説明

シリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置

【課題】シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることのできるシリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置を提供する。
【解決手段】シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させるシリコン基板上のパターン修復方法であって、シリコン基板をチャンバー内に収容し、シリコン基板を160℃以上に加熱する加熱工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、シリコン基板(半導体ウエハ)上に、フォトリソグラフィー工程によって、微細な回路パターンを形成する。このフォトリソグラフィー工程では、フォトレジストの塗布、露光、現像工程や、フォトレジスト等をマスクとしたエッチング工程等によってシリコン基板上に所定のパターン、例えば、ラインやホール等を形成する。
【0003】
このようなフォトリソグラフィー工程において、エッチングを行う際に、パターンの側壁にポリマー(所謂サイドウォールポリマー)が付着する場合がある。このようなサイドウォールポリマーを除去する技術として、フッ化水素とメタノール等からなる洗浄液によって洗浄する所謂ウェット洗浄技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、コンタクトホール内に形成された自然酸化膜を除去する技術としては、フッ化水素蒸気とアルコール蒸気の混合蒸気を使用することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−340183号公報
【特許文献2】特開平5−47742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、従来から、フォトリソグラフィー工程の途中で発生するサイドウォールポリマーをウェット洗浄により除去する技術や、コンタクトホール内に形成された自然酸化膜を蒸気によって除去する技術が知られている。
【0007】
ところで、半導体装置では、回路パターンの微細化が進められており、フォトリソグラフィー工程で形成されるパターンは、その線幅が例えば56nmから43nmさらに32nm等に微細化される傾向にある。そして、このようなパターンの微細化を行うと次のような問題が発生する。
【0008】
すなわち、例えば、シリコン基板上に線幅が32nm以下のライン状のパターンを形成する場合、エッチング後に大気中で放置しておくと、パターン間のスペース内で成長した異物によって、パターン間のスペースが埋められてしまい隣接するパターン同士が異物で接続された状態になるという現象が発生する。また、大気中での放置時間が長くなると、パターン間で成長した異物の影響でパターンが倒れてしまうという現象も発生する。このような異物は、エッチングの際にパターンに残留したハロゲン元素等が空気中のアンモニア等と反応して発生したものと考えられる。そして、パターンの幅及びスペースの幅が微小であるため、パターン間のスペースが異物で埋められてしまったり、パターンが倒れてしまう等の現象が発生するものと推測される。
【0009】
また、32nm等の微細パターンの場合、ウェット洗浄を行うと洗浄時にパターン同士が接着された状態になる現象が発生する。これは、主に液体の表面張力により倒壊するものと考えられ、その他場合によってはウォーターマーク残留成分が接着剤として作用するためと考えられる。このため、32nm等の微細パターンの場合、ウェット洗浄を行うことは難しい。
【0010】
上記のように、シリコン基板上に32nm以下の微細パターンを形成する場合、パターン間のスペースが異物によって埋められてしまったり、異物の影響でパターンが倒れてしまう等の現象が発生する場合があった。そして、32nm以下の微細パターンの場合、ウェット洗浄を行うことも困難なため、従来このような現象が発生したシリコン基板は破棄せざるを得なかった。このため、パターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることのできるシリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることのできるシリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシリコン基板上のパターン修復方法は、シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させるシリコン基板上のパターン修復方法であって、前記シリコン基板をチャンバー内に収容し、前記シリコン基板を160℃以上に加熱する加熱工程を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るシリコン基板上のパターン修復装置は、シリコン基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内に収容された前記シリコン基板を160℃以上に加熱する加熱機構と、前記チャンバー内にHFガスを供給して前記シリコン基板をHFガス雰囲気に晒すHFガス供給機構とを具備し、前記シリコン基板を、前記加熱機構によって加熱し、前記HFガス供給機構によってHFガス雰囲気に晒すことにより、前記シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることのできるシリコン基板上のパターン修復方法及びシリコン基板上のパターン修復装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るシリコン基板上のパターン修復方法を説明するためのパターン構成例を模式的に示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るシリコン基板上のパターン修復方法を説明するための図。
【図3】本発明の一実施形態に係るシリコン基板上のパターン修復装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るシリコン基板上のパターン修復方法によって修復するパターン構成の一例を模式的示すものである。同図に示すように、シリコン基板(半導体ウエハ)Wには、一定間隔で一定幅のライン状に形成されたパターン110がエッチングにより形成されており、パターン110の間にはスペース111が形成されている。本実施形態では、パターン110及びスペース111の幅は、32nm以下とされている。
【0018】
これらのパターン110は、例えば、下側から順に、シリコン基板Wを構成する単結晶シリコン層100、SiO層101、ポリシリコン層102、SiO層103、SiN層104、SiO層105等から構成されている。
【0019】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係るシリコン基板上のパターン修復方法について説明する。図2(a)に示すように、エッチング工程終了後は、各パターン110の間には、スペース111が形成され、各パターン110が夫々分離した状態となっている。
【0020】
エッチング工程終了後、大気中にシリコン基板Wを放置すると、図2(b)に示すように、パターン110の間に異物112が成長する。そして、図2(b)中左側に示すように、パターン110の間のスペース111が異物112によって埋まり、隣接するパターン110同士が異物112で接続された状態となる現象や、図2(b)中右側に示すように、異物112の影響でパターン110が倒れた状態となる現象が発生する。このような現象は、パターン110及びスペース111の幅が広い場合(例えば56nm等の場合)は、発生することはなかった。
【0021】
上記の異物112は、エッチングの際にパターン110に残留したハロゲン元素(フッ素等)が、空気中のアンモニア等と反応して発生したものと考えられる。パターン110を形成するためのプラズマエッチングでは、エッチングガスとしてフッ素を含むガスを使用する場合が多く、この場合異物112は、少なくともケイフッ化アンモニウムを含んでいると推定される。なお、上記の現象は、例えばシリコン基板Wを1カ月程度空気中に放置することによって発生する。また、図2(a)に示す状態から、加湿(湿度85%)及び加温(温度85℃)した加速試験を行えば24時間程度で発生する。
【0022】
本実施形態では、図2(b)に示す状態から、パターン修復を行い、パターン110の間に成長した異物112を除去して当該パターン110の形状を回復させ、図2(c)に示す状態とする。このパターン修復では、シリコン基板Wをチャンバー内に収容し、シリコン基板Wを少なくとも160℃以上、好ましくは200℃以上500℃以下に加熱して異物112を除去しパターン110の形状を回復させる。
【0023】
図3は、本実施形態に用いるシリコン基板上のパターン修復装置120の構成を示している。このシリコン基板上のパターン修復装置120は、内部を気密に閉塞可能とされたチャンバー121を具備している。
【0024】
チャンバー121内には、シリコン基板Wを載置するための載置台122が設けられている。そして、この載置台122内には加熱手段としてのヒータ(図示せず。)が設けられている。
【0025】
また、チャンバー121には、チャンバー121内にHF(フッ化水素)ガスを導入するためのHFガス導入部123及び熱処理雰囲気ガス(N,Ar等)を導入するための熱処理雰囲気ガス導入部124と、チャンバー121内から排気するための排気部125が設けられている。HFガス導入部123は、図示しないHFガス供給源に接続され、熱処理雰囲気ガス導入部124は図示しないNガス供給源及びArガス供給源等に接続されており、排気部125には、図示しない真空ポンプが接続されている。
【0026】
上記構成のシリコン基板上のパターン修復装置120のチャンバー121内にシリコン基板Wを搬入し、載置台122上に載置して、シリコン基板Wを少なくとも160℃以上に加熱する。この時、チャンバー121内は、例えば、熱処理雰囲気ガス導入部124から導入したNガス雰囲気又はArガス雰囲気若しくはこれらの混合ガス雰囲気とすることが好ましいが、大気雰囲気中で加熱してもよい。
【0027】
常圧におけるケイフッ化アンモニウムの融点は160℃であり、ケイフッ化アンモニウムを含む異物112を除去するためには、加熱温度を160℃以上とすることが好ましく、200℃以上500℃以下とすることがさらに好ましい。加熱温度を200℃以上とすることにより、効率的に異物112を除去することができる。また、加熱温度の上限を500℃としたのは、500℃を超えて加熱温度が高くなると、半導体装置を構成するシリコン基板Wにとって好ましくない影響が生じるからである。
【0028】
実施例1として、図2(b)に示すような状態となったシリコン基板Wを、常圧のNガス雰囲気において200℃に加熱して180秒間パターン修復を行った。この結果、パターン110の間に成長した異物112を除去することができ、かつ、図2(b)の右側に示すようにパターン110が倒れた状態となったものについてはパターン110が立った元の状態に戻すことができ、パターン110の形状を回復させ、図2(c)に示す状態とすることができた。なお、加熱温度を300℃とした場合においても同様な結果を得ることができた。
【0029】
上記のパターン修復における加熱を、大気雰囲気で行ったところ、加熱温度200℃では、パターン修復が不完全であったが、加熱温度を300℃とすることによって、上記のNガス雰囲気の場合と同様な結果を得ることができた。なお、加熱工程は、減圧雰囲気で行ってもよい。
【0030】
また、サンプルによっては、上記の加熱工程のみでは、パターン110の間に成長した異物112を除去して当該パターン110の形状を回復させることが不十分な場合がある。このような場合、上記したケイフッ化アンモニウム等と大気中の水分とが反応して、異物112が二酸化ケイ素を含む状態となっていると考えられる。
【0031】
この場合シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程を付加することが好ましい。このシリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程によって、二酸化ケイ素となっている異物112を除去することができるからである。
【0032】
実際に、実施例2として、図2(b)に示すような状態となっているシリコン基板について、以下の条件で、シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程と、これに続いて加熱工程とを実施し、パターン修復を行った。
【0033】
シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程
圧力:1330Pa(10Torr)
HFガス流量:2800sccm
温度:−10℃
時間:60秒
【0034】
加熱工程
圧力:226Pa(1.7Torr)
ガス流量:Ar=1700sccm+N2=11.3リットル/分
温度:200℃
時間:180秒
【0035】
上記の実施例2では、パターン110の間に成長した異物112を除去することができ、かつ、図2(b)の右側に示すようにパターン110が倒れた状態となったものについてはパターン110が立った元の状態に戻すことができ、パターン110の形状を回復させ、図2(c)に示す状態とすることができた。なお、上記実施例2では、シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程を実施した後に加熱工程を実施したが、加熱工程を実施した後にシリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程を実施してもよい。また、シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程と、加熱工程とを同時に実施してもよい。また、HFガス雰囲気にシリコン基板を晒すことにより、残留フッ素の反応によって基板のシリコン系材料に欠陥を生じてしまうことがあるため(例えば、特開平8−264507号公報参照。)、その防止のためにチャンバー121にプラズマ発生機構を搭載して水素原子を含有するガスによるプラズマを照射する等、残留フッ素の除去工程を追加してもよい。
【0036】
以上、本発明を実施形態及び実施例について説明したが、本発明は係る実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
W……シリコン基板、110……パターン、111……スペース、112……異物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させるシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記シリコン基板をチャンバー内に収容し、前記シリコン基板を160℃以上に加熱する加熱工程を有することを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項2】
請求項1記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記パターンの線幅が32nm以下であることを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記加熱工程における加熱温度が200℃以上500℃以下であることを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程をさらに有することを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項5】
請求項4記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記シリコン基板をHFガス雰囲気に晒す工程と、前記加熱工程とを同時に行うことを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記異物がケイフッ化アンモニウムを含むことを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載のシリコン基板上のパターン修復方法であって、
前記異物が二酸化ケイ素を含むことを特徴とするシリコン基板上のパターン修復方法。
【請求項8】
シリコン基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に収容された前記シリコン基板を160℃以上に加熱する加熱機構と、
前記チャンバー内にHFガスを供給して前記シリコン基板をHFガス雰囲気に晒すHFガス供給機構と
を具備し、
前記シリコン基板を、前記加熱機構によって加熱し、前記HFガス供給機構によってHFガス雰囲気に晒すことにより、前記シリコン基板上にエッチングによって形成されたパターンの間に成長した異物を除去して当該パターンの形状を回復させることを特徴とするシリコン基板上のパターン修復装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151114(P2011−151114A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9979(P2010−9979)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】