説明

シリカ複合樹脂粒子の用途

【課題】 光拡散性および光透過性に優れるため光拡散性材料の面発光輝度を低下させないシリカ複合樹脂粒子の用途を提供する。
【解決手段】 光拡散剤として、500nm以下の平均粒子径を有するシリカ微粒子が透明ないし半透明のマトリックス樹脂中に分散してなるシリカ複合樹脂粒子を含む、光拡散性樹脂組成物および光拡散シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性に優れるシリカ複合樹脂粒子の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から出る光を有効利用する見地から、照明カバーや、ディスプレースクリーン等の素材には光拡散性材料が用いられている。このような光拡散性材料として、無機物や有機物からなる微粒子を光拡散剤として用い、基材である透明性樹脂に分散させたものがある。その原理は、微粒子と透明性樹脂との屈折率の差を利用し、微粒子と透明性樹脂との界面に到達した光を屈折させることによって光を透過方向に拡散させるものである。
光拡散性材料の光拡散性を向上させるために、特開昭60−139758号公報や、特開昭60−184559号公報等には、透明性樹脂と光拡散剤との屈折率の差を規定した光拡散性材料が開示されている。また、特公昭62−31741号公報には、SiO2 、CaCO3 および有機高分子のうちのいずれか2種類の微粒子からなり、数〜数十μmの粒子径を有した光拡散剤を、透明性樹脂に均一に混入させて得たシート状物が開示されている。
【0003】
上記公報記載の光拡散性材料では、光拡散性を向上させるために光拡散剤を多量に添加する必要がある。しかし、光拡散剤を多量に添加すると、光拡散性材料の光透過性が低下し、発光面輝度も低下するという問題が生じる。
一方、液晶表示装置において、液晶バックライト用のフィルム状光拡散性材料が用いられることがある。すなわち、フィルム状光拡散性材料でつくったバックライト照明パネルを液晶表示パネルの後方に配置し、このバックライト照明パネルからの光を液晶表示パネルの前方に照射して液晶表示パネル上の表示画像を見やすくさせるのである。このような用途に用いるフィルム状光拡散性材料として、特開平6−258504号公報には、両面を微細凹凸面にした透明樹脂フィルムの表面に、粒子径10μm以下の固体微粒子からなる層(光拡散剤層)を配設した光拡散フィルムが開示されている。また、特開平6−273762号公報には、フィルムの表面の一定幅の突起集光層を形成させた光拡散フィルムが開示されている。さらに、特開平6−347613号公報には、表面に多数のレンズが配置された光拡散フィルムが開示されている。
【0004】
しかし、上記公報記載の各フィルム状光拡散性材料は、いずれも、発光面輝度は高いものの、光拡散性に劣り、液晶パネルの視野角を狭くするという問題がある。さらに、その製造過程は、いずれも複雑であり、容易に製造できないという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、光拡散性および光透過性に優れるため光拡散性材料の面発光輝度を低下させないシリカ複合樹脂粒子の用途を提供することである。なお、このシリカ複合樹脂粒子は光拡散用途以外にも使用し得る。
本発明が具体的課題とする1つは、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有する光拡散性材料を容易に得させる光拡散性樹脂組成物を提供することである。
本発明が具体的課題とする別の1つは、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有し、しかも、製造の容易な光拡散シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微細なシリカ微粒子が内部に分散している複合樹脂粒子が、光拡散性を向上させ、光拡散性材料等に用いると面発光輝度を高めるという知見を得て、本発明に到達した。
すなわち、本発明のシリカ複合樹脂粒子は、500nm以下の平均粒子径を有するシリカ微粒子が透明ないし半透明のマトリックス樹脂中に分散してなる粒子である。
本発明の光拡散性樹脂組成物は、透明ないし半透明の樹脂中に上記シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を分散させてなる樹脂組成物である。
本発明の第1の光拡散シートは、上記光拡散性樹脂組成物をシート状に成形してなる。
【0007】
本発明の第2の光拡散シートは、透明ないし半透明のシート状透明性基材表面に、バインダー樹脂を用いて上記シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を結着させてなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリカ複合樹脂粒子は、光拡散性および光透過性に優れるため、光拡散性材料の面発光輝度を低下させない。なお、このシリカ複合樹脂粒子は光拡散用途以外にも使用し得る。
本発明のシリカ複合樹脂粒子の製造方法は、上記特性を有し、球状で、粒子径の標準偏差が小さいシリカ複合樹脂粒子を容易に製造することができる。
本発明の光拡散性樹脂組成物は、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有する光拡散性材料を容易に得させることができる。
本発明の光拡散シートは、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有し、しかも、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔シリカ複合樹脂粒子とその製造方法〕
本発明のシリカ複合樹脂粒子は、シリカ微粒子とマトリックス樹脂とを含み、シリカ微粒子がマトリックス樹脂中に分散している。
シリカ複合樹脂粒子に用いられるシリカ微粒子は、500nm以下の平均粒子径を有する微細な大きさのものであるため、シリカ複合樹脂粒子中のシリカ微粒子と衝突した光を効率よく屈折させることが可能となり、優先して透過方向に拡散させることができるとともに、光透過性にも優れ、面発光輝度を低下させないことが実現できる。
シリカ微粒子の平均粒子径は500nm以下であれば、特に限定はなく、好ましくは200nm以下である。シリカ微粒子の平均粒子径が500nmを超えると、シリカ微粒子に衝突した光が吸収されやすくなって、優先して透過方向に拡散させることができなくなる。なお、シリカ微粒子の平均粒子径を測定する方法としては、たとえば、サブミクロン粒子径アナライザーを利用して平均粒子径を測定する方法や、透過型電子顕微鏡で撮影した写真に基づいて平均粒子径を測定する方法、溶媒中に分散させてレーザー光等の散乱を利用して平均粒子径を測定する方法等が挙げられる。
【0010】
また、シリカ微粒子の形状については、特に限定はないが、塊状や、回転楕円体状、球状であると、シリカ複合樹脂粒子内部における分散の異方性を示しにくいため好ましい。
シリカ微粒子は、シリカを含み、上記平均粒子径範囲にある粒子であれば、特に限定はないが、シリカ微粒子が、たとえば、表面に有機ポリマーが固定されてなる有機ポリマー複合シリカ微粒子であると、シリカ複合樹脂粒子中のシリカ微粒子の分散性が向上し、光をさらに効率よく屈折させ、優先して透過方向に拡散させて、面発光輝度を向上させることが可能となるため好ましい。
有機ポリマー複合シリカ微粒子は、シリカ粒子本体を主成分とし、ケイ素が主に酸素原子と結合して3次元のネットワーク構造を有しているものである。また、シリカ粒子本体にケイ素以外の金属原子や、有機基、水酸基を含有したり、有機ポリマー複合シリカ微粒子を製造するにあたって使用した原料化合物に由来する各種基が残留したり、表面に固定された有機ポリマーが一部包含されたものでもよい。有機基としては、炭素数20以下の置換されてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0011】
有機ポリマー複合シリカ微粒子中の有機ポリマーは、後述のシリカ複合樹脂粒子の製造方法において、重合性単量体に有機ポリマー複合シリカ微粒子を十分に分散させることができるため好ましい。有機ポリマーの分子量、形状、組成、官能基の有無等については、特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。有機ポリマーの形状についても、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものが使用することができる。有機ポリマーの分子量については、特に限定はなく、好ましくは数平均分子量が200,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。分子量が高すぎると、重合性単量体に溶解しない場合があり好ましくない。
【0012】
有機ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、および、これらの共重合体や、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。
有機ポリマーとしては、前述のように任意の有機ポリマーを用いることができるが、特に、後述の有機ポリマー(P)に由来した構造であると好ましい。
本発明に用いる有機ポリマー複合シリカ微粒子は、シリカ粒子本体の表面に有機ポリマーが固定されてなる複合微粒子であるが、ここにいう固定とは、単なる接着および付着を意味するものではなく、有機ポリマー複合シリカ微粒子を任意の溶剤で洗った洗液中に、有機ポリマーが検出されないことを意味しており、これは有機ポリマーとシリカ粒子本体との間で化学結合していることを強く示唆している。
【0013】
有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径は、好ましくは5〜200nm、さらに好ましくは5〜100nmである。平均粒子径が5nm未満であると、有機ポリマー複合シリカ微粒子の表面エネルギーが高くなり、凝集等が生じ易くなる。他方、平均粒子径が200nmを超えると、光拡散性が低下することがある。
有機ポリマー複合シリカ微粒子の粒子径の変動係数は、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。粒子径の変動係数が50%を超えると、有機ポリマー複合シリカ微粒子の粒子径分布が広くなり、光拡散性が低下するため好ましくない。
有機ポリマー複合シリカ微粒子中に、アルコキシ基が含まれていると、後述のシリカ複合樹脂粒子の製造方法において、重合性単量体に有機ポリマー複合シリカ微粒子を十分に分散させることができるようになるため好ましい。アルコキシ基の含有量は、好ましくは、有機ポリマー複合シリカ微粒子1g当たり0.01〜50mmolである。
【0014】
有機ポリマー複合シリカ微粒子中のシリカの含有率は、有機ポリマー複合シリカ微粒子全体に対して、20重量%以上であると、光拡散性が向上するため好ましい。また、95重量%以下であると、後述のシリカ複合樹脂粒子の製造方法において、重合性単量体に有機ポリマー複合シリカ微粒子を十分に分散させることができるようになるため好ましい。
上記有機ポリマー複合シリカ微粒子の製造方法としては、たとえば、1分子当たりに少なくとも1個のポリシロキサン基を備え、かつ、前記ポリシロキサン基中に少なくとも1個のSi−OR1基(R1は水素原子、アルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の基であって、前記アルキル基およびアシル基は置換されていてもよい基;R1が1分子中に複数ある場合、複数のR1は互いに異なっても良い。)を含有する有機ポリマー(P)を、単独または加水分解可能なケイ素化合物とともに加水分解・縮合する方法がある。
【0015】
有機ポリマー(P)としては、たとえば、2重結合基やメルカプト基を有するようなシランカップリング剤と、加水分解可能なケイ素化合物および/またはその誘導体を共加水分解・縮合した後、得られた共加水分解・縮合物の存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル(共)重合する方法等で製造される。
加水分解可能なケイ素化合物としては、たとえば、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0016】
加水分解・縮合する方法については、特に限定はないが、溶液中で行うと、加水分解・縮合反応を容易に行うことができるため好ましい。また、加水分解・縮合反応において、酸性触媒または塩基性触媒を使用してもよく、2種類以上の触媒を併用してもよい。
シリカ複合樹脂粒子に用いられるマトリックス樹脂は、透明ないし半透明の樹脂であれば特に限定はないが、透明の樹脂であると、光透過性にも優れ、面発光輝度を向上させることができるため好ましい。一方、透明、半透明のいずれでもない場合は、シリカ複合樹脂粒子が光を吸収し、優れた光拡散性を得ることができなくなる。
マトリックス樹脂としては、たとえば、塩化ビニル重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;スチレン重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ(ε−カプロラクタム)、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮合体等のポリアミド樹脂;テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合体、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体;ブチラール樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等のフェノール系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ系樹脂;各種アルキッド樹脂、ウレタン変性樹脂、ポリアミン系樹脂、エポキシ樹脂、環化ゴム等が挙げられ、1種単独、または、2種以上を併用してもよい。マトリックス樹脂は、シリカ複合樹脂粒子を光拡散剤として用いる場合は、後述の透明性樹脂の種類によって適宜選択されるが、透明である程、光透過性が高くなるため好ましい。
【0017】
また、マトリックス樹脂が架橋構造を有する樹脂であると、耐溶剤性や、耐熱性が向上し、劣化等が抑制されるため好ましい。架橋構造を有しない場合、後述の光拡散性樹脂組成物の成形時に、光拡散剤として用いたシリカ複合樹脂粒子自体が溶融し、シリカ複合樹脂粒子内部のシリカ微粒子が配向しやすくなる恐れがあるためである。
シリカ複合樹脂粒子全体中に含まれるシリカ微粒子の割合は、シリカ複合樹脂粒子全体に対して、通常0.1〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲である。シリカ微粒子の割合が0.1重量%未満であると、シリカ微粒子と衝突した光を効率よく屈折させることができなくなって、優先して透過方向に拡散させることができなくなる。また、シリカ複合樹脂粒子を用いた光拡散性材料では、光透過性が低下するとともに、面発光輝度も低下する。他方、70重量%を超えると、シリカ複合樹脂粒子の形状が異形化しやすくなり、異方性を示したり、分散不良を起こしやすくなったりする等、好ましくない。
【0018】
本発明のシリカ複合樹脂粒子は、シリカ微粒子およびマトリックス樹脂以外に、必要に応じて、他の添加剤、たとえば、無機蛍光体、有機蛍光体等の蛍光体;蛍光染料等の染料;顔料;着色剤;安定剤;分散剤;難燃剤;ガラス;ガラス繊維;金属繊維;老化防止剤;帯電防止剤等が適量配合されたものであってもよい。
本発明のシリカ複合樹脂粒子の形状については、特に限定されるものではないが、好ましくは球状あるいは回転楕円体状のものであり、さらに好ましくは球状のものである。球状あるいは回転楕円体状の粒子を用いると好ましい理由は、シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を透明性樹脂に添加したときに、異方性を示しにくくなる他、分散性が良好となり、外観、機械的強度をより一層向上させることができるためである。
【0019】
本発明のシリカ複合樹脂粒子の平均粒子径は、含有するシリカ微粒子の粒子径によっても左右されるが、通常0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μmである。なお、シリカ複合樹脂粒子の粒子径の測定は、レーザー散乱法、コールターカウンター法および遠心沈降法等の従来公知の方法で行うことができる。
本発明のシリカ複合樹脂粒子は、光拡散剤として特に優れるが、たとえば、樹脂フィルム用耐ブロッキング剤、静電荷画像現像用トナー用添加剤、化粧板用添加剤、化粧品用充填剤等の用途に使用することもできる。
上記シリカ複合樹脂粒子の製造方法としては、たとえば、重合性単量体にシリカ微粒子を添加した重合性単量体組成物を媒体中に分散あるいは乳化させ重合を行う乳化重合、懸濁重合、あるいは、溶液中に重合性単量体組成物を溶解させ重合によって析出させる分散重合により、シリカ複合樹脂粒子を形成させる方法がある。上記重合方法によって得られるシリカ複合樹脂粒子の形状は球状であり、また、粒子径の標準偏差が小さいため、上述のように、シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を透明性樹脂に添加したときに、異方性を示しにくくなる他、分散性が良好となり、外観、機械的強度をより一層向上させることができるためである。
【0020】
上記製造方法の中でも、複合化が簡便でシリカ微粒子を容易に分散させることが可能であり、しかも、容易に球状粒子が得られることから、シリカ微粒子を重合性単量体に添加した後、前記シリカ微粒子存在下、前記重合性単量体を水系懸濁重合させる方法が好適である。
なお、シリカ微粒子は、重合性単量体組成物への分散性の向上を目的として種々の方法により表面処理されたものであってもよい。上記表面処理としては、ステアリン酸、オレイン酸等の長鎖の炭化水素で処理する方法;アクリル酸、メタクリル酸等の極性基を有する重合性単量体で処理する方法;トリメチロールプロパン等の多価アルコールで処理する方法;トリエタノールアミン等のアミン類で処理する方法;各種カップリング剤で処理する方法;シリカ微粒子表面の官能基と、それらの表面の官能基と反応しうるアジリジン基、オキサゾレン基、N−ヒドロキシアクリルアミド基、エポキシ基、チオエポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、ケイ素系加水分解性基、アミノ基等の反応性基を有する重合体とを20〜350℃の温度で反応させることにより、シリカ微粒子表面の官能基と上記重合体とを反応させ、シリカ微粒子表面に上記重合体をグラフト化する方法等を挙げることができる。しかし、重合性単量体組成物への分散性をより向上させるためには、シリカ微粒子が上記方法で表面処理されたものよりも、前述の有機ポリマー複合シリカ微粒子であるのが好ましい。
【0021】
重合性単量体としては、たとえば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル系単量体、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0022】
懸濁重合法においては、懸濁粒子の安定化を図るために分散安定剤を添加することができる。分散安定剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があり、その他、アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が用いられる。アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキレンナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等がある。両性イオン性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。これらの分散安定剤は、重合性単量体組成物に対して、通常0.01〜20重量%の範囲内で適宜使用できる。
【0023】
懸濁重合法で用いられる溶媒としては、重合性単量体を完全に溶解しないものであれば特に限定されないが、好ましくは水系媒体が用いられる。これらの溶媒は、重合性単量体組成物に対して、通常20〜10000重量%の範囲内で適宜使用できる。
さらに、懸濁重合法で用いられる重合開始剤としては、通常公知のフリーラジカル触媒、たとえば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、第3級ブチルヒドロキシパーオキサイド、過酸化クメン、過酸化メチルエチルケトン、第3級ブチルパーフタレート、カプロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等の無機酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルアミド、2,2’−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(α−メチルバレロニトリル)、アゾビス(α−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられ、1種単独、または、2種以上を併用してもよい。これらの重合開始剤は、重合性単量体組成物に対して、通常0.01〜20重量%の範囲内で適宜使用できる。
【0024】
また、粒子径制御および重合の際は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
懸濁重合させる際に混合されるシリカ微粒子および重合性単量体に対するシリカ微粒子の割合比率〔100×(シリカ微粒子)/(重合性単量体+シリカ微粒子)〕については、通常0.1〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲である。シリカ微粒子の割合が0.1重量%未満であると、シリカ微粒子と衝突した光を効率よく屈折させることができなくなり、優先して透過方向に拡散させることができなくなる。また、シリカ複合樹脂粒子を用いた光拡散性材料では、光透過性が低下するとともに、面発光輝度も低下する。他方、70重量%を超えると、シリカ複合樹脂粒子の形状が異形化しやすくなり、異方性を示したり、分散不良を起こしやすくなったりする等、好ましくない。
【0025】
懸濁重合の条件、すなわち、重合温度、時間、撹拌装置等に関しては、特に制限されるものでなく、従来公知の懸濁重合法の条件を適宜選択して行うことができる。
さらに、上述したように、シリカ複合樹脂粒子は、架橋構造を有することが好ましい。架橋構造を有するシリカ複合樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、上記懸濁重合法において、上述重合性単量体組成物に、さらに重合性二重結合基を分子中に複数個有する架橋剤を添加した重合性単量体組成物を重合させる方法等が挙げられる。このよな架橋剤としては、たとえば、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレン、不飽和ポリスチレン、および、特公昭57−56507号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59−221305号公報、特開昭59−221306号公報、特開昭59−221307号公報等に記載されている反応性重合体を使用してもよい。これらの架橋剤の添加割合を、重合性単量体全体に対し、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上となるように調整した場合、得られるシリカ複合樹脂粒子の熱機械的特性が向上するため、特に好ましい。
【0026】
さらに、懸濁重合法によりシリカ複合樹脂粒子を製造する場合、重合に際して、重合性単量体組成物中あるいは溶媒(分散媒)中には、必要に応じて、顔料、着色剤(染料)、可塑剤、重合安定剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を適量配合ないし添加することもできる。
シリカ複合樹脂粒子の製造方法は、上記懸濁重合法等の重合方法以外に、前述のマトリックス樹脂とシリカ微粒子とを、混練し、粉砕、造粒する方法等、従来公知の方法で造粒する方法がある。
〔光拡散性樹脂組成物〕
本発明の光拡散性樹脂組成物は、前記で詳しく説明したシリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を、透明ないし半透明の樹脂(以下、透明ないし半透明の樹脂を透明性樹脂ということがある。)中に分散させたものであり、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有する光拡散性材料を容易に得させることができる。
【0027】
透明性樹脂は、透明ないし半透明であれば特に限定されるものでなく、たとえば、塩化ビニル重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系樹脂;スチレン重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合体、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂等の透明ないし半透明の樹脂が挙げられ、1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0028】
光拡散性樹脂組成物全体に対する光拡散剤の配合割合は、使用用途により、その最適範囲は異なるが、好ましくは3〜90重量%、さらに好ましくは5〜80重量%、最も好ましくは10〜70重量%である。光拡散剤の配合割合が3重量%未満であると、光拡散性樹脂組成物から得られる、光拡散シート等の光拡散性材料において、十分な光拡散性が得られず、面発光輝度せ低下することがある。他方、90重量%を超えると、十分な光透過性が得られず、面発光輝度も低下することがある。
光拡散性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、上記シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を、透明性樹脂中に分散させることによって得られる。光拡散性樹脂組成物を得る方法としては、特に限定されるものでなく、たとえば、透明性樹脂に対し、シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤、および、必要に応じて、トルエン等の有機溶剤を適量配合し、撹拌混合することで塗料化することにより、光拡散性樹脂組成物が容易に得られる他、シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を溶融した透明性樹脂と混練する方法等、従来公知の分散方法を適用することができる。
〔光拡散シート〕
本発明の第1の光拡散シートは、前記で詳しく説明した光拡散性樹脂組成物をシート状に成形してなる。
【0029】
本発明の第2の光拡散シートは、透明ないし半透明のシート状基材(以下、透明ないし半透明のシート状基材を透明性シート状基材ということがある。)表面に、バインダー樹脂を用いて前記で詳しく説明したシリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を結着させてなる。
第1の光拡散シートとしては、たとえば、図1に示す光拡散シート1が挙げられ、シリカ複合樹脂粒子2が透明性樹脂3中に分散している。この光拡散シートの厚みについては特に限定はないが、通常、1〜10000μm、好ましくは10〜5000μmである。
第1の光拡散シートは、光拡散性樹脂組成物を押出成形や、射出成形等の成形方法によって得られる。
【0030】
第2の光拡散シートとしては、たとえば、図2に示す光拡散シート4が挙げられ、透明性シート状基材5の表面に、バインダー樹脂6を用いてシリカ複合樹脂粒子2からなる光拡散剤が結着している。この光拡散シートの厚みについても、第1の光拡散シートの厚みと同様である。
透明性シート状基材は、透明ないし半透明であれば、その材質については特に限定はないが、透明性シート状基材の材質としては、各種ガラスや、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のシートとおよびフィルム等を挙げることができる。
【0031】
バインダー樹脂としては、たとえば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、1種単独、または2種以上を併用してもよい。
シリカ複合樹脂粒子とバインダー樹脂との配合割合は、得られる光拡散シートの用途やバインダー樹脂の種類によって適宜選択できるが、シリカ複合樹脂粒子およびバインダー樹脂の合計100重量%中、好ましくはシリカ複合樹脂粒子3〜90重量%で、バインダー樹脂97〜10重量%であり、さらに好ましくはシリカ複合樹脂粒子5〜80重量%で、バインダー樹脂95〜20重量%である。シリカ複合樹脂粒子が3重量%未満であると、十分な光拡散性が得られず、面発光輝度が低下することがある。他方、シリカ複合樹脂粒子が90重量%を超えると、光拡散シートの強度が低下するとともに、十分な光透過性が得られず、面発光輝度が低下することがある。
【0032】
第2の光拡散シートは、バインダー樹脂およびシリカ複合樹脂粒子を含むシリカ複合樹脂粒子含有バインダー組成物を、成形機や成膜機を用いて透明性基材に塗布し、乾燥させることによって得られる。なお、前述の光拡散性樹脂組成物中の透明性樹脂がバインダー樹脂である場合は、光拡散性樹脂組成物をそのままシリカ複合樹脂粒子含有バインダー組成物として使用できる。
上記光拡散シートは、いずれも、シリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を含むため、光拡散性および光透過性に優れ、高い面発光輝度を有している。しかも、シート状に成形したり、バインダーでシリカ複合樹脂粒子を結着させるので、容易に製造される。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。まず、製造例において重合性ポリシロキサン、有機ポリマーおよび有機ポリマー複合シリカ微粒子を製造した。
下記の製造例で得られる重合性ポリシロキサンおよび有機ポリマーの数平均分子量、有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径および粒子径の変動係数は、以下の方法で測定した。
(数平均分子量)
高速GPC装置HLC−8020(東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンを標準物質として測定した。
(平均粒子径および粒子径の変動係数)
サブミクロン粒子径アナライザー NICOMP MODEL 370(野崎産業(株)製)を用いて測定した。
【0034】
(製造例1)
(有機ポリマー(P−1)の製造)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコに、テトラメトキシシラン144.5g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19g、メタノール30gおよびアンバーリスト15(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の陽イオン交換樹脂)5gを入れ、65℃で2時間攪拌し反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下、80℃まで2時間かけて昇温しメタノールの流出がなくなるまで、同温度を保持し、反応をさらに進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾別し、数平均分子量が1800の重合性ポリシロキサンを得た。
【0035】
ついで、攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤としてトルエン200gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながらフラスコ内温を110℃まで加熱した。上記で得られた重合性ポリシロキサン20g、メチルメタクリレート80g、2−エチルヘキシルアクリレート10g、スチレン60g、ブチルアクリレート30gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル6gを混合した溶液を滴下口より2時間かけて滴下した。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.4gを30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行い、数平均分子量が12,000の有機ポリマー(P−1)がトルエンに溶解した溶液を得た。得られた溶液中の固形分は49.5%であった。
【0036】
(製造例2)
(有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(1)の製造)
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イおよびロ)および温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、酢酸ブチル496g、メタノール124gを入れておき、内温を20℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、製造例1で得た有機ポリマー(P−1)のトルエン溶液27gおよびテトラメトキシシラン72gの混合液(溶液A)を滴下口イから、水28g、25%アンモニア水9gおよびメタノール37gの混合液(溶液B)を滴下口ロから、1時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間攪拌を続けた。次に、有機ポリマー(P−1)のトルエン溶液37gおよび酢酸ブチル37gの混合液を滴下口イから、1時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間攪拌を続けた。さらに110mmHgの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノール、トルエン、酢酸ブチルを固形分濃度が30%となるまで留去し、有機ポリマー複合シリカ微粒子が酢酸ブチルに分散した分散体(1)を得た。得られた有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径は27nm、粒子径の変動係数は16%であった。
【0037】
(製造例3)
(有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(2)の製造)
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イおよびロ)および温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、酢酸ブチル496g、メタノール124gを入れておき、内温を20℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、製造例1で得た有機ポリマー(P−1)のトルエン溶液10gおよびテトラメトキシシラン100gの混合液(溶液A)を滴下口イから、水30g、25%アンモニア水30gおよびメタノール60gの混合液(溶液B)を滴下口ロから、1時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間攪拌を続けた。次に、有機ポリマー(P−1)のトルエン溶液37gおよび酢酸ブチル37gの混合液を滴下口イから、1時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間攪拌を続けた。さらに110mmHgの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノール、トルエン、酢酸ブチルを固形分濃度が30%となるまで留去し、有機ポリマー複合シリカ微粒子が酢酸ブチルに分散した分散体(2)を得た。得られた有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径は177nm、粒子径の変動係数は11%であった。
【0038】
下記の実施例で得られるシリカ複合樹脂粒子の粒子径、シリカ複合樹脂粒子に含まれるシリカ微粒子の最大粒子径、光拡散シートの全光線透過率、平行線透過率、ヘイズおよび輝度は、以下の方法で測定した。
(シリカ複合樹脂粒子の粒子径)
コールターカウンター マルチサイザーII(コールター(株)製)によりアパーチャー径100μmの条件で測定を行った。
(全光線透過率、平行線透過率およびヘイズ)
濁度計 NDH−1001 DP(日本電色工業(株)製)を用いて、光拡散シートの全光線透過率、平行線透過率およびヘイズを測定した。全光線透過率は光透過性の評価のために測定した。また、平行線透過率およびヘイズは光拡散性の評価のために測定した。
(輝度)
光拡散シートを導光板方式のバックライト装置の上面に置き、輝度計 B−7((株)TOPCON製)を用いて測定した。
【0039】
−実施例1−
攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ(株)製)0.5gを溶解した脱イオン水900gを仕込んだ。次に、メタクリル酸メチル80g、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン14g、製造例2で得られた有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(1)20gおよびアゾビスイソブチロニトリル1gを配合した混合物をフラスコに仕込み、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により3000rpmで5分間攪拌して、均一な懸濁液にした。
【0040】
次いで、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて重合反応を行った後、冷却、懸濁液の濾過、洗浄、乾燥を行って、平均粒子径が10.5μmのシリカ複合樹脂粒子(1)を得た。このシリカ複合樹脂粒子(1)中のシリカ微粒子の平均粒子径は27nmであった。
アクリル系樹脂溶液(アロセット5247、(株)日本触媒製、固形分45%)100重量部に対して、シリカ複合樹脂粒子(1)36重量部およびトルエン270重量部を配合して、塗料化した。得られた塗料をバーコーターを用いてポリエステルシート上に塗布し、乾燥することにより、塗膜厚15μmの光拡散シート(1)を得た。この光拡散シート(1)の光学特性を表1に示す。
【0041】
−実施例2−
実施例1と同様のフラスコに、ポリオキシエチレンアルキルスルフォアンモニウム(ハイテノールN−8、第一工業製薬(株)製)0.5gを溶解した脱イオン水900gを仕込んだ。次に、スチレン75g、ジビニルベンゼン10g、製造例3で得られた有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(2)50gおよびラウロイルパーオキサイド1gを配合した混合物をフラスコに仕込み、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により5000rpmで5分間攪拌して、均一な懸濁液にした。
次いで、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて重合反応を行った後、冷却、懸濁液の濾過、洗浄、乾燥を行って、平均粒子径が7.3μmのシリカ複合樹脂粒子(2)を得た。このシリカ複合樹脂粒子(2)中のシリカ微粒子の平均粒子径は177nmであった。
【0042】
アクリル系樹脂溶液(アロセット5247、(株)日本触媒製、固形分45%)100重量部に対して、シリカ複合樹脂粒子(2)36重量部およびトルエン270重量部を配合して、塗料化した。得られた塗料をバーコーターを用いてポリエステルシート上に塗布し、乾燥することにより、塗膜厚12μmの光拡散シート(2)を得た。この光拡散シート(2)の光学特性を表1に示す。
−比較例1−
実施例1と同様のフラスコに、ポリオキシエチレンアルキルスルフォアンモニウム(ハイテノールN−8、第一工業製薬(株)製)0.5gを溶解した脱イオン水900gを仕込んだ。次に、メタクリル酸メチル70g、エチレングリコールジメタクリレート20g、平均粒子径1.8μmのシリカ微粒子(サイロイド244、富士シリシア(株)製)10gおよびアゾビスイソブチロニトリル1gを配合した混合物をフラスコに仕込み、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により3000rpmで5分間攪拌して、均一な懸濁液にした。
【0043】
次いで、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて重合反応を行った後、冷却、懸濁液の濾過、洗浄、乾燥を行って、平均粒子径が11.2μmの比較シリカ複合樹脂粒子(1)を得た。比較シリカ複合樹脂粒子(1)中のシリカ微粒子の平均粒子径は1.8μmであった。
アクリル系樹脂溶液(アロセット5247、(株)日本触媒製、固形分45%)100重量部に対して、比較シリカ複合樹脂粒子(1)36重量部およびトルエン270重量部を配合して、塗料化した。得られた塗料をバーコーターを用いてポリエステルシート上に塗布し、乾燥することにより、塗膜厚15μmの比較光拡散シート(1)を得た。この比較光拡散シート(1)の光学特性を表1に示す。
【0044】
−比較例2−
アクリル系樹脂溶液(アロセット5247、(株)日本触媒製、固形分45%)100重量部に対して、アクリル系微粒子(エポスターMA1013、(株)日本触媒製)36重量部およびトルエン270重量部を配合して、塗料化した。得られた塗料をバーコーターを用いてポリエステルシート上に塗布し、乾燥することにより、塗膜厚15μmの比較光拡散シート(2)を得た。この比較光拡散シート(2)の光学特性を表1に示す。
−実施例3−
実施例1で得られたシリカ複合樹脂粒子(1)30gとポリメチルメタクリレート樹脂(スミペックB、住友化学(株)製)70gとを200℃で混練し、熱プレスにより厚さ200μmのシート状に成形し、光拡散シート(3)を得た。この光拡散シート(3)の光学特性を表1に示す。
【0045】
−実施例4−
シリカ複合樹脂粒子(1)をシリカ複合樹脂粒子(2)に変更する以外は、実施例3と同様にして、光拡散シート(4)を得た。この光拡散シート(4)の光学特性を表1に示す。
−比較例3−
シリカ複合樹脂粒子(1)を比較シリカ複合樹脂粒子(1)に変更する以外は、実施例3と同様にして、比較光拡散シート(3)を得た。この比較光拡散シート(3)の光学特性を表1に示す。
【0046】
−比較例4−
シリカ複合樹脂粒子(1)をアクリル系微粒子(エポスターMA1013、(株)日本触媒製)に変更する以外は、実施例3と同様にして、比較光拡散シート(4)を得た。この比較光拡散シート(4)の光学特性を表1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかるシリカ複合樹脂粒子は、例えば、照明カバーや、ディスプレースクリーン等の素材における光拡散性材料として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の光拡散シートを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の光拡散シートを示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 光拡散シート
2 シリカ複合樹脂粒子(光拡散剤)
3 透明性樹脂
4 光拡散シート
5 透明性シート状基材
6 バインダー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以下の平均粒子径を有するシリカ微粒子が透明ないし半透明のマトリックス樹脂中に分散してなるシリカ複合樹脂粒子を、光拡散剤として透明ないし半透明の樹脂中に分散させてなる、光拡散性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物をシート状に成形してなる、光拡散シート。
【請求項3】
透明ないし半透明のシート状基材表面に、バインダー樹脂を用いて、500nm以下の平均粒子径を有するシリカ微粒子が透明ないし半透明のマトリックス樹脂中に分散してなるシリカ複合樹脂粒子からなる光拡散剤を結着させてなる、光拡散シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−312746(P2006−312746A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156557(P2006−156557)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【分割の表示】特願平9−72040の分割
【原出願日】平成9年3月25日(1997.3.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】