説明

シリコン基板の加工方法

【課題】表面反射率を極力低減させることができるシリコン基板の加工方法を提供する。
【解決手段】シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含み、かつ複数の開口部を有する薄膜をシリコン基板上に形成する第1の工程と、第1の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるフッ化水素酸水溶液に浸漬させる第2の工程と、第2の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるアンモニア水溶液に浸漬させる第3の工程と、を上記順序で行うことにより、シリコン基板表面に微細な凹凸構造を形成し、反射率を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板表面に微細構造を形成するシリコン基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板を用いた太陽電池などの光電変換装置では、受光面にテクスチャ構造とも呼ばれる微細な凹凸を設けた構造が多く用いられている。凹凸加工された面では入射光が多重反射し、光電変換領域内には光が斜めに進行することから光路長が増大する。また、光電変換領域内に進入した光の裏面電極などによる反射光が表面で全反射する、所謂光閉じ込め効果を起こさせることもでき、光電変換装置の電気特性を大きく向上させることができる。
【0003】
このようなシリコン基板表面に凹凸を形成する方法としては、単結晶シリコン基板をアルカリ溶液を用いて異方性エッチングすることによって、ピラミッド状の凹凸を形成する方法が知られている。ただし、該方法はエッチング速度が面方位で異なる現象を利用したものであり、基板表面の面方位がランダムな多結晶シリコン基板には不適である。
【0004】
また、金属イオン、酸化剤およびフッ化水素酸を含む混合水溶液中で金属をシリコン基板表面に析出させ、該金属の触媒作用を利用してシリコン基板の表面を多孔質化し、凹凸を形成する方法が特許文献1に開示されている。
【0005】
また、同様な方法として、メッキ液中で金属粒子を凹凸が形成されたシリコン基板表面に堆積し、その後、酸化剤およびフッ化水素酸を含む混合水溶液中でシリコン基板の表面を多孔質化し、凹凸を形成する方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−183505号公報
【特許文献2】特開2007−194485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示されている方法で形成されるシリコン表面の反射率は十分に低減されているとはいえず、例えば光電変換装置の電気特性を向上させるためには、更なる反射率の低減が必要とされている。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、シリコン基板表面の反射率を極力低減させることができるシリコン基板の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する本発明の一態様は、シリコン基板表面に金属層を設け、該金属層を触媒として、シリコン基板をエッチングし、シリコン基板表面に微細な凹凸構造を形成するシリコン基板の加工方法に関する。
【0010】
本明細書で開示する本発明の一態様は、シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含み、かつ複数の開口部を有する薄膜をシリコン基板上に形成する第1の工程と、第1の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるフッ化水素酸水溶液に浸漬させる第2の工程と、第2の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるアンモニア水溶液に浸漬させる第3の工程と、を上記順序で行うことで、シリコン基板表面に微細構造を形成することを特徴とするシリコン基板の加工方法である。
【0011】
上記薄膜は、上記金属の単体、上記金属を含む合金、または上記金属を含む酸化物を用いることができる。また、上記薄膜は、銀または銀合金であることが好ましい。
【0012】
また、上記薄膜は、スパッタ法や蒸着法などの気相法で形成することが好ましい。
【0013】
また、上記薄膜の膜厚は、30nm未満であることが好ましい。
【0014】
また、上記薄膜の開口率は、8%以上50%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様を用いることにより、シリコン基板の表面に微細な凹凸を形成することができ、シリコン基板表面の反射率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】シリコン基板を凹凸加工する方法を説明するフロー図。
【図2】光電変換装置を説明する断面図。
【図3】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図4】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図5】光電変換装置を説明する断面図。
【図6】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図7】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図8】光電変換装置を説明する断面図。
【図9】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図10】光電変換装置の作製方法を説明する工程断面図。
【図11】銀をシリコン基板上に形成したサンプルの表面SEM写真。
【図12】銀、および銀合金をシリコン基板上に形成したサンプルの表面SEM写真、並びにそれらのサンプルのエッチング後の表面SEM写真。
【図13】凹凸を形成したシリコン基板表面の反射率を比較する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるシリコン基板表面に微細な凹凸構造を形成するシリコン基板の加工方法について説明する。
【0019】
なお、本発明の一態様を用いて形成することのできる凹凸は、深さおよびピッチがナノメートルサイズであり、該凹凸を有するシリコン基板の表面は、広い波長帯において極めて反射率が低い特性を有する。
【0020】
図1は、本発明の一態様におけるシリコン基板の表面凹凸化方法示すフロー図である。なお、本発明の一態様に用いる基板は、単結晶シリコンおよび多結晶シリコンのどちらでも適用することができる。
【0021】
まず、シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスして基板状に成形する。シリコンインゴットの導電型、導電型を付与するための不純物の種類は問われず、実施者が目的に応じて決定すれば良い。
【0022】
次に、スライスしたシリコン基板の洗浄を行う。該シリコン基板には、シリコン切削粉の他、ワイヤーソーや遊離砥粒を構成する材料が粉体となったものも含まれる。これらを除去するために、超音波洗浄、揺動洗浄、シャワー洗浄、ブラシ洗浄等のいずれか、または2つ以上の組み合わせで順次洗浄行う。なお、これらの洗浄は、水を用いて行うことができるが、市販の有機アルカリ系洗浄剤を用いて行っても良い。
【0023】
次に、ダメージ層を除去する。ワイヤーソー等で切断されたシリコン基板の表面近傍には、機械的ダメージによる結晶欠陥や、不純物物質の接触による汚染などにより、半導体としての性能が著しく低下している領域がある。この領域をダメージ層といい、表面から10〜20μmの領域を取り除くことが好ましい。エッチング液には、比較的高濃度のアルカリ溶液、例えば、10〜50%の水酸化ナトリウム水溶液、または同濃度の水酸化カリウム水溶液を用いることができる。または、フッ化水素酸と硝酸を混合した混酸や、それらに酢酸を混合した混酸を用いても良い。
【0024】
次に、酸洗浄を行っても良い。上述したダメージ層を除去する際のエッチング液中には、金属成分などの多くの不純物が含まれているため、ダメージ層除去後のシリコン基板表面に不純物が付着していることがある。この不純物を取り除くには酸洗浄が効果的である。酸としては、例えば、0.5%フッ化水素酸水溶液と1%過酸化水素水の混合液(FPM)などを用いることができる。またはRCA洗浄などを行っても良い。
【0025】
次に、シリコン基板表面に複数の開口部を有する薄膜を形成する。該薄膜には、シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含む材料を用いることができる。該金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、鉛などの単体や合金が挙げられる。また、該金属と他の金属を含む合金や該金属を含む酸化物であってもよい。上記金属成分は、後のエッチング工程において、触媒として作用する。
【0026】
なお、本明細書において開口部を有する薄膜とは、薄膜を構成する構造物の膜厚方向に穴が形成されている状態を指し、粒子状構造物が点在している状態とは異なる。
【0027】
シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含む合金としては、銀の合金が好ましい。例えば、銀−パラジウム合金、銀−銅合金、または銀−パラジウム−銅合金などが挙げられる。例示した合金の組成比は、いずれも銀に対して他の金属を10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下とする。銀合金を用いることで、銀単体よりも少ない分量で薄膜を形成することができる。
【0028】
また、シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含む酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化パラジウムなどが挙げられる。
【0029】
なお、上記薄膜には複数の開口部を設けることが必須である。開口部を設けずにシリコン基板表面を覆ってしまうと、シリコン基板をエッチングすることができない。該開口部は、薄膜の形成後にフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程や、レーザ加工などで形成しても良いが、気相法の成膜初期段階で島状の付着物から薄膜が形成される過程を制御し、開口部を有する薄膜を形成する方法が簡便で好ましい。また、前述した金属はライフタイムキラーになりやすいため、後の洗浄工程などを考慮して、できるだけ少ない分量で薄膜を形成することが好ましい。
【0030】
なお、気相法としては、例えば、スパッタ法や蒸着法を用いることができる。また、気相法は、メッキ法などの液相法と比較して、形成される薄膜の純度や合金組成比などを制御しやすい点からも好ましい。
【0031】
気相法によって複数の開口部を有する薄膜を形成するには、膜厚を30nm未満とすることが好ましい。また、後のエッチング工程を促進し、かつ適切な凹凸形状を得るには、該薄膜の開口率を8%以上50%以下とすることが好ましい。
【0032】
なお、シリコン基板の一方の面のみに凹凸を設けるには、シリコン基板の一方の面のみに上記薄膜を形成すればよい。ただし、シリコン基板の他方の面でも該基板に付着している金属微粒子やエッチング液中の金属イオンが影響して若干エッチングが進行するため、シリコン基板の他方の面にレジストマスクなどを設けてもよい。また、シリコン基板の両面に凹凸を設けるには、シリコン基板の両面に上記薄膜を設ければよい。
【0033】
次に、上記薄膜を形成したシリコン基板を第1のエッチング液に浸漬して、シリコン基板の表面をエッチングし、凹凸の形成を行う。第1のエッチング液としては、酸化剤を含むフッ化水素酸水溶液を用いることができる。ここで、酸化剤には、過酸化水素、硝酸、過マンガン酸塩、クロム酸塩を用いることができる。
【0034】
第1のエッチング液に用いるフッ化水素酸水溶液の濃度は、0.5〜10%、好ましくは2〜8%、さらに好ましくは4〜6%とする。また、第1のエッチング液に用いる酸化剤の濃度は、0.1〜3%、好ましくは0.5〜2%、さらに好ましくは0.5〜1.5%とする。また、第2のエッチング液の液温は室温とし、5〜30分間の処理を行うことが好ましい。例えば、5%フッ化水素酸水溶液と1%過酸化水素水の混合液を用いて、室温で10分間の処理をエッチング工程として行えばよい。
【0035】
前述したシリコンよりも電気陰性度の大きい金属とシリコン基板とを接触させ、酸化剤を含むフッ化水素酸水溶液に浸漬させることで、電気化学反応により該金属周辺のシリコンの酸化が促進され、酸化したシリコンは、ただちにフッ化水素酸によりエッチングされる。なお、この現象は、洗浄時におけるシリコン基板の表面荒れの一要因として、H.Morinaga et al.”Behavior of Ultra fine Metallic Particles on Silicon Wafer Surface”,J.Electrochem Soc.142[3]pp.966−970(1995).で詳細が開示されている。
【0036】
本発明の一態様において、シリコン基板の表面のエッチングは、薄膜の開口部の端部から等方的に始まるため、開口部であった領域に形成される凸部の高さは比較的大きくなる傾向を示し、薄膜下部であった領域に形成される凸部の高さは比較的小さくなる傾向を示す。したがって、本発明の一態様を用いて形成されるシリコン表面の凹凸は高さが不規則となりやすく、広い波長範囲で反射率を低減させやすくなる。反射率は、凹凸の形状によって波長依存を示すため、広い波長範囲で反射率を低減させるには、凹凸形状が不規則であることが好ましい。
【0037】
なお、シリコン基板上に形成する薄膜として、前述した合金や酸化物を用いることによって、局所的に酸化速度を異ならせることができるため、形成される凹凸形状の不規則性をさらに顕著にすることができる。
【0038】
次に、凹凸を形成したシリコン基板を第2のエッチング液に浸漬させ、表面残渣の除去を行う。ここで、表面残渣の成分は、エッチングされなかったシリコン基板の一部からなるシリコンの微細片、および前述した薄膜の微細片である。これらを取り除くことにより、清浄な凹凸表面を有するシリコン基板を得ることができる。
【0039】
第2のエッチング液としては、酸化剤を含むアンモニア水溶液を用いることができる。ここで、酸化剤には、過酸化水素を用いることが好ましい。
【0040】
第2のエッチング液に用いるアンモニア水溶液の濃度は、0.5〜5%、好ましくは1〜4.5%、さらに好ましくは1.5〜4%とする。また、第2のエッチング液に用いる酸化剤の濃度は、0.5〜5%、好ましくは1〜4.5%、さらに好ましくは1.5〜4%とする。また、第2のエッチング液の液温は50〜80℃とし、1〜30分間の処理を行うことが好ましい。例えば、3%アンモニア水溶液と3%過酸化水素水の混合液を用いて、60℃で30分間の処理を表面残渣の除去工程として行えばよい。
【0041】
第2のエッチング液中では、酸化剤によるシリコンの酸化とアンモニア水溶液による酸化シリコンのエッチングが同時に進行することから、シリコンの微細片は消失し、薄膜の微細片はシリコン基板表面からリフトオフされて除去される。なお、この第2のエッチング液を用いた表面残渣の除去工程は、除去効果を高めるために複数回繰り返してもよい。また、表面残渣を除去したシリコン基板をフッ化水素酸水溶液に浸漬し、シリコン基板表面に形成された酸化物を除去する工程を行ってもよい。
【0042】
また、薄膜に銀、または前述した銀の合金を用いる場合は、表面残渣除去工程の後に硝酸に浸漬し、残留している薄膜成分を除去する工程を行ってもよい。このとき、硝酸には60%以上の濃硝酸を用いることが好ましい。薄膜成分を徹底的に除去することで、シリコン基板のライフタイムを向上させることができる。
【0043】
以上の工程を行うことにより、シリコン基板表面にナノメートルサイズの微細な凹凸構造を形成することができ、広い波長範囲において該シリコン基板表面の反射率を低減させることができる。
【0044】
なお、本発明の一態様において形成される微細な凹凸構造を有するシリコン基板の用途は限定されないが、広い波長範囲において反射光を極力低減することができるため、光電変換装置に用いることが特に好ましい。
【0045】
本実施の形態は、他の実施の形態、および実施例と自由に組み合わすことができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した微細な凹凸構造を有するシリコン基板を用いて形成することのできる光電変換装置、およびその作製方法について説明する。
【0047】
図2(A)、(B)に示す光電変換装置は、表面に凹凸が形成されたシリコン基板100、該シリコン基板の一方の面に形成された第1の領域110、該シリコン基板の他方の面に形成された第2の領域130、第1の領域110上に形成された絶縁層150、第1の領域110と接する第1の電極170、第2の領域130と接する第2の電極190を含んで構成される。なお、第2の電極190はグリッド電極であり、第2の電極190側が受光面となる。
【0048】
図2(A)は、シリコン基板の両面に凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の両面に施すことにより、該構造を形成することができる。また、図2(B)は、シリコン基板の片面のみに凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の片面に施すことにより、該構造を形成することができる。
【0049】
凹凸加工された面では入射光が多重反射し、シリコン基板内には光が斜めに進行することから光路長が増大する。また、裏面反射光が表面で全反射する、所謂光閉じ込め効果を起こさせることもできる。
【0050】
なお、凹凸加工によってシリコン基板の表面積が増大するため、上記光学的効果が得られる一方で、表面欠陥の絶対量が増大してしまう。したがって、光学的効果と表面欠陥量のバランスを考慮し、より良好な電気特性が得られるように実施者が図2(A)または図2(B)の構造を選択すればよい。
【0051】
シリコン基板100は一導電型を有し、第1の領域110は、シリコン基板100の導電型とは逆の導電型を有する領域である。したがって、シリコン基板100と第1の領域110の界面にp−n接合が形成される。
【0052】
第2の領域130は、BSF(Back Surface Field)層であり、シリコン基板100と同じ導電型を有し、かつキャリア密度がシリコン基板100よりも高い領域である。BSF層を設けることにより、n−n接合またはp−p接合が形成され、その電界により少数キャリアがp−n接合側にはね返されることから、第2の電極190近傍でのキャリアの再結合を防止することができる。
【0053】
なお、第2の領域130は、第2の電極190に含まれる不純物を拡散させることで容易に形成することができる。例えば、シリコン基板100がp型である場合は、アルミニウム膜、またはアルミニウムペーストを第2の電極190として形成し、p型を付与する不純物であるアルミニウムを熱拡散させることで第2の領域130を形成することができる。
【0054】
また、第1の領域110上において、第1の電極170との接合部以外に透光性を有する絶縁層150を設けることが好ましい。該絶縁層を設けることで、保護、反射防止、および第1の領域110の表面欠陥を低減させる効果を付与することができる。透光性を有する絶縁層150には、プラズマCVD法やスパッタ法で成膜される酸化珪素膜や窒化珪素膜を用いることができる。
【0055】
次に、図2(A)に示した光電変換装置の作製方法について、図3および図4を用いて説明する。
【0056】
本発明の一態様に用いることのできるシリコン基板100には、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を用いることができる(図3(A)参照)。なお、シリコン基板100の導電型、および製法は限定されず、実施者が適宜選択すれば良い。本実施の形態では、p型のシリコン基板を用いる例を説明する。
【0057】
次に、シリコン基板100の表裏に凹凸加工を行う。凹凸加工の方法は、実施の形態1を参照することができる(図3(B)参照)。
【0058】
ここでは、シリコン基板100の導電型がp型であるため、n型を付与する不純物をシリコン基板100の表層に拡散させ、第1の領域110を形成する(図3(C)参照)。n型を付与する不純物としては、リン、ヒ素、アンチモンなどがあり、例えば、シリコン基板をオキシ塩化リン雰囲気中で800℃以上900℃以下の温度で熱処理することにより、リンをシリコン基板の表面から0.5μm程度の深さに拡散させることができる。なお、シリコン基板100の一方の面に第1の領域110を形成するには、既存の方法を用いて他方の面にマスクを形成するか、両面に拡散層を形成した後、他方の面の拡散層を既存の方法を用いてエッチングすれば良い。
【0059】
次に、第1の領域110上に透光性を有する絶縁層150を形成する(図4(A)参照)。絶縁層150としては、プラズマCVD法やスパッタ法で成膜される50nm以上100nm以下の膜厚の酸化珪素膜や窒化珪素膜を用いることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法により成膜した50nmの窒化珪素膜を絶縁層150として用いる。
【0060】
次に、第2の領域130および第2の電極190を形成する(図4(B)参照)。本実施の形態では、シリコン基板100の導電型がp型であるため、p型を付与する不純物を含む導電層をシリコン基板100の他方の面に形成し、該不純物を拡散させてキャリア濃度の高い層を作り、p−p接合を形成する。例えば、アルミニウムペーストをシリコン基板100の他方の面に塗布し、焼成することによってアルミニウムをシリコン基板100の他方の面の表層に熱拡散させ、第2の領域130と第2の電極190を形成することができる。
【0061】
次に、スクリーン印刷法を用いて、絶縁層150上に第1の電極170となる導電性樹脂を供給する。ここで用いる導電性樹脂には、銀ペースト、銅ペースト、ニッケルペースト、モリブデンペーストなどを用いることができる。また、第1の電極170は、銀ペーストと銅ペーストを積層するなど、異なる材料の積層であっても良い。また、導電性樹脂は、ディスペンス法やインクジェット法などを用いて供給してもよい。
【0062】
次に、導電性樹脂の焼成を行うことで、第1の領域110と第1の電極170の接触を行う(図4(C)参照)。上述した導電性樹脂を供給した段階では、絶縁層150が介在しているため、導電性樹脂と第1の領域110は接触していない状態であるが、焼成をすることによって導電性樹脂の導体成分は、絶縁層150を貫通して第1の領域110に接触することができる。
【0063】
以上により、本発明の一態様によって電気特性の優れた光電変換装置を形成することができる。
【0064】
本実施の形態は、他の実施の形態、および実施例と自由に組み合わすことができる。
【0065】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で説明した光電変換装置とは異なる構成の光電変換装置、およびその作製方法を説明する。
【0066】
図5(A)、(B)に示す光電変換装置は、表面に凹凸が形成されたシリコン基板200の一方の面上に第1のシリコン半導体層211、第2のシリコン半導体層212、透光性導電膜260、第1の電極270が順に積層され、シリコン基板200の他方の面上には、第3のシリコン半導体層213、第4のシリコン半導体層214、第2の電極290が順に積層された構成を有している。なお、第1の電極270はグリッド電極であり、第1の電極270が形成された面側が受光面となる。また、第2の電極290もグリッド電極とし、両面を受光面とする構成としても良い。その場合は、第4のシリコン半導体層214と第2の電極290との間に、透光性導電膜を設けることが好ましい。
【0067】
図5(A)は、シリコン基板の両面に凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の両面に施すことにより、該構造を形成することができる。また、図5(B)は、シリコン基板の片面のみに凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の片面に施すことにより、該構造を形成することができる。
【0068】
凹凸加工された面では入射光が多重反射し、シリコン基板内には光が斜めに進行することから光路長が増大する。また、裏面反射光が表面で全反射する、所謂光閉じ込め効果を起こさせることもできる。
【0069】
なお、凹凸加工によってシリコン基板の表面積が増大するため、上記光学的効果が得られる一方で、表面欠陥の絶対量が増大してしまう。したがって、光学的効果と表面欠陥量のバランスを考慮し、より良好な電気特性が得られるように実施者が図5(A)または図5(B)の構造を選択すればよい。
【0070】
ここで、第1のシリコン半導体層211および第3のシリコン半導体層213は、水素を含み、かつ欠陥の少ない高品質なi型半導体層であり、シリコン基板200の表面欠陥を終端することができる。なお、本明細書において、i型の半導体とは、フェルミ準位がバンドギャップの中央に位置する所謂真性半導体の他、半導体に含まれるp型若しくはn型を付与する不純物が1×1020cm−3以下の濃度であり、暗伝導度に対して光伝導度が100倍以上である半導体を指す。このi型のシリコン半導体には、周期表第13族または第15族の元素が不純物として含まれるものであっても良い。
【0071】
シリコン基板200は一導電型を有し、第2のシリコン半導体層212は、シリコン基板200の導電型とは逆の導電型を有する半導体層である。したがって、シリコン基板200と第2のシリコン半導体層212との間には、第1のシリコン半導体層211を介してp−n接合が形成される。
【0072】
また、第4のシリコン半導体層214は、シリコン基板200と同じ導電型を有し、該シリコン基板よりもキャリア密度の高い層である。シリコン基板200と第4のシリコン半導体層214との間には、第2のシリコン半導体層212を介してp−pまたはn−n接合が形成される。つまり、第4のシリコン半導体層214は、BSF層として作用する。
【0073】
次に、図5(A)に示した光電変換装置の作製方法について、図6および図7を用いて説明する。
【0074】
本発明の一態様に用いることのできるシリコン基板200には、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を用いることができる。なお、シリコン基板200の導電型、および製法は限定されず、実施者が適宜選択すれば良い。本実施の形態では、n型のシリコン基板を用いる例を説明する。
【0075】
次に、シリコン基板200の表裏に凹凸加工を行う(図6(A)参照)。凹凸加工の方法は、実施の形態1を参照することができる。
【0076】
次いで、シリコン基板200の一方の面上にプラズマCVD法を用いて第1のシリコン半導体層211を形成する。第1のシリコン半導体層211の厚さは、3nm以上50nm以下とすることが好ましい。本実施の形態において、第1のシリコン半導体層211はi型の非晶質シリコンであり、膜厚は5nmとする。
【0077】
第1のシリコン半導体層211の成膜条件は、例えば、反応室に流量5sccm以上200sccm以下のモノシランを導入し、反応室内の圧力を10Pa以上100Pa以下、電極間隔を15mm以上40mm以下、電力密度を8mW/cm以上50mW/cm以下とすればよい。
【0078】
次いで、第1のシリコン半導体層211上に第2のシリコン半導体層212を形成する(図6(B)参照)。第2のシリコン半導体層212の厚さは3nm以上50nm以下とすることが好ましい。本実施の形態において、第2のシリコン半導体層212はp型の微結晶シリコンであり、膜厚は10nmとする。なお、第2のシリコン半導体層212は、p型の非晶質シリコンで形成してもよい。
【0079】
第2のシリコン半導体層212の成膜条件は、例えば、反応室に流量1sccm以上10sccm以下のモノシラン、流量100sccm以上5000sccm以下の水素、流量5sccm以上50sccm以下の水素ベースのジボラン(0.1%)を導入し、反応室内の圧力を450Pa以上100000Pa以下、好ましくは2000Pa以上50000Pa以下とし、電極間隔を8mm以上30mm以下とし、電力密度を200mW/cm以上1500mW/cm以下とすればよい。
【0080】
次いで、シリコン基板200の他方の面に、プラズマCVD法を用いて第3のシリコン半導体層213を形成する。第3のシリコン半導体層213の厚さは、3nm以上50nm以下とすることが好ましく、本実施の形態において、第3のシリコン半導体層213はi型の非晶質シリコンであり、膜厚は5nmとする。なお、第3のシリコン半導体層213は、第1のシリコン半導体層211と同様の成膜条件にて形成することができる。
【0081】
次いで、第3のシリコン半導体層213上に第4のシリコン半導体層214を形成する(図6(C)参照)。第4のシリコン半導体層214の厚さは3nm以上50nm以下とすることが好ましい。本実施の形態において、第4のシリコン半導体層214はn型の微結晶シリコンであり、膜厚は10nmとする。なお、第2のシリコン半導体層212は、n型の非晶質シリコンで形成してもよい。
【0082】
第4のシリコン半導体層214の成膜条件は、例えば、反応室に流量1sccm以上10sccm以下のモノシラン、流量100sccm以上5000sccm以下の水素、流量5sccm以上50sccm以下の水素ベースのホスフィン(0.5%)を導入し、反応室内の圧力を450Pa以上100000Pa以下、好ましくは2000Pa以上50000Pa以下とし、電極間隔を8mm以上30mm以下とし、電力密度を200mW/cm以上1500mW/cm以下とすればよい。
【0083】
なお、本実施の形態において、上記シリコン半導体層の成膜に用いる電源には周波数13.56MHzのRF電源を用いるが、27.12MHz、60MHz、または100MHzのRF電源を用いても良い。また、連続放電だけでなく、パルス放電にて成膜を行っても良い。パルス放電を行うことで、膜質の向上や気相中で発生するパーティクルを低減することができる。
【0084】
次いで、第2のシリコン半導体層212上に透光性導電膜260を形成する(図7(A)参照)。透光性導電膜260には、例えば、インジウム錫酸化物、珪素を含むインジウム錫酸化物、亜鉛を含む酸化インジウム、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、酸化錫、フッ素を含む酸化錫、アンチモンを含む酸化錫、またはグラフェン等を用いることができる。また、透光性導電膜260は単層に限らず、異なる膜の積層でも良い。例えば、インジウム錫酸化物とアルミニウムを含む酸化亜鉛の積層や、インジウム錫酸化物とフッ素を含む酸化錫の積層などを用いることができる。膜厚は総厚で10nm以上1000nm以下とする。
【0085】
次いで、第4のシリコン半導体層214上に第2の電極290を形成する(図7(B)参照)。第2の電極290には、銀、アルミニウム、銅などの低抵抗金属を用いることができ、スパッタ法や真空蒸着法などで形成することができる。または、スクリーン印刷法を用いて、銀ペーストや、銅ペーストなどの導電性樹脂で形成しても良い。
【0086】
なお、シリコン基板200の表裏に設ける膜の形成順序は、上記の方法に限らず、図7(B)に示した構造が形成できればよい。例えば、第1のシリコン半導体層211を形成し、その次に第3のシリコン半導体層213を形成しても良い。
【0087】
次いで、スクリーン印刷法を用いて、透光性導電膜260上に導電性樹脂を供給し、焼成して第1の電極270を形成する。ここで用いる導電性樹脂には、銀ペースト、銅ペースト、ニッケルペースト、モリブデンペーストなどを用いることができる。また、第1の電極270は、銀ペーストと銅ペーストを積層するなど、異なる材料の積層であっても良い。なお、導電性樹脂は、ディスペンス法やインクジェット法などを用いて供給してもよい。
【0088】
以上により、本発明の一態様によって電気特性の優れた光電変換装置を形成することができる。
【0089】
本実施の形態は、他の実施の形態、および実施例と自由に組み合わすことができる。
【0090】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および3で説明した光電変換装置とは異なる構成の光電変換装置、並びにその作製方法を説明する。
【0091】
図8(A)、(B)に示す光電変換装置は、表面に凹凸が形成されたシリコン基板300、該シリコン基板の一方の面に形成された第1の絶縁層321、該シリコン基板の他方の面に形成された第1の領域311および第2の領域312、該シリコン基板の他方の面上に形成された第2の絶縁層322、第1の領域311と接する第1の電極370、第2の領域312と接する第2の電極390を含んで構成される。なお、第1の絶縁層321が形成された面側が受光面となる。
【0092】
図8(A)は、シリコン基板の両面に凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の両面に施すことにより、該構造を形成することができる。また、図8(B)は、シリコン基板の片面のみに凹凸を形成した構造であり、実施の形態1で説明した凹凸加工をシリコン基板の片面に施すことにより、該構造を形成することができる。
【0093】
凹凸加工された面では入射光が多重反射し、シリコン基板内には光が斜めに進行することから光路長が増大する。また、裏面反射光が表面で全反射する、所謂光閉じ込め効果を起こさせることもできる。
【0094】
なお、凹凸加工によってシリコン基板の表面積が増大するため、上記光学的効果が得られる一方で、表面欠陥の絶対量が増大してしまう。したがって、光学的効果と表面欠陥量のバランスを考慮し、より良好な電気特性が得られるように実施者が図8(A)または図8(B)の構造を選択すればよい。
【0095】
シリコン基板300は一導電型を有し、第1の領域311は、シリコン基板300の導電型とは逆の導電型を有する領域である。したがって、シリコン基板300と第1の領域311の界面にp−n接合が形成される。
【0096】
第2の領域312は、BSF(Back Surface Field)層であり、シリコン基板300と同じ導電型を有し、かつキャリア密度がシリコン基板300よりも高い領域である。BSF層を設けることにより、n−n接合またはp−p接合が形成され、その電界により少数キャリアがp−n接合側にはね返されることから、第2の電極390近傍でのキャリアの再結合を防止することができる。
【0097】
また、シリコン基板300の一方の面には、透光性を有する第1の絶縁層321を設けることが好ましい。該絶縁層を設けることで、保護、反射防止、およびシリコン基板300の表面欠陥を低減させる効果を付与することができる。透光性を有する第1の絶縁層321としては、プラズマCVD法やスパッタ法で成膜される酸化珪素膜や窒化珪素膜を用いることができる。また、シリコン基板300の表面欠陥は、第2の絶縁層322を設けることによって、更に低減させることができる。
【0098】
図8(A)、(B)に示す光電変換装置の構成は、バックコンタクト型とも呼ばれ、基板の一方の面側に電極が形成された構造である。そのため、受光面側にはグリッド電極などが形成されないため、シャドウロスが無く、高い変換効率を得ることができる。なお、図8(A)、(B)においては、p−n接合側の第1の領域311が第2の領域312よりも大きい構成を図示しているが、第1の領域311と第2の領域312は同等の大きさであっても良い。また、第1の領域311と第2の領域312の数は限られない。また、それらの数は同数でなくても良い。
【0099】
次に、図8(A)に示した光電変換装置の作製方法について図9および図10を用いて説明する。
【0100】
本発明の一態様に用いることのできるシリコン基板300には、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を用いることができる。なお、シリコン基板300の導電型、および製法は限定されず、実施者が適宜選択すれば良い。本実施の形態では、n型のシリコン基板を用いる例を説明する。
【0101】
次に、シリコン基板300の表裏に凹凸加工を行う。凹凸加工の方法は、実施の形態1を参照することができる(図9(A)参照)。
【0102】
次に、シリコン基板300の一方の面上に透光性を有する第1の絶縁層321を形成する(図9(B)参照)。第1の絶縁層321としては、プラズマCVD法やスパッタ法で成膜される50nm以上100nm以下の膜厚の酸化珪素膜や窒化珪素膜を用いることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法により成膜した50nmの窒化珪素膜を第1の絶縁層321として用いる。
【0103】
次に、シリコン基板300の他方の面上に第2の絶縁層322を形成する。第2の絶縁層322としては、プラズマCVD法やスパッタ法で成膜される50nm以上100nm以下の膜厚の酸化珪素膜や窒化珪素膜を用いることができる。これらの膜を用いる場合は、公知の加工技術を用いて第2の絶縁層322に開口部を設けておく(図9(C)参照)。また、第2の絶縁層322は、スクリーン印刷法を用いて耐熱性の絶縁樹脂を形成しても良い。
【0104】
次に、第1の領域311を形成する(図10(A)参照)。ここでは、シリコン基板300の導電型がp型であるため、第1の領域311はn型の導電型を有する領域とする。第1の領域311は、n型を付与する不純物をシリコン基板300の他方の面に形成した第2の絶縁層322の開口部から拡散させて形成する。n型を付与する不純物としては、リン、ヒ素、アンチモンなどがあり、例えば、シリコン基板をオキシ塩化リン雰囲気中で800℃以上900℃以下の温度で熱処理することにより、リンをシリコン基板の表面から0.5μm程度の深さに拡散させることができる。なお、この段階では、第2の領域312を形成する領域にもn型の不純物が拡散される。
【0105】
次に、第2の領域312となる領域に通じる第2の絶縁層322の開口部を覆うようにp型を付与する不純物を含む材料をシリコン基板300の他方の面に形成し、該不純物を拡散させてキャリア濃度の高い層を作り、n型の領域をp型の第2の領域312とする(図10(B)参照)。この工程により、p−p接合が形成される。例えば、スクリーン印刷を用いてアルミニウムペーストを第2の領域312となる領域に通じる開口部を覆うように形成し、焼成することによってアルミニウムを前工程でn型領域となった領域に熱拡散させることで、第2の領域312および第2の電極390を形成することができる。
【0106】
次に、スクリーン印刷法を用いて、第1の領域311となる領域に通じる第2の絶縁層322の開口部を覆うように導電性樹脂を供給し、焼成して第1の電極370を形成する(図10(C)参照)。導電性樹脂には、アルミニウムペースト、銀ペースト、銅ペースト、ニッケルペースト、モリブデンペーストなどを用いることができる。また、第1の電極370は、銀ペーストと銅ペーストを積層するなど、異なる材料の積層であっても良い。なお、導電性樹脂は、ディスペンス法やインクジェット法などを用いて供給してもよい。
【0107】
以上により、本発明の一態様によって電気特性の優れた光電変換装置を形成することができる。
【0108】
本実施の形態は、他の実施の形態、および実施例と自由に組み合わすことができる。
【実施例1】
【0109】
本実施例では、実施の形態1で説明したシリコン基板上に形成する薄膜に関する実験結果を説明する。
【0110】
図11(A)〜図11(F)は、狙いの厚さが4nm〜30nmとなるように、スパッタ法で銀をシリコン基板上に形成したサンプルの表面SEM写真である。図11(A)〜図11(F)は、全てチルト角30°で撮影を行っている。スパッタ条件は、ターゲットにφ6インチの銀(99.99%)、スパッタガスにアルゴンを用い、DC電力120W、圧力0.4Pa、基板間距離100mmとした。
【0111】
図11(A)は、銀を4nmの厚さとなるように形成したサンプルのSEM写真である。厚さ4nmにおいては、銀が微細な粒子状でシリコン基板上に点在し、膜構造を形成していないことがわかる。
【0112】
さらに狙いの厚さを8nm、および11nmに増やしたサンプルのSEM写真が図11(B)、図11(C)である。銀の粒子は狙いの厚さを増やすことで凝集する傾向にあり、銀粒子のサイズが大きくなるとともに、粒子間の間隔も広くなる。
【0113】
さらに狙いの厚さを15nmおよび20nmに増やしたサンプルのSEM写真が図11(D)、図11(E)である。銀粒子の凝集が進み、複数の開口部を有する膜が形成され始めていることがわかる。
【0114】
また、さらに狙いの厚さを30nmに増やしたサンプルのSEM写真が図11(F)である。開口部は確認できず、緻密な膜となっていることがわかる。
【0115】
図11(A)〜図11(F)に示したサンプルのSEM写真を画像処理にて二値化し、開口率を見積もると、図11(A)、図11(B)が約60%、図11(C)が約55%、図11(D)が約20%、図11(E)が約8%、図11(E)が0%であった。
【0116】
以上の結果に加え、開口率50%以下で粒子の凝集が顕著となって膜が形成されることを考慮し、開口部を有する薄膜の適切な厚さは、薄膜の材料に銀を用いた場合で、11nm以上30nm未満であることが判明した。
【0117】
本実施例は、他の実施の形態および他の実施例と自由に組み合わすことができる。
【実施例2】
【0118】
本実施例では、実施の形態1で説明した方法を用いて作製した微細な凹凸構造を有するシリコン基板表面観察結果、および光学的特性について説明する。
【0119】
図12は、実施の形態1で説明した図1のフロー図に従って作製したサンプルのSEM写真である。基板には単結晶シリコン基板を用い、銀(99.99%)、および銀−パラジウム(1%)の合金のターゲットを用いて、スパッタ法で薄膜の厚さの異なる種々のサンプルを作製した。なお、成膜条件は実施例1で用いた条件と同じである。また、表面エッチング工程としては、5%フッ化水素酸水溶液と1%過酸化水素水の混合液を用いて室温で10分間の処理を行い、表面残渣除去工程としては、3%アンモニア水溶液と3%過酸化水素水の混合液を用いて60℃で30分間の処理を行った。
【0120】
図12(A1)は、銀を17nmの厚さとなるように形成したサンプルのSEM写真である。この写真を二値化して見積もった開口率は、約14%であった。なお、図12(A1)〜図12(C2)は、全てチルト角30°で撮影を行っている。
【0121】
図12(A1)の状態で表面エッチング工程、および表面残渣除去工程を行うと、シリコン基板表面には、図12(A2)に示す状態の凹凸が形成された。該凹凸は高さおよびピッチがナノメートルサイズであり、形状が不規則で傾斜面を有することが確認された。
【0122】
また、図12(B1)は、銀−パラジウム合金を8nmの厚さとなるように形成したサンプルのSEM写真である。この写真を二値化して見積もった開口率は、約17%であった。銀−パラジウム合金は、銀よりも凝集しにくい性質が見受けられ、銀単体よりも厚さを薄くしても所望の開口を有する薄膜を形成することができることが判明した。
【0123】
図12(B1)の状態で表面エッチング工程、および表面残渣除去工程を行うと、シリコン基板表面には、図12(B2)に示す状態の凹凸が形成された。銀単体を用いた場合と若干形状は異なるが、銀−パラジウム合金を用いた場合でも、傾斜面を有する微小な凹凸を形成することができることが判明した。
【0124】
図12(C1)は、銀−パラジウムの合金を2nmの厚さとなるように形成したサンプルのSEM写真である。銀−パラジウムの合金は、厚さ2nmにおいては、シリコン基板上に粒子状に点在し、膜構造を形成していないことが判明した。
【0125】
図12(C1)の状態で表面エッチング工程、および表面残渣除去工程を行うと、シリコン基板表面には、図12(C2)に示す状態の凹凸が形成された。この凹凸は、シリコン基板の元の表面または裏面に対して、略平行または略垂直な面を多く含んだ構造であることが特徴であった。このような凹凸面は、反射光を十分に低減できないだけでなく、該凹凸面を覆う膜の被覆性が悪くなる。例えば、実施の形態2乃至4に説明した光電変換装置などでは、凹凸面を絶縁膜や半導体膜で被覆する必要があるが、被覆性が悪いと良好な電気特性を得ることができなくなる。一方、図12(A2)、(B2)に示した凹凸構造は傾斜面を有し、該凹凸面を覆う膜の被覆性は良好であるといえる。
【0126】
なお、図12(A2)に示す凹凸面は、特許文献1で開示された方法で形成された凹凸面とほぼ同等の構造であった。
【0127】
図13は、図12(A2)、(B2)、(C2)に示したサンプルの表面反射率を測定した結果である。図12(C2)のサンプルと比較して、図12(A2)、(B2)のサンプルは反射率が低減していることが判明した。したがって、本発明の一態様である開口部を有する薄膜を用いて形成した凹凸を有するシリコン基板は、反射率の低減に有効であることが確認できた。
【0128】
本実施例は、他の実施の形態および他の実施例と自由に組み合わすことができる。
【符号の説明】
【0129】
100 シリコン基板
110 第1の領域
130 第2の領域
150 絶縁層
170 第1の電極
190 第2の電極
200 シリコン基板
211 第1のシリコン半導体層
212 第2のシリコン半導体層
213 第3のシリコン半導体層
214 第4のシリコン半導体層
260 透光性導電膜
270 第1の電極
290 第2の電極
300 シリコン基板
311 第1の領域
312 第2の領域
321 第1の絶縁層
322 第2の絶縁層
370 第1の電極
390 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンよりも電気陰性度の大きい金属を含み、かつ複数の開口部を有する薄膜をシリコン基板上に形成する第1の工程と、
前記第1の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるフッ化水素酸水溶液に浸漬させる第2の工程と、
前記第2の工程を施したシリコン基板を酸化剤が含まれるアンモニア水溶液に浸漬させる第3の工程と、
を上記順序で行うことで、シリコン基板表面に微細構造を形成することを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項2】
請求項1において、前記薄膜は、前記金属の単体、前記金属を含む合金、または前記金属を含む酸化物であることを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項3】
請求項1において、前記薄膜は、銀、または銀合金であることを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項4】
請求項3において、前記銀合金は、銀−パラジウム合金、銀−銅合金、または銀−パラジウム−銅合金であることを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記薄膜は、気相法で形成することを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記薄膜の膜厚は、30nm未満であることを特徴とするシリコン基板の加工方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記薄膜の開口率は、8%以上50%以下であることを特徴とするシリコン基板の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−89832(P2013−89832A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230434(P2011−230434)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】