説明

シリコン基板上において1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別するための方法

シリコン基板上の1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別する方法が開示される。この方法は、シリコン基板を提供することを含み、このシリコン基板は、1組の低濃度ドープ領域および1組の高濃度ドープの領域で構成されている。この方法は、電磁放射源でシリコン基板を照明することをさらに含み、この電磁放射源は、約1100nmを超える波長の光を送出する。この方法は、1組の低濃度ドープ領域、および1組の高濃度ドープ領域の波長吸収をセンサーで測定することも含み、約1100nmを超えるいかなる波長に対しても、低濃度ドープ領域中の波長の吸収百分率は、高濃度ドープ領域中の波長の吸収百分率より相当に下回る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月20日に出願された米国非仮特許出願第12/544,713号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、シリコン基板に、より詳細には、シリコン基板上において1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体は現代のエレクトロニクスの基盤となっている。半導体は、導電性と絶縁性の間で選択的に変更し制御することができる物理的特性を有しており、ほとんどの現代の電気デバイス(たとえばコンピュータ、携帯電話、光電池など)において不可欠なものである。IV族半導体とは、一般に、周期表の4番目の列の最初の4つの元素、すなわち、炭素、シリコン、ゲルマニウムおよびスズを指す。
【0004】
印刷などの非伝統的な半導体技術を使用して、半導体材料を堆積する能力は、製造工程を簡略化し、またそれにより、太陽電池などの多くの現代の電気デバイスのコストを低減するための方法を提供し得る。塗料中の顔料のように、これらの半導体材料は、ナノ粒子などの微細粒子として一般に形成され、後で基板上に堆積できるコロイド状分散において一時的に懸濁状態とされる。
【0005】
一般に、ナノ粒子とはその寸法の少なくとも1つが100nm未満の粒子である。サイズにかかわらず一定の物理的特性(たとえば、融点、沸点、比重、導電率など)を有する傾向があるバルク材料(>100nm)と比較して、ナノ粒子は、より低い焼結温度などの、サイズに依存する物理的特性を有することがある。
【0006】
一般に、ナノ粒子は様々な技術によって製造でき、蒸発(S.Ijima,Jap.J Appl.Phys.26,357(1987))、気相熱分解(K.A Littau,P.J.Szajowski,A.J.Muller,A.R.Kortan,L.E.Brus,J Phys.Chem.97,1224(1993))、気相光分解(J.M.Jasinski and F.K.LeGoues,Chem.Mater.3,989(1991))、電気化学的エッチング(V.Petrova−Koch et al.,Appl.Phys.Lett.61,943(1992))、シランおよびポリシランのプラズマ分解(H.Takagi et al,Appl.Phys.Lett.56,2379(1990))高圧液相酸化還元反応(J.R.Heath,Science 258,1131(1992))などの技術がある。
【0007】
一般に、太陽電池は太陽エネルギーを直接DC(直流)の電気エネルギーに変換する。フォトダイオードとして構成されると、太陽電池は、生成された電荷キャリア(電子または、正孔−電子の欠如)を電流として抽出できるように、光がメタルコンタクトの近傍を貫通することを可能にする。また、ほとんどの他のダイオードと同様に、フォトダイオードは接合を形成するためにp型とn型の半導体を結合させることによって形成される。安定化膜と反射防止コーティングの付加の後に、裏面電界として作用する層と、メタルコンタクト(エミッタ上のフィンガーおよび母線、ならびに吸収体の裏面のパッド)とが、生成されたキャリアを抽出するために、付加されてもよい。エミッタのドーパント濃度は、両方のキャリア収集のために、および金属電極とのコンタクトのために特に最適化されなければならない。
【0008】
一般に、エミッタ領域内のドーパント原子の低濃度は、キャリアの低い再結合(したがって、より高い太陽電池効率、すなわち太陽パワーを電気に変換する、より高い割合)、および金属電極への不十分な電気的コンタクトの両方の結果をもたらす傾向がある。対照的に、ドーパント原子の高濃度は、反対の結果をもたらす傾向がある。それは、金属電極への電気的コンタクトは良いが、キャリアの再結合は高い(したがって太陽電池効率は低下する)という結果である。製造コストを低減するために、しばしば単一のドーパント拡散がエミッタを形成するために一般に使用され、ドーピング濃度は、再結合を減少させることとオーミックコンタクト形成を改善することとの間で妥協として選択される。その結果、最適状態に及ばない太陽電池効率しか得られないことになる。
【0009】
1つの解決法は選択(または、2重ドープの)エミッタの使用である。選択エミッタは、低い再結合のために最適化された第1の低濃度ドープ領域、および低抵抗オーミックコンタクト形成のために最適化された第2の高濃度ドープ領域(同じドーパント型の)パターンを一般に使用する。選択エミッタは、一般に、拡散障壁層を用いる多数の拡散ステップで形成されるか、または、多数のドーパント源を用いて形成されるかのいずれかで形成される。
【0010】
しかしながら、そのような領域間の主要な変化はドーパント原子の濃度の差であるので、高濃度ドープと低濃度ドープの領域間に可視の差異は一般にない。結果的に、形成された高濃度ドープ領域上に、メタルコンタクトパターンを確実に位置合わせする(軸的なおよび/または角度的な)ことは問題になり得る。
【0011】
さらに、同様の位置合わせ問題が、バックコンタクト型太陽電池など代替の太陽電池構成において生じ得る。(エミッタ領域は)1組の非可視のカウンタードープした高濃度ドープのパターンで構成されており、それに対応する1組の交差指型のメタルコンタクトパターンも確実に位置合わせする必要がある。
【0012】
しかしながら、適切な位置合わせには、太陽電池基板にメタルパターンを配置する前にメタルパターンを平行移動し回転させるために使用する、基準点と回転角の取りそろえが一般に必須である。第1の手法は、高濃度ドープ領域およびメタルコンタクトの両方が堆積される基準となる、人工の基準点または基準マークの作成を含む。しかしながら、基準マークの使用には、追加加工ステップ(およびツール)が一般に必要である。さらに、両方のパターンは基準マークに対して(互いに対してではない)別々に配置されるので、許容誤差は累積的である。すなわち、最初に、高濃度ドープパターンがある許容差内で、基準マークに対して画定され、その後、別の許容差で基準マークに対して配置した金属堆積が続く。
【0013】
1つの代替方法は、基板エッジへの位置合わせを含み、これは(基板サイズの変化により起因する誤差を最小限にするために)後続の堆積ステップとの間で基板の方向付けが一定に保たれることを一般に必要とする。しかしながら、連続する堆積ステップのためには、各堆積ツールが、全ての計算を同じ正確なエッジ位置に基づかせる必要があろうし、それは特に高スループット生産において問題になり得る。さらに、基板エッジ形状は、理想的でなくまた不完全に画定されている傾向があるため、位置合せ精度は同じく問題になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記に鑑みて、シリコン基板上において1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別する方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、1つの実施形態において、シリコン基板上において1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別する方法に関し、開示される。この方法は、シリコン基板を提供することを含み、このシリコン基板は、1組の低濃度ドープ領域および1組の高濃度ドープの領域で構成されている。この方法は、電磁放射源でシリコン基板を照明することをさらに含み、電磁放射源は、約1100nmを超える波長の光を送出する。この方法は、1組の低濃度ドープ領域、および1組の高濃度ドープ領域の波長吸収をセンサーで測定することも含み、1100nmを超えるいかなる波長に対しても、低濃度ドープ領域中の波長の吸収百分率は、高濃度ドープ領域中の波長の吸収百分率より相当に下回る。
【0016】
添付図面の各図において、本発明を例として、限定せずに、図示する。図中、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による、選択エミッタ型のフロントコンタクト型太陽電池の簡略図である。
【図2】本発明による、バックコンタクト型太陽電池の簡略図である。
【図3】本発明による、図1および図2に示す太陽電池のドープ領域の簡略図である。
【図4A】本発明による、ドーパント濃度の深さ方向分布の、図4Bと1組になる図である。
【図4B】本発明による、図4Aに対応する赤外線(IR)電磁放射の透過率の、図4Aと1組になる図である。
【図5】シリコン基板の様々なドーパント濃度に対する、吸収係数対波長の経験的モデルである。
【図6】本発明による、結晶型太陽電池基板上の1組の高濃度ドープ領域の上に1組のメタルコンタクトを重ねるための装置の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
次に、本発明を、添付図面に示す本発明のいくつかの好ましい実施形態を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明を完全に理解できるようにするために、いくつかの特定の詳細を記載する。しかし、本発明がこれらの特定の詳細のいくつかまたは全てを用いずに実施することができることは、当業者には明らかであろう。他の場合では、本発明を不要に曖昧にしないために、よく知られているプロセスステップおよび/または構造は、詳細には説明していない。
【0019】
前述したように、1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ(または無ドープ)領域から識別するのは困難である。シリコン基板は、可視スペクトル(約300nm〜約700nm)において概して不透明であるので、パターン位置合わせ手法は、反射された可視光線に一般に依存しなければならない。しかしながら、太陽電池の効率を最適化するために、光の反射を減少させると、反射光に依存する視覚的なパターン位置合わせは問題になる。
【0020】
1つの有利な手法では、シリコン基板表面上の高濃度ドープ領域および低濃度ドープ領域を識別し、したがって高濃度ドープ領域の上に1組のメタルコンタクトパターンの確実な堆積を可能にするために、約1100nm(赤外線またはIR)を超える波長の透過率スペクトルが測定されることがある。1つの構成において、広域スペクトル放射源(石英灯など)が基板の片側へ放射してもよく、一方、電磁放射測定装置(適切なCCDチップを備えたビデオカメラなど)が基板の反対側に配置されるであろう。
【0021】
一般に、無ドープのシリコンは、約1.1eVのバンドギャップを有する間接ギャップの半導体であり、このバンドギャップは約1100nm(ナノメートル)または約1.1μm(マイクロメートル)の波長に相当する。一般に、約1.1μmより短い波長の電磁放射はシリコン基板に吸収される傾向があり、一方、より長い波長(より少ないエネルギー)の電磁放射は概して吸収されない。
【0022】
ドーパントの添加には、前述したように、(バンドギャップを減少させることによって)シリコン基板の結晶格子のバンド構造を穏やかに変化させる傾向と、さらに、バンドギャップへ電子状態を加える(したがってサブバンドギャップ光子の自由キャリア吸収を増加させる)傾向との両方がある。たとえば、太陽電池生産に使用されるシリコン基板は概して強くドープされず、約0.1〜約10Ω−cmまでの範囲の比抵抗(1014〜1017の原子/cm3のドーパント濃度に対応する)を有している。対照的に、ドープされた、エミッタおよびコンタクト領域は、概して著しくより高いドーパント濃度(典型的に1018〜1020原子数/cm3の範囲)を有している。
【0023】
結果的に、シリコン基板へのドーパントの添加は、それらのドープされた領域において、バンドギャップ(約1.1マイクロメートルより大きな波長)より小さいエネルギーを持つ光子の吸収を増加させる傾向がある。したがって、異なるドーピングレベルの吸収は、透過した赤外線を使用して、太陽電池中の高濃度ドープの領域を識別しそれに位置合わせするために使用され得る。
【0024】
たとえば、メタルコンタクトの堆積(メタル配線)に先立って、高濃度ドープ領域を有する太陽電池を、白色光(広帯域)放射源(すなわちハロゲンタングステンランプなど)の上方に配置した、IRに透明な台上に配置してもよい。そうすると、放射は透明な基板支持構造を通り抜けることができる。結果的に、光スペクトルの可視部および近接可視部は、シリコンウェハに反射、または吸収され得るが、一方、スペクトルのIR部分(約1100nmより大きい)は、概して透過する。ウェハの上方にCCDカメラ(たとえばInGaAs検出器を備えた)などのIR感度のよいカメラの配置によって、シリコン基板を透過したIR光強度の2次元画像が獲得される。
【0025】
さらに、低濃度ドープシリコン基板のバルクは、IR光の微小な一部分を吸収し得るが、より高濃度にドープしたフィールドエミッタ領域に、より多くのIRの光子は吸収される。最も高いIR吸収の領域は、最も高いドープ密度の領域に対応する傾向があり、この最も高いドープ密度の領域はメタルパターンを配置する必要があるのと同じ領域に対応する。一般に、2次元カメラ画像において、これらの領域は、最も暗く見え、より低濃度ドープしたフィールドエミッタ領域はカメラ画像においてより明るく見える傾向があるであろう。
【0026】
1つの代替構成において、IR放射源を広帯域光の代わりに使用してもよい。その結果として、ウェハに吸収される光の部分は全く存在しなくなる。
【0027】
図1は、本発明による選択エミッタ型のフロントコンタクト型太陽電池の簡略図である。低濃度ドープ領域106および高濃度ドープ領域107を含む、選択エミッタ層はp型(たとえば、ホウ素)またはn型(たとえば、リンの)でもよく、様々な方法によって形成することができ、これらの方法は気相拡散(たとえばリンの源としてPOCl3ガスを、またはホウ素の源としてBBr3を使用するなど)、固体ソース拡散、またはリン酸などの液体のドーパント源を通常使用するインラインプロセスを含むが、それらに限られるわけではない。
【0028】
前面のメタルコンタクトは、(反射防止コーティング104でも通常は覆われる)エミッタ106の上方にあり、かつエミッタ106と電気的コンタクトを有し、このメタルコンタクトは1組のフィンガー(ここでは銀の約100マイクロメートルの幅を有する)105および1組の母線103を含む。印刷された銀ペーストで通常作成される前面のメタルコンタクトは、光が吸収される場合シリコン基板において生成される電荷キャリア(ここでは電子)を抽出するために最適化される。前面のメタルコンタクトはまた、通常、減少させた水平面の面積(したがって遮光による損失を最小限にするが、この遮光は生成される電流を減少させる傾向があるものである)と、増加させた横断面の体積(したがってデバイスの直列抵抗を減少させ、この抵抗の減少はデバイスの効率を増加させる傾向があるものである)とを備え構成される。
【0029】
一般に、未処理のシリコン基板は、しばしば入射光の30%を超える分を反射する。そのため、この反射されるエネルギーを低減し、したがって直接的に効率を改善するため、シリコン基板は、一般に、テクスチャーを付けられ、かつ反射防止コーティング104(たとえば窒化ケイ素など(SiNx)を用いて最適化される。さらに、反射防止コーティング104は、エミッタ106の表面の安定化を助けることも行い、外部源からの基板バルクの両方の汚染を最小限にする他に、ドープした基板108表面のSiダングリングボンドまたは欠陥により引き起こされる少数キャリアの再結合も相当に低減する。
【0030】
図2は本発明による、バックコンタクト型太陽電池の簡略図を示す。図1に示すフロントコンタクト型太陽電池と異なり、バックコンタクト型太陽電池にはエミッタとBSFの両方を一般に有し、したがって、交差指型の構成でソーラー(solar)の裏面上に、対応するメタルコンタクトを有する。結果的に、前面の遮光損失は相当に除去され、全体の太陽電池効率を改善する傾向がある。
【0031】
1つの一般的な構成において、1組のp型(エミッタ)領域212および1組のn型ベースコンタクト領域216が、n型(リンドープの)シリコン基板208へ拡散される。場合により、窒化ケイ素または酸化シリコンの表面安定化層210を裏面に堆積することができる。電荷キャリアを抽出するために、エミッタメタルコンタクト202をp型領域212の1組の上に堆積し、ベースメタルコンタクト211をn型領域213の1組の上に堆積する。さらに、FSF(前面電界)を含む前面層204および、反射防止コーティング(前述)も堆積する。
【0032】
図3は本発明による、図1および図2に示す太陽電池のドープ領域の簡略図を示す。領域302は一般にシリコン基板バルクの低濃度ドープ領域である。領域304は選択エミッタの低濃度ドープ領域である。また、領域306は選択エミッタの高濃度ドープ領域である。その結果、吸収、および、それによりドーパント濃度の測定をするために、電磁放射源308(約1100nmを超える少なくとも1つの波長の光の放射を送出するように構成されている)が、高濃度ドープ領域306の反対側に配置され、一方、電磁放射センサー310が高濃度ドープ領域306に面して配置される。約1100nm未満では、送出された放射は全て、シリコン基板バルクに概して吸収されるだろう。さらに、約1700nm以上の光の波長を測定するためにセンサーが使用されてもよいが、このコストは一般に法外に高い。さらに、発光源と検出器の位置は、この方法の性能に影響を与えることなく逆にすることができる。
【実施例】
【0033】
実施例1
図4A−Bを参照し、ドーパント濃度深さ方向分布と、対応する赤外線(IR)電磁放射スペクトルの、異なるドーピングの強度を有する基板上の2つの位置を通る透過率とを示す1組の図。
【0034】
図4Aは、本発明による、POCl3拡散炉中でシリコンナノ粒子インクを部分的に用いて処理されたシリコン基板に対して、深さの関数として、ドーパント濃度の簡略図を示す。横軸402に沿って、シリコン基板表面からの深さをμmで表し、縦軸404には、リンのドーパント濃度を原子数/cm3で示す。
【0035】
前述したように、ナノ粒子とはその寸法の少なくとも1つが100nm未満の微小な粒子である。用語「IV族ナノ粒子」は、約1nm〜100nmの間の平均直径を有する粒子を一般に指し、シリコン、ゲルマニウム、炭素またはそれらの組み合わせから構成される。用語「IV族ナノ粒子」は、ドープされたIV族ナノ粒子も含む。
【0036】
しかしながら、それらの小さいサイズのために、ナノ粒子は、扱うことが困難になる傾向もある。そのため、1つの有利な手法では、ナノ粒子を輸送および貯蔵するために、集められたナノ粒子を、インクなどのコロイド分散またはコロイドにおいて懸濁し得る。一般に、IV族ナノ粒子のコロイド分散は可能である。というのは溶媒と粒子表面の相互作用が、比重の差を克服するほど十分に強いからである。この比重の差は、液体中において材料が沈むか浮かぶかのいずれかに通常帰着するものである。換言すれば、より小さなナノ粒子は、より大きなナノ粒子より容易に分散する。
【0037】
シリコンナノ粒子インクは、POCl3拡散炉中で、1組の低濃度ドープ領域および1組の高濃度ドープ領域の両方が形成され得るように、あるパターンでシリコン基板表面上に堆積されてもよい。選択エミッタの場合には、約90Ω/sq〜約120Ω/sqの間のシート抵抗を有する低濃度ドープ領域と、約30Ω/sq〜約60Ω/sqの間のシート抵抗を有する高濃度ドープ領域(同じドーパント型の)との両方が形成されてもよい。
【0038】
リンドープのシリコンナノ粒子の薄膜(厚さ約200〜400nm)を、のこぎり損傷をエッチングした基板に、正方形のシリコンインク断片として堆積した。基板を600℃で焼成し、続けて、35分間725℃で追い込み拡散(drive−in)付きのPOCl3拡散を行い、さらに975℃で15分間、酸化の工程を続けた。次いで、サンプルを酸化物緩衝エッチング液(BOE)に5分間浸漬することによってインク断片を化学的にエッチング除去した(インク断片は非可視であった)。その結果、インク断片は人間の目では見えなくなった。
【0039】
プロット406は、ウェハ表面からの距離の関数として、シリコンナノ粒子インクで被覆されていなかった基板領域に対する、深さに依存するドーパント濃度を示し、一方、プロット408は、シリコンナノ粒子インクで被覆されていた基板領域に対する、ドーパント濃度を示す。
【0040】
基板表面の近くのリンの、結果として生じた表面濃度は名目上、それぞれ、インク被覆領域(408)で、約1020cm-3、および非インク被覆領域(406)で、約1019cm-3であった。図から分かるように、任意の深さにおけるインク被覆領域中のドーパント濃度は、インクが実質的に存在しなかった所での対応するドーパント濃度より相当に大きい。
【0041】
図4Bに、図4Aのウェハを通る赤外線(IR)電磁放射の透過率を示す。横軸412に、波長をnmで示し、一方、縦軸414に、約900nmを超える波長領域を走査する分光測光器を用いて測定した透過率百分率を示す。
【0042】
プロット416および418は、太陽電池の低濃度領域と高濃度領域を透過した光の百分率を示す。予測通り、両方の場合とも、光の透過率は、約1.1μm(マイクロメートル)未満の波長の光に対して、シリコンウェハ自体による、光のバンドギャップ吸収に対応して、ゼロになる。約1100nmより大きな波長については、吸収と透過は、一般に表面層中のドーピングレベルによって制御されるサブバンドギャップ光吸収に依存する。
【0043】
図4Aのドーパント濃度プロット406に対応するプロット416は、シリコンナノ粒子インクで被覆されていなかった基板領域に対する、波長スペクトル範囲にわたる透過率百分率を示す。
【0044】
同様に、図4Aのドーパント濃度プロット408に対応するプロット418は、シリコンナノ粒子インクで被覆されていた基板体積に対する、波長スペクトル範囲にわたる透過率百分率を示す。
【0045】
図から分かるように、プロット418のインクのスペクトルは、約1100nmを超える波長領域にわたる透過率が減少していることを示し、これは、これらの領域でのより高濃度のドーパント濃度により吸収が増加したことと整合性がある。たとえば、1800nmの波長で、入射する光子の約25%が、高濃度ドープ面積を透過し、一方、入射する光子の32%が、低濃度ドープ領域を透過する。2次元のIR(赤外線)高感度カメラで見ると、より低濃度のドープ領域は約30%明るく見えるであろう。
【0046】
図5は、シリコン基板中の様々なドーパント濃度に対する吸収係数対波長の経験的モデルを示す。(R.Aaron Falk,Near IR Absorption in Heavily Doped Silicon−An Empirical Approach,OptoMetrix,Inc.(ISTFA)International Symposium for Testing and Failure Analysis 2000)。単位として1/cmで吸収係数αが縦軸504に示され、一方、μmで波長が横軸502に示されている。シリコンのバンドギャップ(1.1μm)より大きい波長に対して、ドーピング濃度が増加すると、著しい吸収の増加があり、図4に示した結果と整合性がある。
【0047】
図6、本発明による、結晶型太陽電池基板上の1組の高濃度ドープ領域の上に1組のメタルコンタクトを重ねるための装置の簡略図。
【0048】
初めに、選択エミッタ型またはバックコンタクト型太陽電池などのための、1組の高濃度ドープの領域を有する太陽電池基板604を、基板搬入装置603(たとえばコンベヤーベルトなど)に配置する。
【0049】
次いで、太陽電池基板604を電磁気センサー606の視野内に配置し、約1100nmを超える、少なくとも1つの波長を送出する電磁気源607によって照明する。本発明者らは、これらの波長は高濃度ドープの領域の検知に対して最適化されていると考える。
【0050】
一般に、適切な照明源の波長に高感度であるように、センサーは選択され得る。この構成において、適切なCCDチップを備えるビデオカメラが使用される。分解能は位置合わせに使用されるパターンの重要な特徴を全て解像するのに十分である必要がある。視野は、位置合わせに使用されるパターンの重要な特徴を全て映すのに十分に大きい必要がある。背景放射をフィルターで除去し、より良いコントラストを得るために、照明源の波長領域に最適化されたバンドパスフィルターを使用してもよい。
【0051】
高濃度ドープの領域パターンが測定されるとき、パターン内の既知の目印の、軸(xとy)および角度(シータ)の位置が計算される。たとえば、1組の高濃度ドープの領域が1組の母線およびフィンガーとしてパターンを付けられる場合、1組の基準マークまたは既知の目印は、適切に画定された位置にあるフィンガーへの母線の特定の交差点であってもよい。
【0052】
いったん測定されたならば、1組の高濃度ドープの領域の内部の目印の位置は、金属堆積装置610(スキージ612を含んでもよいスクリーン印刷機など)に伝達される。太陽電池基板604が金属堆積装置610(ここではターンテーブル608を介して)配置された後、金属堆積装置610の印刷スクリーンは、1組の高濃度ドープの領域の上に堆積されるように、1組のメタルコンタクトを位置合わせするために軸的および角度的に調節される。代替的に、印刷スクリーンの軸的および角度的な位置は固定したままで、太陽電池基板604それ自体が調節される。
【0053】
スキージ612を用いて1組の高濃度ドープの領域の上へメタルコンタクトを堆積した後に、1組のメタルコンタクト(図示せず)を備えた太陽電池基板は、次いで、基板搬出装置611上に配置されるが、ここで追加の加工のために搬送されてもよい。
【0054】
説明的に本明細書で記述された本発明は、いかなる素子または素子群、限定または限定群が欠けていても、特に本明細書で開示されていなくても、適切に実行されてもよい。したがって、たとえば、用語「備える」、「含む」、「包含している」などは、拡張的に、かつ、限定せずに読まれるものとする。さらに、本明細書で使用された用語と表現は、記述の用語として使用されたもので、限定の用語として使用されたものではなく、そのような用語および表現の使用において、示され、記述された特徴およびその特徴の部分の、いかなる同等物も除外する意図はなく、様々な変更が請求された本発明の請求の範囲内で可能であることが認識されるはずである。
【0055】
したがって、本発明を、好ましい実施形態および随意の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書で開示された本発明の修正、改善および変更が当業者によって行使されてもよいこと、および、そのような修正、改善および変更は、本発明の範囲内であると見なされることは、理解すべきである。本明細書で提供される材料、方法、および実施例は、好ましい実施形態の代表的なものであり、見本になるものであり、本発明の範囲に対する限定として意図されたものではない。
【0056】
当業者によって理解される通り、いかなる、かつ、全ての目的に対しても、特に書面による記述の提供の点で、本明細書で開示された範囲はまた、その範囲の、いかなる、かつ、全ての可能な下位の範囲およびそれらの下位の範囲の組み合わせを包含する。いかなる列挙された範囲も、その同じ範囲が少なくとも、等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割されることを、十分に記述し可能にしているものとして、容易に認めることができる。非限定例として、本明細書で説明された範囲はおのおの、下側の3分の1、中央の3分の1、上側の3分の1へ容易に分割できる。さらに当業者によって理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」および同種のものなど、全ての言葉は詳述された数を含み、かつ、上記に説明したとおり、下位の範囲に後で分割することができる範囲を表す。さらに、用語「ドーパント、またはドープされた」および「カウンタードーパント、またはカウンタードープされた」は反対の型の1組のドーパントを表す。すなわち、ドーパントがp型である場合、カウンタードーパントはn型である。さらに、特に断らない限り、ドーパントの型は入れ替えてもよい。
【0057】
本明細書で参照された全ての刊行物、特許出願、交付済み特許、および他の出版物は、おのおのの個別の、刊行物、特許出願、交付済み特許、および他の出版物を具体的かつ個別に引用した場合その全体を組み込むのと同程度に、参照により、本明細書に組み込む。参照によって組み込まれた文に包含されている定義は、本開示中の定義と矛盾する範囲については除外される。
【0058】
本開示において、特に指定がない限り、「1つ」は「1つまたは複数」を意味する。本明細書に引用した全ての特許、特許出願、参考文献、および刊行物は、それらが個別に参照として組み込まれている場合と同程度に、それらの全体を参照として組み込む。さらに、単語「組」は、1つまたは複数の、品目または物の、集合を指す。
【0059】
本発明の利点は、シリコン基板上の1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別するための方法を含む。さらなる利点は、効率的な太陽電池の製造を含む。
【0060】
例示的な実施形態および最良の形態を開示してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主題および精神の範囲内で、開示した実施形態に修正および変更を施すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上の1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別する方法であって、
前記シリコン基板を提供する工程であり、前記シリコン基板は、前記1組の低濃度ドープ領域および前記1組の高濃度ドープの領域で構成されている工程と、
電磁放射源で前記シリコン基板を照明する工程であり、前記電磁放射源は、約1100nmを超える波長の光を送出する工程と、および
前記1組の低濃度ドープ領域、および前記1組の高濃度ドープ領域の吸収をセンサーで測定する工程であり、約1100nmを超えるいかなる波長に対しても、前記低濃度ドープ領域中の前記波長の吸収百分率が、前記高濃度ドープ領域中の前記波長の吸収百分率より相当に下回る工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記電磁放射源で前記シリコン基板を照明した後に、前記1組の高濃度ドープの領域の上に1組のメタルコンタクト(metal contacts)を堆積するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1組の高濃度ドープの領域が、1018〜1020の原子数/cm3のドーパント濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1組の高濃度ドープの領域が、p型ドーパントおよびn型ドーパントのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1組の低濃度ドープ領域が、1014〜1017の原子数/cm3のドーパント濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1組の低濃度ドープの領域が、p型ドーパントおよびn型ドーパントのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
約1100nmを超える前記光の波長が、白色光放射源を用いて送出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記白色光放射源が、ハロゲンタングステンランプである、請求項7の方法。
【請求項9】
前記センサーおよび前記電磁放射源が、前記シリコン基板の両側に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記センサーが、赤外線検出器である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
シリコン基板上の1組の高濃度ドープ領域を1組の低濃度ドープ領域から識別する方法であって、
前記シリコン基板を提供する工程であり、前記シリコン基板は、前記1組の低濃度ドープ領域および前記1組の高濃度ドープの領域で構成されている工程と、
電磁放射源で前記シリコン基板を照明する工程であり、前記電磁放射源は、約1100nmと約1700nmの間の波長の光を送出する工程と、および
前記1組の低濃度ドープ領域、および前記1組の高濃度ドープ領域の吸収をセンサーで測定する工程であり、約1100nmと約1700nmの間のいかなる波長に対しても、前記低濃度ドープ領域中の前記波長の吸収百分率が、前記高濃度ドープ領域中の前記波長の吸収百分率より相当に下回る工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502583(P2013−502583A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525627(P2012−525627)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/045614
【国際公開番号】WO2011/022329
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(506418921)イノヴァライト インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】