説明

シリカ超微粒子分散液及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体

【課題】 シリカ超微粒子分散液、その製造方法、それを用いた樹脂成形体。
【解決手段】 下記の示性式(I)SiOa (OR1 )b、(I)〔式(I) 中、a、及びbは、1.60≦a≦1.95、0. 10≦b≦0.80、2a+b=4.0、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基。〕で表される、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあり、且つ、塗膜としたときの膜表面の水の接触角が30度以下であるシリカ超微粒子分散液、及び、下記の示性式(II) SiOa(OR1 )b (R2 )c(II)〔式(II)中、a、b及びcは、1.60≦a≦1.95、0≦b≦0.70、0.02≦c≦0.80、2a+b+c=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2 は有機基。〕で表され、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子分散液、及びそれらの製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ超微粒子分散液及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体に関し、例えば、塗料、コーティング剤等の表面処理剤への添加剤、無機質バインダー、及び、各種樹脂成形体の充填材等として好適に用いられるシリカ超微粒子分散液、及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、珪素化合物の熱分解法等の乾式法で製造される超微粒子状無水シリカや、水ガラス等からの湿式法で製造されるコロイダルシリカ等の超微粒子状シリカは、耐汚染性、耐候性、硬度、剛性、耐擦傷性、耐薬品性、耐熱性等の無機化合物特有の機能を付与することを目的として、例えば、塗料、コーティング剤等の表面処理剤への添加剤として、或いは、無機質バインダーとして、或いは、各種樹脂成形体の充填材等として、種々の分野で用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの超微粒子状無水シリカやコロイダルシリカは、無機成分の酸化珪素を主体とするものであると共に、反応性の官能基を殆ど有していないことから、塗料、コーティング剤への添加剤、バインダー、或いは樹脂成形体の充填材等として用いられるにおいて、母材の有機化合物成分に対する親和性が必ずしも十分ではなく、更に、粒径が数10nmと大きいこともあって、所期の目的を効果的に発現し得ているものではなかった。
【0004】
一方、母材の有機化合物成分に対する親和性を付与して所期の目的を効果的に発現させるべく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを部分加水分解縮合させて得られるポリアルコキシシロキサン化合物も提案され(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、同じく種々の分野で用いられている。
【0005】
しかしながら、これらのポリアルコキシシロキサン化合物は、反応性が付与されてゲル化が生じ易くなっていることもあって、例えば、それを添加した塗料、コーティング剤等としての保管時に、粘度の上昇、ひいては固形物の析出等が発生し易く、前述の超微粒子状無水シリカやコロイダルシリカと同様に、所期の目的を効果的に発現し得ているとは言い難いものであった。
【特許文献1】特開平8−27419号公報。
【特許文献2】特開平9−12583号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、超微粒子状シリカ等における前述の現状に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、各種用途で超微粒子状シリカを応用するにおいて、所期の目的を効果的に発現し得るシリカ超微粒子分散液、及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の製法により製造され、従来のシリカ超微粒子よりも粒径が小さく、且つ反応性官能基を有する特定示性式のシリカ超微粒子の分散液が前記目的を達成できることを見いだし、本発明に到達したもので、即ち、本発明は、下記の示性式(I) で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあり、且つ、塗膜としたときの膜表面の水の接触角が30度以下であるシリカ超微粒子分散液、を第1の要旨とする。 SiOa (OR1 b (I)
〔式(I) 中、a、及びbは、1.60≦a≦1.95、0. 10≦b≦0.80、2a+b=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
【0008】
又、本発明は、下記の示性式(II)で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子分散液、を第2の要旨とする。
SiOa (OR1 b (R2 c (II)
〔式(II)中、a、b、及びcは、1.60≦a≦1.95、0≦b≦0.70、0.02≦c≦0.80、2a+b+c=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2 は有機基を示す。〕
【0009】
又、本発明は、前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子が、前記示性式(I) で表され、数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあるシリカ超微粒子に変性剤を反応させて得られたものであるシリカ超微粒子分散液、を第3の要旨とする。
【0010】
更に、本発明は、テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に最終濃度がSiO2 換算で10重量%以下の量で、その全量を30分以内の添加時間で添加し、加水分解縮合反応させて前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子を形成する、前記第1の要旨のシリカ超微粒子分散液の製造方法、を第4の要旨とする。
【0011】
又、本発明は、テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に最終濃度がSiO2 換算で10重量%以下の量で、その全量を30分以内の添加時間で添加し、加水分解縮合反応させて前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子を形成し、引き続いてシランカップリング剤を添加し、形成されたシリカ超微粒子に反応させて前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子とする、前記第2又は第3の要旨のシリカ超微粒子分散液の製造方法、を第5の要旨とする。
【0012】
更に、本発明は、前記シリカ超微粒子を含有する塗膜を表面に有する樹脂成形体、を第6の要旨とし、前記シリカ超微粒子を含有する樹脂からなる樹脂成形体、を第7の要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、各種用途で超微粒子状シリカを応用するにおいて、所期の目的を効果的に発現し得るシリカ超微粒子分散液、及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、下記の示性式(I) で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあり、且つ、塗膜としたときの膜表面の水の接触角が30度以下であることを特徴とする。
SiOa (OR1 b (I)
〔式(I) 中、a、及びbは、1.60≦a≦1.95、0. 10≦b≦0.80、2a+b=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
【0015】
前記示性式(I) において、シリカ粒子を形成するためのシロキサン縮合度を示すaは、1.60≦a≦1.95であることを必須とし、1.80≦a≦1.92であるのが好ましい。a<1.60では、シリカ粒子の形成が困難となると共に、官能基としてのOR1 基量が多くなり過ぎるため、シロキサンネットワーク内又はシリカ粒子内に官能基を包含した形態となって有効的にシリカ粒子表面に配列することができないこととなる。又、官能基量が多くなると分散液の貯蔵安定性も低下することとなる。一方、a>1.95では、シリカ粒子を形成するが、官能基としてのOR1 基が少なくなるため反応性が乏しく、母材への分散性の低下や無機バインダー機能の低下等をきたすこととなる。
【0016】
一方、官能基量を示すbは、2a+b=4.0で示されるようにシロキサン縮合度aに連動しており、0. 10≦b≦0.80であることを必須とし、0.16≦b≦0.40であるのが好ましい。b<0. 10では、官能基量が少ないため反応性が乏しく、母材への分散性の低下や無機バインダー機能の低下等をきたすこととなる。一方、b>0.80では、シロキサンネットワーク内又はシリカ粒子内に官能基を包含した形態となってシリカ粒子の形成が困難となる。又、分散液の貯蔵安定性も低下することとなる。
【0017】
又、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基であり、R1 が水素原子の場合は親水性のシラノール基(Si−OH)を形成し、自己架橋性を有すると共に極性基を有する親水性母材との相溶性、分散性に優れたものとなる。又、それから得られるシリカ超微粒子含有塗膜は、シラノール基を有するため硬化後初期から水接触角が数度〜30度と高い親水性を示すことが特徴となり、耐汚染性、耐擦傷性等に優れたものとなる。一方、R1 がアルキル基の場合は加水分解性を有するアルコキシ基(−OR1 )となり、疎水性を示し、極性基を有さない疎水性母材との相溶性、分散性に優れたものとなる。ここで、アルキル基としては、母材に対する親和性を向上することができ、且つ架橋反応後のアルコキシ基残基の加水分解を抑制できる疎水性を有するアルキル基として、炭素数1〜6のアルキル基の中から適宜選択されるが、中でも反応性が高いメチル基、エチル基が特に好ましい。
【0018】
尚、前記示性式(I) において、シロキサン縮合度を示す前記aは、以下の条件での29Si−NMR分析法により求めたものである。
測定装置:日本電子社製核磁気共鳴装置「AL−400」
測定モード:非デカップリング(NNE)
測定温度:25℃
パルス幅:18.0μs
データ取り込み時間:2.245s
待ち時間:5.750s
観測周波数:78.5MHz
積算回数:800回
基準物質:テトラメチルシラン
希釈溶媒:重アセトン
緩和剤:Cr(acac)3
上記の条件で測定を実施すると、テトラアルコキシシランのシロキサン結合に関する情報は、約−75ppmから−130ppmにQ0からQ4の5群のピークを与える。これらのピーク面積比から珪素原子のシロキサン形成度を知ることができ、この値を本発明では、前記示性式(I) におけるシロキサン縮合度aとした。
【0019】
又、前記示性式(I) において、官能基量を示す前記bは、以下の条件での 1H−NMR分析法、又は13C−NMR分析法により求めたものである。但し、R1 が水素原子の場合は直接定量ができないため、13C−NMRでメトキシ基が存在しないことを確認し、前述したシロキサン縮合度aを求め、2a+b=4の関係から求めた。
1H−NMR測定条件
測定装置:日本電子社製核磁気共鳴装置「AL−400」
測定温度:23〜26℃
パルス幅:4.8μs
データ取り込み時間:2.04s
待ち時間:4.95s
観測周波数:400MHz
積算回数:32回
基準物質:テトラメチルシラン
希釈溶媒:重水
緩和剤:なし
上記の条件で測定を実施するとメタノール由来のピークは3.3ppm、メトキシ基由のピークは3.4ppmに観測される。
【0020】
13C−NMR測定条件
測定装置:日本電子社製核磁気共鳴装置「AL−400」
測定モード:非デカップリング(NNE)
測定温度:23〜26℃
パルス幅:3.3μs
データ取り込み時間:2.62s
待ち時間:27.4s
観測周波数:99.45MHz
積算回数:2048回
基準物質:ジオキサン
希釈溶媒:重水
緩和剤:なし
上記の条件で測定を実施するとメタノール由来のピークは49.5ppm、メトキシ基来のピークは51ppmに観測される。
【0021】
尚、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子は、ナトリウム成分の含有量が、通常10ppm以下、好ましくは1ppm以下であって、実質的にナトリウム成分を含有しないものである。
【0022】
又、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあるものである。従来のコロイダルシリカ、オルガノゾル等は、その微粒子シリカの平均粒径が数十nm〜数百nmで、水、アルコール又は有機溶媒中に分散された半透明又は乳白色の液状であるが、本発明のシリカ超微粒子分散液は、前述の如く反応性官能基を有しているシリカ超微粒子が、それらよりも粒径が小さく、数平均粒径で0.1〜10nmの範囲にあり、その分散液は無色透明であると共に、無機化合物特有の機能付与という所期の目的を十分に達成することができることとなる。
【0023】
尚、ここで、シリカ超微粒子の前記数平均粒径は、動的光散乱法により、大塚電子社製「Photal−DLS−7000」にて、Arレーザーを用いた90度の散乱強度の測定データをキュムラント解析法を用いてフィッティングすることにより求めたたものである。
【0024】
そして、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、塗膜としたときの膜表面の水の接触角が30度以下であるものであり、20度以下であるのが好ましく、15度以下であるのが特に好ましい。この水の接触角により、本発明のシリカ超微粒子分散液は、無機化合物特有の機能付与という所期の目的を十分に達成することができることとなる。
【0025】
尚、ここで、膜表面の水の接触角は、スライドガラスをシリカ超微粒子分散液で2mm/秒の引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間加熱硬化させることにより形成した塗膜表面に、2mm径の水滴を滴下したときの接触角を、顕微鏡式接触角計(協和界面科学社製「CA−QI型」)を用いて測定したものである。
【0026】
尚、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、25℃での粘度が、E型粘度計(ブルックフィールド社製「DV−1」)で測定した値として、通常1〜100mPa・secのものである。
【0027】
又、本発明の第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、下記の示性式(II)で表されるシリカの超微粒子の水性分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜30nmの範囲にあることを特徴とする。
SiOa (OR1 b (R2 c (II)
〔式(II)中、a、b、及びcは、1.60≦a≦1.95、0≦b≦0.70、0.02≦c≦0.80、2a+b+c=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2 は有機基を示す。〕
【0028】
前記示性式(II)において、シリカ粒子を形成するためのシロキサン縮合度を示すaは、前記示性式(I) におけると同様に、1.60≦a≦1.95であることを必須とし、1.80≦a≦1.92であるのが好ましい。a<1.60では、シリカ粒子の形成が困難となると共に、官能基としてのOR1 基量又は/及び有機基R2 量が多くなり過ぎるため、シロキサンネットワーク内又はシリカ粒子内に官能基又は/及び有機基を包含した形態となって有効的にシリカ粒子表面に配列することができないこととなる。一方、a>1.95では、シリカ粒子を形成するが、官能基としてのOR1 基量又は/及び有機基R2 量が少なくなるため反応性が乏しく、母材への分散性の低下や無機バインダー機能の低下等をきたすこととなる。
【0029】
一方、官能基量を示すb、及び有機基量を示すcは、2a+b+c=4.0で示されるようにシロキサン縮合度aに連動しており、0≦b≦0.70、及び0.02≦c≦0.80であることを必須とする。ここで、2a+b+c=4.0で、且つ、1.60≦a≦1.95であることから、0.02≦b+c≦0.80であり、0.04≦b+c≦0.40であるのが好ましい。b+c<0. 02では、官能基量が少ないため反応性が乏しいか、有機基量が少ないため疎水性母材との相溶性、分散性の低下等をきたすこととなる。一方、b+c>0.80で、bが大きすぎる場合には、シロキサンネットワーク内又はシリカ粒子内に官能基又は/及び有機基を包含した形態となってシリカ粒子の形成が困難となり、cが大きすぎる場合には、非加水分解性の有機基が多いためシロキサンの形成が阻害され、シリカ粒子の形成が困難となる。
【0030】
又、R1 については、前記示性式(I) におけると同様であり、又、有機基R2 としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等の不飽和炭化水素基;(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基;グリシジルオキシプロピル基等のグリシジルオキシアルキル基;アミノプロピル基等のアミノアルキル基;メルカプトプロピル基等のメルカプトアルキル基;クロロプロピル基等のハロアルキル基等が挙げられ、これらの中で、ビニル基、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基等が特に好ましい。
【0031】
尚、前記示性式(II)において、シロキサン縮合度を示す前記aは、前記示性式(I) におけると同様に29Si−NMR分析法により、又、官能基量を示す前記b、及び有機基量を示す前記cは、前記示性式(I) におけると同様に 1H−NMR分析法、又は13C−NMR分析法により、それぞれ求めたものである。但し、R2 の種類によって、重水素化溶剤としての重水では溶けない場合には、重メタノールや重アセトン等を適宜選択する必要がある。
【0032】
又、本発明の第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子も、ナトリウム成分の含有量が、通常10ppm以下、好ましくは1ppm以下であって、実質的にナトリウム成分を含有しないものである。
【0033】
又、本発明の第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜30nmの範囲にあるものである。従来のコロイダルシリカ、オルガノゾル等は、その微粒子シリカの平均粒径が数十nm〜数百nmで、水、アルコール又は有機溶媒中に分散された半透明又は乳白色の液状であるが、本発明のシリカ超微粒子分散液は、前述の如く反応性官能基又は/及び有機基を有しているシリカ超微粒子が、それらよりも粒径が小さく、数平均粒径で0.1〜30nmの範囲にあり、その分散液は無色透明であると共に、無機化合物特有の機能付与という所期の目的を十分に達成することができることとなる。
【0034】
又、本発明の第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、塗膜としたときの膜表面の水の接触角は、有機基R2 の種類により10〜100度の範囲の値を示し、例えば、R2 がメチル基或いはエチル基である場合、好ましくは40度以下、更に好ましくは30度以下となり、有機基R2 の選択によっては、無機化合物特有の機能付与という所期の目的を十分に達成することができることとなる。
【0035】
本発明の第1の要旨とする前記シリカ超微粒子分散液は、テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に最終濃度がSiO2 換算で10重量%以下の量で、その全量を30分以内の添加時間で添加し、加水分解縮合反応させて前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子を形成する方法により、製造することができる。
【0036】
ここで、原料として用いられるテトラアルコキシシランとしては、通常、アルコキシ基の炭素数が1〜6のものが用いられるが、アルコキシシランの加水分解反応性及び縮合反応性は、一般にアルコキシ基の炭素数が大きくなる程低下するため、加水分解縮合反応を進めてシリカ粒子を得るにはアルコキシ基の炭素数が小さいのが好ましく、テトラメトキシシラン、及びテトラエトキシシランが好ましく、アルコキシシランのなかで最も反応性の高いテトラメトキシシランが特に好ましい。
【0037】
又、塩基性触媒としては、水溶性の塩基性化合物であれば何れも使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物類;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアミノアルコール類;ピリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のアミノ基を有するその他の有機化合物類;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有する珪素化合物類等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、本発明のシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子の粒径、粒度分布、及び官能基の量等の面から適宜選択される。
【0038】
又、反応溶媒としては、水又は水/アルコール混合液が用いられる。これらの溶媒は、本発明のシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子の粒径、粒度分布、及び官能基の種類等の面から適宜選択される。溶媒として水を用いた場合は、原料テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応が最も速く、より粒径の小さなシリカ粒子を得ることが容易となる。又、この場合、反応液中のアルコール濃度は、原料テトラアルコキシシランの加水分解により生成するアルコール分のみとなる。一方、水/アルコール混合液の場合、原料テトラアルコキシシランと水の両方が相溶可能なアルコールであればよく、そのアルコールとしては、シリカ超微粒子を得る目的から加水分解縮合反応を阻害しない炭素数の少ない低級アルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのアルコールの選定や水/アルコール混合液中のアルコール濃度は、本発明のシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子の粒径、粒度分布、及び官能基の種類等の面から適宜選択される。
【0039】
又、原料テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応は、塩基性触媒を含む反応溶媒中で反応溶媒のpHが9〜11の範囲で行う必要がある。その際、塩基性触媒は、反応溶媒の水又は水/アルコール混合液に溶解して使用するが、その使用量は、触媒の有する塩基性の程度(pKb )によって決定され、反応溶媒のpHが9〜11の範囲内になるように調製される。
【0040】
尚、以上の原料テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応において、得られるシリカ超微粒子分散液におけるシリカ超微粒子の粒径及び粒度分布は、原料テトラアルコキシシランの種類、塩基性触媒の種類及び使用量、反応溶媒の種類等によって、原料テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応が速い条件下では、前記数平均粒径の範囲で小粒径でシャープな粒度分布のシリカ超微粒子となり易く、遅い条件下では、前記数平均粒径の範囲で大きな粒径で粒度分布もブロードなシリカ超微粒子となり易くなる。
【0041】
そして、本発明のシリカ超微粒子分散液の製造方法は、原料テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に、その全量を30分以内の添加時間で添加することを必須とする。添加時間が30分を超えると、得られるシリカ超微粒子の平均粒径が前記範囲を越えてしまうと共に粒度分布がブロードになってしまうこととなる。その際の原料テトラアルコキシシランの添加方法は、30分以内の時間であれば、全量を一挙に、或いは、少量を連続的に、一括して添加する方法を採っても、少量ずつを分割して添加する方法を採ってもよい。得られるシリカ超微粒子の粒度分布をシャープにするには少量ずつを分割して添加するのが好ましく、生産性の面からは全量を一挙に添加するのが好ましい。
【0042】
尚、原料テトラアルコキシシランの添加量は、最終濃度が反応終了時のSiO2 換算で10重量%以下になる量で行う必要がある。これを超過する濃度では、得られるシリカ超微粒子の粒径が大きくなると共に粒度分布がブロードになってしまうこととなる。
【0043】
又、原料テトラアルコキシシランの添加時の反応温度は、0〜100℃の範囲であれば特に限定されない。この範囲内で、低めの温度であれば加水分解縮合反応が遅くなるためシリカ超微粒子の粒径が大きくなり、高めの温度であれば反応が速いため粒径が小さくなることから、目的とするシリカ超微粒子の粒径及び粒度分布の面から適宜選択すればよい。又、反応時間は、原料テトラアルコキシシランの添加と共に加水分解反応熱で△Tで約20℃の温度上昇が起こるが反応の終了と共に徐々に降温するので、最終的には原料テトラアルコキシシラン添加前の温度まで戻る時間を採れば反応時間としては十分である。このことから、反応時間としては原料テトラアルコキシシラン添加開始から1〜2時間で十分である。
【0044】
又、本発明の第2の要旨とする前記シリカ超微粒子分散液、及び、第3の要旨とする前記シリカ超微粒子分散液は、第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液の前記製造方法で得られたシリカ超微粒子分散液に、引き続いて変性剤を添加し、前記製造方法で形成された、前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子に反応させて前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子とすることにより、製造することができる。
【0045】
ここで、前記製造方法で形成された、前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子に変性剤を反応させて前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子とすることにより、前記示性式(I) で表されるシリカ超微粒子の反応性、親水性等を一部犠牲にする一方、シリカ超微粒子としての疎水性母材に対する相溶性、分散性等を向上させることができ、又、分散液としての溶媒を置換する場合において、ゲル化が生じにくく、疎水性の溶媒に容易に置換することができる。
【0046】
その際用いられる変性剤としては、前記示性式(I) 中のOR1 基と縮合反応してシロキサン結合を形成することができ、且つ前記示性式(II)中の有機基R2 を有する化合物であり、例えば、一般式R2 n SiX4-n (ここで、R2 は有機基、Xは加水分解性基を示し、nは1〜3の整数である。)で表されるシランカップリング剤が代表的なものとして挙げられる。そのシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−〔N−(2−アミノエチル)アミノ〕プロピルトリメトキシシラン、3−〔N−(2−アミノエチル)アミノ〕プロピルトリエトキシシラン、3−〔N−(2−アミノエチル)アミノ〕プロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等、及び、N−グリシジル−N,N−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アミン、N−グリシジル−N,N−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕アミン、N−グリシジル−N,N−ビス〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アミン、N−グリシジル−N,N−ビス〔3−(メチルジエトキシシリル)プロピル〕アミン等が挙げられる。又、加水分解性シリル基を有する樹脂類、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、フッ素樹脂等も挙げられる。
【0047】
又、変性剤の添加量は、前記示性式(I) で表されるシリカ超微粒子表面を変性剤の有するR2 で修飾でき得る最大量が上限であり、その見極めは未反応変性剤の量、若しくは変性剤自己縮合物が生成しない量が使用上限となる。しかしながら、変性剤の添加量は、前記示性式(II)で表されるシリカ超微粒子の使用目的とする母材に対する相溶性、分散性等を考慮して決められるべきである。
【0048】
又、変性剤添加による変性反応の温度及び時間は、変性剤の有する加水分解性基とシリカ超微粒子の表面官能基OR1 との縮合反応が終了する条件であればよく、例えば、温度は0〜100℃の範囲内で反応を速めるために加熱することも可能であり、反応時間も1〜2時間で十分である。
【0049】
前述した方法により製造される本発明の第1の要旨とする前記シリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とする前記シリカ超微粒子分散液、並びに第3の要旨とする本発明の前記シリカ超微粒子分散液は、更に、例えば、以下の後処理工程に付すことで、分散液としての形態を変えることが可能である。
(1)分散液の濃縮工程
前述した方法により製造されたシリカ超微粒子分散液中の水又は水/アルコール混合液の溶媒成分を、加熱や減圧等で系外に留去することで濃縮して、それ以上のシリカ濃度とする工程。
(2)塩基性触媒の中和又は除去工程
前述した方法により製造されたシリカ超微粒子分散液中の塩基性触媒残渣を、酸で中和してpH6〜9とするか、又は、水よりも低沸点の塩基性触媒を用いてシリカ超微粒子を合成した後、該塩基性触媒の沸点以上に加熱して塩基性触媒を系外に除去するか、又は、陽イオン交換樹脂(H型)等を用いて塩基性触媒を系外に除去する等の工程。
(3)溶媒除去又は置換工程
前述した方法により製造されたシリカ超微粒子分散液中のアルコール溶媒を、該アルコールの沸点以上の加熱、或いは減圧下でのエバポレーションによって系外に除去するか、又は、溶媒置換でき得る新たな溶媒成分を加え、当初用いた溶媒を加熱、或いは減圧下でのエバポレーションによって系外に除去して溶媒置換する工程。
【0050】
以上説明した本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液、並びに第3の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、例えば、塗料に添加し、塗膜に耐汚染性、耐侯性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、基材に対する密着性等を付与するための添加剤として好適に用いられる。その際の塗料としては、水溶性樹脂塗料、水分散樹脂塗料、及び水系エマルジョン樹脂塗料等の水性塗料に用いられ、又、常温乾燥型及び焼付け乾燥型のいずれでもよい。又、用いられる塗料における樹脂、顔料、溶剤等としては、従来公知のものが用いられ、それらに対する本発明のシリカ超微粒子分散液の添加量は、塗料の非揮発分100重量部に対して、SiO2 換算で1〜100重量部とするのが好ましく、2〜50重量部とするのが特に好ましい。
【0051】
又、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液、並びに第3の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、例えば、塗材、代表的には、外壁用建材としてのサイジング材のトップコート樹脂材に添加し、塗膜に耐汚染性、耐擦傷性、耐侯性、密着性等を付与するための添加剤として好適に用いられる。その際用いられる塗材における樹脂としては、従来公知のものが用いられ、それに対する本発明のシリカ超微粒子分散液の添加量は、塗材の非揮発分100重量部に対して、SiO2 換算で1〜100重量部とするのが好ましく、2〜30重量部とするのが特に好ましい。
【0052】
又、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液、並びに第3の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、水の存在下でシラノール縮合反応により架橋構造を形成することができ、例えば、樹脂、ガラス、金属、既存塗膜等の各種基材に各種機能を付与することを目的として、各種機能付与剤層を形成するための塗布剤における無機バインダーとして用いることにより、常温又は加熱下で硬化させて、該機能付与層に耐熱性、耐侯性、耐汚染性、耐薬品性、耐水性、密着性等を付与することができることから、好適に用いられる。
【0053】
又、本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液、並びに第3の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、各種樹脂成形体の充填材等としても好適に用いられる。例えば、従来公知の各種充填材を本発明のシリカ超微粒子分散液で表面処理して用いるにおける表面処理剤として、或いは、従来公知の各種充填材と共に充填材として、用いることができる。その際の使用量は、各種充填材の表面処理剤として用いる場合には、充填材100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、特に好ましくは2〜50重量部とし、又、充填材として用いる場合には、樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、特に好ましくは2〜50重量部とする。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
【0055】
実施例1
撹拌器、コンデンサを備えた1Lのジャケット付セパラブルフラスコに、水835.9gと、塩基性触媒としてのモノエタノールアミン12.2gを加えて混合した。この液のpHは10.5であった。ジャケットには25℃に温調された冷却水を通水した。ジャケット内の水とモノエタノールアミン混合液の温度が25℃±1℃となったところで、2分30秒をかけてテトラメトキシシラン(Na成分の含有量は、Na原子として3ppb)152gを攪拌下で滴下した。初期、全体が白濁したがすぐに透明となった。全てのテトラメトキシシランを滴下したときには液温が約45℃まで一時的に上昇した。そのままジャケット温は25℃に保ったまま1時間撹拌を続けた後、反応液を150メッシュのナイロンフィルターで濾過して無色透明なシリカ超微粒子分散液「A−0」を得た。
【0056】
得られたシリカ超微粒子分散液「A−0」A中のシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6重量%であり、分散液の粘度は、25℃で2.9mPa・sであった。又、前述の条件で動的光散乱法で求めた数平均粒径は1.1nmであり、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により示性式を求めたところ、SiO1.83(OH)0.34であることが確認された。又、この分散液を用いて、スライドガラスを2mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ5度であった。
【0057】
更に、この塗膜のガラス基板に対する密着性の指標として、JIS Z1522に準じて、セロハンテープをこの塗膜表面に貼り付け、消しゴム(JIS S6050)で擦ってテープを密着させた後、1〜2分後にテープの一方を持って垂直方向に一気に引き剥がしたときの塗膜の剥がれ状態を目視で観察した結果、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、耐溶剤性の指標として、キシレンを含浸させた脱脂綿を用いて500g/cm2 の荷重をかけて塗膜を100回擦った後の外観を目視で観察した結果、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、耐沸騰水性の指標として、塗膜を沸騰水中に1時間浸漬した後の外観を目視で観察したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0058】
実施例2
塩基性触媒としてのモノエタノールアミン12.2gを、20%アンモニア12.1gに変えた外は、実施例1と同様にしてシリカ超微粒子分散液「B−0」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「B−0」中のシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6重量%であり、分散液の粘度は、25℃で2.9mPa・sであった。又、前述の条件で動的光散乱法で求めた数平均粒径は1.0nmであり、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示性式は、SiO1.83(OH)0.34であった。又、同様にして求めた塗膜表面の水接触角は5度であった。
【0059】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0060】
実施例3
実施例1で得られたシリカ超微粒子分散液「A−0」200gに、変性剤としてのビニルトリメトキシシラン(チッソ社製「S210」)の50重量%メタノール溶液2.56gを1分かけて攪拌下で断続的に滴下した。ジャケットには25℃に温調された冷却水を通水し続け、1時間撹拌した後、反応液を150メッシュのナイロンフィルターで濾過してシリカ超微粒子分散液「A−1」を得た。
【0061】
得られたシリカ超微粒子分散液「A−1」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.2重量%であり、分散液の粘度は、25℃で3.1mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法で求めた示性式は、SiO1.85(OH)0.25(C=C)0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ33度であった。
【0062】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0063】
別に、実施例1で得られたシリカ超微粒子分散液「A−0」90gに、変性剤としてのビニルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM1003」)を1.5g添加した後、室温で1日放置した後、温度40℃、真空度20Torrの条件でエバポレーターにて濃縮処理した。最終的に35gの微乳白色液状の、シリカ超微粒子分散液濃縮液(濃縮率2.6倍)を得ることができた。
【0064】
実施例4
変性剤としてのビニルトリメトキシシランの50重量%メタノール溶液2.56gを、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製「A187」)4.72gに変えた外は、実施例3と同様にしてシリカ超微粒子分散液「A−2」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「A−2」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.2重量%であり、分散液の粘度は、25℃で3.2mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示製式は、SiO1.85(OH)0.25(γ−グリシジルオキシプロピル)0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ22度であった。
【0065】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0066】
実施例5
変性剤としてのビニルトリメトキシシランの50重量%メタノール溶液2.56gを、アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製「A1100」)4.42gに変えた外は、実施例3と同様にしてシリカ超微粒子分散液「A−3」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「A−3」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.5重量%であり、分散液の粘度は、25℃で88.2mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示製式は、SiO1.85(OH)0.25(C3 6 NH2 0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ6度であった。
【0067】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0068】
実施例6
シリカ超微粒子分散液「A−0」を、実施例2で得られたシリカ超微粒子分散液「B−0」に変えた外は、実施例3と同様にしてシリカ超微粒子分散液「B−1」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「B−1」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.2重量%であり、分散液の粘度は、25℃で3.2mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示製式は、SiO1.85(OH)0.25(C=C)0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ32度であった。
【0069】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0070】
実施例7
変性剤としてのビニルトリメトキシシランの50重量%メタノール溶液2.56gを、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製「A187」)4.72gに変えた外は、実施例6と同様にしてシリカ超微粒子分散液「B−2」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「B−2」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.2重量%であり、分散液の粘度は、25℃で3.2mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示性式は、SiO1.85(OH)0.25(γ−グリシジルオキシプロピル)0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ20度であった。
【0071】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0072】
実施例8
変性剤としてのビニルトリメトキシシランの50重量%メタノール溶液2.56gを、アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製「A1100」)4.42gに変えた外は、実施例6と同様にしてシリカ超微粒子分散液「B−3」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「B−3」中の、数平均粒子径が0.5〜30nmの範囲にあるシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6.5重量%であり、分散液の粘度は、25℃で89mPa・sであった。又、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示性式は、SiO1.85(OH)0.25(C3 6 NH2 0.05であった。又、この分散液をイオン交換水で2倍に希釈した後、スライドガラスを3mm/secの引き上げ速度でディッピング処理し、室温で乾燥させた後、150℃のオーブンで1時間硬化させて透明膜を得、この塗膜表面の水接触角を求めたところ7度であった。
【0073】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0074】
実施例9
ジャケットに45℃に温調された冷却水を通水したこと、ジャケット内の水とモノエタノールアミン混合液の温度が45±1℃となったところでテトラメトキシシランを滴下したこと、ジャケット温は45℃に保ったまま1時間の反応を続けたこと、の外は、実施例1と同様にしてシリカ超微粒子分散液「C−0」を得た。得られたシリカ超微粒子分散液「C−0」中のシリカ超微粒子の濃度は、SiO2 換算で6重量%であり、分散液の粘度は、25℃で2.2mPa・sであった。又、前述の条件で動的光散乱法で求めた数平均粒径は1.1nmであり、前述の条件で29Si−NMR分析法と13C−NMR分析法により求めた示性式は、SiO1.83(OH)0.34であった。又、同様にして求めた塗膜表面の水接触角は8度であった。
【0075】
更に、得られた塗膜について、実施例1と同様にしてセロハンテープの剥離試験を行ったところ、テープののりが塗膜表面に残るだけで塗膜のガラス基板からの剥がれは認められず、塗膜のガラス基板に対する密着性は非常に良好であった。又、実施例1と同様にして耐溶剤性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。更に、実施例1と同様にして耐沸騰水性を評価したところ、塗膜に特に変化は見られなかった。
【0076】
比較例1
市販のコロイダルシリカ(触媒化成工業社製「カタロイドSI−30」、外観は半透明)をイオン交換水でシリカ濃度が6重量%となるように希釈し、シリカ超微粒子について、前述と同条件で動的光散乱法で得た測定データをヒトスグラム解析法を用いてフィッティングすることにより数平均粒径を求めたところ5.2nmであり、3.5nm以下の粒子の存在は確認できなかった。又、前述と同様にして求めた塗膜表面の水接触角は50度であった。
【0077】
比較例2
市販のコロイダルシリカ(触媒化成工業社製「カタロイドSI−40」、外観は半透明)をイオン交換水でシリカ濃度が6重量%となるように希釈し、シリカ超微粒子について、前述と同条件で動的光散乱法で得た測定データをヒトスグラム解析法を用いてフィッティングすることにより数平均粒径を求めたところ10.1nmであり、6.6nm以下の粒子の存在は確認できなかった。又、前述と同様にして求めた塗膜表面の水接触角は55度であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の第1の要旨とするシリカ超微粒子分散液、及び第2の要旨とするシリカ超微粒子分散液は、塗料、コーティング剤等の表面処理剤への添加剤、無機質バインダー、及び、各種樹脂等の成形体の充填材等として用いることにより、それら用途の母材に、耐汚染性、耐候性、硬度、剛性、耐擦傷性、耐薬品性、耐熱性等の無機化合物特有の機能の付与を効果的に発現することができ、それら分野におけるナノ粒子状シリカとしての応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の示性式(I) で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあり、且つ、塗膜としたときの膜表面の水の接触角が30度以下であることを特徴とするシリカ超微粒子分散液。
SiOa (OR1 b (I)
〔式(I) 中、a、及びbは、1.60≦a≦1.95、0. 10≦b≦0.80、2a+b=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
【請求項2】
下記の示性式(II)で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子の数平均粒径が0.5〜30nmの範囲にあることを特徴とするシリカ超微粒子分散液。
SiOa (OR1 b (R2 c (II)
〔式(II)中、a、b、及びcは、1.60≦a≦1.95、0≦b≦0.70、0.02≦c≦0.80、2a+b+c=4.0であり、R1 は水素原子又は/及び炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2 は有機基を示す。〕
【請求項3】
前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子の分散液であって、該シリカ超微粒子が、前記示性式(I) で表され、数平均粒径が0.5〜10nmの範囲にあるシリカ超微粒子に変性剤を反応させて得られたものであることを特徴とするシリカ超微粒子分散液。
【請求項4】
シリカがナトリウム成分を実質的に含有しない請求項1乃至3のいずれかに記載のシリカ超微粒子分散液。
【請求項5】
テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に最終濃度がSiO2 換算で10重量%以下の量で、その全量を30分以内の添加時間で添加し、加水分解縮合反応させて前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子を形成することを特徴とする請求項1又は4に記載のシリカ超微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
テトラアルコキシシランを、塩基性触媒を含むpH9〜11の水中又は水/アルコール混合液中に最終濃度がSiO2 換算で10重量%以下の量で、その全量を30分以内の添加時間で添加し、加水分解縮合反応させて前記示性式(I) で表されるシリカの超微粒子を形成し、引き続いて変性剤を添加し、形成されたシリカ超微粒子に反応させて前記示性式(II)で表されるシリカの超微粒子とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のシリカ超微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシリカ超微粒子を含有する塗膜を表面に有することを特徴とする樹脂成形体。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシリカ超微粒子を含有する樹脂からなることを特徴とする樹脂成形体。

【公開番号】特開2006−83015(P2006−83015A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269566(P2004−269566)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】