカ系微粒子水分散ゾルを高濃度に濃縮した際の安定性がより向上する。
上記工程により得られたシリカ系微粒子水分散ゾルは必要に応じて限外ろ過法、エバポレータ、蒸発などの公知の方法によって濃縮することができる。
また、上記の工程に得られたシリカ系微粒子水分散ゾルの分散媒を限外ろ過法、エバポレータなど公知の方法により有機溶媒で溶媒置換することにより、シリカ系微粒子有機溶媒分散ゾルを得ることができる。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルおよびシリカ系微粒子有機溶媒分散ゾルを、必要に応じてシランカップリング剤などの公知の表面処理剤を用いてさらに表面処理してもよい。
【0045】
塗料組成物
次に、本発明に係る塗料組成物について説明する。
本発明に係る塗料組成物の用途は、特に制限されるものではなく、ハードコート材料、封止材料、接着材料、樹脂組成物の充填材などとして使用できる。本発明に係る塗料組成物より得られる硬化性塗膜は膜強度、透明性および耐擦傷性が高いため光学レンズ基材表面に設けられるハードコート層またはプライマー層形成用塗料組成物としては特に好適に使用できる。
【0046】
本発明に係る塗料組成物は、
(A)本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルと、
(B)バインダー成分
とを含むことを特徴としている。
【0047】
(A)本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾル
本発明に係るシリカ系微粒子の分散ゾルは、上述したように、異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルであって、該シリカ系微粒子の表面が負電荷を有し、かつ該シリカ系微粒子の表面がアルミニウムで修飾されており、該アルミニウムの修飾量はAl換算基準でシリカ系微粒子の単位表面積当り0.01×10−6〜2.0×10−6モル/mの範囲にあるシリカ系微粒子の分散ゾルである。
このようなシリカ系微粒子の分散ゾルを塗料組成物に配合することによって、得られる塗膜の膜硬度、耐擦傷性、密着性が著しく向上する。
さらに、前記シリカ系微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にあることが好ましい。このようなシリカ系微粒子を用いると塗膜の硬度が著しく向上するので好ましい。
このようなシリカ系微粒子の分散ゾルは、上述したような製造方法で得ることができる。
また、(A)成分としてのシリカ系微粒子の分散ゾルは、分散媒が水であっても有機溶媒であってもよい。
(B)バインダー成分
前記バインダー成分としては塗料組成物の使用目的に応じて従来公知のもの、あるいは現在開発中のものから適宜選択して使用することができる。
前記バインダー成分として、下記式(II)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物が挙げられる。
Si(OR4−(a+b) (II)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【0048】
前記一般式(II)で表される有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン化合物が代表例として挙げられ、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、α―グルシドキシメチルトリメトキシシラン、α―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を混合して用いても良い。
【0049】
このような有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物は、特に光学基材などのハードコート膜形成用塗料のバインダーとして好ましい。
このような有機ケイ素化合物をバインダー成分として本発明に係る塗料組成物を調製するには、前記有機ケイ素化合物を無溶媒下、またはアルコール等の極性有機溶媒中で、酸や水などの存在下で部分加水分解または加水分解した後にシリカ系微粒子分散ゾルと混合することが好ましい。ただし、前記有機ケイ素化合物とシリカ系微粒子分散ゾルを混合したあとに、これらを部分加水分解または加水分解してもよい。
【0050】
前記シリカ系微粒子分散ゾルと前記有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物との混合は、前記有機ケイ素化合物をSiO基準に換算した重量をXで表し、前記シリカ系微粒子分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子の重量をYで表したとき、その重量比が(X/Y)が30/70〜90/10、好ましくは35/65〜80/20となるように行うことが好ましい。ここで、前記重量比が30/70未満であると、基材や他の塗膜との密着性が低下することがあり、また前記重量比が90/10を超えると、塗膜の耐擦傷性が低下することがあるので好ましくない。
【0051】
また前記バインダー成分として、熱硬化性有機樹脂または熱可塑性有機樹脂が挙げられる。前記熱硬化性有機樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂およびメラミン系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに具体的に述べれば、前記ウレタン系樹脂としては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート等のブロック型ポリイシシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の活性水素含有化合物との反応物などが挙げられ、また前記エポキシ樹脂
としては、たとえばポリアルキレンエーテル変性エポキシ樹脂や分子鎖に柔軟性骨格(ソフトセグメント)を導入したエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0052】
さらに、前記メラミン系樹脂としては、たとえばエーテル化メチロールメラミンとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとの硬化物などが挙げられる。これらの中でも、ブロック型イシシアネートとポリオールとの硬化物であるウレタン系樹脂を使用することが好ましい。また、これらの熱硬化性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
本発明で使用される前記バインダー成分としての熱可塑性有機樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、さらには自己乳化型の水系エマルジョン樹脂であることがより好ましい。
【0053】
さらに具体的に述べれば、前記アクリル系樹脂としては、たとえば(メタ)アクリル酸アルキスエステルモノマーから得られる水系エマルジョンや前記モノマーとスチレン、アクリロニトリル等とを共重合させたポリマーエマルジョンなどが挙げられ、また前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオール化合物とポリイシシアネートとを反応させてなる水系エマルジョンなどが挙げられ、さらに前記エステル系樹脂としては、たとえばハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルまたはポリエステルを用いたマルチブロック共重合体の水分散型エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイシシアネートから得られる水分散型ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。また、これらの熱可塑性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0054】
このような熱硬化性有機樹脂および前記熱可塑性樹脂をバインダー成分とした塗料組成物は、前記樹脂とシリカ系微粒子分散ゾルを混合することにより調製され、その混合割合は前記樹脂の重量をRで表し、シリカ系微粒子分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子の重量をSで表したとき、その重量比(R/S)が90/10〜30/70、より好ましくは80/20〜35/65となるように行うことが好ましい。
ここで、前記重量比が30/70未満であると、基材や他の塗膜との密着性や基材の耐衝撃性が低下することがあり、また前記重量比が90/10を超えると、塗膜の屈折率や耐熱性が低下することがあるので好ましくない。
前記塗料組成物は、光学基材用塗料組成物、さらに好ましくはハードコート層膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
【0055】
本発明の塗料組成物には、さらに各種の未架橋エポキシ化合物、界面活性剤、レべリング剤および/または紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶媒などの1種以上を含んでいても良い。
また本発明に係る塗料組成物のバインダー成分としてはチタニウムアルコキシドなどの金属アルコキシドや紫外線硬化性化合物(例えばアクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系化合物等)などの化合物、さらには前記熱硬化性有機樹脂や前記熱可塑性樹脂のかわりに前記紫外線硬化性化合物などの化合物を使用することもできる。
【0056】
塗膜
次に、本発明に係る塗膜について説明する。
本発明に係る塗膜は、本発明に係る塗料組成物を基材上に塗布することによって得ることができる、高い透明性と膜強度、耐擦傷性を有する塗膜である。
前記塗料組成物の塗布方法(コーティング方法)としては、ディッピング法やスピンコート法等の公知の方法を使用することができる。
このような方法を用いて基材上に塗布された、前記塗料組成物からなる塗膜を熱硬化させると、本発明に係る硬化性塗膜が形成される。この熱硬化は、80〜130℃で0.5〜5時間、加熱処理することによって行われる。このようにして得られる硬化塗膜の膜厚は、1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜4.0μmであることが望ましい。
前記基材としてはプラスチックやガラスなどのレンズ、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックパネル、金属などの基材には好適に使用できる。
前記プラスチックとしては例えばポリスチレン樹脂、アリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、PMMA樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルフォン樹脂、PET、TAC、アクリル樹脂などの樹脂化合物が挙げられる。
【0057】
[測定方法および評価試験方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験方法を具体的に述べれば、以下の通りである。
【0058】
(1)比表面積の測定方法
本発明に係るシリカ系微粒子の比表面積は窒素吸着法(BET法)により測定した。
シリカ系微粒子を含む分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)50mlをHNOでpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥させた。得られた試料を乳鉢で粉砕した後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。得られた測定用試料について、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)により窒素吸着量を測定し、得られた吸着量からBET1点法による比表面積を算出した。具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30vol%/ヘリウム70vol%の混合ガス気流中で、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、微粒子の比表面積(m/g)を算出した。
【0059】
(2)平均粒子径D2の測定方法
シリカ系微粒子のBET法により求めた平均粒子径D2は、下記の方法で求めた。
上述した比表面積の測定方法により求めたシリカ系微粒子の比表面積(m/g)の値を次の式に適用して、平均粒子径(nm)を求めた。
平均粒子径(nm)=6000/[比表面積(m/g)×密度(ρ)]
ここで、密度(ρ)はシリカの密度2.2を用いた。
なお、球状粒子についてはBET法により求めた平均粒子径と透過型電子顕微鏡写真より求めた平均粒子径はほぼ等しいものであることを付記しておく。
【0060】
(3)平均粒子径D1の測定方法
動的光散乱法により求めたシリカ系微粒子の平均粒子径D1は下記の方法で求めた。
シリカ系微粒子の水分散ゾル(固形分含有量30重量%)0.10gに純水19.90gを混合して調製した固形分含有量0.15%の試料を、長さ1cm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(大塚電子(株)製、型式ELS−Z2)を用いて、粒子群の粒子径分布を測定する。なお、本発明でいう平均粒子径は、この測定結果をキュムラント解析して算出された値を示す。
【0061】
(4)異形度の計算方法
動的光散乱法により測定されたシリカ系微粒子の平均粒子径(D1)をBET法から求めた比表面積から算出されたシリカ系微粒子の平均粒子径(D2)で除した値(D1)/(D2)として求めた。
【0062】
(5)pHの測定方法
試料50mlを入れたセルを、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、pH4、7および9の標準液で更正が完了したpHメータ(堀場製作所製、F22)のガラス電極を挿入してpH値を測定した。
このとき、水分散ゾルについては固形分濃度30重量%のものを試料とし、有機溶媒分散ゾルについては、固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子有機溶媒分散ゾルを蒸留水で10倍に希釈して、固形分濃度を3.0重量%としたものを試料とした。
【0063】
(6)シリカゾルまたはシリカ系微粒子分散ゾルに含まれるケイ素、アルミニウムおよびナトリウム含有量の測定方法
(a)ケイ素の含有量
シリカゾルまたはシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)10gに50%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かし、更にフッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差をシリカゾルまたはシリカ系微粒子水分散ゾルまたはシリカ系微粒子有機溶媒分散ゾルに含まれるケイ素の含有量(SiO換算基準での重量%)とした。
【0064】
(b)アルミニウムの含有量
1) シリカゾルまたはシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い。)1gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2) フッ化水素酸20mlを加えて、サンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
3) 上記2)で得られた試料を室温まで冷却したのち、塩酸5mlと水を約50ml加えて、サンドバス上で加熱し溶解させる。
4) 上記3)で得られた試料を室温まで冷却したのち、容量200mlのフラスコに供して、水で200mlに希釈して試料溶液を作成する。
5) 上記4)で得られた試料溶液に含まれるアルミニウムの量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、検出波長396.153nm)により測定し、Al換算基準での重量%を求めた。
【0065】
(c)ナトリウムの含有量
1) シリカゾルまたはシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)1gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2) フッ化水素酸20mlを加えて、サンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
3) 上記2)で得られた試料を室温まで冷却したのち、塩酸5mlと水を約50ml加えて、サンドバス上で加熱し溶解させる。
4) 上記3)で得られた試料を室温まで冷却したのち、容量200mlのフラスコに供して、水で200mlに希釈して試料溶液を作成する。
5) 上記4)で得られた試料溶液に含まれるナトリウムの量をNa換算基準で原子吸光分光光度計((株)日立製作所製、Z−5300、測定モード;原子吸光、測定波長範囲;190〜900nm)により測定した。この測定方法は、試料溶液をフレーム法により原子蒸気化し、その原子蒸気層に適当な波長の光を照射し原子によって吸収された光の強さにより試料溶液中の元素濃度を測定する方法である。ナトリウムの検出波長は589.0nmとした。
【0066】
(7)表面負電荷量の測定方法
固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)を1.67g採取し、蒸留水98.53gを添加して固形分濃度0.5重量%の混合溶液100.00gを調製した。得られた混合溶液に塩酸水溶液あるいはアンモニア水溶液を添加して25℃においてpHを5.0に調整した測定用水溶液を調製し、そのなかから20.00gを分取して流動電位測定装置(MUETEK社製、PCD-T3)によりカチオン標準滴定液としてPoly−Dadmacを用いてカチオン流動電位滴定値を測定して得られた流動電位滴定値を表面負電荷量とした。
なお、上記測定により得られる値はシリカ微粒子またはシリカ系微粒子1gあたりの表面負電荷量(μeq/g)である。この値をシリカ系微粒子の比表面積(m/g)で割った値をシリカ系微粒子の単位比表面積あたりに存在する負の電荷量とした。
【0067】
(8)シリカ系微粒子分散ゾルのヘーズの測定方法
固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)を光路長33mmの石英セルに収納して、色差・濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH−300A)を用いて濁度(ヘーズ)を測定した。
【0068】
(9)シリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量の計算方法
上記測定方法(6)より得られた、シリカ系微粒子分散ゾルのケイ素含有量(SiO換算基準での重量%)をCSiO2、アルミニウム含有量(Al換算基準での重量%)をCAl2O3、アルカリ金属含有量(MO換算基準での重量%)をCM2Oとしたとき、下記式によりシリカ系微粒子1gあたりのアルミニウム修飾量(Al換算でのモル数)を求めた。Alの分子量は102とした。
シリカ系微粒子1gあたりのアルミニウム修飾量(mol/g)=[CAl2O3/(CSiO2+CAl2O3+CM2O)]/102
この量をシリカ系微粒子の比表面積(m/g)で割った値をシリカ系微粒子の単位表面積あたりのアルミニウム修飾量とした。
ただし、シリカを主成分とする微粒子を含むアルカリ性シリカゾルを使用して本発明に係るシリカ系微粒子を製造した場合には、シリカを主成分とする微粒子に含まれるアルミニウム量をCAl2O3からあらかじめ差し引いて算出するものとする。
【0069】
(10)粘度の測定方法
固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子分散ゾル(分散媒は水であっても有機溶媒であってもよい)をそれぞれ20ml秤量して、粘度計(東機産業株式会社製、TV−10M)を用いて25℃の温度下にて粘度測定を行った。このとき、粘度計のローターは試料の粘度が1.0〜10.0mPa・sの範囲にあるときは回転数60rpm、粘度が10.0〜20.0mPa・sの範囲にあるときは回転数30rpm、粘度が20.0〜50.0mPa・sの範囲にあるときは回転数12rpm、粘度が50.0〜100.0mPa・sの範囲にあるときには回転数6rpmとして測定した。
【0070】
(11)膜硬度(Bayer試験値)の試験方法
磨耗試験機BTM(米コルツ社製)およびヘイズ値測定装置(NIPPON DENSGOKU製NDH2000)を使用し、実施例の調製例にて作成した被試験レンズと、基準レンズとのヘーズ値の変化によりBayer値を測定する。基準レンズはCR39基材(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)を使用し、まずそれぞれのヘーズ値を測定する。基準レンズの初期ヘーズ値をD(std0)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(test0)とする。それぞれのレンズを耐摩耗性試験機パンに設置し、その上に研磨材(専用砂)500gを充填し、600回左右に振動させ試験を行う。試験後の基準レンズの初期ヘーズ値をD(stdf)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(testf)とする。Bayer試験値(R)は以下の式から算出する。
R=[D(stdf)−D(std0)]/[D(testf)−D(test0)]
本発明の膜硬度の評価において、膜硬度(Bayer試験値)は2.5以上であれば、良好であり、2.5未満を不良とする。
【0071】
(12)塗膜の耐擦傷性試験
実施例の調製例にて作成した試験片の表面を、ボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)に1kgの荷重をかけ、3cmの距離を50往復/100秒の条件で擦った後、傷の入り具合を目視にて判定し、以下の基準で評価した。
A:殆ど傷が入らない
B:若干の傷が入る
C:かなりの傷が入る
D:擦った面積のほぼ全面に傷が入る。
【0072】
(13)塗膜の外観(曇り)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、前記金属酸化物微粒子を含むハードコート層膜を有する試料基板を蛍光灯の直下に垂直に置き、これらの透明度(曇りの程度)を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
A:曇りが無い
B:僅かに曇りがある
C:明らかな曇りがある
D:著しい曇りがある。
【0073】
(14)塗膜の密着性試験
ナイフにより実施例の調製例にて作成した試験片の表面に1mm間隔で切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個 形成し、セロハン製粘着テープを強く押し付けた後、プラスチックレンズ基板の面内方向に対して90度方向へ急激に引っ張り、この操作を合計5回行い、剥離しないマス目の数を数え、以下の基準で評価した。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0074】
(15)塗膜の耐熱水性試験
90℃の湯中に実施例の調製例にて作成した試験片を120分間浸漬させた後、前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価した。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0075】
(16)塗膜の耐候密着性試験
本発明において、耐候密着性とは、塗膜の密着性の経時変化が少ないこと、特に紫外線照射下などの屋外使用条件下において密着性の経時的な低下を抑制する効果を意味するものである。本発明に係る耐候密着性は下記の方法により評価した。
ハードコート層膜を形成した試料基板をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験をした後、外観の確認および前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価する。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は200時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とする。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
異方形状シリカ系微粒子を含む水分散ゾルの調製(1)
(異方形状シリカ微粒子の調製)
SiO濃度が24重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO/NaOモル比が3.1)33.4gを純水126.6kgで希釈して、SiO濃度が5重量%の珪酸ナトリウム水溶液(pH11)を160kg調製した。この珪酸ナトリウム水溶液のpHが4.5になるように硫酸濃度25%の硫酸水溶液を加えて中和し、常温で5時間保持することにより、熟成して、シリカヒドロゲルを調製した。
このシリカヒドロゲルを濾布を張った濾過機を用いて、純水(SiO固形分の約120倍相当量)で充分に洗浄して、シリカヒドロゲルに含まれる塩類を除去した。洗浄後のシリカヒドロゲル中の硫酸ナトリウム濃度は、シリカヒドロゲルのSiO固形分に対して0.01重量%未満だった。
【0077】
このシリカヒドロゲルを純水に分散し、SiO濃度3重量%の分散液を調製し、強力攪拌機を使用して、流動性のスラリー状態になるまで攪拌した。
このスラリー状のヒドロシリカゲル分散液のpHが10.5になるように濃度15%のアンモニア水を添加し、95℃で1時間かけて攪拌を続け、シリカヒドロゲルの解膠操作を行い、シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルを150℃で1時間加熱して、安定化させた後、シリカゾルを限外濾過膜(旭化成株式会社製、SIP−1013)を用いて、SiO濃度が13重量%になるまで濃縮した。次に、ロータリーエバポレーターで30重量%まで濃縮した後、44μmメッシュのナイロンフィルターで濾過して、SiO濃度が30重量%の異方形状シリカゾル24.02kgを得た。
得られたシリカ微粒子の比表面積は97m/gであり、BET法により比表面積から求めた平均粒子径(D2)は28nmであった。また、動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)は50.3nmであり、異形度(D1/D2)の値は1.79となった。
【0078】
工程(1)
前記で得られたアルカリ性異方形状シリカゾル(CP-1)4000gを撹拌機と加熱装置を備えた内容積13リットルのSUS製反応容器に供して、温度25℃で撹拌しながらAl換算基準で0.9重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2712gを80分間かけて一定速度で添加して混合溶液を得た。この時、Al/SiO(混合モル比)は0.012であり、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加速度は1.5×10−2g/Hrであった。
【0079】
工程(1.1)
得られた混合溶液を攪拌しながら、95℃に加熱したのち、温度を95℃に保ちながら6.0時間撹拌を続けた。この混合液のpH は10.9、SiO換算基準の固形分濃度は24.2重量%、Al換算基準の固形分濃度は0.36重量%であった。
工程(1.2)
上記工程で得られた混合溶液に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)ダイヤイオン SK1BH)を投入してpHを9に調整した。
工程(2)
上記工程で得られた混合溶液から樹脂を分離除去したのち、オートクレーブにて165℃で1時間加熱処理して、アルカリ性のシリカ系微粒子の水分散ゾルを得た。
【0080】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたアルカリ性のシリカ系微粒子の水分散ゾルを室温まで冷却した後に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)ダイヤイオン SK1BH)を投入して、pH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。
その後、陽イオン交換樹脂を分離除去し、SiO換算基準で固形分濃度 24.2重量%、pH4.9の酸性領域にある異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾルを得た。
上記で得られた酸性の異方形状シリカ系微粒子水分散ゾルを、限外ろ過膜を用いて濃縮し、固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子水分散ゾル(以下、「CPA−1」という)5400gを得た。このシリカ系微粒子水分散ゾルのSiO濃度は29.93重量%、Al濃度は0.41重量%、 NaO濃度は0.16重量%、Al/SiOモル比は8.1×10-3、 pHは5.4であった。また、このシリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は異方形状で、動的光散乱法より求めた平均粒子径は50.1nm、BET比表面積は93m/g、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.24μeq/mであった。
また、このシリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で1.4×10−6モル/mであった。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法から求めた平均粒子径は29.3nmであり、その異形度は1.71であった。
【0081】
異方形状シリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(1)
上記の工程で得られた異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(CPA−1)5400gを限外濾過膜装置(旭化成(株)製濾過膜、SIP−1013)を用いて分散媒を水からメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)に置換した。
このようにして得られた異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾル(以下、「CPM−1」という)の水分含有量は約0.5重量%であって、固形分濃度は30重量%、SiO換算基準の固形分濃度は29.93重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.8であった。また前記メタノール分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法より求めた平均粒子径は29.3nm、動的光散乱法により測定された平均粒子径は50.1nmであって、シリカ系微粒子に修飾されたアルミニウムの量はAl基準の単位表面積換算で1.4×10−6モル/m、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.24μeq/mであった。
【0082】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)180gおよびメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)90gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液86gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、固形分濃度30重量%の異方形状シリカ系微粒子を含むシリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−1)333g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル製)303g、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.5gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.6gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用塗料組成物としてのハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製した。
【0083】
[実施例2]
異方形状シリカ系微粒子を含む水分散ゾルの調製(2)
実施例1の工程(1)において、アルカリ性異方形状シリカゾル(CP−1)4000gに添加するアルミン酸ナトリウム水溶液(濃度0.9重量%)の量を、2712gから1532gに変更し、添加時間を80分から46分に変更した以外は実施例1と同様の方法を用いて異方形状のシリカ系微粒子を含むシリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−2)を得た。
この時、工程においてアルカリ性シリカゾルにアルミン酸ナトリウム水溶液を混合したときのAl/SiOモル比は0.007であった。
【0084】
このようにして得られたシリカ系微粒子水分散ゾルのSiO濃度は30.09重量%、Al濃度は0.14重量%、 NaO濃度は0.10重量%、Al/SiOモル比は2.7×10-3、 pHは5.2であった。また、このシリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は異方形状で、動的光散乱法より求めた平均粒子径は50.2nm、BET比表面積は91m/g、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.22μeq/mであった。
また、このシリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で5.0×10−7モル/mであった。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法から求めた平均粒子径は30.0nmであり、その異形度は1.68であった。
【0085】
異方形状シリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(2)
シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本実施例で製造したシリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−2)を用いた以外は、実施例1に記載の異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(1)と同様の方法で異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾル(以下、「CPM−2」という)を調製した。
メタノール分散ゾル(CPM−2)の水分含有量は約0.5重量%であって、固形分濃度は30重量%、SiO換算基準の固形分濃度は30.09重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.8であった。また前記メタノール分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法より求めた平均粒子径は30.0nm、動的光散乱法により測定された平均粒子径は50.2nmであって、シリカ系微粒子に修飾されたアルミニウムの量はAl基準の単位表面積換算で0.5×10−6モル/m、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.22μeq/mであった。
【0086】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)の調製
異方形状シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−1)のかわりに異方形状シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−2)を用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)を調製した。
【0087】
[実施例3]
異方形状シリカ系微粒子を含む水分散ゾルの調製(3)
実施例1の工程(1)において、アルカリ性異方形状シリカゾル(CP−1)4000gに添加するアルミン酸ナトリウム水溶液(濃度0.9重量%)の量を、2712gから9158gに変更し、添加時間を80分から4.5時間に変更した以外は実施例1と同様の方法を用いて異方形状のシリカ系微粒子を含むシリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−3)を得た。
この時、工程においてアルカリ性シリカゾルにアルミン酸ナトリウム水溶液を混合したときのAl/SiOモル比は0.040であった。
【0088】
このようにして得られたシリカ系微粒子水分散ゾルのSiO濃度は28.86重量%、Al濃度は0.55重量%、 NaO濃度は0.38重量%、Al/SiOモル比は1.1×10-2、 pHは5.6であった。また、このシリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は異方形状で、動的光散乱法より求めた平均粒子径は50.0nm、BET比表面積は95m/g、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.26μeq/mであった。
また、このシリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で1.9×10−6モル/mであった。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法から求めた平均粒子径は28.7nmであり、その異形度は1.74であった。
【0089】
異方形状シリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(3)
シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本実施例で製造したシリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−3)を用いた以外は、実施例1に記載の異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(1)と同様の方法で異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾル(以下、「CPM−3」という)を調製した。
メタノール分散ゾル(CPM−3)の水分含有量は約0.5重量%であって、固形分濃度は30重量%、SiO換算基準の固形分濃度は28.89重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.9であった。また前記メタノール分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法より求めた平均粒子径は28.7nm、動的光散乱法により測定された平均粒子径は50.0nmであって、シリカ系微粒子に修飾されたアルミニウムの量はAl基準の単位表面積換算で1.9×10−6モル/m、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.26μeq/mであった。
【0090】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)の調製
異方形状シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−1)のかわりに異方形状シリカ系微粒子水分散ゾル(CPA−3)を用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)を調製した。
【0091】
[比較例1]
球状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1の工程(1)において、アルカリ性異方形状シリカゾル(CP−1)4000gを用いるかわりに、球状のコロイド状シリカ微粒子が分散したアルカリ性シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI−40、SiO濃度40重量%、NaO濃度0.40重量%、pH9.5、BET平均粒子径17nm、Al/SiO(モル比)=0.0006)3000gを用いた以外は実施例1と同様の方法によって、固形分濃度30重量%の、球状のシリカ系微粒子が分散したシリカ系微粒子水分散ゾル(RCPA−1)を得た。
この時、工程(1)においてアルカリ性シリカゾルにアルミン酸ナトリウム水溶液を混合したときのAl/SiOモル比は0.012であった。
【0092】
このようにして得られたシリカ系微粒子水分散ゾル(RCPA−1)のSiO濃度は29.34重量%、Al濃度は0.42重量%、 NaO濃度は0.24重量%、Al/SiOモル比は8.4×10-3、 pHは4.8であった。
また、このシリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は球状で、動的光散乱法より求めた平均粒子径は25.5nm、BET比表面積は162m/g、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.90μeq/mであった。
また、このシリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で8.5×10−7モル/mであった。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法から求めた平均粒子径は16.8nmであり、その異形度は1.51であった。
【0093】
球状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本比較例で作成した球状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(RCPA−1)を用いた以外は実施例1に記載の異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(1)と同様の方法を用いてシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾル(RCPM−1)を調製した。
このようにして得られたメタノール分散ゾル(RCPM−1)は球状のシリカ系微粒子を含み、水分含有量は約0.5重量%であって、SiO換算基準の固形分濃度は29.32重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.3であった。また、このメタノール分散ゾルに含まれる球状シリカ系微粒子のBET法より求めた平均粒子径は16.8nm、動的光散乱法により測定された平均粒子径は25.5nmであって、単位比表面積あたりのアルミニウムの修飾量は8.5×10-7モル/m、単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.9μeq/mであった。
【0094】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C1)の調製
異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本比較例で作成した球状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(RCPA−1)を用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C1)を調製した。
【0095】
[比較例2]
異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾルの調製
実施例1の工程(1)において、アルカリ性異方形状シリカゾル(CP−1)4000gに添加するアルミン酸ナトリウム水溶液(濃度0.9重量%)の量を、2712gから添加しないように変更した以外は実施例1と同様の方法を用いて異方形状のシリカ系微粒子を含むシリカ系微粒子水分散ゾル(RCPA−2)を得た。
【0096】
このようにして得られたシリカ系微粒子水分散ゾル(RCPA−2)のSiO濃度は30.27重量%、Al濃度は0.002重量%、 NaO濃度は0.21重量%、Al/SiOモル比は3.9×10-4、 pHは5.3であった。
また、このシリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子は異方形状で、動的光散乱法より求めた平均粒子径は170.5nm、BET比表面積は93m/g、シリカ系微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.13μeq/mであった。
また、このシリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で7.0×10−9モル/mであった。
また、前記シリカ系微粒子水分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法から求めた平均粒子径は29.3nmであり、その異形度は5.82であった。
【0097】
異方形状シリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製
異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本比較例で作成したシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(RCPA−2)を用いた以外は実施例1に記載の異方形状のシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製(1)と同様の方法を用いてシリカ系微粒子を含むメタノール分散ゾル(RCPM−2)を調製した。
このようにして得られたメタノール分散ゾル(RCPM−2)は異方形状のシリカ系微粒子を含み、水分含有量は約0.5重量%であって、SiO換算基準の固形分濃度は30.27重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.3であった。また、このメタノール分散ゾルに含まれるシリカ系微粒子のBET法より求めた平均粒子径は29.3nm、動的光散乱法により測定された平均粒子径は50.8nmであって、単位比表面積あたりのアルミニウムの修飾量は7.0×10−9モル/m、単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.13μeq/mであった。
【0098】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)の調製
異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(CPA−1)のかわりに本比較例で作成した異方形状のシリカ系微粒子を含む水分散ゾル(RCPA−2)を用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)を調製した。
【0099】
実施例1〜3および比較例1〜2で調製したシリカ系微粒子水分散ゾル(固形分濃度30重量%)、シリカ系微粒子の性状を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
[プライマーコート層形成用塗料組成物の調製]
[調製例1]
塗料組成物の調製
市販の水分散ポリウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製「スーパーフレックス460:固形分濃度38%」)200gに純水100gを混合し、攪拌しながらメタノール500g、およびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製「L−7604」)2gを加え、室温にて一昼夜攪拌して、プライマーコート層形成用の塗料組成物(以下、「プライマー塗料」という)を調製した。
【0102】
[試験片の作製]
[調製例2]
プラスチックレンズ基材の前処理
市販のプラスチックレンズ基材CR−39(PPG社製モノマー使用)を必要枚数、用意し、これらを40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に3分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗した後、十分に乾燥させた。
【0103】
プライマー層の形成
上記のようにして得られたプラスチックレンズ基材を、表2に示す組み合わせに従い、上記のプライマー塗料を塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度100mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を100℃で10分間、加熱処理して、塗膜(プライマー層)の予備硬化を行った。
このようにして形成された前記プライマー層の予備硬化後の膜厚は、概ね0.5μmであった。
【0104】
ハードコート層の形成
前記プラスチックレンズ基材またはプライマーコート層の表面に、表2に示す組み合わせに従い、上記のハードコート層形成用塗料組成物(すなわち、実施例1〜3で得られたハードコート塗料H1〜H3、および比較例1〜2で得られたハードコート塗料C1〜C2)をそれぞれ塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度230mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を100℃で10分間、乾燥させた後、100℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。この際、前記プライマー層の本硬化も同時に行った。
また、このようにして形成された前記ハードコート層の硬化後の膜厚は、概ね3.0〜3.5μmであった。
【0105】
反射防止膜層の形成
硬化されたハードコート層の表面に、表2に示す組み合わせに従い、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させた。ハードコート層側から大気側に向かって、SiO2:0.06λ、ZrO2:0.15λ、SiO2:0.04λ、ZrO2:0.25λ、SiO2:0.25λの順序で積層された反射防止膜の層を形成した。なお、設計波長λは、520nmとした。
【0106】
このようにして得られた試験片1〜9について、上記に示した方法により膜硬度、耐擦傷性、透明度(曇りの程度)、密着性、耐熱水性、耐候密着性を評価した結果を表3に示す。
この結果から明らかなように、実施例で作成した塗料組成物、すなわち異方形状のシリカ系微粒子の分散ゾルを含む塗料組成物を塗布して得られた試験片は、表面にアルミニウムを修飾していない異方シリカゾルを含む塗料組成物よりも優れた膜硬度、耐擦傷性、透明性、耐熱水性および耐候密着性を兼ね備えており、また密着性にも優れる塗膜を形成できることがわかった。さらに、表面にアルミニウムを修飾した球状シリカゾルを含む塗料組成物よりも、塗膜硬度に優れた塗膜を形成できることがわかった。
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルであって、該シリカ系微粒子の表面が負電荷を有し、かつ該シリカ系微粒子の表面がアルミニウムで修飾されており、該アルミニウムの修飾量はAl換算基準でシリカ系微粒子の単位表面積当り0.01×10−6〜2.0×10−6モル/mの範囲にあることを特徴とするシリカ系微粒子の分散ゾル。
【請求項2】
前記シリカ系微粒子の動的光散乱法により測定された平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲にあり、BET法により測定された平均粒子径(D2)が10〜50nmの範囲にあり、異形度(D1/D2)が1.55〜4.00の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のシリカ系微粒子の分散ゾル。
【請求項3】
(A)請求項1または請求項2に記載のシリカ系微粒子の分散ゾルと、
(B)バインダー成分
とを含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項4】
表面にアルミニウムが修飾された異方形状のシリカ系微粒子を含む分散ゾルの製造方法であって、
(1)異方形状のシリカ微粒子またはシリカを主成分とする微粒子を含む、pH9.0〜11.5のアルカリ性シリカゾルに、アルミン酸塩の水溶液を、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiOで表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAlで表したとき、そのモル比(Al/SiO)が0.0005〜0.050となるような割合で混合する工程、
(2)前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加熱して、0.5〜20時間、撹拌する工程、
を含むことを特徴とするシリカ系微粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項5】
前記モル比(Al/SiO)が0.005〜0.050の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のシリカ系微粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項6】
さらに、下記工程
(3)前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換除去して、該混合液のpHを3.0〜6.0の範囲に調整する工程
を含むことを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載のシリカ系微粒子分散ゾルの製造方法。

【公開番号】特開2012−162426(P2012−162426A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24972(P2011−24972)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】