説明

シリコン酸化膜からのOH基除去法

【課題】OH基を含有するシリコン酸化膜から、TFTの性能である界面特性や絶縁性のため、及び基板を安価なものにするため低温で作製するため、低温で簡便な方法でOH基を減少させる方法を提供する。
【解決手段】基板上に低温形成された、OH基を含有するシリコン酸化膜を有機溶媒に接触・浸漬させる工程と、その後、前記シリコン酸化膜を低温加熱する熱アニール処理を加える工程と、を有することを特徴とするシリコン酸化膜からのOH基除去法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン酸化膜からのOH基除去法に関する。より詳しくは、基板上に、適用な製法、例えば、CVD法、ゾルゲル法、ホットプレート法等により低温で形成したシリコン酸化膜(例えば、電子デバイス等に使用するゲート絶縁膜や層間絶縁膜などのシリコン系絶縁膜)からのOH基除去法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の急激な情報通信技術の発展に伴い、ディスプレイなどに用いられるTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)はなくてはならないものになっている。このTFTの性能は界面特性や絶縁膜の絶縁性が重要となっている。また、基板を安価なものにするためにはできるだけ低温で作製する必要がある。このことから現在、ゲート絶縁膜(薄膜トランジスタにおいて、ゲート電極と半導体層との間に形成される絶縁膜)に用いられるシリコン酸化膜は、主にTEOSを用いたCVD法やゾルゲル法によって作製されている。
【0003】
しかしながら、近年、プラスチックなどのフレキシブル基板上に印刷法で電子デバイスを作製するためには、半導体層や絶縁層などの構成部品をすべて低温で印刷法により作製できるようにする必要がある。しかしこれまで、絶縁層に関しては信頼性の高い材料で、低温形成させることは困難であった。
【0004】
通常、品質の高いシリコン酸化膜を得る製法の1つである乾式法としては、TEOSを用いたCVD法がよく知られているが、この場合、膜品質を上げようとすると、高温処理が必要となってしまい、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製することは困難であった。すなわち、CVD法によってシリコン酸化膜を作製する際の成膜(作製)時の温度条件が、350℃以下、とりわけ常温〜200℃以下の低温である場合には、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残るため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であった。そのため、低温のCVD法で作製したシリコン酸化膜の膜質を向上させるため、高温で加熱する熱アニール処理を行うことが必要であった。
【0005】
また品質の高いシリコン酸化膜の製法の他の1つである湿式法としては、ゾルゲル法がよく知られているが、この場合でも、膜品質を上げようとすると400℃以上(通常500℃程度)の高温処理が必要となってしまい、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製することは困難であった。すなわち、ゾルゲル法によってシリコン酸化膜を作製する際の成膜(作製)時の温度条件が、200〜350℃程度の低温である場合でも、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残るため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であった。そのため、低温のゾルゲル法で作製したシリコン酸化膜の膜質を向上させる場合にも、高温で加熱する熱アニール処理を行うことが必要であった。
【0006】
そこで、乾式法、湿式法を問わず、低温で簡便な方法で良質な絶縁膜を作製する方法が求められていた。
【0007】
上記した要望事項である低温で簡便な方法で良質な絶縁膜を作製する方法として、ホットプレート法という新しい方法で絶縁膜であるシリコン酸化膜を作製する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法は有機ケイ素ポリマー(シリコーンオイル)を大気中でオゾンと反応させる方法である。
【0008】
しかしながら、このホットプレート法という新しい方法でも、上記した低温CVD法や低温ゾルゲル法などと同様に、シリコン酸化膜(絶縁膜)を作製する際の成膜(作製)時の温度条件が、200〜350℃程度の低温では、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残るという問題は何ら解消されていなかった。
【0009】
そのため、上記した低温CVD法や低温ゾルゲル法、更には上記した低温ホットプレート法により形成されたシリコン酸化膜(絶縁膜)のいずれを採用するにしても、当該シリコン酸化膜(絶縁膜)中のOH基は、トラップ準位になるため電気特性が悪化することが分かっている。このことから、上記した低温CVD法や低温ゾルゲル法、更には上記した低温ホットプレート法で作製したシリコン酸化膜の膜質を向上させる場合にも、高温でシリコン酸化膜を作製するか、高温で加熱する熱アニール処理を行うことが必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Low Temperature Formation of Si Oxide Thin Film for TFT by Reaction of Organosilicon polymer and Low Concentration Ozone Gas,Kensuke Nishioka, Kouichi Toriyabe and Susumu Horita,3rd Internationanal TFT Conference, Proceedings p148−151,Rome, Italy, 2007/1/25−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板上に、上記した低温CVD法や低温ゾルゲル法、更には上記した低温ホットプレート法で形成したシリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を行っても、この熱アニール処理を高温にしないと、シリコン酸化膜中からOH基を十分に除去することができないという問題があった。一方、シリコン酸化膜中からOH基を十分に除去するために、熱アニール処理を高温にしてしまうと、安価なプラスチック基板が使えない他、熱アニール処理コストが大幅に上がってしまうと同時に、高温の熱エネルギーを生み出す為に余分なCOの発生量が増えることにもなり、生産エネルギーや、設備投資の軽減が十分に図れないことから、低環境負荷で、低コスト大量生産が十分に図れないというという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、基板上に形成したシリコン酸化膜から低温で簡便な方法でOH基を十分に除去し減少させる、シリコン酸化膜からのOH基除去法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、低温で簡便な方法として、基板上に形成したシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させ、その後、加熱する熱アニール処理を加えることで、簡単にシリコン酸化膜中のOH基を大幅に減少させることができる点に特徴を有する。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる工程と、その後、前記シリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加える工程と、を有することを特徴とするシリコン酸化膜からのOH基除去法により達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温で簡便な方法として、基板上に形成したシリコン酸化膜を、熱アニール処理を行う前に有機溶媒に接触させることで熱アニール処理の効果(シリコン酸化膜中からのOH基の除去能力)を大幅に向上させることができる。その結果、OH基の少ない良質なシリコン酸化膜が形成できる。
【0016】
また本発明では、基板上に形成したシリコン酸化膜中からOH基を除去することにより、リーク電流が減少するため、当該シリコン酸化膜を電子デバイス、特にTFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜やLSI等の層間絶縁膜に応用した際の特性向上を図ることができる。さらにプラスチックなどの柔軟性を有する基板上に、高品質シリコン酸化膜の絶縁膜を低温で形成させることが可能となり、安価で大量生産が要求されている電子ペーパーなどのフレキシブル・プリンタブル電子機器の作製技術を確立させることを加速させることになる。また高品質シリコン酸化膜の絶縁膜を低温で形成させることで、生産エネルギーや、設備投資の軽減を図れることから、低環境負荷で、低コスト大量生産を可能にする。また本発明により作製した高純度で高品質なシリコン酸化膜は、優れた絶縁性能(抵抗率、耐電圧)を示すほかに、低温加工性(プラスチック基板耐性)、高純度、耐久性、耐溶剤性、表面平滑性、耐光性などの要求性能、更にはガスバリア性、耐薬品性、耐擦傷性、耐摩耗性や機械強度などにも優れていることが容易に推測(予測)できることから、封止膜や保護膜などとしても有効であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシリコン酸化膜の形成に用いることのできる製法の1つである、ホットプレート法に用いる装置の代表的な一実施形態を表した装置概略図である。
【図2】実施例1、比較例2で得られたサンプルのシリコン酸化膜をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した結果を表した図面である。
【図3】実施例2で得られた各サンプルのシリコン酸化膜をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した結果を表した図面である。
【図4】実施例2、比較例3で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果から算出した「Si−OH/Si−Oピーク比」を表した図面である。
【図5】実施例3で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【図6】実施例4で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【図7(a)】実施例5で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【図7(b)】実施例5、比較例4で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【図8】実施例6及び比較例5〜6で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
本発明のシリコン酸化膜からのOH基除去法は、
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる工程と、
その後、前記シリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加える工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明のOH基除去法によれば、熱アニール処理を行う前に有機溶媒に接触させることで熱アニール処理の効果(シリコン酸化膜中からのOH基の除去能力)を大幅に向上させることができる。その結果、OH基の少ない良質なシリコン酸化膜が形成できる。また本発明では、基板上に形成したシリコン酸化膜中からOH基を除去することにより、リーク電流が減少するため、当該シリコン酸化膜を電子デバイス、特にTFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜やLSI等の層間絶縁膜に応用した際の特性向上が期待できる。さらに本発明では、シリコン酸化膜の形成からその後の有機溶媒との接触、熱アニール処理が全て低温でかつ簡便な方法でよいため、本発明に係るOH基除去法に要するエネルギー量が少なくてすみ、これにより発生する二酸化炭素量も低減することができる。その結果、安価な生産コストで、なおかつ低環境負荷で地球環境にもやさしい技術を提供することができる。
【0021】
以下、本発明につき工程ごとに、説明する。
(1)基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる工程
本工程は、基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させるものである。より詳しくは、基板上に、適当な製法、例えば、ホットプレート法、CVD法、ゾルゲル法などにより形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させるものである。すなわち、本発明で重要なのは、基板上に形成したシリコン酸化膜からOH基が除去できることであり、シリコン酸化膜の形成手法は、ホットプレート法に限られるものではなく、その他、TEOSを原料としたCVD法やゾルゲル法で形成したシリコン酸化膜のOH基除去にも有効であるということである。これらホットプレート法、CVD法、ゾルゲル法などの従来公知のいずれの製法でも、低温でシリコン酸化膜を形成するとOH基がある(OH基が多く残る)ため、当該OH基を除去することは必要となるものといえる。
【0022】
よって、以下の説明では、適当な製法として、実施例で用いた製法であるホットプレート法を用いて基板上にシリコン酸化膜を形成する方法につき詳しく説明するが、本発明は、これらに何ら制限されるものではなく、従来公知の他の製法、例えば、CVD法、ゾルゲル法などを用いて基板上にシリコン酸化膜を形成する方法を用いてもよいことはいうまでもない。これらの製法を用いる場合でも、背景技術で説明したように、低温かつ安価な製法(製造条件)にて、これら従来公知の他の製法であるCVD法やゾルゲル法などを行うことが必要であることはいうまでもない。
【0023】
本発明では、シリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる本工程を行うことで、従来の高温で熱アニール処理のみを行ったものと、ほぼ同等の膜質を得ることができる(実施例6及び比較例5の図8参照)。そのため、TFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜として利用されている従来の高温熱アニール処理のみを行ったものと同等の膜質を得ることができたことから、本発明でもTFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜として利用される。また、LSI等の層間絶縁膜としての応用も可能である。以下に、本工程の要件ごとに説明する。
【0024】
(a)基板
上記基板としては、基板を安価なものにするためには、オゾンが熱分解する150℃以上の耐熱性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、使用用途に応じて適当な基板を適宜選択することができる。例えば、ポリエーテルサルホン(PES)基板、ポリカーボネート基板、環状オレフィン樹脂基板、ポリアレート(PAR)基板、ポリイミド基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板などのプラスチック基板、シロキサン系ゴム基板などのゴム基板(フレキシブル基板)などの有機系基板;単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、非晶質(アモルファス)シリコン基板、Siエピタキシャル基板などのシリコン基板、砒化ガリウム(GaAs)基板、リン化ガリウム(GaP)基板、リン化インジウム(InP)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、GaN on Si基板、シリコンカーバイド基板、シリコンゲルマニウム基板、シリコンゲルマニウムカーバイド基板、ガラス基板などの無機系基板が挙げられえる。好ましくは、熱アニール処理時の加熱温度に対し耐熱性を有するシリコン基板である。ただし、本発明では、これらに何ら制限されるものではない。特に、ポリイミド配向膜の焼成(ポリイミドの耐熱温度が250℃)やシール剤の硬化など、セル組立における加熱工程に耐えるためにも、プラスチック基板には250℃での耐熱性が要求されている。本発明では、次工程での熱アニール処理が、プラスチック基板に要求される250℃程度の温度でも可能であるため(後述する実施例参照のこと)、安価で、割れにくく、薄く、軽量な(更に好ましくはフレキシブルである)プラスチック基板を使用することができる点で優れている。
【0025】
(b)ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成
本実施形態では、基板上へのシリコン酸化膜の形成に、従来公知の適当な製法の1つとして、ホットプレート法を用いるものである。
【0026】
このホットプレート法という方法は、有機ケイ素ポリマー(シリコーンオイルとも称する。)を大気中でオゾンと反応させる方法である。より詳しくは、所定温度に加熱したホットプレート上に挿入(載置)した基板上に塗膜形成された有機ケイ素ポリマーを大気中(または不活性ガス雰囲気中)でオゾンと反応させる方法である。下記反応式1にオゾンと有機ケイ素ポリマーの反応過程を示す。下記反応式1からオゾン(O)ガスは、加熱することによって酸素分子(O)と原子状酸素(O)に分解される。この時、オゾンガスは150℃以上で多くが酸素分子と原子状酸素に分解される。この原子状酸素の酸化反応によって、有機ケイ素ポリマー中のCH基をOH基に置換することで下記反応式1に示す前駆体(シリコン酸化膜の前駆体)が形成されると同時に、副産物としてCOとHOが発生する。この生成された前駆体のOH基が熱を加えることで脱水反応を起こし、シリコン酸化膜が形成できる。
【0027】
【化1】

【0028】
このホットプレート法という方法を用いることで、従来のプラズマCVD法とは異なり、真空を用いない簡便な装置(図1参照)で、一般的には機械の潤滑油に用いられる有機ケイ素ポリマーという安全、安価な原料からシリコン酸化膜の薄膜が形成できるという利点がある。さらに、低温で尚且つ簡便な方法・装置でシリコン酸化膜を形成することができる。そのため、安価で、割れにくく、薄く、軽量で、更に好ましくはフレキシブルなプラスチック基板を使用することもできる。
【0029】
図1は、本発明のシリコン酸化膜の形成に用いられるホットプレート法に用いる装置の代表的な一実施形態を表した装置概略図である。ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成を、図1を用いて説明する。
【0030】
ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成では、まず、基板上に有機ケイ素ポリマーを適量垂らし、スピンコータを用いてスピンコートする。その後、図1に示すように、ホットプレート法に用いる装置1を用い、所定温度に加熱したホットプレート2上に有機ケイ素ポリマーを塗布した基板3を挿入(載置)し、オゾンガスを散布することで酸化反応させるものである。これにより、基板3上に所望の厚さのシリコン酸化膜10が形成できる。
【0031】
(b−1)有機ケイ素ポリマー
ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成に用いられる有機ケイ素ポリマーは、一般に無色透明の液体で、耐熱性、耐寒性、耐水性に優れている。かかる有機ケイ素ポリマーとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらの有機ケイ素ポリマーは、合成により作製してもよいし、既に市販されている商品を入手して用いてもよい。既に市販されている商品としては、例えば、有機ケイ素ポリマーの中で最も代表的な製品であるジメチルシリコーンオイルでは、KF−96L、KF−96A、KF−96、KF−96H、KF−965、KF−968(いずれも信越シリコーン株式会社の商品名)、メチルハイドロジェンシリコーンオイルでは、KF−99(信越シリコーン株式会社の商品名)、メチルフェニルシリコーンオイルでは、KF−50、KF−54、KF54−400、KF54−400K、HIVAC F−4、HIVAC F−5、KF−56A(いずれも信越シリコーン株式会社の商品名)、環状ジメチルシリコーンオイルでは、KF−995(信越シリコーン株式会社の商品名)、ジメチルシリコーンオイルでは、TSF451−50、SF451−100(東芝シリコーン株式会社の商品名)、KF96−10、KF96−50、KF96−100(信越シリコーン株式会社の商品名)、ジメチルポリシロキサンオイルでは、SRX310−100(東レ株式会社の商品名)などが例示できるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
好ましくは、スピンコート法により素早く均一な塗膜が形成可能な粘性を有するものが望ましく、具体的には、有機ケイ素ポリマーの粘性は25℃で0.1〜1000mm/s、好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは5〜100mm/s、特に好ましくは8〜15mm/sである。該粘性に関する代表的な例として、例えば、後述する実施例では10mm/sのものを使用している。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。これらも1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
(b−2)基板上への有機ケイ素ポリマーの塗布法
基板上への有機ケイ素ポリマーの塗布方法としては、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用することができる。例えば、上記したようなスピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、カーテン法、静電スプレー法、インクジェット法などが挙げられる。好ましくは、有機ケイ素ポリマーの粘性に応じて、スピンコータの回転数と回転時間を適宜調整することで、素早く均一な塗膜を所望の厚さに形成することができる点で望ましい。なお、厚膜化する場合には、所定厚さの塗膜をスピンコートにより形成し、乾燥する工程(手順)を必要な回数分、行うことで厚膜を形成してもよい。
【0034】
(b−3)基板上への有機ケイ素ポリマーの塗布量
基板上への有機ケイ素ポリマーの塗布量は、所望の厚さのシリコン酸化膜が得られるように適宜調整すれば良い。但し、スピンコート法により塗布する場合には、スピンコータの回転数と回転時間を適宜調整することで、素早く均一な塗膜を所望の厚さに形成でき、余分な有機ケイ素ポリマーは回転力により基板から外に飛び出すことで取り除かれるため、基板上への有機ケイ素ポリマーの塗布量としては、所望の厚さのシリコン酸化膜を形成するのに必要な量よりも多めにしても何ら問題ない。
【0035】
(b−4)ホットプレート2の加熱温度(=基板表面温度)
ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成では、上記有機ケイ素ポリマーを塗布した基板3を作製した後、所定温度に加熱したホットプレート2上に有機ケイ素ポリマーを塗布した基板3を挿入、載置する。
【0036】
ここで、所定温度に加熱したホットプレート2の温度(加熱温度)としては、有機ケイ素ポリマーを塗布した基板3を挿入、載置し、オゾンガスを散布(オゾン処理)することで酸化反応を促進させることができる温度であればよく、特に制限されるものではないが、100〜400℃、好ましくは140〜300℃である。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。例えば、オゾンが原子状酸素に分解される150℃以上であればより望ましいといえる。
【0037】
(b−5)オゾンガスの散布(オゾン処理)
オゾンの散布(オゾン処理)は、図1に示すように、酸素ガス供給部(図示せず)から配管4を通じて所定の流速のOガスと、不活性ガス供給部(図示せず)から配管5を通じて所定の流速の不活性ガス(例えば、Nガス)とを共同配管6内で混合した状態で、オゾナイザー7に供給する。供給された混合ガスを所定の圧力条件下のオゾナイザー7で発生させたオゾン(O)ガス(濃度4〜5%程度)を、基板3の上方に配置された配管8を通じて先端の噴射ノズル9(=基板3の上方)から加熱された基板3表面に散布すればよい。加熱された有機ケイ素ポリマー(シリコーンオイル)を塗布した基板3表面にオゾンガスを散布する(オゾン処理する)ことで酸化反応させるものである。かかる酸化反応に関しては、既に反応式1を用いて説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。かかる酸化反応により、基板3上に所望の厚さのシリコン酸化膜10を形成することができる。このように、Oガスを用いたシリコン酸化膜形成では成膜速度の増加や作成温度の低温化が可能である等の利点を有する。
【0038】
ここで、上記基板3表面と先端ノズル9との間隔は0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは0.5〜2mmに設定するのが望ましい。これは、オゾンを効率よく吹きかけるため、基板3表面と先端ノズル9との間隔は近いほうが良いためである(後述する実施例では、1mm程度で使用)。
【0039】
(b−5−1)Oガスの流速
ここで、上記配管4を通じて供給されるOガスの流速としては、装置によって異なる(例えば、装置サイズ、あるいはホットプレート2上に一度に挿入する基板3のサイズ及び枚数等によって異なる)が、基板1枚当たりに換算すると、0.1〜10L/min、好ましくは1〜2L/minの範囲である。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。なお、窒素等の不活性ガスは、オゾナイザーに必要なので入れている。具体的には、窒素を微量入れると効率よくオゾンが発生するという装置の仕様から、窒素を供給しているものである。
【0040】
(b−5−2)オゾンガスを発生させる方法(オゾナイザーまたはオゾン発生装置)によるオゾンガス濃度(=オゾンの散布濃度、オゾン処理濃度)
本発明でのオゾンガスを発生させる方法(装置)で得られるオゾン濃度、即ち、オゾンの散布濃度(オゾン処理濃度)としては、基板上への散布ガス中に含まれるオゾン濃度が、通常5〜15%の範囲である。これは、既存の装置で得られるオゾン濃度が5〜15%であるためである。該オゾン濃度は、高ければそれだけ反応性は増すといえるが、高いと、危険性や腐食性の関係で扱いにくく、低濃度でできる点で有利である。
【0041】
(c)CVD法によるシリコン酸化膜の形成
本実施形態では、基板上へのシリコン酸化膜の形成に、従来公知の適当な製法の1つとして、乾式法である、CVD法を用いるものである。
【0042】
(c−1)シランガスを使ったCVD法により堆積したシリコン酸化膜の形成
シランガスを使って低温でのCVD法により堆積したシリコン酸化膜を用いてもよい。この場合には、シランを原料ガスとして用いるプラズマCVD法でも、成膜温度200℃以下の低温で高速な成膜が可能である。そして、これらCVD法によってシリコン酸化膜を形成する際の温度条件が、200℃以下の低温である場合には、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残る。そのため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であり、本発明のOH基除去法を適用することが有用である。
【0043】
上記シランとしては、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランのようなエポキシ官能性シラン、ビニルトリアルコキシシランのようなアルケニル官能性シラン、テトラエチルオルトシリケートのようなアルキルシリケートなどが挙げられる。
【0044】
当該CVD法の上記温度条件以外の作製条件に関しては、特に制限されるものではなく、従来公知の当該CVD法による成膜技術を適宜利用することができる。
【0045】
(c−2)TEOSを原料ガスとして用いるプラズマCVD法によるシリコン酸化膜の形成
例えば、TEOSを原料ガスとして用いるプラズマCVD法では、成膜温度200℃以下の低温で高速な成膜が可能である。これは、シリコン酸化膜が、LSI工程において、ゲート絶縁膜、LOCOS酸化膜、層間絶縁膜や平坦化膜など様々な部位に用いられており、その中でも、層間絶縁膜形成工程では、低温条件下で高速にシリコン酸化膜の形成が可能な手法が強く求められており、こうしたユーザーの強い要請に応えるためである。具体的には、原料ガスのTEOSをHeガスによるバブリング法により供給し、チャンバ内でプラズマアシストによる分解反応を発生させ、Oガスと反応させることでシリコン酸化膜を形成することができる。こうして、CVD法によってシリコン酸化膜を作製する際の温度条件が、200℃以下の低温である場合には、既に説明したように、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残る。そのため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であり、本発明のOH基除去法を適用することが有用である。
【0046】
当該CVD法の上記温度条件以外の作製条件に関しては、特に制限されるものではなく、従来公知の当該CVD法による成膜技術を適宜利用することができる。
【0047】
(c−3)TEOSを原料ガスとして使用し、オゾンを一種の触媒として添加してCVD法で堆積するシリコン酸化膜の形成
さらに上記(c−2)のCVD法において、原料ガスのTEOSをCVD法で堆積してシリコン酸化膜を形成するとき、オゾンを一種の触媒として添加してCVD法で堆積するシリコン酸化膜を用いても良い。(c−3)の場合にも、TEOSを原料ガスとして用いるプラズマCVD法では、成膜温度200℃以下の低温で高速な成膜が可能である。そして(c−3)のCVD法によってシリコン酸化膜を作製する際の温度条件が、200℃以下の低温である場合にも、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残る。そのため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であり、本発明のOH基除去法を適用することが有用である。
【0048】
当該CVD法の上記温度条件以外の作製条件に関しては、特に制限されるものではなく、従来公知の当該CVD法による成膜技術を適宜利用することができる。
【0049】
なお、上記シランガスを使った通常のCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも、上記TEOSを使ったCVD法で形成したシリコン酸化膜の方が、優れた段差塗布性を有し、パターン間のギャップを埋める特性に優れている点で有用である。
【0050】
本実施形態において、基板上にCVD法を用いてシリコン酸化膜を形成する例としては、上記(c−1)〜(c−3)の例に何ら制限されるものではなく、基板上へのシリコン酸化膜の形成に適用し得る従来公知のCVD法(通常の一般的なCVD法の他にも、低圧CVD法、プラズマ強化CVD法、オゾンアシスタンスを用いた熱的化学気相蒸着法(TCVD)、プラズマCVD法(PECVD)、高密度プラズマCVD法(HDPCVD)などを含むCVD法によるシリコン酸化膜の成膜技術)を低温(350℃以下、特に常温〜250℃)で適宜利用することができる。
【0051】
(d)ゾルゲル法によるシリコン酸化膜の形成
本実施形態では、基板上へのシリコン酸化膜の形成に、従来公知の適当な製法の1つとして、湿式法である、ゾルゲル法(ゾルゲルスピンコーティング法を含む)を用いるものである。
【0052】
ゾルゲル法では、溶液から出発する。該溶液は、シリコン酸化膜の原料として金属アルコキシド、金属酢酸塩などを含んでいる。これら原料化合物に加水分解用の水、溶媒としてのアルコール類、触媒(酸または塩基)を加えて溶液を調整する。溶液中で加水分解と重合反応を起こさせて、溶液をゾルに変え、さらに反応を進めてゲルに変え、乾燥するというものである。
【0053】
上記ゾルゲル法において、シリコン酸化膜を形成する場合、ゲルを通常500〜600℃以上まで加熱して乾燥しているが、350℃以下、特に200℃以下の低温で乾燥することも可能である。しかしながら、ゾルゲル法によってシリコン酸化膜を作製する際のゲルの加熱温度が、350℃以下、特に200℃以下の低温である場合には、脱水反応が十分に起きずにOH基が多く残る。そのため、絶縁膜として品質の高いシリコン酸化膜を低温で作製させることは困難であり、本発明のOH基除去法を適用することが有用である。
【0054】
当該ゾルゲル法でのゲルの加熱温度条件以外の作製条件に関しては、特に制限されるものではなく、従来公知の当該ゾルゲル法による成膜技術を適宜利用することができる。
【0055】
ゾルゲル法によってシリコン酸化膜を低温で形成する場合にも、破壊しにくい膜ができ、亀裂の発生を防ぎ、1μm以上の厚膜を形成することができる。また、プラスチック基板とよく接着するシリコン酸化膜を形成することができる。
【0056】
本発明では、上記(b)〜(d)で説明したホットプレート法、CVD法、ゾルゲル法以外にも、熱酸化法、スパッタ法(スパッタリング法)、物理気相蒸着法(PVD)、レーザーアブレーション法、蒸発法などにより基板上に低温(350℃以下、特に常温〜250℃)でシリコン酸化膜を形成する方法を適宜利用することもできる。すなわち、本発明のOH基除去法は、シリコン酸化膜の成膜方法には何ら制限されるものではなく、上記した低温での成膜によりOH基が多く残るシリコン酸化膜であれば、いずれも適用可能である。
【0057】
(e)形成されたシリコン酸化膜
上記した各種製法により形成されたシリコン酸化膜の厚さとしては、上記したような各種の使用用途に応じて適当な厚さを適宜選択すればよい。例えば、電子デバイスのゲート絶縁膜に用いる場合には、通常数十〜数百nmの範囲であるが、かかる範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。またLSI等の層間絶縁膜に用いる場合には、通常数μm〜数百μmの範囲であるが、かかる範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。
【0058】
前記シリコン酸化膜の使用用途としては、半導体を始めとするシリコンデバイス(例えば、LSI、薄膜トランジスタ、光電変換装置および感光体など)の電気絶縁膜、誘電体膜および保護膜として、半導体関連分野に幅広く利用することができるものである。例えば、TFT、MOS等の電子デバイスの絶縁膜、好ましくはゲート絶縁膜;LSI等の絶縁膜、好ましくは層間絶縁膜などであるが、これらになんら制限されるものではない。
【0059】
前記シリコン酸化膜は、単層であってもよいし、多層であってもよい。多層膜の場合、ホットプレート法によるシリコン酸化膜の形成過程を必要な回数、繰り返し行えばよい。
【0060】
(f)有機溶媒
基板上に形成されたシリコン酸化膜と接触させるのに用いられる有機溶媒としては、本発明の作用効果(シリコン酸化膜中からのOH基の除去能を大幅に向上させ、OH基の少ない良質なシリコン酸化膜を形成し得るという作用効果)を有効に発現し得るものであれば、特に制限されるものではない。特に本発明では、各種の有機溶媒においてOH基の減少量がほぼ同じであり、特にシリコン酸化膜と接触させる有機溶媒の炭素の数や分子数、OH基量、沸点、官能基の変化などによっては変化がないことから(実施例5の表1、図7(a)(b)参照)、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等のアルコール類;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン系、アルキルベンゼン系等の芳香族炭化水素類;クロルベンゼン、オルト−ジクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類;ジクロルメタン、トリクロルメタン、テトラクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2,2−テトラクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等の塩化脂肪族炭化水素類;フッ素系有機溶剤;1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブタン−2−オールなどのフッ素化アルコール系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等のエステル類;エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル(セロソルブ)類;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環式炭化水素類;ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット等の脂肪族または芳香族炭化水素の混合物;クレゾール、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、第4級アンモニウムヒドロキシド、112−トリフルオロ−122−トリフルオロエタン(CFC113)とシクロペンタンなど炭化水素との混合有機溶媒、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンとメタノールとの混合有機溶媒、4−(または3−)メトキシ−1−ブタノールと炭酸プロピレンからなる混合有機溶媒などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトンである。
【0061】
(g)基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる形態
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる形態としては、特に制限されるものではなく、後述する接触条件を満足し得るものであればよい。
【0062】
具体的には、(1)液体状態の有機溶媒を用いる場合には、(a)基板上に形成されたシリコン酸化膜を液体状態の有機溶媒中に浸漬させて接触させる形態、(b)基板上に形成されたシリコン酸化膜に液体状態の有機溶媒を噴霧して接触させる形態、(c)基板上に形成されたシリコン酸化膜に液体状態の有機溶媒を塗布して接触させる形態などが挙げられる。但し、本発明では上記形態に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る形態であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。
【0063】
また、(2)気体状態の有機溶媒を用いる場合には、(d)基板上に形成されたシリコン酸化膜に気体状態の有機溶媒をエア噴射(スプレー)して接触させる形態、(e)基板上に形成されたシリコン酸化膜を気体状態の有機溶媒が充満する容器内に載置して接触させる形態、(f)基板上に形成されたシリコン酸化膜を液体状態の有機溶媒槽を加熱して気体状態の有機溶媒が蒸散(蒸発)される部分に曝して(晒して、ないし配置して)接触させる形態などが挙げられる。但し、本発明では上記形態に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る形態であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。
【0064】
さらに(3)液体状態と気体状態の有機溶媒を併用するものであってもよい。すなわち、液体状態で基板上に接触するものと、気体状態で基板上に接触するものとが混在する場合も、本発明の接触形態に含まれるものである。例えば、基板上に形成されたシリコン酸化膜に液体状態の有機溶媒を噴霧して接触させる際に、液体状態の有機溶媒の温度や基板周辺の雰囲気温度を高めることで、液体状態のままで基板上に接触するものと、該液体が途中で蒸発して気体状態で基板上に接触するものとが混在するような場合も、本発明の接触形態に含まれるものである。これとは逆に、気体状態の有機溶媒をエア噴射して接触させる際に、気体状態の有機溶媒の温度や基板周辺の雰囲気温度を低く設定することで、気体状態のままで基板上に接触するものと、該気体が途中で液化して液体状態で基板上に接触するものとが混在するような場合も、本発明の接触形態に含まれるものである。
【0065】
上記(1)(a)の接触形態では、エタノールなどの揮発性の有機溶媒を用いる場合に、液体状態の有機溶媒を満たした開閉自在で温度制御可能な密閉式容器を用い、シリコン酸化膜が形成された基板全体を有機溶媒中(例えば、液体状態の有機溶媒が満たされた槽内に浸漬(デッピング)して接触させる方法が好適である。これは、接触(=浸漬)温度を制御でき、容器からの有機溶媒の蒸発(蒸散)を防止でき、液体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜全体に常に均一に接触した状態にできる等の観点から好適である。また、メタノールなどの引火性の高い揮発性の有機溶媒の場合、温度制御及び容器からの有機溶媒の蒸発(蒸散)を効果的に防止または回収できる装置・機構を用いるのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0066】
また、上記(1)(a)の浸漬(デッピング)時には、液体状態の有機溶媒を満たした開閉自在で温度制御可能な密閉式容器内を撹拌して、有機溶媒の温度、濃度(混合溶媒の場合)が常に均一化された状態の液体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に一定の流速で接触させるのが、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。
【0067】
上記(1)(b)の接触形態では、基板上に形成されたシリコン酸化膜に液体状態の有機溶媒を、例えば、液体塗料の噴霧に用いられるようなエアガンや回転霧化装置などを用いてミスト状態で噴霧(ないし噴射、吹付、噴付などとも称される;スプレー)して接触させる場合に、シリコン酸化膜表面全体が常に有機溶媒で濡れた状態(液体で被覆された状態)に所定時間保持するのが、一定量以上の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触・保持させた状態を維持することができ、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。また、メタノールなどの引火性の高い揮発性の有機溶媒の場合、蒸発(蒸散)した有機溶媒を効果的に回収できる装置(チャンバ)内で実施するのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0068】
上記(1)(c)の接触形態では、基板上に形成されたシリコン酸化膜に有機溶媒を塗布(コーティング)、詳しくは、スピンコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット法などの塗布法を用いて接触させる場合に、シリコン酸化膜表面全体が常に有機溶媒で濡れた状態(液体で被覆された状態)に所定時間保持するのが、一定量以上の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触・保持させた状態を維持することができ、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。また、メタノールなどの引火性の高い揮発性の有機溶媒の場合、蒸発(蒸散)した有機溶媒を効果的に回収できる装置(チャンバ)内で実施するのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0069】
上記(2)(d)の接触形態では、基板上に形成されたシリコン酸化膜に気体状態の有機溶媒を、例えば、エアガンやエアジェットなどの気体噴射装置等を用いてエア噴射(ないしエア吹付またはエア噴付などとも称される;エアスプレー)して接触させる場合に、シリコン酸化膜表面全体が常に気体状態の有機溶媒に曝された(晒された)状態、即ち、気体状態の有機溶媒で被覆(エア被膜形成)された状態に所定時間保持するのが、一定量以上の気体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触させた状態を維持することができ、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。ここで、気体状態の有機溶媒が、高温ガス化された有機溶媒の場合には、常温(または常温以下に冷却された状態)のシリコン酸化膜表面に接触することで素早く液化して接触させてもよい。これにより、上記(1)(b)や(1)(c)と同様の状態とすることができる。その結果、一定量以上の液体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触・保持させた状態を維持することができ、上記(1)(b)や(1)(c)と同様のOH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。また、メタノールなどの引火性の高い有機溶媒を気体状態で用いる場合にも、当該有機溶媒を効果的に回収できる装置(チャンバ)内で実施するのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0070】
上記(2)(e)の接触形態では、基板上に形成されたシリコン酸化膜を気体状態の有機溶媒(好ましくは有機溶媒のみ)が(高濃度に)充満する容器内に載置して接触させる場合に、シリコン酸化膜が形成された基板全体が常に容器内(=気体状態の有機溶媒内)に存在する状態に所定時間保持するのが、一定量以上の気体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触させた状態を維持することができ、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。この場合、容器内の気体状態の有機溶媒を撹拌することで、常に新鮮な有機溶媒がシリコン酸化膜表面に供給されるようにしてもよい。また、容器内部を溶媒の沸点以上に加熱することで、容器内の有機溶媒が液化することなく、常に新鮮な気体状態の有機溶媒がシリコン酸化膜表面に供給されるようにしてもよい。これらとは反対に、気体状態の有機溶媒が、高温ガス化された有機溶媒の場合には、常温または常温以下に冷却された状態のシリコン酸化膜表面に接触することで素早く液化して接触されるようにしてもよい。これにより、上記(1)(b)や(1)(c)と同様の状態とすることができる。その結果、一定量以上の液体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触・保持させた状態を維持することができ、上記(1)(b)や(1)(c)と同様のOH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。また、メタノールなどの引火性の高い有機溶媒を気体状態で用いる場合にも、当該有機溶媒を効果的に回収できる密閉式の容器内で実施するのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0071】
上記(2)(f)の接触形態では、基板上に形成されたシリコン酸化膜を液体状態の有機溶媒槽を加熱して気体状態の有機溶媒が蒸散(蒸発)される部分に曝して(晒して、ないし配置して)接触させる場合に、シリコン酸化膜表面全体が常に蒸散(蒸発)される気体状態の有機溶媒に晒される状態に所定時間保持するのが、一定量以上の気体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触させた状態を維持することができ、OH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。ここで、気体状態の有機溶媒は加熱により高温ガス化された有機溶媒であるので、シリコン酸化膜が形成された基板(特にシリコン酸化膜表面)を常温または常温以下に冷却された状態に保持することで、シリコン酸化膜表面に接触した高温ガス化された有機溶媒が素早く液化して接触されるようにしてもよい。これにより、上記(1)(b)や(1)(c)と同様の状態とすることができる。その結果、一定量以上の液体状態の有機溶媒をシリコン酸化膜に常に接触・保持させた状態を維持することができ、上記(1)(b)や(1)(c)と同様のOH基除去作用・効果を有効に発現させることができる点で望ましい。また、メタノールなどの引火性の高い有機溶媒を気体状態で用いる場合にも、当該有機溶媒を効果的に回収できる装置(チャンバ)内で実施するのが、リサイクルにより低環境負荷にもつながるため好適である。
【0072】
基板上に形成されたシリコン酸化膜に接触させる有機溶媒の温度としては、(1)液体状態の有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒の沸点を超えない範囲、即ち、有機溶媒が液体である温度で適宜設定すればよく、常温(非加熱)でもよいし、常温(非加熱温度)以上に加熱して用いてもよいし、常温(非加熱温度)以下に冷却して用いてもよいが、経済性の観点からは、常温(非加熱)とするのが望ましい。また(2)気体状態の有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒の沸点を超えた範囲、即ち、有機溶媒が気体である温度で適宜設定すればよく、有機溶媒の沸点が常温以下の場合には、常温(非加熱)でもよいし、有機溶媒の沸点を超えるように加熱して用いてもよいし、有機溶媒の沸点以上で尚且つ常温(非加熱温度)以下に冷却して用いてもよいが、経済性の観点からは、常温(非加熱)とするのが望ましい。また有機溶媒の沸点が常温以上の場合には、有機溶媒の沸点を超えるように加熱して用いればよい。
【0073】
なお、液体または気体状態の有機溶媒を加熱または冷却するには、(i)容器外周部に熱媒または冷媒を循環させる為のジャケットを設置して、当該ジャケット内と系外の温度調節装置(加熱装置または冷却装置)とを循環経路で連結し、加熱部で一定温度に調整された熱媒または冷媒を、循環経路を通じて当該ジャケット内部に循環させることで、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を加熱又は冷却するようにしてもよい。ここで、上記(1)(a)や(2)(e)の接触形態の場合には、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を、撹拌装置を用いて常に撹拌して容器内の有機溶媒全体の温度の均一化を図るのが望ましい。(ii)容器外周部あるいは容器底部に、コールヒーターやバンドヒーター等の各種ヒーターあるいはホットプレートなどの加熱装置またはペルチェ式冷却装置などの冷却装置を設置して、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を加熱または冷却するようにしてもよい。ここで、上記(1)(a)や(2)(e)の接触形態の場合には、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を、撹拌装置を用いて常に撹拌して容器内の液体または気体状態の有機溶媒全体の温度の均一化を図るのが望ましい。(iii)容器内部にヒーターなどの加熱装置またはペルチェ式冷却装置などの冷却装置を設置して、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を加熱または冷却するようにしてもよい。ここで、上記(1)(a)や(2)(e)の接触形態の場合には、容器内の液体または気体状態の有機溶媒を、撹拌装置を用いて常に撹拌して容器内の液体または気体状態の有機溶媒全体の温度の均一化を図るのが望ましい。なお、有機溶媒を加熱または冷却する方法としては、上記(i)〜(iii)の方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の加熱または冷却方法(装置)を適宜利用することができる。
【0074】
(h)基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる条件について
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる条件としては、上記(g)の(1)(a)〜(c)及び(2)(d)〜(f)等に示す接触形態にもよるが、基板上に形成されたシリコン酸化膜と有機溶媒との接触により本発明の作用効果を有効に発現し得るものであればよい。
【0075】
(h−1)接触温度
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる温度としては、(1)液体状態の有機溶媒に接触させる場合には、有機溶媒が液体である温度であればよい。これは、有機溶媒が液体である温度は、有機溶媒によって大きく異なることから、有機溶媒に接触させる温度範囲を具体的に規定することはできないためである。一応の目安としては、0〜100℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃の範囲であるが、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではない。上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。例えば、有機溶媒にエタノールを用いた上記(g)の(1)(a)に示す接触形態での実験の場合、接触温度を少し温めた実験を行った結果、常温での実験とあまりOH基除去効果は変わらず、むしろ、あまり高温だと有機溶媒が蒸発してしまうことから、室温から有機溶媒の沸点未満の温度範囲が好ましい範囲ともいえる。(2)気体状態の有機溶媒に接触させる場合には、有機溶媒が気体である温度であればよい。これは、有機溶媒が気体である温度は、有機溶媒によって大きく異なることから、有機溶媒に接触させる温度範囲を具体的に規定することはできないためである。一応の目安としては、20〜200℃、好ましくは30〜100℃の範囲であるが、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではない。上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。また(3)液体状態と気体状態を併用する場合には、液体状態で基板上に接触するものと、気体状態で基板上に接触するものとが混在するように、有機溶媒の温度と基板周辺雰囲気温度を、一方は有機溶媒の沸点より僅かに高い温度に、もう一方は有機溶媒の沸点より僅かに低い温度に設定するなどして、当該接触温度を適宜調整すればよい。
【0076】
ここで、接触温度とは、有機溶媒に接触させる際の基板上に形成したシリコン酸化膜表面の温度をいう。かかる温度は適当な温度センサをシリコン酸化膜表面に設置するなどして容易に測定することができる。
【0077】
(h−2)接触時間
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる時間としては、(1)液体状態の有機溶媒に接触させる場合には、通常1秒間〜180分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜10分間の範囲である。(2)気体状態の有機溶媒に接触させる場合には、通常1秒間〜180分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間の範囲である。上記(1)(2)のいずれの場合にも接触時間が上記範囲内であれば、接触によるOH基の除去効果を得ることができるが、上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。例えば、有機溶媒にエタノールを用いた上記(g)の(1)(a)に示す接触形態での実験の場合、5分以上は効果はいっしょであり、更なる接触による効果は得られないことから接触時間は5分で十分といえる。このように有機溶媒の種類により好適な接触時間が異なることから、実際に使用する有機溶媒を用いて予備実験などを行って好適な接触時間を決定しておくのが望ましいといえる。
【0078】
(h−3)接触圧力
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させた際の圧力条件としては、特に制限されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。好ましくは常圧下(無加圧・無減圧状態)である。減圧ないし加圧に必要な装置が不要であり、低コスト化が図れるためである。
【0079】
(h−4)接触後の処理について
上記有機溶媒への接触後は、直ちに熱アニール処理を加える工程を行うのが好ましい。即ち、有機溶媒との接触後、乾燥もせずに、すぐに熱アニール処理するのが望ましい。ただし、熱アニール処理を加える前に、基板上に形成されたシリコン酸化膜に残留する液体状態の有機溶媒を、適当な方法により除去してもよい。例えば、(i)揮発性の液体状態の有機溶媒を用いた場合には、水洗することなく、自然乾燥、真空乾燥などにより乾燥・除去すればよい。(ii)低揮発性あるいは不揮発性でかつ水溶性の液体状態の有機溶媒を用いた場合でも、水洗することなく、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などにより乾燥・除去すればよい。液体状態の有機溶媒に接触後、シリコン酸化膜を水と接触させることで、有機溶媒との接触による効果が低減される恐れがあるためである。但し、必ずしも水洗することを排除するものではない。即ち、水洗によっても有機溶媒との接触による効果が低減されるものでなければ水洗してもよい。(iii)低揮発性あるいは不揮発性でかつ非水溶性の液体状態の有機溶媒を用いた場合には、適用な洗浄液を用いて残留する液体状態の有機溶媒を除去し、その後、水洗することなく、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などにより乾燥すればよい。
(2)加熱する熱アニール処理を加える工程
本工程は、上記(1)のシリコン酸化膜と有機溶媒との接触工程後、該シリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加えるものである。以下に、本工程の各要件ごとに説明する。
【0080】
(a)熱アニール処理条件
シリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理条件としては、基板の種類等にもよるが、上記有機溶媒に接触後のシリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加えることにより、本発明の所望の効果を有効に発現し得るものであればよい。
【0081】
(a−1)熱アニール処理法
上記(1)の工程により有機溶媒に接触後のシリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加える方法としては、特に制限されるものではないが、予め所定の熱アニール温度に加熱されたホットプレート上に挿入・載置し、大気下で、所定の熱アニール時間加熱すればよい。但し、これらに何ら制限されるものではなく、高温での熱アニール処理に一般に用いられているファーネスアニール炉を用いることもできる。但し、一般に用いられているファーネスアニール炉では、本発明のような低温域の温度設定ができないものもあり、上記した低温域での熱アニール処理に適したホットプレート等の加熱装置を用いるのが望ましい。
【0082】
(a−2)熱アニール温度
上記有機溶媒に接触後のシリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理の温度(熱アニール温度)としては、熱アニール温度によって膜質の向上が異なり、熱アニール温度が低温であるほど有機溶媒に接触する効果が大きくなるが、350℃以上ではほぼ同じになることから(実施例2、比較例3の図3、4参照)、通常、基板の耐熱温度以下の温度であればよく、好ましくは50〜400℃、より好ましくは80〜350℃、特に好ましくは100〜350℃の範囲である。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。ここで、熱アニール温度とは、ホットプレート表面の実測温度を表すが、殆どホットプレート表面の実測温度=基板温度となっていることから、基板温度と考えてよい。
【0083】
(a−3)熱アニール温度までの昇温速度および熱アニール温度からの降温速度
熱アニール温度までの昇温速度としては、特に制限されるものではなく、上記したように、熱アニール温度までの昇温速度を設けることなく、予め所定の熱アニール温度に加熱されたホットプレート上に、有機溶媒に接触後のシリコン酸化膜形成基板を挿入・載置して熱アニール処理を行い、所定の熱アニール時間経過後、熱アニール温度からの降温速度を設けることなく、直ちにシリコン酸化膜形成基板をホットプレート上から取り外してもよい。これは、本発明の熱アニール処理が低温で行えるため、シリコン酸化膜形成基板に加わる熱ストレスが小さく、昇温及び降温速度を設けなくとも、シリコン酸化膜形成基板へのダメージがないためである。
【0084】
但し、昇温速度を設ける場合、上記熱アニール温度までの昇温速度は、10〜90℃/minの範囲である。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。
【0085】
また、降温速度を設ける場合、上記熱アニール時間経過後の降温速度は、10〜90℃/minの範囲である。但し、本発明では上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れていても本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、本発明の技術範囲に含まれることは言うもでもない。
【0086】
(a−4)熱アニール時間
基板上に形成されたシリコン酸化膜に対して加熱する熱アニール処理の時間(熱アニール時間)としては、通常0.1〜500分間、好ましくは1〜500分間、より好ましくは1〜120分間、特に好ましくは1分〜60分間の範囲である。上記範囲であれば、熱アニールの所期の目的を達成することができる。
【0087】
(a−5)熱アニール処理時の雰囲気
熱アニール処理時の雰囲気及び圧力としては、大気下(大気雰囲気下で加圧も減圧していない状態)であればよいが、熱アニール温度に加熱・調節した不活性ガス、例えば、窒素(N)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の雰囲気下(加圧も減圧していない状態)でおこなってもよい。但し、コスト的な(経済性の)観点から安価に行える大気下が望ましい。
【0088】
(b)熱アニール処理時の加熱手段
熱アニール処理時の加熱手段としては、上記したように、低温域での熱アニール処理に適したホットプレート等の加熱手段を用いてもよいし、熱アニール温度に調節した雰囲気ガス(大気ガス)を加熱手段として用いてもよいなど、特に制限されるものでではない。
【0089】
(b−1)熱アニール処理装置
熱アニール処理装置としては、上記したように、大気開放された状態に設置された、低温域での熱アニール処理に適したホットプレート等の加熱装置を用いることができる。この他にも、高温域での熱アニール処理に一般に用いられているファーネスアニール炉のうち、炉内を大気ガス雰囲気に設定でき、更に当該大気ガスを加熱手段として低温設定可能なものを熱アニール処理装置として用いてもよい。但し、本発明はこれらに制限されるものではなく、加熱した熱アニール温度に加熱可能な加熱炉(装置)であれば、利用可能である。
(3)上記(1)(2)の工程の実施回数
本発明では、上記(1)の接触工程と(2)の熱アニール処理工程を1回実施すれば、所望の効果を得ることができるが、上記(1)(2)の工程を複数回繰り返して実施してもよい。好ましくは、工程回数が増えても膜質に変化がなく、1回のエタノール処理でエタノールの効果によって脱水できるOH基は十分に脱水反応されていることから、生産コストの観点から(詳しくは、実施例4の図6参照)、1回実施するのが望ましい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0091】
実施例1
シリコン酸化膜は、熱アニール処理することによって膜質が向上することが知られている。本実施例1では、その効果をさらに上げるために前段階として有機溶媒の1種であるエタノールにシリコン酸化膜を浸漬することで接触させた。以下、実験方法につき詳しく説明する。
【0092】
(1)シリコン酸化膜の形成
図1に示すホットプレート法の装置1を用いて、基板2上にホットプレート法という簡便な方法でシリコン酸化膜を形成した。
【0093】
まず、n型(111)のシリコン基板3に有機ケイ素ポリマーの1種であるジメチルシリコーンオイル(25℃で粘性10mm/s)を0.3mL(数滴分)垂らし、スピンコータ(図示せず)で5000rpm、20secスピンコートした。
【0094】
その後、図1に示すホットプレート法の装置1を用いて、250℃に加熱したホットプレート2上に上記有機ケイ素ポリマー(ジメチルシリコーンオイル)を塗布したシリコン基板3を挿入(載置)し、オゾンを散布する(オゾン処理する)ことで酸化反応させた。ここで、上記オゾン散布(オゾン処理)によるシリコン酸化膜10を形成は、図1に示すように、酸素ガス供給部(図示せず)から配管4を通じて流速1.0L/minのOガスと、窒素ガス供給部(図示せず)から配管5を通じて流速15mL/minのNガスとを共同配管6内で混合した状態で、オゾナイザー7に供給し、該オゾナイザー7内で発生させたオゾン(O)ガス(オゾン濃度16%:O:0.2MPa、)を、基板3の上方に配置された配管8を通じて先端の噴射ノズル9(=基板3の上方)から、有機ケイ素ポリマー(ジメチルシリコーンオイル)を塗布した基板3表面に15分間、散布する(オゾン処理する)ことで酸化反応させ、基板3上に厚さ200nmのシリコン酸化膜10を形成した。ここで、基板3表面と先端ノズル9との間隔は1mmに設定した。
【0095】
(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程
その後、上記(1)のホットプレート法によって作製したシリコン酸化膜10が形成された基板3を、大気下で、有機溶媒として常温(25℃)のエタノールが入れられた容器内に15分間浸漬する形態でシリコン酸化膜10とエタノール(有機溶媒)とを接触させた。その後、エタノールが入れられた容器からシリコン酸化膜10が形成された基板3を取り出した。
【0096】
(3)加熱する熱アニール処理を加える工程
上記(2)で得られたシリコン酸化膜10が形成された基板3を、250℃に加熱されたホットプレート上に挿入・載置し、大気下で30分間、加熱する熱アニール処理を加えた。熱アニール処理を加えて作製したシリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)の該シリコン酸化膜10は、フーリエ変換赤外吸収分光法(Fourier Transform Infrared (FT−IR) Spectroscopy)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図2に「エタノール浸漬・熱アニール処理」として実線で示す。
【0097】
比較例1
実施例1で「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、「(1)シリコン酸化膜の形成」と「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」を行うことで、シリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)を得た。上記「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」を実施した後のサンプルのシリコン酸化膜10は、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図2に「熱アニール処理」として長い破線で示す。
【0098】
比較例2
実施例1で「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」と「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、「(1)シリコン酸化膜の形成」を行うことで、シリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)を得た。上記「(1)シリコン酸化膜の薄膜の形成」で得られたサンプルのシリコン酸化膜10は、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図2に「熱アニール処理なし」として短い破線で示す。
【0099】
<図2からの考察>
図2のFTIR測定結果から、熱アニール処理なしの比較例2のサンプルに比べて、比較例1のサンプルのように熱アニール処理をすることによって、OH基は減少するが、実施例1のサンプルのようにエタノールに接触(=浸漬)させることによってさらに熱アニール処理によるOH基の減少量が増加することが分かった。このことから従来の高温製法に比して低温(実施例では低温ホットプレート法を使用)で形成したシリコン酸化膜をエタノールに接触(=浸漬)させた後に熱アニール処理を行うことでOH基の減少量が大幅に改善されることが分かった。
【0100】
実施例2
本実施例2では、実施例1の「(1)シリコン酸化膜の形成」のオゾン散布(オゾン処理)の際のホットプレート2の加熱温度をそれぞれ150℃、250℃、350℃に変化させ、エタノールに接触(=浸漬)させた後の熱アニール処理の温度をオゾン散布(オゾン処理)の際のホットプレート2の加熱温度と同温に変化させた。
【0101】
詳しくは、実施例1の「(1)シリコン酸化膜の形成」のオゾン散布(オゾン処理)の際のホットプレート2の加熱温度をそれぞれ150℃、250℃、350℃に変化させ、「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」の熱アニール処理の温度(=加熱されたホットプレートの温度)をオゾン散布(オゾン処理)の際のホットプレート2の加熱温度と同温になるように変化させた以外は、実施例1と同様にして、シリコン酸化膜10が形成された基板3(3サンプル)をそれぞれ得た。得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図3、図4に示す。
【0102】
比較例3
本比較例3では、実施例2において、「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして、シリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)をそれぞれ得た。得られたサンプルのシリコン酸化膜10を、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図4に示す。図3は、実施例2で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。図4は、実施例2、比較例3で得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果から算出した「Si−OH/Si−Oピーク比」を表した図面である。
【0103】
<図3、4からの考察>
図3から分かるように熱アニール処理の温度によって膜質の向上が異なることが分かる。また、図4から熱アニール処理の温度が低温であるほどエタノールに接触(=浸漬)させる効果が大きくなることが分かる。さらに、350℃以上ではほぼ同じになることが分かった。
【0104】
実施例3
本実施例3では、実施例1の「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」のエタノールに接触(=浸漬)させる時間による膜質の変化を調べた。
【0105】
詳しくは、実施例1の「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」のエタノールが入れられた容器内に接触(=浸漬)させる時間をそれぞれ1分間、5分間、15分間に変化させた以外は、実施例1と同様にして、シリコン酸化膜10が形成された基板3(3サンプル)をそれぞれ得た。得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図5に示す。
【0106】
<図5からの考察>
図5から5分間エタノールに接触(=浸漬)させることでOH基の減少量が最大になり、それ以上では一定になることが分かった。このことから、膜中に取り込まれるエタノール量が一定であることや膜中に取り込まれるのに一定の時間を要することが分かる。
【0107】
実施例4
本実施例4では、実施例1と同様にオゾン処理して作成したシリコン酸化膜をエタノールに5分間接触(=浸漬)させた後に30分間、熱アニール処理を行った。このエタノールとの接触(=浸漬)から熱アニール処理の工程の回数を1回、2回、3回と増やしたときの膜質の変化を調べた。
【0108】
詳しくは、実施例1の「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」のエタノールが入れられた容器内に接触(=浸漬)させる時間を5分間とした以外は、実施例1と同様にして「(1)シリコン酸化膜の形成」から「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」までを行った。さらに、この「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」から「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」の工程の回数を1回、2回、3回と増やした(変化させた)以外は、実施例1と同様にしてシリコン酸化膜10が形成された基板3(3サンプル)をそれぞれ得た。得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図6に示す。
【0109】
<図6からの考察>
図6から工程回数が増えても膜質に変化がないことが分かる。このことから、1回のエタノール処理でエタノールの効果によって脱水できるOH基は十分に脱水反応されていることが分かる。
【0110】
実施例5及び比較例4
実施例5及び比較例4では、溶液(各有機溶媒(実施例5)と水(比較例4))のによる膜質の変化を調べた。
【0111】
詳しくは、実施例1の「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」の有機溶媒としてエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール(いずれも実施例5)が、更に有機溶媒に代えて水(比較例4)が、それぞれ入れられた容器内に5分間接触(=浸漬)させた以外は、実施例1と同様にしてシリコン酸化膜10が形成された基板3(6サンプル)をそれぞれ得た。得られた各サンプルのシリコン酸化膜10をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図7(a)、(b)に示す。また、本実施例5及び比較例4で使用した各有機溶媒及び水の性質を下記表1に示す。図7(a)は、有機溶媒としてエタノール、メタノール及びイソプロパノールを用いた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。図7(b)は、有機溶媒としてエタノール、アセトン及びエチレングリコールと有機溶媒に代えて水を用いた各サンプルのシリコン酸化膜10をFT−IRで測定した結果を表した図面である。
【0112】
【表1】

【0113】
<図7からの考察>
図7(a)(b)から水(HO)以外ではOH基の減少量がほぼ同じであることが分かる。特に表1に示すそれぞれの化学式(示性式)から図7(a)の各有機溶媒では炭素の数や分子数、図7(b)の各有機溶媒では沸点、官能基の変化に依存しないことが分かる。このことからシリコン酸化膜に接触(=浸漬)させる有機溶媒の分子数やOH基量、沸点などによっては変化がないことが分かった。また、アセトンで効果があることからエタノールのOH基が前駆体のOH基と脱水反応してOH基が減少したわけではないことが分かった。
【0114】
実施例6及び比較例5〜6
実施例6及び比較例5〜6では、上記実験結果からエタノールに接触(=浸漬)させることによる効果の比較を行うと共に、その現象の考察を行った。
【0115】
詳しくは、実施例6では、実施例1と同様にしてシリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)を得た。比較例5では、実施例1の「(2)有機溶媒に接触(=浸漬)させる工程」を実施しせず、更に「(3)加熱する熱アニール処理を加える工程」の熱アニール処理の温度(=加熱されたホットプレートの温度)を400℃に変化させた以外は、実施例1と同様にしてシリコン酸化膜10が形成された基板3(サンプル)を得た。比較例6では、n型(111)のシリコン基板3を900℃の熱酸化(酸素ガスとシリコン基板3とを900℃の高温で反応させる熱酸化の方法、即ち、シリコンを空気中900℃の高温で熱酸化する方法)で形成してシリコン酸化膜が形成された基板3(サンプル)を得た。実施例6及び比較例5〜6で得られた各サンプルのシリコン酸化膜をフーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)を用いて化学的結合状態を評価した。結果を図8に示す。
【0116】
<図8からの考察>
図8から低温の250℃でエタノールに接触(=浸漬)させた実施例6のサンプルにおいて、400℃で熱アニール処理したサンプル(比較例5)とはほぼ同等の膜質を得ることができた。但し、900℃の熱酸化で形成したシリコン酸化膜のサンプル(比較例6)と比較するとまだOH基が残っていることが分かる。しかしながら、実施例6のサンプルが、TFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜として利用されている比較例5の高温熱アニール処理した比較例5のサンプルと同等の膜質を得ることができたことから、本発明でもTFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜として利用可能であることが分かる。また、LSI等の層間絶縁膜としての応用も可能であることが分かる。
【0117】
以上の実施例1〜6及び比較例1〜6の実験結果から低温(実施例では低温ホットプレート法を使用)で形成したシリコン酸化膜は、有機溶媒に接触(=浸漬)させてから熱アニール処理を行うことでOH基を大幅に低減することができることが分かった。また有機溶媒に接触(=浸漬)させる時間は5分以上で熱アニール温度が高いほどOH基が減少することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、TFTやMOSなどの電子デバイスのゲート絶縁膜として利用される。また、LSI等の層間絶縁膜としての応用も可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 ホットプレート法の装置、
2 ホットプレート、
3 基板、
4 Oガス供給用の配管、
5 不活性ガス供給用の配管、
6 共同配管、
7 オゾナイザー、
8 オゾン供給用の配管、
9 先端噴射ノズル、
10 シリコン酸化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたシリコン酸化膜を有機溶媒に接触させる工程と、
その後、前記シリコン酸化膜を加熱する熱アニール処理を加える工程と、
を有することを特徴とするシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項2】
前記有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、フッ素系有機溶剤、フッ素化アルコール系有機溶剤、エステル類、エーテル類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素の混合物、クレゾール、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、第4級アンモニウムヒドロキシド、CFC113と炭化水素との混合有機溶媒、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンとメタノールとの混合有機溶媒、4−(または3−)メトキシ−1−ブタノールと炭酸プロピレンからなる混合有機溶媒よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項3】
前記シリコン酸化膜を液体状態の有機溶媒に接触させる温度が、該有機溶媒が液体である温度であり、接触時間が1〜60分間である請求項1または2に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項4】
前記シリコン酸化膜を気体状態の有機溶媒に接触させる温度が、該有機溶媒が気体である温度であり、接触時間が1〜60分間である請求項1または2に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項5】
前記熱アニール処理が、前記シリコン酸化膜を、大気下、基板の耐熱温度以下の温度で1〜500分間、加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項6】
前記シリコン酸化膜が、電子デバイスのゲート絶縁膜または層間絶縁膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。
【請求項7】
前記基板が、前記熱アニール処理時の加熱温度に対し耐熱性を有するシリコン基板である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコン酸化膜からのOH基除去法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−15379(P2012−15379A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151383(P2010−151383)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】