説明

シリカ被覆混晶酸化物粒子、その製法及びそれを用いた化粧料

【課題】緻密で実用的なシリカ膜で被覆され、かつ分散性及び透明性が向上したシリカ被覆混晶酸化物粒子及びその経済的な製造法、さらにシリカ被覆混晶酸化物粒子が良好に分散し、特に透明感と保存安定性に優れた紫外線遮蔽用化粧料を提供すること。
【解決手段】BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子の表面が緻密な薄膜シリカにより被覆されていることを特徴とするシリカ被覆混晶酸化物粒子およびその製造方法、該製造方法により得られるシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いた化粧料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子の表面を、特定の赤外吸収スペクトルピークを有し、かつ緻密で実用的なシリカ薄膜で被覆されており、良好な分散性を有し、化粧料、特に紫外線遮蔽用化粧料に用いるのに好適なシリカ被覆混晶酸化物粒子及びその製法に関する。また、化粧時の使用感と白浮き防止効果に優れ、且つ紫外線遮蔽能が高く、しかも保存安定性に優れた前記シリカ被覆混晶酸化物粒子を含有する化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線遮蔽用化粧料には、紫外線遮蔽能に優れ、安全性が高い無機系紫外線遮蔽材として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムといった金属酸化物が広く使われている。
【0003】
しかしながら、これらの金属酸化物をそのまま化粧料中に配合した場合には、化粧時の使用感が悪くなる、あるいは、金属酸化物が有する光触媒活性により人体に悪影響を及ぼすといった問題があるので光触媒活性能を持たない無機物質で表面を被覆することが行われている。アルミナ、シリカ等で被覆された金属酸化物が市販されているが、被覆による光触媒活性の抑制と化粧料に配合した時の良好な使用感を両方満足できる製品は知られていなかった。
【0004】
本発明者らは、先に1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルのピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150〜1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ、屈折率が1.435以上であるシリカ膜を有するシリカ被覆金属酸化物、その製造法及びそれを含有する化粧料について開示し、膜厚0.1〜100nmのシリカ膜で被覆した、テトラリン自動酸化法により測定した光触媒活性度が60Pa/min.以下である前記シリカ被覆金属酸化物を含有することにより、使用感が良好で、しかも光触媒活性の抑制効果が高く、保存安定性に優れた紫外線遮蔽用化粧料が得られることを示した。
【0005】
近年、紫外線遮蔽用化粧料において高い紫外線遮蔽能に加え良好な使用感や透明感が要求されるようになってきている。従って、紫外線遮蔽材として使用される金属酸化物に対しても、化粧料配合時に良好な使用感や透明感を与えるように、従来よりも一次粒径が小さくかつ分散性が優れたものが望まれるようになっている。本発明者らの発明に基づく前記シリカ被覆金属酸化物は、光触媒活性の抑制、使用感といった優れた特性を有してはいるが、化粧料配合時の透明性を高めるために、さらなる微粒子化と分散性の向上が望まれていた。
【0006】
しかし、一次粒径の小さな金属酸化物粉は、溶媒に懸濁すると凝集ダマが発生するため、高分散させることが容易でなく、シリカ被覆に際しあらかじめ、またはシリカ被覆反応中に、超音波分散処理や湿式ビーズミルあるいはホモジナイザー等による解砕処理を行ったり、通常よりも余分な工程が必要なため、経済上問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、分散性に富み、卓越した可視光透明性と紫外線遮蔽能を有し、さらに光触媒活性が充分に低く抑えられたシリカ被覆混晶酸化物粒子及びその経済的な製造法、さらにはシリカ被覆混晶酸化物粒子を含み、特に可視光透明性に優れた紫外線遮蔽能化粧料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記状況に鑑みて鋭意研究の結果、BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子の表面を、特定の赤外吸収スペクトルピークを有し、かつ緻密で実用的なシリカ薄膜で被覆することにより、さらに良好な分散性を有し、化粧料、特に可視光透明性にすぐれた紫外線遮蔽用化粧料に用いるのに好適なシリカ被覆混晶酸化物粒子(第一の目的)及びその製法(第二の目的)を見いだした。
【0009】
また、前記シリカ被覆混晶酸化物粒子を配合してなる化粧料は、化粧時の使用感や透明感に優れ、且つ紫外線遮蔽能が高く、しかも保存安定性に優れた(第三の目的)ものであった。
【0010】
本発明の第一の目的を達成するために、シリカ被覆混晶酸化物粒子の表面が、特定の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク比を有し、かつ混晶酸化物粒子の複雑な形状にも付き回りが良く、極めて薄い膜厚においても被覆性の良好な、実用的な、緻密なシリカ膜で被覆されてなるシリカ被覆混晶酸化物粒子を提供する。
【0011】
ここで言う「緻密」とは、形成されたシリカ膜の屈折率が1.435以上であることをいう。一般にシリカ膜の緻密性と屈折率は正の相関があるとされており(例えばC.JEFFEREY BRINKER, Saul-GEL SCIENCE,581〜583,ACADEMIC PRESS(1990))、通常のゾル−ゲル法で得られるシリカ膜は焼成を行なえば屈折率は1.435以上になるが、焼成を行なわなければ1.435未満であり緻密生が低い。しかし、本発明では焼成を行なわずに、この値を達成している。
【0012】
また、ここで言う「実用的」とは、シリカの基材への被覆力が強く、実質的に被膜の剥離が起こらず、さらに適度な親水性を有するものを意味する。シリカ膜の親水性は、1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150〜1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)で示される。
【0013】
すなわちI1はSiOHの変角振動の吸収であり、I2はSi−O−Siの伸縮振動の吸収であり、I1/I2値が大きいほど親水性は高いことになる。本発明における「適度な親水性」とは、この値が0.2以上である場合をいう。通常のゾル−ゲル法で得られるシリカ膜は焼成を行なはなければI値は0.2以上であるが、上記したように緻密さが低下する。一方、焼成を行なえば緻密さは向上するが、I値は0.2未満になり、親水性が低下し、適度な親水性ではなくなる。
【0014】
このように本発明のシリカ被膜は、適度な親水性を有するため化粧料に配合したときの良好な表面物性(しっとり感、滑り性)を保持しながら、他方で、焼成しなければ得られなかった緻密で強固な被覆となり、0.1nm程度の極めて薄い膜厚でも混晶酸化物粒子の光触媒活性を抑制する能力を高く維持している。
【0015】
本発明の第二の目的を達成するために、BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子に、イ)珪酸または珪酸を産生し得る前駆体、ロ)アルカリ、ハ)有機溶媒、及び必要に応じて、ニ)水を順序に関係無く、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲になるよう添加し、混晶酸化物粒子の表面にシリカを沈着させシリカ膜を形成することを特徴とするシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第三の目的を達成するために、混晶酸化物粒子の表面がシリカ膜厚0.1〜25nmのシリカで被覆されているシリカ被覆混晶酸化物粒子を配合することにより、所望の特性を有する化粧料が得られることを見い出し、本発明の第三の側面を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第三の側面は、該混晶酸化物粒子が10〜200m2/gのBET比表面積を有し、混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子を含有する化粧料の提供に関する。
【0018】
また、本発明の第三の側面では、シリカ膜厚0.1〜25nmのシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有する前記の化粧料に関し、テトラリン自動酸化法により測定したシリカ被覆混晶酸化物粒子の光触媒活性度が60Pa/min.以下、好ましくは45Pa/min.以下で、サンセットイエロ−法により測定したシリカ被覆混晶酸化物粒子の色素退色速度(ΔABS490/hr)が0.1以下、好ましくは0.06以下であり、ガラス平板法により測定したシリカ被覆混晶酸化物粒子の動摩擦係数が0.550以下、好ましくは0.500以下である前記の化粧料を提供することに関する。
【0019】
さらに、本発明の第三の側面では、抗酸化物質を含有させた前記の化粧料、及びさらに紫外線吸収剤を含有させた前記化粧料を提供することに関する。
【0020】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
[1]BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子の表面が緻密な薄膜シリカにより被覆されていることを特徴とするシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[2]シリカ膜厚が0.1〜25nmであることを特徴とする上記[1]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[3]テトラリン自動酸化法により測定した光触媒活性度が60Pa/min.以下であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【0021】
[4]シリカ被膜が、1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150〜1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上であることを特徴とする上記[1]ないし[3]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[5]サンセットイエロ−法により測定される色素退色速度(ΔABS490/hr)が0.1以下である上記[1]ないし[4]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[6]ガラス平板法により測定される動摩擦係数が0.550以下である上記[1]ないし[5]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【0022】
[7]ハロゲン化金属を含む混合ガスを酸化性ガスで高温酸化することにより金属酸化物を製造する気相製造法において、該ハロゲン化金属として、チタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を含む混合ガス、及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱してから反応させて製造することを特徴とする上記[1]ないし[6]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。[8]ハロゲン化金属を含む混合ガスが、チタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を各々単独で気化した後にガス状で混合したものであることを特徴とする上記[7]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[9]混晶酸化物粒子が、一次粒子内にチタン−酸素−珪素結合を有する混晶を含む混晶酸化物粒子であることを特徴とする上記[1]ないし[8]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【0023】
[10]混晶酸化物粒子が、一次粒子内にチタン−酸素−アルミニウム結合を有する混晶を含む混晶酸化物であることを特徴とする上記[1]ないし[8]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[11]混晶酸化物粒子が、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を含み、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛特有の回折ピークである格子面(100)、(002)、(101)と、結晶性シリカに特有の回折ピークである格子面(101)に回折ピークを有する酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物であることを特徴とする上記[1]ないし[6]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[12]混晶酸化物粒子が、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を1次粒子中に含むことを特徴とする上記[11]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【0024】
[13]混晶酸化物粒子が、一次粒子内に亜鉛−酸素−珪素結合を有する混晶を含む混晶酸化物粒子であることを特徴とする上記[11]または[12]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[14]混晶酸化物粒子が、気体状の亜鉛を酸素と水蒸気の存在下で酸化させる気相反応において、不活性ガス中に気体状の亜鉛を含むZn原料ガスと、酸素と水蒸気を含む酸化性ガスを、反応器にそれぞれ導入し、反応器内で亜鉛の酸化反応をさせ、その反応帯に珪素含有組成物を導入し酸化することにより製造される複合酸化物であることを特徴とする上記[11]ないし[13]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[15]800℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が、30%以下であることを特徴とする上記[1]ないし[14]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【0025】
[16]シリカ被膜の表面を疎水性付与剤にて表面疎水化することを特徴とする上記[1]ないし[15]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[17]疎水性付与剤が、シリコン油類、アルコキシシラン類、シランカップリング剤類及び、高級脂肪酸塩類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の疎水性付与剤である上記[16]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[18]イ)BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子、ロ)有機基及びハロゲンを含まない珪酸または前記珪酸を産生し得る前駆体、ハ)アルカリ、ニ)有機溶媒及びホ)水を順序に関係無く、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲になるよう添加し、混晶酸化物粒子の表面に緻密な薄膜シリカを選択的に形成することを特徴とする上記[1]ないし[17]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【0026】
[19]イ)アルカリ、ロ)有機溶媒及びハ)水の混合液に、ニ)BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子を添加し、さらに、ホ)有機基及びハロゲンを含まない珪酸または前記珪酸を産生し得る前駆体、ヘ)有機溶媒及び必要に応じて、ヘ)水からなる混合液を、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲となるように添加し、混晶酸化物粒子の表面に緻密な薄膜シリカを選択的に形成することを特徴とする上記[1]ないし[17]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
[20]アルカリが、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムからなる群より選ばれる1種以上である上記[18]または[19]に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【0027】
[21]有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びアセトンからなる群より選ばれる1種以上である上記[18]ないし[20]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
[22]上記[18]ないし上記[21]のいずれかに記載の製造方法により製造されたシリカ被覆混晶酸化物粒子。
[23]上記[1]ないし[17]、及び上記[22]のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含む化粧料。
【0028】
[24]抗酸化剤を含有することを特徴とする上記[23]に記載の化粧料。
[25]有機系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする上記[23]または[24]に記載の化粧料。
[26]上記[23]ないし[25]のいずれかに記載の化粧料からなる紫外線防止化粧品。
[27]W/OもしくはO/W乳液またはクリーム、ファンデーションあるいはジェルである上記[26]に記載の紫外線防止化粧品。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
まず、本発明の化粧料(第三の側面)に好適に用いることができるシリカ被覆混晶酸化物粒子(第一の側面)及びその製造法(第二の側面)について説明する。
【0030】
本発明の化粧料には、混晶酸化物粒子の表面が、1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:I1は1150〜1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上であるシリカ膜で被覆されたシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いることができる。
【0031】
本発明の化粧料に用いることができる上記シリカ被覆混晶酸化物粒子は、混晶酸化物粒子に、珪酸または前記珪酸を産生し得る前駆体、アルカリ、有機溶媒及び必要に応じて水を順序に関係無く、添加後の水/有機溶媒比が容量比で0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲であるように添加し、混晶酸化物粒子粒子の表面にシリカを沈着させシリカ被膜を形成する方法により得られる。
【0032】
特に好適には、アルカリ、有機溶媒及び必要に応じて水の混合液に混晶酸化物粒子を添加し、さらに、珪酸または珪酸を産生し得る前駆体、有機溶媒及び必要に応じて水からなる混合液を、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲となるように添加し、混晶酸化物粒子粒子の表面にシリカを沈着させシリカ膜を形成する方法により得られる。
【0033】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子の原料となる混晶酸化物粒子について説明する。
ハロゲン化金属を酸化性ガスで高温酸化することにより金属酸化物を製造する気相製造法において、ハロゲン化金属がチタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を含む混合ガス(以下、「混合ハロゲン化金属ガス」ともいう。)であって、該混合ハロゲン化金属ガス及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱してから反応させることにより、BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む超微粒子酸化物である。
【0034】
さらには、BET比表面積が10〜200m2/gであり、かつ、一次粒子内にチタン−酸素−珪素結合が存在した混晶あるいはチタン−酸素−アルミニウム結合が存在した混晶を含む混晶酸化物粒子である。
混合ハロゲン化金属ガスは、チタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を単独で気化した後にガス状で混合したものでもよい。
【0035】
混合ハロゲン化金属ガスを反応管へ供給する形態としては、1種の該ハロゲン化金属を単独で気化した後にガス状で混合したものを用いるのが好ましい。酸化性ガスには、酸素もしくは水蒸気またはこれらを含有する混合気体が使用される。
【0036】
本発明において使用されるチタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物及び沃化物は限定されないが、少なくとも500℃以上に予熱したときに該ハロゲン化金属ガスを生じることができるハロゲン化金属なら何でもよく、TiCl4、TiBr4、SiCl4、AlCl3が特に好ましい。
【0037】
本発明においては、前記混合ハロゲン化金属ガスと酸化性ガスをそれぞれ少なくとも500℃以上、好ましくは650℃以上、より好ましくは800℃以上に予熱してから反応させる必要がある。混合ハロゲン化金属ガスと酸化性ガスの予熱温度が500℃より低いと、均一核の発生が少なく、かつ反応性が低いため超微粒子にはなりにくく、かつ、脱塩後の残存塩素も多くなる。
【0038】
本発明では、混合ハロゲン化金属ガス及び酸化性ガスのそれぞれを反応管に10m/秒以上の流速、好ましくは30m/秒以上の流速で供給することが望ましく、また、反応管内においては600℃を越える高温度条件下でガスが滞留し反応する時間(以下「高温滞留時間」ともいう。)が1.0秒以内となるように、これらのガスを反応させることが好ましい。
【0039】
混合ハロゲン化金属ガスと酸化性ガスを反応管に導入する際の流速は、10m/秒以上であることが反応上好ましい。流速を大きくすることによって、両者のガスの混合が促進されるからである。反応管へのガスの導入温度が500℃以上であれば、混合と同時に反応は完結するので均一核の発生が増進され、かつ、CVD支配による成長した粒子が形成されるゾーンを短くすることができる。
【0040】
反応管に導入されたガスが十分に混合されるように、原料ガスが反応管へ導入されることが好ましい。ガスが十分に混合されれば、反応管内におけるガスの流体状態については特に制限はないが、好ましくは、例えば、乱流が生じる流体状態である。また、渦巻き流が存在していてもよい。
【0041】
反応管内に供給されたガスの反応管内における流速は、ガスの混合を完全に行うためには大きいことが好ましく、特に平均流速で5m/秒以上であることが好ましい。反応管内のガスの流速が5m/秒以上であれば、反応管内における混合を十分に行うことができる。
【0042】
反応管内におけるこの反応は発熱反応であり、反応温度は製造された超微粒子酸化チタンの焼結温度より高温である。反応装置からの放熱はあるものの、反応後、急冷しないかぎり製造された微粒子は焼結が進行し、成長した粒子になってしまう。本発明においては、反応管内の600℃を越える高温滞留時間は1.0秒以下とし、その後急冷することが好ましい。
【0043】
反応後の粒子を急冷させる手段としては、反応後の混合物に多量の冷却空気や窒素等のガスを導入したり、水を噴霧したりすること等が採用される。
【0044】
また、原料となる混合ハロゲン化金属ガスは、100体積%の該混合ハロゲン化金属ガスで用いるか、または好ましくは不活性ガスで希釈して10体積%以上100%未満、さらに好ましくは20体積%以上100体積%未満、で投入することができる。混合ハロゲン化金属ガスの濃度(ハロゲン化金属ガスのトータル濃度)が10体積%以上のガスを原料として用いると、均一核の発生が多くなり、または反応性が高くなる。前記不活性ガスとしては、混合ハロゲン化金属と反応せずかつ酸化されないものを選択すべきである。具体的には、好ましい希釈ガスとして、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0045】
本発明の混晶酸化物粒子は、BET比表面積が10〜200m2/gであり、平均一次粒子径としては0008μm〜0.1μm、好ましくは0.015μm〜0.1μmの範囲を有する。
【0046】
また、本発明の混晶酸化物粒子は、酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物において、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を含み、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛特有の回折ピークである格子面(100)、(002)、(101)と、結晶性シリカに特有の回折ピークである格子面(101)に回折ピークを有することを特徴とする複合酸化物であり、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造が、複合酸化物の1次粒子に含まれた複合酸化物である。
【0047】
亜鉛蒸気を酸素と水蒸気の存在する雰囲気中で酸化させる反応において、亜鉛蒸気を含む不活性ガス(以下、「Zn原料ガス」ともいう。)と、酸素と水蒸気を含むガス(以下、「酸化性ガス」ともいう。)を、反応器にそれぞれ導入して亜鉛を酸化する。その反応場に、例えば、オルガノシラン、シリコンハライドなどを含む珪素含有組成物(以下、「Si原料」と記載することがある)を、液状で噴霧し導入、好ましくはガス状で導入し、Si原料を酸化し、本発明の複合酸化物を得る。このとき、Si原料はキャリアーガスとして不活性ガスを含んでもよい。
【0048】
酸化性ガスは、プロパン、水素などの可燃性ガスを酸素又は空気の過剰の支燃性ガスで燃焼させて得られたものであっても良く、酸化性ガスを導入するノズルとZn原料ガスを導入するノズル、およびはSi原料を導入するノズルはいずれも複数あってもよい。
【0049】
このようにして得られた酸化物は、結晶性シリカが結晶性酸化亜鉛粒子内に均一に分散したものであり、卓越した分散性を有する酸化亜鉛を主成分とする混晶酸化物である。ここでいう主成分とは、構成成分中最も多い成分であり、50質量%以上の成分は主成分である。
【0050】
この複合酸化物は、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛に特有な格子面(100)、(002)、(101)に強い回折ピークを有し、かつ非常に高温となる酸化亜鉛の合成反応場でシリカが形成されるようにしているため、X線結晶学的に結晶性シリカ特有の格子面(101)にも強い回折ピークを有する粒子とすることができる。
【0051】
また、この複合酸化物は、局所成分分析(EDX)により、酸化亜鉛微結晶にシリカ微結晶が均一に分散した複合酸化物となっていることが確認できる。従来の複合酸化物は、核となる物質を合成した後に第二成分を添加するため、第二成分が第一成分の周りを取り囲むCore−Shell構造となるか、あるいは第一成分粒子と第二成分粒子がそれぞれ単独に存在する単なる混合粉体となっていた。
【0052】
本発明の複合酸化物ように、すべての粒子内において、結晶性の第一成分中(酸化亜鉛)に結晶性の第二成分(シリカ)が均一に分散しており、X線結晶学的にシリカと酸化亜鉛の双方の回折ピークを持つような複合酸化物である。
【0053】
これらの粒子は形状によらず、Si成分がZn成分中に均一に存在していることが局所成分分析(EDX)によって確認される。
原料の金属亜鉛と同時に不活性ガスを亜鉛気化器に供給することも可能である。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。
【0054】
ついでZn原料ガスは亜鉛気化器からZn原料ガス加熱器を経て反応器に導入される。Zn原料ガスを反応器に導入する温度は、900〜1800℃、好ましくは900〜1500℃、より好ましくは950〜1300℃である。Zn原料ガスを反応器に導入する速度は、10〜250m/秒、好ましくは50〜150m/秒である。
【0055】
酸化性ガスを反応器に導入する温度は、900〜1800℃、好ましくは900〜1500℃、より好ましくは950〜1300℃である。酸化性ガスの酸素濃度は、5体積%以上100体積%以下、好ましくは50体積%以上100体積%以下である。
【0056】
珪素含有組成物はキャリアーガスとしての不活性ガスと共に気化され反応器に導入される。珪素含有組成物としては、オルガノシランまたはシリコンハライドを含む組成物である。
【0057】
Si原料を反応器に導入する温度は50℃以上1200℃以下、好ましくは、珪素含有組成物の沸点以上、分解温度以下である。例えば、テトラエトキシシランを使用するなら、テトラエトキシシランが分解せずにガス状である170℃以上400℃以下の導入温度が好ましい。
【0058】
Si原料の供給量は、得られる複合酸化物中のSi含量がシリカ換算で、好ましくは5質量%以上、50質量%未満、特に好ましくは5質量%以上、35質量%未満となるような供給量とする。
【0059】
Si原料の導入流速は、複合酸化物粒子内でのシリカ分布を決める上で非常に重要である。同軸並行流ノズルを用いる場合、気体状のSi原料としての導入流速を、Zn原料ガス流速の30%〜300%、好ましくは80%〜150%の範囲に調整することで、本発明の複合酸化物粒子中にシリカを均一に分散させることができる。
【0060】
また、この導入流速をZn原料ガス流速の150%を超える流速にすることで、粒子中心部よりも表面付近にシリカをより多く偏在させることが可能である。用いるノズルが同軸ノズルでない場合には、導入する方向を下流側に向け、Si原料の反応帯が亜鉛の反応帯よりも下流側になるようにすれば、同様の効果を得ることができる。
【0061】
粒子形状については、導入する珪素含有組成物量を少なくすることにより、テトラポッド状及び針状の粒子の割合を多くすることができる。テトラポッド状及び針状の粒子の割合は、複合酸化物の媒体への分散性に影響し、5〜95個数%が好ましく、40〜90個数%が特に好ましい。
【0062】
Zn原料ガスと酸化性ガス、およびSi原料がそれぞれ前記の条件域にあれば、同軸並行流、直交流、斜交流など、いかなる導入形態でも迅速に酸化反応が進む。
【0063】
これらの酸化反応は高温の反応器内で進行する。粒子成長をより完全に抑制するため、特定の位置で急冷する等の方法で高温滞留時間を制御してもよい。
さらに、本発明の混晶酸化物粒子は、耐焼結性の指標として加熱後のBET比表面積減少率の評価において、800℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が30%以下である特徴を有する。
【0064】
シリカ被膜形成用組成物に用いられる珪酸とは、例えば化学大辞典(共立出版(株)昭和44年3月15日発行、第七刷)の『珪酸』の項に示される、オルト珪酸及びその重合体である、メタ珪酸、メソ珪酸、メソ三珪酸、メソ四珪酸等を示す。
【0065】
珪酸を含む組成物は、前記珪酸を産生し得る前駆体、例えばテトラアルコキシシラン(Si(OR)4、式中Rは炭化水素基、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン等である。)に水、アルカリ、有機溶媒を添加、撹拌し、加水分解反応を進めることにより得られる。この方法は取扱いあるいは操作が容易で実用的であり好ましい。中でもテトラエトキシシランは好ましい材料である。
【0066】
また、テトラハロゲン化シランに水、アルカリ、有機溶媒を添加し、加水分解する方法や、水ガラスにアルカリ、有機溶媒を添加する方法、あるいは水ガラスを陽イオン交換樹脂にて処理し、アルカリ、有機溶媒を添加する方法を用いても珪酸を含む組成物を得ることができる。
【0067】
珪酸を産生し得る前駆体として用いるテトラアルコキシシラン、テトラハロゲン化シラン、水ガラス等には特に制限はなく、工業用、あるいは試薬として広く一般に用いられているものでよいが、好ましくはより高純度のものが適している。さらに、本発明のシリカ被膜形成用組成物には、上記の珪酸の原料の未反応物を含んでいても構わない。
【0068】
珪酸の量は特に制限はないが、好ましくは珪素濃度として0.0001〜5モル/リットルの範囲である。珪素濃度が0.0001モル/リットル未満ではシリカ被膜の形成速度が極めて遅く実用的ではない。また5モル/リットルを越えると、金属酸化物の表面に被膜を形成せずにシリカ粒子が組成物中に生成する場合がある。
【0069】
珪素濃度は、珪酸の原料、例えばテトラエトキシシランの添加量より算出できるが、組成物を原子吸光分析により測定することもできる。測定は、珪素の波長251.6nmのスペクトルを分析線とし、フレームは、アセチレン/亜酸化窒素によるものを用いるとよい。
【0070】
シリカ被膜形成用組成物に用いられる水は、特に限定しないが、好ましくは濾過等により粒子を除去した水である。水中に粒子が含まれると、製品中に不純物として混入するので好ましくない。
【0071】
水は、水/有機溶媒比が容量比で0.1〜10の範囲となる量で使用することが好ましい。この範囲を外れると成膜できなかったり、成膜速度が極端に落ちる場合がある。さらに好ましくは、水/有機溶媒比が容量比で0.1〜0.5の範囲である。水/有機溶媒比が0.1〜0.5の範囲では、用いるアルカリの種類が限定されない。これを外れる範囲、すなわち、水/有機溶媒比が0.5以上の場合は、アルカリ金属を含まないアルカリ、例えば、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等を用いて成膜することが好ましい。
【0072】
シリカ被膜形成用組成物に用いられるアルカリは特に限定されないが、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリ塩類;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、アニリン、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、グアニジン等の有機アルカリ類;蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸モノメチルアミン、酢酸ジメチルアミン、乳酸ピリジン、グアニジノ酢酸、酢酸アニリン等の有機酸アルカリ塩を用いることができる。
【0073】
これらの群から1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。
本組成物で用いられるアルカリの純度には特に制限はなく、工業用、あるいは試薬として広く一般に用いられているものでよいが、好ましくはより高純度のものが適している。
【0074】
成膜速度を上げるには、被膜形成時の温度を上げることが有効である。この場合には、その被膜形成温度で揮発、分解しにくいアルカリ及び有機溶媒を用いることが好ましい。
【0075】
アルカリの添加量は、例えば炭酸ナトリウムの場合0.002モル/リットル程度の微量添加で成膜可能であるが、1モル/リットル程度の大量の添加を行ってもかまわない。しかし、固体のアルカリを、溶解度を越える量添加すると、シリカ被覆混晶酸化物粒子中に不純物として混入するので好ましくない。
【0076】
アルカリ金属を主成分として含まないアルカリを用いることにより、アルカリ金属含有量の少ないシリカ被覆混晶酸化物粒子を作成できる。中でも、成膜速度が高く、残留物除去のしやすさから、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが特に好ましい。
【0077】
被膜形成組成物に用いられる有機溶媒は、組成物が均一溶液を形成するものが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル・アセタール類;アセトアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール誘導体等を用いることができる。これらの中でもアルコール類が好ましく、特にエタノールが好ましい。有機溶媒としては、これらの群から選択された1種、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
本組成物で用いられる有機溶媒の純度には特に制限はなく、工業用、あるいは試薬として広く一般に用いられているものでよいが、好ましくはより高純度のものが適している。
【0079】
シリカ被膜形成用組成物の調製には、一般的な溶液調製法が適用出来る。例えば、所定の量の混晶酸化物粒子にアルカリ、水及び有機溶媒を添加、撹拌して、混晶酸化物粒子を十分に分散した後、テトラエトキシシランを添加、撹拌する方法等が挙げられるが、これらの混合の順番は何れが先でもまた複数回繰返しても、被膜形成が可能である。水とテトラエトキシシランを混合する際、双方とも有機溶媒で希釈することが、反応の制御性の点で好ましい。
【0080】
このようにして調製したシリカ被膜形成用組成物は安定な組成物であり、混晶酸化物粒子粒子と接触させる以前には実質的に被覆、沈殿が起こらない。組成物に混晶酸化物粒子粒子を接触させることにより、混晶酸化物粒子粒子の表面へ選択的にシリカ被膜が形成される。
【0081】
ここでいう「選択的」とは、混晶酸化物粒子粒子の表面においてのみシリカ析出に伴う被膜形成が進行し、溶液中における均一核生成に伴うシリカ粒子生成を引き起こさないため、化学量論的にシリカ被覆混晶酸化物粒子のシリカ膜厚およびシリカ含有量を制御することができることを意味する。
【0082】
基本的には、混晶酸化物粒子を含むシリカ被膜形成用組成物をに添加し、所定温度に保持しておくことにより該混晶酸化物粒子の表面にシリカを選択的に沈着せしめ、シリカ膜を形成させることができる。被膜形成用組成物を予め調製してから混晶酸化物粒子を投入し、シリカ膜を形成させる方法でもよいし、混晶酸化物粒子を予め溶媒に懸濁してから他の原料成分を添加して被膜形成用組成物となし、シリカ膜を形成させる方法等でもよい。すなわち、被膜形成用組成物の原料、混晶酸化物粒子を投入する順序は特に制限がなく、何れが先でも被膜形成が可能である。
【0083】
それらの方法の中でも、混晶酸化物粒子と有機溶媒と水とアルカリにより懸濁液を作成した後、有機溶媒で希釈したテトラアルコキシシランを経時的に投入すると、緻密性の良好なシリカ膜を形成でき、工業的に有用な連続プロセスを構築することができるので好ましい。
【0084】
さらに、有機溶媒と水とアルカリの混合液に混晶酸化物粒子を添加し、そこに有機溶媒、場合によっては水で希釈したテトラアルコキシシランを経時的に投入すると、緻密性の良好なシリカ膜を形成でき、工業的に有用な連続プロセスを構築することができるので好ましい。
【0085】
シリカ膜は混晶酸化物粒子の表面への沈着により成長するので、成膜時間を長くすれば膜厚を厚くできる。勿論、被膜形成用組成物中の珪酸またはその前駆体が被膜の形成により大部分消費された場合には、成膜速度は低下するが、消費量に相当する珪酸またはその前駆体を順次追添加することにより、連続して実用的な成膜速度でシリカ被膜の形成を行うことができる。
【0086】
特に、所望のシリカ膜厚に相当する珪酸を加えた被膜形成用組成物中に混晶酸化物粒子を所定時間保持し、シリカ膜を形成し、シリカ被覆混晶酸化物粒子を系外に取り出した後、分離精製工程で有機溶媒、揮発性アルカリ等を回収し、次の混晶酸化物粒子の被膜形成に用いることができ、経済性、生産性の高いプロセスを構築することができる。
【0087】
被膜形成時の温度は特に限定されないが、好ましくは10℃〜100℃の範囲、より好ましくは20℃〜50℃の範囲である。温度が高い程成膜速度が増加するが、高過ぎると組成物中の成分の揮発のため溶液組成を一定に保つことが困難になる。また温度が低すぎると、成膜速度が遅くなり実用的でない。
【0088】
また、被膜形成時のpHはアルカリ性pHであればよい。ただし、混晶酸化物粒子がゲル化しないpHであることが好ましい。また、pHに依存して溶解性が増すような混晶酸化物粒子をシリカ被覆する場合には、被膜形成組成物のpHを制御することが好ましい。
【0089】
例えば、酸化亜鉛を主成分とする超微粒子混結晶酸化物のシリカ被覆品の製造では、アルカリ添加量を下げ、成膜時のpHを11以下に制御することが好ましい。pHが11を越えるとシリカ被覆生成物の収率が低下することがある。さらに、アルカリ量の減少により成膜速度が低下するので、成膜温度を上げたり、珪素濃度を高めることにより、実用的な成膜速度を維持させることが好ましい。
【0090】
被膜形成後、未反応原料、アルカリ、有機溶媒を除去し、必要に応じて濃縮し、シリカ被膜混晶酸化物粒子を得る。方法は、蒸発、蒸留、膜分離等の一般的な分離法を用いることができる。
【0091】
本発明のシリカ被覆ゾルの媒体は、特に制限はないが、通常皮膚科学的に無害な媒体の中から選択される。例えば、水、天然油、シリコーン油が用いられる。水系から他の媒体への変更は、一般的な溶媒置換、膜分離等により行うことができる。
【0092】
また、シリカ被覆混晶酸化物粒子ゾルを固・液分離後、乾燥することにより、シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子を得ることができる。固・液分離の方法は濾過、遠心沈降、遠心分離等の一般的な分離法を用いることができる。乾燥方法としては自然乾燥、温風乾燥、真空乾燥、スプレードライ等の一般的な乾燥法を用いることができる。乾燥によって粒子の凝集が起きる場合には、粉砕することが出来る。本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子は、基材である混晶酸化物粒子粒子表面へのシリカ被膜の被覆力が強いので、粉砕によってシリカの被覆が破壊され、光触媒活性の抑制効果が低下したり、使用感が悪化したりすることがない。粉砕方法は、特に限定はなく、ジェットミル、高速回転ミル等を用いることができる。
【0093】
上記の製造方法で得られるシリカ膜は、1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:I1は1150〜1250cm-1の吸収範囲内の最大ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内の最大吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上である。
【0094】
すなわち、本来のシリカ膜が有する表面物性(しっとり感、滑り性)を保持したまま、焼成しなければ得られなかった緻密で実用的なシリカ被膜なっている。さらに、上記シリカ膜は、基材の混晶酸化物粒子粒子の複雑な形状にも付き回りがよく、0.1nm程度の薄い皮膜であっても被覆性が良好で光触媒活性を隠蔽する能力が高い。また、アルカリ金属の含有量が極めて少ないシリカ被膜とすることができるので、高温多湿雰囲気下でもシリカ膜が溶解しないでシリカ被覆混晶酸化物粒子の物性が変化しないものが得られる。
【0095】
本発明の化粧料には、前記シリカ被覆混晶酸化物粒子を、さらに疎水性付与剤にて表面処理してなる表面疎水化シリカ被覆混晶酸化物粒子も用いることができる。
【0096】
シリカ被覆混晶酸化物粒子を疎水性付与剤で表面処理する方法は、公知の方法が使用できる。本発明では、シリカ被覆混晶酸化物粒子の分散性や小さい一次粒径を損なわないという点から、湿式法を用いることが好ましい。例えば、湿式法では、水又は有機溶媒又は混合溶媒にシリカ被覆混晶酸化物粒子を分散した液に疎水性付与剤、またはその溶液及び反応触媒等を加え、さらに攪拌した後、表面処理を行う方法を用いることが出来る。
【0097】
また、シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子を乾式法あるいはスプレー法を用い直接疎水化することもできる。乾式法では、V型混合機、ヘンシェルミキサー等の混合機で攪拌されている前記のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子に、疎水性付与剤あるいは疎水性付与剤の有機溶媒溶液をスプレー等の方法で添加し、さらに混合を続け、粉体の表面に均一に付着させ、乾燥し、さらに必要があれば、強固に付着させるために加熱する方法を用いることができる。また、スプレー法では、高温にした前記のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子に疎水性付与剤又はその溶液をスプレーし、表面を被覆する方法を用いることが出来る。
【0098】
本発明に用いられる疎水性付与剤は、特に限定されないが、例えば、ロウ、高級脂肪酸トリグリセライド、高級脂肪酸、高級脂肪酸多価金属塩、高級脂肪族硫酸化物の多価金属塩等の高級脂肪酸;高級アルコールまたはそれらの誘導体;パーフロロ化または部分フッ素化した高級脂肪酸及び高級アルコール等の有機フッ素化合物;シリコーン油類、有機アルコキシシラン類、有機クロロシラン類、及びシラザン類等の有機硅素化合物が使用できる。高級脂肪酸多価金属塩、シリコーン油、シランカップリング剤、アルコキシシラン類が好ましく用いられるが、特に実用的な効果の面からアルコキシシラン類、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0099】
本発明に用いられるシリコーン油類としては、特に制限はないが、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及び環状ポリジメチルシロキサンが挙げられる。また、アルキル変性、ポリエーテル変性、アミノ変性、メルカプト変性、エポキシ変性、フッ素変性等の変性シリコーン油を用いてもよい。
【0100】
本発明に用いられるクロロシラン類としては、特に制限はないが、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン及びフェニルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0101】
本発明に用いられるシラザン類としては、特に制限はないが、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン及びトリメチルシリルイミダゾールが挙げられる。
【0102】
本発明に用いられる有機アルコキシシラン類としては、特に制限はないが、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤及びメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトシシシラン及びジフェニルジエトキシシランが挙げられる。また、パーフルオロ化あるいは部分フルオロ化されたアルキル基を有するアルコキシシランも用いることが出来る。
【0103】
特に、下記式(1)で表されるアルキルアルコキシシランが、好ましく用いられる。
【0104】
【化1】

【0105】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、R2は水素基または炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは炭素数1〜4のアルコキシル基、nは0〜2の整数である。)
アルキルアルコキシシラン類を疎水性付与剤として表面処理する場合には、液相法が特に好ましい。
【0106】
すなわち、前記の方法に従って混晶酸化物粒子粒子のシリカ被覆を行った後、シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子を分離することなく、疎水性付与剤を添加し、必要に応じて水、有機溶媒、アルカリを添加し、水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ該アルキルアルコキシシランに由来する珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲である組成物を形成し、アルキルアルコキシシランの反応生成物を該シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子の表面に選択的に沈着せしめることにより表面処理することができる。
この方法は、乾燥工程がないので、シリカ被覆混晶酸化物粒子の分散性や小さい一次粒径を損なうことがなく、中間の固体分離工程を省略でき、工業的に有利である。
【0107】
アルキルアルコキシシラン類による表面疎水化シリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法における疎水化組成物は、水/有機溶媒比が容量比で0.1〜10の範囲であり、かつアルキルアルコキシシランに由来する珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲である。本組成物における珪素濃度、水、水/有機溶媒比、アルカリ、有機溶媒、温度、pH、及び分離精製工程に関しては、シリカ被膜形成組成物における記述がそのまま適用できる。また、本組成物は、シリカ被膜形成終了後の前記シリカ被膜形成用組成物に、珪酸を産生する前駆体の替りにアルキルアルコキシシラン類を添加することにより得られるが、必ずしも組成や条件を同一にする必要はない。例えば、珪酸を産生する前駆体に比べて該アルキルアルコキシシランの反応速度が異なる場合には、必要に応じてアルカリ、水、または溶媒を添加してもよく、上記の制限範囲内において実用的な反応速度を与えるような水/有機溶媒比、珪素濃度、pH、温度等の反応条件を選択することができる。
【0108】
疎水性付与剤の被覆量は、該疎水性付与剤が原料のシリカ被覆混晶酸化物粒子の表面を完全に被覆できる最小被覆量以上であればよい。この量は、下記式(2)
【0109】
【化2】

【0110】
によって算出することができる。疎水性付与剤の添加量が過多になるとシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子の表面以外に析出する分が増えるので、経済的でない。
【0111】
疎水性付与剤の分子量、シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子の比表面積に依存するので一概には決められないが、通常、シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子に対して30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0112】
以下、本発明の第二の側面について説明する。本発明の化粧料に用いることができるシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子のシリカ膜厚は、好ましくは0.1〜25nmである。0.1nm以下では、十分な光触媒活性の抑制効果がありかつ使用感が良好な化粧料が得られない場合があり、25nm以上では、十分な紫外線遮蔽能を持つ化粧料が得られない場合があり、また経済的でない。
【0113】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子のテトラリン自動酸化法による光触媒活性度は、60Pa/min.以下であり、好ましくは50Pa/min.以下、さらに好ましくは45Pa/min.以下である。60Pa/min.を越えると、十分な光触媒活性の抑制効果が得られず、保存安定性の良好な化粧料が得られない場合がある。
【0114】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子のサンセットイエロ−法により測定される色素退色速度は、0.1以下であり、好ましくは、0.06以下、さらに好ましくは0.02以下である。0.1を越えると、光触媒活性の抑制効果が十分でなく、保存安定性の高い化粧料が得られない場合がある。
【0115】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子の一次粒径は、好ましくは1〜100nmである。この範囲を外れると、良好な使用感と透明感、高い紫外線遮蔽能を合わせ持つ化粧料が得られない場合がある。なお、本発明でいう一次粒子、二次粒子は、久保輝一郎他編『粉体』p56〜66,1979年発行、により定義されているものである。
【0116】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子粒子のガラス平板法により測定される粉体動摩擦係数は、0.55以下であり、好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.45以下である。0.55を越えると、良好な使用感を有する化粧料が得られない場合がある。
【0117】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子は、一次粒径が小さく、凝集性が低くさらに分散性が良好なので、高い紫外線遮蔽能と高い可視光透過性を有する。また、緻密で実用的なシリカ被膜で被覆されているので、光触媒活性の抑制効果が高く、他の化粧料配合成分を変性させることが少なく、触感や滑り性が良好である。
【0118】
従って、シリカ被覆混晶酸化物粒子を配合することにより、保存安定性が良く、安全で、透明感及び使用感に優れた紫外線遮蔽用化粧料が得られる。表面疎水化シリカ被覆混晶酸化物粒子の場合は、油性化粧料、W/O乳化型の化粧料及び水・汗による化粧崩れが少ない撥水型化粧料に用いることが好ましい。
【0119】
以下に第三の側面について説明する。
本発明の化粧料は、前記のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有するとともに、化粧料に配合可能な通常の原料を使用し、通常の製法により製造することができる。
【0120】
本発明の化粧料は、粉末及び油分を含有するものであれば、特に限定されるものではなく、粉末を溶剤や溶液に分散したものも含むものとする。例えば、白粉、ファンデーション、パウダー、頬紅、アイシャドー、口紅、アイライナー、マスカラ、アイブロー、クリーム、エッセンス、ローション、化粧水、乳液、ムース等が挙げられる。特に、表面疎水化シリカ被覆混晶酸化物粒子の場合には、油性化粧料、W/O乳化型の化粧料及び水・汗による化粧崩れが少ない撥水型化粧料が好ましい。
【0121】
本発明の化粧料を構成するものとして、粉末成分と油分がある。このうち、粉末成分を構成するものには、シリカ被覆混晶酸化物粒子の他に体質顔料(例えば、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等。)、白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等。)、及び着色顔料(例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック等。)があり、これらを適宜配合することができる。また、使用感をさらに向上させる為に、球状粉末(例えばナイロン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末等。)を用いることもできる。
【0122】
本発明の化粧料に配合される油分としては、流動パラフィン、スクワラン、ヒマシ油、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グルセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ワセリン、マレイン酸ジイソステアリル、精製ラノリン等が挙げられる。本発明の化粧料に対する油分の配合量は、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。
【0123】
また油分中には、有機系の紫外線吸収剤を配合してもよい。有機系の紫外線吸収剤とは、紫外線を吸収して熱、振動、蛍光、ラジカル等にエネルギー変換し、皮膚を保護するような機能を有する有機化合物を指す。
【0124】
本発明の化粧料に使用できる紫外線吸収剤としては、特に制限はないが、例えば、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、PABA系、ケイ皮酸系、ジベンゾイルメタン系、ウロカニン酸系等の紫外線吸収剤が挙げられる。その配合量は0.1〜10質量%の範囲であるが、該吸収剤の紫外線吸収能によって適切な配合量にすることが望ましい。本発明に用いるシリカ被覆混晶酸化物粒子は、有機系の紫外線吸収剤と併用しても、該吸収剤の分解が抑制され、高い紫外線遮蔽能を有する化粧料とすることができる。
【0125】
本発明の化粧料には、既存の乳化剤を一般的な濃度で添加することもできる。例えば、化粧品原料基準第二版注解、日本公定書教会編、1984(薬事日報社)、化粧品原料基準外成分規格、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、化粧品原料基準外成分規格追補、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、化粧品種別許可基準、厚生省薬務局審査課監修、1993(薬事日報社)、及び化粧品原料辞典、平成3年(日光ケミカルズ)等、に記載されている全ての乳化剤が使用できる。また、トコフェリルリン酸エステル類も乳化剤として使用できる。
【0126】
本発明の化粧料には、紫外線による炎症を防止するため、既存の抗炎症成分または消炎成分を安全性上支障がない限り、併用又は混用することもできる。本発明の化粧料に添加できる消炎成分としてはアニリン誘導体型消炎剤、サリチル酸誘導体型消炎剤、ピラゾロン誘導体型消炎剤、インドメタシン系消炎剤、メフェナム酸系消炎剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗炎酵素剤等が挙げられる。
【0127】
本発明におけるシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有する化粧料において、抗酸化作用を持つ物質である抗酸化剤を併用すると、紫外線によるフリーラジカルの発生量を抑制することにより極めて光毒性の低い化粧料が得られる。
【0128】
本発明の化粧料に抗酸化剤としては、特に制限はないが、例えば、ビタミンA、β−カロチン、アスタキサンチン、ビタミンB、ビタミンC、L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウムマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−グルコシド−6−パルミチン酸塩、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸塩、L−アスコルビン酸−2−リン酸−5,6−ベンジリデン、天然ビタミンE、dl−α−トコフェロール、dl−α−トコフェリル酢酸エステル、dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム、ユビキノン及びこれらのビタミン誘導体、システイン、グルタチオン、グルタチオンペルオキシターゼ、SOD、カタラーゼ、クエン酸、リン酸、ポリフェノール、カテキン、茶抽出物、コウジ酸、核酸、ハイドロキノン、アルブチン等が挙げられる。これらの群より選択される一種又は二種以上の抗酸化剤を配合することができる。
【0129】
なお、本発明にかかる化粧料には、化粧料に一般的に配合される上記以外の成分、例えば油脂類、ロウ類、炭化水素、脂肪酸類、アルコール類、多価アルコール類、糖類、エステル類、金属石けん、水溶性高分子化合物、界面活性剤、酸化防止剤、殺菌・防腐剤、ビタミン、ホルモン、色材等を配合することができる。
【0130】
本発明の化粧料におけるシリカ被覆混晶酸化物粒子の配合量は、好ましくは化粧料に対して1〜50質量%であり、より好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲である。
【0131】
本発明の化粧料において、比表面積の大きな超微粒子混結晶酸化物が良好に分散しているシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いる場合、特に高い紫外線遮蔽能を有することができ、また添加量を低減することができる。また、一次粒径が小さく、緻密で実用的なシリカ被膜で被覆された金属酸化物ゾル及び/又は表面疎水化シリカ被覆金属酸化物ゾルを用いる含有しているので、高濃度に配合した場合にも、きしみ感や伸びの悪さがなく、使用感に優れている。
【0132】
さらに、本発明の化粧料は、粒径の小さい金属酸化物粒子が良好に分散しているシリカ被覆金属酸化物ゾル及び/又は表面疎水化シリカ被覆金属酸化物ゾルを用いるので、可視光透過性が良好で、透明感のある化粧仕上がりが得られる。
また、金属酸化物微粒子の表面が、緻密で、実用的なシリカ被膜で被覆されているので、金属酸化物による光触媒活性が十分抑制され、化粧料の他の配合成分を変性させず、保存安定性に優れている。
【0133】
有機系紫外線吸収剤を含有することが可能であり、より高い紫外線遮蔽能を達成できる。さらに、抗酸化剤を含有することにより活性酸素等の発生が極めて低くでき、人体に対する安全性を高められる。
【0134】
本発明においてシリカ膜の膜厚、屈折率は、シリカ被覆混晶酸化物粒子を合成する際に系内に浸せきしたシリコンウエハー上に形成されるシリカ膜を用いて測定することができる。このシリコンウエハーには、シリカ被覆混晶酸化物粒子中の混晶酸化物粒子粒子上と同じシリカ被膜が形成される。シリカ膜の屈折率は、エリプソメーター(ULVAC製;LASSER ELLIPSOMETER ESM−1A)により測定できる。膜厚測定には段差計を用いることができる。シリカ被覆混晶酸化物粒子粒子のシリカ膜の透過赤外吸収スペクトルは、日本分光製FT−IR−8000により測定することができる。
【0135】
シリカ被覆混晶酸化物粒子の1次粒径及びシリカ膜厚は、透過型電子顕微鏡像より求めることができる。全アルカリ金属含有量は、シリカ被覆混晶酸化物粒子を硫弗酸に溶解し、炎光分析により測定する。
【0136】
シリカ被覆混晶酸化物粒子の光触媒活性度すなわち初期酸素消費速度は、テトラリン自動酸化法(清野学著、酸化チタン−物性と応用技術、技報堂出版、p.196−197,1991年)により測定することができる。測定条件は、温度40℃、テトラリン20ml、固形分濃度10%の混晶酸化物粒子0.02gとする。
【0137】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子の有機系紫外線吸収剤の分解速度、粉体動摩擦係数、色素退色速度は、それぞれ本明細書中に記載されたパラソール法、ガラス平板法、サンセットイエロ−法により測定される。
【0138】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0139】
(実施例1)
(混晶酸化物粒子1の製造)
金属亜鉛3.8kg/時と900℃に加熱した窒素ガス25Nm3/時(Nは標準状態を示す。以下、同じ)とを亜鉛気化器に供給し、Zn原料ガスを得た。これを、Zn原料ガス加熱器で1000℃まで加熱した。
一方、水蒸気3体積%、酸素97体積%の組成を持つ酸化性ガス25Nm3/時を酸化性ガス加熱器で加熱した。加熱されたガスの温度は反応器への導入口において1030℃であった。
【0140】
またテトラエトキシシラン700g/時を窒素と共に300℃まで加熱した。以上のZn原料ガス、酸化性ガス、テトラエトキシシランを含む窒素ガスを反応器に導入した。
流速はZn原料ガスが100m/秒、酸化性ガスが90m/秒、テトラエトキシランを含む窒素ガスが40m/秒であった。反応させた後、バッグフィルターにおいて粉体を捕集した。
【0141】
得られた粉体は、白色で、QUANTACHROME社製のモノソーブ型装置を用いてBET一点法にて比表面積を測定したところ42m2/gであり、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置X−ray Spectrometer Simultix 10を用いて分析したところシリカ成分を4質量%含んでいた。この粉体を株式会社リガク製の回折X線装置2000/PC型を使用し、30kV、30mAの条件で、CuKα線を用いて2θ=10°〜80°の範囲を2°/分の速度でスキャンし、結晶形を調べた。
【0142】
その結果、結晶性酸化亜鉛に特有の格子面(100)、(002)、(101)に相当する2θ=31.8°、34.5°、36.3°にピークを持ち、かつ結晶性シリカに特有の格子面(101)に相当する2θ=22°付近にもピークをもつXRDチャートを示す粉体であった。
【0143】
さらに耐熱性を調べる為、サンプルを磁製坩堝に分取し、800℃の電気炉に入れ、1時間保持した後、ただちに取り出し室温にまで放冷した。この粉体の比表面積を再び前述のBET1点法で測定した。加熱前後の比表面積比、すなわち、(熱処理後の比表面積/熱処理前の比表面積)を算出したところ、79%となった。
【0144】
さらに透過型電子顕微鏡(TEM)観察による一次粒子は異方性のテトラポッド状及び針状の粒子と等方性粒子に分別され、300個を目処にし、TEM写真に写っている全部の粒子を数えた。その結果、全個数に占めるテトラポッド状及び針状の粒子の割合は83%であった。
【0145】
また、テトラポッド状粒子、針状粒子および等方性粒子のそれぞれの一次粒子についてEDXにより測定スポット径5nmで元素分析をしたところ、各形状の粒子ともにZn、Siが存在していることが確認された。これを各形状の粒子それぞれについて、複数箇所実施したが、いずれもZn、Siが検出された。
【0146】
(シリカ被覆混晶酸化物粒子1の製造)
50L反応器に脱イオン水18.25L、エタノール(純正化学株式会社製)22.8Lおよび25質量%アンモニア水124mL(大盛化工社製)を混合し、その中に、上記混晶酸化物粒子の製造1にて製造した混晶酸化物粒子1.74Kgを分散させ、懸濁液1を調製した。次に、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製)1.62L、エタノール1.26Lを混合し、溶液1を調製した。
【0147】
撹拌している懸濁液1に、溶液1を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。成膜、熟成は45℃にて行った。その後、固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥し、さらに80℃で12時間温風乾燥し、さらにジェットミルにより粉砕することによりシリカ被覆混晶酸化物粒子1を得た。
【0148】
(実施例2)
(混晶酸化物粒子2の製造)
金属亜鉛6kg/時と900℃に加熱した窒素ガス25Nm3/時とを亜鉛気化器に供給し、Zn原料ガスを得た。これを、さらにZn原料ガス加熱器で1000℃まで加熱した。
一方、水蒸気3体積%、酸素97体積%の組成を持つ酸化性ガス25Nm3/時を酸化性ガス加熱器で加熱した。加熱されたガスの温度は反応器への導入口において1030℃であった。
【0149】
またテトラエトキシシラン10kg/時を窒素と共に300℃まで加熱した。以上のZn原料ガス、酸化性ガス、テトラエトキシシランを含む窒素ガスを反応器に導入した。流速は、Zn原料ガスが100m/秒、酸化性ガスが90m/秒、テトラエトキシランを含む窒素ガスが50m/秒であった。反応させた後、バッグフィルターにおいて粉体を捕集した。
【0150】
得られた白色粉体を実施例1と同様に分析した。
その結果、比表面積37m2/gであり、シリカ成分26質量%含んでいた。結晶形は、実施例1と同じ2θの位置にピークを持つ粉体であった。加熱前後の比表面積比は85%であった。
【0151】
(シリカ被覆混晶酸化物粒子2の製造)
50L反応器に脱イオン水18.25L、エタノール(純正化学株式会社製)22.8Lおよび25質量%アンモニア水124mL(大盛化工社製)を混合し、その中に、上記混晶酸化物粒子1を1.96Kg分散させ、懸濁液2を調製した。次に、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製)0.81L、エタノール1.93Lを混合し、溶液2を調製した。
【0152】
撹拌している懸濁液2に、溶液2を4.5時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。成膜、熟成は45℃にて行った。その後、固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥し、さらに80℃で12時間温風乾燥し、さらにジェットミルにより粉砕することによりシリカ被覆混晶酸化物粒子2を得た。
【0153】
(実施例3)
(混晶酸化物粒子3の製造)
濃度100体積%のガス状四塩化チタン9.4Nm3/時間(Nは標準状態を意味する。以下同じ)及び濃度100体積%のガス状四塩化珪素2.4Nm3/時間を含有するガスを混合後1,000℃に、8Nm3/時間の酸素及び20Nm3/時間の水蒸気の混合ガスを1,000℃にそれぞれ予熱して、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速49m/秒、60m/秒で反応管に導入した。同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に混合ハロゲン化金属を含有するガスを導入した。
【0154】
反応管の内径は100mmであり、反応温度1,300℃における管内流速は計算値で10m/秒であった。反応管内の高温滞留時間が0.3秒以下となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、テフロン製バグフィルターを用いて製造された超微粒子粉末を捕集した。その後、オーブンにて空気雰囲気下、500℃×1時間加熱し、脱塩処理を実施した。
【0155】
得られた混晶酸化物粒子は、BET比表面積が88m2/g、平均真比重3.7g/cc、平均一次粒子径0.018μm、塩素が0.01%であり、XPSによって明らかにチタン−酸素−珪素結合が認められた。
800℃×1時間後のBET比表面積減少率は2%であった。
【0156】
(シリカ被覆混晶酸化物粒子3の製造)
50L反応器に脱イオン水4.2L、エタノール(純正化学株式会社製)19.3Lおよび25質量%アンモニア水0.75L(大盛化工社製)を混合し、その中に、上記混晶酸化物粒子3を1.05kgを分散させ、懸濁液3を調製した。次に、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製)0.97L、エタノール1.05Lを混合し、溶液3を調製した。
【0157】
撹拌している懸濁液3に、溶液3を6時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。成膜、熟成は25℃にて行った。その後、固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥し、さらに80℃で12時間温風乾燥し、さらにジェットミルにより粉砕することによりシリカ被覆混晶酸化物粒子3を得た。
【0158】
(実施例4)
(混晶酸化物粒子4の製造)
ガス状四塩化チタン8.3Nm3/時間とガス状三塩化アルミニウム2.4Nm3/時間と窒素6Nm3/時間を含有するガスを混合後900℃に、8Nm3/時間の酸素及び20Nm3/時間の水蒸気の混合ガスを1,000℃にそれぞれ予熱して、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速63m/秒、60m/秒で反応管に導入した。同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に混合ハロゲン化金属を含有するガスを導入した。
【0159】
反応管の内径は100mmであり、反応温度1,200℃における管内流速は計算値で10m/秒であった。反応管内の高温滞留時間が0.3秒以下となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、テフロン製バグフィルターを用いて製造された超微粒子粉末を捕集した。その後、オブンにて空気雰囲気下、500℃×1時間加熱し、脱塩処理を実施した。
【0160】
得られた混晶酸化物粒子は、BET比表面積が48m2/g、平均真比重3.9g/cc、平均一次粒子径0.032μm、塩素が0.1%であり、XPSによって明らかにチタン−酸素−アルミニウム結合が認められた。
800℃×1時間後のBET比表面積減少率は5%であった。
【0161】
(シリカ被覆混晶酸化物粒子4の製造)
50L反応器に脱イオン水4.2L、エタノール(純正化学株式会社製)19.3Lおよび25質量%アンモニア水0.75L(大盛化工社製)を混合し、その中に、上記混晶酸化物粒子4を1.05kgを分散させ、懸濁液4を調製した。次に、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製)0.44L、エタノール1.35Lを混合し、溶液4を調製した。
【0162】
撹拌している懸濁液4に、溶液4を6時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。成膜、熟成は25℃にて行った。その後、固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥し、さらに80℃で12時間温風乾燥し、さらにジェットミルにより粉砕することによりシリカ被覆混晶酸化物粒子4を得た。
【0163】
KBr法により、実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子の透過赤外吸収スペクトルを測定したところ、いずれの金属酸化物粒子も1000〜1200cm-1にSi−O−Si伸縮振動由来の吸収が観測され、2800〜3000cm-1にC−H伸縮振動由来の吸収は観測されず、生成した被膜はシリカであると同定された。
さらに、シリカ膜厚、赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I、シリカ膜の屈折率を測定した。結果を表1にまとめた。
【0164】
(光触媒活性度の測定・テトラリン自動酸化法)
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を被験物質としてテトラリン自動酸化法による光触媒活性度を測定した。結果を表1にまとめて示す。本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子のいずれもが60Pa/min以下であり、従来のシリカ被覆金属酸化物粉と同等の光触媒活性の抑制を示す。
【0165】
(色素退色速度の測定・サンセットイエロ−法)
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を被験物質としてサンセットイエロ−法により色素退色速度を測定した。すなわち、化粧料用の色素であるサンセットイエロ−を98質量%グリセリンに色素濃度が0.02質量%となるように溶解した。被験物質を0.067質量%となるように分散させ、該分散液に紫外線照射(紫外線強度1.65mW/cm2)した。光路長1mmでサンセットイエロ−の最大吸収波長である490nmの吸光度を経時的に分光光度計(SHIMADZU UV−160)で測定し、該吸光度の減少速度(ΔA490/h)を計算した。結果は表1に示す。
【0166】
本発明に用いられるシリカ被覆混晶酸化物粒子の色素退色速度は、いずれも0.10(ΔA490/h)以下であり、従来のシリカ被覆金属酸化物粉と同等の色素退色速度を示している。本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子は、従来のシリカ被覆金属酸化物粉が有する低い色素分解性を維持しており、保存安定性の高い化粧料を提供できる。
【0167】
(有機系紫外線吸収剤の分解速度の測定・パラソール法)
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を被験物質としてパラソール法により有機系紫外線吸収剤の分解速度を測定した。すなわち、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(パラソール1789)のポリエチレングリコール300溶液(パラソール1789濃度として0.045質量%)に被験物質を分散させ、各々固形分1質量%のスラリーとした。スラリー1.5gをガラス容器に入れ、紫外線照射(1.65mW/cm2)した後、1gを分取し、イソプロピルアルコール2mL、ヘキサン2mL、蒸留水3mLを順次添加した。
【0168】
攪拌してヘキサン相にパラソール1789を抽出し、ヘキサン相の光路長1mmでの吸光度(340nm)を分光光度計(SHIMADZU UV−160)で経時的に(紫外線照射0、5及び10時間後の3点)測定した。340nmの吸光度の減少速度(ΔA340/h)を求めた。結果を表1にまとめて示す。
【0169】
本発明に用いることができるシリカ被覆混晶酸化物粒子のいずれもが0.01(ΔA340/h)以下であり、有機紫外線吸収剤の分解性が低いものであった。従って、シリカ被覆混晶酸化物粒子を含有した化粧料は、有機系紫外線遮蔽材との併用が可能であり、紫外線防御能を長期にわたり維持することができる。
【0170】
(粉体動摩擦係数の測定・ガラス平板法)
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を被験物質としてガラス平板法により粉体動摩擦係数を測定した。すなわち、100×200mmのガラス板上に被験物質の粉体を10mg/cm2 となるように分散させ、このガラス板を表面性状測定装置(HEIDON)の試験台に載せ、荷重22.2g/cm2、移動速度200mm/min.、移動距離20mmの条件で動摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【表1】

【0171】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子の粉体動摩擦係数のいずれもが0.550以下であり、従来のシリカ被覆金属酸化物粉よりもさらに低い動摩擦係数を示している。このことは、本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有した化粧料は、従来よりも、さらに優れた使用感を有することが示唆している。
【0172】
(実施例5〜8)日焼け止め乳液
定法により下記処方の日焼け止め乳液を製造した。すなわち、精製水にポリエチレングリコールを加え、加熱溶解後、被験物質、ビーガムを加え、ホモミキサーで均一に分散し、70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加熱溶解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え、ホモミキサーで均一に乳化分散し、乳化後かき混ぜながら35℃まで冷却した。被験物質には、実施例1〜4で製造したシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いた。その使用に当たっては、乳液のオイル相側へ分散させるため、さらにその表面を処理粉体重量に対してジメチルポリシロキサンが3質量%となるように疎水化処理を施した。(以下この疎水化処理品を、「シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子」と表現する。)
【0173】
日焼け止め乳液の処方
シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子 7.0質量%
ステアリン酸 2.0質量%
セチルアルコール 1.0質量%
ワセリン 5.0質量%
シリコン油 2.0質量%
流動パラフィン 10.0質量%
グリセリンモノステアリン酸エステル(自己乳化型) 1.0質量%
ポリオキシエチレン(25モル)モノオレイン酸エステル 1.0質量%
ポリエチレングリコール1500 5.0質量%
ビーガム 0.5質量%
精製水 65.2質量%
香料 0.1質量%
防腐剤 0.2質量%
【0174】
また比較例として、シリカ被覆混晶酸化物粒子の代わりに従来表面処理酸化チタン(石原産業社製TTO−S−1)及び従来酸化亜鉛(住友大阪セメント社製ZnO350)を用いて日焼け止め乳液を調製した(比較例1、2)。
【0175】
さらに、実施例1のシリカ被覆混晶酸化物粒子1において混晶酸化物粒子1の代わりに酸化亜鉛(昭和タイタニウム株式会社製UFZ40)を使用したシリカ被覆酸化亜鉛を用いて日焼け止め乳液を調製し比較例3とし、実施例4のシリカ被覆混晶酸化物粒子4において混晶酸化物粒子4の代わりに酸化チタン(昭和タイタニウム株式会社製F4)を使用したシリカ被覆酸化チタンを用いて日焼け止め乳液を調製し比較例4とした。(官能試験)
【0176】
実施例5〜8及び比較例1〜4で製造した日焼け止め乳液の使用感及び仕上がりの透明感を20から40歳台の女性50人を用いた官能試験で評価した。50人の被験者によって各々のファンデーションの使用感が、
極めて良い:5点 良い:3点 普通:2点 悪い:1点 極めて悪い:0点の基準により採点された。次いで、50人の評価点数を集計した合計点数により、下記の基準に基づく5段階で使用感を判定した。
【0177】
250〜200点:極めて良い(++)
200〜150点:良い (+ )
150〜100点:普通 (+−)
100〜 50点:悪い (− )
50〜 0点:極めて悪い(−−)
【0178】
結果を表2に示す。
【表2】

【0179】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子を配合した日焼け止め乳液の使用感及び透明感は、いずれも極めて良い(++)である。
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有する日焼け止め乳液は、特に透明感が向上していることが明らかである。
【0180】
(実施例9〜12)ファンデーション
定法により下記処方のファンデーションを製造した。被験物質として、それぞれ実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いた。
【0181】
ファンデーションの処方
シリカ被覆混晶酸化物粒子 15.0質量%
マイカ 15.0質量%
タルク 10.0質量%
亜鉛華 15.0質量%
酸化鉄(赤) 1.5質量%
酸化鉄(黄) 3.4質量%
グリセリン 10.0質量%
精製水 30.0質量%
香料 0.1質量%
【0182】
また比較例として、シリカ被覆混晶酸化物粒子の代わりに従来表面処理酸化チタン(石原産業社製TTO−S−1)及び従来酸化亜鉛(住友大阪セメント社製ZnO350)を用いてファンデーションを調製した(比較例5、6)。
【0183】
さらに、実施例1のシリカ被覆混晶酸化物粒子1において混晶酸化物粒子1の代わりに酸化亜鉛(昭和タイタニウム製UFZ40)を使用したシリカ被覆酸化亜鉛を用いてファンデーションを調製し比較例7とした。
また、実施例4のシリカ被覆混晶酸化物粒子4において混晶酸化物粒子4の代わりに酸化チタン(昭和タイタニウム製F4)を使用したシリカ被覆酸化チタンを用いてファンデーションを調製し比較例8とした。
【0184】
(官能試験)
実施例9〜12で製造したファンデーションの使用感及び仕上がりの透明感を、前記の方法に従い、官能試験で評価した。
【0185】
結果を表3に示す。
【表3】

【0186】
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子を配合したファンデーションの使用感及び透明感は、いずれも極めて良い(++)である。
本発明のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有するファウンデーションは、特に透明感が向上していることが明らかである。
【0187】
(実施例13)化粧水
定法により下記処方の化粧水を製造した。
【0188】
化粧水の処方
シリカ被覆混晶酸化物粒子1 3.0質量%
エチルアルコール 39.6質量%
1,3−ブチレングリコール 9.5質量%
ヒマシ油 4.9質量%
メチルパラベン 0.2質量%
精製水 42.8質量%
【0189】
上記の化粧水について官能試験を実施したところ、良い使用感及び極めて良い透明感という評価を得た。
【0190】
(実施例14)乳液
定法により下記処方の乳液を製造した。
【0191】
乳液の処方
シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子3 3.0質量%
アボガド油 11.0質量%
ベヘニルアルコール 0.6質量%
ステアリン酸 0.4質量%
グリセリン脂肪酸エステル 0.9質量%
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 1.1質量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.4質量%
1,3−ブチレングリコール 10.1質量%
メチルパラベン 0.2質量%
香料 0.4質量%
精製水 71.9質量%
【0192】
上記の化粧水について官能試験を実施したところ、極めて良い使用感及び極めて良い透明感という評価を得た。
【0193】
(実施例15)クリーム
定法により下記処方のクリームを製造した。
【0194】
クリームの処方
シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子1 3.5質量%
スクワラン 15.2質量%
ステアリン酸 7.8質量%
ステアリルアルコール 6.0質量%
ミツロウ 1.9質量%
プロピレングリコールモノステアレート 3.1質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル 1.1質量%
1,3−ブチレングリコール 11.9質量%
メチルパラベン 0.2質量%
香料 0.4質量%
精製水 41.9質量%
【0195】
上記のクリームについて官能試験を実施したところ、極めて良い使用感及び極めて良い透明感という評価であった。
【0196】
(実施例16)パック
被験物質として実施例3で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を用いて、常法により下記の処方でパックを製造した。
【0197】
パックの処方
シリカ被覆混晶酸化物粒子3 7.0質量%
ポリビニルアルコール 14.5質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.8質量%
1,3−ブチレングリコール 2.9質量%
エチルアルコール 10.0質量%
メチルパラベン 0.1質量%
精製水 60.7質量%
【0198】
上記のパックについて官能試験を実施したところ、良い使用感と透明感という評価であった。
【0199】
(実施例17)口紅
被験物質として実施例1のシリカ被覆混晶酸化物粒子(使用に当たっては、さらにその表面を、ジメチルポリシロキサンが処理粉体重量に対して3質量%となるように疎水化処理を施した。)を用いて、常法により下記の処方で口紅を製造した。
【0200】
シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子1 3.0質量%
シリコン油 27.0質量%
ヒマシ油 18.3質量%
ヘキサデシルアルコール 25.2質量%
ラノリン 3.9質量%
ミツロウ 4.8質量%
オゾケライト 3.4質量%
キャンデリラロウ 6.2質量%
カルナウバロウ 2.1質量%
メチルパラベン 0.1質量%
赤色色素 4.8質量%
香料 0.1質量%
精製水 1.1質量%
【0201】
上記の口紅について官能試験を実施したところ、極めて良い使用感及び透明感という評価であった。
【0202】
(実施例18〜21)両用ファンデーション
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子(使用に当たっては、さらにその表面を、ジメチルポリシロキサンが処理粉体重量に対して3質量%となるように疎水化処理を施した。)を被験物質に用いて、定法により下記処方の両用ファンデーションを製造した。
【0203】
両用ファンデーションの処方
シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子 6.0質量%
シリコーン処理タルク 19.0質量%
シリコーン処理マイカ 39.6質量%
シリコーン処理酸化鉄(赤) 1.0質量%
シリコーン処理酸化鉄(黄) 3.0質量%
シリコーン処理酸化鉄(黒) 0.3質量%
シリコーン処理チタニア 15.0質量%
ステアリン酸亜鉛 0.2質量%
ナイロンパウダー 2.0質量%
スクアラン 4.0質量%
固形パラフィン 0.5質量%
ジメチルポリシロキサン 4.0質量%
トリイソオクタン酸グリセリン 5.0質量%
酸化防止剤 0.2質量%
防腐剤 0.1質量%
香料 0.1質量%
【0204】
実施例18〜21の両用ファンデーションについて官能試験を実施して、使用感及び透明感を評価した。本発明によるシリカ被覆混晶酸化物粒子を含有するファンデーションは、いずれも極めて良い使用感と極めて良い透明感を示した。
【0205】
(実施例22〜25) W/O日焼止めクリーム
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子(使用に当たっては、さらにその表面を、ジメチルポリシロキサンが処理粉体重量に対して3質量%となるように疎水化処理を施した。)を被験物質に用いて、下記処方のW/O日焼止めクリームを製造した。
【0206】
(1)2−エチルヘキサン酸グリセリル 12.0質量%、(2)4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタン 5.0質量%、(3)イソステアリン酸ポリグリセリル 1.0質量%、(4)セスキオレイン酸ソルビタン 2.0質量%、(5)デカメチルポリシロキサン 10.0質量%、(6)有機変性ベントナイト 0.2質量%、(7)スクワラン 5.0質量%、(8)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0質量%、(9)シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子 10.0質量%、(10)香料 0.1質量%、(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.3質量%、(12)エデト酸二ナトリウム 0.1質量%、(13)精製水 46.3質量%
【0207】
(1)〜(8)を加熱溶解し、(9)(10)を添加して均一に分散し、(11)〜(13)を徐々に添加して乳化し、充分攪拌してから30℃まで冷却してW/O日焼止めクリームを得た。
【0208】
(実施例26〜29) O/W日焼止めクリーム
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子(使用に当たっては、さらにその表面を、ジメチルポリシロキサンが処理粉体重量に対して3質量%となるように疎水化処理を施した。)を被験物質に用いて、下記処方のO/W日焼止めクリームを製造した。
【0209】
(1)スクワラン 5.0質量%、(2)2−エチルヘキサン酸グリセリル 10.0質量%、(3)マイクロクリスタンワックス 1.0質量%、(4)ステアリルアルコール 2.0質量%、(5)パラオキシ安息香酸ブチル 0.1質量%、(6)4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタン 1.0質量%、(7)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3.0質量%、(8)シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子 5.0質量%、(9)香料 0.2質量%、(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量%、(11)1,3−ブチレングリコール 7.0質量%、(12)精製水 65.6質量%
【0210】
(1)〜(7)を加熱溶解し、(8)(9)を添加して均一に分散し、(10)〜(12)を徐々に添加して乳化し、充分攪拌してから30℃まで冷却してO/W日焼け止めクリームを得た。
【0211】
(実施例30〜33) 口紅
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子(使用に当たっては、さらにその表面を、ジメチルポリシロキサンが処理粉体重量に対して3質量%となるように疎水化処理を施した。)を被験物質に用いて、下記処方の口紅を製造した。
【0212】
(1)パラフィンワックス 10.0質量%、(2)マイクロクリスタリンワックス 10.0質量%、(3)シリコーン処理シリカ被覆混晶酸化物粒子 3.0質量%、(4)2−エチルヘキサン酸グリセリル 46.4質量%、(5)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0質量%、(6)4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタン 3.0質量%、(7)リンゴ酸ジイソステアリル 15.0質量%、(8)赤色201号 2.0質量%、(9)赤色202号 2.0質量%、(10)青色1号 0.5質量%、(11)ベンガラ 3.0質量%、(12)香料 0.1質量%
【0213】
(1)〜(11)を加熱溶解し、(12)を添加して均一に分散し、30℃まで冷却して口紅を得た。
【0214】
(実施例34〜37)パウダーファンデーション
実施例1〜4で得られたシリカ被覆混晶酸化物粒子を被験物質に用いて、下記処方のパウダーファンデーションを製造した。
【0215】
(1)マイカ 36.0質量%、(2)タルク 20.0質量%、(3)シリカ被覆混晶酸化物粒子 6.0質量%、(4)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0質量%、(5)4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタン 10.0質量%、(6)ステアリン酸亜鉛 4.0質量%、(7)黄酸化鉄 3.0質量%、(8)ベンガラ 0.8質量%、(9)黒酸化鉄 0.2質量%、(10)スクワラン 5.0質量%、(11)2−エチルヘキサン酸グリセリル 8.7質量%、(12)モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0質量%、(13)パラオキシ安息香酸ブチル 0.2質量%、(14)香料 0.1質量%
【0216】
(10)〜(13)を加熱溶解したのち(14)を混合し、室温に冷却して油相とする。(1)〜(9)を混合機にてよく攪拌し、さらに油相を添加しよく混合する。これを粉砕機に通し粉砕したものを金皿にプレスし目的のパウダーファンデーションを得た。
【0217】
実施例25〜37の処方中のシリカ被覆混晶酸化物粒子を、従来表面処理酸化チタン(石原産業社製TTO−S−1)及び従来酸化亜鉛(住友大阪セメント社製ZnO350)に変更して調製した化粧料を比較例として、1ヶ月後の経時安定性を目視にて判断した。
【0218】
比較例はいずれも4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタンの析出が観察されたのに対して、実施例25〜37のシリカ被覆混晶酸化物粒子を配合した化粧料はいずれも4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタンの析出が無く経時安定性の優れた化粧料であった。
【0219】
実施例25〜37で得られた化粧料は、経時安定性および温度安定性をに優れたものであった。つまり、本発明の化粧料は、従来の4−tert−ブチル−4´−メトキシジベンゾイルメタンを配合した化粧料に比較して経時安定性の著しく向上したものであって、各種香・化粧料に好適に使用可能なものである。
【0220】
【発明の効果】
本発明によれば、緻密で実用的なシリカ膜で被覆され、かつ分散性及び透明性が向上したシリカ被覆混晶酸化物粒子及びその経済的な製造法が提供され、さらにシリカ被覆混晶酸化物粒子が良好に分散し、特に透明感と保存安定性に優れた紫外線遮蔽用化粧料が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子の表面が緻密な薄膜シリカにより被覆されていることを特徴とするシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項2】
シリカ膜厚が0.1〜25nmであることを特徴とする請求項1に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項3】
テトラリン自動酸化法により測定した光触媒活性度が60Pa/min.以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項4】
シリカ被膜が、1150〜1250cm-1と1000〜1100cm-1の赤外吸収スペクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150〜1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000〜1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項5】
サンセットイエロ−法により測定される色素退色速度(ΔABS490/hr)が0.1以下である請求項1ないし4のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項6】
ガラス平板法により測定される動摩擦係数が0.550以下である請求項1ないし5のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項7】
ハロゲン化金属を含む混合ガスを酸化性ガスで高温酸化することにより金属酸化物を製造する気相製造法において、該ハロゲン化金属として、チタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を含む混合ガス、及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱してから反応させて製造することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項8】
ハロゲン化金属を含む混合ガスが、チタン、珪素及びアルミニウムの塩化物、臭化物、沃化物からなる群より選ばれた少なくとも2種以上の化合物を各々単独で気化した後にガス状で混合したものであることを特徴とする請求項7に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項9】
混晶酸化物粒子が、一次粒子内にチタン−酸素−珪素結合を有する混晶を含む混晶酸化物粒子であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項10】
混晶酸化物粒子が、一次粒子内にチタン−酸素−アルミニウム結合を有する混晶を含む混晶酸化物であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項11】
混晶酸化物粒子が、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を含み、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛特有の回折ピークである格子面(100)、(002)、(101)と、結晶性シリカに特有の回折ピークである格子面(101)に回折ピークを有する酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項12】
混晶酸化物粒子が、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を1次粒子中に含むことを特徴とする請求項11に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項13】
混晶酸化物粒子が、一次粒子内に亜鉛−酸素−珪素結合を有する混晶を含む混晶酸化物粒子であることを特徴とする請求項11または12に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項14】
混晶酸化物粒子が、気体状の亜鉛を酸素と水蒸気の存在下で酸化させる気相反応において、不活性ガス中に気体状の亜鉛を含むZn原料ガスと、酸素と水蒸気を含む酸化性ガスを、反応器にそれぞれ導入し、反応器内で亜鉛の酸化反応をさせ、その反応帯に珪素含有組成物を導入し酸化することにより製造される複合酸化物であることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項15】
800℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が、30%以下であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項16】
シリカ被膜の表面を疎水性付与剤にて表面疎水化することを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項17】
疎水性付与剤が、シリコン油類、アルコキシシラン類、シランカップリング剤類及び、高級脂肪酸塩類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の疎水性付与剤である請求項16に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項18】
イ)BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子、ロ)有機基及びハロゲンを含まない珪酸または前記珪酸を産生し得る前駆体、ハ)アルカリ、ニ)有機溶媒及びホ)水を順序に関係無く、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲になるよう添加し、混晶酸化物粒子の表面に緻密な薄膜シリカを選択的に形成することを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【請求項19】
イ)アルカリ、ロ)有機溶媒及びハ)水の混合液に、ニ)BET比表面積が10〜200m2/gで混晶状態の一次粒子を含む混晶酸化物粒子を添加し、さらに、ホ)有機基及びハロゲンを含まない珪酸または前記珪酸を産生し得る前駆体、ヘ)有機溶媒及び必要に応じて、ヘ)水からなる混合液を、添加後の水/有機溶媒比が0.1〜10の範囲で、かつ珪素濃度が0.0001〜5モル/リットルの範囲となるように添加し、混晶酸化物粒子の表面に緻密な薄膜シリカを選択的に形成することを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【請求項20】
アルカリが、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムからなる群より選ばれる1種以上である請求項18または19に記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【請求項21】
有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びアセトンからなる群より選ばれる1種以上である請求項18ないし20のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子の製造方法。
【請求項22】
請求項18ないし21のいずれかに記載の製造方法により製造されたシリカ被覆混晶酸化物粒子。
【請求項23】
請求項1ないし17、及び請求項22のいずれかに記載のシリカ被覆混晶酸化物粒子を含む化粧料。
【請求項24】
抗酸化剤を含有することを特徴とする請求項23に記載の化粧料。
【請求項25】
有機系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項23または24に記載の化粧料。
【請求項26】
請求項23ないし25のいずれかに記載の化粧料からなる紫外線防止化粧品。
【請求項27】
W/OもしくはO/W乳液またはクリーム、ファンデーションあるいはジェルである請求項26に記載の紫外線防止化粧品。

【公開番号】特開2007−131460(P2007−131460A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−280147(P2001−280147)
【出願日】平成13年9月14日(2001.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】