説明

シリコンウェーハの熱処理方法

【課題】CZ法により育成したウェーハのバルク部の直径方向におけるBMD密度の面内均一性を高めることができ、更には、BMDサイズの面内均一性も高めることができ、加えて、ウェーハの表層部のCOPを低減することができるシリコンウェーハの熱処理方法を提供する。
【解決手段】CZ法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを、酸化性ガス雰囲気中、1325℃以上1400℃以下の範囲内の第1の最高到達温度まで昇温して前記第1の最高到達温度を保持した後、50℃/秒以上250℃/秒以下の降温速度で降温する第1の熱処理を行う工程と、前記第1の熱処理を行ったシリコンウェーハを、非酸化性ガス雰囲気中、900℃以上1200℃以下の範囲内の第2の最高到達温度まで昇温して前記第2の最高到達温度を保持した後、降温する第2の熱処理を行う工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法ともいう)により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハ(以下、単にウェーハともいう)を熱処理するシリコンウェーハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、その基板として使用されるシリコンウェーハに対する品質要求が厳しくなってきており、半導体デバイス形成領域となる表層部(例えば、表面から深さ7μmまでの深さ領域)におけるCOP等の欠陥密度の低減に加え、ストレスの大きな熱処理に対するウェーハ強度の向上も求められている。
【0003】
COPを低減させる方法としては、特許文献1には、シリコンウェーハを、水素ガス雰囲気中あるいは水素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、熱処理温度を1100℃〜1300℃、熱処理時間を1分間〜48時間の条件で熱処理を行うことで、シリコンウェーハの表層部にDZ(denuded zone)層を形成する技術が開示されている。
【0004】
なお、前記熱処理時にウェーハのバルク部に析出する酸素析出物(Balk Micro Defect、以下、BMDという)は、後の半導体デバイス形成工程において表層部に拡散する不純物のゲッタリングサイトとなると共に、ウェーハ強度を高めると言われている。
【0005】
更に、前記バルク部におけるBMD密度はウェーハの直径方向において面内均一であることが好ましい。仮に、ウェーハ面内においてBMD密度にバラツキがある場合は、当該バラツキがある部分においてウェーハ強度が変化するため、この部分を起点として、後の半導体デバイス形成熱処理等でスリップ転位が発生しやすくなるという問題がある。
【0006】
なお、このようなウェーハの直径方向におけるBMD密度の面内分布は、CZ法による単結晶育成時に導入されるGrown−in欠陥の面内分布をそのまま反映する。従って、BMD密度の面内均一性を高めるためには、単結晶育成時に導入されるGrown−in欠陥の面内分布を均一に制御する必要がある。
【0007】
しかしながら、このような制御は、ホットゾーンなどの結晶熱履歴、成長速度等を細かく制御する必要があり、非常にコストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、単結晶育成時において、酸化誘起積層欠陥(Oxidation-induced Stacking Fault:以下、OSFという)が多く存在するOSF領域が形成された場合には、スライスされたウェーハの直径方向にOSFリングが発生することになる。この場合、ウェーハのOSFリング近傍では、単結晶育成時に導入されるBMD核が非常に少ない、すなわち、熱処理後、BMD密度が大きく低下するBMD低密度領域が存在することが知られている。
【0009】
なお、このようなOSFリングをウェーハ面内に発生させない方法として、特許文献2には、単結晶育成時において、結晶成長速度を低下させて、空孔と格子間シリコン濃度の均衡により原子の不足や余分の少ない無欠陥領域を育成する技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、結晶成長速度を低下させるため生産性が低下し、コストが高くなると共に、バルク部においてBMDがほとんど析出されないため、ウェーハの強度が低下するという問題がある。
【0011】
そこで、単結晶育成時においてOSF領域が形成された場合でもウェーハのBMD密度の面内均一性を高めることができる手段として、特許文献3には、窒素濃度が2.9×1014〜5.0×1015atoms/cm、酸素濃度が1.27×1018〜3.0×1018atoms/cmの範囲で育成されたOSFリングを含むウェーハを、還元性ガス又は不活性ガス雰囲気下で炉内温度が600〜800℃に保持された熱処理炉内に投入し、1000〜1200℃で熱処理を施す際、熱処理温度に至るまで0.5〜2.0℃/minの昇温レートを維持する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−295912号公報
【特許文献2】特開平08−330316号公報
【特許文献3】特開2006−93645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献3に記載の方法は、BMD低密度領域のBMD密度を高めることができるため、OSFリングが存在することによるBMD密度の面内不均一性はある程度改善されるものの、未だに、単結晶育成時の影響を残しているものであった。
【0014】
また、ホットゾーンなどの結晶熱履歴、成長速度を詳細に制御しつつ結晶成長速度を高めて、前記OSFリングを外側に排除し、ウェーハ面内全体をCOPが多く取り込まれたV−リッチ領域とした場合でも、単結晶育成時における融液の対流制御(石英ルツボの回転数や炉内圧力、ヒータ温度等)には限界があり、これのみでは、ウェーハの直径方向のBMD密度を面内均一に制御するには限界がある。
【0015】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、CZ法により育成したウェーハのバルク部の直径方向におけるBMD密度の面内均一性を高めることができ、更には、BMDサイズの面内均一性も高めることができ、加えて、ウェーハの表層部のCOPを低減することができるシリコンウェーハの熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、CZ法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを、酸化性ガス雰囲気中、1325℃以上1400℃以下の範囲内の第1の最高到達温度まで昇温して前記第1の最高到達温度を保持した後、50℃/秒以上250℃/秒以下の降温速度で降温する第1の熱処理を行う工程と、前記第1の熱処理を行ったシリコンウェーハを、非酸化性ガス雰囲気中、900℃以上1250℃以下の範囲内の第2の最高到達温度まで昇温して前記第2の最高到達温度を保持した後、降温する第2の熱処理を行う工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
前記第1の熱処理における降温速度は、120℃/秒以上250℃/秒以下であることが好ましい。
【0018】
前記第2の熱処理における前記第2の最高到達温度までの昇温速度は、1℃/分以上20℃/分以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、CZ法により育成したウェーハのバルク部の直径方向におけるBMD密度の面内均一性を高めることができ、更には、BMDサイズの面内均一性も高めることができ、加えて、ウェーハの表層部のCOPを低減することができるシリコンウェーハの熱処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図(第1の熱処理)である。
【図2】本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図(第2の熱処理)である。
【図3】OSFリングがウェーハの直径方向に存在する場合の第1の熱処理における本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図である。
【図4】熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合の本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図(第1の熱処理)である。
【図5】熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合の本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図(第2の熱処理)である。
【図6】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置の一例を示す断面概念図である。
【図7】RTPによる第1の熱処理の温度シーケンスの一例を示す概念図である。
【図8】縦型熱処理装置を用いた第2の熱処理の温度シーケンスの一例を示す概念図である。
【図9】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第1の態様を示す工程フロー図である。
【図10】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第2の態様を示す工程フロー図である。
【図11】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第3の態様を示す工程フロー図である。
【図12】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第4の態様を示す工程フロー図である。
【図13】本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第5の態様を示す工程フロー図である。
【図14】実施例1から3におけるウェーハの中心から外周までのウェーハ直径方向のBMD密度の面内分布である。
【図15】実施例4から6におけるウェーハの中心から外周までのウェーハ直径方向のBMD密度の面内分布である。
【図16】実施例7から9におけるウェーハの中心から外周までのウェーハ直径方向のBMD密度の面内分布である。
【図17】比較例1から3及び従来例1におけるウェーハの中心から外周までのウェーハ直径方向のBMD密度の面内分布である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面等を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、CZ法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを、酸化性ガス雰囲気中、1325℃以上1400℃以下の範囲内の第1の最高到達温度まで昇温して前記第1の最高到達温度を保持した後、50℃/秒以上250℃/秒以下の降温速度で降温する第1の熱処理を行う工程と、前記第1の熱処理を行ったシリコンウェーハを、非酸化性ガス雰囲気中、900℃以上1250℃以下の範囲内の第2の最高到達温度まで昇温して前記第2の最高到達温度を保持した後、降温する第2の熱処理を行う工程と、を備える。
【0023】
本発明は、このような工程を備えているため、CZ法により育成したウェーハのバルク部の直径方向におけるBMD密度の面内均一性を高めることができ、更には、BMDサイズの面内均一性も高めることができ、加えて、ウェーハの表層部のCOPを低減することができる。
【0024】
図1及び図2は本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図であり、図1は第1の熱処理を、図2は第2の熱処理をそれぞれ示すものである。
【0025】
第1の熱処理では、酸化性ガス雰囲気中(図1では酸素(O))、最高到達温度を1325℃以上1400℃以下の範囲内(第1の最高到達温度)まで昇温して保持するため、COPにおいては、内壁酸化膜(SiO)が溶解しボイドとなる(図1(b))。更に、このボイドが空孔として拡散又は/及び酸化性ガス雰囲気によってウェーハ内に注入される大量の格子間シリコン(不図示)が当該ボイドに埋まることによって消滅する(図1(c))。また、単結晶育成時に導入されたBMD核は、前記最高到達温度の範囲内で熱処理されるため、ウェーハ内に溶解して消滅する(図1(b)〜(c))。
【0026】
第2の熱処理では、非酸化性ガス雰囲気中(図2ではアルゴン(Ar))、最高到達温度を900℃以上1250℃以下の範囲内まで昇温して保持するため、ウェーハの表層部の酸素がウェーハ表面から外方拡散され、かつバルク部にも外方拡散される(図2(b))。従って、ウェーハの表層部ではBMD核は析出されず、バルク部では析出される(図2(c))。
【0027】
以上より、単結晶育成時に導入されたBMD核は第1の熱処理によってウェーハ内に溶解して消滅し、第2の熱処理では、バルク部に新たにBMD核が析出される。従って、第2の熱処理では、単結晶育成時に導入されるBMD核のバラツキを排除した(一度キャンセルした)状態で、新たにBMD核を析出、更には成長させることができる。従って、ウェーハの直径方向におけるBMD密度の面内均一性に加え、BMDサイズの面内均一性も高めることができる。
【0028】
第1の熱処理における最高到達温度(第1の最高到達温度)は、1325℃以上1400℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
前記第1の最高到達温度が1325℃未満である場合には、温度が低いため、単結晶育成時に導入されたBMD核を溶解して消滅させることが難しい。従って、単結晶育成時に導入されるBMD核のバラツキを排除することが難しく、ウェーハの直径方向におけるBMD密度の面内均一性に加え、BMDサイズの面内均一性を高めることが難しい。前記第1の最高到達温度が1400℃を超える場合には、高温となるため、スリップ転位等が発生しやすくなり好ましくない。
【0030】
前記第1の最高到達温度の上限値は、使用する熱処理装置としての寿命の観点等から1380℃以下であることがより好ましい。
【0031】
前記第1の熱処理における前記第1の最高到達温度からの降温速度は50℃/秒以上250℃/秒以下であることが好ましい。
【0032】
前記第1の熱処理は、前述したように、酸化性ガス雰囲気で行われるため、大量の格子間シリコンが発生するが、同時に熱平衡濃度の空孔も発生する。この空孔は格子間酸素と共にO2−V complexを形成し、これが後の第2の熱処理でのBMD核発生のための起点となる。
【0033】
なお、前記降温速度が50℃/秒未満である場合には、前記空孔は降温中に外方拡散して消滅してしまうため、O2−V complexが形成されなくなる場合がある。
【0034】
従って、第1の熱処理における降温速度を50℃/秒以上とすることで、前記発生した空孔をバルク部に多く残存させることができるため、前記第2の熱処理において十分にBMD核の発生、成長(BMD密度の高密度化)を図ることができる。
【0035】
なお、前記降温速度が早すぎる場合には、急激な降温のため、ウェーハにスリップ転位が発生する場合があるため、その上限値は、250℃/秒以下であることが好ましい。
【0036】
前記第1の熱処理における降温速度は、120℃/秒以上250℃/秒以下であることがより好ましい。
【0037】
このような降温速度とすることで、ウェーハのバルク部の直径方向におけるBMD密度及びそのサイズの面内均一性を更に高めることができる。
【0038】
前記第1の最高到達温度からの前記降温速度における降温は、前記格子間シリコンの拡散の抑制や生産性等の観点から400℃以上600℃以下まで行うことが好ましい。
【0039】
また、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、OSFリングがウェーハの直径方向に存在する場合、すなわちウェーハ面内でBMD低密度領域を有する場合であっても、BMD密度及びそのサイズの面内均一性を高めることができる。
【0040】
図3は、OSFリングがウェーハの直径方向に存在する場合の第1の熱処理における本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図である。
【0041】
OSFリングが存在するウェーハにおいては、前述したように、OSFリング近傍にBMD密度が大きく低下するBMD低密度領域が存在する(図3(a))。
【0042】
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、このようなウェーハであっても、前記第1の熱処理を行うことで、図1で説明したのと同様なメカニズムにより、COP及びBMD核が消滅する(図3(b)〜(c))。
【0043】
従って、BMD低密度領域のBMD核のバラツキを排除することができるため、OSFリングがウェーハの直径方向に存在したとしても、BMD密度及びそのサイズの面内均一性を高めることができる。
【0044】
また、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合、すなわち、単結晶育成時に酸素濃度を高く制御した場合は、第1の熱処理後、ウェーハの表層部にCOPが残存する場合がある。
【0045】
図4及び図5は、熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合の本発明の効果を説明するためのウェーハ断面における概念フロー図であり、図4は第1の熱処理を、図5は第2の熱処理をそれぞれ示すものである。
【0046】
第1の熱処理では酸化性ガス雰囲気中に含まれる酸素がウェーハ表面から表層部に内方拡散されるため、熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合は、当該表層部の酸素濃度が固溶限界近くなる(図4(a)〜(b))。従って、表層部においてはCOPの内壁酸化膜が溶解されにくくなるため、格子間シリコンが大量に導入されてもCOP内に埋まることができないため、当該表層部にCOPが残存する。なお、単結晶育成時に導入されたBMD核においては、酸素濃度が高い場合であっても、BMD核が小さいため、ウェーハ内で溶解し消滅する(図4(a)〜(c))。
【0047】
しかしながら、図4(c)に示すように、第1の熱処理において、表層部にCOPが残存したとしても、第2の熱処理では、非酸化性ガス雰囲気中(図5ではアルゴン)、900℃以上1250℃以下で熱処理を行うため、表層部から酸素が外方拡散され、更にバルク部にも外方拡散されるため、前記表層部の酸素濃度は固溶限界近くから低下する(図5(b))。
【0048】
従って、前記第2の熱処理を行うことによって、表層部は酸素濃度が低下するため、表層部に存在するCOPの内壁酸化膜は溶解しボイドとなり、その後、シリコン原子の再配列によって、当該ボイドが消滅する(図5(b)〜(c))。また、図2と同様に、ウェーハの表層部ではBMD核は析出されず、バルク部で析出される(図5(c))。
【0049】
以上より、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、熱処理するウェーハの酸素濃度が高い場合であっても、バルク部のBMD密度及びそのサイズの面内均一性を高めることができ、加えて、ウェーハの表層部のCOPを低減することができる。
【0050】
なお、本発明にいう酸素濃度が高い場合とは、ウェーハの酸素濃度が1.2×1018atoms/cm(old−ASTM)以上であることをいう。
【0051】
前記第1の熱処理を、酸化性ガス雰囲気ではなく、非酸化性ガス雰囲気(還元性ガス雰囲気(水素ガス、窒素ガス等)や不活性ガス雰囲気(アルゴンガス等))で行う場合には、前記表層部からバルク部への酸素の外方拡散を大きく促進させてしまうため、前記第1の熱処理において、単結晶育成時に導入されたバルク部のBMD核を消滅することができず、逆に成長させてしまうため好ましくない。
【0052】
前記酸化性ガス雰囲気における酸素ガスの分圧は、20%以上100%以下(好ましくは酸素100%ガス)であることが好ましい。
【0053】
前記酸素ガスの分圧を20%以上とすることで、ウェーハ内に大量の格子間シリコンを注入することができ、確実に、COPを低減することができるため好ましい。
【0054】
なお、前記酸化性ガス雰囲気における酸素ガス以外のガス(酸素ガスの分圧が100%の場合を除く)はアルゴンガスであることが好ましい。
【0055】
アルゴンガスを用いることにより、窒化膜等の他の膜の形成や化学的反応等が生じることがなく、熱処理を行うことができる。 前記第2の熱処理における最高到達温度(第2の最高到達温度)は、900℃以上1250℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0056】
前記第2の最高到達温度が900℃未満である場合には、低温であるため、前述したような酸素の外方拡散が起こりにくくなるため、ウェーハの表層部に残存するCOPの内壁酸化膜が溶解しにくくなり、当該表層部のCOPを消滅させることが難しい。
【0057】
前記第2の最高到達温度が1250℃を超える場合には、ウェーハの表層部からの酸素の外方拡散が大きくなるため、当該表層部の酸素濃度が大きく低下し、酸素によるスリップ転位のピンニング力が低下するため、ウェーハにスリップ転位が発生する場合がある。
【0058】
前記第2の熱処理を、非酸化性ガス雰囲気ではなく、前述した酸化性ガス雰囲気で行う場合には、ウェーハの表層部に酸素が内方拡散される。従って、酸素濃度が高いシリコンウェーハの場合は、表層部の酸素濃度が高い状態で維持される。従って、第2の熱処理でウェーハの表層部に残存するCOPの内壁酸化膜が溶解されにくくなるため、当該表層部のCOPを消滅させることが難しい場合がある。
【0059】
前記非酸化性ガス雰囲気は、アルゴンガスを含む非酸化性ガス(好ましくは、アルゴン100%ガス)であることが好ましい。
【0060】
アルゴンガスを用いることにより、窒化膜等の他の膜の形成や化学的反応等が生じることがなく、熱処理を行うことができる。
【0061】
前記第1の熱処理は、周知の急速昇降温熱処理(RTP:Rapid Thermal Process、以下、単にRTPともいう)装置を用いて、RTPにて行うことが好ましい。なお、ここでいうRTPとは、昇温及び降温速度が、1℃/秒以上の高速昇降温熱処理のことを差す。
【0062】
図6は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置の一例を示す断面概念図である。
【0063】
図6に示すRTP装置10は、ウェーハWを収容して熱処理を施すための反応室20と、反応室20内に設けられ、ウェーハWを保持するウェーハ保持部30と、ウェーハWを加熱する加熱部40と、を備える。ウェーハWがウェーハ保持部30に保持された状態では、反応室20の内壁とウェーハWの表面(デバイス形成面)W1側とで囲まれた空間である第1空間20aと、反応室20の内壁と表面W1側に対向するウェーハWの裏面W2側とで囲まれた空間である第2空間20bとが形成される。
【0064】
反応室20は、第1空間20a及び第2空間20b内に雰囲気ガスF(実線矢印)を供給する供給口22と、前記供給した雰囲気ガスFを第1空間20a及び第2空間20bから排出する排出口26と、を備える。反応室20は、例えば、石英で構成されている。
【0065】
ウェーハ保持部30は、ウェーハWの裏面W2の外周部をリング状に保持するサセプタ32と、サセプタ32を保持すると共に、ウェーハWの中心を軸としてサセプタ32を回転させる回転体34とを備える。サセプタ32及び回転体34は、例えば、SiCで構成されている。
【0066】
加熱部40は、ウェーハ保持部30に保持されたウェーハWの表面W1の上方及び裏面W2の下方の反応室20外に配置された複数のハロゲンランプ50の光照射によるランプ加熱により、ウェーハWを両面から加熱する。
【0067】
図6に示すRTP装置10を用いて、熱処理を行う場合は、反応室20に設けられた図示しないウェーハ導入口より、ウェーハWを反応室20内に導入して、ウェーハWの裏面W2の外周部をウェーハ保持部30のサセプタ32上にリング状に保持し、雰囲気ガスFを供給すると共に、ウェーハWを回転させながら、加熱部40によってウェーハWを加熱することで行う。
【0068】
図7は、RTPによる第1の熱処理の温度シーケンスの一例を示す概念図である。
【0069】
図7に示すように、温度T0(好ましくは400℃以上600℃以下)で保持された周知のRTP装置の反応空間内に設置された回転可能なサセプタ上にシリコンウェーハを保持し、前記反応空間内に酸化性ガスを供給する。次に、温度T0から第1の最高到達温度である1325℃以上1400℃以下(温度T1)まで、昇温速度ΔTu1(℃/秒)で急速昇温し、温度T1にて所定時間(t1(秒))一定に保持した後、温度T1から降温速度ΔTd1(℃/秒)で急速降温を行い、例えば温度T0まで降温する。
【0070】
前記温度T0、T1は、図6に示すようなRTP装置10の反応室20内にウェーハWを設置した場合において、ウェーハ保持部30の下方に設置された図示しない放射温度計によって測定されたウェーハWの表面温度(放射温度計がウェーハWの径方向に複数配置されている場合はその平均温度)である。
【0071】
前記第1の最高到達温度を保持する保持時間t1は、1秒以上60秒以下であることが好ましい。
【0072】
前記保持時間t1が1秒未満である場合には、単結晶育成時に導入されたBMD核やCOPを十分に消滅させることが難しい場合がある。前記保持時間t1が60秒を超える場合には、生産性が低下する場合があり、また、その他の熱処理起因の不具合(不純物拡散やスリップ等)が発生する場合がある。
【0073】
前記第2の熱処理は、縦型熱処理装置を用いた熱処理で行う事が好ましい。前記縦型熱処理装置は、周知のもの(例えば、特開2001−85349号に記載された縦型熱処理装置等)が用いられる。なお、ここでいう縦型熱処理装置を用いた熱処理とは、昇温及び降温速度が、15℃/分以下の低速熱処理のことを差す。
【0074】
図8は、縦型熱処理装置を用いた第2の熱処理の温度シーケンスの一例を示す概念図である。
【0075】
図8に示すように、温度T0(好ましくは400℃以上600℃以下)で保持された周知の縦型熱処理装置の反応空間内にシリコンウェーハを複数枚保持した周知の縦型ボートを設置して、前記反応空間内に非酸化性ガス(例えば、アルゴンガス)を供給する。次に、温度T0から第2の最高到達温度である900℃以上1200℃以下(温度T2)まで、昇温速度ΔTu2(℃/分)で昇温して温度T2にて所定時間(t2(分))一定に保持した後、温度T2から降温速度ΔTd2(℃/分)で、例えば温度T0まで降温する。
【0076】
前記第2の最高到達温度を保持する保持時間t2は、1分以上120分以下であることが好ましい。
【0077】
前記保持時間t2が1分未満である場合には、ウェーハのバルク部において十分にBMD核を析出、成長させることが難しい場合がある。また、シリコンウェーハの酸素濃度が高い場合には、この第2の熱処理において表層部におけるCOPの消滅が十分になされない場合がある。前記保持時間t2が120分を超える場合には、生産性が低下する場合があり、また、その他の熱処理起因の不具合(不純物拡散やスリップ等)が発生する場合がある。
【0078】
前記第2の熱処理における前記第2の最高到達温度までの昇温速度(図8でいうとΔTu2)は、1℃/分以上20℃/分以下であることが好ましく、前記第2の最高到達温度からの降温速度(図8でいうとΔTd2)は、1℃/分以上5℃/分以下であることが好ましい。
【0079】
さらに、より好ましくは、前記第2の熱処理における前記第2の最高到達温度までの昇温速度(図8でいうとΔTu2)は、1℃/分以上5℃/分以下であることが好ましく、前記第2の最高到達温度からの降温速度(図8でいうとΔTd2)は、1℃/分以上5℃/分以下であることが好ましい。
【0080】
このような昇温速度及び降温速度とすることで、前記第2の熱処理の昇温時におけるスリップ転位の発生を抑制することができ、更に、BMD密度の向上も図ることができる。
【0081】
前記第1の熱処理における昇温時の昇温速度(図7でいうとΔTu1)は、生産性やスリップ発生等の観点から10℃/秒以上250℃/秒以下であることが好ましい。
【0082】
CZ法によるシリコン単結晶インゴットの育成は、V/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を制御して原子空孔(COP)が多く取り込まれたV−リッチ領域からなるシリコン単結晶インゴットを育成することが好ましい。
【0083】
具体的には、周知の単結晶引上装置を用いて、シリコン融液の液面に種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら種結晶を引き上げてネック部及び所望の直径まで拡径する拡径部を形成後、所望の直径を維持しながら、V−リッチ領域となるようにV/G値を所定値(例えば、0.25〜0.35mm/℃・min)に制御して直胴部を形成し、その後、所望の直径から縮径する縮径部を形成してシリコン融液から切り離すことで行う。
【0084】
このような方法により行うことで、単結晶育成時において、生産性の低下を抑制することができる。
【0085】
なお、ここでいう「V−リッチ領域からなる」とは、前述したOSF領域を排除するものではない。
【0086】
次に、上述したシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法について説明する。
【0087】
図9は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第1の態様を示す工程フロー図である。
【0088】
前記第1の態様は、CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する工程(S101)と、前記シリコン単結晶インゴットをスライスして円板状のウェーハを作製する工程(S102)と、前記作製したスライスウェーハの表裏面を平坦化処理する工程(S103)と、前記平坦化処理されたウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する工程(S104)と、前記鏡面研磨されたウェーハに対して、前記第1の熱処理(S105)及び第2の熱処理(S106)を行う工程と、を備える。
【0089】
すなわち、前記第1の態様は、前述したシリコンウェーハの熱処理方法を、少なくとも半導体デバイス形成面となる表面が鏡面研磨されたウェーハに対して行う。
【0090】
このような工程を備えることで、上述した効果を備えたシリコンウェーハを得ることができる。
【0091】
なお、前記平坦化処理には、周知のラッピング処理、片面研削処理、両面研削処理、エッチング処理(エッチング処理については、主に、弗酸(HF)、硝酸(HNO)、酢酸(CHCOOH)及び水(HO)を一定の比率で混合した酸エッチング溶液中に、前記平坦化処理されたウェーハの全面を浸漬する酸エッチング処理)が含まれる。前記鏡面研磨には、周知の片面研磨、両面研磨が含まれる。
【0092】
すなわち、前記平坦化処理(S103)から前記鏡面研磨(S104)は、例えば、前記作製したスライスウェーハの表裏面をラッピング処理後、両面研削処理し、その後、両面研磨する工程や、ラッピング処理後、エッチング処理し、その後、両面研磨する工程等が含まれる。
【0093】
図10は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第2の態様を示す工程フロー図である。
【0094】
前記第2の態様は、CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する工程(S201)と、前記シリコン単結晶インゴットをスライスして円板状のウェーハを作製する工程(S202)と、前記作製したスライスウェーハの表裏面を平坦化処理する工程(S203)と、前記平坦化処理されたウェーハに対して、前記第1の熱処理(S204)及び第2の熱処理(S205)を行う工程と、前記第2の熱処理されたウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する工程(S206)と、を備える。
【0095】
すなわち、前記第2の態様は、前述したシリコンウェーハの熱処理方法を、平坦化処理後のウェーハに対して行う。
【0096】
このような工程を備えることで、上述した効果に加え、第2の熱処理時において表層部からの酸素の外方拡散等が少なく、表層部にCOPが残存したとしても、後の研磨工程で、当該表層部を除去することができるため好ましい。
【0097】
前記第2の態様において熱処理する平坦化処理されたウェーハは、ラッピング処理されたウェーハやエッチング処理されたウェーハが含まれる。
【0098】
図11は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第3の態様を示す工程フロー図である。
【0099】
前記第3の態様は、CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する工程(S301)と、前記シリコン単結晶インゴットをスライスして円板状のウェーハを作製する工程(S302)と、前記作製したスライスウェーハに対して、前記第1の熱処理(S303)及び第2の熱処理(S304)を行う工程と、前記第2の熱処理を行ったスライスウェーハの表裏面を平坦化処理する工程(S305)と、前記平坦化処理されたウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する工程(S306)と、を備える。
【0100】
すなわち、前記第3の態様は、前述したシリコンウェーハの熱処理方法を、スライスウェーハに対して行う。
【0101】
このような工程を備えることで、上述した第2の態様と同様の効果を得ることができる。
【0102】
図12は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第4の態様を示す工程フロー図である。
【0103】
前記第4の態様は、CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する工程(S401)と、前記シリコン単結晶インゴットをスライスして円板状のウェーハを作製する工程(S402)と、前記作製したスライスウェーハの表裏面を平坦化処理する工程(S403)と、前記平坦化処理されたウェーハに対して、前記第1の熱処理を行う工程(S404)と、前記第1の熱処理されたウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する工程(S405)と、前記鏡面研磨されたウェーハに対して、前記第2の熱処理を行う工程(S406)と、を備える。
【0104】
すなわち、前記第4の態様は、前述したシリコンウェーハの熱処理方法において第1の熱処理を平坦化処理後に行い、第2の熱処理を鏡面研磨後に行う。
【0105】
このような工程を備えることで、上述した効果に加え、第1の熱処理後、表層部にCOPが残存したとしても、後の研磨工程で除去することができるため、第2の熱処理の負担軽減(熱処理温度や熱処理時間の短縮化等)を図ることができる。
【0106】
図13は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法を備えたシリコンウェーハの製造方法の第5の態様を示す工程フロー図である。
【0107】
前記第5の態様は、CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する工程(S501)と、前記シリコン単結晶インゴットをスライスして円板状のウェーハを作製する工程(S502)と、前記作製したスライスウェーハに対して、前記第1の熱処理を行う工程(S503)と、前記第1の熱処理されたウェーハの表裏面を平坦化処理する工程(S504)と、前記平坦化処理されたウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する工程(S505)と、前記鏡面研磨されたウェーハに対して、前記第2の熱処理を行う工程(S506)と、を備える。
【0108】
すなわち、前記第5の態様は、前述したシリコンウェーハの熱処理方法において第1の熱処理をスライスウェーハに対して行い、第2の熱処理を鏡面研磨後に行う。
【0109】
このような工程を備えることで、上述した第4の態様と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
【0111】
(試験1)
CZ法によりV/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を制御して原子空孔(COP)が多く取り込まれ、スライスされた際にウェーハの面内の一部にOSFリングが発生しているV−リッチ領域からなるシリコン単結晶インゴットを育成し、該領域からスライスされた両面が鏡面研磨されたシリコンウェーハ(直径300mm、厚さ775μm、酸素濃度1.2〜1.3×1018atoms/cm)を、400℃で保持された周知のRTP装置の反応空間内に投入し、図7に示すような温度シーケンスにて、酸素100%ガス(流量20slm)雰囲気中、昇温速度を50℃/秒、最高到達温度の保持時間15秒(ただし、比較例1に関しては30秒)にて、最高到達温度及び降温速度を変化させて第1の熱処理を行って、熱処理条件の異なる複数のウェーハを作製した。
【0112】
その後、前記第1の熱処理を行ったウェーハを、600℃で保持された周知の縦型熱処理装置の反応空間内に投入し、図8に示すような温度シーケンスにて、アルゴン100%ガス(流量30slm)雰囲気中、昇温速度を1〜20℃/分とし、最高到達温度を1200℃、その保持時間を1時間、降温速度を1〜5℃/分として600℃まで降温する第2の熱処理を行った。
【0113】
また、従来例として、前記第1の熱処理を行わず、前記第2の熱処理のみ行ったウェーハを作製した。
【0114】
次に、前記第2の熱処理を行ったウェーハに対して、酸素100%ガス雰囲気中、BMD析出熱処理(800℃で4時間および1000℃で16時間)を行い、IRトポグラフィー(レイテックス社製MO−441)にて、ウェーハの中心から外周までの直径方向のウェーハ表面から深さ7μm以降のバルク部(深さ7μm〜300μm)におけるBMD密度及び散乱光強度を評価した。また、前記評価した散乱光強度から式(1)を用いて、ウェーハ中心(0mm)、ウェーハの中心から直径方向に110mmの位置(BMD低密度領域内)及び145mmの位置(ウェーハ外周)の3点におけるBMDサイズを算出した。
【0115】
BMDサイズ=散乱光強度(1/6)×20 ・・・式(1)
また、レイテックス社製LSTDスキャナMO601を用いて、前記第2の熱処理を行ったウェーハの表面から深さ5μm領域までの表層部の欠陥数を評価し、その欠陥密度を算出した。
【0116】
更に、前記第2の熱処理を行ったウェーハの裏面に発生するスリップ長をX線トポグラフィ(株式会社リガク製 XRT300)にて評価した。
【0117】
表1に本試験における試験条件及び評価結果(表層部欠陥密度及びBMD平均サイズ)を、図14から図17に本試験の各条件におけるウェーハの中心から外周までのウェーハ直径方向のBMD密度の面内分布をそれぞれ示す。
【表1】

【0118】
表1及び図14から図17を見てもわかるように、第2の熱処理のみ(従来例1)行った場合よりも、第2の熱処理前に第1の熱処理を行うことで、ウェーハの直径方向におけるBMDサイズの面内均一性を高めることができることが認められる。
【0119】
なお、第1の熱処理の最高到達温度が1300℃以下である場合(比較例1、2)、更に、1350℃であっても降温速度が25℃/秒である場合(比較例3)にはウェーハの直径方向におけるBMD密度およびそのサイズの面内均一性が不十分であることが認められる。
【0120】
一方、1325℃以上であり、降温速度が50℃/秒以上である場合(実施例1から9)は、ウェーハの直径方向におけるBMD密度およびそのサイズの面内均一性が高くなり、更に、降温速度が120℃/秒以上である場合(実施例2、3、5、6、8、9)は、BMD密度およびそのサイズが共にほぼ平坦となることが認められる。
【0121】
また、表層部の欠陥密度は、いずれの条件下であっても低密度であることが認められる。
【0122】
なお、全条件ともウェーハ裏面のスリップ転位は確認されなかった。
【0123】
(試験2)
前記第1の熱処理における最高到達温度を1325℃、1350℃、1380℃として、降温速度(℃/秒)を50℃/秒として、更に、第2の最高到達温度を変化させて、その他は試験1と同様な条件で、第2の熱処理を行った。
【0124】
次に、前記第2の熱処理を行ったウェーハに対して、試験1と同様に、レイテックス社製LSTDスキャナMO601を用いて、前記第2の熱処理を行ったウェーハの表面から深さ5μm領域までの表層部の欠陥数を評価し、その欠陥密度を算出した。
【0125】
更に、前記第2の熱処理を行ったウェーハの裏面に発生するスリップ長をX線トポグラフィ(株式会社リガク製 XRT300)にて評価した。
【0126】
表2に本試験における試験条件及び評価結果(表層部欠陥密度)を示す。
【表2】

【0127】
なお、比較例5、7、9においては、ウェーハ裏面において5〜10mmの長さのスリップ転位が確認されたが、その他の条件は確認されなかった。
【0128】
以上の結果からわかるように、第2の熱処理において、最高到達温度を800℃とした場合(比較例4、6、8)には、表層部の欠陥密度が高くなることが認められる。また、最高到達温度を1300℃とした場合(比較例5、7、9)は、スリップの発生が認められる。
【0129】
一方、第2の熱処理において、最高到達温度を900℃以上1250℃以下とした場合には、表層部の欠陥密度も1.0/cm未満となることが認められる。
【符号の説明】
【0130】
10 RTP装置
20 反応室
30 ウェーハ保持部
40 加熱部
T1 第1の最高到達温度
T2 第2の最高到達温度
T3 中間温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを、酸化性ガス雰囲気中、1325℃以上1400℃以下の範囲内の第1の最高到達温度まで昇温して前記第1の最高到達温度を保持した後、50℃/秒以上250℃/秒以下の降温速度で降温する第1の熱処理を行う工程と、
前記第1の熱処理を行ったシリコンウェーハを、非酸化性ガス雰囲気中、900℃以上1250℃以下の範囲内の第2の最高到達温度まで昇温して前記第2の最高到達温度を保持した後、降温する第2の熱処理を行う工程と、
を備えることを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項2】
前記第1の熱処理における降温速度は、120℃/秒以上250℃/秒以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項3】
前記第2の熱処理における前記第2の最高到達温度までの昇温速度は、1℃/分以上20℃/分以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−84920(P2013−84920A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196014(P2012−196014)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(312007423)グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】