説明

シリコンおよび製造方法

【課題】 FZ単結晶シリコンは体積固有抵抗やライフ・タイム等、品質上はCZ単結晶シリコンに比べて優れているにも拘わらず、コストが「約5〜8倍」と高価なため、太陽電池用としては使用されていない。このため、本発明では太陽電池用に特化することにより、大幅なコスト・ダウンをはかる手段を提供することにより、FZ単結晶シリコンを使用し大幅に効率アップした太陽電池の普及に貢献する。
【解決手段】
単結晶製造のスムーズな引き上げのみを考慮した単純な製造機器により、成長スピードを2〜5mm/min、場合により8mm/minまであげる。
又、芯ドープには空洞部に特殊加工したドーピングマザーメタルを使用する等を行う。
亜鉛還元法によるシリコンについては、熔融が簡単で短時間融解で済み、吸い上げを含めても石英等とのコンタミネーションも極端に少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用単結晶シリコンおよびその製造方法に関し、さらに詳しくはシリコン結晶のなかでもFZ法単結晶を、太陽電池用として使用する目的に限定して行う太陽電池用FZ単結晶シリコンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用原料としては、現在大部分がシリコンを使用している。しかしながらこの原料シリコンの製造は、殆どのものが高コストのシーメンス法により行われている。しかもこのシーメンス法による多結晶シリコン製造プロセスは、基本的には半導体用として確立されたものである為、品質最優先の複雑なプロセスとなり、コスト上も、又エネルギー・ペイバック・タイム上も太陽電池用として使用するにしては不十分である。
【0003】
このように原料費用が高価となるため、少ない原料シリコンで多くの発電量を確保するために、太陽電池として高い光電変換効率が得られると同時に、目的を満足した適切な材料としての太陽電池用シリコン結晶の開発が求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池で高い光電変換効率を得るためには、アモルファス、多結晶、CZ単結晶とある種々の太陽電池セル用シリコン結晶を、更にFZ単結晶を採用することにより目的を達成することが出来る。しかしながらFZ単結晶は製造方法の違いにより、CZ単結晶と比較して格段に高価なもの、概算的には「約5〜8倍」との認識が一般的である。その為に現在の太陽電池には殆ど使用されていない。本発明は、太陽電池用に特化してコストを削減したFZ単結晶を提供するものである。
【0005】
半導体シリコン基盤として工業的に最も永いライフタイムが得られる材料であるFZ単結晶を、太陽電池用基盤材料に特化した体積固有抵抗値が高く且つライフタイム値の長いFZ単結晶の製造技術を提供する。即ち、本法で製造されるFZ単結晶は、半導体に通常要求される結晶の完全性(リネージ、スワール、双晶、その他微小欠陥等諸欠陥フリー)は特に要求せず、太陽電池としての変換効率及び寿命に影響するライフタイムをドーピング以前値として、(バージン単結晶として)500μsec以上にキープする事を特徴とするFZ単結晶製造に関わるものである。
【0006】
本法により工業的に製造されたFZ単結晶はこれまでのソーラー用CZ単結晶と異なりシリコン中に含まれる所謂俗称ライフタイムキラーと称されるFe、Cu、等重金属、Al、に代表される軽金属、シリコンと同族のC、等を、その後の太陽電池セル作成工程におけるドーピング以前値として、大幅に減らすことが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)双晶、リネージ等を許容し、ドーピングは原則としてNtypeでは燐、Ptypeではホウ素を使用する。尚、砒素、ガリューム等5属、3属等の金属もドーピング材として使用することも許容する。
(2)芯ドープには中心部が空洞(≒5mmφ)の多結晶Rodが用いられその空洞部にマッチ棒状に加工されたドーピングマザーメタルを使用する。
又、ガスドープには炉内FZ単結晶生成ゾーンに一般にはアルゴン又は水素にて希釈されたホスヒン、ディボラン等のドーピングを行うことも可能である。(図−1)
(3)従来の半導体向けとは異なり、そのグローイングスピードは2〜5mm/minを許容する。又はMax8mm/minまでチャ−ジングプレヒーティング(図−3)を調整する事により可能である
(4)FZ単結晶の直径は6inchφ(図−4)が現行工業化技術として太陽電池用に応用される最適の大きさであるが、〜12inφの直径の工業的太陽電池用FZ単結晶の製造も可能である。
(5)亜鉛還元法による製品シリコンは、コーラル状、針状、樹枝状等で製造されるため、これを炉に於いて再溶融し、石英管にて瞬時の真空吸い上げを行い所定の径、所定の長さのキャスティングRodを作り(図−5)、シーメンス法、モノシラン法と同寸法のRodをつくることが出来る。且つこの再溶融時に所定の燐或いはホウ素等のドーピングを行う通常のCZ引き上げと同じくドーピングマザーメルに依る事が可能である為、FZ単結晶製造時に前記芯ドープ或いはガスドープを行う必要が少なく、製造工程の簡略化が可能となるメリットを有している。
尚、石英坩堝による溶融もCZの如く長時間の溶融は必要ではなく、短時間のメルトダウン後直ちに吸い上げる為、吸い上げキャステイング作業中の石英等からのボロンその他太陽電池光変換効率に悪影響を及ぼす金属類等のコンタミネーションに関しては、石英との接触がCZに比較して、瞬時管壁接触するのみで極端に短いため、坩堝よりのコンタミを含め精々CZ単結晶引き上げ時の10〜5%程度の上昇に抑えることが経験上可能である。
【発明の効果】
【0008】
従来品に対して、ライフタイムの長い安価な太陽電池用原料(ドーピング前)FZ単結晶が得られることになり、このことは従来品の中で最も光電変換効率が高いCZ単結晶に対して、はるかに光電変換効率が高いFZ単結晶を、太陽電池用原料として供給できることとなる。具体的には、CZ単結晶では「25%」程度である光電変換効率を、FZ単結晶ではこれを基盤に用いることにより幅広い太陽光波長を量子ドットを用いた中間バンド形成等の技術により光電変換が容易となり、「60〜75%」程度まで将来的には可能となる。
【0009】
上記のことは、クリーンエネルギーとして将来性のある太陽電池事業が、その原料であるシリコン原料の不足の解消に大きく寄与し、太陽電池の利用拡大に大きく作用し、社会・環境の改善に貢献すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)種付けは、無転位(100)及び〈111〉種結晶を主力とするが、時として(511)、(211)の選択もあり、且つ成長条件次第では、それぞれがオフ・アングルを随時採用することが可能である。
寸法は≒5×5mm〜10×10mm、 又は≒5mmφ〜10mmφAs・GrownCZ単結晶。
(2)成長工程: 種付け以降/等径/引き延ばし/押し縮めの工程を持つ。
猶、種付け初期スピードは20mm/sec〜30mm/sec、それ以降のスピードは初期スピードより漸減しつつ1mm/sec〜8mm/minまで成長状況に応じて変化させる。
(3)偏芯機構を持つFZ機:
種芯軸と多結晶補給軸とが外部操作により微細で必要且つ有効な偏芯可能な機構を持つ事を特徴としている。
(4)2Mヘルツ〜5MヘルツのSolid State若しくは真空管発信機を使用し、ハートレー、陽極同調型高周波発信器も適時採用可能である。
又、特殊設計に依るHigh Frequency型Gate/turnoff Thyristorも利用することが出来る。
(5)ワーキングコイルは、銀製One・Turn若しくは多重コイル型を基本とするが銅・銀メッキ型も使用できる。
又、特にTwo・Turnも発振回路構成に依っては使用することが出来る。

11/min〜101/minのフローを持続させる。
ワークコイル印加電圧如何に依っては、アルゴンに10〜20%の水素又はヘリュームガスを混入させ、グロー放電を阻止することが出来るが、此の水素又はヘリュームガスによる結晶格子間、或いは一部結晶格子置換の現象は、太陽電池光電変換率の目立った低下を来たさない。
【実施例】
【実施例1】
【0011】
「直径6“φFZソーラー単結晶(P型1)」
現在工業的に一般に使用されている半導体用シリコン単結晶製造機とは異なり、単結晶成長製造時のスムーズな引上げのみにその機構を配慮した、単純な製造機器を採用した。
具体的には、1960年代の極く単純なFZ単結晶製造機器の一般機構を活用し、そのまま大口径用に拡大し、極力コストの逓減に努めた機器を使用した。
(1)シードは、ライフタイムキラーとなる不純物(Fe族、Al等軽金属類、稀土類諸金属)を極力排除するために、高価ではあるが現在半導体FZ製品製造過程に使われるシードを使用した。
具体的には半導体FZ単結晶ロッドより7mm×7mm角の長さ100mmのシードを使用した。
(2)銅に銀メッキ(0,15mmt厚)された、内径20mmφ外径60mmφのワーキングコイルを通して、2MHzの陽極同調型の容量150KVA真空管発信機を使用してパワーサプライとした。
(3)シード部ダッシュは、60rpm、75mmL、5mmφ、とした。結晶軸は(111)を使用した。
これはあくまでも製造コスト上安定した操業を念頭に入れた条件であり、時としては、半導体品質上の結晶欠陥の発生も許容するとした考えに基づく。
言い換えれば、思想としては近い将来太陽電池が必要とする、基盤の高比抵抗、低コスト至上主義の概念に基づくものである。
(4)ダッシュ部より徐々に直径を上げ、今回は直径8inφのソーラー用FZを長さ500mmLまで成長させた。
(5)ダッシュ部より、所定直径部に至る略中間点(約4inφ〜6inφの時点)で、下部より内径5inφ、外径6inφの円筒支えを上げ、直径部の長さが約200mmLとなるころ擦り上げ製品単結晶の支えとした。
(6)単結晶製造時の炉雰囲気はアルゴン、その圧力は水柱30mmである。
(7)ノン・ドーピングFZ単結晶成形で、ライフ・タイムは780μsecで目的の製品を得ることが出来た。この場合の単結晶の比抵抗は、Ptype1,200Ωcmであった。
【実施例2】
(直径6“φFZソーラー用単結晶(N型))
実施例1と同じFZ単結晶製造機器を使用し、略同一条件で単結晶を作成したノン・ドーピングFZ単結晶成形でライフ・タイム980μsecで目的の製品を得ることが出来た。この場合の単結晶の比抵抗はN−type1,500Ωcmであった。
【実施例3】
実施例1及び実施例2によって得られたソーラーFZ単結晶は、その後スライス、表面ライト・エッチ工程を経て、6“φ220μ厚の太陽電池用ウェハーに加工され、片面よりボロン拡散150μを行い、太陽電池用基板となる拡散ウェハーを作成し、次工程に投入した。その結果は、初期的ではあるが、現行のCZソーラー基板太陽電池より上回った光変換効率を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガスドープ
【図2】FZ単結晶製造工程
【図3】チャージングプレヒーテイニング使用例
【図4】大口径FZ単結晶製造工程
【図5】亜鉛還元法による多結晶シリコンの使用例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイノリテイキャリヤー・ライフタイムが200μsec〜2000μsecの太陽電池用FZ単結晶シリコン。
【請求項2】
Ntype300〜500Ωcm、Ptype500〜2000Ωcmの太陽電池用FZ単結晶シリコン。
【請求項3】
ドーピング後、Ptypeで5〜50Ωcm、Ntypeで2〜10Ωcmの太陽電池用FZ単結晶シリコン。
【請求項4】
不活性雰囲気において、成長スピードは1〜8mm/minの範囲で製造する太陽電池用FZ単結晶シリコン。
【請求項5】
2inchφを超え12inchφ以下の直径の太陽電池用FZ単結晶シリコン。
【請求項6】
シーメンス法もしくは亜鉛還元法により製造された多結晶シリコンを原料として製造された請求項1から請求項5までのFZ単結晶シリコン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103874(P2013−103874A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260954(P2011−260954)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(597123571)
【出願人】(500306309)
【Fターム(参考)】