説明

シリコンドット形成方法及びシリコンドット形成装置

【課題】低温で基板上に直接粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】チャンバ10内でシラン系ガス及び水素ガスからプラズマを形成してターゲット基板100上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得、これをチャンバ1へ外気に触れさせることなく搬入配置して、チャンバ1内でスパッタリング用ガスからプラズマを発生させ、該プラズマでターゲットのシリコン膜をケミカルスパッタリングして基体S上にシリコンドットを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる微小サイズのシリコンドット( 所謂シリコンナノ粒子) の形成方法及び形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンナノ粒子の形成方法としては、シリコンを不活性ガス中でエキシマレーザー等を用いて加熱、蒸発させて形成する物理的手法が知られており、また、ガス中蒸発法も知られている(神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁参照) 。後者は、レーザーに代えて高周波誘導加熱やアーク放電によりシリコンを加熱蒸発させる手法である。
【0003】
また、CVDチャンバ内に材料ガスを導入し、加熱した基板上にシリコンナノ粒子を形成するCVD法も知られている(特開2004−179658号公報参照)。
この方法では、シリコンナノ粒子成長のための核を基板上に形成する工程を経て、該核からシリコンナノ粒子を成長させる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−179658号公報
【非特許文献1】神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁
【0005】
しかしながら、シリコンをレーザー照射により加熱蒸発させる手法は、均一にエネルギー密度を制御してレーザーをシリコンに照射することが困難であり、シリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
ガス中蒸発法においても、シリコンの不均一な加熱が起こり、そのためにシリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
【0006】
また、前記のCVD法においては、前記核を基板上に形成するにあたり、基板を550℃程度以上に加熱しなければならず、耐熱温度の低い基板を採用できず、基板材料の選択可能範囲がそれだけ制限される。
【0007】
そこで本発明は、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成する方法を提供することを課題とする。
また本発明は、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できるシリコンドット形成装置を提供することを課題とする。
【発明の開示】
【0008】
本発明者はかかる課題を解決するため研究を重ね、次のことを知見するに至った。
すなわち、スパッタリング用ガス(例えば水素ガス)をプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
特に、シリコンスパッタターゲットをプラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすれば、500℃以下の低温においても、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0009】
かかるプラズマの形成は、プラズマ形成領域にスパッタリング用ガス(例えば水素ガス)を導入し、これに高周波電力を印加することで行える。
また、シラン系ガスを水素ガスで希釈したガスに高周波電力を印加して該ガスをプラズマ化し、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマとすれば、該プラズマのもとでも、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。この場合、かかるプラズマによるシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用することも可能である。
【0010】
いずれにしても、本発明において、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、各シリコンドットの粒径がいずれも同じ又は略同じである場合のほか、シリコンドットの粒径にバラツキがあったとしても、シリコンドットの粒径が、実用上は、揃っているとみることができる場合も指す。例えば、シリコンドットの粒径が、所定の範囲(例えば20nm以下の範囲或いは10nm以下の範囲)内に揃っている、或いは概ね揃っているとみても、実用上差し支えない場合や、シリコンドットの粒径が例えば5nm〜6nmの範囲と8nm〜11nmの範囲に分布しているが、全体としては、シリコンドットの粒径が所定の範囲(例えば10nm以下の範囲)内に概ね揃っているとみることができ、実用上差し支えない場合等も含まれる。要するに、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、実用上の観点から、全体として、実質上揃っている、と言える場合を指す。
【0011】
<シリコンドット形成方法について>
本発明はかかる知見に基づき次の第2のシリコンドット形成方法を提供する。また、参考までに言えば、かかる知見に基づき次の第1、第3及び第4のシリコンドット形成方法も提供できる。
【0012】
(1)第1のシリコンドット形成方法(第1方法)
真空チャンバ内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマにより該真空チャンバの内壁にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
内壁にシリコン膜が形成された前記真空チャンバ内にシリコンドット形成対象基体を配置し、該真空チャンバ内にスパッタリング用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコン膜をスパッタターゲットとするケミカルスパッタリングを行って該基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と
を含むシリコンドット形成方法。
【0013】
(2)第2のシリコンドット形成方法(第2方法、本発明に係る方法)
第1の真空チャンバ内にターゲット基板を配置し、該第1真空チャンバ内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該第1真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマにより該ターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るスパッタターゲット形成工程と、
前記第1の真空チャンバから第2の真空チャンバ内に、前記スパッタターゲット形成工程で得たシリコンスパッタターゲットを外気に触れさせることなく搬入配置するとともに、該第2真空チャンバ内にシリコンドット形成対象基体を配置し、該第2真空チャンバ内にスパッタリング用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該第2真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコンスパッタターゲットのシリコン膜をケミカルスパッタリングして該基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と
を含むシリコンドット形成方法。
【0014】
第1方法によると、真空チャンバ内壁にスパッタターゲットとなるシリコン膜を形成できるので、市販のシリコンスパッタターゲットを真空チャンバに後付け配置する場合よりも大面積のターゲットを得ることができ、それだけ基体の広い面積にわたって均一にシリコンドットを形成することが可能である。
【0015】
第1方法及び第2方法によると、外気に触れないシリコンスパッタターゲットを採用してシリコンドットを形成でき、それだけ、予定されない不純物の混入が抑制されたシリコンドットを形成でき、且つ、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)シリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0016】
シリコン膜スパッタリング用ガスとしては、代表例として、水素ガスを挙げることができる。この他、例えば、水素ガスと希ガス〔ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)、クリプトンガス(Kr)及びキセノンガス(Xe)から選ばれた少なくとも1種のガス)〕との混合ガスも採用できる。
【0017】
すなわち、前記第1、第2のいずれのシリコンドット形成方法においても、前記シリコンドット形成工程では、前記シリコンドット形成対象基体を配置した真空チャンバ内に前記スパッタリング用ガスとして水素ガスを導入し、該水素ガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコン膜をケミカルスパッタリングし、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下として)前記基体上に直接、粒径が20nm以下、或いは粒径10nm以下のシリコンドットを形成することができる。
【0018】
かかる第1、第2の方法では、スパッタターゲットとなるシリコン膜の形成のための前記シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマ形成においても、また、該シリコン膜をスパッタリングするための水素ガス由来のプラズマ形成においても、それらプラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。その理由は、次の第3、第4の方法に関連して説明する。
【0019】
(3)第3のシリコンドット形成方法(第3方法)
シリコンスパッタターゲットとシリコンドット形成対象基体を配置した真空チャンバ内に水素ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内に、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下として)前記基体上に直接、粒径が20nm以下のシリコンドットを形成するシリコンドット形成方法。
【0020】
(4)第4のシリコンドット形成方法(第4方法)
シリコンドット形成対象基体を配置した真空チャンバ内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内に、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマを発生させ、該プラズマにより、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下として)前記基体上に直接、粒径が20nm以下のシリコンドットを形成するシリコンドット形成方法。
【0021】
かかる第4方法においては、真空チャンバ内にシリコンスパッタターゲットを配置し、該ターゲットのプラズマによるケミカルスパッタリングを併用してもよい。
前記第1から第4の方法のいずれにおいても、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に設定する場合、それはプラズマ中の水素原子ラジカルが豊富であることを示す。
【0022】
第1方法における、スパッタターゲットとなる真空チャンバ内壁上のシリコン膜の形成のためのシラン系ガス及び水素ガスからのプラズマ形成において、また、第2方法における、スパッタターゲット基板上へのシリコン膜の形成のためのシラン系ガス及び水素ガスからのプラズマ形成において、該プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定すると、真空チャンバ内壁に、或いはスパッタターゲット基板に、500℃以下の低温で、シリコンドット形成対象基体へのシリンコンドット形成に適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)が円滑に形成される。
【0023】
また、前記第1及び第2の方法並びに前記第3方法のいずれにおいても、シリコンスパッタターゲットをスパッタリングするためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0024】
また、前記第4方法においても、シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0025】
いずれの方法においても、かかる発光強度比が10.0より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。よって発光強度比は10.0以下がよい。粒径の小さいシリコンドットを形成するうえで、発光強度比は3.0以下がより好ましい。0.5以下としてもよい。
しかし、発光強度比の値が余り小さすぎると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、ドットの成長よりエッチング効果の方が大きくなり、結晶粒が成長しなくなる。発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕は、他の種々の条件等にもよるが、概ね0.1以上とすればよい。
【0026】
発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の値は、例えば各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の制御は、導入ガスに印加する高周波電力(例えば周波数や電力の大きさ)、シリコンドット形成時の真空チャンバ内ガス圧、真空チャンバ内へ導入するガス(例えば水素ガス、或いは水素ガス及びシラン系ガス)の流量等の制御により行える。
【0027】
前記第1、第2のシリコンドット形成方法(但し、いずれもスパッタリング用ガスとして水素ガスを採用する場合)並びに第3のシリコンドット形成方法によると、シリコンスパッタターゲットを発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすることで基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットが成長する。
【0028】
前記第4のシリコンドット形成方法によると、シラン系ガスと水素ガスが励起分解されて化学反応が促進され、基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットが成長する。第4の方法においてシリコンスパッタターゲットのプラズマによるケミカルスパッタリングを併用すると、それによっても基体上の結晶核形成が促進される。
【0029】
このように結晶核形成が促進され、シリコンドットが成長するため、予めシリコンドット形成対象基体上にダングリングボンドやステップなどの核となり得るものが存在しなくても、シリコンドットが成長するための核を比較的容易に高密度に形成することができる。また、水素ラジカルや水素イオンがシリコンラジカルやシリコンイオンより豊富であり、核密度の過剰に大きい部分については、励起された水素原子や水素分子とシリコン原子との化学反応によりシリコンの脱離が進み、これによりシリコンドットの核密度は基体上で高密度となりつつも均一化される。
【0030】
またプラズマにより分解励起されたシリコン原子やシリコンラジカルは核に吸着し、化学反応によりシリコンドットへと成長するが、この成長の際も水素ラジカルが多いことから吸着脱離の化学反応が促進され、核は結晶方位と粒径のよく揃ったシリコンドットへと成長する。以上より、基体上に結晶方位と粒径サイズの揃ったシリコンドットが高密度且つ均一分布で形成される。
【0031】
本発明はシリコンドット形成対象基体上に微小粒径のシリコンドット、例えば、粒径が20nm以下、より好ましくは粒径が10nm以下のシリコンドットを形成しようとするものであるが、実際には極端に小さい粒径のシリコンドットを形成することは困難であり、それには限定されないが粒径1nm程度以上のものになるであろう。例えば3nm〜15nm程度のもの、より好ましくは3nm〜10nm程度のものを例示できる。
【0032】
本発明のシリコンドット形成方法によると、500℃以下の低温下で(換言すれば、基体温度を500℃以下として)、条件次第では400℃以下の低温下で(換言すれば条件次第では、基体温度を400℃以下として)、基体上にシリコンドットを形成できるので、基体材料の選択範囲がそれだけ広くなる。例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板へのシリコンドット形成が可能である。
【0033】
本発明は、低温下(代表的には500℃以下)でシリコンドットを形成しようとするものであるが、シリコンドット形成対象基体温度が低すぎると、シリコンの結晶化が困難となるので、他の諸条件にもよるが、概ね200℃以上の温度で(換言すれば、基体温度を概ね200℃以上として)シリコンドットを形成することが望ましい。
【0034】
前記第4のシリコンドット形成方法のように、プラズマ形成用ガスとしてシラン系ガスと水素ガスとを併用する場合、前記真空チャンバ内へのガス導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)としては、1/200〜1/30程度を例示できる。1/200より小さくなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、結晶粒が成長しなくなる。1/30より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0035】
また、例えばシラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccm程度とするとき、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/真空チャンバ容積(リットル)〕は1/200〜1/30程度が好ましい。この場合も、1/200より小さくなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、結晶粒が成長しなくなる。1/30より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
前記第1から第4のいずれのシリコンドット形成方法においても、プラズマ形成時の真空チャンバ内圧力としては、0.1Pa〜10.0Pa程度を例示できる。
【0036】
0.1Paより低くなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに低くなってくると、結晶粒が成長しなくなる。10.0Paより高くなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0037】
前記第3のシリコンドット形成方法のように、また、第4のシリコンドット形成方法においてシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する場合のように、シリコンスパッタターゲットを採用する場合、該シリコンスパッタターゲットとして、スパッタターゲット形成用真空チャンバ内にターゲット基板を配置し、該真空チャンバ内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマにより該ターゲット基板上にシリコン膜を形成して得たシリコンスパッタターゲットを採用し、該シリコンスパッタタターゲットを該スパッタターゲット形成用真空チャンバから前記シリコンドット形成対象基体を配置する真空チャンバ内に、外気に触れさせることなく搬入配置して用いることも可能である。
【0038】
また、前記第3のシリコンドット形成方法のように、また、第4のシリコンドット形成方法においてシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する場合のように、シリコンスパッタターゲットを採用する場合、該シリコンスパッタターゲットは、シリコンを主体とするターゲットであり、例えば単結晶シリコンからなるもの、多結晶シリコンからなるもの、微結晶シリコンからなるもの、アモルファスシリコンからなるもの、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0039】
また、シリコンスパッタターゲットは、不純物が含まれていないもの、含まれていてもその含有量ができるだけ少ないもの、適度量の不純物含有により所定の比抵抗を示すものなど、形成するシリコンドットの用途に応じて適宜選択できる。
不純物が含まれていないシリコンスパッタタゲット及び不純物が含まれていてもその含有量ができるだけ少ないシリコンスパッタタゲットの例として、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲットを挙げることができる。
【0040】
所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲットとして、比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲットを例示できる。
前記第2、第3のシリコンドット形成方法や前記第4のシリコンドット形成方法においてシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する場合において、シリコンスパッタリングターゲットをシリコンドット形成用の真空チャンバ内に後付け配置する場合、該ターゲットの真空チャンバ内における配置としては、これがプラズマによりケミカルスパッタリングされる配置であればよいが、例えば、真空チャンバ内壁面の全部又は一部に沿って配置する場合を挙げることができる。チャンバ内に独立して配置してもよい。チャンバ内壁に沿って配置されるものと、独立的に配置されるものを併用してもよい。
【0041】
真空チャンバの内壁にシリコン膜を形成してこれをシリコンスパッタターゲットとしたり、シリコンスパッタターゲットを真空チャンバ内壁面に沿って配置すると、真空チャンバを加熱することでシリコンスパッタターゲットを加熱することができ、ターゲットを加熱すると、ターゲットが室温である場合よりもスパッタされやすくなり、それだけ高密度にシリコンドットを形成し易くなる。真空チャンバを例えばバンドヒータ、加熱ジャケット等で加熱してシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱する例を挙げることができる。加熱温度の上限については、経済的観点等から概ね300℃程度を例示できる。チャンバにオーリング等を使用している場合はそれらの耐熱性に応じて300℃よりも低い温度にしなければならないこともある。
【0042】
以上説明したいずれのシリコンドット形成方法においても、真空チャンバ内へ導入されるガスへの高周波電力の印加は、電極を用いて行うが、誘導結合型電極、容量結合型電極のいずれも採用することができる。誘導結合型電極を採用するとき、それは真空チャンバ内に配置することも、チャンバ外に配置することもできる。
真空チャンバ内に配置する電極については、シリコンを含む電気絶縁性膜、アルミニウムを含む電気絶縁性膜のような電気絶縁性膜(例えばシリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、アルミナ膜等)で被覆して、高密度プラズマの維持、電極表面のスパッタリングによるシリコンドットへの不純物の混入抑制等を図ってもよい。
【0043】
容量結合型電極を採用する場合には、基体へのシリコンドット形成を妨げないように、該電極を基体表面に対し垂直に配置すること(さらに言えば、基体のシリコンドット形成対象面を含む面に対して垂直姿勢に配置すること)が推奨される。
いずれにしてもプラズマ形成のための高周波電力の周波数としては、比較的安価に済む13MHz程度から100MHz程度の範囲のものを例示できる。100MHzより高周波数になってくると、電源コストが高くなってくるし、高周波電力印加時のマッチングがとり難くなってくる。
【0044】
また、いずれにしても、高周波電力の電力密度〔印加電力(W)/真空チャンバ容積(L:リットル)〕は5W/L〜100W/L程度が好ましい。5W/Lより小さくなってくると、基体上のシリコンがアモルファスシリコンとなってきて、結晶性のあるドットになり難くなってくる。100W/Lより大きくなってくると、シリコンドット形成対象基体表面(例えば、シリコンウエハ上に酸化シリコン膜を形成した基体の該酸化シリコン膜)のダメージが大きくなってくる。上限については50W/L程度でもよい。
【0045】
<シリコンドット構造体>
以上説明したいずれのシリコンドット形成方法でもシリコンドットを含むシリコンドット構造体を提供できる。
<シリコンドット形成装置>
本発明は、また、本発明に係る前記第2のシリコンドット形成方法を実施するための次の第2のシリコンドット形成装置を提供する。また、参考までに、前記第1、第3及び第4のシリコンドット形成方法を実施するための次の第1、第3及び第4のシリコンドット形成装置も挙げることができる。
【0046】
(1)第1のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有する真空チャンバと、
該真空チャンバ内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
該真空チャンバ内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該真空チャンバ内から排気する排気装置と、
該真空チャンバ内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、該真空チャンバの内壁にシリコン膜を形成するためのプラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
該シリコン膜形成後に、該真空チャンバ内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、該シリコン膜をスパッタターゲットとしてケミカルスパッタリングするためのプラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該真空チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置とを含むシリコンドット形成装置。
【0047】
この第1シリコンドット形成装置は前記第1シリコンドット形成方法を実施できるものである。
この第1シリコンドット形成装置は、前記第1及び第2の高周波電力印加装置のうち少なくとも第2高周波電力印加装置によるプラズマの形成において、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記真空チャンバ内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、該第2高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記真空チャンバ内への水素ガス供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
いずれにしても、第1、第2の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0048】
(2)第2のシリコンドット形成装置(本発明に係るシリコンドット形成装置)
スパッタターゲット基板を支持するホルダを有する第1真空チャンバと、
該第1真空チャンバ内に水素ガスを供給する第1水素ガス供給装置と、
該第1真空チャンバ内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該第1真空チャンバ内から排気する第1排気装置と、
該第1真空チャンバ内に前記第1水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット基板上にシリコン膜を形成するためのプラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
前記第1真空チャンバに外部から気密に遮断される状態に連設され、シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有する第2真空チャンバと、
該第2真空チャンバ内に水素ガスを供給する第2水素ガス供給装置と、
該第2真空チャンバ内から排気する第2排気装置と、
該第2真空チャンバ内に前記第2水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット基板上のシリコン膜をケミカルスパッタリングするためのプラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該第2真空チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコン膜が形成された前記スパッタターゲット基板を前記第1真空チャンバから第2真空チャンバへ、外気に触れさせることなく搬入配置する搬送装置と
を備えているシリコンドット形成装置。
【0049】
この第2シリコンドット形成装置は前記第2シリコンドット形成方法を実施できる装置である。
この第2シリコンドット形成装置は、第2高周波電力印加装置によるプラズマの形成において、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2真空チャンバ内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、該第2高周波電力印加装置の電源出力、前記第2水素ガス供給装置から第2真空チャンバ内への水素ガス供給量及び前記第2排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0050】
いずれにしても、第1真空チャンバに対しても、該チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を設けてもよい。その場合さらに、この計測装置について前記と同様の制御部を設けてもよい。 第1及び第2の高周波電力印加装置は、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2の水素ガス供給装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
第1、第2の排気装置も、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
前記の搬送装置の配置としては、第1又は第2の真空チャンバに配置する例を挙げることができる。第1、第2の真空チャンバの連設は、ゲートバルブ等を介して直接的に連設してもよいし、前記搬送装置を配置した真空チャンバを間にして間接的に連設することも可能である。
いずれにしても、基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
第2真空チャンバ内へシラン系ガスを供給する第2のシラン系ガス供給装置を設ければ、前記第4シリコンドット形成方法において、シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングを併用する方法を実施できる装置となる。
【0051】
(3)第3のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有する真空チャンバと、該真空チャンバ内に配置されるシリコンスパッタターゲットと、該真空チャンバ内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、該真空チャンバ内から排気する排気装置と、該真空チャンバ内に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して該シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのプラズマを形成する高周波電力印加装置と、該真空チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置とを含むシリコンドット形成装置。
【0052】
この第3シリコンドット形成装置は前記第3シリコンドット形成方法を実施できる装置である。
この第3シリコンドット形成装置は、プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記真空チャンバ内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記真空チャンバ内への水素ガス供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0053】
(4)第4のシリコンドット形成装置
シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有する真空チャンバと、該真空チャンバ内に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、該真空チャンバ内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、該真空チャンバ内から排気する排気装置と、該真空チャンバ内に前記水素ガス供給装置及びシラン系ガス供給装置から供給されるガスに高周波電力を印加して、シリコンドット形成のためのプラズマを形成する高周波電力印加装置と、該真空チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置とを含むシリコンドット形成装置。
【0054】
この第4シリコンドット形成装置は前記第4シリコンドット形成方法を実施できる装置である。
この第4シリコンドット形成装置は、プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記真空チャンバ内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記真空チャンバ内への水素ガス供給量、前記シラン系ガス供給装置から前記真空チャンバ内へのシラン系ガス供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
いずれにしても、真空チャンバ内にシリコンスパッタターゲットを配置してもよい。
【0055】
前記第1から第4のいずれのシリコンドット形成装置においても、前記プラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長484nmでの水素原子の発光強度Hβを検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光強度Si(288nm) と該第2検出部で検出される発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0056】
以上説明したように本発明によると、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成することができる。
また本発明によると、低温でシリコンドット形成対象基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できるシリコンドット形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<シリコンドット形成装置の1例>
第1図はシリコンドット形成に用いるシリコンドット形成装置の1例の概略構成を示している。
【0058】
第1図に示す装置Aは、板状のシリコンドット形成対象基体(すなわち、基板S)にシリコンドットを形成するもので、真空チャンバ1、チャンバ1内に設置された基板ホルダ2、該チャンバ1内の基板ホルダ2の上方領域において左右に設置された一対の放電電極3、各放電電極3にマッチングボックス41を介して接続された放電用高周波電源4、チャンバ1内に水素ガスを供給するためのガス供給装置5、チャンバ1内にシリコンを組成に含む(シリコン原子を有する)シラン系ガスを供給するためのガス供給装置6、チャンバ1内から排気するためにチャンバ1に接続された排気装置7、チャンバ1内に生成されるプラズマ状態を計測するためのプラズマ発光分光計測装置8等を備えている。電源4、マッチングボックス41及び電極3は高周波電力印加装置を構成している。
【0059】
シラン系ガスとしてはモノシラン(SiH4 )の他、ジシラン(Si2 6 )、四フッ化ケイ素(SiF4 )、四塩化ケイ素(SiCl4 )、ジクロルシラン(SiH2 Cl2 )などのガスも使用できる。
【0060】
基板ホルダ2は基板加熱用ヒータ2Hを備えている。
電極3はその内側面に絶縁性膜として機能させるシリコン膜31を予め設けてある。また、チャンバ1の天井壁内面等にはシリコンスパッタターゲット30を予め設けてある。 電極3はいずれも、基板ホルダ2上に設置される後述するシリコンドット形成対象基板S表面(より正確に言えば、基板S表面を含む面)に対し垂直な姿勢で配置されている。
【0061】
シリコンスパッタターゲット30は、形成しようとするシリコンドットの用途等に応じて、例えば、市場で入手可能な次の(1) 〜(3) に記載のシリコンスパッタターゲットから選択したものを採用できる。
(1) 単結晶シリコンからなるターゲット、多結晶シリコンからなるターゲット、微結晶シリコンからなるターゲット、アモルファスシリコンからなるターゲット、これらの2以上の組み合わせからなるターゲットのうちのいずれかのターゲット、
(2) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲット、
(3) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲット(例えば比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲット)。
【0062】
電源4は出力可変の電源であり、周波数60MHzの高周波電力を供給できる。なお、周波数は60MHzに限らず、例えば13、56MHz程度から100MHz程度の範囲のもの、或いはそれ以上のものを採用することもできる。
チャンバ1及び基板ホルダ2はいずれも接地されている。
ガス供給装置5は水素ガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
【0063】
ガス供給装置6はここではモノシラン(SiH4 )ガス等のシラン系ガスを供給できるもので、SiH4 等のガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
排気装置7は排気ポンプの他、排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
発光分光計測装置8は、ガス分解による生成物の発光分光スペクトルを検出することができるもので、その検出結果に基づいて、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めることができる。
【0064】
かかる発光分光計測装置8の具体例として、第2図に示すように、真空チャンバ1内のプラズマ発光から波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する分光器81と、該プラズマ発光から波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβを検出する分光器82と、分光器81、82で検出される発光強度Si(288nm) と発光強度Hβとから両者の比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部83とを含んでいるものを挙げることができる。なお、分光器81、82に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0065】
<装置Aで水素ガスを用いるシリコンドット形成>
次に、以上説明したシリコンドット形成装置Aによる基体(本例では基板)Sへのシコンドット形成例、特にプラズマ形成用ガスとして水素ガスのみを用いる場合の例について説明する。
【0066】
シリコンドット形成は、真空チャンバ1内の圧力を0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持して行う。真空チャンバ内圧力は、図示を省略しているが、例えば該チャンバに接続した圧力センサで知ることができる。
先ず、シリコンドット形成に先立って、チャンバ1から排気装置7にて排気を開始する。排気装置7におけるコンダクタンスバルブ(図示省略)はチャンバ1内の前記シリコンドット形成時の圧力0.1Pa〜10.0Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置7の運転によりチャンバ1内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、ガス供給装置5からチャンバ1内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源4から電極3に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0067】
このようにして発生したガスプラズマから、発光分光計測装置8において発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)に向かうように、高周波電力の大きさ(コスト等を考慮すると例えば1000〜8000ワット程度)、水素ガス導入量、チャンバ1内圧力等を決定する。
【0068】
高周波電力の大きさについては、さらに、電極3に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W:ワット)/真空チャンバ容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する。
このようにしてシリコンドット形成条件を決定したあとは、その条件に従ってシリコンドットの形成を行う。
【0069】
シリコンドット形成においては、チャンバ1内の基板ホルダ2にシリコンドット形成対象基体(本例では基板)Sを設置し、該基板をヒータ2Hにて500℃以下の温度、例えば400℃に加熱する。また、排気装置7の運転にてチャンバ1内をシリコンドット形成のための圧力に維持しつつチャンバ1内にガス供給装置5から水素ガスを導入し、電源4から放電電極3に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0070】
かくして、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における前記基準発光強度比或いは実質上該基準発光強度比のプラズマを発生させる。そして、該プラズマにてチャンバ1の天井壁内面等におけるシリコンスパッタターゲット30をケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、それにより基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成する。
【0071】
<装置Aで水素ガスとシラン系ガスを用いるシリコンドット形成>
以上説明したシリコンドットの形成では、ガス供給装置6におけるシラン系ガスを用いず、水素ガスのみを用いたが、真空チャンバ1内にガス供給装置5から水素ガスを導入するとともにガス供給装置6からシラン系ガスも導入してシリコンドットを形成することもできる。また、シラン系ガスと水素ガスを採用する場合、シリコンスパッタターゲット30を省略してもシリコンドットを形成することができる。
【0072】
シラン系ガスを採用する場合においても、シリコンスパッタターゲット30を用いる、用いないに拘らず、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下のプラズマを発生させる。シリコンスパッタターゲット30を採用しないときでも、該プラズマのもとで基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成できる。
【0073】
シリコンスパッタターゲット30を採用する場合には、プラズマによるチャンバ1の天井壁内面等におけるシリコンスパッタターゲット30のケミカルスパッタリングを併用して基板S表面に結晶性を示す粒径20nm以下のシリコンドットを形成できる。
【0074】
いずれにしても、シリコンドット形成を行うために、真空チャンバ1内の圧力は0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持するようにし、発光分光計測装置8により発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)或いは実質上該基準発光強度比となる高周波電力の大きさ、水素ガス及びシラン系ガスそれぞれの導入量、チャンバ1内圧力等を決定する。
【0075】
高周波電力の大きさについては、さらに、電極3に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W)/真空チャンバ容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定し、このようにして決定したシリコンドット形成条件のもとにシリコンドット形成を行えばよい。
【0076】
シラン系ガスと水素ガスとの真空チャンバ1内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものとすればよい。また、例えばシラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/真空チャンバ容積(リットル)〕を1/200〜1/30とすればよい。シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccm程度とするとき、適切な水素ガス導入量として150sccm〜200sccmを例示できる。
【0077】
以上説明したシリコンドット形成装置Aでは、電極として平板形状の容量結合型電極を採用しているが、誘導結合型電極を採用することもできる。誘電結合型電極の場合、それは棒状、コイル状等の各種形状のものを採用できる。採用個数等についても任意である。 誘導結合型電極を採用する場合においてシリコンスパッタターゲットを採用する場合、該電極がチャンバ内に配置される場合であれ、チャンバ外に配置される場合であれ、該シリコンスパッタターゲットはチャンバ内壁面の全部又は一部に沿って配置したり、チャンバ内に独立して配置したり、それら両方の配置を採用したりできる。
【0078】
また、装置Aでは、真空チャンバ1を加熱する手段(バンドヒータ、熱媒を通す加熱ジャケット等)の図示が省略されているが、シリコンスパッタターゲットのスパッタリングを促進させるために、かかる加熱手段にてチャンバ1を加熱することでシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱してもよい。
【0079】
<真空チャンバ内圧等の他の制御例>
以上説明したシリコンドット形成においては、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)、及び排気装置7による排気量等の制御は、発光分光計測装置8で求められる発光分光強度比を参照しつつマニュアル操作で行われた。
【0080】
しかし、第3図に示すように、発光分光計測装置8の演算部83で求められた発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を制御部80に入力してもよい。そして、かかる制御部80として、演算部83から入力された発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が予め定めた基準発光強度比か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、シラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量及び排気装置7による排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0081】
かかる制御部80の具体例として、排気装置7のコンダクタンスバルブを制御することで該装置7による排気量を制御し、それにより真空チャンバ1内のガス圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
この場合、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)、及び排気装置7による排気量について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量(又は水素ガス供給量及びシラン系ガス供給量)及び排気量を初期値として採用すればよい。
【0082】
かかる初期値決定に際しても、排気装置7による排気量は、真空チャンバ1内の圧力が0.1Pa〜10.0Paの範囲に納まるように決定する。
電源4の出力は、電極3に印加する高周波電力の電力密度が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する。
さらに、水素ガス及びシラン系ガスの双方をプラズマ形成のためのガスとして採用する場合は、それらガスの真空チャンバ1内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。例えば、シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/真空チャンバ容積(リットル)〕を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。
【0083】
そして、電源4の出力、及び水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置7による排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部80に制御させればよい。
【0084】
<シリコンスパッタターゲットの他の例>
以上説明したシリコンドット形成においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットを真空チャンバ1内に後付け配置した。しかし、次の、外気に曝されないシリコンスパッタターゲットを採用することで、予定されていない不純物混入が一層抑制されたシリコンドットを形成することが可能である。
【0085】
すなわち、前記の装置Aにおいて、当初は、真空チャンバ1内に、基体Sを未だ配置せずに、水素ガスとシラン系ガスを導入し、これらガスに電源4から高周波電力を印加してプラズマ化し、該プラズマにより真空チャンバ1の内壁にシリコン膜を形成する。かかるシリコン膜形成においては、チャンバ壁を外部ヒータで加熱することが望ましい。その後、該チャンバ1内に基体Sを配置し、該内壁上のシリコン膜をスパッタターゲットとして、該ターゲットを、既述のように、水素ガス由来のプラズマでケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドットを形成する。
【0086】
かかる、シリコンスパッタターゲットとして用いるシリコン膜の形成においても、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0087】
また、別法として次の方法を採用してもよい。
すなわち、第4図に概略図示するように、シリコンスパッタターゲット形成のための真空チャンバ10を前記の真空チャンバ1にゲートバルブVを介して外部から気密に遮断された状態に連設する。
【0088】
チャンバ10のホルダ2’にターゲット基板100を配置し、排気装置7’で該真空チャンバ内から排気して該真空チャンバ内圧を所定の成膜圧に維持しつつ該チャンバ内に水素ガス供給装置5’から水素ガスを、シラン系ガス供給装置6’からシラン系ガスをそれぞれ導入する。さらに、それらガスに出力可変電源4’からマッチングボックス41’を介してチャンバ内電極3’に高周波電力を印加することでプラズマを形成する。該プラズマにより、ヒータ2H’で加熱したターゲット基板100上にシリコン膜を形成する。
【0089】
その後、ゲートバルブVを開け、シリコン膜が形成されたターゲット基板100を搬送装置Tで真空チャンバ1内へ搬入し、チャンバ1内の台SP上にセットする。次いで、搬送装置Tを後退させ、ゲートバルブVを気密に閉じ、チャンバ1内で、該シリコン膜が形成されたターゲット基板100をシリコンスパッタターゲットとして、既述のいずれかの方法で、チャンバ1内に配置された基板S上にシリコンドットを形成する。
【0090】
第5図は、かかるターゲット基板100と、電極3(或いは3’)、チャンバ10内のヒータ2H’、チャンバ1内の台SP、基板S等との位置関係を示している。それには限定されないが、ここでのターゲット基板100は、第5図に示すように、大面積のシリコンスパッタタゲットを得るために、門形に屈曲させた基板である。搬送装置Tは、該基板100を電極等に衝突させることなく搬送できる。搬送装置Tは、基板100を真空チャンバ1内へ搬入し、セットできるものであればよく、例えば、基板100を保持して伸縮できるアームを有する装置を採用できる。 チャンバ10でのターゲット基板上へのシリコン膜形成においては、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0091】
この場合、真空チャンバ10における、電源4’の出力、水素ガス供給装置5’からの水素ガス供給量、シラン系ガス供給装置6’からのシラン系ガスの供給量、及び排気装置7’による排気量は、既述の、装置Aにおいて、水素ガスとシラン系ガスとを用いて基板S上にシリコンドットを形成する場合と同様に制御すればよい。手動制御してもよいし、制御部を用いて自動的に制御してもよい。
なお、搬送装置に関して言えば、真空チャンバ10と真空チャンバ1との間に、搬送装置を設けた真空チャンバを配置し、該搬送装置を設けたチャンバを、ゲートバルブを介してチャンバ10とチャンバ1にそれぞれ連設してもよい。
【0092】
<実験例>
(1) 実験例1
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、但しシリコンスパッタターゲットは採用せずに、水素ガスとモノシランガスを用いて基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりとした。
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウエハ
チャンバ容量:180リットル
高周波電源:60MHz、6kW
電力密度:33W/L
基板温度:400℃
チャンバ内圧:0.6Pa
シラン導入量:3sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:0.5
【0093】
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、7nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約1.4×1012個/cm2 であった。第6図に、基板S上にシリコンドットSiDが形成されたシリコンドット構造体例を模式的に示す。
【0094】
(2) 実験例2
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、水素ガスとモノシランガスを用いて、さらにシリコンスパッタターゲットも併用して、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は次のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:アモルファスシリコンスパッタターゲット
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウエハ
チャンバ容量:180リットル
高周波電源:60MHz、4kW
電力密度:22W/L
基板温度:400℃
チャンバ内圧:0.6Pa
シラン導入量:1sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:0.3
【0095】
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約1.0×1012個/cm2 であった。
【0096】
(3) 実験例3
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、但しシランガスは採用しないで、水素ガスとシリコンスパッタターゲットを用いて、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウエハ
チャンバ容量:180リットル
高周波電源:60MHz、4kW
電力密度:22W/L
基板温度:400℃
チャンバ内圧:0.6Pa
水素導入量:100sccm
Si(288nm) /Hβ:0.2
【0097】
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、5nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約2.0×1012個/cm2 であった。
【0098】
(4) 実験例4
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、先ず、真空チャンバ1の内壁にシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。シリコン膜形成条件及びドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコン膜形成条件
チャンバ内壁面積:約3m2
チャンバ容量:440リットル
高周波電源:13.56MHz、10kW
電力密度:23W/L
チャンバ内壁温度:80℃ (チャンバ内部に設置のヒータでチャンバを加熱)
チャンバ内圧:0.67Pa
モノシラン導入量:100sccm
水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:2.0
ドット形成条件
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウエハ
チャンバ容量:440リットル
高周波電源:13.56MHz、5kW
電力密度:11W/L
チャンバ内壁温度:80℃ (チャンバ内部に設置のヒータでチャンバを加熱)
基板温度:430℃
チャンバ内圧:0.67Pa
水素導入量:150sccm (モノシランガスは使用しなかった。)
Si(288nm) /Hβ:1.5
【0099】
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。小さいドットでは5nm〜6nm、大きいドットでは9nm〜11nmであった。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、8nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.3×1011個/cm2 であった。
【0100】
(5) 実験例5
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、先ず、真空チャンバ1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を1.34Paとし、Si(288nm) /Hβを2.5とした以外は実験例4と同じとした。
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.0×1011個/cm2 であった。
【0101】
(6) 実験例6
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、先ず、真空チャンバ1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を2.68Paとし、Si(288nm) /Hβを4.6とした以外は実験例4と同じとした。
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、13nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.5×1011個/cm2 であった。
【0102】
(7) 実験例7
第1図に示すタイプのシリコンドット形成装置を用い、先ず、真空チャンバ1の内壁に実験例4におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を6.70Paとし、Si(288nm) /Hβを8.2とした以外は実験例4と同じとした。
ドット形成後、基板断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、16nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.1×1011個/cm2 であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、単一電子デバイス等の電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる微小粒径のシリコンドットの形成に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】第1図は、シリコンドット形成に用いる装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】第2図は、プラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図である。
【図3】第3図は、排気装置による排気量(真空チャンバ内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図4】第4図は、シリコンドット形成の他の例を示す図である。
【図5】第5図は、シリコン膜を形成するターゲット基板と電極等との位置関係を示す図である。
【図6】第6図は、実験例で得られたシリコンドット構造体例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0105】
A シリコンドット形成装置
S 基板
1 真空チャンバ
2 基板ホルダ
2H 基板加熱用ヒータ
3 放電電極
4 放電用高周波電源
41 マッチングボックス
5 ガス供給装置
6 ガス供給装置
7 排気装置
8 プラズマ発光分光計測装置
31 シリコン膜
30 シリコンスパッタターゲット
80 制御部
81、82 分光器
83 演算部
100 ターゲット基板
10 真空チャンバ
V ゲートバルブ
2’ ホルダ
2H’ ヒータ
T 搬送装置
SP 台
3’ 電極
4’電源
5’ 水素ガス供給装置
6’ シラン系ガス供給装置
7’ 排気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の真空チャンバ内にターゲット基板を配置し、該第1真空チャンバ内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスに高周波電力を印加することで該第1真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマにより該ターゲット基板上にシリコン膜を形成してシリコンスパッタターゲットを得るスパッタターゲット形成工程と、
前記第1の真空チャンバから第2の真空チャンバ内に、前記スパッタターゲット形成工程で得たシリコンスパッタターゲットを外気に触れさせることなく搬入配置するとともに、該第2真空チャンバ内にシリコンドット形成対象基体を配置し、該第2真空チャンバ内にスパッタリング用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該第2真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコンスパッタターゲットのシリコン膜をケミカルスパッタリングして該基体上にシリコンドットを形成するシリコンドット形成工程と
を含むことを特徴とするシリコンドット形成方法。
【請求項2】
前記シリコンドット形成工程では、前記シリコンドット形成対象基体を配置した真空チャンバ内に前記スパッタリング用ガスとして水素ガスを導入し、該水素ガスに高周波電力を印加することで該真空チャンバ内にプラズマを発生させ、該プラズマで前記シリコン膜をケミカルスパッタリングし、500℃以下の低温で前記基体上に直接、粒径が20nm以下のシリコンドットを形成する請求の範囲第1項に記載のシリコンドット形成方法。
【請求項3】
前記シリコンドット形成工程では、前記基体上に直接、粒径が10nm以下のシリコンドットを形成する請求の範囲第2項記載のシリコンドット形成方法。
【請求項4】
前記プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下のプラズマである請求の範囲第1項から第3項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項5】
前記発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が3.0以下である請求の範囲第4項記載のシリコンドット形成方法。
【請求項6】
前記真空チャンバ内へ導入されるガスへの高周波電力の印加は、前記真空チャンバ内に配置され、シリコン又はアルミニウムを含有する電気絶縁性膜で被覆された電極を用いて行う請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項7】
前記プラズマ形成時の前記真空チャンバ内圧力が0.1Pa〜10.0Paである請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項8】
前記真空チャンバ内へ導入されるガスへの高周波電力の印加は、前記真空チャンバ内に配置されるとともに前記基体に対し垂直に配置された容量結合型電極を用いて行う請求の範囲第1項から第7項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項9】
前記真空チャンバ内へ導入されるガスへの高周波電力の印加は、誘導結合型電極を用いて行う請求の範囲第1項から第7項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項10】
前記高周波電力の周波数は13MHz〜100MHzである請求の範囲第1項から第9項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項11】
前記高周波電力の電力密度〔印加電力(W)/真空チャンバ容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lである請求の範囲第1項から第10項のいずれかに記載のシリコンドット形成方法。
【請求項12】
スパッタターゲット基板を支持するホルダを有する第1真空チャンバと、
該第1真空チャンバ内に水素ガスを供給する第1水素ガス供給装置と、
該第1真空チャンバ内にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
該第1真空チャンバ内から排気する第1排気装置と、
該第1真空チャンバ内に前記第1水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット基板上にシリコン膜を形成するためのプラズマを形成する第1高周波電力印加装置と、
前記第1真空チャンバに外部から気密に遮断される状態に連設され、シリコンドット形成対象基体を支持するホルダを有する第2真空チャンバと、
該第2真空チャンバ内に水素ガスを供給する第2水素ガス供給装置と、
該第2真空チャンバ内から排気する第2排気装置と、
該第2真空チャンバ内に前記第2水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して、前記スパッタターゲット上のシリコン膜をケミカルスパッタリングするためのプラズマを形成する第2高周波電力印加装置と、
該第2真空チャンバ内のプラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
シリコン膜が形成された前記スパッタターゲット基板を前記第1真空チャンバから第2真空チャンバへ、外気に触れさせることなく搬入配置する搬送装置と
を備えていることを特徴とするシリコンドット形成装置。
【請求項13】
前記第2高周波電力印加装置によるプラズマの形成において、前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2真空チャンバ内プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、該第2高周波電力印加装置の電源出力、前記第2水素ガス供給装置から第2真空チャンバ内への水素ガス供給量及び前記第2排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有している請求の範囲第12項記載のシリコンドット形成装置。
【請求項14】
前記プラズマ発光分光計測装置は、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長484nmでの水素原子の発光強度Hβを検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光強度Si(288nm) と該第2検出部で検出される発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部とを備えている請求の範囲第12項又は第13項に記載のシリコンドット形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−135504(P2009−135504A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310121(P2008−310121)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2006−519454(P2006−519454)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】