説明

シリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法、シリカ系樹脂膜用の組成物、シリカ系樹脂膜の形成方法およびシリカ系樹脂膜

【課題】高温焼成で形成される膜厚の厚いシリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法であって、下記一般式(1)で表される第1アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成される第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応を進行させる第1工程と、第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存する第1工程の反応系に下記一般式(2)で表される第2アルコキシシランを混合し、第2アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成された第2アルコキシシランの加水分解生成物と第1工程の脱水縮合反応生成物と残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応を進行させる第2工程と、を含む。(RSi(OR(1)Si(OR(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法、シリカ系樹脂膜用の組成物、シリカ系樹脂膜の形成方法およびシリカ系樹脂膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(LED)等の光半導体素子の製造において、光半導体素子等の封止に用いられる透明封止剤組成物が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された組成物は、両末端にシラノール基を有するポリシロキサンとテトラアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール反応させて得られる特定のアルコキシシラン変性ポリシロキサンと硬化触媒とを含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/090280号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、光半導体素子等の光デバイスや太陽電池、あるいは受光、発光を行わないその他の素子等は、上述した特許文献1の組成物等で形成されるシリカ系樹脂膜等の樹脂膜で保護されている。この樹脂膜には、保護層として好適に使用できるよう、高い耐久性が求められている。
【0005】
樹脂膜の耐久性を向上させる方法としては、樹脂膜用の組成物を高温で焼成して樹脂膜を形成することが考えられる。組成物を高温で焼成することにより、樹脂膜の劣化の原因となりうる組成物中の不純物を燃焼除去することができるため、樹脂膜の耐久性を高めることができる。しかしながら、樹脂膜用の組成物を高温で焼成した場合、樹脂膜にクラックが生じやすいという課題があった。特に、樹脂膜の厚さを厚くするほどクラックが発生しやすい。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温焼成で形成される膜厚の厚いシリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様はシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法であり、このシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法は、500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法であって、下記一般式(1)で表される第1アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成される第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応を進行させる第1工程と、第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存する第1工程の反応系に下記一般式(4)で表される第2アルコキシシランを混合し、第2アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成された第2アルコキシシランの加水分解生成物と第1工程の脱水縮合反応生成物と残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応を進行させる第2工程と、を含むことを特徴とする。
(RSi(OR (1)
[一般式(1)中、Rはアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数のRおよび複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
Si(OR (4)
[一般式(4)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【0008】
この態様によれば、高温焼成で形成される膜厚の厚いシリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の他の態様はシリカ系樹脂膜用の組成物であり、このシリカ系樹脂膜用の組成物は、500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物であって、上記態様の組成物の製造方法で製造されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様はシリカ系樹脂膜の形成方法であり、このシリカ系樹脂膜の形成方法は、上記態様の組成物を基材に塗布する工程と、基材に塗布した組成物を500℃以上で焼成し、厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の態様はシリカ系樹脂膜であり、このシリカ系樹脂膜は、上記態様のシリカ系樹脂膜の形成方法により形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温焼成で形成される膜厚の厚いシリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(A)〜図1(D)は、実施形態1に係るシリカ系樹脂膜の形成方法を説明するための工程断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態に係る組成物の製造方法は、500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上の膜厚が厚いシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法である(以下適宜、この組成物を樹脂膜用組成物と称する)。以下、本実施形態に係る樹脂膜用組成物の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0016】
<第1工程>
第1工程は、下記一般式(1)で表される第1アルコキシシランの加水分解反応と、当該加水分解反応で生成される前記第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応とを進行させる工程である。
(RSi(OR (1)
[一般式(1)中、Rはアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数のRおよび複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【0017】
上記一般式(1)で表される第1アルコキシシランは、例えば下記一般式(2)で表される。
【0018】
(R21)(R22)Si(OR23(OR24 (2)
[一般式(2)中、R21およびR22は、それぞれ独立に上記一般式(1)のRと同じアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基である。R23およびR24は、それぞれ独立に上記一般式(1)のRと同じ炭素数1〜5のアルキル基である。aおよびbは、0≦a≦2、0≦b≦2であって、かつa+b=2の条件を満たす整数である。]
【0019】
上記一般式(1)および(2)中のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
【0020】
上記一般式(1)および(2)中のアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等が挙げられる。好ましくはベンジル基である。
【0021】
上記一般式(1)および(2)中の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基等の環状のアルキル基;が挙げられる。好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0022】
第1アルコキシシランの具体例としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルモノメトキシモノエトキシシラン、ジエチルモノメトキシモノエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルモノメトキシモノエトキシシラン等が挙げられる。中でも反応性の点からジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0023】
第1工程では、第1アルコキシシラン、酸触媒、水および溶媒を混合し、第1アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を進行させる。
【0024】
酸触媒は有機酸、無機酸のいずれも使用することができる。無機酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等を使用することができ、中でも硝酸が好適である。有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n−酪酸等のカルボン酸、および硫黄含有酸残基を有する有機酸を使用することができる。硫黄含有酸残基を有する有機酸としては、有機スルホン酸などが挙げられ、それらのエステル化物としては有機硫酸エステル、有機亜硫酸エステル等が挙げられる。これらの中で、特に有機スルホン酸、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0025】
13−X (3)
[一般式(3)中、R13は、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはスルホン酸基である。]
【0026】
上記一般式(3)において、R13としての炭化水素基は、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。この炭化水素基は、飽和のものでも不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。R13の炭化水素基が環状の場合、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、中でもフェニル基が好ましい。この芳香族炭化水素基における芳香環には、置換基として炭素数1〜20の炭化水素基が1個または複数個結合していてもよい。当該芳香環上の置換基としての炭化水素基は、飽和のものでも不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。また、R13としての炭化水素基は、1個または複数個の置換基を有していてもよく、この置換基としては、例えばフッ素原子等のハロゲン原子、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0027】
上記酸触媒は、水の存在下でアルコキシシランを加水分解する際の触媒として作用するが、使用する酸触媒の量は、加水分解反応の反応系中の濃度が1〜1000ppm、特に5〜800ppmの範囲になるように調製することが好ましい。水の添加量は、これによってシロキサンポリマーの加水分解率が変わるので、得ようとする加水分解率に応じて決められる。
【0028】
加水分解反応の反応系における溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノールのような一価アルコール、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類あるいはこれらのモノアセテート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンのようなケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
このような反応系で第1アルコキシシランを加水分解させることにより、第1アルコキシシランの加水分解生成物が生成され、この加水分解生成物が脱水縮合して縮合生成物が得られる。第1工程は、通常1〜24時間程度である。
【0030】
<第2工程>
第2工程は、第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存する第1工程の反応系に下記一般式(4)で表される第2アルコキシシランを混合し、第2アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成された第2アルコキシシランの加水分解生成物と第1工程の脱水縮合反応生成物と残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応を進行させる工程である。
Si(OR (4)
[一般式(4)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【0031】
上記一般式(4)で表される第2アルコキシシランは、例えば下記一般式(5)で表される。
【0032】
Si(OR31(OR32(OR33(OR34 (5)
[一般式(5)中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立に上記一般式(4)のRと同じ炭素数1〜5のアルキル基を表す。c、d、eおよびfは、0≦c≦4、0≦d≦4、0≦e≦4、0≦f≦4であって、かつc+d+e+f=4の条件を満たす整数である。]
【0033】
上記一般式(4)および(5)中の炭素数1〜5のアルキル基は、上述した一般式(1)および(2)中の炭素数1〜5のアルキル基と同様である。
【0034】
第2アルコキシシランの具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペントキシシラン、テトラフェノキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、モノメトキシトリエトキシシラン等が挙げられ、中でも反応性の点からテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0035】
第2工程では、第1工程の反応系に第2アルコキシシランを混合する。第2アルコキシシランは、第1アルコキシシランの加水分解生成物が脱水縮合を開始した後であって、第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存するタイミングで混合する。具体的には、例えば第1工程の開始から1〜24時間後に第2アルコキシシランを混合する。
【0036】
第2アルコキシシランを第1工程の反応系に混合すると、第2アルコキシシランの加水分解反応が進行する。その後、第2アルコキシシランの加水分解生成物と、第1工程の脱水縮合反応生成物と、残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応が進行する。
【0037】
第2工程の終了後、合成された縮合生成物と、反応に用いた溶媒を含む反応溶液が得られる。例えば縮合生成物は、従来公知の方法により溶媒と分離し、溶媒を後述する有機溶剤で置換した溶液状態で得ることができる。なお、合成された縮合生成物は、従来公知の方法により溶媒と分離し、乾燥した固体状態で得ることもできる。以上説明した樹脂膜用組成物の製造方法により、500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物が製造される。
【0038】
樹脂膜用組成物に含まれる縮合生成物は、第1アルコキシシランの加水分解生成物と、第2アルコキシシランの加水分解生成物と、第1工程の脱水縮合反応により生成された、第1アルコキシシラン由来のモノマーが複数結合したオリゴマーとが脱水縮合した構造を有する。縮合生成物の構造は、例えば下記一般式(6)で表される。
【0039】
【化1】

[一般式(6)中、Rはそれぞれ独立に上記一般式(1)のRと同じアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基である。g:hは1:9〜9:1の範囲である。]
【0040】
第1アルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合する有機基(本実施形態では、アリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基)を2つ有する2官能のアルコキシシランである。このような2官能のアルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合する有機基の存在によって、4官能のアルコキシシランである第2アルコキシシランに比べて、加水分解反応および脱水縮合反応が進行しにくい。そのため、第1アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応と第2アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応とを同一反応系内で同時に開始すると、第2アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応が先に進み、縮合生成物中の第1アルコキシシラン由来のユニット(基)の含有量が少なくなる。そして、縮合生成物中のケイ素原子に直接結合する有機基の含有量が少なくなる。
【0041】
このケイ素原子に直接結合する有機基は、縮合生成物が焼成時に収縮することで生じる応力を緩和する機能を有する。そのため、ケイ素原子に直接結合する有機基の含有量が少ないと、シリカ系樹脂膜にクラックが発生しやすくなる。
【0042】
これに対し、本実施形態では、2官能の第1アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を進行させる第1工程の後に、4官能の第2アルコキシシランを混合して第2アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を進行させる第2工程を実施している。この場合、第2アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応に先行して、第1工程において第1アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を開始しているため、縮合生成物中の第1アルコキシシラン由来のユニットの含有量を増やすことができる。その結果、シリカ系樹脂膜のクラック耐性を向上させることができる。
【0043】
<有機溶剤>
有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのモノエーテル系グリコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテル系エステル類が挙げられる。
【0044】
<界面活性剤>
本実施形態に係る樹脂膜用組成物は、任意成分として界面活性剤を含有する。界面活性剤を含むことによって、樹脂膜用組成物の塗布性、平坦化性、展開性を向上させることができ、塗布後に形成される樹脂膜用組成物層の塗りムラの発生を減少させることができる。このような界面活性剤として、従来公知のものを用いることができるが、シリコーン系の界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、樹脂膜用組成物全体に対し、10〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppm、より好ましくは500〜1500質量ppmの範囲で含まれる。界面活性剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0045】
添加剤は、樹脂膜用組成物の粘度等の特性を調整するために必要に応じて添加される。
【0046】
<シリカ系樹脂膜の形成方法>
図1(A)〜図1(D)を参照して、シリカ系樹脂膜を形成する方法について説明する。図1(A)〜図1(D)は、実施形態1に係るシリカ系樹脂膜の形成方法を説明するための工程断面模式図である。
【0047】
本実施形態に係るシリカ系樹脂膜の形成方法は、上述の樹脂膜用組成物を基材に塗布する工程と、
基材に塗布した樹脂膜用組成物を500℃以上で焼成し、厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜を形成する工程と、を含む。
【0048】
まず、図1(A)に示すように、光デバイス1が搭載された基材2を用意する。光デバイス1は、例えばLED(発光ダイオード)や有機EL等である。基材2は、例えば光デバイス1の受光面あるいは発光面側に積層される表面側保護層等である。なお、基材2は、裏面側保護層等であってもよい。また、基材2には、太陽電池や、基材2あるいは後述するシリカ系樹脂膜5を介した受光あるいは発光を行わない他の素子等が搭載されてもよい。
【0049】
次に、図1(B)に示すように、光デバイス1が搭載された側の基材2の表面に、本実施の形態に係る樹脂膜用組成物を塗布して、樹脂膜用組成物層3を形成する。樹脂膜用組成物の塗布方法は特に限定されず、周知の方法を採用することができる。これにより、光デバイス1が樹脂膜用組成物層3で被覆される。樹脂膜用組成物層3の厚さは、最終的に形成されるシリカ系樹脂膜5の厚さに応じて調整される。本実施形態では、シリカ系樹脂膜5の厚さが2.0μm以上の厚膜となるように、樹脂膜用組成物層3の厚さが調整される。
【0050】
次に、図1(C)に示すように、樹脂膜用組成物層3が積層された基材2を電気炉等の加熱炉4内に載置し、500℃以上の温度で樹脂膜用組成物層3を焼成する。その結果、図1(D)に示すように、樹脂膜用組成物が熱硬化して、基材2の表面にシリカ系樹脂膜5が形成される。光デバイス1は、シリカ系樹脂膜5によって封止される。樹脂膜用組成物の焼成温度を500℃以上とすることで、シリカ系樹脂膜5の劣化等の原因となり得る不純物を燃焼除去することができるため、シリカ系樹脂膜5を永久膜として好適に使用することができる。
【0051】
以上の工程により、本実施の形態に係るシリカ系樹脂膜を形成することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る樹脂膜用組成物の製造方法は、500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法であって、上記一般式(1)で表される第1アルコキシシランの加水分解反応と、当該加水分解反応で生成される第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応とを進行させる第1工程と、第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存する第1工程の反応系に上記一般式(2)で表される第2アルコキシシランを混合し、第2アルコキシシランの加水分解反応と、当該加水分解反応で生成された第2アルコキシシランの加水分解生成物、第1工程の脱水縮合反応生成物および残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応とを進行させる第2工程と、を含む。これにより、第1アルコキシシランおよび第2アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を同一反応系内で同時に進行させる場合と比べて、ケイ素原子に直接結合する有機基の含有量を増やすことができる。そのため、高温焼成で形成される膜厚の厚いシリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができる。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態に係る樹脂膜用組成物の製造方法は、3官能のアルコキシシランを混合することを除き、実施形態1に係る樹脂膜用組成物の製造方法と共通する。また、シリカ系樹脂膜の形成方法は実施形態1と同一である。以下、実施形態2に係る樹脂膜用組成物の製造方法について実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0054】
本実施形態に係る樹脂膜用組成物の製造方法では、実施形態1の第2工程において、第2アルコキシシランに加えて、下記一般式(7)で表される第3アルコキシシランをさらに混合する。
(RSi(OR (7)
[一般式(7)中、Rはアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【0055】
上記一般式(7)で表される第3アルコキシシランは、例えば下記一般式(8)で表される。
【0056】
41Si(OR42(OR43(OR44 (8)
[一般式(8)中、R41は、上記一般式(7)のRと同じアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、R42、R43およびR44は、それぞれ独立に上記一般式(7)のRと同じ炭素数1〜5のアルキル基である。g、hおよびiは、0≦g≦3、0≦h≦3、0≦i≦3であって、かつg+h+i=3の条件を満たす整数である。]
【0057】
上記一般式(7)および(8)中のアリール基、アラルキル基および炭素数1〜5のアルキル基は、上述した一般式(1)および(2)中のアリール基、アラルキル基および炭素数1〜5のアルキル基と同様である。また、上記一般式(7)および(8)中の炭素数1〜5のアルキル基は、上述した一般式(1)および(2)中の炭素数1〜5のアルキル基と同様である。
【0058】
第3アルコキシシランの具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルジメトキシモノエトキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルジメトキシモノエトキシシラン等が挙げられ、中でも反応性の点からメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0059】
第3アルコキシシランは、たとえば第2アルコキシシランとほぼ同時に混合される。第2アルコキシシランおよび第3アルコキシシランを第1工程の反応系に混合すると、第2アルコキシシランおよび第3アルコキシシランの加水分解反応が進行する。その後、第2アルコキシシランの加水分解生成物と、第3アルコキシシランの加水分解生成物と、第1工程の脱水縮合反応生成物と、残存する第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応が進行する。
【0060】
本実施形態の樹脂膜用組成物に含まれる縮合生成物は、第1アルコキシシランの加水分解生成物と、第2アルコキシシランの加水分解生成物と、第3アルコキシシランの加水分解生成物と、第1工程の脱水縮合反応により生成された、第1アルコキシシラン由来のモノマーが複数結合したオリゴマーとが脱水縮合した構造を有する。縮合生成物の構造は、例えば下記一般式(9)で表される。
【0061】
【化2】

[一般式(9)中、Rはそれぞれ独立に上記一般式(1)のRと同じアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基である。Rは上記一般式(7)のRと同じアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基である。l:mは1:9〜9:1の範囲である。また、m:oは1:9〜9:1の範囲である。l:oは1:9〜9:1の範囲である。]
【0062】
3官能のアルコキシシランである第3アルコキシシランについても、第2アルコキシシランと同様に、第1アルコキシシランに比べて加水分解反応および脱水縮合反応が進行しやすい。そのため、第1工程の後に第3アルコキシシランを第1工程の反応系に混合することで、第1アルコキシシランおよび第3アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を同時に開始させる場合に比べて、縮合生成物中の第1アルコキシシランの含有量を増やすことができる。その結果、シリカ系樹脂膜のクラック耐性を向上させることができる。
【0063】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。なお、各実施例および各比較例で行われる「熟成」とは、加水分解反応および脱水塾合反応を進行させる工程を意味する。
【0065】
(実施例I:第1アルコキシシラン+第2アルコキシシラン)
(実施例I−1)
第1アルコキシシランとしてのジメチルジエトキシシラン((CHSi(OC)130gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)200gと、加水分解用水40gと、酸触媒としての60%濃硝酸100μlとを混合し、室温で熟成させた(第1工程)。
【0066】
第1工程の開始から6時間後、第1工程の反応系に、第2アルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン(Si(OC)250gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)500gと、加水分解用水300gとを混合して熟成させた(第2工程)。以上の工程により、実施例I−1の樹脂膜用組成物を得た。
【0067】
(比較例I−1)
第1アルコキシシランとしてのジメチルジエトキシシラン((CHSi(OC)130gと、第2アルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン(Si(OC)250gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)700gと、加水分解用水340gと、酸触媒としての60%濃硝酸100μlとを混合し、室温で熟成させた。以上の工程により、比較例I−1の樹脂膜用組成物を得た。
【0068】
(実施例II:第1アルコキシシラン+第2アルコキシシラン+第3アルコキシシラン)
(実施例II−1)
第1アルコキシシランとしてのジメチルジエトキシシラン((CHSi(OC)130gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)200gと、加水分解用水40gと、酸触媒としての60%濃硝酸100μlとを混合し、室温で熟成させた(第1工程)。
【0069】
第1工程の開始から6時間分後、第1工程の反応系に、第2アルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン(Si(OC)250gと、第3アルコキシシランとしてのメチルトリエトキシシラン(CHSi(OC)450gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)500gと、加水分解用水300gとを混合して熟成させた(第2工程)。以上の工程により、実施例II−1の樹脂膜用組成物を得た。
【0070】
(比較例II−1)
第1アルコキシシランとしてのジメチルジエトキシシラン((CHSi(OC)130gと、第2アルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン(Si(OC)250gと、第3アルコキシシランとしてのメチルトリエトキシシラン(CHSi(OC)450gと、溶媒としてのイソプロパノール(IPA)700gと、加水分解用水340gと、酸触媒としての60%濃硝酸100μlとを混合し、室温で熟成させた。以上の工程により、比較例II−1の樹脂膜用組成物を得た。
【0071】
(シリカ系樹脂膜の形成)
実施例I−1,II−1および比較例I−1,II−1の樹脂膜用組成物を、コーター(SS8261NUU:東京応化工業株式会社製)を用いてサンプル基板上に塗布した。各実施例および各比較例について、最終膜厚が1.5μmとなる組成物層、2.0μmとなる組成物層、および2.5μmとなる組成物層の3種類を用意した。また、各実施例および各比較例について、それぞれ2セットのサンプルを用意した。
【0072】
次に、サンプルをホットプレート上に載置して、150℃で3分間プリベーク処理を施した。その後、1セットのサンプルを、縦型ベーク炉(TS8000MB:東京応化工業株式会社製)にてN中、500℃で30分間焼成して熱硬化させて、厚さ2.0μmのシリカ系樹脂膜(焼成500℃)を得た。また、残りの1セットのサンプルを、縦型ベーク炉(TS8000MB:東京応化工業株式会社製)にてN中、300℃で30分間焼成して熱硬化させて、厚さ2.0μmのシリカ系樹脂膜(焼成300℃)を得た。
【0073】
(クラック耐性評価)
各実施例および各比較例のシリカ系樹脂膜について、顕微鏡観察にてクラックの有無を確認した。クラックが確認されない場合を最良(◎)とし、永久膜としての使用に支障がでない程度のクラックが確認された場合を良(○)とし、永久膜としての使用に支障がでる程度のクラックが確認された場合を不適当(×)とした。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示すように、焼成温度300℃の場合は、実施例I−1およびII−1と、比較例I−1およびII−1とで、ともに全ての膜厚で良好なクラック耐性が得られた。一方、焼成温度を500℃とした場合、実施例I−1およびII−1では、膜厚2.0μmまではクラックの発生がなく、膜厚2.5μmでは永久膜としての使用に支障がでない程度のクラックの発生に止まった。これに対し、比較例I−1およびII−1では、膜厚1.5μmではクラックの発生がなかったが、膜厚2.0μm以上では永久膜としての使用に支障がでる程度のクラックが発生した。これらのことから、2官能の第1アルコキシシランの加水分解反応および脱水縮合反応を進行させた後に、4官能の第2アルコキシシラン(実施形態2の場合はさらに3官能の第3アルコキシシラン)の加水分解反応および脱水縮合反応を進行させることで、高温焼成(500℃以上)で形成される膜厚の厚い(2.0μm以上)シリカ系樹脂膜におけるクラック耐性の向上を図ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0076】
1 光デバイス、 2 基材、 3 樹脂膜用組成物層、 4 加熱炉、 5 シリカ系樹脂膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物の製造方法であって、
下記一般式(1)で表される第1アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成される前記第1アルコキシシランの加水分解生成物の脱水縮合反応を進行させる第1工程と、
前記第1アルコキシシランの加水分解生成物が残存する前記第1工程の反応系に下記一般式(4)で表される第2アルコキシシランを混合し、第2アルコキシシランの加水分解反応、および、当該加水分解反応で生成された前記第2アルコキシシランの加水分解生成物と前記第1工程の脱水縮合反応生成物と残存する前記第1アルコキシシランの加水分解生成物との脱水縮合反応を進行させる第2工程と、
を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
(RSi(OR (1)
[一般式(1)中、Rはアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数のRおよび複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
Si(OR (4)
[一般式(4)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【請求項2】
前記第2工程において、下記一般式(7)で表される第3アルコキシシランをさらに混合する請求項1に記載の組成物の製造方法。
(RSi(OR (7)
[一般式(7)中、Rはアリール基、アラルキル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基である。複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物の製造方法で製造されたことを特徴とする500℃以上の高温焼成で形成される厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜用の組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物を基材に塗布する工程と、
基材に塗布した前記組成物を500℃以上で焼成し、厚さ2.0μm以上のシリカ系樹脂膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするシリカ系樹脂膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載のシリカ系樹脂膜の形成方法により形成されたことを特徴とするシリカ系樹脂膜。

【図1】
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【公開番号】特開2013−47294(P2013−47294A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185949(P2011−185949)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】