説明

シリコンスラリーの固液分離方法及びその装置

【課題】単純な構成でシリコンスラリーを再資源化できる、シリコンスラリーの固液分離方法、及びその装置を提供すること。
【解決手段】固液分離装置10は、シリコンスラリー原液槽12、反応槽20、酸性溶液槽22、中和槽30、中和剤溶液槽32、熱分解機40、及び熱風発生炉50を具えている。固形成分と液状成分とを含有するシリコンスラリーは、反応槽20で酸性溶液と十分に反応させられた後、中和槽30で中和剤溶液によって中和させられ、次いで熱分解機40で液状成分が気化させられることによって、固形成分と液状成分とに分離させられる。固液分離させた固形成分は粉状物であり、シリコン粉を主成分とするため、また、気化させた液状成分を蒸留すれば、油分を回収できるため、資源として再利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンスラリーを資源として再利用できるようにするための固液分離方法、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンのインゴットから太陽光発電に使用される太陽光パネルを製造する際や、シリコンウェハから大規模集積回路を製造する際、ワイヤソーを使用してシリコンインゴットを薄く切断し、シリコンウェハを研磨する。このとき、切断作業は切削油を供給しながら行い、研磨作業は砥粒や水溶性又は油性の分散剤を供給しながら行うため、副産物として、これらの廃液が集まった、シリコン粉、砥粒といった固形物からなる固形成分と、切削油、分散剤といった液体からなる液状成分とを含有するシリコンスラリーが排出される。
シリコンスラリーは、その多くが廃棄処分されている。しかし、シリコンスラリーには、シリコン粉や砥粒、切削油、分散剤といった多くの有機・無機物が含まれているため、廃棄処分による環境への影響が問題となっている。また、環境問題を考慮して、シリコンスラリーを無害化しようとしても、その処理に多大なコストや設備が必要となる。
そこで、以前より、このシリコンスラリーを資源として再利用できるものとするために、シリコンスラリーからシリコン粉を回収するための方法が提案されており、その例として、以下に挙げるようなものがある。なお、本明細書において、「シリコンスラリー」の語は、シリコンスラリーの含有成分が凝集沈降したシリコンスラッジをも含むものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−278612
【特許文献2】特開2004−174300
【特許文献3】特開2007−246366
【特許文献4】特開2008−162813
【0004】
特許文献1には、シリコンスラリーを固液分離した後の固形分を用いて、固形分を有機溶剤により洗浄し、固形分に含まれる分散剤を除去する有機溶剤洗浄工程と、分散剤の除去が行われた後の固形分から酸化シリコン及び砥粒を除去して、シリコンを主成分とする粉体を得る分離工程とを含むシリコンの回収方法が開示されている。
特許文献2には、水分を除外したシリコンスラリーを真空状態で1500K以上の温度に保持することによって、酸素濃度の低いシリコンスラリー乾燥物を得る方法が開示されている。
特許文献3には、シリコンスラリーから固形分であるシリコン含有材料を回収するために、水溶性クーラントを確実に除去する方法が開示されている。
特許文献4によれば、シリコンスラリーから液状成分を除去せずに、そのまま乾燥機の炉内に投入し、攪拌時の回転数を加熱温度に応じて制御すればシリコンスラリーに含まれる金属シリコン粒を酸化させて酸化シリコン粒を生成することができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から3が示すように、従来、シリコンスラリーからシリコン粉を回収する際に、まず、液状成分を除去し、残った固形成分であるケーキを洗浄、乾燥等させていた。シリコンスラリーから液状成分を除去することは容易ではなく、濾過や遠心分離といったいくつもの工程を要するため、大規模な設備、コスト、及び時間が必要となるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献4が示すようなシリコンスラリーの乾燥方法が考案された。しかし、加熱温度に応じて回転数の制御をしなければならないため、その管理が難しいという問題がある。また、この方法は、シリコンスラリーに油分が含まれていない場合にしか適用できない。何故ならば、油分が含まれているシリコンスラリーを乾燥させると、油分と酸素が反応して燃焼し、最悪の場合、火災の発生や乾燥機が爆発するというような危険性があるからである。
【0007】
ここで、出願人が発明した、廃油や使用済みプラスチック製包装容器等のあらゆる石油化学製品廃棄物を粉砕し、そのまま炉内に投入するだけで、熱分解することができ、精製油、ガス、及び炭化品を生成できる装置がある(特開2011−6528号公報。)。
しかし、シリコンスラリーをそのままこの装置の炉内に投入し、処理すると、固形成分と液状成分とを分離することはできるが、熱分解の過程で、炉内に残るシリコン粉を主成分とする固形成分が何らかの化学反応を起こし、炉内に貼り付いた状態で強固に固まり、固形成分を取出すことができないという問題が生じる。
【0008】
上述したように、シリコンスラリーの再資源化をすることは困難なものであり、多くの設備を要する。また、単純な構成の再資源化技術は未だ確立されていないため、大量のシリコンスラリーが現在も廃棄処分され、自然環境に悪影響を与えているという現実がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、単純な構成でシリコンスラリーを再資源化できる、シリコンスラリーの固液分離方法、及びその装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シリコン粉を含む固形成分と、切削油又は分散剤を含む液状成分を含有するシリコンスラリーに、酸性溶液を加えた後、中和剤溶液を加えて中和させ、次いで熱分解させることにより前記液状成分を気化させ、前記固形成分と液状成分とを分離させることを特徴とするシリコンスラリーの固液分離方法によって前記課題を解決した。また、請求項2の、シリコン粉を含む固形成分と、切削油又は分散剤を含む液状成分を含有するシリコンスラリーに酸性溶液を加える反応槽と、前記酸性溶液が加えられたシリコンスラリーに中和剤溶液を加える中和槽と、前記中和剤溶液が加えられたシリコンスラリーを熱分解させる、内周面に伝熱面を有する円筒状の加熱槽を有し、加熱槽の中心に設けられた回転軸に複数の基羽根が取付けられ、基羽根が回転することにより中和剤溶液が加えられたシリコンスラリーが掬い上げられ、遠心力で加熱槽内周の伝熱面に押付けられる、密閉構造を有する熱分解機を具える固液分離装置によって、前記固液分離方法が実施されることが好適である。
【0011】
また、請求項3のように、熱分解され、気化した液状成分を蒸留する蒸留装置を具える固液分離装置とすることが好ましく、さらに、請求項4のように、蒸留装置で回収される非凝縮性ガスを熱分解機の伝熱面を加熱する熱風を発生させる熱風発生炉の燃料とすることがよい。
【0012】
また、請求項5のように、分離された固形成分を冷却させる、内周面に冷却面を有する円筒状の冷却槽を有し、冷却槽の中心に設けられた回転軸に複数の基羽根が取付けられ、基羽根が回転することにより熱分解された固形成分が掬い上げられ、遠心力で前記冷却槽内周の冷却面に押付けられる冷却機を具える固液分離装置とすることがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、濾過や遠心分離といった処理を経ることなく、シリコンスラリーの固形成分と液状成分とを分離させることができ、また、熱分解機の炉内に残ったシリコン粉を主成分とする熱分解処理後の固形成分がクッキー程度の硬さになるため、シリコン粉を主成分とする粉状物を容易に得ることができる。前述の通り、シリコンスラリーを何らの処理を加えずに熱分解すると、熱分解機の炉内に残った固形成分が強固に固まるという結果になる。これは、熱分解時に液状成分が気化する際に、固形成分の粒子同士が凝集することによって惹き起こされるものであり、シリコンスラリーに含まれる炭化ケイ素の熱融着によるものではないと考えられる。何故ならば、炭化ケイ素の融点は2,730℃であるため、炭化ケイ素が熱分解機の温度で融解することはないからである。一方、シリコンスラリーに酸性溶液を加えた後、中和剤溶液を加え、熱分解すると、熱分解処理後のシリコンスラリーの固形成分をクッキー程度の硬さにすることができる。これは、シリコンスラリーに酸性溶液を加えた後、中和剤溶液を加えて中和させることによって、熱分解時の粒子間の凝集を阻害したか、シリコンスラリーに何らかの化学反応が起こり、又は粒子間に微細な気泡が生じ、固形成分の凝集力を下げたからであると考えられる。このように、シリコンスラリーを固形成分と液状成分とに濾過や遠心分離によって分離させる工程を経ることなく処理できるため、これまで、シリコンスラリーを固形成分と液状成分とに分離するために要していた設備やコストは不要である。また、熱分解させる、すなわち、無酸素状態で加熱するため、油分を含むシリコンスラリーを処理しても、油分が燃焼し、爆発する危険性はなく、安全に処理することができる。さらに、熱分解の過程において、例えば、回転数といった、装置の制御は必要ない。
【0014】
また、請求項2の固液分離装置を用いれば、中和剤溶液が加えられたシリコンスラリーが基羽根によって掬い上げられ、遠心力で加熱槽内周の伝熱面に押付けられるため、遠心力によって、含水率の高いものが優先的に伝熱面に押付けられることになり、また、シリコンスラリーが薄膜状になって伝熱面に接するため、加熱効率が高まり、熱分解処理を短時間で行うことができる。
【0015】
また、請求項3のように、熱分解され、気化した液状成分を蒸留する蒸留装置を具えれば、気化した液状成分に含まれる油分を回収することができる。なお、気化した液状成分に水分が混ざっている場合は、油水分離処理を経て油分が回収される。この油分は、シリコンスラリーに酸性溶液を加えた後、中和剤溶液を加えて中和させたものを熱分解して得られたものであるため、中性である。このようにして得られた油分を別の蒸留装置を用いて分留すれば、重質油、軽質油を分けて回収することも可能である。加えて、請求項4のように、蒸留装置で発生するプロパンガス等の非凝縮性ガスを熱分解機の伝熱面を加熱する熱風を発生させる熱風発生炉の燃料とすれば、蒸留の過程で回収される被凝縮性ガスを有効利用でき、固液分離装置の燃料費のようなランニングコストを下げることができる。
【0016】
また、請求項5のように、分離された固形成分、すなわち、シリコン粉を主成分とする粉状物を冷却させる、内周面に冷却面を有する円筒状の冷却槽を有し、冷却槽の中心に設けられた回転軸に複数の基羽根が取付けられ、基羽根が回転することにより熱分解された固形成分が掬い上げられ、遠心力で前記冷却槽内周の冷却面に押付けられる冷却機を具える固液分離装置とすれば、熱分解され高温となったシリコン粉を主成分とする粉状物を短時間で冷却し、安全に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の固液分離装置の概略図。
【図2】本発明の第2実施形態の固液分離装置の概略図。
【図3】本発明の第3実施形態の固液分離装置の概略図。
【図4】本発明の熱分解機の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜4を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1の固液分離装置10は、シリコンスラリー原液槽12、反応槽20、酸性溶液槽22、中和槽30、中和剤溶液槽32、熱分解機40、及び熱風発生炉50を具えている。各機器の配管の接続部分には、バルブVが具えられているため、原料となるシリコンスラリーの流量を調節・制御することができ、また、熱分解機40に空気が混入することを防ぐことができるため、熱分解機40の密閉構造を確保することができる。
【0020】
まず、シリコンスラリーは、工場から排出された廃液の状態のまま、シリコンスラリー原液槽12に投入される。ここで、本発明においては、従来、多くの処理方法が必要としていた、シリコンスラリーの固形成分と液状成分を分離させるための濾過や、遠心分離といった工程は必要ない。シリコンスラリー原液槽12に投入されたシリコンスラリーは、次いで、反応槽20に投入され、酸性溶液槽22に準備されている酸性溶液が加えられる。酸性溶液が加えられた後は、攪拌装置(図示省略。)でシリコンスラリーと酸性溶液が攪拌され、反応の促進が図られるのがよい。また、使用する最適な酸性溶液の種類や濃度は、シリコンスラリーの濃度や含まれている成分によって異なると考えられるが、塩酸や硫酸といった強酸を使用することが好ましく、このような酸性溶液とシリコンスラリーを十分に反応させ、中和させた後に、熱分解すれば残った固形成分が固まることがないことが分かっている。次に、シリコンスラリーは、中和槽30に投入され、中和剤溶液槽32に準備されている中和剤溶液が加えられる。この中和槽30においても、図示しない攪拌装置でシリコンスラリーと中和剤溶液が攪拌され、中和反応の促進が図られるのがよい。また、使用する中和剤溶液として、苛性ソーダ液が挙げられるが、要は、中和させることができればどのようなものであってもよい。
【0021】
中和状態となったシリコンスラリーは、次に、熱分解機40に投入される。熱分解機40の内部は、無酸素状態(1%以下)に保たれている。無酸素状態(1%以下)は、熱分解機40に窒素を充填し、内部の空気を熱分解機40の外部に放出させる窒素置換によって確保されているのがよい。また、熱分解機40の配管に設けられているバルブVによって外部から空気が混入することが防止されているため、熱分解機40は密閉構造が確保されている。
【0022】
このような熱分解機40には、例えば、特開平10−18513号公報に開示されているものが使用される。この熱分解機40の稼動時の状態の概略図が図4である。図4に示すように、熱分解機40は、モータM、及び円筒状の加熱槽42を有し、図1に示す熱風発生炉50からの熱風が送り込まれる外周ジャケット44、加熱される伝熱面41、シリコンスラリーSを回転させて伝熱面41に遠心力で押付けるための、加熱槽42の中心の回転軸46に取付けられる複数の基羽根48を具える。基羽根48が回転することにより、シリコンスラリーSは図4に示すような状態、すなわち、伝熱面41に沿って掬い上げられるとともに、遠心力の働きによって、薄膜状となって伝熱面41に押付けられる。このことにより、加熱面積が広がるため、加熱効率が高まり、また、含水率の多いものが優先的に伝熱面41に接することになるため、加熱と気化を同時に行うことができる。なお、図1に示す熱風発生炉50から送られる熱風は、約500〜600度であり、熱分解機40の稼動時のシリコンスラリーSは、約300〜400度に加熱される。また、シリコンスラリーSは伝熱面41に接している部分だけでなく、内側の面S1も高温の雰囲気にさらされるため、効率良く、短時間で熱分解を行うことができる。このようにして、シリコンスラリーSの液状成分が気化し、ガスが発生するとともに、シリコン粉を主成分とする粉状物となる固形成分が加熱槽42に残る。なお、前述の通り、熱分解機40は密閉構造を有しており、内部が無酸素状態(1%以下)に保たれているため、熱分解処理において、シリコンスラリーSの油分が酸素と反応することはなく、安全に処理を行うことができる。
【0023】
こうして、図1に示すように、矢印Aからは、シリコンスラリーの液状成分が気化したガスを、矢印Bからは、固形成分であるシリコン粉を主成分とした粉状物を回収することができる。
【0024】
次に、図2は、本発明の第2実施形態の固液分離装置10aを示している。固液分離装置10aは、シリコンスラリー原液槽12、反応槽20、酸性溶液槽22、中和槽30、中和剤溶液槽32、熱分解機40、及び熱風発生炉50に加えて、冷却機60、蒸留装置である単式蒸留装置70、及び油水分離槽80を具えている。なお、シリコンスラリーをシリコンスラリー原液槽12に投入してから熱分解機40で熱分解させるまでのプロセスは、記述の固液分離装置10と同じであるため説明を省略する。
【0025】
熱分解機40から回収された、シリコンスラリーの固形成分であるシリコン粉を主成分とする粉状物は、冷却機60に送られる。冷却機60は、内周面に冷却面61を有する円筒状の冷却槽62を有し、冷却槽62の中心に設けられた回転軸66に複数の基羽根68を具えている。基本的な動作は熱分解機40と同じであり、外周ジャケット64に冷却水等が循環させられることによって冷却面61を冷やし、投入された物を効率良く冷やすことができる。この冷却機60を具えることによって、熱分解機40の熱分解処理によって高温となったシリコン粉を主成分とする粉状物を、短時間で冷却し、矢印Cから安全に回収することができる。このようにして回収されたシリコン粉を主成分とする粉状物は、セメントの材料や園芸用の砂として再利用することができる。
【0026】
一方、液状成分が気化したガスは、単式蒸留装置70に送られ、冷却部72を通ることによって、凝縮される。このとき凝縮されなかった非凝縮性ガスは、熱風発生炉50に送られることによって、熱風発生炉50の燃料として再利用される。こうすることにより、固液分離装置10aの燃料費を低減させることができる。一方、凝縮された液体は、油水分離槽80に送られ、矢印Dからは水分が、矢印Eからは油分が回収される。この油分から固形分等を除去すれば、精製油となり、切削油の原料又は燃料として利用することができる。
【0027】
また、単式蒸留装置70によって蒸留され、油水分離槽80から回収された油分を分留する第2の蒸留装置である分留装置110を具えるのが、図3に示す、固液分離装置10bである。この固液分離装置10bの油水分離槽80から回収された油分は、加熱炉100に送られた後、分留装置110に送られる。そして、分留装置110によって分留され、矢印Fからは重質油が、矢印Gからは軽質油が回収される。ここで凝縮されなかったガスは、コンデンサ120に送られる。このコンデンサ120の冷却部122によって冷却され、凝縮した油分は矢印Hから軽質油として回収される。コンデンサ120を通っても凝縮されなかった非凝縮性ガスは、熱風発生炉50に送られ、燃料として再利用される。回収された重質油は最低でもA重油クラスであり、ディーゼルエンジンに使用することができる。また、軽質油は、切削油として再利用することができる。
【0028】
また、固液分離装置10bのように、中間槽90を具える構成とすれば、中和槽30で中和反応を終えたシリコンスラリーを中間槽90に溜めておくことができ、熱分解機40が稼動している間も、反応槽20及び中和槽30において処理を続けることができる。すなわち、装置の待機時間をなくし、一連の処理を連続して行えるため、処理効率を上げることができる。
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、従来、再資源化処理が困難であったシリコンスラリーを、濾過や遠心分離といった処理を介さずに、そのまま固液分離装置へ投入するだけで、シリコンスラリーに含まれる固形成分と液状成分とを分離させることができ、シリコン粉を主成分とする粉状物や、重質油、軽質油、非凝縮性ガスとして回収することができる。従って、単純な構成による方法及び装置によって、シリコンスラリーを固液分離し、資源として再利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
10、10a、10b 固液分離装置
20 反応槽
30 中和槽
40 熱分解機
41 伝熱面
42 加熱槽
46 回転軸
48 基羽根
50 熱風発生炉
60 冷却機
61 冷却面
62 冷却槽
66 回転軸
68 基羽根
70、110 蒸留装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン粉を含む固形成分と、切削油又は分散剤を含む液状成分を含有するシリコンスラリーに、酸性溶液を加えた後、中和剤溶液を加えて中和させ、次いで熱分解させることにより前記液状成分を気化させ、前記固形成分と液状成分とを分離させることを特徴とする、
シリコンスラリーの固液分離方法。
【請求項2】
シリコン粉を含む固形成分と、切削油又は分散剤を含む液状成分を含有するシリコンスラリーに酸性溶液を加える反応槽と、
前記酸性溶液が加えられたシリコンスラリーに中和剤溶液を加える中和槽と、
前記中和剤溶液が加えられたシリコンスラリーを熱分解させる、内周面に伝熱面を有する円筒状の加熱槽を有し、該加熱槽の中心に設けられた回転軸に複数の基羽根が取付けられ、該基羽根が回転することにより前記中和剤溶液が加えられたシリコンスラリーが掬い上げられ、遠心力で前記加熱槽内周の伝熱面に押付けられる、密閉構造を有する熱分解機を具えることを特徴とする、
シリコンスラリーの固液分離装置。
【請求項3】
熱分解され、気化した前記液状成分を蒸留する蒸留装置を具える、請求項2のシリコンスラリーの固液分離装置。
【請求項4】
前記蒸留装置で回収される非凝縮性ガスを前記熱分解機の伝熱面を加熱する熱風を発生させる熱風発生炉の燃料とする、請求項3のシリコンスラリーの固液分離装置。
【請求項5】
分離された前記固形成分を冷却させる、内周面に冷却面を有する円筒状の冷却槽を有し、該冷却槽の中心に設けられた回転軸に複数の基羽根が取付けられ、該基羽根が回転することにより熱分解された前記固形成分が掬い上げられ、遠心力で前記冷却槽内周の冷却面に押付けられる冷却機を具える、請求項2から4のいずれかのシリコンスラリーの固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100203(P2013−100203A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245534(P2011−245534)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(391060199)
【Fターム(参考)】