シリコン上の脱離/イオン化質量分析(DIOS−MS)を使用した周囲空気の成分の吸着、検出、および同定
本発明は、多孔質シリコン(「DIOS」)上脱離/イオン化チップなどの多孔質吸光性半導体の表面上に向けて、能動的または受動的に空気をサンプリングするための装置、システム、および関連する方法を提供する。検体が吸着すると、この表面を、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析によって直接分析することができる。レーザー脱離/イオン化方法および引き続く質量検出方法には高温は不要であるので、検体の熱劣化が回避される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年2月10日に出願された米国仮特許出願第60/446,383号明細書(代理人整理番号WCZ−041−1)、2003年2月10日に出願された米国仮特許出願第60/446,453号明細書(代理人整理番号WCZ−041−1)、および2003年5月30日に出願された米国仮特許出願第60/474,457号明細書(代理人整理番号WCZ−041−3)に対して優先権を主張し、これらすべての記載内容全体が明確に本明細書中に参考として援用されている。
【背景技術】
【0002】
気体、特に周囲空気の成分の測定および検出は、環境モニタリングにおいて、法医学において、およびリサーチツールとして重要である。
【0003】
簡単な方法の1つにおいては、気体から成分を吸収してこれと反応する特殊な固体を含有する比色指示薬は、特徴的な色の変化が起こることで、定性的にある検体の存在を検出する。たとえば、一酸化炭素および硫化水素などの毒性化学物質の存在を検出する指示装置が市販されている。このような比色装置は通常安価であるが、これらで計画されている補足的な特定化学物質の固体指示材料の反応性が限定されているため、気体成分の検出には一般には有用ではない。さらに、比色指示薬では一般に定量的な測定が不可能である。
【0004】
より一般的な有用性を有する他の技術では、低濃度成分を含む気体サンプルの成分の検出および測定が可能である。多くの場合、機器の感度によって気体の低濃度成分の検出が限定される。低濃度測定を改善するために、気体によって運搬される検体は、検出の前に濃縮することができる。典型的には、気体サンプルの成分の分析のために3工程の方法が使用される。気体サンプルの捕集、この中の検体の前濃縮、および検体の検出である。たとえば、気体サンプルは、約6から12リットルの(またはこれを超える)真空キャニスタによって、制御弁を開放して周囲空気を吸い込むことで捕集することができる。次に、周囲空気が分析のための研究所に戻される。たとえば、マクレニー(McClenny)ら、「周囲空気中の毒性VOCを監視するためのキャニスタに基づく方法」(Canister−based method for monitoring toxic VOCs in ambient air),J.Air Waste Manage.Assoc.41,1308−18(1991)を参照されたい。しかし、より好都合には、気体サンプルの捕集、ならびに検体の前濃縮および検出の工程が多くの場合同時に実施される。
【0005】
気相から検体を前濃縮する方法の1つは、検体を溶解するのに適した溶液にサンプル気体を通すことを含む。たとえば、汚染物質が溶解する液体にバブリングすることによって汚染ガスを捕集することができる。典型的には、周囲空気は、湿気トラップおよびフィルタを通って抽出装置に入り、続いて液体抽出媒体と接触し、続いて分析を行うことによって気体汚染物質の濃度が決定される。連続供給機構が使用される場合、大きい気体体積を抽出し分析することができる。気液抽出方法は、一般に大量の溶媒、高価な装置、および長い分析時間を必要とするので、あまり広くは使用されていない。
【0006】
前測定濃縮のより一般的な方法では、気体サンプルから毒性化学物質、汚染物質、または他の対象物質を選択的に保持し脱離する活性炭などの「収着」材料を含む「吸着」(または「拡散」)管が使用される。十分に多量のサンプルが蓄積されるまで、ポンプによって、対象の検体を保持する収着材料を含む前濃縮管に気体サンプルを通すことができる。次に、前濃縮管周囲に巻き付けられた発熱体を使用して収着材料を加熱し、これによって、化学物質が脱離または揮発する。脱離後、種々の化学物質の存在、種類、または量を示す測定装置にこの化学物質が送られる。
【0007】
ある種の固体は、この表面上に特定の検体を保持することができる。多くの場合、空気流から有機化学物質を保持し濃縮するために活性炭またはチャコールが使用される。対象となる検体の性質に依存して種々の他の収着材料を使用することもでき、たとえば、アミンの分析に有用な材料の1つとして、アミンに対して親和性を有する吸着性有機ポリマー、たとえば、テナックス(登録商標)(2,6−ジフェニルフェニレンオキシドポリマー、ブッヘム(Buchem),N.V.の登録商標)と、無機多孔質材料でありアルカリ性である第2の吸着剤、たとえばソーダ石灰との混合物が挙げられる。米国特許第4,701,306号明細書。
【0008】
典型的には、収着剤系技術は、カートリッジを通してフラッシングした気体サンプルから対象の成分を優先的に保持するために、固定相材料を含む流入チャンバを使用する固相抽出方法である。次に、保持された検体が可溶性である溶媒がカートリッジにフラッシングされ、これによって分析の対象成分の溶液が得られる。活性炭、黒鉛化カーボンブラック、シリカゲル、石英ガラス、炭素モレキュラーシーブ、またはポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)などの種々の固定相吸着材料が充填されたものなどの数種類の吸着管が市販されている。溶媒で濡らされた収着材料は、蒸気またはエアロゾルから検体を前濃縮するためにも使用されているが(米国特許第5,173,264号明細書、第4,912,051号明細書、および第4,977,095号明細書)、乾燥収着材料がより一般的に使用されている。
【0009】
たとえば、EPA法(EPA Method)TO−1、−5、および−17は、周囲空気中の揮発性有機化合物を測定するための収着剤系方法である。これらのEPA法においては、テナックス(登録商標)、XAD−2(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,Pennsylvania)のローム・アンド・ハース・カンパニー・コーポレーション(Rohm and Haas Co.Corp.)の商標)、またはチャコールなどの吸着剤を含むカートリッジにサンプルを通し、続いて、検体を熱的に脱離させるか、または溶媒抽出することによって、分析が行われる。リギン(Riggin),「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要:方法TO−1およびTO−2」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air:Methods TO−1 and TO−2),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park),NC 27711,EPA 600/4−84−041,1984年4月;ウィンベリー(Winberry)ら,「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要:方法TO−14,補遺2」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air:Method TO−14,Second Supplement),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park),NC 27711,EPA 600/4−89−018,1989年3月;著者不明,「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要、第2版:方法TO−17」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air,Second Edition:Method TO−17),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),シンシナティ(Cincinnati),OH 45268、EPA/625/R−96/010b,1997年1月を参照されたい。さらに、ウールフェンデン(Woolfenden)、「収着管を使用した後に熱的脱離を行う空気中のVOCの監視−キャピラリーGC分析−データ集約および実施上の基準」(Monitoring VOCs in air using sorbent tubes followed by thermal desorption−キャピラリー GC analysis−Summary of data and practical guidelines),J.Air Waste Manage.Assoc.47,20−36(1997);パンコフ(Pankow)ら,「多重収着剤吸着/熱脱離およびガスクロマトグラフィー/質量分析を使用した周囲空気中の多種多様な揮発性有機化合物の測定」(Determination of a wide range of volatile organic compounds in ambient air using multisorbent adsorption/thermal desorption and gas chromatography/mass spectrometry),Anal. Chem.70、5213−21(1998); チッチョリ(Ciccioli)ら,「サンプルの前濃縮のためのカーボパックBを使用する微量で大気中に存在する有機成分のGC測定」(GC Evaluation of the Organic Components Present in the Atmosphere at Trace Levels with the Aid of Carbopack B for Preconcentration of the Sample),J.Chrom.351、433−49(1986);ブラウン(Brown)ら,「周囲大気中の微量有機気体汚染物質の捕集および分析:テナックス−GC吸着管の性能」(Collection and Analysis of Trace Organic Vapour Pollutants in Ambient Atmospheres: The Performance of a Tenax−GC Adsorbent Tube),J.Chrom.178、79−90(1979);ウォーリング(Walling),「固体吸着剤を使用して周囲空気をサンプリングした場合の分散空気体積設定の有用性」(The Utility of Distributed Air Volume Sets When Sampling Ambient Air Using Solid Adsorbents),Atmos.Environ.18、855−59(1984);ならびに米国特許第4,541,268号明細書も参照されたい。
【0010】
ガスクロマトグラフィーと併用する場合、吸収管が加熱されることで、保持された検体が迅速に脱離して、ガスクロマトグラフィーカラムに注入されて濃縮された検体パルスが得られる。このような方法においては、前濃縮管はサンプルの前濃縮および注入の2つの目的を果たす。次に、サンプル中の異なる成分がクロマトグラフィーにより分離され、検出器によって分析される。ガスクロマトグラフィーは、対象の検体を含む気体サンプルがキャリアガス気流中に導入され、壁が固定相材料で被覆されているキャピラリー中に圧送される、一般的な検出および測定技術の1つである。検体は、キャピラリーを通過して移動する間に被覆への吸収および被覆からの脱離が起こることによって、移動キャリアガスと固定相との間で分配される。こうしてこれらの成分は、このそれぞれの分配係数に従って分離され、これらは異なる時間でキャピラリーから出てくる。このようにして、類似の物理的および化学的性質を有する検体を効率的に分離することができる。分析される気体の種類に基づいて選択される検出器は、キャピラリーの出口に配置され、排出されるときの気体混合物を絶えず測定する。代表的な検出器としては、熱伝導度検出器、電子捕獲型検出器、フレームイオン化検出器、質量分析検出器、および化学ルミネセンス検出器が挙げられる。
【0011】
収着剤系の気体検体前濃縮方法は、いくつかの欠点を有する。たとえば、収着材料の低い気体透過性のため、多量の気体体積のサンプリングが必要となる。収着材料は不注意で過剰充填される場合がある。吸着した微量材料の収着剤による保持性が高い場合、比較的多量の溶出体積が必要となる。また、検体が収着材料と反応する場合があるし、またはこの吸着材料自体によって、分析データを損なう妨害汚染物質が導入される場合もある。化学収着剤または膜の再生(または交換およびコンディショニング)、および検出前のガスクロマトグラフィー分離の実施に必要な時間がさらなる欠点であり、このため処理量が制限される。十分に長い時間をかけて前濃縮管を加熱しないと、蓄積したすべての検体が放出されない場合があり、収着材料から放出されて検出器に到達した化学物質サンプルが、収着材料に入った化学物質濃度を正確に反映しない場合がある。さらに、収着剤は、前濃縮管が次に加熱される時に、収着材料中に残留する化学物質が放出されるというメモリー効果を示すことがあり、このため不自然に高い測定値が得られることがある。空気中に約1ppb未満の濃度で存在する検体を測定するためには、大きな溶出体積を必要とする比較的大きな体積の収着剤が必要となる場合があり、このような場合、非常に強く結合する一部の物質(特に不揮発性微量材料)は脱離が困難となりうる。
【0012】
収着剤系の前濃縮方法の代替案として、「クライオフォーカス」(または「サーモフォーカス(thermoforcusing)」)を使用して、サーモフォーカスチャンバまたはコールドトラップの中で気体サンプルから検体を前濃縮することができる。クライオフォーカスは、これらの元の気体マトリックスから、より少ない体積を不活性管中に凝縮させすることによる検体の濃縮である。典型的なコールドトラップは、冷却されている冷却容器に包まれたキャピラリーである。このような装置中において、気体サンプルがキャピラリーに通され、入ってきた検体は低温にさらされることによって、キャピラリー内部で凝縮する。十分な量の検体が蓄積すると、コールドトラップを通過するキャピラリーの温度を急速に上昇させて、サンプルを気化させる。次に、トラップ内を持続的に流れるキャリアガス流によって検体が分離用カラム内に送られる。パンコフ(Pankow)ら,「カラム全体にクライオトラップを使用したキャピラリーカラムに直接パージすることによる水中の揮発性化合物の測定」(Determination of volatile compounds in water by purging directly to a capillary column with whole column cryotrapping),Environ.Sci.Technol.22、398−405(1988);米国特許第5,005,399号明細書、第5,595,709号明細書、第5,795,368号明細書、第5,954,860号明細書、第5,872,306号明細書;エーウェルズ(Ewels)ら,「高速ガスクロマトグラフィーのための電気的に加熱されるコールドトラップ導入システム」(Electrically Heated Cold Trap Inlet System for High−Speed Gas Chromatography),Anal.Chem.57,2774−79(1985);モーラディアン(Mouradian)ら,「高速ガスクロマトグラフィーのための窒素で冷却され電気的に加熱されるコールドトラップ導入システムの評価」(Evaluation of a Nitrogen−Cooled,Electrically Heated Cold Trap Inlet for High−Speed Gas Chromatography),J.Chrom.Sci.28、643−48(1990);クレンプ(Klemp)ら,「ガスクロマトグラフィー用の逆流サンプル捕集を有するクライオフォーカス導入」(Cryofocusing Inlet with Reverse Flow Sample Collection for Gas Chromatography),Anal.Chem.65,2516−21(1993);ティーセン(Tijssen)ら,「キャピラリーガスクロマトグラフィーにおける高速ガス分析の理論的側面および実際的可能性」(Theoretical Aspects and Practical Potentials of Rapid Gas Analysis in Capillary Gas Chromatography),Anal.Chem.59,1007−15(1987);ならびにギース(Giese)ら,「水中の揮発性有機化合物の測定のための吸着/熱脱離」(Adsorption/thermal desorption for the determination of volatile organic compounds in water),J.Chrom.537,321−28(1991)。
【0013】
従来、クライオフォーカスは、典型的には、サンプル気体の流れを液体窒素温度まで冷却することによって行われてきた。続いて、急速加熱によって、検体をカラムに移すことができる。多くの場合、次にカラムのヘッドにサンプルが「リフォーカス(refocuse)」される。トラップ中でクライオフォーカス法と収着剤系技術とを併用することによって、周囲温度でトラップすることで類似の効果を得ることができる。
【0014】
収着剤系前濃縮方法に関して前述した欠点の一部はサーマルフォーカス(thermal−focusing)技術によって克服されるが、多数の欠点が残る。実際的な問題として、前濃縮の極低温方法は小さなサンプル体積(約10mL以下)に限定される。さらに、サーマルフォーカスとガスクロマトグラフィーシステムとを併用すると、望ましくないデッドボリュームが生じ、バンドが広がって、分解能および効率に悪影響が生じる。コールドトラップサンプル管を加熱した後、カラムに導入される前にサンプル管の全体の長さをサンプル成分が通過する必要がある。カラムの入口端においてサンプルが注入される時間が長くなると、成分の溶出によって得られるピークが広くなりやすい。
【0015】
収着剤系前濃縮方法およびサーマルフォーカス方法の両方において、加熱の必要性が大きな制限となる。ある種の化合物は、熱脱離またはGC分離に必要な温度まで加熱すると熱劣化する。したがって、これらの方法は、温度に敏感な化合物の分析への使用には理想的ではない。GCサーマルフォーカスにおいて、フォーカスチャンバを通って全体を気化させるために検体が過度の温度にさらされ、これによって熱分解が生じる場合がある。カラムから排出される元のサンプルの実際の検体の代わりに、これらの成分がフラグメント化し、これによって分析が非常に複雑になる。さらに、捕集または注入モードのいずれかの間にコールドトラップサンプル管の長さ全体を、均一な一定温度に理想的に維持することはできず、温度勾配が生じる。操作の捕集モード中には、キャピラリーの入口端付近に検体が濃縮されるため、注入工程中に成分すべてを気化させるためにこの領域を十分に加熱する必要が生じる。この必要性が原因となって、コールドトラップサンプル管の一部が、捕集されたサンプルを気化させるために必要な温度よりもはるかに高温まで加熱される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述の欠点に対処する分析方法、機器、および装置を提供する。本発明は、サンプル流を多孔質シリコンチップ上脱離/イオン化(「DIOS」)チップなどの多孔質半導体基板の表面上に向けることによって、能動的または受動的に空気のサンプリングを行う装置、システム、および関連する方法を提供する。多孔質シリコンは、広い表面積と、優れた吸着特性を有する活性表面との両方を有するので、本発明者らは、これが空気からある種の化学物質を吸着するための理想的な表面となることを発見した。さらに、吸着工程が完了すると、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(「MALD−TOF」)質量分析計にこのチップを入れてレーザー脱離/イオン化を行うことで、この表面を直接分析することができる。[0]しかし、従来のMALDIとは異なり、シリコンがUVエネルギーを吸収する機能を果たし、脱離/イオン化過程が起こるため、UV吸収性有機マトリックスを加える必要がない。
【0017】
本発明の多孔質シリコン表面からの成分のレーザー脱離/イオン化および質量検出方法は、従来技術のシステムの高温が不要であるため、成分の熱劣化が回避される。したがって、本発明は、検体の熱劣化の原因となりうる加熱が不要である、気体中、たとえば周囲空気中に含まれる成分の吸着を提供する。
【0018】
したがって、本発明は、低濃度で化合物を測定するための気体サンプルのサンプリング方法および分析方法を提供する。本発明は、存在する化学物質量を調べるための気体、たとえば周囲空気の監視方法も含む。別の側面においては、本発明は、比較的狭い領域または離れた領域に配置することができる装置を含む能動的または受動的気体サンプリング装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一実施態様においては、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、検体を含む気体を、多孔質半導体基板(特に、本明細書で定義されるような「多孔質シリコン基板」)の表面上に、この表面上に検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0020】
同様に、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、多孔質吸光性半導体基板を提供することと;検体を含む気体を、この半導体基板の表面上に、気体中に含まれる検体を半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;続いて、レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を含む。
【0021】
さらに別の側面においては、本発明は、検体の物理的性質の分析方法であって、多孔質吸光性半導体基板を得ることと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この検体は気体から直接吸着していることと;検体が充填された半導体基板に放射線を照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することとを含む方法を提供する。
【0022】
本発明の別の実施態様は、物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと;検体が充填された半導体基板を真空下におくことと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーまたは赤外レーザー源を照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることとを含む方法を提供する。
【0023】
本発明の別の方法は、検体イオンの同定のために提供され、この方法は、多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質、吸光性、シリコン半導体基板を提供することと;分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この気体がマトリックス分子を含まないことと;約±5,000から約±34,000ボルトの電位を検体が充填された半導体基板に印加することと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと;飛行時間型質量分析技術によってイオン化された検体の質量電荷比を分析することとを含む。
【0024】
本発明は、本発明の方法に使用される装置および機器も含む。たとえば、本発明は、気体を能動的にサンプリングし、多孔質で好ましくは吸光性である半導体基板の上にこの気体を誘導するための装置であって、入口端および出口端を有する気体導管と;入口端および出口端を有するノズルであって、導管出口端とノズル入口端とが流体接続され、導管出口端からの気体をノズルから多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと;気体を導管入口端に誘導し、ノズル出口端を通して気体を移動させるポンプとを含む装置を含む。
【0025】
本発明は、気体を受動的にサンプリングするための装置も提供する。この装置は、上面上に、流入する空気を接触させることができるように保護カバーを有するDIOSのエッチング面を含む。このような装置の一例は、上部カバーであって、上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと;下部プレートであって、下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと;下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、上部プレートと下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が下部プレートの遠位端に流れて表面と接触する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、気体サンプルの成分、特に微量で存在する成分の捕集および分析に関する。便宜上、本明細書において言及される用語の一部の定義を以下に示す。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「気体」は、室温および室内圧力において液体および固体として通常見なされる材料の気相を含めた、あらゆる非凝縮相を広く含むことを意味する。気体は、特定の温度および圧力におけるあらゆる材料の気体形態であってよく、この形態は熱力学的または動力学的に好ましいかどうかは無関係である。したがって、気体は、通常はそれ自体気体とは見なされないが、空気流などから半導体基板上に吸着することができるある成分の化合物を含むことができる。気体は、熱力学的な理想気体または熱力学的な非理想気体として挙動することができる。気体は、固体または液体の昇華または蒸発によって形成することができるし、または液体を非常に小さな粒子または液滴に霧化することによって形成することもできる。
【0028】
気体は、エアロゾル、クラウド、ヒューム、ミスト、フォッグ、プルーム、または煙であってよい。「エアロゾル」は、地球の重力場において少なくともある程度安定である別々の小さな粒子(直径約0.01μmから約100μmの固体または液体)とキャリアガス(通常は空気)との混合物または分散体と通常は見なされる。同様に、「クラウド」は、単に、肉眼で知覚できるのに十分な高密度のエアロゾルである。「ヒューム」はエアロゾルと類似しているが、通常は、化学反応からの蒸気の凝縮によって得られる固体粒子を意味する。一方、「ミスト」または「フォッグ」は、定性的には気体中の液滴の浮遊物である。「プルーム」は通常、燃焼によって発生する気体およびエアロゾルの流出物を意味する。「煙」は、化石燃料などの有機物などの不完全な燃焼によって得られる、目に見える粒子のエアロゾルであり、典型的には炭素、炭素に富む生成物、および不完全な燃焼によるあらゆる他の分散性生成物の粒子(しかし通常は蒸気または凝縮した水蒸気は含まない)からなる。本発明はこれらの種類のあらゆる材料の分析方法に関するので、用語気体、エアロゾル、クラウド、ヒューム、ミスト、フォッグ、プルーム、および煙は、他に明記しない限りは交換可能に使用することができる。
【0029】
「周囲空気」としては、特定の場所における屋外または屋内の空気が挙げられる。周囲空気は、純粋な空気および大気汚染物質の成分を含むことができる。純粋な空気の組成は特定の場所に依存し、この成分(たとえば、メタン、二酸化炭素、水)は変動することがあり、このため「純粋な」空気は厳密な意味を有さない。にもかかわらず、純粋な空気は、ダスト、エアロゾル、および人間が原因の(すなわち合成された)反応性気体汚染物質を含まない空気であると一般的に見なされる。乾燥空気中の主成分の組成は比較的一定であり(体積%で示す):窒素78.08;酸素20.95;アルゴン0.93;二酸化炭素0.03;ネオン0.0018;ヘリウム0.00052;メタン0.00016、クリプトン0.00011;水素0.00005;亜酸化窒素0.00003;キセノン0.000009である。機器の較正および操作における基準サンプルとして使用されることが多い、ほとんどの反応性の人間が原因の汚染を含まない比較的清浄な空気は、商品名「ゼロエア」(zero air)で購入することができる。
【0030】
大気「汚染物質」または「汚染」は、典型的には、(人間の活動または自然作用のいずれかによって)空気中に導入された物質、気体材料、またはエアロゾルである。典型的には、大気汚染物質は、十分な濃度で存在する場合に、ヒト、動物、植物、または材料(モニュメントなど)に対して測定可能な悪影響または望ましくない影響が生じ、人の快適性、健康、または繁栄、または環境を妨害することがある。
【0031】
「受動的サンプリング」における用語「受動的」とは、気体の移送を特別に制御せずに分子拡散によって、検体が気体サンプルから捕集されることを意味する。用語「能動的」は「受動的」の反対であり、気体サンプルおよびこれに含まれる検体が制御された方法で明確に輸送されることを意味する。
【0032】
「分析」機器またはユニット、または「分析器」は、分析されるサンプル気体の導入および除去が可能な好適な装置と;サンプル気体の成分の物理的または化学的性質によって信号(たとえば、クロマトグラムまたはスペクトログラムの形態の電気信号)を発生し、これらの同定または測定が可能となる測定セルまたは他の装置と;信号処理装置(増幅、記録)または必要であればデータ処理装置とを含むサブユニットの集合体である。測定セルは、典型的には、化合物のある特定の分光学的または化学的性質によってこの化合物の存在を示す機器または機器の一部である「検出器」である。
【0033】
「質量分析計」は、原子または分子をイオン化し、次にイオン化された生成物の相対質量を測定することによって操作される化学分析に使用される分析器である。質量分析(「MS」)は、サンプル分子の分子量、ならびにこのサンプルを同定するためのサンプルのフラグメンテーション特性を測定するために日常的に使用されている。質量分析は、分子質量のイオン電荷に対する比を測定する。この質量は、習慣的に、ダルトンと呼ばれる原子質量単位によって表現される。電荷またはイオン化は、習慣的に、電気素量の倍数で表現される。これら2つの比は、「m/z」の比の値(質量/電荷比または質量/イオン化比)として表現される。イオンは通常1の電荷を有するので、通常m/z比は「分子イオン」の質量またはこの分子量(「MW」)となる。
【0034】
サンプルの質量を測定する方法の1つは、帯電した分子、すなわちイオンを磁界または電界内に加速することである。サンプルイオンは、磁界または電界の影響下で移動する。検出器は磁界を通過する経路の終端に配置することができ、磁界を通過する経路および磁界強度の関数として分子のm/zを計算することができる。当技術分野で公知の種々の異なる質量分析器を使用することができ、たとえば特に、四重極型、トリプル四重極型、セクター型、FTMS型、TOF型、イオントラップ型、たとえば、リニア四重極イオントラップ型、および三次元イオントラップ型、および四重極−TOF複合型の質量分析器を使用することができる。
【0035】
MSは、気相中で行うことができ、この中の低い圧力において電気的に中性のサンプルが電子ビームに通される。最も単純な質量分析計は、通常は約10−6Torr以下の圧力の減圧下に、気体で電気的に中性のサンプルが導入される。このMS技術においては、電子ビームがサンプルに衝突して1つまたはそれ以上の電子を放出させ、この後、サンプルはイオン化されて全体として正電荷を有する。次に、イオン化されたサンプルは磁界に通され、この磁界を通過するイオン化されたサンプルの経路に依存して、イオン電荷に対する分子の質量が求められる。
【0036】
サンプルの質量を測定する別の技術は飛行時間型(「TOF」)質量分析である。TOF−MSにおいては、既知の電圧でサンプルイオンが加速され、サンプルイオンまたはこのフラグメントが既知の距離を移動するのに要する時間が測定される。質量分析を使用して、サンプル分子の質量、およびサンプルのフラグメントの質量が測定されて、このサンプルが同定される。
【0037】
容易に気相にならない分子は、MSによる分析がより困難となる。高分子量を含むサンプルを気化させるための数種類の技術が存在する。サンプル分子が基板上に付着すると、このサンプルはこの気体に吸着したと言われる。基板上に吸着した分子が基板から移動するときに脱離が起こる。気相サンプルで出発する基本的なMSの代わりに、基板上に吸着したサンプルに対して脱離MSを行うことができる。
【0038】
脱離MS技術の1つは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI」)である。この技術によると、気化過程の一部としてプロトンが有機マトリックスからサンプルに移されることによってサンプルがイオン化される。サンプルのイオン化は、電子ビームイオン化またはプロトン移動イオン化により行われる。
【0039】
典型的なMALDI実験においては、パルスレーザー放射線によって気化する吸光性有機マトリックス中にサンプルを混合して、気化したマトリックスとともにサンプルを移動させる。広く使用され強力な技術であるが、マトリックスが約700未満のm/zの測定を妨害するため、一般にMALDIは小さな分子の測定には適切ではない。たとえばマトリックスがサンプルイオンと付加体を形成することによって分析を妨害することがあるので、MALDIは、大きな分子の分析においても重大な制限を有する。
【0040】
より新しいMS技術では、マトリックスを使用しない直接レーザー脱離/イオン化技術が可能である。このような方法は、検体を充填された基板に減圧下で放射線を照射することによる、半導体基板、特に「多孔質シリコン基板」または「多孔質吸光性シリコン基板」の上の検体のイオン化を含み、「シリコン上脱離/イオン化」(「DIOS」)として一般的に公知の方法が挙げられる。「多孔質シリコン基板」および「多孔質吸光性シリコン基板」は当技術分野、特にマイクロエレクトロニクス技術で公知であり、たとえば、米国特許第6,288,390号明細書および第6,358,613号明細書を参照されたい。
【0041】
多孔質シリコン基板を製造するために多くの方法を使用することができるが、電気化学エッチングが最も一般的である。Y.ワタナベ(Watanabe)ら,Rev.Electron.Commun.Labs.19,899(1971);およびR.C.アンダーソン(Anderson)ら,J.Microelectro−Mechanical System 3,10(1994)。これらの電気化学エッチングされた多孔質シリコン基板は、シリコン自体の逐次形成(あるいは商業的供給元からの入手)および引き続く湿式エッチングを含む湿式電気化学エッチング工程によって得られることを特徴とする。こうして形成された基板は、典型的には、エッチングが大きいほど相互連結が多くなる孔隙領域を有する。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「多孔質シリコン基板」またはより一般的には「多孔質半導体基板」は、検体を受け入れ(吸着による)、電磁放射線を吸収する(このため「半導体基板」を「吸光性半導体基板」と呼ぶこともできる)ために適した表面を有する半導体材料(たとえばシリコン)を意味する。本明細書の他の箇所でより詳細に説明されるように、多孔質シリコン基板は、エッチングされている従来のシリコンウエハまたは薄膜シリコンであってよい。たとえば、電気化学湿式エッチング法は、シリコンを湿潤溶液に曝露することと、サンプルをエッチングするための接点と溶液(たとえば、フッ化水素酸水溶液またはアルコール性フッ化水素酸溶液)とを通る電流を流し、これによって金属の「ピッチング」またはエッチングを行い、多孔質網目構造を残すこととを含む。「電気化学」(または「陽極」)エッチングにおいて、微細構造(たとえば、孔径、形態、および間隔)および多孔質シリコン基板層の厚さは、シリコン自体の抵抗率、電流および電位、電解質組成、ならびに周囲光、温度、および他の反応条件によって制御される。シリコンは、エッチングされた連続単結晶または単結晶ウエハ、または多結晶シリコンであってよい。このような方法は本明細書でさらに説明し、当技術分野で公知である。L.T.キャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990);I.シェクター(Schecter)ら,Anal.Chem.67,3727(1995);J.ウェイ(Wei)ら,Nature 399,243(1999);L.T.キャンハム(Canham)ら,Thin Sold Films 297,304(1997);P.シュタイナー(Steiner)ら,およびThin Solid Films 255,52(1995)。
【0043】
これまで、このような多孔質シリコン基板は、周囲空気からの検体サンプリングおよび保持(および分析)にとっては不十分な基板であると考えられていた。代表的な別の方法の1つでは、「連続する空隙がない」薄膜または「円柱/空隙網目」薄膜のいずれかとして説明される異なる形態の薄膜を形成するためにプラズマ支援化学蒸着または物理蒸着の使用が必要となる。これらの蒸着方法は、複雑性を伴う気相金属の化学的性質が必要となる。結果として得られる生成物は、ナノスケールの円柱/空隙網目構造を有するシリコンアレイである。米国特許出願公開第2002/0048531号明細書。しかし、このような円柱/空隙網目薄膜は、あまり広く受け入れられていない。
【0044】
半導体基板の吸光性のため、基板は電磁放射線のエネルギー貯蔵所として機能する。この吸収した電磁エネルギーが、トラップされた検体をイオン化する。次に、このイオン化された検体が質量スペクトル質量分析装置によって検出される。質量分析の好ましい脱離/イオン化方法は、多孔質シリコン基板からのパルスレーザー脱離/イオン化であり、したがってこのような方法は半導体基板がシリコン系であるかどうかとは無関係に、「多孔質シリコン上脱離/イオン化」(「DIOS」)質量分析と通常呼ばれる。本明細書においては、本発明の実施態様を、シリコン系基板を使用するある好ましい実施態様に関して説明するが、他に明記しない限り用語「DIOS」は機能的に同等の材料を包含する。アマト(Amato)ら,半導体および超格子のオプトエレクトロニクス特性(Optoelectronic Properties of Semiconductors and Superlattices)(アマト(Amato),G.,ドルリュー(Delerue),C.およびバーデルベン(Bardeleben),H.−J.v.編著)3−52(ゴードン・アンド・ブリーチ(Gordon and Breach),アムステルダム(Amsterdam),1997);キャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990);カリス(Cullis)ら,Appl.Phys.Lett.82,909(1997)。たとえば、一般的な半導体基板は、疎水性基、たとえばエチルフェニル基と結合したシリコンである。さらなる例は、本明細書の他の箇所で例示している。典型的なDIOS−MS実験においては、サンプルが半導体基板上に置かれ、続いて紫外光が照射され、場合により電圧が印加される。このような方法の利点は、マトリックスが不要であることであり、このためこの方法を小分子分析に適用できる。さらに、基板の脱離/イオン化特性を最適化させるために、半導体基板を化学的または構造的に改質することができる。シェン(Shen)ら,Anal.Chem.,73,612−19(2001);トーマス(Thomas)ら,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.98,4932−37(2001);およびクルーズ(Kruse)ら,Anal.Chem.73、3639−45(2001)も参照されたい。
【0045】
本発明のある側面は、化学用語において説明することができる。他に明記しない限り、本明細書において言及される化学的部分の意味は、「有機化学命名法、A、B、C、D、E、F、およびHの部」(Nomenclature of Organic Chemistry,Sections A,B,C,D,E,F,and H),ペルガモン・プレス(Pergamon Press),オックスフォード(Oxford),1979.IUPACを参照することによって確認することができる。
【0046】
本発明によると、「アルキル基」は、1つまたはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含み、直鎖アルキル基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(またはシクロアルキル基または脂環式基)(たとえば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチルなど)、およびアルキル置換アルキル基(たとえば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)を含む。用語「脂肪族基」は、典型的には1から22個の間の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖を特徴とする有機部分を含む。複雑な構造においては、この鎖は、分岐、橋、または架橋が形成されてもよい。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0047】
ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキル基は、30個以下の炭素原子をこの主鎖中に有することができ、たとえば、C1〜C30の直鎖またはC3〜C30の分岐鎖を有することができる。ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキル基は、20個以下の炭素原子をこの主鎖中に有することができ、たとえば、C1〜C20の直鎖またはC3〜C20の分岐鎖を有することができ、より好ましくは18個以下を有することができる。同様に、好ましいシクロアルキル基は、4から10個の炭素原子をこの環構造中に有し、より好ましくは4から7個の炭素原子を環構造中に有する。用語「低級アルキル」とは、1から6個の炭素を鎖中に有するアルキル基、および3から6個の炭素を環構造中に有するシクロアルキル基を意味する。
【0048】
他の炭素数が指定されない限り、本明細書において使用される「低級脂肪族」、「低級アルキル」、「低級アルケニル」などの「低級」は、この部分が少なくとも1個および約8個未満の炭素原子を有することを意味する。ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖低級アルキル基は、6個以下の炭素原子をこの主鎖中に有し(たとえば、C1〜C6の直鎖、C3〜C6の分岐鎖)、より好ましくは4個以下を有する。同様に、好ましいシクロアルキル基は、3から8個の炭素原子をこの環構造中に有し、より好ましくは5または6個の炭素を環構造中に有する。用語「C1〜C6」は、1から6個の炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0049】
さらに、他に明記しない限り、アルキルという用語は、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素主鎖の1つまたはそれ以上の炭素上の1つまたはそれ以上の水素の代わりに置換基を有するアルキル部分を意味する。このような置換基としては、たとえば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(たとえば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノ)、アシルアミノ(たとえば、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族または複素環式芳香族の部分を挙げることができる。
【0050】
「アリールアルキル」部分は、アリールで置換されているアルキル基(たとえば、フェニルメチル(すなわち、ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基で置換されているアリール基(たとえばp−メチルフェニル(すなわちp−トリル))である。用語「n−アルキル」は、直鎖(すなわち、分岐していない)未置換アルキル基を意味する。「アルキレン」基は、対応するアルキル基から誘導される二価部分である。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、アルキルと類似するが、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基を意味する。好適なアルケニル基およびアルキニル基としては、2から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0051】
用語「芳香族基」または「アリール基」は、1つまたはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含む。アリール基は、脂環式または芳香族ではない複素環式環と縮合または架橋して多環(たとえば、テトラリン)を形成することもできる。用語「芳香族基」は、1つまたはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含む。一般に、用語「アリール」は、0から4個のヘテロ原子を含むことができる5および6員単環式芳香族基を含み、たとえば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアオゾール(isothiaozole)、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール(isooxazole)、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどから誘導される基を含む。「アリーレン」基は、アリール基から誘導される二価部分である。用語「複素環式基」は、環の中の1つまたはそれ以上の原子が炭素以外の元素、たとえば、窒素、硫黄、または酸素である閉環構造を含む。複素環式基は、飽和または不飽和であってよく、ピロールおよびフランなどの複素環式基は芳香族性を有することができる。これらは、キノリンおよびイソキノリンなどの縮合環構造を含む。他の複素環式基の例としては、ピリジンおよびプリンが挙げられる。複素環式基は、1つまたはそれ以上の構成原子において置換されていてもよい。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ」は、式−NRaRbの未置換または置換部分を意味し、式中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであるか、またはRaおよびRbをこれらが結合する窒素原子と合わせたものが、環に3から8個の原子を有する環状部分を形成する。したがって、用語「アミノ」は、他に明記しない限り、ピペリジニル基またはピロリジニル基などの環状アミノ部分を含む。したがって、本明細書において使用される場合、用語「アルキルアミノ」は、アミノ基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。好適なアルキルアミノ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。用語「アルキルチオ」は、スルフヒドリル基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。好適なアルキルチオ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「アルキルカルボキシル」は、カルボキシル基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。。用語「ニトロ」は−NO2を意味し、用語「ハロゲン」または「ハロ」は−F、−Cl、−Br、または−Iを意味し、用語「チオール」、「チオ」、または「メルカプト」はSHを意味し、用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシル」は−OHを意味する。
【0053】
他に明記しない限り、前述の基を含む本発明の化合物の化学的部分は、「置換または未置換」であってよい。ある実施態様において、用語「置換されている」とは、この部分が、水素以外の部分の上に置換基を有する(すなわち、ほとんどの場合、水素が置き換えられる)ことを意味し、これによって分子が意図する機能を果たすことができる。置換基の例としては、直鎖または分岐アルキル基(好ましくはC1〜C5)、シクロアルキル基(好ましくはC3〜C8)、アルコキシ基(好ましくはC1〜C6)、チオアルキル基(好ましくはC1〜C6)、アルケニル基(好ましくはC2〜C6)、アルキニル基(好ましくはC2〜C6)、複素環式基、炭素環式基、アリール基(たとえばフェニル)、アリールオキシ基(たとえば、フェノキシ)、アラルキル基(たとえばベンジル)、アリールオキシアルキル基(たとえば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル基、アルキルアリール基、ヘテロアラルキル基、アルキルカルボニル基およびアリールカルボニル基または他のこのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル基、またはヘテロアリール基、(CR’R”)0−3NR’R”(たとえば−NH2)、(CR’R”)0−3CN(たとえば−CN)、−NO2、ハロゲン(たとえば−F、−Cl、−Br、または−I)、(CR’R”)0−3C(ハロゲン)3(たとえば−CF3)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)2、(CR’R”)0−3CH2(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CONR’R”、(CR’R”)0−3(CNH)NR’R”、(CR’R”)0−3S(O)1−2NR’R”、(CR’R”)0−3CHO、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H、(CR’R”)0−3S(O)0−3R’(e.g.−SO3H)、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H(たとえば−CH2OCH3および−OCH3)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0−3H(たとえば−SHおよび−SCH3)、(CR’R”)0−3OH(たとえば−OH)、(CR’R”)0−3COR’、(CR’R”)0−3(置換または未置換のフェニル)、(CR’R”)0−3(C3−C8シクロアルキル)、(CR’R”)0−3CO2R’(たとえば−CO2H)、または(CR’R”)0−3OR’基、またはあらゆる天然アミノ酸の側鎖から選択される部分が挙げられ、上式中、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1〜C5アルキル基、C2〜C5アルケニル基、C2〜C5アルキニル基、またはアリール基であるか、またはR’とR”とを合わせたものが、ベンジリデン基または−(CH2)2O(CH2)2−基となる。
【0054】
本明細書において使用される場合、「置換基」は、たとえば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(たとえば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノ)、アシルアミノ(たとえば、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族または複素環式芳香族の部分であってもよい。
【0055】
したがって、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、検体を含む気体を、多孔質半導体基板の表面上に、この表面上に検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0056】
本発明は、周囲空気などの気体サンプルから直接検体を抽出するためのDIOSチップなどの半導体基板の能力を利用している。理論によって束縛しようと意図するものではないが、本発明は以下の現象を利用している。非疎水性の化合物を本発明により分析することもできるが、DIOS−MS基板が疎水性であるため、同様に疎水性であるサンプル中の化合物がチップ上に優先的に分配される。気体分子対検体分子の相対拡散速度のため、気相と吸着相との間の同様の分配も生じうる。
【0057】
本発明の大きな利点は、検体が気体サンプルからDIOSチップなどの上に直接付着し、続いてこれを直接MS機器に使用できるので、クライオフォーカスなどのサンプル前濃縮または調製無しに行えることである。本発明のさらに好都合な側面は、温度に敏感な検体を含みうるサンプルを分析できることである。本発明によると、脱離およびイオン化は、窒素レーザー、OPOレーザー、エキシマレーザー、または赤外レーザーを使用し、多くの化合物の劣化が生じることが知られている高温を使用しない1つの工程で実施することができる。したがって、熱脱離および気相分離が不要になることによって、本発明により、非常に改善された処理能力が得られる。GCおよびHPLCなどのクロマトグラフィーが不要である場合、反応性官能基のプレカラム誘導体化も不要となり、このことが本発明のさらなる利点となる。
【0058】
本発明の利点の1つは、ピコモル、フェムトモル、およびアットモルの量で分子を脱離/イオン化するための高感度の技術を提供することである。本発明の別の利点は、基板は、サンプルをイオン化するためにマトリックスを使用する必要がないことである。マトリックスが不要であるため、m/z値の測定は、通常マトリックスが関与する低質量干渉により複雑化することがない。マトリックスの干渉が軽減されるために、MALDI測定に見られる広く小さなピークと比較して、測定される検体の測定ピーク高さも改善される。
【0059】
本発明のさらに別の利点は、基板の化学的および構造的改質が容易であることである。これによって、生体分子または他の用途のために基板の脱離/イオン化特性を最適化することができる。
【0060】
一実施態様においては、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、多孔質吸光性半導体基板を提供することと;検体を含む気体を、この半導体基板の表面上に、気体中に含まれる検体を半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0061】
本発明は、検体の物理的性質の分析方法であって、多孔質吸光性半導体基板を得ることと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この検体は気体から直接吸着していることと;検体が充填された半導体基板に照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することとを含む方法も提供する。
【0062】
さらに別の実施態様においては、本発明は、物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと;検体が充填された半導体基板を減圧下におくことと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることとを含む方法を提供する。
【0063】
同様に、本発明は、検体イオンの同定方法であって、多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質、吸光性、シリコン半導体基板を提供することと;分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この気体がマトリックス分子を含まないことと;約±5,000から約±34,000ボルトの電位を検体が充填された半導体基板に印加することと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと;飛行時間型質量分析技術によってイオン化された検体の質量電荷比を分析することとを含む方法を含む。
【0064】
検体は、疎水性であってよく、多孔質半導体基板上に吸着されて保持されることができる。多孔質半導体基板上に吸着される検体の量は、約1ミリモル未満、または約1マイクロモル未満、またはさらには約1ナノモル未満である。分析前に、典型的には、MALDIにおいて一般的に使用される吸光性有機ポリマーなどの吸光性マトリックスと検体とを混合する必要がない。容易にイオン化される検体は、質量分析によってより容易に分析される。検体を含む気体は、周囲空気、または本来気体室温および室内圧力であるあらゆる組成物であってよい。気体は、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物であってよい。検体は、煙または他の汚染物質などの人間が原因の汚染物質であってもよく、これらの成分も含まれる。一実施態様においては、煙は、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である。検体は、乱用薬物、化学兵器、または爆薬、またはこれらの成分であってもよい。気体は、環境から直接サンプリングすることができるし、または気体は、真空ポンプを使用して空気サンプリング容器または袋の中に吸い込まれて空気サンプリング容器または袋にあるものでもよい。
【0065】
本発明の一実施態様においては、半導体基板が酸化される。本発明の別の実施態様においては、半導体基板が多孔質である。本発明さらに別の実施態様においては、半導体基板が、基板と結合した飽和炭素原子を有する物質と結合している。
【0066】
本発明の好ましい実施態様は、表面がエチルフェニル基と結合している多孔質半導体基板を有する。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、疎水性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、親水性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、親フッ素性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。
【0067】
多孔質半導体基板は、好ましくは多孔質シリコン基板である。多孔質シリコンの多孔度は、陽極酸化およびエッチングのために塊状シリコンの本来の状態から失われたシリコンの量として定義することができる。この重量測定は、多孔質半導体層の平均密度を計算し、この密度を元の半導体の密度と比較することによって行うことができる。多孔度(%値として表現される)=10−100*(多孔質半導体層の密度/元の半導体層の密度)。したがって、多孔度45%の多孔質半導体のサンプルは、45%が空隙(から)であり、55%が半導体(充填されている)である。ブラムヘッド(Brumhead)ら,Electrochim.Acta(UK)38、191−97(1993)。
【0068】
本発明のある実施態様によると、多孔質半導体基板の多孔度は、約4%から約100%、または約50%から約80%、さらには約60%から約70%とすることができる。好ましい実施態様においては、多孔度が約50%から約80%である。別の好ましい実施態様においては、多孔度が約60%から約70%である。
【0069】
シリコンなどの多孔質半導体は、本発明の方法に有効な基板であり、多孔質シリコンが、ミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスのいずれであるかは無関係である。ミクロポーラス基板は、約2ナノメートル未満の孔径を主に有する基板である。メソポーラス基板は、約2から50nmの孔径を主に有する基板である。およびマクロポーラス基板は、約50nmを超える孔径を主に有する基板である。好ましい側面においては、孔隙の形態は、材料の一部が(典型的には酸化過程によって)単結晶などの連続(すなわち空隙のない)サンプルから除去されているエッチングされた材料の形状と類似しており、円柱空隙構造の形成以外の方法において原子を付着させて形成される材料とは異なる。
【0070】
多孔度は、質量または体積当たりの比表面積に関して定義することもできる。比表面積は、多孔質半導体の単位質量当たりの表面積、または多孔質半導体の単位体積当たりの表面積のいずれかとして表すことができ、これら2つの値は、半導体材料の密度と関係している。本発明によると、多孔質シリコンの比表面積は、典型的には約1m2多孔質シリコン1g(または約2m2/多孔質シリコン1cm3)から約1000m2/多孔質シリコン1g(または約2300m2/多孔質シリコンcm3)である。一実施態様においては、多孔質シリコンの表面は、約200から約800m2/g(450から1900m2/cm3)の比表面積を有する。別の実施態様においては、多孔質シリコンの表面は、約640m2/多孔質シリコン1g(または約1500m2/cm3)の比表面積を有する。
【0071】
ある実施態様においては、本発明は、多孔質、吸光性、半導体基板上に吸収された検体のイオン化方法を提供する。したがって、多孔質シリコン基板を使用する場合、本発明の方法は、好ましい多孔質シリコンの実施態様、すなわちシリコン上脱離/イオン化(DIOS)に関して言及することができる。
【0072】
光を吸収して、この光エネルギーを検体に伝達してこれをイオン化することができる金属および半金属などの他の伝導性材料または半導体材料は、本発明の範囲内にある。多孔質表面を有するように作製した場合に強いUV吸収を示す他の半導体は、本発明の範囲内にあり、たとえばIV族半導体(たとえばダイヤモンド)、IからVII族半導体(たとえばCuF、CuCl、CuBr、CuI、AgBr、およびAgI)、IIからVI族半導体(たとえばBeO、BeS、BeSe、BeTe、BePo、MgTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、CdS、CdSe、CdTe、CdPo、HgS、HgSe、およびHgTe)、IIIからV族半導体(たとえばBN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaSb、InN、InAs、およびInSb)、閃亜鉛鉱構造半導体(たとえばMnS、MnSe、β−SiC、Ga2Te3、In2Te3、MgGeP2、ZnSnP2、およびZnSnAs2)、ウルツ鉱構造化合物(たとえばNaS、MnSe、SiC、MnTe、Al2S3、およびAl2Se3)、I−II−VI2半導体(たとえばCuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuTlS2、CuTlSe2、CuFeS2、CuFeSe2、CuLaS2、AgAS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、およびAgFeS2)が挙げられる。さらに、放射線を吸収することができるAl2O3、SiC、GaP、Si1−xGex、Ge、GaAs、およびInPなどの他の公知の基板が発明の範囲内である。
【0073】
典型的には、多孔質半導体基板は疎水性であり、金属または半金属、たとえばシリコン、好ましくは多孔質シリコンを含む。多孔質半導体は、結晶シリコンなどのシリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造することができる。多孔質半導体基板は、酸化されてもよいし、またはn型半導体またはp型半導体であってもよい。
【0074】
新しくエッチングした多孔質シリコン基板は、準安定状態の水素化シリコン末端のために疎水性である。準安定状態の水素化シリコン末端は、酸素の存在下では本来不安定であり、最終的に空気中で酸化されて酸化シリコン表面となる。基板は化学的に酸化することもできる。水素化シリコン末端は、ルイス酸の媒介するまたは光により促進されるヒドロシリル化反応によって変化させることもできる。これらおよび他のヒドロシリル化反応は、多孔質シリコン基板を安定化させ官能化させる。これらのヒドロシリル化反応により付与された被覆は、一般に表面を疎水性にする機能を果たすが、末端が化学的に適切な置換基を有する場合には親水性にすることができる。疎水性のヒドロシリル化された基板は水性媒体に対して安定性が高いので、このような基板はわずかな劣化で繰り返し再利用することができる。たとえば、強アルカリ溶液によって通常破壊される基板は、ルイス酸の媒介するまたは光により促進されるヒドロシリル化反応によって官能化させると、強アルカリ溶液中で煮沸することができる。ブリアク(Buriak)ら,J.Am.Chem.Soc.120、1339−40(1998);およびスチュアート(Stewart)ら,Angew.Chem.Int.Ed.37,3257−3261(1998)。
【0075】
多孔質半導体基板は、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。たとえば、製造方法の1つは、固体基板、たとえば半導体ウエハから多孔質基板を製造することを含み、たとえば、好ましい実施態様では、多孔質基板として固体基板の一部を選択的に形成し、場合により基板末端(すなわち「被覆」、「リガンド」、「改質」、または「単分子層」)して基板を多孔質基板のために改質する。
【0076】
DIOS用多孔質シリコンは、n型またはp型のいずれのシリコンからも製造することができる。n型メソポーラスおよびp型ミクロポーラスまたはメソポーラスサンプルが、有用なイオン信号を発生させるために効果的である。
【0077】
通常、DIOS方法では、多孔質シリコン基板が平坦な結晶シリコンから製造される。非ドープ半導体は、当業者に公知の光エッチングまたは単純な化学エッチングを使用して製造することができる。カリス(Cullis)ら,J.Appl.Phys.82,909(1997);およびユング(Jung)ら,J.Electrochem.Soc.140,3046(1993)。定電流エッチング手順の結果、多孔質シリコンは、数ミクロンの厚さの多孔質層であり、UV光に曝露すると明るい光ルミネセンスを示すことが多いナノ結晶構造を有する。セーラー(Sailor)ら,Adv.Mater.9、783(1997);およびキャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990)。
【0078】
検体が広がるのを防止するためなどの特定の用途に基板の脱離/イオン化特性を最適化するために、半導体基板を改質することができる。好ましくは、多孔質表面の改質によって、表面の安定性が改善され、表面で発生する信号が改善されると考えられているので、多孔質シリコンの表面が末端で改質される。表面の改質は、有機末端をヒドロシリル化して、水性媒体に対して安定な疎水性多孔質シリコンを得ることによって行うことができる。このような基板は、わずかな劣化で繰り返し再利用することができる。
【0079】
一般に多孔質シリコン基板は、MS分析条件に対して不活性であると考えられており、多孔質シリコン材料の製造は安価で単純である。20μmおよび100nmまでの小ささの多孔質シリコンの構造は、標準的な光学技術によって製造することができる。カリス(Cullis)ら、J.Appl.Phys.82、909−65(1997);ドアン(Doan)ら,Appl.Phys.Lett.60,619−20(1992);およびシュムキ(Schmuki)ら,Phys.Rev.Lett.80,4060−4063(1998)。カリス(Cullis)ら,J.Appl.Phys.82,909(1997)も参照されたい。
【0080】
多孔質シリコン基板は、たとえば被覆によって製造して、疎水性、親水性、または親フッ素性の表面を有する基板を得ることができる。このような表面被覆は、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンなどのあらゆる非金属原子からなってよい。好ましい一実施態様においては、疎水性表面被覆は、金属と共有結合している飽和炭素原子を含み、たとえば金属基板がエチルフェニル基と共有結合している。
【0081】
多孔質シリコン基板は、種々の表面末端、たとえば、水素(すなわち、本来の状態)、ドデシル、エチルフェニル、および酸化物を有することができる。一実施態様においては、より疎水性の高い表面、たとえばエチルフェニル末端表面である。
【0082】
別の実施態様においては、本発明は、共有結合した単分子層を含む表面を有する多孔質シリコン基板を提供する。多孔質シリコンは広い表面積を有し、このため、これはセンサー構造および試験溶液中の検体の電気的感知への使用に特に適している。しかし、多孔質シリコンは、種々の条件に対して不安定であることが知られている。本発明の方法による溶媒溶解性ルイス酸の使用と関連する穏やかな反応条件によって、安定な多孔質シリコン表面が得られる。
【0083】
一実施態様においては、表面被覆は、シリコン表面上の共有結合した単分子層であり、この単分子層は、式:
【0084】
【化3】
のいずれかによる化学的部分を含む。
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環式環を形成する。)
本発明は、R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である方法を含む。
【0085】
したがって、本発明の利点の1つは、比較的穏やかな条件、すなわち室温において表面保護単分子層を形成できることである。本発明は、多孔質シリコンの表面を保護し、さらに、たとえば試験流体中の所定の検体と、ある電気測定的に検出可能な方法で相互作用することができる部分または官能基で選択的に官能化することもできる方法も提供する。
【0086】
本発明の方法は、共有結合した表面を形成するためにアルキンおよびアルケンの混合物を使用して実施することもでき、単分子層中の基のモル分率は、一般に、単分子層の形成に使用される試薬混合物中のアルキンまたはオレフィンのモル分率に対応する。本発明の方法は、共有結合した表面を形成するためにアルキンおよびアルケンの混合物を使用して実施することもでき、単分子層中の基のモル分率は、一般に、単分子層の形成に使用される試薬混合物中のアルキンまたはオレフィンのモル分率に対応する。
【0087】
R1C≡CR2の形態のアルキン、またはR1R2C=R3R4の形態のオレフィンを、多孔質シリコン表面に取り付けることができ、上式中、R基は、それぞれ独立して、水素、または置換または未置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であってよく、R基置換基としては、(C1〜C24)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、エステル、第1級または第2級または第3級アミノ、カルバミド、チオール、アルキルチオからなる群からの置換基が挙げられ、または2つのR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが5または6員環を形成する。R基は、本明細書において定義されるあらゆるアルケニル基置換基であってもよい。
【0088】
したがって、多孔質シリコンの例としては、アルキン(R1C≡CR2)でヒドロシリル化されたものが挙げられ、上式中、R1は水素であり、R2は、−(CH2)9CH3(1−ドデシンから)、−(CH2)8COOCH3(メチル10−ウンドシノエート(metyl 10−undcynoate)から)、−フェニル(フェニルアセチレンから)、−tert−ブチル(tert−ブチルアセチレンから)、−(CH2)3CN(5−シアノ−1−ペンチンから)、−(CF2)7CF3、−(CH2)2OH(3−ブチン−1−オールから)である。多孔質シリコンのさらなる例としては、オレフィン(R1R2C=R3R4)でヒドロシリル化されたものが挙げられ、上式中、R2、R3、およびR4は水素であり、R1は(CH2)5CH3(1−ヘキセンから)であった。多孔質シリコンは、R1、R2、およびR3がすべてメチル基であり、R4が水素である(2−メチル−2−ブテンから)であるオレフィンを使用してもヒドロシリル化されることが知られている。メチルエステル末端のR基でヒドロシリル化された多孔質シリコンはわずかに親水性となり、ヒドロキシ末端アルキル基、およびニトリル末端アルキル基で改質した多孔質シリコンはどちらも強い親水性となった。他の末端では疎水性となった。アルキンはアンチマルコフニコフ付加でオレフィンとして多孔質シリコンに結合し、新しい二重結合の一方の側と共有結合し、他方の側と水素結合して新しいcis 二重結合を形成する。オレフィンの場合、水素を有する炭素が多孔質シリコン表面と共有結合し、二重結合の他端が水素を得る。多孔質シリコンとオレフィンとの反応によって、飽和炭素原子と結合したシリコンを有する被覆基板が形成され、一方、多孔質シリコンとアルキンとの反応によって、不飽和炭素原子と結合したシリコンを有する被覆基板が形成される。したがって、シリコン表面は、意図する最終用途に適切となるように親水性、疎水性、または親フッ素性に改質することができる。
【0089】
また、共有結合化学種の混合物を含む共有結合単分子層は、化学量論量より少ない量のアルケンまたはアルキン反応物質と表面とを逐次反応させることによって形成することができる。共有結合単分子層上に存在する官能基、たとえば、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシおよびチオールを使用して、標準的なエステルまたはアミド形成カップリング技術を使用し生物学的に重要な分子とさらにカップリングさせることによって、表面を官能化させることができる。
【0090】
通常、多孔質半導体基板は、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である支持構造に固定される。多孔質半導体基板は、支持構造上の1つの連続相を形成することができるし、または支持構造上の2つまたはそれ以上の別々の領域またはパッチを形成することもできる。支持構造は実質的に平面または粒子状であってよく、粒子状の場合、この支持構造を2の支持構造に固定することができるし、または遊離の粒子状材料として使用することもできる。好ましくは、支持構造は、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである。
【0091】
検体を含むサンプルが好適な半導体基板に導入(あるいは充填または付着)されると、この検体は脱離およびイオン化が可能な状態になっている。検体の脱離およびイオン化には電磁放射線源が必要である。電磁放射線源によって放射線が得られ、この放射線は半導体基板が吸収することができ、検体の脱離およびイオン化に使用して、イオン化された検体またはこの化学反応によって得られる生成物を生成することができる。
【0092】
本発明のある方法は、多孔質半導体基板への電磁放射線の照射を含む。この方法は、最初に多孔質半導体基板を真空下におき、続いて半導体基板を真空下におきながら放射線照射することを含むことができる。電磁放射線は、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生させることができる。放射線照射により、減圧下またはほぼ大気圧において脱離が起こる。多孔質半導体基板に電磁放射線を照射することによって、検体の脱離およびイオン化が起こって、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られる生成物が生成する。
【0093】
脱離/イオン化が起こる温度は、理想的には検体が熱劣化する温度よりも低温であり、したがって本発明は、前述の従来技術に対して大きく前進している。
【0094】
本発明の一実施態様においては、検体が充填された半導体基板にレーザーが照射される。多孔質シリコン基板の場合、電磁放射線は好ましくは紫外パルスレーザーである。また、検体を含む半導体基板の部分に紫外パルスレーザーの焦点を合わせると好ましい。
【0095】
本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板に紫外光が照射される。本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された基板に約337nmの波長を有する光が照射される。本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板に正電圧が印加される。本発明のさらに別の実施態様においては、約5,000から約30,000ボルトの電圧が、検体が充填された半導体基板に印加される。サンプルを照射する別の方法は、レンズを使用し、場合により減光フィルタを使用して、出力2から50μJ/パルスの337nmパルス窒素レーザー(レーザー・サイエンス・インコーポレイテッド(Laser Science,Inc.))からのレーザーショットを使用することである。当業者であれば、種々の異なるレーザー(種々の波長の光を発生する)を本発明の方法に使用できることが理解できるであろう。
【0096】
質量分析を実施する場合、多孔質半導体基板と大地とに関して正または負である電位差を有する電界が多孔質半導体基板と検出器との間に形成される。一般に、電位差は、使用される個々の装置および/または電界に対する検体の向きに依存する。典型的には、電位差は約±5000から約±30,000ボルトの範囲である。
【0097】
たとえば、検体を含む半導体基板は、照射中は正電圧に維持されるが、適切に変化させて同じ方法を陰イオンモードで行うこともできる。分光計の残りに対して正電圧が使用されて、陽イオンは基板を離れて、検出器に向かう。プロトン移動によってイオンが形成されるので、陽イオンと正電圧との反発が好ましい場合があり、たとえば、基板の電圧範囲は約+5,000から約+30,000ボルト(好ましくは約+20,000ボルト)である。基板または伝導性サンプル板が接地電位に維持され、続いてイオンが引き出されて高い電位に加速される別の構造を使用することもできる。代表的な構造は、接地電位であるイオン源、プレート、およびDIOSチップ、ならびに適用される抽出場(たとえば「軸方向」MALDI飛行時間型機器である、「マイクロマスM@LDI」(Micromass M@LDI))を含み、これによってイオンが高い運動エネルギーに加速される、あるいは、比較的低い電圧(たとえば、約0から約200ボルト)が印加され、イオンが衝突冷却され、続いて直交飛行時間型質量分析器のパルサー領域に導入される。
【0098】
飛行時間型検出器を有する質量分析器は、脱離およびイオン化された検体を測定するのに好ましい検出器であり、さらにより好ましくは、飛行時間型質量分析器より前に、同じ質量のイオンの間の運動エネルギー差を補正するイオンリフレクターが配置される。飛行時間型質量分析器の場合による別の向上は、検体の脱離およびイオン化と、質量分析器による初期加速電圧の印加との間に短い制御された遅れが存在する場合に実現される。場合により本発明の別の実施態様は、イオンリフレクターを使用して、脱離し、イオン化され、反射した検体に対してポストソース分解測定を行う。他の質量分析器、たとえば、磁気セクター型、シングル四重極型、トリプル四重極型、イオントラップ型、たとえば、リニアイオントラップ型および三次元イオントラップ型、直交飛行時間型、飛行時間/飛行時間型タンデム、およびこれらの質量分析器の複合的な組み合わせ、磁気イオンサイクロトロン共鳴機器、偏向機器、ならびに四重極質量分析器も、本発明の範囲内である。
【0099】
一実施態様においては、本発明は、またはオフラインのいずれかでレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結されたDIOS系監視システムを提供する。多数の質量分析システムは、設計が単純であり、小型であり、現場で使用するのに十分な携帯性を有する。このような携帯型システムを使用して、本発明のDIOS系サンプリングおよび分析方法を、実験室環境の完全に外側で実施することができる。本発明の別の実施態様においては、使い捨ての1回限りで使用されるDIOSターゲットにサンプルを吸着させ、続いて分析のために実験室環境に戻される。
【0100】
本発明は、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析に基づくDIOSシステムを使用するので、本発明の一実施態様は、携帯型空気モニタリングに理想的な小型で単純で使用が容易なシステムを提供する。本発明によって提供されるシステムは、希ガス(GC用のヘリウム、またはFID検出器用の水素など)が不要であり、高出力の加熱要素が不要であるため、低消費電力が考慮されて設計されている。
【0101】
好ましい実施態様においては、測定される物理的性質は質量であり、検体イオンの物理的性質の測定方法は、質量分析技術によって検体イオンまたはイオンフラグメントの質量電荷比(m/z)を分析する。同様に、本発明の方法は、ある実施態様では質量分析技術によって検体イオンまたはイオンフラグメントの質量電荷比(m/z)を測定する分析工程を含むことができる。
【0102】
この分析工程は、検体の物理的性質を決定または測定することを含み、好ましくは分析工程は定量的である。ある実施態様においては、内部標準を参照しながら定量的分析が実施される。この場合の物理的性質は、質量分析技術により測定される検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である。ある実施態様においては、検体のイオン化によって生成したイオンは、検体の分子イオンである。本明細書において使用される場合、用語「分子イオン」は、プロトン化化学種、脱プロトン化化学種、分子イオン付加体(たとえば、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの付加体などのアルカリ金属付加体)などを含むが、これらに限定されるものではない。別の実施態様においては、検体のイオン化によって生成したイオンは、検体のフラグメントイオンである。
【0103】
質量分析技術に使用される質量分析器は、直交飛行時間型質量分析器、イオントラップ、たとえば、三次元イオントラップ(たとえば、フィネガン・LCQデカXP MAX(Finnegan LCQ Deca XP MAX)(登録商標)、マサチューセッツ州ウォバーンのサーモ・エレクトロン・コーポレーション(Thermo Electron Corporation,Woburn,MA)より入手可能)、リニアイオントラップ(たとえば、マサチューセッツ州ウォバーンのサーモ・フィネガン・コーポレーションより入手可能なフィネガンLTQ(Finnegan LTQ)(登録商標)、ならびにコネチカット州ノーウォークのアペラ・コーポレーション(Applera Corporation,Norwalk,CT)より入手可能なQトラップ(Q TRAP)(登録商標)および4000Qトラップ(4000 Q TRAP)(登録商標)LC/MS/MSシステム)シングル四重極、トリプル四重極、フーリエ変換 MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合型、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択することができる。さらに、質量分析計は正または負のいずれのモードでも操作することができ、たとえば、多孔質半導体基板は大地に対して正または負のいずれであってもよい。
【0104】
本発明は、本明細書に記載される方法で使用される装置も含む。したがって、本発明は、気体を能動サンプリングし、この気体を多孔質吸光性半導体基板に誘導する装置であって、入口端および出口端を有する気体導管と;入口端および出口端を有するノズルであって、導管出口端とノズル入口端とが流体接続され、導管出口端からの気体をノズルから多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと;気体を導管入口端に誘導し、ノズル出口端を介して気体を移動させるポンプとを含む装置に関する。ポンプは、導管出口端とノズル入口端との間に配置して、これらと流体接続することができる。同様に、ポンプを導管入口端に配置して、気体を導管入口端を通り、ノズル出口端まで通るように圧送することができる。別の実施態様においては、ポンプが、入口端および出口端を有する管をさらに含み、この管の入口端がポンプと流体接続され、圧送される気体が管から導管入口端に送られるように、管の出口端は導管入口端に対して位置決めされる。また、この装置は多孔質吸光性半導体基板をさらに含み、ノズル出口端から押し出された気体が半導体基板上に向かうように、この半導体基板がノズル出口端に対して位置決めされる。場合によっては、半導体基板は、ポンプによる気体を受け入れるのに適した容器内に封入される。
【0105】
本発明は、気体を受動的サンプリングするための装置であって、上部カバーであって、上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと;下部プレートであって、下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと;下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、上部プレートと下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が下部プレートの遠位端に流れて表面と接触し、場合により、気体の流れを実質的に妨害しない保護カバーを有する装置も含む。
【0106】
図1から4を参照しながら本発明のある代表的な実施態様を説明する。図1は周囲空気をDIOSチップ上に直接サンプリングするための本発明による装置を示している。ポンプ3の作用によって気体取り入れ口1の入口端に周囲空気が誘導される。ポンプ3の入口端は、ホース2によって気体取り入れ口1の出口端と流体接続される。ポンプ3の出口端は、ホース2aによってノズル4の入口端と流体接続される。次に、ポンプ3によって、周囲空気が押し出されて、管2aからノズル4の出口端まで送られる。多孔質シリコン表面(チップの光化学エッチングによって形成される)を有するDIOSチップ5は、ノズル4の出口端に対して位置決めされ、これによって、ノズルを通って圧送された周囲空気がDIOSチップ5の多孔質シリコン表面に向かい、これによって空気中の成分が、多孔質シリコン表面上に吸着して濃縮される。
【0107】
図2は、DIOSチップ上に周囲空気を直接サンプリングするための本発明による装置の別の実施態様を示している。図2に示される「吸い込み」方法によると、気体取り入れ口3の出口端が、ホース4により、ノズル5の入口端と直接的に流体接続される。ポンプ2の出口端は、J字型管1の入口端と流体接続される。J字型管のJ字型出口端が、気体取り入れ口3の入口端付近に配置されることで、周囲空気は、気体取り入れ口3の入口端に入り、接続管4を通りノズル5を通るように圧送される。この場合も、多孔質シリコン表面(チップの光化学エッチングによって形成される)を有するDIOSチップ6は、ノズル5の出口端に対して位置決めされ、これによって、ノズルを通って圧送された周囲空気がDIOSチップ6の多孔質シリコン表面に向かい、これによって空気中の成分が、多孔質シリコン表面上に吸着する。
【0108】
図3は、本発明による受動的周囲空気サンプル装置を示している。この実施態様においては、DIOSチップ1には、複数の上方向に突出する壁が設けられており、これによって複数のU字型チャネルが形成されている。DIOSチップの遠位端には、DIOSチップ上に含まれる多孔質シリコン表面が存在する。複数の下方向に突出する壁を有するカバー3が提供され、これによって複数のU字型チャネルが形成される。カバー3は、DIOSチップ1の上に配置され、これによってカバーの一番外側の下方向に突出する壁が、多孔質シリコン表面と隣接し、DIOSチップの表面と接触するが、多孔質シリコン表面とは接触しない。この反対側の最も外側の下方向に突出する壁、および残りの下方向に突出する壁は、DIOSチップの表面と接触しないような長さであり、これらの壁の端部と、DIOSチップの表面との間に空気が流れる空間が残留する。カバー3もDIOSチップ1に対して位置決めされており、DIOSチップの上方向に突出する壁と、カバー3の下方向に突出する壁とがかみ合って、バッフル構造が形成され、これによって周囲空気は、バッフルを通過して移動して、DIOS チップ1の遠位端にある多孔質シリコン表面と接触することができる。
【0109】
図4は、図1から3に示される装置のいずれか1つを使用して周囲空気の成分を吸着させたDIOSチップ1を示している。このDIOSチップは、サンプルターゲットプレート2の上に搭載されて示されており、レーザーパルス3に曝露して、DIOSチップから成分が脱離してイオン化する。
【0110】
本発明の気体サンプリング装置は、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結することができる。したがって本発明の装置(および対応する方法)は、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン質量分析計と接続することができるし、または質量分析計は、携帯型であるか、小型化されるか、または現場での使用に適している。現場での分析に好都合となるために、多孔質吸光性半導体基板は使い捨てであってもよく、または多孔質吸光性半導体基板を現場での検体の捕集に使用し、続いて分析のため実験室環境に戻すこともできる。
【0111】
本発明は、分析のためのイオン化された検体を提供するための装置にも関する。この装置は半導体基板を有する。この装置は、放射線源も有するか、または放射線発生装置を受け入れることができる。放射線源によって減圧下で半導体基板に放射線が照射され、検体が基板上に吸着されていると、放射線照射によって分析のための検体の脱離およびイオン化を引き起こすことができる。
【0112】
一実施態様においては、本発明は、「バッグサンプリング」装置(たとえば、スペルコ(Supelco)モデル番号:1060、1062、または1063、米国ペンシルバニア州ベルフォンテ(Bellefonte,Pennsylvania,USA))を含み、DIOSチップは袋の中に入れられ、続いて周囲容器の内側が減圧されて、サンプリングされる空気が袋の中に吸い込まれ、空気ポンプ自体と空気とは接触しない。
【0113】
本発明の別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板は、放射線照射の前に減圧下におかれる。この減圧は、所望の感度に応じて実質的に変動させることができる。約10−6Torrから10−7Torrの圧力が、多数の種々の質量分析において典型的である。最大10−2Torrのより弱い減圧を使用することもできるが、圧力が増加するほど感度が低下すると思われる(TOF質量分析器に導入される前にイオンの衝突冷却/集束を行うために、直交TOF機器のソース領域ではより高い圧力が望ましい)。一方、たとえば軸方向TOF質量分析器の場合、感度のためにはより低い減圧を使用すると有益となる場合があり、10−11Torrまでの低さの圧力が可能である。しかし、極度な減圧を使用して実現される感度の改善においては、追加のまたは大型の真空ポンプを使用することの不便さおよび費用が正当化されることはほとんどない。
【0114】
本発明は、対象の種々の気体化学種を含んでいるかどうかを検出するための気体のモニタリング、およびモニタリングされる気体の種々の成分の検出および同定の目的に有用である。本発明は、汚染物質(たとえば、アミン、窒素複素環など)、乱用薬物、化学兵器(たとえば、有機リン、有機ヒ素)爆薬などの空気モニタリングに理想的である。本発明は、工程品質保証/品質管理、診断目的(たとえば、自動車排ガス)のための空気モニタリング、および汚染物質(たとえば、たばこの副流煙中の成分、「シックビル症候群」におけるホルムアルデヒドなど)のための空気サンプリングに使用することもできる。他の用途としては、プロセス流の監視、環境モニタリング、およびエンジン排ガス分析が挙げられる。さらに別の用途は、埋め立て地、家庭、工業的、商業的、および軍事的発生源かの有害廃棄物流出の監視である。
【0115】
検出可能な検体としては、たとえば、食品、工業用物質、または化学製品の製造によって生成される検体が挙げられる。このような検体としては、食品添加物(たとえば、増量剤、ビタミン、着色剤、または香料)、農薬(たとえば、病虫害防除剤、殺虫剤、除草剤、および肥料)、界面活性剤(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、接着剤(たとえば、イソシアネート接着剤)、樹脂(たとえば、木材の樹脂およびエポキシ樹脂)、有機汚染物質、およびプロセス薬品(たとえば、水系中に使用される化学物質)、たとえば凝集性ポリマー、殺生物剤、腐食防止剤、スケーリング防止剤、溶媒、およびこれらより生成した化合物が挙げられる。
【0116】
本発明は、プロセス制御および環境モニタリングの用途によく適している。本発明により分析することができる環境汚染物質の例としては、たとえば、病虫害防除剤、PCB、およびダイオキシンが挙げられる。本発明の方法は、発癌性または突然変異誘発性であることが公知の多環式芳香族炭化水素(PAH)の検出および分析にも使用することができ、このようなものの例としては、ピレン、ベンズ(a)アントラセン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン、ベンゾ(k)フルオランテン、ベンゾ(g,h,i)ペリレン、ジベンゾ(a,h)アントラセン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、アセナフチレン、ベンゾ(e)ピレン、フルオランテン、フルオレン、イデノ(1,2,3−cd)ピレン、ナフタレン、ペリレン、およびコロネンが挙げられる。当業者であれば、より容易にイオン化可能であるこれらの化合物の分析に本発明を使用すると最も好都合であることが理解できるであろう。
【0117】
本発明は、違法または非合法の薬物を含む「乱用薬物」または「不正麻薬」の検出に使用することもできる。乱用薬物は、主として気晴らしの目的または中毒を満足させるために使用され、多くの場合は自己投与されるか、または適格なヘルスケア提供者の監視なしに投与される。乱用薬物には、中毒または乱用の危険性が高い治療薬も含まれ、たとえばステロイド、鎮痛剤、抗うつ剤、および他の精神安定剤が挙げられる。乱用薬物は処方箋によって入手可能となるが、乱用または中毒が起こりやすい。乱用薬物の例としては、利尿薬(たとえば、アセタゾールアミド、アミロリド、ベンドロフルメサイアジド、ブメタニド、カンレノン、クロルメロドリン、クロルタリドン、ジクロフェナミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、マーサリル、スピロノラクトン、およびトリアムテレン)、麻薬性鎮痛薬(たとえば、アルファプロジン、アニレリジン、スプレノルフィン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピパノン、エトヘプタジン、エチルモルヒネ、レボルファノール、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、およびトリメペリジン)、およびβ−ブロッカー(たとえば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、プロパノロール、およびソタロール)が挙げられる。乱用薬物の例としては、興奮薬(たとえば、アンフェプラモン、アンフェタミン、アンフェタミニル、アミフェナゾール、ベンゾフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、カフェイン、カチン、クロルフェンテルミン、クロベンゾレックス、クロルプレナリン、コカイン、コチニン、クロプロパミド、クロテタミド、ジメタンフェタミン、エフェドリン、エタフェドリン、エタミバン、エチルアンフェタミン、フェンカンファミン、フェネチリン、フェンプロポレックス、フルフェノレックス、メフェノレックス、メタンフェタミン、メトキシフェナミン、メチルエフェドリン、メチレンジオキシメタンフェタミン、メチルフェニデート、モラゾン、ニコチンニケタミド、ペモリン、ペンテトラゾール、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、ピプラドロール、プロリンタン、プロピルヘキセドリン、ピロバレロン、ストリキニーネ、およびテオフィリン)も挙げられる。乱用薬物のさらなる例としては、幻覚剤(たとえば、リセルグ酸ジエチルアミド、メスカリン、フェンシクリジン、ケタミン、ジメトキシメチルアンフェタミン、テトラヒドロカナビノール、マリファナ、メチレンジオキシメタンフェタミン)、鎮痛剤/睡眠薬(たとえば、抱水クロラール、グルテチミド、メプロバメート、およびメタクワロン)、およびアナボリックステロイド(たとえば、ボラステロン、ボルデノン、クロステボル、デヒドロメチルテストステロン、フルオキシメステロン、メステロロン、メタンジエノン、メタアンドロステノロン、メテノロン、メチルテストステロン、ナンドロロン、ノルエタンドロロン、オキサンドロロン、オキシメステロン、オキシメトロン、スタノゾロール、およびテストステロン)が挙げられる。乱用薬物のさらなる例としては、アヘン誘導体(たとえば、ヘロイン、モルヒネ、メタンドン、メペリジン、コデイン、プロポキシフェン、およびアセチルモルヒネ)、バルビツレート(たとえば、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール、ブタルビタール、およびブタバルビタール)、ベンゾジアゼピン(たとえば、ジアゼパム、クロラゼペート、クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム、およびトリアゾラム)、抗精神病薬−抗うつ薬(たとえば、クロルプロマジンク(chlorpromazinc)、トラゾドン、ハロペリドール、アモキサピン、炭酸リチウム、ドキセピン、イミプラミン、およびアミトリプチリン)、および鎮痛薬(たとえば、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフルニサル、およびフェニルブタゾン)が挙げられる。
【0118】
場合によっては、本発明を、治療薬の検出および測定に使用することもできる。「治療薬」の検体は、典型的には、合法的または医学的に認可された、治療または診断目的で投与される薬物または薬剤である。治療薬は、処方箋なしで入手できるものがあるし、処方箋によって入手可能となるものもある。治療薬の例としては、アドレナリン作動薬、抗蠕虫薬、座瘡治療薬、抗アドレナリン作動薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ薬、抗アンドロゲン物質、抗貧血薬、抗狭心症薬、抗不安薬、関節炎治療薬、抗喘息薬、抗アテローム硬化薬、抗菌薬、抗胆石物質、結石形成防止薬、抗コリン作動薬、抗凝血薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗利尿薬、解毒薬、抗嘔吐薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン薬、抗線維素溶解薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗血友病薬、抗出血薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高リポタンパク血症薬、降圧薬、抗感染症薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、抗菌剤、片頭痛薬、細胞分裂抑制薬、抗真菌薬、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗好中球薬、肥満抑制薬、駆虫薬、抗パーキンソン病薬、逆ぜん動薬、抗ニューモシスチス症薬、増殖抑制薬、抗原虫薬、鎮痒薬、抗精神病薬、抗リウマチ薬、抗住血吸虫薬、抗脂漏薬、抗分泌薬、鎮痙薬、抗血栓薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿路結石薬、および抗ウイルス薬が挙げられる。
【0119】
治療薬のさらなる例としては、副腎皮質ステロイド、副腎皮質抑制剤、嫌酒薬、アルドステロン拮抗薬、アミノ酸、アンモニア解毒薬、アナボリックステロイド、覚醒薬、鎮痛剤(たとえば、リドカイン)、アンドロゲン、麻酔薬、食欲減退薬、食欲抑制剤、良性前立腺肥大治療薬、血糖調整剤、骨吸収阻害剤、気管支拡張薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心抑制薬、心保護薬、強心剤、心血管薬、コリン作動性アゴニストおよびアンタゴニスト、コリンエステラーゼ不活性化剤または阻害剤、コクシジウム抑制薬、認知補助薬および賦活薬、抑制薬、診断補助薬および造影剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、殺寄生虫薬、催吐薬、酵素阻害剤、およびエストロゲンが挙げられる。
【0120】
薬物である検体に言及する場合、元の薬物の種々の代謝物および誘導体を含むことも意図しており、体内で薬物が迅速に代謝されるため、これらが検出される主要物質となることが多い。好ましくは、このような検体は揮発性であり、すなわち、たとえば、特定の薬物を使用したことが知られているまたは疑われている人物の呼気中に見いだされる。
【0121】
本発明による検体は、環境毒性物質、産業性汚染物質、工業薬品、または他の汚染物質(たとえば、アミン、窒素複素環など)であってもよい。検体は化学兵器(たとえば、有機リンおよび有機ヒ素化合物)であってもよい。本発明のさらに別の用途は、埋め立て地、家庭、工業的、商業的、および軍事的発生源から排出された空気中の有害廃棄物の監視である。
【実施例】
【0122】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、この実施例はさらなる限定として構成されたものではない。
(たばこの煙中のニコチンの検出)
火を付けたたばこをガラスホルダ(使い捨てピペットから切り取った短いガラスの断片)に取り付け、不活性プラスチック管でエルレンマイヤーフラスコの枝管に接続した。フラスコの口にゴム栓を取り付け、このゴム栓にガラス製使い捨てピペットを挿入した。フラスコから突出するピペットの末端を、ダイヤフラムポンプと接続し、これによって、燃焼するたばこから、フラスコ内部、および最後にポンプと続く閉鎖系が形成された。ポンプは、たばこの煙をフラスコ内に引き寄せるために使用した。十分な煙が捕集されてから、ポンプを外し、圧縮空気源と取り換え、たばこおよびホルダをガラス製使い捨てピペットと取り換えた。系を流れる気流が逆方向になり、加圧下で捕捉された煙はフラスコから排出された。ピペットのテーパ付き端部を介してこの煙をDIOSチップ上に誘導し、これによって吸着した材料の個々のスポットが形成された。次にこれらのスポットを質量分析(TOF LD+)によって分析し、強いニコチン信号をm/z=162において明確に見ることができた。このスペクトルを以下に示す。
【0123】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明による能動空気サンプリング装置を示しており、周囲空気は取り入れ口の入口端からサンプリングされ、DIOSチップの多孔質シリコン表面に向けられているノズルに圧送される。
【図2】本発明による能動空気サンプリング装置の別の実施態様を示しており、周囲空気が圧送されて、取り入れ口の入口端まで送られる。
【図3】本発明による受動的直接空気サンプリング装置を示している。
【図4】ターゲットプレート上に搭載されたDIOSチップを示しており、DIOSチップの多孔質シリコン表面上に吸着した(図1から3に示されるいずれかの装置を使用して)周囲空気の成分は、レーザーパルスによって脱離およびイオン化され、たとえば、飛行時間型質量分析計によって検出される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年2月10日に出願された米国仮特許出願第60/446,383号明細書(代理人整理番号WCZ−041−1)、2003年2月10日に出願された米国仮特許出願第60/446,453号明細書(代理人整理番号WCZ−041−1)、および2003年5月30日に出願された米国仮特許出願第60/474,457号明細書(代理人整理番号WCZ−041−3)に対して優先権を主張し、これらすべての記載内容全体が明確に本明細書中に参考として援用されている。
【背景技術】
【0002】
気体、特に周囲空気の成分の測定および検出は、環境モニタリングにおいて、法医学において、およびリサーチツールとして重要である。
【0003】
簡単な方法の1つにおいては、気体から成分を吸収してこれと反応する特殊な固体を含有する比色指示薬は、特徴的な色の変化が起こることで、定性的にある検体の存在を検出する。たとえば、一酸化炭素および硫化水素などの毒性化学物質の存在を検出する指示装置が市販されている。このような比色装置は通常安価であるが、これらで計画されている補足的な特定化学物質の固体指示材料の反応性が限定されているため、気体成分の検出には一般には有用ではない。さらに、比色指示薬では一般に定量的な測定が不可能である。
【0004】
より一般的な有用性を有する他の技術では、低濃度成分を含む気体サンプルの成分の検出および測定が可能である。多くの場合、機器の感度によって気体の低濃度成分の検出が限定される。低濃度測定を改善するために、気体によって運搬される検体は、検出の前に濃縮することができる。典型的には、気体サンプルの成分の分析のために3工程の方法が使用される。気体サンプルの捕集、この中の検体の前濃縮、および検体の検出である。たとえば、気体サンプルは、約6から12リットルの(またはこれを超える)真空キャニスタによって、制御弁を開放して周囲空気を吸い込むことで捕集することができる。次に、周囲空気が分析のための研究所に戻される。たとえば、マクレニー(McClenny)ら、「周囲空気中の毒性VOCを監視するためのキャニスタに基づく方法」(Canister−based method for monitoring toxic VOCs in ambient air),J.Air Waste Manage.Assoc.41,1308−18(1991)を参照されたい。しかし、より好都合には、気体サンプルの捕集、ならびに検体の前濃縮および検出の工程が多くの場合同時に実施される。
【0005】
気相から検体を前濃縮する方法の1つは、検体を溶解するのに適した溶液にサンプル気体を通すことを含む。たとえば、汚染物質が溶解する液体にバブリングすることによって汚染ガスを捕集することができる。典型的には、周囲空気は、湿気トラップおよびフィルタを通って抽出装置に入り、続いて液体抽出媒体と接触し、続いて分析を行うことによって気体汚染物質の濃度が決定される。連続供給機構が使用される場合、大きい気体体積を抽出し分析することができる。気液抽出方法は、一般に大量の溶媒、高価な装置、および長い分析時間を必要とするので、あまり広くは使用されていない。
【0006】
前測定濃縮のより一般的な方法では、気体サンプルから毒性化学物質、汚染物質、または他の対象物質を選択的に保持し脱離する活性炭などの「収着」材料を含む「吸着」(または「拡散」)管が使用される。十分に多量のサンプルが蓄積されるまで、ポンプによって、対象の検体を保持する収着材料を含む前濃縮管に気体サンプルを通すことができる。次に、前濃縮管周囲に巻き付けられた発熱体を使用して収着材料を加熱し、これによって、化学物質が脱離または揮発する。脱離後、種々の化学物質の存在、種類、または量を示す測定装置にこの化学物質が送られる。
【0007】
ある種の固体は、この表面上に特定の検体を保持することができる。多くの場合、空気流から有機化学物質を保持し濃縮するために活性炭またはチャコールが使用される。対象となる検体の性質に依存して種々の他の収着材料を使用することもでき、たとえば、アミンの分析に有用な材料の1つとして、アミンに対して親和性を有する吸着性有機ポリマー、たとえば、テナックス(登録商標)(2,6−ジフェニルフェニレンオキシドポリマー、ブッヘム(Buchem),N.V.の登録商標)と、無機多孔質材料でありアルカリ性である第2の吸着剤、たとえばソーダ石灰との混合物が挙げられる。米国特許第4,701,306号明細書。
【0008】
典型的には、収着剤系技術は、カートリッジを通してフラッシングした気体サンプルから対象の成分を優先的に保持するために、固定相材料を含む流入チャンバを使用する固相抽出方法である。次に、保持された検体が可溶性である溶媒がカートリッジにフラッシングされ、これによって分析の対象成分の溶液が得られる。活性炭、黒鉛化カーボンブラック、シリカゲル、石英ガラス、炭素モレキュラーシーブ、またはポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)などの種々の固定相吸着材料が充填されたものなどの数種類の吸着管が市販されている。溶媒で濡らされた収着材料は、蒸気またはエアロゾルから検体を前濃縮するためにも使用されているが(米国特許第5,173,264号明細書、第4,912,051号明細書、および第4,977,095号明細書)、乾燥収着材料がより一般的に使用されている。
【0009】
たとえば、EPA法(EPA Method)TO−1、−5、および−17は、周囲空気中の揮発性有機化合物を測定するための収着剤系方法である。これらのEPA法においては、テナックス(登録商標)、XAD−2(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,Pennsylvania)のローム・アンド・ハース・カンパニー・コーポレーション(Rohm and Haas Co.Corp.)の商標)、またはチャコールなどの吸着剤を含むカートリッジにサンプルを通し、続いて、検体を熱的に脱離させるか、または溶媒抽出することによって、分析が行われる。リギン(Riggin),「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要:方法TO−1およびTO−2」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air:Methods TO−1 and TO−2),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park),NC 27711,EPA 600/4−84−041,1984年4月;ウィンベリー(Winberry)ら,「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要:方法TO−14,補遺2」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air:Method TO−14,Second Supplement),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park),NC 27711,EPA 600/4−89−018,1989年3月;著者不明,「周囲空気中の毒性有機化合物測定方法の概要、第2版:方法TO−17」(Compendium of Methods for the Determination of Toxic Organic Compounds in Ambient Air,Second Edition:Method TO−17),米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),シンシナティ(Cincinnati),OH 45268、EPA/625/R−96/010b,1997年1月を参照されたい。さらに、ウールフェンデン(Woolfenden)、「収着管を使用した後に熱的脱離を行う空気中のVOCの監視−キャピラリーGC分析−データ集約および実施上の基準」(Monitoring VOCs in air using sorbent tubes followed by thermal desorption−キャピラリー GC analysis−Summary of data and practical guidelines),J.Air Waste Manage.Assoc.47,20−36(1997);パンコフ(Pankow)ら,「多重収着剤吸着/熱脱離およびガスクロマトグラフィー/質量分析を使用した周囲空気中の多種多様な揮発性有機化合物の測定」(Determination of a wide range of volatile organic compounds in ambient air using multisorbent adsorption/thermal desorption and gas chromatography/mass spectrometry),Anal. Chem.70、5213−21(1998); チッチョリ(Ciccioli)ら,「サンプルの前濃縮のためのカーボパックBを使用する微量で大気中に存在する有機成分のGC測定」(GC Evaluation of the Organic Components Present in the Atmosphere at Trace Levels with the Aid of Carbopack B for Preconcentration of the Sample),J.Chrom.351、433−49(1986);ブラウン(Brown)ら,「周囲大気中の微量有機気体汚染物質の捕集および分析:テナックス−GC吸着管の性能」(Collection and Analysis of Trace Organic Vapour Pollutants in Ambient Atmospheres: The Performance of a Tenax−GC Adsorbent Tube),J.Chrom.178、79−90(1979);ウォーリング(Walling),「固体吸着剤を使用して周囲空気をサンプリングした場合の分散空気体積設定の有用性」(The Utility of Distributed Air Volume Sets When Sampling Ambient Air Using Solid Adsorbents),Atmos.Environ.18、855−59(1984);ならびに米国特許第4,541,268号明細書も参照されたい。
【0010】
ガスクロマトグラフィーと併用する場合、吸収管が加熱されることで、保持された検体が迅速に脱離して、ガスクロマトグラフィーカラムに注入されて濃縮された検体パルスが得られる。このような方法においては、前濃縮管はサンプルの前濃縮および注入の2つの目的を果たす。次に、サンプル中の異なる成分がクロマトグラフィーにより分離され、検出器によって分析される。ガスクロマトグラフィーは、対象の検体を含む気体サンプルがキャリアガス気流中に導入され、壁が固定相材料で被覆されているキャピラリー中に圧送される、一般的な検出および測定技術の1つである。検体は、キャピラリーを通過して移動する間に被覆への吸収および被覆からの脱離が起こることによって、移動キャリアガスと固定相との間で分配される。こうしてこれらの成分は、このそれぞれの分配係数に従って分離され、これらは異なる時間でキャピラリーから出てくる。このようにして、類似の物理的および化学的性質を有する検体を効率的に分離することができる。分析される気体の種類に基づいて選択される検出器は、キャピラリーの出口に配置され、排出されるときの気体混合物を絶えず測定する。代表的な検出器としては、熱伝導度検出器、電子捕獲型検出器、フレームイオン化検出器、質量分析検出器、および化学ルミネセンス検出器が挙げられる。
【0011】
収着剤系の気体検体前濃縮方法は、いくつかの欠点を有する。たとえば、収着材料の低い気体透過性のため、多量の気体体積のサンプリングが必要となる。収着材料は不注意で過剰充填される場合がある。吸着した微量材料の収着剤による保持性が高い場合、比較的多量の溶出体積が必要となる。また、検体が収着材料と反応する場合があるし、またはこの吸着材料自体によって、分析データを損なう妨害汚染物質が導入される場合もある。化学収着剤または膜の再生(または交換およびコンディショニング)、および検出前のガスクロマトグラフィー分離の実施に必要な時間がさらなる欠点であり、このため処理量が制限される。十分に長い時間をかけて前濃縮管を加熱しないと、蓄積したすべての検体が放出されない場合があり、収着材料から放出されて検出器に到達した化学物質サンプルが、収着材料に入った化学物質濃度を正確に反映しない場合がある。さらに、収着剤は、前濃縮管が次に加熱される時に、収着材料中に残留する化学物質が放出されるというメモリー効果を示すことがあり、このため不自然に高い測定値が得られることがある。空気中に約1ppb未満の濃度で存在する検体を測定するためには、大きな溶出体積を必要とする比較的大きな体積の収着剤が必要となる場合があり、このような場合、非常に強く結合する一部の物質(特に不揮発性微量材料)は脱離が困難となりうる。
【0012】
収着剤系の前濃縮方法の代替案として、「クライオフォーカス」(または「サーモフォーカス(thermoforcusing)」)を使用して、サーモフォーカスチャンバまたはコールドトラップの中で気体サンプルから検体を前濃縮することができる。クライオフォーカスは、これらの元の気体マトリックスから、より少ない体積を不活性管中に凝縮させすることによる検体の濃縮である。典型的なコールドトラップは、冷却されている冷却容器に包まれたキャピラリーである。このような装置中において、気体サンプルがキャピラリーに通され、入ってきた検体は低温にさらされることによって、キャピラリー内部で凝縮する。十分な量の検体が蓄積すると、コールドトラップを通過するキャピラリーの温度を急速に上昇させて、サンプルを気化させる。次に、トラップ内を持続的に流れるキャリアガス流によって検体が分離用カラム内に送られる。パンコフ(Pankow)ら,「カラム全体にクライオトラップを使用したキャピラリーカラムに直接パージすることによる水中の揮発性化合物の測定」(Determination of volatile compounds in water by purging directly to a capillary column with whole column cryotrapping),Environ.Sci.Technol.22、398−405(1988);米国特許第5,005,399号明細書、第5,595,709号明細書、第5,795,368号明細書、第5,954,860号明細書、第5,872,306号明細書;エーウェルズ(Ewels)ら,「高速ガスクロマトグラフィーのための電気的に加熱されるコールドトラップ導入システム」(Electrically Heated Cold Trap Inlet System for High−Speed Gas Chromatography),Anal.Chem.57,2774−79(1985);モーラディアン(Mouradian)ら,「高速ガスクロマトグラフィーのための窒素で冷却され電気的に加熱されるコールドトラップ導入システムの評価」(Evaluation of a Nitrogen−Cooled,Electrically Heated Cold Trap Inlet for High−Speed Gas Chromatography),J.Chrom.Sci.28、643−48(1990);クレンプ(Klemp)ら,「ガスクロマトグラフィー用の逆流サンプル捕集を有するクライオフォーカス導入」(Cryofocusing Inlet with Reverse Flow Sample Collection for Gas Chromatography),Anal.Chem.65,2516−21(1993);ティーセン(Tijssen)ら,「キャピラリーガスクロマトグラフィーにおける高速ガス分析の理論的側面および実際的可能性」(Theoretical Aspects and Practical Potentials of Rapid Gas Analysis in Capillary Gas Chromatography),Anal.Chem.59,1007−15(1987);ならびにギース(Giese)ら,「水中の揮発性有機化合物の測定のための吸着/熱脱離」(Adsorption/thermal desorption for the determination of volatile organic compounds in water),J.Chrom.537,321−28(1991)。
【0013】
従来、クライオフォーカスは、典型的には、サンプル気体の流れを液体窒素温度まで冷却することによって行われてきた。続いて、急速加熱によって、検体をカラムに移すことができる。多くの場合、次にカラムのヘッドにサンプルが「リフォーカス(refocuse)」される。トラップ中でクライオフォーカス法と収着剤系技術とを併用することによって、周囲温度でトラップすることで類似の効果を得ることができる。
【0014】
収着剤系前濃縮方法に関して前述した欠点の一部はサーマルフォーカス(thermal−focusing)技術によって克服されるが、多数の欠点が残る。実際的な問題として、前濃縮の極低温方法は小さなサンプル体積(約10mL以下)に限定される。さらに、サーマルフォーカスとガスクロマトグラフィーシステムとを併用すると、望ましくないデッドボリュームが生じ、バンドが広がって、分解能および効率に悪影響が生じる。コールドトラップサンプル管を加熱した後、カラムに導入される前にサンプル管の全体の長さをサンプル成分が通過する必要がある。カラムの入口端においてサンプルが注入される時間が長くなると、成分の溶出によって得られるピークが広くなりやすい。
【0015】
収着剤系前濃縮方法およびサーマルフォーカス方法の両方において、加熱の必要性が大きな制限となる。ある種の化合物は、熱脱離またはGC分離に必要な温度まで加熱すると熱劣化する。したがって、これらの方法は、温度に敏感な化合物の分析への使用には理想的ではない。GCサーマルフォーカスにおいて、フォーカスチャンバを通って全体を気化させるために検体が過度の温度にさらされ、これによって熱分解が生じる場合がある。カラムから排出される元のサンプルの実際の検体の代わりに、これらの成分がフラグメント化し、これによって分析が非常に複雑になる。さらに、捕集または注入モードのいずれかの間にコールドトラップサンプル管の長さ全体を、均一な一定温度に理想的に維持することはできず、温度勾配が生じる。操作の捕集モード中には、キャピラリーの入口端付近に検体が濃縮されるため、注入工程中に成分すべてを気化させるためにこの領域を十分に加熱する必要が生じる。この必要性が原因となって、コールドトラップサンプル管の一部が、捕集されたサンプルを気化させるために必要な温度よりもはるかに高温まで加熱される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述の欠点に対処する分析方法、機器、および装置を提供する。本発明は、サンプル流を多孔質シリコンチップ上脱離/イオン化(「DIOS」)チップなどの多孔質半導体基板の表面上に向けることによって、能動的または受動的に空気のサンプリングを行う装置、システム、および関連する方法を提供する。多孔質シリコンは、広い表面積と、優れた吸着特性を有する活性表面との両方を有するので、本発明者らは、これが空気からある種の化学物質を吸着するための理想的な表面となることを発見した。さらに、吸着工程が完了すると、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(「MALD−TOF」)質量分析計にこのチップを入れてレーザー脱離/イオン化を行うことで、この表面を直接分析することができる。[0]しかし、従来のMALDIとは異なり、シリコンがUVエネルギーを吸収する機能を果たし、脱離/イオン化過程が起こるため、UV吸収性有機マトリックスを加える必要がない。
【0017】
本発明の多孔質シリコン表面からの成分のレーザー脱離/イオン化および質量検出方法は、従来技術のシステムの高温が不要であるため、成分の熱劣化が回避される。したがって、本発明は、検体の熱劣化の原因となりうる加熱が不要である、気体中、たとえば周囲空気中に含まれる成分の吸着を提供する。
【0018】
したがって、本発明は、低濃度で化合物を測定するための気体サンプルのサンプリング方法および分析方法を提供する。本発明は、存在する化学物質量を調べるための気体、たとえば周囲空気の監視方法も含む。別の側面においては、本発明は、比較的狭い領域または離れた領域に配置することができる装置を含む能動的または受動的気体サンプリング装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一実施態様においては、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、検体を含む気体を、多孔質半導体基板(特に、本明細書で定義されるような「多孔質シリコン基板」)の表面上に、この表面上に検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0020】
同様に、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、多孔質吸光性半導体基板を提供することと;検体を含む気体を、この半導体基板の表面上に、気体中に含まれる検体を半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;続いて、レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を含む。
【0021】
さらに別の側面においては、本発明は、検体の物理的性質の分析方法であって、多孔質吸光性半導体基板を得ることと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この検体は気体から直接吸着していることと;検体が充填された半導体基板に放射線を照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することとを含む方法を提供する。
【0022】
本発明の別の実施態様は、物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと;検体が充填された半導体基板を真空下におくことと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーまたは赤外レーザー源を照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることとを含む方法を提供する。
【0023】
本発明の別の方法は、検体イオンの同定のために提供され、この方法は、多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質、吸光性、シリコン半導体基板を提供することと;分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この気体がマトリックス分子を含まないことと;約±5,000から約±34,000ボルトの電位を検体が充填された半導体基板に印加することと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと;飛行時間型質量分析技術によってイオン化された検体の質量電荷比を分析することとを含む。
【0024】
本発明は、本発明の方法に使用される装置および機器も含む。たとえば、本発明は、気体を能動的にサンプリングし、多孔質で好ましくは吸光性である半導体基板の上にこの気体を誘導するための装置であって、入口端および出口端を有する気体導管と;入口端および出口端を有するノズルであって、導管出口端とノズル入口端とが流体接続され、導管出口端からの気体をノズルから多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと;気体を導管入口端に誘導し、ノズル出口端を通して気体を移動させるポンプとを含む装置を含む。
【0025】
本発明は、気体を受動的にサンプリングするための装置も提供する。この装置は、上面上に、流入する空気を接触させることができるように保護カバーを有するDIOSのエッチング面を含む。このような装置の一例は、上部カバーであって、上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと;下部プレートであって、下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと;下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、上部プレートと下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が下部プレートの遠位端に流れて表面と接触する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、気体サンプルの成分、特に微量で存在する成分の捕集および分析に関する。便宜上、本明細書において言及される用語の一部の定義を以下に示す。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「気体」は、室温および室内圧力において液体および固体として通常見なされる材料の気相を含めた、あらゆる非凝縮相を広く含むことを意味する。気体は、特定の温度および圧力におけるあらゆる材料の気体形態であってよく、この形態は熱力学的または動力学的に好ましいかどうかは無関係である。したがって、気体は、通常はそれ自体気体とは見なされないが、空気流などから半導体基板上に吸着することができるある成分の化合物を含むことができる。気体は、熱力学的な理想気体または熱力学的な非理想気体として挙動することができる。気体は、固体または液体の昇華または蒸発によって形成することができるし、または液体を非常に小さな粒子または液滴に霧化することによって形成することもできる。
【0028】
気体は、エアロゾル、クラウド、ヒューム、ミスト、フォッグ、プルーム、または煙であってよい。「エアロゾル」は、地球の重力場において少なくともある程度安定である別々の小さな粒子(直径約0.01μmから約100μmの固体または液体)とキャリアガス(通常は空気)との混合物または分散体と通常は見なされる。同様に、「クラウド」は、単に、肉眼で知覚できるのに十分な高密度のエアロゾルである。「ヒューム」はエアロゾルと類似しているが、通常は、化学反応からの蒸気の凝縮によって得られる固体粒子を意味する。一方、「ミスト」または「フォッグ」は、定性的には気体中の液滴の浮遊物である。「プルーム」は通常、燃焼によって発生する気体およびエアロゾルの流出物を意味する。「煙」は、化石燃料などの有機物などの不完全な燃焼によって得られる、目に見える粒子のエアロゾルであり、典型的には炭素、炭素に富む生成物、および不完全な燃焼によるあらゆる他の分散性生成物の粒子(しかし通常は蒸気または凝縮した水蒸気は含まない)からなる。本発明はこれらの種類のあらゆる材料の分析方法に関するので、用語気体、エアロゾル、クラウド、ヒューム、ミスト、フォッグ、プルーム、および煙は、他に明記しない限りは交換可能に使用することができる。
【0029】
「周囲空気」としては、特定の場所における屋外または屋内の空気が挙げられる。周囲空気は、純粋な空気および大気汚染物質の成分を含むことができる。純粋な空気の組成は特定の場所に依存し、この成分(たとえば、メタン、二酸化炭素、水)は変動することがあり、このため「純粋な」空気は厳密な意味を有さない。にもかかわらず、純粋な空気は、ダスト、エアロゾル、および人間が原因の(すなわち合成された)反応性気体汚染物質を含まない空気であると一般的に見なされる。乾燥空気中の主成分の組成は比較的一定であり(体積%で示す):窒素78.08;酸素20.95;アルゴン0.93;二酸化炭素0.03;ネオン0.0018;ヘリウム0.00052;メタン0.00016、クリプトン0.00011;水素0.00005;亜酸化窒素0.00003;キセノン0.000009である。機器の較正および操作における基準サンプルとして使用されることが多い、ほとんどの反応性の人間が原因の汚染を含まない比較的清浄な空気は、商品名「ゼロエア」(zero air)で購入することができる。
【0030】
大気「汚染物質」または「汚染」は、典型的には、(人間の活動または自然作用のいずれかによって)空気中に導入された物質、気体材料、またはエアロゾルである。典型的には、大気汚染物質は、十分な濃度で存在する場合に、ヒト、動物、植物、または材料(モニュメントなど)に対して測定可能な悪影響または望ましくない影響が生じ、人の快適性、健康、または繁栄、または環境を妨害することがある。
【0031】
「受動的サンプリング」における用語「受動的」とは、気体の移送を特別に制御せずに分子拡散によって、検体が気体サンプルから捕集されることを意味する。用語「能動的」は「受動的」の反対であり、気体サンプルおよびこれに含まれる検体が制御された方法で明確に輸送されることを意味する。
【0032】
「分析」機器またはユニット、または「分析器」は、分析されるサンプル気体の導入および除去が可能な好適な装置と;サンプル気体の成分の物理的または化学的性質によって信号(たとえば、クロマトグラムまたはスペクトログラムの形態の電気信号)を発生し、これらの同定または測定が可能となる測定セルまたは他の装置と;信号処理装置(増幅、記録)または必要であればデータ処理装置とを含むサブユニットの集合体である。測定セルは、典型的には、化合物のある特定の分光学的または化学的性質によってこの化合物の存在を示す機器または機器の一部である「検出器」である。
【0033】
「質量分析計」は、原子または分子をイオン化し、次にイオン化された生成物の相対質量を測定することによって操作される化学分析に使用される分析器である。質量分析(「MS」)は、サンプル分子の分子量、ならびにこのサンプルを同定するためのサンプルのフラグメンテーション特性を測定するために日常的に使用されている。質量分析は、分子質量のイオン電荷に対する比を測定する。この質量は、習慣的に、ダルトンと呼ばれる原子質量単位によって表現される。電荷またはイオン化は、習慣的に、電気素量の倍数で表現される。これら2つの比は、「m/z」の比の値(質量/電荷比または質量/イオン化比)として表現される。イオンは通常1の電荷を有するので、通常m/z比は「分子イオン」の質量またはこの分子量(「MW」)となる。
【0034】
サンプルの質量を測定する方法の1つは、帯電した分子、すなわちイオンを磁界または電界内に加速することである。サンプルイオンは、磁界または電界の影響下で移動する。検出器は磁界を通過する経路の終端に配置することができ、磁界を通過する経路および磁界強度の関数として分子のm/zを計算することができる。当技術分野で公知の種々の異なる質量分析器を使用することができ、たとえば特に、四重極型、トリプル四重極型、セクター型、FTMS型、TOF型、イオントラップ型、たとえば、リニア四重極イオントラップ型、および三次元イオントラップ型、および四重極−TOF複合型の質量分析器を使用することができる。
【0035】
MSは、気相中で行うことができ、この中の低い圧力において電気的に中性のサンプルが電子ビームに通される。最も単純な質量分析計は、通常は約10−6Torr以下の圧力の減圧下に、気体で電気的に中性のサンプルが導入される。このMS技術においては、電子ビームがサンプルに衝突して1つまたはそれ以上の電子を放出させ、この後、サンプルはイオン化されて全体として正電荷を有する。次に、イオン化されたサンプルは磁界に通され、この磁界を通過するイオン化されたサンプルの経路に依存して、イオン電荷に対する分子の質量が求められる。
【0036】
サンプルの質量を測定する別の技術は飛行時間型(「TOF」)質量分析である。TOF−MSにおいては、既知の電圧でサンプルイオンが加速され、サンプルイオンまたはこのフラグメントが既知の距離を移動するのに要する時間が測定される。質量分析を使用して、サンプル分子の質量、およびサンプルのフラグメントの質量が測定されて、このサンプルが同定される。
【0037】
容易に気相にならない分子は、MSによる分析がより困難となる。高分子量を含むサンプルを気化させるための数種類の技術が存在する。サンプル分子が基板上に付着すると、このサンプルはこの気体に吸着したと言われる。基板上に吸着した分子が基板から移動するときに脱離が起こる。気相サンプルで出発する基本的なMSの代わりに、基板上に吸着したサンプルに対して脱離MSを行うことができる。
【0038】
脱離MS技術の1つは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI」)である。この技術によると、気化過程の一部としてプロトンが有機マトリックスからサンプルに移されることによってサンプルがイオン化される。サンプルのイオン化は、電子ビームイオン化またはプロトン移動イオン化により行われる。
【0039】
典型的なMALDI実験においては、パルスレーザー放射線によって気化する吸光性有機マトリックス中にサンプルを混合して、気化したマトリックスとともにサンプルを移動させる。広く使用され強力な技術であるが、マトリックスが約700未満のm/zの測定を妨害するため、一般にMALDIは小さな分子の測定には適切ではない。たとえばマトリックスがサンプルイオンと付加体を形成することによって分析を妨害することがあるので、MALDIは、大きな分子の分析においても重大な制限を有する。
【0040】
より新しいMS技術では、マトリックスを使用しない直接レーザー脱離/イオン化技術が可能である。このような方法は、検体を充填された基板に減圧下で放射線を照射することによる、半導体基板、特に「多孔質シリコン基板」または「多孔質吸光性シリコン基板」の上の検体のイオン化を含み、「シリコン上脱離/イオン化」(「DIOS」)として一般的に公知の方法が挙げられる。「多孔質シリコン基板」および「多孔質吸光性シリコン基板」は当技術分野、特にマイクロエレクトロニクス技術で公知であり、たとえば、米国特許第6,288,390号明細書および第6,358,613号明細書を参照されたい。
【0041】
多孔質シリコン基板を製造するために多くの方法を使用することができるが、電気化学エッチングが最も一般的である。Y.ワタナベ(Watanabe)ら,Rev.Electron.Commun.Labs.19,899(1971);およびR.C.アンダーソン(Anderson)ら,J.Microelectro−Mechanical System 3,10(1994)。これらの電気化学エッチングされた多孔質シリコン基板は、シリコン自体の逐次形成(あるいは商業的供給元からの入手)および引き続く湿式エッチングを含む湿式電気化学エッチング工程によって得られることを特徴とする。こうして形成された基板は、典型的には、エッチングが大きいほど相互連結が多くなる孔隙領域を有する。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「多孔質シリコン基板」またはより一般的には「多孔質半導体基板」は、検体を受け入れ(吸着による)、電磁放射線を吸収する(このため「半導体基板」を「吸光性半導体基板」と呼ぶこともできる)ために適した表面を有する半導体材料(たとえばシリコン)を意味する。本明細書の他の箇所でより詳細に説明されるように、多孔質シリコン基板は、エッチングされている従来のシリコンウエハまたは薄膜シリコンであってよい。たとえば、電気化学湿式エッチング法は、シリコンを湿潤溶液に曝露することと、サンプルをエッチングするための接点と溶液(たとえば、フッ化水素酸水溶液またはアルコール性フッ化水素酸溶液)とを通る電流を流し、これによって金属の「ピッチング」またはエッチングを行い、多孔質網目構造を残すこととを含む。「電気化学」(または「陽極」)エッチングにおいて、微細構造(たとえば、孔径、形態、および間隔)および多孔質シリコン基板層の厚さは、シリコン自体の抵抗率、電流および電位、電解質組成、ならびに周囲光、温度、および他の反応条件によって制御される。シリコンは、エッチングされた連続単結晶または単結晶ウエハ、または多結晶シリコンであってよい。このような方法は本明細書でさらに説明し、当技術分野で公知である。L.T.キャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990);I.シェクター(Schecter)ら,Anal.Chem.67,3727(1995);J.ウェイ(Wei)ら,Nature 399,243(1999);L.T.キャンハム(Canham)ら,Thin Sold Films 297,304(1997);P.シュタイナー(Steiner)ら,およびThin Solid Films 255,52(1995)。
【0043】
これまで、このような多孔質シリコン基板は、周囲空気からの検体サンプリングおよび保持(および分析)にとっては不十分な基板であると考えられていた。代表的な別の方法の1つでは、「連続する空隙がない」薄膜または「円柱/空隙網目」薄膜のいずれかとして説明される異なる形態の薄膜を形成するためにプラズマ支援化学蒸着または物理蒸着の使用が必要となる。これらの蒸着方法は、複雑性を伴う気相金属の化学的性質が必要となる。結果として得られる生成物は、ナノスケールの円柱/空隙網目構造を有するシリコンアレイである。米国特許出願公開第2002/0048531号明細書。しかし、このような円柱/空隙網目薄膜は、あまり広く受け入れられていない。
【0044】
半導体基板の吸光性のため、基板は電磁放射線のエネルギー貯蔵所として機能する。この吸収した電磁エネルギーが、トラップされた検体をイオン化する。次に、このイオン化された検体が質量スペクトル質量分析装置によって検出される。質量分析の好ましい脱離/イオン化方法は、多孔質シリコン基板からのパルスレーザー脱離/イオン化であり、したがってこのような方法は半導体基板がシリコン系であるかどうかとは無関係に、「多孔質シリコン上脱離/イオン化」(「DIOS」)質量分析と通常呼ばれる。本明細書においては、本発明の実施態様を、シリコン系基板を使用するある好ましい実施態様に関して説明するが、他に明記しない限り用語「DIOS」は機能的に同等の材料を包含する。アマト(Amato)ら,半導体および超格子のオプトエレクトロニクス特性(Optoelectronic Properties of Semiconductors and Superlattices)(アマト(Amato),G.,ドルリュー(Delerue),C.およびバーデルベン(Bardeleben),H.−J.v.編著)3−52(ゴードン・アンド・ブリーチ(Gordon and Breach),アムステルダム(Amsterdam),1997);キャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990);カリス(Cullis)ら,Appl.Phys.Lett.82,909(1997)。たとえば、一般的な半導体基板は、疎水性基、たとえばエチルフェニル基と結合したシリコンである。さらなる例は、本明細書の他の箇所で例示している。典型的なDIOS−MS実験においては、サンプルが半導体基板上に置かれ、続いて紫外光が照射され、場合により電圧が印加される。このような方法の利点は、マトリックスが不要であることであり、このためこの方法を小分子分析に適用できる。さらに、基板の脱離/イオン化特性を最適化させるために、半導体基板を化学的または構造的に改質することができる。シェン(Shen)ら,Anal.Chem.,73,612−19(2001);トーマス(Thomas)ら,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.98,4932−37(2001);およびクルーズ(Kruse)ら,Anal.Chem.73、3639−45(2001)も参照されたい。
【0045】
本発明のある側面は、化学用語において説明することができる。他に明記しない限り、本明細書において言及される化学的部分の意味は、「有機化学命名法、A、B、C、D、E、F、およびHの部」(Nomenclature of Organic Chemistry,Sections A,B,C,D,E,F,and H),ペルガモン・プレス(Pergamon Press),オックスフォード(Oxford),1979.IUPACを参照することによって確認することができる。
【0046】
本発明によると、「アルキル基」は、1つまたはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含み、直鎖アルキル基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(またはシクロアルキル基または脂環式基)(たとえば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチルなど)、およびアルキル置換アルキル基(たとえば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)を含む。用語「脂肪族基」は、典型的には1から22個の間の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖を特徴とする有機部分を含む。複雑な構造においては、この鎖は、分岐、橋、または架橋が形成されてもよい。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0047】
ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキル基は、30個以下の炭素原子をこの主鎖中に有することができ、たとえば、C1〜C30の直鎖またはC3〜C30の分岐鎖を有することができる。ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキル基は、20個以下の炭素原子をこの主鎖中に有することができ、たとえば、C1〜C20の直鎖またはC3〜C20の分岐鎖を有することができ、より好ましくは18個以下を有することができる。同様に、好ましいシクロアルキル基は、4から10個の炭素原子をこの環構造中に有し、より好ましくは4から7個の炭素原子を環構造中に有する。用語「低級アルキル」とは、1から6個の炭素を鎖中に有するアルキル基、および3から6個の炭素を環構造中に有するシクロアルキル基を意味する。
【0048】
他の炭素数が指定されない限り、本明細書において使用される「低級脂肪族」、「低級アルキル」、「低級アルケニル」などの「低級」は、この部分が少なくとも1個および約8個未満の炭素原子を有することを意味する。ある実施態様においては、直鎖または分岐鎖低級アルキル基は、6個以下の炭素原子をこの主鎖中に有し(たとえば、C1〜C6の直鎖、C3〜C6の分岐鎖)、より好ましくは4個以下を有する。同様に、好ましいシクロアルキル基は、3から8個の炭素原子をこの環構造中に有し、より好ましくは5または6個の炭素を環構造中に有する。用語「C1〜C6」は、1から6個の炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0049】
さらに、他に明記しない限り、アルキルという用語は、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素主鎖の1つまたはそれ以上の炭素上の1つまたはそれ以上の水素の代わりに置換基を有するアルキル部分を意味する。このような置換基としては、たとえば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(たとえば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノ)、アシルアミノ(たとえば、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族または複素環式芳香族の部分を挙げることができる。
【0050】
「アリールアルキル」部分は、アリールで置換されているアルキル基(たとえば、フェニルメチル(すなわち、ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基で置換されているアリール基(たとえばp−メチルフェニル(すなわちp−トリル))である。用語「n−アルキル」は、直鎖(すなわち、分岐していない)未置換アルキル基を意味する。「アルキレン」基は、対応するアルキル基から誘導される二価部分である。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、アルキルと類似するが、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基を意味する。好適なアルケニル基およびアルキニル基としては、2から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0051】
用語「芳香族基」または「アリール基」は、1つまたはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含む。アリール基は、脂環式または芳香族ではない複素環式環と縮合または架橋して多環(たとえば、テトラリン)を形成することもできる。用語「芳香族基」は、1つまたはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含む。一般に、用語「アリール」は、0から4個のヘテロ原子を含むことができる5および6員単環式芳香族基を含み、たとえば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアオゾール(isothiaozole)、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール(isooxazole)、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどから誘導される基を含む。「アリーレン」基は、アリール基から誘導される二価部分である。用語「複素環式基」は、環の中の1つまたはそれ以上の原子が炭素以外の元素、たとえば、窒素、硫黄、または酸素である閉環構造を含む。複素環式基は、飽和または不飽和であってよく、ピロールおよびフランなどの複素環式基は芳香族性を有することができる。これらは、キノリンおよびイソキノリンなどの縮合環構造を含む。他の複素環式基の例としては、ピリジンおよびプリンが挙げられる。複素環式基は、1つまたはそれ以上の構成原子において置換されていてもよい。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ」は、式−NRaRbの未置換または置換部分を意味し、式中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであるか、またはRaおよびRbをこれらが結合する窒素原子と合わせたものが、環に3から8個の原子を有する環状部分を形成する。したがって、用語「アミノ」は、他に明記しない限り、ピペリジニル基またはピロリジニル基などの環状アミノ部分を含む。したがって、本明細書において使用される場合、用語「アルキルアミノ」は、アミノ基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。好適なアルキルアミノ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。用語「アルキルチオ」は、スルフヒドリル基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。好適なアルキルチオ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「アルキルカルボキシル」は、カルボキシル基が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子が結合している前述の定義のアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。。用語「ニトロ」は−NO2を意味し、用語「ハロゲン」または「ハロ」は−F、−Cl、−Br、または−Iを意味し、用語「チオール」、「チオ」、または「メルカプト」はSHを意味し、用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシル」は−OHを意味する。
【0053】
他に明記しない限り、前述の基を含む本発明の化合物の化学的部分は、「置換または未置換」であってよい。ある実施態様において、用語「置換されている」とは、この部分が、水素以外の部分の上に置換基を有する(すなわち、ほとんどの場合、水素が置き換えられる)ことを意味し、これによって分子が意図する機能を果たすことができる。置換基の例としては、直鎖または分岐アルキル基(好ましくはC1〜C5)、シクロアルキル基(好ましくはC3〜C8)、アルコキシ基(好ましくはC1〜C6)、チオアルキル基(好ましくはC1〜C6)、アルケニル基(好ましくはC2〜C6)、アルキニル基(好ましくはC2〜C6)、複素環式基、炭素環式基、アリール基(たとえばフェニル)、アリールオキシ基(たとえば、フェノキシ)、アラルキル基(たとえばベンジル)、アリールオキシアルキル基(たとえば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル基、アルキルアリール基、ヘテロアラルキル基、アルキルカルボニル基およびアリールカルボニル基または他のこのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル基、またはヘテロアリール基、(CR’R”)0−3NR’R”(たとえば−NH2)、(CR’R”)0−3CN(たとえば−CN)、−NO2、ハロゲン(たとえば−F、−Cl、−Br、または−I)、(CR’R”)0−3C(ハロゲン)3(たとえば−CF3)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)2、(CR’R”)0−3CH2(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CONR’R”、(CR’R”)0−3(CNH)NR’R”、(CR’R”)0−3S(O)1−2NR’R”、(CR’R”)0−3CHO、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H、(CR’R”)0−3S(O)0−3R’(e.g.−SO3H)、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H(たとえば−CH2OCH3および−OCH3)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0−3H(たとえば−SHおよび−SCH3)、(CR’R”)0−3OH(たとえば−OH)、(CR’R”)0−3COR’、(CR’R”)0−3(置換または未置換のフェニル)、(CR’R”)0−3(C3−C8シクロアルキル)、(CR’R”)0−3CO2R’(たとえば−CO2H)、または(CR’R”)0−3OR’基、またはあらゆる天然アミノ酸の側鎖から選択される部分が挙げられ、上式中、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、C1〜C5アルキル基、C2〜C5アルケニル基、C2〜C5アルキニル基、またはアリール基であるか、またはR’とR”とを合わせたものが、ベンジリデン基または−(CH2)2O(CH2)2−基となる。
【0054】
本明細書において使用される場合、「置換基」は、たとえば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(たとえば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノ)、アシルアミノ(たとえば、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族または複素環式芳香族の部分であってもよい。
【0055】
したがって、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、検体を含む気体を、多孔質半導体基板の表面上に、この表面上に検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0056】
本発明は、周囲空気などの気体サンプルから直接検体を抽出するためのDIOSチップなどの半導体基板の能力を利用している。理論によって束縛しようと意図するものではないが、本発明は以下の現象を利用している。非疎水性の化合物を本発明により分析することもできるが、DIOS−MS基板が疎水性であるため、同様に疎水性であるサンプル中の化合物がチップ上に優先的に分配される。気体分子対検体分子の相対拡散速度のため、気相と吸着相との間の同様の分配も生じうる。
【0057】
本発明の大きな利点は、検体が気体サンプルからDIOSチップなどの上に直接付着し、続いてこれを直接MS機器に使用できるので、クライオフォーカスなどのサンプル前濃縮または調製無しに行えることである。本発明のさらに好都合な側面は、温度に敏感な検体を含みうるサンプルを分析できることである。本発明によると、脱離およびイオン化は、窒素レーザー、OPOレーザー、エキシマレーザー、または赤外レーザーを使用し、多くの化合物の劣化が生じることが知られている高温を使用しない1つの工程で実施することができる。したがって、熱脱離および気相分離が不要になることによって、本発明により、非常に改善された処理能力が得られる。GCおよびHPLCなどのクロマトグラフィーが不要である場合、反応性官能基のプレカラム誘導体化も不要となり、このことが本発明のさらなる利点となる。
【0058】
本発明の利点の1つは、ピコモル、フェムトモル、およびアットモルの量で分子を脱離/イオン化するための高感度の技術を提供することである。本発明の別の利点は、基板は、サンプルをイオン化するためにマトリックスを使用する必要がないことである。マトリックスが不要であるため、m/z値の測定は、通常マトリックスが関与する低質量干渉により複雑化することがない。マトリックスの干渉が軽減されるために、MALDI測定に見られる広く小さなピークと比較して、測定される検体の測定ピーク高さも改善される。
【0059】
本発明のさらに別の利点は、基板の化学的および構造的改質が容易であることである。これによって、生体分子または他の用途のために基板の脱離/イオン化特性を最適化することができる。
【0060】
一実施態様においては、本発明は、気体中に含まれる検体の検出方法であって、多孔質吸光性半導体基板を提供することと;検体を含む気体を、この半導体基板の表面上に、気体中に含まれる検体を半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと;レーザー脱離/イオン化によって検体を分析することとを含む方法を提供する。
【0061】
本発明は、検体の物理的性質の分析方法であって、多孔質吸光性半導体基板を得ることと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この検体は気体から直接吸着していることと;検体が充填された半導体基板に照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することとを含む方法も提供する。
【0062】
さらに別の実施態様においては、本発明は、物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと;測定されるべき物理的性質を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと;検体が充填された半導体基板を減圧下におくことと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることとを含む方法を提供する。
【0063】
同様に、本発明は、検体イオンの同定方法であって、多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質、吸光性、シリコン半導体基板を提供することと;分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、この気体がマトリックス分子を含まないことと;約±5,000から約±34,000ボルトの電位を検体が充填された半導体基板に印加することと;検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと;飛行時間型質量分析技術によってイオン化された検体の質量電荷比を分析することとを含む方法を含む。
【0064】
検体は、疎水性であってよく、多孔質半導体基板上に吸着されて保持されることができる。多孔質半導体基板上に吸着される検体の量は、約1ミリモル未満、または約1マイクロモル未満、またはさらには約1ナノモル未満である。分析前に、典型的には、MALDIにおいて一般的に使用される吸光性有機ポリマーなどの吸光性マトリックスと検体とを混合する必要がない。容易にイオン化される検体は、質量分析によってより容易に分析される。検体を含む気体は、周囲空気、または本来気体室温および室内圧力であるあらゆる組成物であってよい。気体は、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物であってよい。検体は、煙または他の汚染物質などの人間が原因の汚染物質であってもよく、これらの成分も含まれる。一実施態様においては、煙は、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である。検体は、乱用薬物、化学兵器、または爆薬、またはこれらの成分であってもよい。気体は、環境から直接サンプリングすることができるし、または気体は、真空ポンプを使用して空気サンプリング容器または袋の中に吸い込まれて空気サンプリング容器または袋にあるものでもよい。
【0065】
本発明の一実施態様においては、半導体基板が酸化される。本発明の別の実施態様においては、半導体基板が多孔質である。本発明さらに別の実施態様においては、半導体基板が、基板と結合した飽和炭素原子を有する物質と結合している。
【0066】
本発明の好ましい実施態様は、表面がエチルフェニル基と結合している多孔質半導体基板を有する。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、疎水性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、親水性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。本発明のさらに別の実施態様においては、半導体基板が、親フッ素性表面被覆を有する多孔質半導体基板である。
【0067】
多孔質半導体基板は、好ましくは多孔質シリコン基板である。多孔質シリコンの多孔度は、陽極酸化およびエッチングのために塊状シリコンの本来の状態から失われたシリコンの量として定義することができる。この重量測定は、多孔質半導体層の平均密度を計算し、この密度を元の半導体の密度と比較することによって行うことができる。多孔度(%値として表現される)=10−100*(多孔質半導体層の密度/元の半導体層の密度)。したがって、多孔度45%の多孔質半導体のサンプルは、45%が空隙(から)であり、55%が半導体(充填されている)である。ブラムヘッド(Brumhead)ら,Electrochim.Acta(UK)38、191−97(1993)。
【0068】
本発明のある実施態様によると、多孔質半導体基板の多孔度は、約4%から約100%、または約50%から約80%、さらには約60%から約70%とすることができる。好ましい実施態様においては、多孔度が約50%から約80%である。別の好ましい実施態様においては、多孔度が約60%から約70%である。
【0069】
シリコンなどの多孔質半導体は、本発明の方法に有効な基板であり、多孔質シリコンが、ミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスのいずれであるかは無関係である。ミクロポーラス基板は、約2ナノメートル未満の孔径を主に有する基板である。メソポーラス基板は、約2から50nmの孔径を主に有する基板である。およびマクロポーラス基板は、約50nmを超える孔径を主に有する基板である。好ましい側面においては、孔隙の形態は、材料の一部が(典型的には酸化過程によって)単結晶などの連続(すなわち空隙のない)サンプルから除去されているエッチングされた材料の形状と類似しており、円柱空隙構造の形成以外の方法において原子を付着させて形成される材料とは異なる。
【0070】
多孔度は、質量または体積当たりの比表面積に関して定義することもできる。比表面積は、多孔質半導体の単位質量当たりの表面積、または多孔質半導体の単位体積当たりの表面積のいずれかとして表すことができ、これら2つの値は、半導体材料の密度と関係している。本発明によると、多孔質シリコンの比表面積は、典型的には約1m2多孔質シリコン1g(または約2m2/多孔質シリコン1cm3)から約1000m2/多孔質シリコン1g(または約2300m2/多孔質シリコンcm3)である。一実施態様においては、多孔質シリコンの表面は、約200から約800m2/g(450から1900m2/cm3)の比表面積を有する。別の実施態様においては、多孔質シリコンの表面は、約640m2/多孔質シリコン1g(または約1500m2/cm3)の比表面積を有する。
【0071】
ある実施態様においては、本発明は、多孔質、吸光性、半導体基板上に吸収された検体のイオン化方法を提供する。したがって、多孔質シリコン基板を使用する場合、本発明の方法は、好ましい多孔質シリコンの実施態様、すなわちシリコン上脱離/イオン化(DIOS)に関して言及することができる。
【0072】
光を吸収して、この光エネルギーを検体に伝達してこれをイオン化することができる金属および半金属などの他の伝導性材料または半導体材料は、本発明の範囲内にある。多孔質表面を有するように作製した場合に強いUV吸収を示す他の半導体は、本発明の範囲内にあり、たとえばIV族半導体(たとえばダイヤモンド)、IからVII族半導体(たとえばCuF、CuCl、CuBr、CuI、AgBr、およびAgI)、IIからVI族半導体(たとえばBeO、BeS、BeSe、BeTe、BePo、MgTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、CdS、CdSe、CdTe、CdPo、HgS、HgSe、およびHgTe)、IIIからV族半導体(たとえばBN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaSb、InN、InAs、およびInSb)、閃亜鉛鉱構造半導体(たとえばMnS、MnSe、β−SiC、Ga2Te3、In2Te3、MgGeP2、ZnSnP2、およびZnSnAs2)、ウルツ鉱構造化合物(たとえばNaS、MnSe、SiC、MnTe、Al2S3、およびAl2Se3)、I−II−VI2半導体(たとえばCuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuTlS2、CuTlSe2、CuFeS2、CuFeSe2、CuLaS2、AgAS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、およびAgFeS2)が挙げられる。さらに、放射線を吸収することができるAl2O3、SiC、GaP、Si1−xGex、Ge、GaAs、およびInPなどの他の公知の基板が発明の範囲内である。
【0073】
典型的には、多孔質半導体基板は疎水性であり、金属または半金属、たとえばシリコン、好ましくは多孔質シリコンを含む。多孔質半導体は、結晶シリコンなどのシリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造することができる。多孔質半導体基板は、酸化されてもよいし、またはn型半導体またはp型半導体であってもよい。
【0074】
新しくエッチングした多孔質シリコン基板は、準安定状態の水素化シリコン末端のために疎水性である。準安定状態の水素化シリコン末端は、酸素の存在下では本来不安定であり、最終的に空気中で酸化されて酸化シリコン表面となる。基板は化学的に酸化することもできる。水素化シリコン末端は、ルイス酸の媒介するまたは光により促進されるヒドロシリル化反応によって変化させることもできる。これらおよび他のヒドロシリル化反応は、多孔質シリコン基板を安定化させ官能化させる。これらのヒドロシリル化反応により付与された被覆は、一般に表面を疎水性にする機能を果たすが、末端が化学的に適切な置換基を有する場合には親水性にすることができる。疎水性のヒドロシリル化された基板は水性媒体に対して安定性が高いので、このような基板はわずかな劣化で繰り返し再利用することができる。たとえば、強アルカリ溶液によって通常破壊される基板は、ルイス酸の媒介するまたは光により促進されるヒドロシリル化反応によって官能化させると、強アルカリ溶液中で煮沸することができる。ブリアク(Buriak)ら,J.Am.Chem.Soc.120、1339−40(1998);およびスチュアート(Stewart)ら,Angew.Chem.Int.Ed.37,3257−3261(1998)。
【0075】
多孔質半導体基板は、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。たとえば、製造方法の1つは、固体基板、たとえば半導体ウエハから多孔質基板を製造することを含み、たとえば、好ましい実施態様では、多孔質基板として固体基板の一部を選択的に形成し、場合により基板末端(すなわち「被覆」、「リガンド」、「改質」、または「単分子層」)して基板を多孔質基板のために改質する。
【0076】
DIOS用多孔質シリコンは、n型またはp型のいずれのシリコンからも製造することができる。n型メソポーラスおよびp型ミクロポーラスまたはメソポーラスサンプルが、有用なイオン信号を発生させるために効果的である。
【0077】
通常、DIOS方法では、多孔質シリコン基板が平坦な結晶シリコンから製造される。非ドープ半導体は、当業者に公知の光エッチングまたは単純な化学エッチングを使用して製造することができる。カリス(Cullis)ら,J.Appl.Phys.82,909(1997);およびユング(Jung)ら,J.Electrochem.Soc.140,3046(1993)。定電流エッチング手順の結果、多孔質シリコンは、数ミクロンの厚さの多孔質層であり、UV光に曝露すると明るい光ルミネセンスを示すことが多いナノ結晶構造を有する。セーラー(Sailor)ら,Adv.Mater.9、783(1997);およびキャンハム(Canham),Appl.Phys.Lett.57,1046(1990)。
【0078】
検体が広がるのを防止するためなどの特定の用途に基板の脱離/イオン化特性を最適化するために、半導体基板を改質することができる。好ましくは、多孔質表面の改質によって、表面の安定性が改善され、表面で発生する信号が改善されると考えられているので、多孔質シリコンの表面が末端で改質される。表面の改質は、有機末端をヒドロシリル化して、水性媒体に対して安定な疎水性多孔質シリコンを得ることによって行うことができる。このような基板は、わずかな劣化で繰り返し再利用することができる。
【0079】
一般に多孔質シリコン基板は、MS分析条件に対して不活性であると考えられており、多孔質シリコン材料の製造は安価で単純である。20μmおよび100nmまでの小ささの多孔質シリコンの構造は、標準的な光学技術によって製造することができる。カリス(Cullis)ら、J.Appl.Phys.82、909−65(1997);ドアン(Doan)ら,Appl.Phys.Lett.60,619−20(1992);およびシュムキ(Schmuki)ら,Phys.Rev.Lett.80,4060−4063(1998)。カリス(Cullis)ら,J.Appl.Phys.82,909(1997)も参照されたい。
【0080】
多孔質シリコン基板は、たとえば被覆によって製造して、疎水性、親水性、または親フッ素性の表面を有する基板を得ることができる。このような表面被覆は、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンなどのあらゆる非金属原子からなってよい。好ましい一実施態様においては、疎水性表面被覆は、金属と共有結合している飽和炭素原子を含み、たとえば金属基板がエチルフェニル基と共有結合している。
【0081】
多孔質シリコン基板は、種々の表面末端、たとえば、水素(すなわち、本来の状態)、ドデシル、エチルフェニル、および酸化物を有することができる。一実施態様においては、より疎水性の高い表面、たとえばエチルフェニル末端表面である。
【0082】
別の実施態様においては、本発明は、共有結合した単分子層を含む表面を有する多孔質シリコン基板を提供する。多孔質シリコンは広い表面積を有し、このため、これはセンサー構造および試験溶液中の検体の電気的感知への使用に特に適している。しかし、多孔質シリコンは、種々の条件に対して不安定であることが知られている。本発明の方法による溶媒溶解性ルイス酸の使用と関連する穏やかな反応条件によって、安定な多孔質シリコン表面が得られる。
【0083】
一実施態様においては、表面被覆は、シリコン表面上の共有結合した単分子層であり、この単分子層は、式:
【0084】
【化3】
のいずれかによる化学的部分を含む。
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環式環を形成する。)
本発明は、R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である方法を含む。
【0085】
したがって、本発明の利点の1つは、比較的穏やかな条件、すなわち室温において表面保護単分子層を形成できることである。本発明は、多孔質シリコンの表面を保護し、さらに、たとえば試験流体中の所定の検体と、ある電気測定的に検出可能な方法で相互作用することができる部分または官能基で選択的に官能化することもできる方法も提供する。
【0086】
本発明の方法は、共有結合した表面を形成するためにアルキンおよびアルケンの混合物を使用して実施することもでき、単分子層中の基のモル分率は、一般に、単分子層の形成に使用される試薬混合物中のアルキンまたはオレフィンのモル分率に対応する。本発明の方法は、共有結合した表面を形成するためにアルキンおよびアルケンの混合物を使用して実施することもでき、単分子層中の基のモル分率は、一般に、単分子層の形成に使用される試薬混合物中のアルキンまたはオレフィンのモル分率に対応する。
【0087】
R1C≡CR2の形態のアルキン、またはR1R2C=R3R4の形態のオレフィンを、多孔質シリコン表面に取り付けることができ、上式中、R基は、それぞれ独立して、水素、または置換または未置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であってよく、R基置換基としては、(C1〜C24)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、エステル、第1級または第2級または第3級アミノ、カルバミド、チオール、アルキルチオからなる群からの置換基が挙げられ、または2つのR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが5または6員環を形成する。R基は、本明細書において定義されるあらゆるアルケニル基置換基であってもよい。
【0088】
したがって、多孔質シリコンの例としては、アルキン(R1C≡CR2)でヒドロシリル化されたものが挙げられ、上式中、R1は水素であり、R2は、−(CH2)9CH3(1−ドデシンから)、−(CH2)8COOCH3(メチル10−ウンドシノエート(metyl 10−undcynoate)から)、−フェニル(フェニルアセチレンから)、−tert−ブチル(tert−ブチルアセチレンから)、−(CH2)3CN(5−シアノ−1−ペンチンから)、−(CF2)7CF3、−(CH2)2OH(3−ブチン−1−オールから)である。多孔質シリコンのさらなる例としては、オレフィン(R1R2C=R3R4)でヒドロシリル化されたものが挙げられ、上式中、R2、R3、およびR4は水素であり、R1は(CH2)5CH3(1−ヘキセンから)であった。多孔質シリコンは、R1、R2、およびR3がすべてメチル基であり、R4が水素である(2−メチル−2−ブテンから)であるオレフィンを使用してもヒドロシリル化されることが知られている。メチルエステル末端のR基でヒドロシリル化された多孔質シリコンはわずかに親水性となり、ヒドロキシ末端アルキル基、およびニトリル末端アルキル基で改質した多孔質シリコンはどちらも強い親水性となった。他の末端では疎水性となった。アルキンはアンチマルコフニコフ付加でオレフィンとして多孔質シリコンに結合し、新しい二重結合の一方の側と共有結合し、他方の側と水素結合して新しいcis 二重結合を形成する。オレフィンの場合、水素を有する炭素が多孔質シリコン表面と共有結合し、二重結合の他端が水素を得る。多孔質シリコンとオレフィンとの反応によって、飽和炭素原子と結合したシリコンを有する被覆基板が形成され、一方、多孔質シリコンとアルキンとの反応によって、不飽和炭素原子と結合したシリコンを有する被覆基板が形成される。したがって、シリコン表面は、意図する最終用途に適切となるように親水性、疎水性、または親フッ素性に改質することができる。
【0089】
また、共有結合化学種の混合物を含む共有結合単分子層は、化学量論量より少ない量のアルケンまたはアルキン反応物質と表面とを逐次反応させることによって形成することができる。共有結合単分子層上に存在する官能基、たとえば、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシおよびチオールを使用して、標準的なエステルまたはアミド形成カップリング技術を使用し生物学的に重要な分子とさらにカップリングさせることによって、表面を官能化させることができる。
【0090】
通常、多孔質半導体基板は、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である支持構造に固定される。多孔質半導体基板は、支持構造上の1つの連続相を形成することができるし、または支持構造上の2つまたはそれ以上の別々の領域またはパッチを形成することもできる。支持構造は実質的に平面または粒子状であってよく、粒子状の場合、この支持構造を2の支持構造に固定することができるし、または遊離の粒子状材料として使用することもできる。好ましくは、支持構造は、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである。
【0091】
検体を含むサンプルが好適な半導体基板に導入(あるいは充填または付着)されると、この検体は脱離およびイオン化が可能な状態になっている。検体の脱離およびイオン化には電磁放射線源が必要である。電磁放射線源によって放射線が得られ、この放射線は半導体基板が吸収することができ、検体の脱離およびイオン化に使用して、イオン化された検体またはこの化学反応によって得られる生成物を生成することができる。
【0092】
本発明のある方法は、多孔質半導体基板への電磁放射線の照射を含む。この方法は、最初に多孔質半導体基板を真空下におき、続いて半導体基板を真空下におきながら放射線照射することを含むことができる。電磁放射線は、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生させることができる。放射線照射により、減圧下またはほぼ大気圧において脱離が起こる。多孔質半導体基板に電磁放射線を照射することによって、検体の脱離およびイオン化が起こって、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られる生成物が生成する。
【0093】
脱離/イオン化が起こる温度は、理想的には検体が熱劣化する温度よりも低温であり、したがって本発明は、前述の従来技術に対して大きく前進している。
【0094】
本発明の一実施態様においては、検体が充填された半導体基板にレーザーが照射される。多孔質シリコン基板の場合、電磁放射線は好ましくは紫外パルスレーザーである。また、検体を含む半導体基板の部分に紫外パルスレーザーの焦点を合わせると好ましい。
【0095】
本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板に紫外光が照射される。本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された基板に約337nmの波長を有する光が照射される。本発明のさらに別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板に正電圧が印加される。本発明のさらに別の実施態様においては、約5,000から約30,000ボルトの電圧が、検体が充填された半導体基板に印加される。サンプルを照射する別の方法は、レンズを使用し、場合により減光フィルタを使用して、出力2から50μJ/パルスの337nmパルス窒素レーザー(レーザー・サイエンス・インコーポレイテッド(Laser Science,Inc.))からのレーザーショットを使用することである。当業者であれば、種々の異なるレーザー(種々の波長の光を発生する)を本発明の方法に使用できることが理解できるであろう。
【0096】
質量分析を実施する場合、多孔質半導体基板と大地とに関して正または負である電位差を有する電界が多孔質半導体基板と検出器との間に形成される。一般に、電位差は、使用される個々の装置および/または電界に対する検体の向きに依存する。典型的には、電位差は約±5000から約±30,000ボルトの範囲である。
【0097】
たとえば、検体を含む半導体基板は、照射中は正電圧に維持されるが、適切に変化させて同じ方法を陰イオンモードで行うこともできる。分光計の残りに対して正電圧が使用されて、陽イオンは基板を離れて、検出器に向かう。プロトン移動によってイオンが形成されるので、陽イオンと正電圧との反発が好ましい場合があり、たとえば、基板の電圧範囲は約+5,000から約+30,000ボルト(好ましくは約+20,000ボルト)である。基板または伝導性サンプル板が接地電位に維持され、続いてイオンが引き出されて高い電位に加速される別の構造を使用することもできる。代表的な構造は、接地電位であるイオン源、プレート、およびDIOSチップ、ならびに適用される抽出場(たとえば「軸方向」MALDI飛行時間型機器である、「マイクロマスM@LDI」(Micromass M@LDI))を含み、これによってイオンが高い運動エネルギーに加速される、あるいは、比較的低い電圧(たとえば、約0から約200ボルト)が印加され、イオンが衝突冷却され、続いて直交飛行時間型質量分析器のパルサー領域に導入される。
【0098】
飛行時間型検出器を有する質量分析器は、脱離およびイオン化された検体を測定するのに好ましい検出器であり、さらにより好ましくは、飛行時間型質量分析器より前に、同じ質量のイオンの間の運動エネルギー差を補正するイオンリフレクターが配置される。飛行時間型質量分析器の場合による別の向上は、検体の脱離およびイオン化と、質量分析器による初期加速電圧の印加との間に短い制御された遅れが存在する場合に実現される。場合により本発明の別の実施態様は、イオンリフレクターを使用して、脱離し、イオン化され、反射した検体に対してポストソース分解測定を行う。他の質量分析器、たとえば、磁気セクター型、シングル四重極型、トリプル四重極型、イオントラップ型、たとえば、リニアイオントラップ型および三次元イオントラップ型、直交飛行時間型、飛行時間/飛行時間型タンデム、およびこれらの質量分析器の複合的な組み合わせ、磁気イオンサイクロトロン共鳴機器、偏向機器、ならびに四重極質量分析器も、本発明の範囲内である。
【0099】
一実施態様においては、本発明は、またはオフラインのいずれかでレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結されたDIOS系監視システムを提供する。多数の質量分析システムは、設計が単純であり、小型であり、現場で使用するのに十分な携帯性を有する。このような携帯型システムを使用して、本発明のDIOS系サンプリングおよび分析方法を、実験室環境の完全に外側で実施することができる。本発明の別の実施態様においては、使い捨ての1回限りで使用されるDIOSターゲットにサンプルを吸着させ、続いて分析のために実験室環境に戻される。
【0100】
本発明は、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析に基づくDIOSシステムを使用するので、本発明の一実施態様は、携帯型空気モニタリングに理想的な小型で単純で使用が容易なシステムを提供する。本発明によって提供されるシステムは、希ガス(GC用のヘリウム、またはFID検出器用の水素など)が不要であり、高出力の加熱要素が不要であるため、低消費電力が考慮されて設計されている。
【0101】
好ましい実施態様においては、測定される物理的性質は質量であり、検体イオンの物理的性質の測定方法は、質量分析技術によって検体イオンまたはイオンフラグメントの質量電荷比(m/z)を分析する。同様に、本発明の方法は、ある実施態様では質量分析技術によって検体イオンまたはイオンフラグメントの質量電荷比(m/z)を測定する分析工程を含むことができる。
【0102】
この分析工程は、検体の物理的性質を決定または測定することを含み、好ましくは分析工程は定量的である。ある実施態様においては、内部標準を参照しながら定量的分析が実施される。この場合の物理的性質は、質量分析技術により測定される検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である。ある実施態様においては、検体のイオン化によって生成したイオンは、検体の分子イオンである。本明細書において使用される場合、用語「分子イオン」は、プロトン化化学種、脱プロトン化化学種、分子イオン付加体(たとえば、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの付加体などのアルカリ金属付加体)などを含むが、これらに限定されるものではない。別の実施態様においては、検体のイオン化によって生成したイオンは、検体のフラグメントイオンである。
【0103】
質量分析技術に使用される質量分析器は、直交飛行時間型質量分析器、イオントラップ、たとえば、三次元イオントラップ(たとえば、フィネガン・LCQデカXP MAX(Finnegan LCQ Deca XP MAX)(登録商標)、マサチューセッツ州ウォバーンのサーモ・エレクトロン・コーポレーション(Thermo Electron Corporation,Woburn,MA)より入手可能)、リニアイオントラップ(たとえば、マサチューセッツ州ウォバーンのサーモ・フィネガン・コーポレーションより入手可能なフィネガンLTQ(Finnegan LTQ)(登録商標)、ならびにコネチカット州ノーウォークのアペラ・コーポレーション(Applera Corporation,Norwalk,CT)より入手可能なQトラップ(Q TRAP)(登録商標)および4000Qトラップ(4000 Q TRAP)(登録商標)LC/MS/MSシステム)シングル四重極、トリプル四重極、フーリエ変換 MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合型、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択することができる。さらに、質量分析計は正または負のいずれのモードでも操作することができ、たとえば、多孔質半導体基板は大地に対して正または負のいずれであってもよい。
【0104】
本発明は、本明細書に記載される方法で使用される装置も含む。したがって、本発明は、気体を能動サンプリングし、この気体を多孔質吸光性半導体基板に誘導する装置であって、入口端および出口端を有する気体導管と;入口端および出口端を有するノズルであって、導管出口端とノズル入口端とが流体接続され、導管出口端からの気体をノズルから多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと;気体を導管入口端に誘導し、ノズル出口端を介して気体を移動させるポンプとを含む装置に関する。ポンプは、導管出口端とノズル入口端との間に配置して、これらと流体接続することができる。同様に、ポンプを導管入口端に配置して、気体を導管入口端を通り、ノズル出口端まで通るように圧送することができる。別の実施態様においては、ポンプが、入口端および出口端を有する管をさらに含み、この管の入口端がポンプと流体接続され、圧送される気体が管から導管入口端に送られるように、管の出口端は導管入口端に対して位置決めされる。また、この装置は多孔質吸光性半導体基板をさらに含み、ノズル出口端から押し出された気体が半導体基板上に向かうように、この半導体基板がノズル出口端に対して位置決めされる。場合によっては、半導体基板は、ポンプによる気体を受け入れるのに適した容器内に封入される。
【0105】
本発明は、気体を受動的サンプリングするための装置であって、上部カバーであって、上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと;下部プレートであって、下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと;下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、上部プレートと下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が下部プレートの遠位端に流れて表面と接触し、場合により、気体の流れを実質的に妨害しない保護カバーを有する装置も含む。
【0106】
図1から4を参照しながら本発明のある代表的な実施態様を説明する。図1は周囲空気をDIOSチップ上に直接サンプリングするための本発明による装置を示している。ポンプ3の作用によって気体取り入れ口1の入口端に周囲空気が誘導される。ポンプ3の入口端は、ホース2によって気体取り入れ口1の出口端と流体接続される。ポンプ3の出口端は、ホース2aによってノズル4の入口端と流体接続される。次に、ポンプ3によって、周囲空気が押し出されて、管2aからノズル4の出口端まで送られる。多孔質シリコン表面(チップの光化学エッチングによって形成される)を有するDIOSチップ5は、ノズル4の出口端に対して位置決めされ、これによって、ノズルを通って圧送された周囲空気がDIOSチップ5の多孔質シリコン表面に向かい、これによって空気中の成分が、多孔質シリコン表面上に吸着して濃縮される。
【0107】
図2は、DIOSチップ上に周囲空気を直接サンプリングするための本発明による装置の別の実施態様を示している。図2に示される「吸い込み」方法によると、気体取り入れ口3の出口端が、ホース4により、ノズル5の入口端と直接的に流体接続される。ポンプ2の出口端は、J字型管1の入口端と流体接続される。J字型管のJ字型出口端が、気体取り入れ口3の入口端付近に配置されることで、周囲空気は、気体取り入れ口3の入口端に入り、接続管4を通りノズル5を通るように圧送される。この場合も、多孔質シリコン表面(チップの光化学エッチングによって形成される)を有するDIOSチップ6は、ノズル5の出口端に対して位置決めされ、これによって、ノズルを通って圧送された周囲空気がDIOSチップ6の多孔質シリコン表面に向かい、これによって空気中の成分が、多孔質シリコン表面上に吸着する。
【0108】
図3は、本発明による受動的周囲空気サンプル装置を示している。この実施態様においては、DIOSチップ1には、複数の上方向に突出する壁が設けられており、これによって複数のU字型チャネルが形成されている。DIOSチップの遠位端には、DIOSチップ上に含まれる多孔質シリコン表面が存在する。複数の下方向に突出する壁を有するカバー3が提供され、これによって複数のU字型チャネルが形成される。カバー3は、DIOSチップ1の上に配置され、これによってカバーの一番外側の下方向に突出する壁が、多孔質シリコン表面と隣接し、DIOSチップの表面と接触するが、多孔質シリコン表面とは接触しない。この反対側の最も外側の下方向に突出する壁、および残りの下方向に突出する壁は、DIOSチップの表面と接触しないような長さであり、これらの壁の端部と、DIOSチップの表面との間に空気が流れる空間が残留する。カバー3もDIOSチップ1に対して位置決めされており、DIOSチップの上方向に突出する壁と、カバー3の下方向に突出する壁とがかみ合って、バッフル構造が形成され、これによって周囲空気は、バッフルを通過して移動して、DIOS チップ1の遠位端にある多孔質シリコン表面と接触することができる。
【0109】
図4は、図1から3に示される装置のいずれか1つを使用して周囲空気の成分を吸着させたDIOSチップ1を示している。このDIOSチップは、サンプルターゲットプレート2の上に搭載されて示されており、レーザーパルス3に曝露して、DIOSチップから成分が脱離してイオン化する。
【0110】
本発明の気体サンプリング装置は、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結することができる。したがって本発明の装置(および対応する方法)は、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン質量分析計と接続することができるし、または質量分析計は、携帯型であるか、小型化されるか、または現場での使用に適している。現場での分析に好都合となるために、多孔質吸光性半導体基板は使い捨てであってもよく、または多孔質吸光性半導体基板を現場での検体の捕集に使用し、続いて分析のため実験室環境に戻すこともできる。
【0111】
本発明は、分析のためのイオン化された検体を提供するための装置にも関する。この装置は半導体基板を有する。この装置は、放射線源も有するか、または放射線発生装置を受け入れることができる。放射線源によって減圧下で半導体基板に放射線が照射され、検体が基板上に吸着されていると、放射線照射によって分析のための検体の脱離およびイオン化を引き起こすことができる。
【0112】
一実施態様においては、本発明は、「バッグサンプリング」装置(たとえば、スペルコ(Supelco)モデル番号:1060、1062、または1063、米国ペンシルバニア州ベルフォンテ(Bellefonte,Pennsylvania,USA))を含み、DIOSチップは袋の中に入れられ、続いて周囲容器の内側が減圧されて、サンプリングされる空気が袋の中に吸い込まれ、空気ポンプ自体と空気とは接触しない。
【0113】
本発明の別の実施態様においては、検体が充填された半導体基板は、放射線照射の前に減圧下におかれる。この減圧は、所望の感度に応じて実質的に変動させることができる。約10−6Torrから10−7Torrの圧力が、多数の種々の質量分析において典型的である。最大10−2Torrのより弱い減圧を使用することもできるが、圧力が増加するほど感度が低下すると思われる(TOF質量分析器に導入される前にイオンの衝突冷却/集束を行うために、直交TOF機器のソース領域ではより高い圧力が望ましい)。一方、たとえば軸方向TOF質量分析器の場合、感度のためにはより低い減圧を使用すると有益となる場合があり、10−11Torrまでの低さの圧力が可能である。しかし、極度な減圧を使用して実現される感度の改善においては、追加のまたは大型の真空ポンプを使用することの不便さおよび費用が正当化されることはほとんどない。
【0114】
本発明は、対象の種々の気体化学種を含んでいるかどうかを検出するための気体のモニタリング、およびモニタリングされる気体の種々の成分の検出および同定の目的に有用である。本発明は、汚染物質(たとえば、アミン、窒素複素環など)、乱用薬物、化学兵器(たとえば、有機リン、有機ヒ素)爆薬などの空気モニタリングに理想的である。本発明は、工程品質保証/品質管理、診断目的(たとえば、自動車排ガス)のための空気モニタリング、および汚染物質(たとえば、たばこの副流煙中の成分、「シックビル症候群」におけるホルムアルデヒドなど)のための空気サンプリングに使用することもできる。他の用途としては、プロセス流の監視、環境モニタリング、およびエンジン排ガス分析が挙げられる。さらに別の用途は、埋め立て地、家庭、工業的、商業的、および軍事的発生源かの有害廃棄物流出の監視である。
【0115】
検出可能な検体としては、たとえば、食品、工業用物質、または化学製品の製造によって生成される検体が挙げられる。このような検体としては、食品添加物(たとえば、増量剤、ビタミン、着色剤、または香料)、農薬(たとえば、病虫害防除剤、殺虫剤、除草剤、および肥料)、界面活性剤(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、接着剤(たとえば、イソシアネート接着剤)、樹脂(たとえば、木材の樹脂およびエポキシ樹脂)、有機汚染物質、およびプロセス薬品(たとえば、水系中に使用される化学物質)、たとえば凝集性ポリマー、殺生物剤、腐食防止剤、スケーリング防止剤、溶媒、およびこれらより生成した化合物が挙げられる。
【0116】
本発明は、プロセス制御および環境モニタリングの用途によく適している。本発明により分析することができる環境汚染物質の例としては、たとえば、病虫害防除剤、PCB、およびダイオキシンが挙げられる。本発明の方法は、発癌性または突然変異誘発性であることが公知の多環式芳香族炭化水素(PAH)の検出および分析にも使用することができ、このようなものの例としては、ピレン、ベンズ(a)アントラセン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン、ベンゾ(k)フルオランテン、ベンゾ(g,h,i)ペリレン、ジベンゾ(a,h)アントラセン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、アセナフチレン、ベンゾ(e)ピレン、フルオランテン、フルオレン、イデノ(1,2,3−cd)ピレン、ナフタレン、ペリレン、およびコロネンが挙げられる。当業者であれば、より容易にイオン化可能であるこれらの化合物の分析に本発明を使用すると最も好都合であることが理解できるであろう。
【0117】
本発明は、違法または非合法の薬物を含む「乱用薬物」または「不正麻薬」の検出に使用することもできる。乱用薬物は、主として気晴らしの目的または中毒を満足させるために使用され、多くの場合は自己投与されるか、または適格なヘルスケア提供者の監視なしに投与される。乱用薬物には、中毒または乱用の危険性が高い治療薬も含まれ、たとえばステロイド、鎮痛剤、抗うつ剤、および他の精神安定剤が挙げられる。乱用薬物は処方箋によって入手可能となるが、乱用または中毒が起こりやすい。乱用薬物の例としては、利尿薬(たとえば、アセタゾールアミド、アミロリド、ベンドロフルメサイアジド、ブメタニド、カンレノン、クロルメロドリン、クロルタリドン、ジクロフェナミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、マーサリル、スピロノラクトン、およびトリアムテレン)、麻薬性鎮痛薬(たとえば、アルファプロジン、アニレリジン、スプレノルフィン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピパノン、エトヘプタジン、エチルモルヒネ、レボルファノール、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、およびトリメペリジン)、およびβ−ブロッカー(たとえば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、プロパノロール、およびソタロール)が挙げられる。乱用薬物の例としては、興奮薬(たとえば、アンフェプラモン、アンフェタミン、アンフェタミニル、アミフェナゾール、ベンゾフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、カフェイン、カチン、クロルフェンテルミン、クロベンゾレックス、クロルプレナリン、コカイン、コチニン、クロプロパミド、クロテタミド、ジメタンフェタミン、エフェドリン、エタフェドリン、エタミバン、エチルアンフェタミン、フェンカンファミン、フェネチリン、フェンプロポレックス、フルフェノレックス、メフェノレックス、メタンフェタミン、メトキシフェナミン、メチルエフェドリン、メチレンジオキシメタンフェタミン、メチルフェニデート、モラゾン、ニコチンニケタミド、ペモリン、ペンテトラゾール、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、ピプラドロール、プロリンタン、プロピルヘキセドリン、ピロバレロン、ストリキニーネ、およびテオフィリン)も挙げられる。乱用薬物のさらなる例としては、幻覚剤(たとえば、リセルグ酸ジエチルアミド、メスカリン、フェンシクリジン、ケタミン、ジメトキシメチルアンフェタミン、テトラヒドロカナビノール、マリファナ、メチレンジオキシメタンフェタミン)、鎮痛剤/睡眠薬(たとえば、抱水クロラール、グルテチミド、メプロバメート、およびメタクワロン)、およびアナボリックステロイド(たとえば、ボラステロン、ボルデノン、クロステボル、デヒドロメチルテストステロン、フルオキシメステロン、メステロロン、メタンジエノン、メタアンドロステノロン、メテノロン、メチルテストステロン、ナンドロロン、ノルエタンドロロン、オキサンドロロン、オキシメステロン、オキシメトロン、スタノゾロール、およびテストステロン)が挙げられる。乱用薬物のさらなる例としては、アヘン誘導体(たとえば、ヘロイン、モルヒネ、メタンドン、メペリジン、コデイン、プロポキシフェン、およびアセチルモルヒネ)、バルビツレート(たとえば、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール、ブタルビタール、およびブタバルビタール)、ベンゾジアゼピン(たとえば、ジアゼパム、クロラゼペート、クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム、およびトリアゾラム)、抗精神病薬−抗うつ薬(たとえば、クロルプロマジンク(chlorpromazinc)、トラゾドン、ハロペリドール、アモキサピン、炭酸リチウム、ドキセピン、イミプラミン、およびアミトリプチリン)、および鎮痛薬(たとえば、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフルニサル、およびフェニルブタゾン)が挙げられる。
【0118】
場合によっては、本発明を、治療薬の検出および測定に使用することもできる。「治療薬」の検体は、典型的には、合法的または医学的に認可された、治療または診断目的で投与される薬物または薬剤である。治療薬は、処方箋なしで入手できるものがあるし、処方箋によって入手可能となるものもある。治療薬の例としては、アドレナリン作動薬、抗蠕虫薬、座瘡治療薬、抗アドレナリン作動薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ薬、抗アンドロゲン物質、抗貧血薬、抗狭心症薬、抗不安薬、関節炎治療薬、抗喘息薬、抗アテローム硬化薬、抗菌薬、抗胆石物質、結石形成防止薬、抗コリン作動薬、抗凝血薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗利尿薬、解毒薬、抗嘔吐薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン薬、抗線維素溶解薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗血友病薬、抗出血薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高リポタンパク血症薬、降圧薬、抗感染症薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、抗菌剤、片頭痛薬、細胞分裂抑制薬、抗真菌薬、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗好中球薬、肥満抑制薬、駆虫薬、抗パーキンソン病薬、逆ぜん動薬、抗ニューモシスチス症薬、増殖抑制薬、抗原虫薬、鎮痒薬、抗精神病薬、抗リウマチ薬、抗住血吸虫薬、抗脂漏薬、抗分泌薬、鎮痙薬、抗血栓薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿路結石薬、および抗ウイルス薬が挙げられる。
【0119】
治療薬のさらなる例としては、副腎皮質ステロイド、副腎皮質抑制剤、嫌酒薬、アルドステロン拮抗薬、アミノ酸、アンモニア解毒薬、アナボリックステロイド、覚醒薬、鎮痛剤(たとえば、リドカイン)、アンドロゲン、麻酔薬、食欲減退薬、食欲抑制剤、良性前立腺肥大治療薬、血糖調整剤、骨吸収阻害剤、気管支拡張薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心抑制薬、心保護薬、強心剤、心血管薬、コリン作動性アゴニストおよびアンタゴニスト、コリンエステラーゼ不活性化剤または阻害剤、コクシジウム抑制薬、認知補助薬および賦活薬、抑制薬、診断補助薬および造影剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、殺寄生虫薬、催吐薬、酵素阻害剤、およびエストロゲンが挙げられる。
【0120】
薬物である検体に言及する場合、元の薬物の種々の代謝物および誘導体を含むことも意図しており、体内で薬物が迅速に代謝されるため、これらが検出される主要物質となることが多い。好ましくは、このような検体は揮発性であり、すなわち、たとえば、特定の薬物を使用したことが知られているまたは疑われている人物の呼気中に見いだされる。
【0121】
本発明による検体は、環境毒性物質、産業性汚染物質、工業薬品、または他の汚染物質(たとえば、アミン、窒素複素環など)であってもよい。検体は化学兵器(たとえば、有機リンおよび有機ヒ素化合物)であってもよい。本発明のさらに別の用途は、埋め立て地、家庭、工業的、商業的、および軍事的発生源から排出された空気中の有害廃棄物の監視である。
【実施例】
【0122】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、この実施例はさらなる限定として構成されたものではない。
(たばこの煙中のニコチンの検出)
火を付けたたばこをガラスホルダ(使い捨てピペットから切り取った短いガラスの断片)に取り付け、不活性プラスチック管でエルレンマイヤーフラスコの枝管に接続した。フラスコの口にゴム栓を取り付け、このゴム栓にガラス製使い捨てピペットを挿入した。フラスコから突出するピペットの末端を、ダイヤフラムポンプと接続し、これによって、燃焼するたばこから、フラスコ内部、および最後にポンプと続く閉鎖系が形成された。ポンプは、たばこの煙をフラスコ内に引き寄せるために使用した。十分な煙が捕集されてから、ポンプを外し、圧縮空気源と取り換え、たばこおよびホルダをガラス製使い捨てピペットと取り換えた。系を流れる気流が逆方向になり、加圧下で捕捉された煙はフラスコから排出された。ピペットのテーパ付き端部を介してこの煙をDIOSチップ上に誘導し、これによって吸着した材料の個々のスポットが形成された。次にこれらのスポットを質量分析(TOF LD+)によって分析し、強いニコチン信号をm/z=162において明確に見ることができた。このスペクトルを以下に示す。
【0123】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明による能動空気サンプリング装置を示しており、周囲空気は取り入れ口の入口端からサンプリングされ、DIOSチップの多孔質シリコン表面に向けられているノズルに圧送される。
【図2】本発明による能動空気サンプリング装置の別の実施態様を示しており、周囲空気が圧送されて、取り入れ口の入口端まで送られる。
【図3】本発明による受動的直接空気サンプリング装置を示している。
【図4】ターゲットプレート上に搭載されたDIOSチップを示しており、DIOSチップの多孔質シリコン表面上に吸着した(図1から3に示されるいずれかの装置を使用して)周囲空気の成分は、レーザーパルスによって脱離およびイオン化され、たとえば、飛行時間型質量分析計によって検出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中に含まれる検体の検出方法であって、
(a)検体を含む気体を、多孔質半導体基板の表面上に、前記表面上に前記検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと、
(b)レーザー脱離/イオン化によって前記検体を分析することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコン基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質半導体基板が支持構造に固定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質半導体基板が、前記支持構造上で連続層を形成している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質半導体基板が、前記支持構造上で2つまたはそれ以上の別々の領域を形成している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記支持構造が、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記支持構造が、実質的に平面または粒子状である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状の支持構造が第2の支持構造に固定されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質半導体基板が光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質半導体基板が多孔質吸光性半導体基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質半導体基板がミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質半導体基板の多孔度が約4%から約100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約50%から約80%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約60%から約70%である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約1から約1000m2/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約600から約800m2/gである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が薬640m2/gである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質半導体基板が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記多孔質半導体基板がDIOSチップ上に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記多孔質半導体基板が金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記多孔質半導体基板が半金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記多孔質半導体がシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シリコンがエッチングされている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記多孔質半導体が、シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記多孔質半導体が、結晶シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記多孔質半導体基板が酸化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記多孔質半導体がn型半導体またはp型半導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記金属が表面被覆を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疎水性表面被覆が、前記金属に共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記表面被覆が、イオン化および脱離特性を最適化させるために選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記表面被覆が、検体の拡散を防止するために選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記シリコンが表面被覆を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疎水性表面被覆が、前記シリコンに共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合した単分子層であり、前記単分子層が、式
【化1】
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニルまたは複素環式環を形成する。)
のいずれかによる化学的部分を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記多孔質半導体基板に電磁放射線を照射し、これによって前記検体の脱離およびイオン化が起こり、イオン化された検体またはこの化学反応から得られる生成物を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記電磁放射線がレーザーによって発生する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記多孔質半導体基板を真空下におくことと、前記半導体基板を前記真空下におきながら放射線照射することとを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記照射工程によって、前記検体のイオン化および脱離が起こる、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記電磁放射線が、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記電磁放射線が約337nmの波長を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記脱離が減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記脱離がほぼ大気圧で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記分析工程が、前記検体の物理的性質の決定または測定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記分析工程が定量的である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記物理的性質が、質量分析技術によって測定されるときに前記検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記イオンが検体の分子イオンである、請求項57に記載の方法。
【請求項58】
前記イオンが検体のフラグメントイオンである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記質量分析技術が飛行時間型質量分析である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記質量分析技術において使用される質量分析器が、直交飛行時間型質量分析器、三次元イオントラップ、シングルクアドルオプル(single quadruople)、トリプル四重極、フーリエ変換MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記脱離/イオン化が起こる温度が、前記検体が熱分解する温度よりも低温である、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記減圧が、操作される質量分析計のサンプル室内の圧力である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記減圧が約10−6torr以下である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記多孔質半導体基板と大地との間の電子電位差が正または負のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記電位差が約±5000から約±30,000ボルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記検体が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記検体が前記多孔質半導体基板上に吸着しており、前記多孔質半導体基板の表面がエチルフェニル基と結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ミリモル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項69】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1マイクロモル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ナノモル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
分析前に、前記検体が吸光性マトリックスと混合されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項72】
前記マトリックスが吸光性有機ポリマーを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記気体が周囲空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項74】
前記気体が、本来気体室温および室内圧力である、請求項1に記載の方法。
【請求項75】
前記気体が、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物である、請求項1に記載の方法。
【請求項76】
前記検体が、人間が原因の汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記汚染物質が、煙の成分からなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記煙が、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記検体が乱用薬物、化学兵器、および爆薬からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
気体中に含まれる検体の検出方法であって、
(a)多孔質吸光性半導体基板を提供することと、
(b)検体を含む気体を、前記半導体基板の表面上に、前記気体中に含まれる検体を前記半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと、
(c)レーザー脱離/イオン化によって前記検体を分析することと、
を含む方法。
【請求項81】
検体の物理的性質の分析方法であって、
(a)多孔質吸光性半導体基板を得ることと、
(b)測定されるべき物理的性質を有する気体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、前記検体は前記気体から直接吸着していることと、
(c)前記検体が充填された半導体基板に照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することと、
を含む方法。
【請求項82】
物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、
(a)半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと、
(b)測定されるべき物理的性質を有する気体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと、
(c)前記検体が充填された半導体基板を減圧下におくことと、
(d)前記検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることと、
を含む方法。
【請求項83】
検体イオンの同定方法であって、
(a)多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質吸光性シリコン半導体基板を提供することと、
(b)分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、前記気体がマトリックス分子を含まないことと、
(c)約±5,000から約±34,000ボルトの電位を前記検体が充填された半導体基板に印加することと、
(d)前記検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと、
(e)飛行時間型質量分析技術によって前記イオン化された検体の質量電荷比を分析することと、
を含む方法。
【請求項84】
前記半導体基板が多孔質シリコン基板である、請求項80、81、および82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記半導体基板が支持構造に固定されている、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記半導体基板が前記支持構造上に連続層を形成している、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記半導体基板が、前記支持構造上に2つまたはそれ以上の別々の領域を形成している、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記支持構造が、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記支持構造が、実質的に平面または粒子状である、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記粒子状の支持構造が第2の支持構造に固定されている、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記第2の支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記半導体基板が、ミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスの多孔質半導体基板である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記多孔質半導体基板の多孔度が約4%から約100%である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約50%から約80%である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約60%から約70%である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約1から約1000m2/gである、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約600から約800m2/gである、請求項93に記載の方法。
【請求項99】
前記多孔質吸光性半導体の前記比表面積が約640m2/gである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記多孔質半導体基板が疎水性である、請求項93に記載の方法。
【請求項101】
前記多孔質半導体基板がDIOSチップ上に収容される、請求項93に記載の方法。
【請求項102】
前記多孔質半導体基板が金属を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項103】
前記多孔質半導体基板が半金属を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項104】
前記多孔質半導体がシリコンを含む。
【請求項105】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコンである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記シリコンがエッチングされている、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記多孔質半導体が、シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記多孔質半導体が、結晶シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記多孔質半導体基板が酸化されている、請求項93に記載の方法。
【請求項110】
前記多孔質半導体がn型半導体またはp型半導体である、請求項93に記載の方法。
【請求項111】
前記金属が表面被覆を有する、請求項102に記載の方法。
【請求項112】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記疎水性表面被覆が、前記金属に共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記表面被覆が、イオン化および脱離特性を最適化させるために選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
前記表面被覆が、検体の拡散を防止するために選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
前記シリコンが表面被覆を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項120】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記疎水性表面被覆が、前記シリコンに共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合した単分子層であり、前記単分子層が、式:
【化2】
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニルまたは複素環式環を形成する。)
のいずれかによる化学的部分を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項126】
R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記多孔質半導体基板に電磁放射線を照射し、これによって前記検体の脱離およびイオン化が起こり、イオン化された検体またはこの化学反応から得られる生成物を生成することを含む、請求項80および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記照射が、レーザーによって発生する電磁放射線によるものである、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記多孔質半導体基板を真空下におくことと、前記半導体基板を前記真空下におきながら照射することとを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記照射工程によって、前記検体のイオン化および脱離が起こる、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記電磁放射線が、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生する、請求項128に記載の方法。
【請求項132】
前記電磁放射線が約337nmの波長を有する、請求項128に記載の方法。
【請求項133】
前記脱離がほぼ大気圧で行われる、請求項93に記載の方法。
【請求項134】
前記分析工程が、前記検体の物理的性質の決定または測定を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項135】
前記分析工程が定量的である、請求項93に記載の方法。
【請求項135】
前記分析工程が内部標準を参照しながら行われる、請求項93に記載の方法。
【請求項136】
前記物理的性質が、質量分析技術によって測定されるときに前記検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記イオンが検体の分子イオンである、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記質量分析技術が飛行時間型質量分析である、請求項136に記載の方法。
【請求項139】
前記質量分析技術において使用される質量分析器が、直交飛行時間型質量分析器、三次元イオントラップ、シングルクアドルオプル(single quadruople)、トリプル四重極、フーリエ変換MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択される、請求項136に記載の方法。
【請求項140】
前記脱離/イオン化が起こる温度が、前記検体が熱分解する温度よりも低温である、請求項93に記載の方法。
【請求項141】
前記減圧が、操作される質量分析計のサンプル室内の圧力である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記多孔質半導体基板と検出器との間に電界が形成され、前記多孔質半導体基板および大地に関して正または負の電位差が形成される、請求項80、81、および82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約±5000から約±30,000ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約20,000ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約0から約200ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記検体が疎水性である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
前記検体が前記多孔質半導体基板上に吸着しており、前記多孔質半導体基板の表面がエチルフェニル基と結合している、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ミリモル未満である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1マイクロモル未満である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ナノモル未満である、請求項146に記載の方法。
【請求項149】
分析前に、前記検体が吸光性マトリックスと混合されていない、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
前記気体が周囲空気である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記気体が、室温および室内圧力において本来気体である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項153】
前記気体が、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項154】
前記検体が、人間が原因の汚染物質である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項155】
前記汚染物質が、煙の成分からなる群より選択される、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
前記煙が、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記検体が乱用薬物、化学兵器、および爆薬からなる群より選択される、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項158】
前記検体を含む気体が、空気サンプリング容器または袋の中になり、真空ポンプを使用して前記空気サンプリング容器または袋の中に吸い込まれている、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項159】
気体を能動サンプリングし、同気体を多孔質吸光性半導体基板に誘導する装置であって、
(a)入口端および出口端を有する気体導管と、
(b)入口端および出口端を有するノズルであって、前記導管出口端と前記ノズル入口端とが流体接続され、前記導管出口端からの気体を前記ノズルを介して多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと、
(c)前記気体を前記導管入口端から誘導し、前記ノズル出口端を介して前記気体を移動させるポンプと、
を含む装置。
【請求項160】
前記ポンプが、前記導管出口端と前記ノズル入口端との間にあり、これらと流体接続されている、請求項159に記載の装置。
【請求項161】
前記ポンプが、前記導管入口端に配置され、前記気体が、前記導管入口端と前記ノズル出口端とを介して圧送される、請求項160に記載の装置。
【請求項162】
前記ポンプが、入口端および出口端を有する管をさらに含み、前記管入口端が前記ポンプと流体接続され、気体が前記管から前記導管入口端に圧送されるように前記管出口端が、前記導管入口端に対して位置決めされる、請求項161に記載の装置。
【請求項163】
多孔質吸光性半導体基板をさらに含み、前記ノズル出口端から圧送された前記気体が前記半導体基板に誘導されるように前記半導体基板が、前記ノズル出口端に対して位置決めされる、請求項160に記載の装置。
【請求項164】
ポンプによって前記気体を受容するのに適した容器中に前記半導体基板が封入される、請求項160に記載の装置。
【請求項165】
前記装置が、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結される、請求項159に記載の装置。
【請求項166】
前記質量分析計が携帯型である、請求項159に記載の装置。
【請求項167】
前記質量分析計が小型化されているかまたは携帯型であり、現場での使用に適している、請求項159に記載の装置。
【請求項168】
前記多孔質吸光性半導体基板が使い捨てである、請求項159に記載の装置。
【請求項169】
前記多孔質吸光性半導体基板が、現場で検体を捕集するために使用され、続いて分析のために実験室環境に戻される、請求項159に記載の装置。
【請求項170】
気体を受動的サンプリングするための装置であって、
(a)上部カバーであって、該上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと、
(b)下部プレートであって、該下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと、
(c)下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、
前記上部プレートと前記下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が前記下部プレートの前記遠位端に流れて前記表面と接触し、場合により、気体の流れを実質的に妨害しない保護カバーを有する装置。
【請求項171】
前記装置が、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結される、請求項170に記載の装置。
【請求項172】
前記質量分析計が小型化されているかまたは携帯型であり、現場での使用に適している、請求項170に記載の装置。
【請求項173】
前記多孔質吸光性半導体基板が使い捨てである、請求項170に記載の装置。
【請求項174】
前記多孔質吸光性半導体基板が、現場で検体を捕集するために使用され、続いて分析のために実験室環境に戻される、請求項170に記載の装置。
【請求項175】
前記多孔質吸光性半導体基板がDIOSチップ上に含まれる、請求項163または170に記載の装置。
【請求項176】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合している単分子層であり、前記単分子層がアルキン、オレフィン、またはこれらの混合物を含み、前記アルキンが式R1C≡CR2を有し、前記オレフィンが式R1R2C=R3R4
(上式中、R基は、それぞれ独立して、水素、または置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基となることができ、R基置換基としては、(C1〜C24)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、エステル、第1級または第2級または第3級アミノ、カルバミド、チオール、アルキルチオからなる群からの置換基が挙げられ、または2つのR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが5または6員環を形成する)
を有する、請求項39または119に記載の方法。
【請求項177】
前記アルキンにおいて、R1は水素であり、R2は、−(CH2)9CH3(1−ドデシンから)、−(CH2)8COOCH3(メチル10−ウンドシノエート(metyl 10−undcynoate)から)、−フェニル(フェニルアセチレンから)、−tert−ブチル(tert−ブチルアセチレンから)、−(CH2)3CN(5−シアノ−1−ペンチンから)、−(CF2)7CF3、−(CH2)2OH(3−ブチン−1−オールから)であり、前記オレフィンにおいて、R2、R3、およびR4は水素であり、R1は(CH2)5CH3(1−ヘキセンから)である、177に記載の方法。多孔質シリコンは、R1、R2、およびR3がすべてメチル基であり、R4が水素である(2−メチル−2−ブテンから)であるオレフィンを使用してもヒドロシリル化されることが知られている。
【請求項1】
気体中に含まれる検体の検出方法であって、
(a)検体を含む気体を、多孔質半導体基板の表面上に、前記表面上に前記検体を吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと、
(b)レーザー脱離/イオン化によって前記検体を分析することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコン基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質半導体基板が支持構造に固定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質半導体基板が、前記支持構造上で連続層を形成している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質半導体基板が、前記支持構造上で2つまたはそれ以上の別々の領域を形成している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記支持構造が、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記支持構造が、実質的に平面または粒子状である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状の支持構造が第2の支持構造に固定されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質半導体基板が光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質半導体基板が多孔質吸光性半導体基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質半導体基板がミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質半導体基板の多孔度が約4%から約100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約50%から約80%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約60%から約70%である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約1から約1000m2/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約600から約800m2/gである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が薬640m2/gである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質半導体基板が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記多孔質半導体基板がDIOSチップ上に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記多孔質半導体基板が金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記多孔質半導体基板が半金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記多孔質半導体がシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シリコンがエッチングされている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記多孔質半導体が、シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記多孔質半導体が、結晶シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記多孔質半導体基板が酸化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記多孔質半導体がn型半導体またはp型半導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記金属が表面被覆を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疎水性表面被覆が、前記金属に共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記表面被覆が、イオン化および脱離特性を最適化させるために選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記表面被覆が、検体の拡散を防止するために選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記シリコンが表面被覆を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疎水性表面被覆が、前記シリコンに共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合した単分子層であり、前記単分子層が、式
【化1】
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニルまたは複素環式環を形成する。)
のいずれかによる化学的部分を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記多孔質半導体基板に電磁放射線を照射し、これによって前記検体の脱離およびイオン化が起こり、イオン化された検体またはこの化学反応から得られる生成物を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記電磁放射線がレーザーによって発生する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記多孔質半導体基板を真空下におくことと、前記半導体基板を前記真空下におきながら放射線照射することとを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記照射工程によって、前記検体のイオン化および脱離が起こる、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記電磁放射線が、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記電磁放射線が約337nmの波長を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記脱離が減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記脱離がほぼ大気圧で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記分析工程が、前記検体の物理的性質の決定または測定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記分析工程が定量的である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記物理的性質が、質量分析技術によって測定されるときに前記検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記イオンが検体の分子イオンである、請求項57に記載の方法。
【請求項58】
前記イオンが検体のフラグメントイオンである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記質量分析技術が飛行時間型質量分析である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記質量分析技術において使用される質量分析器が、直交飛行時間型質量分析器、三次元イオントラップ、シングルクアドルオプル(single quadruople)、トリプル四重極、フーリエ変換MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記脱離/イオン化が起こる温度が、前記検体が熱分解する温度よりも低温である、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記減圧が、操作される質量分析計のサンプル室内の圧力である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記減圧が約10−6torr以下である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記多孔質半導体基板と大地との間の電子電位差が正または負のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記電位差が約±5000から約±30,000ボルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記検体が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記検体が前記多孔質半導体基板上に吸着しており、前記多孔質半導体基板の表面がエチルフェニル基と結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ミリモル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項69】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1マイクロモル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ナノモル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
分析前に、前記検体が吸光性マトリックスと混合されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項72】
前記マトリックスが吸光性有機ポリマーを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記気体が周囲空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項74】
前記気体が、本来気体室温および室内圧力である、請求項1に記載の方法。
【請求項75】
前記気体が、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物である、請求項1に記載の方法。
【請求項76】
前記検体が、人間が原因の汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記汚染物質が、煙の成分からなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記煙が、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記検体が乱用薬物、化学兵器、および爆薬からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
気体中に含まれる検体の検出方法であって、
(a)多孔質吸光性半導体基板を提供することと、
(b)検体を含む気体を、前記半導体基板の表面上に、前記気体中に含まれる検体を前記半導体基板上に吸着させるのに十分な時間の間、誘導することと、
(c)レーザー脱離/イオン化によって前記検体を分析することと、
を含む方法。
【請求項81】
検体の物理的性質の分析方法であって、
(a)多孔質吸光性半導体基板を得ることと、
(b)測定されるべき物理的性質を有する気体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、前記検体は前記気体から直接吸着していることと、
(c)前記検体が充填された半導体基板に照射して、イオン化された検体、またはこの化学反応によって得られた生成物を生成することと、
を含む方法。
【請求項82】
物理的性質の分析に好適な検体イオンを提供する方法であって、
(a)半導体基板と共有結合している複数の飽和炭素原子を有する多孔質吸光性半導体基板を提供することと、
(b)測定されるべき物理的性質を有する気体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することと、
(c)前記検体が充填された半導体基板を減圧下におくことと、
(d)前記検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、所望の物理的性質を決定するための分析に好適なイオン化された検体を得ることと、
を含む方法。
【請求項83】
検体イオンの同定方法であって、
(a)多孔度が約60%から約70%でありエチルフェニル基が結合している多孔質吸光性シリコン半導体基板を提供することと、
(b)分析されるべき質量を有する検体を含有するある量の気体を前記半導体基板と接触させて、検体が充填された半導体基板を形成することであって、前記気体がマトリックス分子を含まないことと、
(c)約±5,000から約±34,000ボルトの電位を前記検体が充填された半導体基板に印加することと、
(d)前記検体が充填された半導体基板に減圧下で紫外レーザーを照射して、イオン化された検体を得ることと、
(e)飛行時間型質量分析技術によって前記イオン化された検体の質量電荷比を分析することと、
を含む方法。
【請求項84】
前記半導体基板が多孔質シリコン基板である、請求項80、81、および82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記半導体基板が支持構造に固定されている、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記半導体基板が前記支持構造上に連続層を形成している、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記半導体基板が、前記支持構造上に2つまたはそれ以上の別々の領域を形成している、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記支持構造が、シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記支持構造が、実質的に平面または粒子状である、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記粒子状の支持構造が第2の支持構造に固定されている、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記第2の支持構造が、シリコンまたはこの酸化物、ガラス、有機および無機ポリマー、金属または半金属、セラミック、またはこれらの組み合わせを含む固相組成物である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記半導体基板が、ミクロポーラス、マクロポーラス、またはメソポーラスの多孔質半導体基板である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記多孔質半導体基板の多孔度が約4%から約100%である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約50%から約80%である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記多孔質半導体基板の前記多孔度が約60%から約70%である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約1から約1000m2/gである、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
前記多孔質吸光性半導体の比表面積が約600から約800m2/gである、請求項93に記載の方法。
【請求項99】
前記多孔質吸光性半導体の前記比表面積が約640m2/gである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記多孔質半導体基板が疎水性である、請求項93に記載の方法。
【請求項101】
前記多孔質半導体基板がDIOSチップ上に収容される、請求項93に記載の方法。
【請求項102】
前記多孔質半導体基板が金属を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項103】
前記多孔質半導体基板が半金属を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項104】
前記多孔質半導体がシリコンを含む。
【請求項105】
前記多孔質半導体基板が多孔質シリコンである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記シリコンがエッチングされている、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記多孔質半導体が、シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記多孔質半導体が、結晶シリコンの電気化学エッチングまたは酸性エッチングによって製造される、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記多孔質半導体基板が酸化されている、請求項93に記載の方法。
【請求項110】
前記多孔質半導体がn型半導体またはp型半導体である、請求項93に記載の方法。
【請求項111】
前記金属が表面被覆を有する、請求項102に記載の方法。
【請求項112】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記疎水性表面被覆が、前記金属に共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記表面被覆が、イオン化および脱離特性を最適化させるために選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
前記表面被覆が、検体の拡散を防止するために選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
前記シリコンが表面被覆を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項120】
前記表面被覆が、疎水性表面被覆、親水性表面被覆、または親フッ素性表面被覆である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記表面被覆が非金属原子からなる、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記非金属原子が、炭素、水素、窒素、リン、ゲルマニウム、硫黄、フッ素、ヨウ素、塩素、臭素、リン、ホウ素、およびセレンからなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記疎水性表面被覆が、前記シリコンに共有結合している飽和炭素原子を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
前記金属が、エチルフェニル基と共有結合している、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合した単分子層であり、前記単分子層が、式:
【化2】
(上式中、
Siは、表面シリコン原子であり、
−は、EまたはZ配置のいずれかの二重結合を表しており、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、水素、置換または未置換のアルキルまたはシクロアルキル、置換または未置換のアリールまたはヘテロアリール、および置換または未置換の複素環式基からなる群より選択され、但し、R1、R2、R3、またはR4はいずれもアルケニル基およびアルキニル基を有さないか、または2つのジェミナルまたはビシナルR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが、シクロアルキル、シクロアルケニルまたは複素環式環を形成する。)
のいずれかによる化学的部分を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項126】
R1またはR3のいずれかがフェニル基であり、残りのR基がすべて水素である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記多孔質半導体基板に電磁放射線を照射し、これによって前記検体の脱離およびイオン化が起こり、イオン化された検体またはこの化学反応から得られる生成物を生成することを含む、請求項80および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記照射が、レーザーによって発生する電磁放射線によるものである、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記多孔質半導体基板を真空下におくことと、前記半導体基板を前記真空下におきながら照射することとを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記照射工程によって、前記検体のイオン化および脱離が起こる、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記電磁放射線が、窒素−UV、赤外、エキシマ、またはOPOのレーザー源によって発生する、請求項128に記載の方法。
【請求項132】
前記電磁放射線が約337nmの波長を有する、請求項128に記載の方法。
【請求項133】
前記脱離がほぼ大気圧で行われる、請求項93に記載の方法。
【請求項134】
前記分析工程が、前記検体の物理的性質の決定または測定を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項135】
前記分析工程が定量的である、請求項93に記載の方法。
【請求項135】
前記分析工程が内部標準を参照しながら行われる、請求項93に記載の方法。
【請求項136】
前記物理的性質が、質量分析技術によって測定されるときに前記検体のイオン化によって生成するイオンの質量電荷比である、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記イオンが検体の分子イオンである、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記質量分析技術が飛行時間型質量分析である、請求項136に記載の方法。
【請求項139】
前記質量分析技術において使用される質量分析器が、直交飛行時間型質量分析器、三次元イオントラップ、シングルクアドルオプル(single quadruople)、トリプル四重極、フーリエ変換MS、磁気セクター型、四重極−TOF複合、または飛行時間型/飛行時間型タンデム、イオン移動度質量分析計、およびこれらの複合的な組み合わせからなる群より選択される、請求項136に記載の方法。
【請求項140】
前記脱離/イオン化が起こる温度が、前記検体が熱分解する温度よりも低温である、請求項93に記載の方法。
【請求項141】
前記減圧が、操作される質量分析計のサンプル室内の圧力である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記多孔質半導体基板と検出器との間に電界が形成され、前記多孔質半導体基板および大地に関して正または負の電位差が形成される、請求項80、81、および82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約±5000から約±30,000ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約20,000ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項143】
前記電位差が約0から約200ボルトである、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記検体が疎水性である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
前記検体が前記多孔質半導体基板上に吸着しており、前記多孔質半導体基板の表面がエチルフェニル基と結合している、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ミリモル未満である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1マイクロモル未満である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記多孔質半導体基板上に吸着した前記検体の量が約1ナノモル未満である、請求項146に記載の方法。
【請求項149】
分析前に、前記検体が吸光性マトリックスと混合されていない、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
前記気体が周囲空気である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記気体が、室温および室内圧力において本来気体である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項153】
前記気体が、微粒子懸濁物、煙、フォッグ、または噴霧された懸濁物である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項154】
前記検体が、人間が原因の汚染物質である、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項155】
前記汚染物質が、煙の成分からなる群より選択される、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
前記煙が、たばこの煙、自動車エンジンの排気ガス、または化石燃料燃焼生成物である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記検体が乱用薬物、化学兵器、および爆薬からなる群より選択される、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項158】
前記検体を含む気体が、空気サンプリング容器または袋の中になり、真空ポンプを使用して前記空気サンプリング容器または袋の中に吸い込まれている、請求項80、81、82、および83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項159】
気体を能動サンプリングし、同気体を多孔質吸光性半導体基板に誘導する装置であって、
(a)入口端および出口端を有する気体導管と、
(b)入口端および出口端を有するノズルであって、前記導管出口端と前記ノズル入口端とが流体接続され、前記導管出口端からの気体を前記ノズルを介して多孔質吸光性半導体基板上まで誘導することができるノズルと、
(c)前記気体を前記導管入口端から誘導し、前記ノズル出口端を介して前記気体を移動させるポンプと、
を含む装置。
【請求項160】
前記ポンプが、前記導管出口端と前記ノズル入口端との間にあり、これらと流体接続されている、請求項159に記載の装置。
【請求項161】
前記ポンプが、前記導管入口端に配置され、前記気体が、前記導管入口端と前記ノズル出口端とを介して圧送される、請求項160に記載の装置。
【請求項162】
前記ポンプが、入口端および出口端を有する管をさらに含み、前記管入口端が前記ポンプと流体接続され、気体が前記管から前記導管入口端に圧送されるように前記管出口端が、前記導管入口端に対して位置決めされる、請求項161に記載の装置。
【請求項163】
多孔質吸光性半導体基板をさらに含み、前記ノズル出口端から圧送された前記気体が前記半導体基板に誘導されるように前記半導体基板が、前記ノズル出口端に対して位置決めされる、請求項160に記載の装置。
【請求項164】
ポンプによって前記気体を受容するのに適した容器中に前記半導体基板が封入される、請求項160に記載の装置。
【請求項165】
前記装置が、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結される、請求項159に記載の装置。
【請求項166】
前記質量分析計が携帯型である、請求項159に記載の装置。
【請求項167】
前記質量分析計が小型化されているかまたは携帯型であり、現場での使用に適している、請求項159に記載の装置。
【請求項168】
前記多孔質吸光性半導体基板が使い捨てである、請求項159に記載の装置。
【請求項169】
前記多孔質吸光性半導体基板が、現場で検体を捕集するために使用され、続いて分析のために実験室環境に戻される、請求項159に記載の装置。
【請求項170】
気体を受動的サンプリングするための装置であって、
(a)上部カバーであって、該上部カバーから下方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する上部カバーと、
(b)下部プレートであって、該下部プレートから上方向に突出して一連のチャネルを形成している複数の平行な壁を有する下部プレートと、
(c)下部プレートの遠位端にあり、上部カバーと面している多孔質吸光性半導体基板表面とを含み、
前記上部プレートと前記下部プレートとが、それぞれの平行の壁が互いにかみ合うように互いに間隔を開けて配置され、これによって、一連のバッフルが形成されることで、気体が前記下部プレートの前記遠位端に流れて前記表面と接触し、場合により、気体の流れを実質的に妨害しない保護カバーを有する装置。
【請求項171】
前記装置が、オンラインまたはオフラインのいずれかのレーザー脱離/イオン化質量分析計と連結される、請求項170に記載の装置。
【請求項172】
前記質量分析計が小型化されているかまたは携帯型であり、現場での使用に適している、請求項170に記載の装置。
【請求項173】
前記多孔質吸光性半導体基板が使い捨てである、請求項170に記載の装置。
【請求項174】
前記多孔質吸光性半導体基板が、現場で検体を捕集するために使用され、続いて分析のために実験室環境に戻される、請求項170に記載の装置。
【請求項175】
前記多孔質吸光性半導体基板がDIOSチップ上に含まれる、請求項163または170に記載の装置。
【請求項176】
前記表面被覆が、前記シリコンの表面上の共有結合している単分子層であり、前記単分子層がアルキン、オレフィン、またはこれらの混合物を含み、前記アルキンが式R1C≡CR2を有し、前記オレフィンが式R1R2C=R3R4
(上式中、R基は、それぞれ独立して、水素、または置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基となることができ、R基置換基としては、(C1〜C24)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、エステル、第1級または第2級または第3級アミノ、カルバミド、チオール、アルキルチオからなる群からの置換基が挙げられ、または2つのR基を、これらが結合する炭素原子と合わせたものが5または6員環を形成する)
を有する、請求項39または119に記載の方法。
【請求項177】
前記アルキンにおいて、R1は水素であり、R2は、−(CH2)9CH3(1−ドデシンから)、−(CH2)8COOCH3(メチル10−ウンドシノエート(metyl 10−undcynoate)から)、−フェニル(フェニルアセチレンから)、−tert−ブチル(tert−ブチルアセチレンから)、−(CH2)3CN(5−シアノ−1−ペンチンから)、−(CF2)7CF3、−(CH2)2OH(3−ブチン−1−オールから)であり、前記オレフィンにおいて、R2、R3、およびR4は水素であり、R1は(CH2)5CH3(1−ヘキセンから)である、177に記載の方法。多孔質シリコンは、R1、R2、およびR3がすべてメチル基であり、R4が水素である(2−メチル−2−ブテンから)であるオレフィンを使用してもヒドロシリル化されることが知られている。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2007−524810(P2007−524810A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508703(P2006−508703)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/003719
【国際公開番号】WO2005/029003
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/003719
【国際公開番号】WO2005/029003
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】
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