説明

シリコン含有物質を含む送達系

生物活性成分の送達系として用いるための、加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物であって、シリコン含有物質の表面はシリコン含有物質の加水分解速度を変え、かつ/あるいは、オルトケイ酸の重合速度を抑制する安定化剤と連結する組成物、ならびに加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物の分解時にオルトケイ酸の徐放を促進する方法であって、本方法はシリコン含有物質の加水分解速度を変え、かつ/あるいは、オルトケイ酸の重合速度を抑制すべくシリコン含有物質の表面の安定化剤での処理を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物であって、生物活性成分の送達において担体として作用するナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の標的部位に対する活性成分の有効な送達を達成するための改善方法は依然として、美容産業、スキンケア産業、及び医薬品産業の目標である。
【0003】
徐放性又は緩効性の方法における医薬活性成分送達の多数の方法が開発されている。しかしながら、活性成分を送達及び放出する機能を行った時点での担体物質の終末については、これまでほとんど注意が払われていなかった。本発明はシリコン系の担体物質が投与後に有効な物質に変換される新規の種類の送達系の提供に資する。
【0004】
活性薬剤の局所送達は、ほとんどの生物学的化合物の安定性の脆弱性、活性薬剤が分子の大きさ又は疎水性といった他の有害特性のために皮膚層の深くに透過不可能なこと、及び健康上の懸念を生じる局所用調合物の生体互換性の脆弱性等の因子によって特定の問題を呈示する。
【0005】
広範な範囲の活性成分を局所送達可能にするために、多数の調査では、制御可能な方法において角質層バリアを一時的に破壊するための戦略の開発に焦点が置かれており、薬剤は十分かつ予測可能な量で透過でき、ひいては治療上のレベルに達成できる。イオン浸透療法や超音波といったいくつかの技術は皮膚吸収の増強手段(enhancer)として調査されてきているが、ほとんどの試みは多量の薬剤を皮膚に透過するのを可能にするように角質層と可逆的に相互作用しうる無毒性の化学的な浸透増強剤を同定することに集中されている。バリアを破壊する初期の試みでは単一の溶媒又は溶媒混合物、表面活性薬剤、及び脂肪酸を用いていた。これらの物質は皮膚を横切って多くの化学物質の透過を増加できるが、多くの場合皮膚成分を抽出又はそれと相互作用する能力と結びつく所望されない副作用と関連し、これによって刺激反応を誘発した。
【0006】
送達系の使用は更に調査されている。通常用いられる送達系はローション剤、クリーム剤、及びゲル剤といった比較的粘性のある流体を含み、標的部位に即時に接触する。これらの媒体は美容化合物及び医薬化合物の双方で多くの場合連続して用いられる。しかしながら一般的には、長期間にわたって活性化合物を送達するのに好適ではない。
【0007】
徐放を形成するために、局所送達系及び他の媒体は用いられている。特に、通常用いられる局所送達系はリポソームといった脂質系の担体を用いている。しかしながら、これらの担体系には、中核部が安定しない可能性や疎水性化合物の充填容量の制限といった多数の欠点がある。更には、リン脂質の小胞に対しあまりにも大きく、又は破壊的であり、かつ生成するのに高価である物質を送達するには好適ではない。
【0008】
植物抽出物、及び剥離性の酵素等といった不安定な活性成分を保護でき、活性形態で皮膚にこのような薬剤を送達する一方で、媒体への調合に好適である局所塗布可能な活性薬剤用の送達系の改善に関する継続的なニーズがある。
【0009】
シリコンは植物及び動物に必須の微量元素である。シリコンには、ほ乳類の結合組織の基質に見られるタンパク質とグリコサミノグリカンとの複合体の成分としての構造的役割、ならびに成長及び骨形成(シリコンは骨の石灰化のプロセスを支える)における代謝的役割がある。従って、シリコンは骨及び結合組織の標準的な発達に必須である。シリカは更に皮膚の健康に重要な役割を果たすことが知られており、コラーゲン及びエラスチンプロモータとして作用し、身体内での抗酸化プロセスに関与している。シリコンはグリコサミノグリカンの生成に関与し、シリカ依存性の酵素によって天然組織の構築プロセスの利点は増加する。
【0010】
医学用途については、シリコンはマイクロ粒子又はナノ粒子として生成でき、局所、経口の取り込み、注射又は植込といった多数の経路を介してその投与を促進する。生分解性のシリコン系粒子は更に薬剤の標的に用いられる。しかしながら、シリコンの生物学的利用能は多くの場合、難溶性に限定され、有機的なシリコン含有物質は受容不可能な高い毒性を呈示する傾向にあり、その使用は美容用途、スキンケア用途、及び医薬品用途に限定される。
【0011】
多孔質シリコンは米国のBell laboratoriesでArthur Ulhir Jr.とIngeborgとによって1956年に偶然に最初に発見された。多孔質シリコンの生成はその初期形成からフッ化水素酸(HF)溶液で浸漬した単結晶体又は多結晶体のシリコンを用いた、染色エッチング又は陽極酸化セルに及ぶ範囲となる。シリコンに孔を形成することによって、物質の分解とシリコンの孔への活性化合物の充填との双方が可能となる。他の活性化合物用の担体としての多孔質シリコン及び多孔質シリカの使用は記載されている(Nonviral gene delivery:Thinking of silica,D.Luo and W.M.Saltzman,Ahola M,Kortesuo P.,Kangasniemi I.,Kiesvaara J.,Yli−Urpo A.,Silica xerogel carrier material for controlled release of toremifen citrate.Int.J.Pharm.195(2000)219−227;Ahola M.,Sailynoja E.S.,Raitavuo M.H.,Vaahtio M.H.,Salonen J.I.,Yli−Urpo AUO.In vitro release of heparin from silica xerogels.Biomat.(2001)1−8;Lu J.,Liong M.,Zink J.I.,Tamanoi F.,Mesoporous Silica Nanoparticles as a Delivery System for Hydrophobic Anticancer Drugs.Small.2007 June 13)。しかしながら、このような担体系の分解生成物の重要性は十分な注目を受けていない。特に、シリコンを含有する担体系が重合なしに有効かつ生物活性的な形態のシリコン、オルトケイ酸を形成するように分解するのを保証することはこれまで注目されていない。
【0012】
水性環境でのシリコンの溶解生成物はケイ酸である。ケイ酸は一般式が[SiO(OH)4−2xのケイ素、水素、及び酸素といった元素の化学化合物の系統群の一般的な名称である。メタケイ酸(HSiO)、オルトケイ酸(HSiO、25℃でpKa1=9.84、pKa2=13.2)、ジケイ酸(HSi)、及びピロケイ酸(HSi)といった一部の単一のケイ酸は、非常に希釈した水溶液で同定し、更に、シリカ(SiO)のあるケイ酸重合体(PolySA)は完全な重合の終点を表す。単量体形態のケイ酸、代替的にはモノケイ酸(monosilicic acid)として知られるオルトケイ酸(OSA)、及びシリカは、シリカがエネルギー的に好適な形態を表す反対の側面のシリコン系反応を示す。濃度及びpHは反応の方向と単量体、重合体及びシリカの間の平衡状態とを決定する:
低濃度/高pH高濃度/低pH
SiO←→HSiO←→SiO
【0013】
ケイ酸は緩衝分子であると見なされうる。オルトケイ酸(OSA)は非常に弱い酸であり、例えばカルボン酸よりも弱い。
SiO+H←→HSiO+H
SiO+OH←→HSiO+H
のように、25℃で9.84のpKで解離する。
【0014】
pKaが約9.8である場合、ケイ酸はイオン化し、かつ非解離の酸の混合物を示す。イオン化した種(HSiO)はpHを上げて溶液からプロトンを吸収できる一方、非解離種はpHを上げることによって、溶液を緩衝し、水酸化イオンを中和するようにプロトンを供与できる。この緩衝能力は低濃度で迅速に生じることに留意することは価値がある。高濃度では、低いpHによって二量体(HSi)、又は高次構造及びウェハを生成する縮合反応を受けるようにケイ酸を促進する。これらの二量体及び高次構造(SiOOH)は水酸化物を吸収することによって単量体又は低次構造に戻すように溶解できる。これによって、pHが低い場合は同様に、これらの重合した酸は水酸化物を中和する高いpHで更に解離する。従って、重合したケイ酸は緩衝液として用いることもできるが、反応は相応に低速である。
【0015】
生物学的なpH下、周囲温度での二量化反応及び更なる重合化反応のエンタルピーのため、重合は一般的には;
SiO+HSiO→HO+HSi
[Si]−OH+HSiO→[Sin+1m+2]−OH+2HO;
を介して、
SiO→2HO+SiO
に進む。
【0016】
逆反応は当然ながら可能であるが、SiOからHSiOに戻すのに13を超えるpHと熱が必要となり熱力学的に好適ではない。
【0017】
シリカを形成するためのOSAの自身との反応は、2のOSAの分子の会合がOHイオンを会合し、解離する二量体と同様となる点までその濃度を低減することによって限定できる。ケイ酸のみにを含む純シリコンの限界濃度は約10−4Mol・L−1であり(Studies of the kinetics of the precipitation of uniform silica particles through the hydrolysis and condensation of silicon alkoxides,Journal of Colloid and Interface Science,Volume 142,Issue 1,1 March 1991,Pages 1−18 G.H Bogush and C.F Zukoski IV)、この濃度を超えると、他のPolySA種が形成されるため、純粋なOSAを抽出できなくなる。しかしながら、高濃度ではオルトケイ酸は他の化学種の添加、及び以下に述べる調合方法を通して重合を予防できる。
【0018】
溶解の動態:

表面積を無視した溶解の動態は反応種のpH及び有効性に依存する。溶解プロセスにおける主要な反応種はプロトン化及び脱プロトン化した形態における水である。双方の方向における反応速度に関する動態データはBrinker「sol−gel science and technology」を参照のこと。しかしながら、他の分子の添加はpKa値に応じて平衡状態を上方のケイ酸又は右方の酸化シリコン(ガラス)に大きくシフトして副反応を生成できる。このことは「粒子の環境」の節で更に述べる。
【0019】
pHの調節を通して溶解の制御が保存用途で可能となるが、生体内でのpHは身体で強く制御されている。従って、粒径及び表面の化学的性質を通した溶解速度の調節は生体内での使用前になされなければならない。よって、溶解速度のみを増加するのにはプロトン化又はヒドロキシル化したシリコンが好適である。シリコン粒子の溶解を低速にするために、好適な厚さの酸化層が溶解特性における遅れを生成し、一方では酸化層は緩徐に溶解し、この酸化層の厚さは水がシリコンの核部にアクセスする前に遅延期の長さを決定する。
【0020】
薬剤分子の結合は表面エネルギーに大きく依存するため、シリコン表面での処置に注意すべきである。表面のヒドロキシル化によって極性分子の結合に好適な接触角が低減する。一方で、表面の酸化の増殖によって、疎水性分子の結合に好適な接触角が増加する。従って、大きさ及び表面の化学的性質の組合わせの戦略によって、薬剤の充填及び溶解速度のレベルを超えた制御を得ることが要求されるであろう。
【0021】
多様な形態でのシリコン酸化物の使用は、皮膚及び爪や骨といった他のヒトの身体部分の栄養素として、ならびに関節炎といった骨又は関節の疾患の治療において、提唱される。生物学的に活性なシリコンの必要条件は水溶性と、生体分子に向かう更なる反応性である。シリカの水溶解性はシリコン骨格に対する遊離OH基(シラノールの官能基)に依存している。シリカの複合体形成が増加することによって、シラノール基に対するシリコンの比率の低下が得られ、小さな類似体と比較して溶解度と反応性がわずかな大きな高分子が得られる。従って、このような調合物の有効性は最も生物学的に活性化し、ひいては有効な種類のケイ酸であるOSAを形成するよう分解するシリコンの性能に依存する。OSAのAl3+イオンに対する親和性は高く、その除去は向上することは示されている。従って、骨及び脳でのアルミニウムの毒性効果に対して、特にアルツハイマー病といった神経変性疾患において作用しうる。金属イオンのケイ酸塩の複合体の形成によって、OSAは単量体形態で安定し、身体からの有毒な金属イオンの除去を助ける。
【0022】
OSAは9.5未満のpHレベルで不安定な非常に弱い酸であり、ヒトの身体に対してほとんど生物学的利用能のないゾル又はゲルを迅速に沈殿又は形成する。従って、高濃度溶液(0.5%を超えるシリコン)のオルトケイ酸及び低重合体を調製することは非常に難しい。更には、調合物によって生成されるケイ酸の種類はケイ酸シリコン化合物の濃度及びこの溶解が生じる媒体のpHによって大部分は決定される。生体内でOSAを得るためには、ケイ酸濃度を強く制御しなければならない。
【0023】
他にも有効な化合物に対する送達媒体としてシリコン系物質のマイクロ粒子の使用可能性が考えられているが、このような担体系の分解後に、高く制御されたレベルの分解したシリコン、特のその生物活性のある形態であるオルトケイ酸(OSA)の生成は得るのが難しいままである。既に提唱されているシリコン系の薬剤送達系は、制御された方法でOSAを生成及び放出せず、ケイ酸がOSAの形態で維持される範囲はこれらの調合物に関しこれまで決定されていない。多くの調合物は高濃度のOSAを迅速に生成して分解されるため、これによって偶発的にポリケイ酸(PolySA)が生成される可能性がある。
【0024】
シリカ及びシリコン系の調合物はいくつかの用途で担体系として用いられてきたが、シリコンが薬剤担体として用いられる場合は重合は主要な安全性の問題となる。総ての形態のシリコンを用いた既に開示した送達系は、多孔性、マイクロシリカ、ナノシリカ、又は二酸化ケイ素のいずれであっても、粒子がケイ酸を形成するように分解される溶解を受けることを主張している。しかしながら、既知のシリコン系の送達系での主要な問題は、OSAの生成及び放出が制御不可能であり、結果として重合が生じうることである。沈殿したSiの粒径分布は同種ではなく、シリコン構造は凝集体と集塊物とからなる。シリコン又はシリカの主要な粒子は最初に水素結合によって、更なる段階で第2の集塊物の空間構造を形成するように結合する第1の集塊物(凝集体)に相互に結合される。このような変質のないシリカの均質性の不足及び粒径の増殖は、粒子がシリコン粒子又はケイ酸の形態で体内にあり、活性化合物を放出する場合に顕著な安全上の問題となりうる。
【0025】
安定化したOSAを含むスキンケア、美容上、医薬品、及び薬用化粧品の組成物は既知である。しかしながら、このような安定化した組成物は薬剤送達系として用いるのに好適ではない。例えば、スキンケア組成物における生物学的利用能のあるオルトケイ酸の使用は、Barelら(2004)による文献「Effect of oral intake of choline−stabilized orthosilicic acid on skin,nails and hair in women with photo−damaged facial skin,Skin Research and Technology,101」、及びBarelら(2005)による文献「Effect of oral intake of choline−stabilized orthosilicic acid on skin,nails and hair in women with photo−damaged facial skin,The Journal of the Academy of Dermatology,Suppl,3(52)28」に既述されている。
【0026】
体外でのOSAの生成は調査されており、事前生成されたOSA溶液での身体の補給は日本国特許出願の特開昭58−176115号公報に記載されている。オルトケイ酸の濃縮溶液が生成されており、オルトケイ酸はシロキサン結合Si−O−Siを加水分解することによって重合を防止する強酸のpHで安定化させている。オルトケイ酸が溶液形態にあり、固体又は半固体形態である場合、制御された方法で活性化合物を送達できない。
【0027】
豪州特許第774668B2号は、ポリペプチドへの複合体形成によって安定化する固体形態において、生物学的に同化可能なオルトケイ酸を含む複合体について記載している。このような複合体はポリペプチドの水溶液の存在下で、テトラアルコシキシランといったハイドロケイ酸(hydrosilicic acid)の前駆物質を加水分解し、その後固体複合体を形成するために水を蒸発することによって調製している。豪州特許第774668号に記載の好適なポリペプチド安定化剤はオルトケイ酸を安定化させることができ、タンパク質の加水分解物、コラーゲンの加水分解物を含んでいる。このような複合体は中性及び生理学的なpHレベルで安定となる、生物学的に同化可能な形態でOSAを送達できるが、治療用の活性薬剤といった他の有効な化合物を送達可能な系を提供しない。
【0028】
米国特許第5,922,360号はOSAの安定化形態及び安定化したOSAを含む生物学的な製剤について記載している。特に、米国特許第5,922,360号はOSAのシラノール基と複合体を形成する自由電子対がある窒素原子を含む安定化剤を用いた安定化について記載している。記載の好適な安定化剤は四級アンモニウム化合物、例えばテトラアルキル化合物であり、各々のアルキル基は例えば、1ないし5の炭素原子、特にメチル基及びエチル基、ならびにトリアルキルヒドロキシアルキル化合物を含み、ヒドロキシ基は好適にはメタノール又はエタノールである。コリンは例えばコリンハイドロクロライドの形態で、特に好適であり、更には胃において取り込みを亢進し、更なる安定性を与えるプロリンやセリンといったアミノ酸について記載している。安定化したOSAは、OSAが生成時に安定化剤と複合体形成するように安定化剤の存在下で水においてシリコン含有化合物を加水分解することによって調製する。国際公開第2004/016551A1号公報は同様に、四級アンモニウム化合物、アミノ酸、アミノ酸源から選択した安定化剤の存在下で、シリコン化合物がOSAに加水分解する成形品を含むケイ酸を調製する方法を開示する。
【0029】
シリコン含有担体物質がOSAに確実に分解し、OSAの重合を予防できるシリコン系の送達系に対するニーズが残っている。
【発明の概要】
【0030】
本発明は固体で加水分解性のシリコン含有物質から生成される担体系を含む送達系に関し、前記送達系は活性成分を送達できる一方、更に、担体系が制御された速度で分解する場合にオルトケイ酸を放出する利点を提供する。
【0031】
第1の態様においては、本発明は加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物を提供し、シリコン含有物質の表面は安定化剤と結合し、そうでない場合は連結される。安定化剤はOSAの放出に対するシリコン含有物質の加水分解速度を制御し、かつ/あるいはオルトケイ酸の重合速度を抑制することによって形成される時点でOSAを安定化させる。
【0032】
安定化剤をシリコンナノ粒子の表面に連結することによって、生物学的な薬剤活性薬剤の徐放を提供し、かつ有効で生物学的利用能のあるオルトケイ酸を形成するよう確実に分解される送達系が提供されることを見出している。更には、本発明のシリコンナノ粒子を含む調合物は制御した速度でOSAを生成及び放出し、これによってPolySAの形成に好適な濃度でのOSAの放出を回避することが見出されている。更に、ナノ粒子の表面の化学的な改質によって、加水分解時に放出されるOSAの安定性を増加でき、ひいてはシリコンの生物学的利用能を改善できることを見出している。一実施形態においては、本発明はシリコン系の担体物質が投与後に有効な物質に変換される新規の型の送達系を提供する。
【0033】
担体としての加水分解性のシリコン含有物質の使用によって、シリコン含有物質を投与後に例えば皮膚内で分解する場合に、活性成分の放出を標的として制御できる可能性があり、活性成分は担体から解離され、局所投与の場合は例えば皮膚に放出される。本発明の調合物によって、投与後の粒子の溶解で、活性化合物の放出と同時、又はそれよりも早く放出することが可能となる。このプロセスを制御することによって、OSAは更なるケイ酸の重合を回避する方法で生成可能である。いくつかの実施形態においては、100%のOSA生成が達成され、安定化剤に対するシリコンの比率は、1mol/mol未満、理想的には0.33以下となり、調合物で用いられる安定化剤の種類に依存することが見出されている。各々の1モルのシリコンに対し3モル以上の安定化剤の存在は、いくつかの実施形態においては特に有用であることが見出されている。
【0034】
第2の態様においては、本発明は、シリコン含有物質の加水分解速度を変更、例えば抑制し、かつ/あるいはオルトケイ酸の重合速度を抑制するために、シリコン含有物質の表面を安定化剤で処理することによって生物活性成分用の送達系として用いるべく、加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物の分解時に、オルトケイ酸の徐放を促進する方法を提供する。
【0035】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様の組成物の調製方法が提供される。特に、生物活性成分用の送達系として用いる組成物を調製する方法であって、加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を安定化剤を含む溶液と接触させるステップを具える方法を提供する。
【0036】
本発明の第4の態様によると、ヒト又は動物の身体の美容上の処理方法で用いるか、治療又は診断によるヒト又は動物の身体の処理方法で用いるか、あるいは化粧品として用いるための本発明の第1の態様の組成物を提供する。本発明は更に、有効量の生物活性成分を含む本発明の第1の態様の組成物を投与するステップを具える、ヒト又は動物の身体の治療上、診断上又は美容上の処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、OSAの生成での粒径の効果を示している。
【図2】図2は、OSAの生成での表面修飾の効果を示している。
【図3】図3は、アスパラギン酸、脂質、又はビタミンAの安定化剤でのOSAの生成を、ケイ酸種の割合として経時的に示している。
【図4】図4は、シリコンナノ粒子がアスパラギン酸、脂質、アスパラギン酸と脂質との組合せ、又はリジンと複合体形成される場合、あるいは安定化剤と複合体形成されない場合の、3mgのシリコンにつき生成されるOSAの重量(マイクロミリグラム)を示している。
【図5】図5は、OSAの生成での多様な安定化剤で複合体形成される前にシリコン表面を活性化する効果を示している。
【図6】図6は、安定化剤がない場合のシリコンナノ粒子から生成されるOSAの量を経時的に示している。
【図7】図7は、OSAの生成でのシリコンとアミノ酸のグリシンとの間の比率の効果を示している。
【図8】図8は、生成したOSAの量でシリコンナノ粒子の表面をホスファチジルコリンに連結する効果を経時的に示している。
【図9】図9は、λmaxが700nmの場合のオルトケイ酸の較正曲線を提供している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
一実施形態においては、本発明は加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物、例えば局所用組成物を提供し、シリコン含有物質の表面はOSAの生成速度を限定し、シリコンの加水分解時に生成されるオルト形態のケイ酸を安定化させる化合物の付着によって改質される。シリコン含有物質の加水分解時に、生成したOSAの分子は安定化化合物との複合体形成によって安定化し、ひいては重合を防止する。
【0039】
[オルトケイ酸の分解]
本発明は、シリコン含有物質の加水分解速度が制御されない場合に、生成したオルトケイ酸は重合に好適な濃度で存在し、ひいてはケイ酸はその生物学的に利用可能でかつ有効な形態で放出されないという認識に関連している。一実施形態においては、本発明の組成物のナノ粒子の表面はシリコン含有物質の加水分解速度を変える安定化剤、例えば抑制する安定化剤と連結する。
【0040】
一実施形態においては、シリコン含有物質の加水分解速度は安定化剤の存在によって、速度が安定化剤のない場合の同一組成物の加水分解速度の50%未満、好適には30%未満、特に10%未満となるように変えられる。本発明の第2の態様の一実施形態においては、オルトケイ酸の徐放を促進する方法が提供され、加水分解速度は上に特定したレベルまで減速する。OSAが身体で同化されるレベル未満、又は送達部位から例えば拡散によって除去されるレベル未満まで、加水分解速度を減速することによって、重合が回避又は少なくとも低減でき、OSAの身体への送達の有効な効果が実現できることが見出されている。
【0041】
別の実施形態においては、加水分解速度は安定化剤の存在によって、速度が安定化剤のない場合の同一組成物の加水分解速度を超えるように促進される。
【0042】
水溶液において高濃度のOSAが実現できる場合、安定化剤は、重合形態のケイ酸が生じるOSAと更なるOSA分子との反応を抑制する溶液中に存在することが必要である。従って本発明は、シリコンを含む固体調合物において溶液中のOSAを安定化できる安定化剤を含むことは有効であるという認識に関連している。特に、薬剤送達系として用いるために、このような安定化剤を加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む組成物の表面に連結することによって、生成した相応レベルのケイ酸がその有効でかつ生物学的に利用可能な形態で維持するように組成物の加水分解で生成した、OSAの重合を抑制した調合物が提供されることが見出されている。
【0043】
単量体ケイ酸の分解生成物はヒトの身体において当然に利用可能であるため、加水分解性のシリコン含有物質の使用によって、毒素の危険性が非常に低くなり、これは多くの他の送達系を超える顕著な効果となる。本発明の送達系によって、有効であると知られている生物学的に利用可能な化合物を提供するように担体が分解されるという更なる利点が得られる。例えば、OSAは線維芽細胞、内皮細胞、及びケラチノサイトを含む特定の細胞型において細胞増殖及び細胞移動を刺激することが知られている。
【0044】
都合の良いことに、本発明による生物学的に利用可能なナノ粒子のオルトケイ酸の分解生成物自体が、皮膚、骨、毛髪、爪、結合組織のための栄養素として、及び関節炎又は骨粗鬆症といった骨又は関節の疾患の治療又は予防に有効である。
【0045】
[安定化剤]
安定化剤は、水溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)におけるシリコン含有物質の加水分解速度を低減する等で変え、かつ/あるいはOSAの重合速度を抑制することによって形成される時点で、このような溶液においてOSAを安定化させる化合物である。従って、安定化剤は例えば、水溶液、特にトリス又はリン酸緩衝食塩水といった通常用いられる水溶性の緩衝溶液において、シリコン含有物質の加水分解時にOSAの形成を促進し、かつ/あるいは、シリコン含有物質の加水分解に続いて水溶液においてOSAの重合速度を抑制する薬剤として記載できる。多くのこのような薬剤は当該技術分野で既知である。
【0046】
一般的には、PBSは以下の成分:137mMのNaCl;2.7mMのKCl;10mMの二塩基のリン酸ナトリウム;2mMの一塩基のリン酸カリウム;を含み、pHが7.4のPBSは温度が37℃の生理学的条件のモデルのために用いられる。
【0047】
上述のように、シリコンは水溶性媒体においてOSAに加水分解され、次いで、多様な鎖長及び構造の分子的実体に重合され、最終的には非水溶性のシリカートを形成する。本発明による組成物は生分解プロセスを最適化して、OSAの重合の形成は実質的に抑制される。このように、分解生成物は安定化され、その特性、特に溶解性及び粘性は生物学的利用能を最大化するように制御される。このことはナノ粒子の表面の化学的な改質によって実現され、表面は安定化剤に結合するか、そうでなければ連結される。安定化剤の選択によってOSAの生成速度が決定できる。例えば、OSAに対するシリコンの加水分解速度は、側鎖が負に帯電し、かつアミノ基よりもカルボキシル基が多い、アスパラギン酸といったアミノ酸、あるいは頭部の官能基が負に帯電したリン脂質といった脂質と、ナノ粒子の表面を連結することによって増加できる。逆に、加水分解速度は、チロシンといった側鎖が疎水性で、かつ/あるいは側鎖がアミノ基を含むアミノ酸と、ナノ粒子の表面を連結することによって低減できる。このように、安定化剤は所望のOSAの生成速度が達成されるように加水分解速度を調整するのに用いることができる。
【0048】
溶液中のOSAを安定化する安定化剤の性能に影響を与える因子は:
1.調合物におけるイオン化段階全体 ― 塩を形成し、OSAを安定化させるために安定化剤はシリコンが溶解するpHで正に帯電すべきである;
2.求核剤が強くなると安定化剤の効果が大きくなるという求核剤の強度に関連する効果;
3.分子が小さくなり高密度に充填できると一般的には安定化剤の効果が大きくなるという、充填密度に対する分子の大きさ ― アミノ酸が一般的にはビタミンよりも良好に作用することを示すデータを参照のこと;
4.結合の方法;
を含む。結合が強くなる場合、OSAの溶解は低速になり、ひいては重合の機会が少なくなる。
【0049】
安定化剤がない場合、重合は10−4Mを超え、9.6mg/L又は0.48mg/50mLに対応するOSA濃度で迅速に進行する。一実施形態においては、安定化剤は10−4M mg/Lを超える濃度、例えば0.5mg/50mL以上の濃度、特に0.80mg/50mL以上の濃度でOSAの濃度を安定化できる。都合の良いことに、安定化剤は0.90mg/50mL以上、例えば0.95mg/50mL以上、特に1.0mg/50mL以上のOSA溶液を安定化できる。
【0050】
都合の良いことに、安定化剤は表面結合をシリコン含有物質に形成する本発明の組成物に含まれる。都合の良いことに、シリコン含有物質の表面への安定化剤の結合によって、OSAに対するシリコン含有物質の加水分解速度は予測通りに変えられる。安定化剤の存在によって、ナノ粒子表面のイオン状態に変化が生じ、シリコン系構造自体に同時に調合された薬剤が徐放される。
【0051】
都合の良いことに、安定化剤はシリコン含有物質の表面上にあるシラノール基と相互作用して、ナノ粒子と結合を形成する。固体表面と安定化剤との間の表面結合は、共有結合、又は静電力及び/若しくはファンデルワールス力を含む物理的な引力の形成を含んでもよい。
【0052】
付加剤のない場合と比較した場合のイオン状態の反応シリコンの表面の主要な効果は、調合物における正確な濃度ではなく、付加剤の存在によって生じ、ひいては正確な限定量を規定するのではなくOSAの徐放パラメータでのその定量的な効果が更に強調されている。それにも拘わらず、安定化の効果は相応なレベルの安定化剤が組成物中にある場合に向上することが見出されている。
【0053】
一実施形態においては、組成物は、組成物の総重量に対し少なくとも5重量パーセントの安定化剤、例えば少なくとも20重量パーセント、一般的には少なくとも30重量パーセント、特に少なくとも50重量パーセントの安定化剤を含む。一実施形態においては、シリコンに対する安定化剤の比率は1に対して少なくとも0.8、例えば1に対して少なくとも1、一般的には1に対して少なくとも1.5である。シリコンに対する安定化剤の比率は1に対して少なくとも2であることが特に有効であることを見出した。
【0054】
一実施形態においては、安定化剤はカルボン酸陰イオンと、ナトリウムイオン、弱塩基の陽イオン、四分体(quarterly)のアンモニウム陽イオン等の金属陽イオンとを含む塩といった、酸/塩基及び/又は求核剤であり、pKa及びpHに示されるようなイオン化環境に効果を与える。これらの効果は単独、又は組合せのいずれかで添加剤とともに生じる。全範囲にわたるpKa値が調合物の溶媒に依存する安定化剤を用いて調合物を開発することは可能となり、かつ、pHの低い調合物によって、OSAの形成が低速になり、結果的に薬剤の放出が低速になることが知られている。
【0055】
OSAの重合及び粒子の凝集は無荷電粒子の形成によることが更に発見されている。安定化剤はOSAを塩の形成によって安定化させる酸又は塩基であってもよい。従って、OSAの継続的な生成及び凝集生成物の防止のための主要因子は電荷の効果を相殺し、分子を安定化させるための陰イオンの存在である。表面の官能基付与、又は塩をケイ酸で形成するルイス塩基として作用する化合物の付加を通して、溶液中の単量体ケイ酸の安定性は向上できる。一実施形態においては、安定化剤は、pKaが8.9未満のルイス塩基である。このようなルイス塩基はケイ酸と塩複合体を形成し、安定化させることができる。
【0056】
調合物における過剰な電子によって、溶解プロセス中のイオン化及びその後の水溶性環境との相互作用が増加し、シリコンの溶解性を改善する。一実施形態においては、安定化剤は形状SIOBHの塩複合物を形成できる塩基(B)である。好適な塩基のpKaは一般的には9.84以上である。特性がアルカリ性の上述の安定化化合物が、シリカのような酸性の性質の表面と相互作用できる。好適な塩基性の安定化剤は水酸化ナトリウムを含む。
【0057】
一実施形態においては、安定化剤はシリコン含有物質の表面でSi−OHのリガンド又はSi−Hの官能基と置換できる代替的なリガンドである。OHリガンドを置換するのに好適な化合物は、非プロトン溶媒においてSiに更に強く結合し、ひいてはシラノールのOHリガンドを置換するのに用いることができるカルボン酸(例えばRCOOH、ここでRは脂肪族基、特にC1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、又はC1−10シクロアルキル基である)を含む。シリコンの表面と反応できる他の化合物の例を以下に列記する。
【0058】

注釈:
(a)Si上へのアルキル移植に好適であり、単層の長鎖のアルキルで覆われる疎水性表面は化学的な要求の下で劇的に安定化した。
(b)一般的なヒドロシリル化であり、更に別個のアルケン及びアルキンに用いることができ、ルイス酸EtAlClによって、あるいは熱誘起又は光誘起(白色光)で媒介でき、ヒドロシリル化はアルキン及び/又はアルケンのSiの表面に結合したビニル基及び/又はアルキル基への共有結合性の改質に関連し、化学官能性の相異性はこのヒドロシリル化反応によって許容でき、エステル基、ヒドロキシ基、クロロ基、ニトリル基、及びキラル基を含む。
(c)水素は塩素を介して除去できるが、ハロゲン化を生じず、代わりに酸化を誘起する。
(d)窒化物形成は窒素中よりもアンモニア中で更に有効であり、SiをOで最初に、次いでNHでアニーリングすることによってオキシナイトライドで更に終結できる。
【0059】
一実施形態においては、安定化剤はタンパク質又はペプチドである。タンパク質及びペプチドのシリコン含有物質の表面との接触は、薬剤送達系から装具のセンサの範囲の広範な状況で共通に出現する。シリコン含有ナノ粒子の表面とタンパク質又はペプチドとの連結によって、シリコン系物質の分解生成物による定型的でかつ制御されたパターンのOSA生成物が生じうることが見出されている。我々のデータの粒径分布の分析によると、非常に均一な粒子はペプチド又は脂質を安定化剤として用いて得ることができる。ペプチド/タンパク質の安定化剤は調合物の種類及び生物活性化合物の所望の放出特性によって選択してもよい。プロトン性の調合物においては、都合良く結合したペプチド/タンパク質はアミノ(NH)の官能性に富んだものであると見出される。非プロトン性の調合物においては、カルボン酸又は他の求核性官能基(COO−)の官能性に富んだ脂質、タンパク質/ペプチド(及び複数の脂質)は特に都合良いことが見出されている。OSAの徐放を低速にするためには、10以下のアミノ酸残基を含むペプチドが最も有効であることが見出されている。OSAの放出を低速にするためには、ペプチドの立体構造が重要であるとは見出されていない。一実施形態においては、安定化剤は10以下、例えば8以下、特に5以下のアミノ酸残基を含むペプチドである。都合の良いことに、ペプチドのアミノ酸残基は3以下、例えば2又は1である。官能基の密度が高い少数のアミノ酸残基又は単一のアミノ酸残基を含む短いペプチドは、低速なOSAの放出に特に都合がよいことが見出されている。他方では、OSAの放出を高速にするためには、安定化剤として10を超えるアミノ酸残基を含む大きなペプチド分子を使用することが最も有効であると見出されている。一実施形態においては、安定化剤は10を超えるアミノ酸残基、例えば15以上のアミノ酸残基、特に少なくとも20のアミノ酸残基を含むペプチドである。立体構造のあるペプチドは高速なOSAの放出を安定化させるのに都合が良く、アルカリホスファターゼといった3次元構造のタンパク質は、特に好適である。アルブミン、コラーゲン、及びその誘導体といった正味の負電荷及び/又はアミン基を超える過剰なカルボキシル基がある、ポリペプチド及びタンパク質は特に好適な安定化剤であると見出されている。
【0060】
都合の良いことに、安定化剤の重量平均分子量は1000以下、一般的には800以下、特に500以下である。
【0061】
一実施形態においては、安定化剤は脂質であり、例えば数平均分子量が500ないし1000の範囲にある脂質である。特に好適な脂質は極性のある頭部の官能基と1以上の疎水性鎖とを含有するリン脂質、特にグリセロリン脂質を含む。特に好適なリン脂質はホスファチジルコリン(PC)等の極性のある頭部の官能基が四級アンモニウム成分に結合したものである。脂質の種類は調合物の性質によって選択でき、中性脂質又は負電荷の脂質は非プロトン性の調合物に好適である一方、正に荷電し、かつ小さいCH鎖の脂質はプロトン性の調合物に好適である。陰性の頭部の官能基がカルボキシル基を含む疎水性鎖のある脂質は特に好適である。好適には、側鎖は、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールの鎖といった炭素原子が15以上の脂肪族の側鎖、あるいはエーテル単位が6以上反復するエーテル側鎖である。
【0062】
一実施形態においては、安定化剤はファンデルワールス力によってシリコンの表面に結合する静電的な吸着種である。好適には、安定化剤の接触角は光学張力測定法によって測定した場合に、45未満、より好適には20未満、理想的には10未満であり、シリコンウェハの表面での安定化剤の滴下の接触角が観察及び測定されている。接触角が小さくなると、表面と安定化剤との相互作用が大きくなる。良好なファンデルワールスの引力で得られる化学的特徴は飽和型の脂質といった水素で飽和した分子を含む。
【0063】
一実施形態においては、安定化剤は水溶液においてOSAを安定化させる化合物であるか、あるいはそれを含む。ナノ粒子表面に送達及び付着する場合にオルト形態においてケイ酸を安定化させるように作用しうる多様な化合物が見出されている。これらは例えば、自由電子対がオルトケイ酸のシラノール基、及び/又はシリコンナノ粒子の表面にあるシラノール基と複合体を形成できる窒素原子を含有する化合物を含む。
【0064】
一実施形態においては、安定化剤はヒドロキシル基又はアミノ基といった高密度の極性基を含む極性のある有機化合物(例えば、糖)、あるいは、塩及び双性イオン種といった、成分が形式上、正電荷又は負電荷になる化合物である。好適な安定化剤は四級アンモニウム化合物、例えばアンモニウム塩と、ベタインといった四級アンモニウム基を含有する双性イオン化合物とを含む。このような化合物は酸安定性のオルトケイ酸溶液の形成を許容するように用いることができ、更にこの効果を達成すべくナノ粒子表面に付着できる。
【0065】
特に好適な安定化剤は:双性イオン性の有機化合物を含有する有機化合物と;アミノ基又は四級アンモニウム基と−OH型の官能性(ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基など)、脱プロトン化したその誘導体(例えば、水酸化物)、又はそのエステル(アセチル基など)のいずれかの官能基とがある有機塩と;を含む。このような化合物の例はアミノ基とカルボン酸基とを含むアミノ酸である。一実施形態においては、アミノ基又は四級アンモニウム基は−OH、−O、又はC1−6アルキレン基を介したエステル官能性がある官能基と結合する。一実施形態においては、安定化剤は式I:

の化合物又は塩であり、各々のRは独立で、C1−5アルキル又はHであり、nは2又は3であり、mはプロトン性の調合物で1ないし6であり、非プロトン性の調合物で7以上、例えば7ないし20であり、Xは−CH−、−C(O)−、−O−P(O)(OR)−、−S(O)−から選択され、Yは−OH、−O、又は−OC(O)Rのいずれかであり、脂肪族基、特にC1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、又はC1−10シクロアルキル基であり、好適にはC1−4アルキル基である。有効な安定化剤と見出されている式Iの化合物の例は、コリン及びアセチルコリンといったコリン誘導体、エタノールアミン、グリシン及びN,N,N−トリメチルグリシンといったグリシン誘導体、タウリン、芳香油、飽和油、ならびにオリーブ油といった不飽和油を含む。
【0066】
一実施形態においては、安定化剤は四級アンモニウム成分を含む。特に好適な四級アンモニウム化合物は、テトラアルキルアンモニウム塩とテトラアルキルアンモニウムベタインとを含み、各々のアルキル基は例えば1ないし5の炭素原子、特にメチル基及びエチル基を含む。トリアルキルヒドロキシアルキルの四級アンモニウム化合物は、ヒドロキシアルキル基が好適にはヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルで、例えばコリン塩及びアセチルコリン塩といったトリアルキルヒドロキシアルキルの四級アンモニウム化合物の誘導体であり、更に有効である。
【0067】
一実施形態においては、安定化剤は単糖若しくは二糖、又はイノシトールといった糖のような化合物である。更なる実施形態においては、安定化剤は単糖又は糖のような化合物である。好適な単糖はマンニトール及びソルビトールを含む。
【0068】
安定化剤はベタイン、イノシトール、エタノールアミン、グリシン、タウリン、ならびにマンニトール及びソルビトール等の単糖類といった浸透圧調節物質であってもよい。
【0069】
一実施形態においては、安定化剤はアミノ酸である。アミノ酸は天然であっても非天然であってもよい。好適なアミノ酸はアスパラギン酸、グリシン、リジン、プロリン、及びセリン、好適にはリジン、プロリン、及びセリン、特にプロリン及びセリンを含む。正味の電荷、特に負電荷があり、側鎖が酸性であり、かつ/あるいはアミド基よりもカルボキシル基が多い、アスパラギン酸及びグルタミン酸といったアミノ酸は特に好適であると見出されている。分子量が120以下、特に分子量が100以下のアミノ酸といった、アラニン又はグリシン、特にグリシン等の小さなアミノ酸は好適な安定化剤であると見出されている。側鎖が疎水性の、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン、特にチロシンといったアミノ酸は好適な安定化剤と見出されている。
【0070】
一実施形態においては、安定化剤はオルトケイ酸のシラノール基と複合体を形成できる自由電子対のある窒素原子を含む化合物、トリアルキルヒドロキシアルキル化合物、浸透圧調節物質、単糖、コリン誘導体、及びアミノ酸から選択される。
【0071】
一実施形態においては、安定化剤は二重の複合体結合があり、頭部の官能基が陰イオン性の、レチノール、レチノイン酸、ビタミンA又はα−トコフェロール、及びビタミンDといった分子、特にビタミン又は酵素である。
【0072】
多様な他の化合物はOSAの溶液を安定化させることが知られており、豪州特許第774668号に記載のポリペプチド安定化剤と、米国特許第5,922,360号に開示の四級アンモニウム及びアミノ酸の化合物とを含む。
【0073】
一実施形態においては、安定化剤自体が生物学的に活性な薬剤である。例えば、ビタミンAは挫瘡の治療に有効と知られる薬剤であり、安定化剤として機能することが示されている。代替的な実施形態においては、本発明の組成物は安定化剤として機能する第1の化合物と、安定化剤として機能してもしなくてもよい治療用の活性薬剤である第2の化合物とを含んでもよい。ビタミンA及びその生体内前駆体のカロチンは好適な安定化剤であると見出されている。薬剤の調合物への添加も更に影響を及ぼす。Brinkerの「Sol−gel Science & Technology(1990),chapter 3,section 2」によると、OSAと塩を形成する求核剤の添加、例えばケイ酸のナトリウム塩を形成すべくナトリウムの添加によって、低いpHで解離が生じ、ひいては低いpHで重合が生じる。従って、重合は環境のpHでは更に低速で生じる。例えば、OSAのpKaは8.9であり、ナトリウムの導入によってpKaが約6のNa(OSA)の塩を生成し、これによって、低いpHでOSAを安定化させる。ビタミンA又はアミノ酸若しくは脂質といった安定化剤は生物学的なpHで解離の平衡を変化させる。求核剤の添加によって、OSA複合体を生成し、複合体のpKaは低くなる。
【0074】
都合の良いことに、安定化剤は重合体ではない。長鎖の重合体、例えば20以上の反復単位を含む重合体はケイ酸の重合を促進することを見出されている。特に、ポリアミド(長鎖のポリアリルアミン、ポリリジン、及びポリアルギニンといった)、多糖、及びポリエチレンオキシドはケイ酸の重合を促進するのが見出されており、よって安定化剤としての使用に好適ではない。一実施形態においては、安定化剤は7以上の重合体、例えば10以上の単量体の反復単位ではない。
【0075】
一実施形態においては、安定化剤は:
1)(a)正味の電荷、例えば正味の負電荷があり、(b)アミノ基よりもカルボキシル基が多く、(c)分子量が120未満の小さな構造があり、かつ/あるいは、(d)側鎖が疎水性のアミノ酸;
2)(a)正味の電荷があり、(b)アミノ基よりもカルボキシル基の数が多く、かつ/あるいは、タンパク質が3次元構造のポリペプチド又はタンパク質;
3)疎水性の鎖があり、頭部の官能基が負に帯電したリン脂質;
及び/又は、
4)二重の複合体結合があり、頭部の官能基が陰イオン性のビタミン又は酵素;
から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態においては、粒子は安定化剤及び/又は1以上の生物活性化合物との相互作用を促進するように改質することができる。更には、担体系の相互作用及び活性化合物はシリコンの表面で結合及び固定部を含みうる。改質したシリコン粒子への活性化合物の吸着によって、凝集の形成を防ぐ。
【0077】
[生物学的に活性な薬剤の送達]
本発明の第1の態様の組成物は都合の良いことに、シリコン含有物質に加えて、有効な医薬品又は他の有益な化合物といった少なくとも1の生物活性成分を含む薬剤送達系である。一態様においては、本発明は生物活性剤用の送達系としての本発明のナノ粒子の使用を提供する。有益な化合物は、投与すべき患者に総合的に有効な効果を与える治療又は診断に用いられる任意の有機化合物である。
【0078】
一実施形態においては、安定化剤は生物活性成分である。更なる実施形態においては、本発明の第1の態様の組成物は安定化剤に加え、生物学的に活性な成分、又は更なる生物学的に活性な成分を含む。一態様によると、本発明の組成物は少なくとも1の生物活性成分で含浸したナノ粒子性のシリコン半導体を含む複合体のナノ物質である。任意に、生物活性成分は組成物の総重量につき、少なくとも1重量パーセント、例えば少なくとも5重量パーセント、及び一般的には15重量パーセント以上の含量で存在する。生物活性化合物は特に、生物活性剤が安定化剤として機能する(すなわち、安定化剤自体が生物活性剤である)実施形態においては、上述したよりも顕著に大きなレベルで存在してもよい。このような実施形態においては、生物活性剤は都合の良いことに、組成物の総重量につき少なくとも50重量パーセント、例えば少なくとも65重量パーセントのレベルで存在する。
【0079】
組成物はタンパク質及び酵素といった大きな分子、ペプチドといった不安定な化合物、ならびにビタミン類といった溶解度の低い物質を含む広範な物質を身体に送達するのに用いることができる。特に都合の良いことに、本発明による組成物は水に難溶か、あるいは疎水性の高用量の有機化合物を送達するのに用いてもよい。投与後の薬剤の水溶性の体液への溶解速度は薬剤の生物学的利用能に影響を与え、水溶解度の低い化合物は投与後に生物学的利用能がわずかになる傾向にあり、迅速に治療上有効な薬剤レベルに達するのが困難となる。このことはこのような活性成分を含む医薬組成物の開発における顕著な問題を表している。本発明の組成物において有効な有機物質を提供することによって、投与部位又は吸着部位で水溶性媒体と接触させるのに利用可能な有機物質の表面積が最大化され、これによって溶解速度ひいては生物学的利用能が向上する。
【0080】
一実施形態においては、生物活性成分はビタミンAといったレチノイドを含む。細胞表面の受容体に結合する水溶性のペプチドホルモン及び成長因子と異なり、レチノイドは細胞膜の脂質二重層を通過できる脂溶性のホルモンであり、その後、細胞内タンパク質と相互作用しない。このホルモンと受容体との複合体はGIT細胞応答を初期化できる。生体内でレチノール及びレチノイン酸を結合するいくつかのタンパク質が見出される。細胞外のレチノールは細胞外のレチノール結合タンパク質(RBP)を結合することによって肝内のレチノイド貯蔵部から標的組織まで輸送される。ビタミンAといったレチノイドは、難溶性かつ化学的に不安定であるだけではなく、胎児における細胞の発達に害のある毒性効果を呈し、二分脊椎、水頭症、及び尿路奇形のような疾患が発生することが知られているため、特に調合物の困難性を提起している。従って、妊婦及び妊娠を試みる女性は、ビタミンAの摂取の高さと関連する先天性欠損のリスクのために局所用のトレチノイン(Retin−A)を含む、レチノールに関連する挫瘡の処方薬(ビタミンAの化合物)を取らないように要求される。
【0081】
本発明による組成物において、ビタミンAといったレチノイドを調合することによって、溶解性及び安定性が増加した更に安全な生成物が得られうる。治療効果を生成するのに必要な活性成分の量は従来のレチノイド調合物と比較して低減し、持続的な薬剤放出がシリコンナノ粒子の固体基質内に薬剤を取り込むことによって可能になる。このことによって持続期間にわたって活性成分を供給し、これによって局所投与後の体内吸収を低減するのを助け、妊婦や妊娠を試みる女性で用いるべく調合物を更に安全な状態にできる可能性がある。
【0082】
[局所投与用の調合物]
本発明の組成物は局所投与に特に好適であることが見出されている。本発明の第1の態様の一実施形態によると、加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を含む局所用組成物が提供され、シリコン含有物質の表面はシリコンの加水分解時にオルト形態で生成されるケイ酸を安定化させる化合物との連結、例えば付着によって改質される。
【0083】
一態様においては、本発明は生物活性剤用の局所送達系としてこのようなナノ粒子の使用を提供している。本発明は更に、このようなナノ粒子及び生物活性剤を含む局所用組成物等の組成物と、このような組成物を調製するための方法と、ヒト又は動物の身体の美容上の処置方法における、あるいは治療又は診断によるヒト又は動物の身体の処置方法におけるそれらの使用を提供する。局所送達系としてのナノ粒子の使用によって、1以上の生物活性化合物の透過が促進する。粒子がナノサイズになると、段階的な溶解によって安定化剤の調整を介して生物活性化合物を徐放可能な深い皮膚層に透過できる。
【0084】
別の実施形態においては、本発明は局所用組成物を提供し、オルト形態でケイ酸を安定化させる化合物は、オルトケイ酸のシラノール基、トリアルキルヒドロキシアルキル化合物、浸透圧調節物質、単糖、コリン誘導体、及びアミノ酸と複合体を形成できる自由電子対のある窒素原子を含む化合物から選択される。
【0085】
従って、生物活性成分のレベルが高いシリコン含有ナノ粒子は好適には、徐放のための薬用化粧品として調合できる。特に、これらのナノ粒子は微粉末又はローション剤を用いて標的部位に塗布してもよい。
【0086】
本発明は都合の良いことに、活性成分の局所送達に用いることができる加水分解性のシリコン含有ナノ粒子を提供する。このナノ粒子を組み込む組成物はこのような生物活性物質を送達する一方で、皮膚透過性及び細胞刺激を向上させるべく更なる成分を組み込む必要性を回避する手段を提供する。従って、このような組成物は安全かつ廉価である。本発明によって、シリコン含有ナノ粒子とそれに連結する任意の1以上の生物活性成分との双方を更に深い皮膚層に透過でき、細胞膜による取り込みを保証できる組成物が提供される。加水分解性のシリコン含有ナノ粒子自体は生分解性であるため、多孔質化(porousification)といった更なる処理が必須ではないという利点がある。分解が段階的であるため、生物活性の分解生成物及び粒子と連結するその他の活性成分は、持続期間にわたって制御された速度で放出できる。更には、OSAは皮膚細胞によって吸収され、結果は有益となる。ナノ粒子の皮膚疾患及び皮膚障害の治療用途のために、ビーズはエクスフォリエータ(exfoliate)として、及び抗生物質や抗炎症剤といった有益な化合物の皮膚への送達用に用いることができる。
【0087】
皮膚の上又は内部への塗布時に、ナノ粒子を含む加水分解性のシリコン物質は都合の良いことに、段階的な速度で生物分解し、ひいては1以上の活性化合物及び生物活性のあるケイ酸の双方の徐放を誘発する。放出の機構は溶解及び拡散である。ナノ粒子のシリコン含有物質が溶解するときに、1以上の活性化合物はナノ粒子から解離され、皮膚に放出される。同時に、分解したシリカ、すなわちモノケイ酸は皮膚細胞で吸収される。
【0088】
本発明による生物活性のある送達系は都合の良いことに、任意の従来の局所用組成物に調合でき、投薬する剤形に合致する方法で、かつ、予防上及び/又は美容上若しくは治療上有効な量で、治療すべき対象に投与できる。一般的な局所用組成物はローション剤及びクリーム剤の形態を採る。これによって広範で有望な用途が提供され、スキンケア、老化防止用又は若返り用の化合物の皮膚への放出といった美容用途、皮膚の創傷治療、及び挫瘡又は乾癬といった皮膚疾患の治療のための1以上の化合物の送達を含む。
【0089】
[シリコン含有物質に対する表面改質]
一実施形態においては、シラノール基は表面を改質する官能基を介して安定化剤に結合する。加水分解性のシリコンを含む改質されないナノ粒子には表面上にシラノール水酸化物の官能基のみがあり、無機有機複合物質の調製に不適である。シリカ粒子の官能基化によって、他の分子への結合が可能となる粒子表面に活性基が存在するようになる。例えば、シリコン含有物質の表面はクロリド、−NH(アミン)、−SH(チオール)、−POO、及び−COOH(カルボン酸)の官能基を含むように改質できる。特に、シリカのカルボキシル基での改質によって、OSAを徐放できる安定化分子に結合できるシリコン含有物質が増加したことを見出している。
【0090】
有機物質を表面に架橋結合する方法は当該技術分野で公知であり、グルタルアルデヒドや、1−エチル−3−(3−5ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)等のカルボジイミド類といった試薬の使用を含む。これらの方法は、オルトケイ酸−安定化剤をシリコン含有ナノ粒子表面に結合するのに好適に用いることができる。
【0091】
当然のことながら試薬の選択は、これらの官能基が物質の官能特性、及び架橋反応に必要な条件に対する有効な物質の感応性に悪影響を与えることなく反応できるかどうかという、付着すべく選択される物質において、どの官能基が結合のために利用可能であるかに依存している。
【0092】
シリコン表面への共有結合を可能にするために、多孔質シリコンの表面は一般的には最初に誘導体化して、次いで所望の化学種に自己連結できる官能基に対するSi−O又はSi−Cのいずれかの結合を形成することが必要である。好適な表面改質方法は当該技術分野で公知であり、熱酸化方法、電気化学酸化方法、又は化学酸化方法を含んでいる。
【0093】
[シリコン含有物質]
本明細書中で用いるように、「加水分解性のシリコン含有物質(hydrolysable silicon−containing material)」という用語はヒト又は動物の対象への投与時に、時宜を得た方法でケイ酸を変換できる任意のシリコン含有物質である。一般的には、1mgの加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子は37℃で1時間、100mLの生理学的な緩衝液、例えばPBSに加水分解される。好適なシリコン含有物質は一般的には、少なくとも50重量パーセントのシリコン、例えば少なくとも70重量パーセントのシリコンを含む。シリコン含有物質は実質的に純粋なシリコン、例えば少なくとも90重量パーセントのシリコン、好適には少なくとも95重量パーセントのシリコン、特に少なくとも99重量パーセントのシリコンを含む物質であってもよい。加水分解性のシリコン含有物質は一般的にはアモルファスシリコンといった半導体物質である。半導体級のシリコンは一般的には、非常に高い濃度、例えば少なくとも99.99重量パーセントのシリコンを含む。実質的に純粋なシリコン物質は任意に、例えば半導体のドープ剤として、微量のホウ素、ヒ素、リン、及び/又はガリウムといった他の元素を含んでもよい。実質的に純粋なシリコン物質は、例えば微量のホウ素若しくは別のIII族元素を含むp型にドープされたシリコンウェハ、又は微量のリン若しくは別のVI族元素を含むn型シリコンウェハであってもよい。シリコン物質の表面は一般的にはシラノール(Si−OH)の官能基を含む。本発明で用いるのに好適な加水分解性のシリコン含有物質は限定しないが、半導体級のナノシリコン(単結晶体又は多結晶体)と、ナノシリカとを含む。
【0094】
好適には、本発明の組成物のシリコン成分は0.01ないし50重量パーセントの範囲にあり、好適には0.01ないし10重量パーセントの範囲にあり、更に好適には0.1ないし10重量パーセントの範囲にあり、最も好適には0.1ないし5重量パーセントの範囲にある。一実施形態においては、組成物のシリコン成分は組成物の総重量につき、1ないし30重量パーセント、例えば2ないし20重量パーセント、好適には3ないし15重量パーセントの範囲にある。全シリコン成分は送達すべき生物学的に活性な分子と用途とに依存する。従って、組成物は、ほとんどの医薬品、スキンケア、及び美容上の有用性に好適となる投薬体系で用いられうる。
【0095】
[ナノ粒子]
「ナノ粒子(nanoparticle)」という用語は一般的には、少なくとも1の長さがナノメートル範囲である、すなわち、300nm以下である粒子を表すのに用いられる。本発明による使用のためのナノ粒子の平均粒子直径は300nm未満、好適には200nm未満、特に100nm未満である。一実施形態においては、ナノ粒子の平均粒子直径は10ないし100nm、好適には20ないし80nm、特に20ないし50nmの範囲にある。平均粒子直径は平均した粒子の最大の長さであり、粒子は必ずしも球形ではないことは理解されよう。粒径は都合の良いことに、顕微鏡技術、例えば走査型電子顕微鏡といった従来の技術を用いて測定できる。
【0096】
一実施形態においては、本発明による使用のためのナノ粒子の形状は球形又は略球形である。形状は都合の良いことに、従来の光顕微鏡技術又は電子顕微鏡技術によって評価できる。
【0097】
シリコン粒子の粒径をミクロン範囲からナノメートルの範囲に低減することによって、多孔質物質の使用を要しない生分解性の送達系が提供できることが見出されている。マイクロ粒子の平均直径は一般的には、1ないし1000μm、例えば0.7ないし700μmの範囲にある。シリコンナノ粒子は生分解性であることが見出されており、シリコンを多孔質にすることを要せずに高レベルの生物活性成分で充填するのに好適である。これによって、高用量の有効な有機物質が期間にわたって、かつ制御した方法で送達できる可能性がある。これによって更に、非常に有害な物質であるフッ化水素酸を用いて多孔質物質を生成する必要がなくなり、結果として、調合物、及び調合物を生成するが、生分解性のある担体系を提供できる方法の安全性が向上する。
【0098】
[シリコン含有ナノ粒子の調製]
本発明によるシリコン含有ナノ粒子は都合の良いことに、当該技術分野における従来技術によって、例えば切削加工プロセスによって、あるいは粒径を低減するための他の既知の技術によって調製できる。シリコン含有ナノ粒子はケイ酸ナトリウム粒子、コロイドシリカ、又はシリコンウェハ物質から生成される。マクロスケール又はミクロスケールの粒子はボールミル、遊星ボールミル、プラズマ式若しくはレーザ式の削摩法、又は他の破砕メカニズムで粉砕する。得られた粒子は、ナノ粒子を回収するように空気選別される。我々は更に、ナノ粒子の生成のためにプラズマ法及びレーザ式削摩を用いている。粒子の破砕後、安定化剤及び任意の(更なる)生物学的に活性のある分子の組み込みが開始する。ナノ粒子のシリコン含有物質の表面の化学的性質を改質することによって、化合物はイオン結合、共有結合、又は水素結合によって送達すべき薬剤、又は送達すべき薬剤と複合体を形成するリガンドと結合できる。一実施形態においては、ナノ粒子は中空にできる。中空のナノ粒子は当該技術で都合の良い方法で調製できる。例えば、中空のシリカのナノ粒子はコロイド金の小球体にシリカの層を合成して、その後内部の金を溶解し、中空のシリカの殻を残すことによって調製してもよい(K.R.Brown,D.G.Walter,and M.J.Natan.(2000)Seeding of Colloidal Au Nanoparticle Solutions.2.Improved Control of Particle Size And Shape.Chem.Mater.12:306−13)。(シリコンの)成膜は都合の良いことに、単量体のケイ酸塩(例えば、シリコンのハロゲン化物、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸ナトリウム、又はオルトケイ酸マグネシウム)といったシリカート、あるいは結晶性のケイ酸ナトリウムといったシリカートの水和物の加水分解によって得ることができる。
【0099】
加水分解性のシリコン含有物質が中空のナノ粒子の形態で存在する場合、1以上の生物活性成分は好適には、中空のナノ粒子内に含んでいてもよい。中空のナノ粒子の内部はインキュベーション及び/又は凍結乾燥法といった当該技術分野で既知の従来の方法によって生物活性成分で充填してもよい。代替的には、皮膚への送達用の1以上の生物活性成分は吸着してもよく、そうでない場合は本発明によるナノ粒子の外表面に固定してもよい。
【0100】
[生物活性成分の含浸]
ナノ粒子の外表面に対する生物活性成分の吸着は好適には、表面の被膜といった従来技術を用いて、かつ/あるいは表面電荷の生成といった粒子の表面を改質して達成してもよい。本発明によるナノ粒子は任意に、活性化合物を皮膚又は他の器官若しくは組織へ標的送達するように、外表面に標的分子を組み込んでもよい。好適な標的分子はペプチド、タンパク質、又は抗体であり、これらは共有結合性の付着といった当該技術分野で都合の良い標的送達の任意の方法によって組み込むことができる。本発明によるナノ粒子の送達系によって皮膚に送達できる生物活性成分は投与時に美容上、治療上、又は診断上の所望の効果を誘発する任意の薬剤を含む。本発明の送達系を用いて送達できるスキンケアに好適な薬剤はQ10酵素、ビタミンA又はビタミンE、及びDNAといった酵素、ビタミン、及びタンパク質、ならびにオリゴヌクレオチドを含む。好適な治療分野は限定しないが、皮膚癌療法、制吐薬、筋弛緩薬、神経病用の薬剤、NSAID、鎮痛薬、ホルモン、抗生物質、及びSTIの膣伝染を防ぐための局所用殺菌剤を含む。単独で、あるいは1以上の治療薬と結合できる診断薬は上述のとおりである。薬剤は放射線標識、蛍光標識、酵素標識することができ、かつ/あるいは染料又は磁性化合物、及びX線、超音波、磁気共鳴画像法(MRI)、陽子射出断層撮影法(PET)、コンピュータ利用撮影法(CAT:computer assisted tomagraph)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法、蛍光透視法、又は他の通常用いられる診断技術を用いて検出できる他の物質を含むことができる。
【0101】
[表面の化学的性質]
粒子表面の化学的性質は、活性化した「表面積(surface area)」の処理を通して溶解速度を制御できる。活性化した表面積の考え方は充填したシリコン表面、すなわち異質な薬剤が表面にある粒子を考える際に重要である。この異質な物質が本発明の調合物における薬剤及び/又は安定化剤となる可能性が最も高いが、充填前の活性化した表面は同様に重要である。
【0102】
シリコンは反応性の元素であるから、粉末への調製によって大きさに拘わらずいくつかの形態の表面の官能基化が得られる可能性がある。一例はシリコンウェハである。調製した際に、ウェハに酸素はないが、空気中で迅速に酸化され、ウェハ上に薄い酸化層が生じる。熱処理及び洗浄はこの層の厚さを増加する傾向にある。従って、ナノシリコンでのボールミル法又は他の生成方法によって、酸化した表面又は大気への曝露で酸化する面が残る可能性があると予測できよう。
【0103】
これらの被膜はシリコン表面の量を限定し、ひいてはウェハは溶解速度にアクセスできる。従って、粒子の溶解の2の動態学的なパラメータは、粒子の「被膜(coating)」の溶解と、純粋シリコンの核部の溶解となる。薬剤被膜の動態は時間の関数として薬剤溶出を測定することによって直接的に測定できる。一方、酸化した表面はケイ酸に溶解され、粒子の核部で生成されるケイ酸と識別不能であるため、表面の酸化層の静的な測定は不可能である。しかしながら、溶解の勾配はシリコンの核部が溶解する前に酸化層が溶解されるために、遅滞期を示す。
【0104】
粒子上の酸素量(及びその種類であるヒドロキシルペルオキソ等)はXPSによって全シリコンでの割合(%)として決定でき、これは酸化の厚さを推定するのに有用となりうる。
【0105】
[粒子の環境]
上述のように、化学的な環境はシリコン溶解時の速度及び最終生成物を強く決定する。
【0106】
本発明の組成物はOSAとPolySAとの間に平衡状態を、完全な生体互換性を許容するために単量体側に維持されるように付勢する。上述の記載は酸又は塩基濃度の小さい単一のケイ酸溶液を示している。顕著な濃度の他の種がある場合、この平衡状態でのこれらのイオンとの副反応はシリカSiOではない代替的な副産物を形成するようになる。次いでこれによって、SiOから離れた平衡状態にシフトして、ケイ酸の寿命を長くし、排出の機会を増加させることが可能となる。シリコンの有機分子での官能基化は、ゾルゲル法で十分に研究されている。官能基化したシリカートの変換のための動態学的データは、官能基の電気陰性度及び副産物のpKaに依存して溶解が増減しうることを示している。「Brinker chapter 3,section 2」参照。
【0107】
[実験]
本発明は以下の限定しない実施例によって更に例示されうる。
【0108】
以下に提供するデータは、出発物質の粒径又は特定の表面積等の物理的及び化学的パラメータを変えることによって、所望の形態(オルト型)及び量のケイ酸は、表面における、かつシリコンの孔内部への結合を通して制御された方法で得られうることを示している。更なるOSAの生成物は調合物における安定化剤/活性化合物の選択及びその用量に依存する。
【0109】
[試料の調製及び処理]
〈1.シリコン〉
片側を研磨加工したp型又はN型のシリコンウェハはドイツ連邦共和国のSi−Mat社から購入した。総ての洗浄試薬及びエッチング試薬は無菌室級であった。エッチングしたシリコンは1:1(v/v)の純エタノール及び10%の水溶性のHF酸において、80mA/cmの陽極電流密度で2ないし10分間のp型Siの陽極エッチングによって調製した。エッチング後、試料は純エタノールですすがれ、使用前に高純度の乾燥窒素流の下で乾燥した。
【0110】
エッチングしたシリコンウェハP+又はN−はミリングボールならびに/又は乳棒及び乳鉢を用いて破砕した。微粉末はretsch社ブランドの38umのふるい計量器と振盪器as200を用いて篩にかけた。均一かつ選択した大きさ(20ないし100um)は篩の開口の大きさによって達成される。粒径はquantachrome社のシステム及びMalvern instrument社のPCSで測定した。試料は更なる使用まで密封容器に保存する。
【0111】
ナノシリコン粉末はSigma社及び中国Hefel Kaier社から取得した。粒径はPCSで測定し、粒径は充填及びエッチングに供する前に記録した(大きさは20ないし100nmの範囲であった)。シリコンウェハはミリングボールを用いて、あるいは乳鉢及び乳棒を用いて破砕した。微粉末はretsch社ブランドの38umのふるい計量器と振盪器as200を用いて篩にかけ、所望の大きさの均一なナノ粒子を回収した。安定化化合物の溶液は調製された。特に断りのない限り、安定化剤の溶液は、5mgの安定化剤(AA又はペプチド)を25mlの蒸留水に溶解し、1mlのHCl(0.01M)又は1mlのDMSOをその溶液に完全に溶解するように添加して調製した。DMSOは更に調合物におけるAA/ペプチドの安定性を向上させるのに用いた。次いで体積は蒸留水を用いて50mLまで満たした。最終濃度は100μg/mLであった。安定化剤がビタミン又は脂質の場合、5mgの薬剤が秤量され、5mlのエタノール(99%)で溶解した。最終濃度は100μg/mLであった。
【0112】
〈活性化したシリコン原液〉
300mgのナノシリコンは1500mlの10%NaOH及び300mlのグリセロールの溶液に添加し、磁気棒を用いて緩やかに攪拌した。30分後、溶液は5.5ないし7.0のpHが得られるまで濃HCl(4N)を用いて中和した。体積は蒸留水で2000mlにした。
【0113】
OSAの生成はモリブデンブルーアッセイで測定した。調合物から放出したOSAの量の割合は波長λmax(700nm)で紫外可視(UV vis)スペクトルを用いて測定した。このプロセスは3回反復し、平均値のデータが取られた。
【0114】
モリブデン試薬の調製は文献情報を用いた。要約すると、試薬は:
0.2MのHCl;
DW中の1%(w/v)のエチレンジアミン四酢酸(EDTA);
DW中の5%(w/v)のモリブデン酸アンモニウム(Ammonium Molybdenum)(NHMo24・4HO;
DWを用いた17%(w/v)の亜硫酸ナトリウム;
として調製した。
【0115】
〈I.OSAの較正曲線〉
オルトケイ酸の吸収係数を調査するために、多様な既知の濃度のオルトケイ酸(Sigma社の生成物)が標準溶液(1mg/ml)から生成された。各々の濃度がモリブデンアッセイに供され、700nmのUVで読み取られた。OSAの較正曲線は図9に提供される。
【0116】
オルトケイ酸の吸収係数(ε)は、吸収を介したケイ酸濃度間の曲線と関連する直線勾配から取得した。(ε)の数値は10608cm・L・mol−1と等しく、Rは0.998であった。
【0117】
〈2.充填方法〉
〈方法A〉
疎水性の安定化化合物の充填液は、200mgの安定化化合物を3mlのエタノールに溶解することによって調製した。
1.未充填のシリコン粉末を秤量した。
2.安定化化合物を粒子に部分的(portionwise)に緩徐に添加して、液体はエッチングした粒子の場合に孔に透過可能にするか、あるいはエッチングされないシリコン表面と数分間相互作用可能にした。穏やかな加熱(70℃超)を用いて、液体を蒸発可能にした。このステップは総ての安定化化合物の溶液が粉末に導入されるまで数回行われた。
3.過剰な充填物質はエタノール洗浄で除去され、シリコン粒子の表面は次段階に移る前に完全に乾燥可能にした。
4.シリコン/安定化化合物の混合物は再度秤量し、重量の差異は安定化化合物の充填によるものであった。
5.乾燥試料は更なる使用まで冷蔵庫に保存した。
【0118】
〈方法B〉
疎水性で、生物学的で、かつ感熱性のある化合物の充填液は、ペプチド、タンパク質、及びアミノ酸を含み、25mlの蒸留水に5mgの安定化化合物を溶解し、次いで1mlのHCl(0.01M)を添加することによって調製した。タンパク質については、蒸留水に十分に溶解する場合は、HClの添加は要求されなかった。
1.未充填のシリコン粉末又はウェハを秤量した。
2.安定化化合物を粒子に部分的に緩徐に添加して、液体はエッチングした粒子の場合に孔に透過可能にするか、あるいはエッチングされないシリコン表面と数分間相互作用可能にした。液体は凍結乾燥器又は回転式蒸発器を用いて蒸発した。活性化合物の量及び体積に依存して、物質は粉末が完全に乾燥するまで、凍結乾燥器に1時間ないし24時間維持した。このステップは総ての安定化化合物の溶液が粉末に導入されるまで数回行われた。
3.試料は1ないし2mlの生理食塩水又は蒸留水で再水和した。
4.試料は室温で1時間維持した。
5.更なる蒸留水をシリコン:安定化化合物の初期量に依存して、20ないし100mLの体積になるよう添加し、試料は室温で更に1時間維持した。
6.物質は遠心分離管に移され、混合物を遠心分離して結合を損失し、かつ結合のない安定化化合物を除去した。
7.上清を回収し、沈渣を再水和した。
8.分析的又は生物学的ツールを読取りのために用いた。UV吸収度は小さな分子を含む特定の化合物用に、アミノ酸及び/又はHPLCといった多くの化合物で用いた。
9.乾燥試料は更なる使用まで冷蔵庫に保存した。
【0119】
遠心分離ステップは一部のアミノ酸の調査で省略した。生成物を粒子内に十分に被覆する(wrapping)必要がない場合は遠心分離ステップをする必要がない。
【0120】
方法A及びBは粒子とシリコンウェハとの双方に用いられている。ウェハで実験をした場合、回転式蒸発器ではなく、凍結乾燥器(F−D)又は加熱方法の方が好適であった。
【0121】
出発化合物はその活性成分で通常はHPLCを用いて試験して、その合成はFTIR法、Raman法、及びHPLC法を用いて構造特性及び相純度を成功裏に考察することで検証した。安定化剤を組み込む基剤は充填手順が効果的であるかを決定するように、すなわち安定化剤がナノ粒子の表面に吸収したかどうかを決定するために調査される。付着が成功した場合、薬剤の構造状態が限定され(結晶性又は分子非晶質)、吸着量が定量化される(w/w%)。このために用いられるキャラクタリゼーション法は、粉末X線回折(XRPD)、窒素吸着(SSA及び孔隙径分布)、比重びん法(密度)、示差走査熱分析(DSC)、ならびに熱重量分析(TG)である。
【実施例1】
【0122】
《OSAの生成時の粒径の効果》
4mgのP型ドープのシリコン粒子はミルボーリング法(ミクロンサイズで)及びプラズマ法(ナノサイズで)を用いることによって調製した。粒径はPCSを用いて溶解の調査前に測定した(300ミクロン及び20nm)。この調査においては、ミクロン粒子又はナノ粒子は表面改質に供しなかった。OSA生成の量は未変性の表面形態のシリコンで調査した。
【0123】
各々の試料は透析袋に配置し、各々の袋は20mlのPBS(pHは7.4)のボトルに垂直に入れられて維持した。ボトルの頂部は密封し、37℃の水浴に維持した。2mlの部分標本を7日間、20ml溶液から外に試料採取した。OSAの割合(%)はモリブデンブルーアッセイで紫外可視光を用いて、Siの溶解量を測定することによって決定した。
【0124】
図1は、シリコンナノ粒子を用いることによって、ミクロン粒子と比較してOSAの生成が実質的に向上することを例示している。
【実施例2】
【0125】
《OSAの生成でのシリコン表面改質の効果》
3mgのシリコン粉末(ミクロン型及びナノ型)は活性化したシリコンの原液から回収した(シリコン表面は上述のように改質した)。各々の試料は透析袋に移され、50mLのPBSに置いた。各々のボトルは密封し、水浴(37℃)に置いた。2mLの部分標本を回収し、OSA生成はモリブデンブルーアッセイでUVを用いて測定した。不活性化した表面試料は更に、本調査でコントロール試料として用いて秤量した(3mgのミクロン型及び3mgのナノ型)。
【実施例3】
【0126】
《OSAの生成での安定化剤の効果》
3mgのシリコン粉末(ミクロン型及びナノ型)は活性化したシリコンの原液から回収した(シリコン表面は上述のように改質した)。各々の試料はビタミンAについては方法A(Si:ACは1:2の比率)、及びアミノ酸については方法B(Si:ACは1:2の比率)を用いて、異なる活性化合物(AC)で調合した3mgのシリコンを含む。
【0127】
このような、すなわち安定化剤の結合のないシリコンはコントロールとして用いた。総ての試料は再水和し、室温(RT)で一晩維持した。試料は50分間30,000rpmで遠心分離に供した。上清を回収し、OSAの放出量はUVスペクトル(λmax=700nm)を用いて上清の吸収度を読み取ることによって測定した。各々の沈渣は再懸濁してRTで維持し、プロセスは3日連続で反復した。各々の調合物は三組にした。要約すると、2mLのHCl、EDTA、及びモリブデン溶液は7の清潔で乾燥した試験管に添加し、5分間維持した。試薬に添加した2mlの調合物及び溶液中のOSAの量はUVスペクトルで読み取った。
【0128】
《表1:生成したOSAの量》

【0129】
図3及び図4は、安定化剤がない場合に、シリコンナノ粒子で生成されるものと比較して、アミノ酸及び/他の活性成分といった安定化剤とシリコンが結合した場合にOSAの生成に顕著な増加があることを実証している。更には、未結合のナノシリコンによって、安定化剤がない場合に溶液中で高濃度のOSA(1時間後に0.91mg/50ml)が得られるが、OSAの濃度がその後減少している。濃度が有意な重合が生じるレベル未満に維持されるため、アミノ酸の存在によってシリコンのOSAへの溶解と、その形態での維持とを可能にする分解が遅くなると考えられる。アミノ酸の種類がOSAの生成に影響を受けることが見出されている。ナノ粒子をチロシンで処理した場合、OSAの生成は未結合のナノ粒子の官能基の近くにあるが、アスパラギン酸は未結合のものと比較して2倍のOSAの生成を実証している。ビタミンAで処理した調合物はアスパラギン酸で処理したものと同様のOSA生成性能を提供している。
【実施例4】
【0130】
《表面活性化の効果》
第1の群であるナノ粒子のP型にドープしたシリコンを秤量し、7の管に移した。各々の管は3ないし5mgの表面活性化したナノシリコンを含んでいた。選択した活性化合物を各々の管に移し、ビタミンA及び脂質(PC)では方法A、ならびにAAでは方法Bを用いて調合した。活性化合物に対するシリコンの比率を総ての管で一定に維持した(ACに対するSiが1:2)。
【0131】
第2の群は、調合物におけるシリコンの量及び活性化合物の量では第1の群と同様に調合した。しかしながら、この群においてはシリコン表面は活性化していなかった。総ての試料は再水和し、RTで一晩維持した。試料は50分間30,000rpmで遠心分離に供した。上清を回収し、OSAの放出量はUVスペクトル(λmax=700nm)を用いて上清の吸収度を読み取ることによって測定した。各々の調合物は三組にした。要約すると、2mLのHCl、EDTA、及びモリブデン溶液は7の清潔で乾燥した試験管に添加し、5分間維持した。試薬に添加した2mlの調合物及び溶液中のOSAの量はUVスペクトルで読み取った。
【0132】
主要な作業は700nmの波長を用いたHitachi製のUV2001 UV分光器を用いて行われている。HPLC法は更に、溶解試料、活性化合物の完全性、及びナノ粒子内部の活性成分の取込量の分析に用いられている。
【0133】
《表2:OSA濃度を決定するためのシリコン溶液でのモリブデン試薬》

【0134】
30分後、試料の吸収は700nmの波長(λmax)で紫外可視スペクトルを用いて測定した。この吸収度測定は3回反復し、平均値のデータが取られた。吸収度は、全ケイ酸成分の割合として管内に存在するOSAのレベルを算出するのに用いられた。
【0135】
上述の手順は不活性化したシリコンの原液及び活性化したシリコンの原液の双方を用いて行われた。図5は、シリコンを安定化剤で処理し、シリコン表面の活性化が事前にない場合に、表面活性化後に安定化剤がシリコンナノ粒子に結合する場合よりもOSAの生成が少なくなることを示している。右側の列参照。
【0136】
OSAの生成時のナノ粒子及びミクロン粒子の表面活性化の効果を更に調査した。図2は、ミクロン型があれば、データはこの効果が最小であることを示すが、シリコンの表面がNaOH及びHClで処理される場合にはOSAの生成が顕著に向上することを示している。
【実施例5】
【0137】
《安定化剤がない場合のナノ粒子からのOSAの重合》
前述の方法を用いて事前に活性化した3mgのナノシリコン粉末を秤量して、3の一般的な管に移した。総ての3の試料は活性化合物を用いずに調合物のために用いるプロセスを経た。試料は50mlの体積にされ、RTで一晩維持した。試料は50分間30,000rpmで遠心分離に供した。上清を回収し、OSAの放出量はUVスペクトル(λmax=700nm)を用いて上清の吸収度を読み取ることによって測定した。各々の沈渣は再懸濁してRTで維持し、プロセスは4日連続で反復した。各々の調合物は三組にした。要約すると、2mLのHCl、EDTA、及びモリブデン溶液は7の清潔で乾燥した試験管に添加し、5分間維持した。試薬に添加した2mlの調合物及び溶液中のOSAの量はUVスペクトルで読み取った。
【0138】
総ての形態、すなわち、ミクロン型、ナノサイズ型、又は多孔性及び非多孔型はOSAを形成すべく分解するが、この形態での残余のケイ酸がこの形態で維持していることを表すわけではない。図6は、安定化剤への表面結合がないシリコンのナノ粒子が最初にOSAを形成すべく分解するが、48時間後にOSAのレベルが重合のために減衰し始めることを実証している。このことによって、OSAを生成し、OSAの重合を回避するために、担体系の表面を慎重に調整する必要があることを裏付けている。このデータは更に、シリコン又はシリカを用いた従来の薬剤送達系によっては、ケイ酸の重合のために有意なレベルのOSAの生成が得られないことを例示している。
【実施例6】
【0139】
《OSA生成での安定化剤に対するシリコンの比率の効果》
9mgのナノシリコン粉末は活性化したシリコンの原液から回収した(シリコン表面は上述のように改質した)。試料を3の一般的な管に移して、各々は3mgのナノ粒子を含んだ。各々の試料は異なる量の活性化合物であるグリシンで調合した3mgのシリコンを含む。管1における出発量は3mgのSiと1.5mgである。管2は3mgのSiと3mgのグリシンとを含み、管3は3mgのSiと6mgのグリシンとを含む。グリシンとして方法Bを用いて生成される調合物は疎水性のアミノ酸である。総ての試料は100mlの体積を用いて再水和し、RTで一晩維持した。試料は50分間30,000rpmで遠心分離に供した。上清を回収し、OSAの放出量はUVスペクトル(λmax=700nm)を用いて上清の吸収度を読み取ることによって測定した。各々の沈渣は再懸濁してRTで維持し、プロセスは3日連続で反復した。各々の調合物は三組にした。要約すると、2mLのHCl、EDTA、及びモリブデン溶液は7の清潔で乾燥した試験管に添加し、5分間維持した。試薬に添加した2mlの調合物及び溶液中のOSAの量はUVスペクトルで読み取った。
【0140】
図7は、組成物中に存在するアミノ酸であるグリシンに対するシリコンの比率が、OSAとしてのケイ酸放出の比率に影響を受けることを実証している。この実験においては、我々はOSA生成がSi:ACの比率によって、及び本調査で媒体の量を2倍にした場合に媒体の量によって影響を受けうることを実証している。
【実施例7】
【0141】
《OSA形成での粒径とホスファチジルコリンでの表面改質の効果》
1mgの表面活性化したナノシリコンは、方法Aを用いて3mgのホスファチジルコリン(PC)で調合した。ミクロンシリコン粒子及びナノシリコン粒子は更に秤量され、コントロール群として2の他の一般的な管に移された。総ての3の試料は50mlの体積を用いて再水和し、RTで一晩維持した。試料は50分間30,000rpmで遠心分離に供した。上清を回収し、OSAの放出量はUVスペクトル(λmax=700nm)を用いて上清の吸収度を読み取ることによって測定した。各々の沈渣は再懸濁してRTで維持し、プロセスは5日連続で反復した。各々の調合物は三組にした。
【0142】
要約すると、2mLのHCl、EDTA、及びモリブデン溶液は7の清潔で乾燥した試験管に添加し、5分間維持した。試薬に添加した2mlの調合物及び溶液中のOSAの量はUVスペクトルで読み取った。
【0143】
シリコンナノ粒子は上述の方法Cに記載のようにホスファチジルコリンの分子と架橋結合した。表面を改質した粒子から加水分解時に経時的に生成されるOSAの量を測定し、ミクロンサイズ及びナノサイズのシリコン粒子から生成されるものと比較した。結果は図8に示す。ミクロンサイズの粒子(約100ないし500ミクロン)はナノシリコン粒子(約10ないし50nm)と比較した場合にほとんど溶解を示さなかった。ホスファチジルコリンと複合体形成したナノ粒子はオルトケイ酸はオルトケイ酸の放出における更なる改善を実証した。
【0144】
我々の業務によって、我々はシリコンと活性化合物/安定化剤との間の比率が高くなると、OSAの徐放が良好になることを明確に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50重量パーセントのシリコンを含む、固形で加水分解性のシリコン含有半導体物質のナノ粒子を含む組成物の分解時にオルトケイ酸の徐放を促進する方法であって、前記組成物が生物活性成分の送達系として用いるのに好適であり、前記方法が該シリコン含有物質の表面の安定化剤での処理を具え:
前記シリコン含有物質の加水分解速度を変えるために前記シリコン含有物質に対し表面結合を形成すること;及び/又は、
オルトケイ酸の重合速度を抑制することによって溶液中のオルトケイ酸を安定させること;
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記安定化剤自体が生物活性成分であること、及び/又は、前記組成物が生物活性成分を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法が、少なくとも2重量パーセントの生物活性成分を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、前記安定化剤が四級アンモニウム化合物、自由電子対のある窒素原子を含む化合物、浸透圧調節物質、単糖、アミノ酸、コリン誘導体、タンパク質又はコラーゲンの加水分解物、ポリペプチド、及び脂質からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記安定化剤がテトラ−C1−5アルキルアンモニウム化合物、トリ−C1−5アルキルヒドロキシ−C1−5アルキルアンモニウム化合物、マンニトール、ソルビトール、リジン、プロリン、セリン、グリシン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホスファチジルコリン、アルブミン、コラーゲン、レチノール、レチノイン酸、ビタミンA、α−トコフェロール、及びビタミンDからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、前記ナノ粒子は平均直径が20ないし100nmのシリコン半導体粒子であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、前記組成物が少なくとも1重量パーセントのシリコンを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法において、前記組成物が少なくとも30重量パーセントの安定化剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法において、前記シリコン含有物質の加水分解速度は前記安定化剤の存在によって、該速度が前記安定化剤がない場合の同一の組成物の加水分解速度の50%未満となるように変えられることを特徴とする方法。
【請求項10】
生物活性成分の送達系として用いるための、少なくとも50重量パーセントのシリコンを含む、固形で加水分解性のシリコン含有半導体物質のナノ粒子を含む組成物であって、該シリコン含有物質の表面が前記シリコン含有物質の加水分解速度を変えるために前記シリコン含有物質に対し表面結合を形成し、かつ/あるいは、オルトケイ酸の重合速度を抑制することによって溶液中のオルトケイ酸を安定させる安定化剤と連結することを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物が局所投与用であることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の組成物において、前記安定化剤自体が生物活性成分であること、及び/又は、前記組成物が生物活性成分を更に含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項12の組成物が、少なくとも2重量パーセントの生物活性成分を含むことを特徴とする組成物。
【請求項14】
治療に用いられる請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
化粧品として用いられる請求項10ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれか1項に記載の組成物において、前記安定化剤が四級アンモニウム化合物、自由電子対のある窒素原子を含む化合物、浸透圧調節物質、単糖、アミノ酸、コリン誘導体、タンパク質又はコラーゲンの加水分解物、ポリペプチド、及び脂質からなる群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物において、前記安定化剤がテトラ−C1−5アルキルアンモニウム化合物、トリ−C1−5アルキルヒドロキシ−C1−5アルキルアンモニウム化合物、マンニトール、ソルビトール、リジン、プロリン、セリン、グリシン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホスファチジルコリン、アルブミン、コラーゲン、レチノール、レチノイン酸、ビタミンA、α−トコフェロール、及びビタミンDからなる群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項10ないし17のいずれか1項に記載の組成物において、前記ナノ粒子は平均直径が20ないし100nmのシリコン半導体粒子であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項10ないし18のいずれか1項に記載の組成物において、当該組成物が少なくとも1重量パーセントのシリコンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項10ないし19のいずれか1項に記載の組成物において、当該組成物が少なくとも5重量パーセントの安定化剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項21】
生物活性成分の送達系として用いるための、固体組成物を調製する方法であって:
少なくとも50重量パーセントのシリコンを含む、固形で加水分解性のシリコン含有半導体物質のナノ粒子を、該シリコンナノ粒子の表面と連結する安定化剤を含む溶液と接触させるステップと;
溶剤を除去するステップと;
を具え、前記安定化剤が、前記シリコンナノ粒子に対する表面結合の形成によって前記シリコンの加水分解速度を変え、かつ/あるいは、オルトケイ酸の安定化によって溶液中のオルトケイ酸の重合速度を抑制するのに好適なことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法が、前記ナノ粒子を前記安定化剤と接触させるステップの前又は後のいずれかで、該加水分解性のシリコン含有物質のナノ粒子を生物活性成分で含浸させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項23】
ヒト又は動物の身体の治療上、診断上、又は美容上の処置のための方法であって、有効量の生物活性成分を含む請求項12又は請求項13に記載の組成物を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
医薬品、スキンケア、又は美容用の調合物であって、請求項10ないし20のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする調合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−500323(P2013−500323A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522245(P2012−522245)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001456
【国際公開番号】WO2011/012867
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512021597)エスアイエスエイエフ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SISAF LTD
【Fターム(参考)】