説明

シリコンナノワイヤーの製造方法

【課題】 300℃以下の温度で結晶性のシリコンナノワイヤーが生成するシリコンナノワ
イヤーの製造方法を提供すること。
【解決手段】 シリコンと低融点の共晶合金を作る金属を触媒としてポリシランガスの熱分解によりシリコンナノワイヤーを生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シリコンナノワイヤーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンナノワイヤーの応用として、マイクロマシン用の素材、ナノサイズの半導体が考えられる。特に、半導体への応用では、リソグラフィー技術のように、回路に直接シリコンナノワイヤーが組み込まれるのが望ましい。そのためには、回路に損傷を与えないように、できるだけ低温でシリコンナノワイヤーが合成される必要がある。
【0003】
従来、シリコンナノワイヤーの製造は、シリコンの溶融蒸発を利用した方法で行われているが、この方法では、基板温度は1000℃近い高温が必要とされる。これに対し、シランガスの熱分解を利用する気相化学反応を用い、さらに、Au、Fe、Ni粒子等の触媒を利用すると、基板温度が比較的低い温度でシリコンナノワイヤーが作製される。
【0004】
最近、モノシラン(SiH4)を用いて500℃でシリコンナノワイヤーの合成が行われている(たとえば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】N.Sakulchaicharoen et al., Chemical Physics letters, 377,(2003)377
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体基板回路に熱損傷を与えないためには、さらに低温でのシリコンナノワイヤーの合成が望まれる。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、300℃以下の温度で結晶性
のシリコンナノワイヤーが生成するシリコンナノワイヤーの製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記の課題を解決するために、第1には、シリコンと低融点の共晶合金を作る金属を触媒としてポリシランガスの熱分解によりシリコンナノワイヤーを生成させることを特徴としている。
【0008】
本願発明は、第2には、触媒は、金、銀、鉄またはニッケルから選択されるいずれか1種であることを特徴としている。
【0009】
本願発明は、第3には、ポリシランガスがジシランガスであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、300℃以下の温度で結晶性のシリコンナノワイヤーを合成すること
ができる。このため、半導体回路基板に熱損傷を与えずに、半導体回路に直接シリコンナノワイヤーを組み込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施例を示しつつ、本願発明のシリコンナノワイヤーの製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0012】
これまでに報告されているシランの生成熱、エントロピーおよび比熱データに基づいて、シリコンが生成する分解生成自由エネルギーを計算し、温度の関数として図1に示した。
【0013】
いずれのシランガスも、分解生成自由エネルギーは室温以上では負の値をとる。一方、モノシラン(SiH4)に比べてジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)のポリ
シランの分解生成自由エネルギーは負側に倍以上大きく、室温付近でも十分に負の値をとる。このことから、ポリシランは、低温でも分解しやすいと理解され、モノシランに比べてより低温でシリコンが生成すると予測される。
【0014】
ナノワイヤーとして成長させるためには、シリコンと低融点の共晶合金を作る金属が触媒として必要であり、そのような金属として、金、銀、鉄、ニッケル等が例示される。触媒の形態としては、表面積が大きくなるように、粒子状であることが好ましい。
【実施例】
【0015】
シリコン基板上に金をスパッタにより蒸着し、この基板を反応容器内に配置し、反応容器内を1×10-6Torrの真空にした。次いで、基板を296℃まで加熱し、温度が一定とな
ったところで、反応容器内にH2ガスで10%に希釈したジシラン(Si26)ガスを5Torrまで導入し、この状態に5分間保持した。
【0016】
基板表面を走査型電子顕微鏡で観察すると、図2に示したように、ナノワイヤーが形成されているのが確認された。ナノワイヤーは、直径が約50nm、長さが最長で4μmであった。X線分析の結果、表1に示したように、ナノワイヤー本体はほぼシリコンから形成されていた。300℃以下の低温でシリコンナノワイヤーが基板上に形成されたことが確認
された。
【0017】
【表1】

【0018】
また、透過型電子顕微鏡で観察した結果、図3に示したように、シリコンナノワイヤーは、シリコンの単結晶であることが確認された。
【0019】
もちろん、本願発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。ポリシランガスの種類、反応条件等の細部については様々な態様が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上詳しく説明したとおり、本願発明によって、300℃以下の温度で結晶性のシリコン
ナノワイヤーを合成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】シランガスのシリコン生成熱分解自由エネルギーの温度との関係を示したグラフである。
【図2】実施例で形成したナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像である。
【図3】実施例で形成したナノワイヤーの透過型電子顕微鏡像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンと低融点の共晶合金を作る金属を触媒としてポリシランガスの熱分解によりシリコンナノワイヤーを生成させることを特徴とするシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項2】
触媒は、金、銀、鉄またはニッケルから選択されるいずれか1種である請求項1記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項3】
ポリシランガスがジシランガスである請求項1または2記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−117475(P2006−117475A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307618(P2004−307618)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】