説明

シリコンドット形成方法及びシリコンドット形成装置

【課題】基体上に、低温で、直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成して、該シリコンドットから容易に終端処理されたシリコンドットを得ることができるシリコンドット形成方法及び装置を提供する。
【解決手段】シリコンドット形成室1内にシリコンスパッタターゲット30を設け、シリコンドット形成対象基体Sを配置し、該室内に導入したスパッタリング用ガス(代表的には水素ガス)をプラズマ化し、該プラズマでターゲット30をケミカルスパッタリングして基体S上にシリコンドットを形成する。或いは水素ガス及びシラン系ガス由来の、プラズマ発光強度比(Si(288nm) /Hβ)が10・0以下のプラズマのもとで基体S上にシリコンドットを形成する。該シリコンドットに酸素ガス等の終端処理用ガス由来のプラズマのもとで終端処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる微小サイズのシリコンドット( 所謂シリコンナノ粒子) の形成方法及び形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンナノ粒子の形成方法としては、シリコンを不活性ガス中でエキシマレーザー等を用いて加熱、蒸発させて形成する物理的手法が知られており、また、ガス中蒸発法も知られている(神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁参照) 。後者は、レーザーに代えて高周波誘導加熱やアーク放電によりシリコンを加熱蒸発させる手法である。
【0003】
また、CVDチャンバ内に材料ガスを導入し、加熱した基板上にシリコンナノ粒子を形成するCVD法も知られている(特開2004−179658号公報参照)。
この方法では、シリコンナノ粒子成長のための核を基板上に形成する工程を経て、該核からシリコンナノ粒子を成長させる。
【0004】
ところで、シリコンドットは、酸素や窒素などで終端処理されていることが望ましい。ここで「酸素や窒素などによる終端処理」とは、シリコンドットに酸素や、窒素が結合して、(Si−O)結合や、(Si−N)結合、或いは(Si−O−N)結合などを生じさせる処理である。
【0005】
かかる終端処理による酸素や窒素の結合は、終端処理前のシリコンドットに、例えば 未結合手のような欠陥があっても、これを補うがごとく機能し、シリコンドット全体としてみれば、実質上欠陥の抑制された状態を形成する。かかる終端処理が施されたシリコンドットは、電子デバイスの材料として利用された場合、該デバイスに求められる特性が向上する。例えば、発光素子材料として利用された場合、該発光素子の発光輝度が向上する。
かかる終端処理については、特開2004−83299号公報に、酸素或いは窒素で終端処理されたシリコンナノ結晶構造体の形成方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−179658号公報
【特許文献2】特開2004−83299号公報
【非特許文献1】神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる従来のシリコンドット形成方法のうち、シリコンをレーザー照射により加熱蒸発させる手法は、均一にエネルギー密度を制御してレーザーをシリコンに照射することが困難であり、シリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。 ガス中蒸発法においても、シリコンの不均一な加熱が起こり、そのためにシリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
【0008】
また、前記のCVD法においては、前記核を基板上に形成するにあたり、基板を550℃程度以上に加熱しなければならず、耐熱温度の低い基板を採用できず、基板材料の選択可能範囲がそれだけ制限される。
【0009】
また、特開2004−83299号公報に記載されているシリコンナノ結晶構造体の形成方法における、終端処理前の、ナノメータスケール厚のシリコン微結晶とアモルファスシリコンからなるシリコン薄膜の形成は、水素化シリコンガスと水素ガスとを含むガスの熱カタリシス反応で行うか、或いは水素化シリコンガスと水素ガスとを含むガスへの高周波電界の印加でプラズマを形成し、該プラズマのもとで行う、というものであり、先に説明した従来の結晶性シリコン薄膜と同様の問題を含んでいる。
【0010】
そこで本発明は、シリコンドット形成対象基体上に、前記従来のCVD法と比較すると低温で、また、直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成して、該シリコンドットから容易に終端処理されたシリコンドットを得ることができるシリコンドット形成方法を提供することを課題とする。
【0011】
また本発明は、シリコンドット形成対象基体上に、前記従来のCVD法と比較すると低温で、また、直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成して、該シリコンドットから容易に終端処理されたシリコンドットを得ることができるシリコンドット形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者はかかる課題を解決するため研究を重ね、次のことを知見するに至った。
すなわち、スパッタリング用ガス(例えば水素ガス)をプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0013】
例えば、シリコンスパッタターゲットをプラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすれば、500℃以下の低温においても、粒径20nm以下、或いは、粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0014】
かかるプラズマの形成は、プラズマ形成領域にスパッタリング用ガス(例えば水素ガス)を導入し、これに高周波電力を印加することで行える。
【0015】
また、シラン系ガスを水素ガスで希釈したガスに高周波電力を印加して該ガスをプラズマ化し、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマとすれば、該プラズマのもとでも、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0016】
例えば、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成することが可能である。
【0017】
かかる水素ガス及びシラン系ガス由来のプラズマによるシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用することも可能である。
【0018】
いずれにしても、本発明において、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、各シリコンドットの粒径がいずれも同じ又は略同じである場合のほか、シリコンドットの粒径にバラツキがあったとしても、シリコンドットの粒径が、実用上は、揃っているとみることができる場合も指す。例えば、シリコンドットの粒径が、所定の範囲(例えば20nm以下の範囲或いは10nm以下の範囲)内に揃っている、或いは概ね揃っているとみても、実用上差し支えない場合や、シリコンドットの粒径が例えば5nm〜6nmの範囲と8nm〜11nmの範囲に分布しているが、全体としては、シリコンドットの粒径が所定の範囲(例えば10nm以下の範囲)内に概ね揃っているとみることができ、実用上差し支えない場合等も含まれる。要するに、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、実用上の観点から、全体として、実質上揃っている、と言える場合を指す。
【0019】
そして、このようにして形成されるシリコンドットを、酸素含有ガス及び(又は)窒素含有ガスからなるプラズマに曝すことで、容易に酸素や窒素で終端処理されたシリコンドットを得ることができる。
【0020】
〔1〕シリコンドット形成方法について
本発明はかかる知見に基づき、大別して次の2タイプのシリコンドット形成方法を提供する。
<第1タイプのシリコンドット形成方法>
シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
シリコンドット形成対象基体を前記シリコンドット形成室内に配置し、該室内にスパッタリング用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該室内にスパッタリング用プラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして前記基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と
終端処理室内に前記シリコンドット形成工程によりシリコンドットが形成された基体を配置し、該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで該基体上のシリコンドットを終端処理する終端処理工程と
を含むシリコンドット形成方法。
【0021】
<第2タイプのシリコンドット形成方法>
シリコンドット形成対象基体を配置したシリコンドット形成室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該室内に、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるシリコンドット形成用プラズマを発生させ、該プラズマのもとで前記基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と、
終端処理室内に前記シリコンドット形成工程によりシリコンドットが形成された基体を配置し、該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで該基体上のシリコンドットを終端処理する終端処理工程と
を含むシリコンドット形成方法。
【0022】
(1)第1タイプのシリコンドット形成方法について
第1タイプのシリコンドット形成方法における前記シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程は、次の3通りを代表例として挙げることができる。
【0023】
(1-1) シリコンドット形成室の内壁にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットとする。すなわち、
前記シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程では、前記シリコンドット形成室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該室内にシリコン膜形成用プラズマを発生させ、該プラズマにより該室の内壁にシリコン膜を形成し、該シリコン膜を前記シリコンスパッタターゲットとする。
ここで「シリコンドット形成室の内壁」とは、室壁そのものであってもよく、室壁の内側に設けた内壁であってもよく、これらの組み合わせでもよい。
以下、このようにしてシリコンスパッタターゲットを設けるシリコンドット形成方法を「第1のシリコンドット形成方法」ということがある。
【0024】
(1-2) 別室で作製したシリコンスパッタターゲットを用いる。すなわち、
前記シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程は、
ターゲット形成室内にターゲット基板を配置し、該ターゲット形成室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該室内にシリコン膜形成用プラズマを発生させ、該プラズマにより該ターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るターゲット形成工程と、
前記ターゲット形成室から前記シリコンドット形成室内に、前記ターゲット形成工程で得たシリコンスパッタターゲットを外気に触れさせることなく搬入配置する工程とを含む。
以下、このようにしてシリコンスパッタターゲットを設けるシリコンドット形成方法を「第2のシリコンドット形成方法」ということがある。
【0025】
(1-3) 既製のシリコンスパッタターゲットを用いる。すなわち、
前記シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程では、既製のシリコンスパッタターゲットを前記シリコンドット形成室に後付け配置する。
以下、このようにしてシリコンスパッタターゲットを設けるシリコンドット形成方法を「第3のシリコンドット形成方法」ということがある。
【0026】
(2)第2タイプのシリコンドット形成方法について
前記第2タイプのシリコンドット形成方法のように、水素ガスとシラン系ガスを用い、これらガス由来のプラズマのもとでシリコンドットを形成する方法を「第4のシリコンドット形成方法」ということがある。
(3)第1、第2タイプのシリコンドット形成方法について
【0027】
第1のシリコンドット形成方法によると、シリコンドット形成室の内壁にシリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜を形成できるので、既製の(例えば市販の)シリコンスパッタターゲットをシリコンドット形成室内に後付け配置する場合よりも大面積のターゲットを得ることができ、それだけ基体の広い面積にわたって均一にシリコンドットを形成することが可能である。
【0028】
第1、第2のシリコンドット形成方法によると、外気に触れないシリコンスパッタターゲットを採用してシリコンドットを形成でき、それだけ、予定されない不純物の混入が抑制されたシリコンドットを形成でき、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)シリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0029】
シリコンスパッタターゲットを用いる第1、第2、第3のシリコンドット形成方法のいずれにおいても、前記スパッタリング用ガスとしては、代表例として、水素ガスを挙げることができる。水素ガスには、希ガス〔ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)、クリプトンガス(Kr)及びキセノンガス(Xe)から選ばれた少なくとも1種のガス)〕が混合されていてもよい。
【0030】
すなわち、第1、第2、第3のシリコンドット形成方法のいずれにおいても、前記シリコンドット形成工程では、シリコンドット形成対象基体を配置したシリコンドット形成室内にスパッタリング用ガスとして水素ガスを導入し、該水素ガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)シリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0031】
例えば、500℃以下の低温で(換言すれば、例えば基体温度を500℃以下として)、前記基体上に直接、粒径が20nm以下、或いは粒径10nm以下のシリコンドットを形成することが可能である。
【0032】
第1、第2、第3のシリコンドット形成方法では、シリコンドット形成工程においてシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするスパッタリング用プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
【0033】
また、第1のシリコンドット形成方法において、シリコンドット形成室の内壁にシリコンスパッタターゲットとしてのシリコン膜を形成するためのシリコン膜形成用プラズマ(シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマ)や、第2のシリコンドット形成方法において、ターゲット形成室においてターゲット基板上にシリコン膜を形成するためのシリコン膜形成用プラズマ(シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマ)についても、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
これらの理由については後述する。
【0034】
第4のシリコンドット形成方法によっても、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)シリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
例えば、500℃以下の低温で(換言すれば、例えば基体温度を500℃以下として)、前記基体上に直接、粒径が20nm以下、或いは粒径10nm以下のシリコンドットを形成することが可能である。
【0035】
第4のシリコンドット形成方法においては、シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを配置し、該ターゲットのプラズマによるケミカルスパッタリングを併用してもよい。
【0036】
かかるシリコンスパッタターゲットとしては、前記第2のシリコンドット形成方法におけると同様に、ターゲット形成室内にターゲット基板を配置し、該ターゲット形成室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該室内にシリコン膜形成用プラズマを発生させ、該プラズマにより該ターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るターゲット形成工程と、前記ターゲット形成室から前記シリコンドット形成室内に、前記ターゲット形成工程で得たシリコンスパッタターゲットを外気に触れさせることなく搬入配置する工程とを実施して、シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設けてもよい。
また、既製のシリコンスパッタターゲットを前記シリコンドット形成室に後付け配置してもよい。
【0037】
前記第1から第4のシリコンドット形成方法のいずれにおいても、シリコンドット形成工程において、また、シリコンスパッタターゲットとするシリコン膜形成において、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に設定する場合、それはプラズマ中の水素原子ラジカルが豊富であることを示す。
【0038】
第1方法における、シリコンスパッタターゲットとなるシリコンドット形成室の内壁へのシリコン膜の形成のためのシラン系ガス及び水素ガスからのプラズマ形成において、また、第2方法における、ターゲット基板上へのシリコン膜の形成のためのシラン系ガス及び水素ガスからのプラズマ形成において、該プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定すると、室内壁に、或いはスパッタターゲット基板に、500℃以下の低温で、シリコンドット形成対象基体へのシリンコンドット形成に適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)が円滑に形成される。
【0039】
また、前記第1、第2及び第3のいずれノシリコンドット形成方法においても、シリコンドット形成工程において、シリコンスパッタターゲットをスパッタリングするためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0040】
また、前記第4のシリコンドット形成方法においても、シリコンドット形成工程においてシラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0041】
いずれのシリコンドット形成方法においても、シリコンドット形成工程では、かかる発光強度比が10.0より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。よって発光強度比は10.0以下がよい。粒径の小さいシリコンドットを形成するうえで、発光強度比は3.0以下がより好ましい。0.5以下としてもよい。
【0042】
しかし、発光強度比の値が余り小さすぎると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、ドットの成長よりエッチング効果の方が大きくなり、結晶粒が成長しなくなる。発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕は、他の種々の条件等にもよるが、概ね0.1以上とすればよい。
【0043】
シリコンスパッタターゲットを得るためのシリコン膜形成においても、シリコン膜形成用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を制御するのであれば、それは、他の種々の条件等にもよるが、概ね0.1以上とすればよい。
【0044】
発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の値は、例えば各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の制御は、導入ガスに印加する高周波電力(例えば周波数や電力の大きさ)、シリコンドット形成時(或いはシリコン膜形成時)の室内ガス圧、室内へ導入するガス(例えば水素ガス、或いは水素ガス及びシラン系ガス)の流量等の制御により行える。
【0045】
前記第1、第2、第3のシリコンドット形成方法(特に、スパッタリング用ガスとして水素ガスを採用する場合)によると、シリコンスパッタターゲットを発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすることで基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットが成長する。
【0046】
前記第4のシリコンドット形成方法によると、シラン系ガスと水素ガスが励起分解されて化学反応が促進され、基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットが成長する。第4の方法においてシリコンスパッタターゲットのプラズマによるケミカルスパッタリングを併用すると、それによっても基体上の結晶核形成が促進される。
【0047】
このように結晶核形成が促進され、シリコンドットが成長するため、予めシリコンドット形成対象基体上にダングリングボンドやステップなどの核となり得るものが存在しなくても、シリコンドットが成長するための核を比較的容易に高密度に形成することができる。また、水素ラジカルや水素イオンがシリコンラジカルやシリコンイオンより豊富であり、核密度の過剰に大きい部分については、励起された水素原子や水素分子とシリコン原子との化学反応によりシリコンの脱離が進み、これによりシリコンドットの核密度は基体上で高密度となりつつも均一化される。
【0048】
またプラズマにより分解励起されたシリコン原子やシリコンラジカルは核に吸着し、化学反応によりシリコンドットへと成長するが、この成長の際も水素ラジカルが多いことから吸着脱離の化学反応が促進され、核は結晶方位と粒径のよく揃ったシリコンドットへと成長する。以上より、基体上に結晶方位と粒径サイズの揃ったシリコンドットが高密度且つ均一分布で形成される。
【0049】
本発明はシリコンドット形成対象基体上に、終端処理された微小粒径のシリコンドット、例えば、粒径が20nm以下、より好ましくは粒径が10nm以下のシリコンドットを形成しようとするものであるが、実際には極端に小さい粒径のシリコンドットを形成することは困難であり、それには限定されないが粒径1nm程度以上のものになるであろう。例えば3nm〜15nm程度のもの、より好ましくは3nm〜10nm程度のものを例示できる。
【0050】
本発明に係るシリコンドット形成方法におけるシリコンドット形成工程では、500℃以下の低温下で(換言すれば、基体温度を500℃以下として)、条件次第では400℃以下の低温下で(換言すれば条件次第では、基体温度を400℃以下として)、基体上にシリコンドットを形成できるので、基体材料の選択範囲がそれだけ広くなる。例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板へのシリコンドット形成が可能である。
【0051】
本発明は、低温下(代表的には500℃以下)でシリコンドットを形成しようとするものであるが、シリコンドット形成対象基体温度が低すぎると、シリコンの結晶化が困難となるので、他の諸条件(例えば、その一つとして基体の耐熱性)にもよるが、概ね100℃以上、或いは150℃以上、或いは200℃以上の温度で(換言すれば、基体温度を概ね100℃以上、或いは150℃以上、或いは200℃以上として)シリコンドットを形成することが望ましい。
【0052】
前記第4のシリコンドット形成方法のように、シリコンドット形成用プラズマを得るためのガスとしてシラン系ガスと水素ガスとを併用する場合、前記真空チャンバ内へのガス導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)としては、1/200〜1/30程度を例示できる。1/200より小さくなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、結晶粒が成長しなくなる。1/30より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0053】
また、例えばシラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccm程度とするとき、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/真空チャンバ容積(リットル)〕は1/200〜1/30程度が好ましい。この場合も、1/200より小さくなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、結晶粒が成長しなくなる。1/30より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0054】
前記第1から第4のいずれのシリコンドット形成方法においても、シリコンドット形成時の(換言すれば、シリコンドット形成用プラズマを形成するときの)シリコンドット形成室内圧力としては、0.1Pa〜10.0Pa程度を例示できる。
0.1Paより低くなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに低くなってくると、結晶粒が成長しなくなる。10.0Paより高くなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0055】
前記第2、第3のシリコンドット形成方法のように、また、第4のシリコンドット形成方法においてシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する場合のように、シリコンドット形成室外で得たシリコンスパッタターゲットを採用する場合、該シリコンスパッタターゲットは、シリコンを主体とするターゲットであり、例えば単結晶シリコンからなるもの、多結晶シリコンからなるもの、微結晶シリコンからなるもの、アモルファスシリコンからなるもの、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0056】
また、シリコンスパッタターゲットは、不純物が含まれていないもの、含まれていてもその含有量ができるだけ少ないもの、適度量の不純物含有により所定の比抵抗を示すものなど、形成するシリコンドットの用途に応じて適宜選択できる。
【0057】
不純物が含まれていないシリコンスパッタタゲット及び不純物が含まれていてもその含有量ができるだけ少ないシリコンスパッタタゲットの例として、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲットを挙げることができる。
【0058】
所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲットとして、比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲットを例示できる。
【0059】
前記第2、第3のシリコンドット形成方法や、前記第4のシリコンドット形成方法においてシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用し、該シリコンスパッタリングターゲットをシリコンドット形成室内に後付け配置する場合においては、該ターゲットのシリコンドット形成室内への配置としては、これがプラズマによりケミカルスパッタリングされる配置であればよいが、例えば、シリコンドット形成室の内壁の全部又は一部に沿って配置する場合を挙げることができる。室内に独立して配置してもよい。室の内壁に沿って配置されるものと、独立的に配置されるものを併用してもよい。
【0060】
シリコンドット形成室の内壁(室壁それ自体、室壁の内側に沿って設けた内壁、これらの組み合わせのいずれでもよい)にシリコン膜を形成してこれをシリコンスパッタターゲットとしたり、シリコンスパッタターゲットを室の内壁に沿って配置すると、シリコンドット形成室を加熱することでシリコンスパッタターゲットを加熱することができる。ターゲットを加熱すると、ターゲットが室温である場合よりもスパッタされやすくなり、それだけ高密度にシリコンドットを形成し易くなる。
【0061】
シリコンドット形成室を例えばバンドヒータ、加熱ジャケット等で加熱してシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱する例を挙げることができる。加熱温度の上限については、経済的観点等から概ね300℃程度を例示できる。チャンバにオーリング等を使用している場合はそれらの耐熱性に応じて300℃よりも低い温度にしなければならないこともある。
【0062】
本発明に係るいずれのシリコンドット形成方法においても、シリコンドット形成工程ではシリコンドット形成室内へ導入されるガスに、また、ターゲット形成室を用いる場合は該室内へ導入されるガスに、さらに、終端処理工程では終端処理室内へ導入される終端処理用ガスに、それぞれ高周波電力を印加する電極を用いるが、該それぞれの電極としてはは、誘導結合型電極、容量結合型電極のいずれも採用することができる。誘導結合型電極を採用するとき、それは室内に配置することも、室外に配置することもできる。
【0063】
室内に配置する電極については、シリコンを含む電気絶縁性膜、アルミニウムを含む電気絶縁性膜のような電気絶縁性膜(例えばシリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、アルミナ膜等)で被覆して、高密度プラズマの維持、電極表面のスパッタリングによるシリコンドットへの不純物の混入抑制等を図ってもよい。
【0064】
シリコンドット形成室において容量結合型電極を採用する場合には、基体へのシリコンドット形成を妨げないように、該電極を基体表面に対し垂直に配置すること(さらに言えば、基体のシリコンドット形成対象面を含む面に対して垂直姿勢に配置すること)が推奨される。
【0065】
いずれにしてもプラズマ形成のための高周波電力の周波数としては、比較的安価に済む13MHz程度から100MHz程度の範囲のものを例示できる。100MHzより高周波数になってくると、電源コストが高くなってくるし、高周波電力印加時のマッチングがとり難くなってくる。
【0066】
また、いずれにしても、高周波電力の電力密度〔印加電力(W)/シリコンドット形成室容積(L:リットル)〕は5W/L〜100W/L程度が好ましい。5W/Lより小さくなってくると、基体上のシリコンがアモルファスシリコンとなってきて、結晶性のあるドットになり難くなってくる。100W/Lより大きくなってくると、シリコンドット形成対象基体表面(例えば、シリコンウエハ上に酸化シリコン膜を形成した基体の該酸化シリコン膜)のダメージが大きくなってくる。上限については50W/L程度でもよい。
【0067】
前記いずれのシリコンドット形成方法においても、終端処理工程で用いる終端処理室は、前記シリコンドット形成室にこれを兼ねさせてもよい。また、シリコンドット形成室とは独立したものでもよい。
或いは、シリコンドット形成室に連設れたものでもよい。シリコンドット形成室に終端処理室を兼ねさせたり、シリコンドット形成室に連設された終端処理室を採用すると、終端処理前のシリコンドットの汚染を抑制できる。
終端処理室をシリコンドット形成室へ連設する場合、それは、直接的であってもよく、例えば基体搬送装置を設置した基体搬送室が介在する連設でもよい。
【0068】
いずれにしても、終端処理室における終端処理において、終端処理用ガスに高周波電力を印加する高周波放電電極については、容量結合型プラズマを発生させる電極でも、誘導結合型プラズマを発生させる電極でもよい。
終端処理用ガスとしては、前記のとおり酸素含有ガス又は(及び)窒素含有ガスを用いるが、酸素含有ガスとしては、酸素ガスや酸化窒素(N2 O)ガスを例示でき、窒素含有ガスとしては、窒素ガスやアンモニア(NH3 )ガスを例示できる。
【0069】
〔2〕シリコンドット構造体>
以上説明したいずれかのシリコンドット形成方法で形成されたシリコンドットを含むシリコンドット構造体も本発明に含まれる。
【0070】
〔3〕シリコンドット形成装置
本発明は、また、本発明に係るシリコンドット形成方法を実施するための次の第1から第4のシリコンドット形成装置も提供する。
【0071】
(1)第1のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、該シリコンドット形成室の内壁にシリコン膜を形成するためのシリコン膜形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコン膜形成後に、該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、該シリコン膜をスパッタターゲットとしてケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第3高周波電力印加装置と
を含むシリコンドット形成装置。
この第1シリコンドット形成装置は前記第1のシリコンドット形成方法を実施できるものである。
【0072】
この第1シリコンドット形成装置は、前記第1及び第2の高周波電力印加装置のうち少なくとも第2高周波電力印加装置によるプラズマの形成において、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、該第2高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記シリコンドット形成室内への水素ガス供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0073】
いずれにしても、第1、第2の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0074】
(2)第2のシリコンドット形成装置
スパッタターゲット基板を支持するホルダを有するターゲット形成室と、
該ターゲット形成室内に水素ガスを供給する第1水素ガス供給装置と、
該ターゲット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該ターゲット形成室内から排気する第1排気装置と、
該ターゲット形成室内に前記第1水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るためのシリコン膜形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
前記ターゲット形成室に外部から気密に遮断される状態に連設され、シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
シリコンスパッタターゲットを前記ターゲット形成室から該シリンドット形成室内へ外気に触れさせることなく搬入配置する搬送装置と
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する第2水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第2排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記第2水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、前記ターゲット形成室から搬入される前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のスパッタリング用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第3排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第3高周波電力印加装置と
を含むシリコンドット形成装置。
この第2シリコンドット形成装置は前記第2シリコンドット形成方法を実施できる装置である。
【0075】
この第2のシリコンドット形成装置は、前記第2高周波電力印加装置によるスパッタリング用プラズマの形成において、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記シリコンドット形成室内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、該第2高周波電力印加装置の電源出力、前記第2水素ガス供給装置からシリコンドット形成室内への水素ガス供給量及び前記第2排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0076】
いずれにしても、ターゲット形成室に対しても、該室内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を設けてもよい。その場合さらに、この計測装置について前記と同様の制御部を設けてもよい。
【0077】
第1、第2及び第3の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2の水素ガス供給装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2、第3の排気装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
【0078】
前記の搬送装置の配置としては、シリコンドット形成室又はターゲット形成室に配置する例を挙げることができる。シリコンドット形成室とターゲット形成室の連設は、ゲートバルブ等を介して直接的に連設してもよいし、前記搬送装置を配置した基体搬送室を間にして間接的に連設することも可能である。
【0079】
いずれにしても、基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
シリコンドット形成室内へシラン系ガスを供給する第2のシラン系ガス供給装置を設ければ、前記第4シリコンドット形成方法において、シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する方法を実施できる装置となる。
【0080】
(3)第3のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に配置されるシリコンスパッタターゲットと、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のスパッタリング用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と
を含むシリコンドット形成装置。
この第3シリコンドット形成装置によると、前記第3シリコンドット形成方法を実施できる。
【0081】
この第3シリコンドット形成装置は、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記シリコンドット形成室内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記第1高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記シリコンドット形成室内への水素ガス供給量及び前記第1排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0082】
第1及び第2の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2の排気装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
【0083】
(4)第4のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置及びシラン系ガス供給装置から供給されるガスに高周波電力を印加して、シリコンドット形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のシリコンドット形成用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と
を含むシリコンドット形成装置。
この第4シリコンドット形成装置によると、前記第4のシリコンドット形成方法を実施できる。
【0084】
この第4シリコンドット形成装置は、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si (288nm) /Hβ〕とを比較して、前記シリコンドット形成室内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記第1高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記シリコンドット形成室内への水素ガス供給量、前記シラン系ガス供給装置から該シリコンドット形成室内へのシラン系ガス供給量及び前記第1排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
第1及び第2の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2の排気装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
【0085】
いずれにしても、シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを配置してもよい。
前記第1から第4のいずれのシリコンドット形成装置においても、前記プラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長484nmでの水素原子の発光強度Hβを検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光強度Si(288nm) と該第2検出部で検出される発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0086】
前記第1から第4のいずれのシリコンドット形成装置においても、終端処理室は、前記シリコンドット形成室にこれを兼ねさせてもよい。また、シリコンドット形成室とは独立したものでもよい。
或いは、シリコンドット形成室に連設れたものでもよい。シリコンドット形成室に終端処理室を兼ねさせたり、シリコンドット形成室に連設された終端処理室を採用すると、終端処理前のシリコンドットの汚染を抑制できる。
終端処理室をシリコンドット形成室へ連設する場合、それは、直接的であってもよく、例えば基体搬送装置を設置した基体搬送室が介在する連設でもよい。
【発明の効果】
【0087】
以上説明したように本発明によると、シリコンドット形成対象基体上に、従来のCVD法と比較すると低温で、また、直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成して、該シリコンドットから容易に終端処理されたシリコンドットを得ることができるシリコンドット形成方法を提供することができる。
【0088】
また本発明によると、シリコンドット形成対象基体上に、従来のCVD法と比較すると低温で、また、直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成して、該シリコンドットから容易に終端処理されたシリコンドットを得ることができるシリコンドット形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
〔1〕終端処理されたシリコンドット形成装置の1例
図1は本発明に係るシリコンドット形成方法の実施に用いるシリコンドット形成装置の1例の概略構成を示している。
図1に示す装置Aは、板状のシリコンドット形成対象基体(すなわち、基板S)にシリコンドットを形成するもので、シリコンドット形成室1及び終端処理室100を備えている。
【0090】
シリコンドット形成室1内には基板ホルダ2が設置されており、さらに基板ホルダ2の上方領域において左右に一対の放電電極3が設置されている。各放電電極3はマッチングボックス41を介して放電用高周波電源4に接続されている。電源4、マッチングボックス41及び電極3は高周波電力印加装置を構成している。また、室1には、水素ガスを供給するためのガス供給装置5及びシリコンを組成に含む(シリコン原子を有する)シラン系ガスを供給するためのガス供給装置6が接続されているとともに、室1内から排気するための排気装置7が接続されている。室1にはさらに、室1内に生成されるプラズマ状態を計測するためのプラズマ発光分光計測装置8等も設けられている。
【0091】
シラン系ガスとしてはモノシラン(SiH4 )の他、ジシラン(SiH2 )、四フッ化ケイ素(SiF4 )、四塩化ケイ素(SiCl4 )、ジクロルシラン(SiH2 Cl2 )などのガスも使用できる。
基板ホルダ2は基板加熱用ヒータ21を備えている。
【0092】
電極3はその内側面に絶縁性膜として機能させるシリコン膜31を予め設けてある。また、室1の天井壁内面等にはシリコンスパッタターゲット30を予め設けてある。
電極3はいずれも、基板ホルダ2上に設置される後述するシリコンドット形成対象基板S表面(より正確に言えば、基板S表面を含む面)に対し垂直な姿勢で配置されている。
【0093】
シリコンスパッタターゲット30は、形成しようとするシリコンドットの用途等に応じて、例えば、市場で入手可能な次の(1) 〜(3) に記載のシリコンスパッタターゲットから選択したものを採用できる。
(1) 単結晶シリコンからなるターゲット、多結晶シリコンからなるターゲット、微結晶シリコンからなるターゲット、アモルファスシリコンからなるターゲット、これらの2以上の組み合わせからなるターゲットのうちのいずれかのターゲット、
(2) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲット、
(3) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲット(例えば比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲット)。
【0094】
電源4は出力可変の電源であり、例えば、周波数60MHzの高周波電力を供給できる。なお、周波数は60MHzに限らず、例えば13、56MHz程度から100MHz程度の範囲のもの、或いはそれ以上のものを採用することもできる。
室1及び基板ホルダ2はいずれも接地されている。
【0095】
ガス供給装置5は水素ガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
ガス供給装置6はここではモノシラン(SiH4 )ガス等のシラン系ガスを供給できるもので、SiH4 等のガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
排気装置7は排気ポンプの他、排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
【0096】
発光分光計測装置8は、ガス分解による生成物の発光分光スペクトルを検出することができるもので、その検出結果に基づいて、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めることができる。
【0097】
かかる発光分光計測装置8の具体例として、図2に示すように、シリコンドット形成室1内のプラズマ発光から波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する分光器81と、該プラズマ発光から波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβを検出する分光器82と、分光器81、82で検出される発光強度Si(288nm) と発光強度Hβとから両者の比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部83とを含んでいるものを挙げることができる。なお、分光器81、82に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0098】
終端処理室100内には基板ホルダ20及び該ホルダ上方の、平板型高周波放電電極301が設けられている。電極301は、マッチングボックス401を介して高周波電源40が接続されている。
また、終端処理室100には、該室から排気するための排気装置70が接続されているとともに室100内へ終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置9が接続されている。
【0099】
基板ホルダ20は、後述するように、シリコンドット形成室1においてシリコンドットが形成され、室100へ搬入されてくる基板Sを支持するもので、該基板を加熱するヒータ201を有している。ホルダ20は室100とともに接地されている。
【0100】
電源40は、例えば、周波数13.56MHzの高周波電力を供給できる、出力可変電源である。なお、電源周波数は13.56MHzに限定される必要はない。
電極301、マッチングボックス401及び電源40は終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成するための高周波電源印加装置を構成している。
【0101】
排気装置70は排気ポンプの他、排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
終端処理用ガス供給装置9は、本例では終端処理用ガスとして、酸素ガス又は窒素ガスをノズルNから室100内へ供給できる。ガス供給装置9は、ガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
【0102】
終端処理室100は、基板搬送室Rを介してシリコンドット形成室1に連設されている。基板搬送室Rと室1との間には開閉可能のゲートバルブV1が、基板搬送室Rと室100との間には開閉可能のゲートバルブV2が、それぞれ設けられており、基板搬送室R内には基板搬送ロボットRobが設置されている。
【0103】
〔2〕装置Aによる終端処理されたシリコンドットの形成
次に、装置Aにより、基板S上へ、酸素又は窒素で終端処理されたシリコンドットを形成する例について説明する。
(2−1)シリコンドット形成工程の実施
(2-1-1) シリコンドット形成工程の1実施例(水素ガスのみ用いる例)
シリコンドット形成は、シリコンドット形成室1内の圧力を0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持して行う。シリコンドット形成室内圧力は、図示を省略しているが、例えば該室に接続した圧力センサで知ることができる。
【0104】
先ず、シリコンドット形成に先立って、室1から排気装置7にて排気を開始する。排気装置7におけるコンダクタンスバルブ(図示省略)は室1内の前記シリコンドット形成時の圧力0.1Pa〜10.0Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置7の運転により室1内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、ガス供給装置5から室1内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源4から電極3に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0105】
かくして発生したガスプラズマから、発光分光計測装置8において発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)に向かうように、高周波電力の大きさ、水素ガス導入量、室1内圧力等を決定する。
【0106】
高周波電力の大きさについては、さらに、電極3に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W:ワット)/室1の容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する。
このようにしてシリコンドット形成条件を決定したあとは、その条件に従ってシリコンドットの形成を行う。
【0107】
シリコンドット形成においては、室1内の基板ホルダ2にシリコンドット形成対象基体(本例では基板)Sを設置し、該基板をヒータ21にて500℃以下の温度、例えば400℃に加熱する。また、排気装置7の運転にて室1内をシリコンドット形成のための圧力に維持しつつ室1内にガス供給装置5から水素ガスを導入し、電源4から放電電極3に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0108】
かくして、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における前記基準発光強度比或いは実質上該基準発光強度比のプラズマを発生させる。そして、該プラズマにて室1の天井壁内面等におけるシリコンスパッタターゲット30をケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、それにより基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成する。
【0109】
(2-1-2) シリコンドット形成工程の他の実施例(水素ガス及びシラン系ガスを用いる例) 以上説明したシリコンドットの形成では、ガス供給装置6におけるシラン系ガスを用いず、水素ガスのみを用いたが、シリコンドット形成室1内にガス供給装置5から水素ガスを導入するとともにガス供給装置6からシラン系ガスも導入してシリコンドットを形成してもよい。また、シラン系ガスと水素ガスを採用する場合、シリコンスパッタターゲット30を省略してもシリコンドットを形成することができる。
【0110】
シラン系ガスを採用する場合においても、シリコンスパッタターゲット30を用いる、用いないに拘らず、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下のプラズマを発生させる。シリコンスパッタターゲット30を採用しないときでも、該プラズマのもとで基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成できる。
【0111】
シリコンスパッタターゲット30を採用する場合には、プラズマによる室1の天井壁内面等におけるシリコンスパッタターゲット30のケミカルスパッタリングを併用して基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成できる。
【0112】
いずれにしても、シリコンドット形成を行うために、シリコンドット形成室1内の圧力は0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持するようにし、発光分光計測装置8により発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)或いは実質上該基準発光強度比となる高周波電力の大きさ、水素ガス及びシラン系ガスそれぞれの導入量、室1内圧力等を決定する。
【0113】
高周波電力の大きさについては、さらに、電極3に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W)/室1の容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定し、このようにして決定したシリコンドット形成条件のもとにシリコンドット形成を行えばよい。
【0114】
シラン系ガスと水素ガスとのシリコンドット形成室1内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものとすればよい。また、例えばシラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/室1の容積(リットル)〕を1/200〜1/30とすればよい。シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccm程度とするとき、適切な水素ガス導入量として150sccm〜200sccmを例示できる。
【0115】
(2−2)終端処理工程の実施
次に、このようにしてシリコンドットを形成した基板を終端処理室100へ搬入して該シリコンドットに酸素終端処理又は窒素終端処理を施す。
このとき、基板Sの室100への搬入は、ゲートバルブV1を開け、ロボットRobでホルダ2上の基板Sを取り出し基板搬送室R内へ引き入れ、ゲートバルブV1を閉じ、引き続きゲートバルブV2を開けて、該基板を室100内のホルダ20に搭載することで行う。その後、ロボット可動部分を基板搬送室R内へ引っ込め、ゲートバルブV2を閉じ、室100において終端処理を実施する。
【0116】
終端処理室100における終端処理においては、基板Sをヒータ201で終端処理温度に適する温度に加熱する。そして、排気装置70にて終端処理室100内から排気を開始し、室100の内圧が目指す終端処理ガス圧より低くなってくると、終端処理用ガス供給装置9から室100内へ、終端処理用ガス(本例では酸素ガス又は窒素ガス)を所定量導入するとともに出力可変電源40から高周波放電電極301に高周波電力を印加し、これにより導入されたガスを容量結合方式でプラズマ化する。
かくして発生する終端処理用プラズマのもとで、基板S上のシリコンドットの表面に酸素終端処理或いは窒素終端処理を施し、終端処理されたシリコンドットを得る。
【0117】
かかる終端処理工程における終端処理圧としては、それとは限定されないが、例えば、0.2Pa〜7.0Pa程度を挙げることができる。
また、終端処理工程における基板の加熱温度は、シリコンドット形成が比較的低温で行えることを意味あらしめるため、また、基板Sの耐熱性を考慮して、室温〜500℃程度の温度範囲から選択する場合を例示できる。
【0118】
〔3〕電極の他の例
以上説明したシリコンドット形成装置Aでは、電極として平板形状の容量結合型電極を採用しているが、シリコンドット形成室1又は(及び)終端処理室100において誘導結合型電極を採用することもできる。誘電結合型電極の場合、それは棒状、コイル状等の各種形状のものを採用できる。採用個数等についても任意である。
【0119】
シリコンドット形成室1で誘導結合型電極を採用する場合においてシリコンスパッタターゲットを採用する場合、該電極が室内に配置される場合であれ、室外に配置される場合であれ、該シリコンスパッタターゲットは室の内壁面の全部又は一部に沿って配置したり、室内に独立して配置したり、それら両方の配置を採用したりできる。
【0120】
また、装置Aでは、シリコンドット形成室1を加熱する手段(バンドヒータ、熱媒を通す加熱ジャケット等)の図示が省略されているが、シリコンスパッタターゲットのスパッタリングを促進させるために、かかる加熱手段にて室1を加熱することでシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱してもよい。
【0121】
〔4〕発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕制御の他の例
また、以上説明したシリコンドット形成工程においては、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)、及び排気装置7による排気量等の制御は、発光分光計測装置8で求められる発光分光強度比を参照しつつマニュアル操作で行われた。
【0122】
しかし、図3に示すように、発光分光計測装置8の演算部83で求められた発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を制御部80に入力してもよい。そして、かかる制御部80として、演算部83から入力された発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が予め定めた基準発光強度比か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、シラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量及び排気装置7による排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0123】
かかる制御部80の具体例として、排気装置7のコンダクタンスバルブを制御することで該装置7による排気量を制御し、それによりシリコンドット形成室1内のガス圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
【0124】
この場合、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)、及び排気装置7による排気量について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量(又は水素ガス供給量及びシラン系ガス供給量)及び排気量を初期値として採用すればよい。
【0125】
かかる初期値決定に際しても、排気装置7による排気量は、シリコンドット形成室1内の圧力が0.1Pa〜10.0Paの範囲に納まるように決定する。
電源4の出力は、電極3に印加する高周波電力の電力密度が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する。
【0126】
さらに、水素ガス及びシラン系ガスの双方をプラズマ形成のためのガスとして採用する場合は、それらガスのシリコンドット形成室1内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。例えば、シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/真空チャンバ容積(リットル)〕を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。
【0127】
そして、電源4の出力、及び水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置7による排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部80に制御させればよい。
【0128】
〔5〕シリコンスパッタターゲットの他の例
以上説明したシリコンドット形成工程においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットをシリコンドット形成室1内に後付け配置した。しかし、次の、外気に曝されないシリコンスパッタターゲットを採用することで、予定されていない不純物混入が一層抑制されたシリコンドットを形成することが可能である。
【0129】
すなわち、前記の装置Aにおいて、当初は、シリコンドット形成室1内に、基体Sを未だ配置せずに、水素ガスとシラン系ガスを導入し、これらガスに電源4から高周波電力を印加してプラズマ化し、該プラズマによりシリコンドット形成室1の内壁にシリコン膜を形成する。かかるシリコン膜形成においては、室壁を外部ヒータで加熱することが望ましい。その後、該室1内に基体Sを配置し、該内壁上のシリコン膜をスパッタターゲットとして、該ターゲットを、既述のように、水素ガス由来のプラズマでケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドットを形成する。
【0130】
かかる、シリコンスパッタターゲットとして用いるシリコン膜の形成においても、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0131】
また、別法として、図4に示すシリコンドット形成装置の他の例Bを採用し、次の方法を採用してもよい。
すなわち、図4に示すように、シリコンスパッタターゲット形成のためのターゲット形成室10を前記のシリコンドット形成室1にゲートバルブVを介して外部から気密に遮断された状態に連設する。
【0132】
室10のホルダ2’にターゲット基板Tを配置し、排気装置7’で該室内から排気して該室の内圧を所定の成膜圧に維持しつつ該室内に水素ガス供給装置5’から水素ガスを、シラン系ガス供給装置6’からシラン系ガスをそれぞれ導入する。さらに、それらガスに出力可変電源4’からマッチングボックス41’を介してチャンバ内電極3’に高周波電力を印加することでプラズマを形成する。該プラズマにより、ヒータ201’で加熱したターゲット基板T上にシリコン膜を形成する。
【0133】
その後、ゲートバルブVを開け、シリコン膜が形成されたターゲット基板Tを搬送装置CVでシリコンドット形成室1内へ搬入し、室1内の台SP上にセットする。次いで、搬送装置CVを後退させ、ゲートバルブVを気密に閉じ、室1内で、該シリコン膜が形成されたターゲット基板Tをシリコンスパッタターゲットとして、既述のいずれかの方法で、室1内に配置された基板S上にシリコンドットを形成する。
【0134】
図5は、かかるターゲット基板Tと、電極3(或いは3’)、室10内のヒータ2O1’、室1内の台SP、基板S等との位置関係を示している。それには限定されないが、ここでのターゲット基板Tは、図5に示すように、大面積のシリコンスパッタタゲットを得るために、門形に屈曲させた基板である。搬送装置CVは、該基板Tを電極等に衝突させることなく搬送できる。搬送装置CVは、基板SPをシリコンドット形成室1内へ搬入し、セットできるものであればよく、例えば、基板Tを保持して伸縮できるアームを有する装置を採用できる。
【0135】
室10でのターゲット基板上へのシリコン膜形成においては、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0136】
この場合、シリコンドット形成室10における、電源4’の出力、水素ガス供給装置5’からの水素ガス供給量、シラン系ガス供給装置6’からのシラン系ガスの供給量、及び排気装置7’による排気量は、既述の、装置Aにおいて、水素ガスとシラン系ガスとを用いて基板S上にシリコンドットを形成する場合と同様に制御すればよい。手動制御してもよいし、制御部を用いて自動的に制御してもよい。
【0137】
なお、搬送装置に関して言えば、シリコンドット形成室10とシリコンドット形成室1との間に、基板搬送装置を設けた基板搬送室を配置し、該搬送装置を設けた基板搬送室をゲートバルブを介して室10と室1にそれぞれ連設してもよい。
室10においても、高周波放電電極として高周波放電アンテナを用いて誘導結合型プラズマを発生させてもよい。
図4に示す装置Bでは終端処理室100をシリコンドット形成室1から独立させているが、例えば装置Aの場合のように、シリコンドット形成室1に連設してもよい。
【0138】
〔6〕実験
次に、終端処理されたシリコンドット形成の実験例について説明する。
(1)実験例1(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(1-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
シリコンスパッタターゲットは採用せずに、水素ガスとモノシランガスを用いて基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりとした。
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウエハ
室容量:180リットル
高周波電源:60MHz、6kW
電力密度:33W/L
基板温度:400℃
室内内圧:0.6Pa
シラン導入量:3sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:0.5
【0139】
(1-2) 終端処理室における終端処理工程
基板温度:400℃
酸素ガス導入量:100sccm
高周波電源:13.56MHz、1kW
終端処理圧:0.6Pa
処理時間 :5分
【0140】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、7nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約1.4×1012個/cm2 であった。図7に、基板S上にシリコンドットSiDが形成されたシリコンドット構造体例をを模式的に示す。
【0141】
(2)実験例2(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(2-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
水素ガスとモノシランガスを用いて、さらにシリコンスパッタターゲットも併用して、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は次のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:アモルファスシリコンスパッタターゲット
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
室容量:180リットル
高周波電源:60MHz、4kW
電力密度:22W/L
基板温度:400℃
室内圧:0.6Pa
シラン導入量:1sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:0.3
【0142】
(2-2) 終端処理室における終端処理工程
基板温度:400℃
酸素ガス導入量:100sccm
高周波電源:13.56MHz、1kW
終端処理圧:0.6Pa
処理時間 :1分
【0143】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約1.0×1012個/cm2 であった。
【0144】
(3)実験例3(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(3-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
シランガスは採用しないで、水素ガスとシリコンスパッタターゲットを用いて、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
室容量:180リットル
高周波電源:60MHz、4kW
電力密度:22W/L
基板温度:400℃
室内圧:0.6Pa
水素導入量:100sccm
Si(288nm) /Hβ:0.2
【0145】
(3-2) 終端処理室における終端処理工程
基板温度:400℃
酸素ガス導入量:100sccm
高周波電源:13.56MHz、2kW
終端処理圧:0.6Pa
処理時間 :10分
【0146】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、5nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約2.0×1012個/cm2 であった。
【0147】
(4)実験例4(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(4-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
先ず、シリコンドット形成室1の内壁にシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。シリコン膜形成条件及びドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコン膜形成条件
室内壁面積:約3m2
室容量:440リットル
高周波電源:13.56MHz、10kW
電力密度:23W/L
室内壁温度:80℃ (室1の内部に設置のヒータでチ室を加熱)
室内圧:0.67Pa
モノシラン導入量:100sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:2.0
ドット形成条件
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
室容量:440リットル
高周波電源:13.56MHz、5kW
電力密度:11W/L
室内壁温度:80℃ (室内部に設置のヒータで室を加熱)
基板温度:430℃
室内圧:0.67Pa
水素導入量:150sccm (モノシランガスは使用せず)
Si(288nm) /Hβ:1.5
【0148】
(4-2) 終端処理室における終端処理工程
基板温度:400℃
酸素ガス導入量:100sccm
高周波電源:13.56MHz、2kW
終端処理圧:0.6Pa
処理時間 :5分
【0149】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。小さいドットでは5nm〜6nm、大きいドットでは9nm〜11nmであった。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、8nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.3×1011個/cm2 であった。
【0150】
(5)実験例5(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(5-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
先ず、シリコンドット形成室1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、室内圧力を1.34Paとし、Si(288nm) /Hβを2.5とした以外は実験例4と同じとした。
(5-2) 終端処理室における終端処理工程
実験例4と同様に終端処理した。
【0151】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.0×1011個/cm2 であった。
【0152】
(6)実験例6(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(6-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
先ず、シリコンドット形成室1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を2.68Paとし、Si(288nm) /Hβを4.6とした以外は実験例4と同じとした。
(6-2) 終端処理室における終端処理工程
実験例4と同様に終端処理した。
【0153】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、13nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.5×1011個/cm2 であった。
【0154】
(7)実験例7(酸素終端処理されたシリコンドットの形成)
図1に示すタイプのシリコンドット形成装置を用いた。
(7-1) シリコンドット形成室におけるシリコンドット形成工程
先ず、シリコンドット形成室1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、室内圧力を6.70Paとし、Si(288nm) /Hβを8.2とした以外は実験例4と同じとした。
(7-2) 終端処理室における終端処理工程
実験例4と同様に終端処理した。
【0155】
かくして得た終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、16nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.1×1011個/cm2 であった。
【0156】
以上のほか、図1の装置を用い、実験例1〜実験例4の場合と同様にシリコンドットを形成し、終端処理についても、酸素ガスに代えて窒素ガスを用いた他は、実験例1〜実験例4の場合と同様に行い、かくして得られた終端処理シリコンドット形成基板の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、実験例1〜実験例4の場合と、それぞれ同様の観測結果を得ることができた。
また、以上の実験により得られた、終端処理されたシリコンドットについて、フォトルミネッセンス発光を測定したところ、高輝度を確認できた。
【0157】
〔7〕シリコンドット形成装置のさらに他の例
次に、シリコンドット形成室において終端処理工程を実施できるシリコンドット形成装置の例について、図6を参照して説明しておく。
図6に示すシリコンドット形成装置Cは、図1に示す装置Aにおけるシリコンドット形成室1を終端処理室として利用するものである。この装置Cでは、ホルダ2は、絶縁部材11を介して室1に設置されているとともに、切り換えスイッチSWに接続されており、スイッチSWの一方の端子は接地されており、他方の端子は、マッチングボックス401を介して高周波電源40に接続されている。また、室1内へ、終端処理用ガス供給装置9からノズルNにて終端処理用ガスを供給できる。
図6の装置Cにおいて図1の装置Aにおける部品等と実質上同じ部品等には図1の装置と同じ参照符号を付してある。
【0158】
装置Cによると、終端処理前のシリコンドット形成工程では、ホルダ2をスイッチSWの操作により接地状態におき、装置Aの場合と同様にして基板S上にシリコンドットを形成できる。終端処理工程では、ホルダ2をスイッチSWの操作により電源40に接続し、終端処理用ガス供給装置9と該電源40を用いて終端処理用プラズマを形成し、基板上のシリコンドットに終端処理を施せる。
【0159】
なお、図6の装置Cにおける終端処理工程においては、シリコンスパッタターゲット30がスパッタリングされないように、或いは、されても無視できる程度に抑制されるように、高周波電力や室内圧を調整することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、単一電子デバイス等の電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる微小粒径のシリコンドットの形成に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明に係るシリコンドット形成方法の実施に用いる装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】プラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図である。
【図3】排気装置による排気量(シリコンドット形成室内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図4】シリコンドット形成装置の他の例を示す図である。
【図5】シリコン膜を形成するターゲット基板と電極等との位置関係を示す図である。
【図6】シリコンドット形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図7】実験例で得られたシリコンドット構造体例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0162】
A シリコンドット形成装置
S シリコンドット形成対象基板
1 シリコンドット形成室
2 基板ホルダ
21 ヒータ
3 放電電極
31 シリコン膜
30 シリコンスパッタターゲット
4 放電用高周波電源
41 マッチングボックス
5 水素ガス供給装置
6 シラン系ガス供給装置
7 排気装置
8 プラズマ発光分光計測装置
81、82 分光器
83 演算部
80 制御部
100 終端処理室
20 基板ホルダ
201 ヒータ
301 放電電極
40 高周波電源
401 マッチングボックス
70 排気装置
9 終端処理用ガス供給装置
R 基板搬送室
Rob 基板搬送ロボット
V1、V2 ゲートバルブ
B シリコンドット形成装置
10 ターゲット形成室
V ゲートバルブ
2’ 基板ホルダ
201’ヒータ
3’ 電極
4’ 電源
41’ マッチングボックス
5’ 水素ガス供給装置
6’ シラン系ガス供給装置
7’ 排気装置
T ターゲット基板
SP 室1内の台
CV 搬送装置
C シリコンドット形成装置
11 絶縁部材
SW 切り換えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
シリコンドット形成対象基体を前記シリコンドット形成室内に配置し、該室内にスパッタリング用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該室内にスパッタリング用プラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして前記基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と
終端処理室内に前記シリコンドット形成工程によりシリコンドットが形成された基体を配置し、該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで該基体上のシリコンドットを終端処理する終端処理工程と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成方法。
【請求項2】
前記スパッタリング用プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下のプラズマである請求項1記載のシリコンドット形成方法。
【請求項3】
シリコンドット形成対象基体を配置したシリコンドット形成室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該室内に、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるシリコンドット形成用プラズマを発生させ、該プラズマのもとで前記基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と、
終端処理室内に前記シリコンドット形成工程によりシリコンドットが形成された基体を配置し、該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで該基体上のシリコンドットを終端処理する終端処理工程と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成方法。
【請求項4】
前記シリコンドット形成工程に先立って前記シリコンドット形成室内にシリコンスパッタターゲットを設け、該シリコンドット形成工程では、前記プラズマによる該ターゲットのケミカルスパッタリングを併用する請求項3記載のシリコンドット形成方法。
【請求項5】
前記シリコンドット形成室は前記終端処理室を兼ねている請求項1から4のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項6】
前記終端処理室は、前記シリコンドット形成室に連設された室である請求項1から4のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項7】
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、該シリコンドット形成室の内壁にシリコン膜を形成するためのシリコン膜形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコン膜形成後に、該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、該シリコン膜をスパッタターゲットとしてケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第3高周波電力印加装置と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成装置。
【請求項8】
スパッタターゲット基板を支持するホルダを有するターゲット形成室と、
該ターゲット形成室内に水素ガスを供給する第1水素ガス供給装置と、
該ターゲット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該ターゲット形成室内から排気する第1排気装置と、
該ターゲット形成室内に前記第1水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るためのシリコン膜形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
前記ターゲット形成室に外部から気密に遮断される状態に連設され、シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
シリコンスパッタターゲットを前記ターゲット形成室から該シリンドット形成室内へ外気に触れさせることなく搬入配置する搬送装置と
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する第2水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第2排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記第2水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、前記ターゲット形成室から搬入される前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のスパッタリング用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第3排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第3高周波電力印加装置と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成装置。
【請求項9】
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に配置されるシリコンスパッタターゲットと、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのスパッタリング用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のスパッタリング用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成装置。
【請求項10】
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有するシリコンドット形成室と、
該シリコンドット形成室内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該シリコンドット形成室内から排気する第1排気装置と、
該シリコンドット形成室内に前記水素ガス供給装置及びシラン系ガス供給装置から供給されるガスに高周波電力を印加して、シリコンドット形成用プラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコンドット形成室内のシリコンドット形成用プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコンドットが形成された基体を支持するホルダを有する終端処理室と、
該終端処理室内に酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを供給する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内から排気する第2排気装置と、
該終端処理室内に前記終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを形成する第2高周波電力印加装置と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成装置。
【請求項11】
前記シリコンドット形成室は前記終端処理室を兼ねている請求項7から10のいずれかに記載のシリコンドット形成装置。
【請求項12】
前記終端処理室は前記シリコンドット形成室に連設されている請求項7から10のいずれかに記載のシリコンドット形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−88311(P2007−88311A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277031(P2005−277031)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】