シリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法
プラズマ処理装置1のチャンバ2内に、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを供給する。マイクロ波をチャンバ2内に供給し、マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する。希ガスの分圧比は、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)は、3以上11以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造過程のトランジスタ素子分離やあるいは配線間の層間絶縁膜にシリコン酸化膜や窒化膜で代表されるような絶縁膜を形成する方法として、一般に750℃以上の高温熱処理が許容される工程においては、高品位絶縁膜の形成には熱CVD法を代表とする方法がある。また、450℃以上750℃以下の高温熱処理が許容される工程においては、常圧CVD法にて形成された熱CVD膜を約420℃から500℃程度の温度で成膜しておいて、その後にその膜質の改質の為に、750℃程度の熱処理を施すことにより絶縁膜の改質を実施するのが一般的である。
【0003】
近年、大規模集積回路LSIやCCDの素子をより高速に動作させ、かつ、低消費電力化を進めるために製造プロセスの微細化を進め、かつ、前述のトランジスタ素子分離やあるいは配線間の層間絶縁膜にシリコン酸化膜や窒化膜で代表されるような絶縁膜をより高品位にする事(つまり、耐圧やリーク電流特性で一般的に示される電気特性をより優れたものにする事)への要求が強くなってきている。一般にトランジスタのゲート配線材料に融点が低い(450℃以下の)メタル(金属材料)を用いたLSIやCMOSイメージセンサー等の半導体素子へのゲート形成工程以降のプロセス(BEOL)については、前述のプラズマやオゾン等による活性酸素のアシストを有する低温CVD法による成膜方法で形成されたCVD酸化膜やCVD窒化膜では、熱CVD法を代表とするHTOCVD膜よりも膜質(ここでは電気的な特性)が劣ることが知られている。また、前述のプラズマCVD法で形成したプラズマCVD膜は、成膜中のプラズマ処理に起因するダメージにより、せっかく形成されたトランジスタの特性が後半工程(BEOL)プロセスにより劣化することが知られている。
【0004】
特許文献1は、酸素欠損の少ない膜を安価かつ容易に形成できる成膜方法を提供している。混合ガスは、有機金属化合物ガス、酸化性ガス、及び希ガスを含む。混合ガス中の希ガスの分圧の割合Prを85%≦Pr<100%とする。混合ガスをプラズマ処理容器内に導入する。プラズマ処理容器内にプラズマを発生させて有機金属ガス及び酸化性ガスをプラズマにて分解させ、被処理基板に金属酸化物膜を形成する技術である。
【0005】
特許文献2は、被処理基板やこの被処理基板に形成されるシリコン系酸化膜に与えるプラズマ損傷を抑制しつつ、被処理基板にシリコン系酸化膜を均一に形成することができる成膜方法を提供している。一分子中に少なくともシリコン原子、炭素原子、及び酸素原子を有する有機シリコン化合物ガスと、酸化性ガスと、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうち少なくとも1種以上を有する希ガスとを含む混合ガスを、希ガスの分圧の割合Prが15%≦Pr≦85%となるように、プラズマ処理容器内に供給する。プラズマ処理容器内にプラズマを発生させて、有機シリコン化合物ガス及び酸化性ガスをプラズマにて分解させ、被処理基板に酸化シリコン膜を形成する技術である。なお、プラズマ源として並行平板型のプラズマ源を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−336019号公報
【特許文献2】特開2005−252012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、希ガスの量を多くし、プラズマ中の電子密度を高めることで良好な膜質となることが記載されている。電子密度を高めるために、分子量の小さい希ガスより、分子量の大きい希ガスであるキセノン(Xe)が最も好ましいとあるが、使用量やコストを考えると、量産には不向きであり、好ましくない。特許文献2においては、シリコン系酸化膜を均一に形成しているが、膜質の成分については考慮されていない。
【0008】
450℃以下で行われるシリコン酸化膜(SiO)の低温プラズマCVD膜形成技術においては、成膜条件の最適化やプラズマからのアシスト方法、原料ガスの工夫がなされてきた。しかし、成膜されたシリコン酸化膜(As Deposition)の膜質は800℃以上で成膜された熱CVD膜(HTOと称されるSiH4系SiO−CVD膜)の膜質より電気的な特性(例えば、耐圧やリーク特性など)が明らかに劣る。またその原因の一つとして、低温プラズマCVD膜形成技術では、シリコン酸化膜の膜中にFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)分析法においてSi−OH、Si−HおよびSiO−CH3等の不純物成分の混入が、また膜中に存在する水分量を検出するTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析において膜中に水素や水分の取り込みまたは有機系不純物の取り込みが確認されていた。
【0009】
しかし、700℃以上の高温下で形成されたCVD膜(例えばHTO膜)は、金属配線を備えた半導体装置への成膜は行えない。近年脚光を浴びている高品質な膜を低温で形成する手法として原子層堆積法(ALD)が代替技術としてあり得るが、成膜速度が非常に遅く、半導体製造工程への適用はスループットの低下につながり、量産を考慮したとき、好ましくない。また、従来の並行平板等のプラズマ源を用いたプラズマCVD成膜においては、成膜中に生じるプラズマチャージングダメージがLSI素子特性の劣化を促進させるという問題があった。また、このプラズマ源を用いた場合、生成したプラズマの電子温度が被処理基板近傍でも数eV〜10数eVと高いため、基板に過剰なダメージを与え、さらにチャンバー内壁をスパッタし、アルミニウム等の金属元素を膜中に取り込んでしまい、欠陥や不純物の少ない膜を成膜することが困難であった。
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属配線を備える半導体装置であっても、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することができるシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法は、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、Si−O−R(アルコキシド基)を含むシリコン化合物ガスであることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスであることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、シリコン原子を有するシラン(水素化ケイ素)ガス、および/または、シラン化合物を含有するシリコン化合物ガスであることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記酸化性ガスは、酸素ガスを含むことを特徴とする。
【0016】
さらに好ましくは、前記酸化性ガスは、オゾンガスを含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記プラズマはスロットアンテナから放射されたマイクロ波により発生したプラズマであることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の20%以上80%以下の割合であることを特徴とする。
【0019】
さらに好ましくは、前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法は、
TEOS(テトラエトキシシラン)ガス、酸素ガス、およびAr(アルゴン)ガスを含み、前記Arガスの分圧比が、前記TEOSガスと前記酸素ガスと前記Arガスを併せたトータルガス圧の20%以上の割合であって、前記TEOSガスと前記酸素ガスの有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にスロットを介してマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0022】
好ましくは、Arガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、前記有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記被処理基板の温度を450℃以下とすることを特徴とする。
【0025】
さらに好ましくは、前記被処理基板の温度を360℃以上390℃以下とすることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、前記プラズマ処理容器内の圧力を、6.67Pa以上133.32Pa以下とすることを特徴とする。
【0027】
本発明の第3の観点に係るシリコン酸化膜は、
本発明の第1または第2の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法で形成することを特徴とする。
【0028】
本発明の第4の観点に係るシリコン酸化膜は、
金属配線を備える被処理基板上に、スロットを介し供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて形成された薄膜であって、
前記薄膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする。
【0029】
本発明の第5の観点に係るシリコン酸化膜は、
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜であって、
P型基板上に形成したEOT(等価酸化膜厚)が7nm±1nmの厚さのシリコン酸化膜に負電位を与え、7MV/cmの大きさの電界を印加して測定したときのリーク電流密度が、1.0×10−7A/cm2以下であることを特徴とする。
【0030】
好ましくは、前記シリコン酸化膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする。
【0031】
本発明の第6の観点に係るシリコン酸化膜は、
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜(SixOy)であって、
組成比(x/y)の膜厚方向の変化量が、±3%以下であることを特徴とする。
【0032】
好ましくは、前記組成比(x/y)の膜厚方向の変化量が、±1%以下であることを特徴とする。
【0033】
本発明の第7の観点に係る半導体装置は、
本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を備えることを特徴とする。
【0034】
本発明の第8の観点に係る半導体装置は、
被処理基板上に450℃以上の熱処理で組成変形を伴うような低融点メタルを含む金属材料を含み、本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を備えることを特徴とする。
【0035】
好ましくは、前記金属材料は、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第9の観点に係る半導体装置の製造方法は、
本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を成膜する工程を含むことを特徴とする。
【0037】
また、この発明の他の局面においては、シリコン化合物を用いた低温での成膜を、素子分離領域(STI:Shallow Trench Isolation)におけるライナー膜の成膜に適用可能である。ここで、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む。
【0038】
好ましくは、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。
【0039】
また、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。
【0040】
さらに好ましい一実施形態として、シリコン化合物ガスは、TEOSガスを含む。
【0041】
さらに好ましい一実施形態として、酸化性ガスは、酸素ガスを含む。
【0042】
さらに好ましい一実施形態として、希ガスは、アルゴンガスを含む。
【0043】
また、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む。
【0044】
好ましくは、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。
【0045】
この発明のさらに他の局面において、半導体装置の製造方法は、被処理基板上に素子を形成する工程と、素子を形成した後に、上記したいずれかのライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0046】
本発明のシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)を備える半導体装置であっても、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【図2】スロット板の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、希ガスの分圧比を変化させたときのTDSの結果である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、酸化性ガスとシリコン化合物ガスの流量比を変化させたときのTDSの結果である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、エッチングレートで規格化した結果である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、処理圧力を変化させたときのTDSの結果である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、被処理基板の温度を変化させたときのTDSの結果である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、リーク耐圧特性を示す。
【図9】MOSCAP素子の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、QbdのWeibullプロットしたものである。
【図11A】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、膜質の構成組成比を示す。
【図11B】比較対象である熱CVD法で形成される熱酸化膜の特性を示す図で、膜質の構成組成比を示す。
【図12】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の電気的特徴を示す図で、膜質の組成を示す。
【図13】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。(a)〜(d)は、製造の工程を示す。
【図14】MOS型半導体装置の一部を示す断面図である。
【図15】素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図16】トレンチが形成されたEEPROMにおける素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図17】ライナー膜が形成されたEEPROMにおける素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図18】図15のXVIIIで示すトレンチの角部の電子顕微鏡写真である。
【図19】フラッシュメモリの一部を模式的に示す断面図である。
【図20】素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。プラズマ処理装置は、RLSAプラズマを用いるプラズマ処理装置であって、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する際に用いられる。図2は、プラズマ処理装置の一部分であるスロット板の一例を示す平面図である。
【0049】
プラズマ処理装置1は、チャンバ2、天板(誘電体窓)3、アンテナ4、導波管5、マイクロ波源6、冷却ジャケット7、基板保持台8、真空ポンプ9、を備える。ガス供給源(図示せず)から壁用ガス通路10、または中央ガス通路11を介して、チャンバ2内へガスを供給することができる。
【0050】
天板3の上にアンテナ4は設けられ、アンテナ4の上に、温調媒体を流通させる流路を備えた冷却ジャケット7が備えられる。アンテナ4はスロット板4a、遅波板(誘電体板)4bとを備える。遅波板4bは、例えばSiO2やAl2O3などの誘電体材料から構成され、冷却ジャケット7とスロット板4aとの間に配置され、マイクロ波の波長を圧縮する。
【0051】
導波管5から給電されたマイクロ波は、アンテナ4の遅波板4b内で定在波が形成される。また、遅波板4b内の波長は、導波管5内での波長に比べて、誘電率の比(導波管内雰囲気の誘電率/誘電体の誘電率)の平方根分に短縮される。例えば2.45GHzのマイクロ波の場合、導波管内での波長は約12.2cmであるのに対し、誘電体(アルミナ)内での波長は約4cm程度となる。
【0052】
図2に示すスロット板は、RLSA(ラジアルラインスロットアンテナ)の一例を示す。スロット板4aは、銅板に金メッキ等が施され、マイクロ波を通過させるための多数のスロット41、42が形成されている。スロット板4aを遅波板4bに隣接して備えることでプラズマを広げることができる。マイクロ波はスロット41、42から下方向に放射され径方向に伝播し、天板3内で反射が繰り返され、干渉して強め合い、定在波が形成される。図示してあるように、スロット41、42は同心円状に、かつ互いに直交するように形成されている。プラズマはスロット41、42の長さ方向に垂直に広がり、天板3直下にプラズマが発生する。励起されたプラズマの電子温度は、誘電体窓である天板3直下で最も高く、天板3から離れるにつれ、低下する。天板3直下は数eV−10数eVとなり、プラズマ励起領域と呼ばれる。被処理基板W付近では、マイクロ波のパワー等にもよるが、1.5eV程度以下である。これは、拡散プラズマ領域と呼ばれる。
【0053】
また、RLSA(ラジアルラインスロットアンテナ)によって生成されるプラズマは、高密度であることが特長である。天板3直下のプラズマ励起領域で1013cm−3程度あり、拡散プラズマ領域の被処理基板W近傍でも、1011cm−3以上と非常に高密度である。本構成によると、高い電子温度の領域でガスが十分に解離され、低電子温度の拡散プラズマ領域で成膜されるため、被処理基板Wにダメージの少ない高品質の成膜が可能となるものと考えられる。
【0054】
導波管5は、アンテナ4に接続されている。導波管5は外側導体5aと内側導体5bからなる軸管の部分と、軸管の上部にある矩形導波部5cとを備える。アンテナ4のスロット板4aは内側導体5bに結合され、その内側導体5bの中心を中央ガス通路11は通る。ガス供給源からガスを導入し、天板3の中央部にあるガス噴射口12からチャンバ2内に、ガスを供給することができる。
【0055】
以下、シリコン酸化膜の成膜方法について、プラズマ処理装置1を用いて説明する。被処理基板Wを基板保持台8に載置する。プラズマを形成する空間Sの、基板保持台8と天板3の距離Zを135mmとし、マイクロ波パワーを3.5kWとする。被処理基板Wの大きさは、直径300mmである。
【0056】
図示していないが、基板保持台8は、ヒータやランプアニールなどの加熱手段を備えており、被処理基板Wを所定の温度に保つことができ、成膜条件により、温度を設定する。例えば、被処理基板Wに金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)が備えられたものである場合、450℃以下の範囲で温度設定しておく。
【0057】
プラズマ処理装置1のチャンバ2は、天板3により塞がれ、真空ポンプ9でチャンバ2の内部を真空(減圧)状態にすることが可能に構成される。例えばチャンバ2内の圧力を、パーティクルが発生しにくい圧力である133.32Pa以下の範囲内の所定の圧力に設定しておく。
【0058】
天板3上には、アンテナ4が結合されている。アンテナ4には、導波管5が接続されている。より詳しくは、スロット板4aは内側導体5bに結合される。遅波板4bは、冷却ジャケット7とスロット板4aとの間に配置され、マイクロ波の波長を圧縮する。
【0059】
2.45GHzのマイクロ波源6から導波管5を通してマイクロ波を供給する。マイクロ波は遅波板4bを介してアンテナ4の径方向に伝播し、スロット板4aのスロットより放射される。マイクロ波は天板3を伝播し、天板3全体に広がり、チャンバ2内に供給される。
【0060】
ガス供給源から、壁用ガス通路10と中央ガス通路11を介して、チャンバ2内にガスが供給される。ガスは、天板3側方を囲むように備えられた壁用ガス通路10から、チャンバ2内に向けて均等に噴射される。また、天板3の直下の中心部分にガス噴射口12からガスが噴射されることで、天板3全体の直下部分に、均等にガスが供給される。このとき供給されるガスは、希ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスと、酸化性ガス、例えば酸素ガスとシリコン化合物ガスが含まれる。シリコン化合物ガスは、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)ガスである。これらのガスの分圧比、流量比等を所定の条件で供給する。
【0061】
プラズマ励起用の希ガスを励起させプラズマ生成し、シリコン化合物ガスを解離し、ラジカル化する。基板保持台8に設置した被処理基板Wにシリコン酸化膜を堆積させ、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)処理を施すことができる。本実施の形態の例では、マイクロ波を供給した後にガスを供給したが、ガスの供給とマイクロ波の供給は、処理条件に応じ、順序が逆であってもよい。被処理基板Wをプラズマ処理装置(チャンバ2)内へ搬入しプラズマ処理後に搬出するという一連の流れを繰り返し、所定枚数の基板に対して、シリコン酸化膜の形成を行う。
【0062】
成膜速度を5〜600nm/minの範囲で任意に調節することで、薄膜10nm以下から厚膜1μm以上まで自由に成膜の膜厚を制御するが事が可能である。プラズマ処理を行う時間、または原料ガスの流量を変化させることで、形成されるCVD膜の厚みを制御することができる。
【0063】
図3には、希ガス(Ar)の分圧比を変化させたときのTDS(Thermal Disorption Spectroscopy)の結果を示した。ここで、Ar分圧比は可変、処理圧力は50.5Pa、ステージ温度は390℃とした。図3の縦軸は、熱酸化膜のTDS値で規格化した値を示す。図中のPE_TEOSは、従来のプラズマCVD法により成膜されたものであり、比較のために示したものである。
【0064】
これによれば、7.5%の分圧のとき、大きなTDS値を示す。少なくとも15%以上75%まではTDS値は小さくなり、膜中に水分、すなわち−Hや−OH基を実質的に含まないことがわかる。
【0065】
ここで、実用に耐える膜の基準としては、熱酸化膜のTDS値を基準として規格化した値でみて、3程度であればよく、その基準値から見積もったとき、希ガスと酸化性ガスとシリコン化合物ガスを併せたトータルガス圧に対して、希ガスの分圧比を10%以上の範囲とするとよいことがわかる。さらに好ましくは、希ガスの分圧比を40%以上75%以下の割合にするとよい。希ガスの分圧比を40%以上とすると、より良好な状態で成膜を行いやすくなる。希ガスは高価なガスであり、成膜の良好さとコストとのバランスを考えながら、希ガスの分圧比を設定する。
【0066】
図4に酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比を種々変化させて成膜したときのTDSの結果を示した。ここで、Ar分圧比は、44%、処理圧力は、50.5Pa、基板処理温度は、390℃とした。
【0067】
これによれば、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が1程度のときは、TDS値は大きな値を示す。一方、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が4〜9程度のとき、TDS値は低い値となり、膜中に水分、すなわち−Hや−OH基を実質的に含まないことがわかる。酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であれば、実用に十分耐えうる膜を成膜することが可能である。
【0068】
図5に、RLSAプラズマによって成膜した酸化シリコン膜の5%フッ酸(HF)に対するエッチングレートを熱酸化膜に対する5%フッ酸のエッチングレートで規格化した結果を示した。高温でのCVD酸化膜の5%フッ酸に対するエッチングレートが、熱酸化膜のエッチングレートの2倍程度であるから、十分余裕をみて、熱酸化膜のエッチングレートの1.7程度あれば、十分に良好な膜であるということができる。そこで、この1.7を基準として、見積もった好適な酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比は、3.6以上10.8以下である。成膜のしやすさや、品質などを考えると、さらに好適には、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比は4.0以上6.0以下であることが望ましい。
【0069】
図6に、Ar分圧比を、44%、酸素/TEOS流量比を5.5、基板処理温度を、390℃として、処理圧力を種々変化させたときのTDSの結果を示した。成膜を行ったすべての処理圧力帯に対し、TDS値は良好な値を示した。
【0070】
図7にAr分圧比を44%及び7.5%、酸素/TEOS流量比を5.5、処理圧力を50.5Paとして、被処理基板の温度を種々変化させたときのTDS分析の結果を示す。図中のPE_TEOSは、従来のプラズマCVD法により成膜されたものであり、比較のために示したものである。Ar分圧比を7.5%として被処理基板の温度(基板保持台)の温度を360℃、390℃とした場合には、TDSは大きな値となる。一方、Ar分圧比を44%として、被処理基板の温度(基板保持台)の温度を360℃、390℃とした場合には、良好な低いTDS値を示す。以上から、Arの分圧比が適切な値であれば、被処理基板温度は広く設定できることがわかる。TEOSを用いた成膜においては、Ar分圧比を固定したとき、成膜されたシリコン酸化膜のTDSには大きな差はないが、被処理基板温度を高くするほうがTDS値は小さく良好な膜を得ることができる傾向にあることがわかる。
【0071】
希ガスは、アルゴン(Ar)ガスの他、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス等であってもよい。また、酸化性ガスは、酸素の他に、酸素元素を含むガスとしてオゾンガスや一酸化炭素ガス等を用いてもよい。このときチャンバ内に供給される酸素原子の個数がSi原子数との関係で所定値となるように決定する。有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)は以下に示される。
【0072】
酸化性ガスの有効流量は、以下の式(式1)で与えられる。
【0073】
(酸化性ガスの流量)×(酸化性ガス1分子中に含まれる酸素原子の数)/2…(式1)
シリコン化合物ガス中の有効流量は、以下の式(式2)で与えられる。
【0074】
(シリコン化合物ガスの流量)×(シリコン化合物ガス1分子中に含まれるSi原子の数)…(式2)
有効流量比は、(式1)を(式2)で割った式(式3)で与えられる。
【0075】
((酸化性ガスの流量)×(酸化性ガス1分子中に含まれる酸素原子の数)/2)/((シリコン化合物ガスの流量)×(シリコン化合物ガス1分子中に含まれるSi原子の数))…(式3)
例えばオゾンガスを酸化性ガスとして用いる場合、シリコン化合物の流量が一定であるとき、所定の有効流量比を選るには、オゾンガスの有効流量は酸素ガスの有効流量の1.5倍であるから、酸素ガスを用いる場合に比べて、3分の2倍の流量が適当である。
【0076】
(実施例)
本実施の形態1の成膜方法で形成したシリコン酸化膜の特性を以下のようにして評価した。
【0077】
図8は、EOT(Equivalent Oxide Thickness;等価酸化膜厚)換算で7nm±1nmの膜厚領域において、印加する電界の大きさを変化させた際の電流特性(J)を測定したものである。電界7MV/cm印加した時に膜を流れる電流密度を測定しており、被処理基板WのタイプはP型半導体を用いている。
【0078】
図中のR_TEOSは、本発明のシリコン酸化膜を示しており、WVG膜を、比較対象に示した。電気特性測定用の素子は、電気特性を測定するときに一般的に用いられる、MOSCAPを作成して電流−電圧(I−V)特性を測定した。MOSCAP素子30は図9に示す。
【0079】
MOSCAP素子30は、N型Phosである拡散層31と、ゲート酸化膜32と、P型のシリコン基板33と、から構成される。
【0080】
図8には、ここで測定には、Ar分圧43−75%、圧力50.5Pa、マイクロ波パワーを3.5kWとして形成された、3nm、6nm、8nmの試料を用いた。すべての膜厚の試料においてWVG膜と比較して良好なリーク特性を示すが、7MV/cmの電界を印加した際に6nm、8nmの試料でJ<1.0×10−7A/cm2を示した。
【0081】
図3から図8の結果より、本発明により作成されたシリコン酸化膜は、耐圧やリーク特性に関して、WVG熱酸化膜と同等以上の性能を有していることが分かる。また、7nmよりも薄い領域においても、リークが非常に少ないことも分かる。厚みに関わらずに高いリーク特性を有するので、高い絶縁性が必要とされる、半導体装置に対応することが可能である。本件は、MOS構造における基板をP型かつゲートに印加する電圧を負にすることで得られた評価結果であり、一般に実施される逆の場合、つまり基板をN型かつゲートに印加する電圧を正にすることで得られた評価結果よりも厳しい環境で実施されたことを付け加える。
【0082】
図10にQbd(C/cm2)(CCS;−0.1A/cm2、ゲートサイズ100μm×100μm)の測定結果をWeibullプロットしたものを示した。本発明による酸化膜はR_TEOSである。比較対象として、HTO膜、熱酸化膜、WVG熱酸化膜を記載した。Qbdは、熱酸化膜(Dry−O2法)よりも良く、HTO膜と比べて、2桁近く良いことがわかる。これによっても本発明で形成された膜が、優れたリーク特性を有することが示される。
【0083】
図11には、シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜の組成比をTOF−SIMS法(Time-of-flight secondary ion mass spectrometry;飛行時間型イオン質量分析法)により膜の厚さ方向において調べた結果を記載した。図11aは、本発明のシリコン酸化膜を示しており、図11bは、比較対象である熱CVD法で形成される熱酸化膜を示す。堆積した膜の厚みは、シリコン酸化膜が400nm、熱酸化膜が500nmの場合である。
【0084】
図11aより、RLSAマイクロ波プラズマを用いて成膜されたシリコン酸化膜(SixOy)は、基板側(シリコン基板との界面)から最表面(表面)までシリコンと酸素の組成比(x:y)がほぼ一定(x:y=1:2)であることが分かる。深さ方向においては、膜中のどの部分を比較しても、構成組成比はほとんど変化せず、変化量は3%未満である。深さ方向において、組成比が一定な膜が形成されており、良質な膜であることが分かる。一方、図11bの熱酸化膜では、基板側(界面)ではシリコンが少なく、最表面(表面)に近づくにつれ、シリコンが増加している。そのため、シリコンと酸素の比は深さ方向で異なり、基板側(界面)と最表面(表面)とで、シリコンと酸素の比は最も変化する。
【0085】
さらに、膜質の特徴についてFT−IRにて分析を行った。この結果を図12に示す。
【0086】
図12より、SiOH、SiH、CO、Si−CH3は測定されず、含有率が検出限界以下であった。これは、実質的に当該成分が含まれていないことを示す。このことより、プロセス中の脱ガスによる膜収縮がなく、膜中に残っているメチル基などによるトランジスタ素子への悪影響のおそれがないシリコン酸化膜であることが分かる。
【0087】
LSI製造工程における素子分離形成やゲート形成工程に伴うサイドウォール形成に関しては、特に高品位な絶縁膜(ゲート熱酸化膜を含む)が要求される。ここでの高品位膜の定義は、絶縁膜の絶縁耐圧やリーク電流特性や電気的なストレスによる信頼性特性(Qbd寿命信頼性試験)が優れていることで、その基準は、CVD法で形成された絶縁膜の中では膜質が最高とされている炉型の熱CVD装置で800℃の高温下で成膜したHTO膜(High Temperature Oxide CVD膜)を比較対象とすることが一般的である。より優れたCVD膜を形成する為に、さまざまなプロセス手法による低温CVD膜形成後の膜質改善方法が考案されているが、従来技術ではどのような手法を用いても、結果的には前記HTO膜の膜質を越える450℃以下での低温CVD成膜法は実用化されていない。悪い膜質のCVD膜に後で高温熱処理を施し膜質を改善する手法は、広く用いられているが、この場合は被処理サンプル基板をCVD成膜中は低温に処理できても、その後に熱によるダメージを与えることから意味がない。
【0088】
本発明では、450℃以下の温度でありながら、上記の膜質評価基準において、HTO膜より格段に優れた膜を高速成膜形成できる。その膜質性能は、従来の熱酸化膜と同等以上の性能を有した膜にも及ぶ。そのため、金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)を形成後の被処理基板Wであっても、良質なシリコン酸化膜を形成することが可能である。さらに、イオン注入活性層にもダメージを与えずに済み、不用意な熱拡散を防止することができる。低融点メタル材料が予め下地サンプル基板上にある場合は、更に処理温度を下げ、400℃以下とすることが望ましい。
【0089】
これらシリコン酸化膜の特性を評価した結果より、本発明のシリコン酸化膜の成膜方法によれば、従来の熱酸化膜と同等以上の性能を有した膜を形成することができる。本発明の成膜方法で形成したシリコン酸化膜は、膜質が均質で、不純物がなく、耐圧やリーク特性に優れ、電気的特性もよい。
【0090】
また、シリコン酸化膜を形成するにあたり、被処理基板Wの基板の温度を高温にする必要がなく、比較的低い温度(450℃以下)で処理を行うことができる。そのため、被処理基板Wに、金属配線などが備えられた場合であっても、耐圧やリーク特性に優れるシリコン酸化膜を形成することが可能である。
【0091】
(実施の形態2)
図13は本発明の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。実施の形態1に係るシリコン酸化膜の成膜方法を適用したMOS型半導体装置の製造例について、図面を参照して説明する。図1に示したプラズマ処理装置を使用し、RLSAマイクロ波プラズマを用いて成膜を行う。また、Si基板50は、P型半導体基板である。
【0092】
まず、素子分離領域51を形成したSi基板50を準備する(図13(a))。このとき、Si基板50の主面のトランジスタ形成部52は、Si、SiON、SiO等で形成されている。
【0093】
次いで、実施の形態1のシリコン酸化膜の成膜方法で上述したように、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いて、プラズマCVD法により、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜53を形成する(図13(b))。
【0094】
より詳しくは、シリコン酸化膜の製造に用いるガスは、TEOSガスの他、酸素ガスとアルゴンガスである。プラズマを形成するときのアルゴンガスの分圧比は、希ガスとTEOSガスと酸素ガスを併せたトータルガス圧の40%以上75%以下の割合となるようにしておく。酸素ガス/シリコン化合物ガスの流量比は、4.0以上6.0以下に調整しておく。また、プラズマを発生するプラズマ処理室内の圧力は、6.67Pa以上133.32Pa以下の所定の圧力でプラズマを生成する。
【0095】
その後、常法に従ってゲート絶縁膜53上にゲート電極54を形成する(図13(c))。すなわち、ポリシリコン等のゲート電極材料の膜を例えばCVDにより全面に形成した後、フォトリソグラフィ技術によりパターン化したレジスト膜をマスクとしてプラズマエッチングを行うことによりゲート電極54を形成する。その後、側壁酸化膜55の形成およびイオン注入等による不純物拡散領域56を形成し(図13(d))、MOS型半導体装置を得る。
【0096】
ここでは、Si基板50の主面のトランジスタ形成部52は、Si、SiON、SiO等で形成された状態であるが、銅(Cu)やアルミニウム(Al)などの金属配線が設けてあっても構わない。シリコン酸化膜を形成する際に、450℃以下の温度で成膜を行うことができる。
【0097】
本発明により、金属配線を備える半導体装置であっても、低温条件下で、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を形成することができる。従来よりある熱酸化膜などと比較して、シリコンと酸素の組成比が厚さ方向で略一定で、不純物を含まず、リーク特性などの特性は同等以上である。本発明においては、低温で成膜できるため、金属配線を設けた基板であってもよく、より性能のよい半導体装置とできるだけでなく、その半導体装置の設計プロセスの幅が広がる。
【0098】
実施の形態では、プラズマ処理装置は、処理容器の壁側にガス導入口を備えていたが、天板全体にガス噴射口を備えたシャワープレートの機能を有する天板を用いてもよく、下段にシャワープレートを備えるプラズマ処理装置であってもよい。天板(誘電体窓)の直下全体に均一にプラズマを生成することができ、プラズマ拡散領域で薄膜の堆積を均一に行えるプラズマ処理装置であることが好ましい。プラズマ処理装置に備える天板やアンテナのスロット形状などについても、上述した例は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0099】
なお、実施の形態で説明した成膜にかかる条件、例えば製造時のガスの種類や基板温度、成膜の厚みなどは、その範囲内で、使用する半導体装置に併せて自由に設定が可能である。また、シリコン酸化膜の形成は、ゲート酸化膜やライナーなど、半導体装置の使用部位や目的に合わせて任意に選択が可能である。
【0100】
ここで、素子分離領域(STI)において、シリコン酸化膜の形成をライナーに適用した場合について説明する。図14は、MOS型半導体装置の一部を示す断面図である。なお、図14に示すMOS型半導体装置において、導電層をハッチングで示している。
【0101】
図14を参照して、MOS型半導体装置61には、シリコン基板62上に、素子分離領域63、p型ウェル64a、n型ウェル64b、高濃度n型不純物拡散領域65a、高濃度p型不純物拡散領域65b、n型不純物拡散領域66a、p型不純物拡散領域66b、およびゲート酸化膜67が形成されている。ゲート酸化膜67を間に挟むように形成される高濃度n型不純物拡散領域65aおよび高濃度p型不純物拡散領域65bのいずれか一方は、ドレインとなり、他方はソースとなる。
【0102】
また、ゲート酸化膜67の上には、導電層となるゲート電極68が形成されており、ゲート電極68の側部には、絶縁膜となるゲート側壁部69が形成される。さらに、上記したゲート電極68等が形成されたシリコン基板62の上には、絶縁膜71が形成される。絶縁膜71には、高濃度n型不純物拡散領域65aおよび高濃度p型不純物拡散領域65bに連なるコンタクトホール72が形成され、コンタクトホール72内には穴埋め電極73が形成される。さらにその上に導電層となるメタル配線層74が形成される。さらに、絶縁層となる層間絶縁膜(図示せず)および導電層となるメタル配線層を交互に形成し、最後に外部との接点となるパッド(図示せず)を形成する。このようにMOS型半導体装置61が形成されている。
【0103】
上記した素子分離領域63においては、シリコン基板62の主表面から下方側に凹んだトレンチと呼ばれる溝を形成し、このトレンチを、絶縁性を有する部材で穴埋めするようにして形成される。図15は、素子分離領域63付近を示す拡大断面図である。
【0104】
素子分離領域63の形成工程としては、具体的にはまず、シリコン基板62の主表面62aを酸化してSiO2の膜を形成し、後に行なうCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程に要するSiN膜を、CVDによってその上に形成する。その後、フォトレジストにより塗布、露光、および現像を行ってパターンを形成し、これをマスクとしてSiN、SiO2、Siの順にエッチングを行う。このようにして、所定の箇所においてシリコン基板62の主表面62aから下方側に凹んだ溝状のトレンチ75を形成する。そして、このトレンチ75を、絶縁性を有する部材によって埋める。このようにして素子分離領域63を形成する。
【0105】
この場合、界面、具体的には、シリコン基板62とトレンチ75内に埋め込まれる絶縁物との境界面の絶縁性を高めるために、まず、トレンチ75の表面にライナー膜76aと呼ばれる絶縁性のシリコン酸化物の層を形成する。次に、トレンチ75を埋めるようにして、絶縁性の埋め込み膜76bを埋めこむ。このような埋め込み膜76bは、SOD(Spin On Dielectric)塗布膜や、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)CVDにより埋め込まれる。
【0106】
また、高カバレッジが求められる場合には、埋め込み特性も良好である本発明のライナー膜76aを厚く堆積させてから埋め込み膜76bを成膜してもよいし、ライナー膜76aの成膜と同じ工程を用いて埋め込み膜76bを成膜してもよい。
【0107】
ここで、このようなライナー膜76aについては、絶縁性の高い膜が必要とされる。すなわち、例えば、耐圧やリーク特性などの電気的特性が優れた膜質のものを用いる必要がある。このような膜質を備える酸化膜は、従来、熱酸化法によって形成されるのが一般的である。
【0108】
これを具体的に説明すると、従来一般的に、素子分離領域の形成工程は、トランジスタのゲート酸化膜形成工程よりも前の工程であるため、STI埋め込み工程、すなわち、ライナー膜の形成工程およびライナー膜の形成工程の後に行われるトレンチの埋め込み工程に対して、熱処理温度の制限はない。すなわち、STI埋め込み工程において高温熱処理を用いても、ゲート酸化膜が影響を受けることはない。それどころか、STI埋め込み工程を境に、上記した図14に示すp型ウェル64aおよびn型ウェル64bを形成する必要があり、ランプアニール等によりイオン注入後にイオンを活性化させるため、900℃程度の高温熱処理されるのが通常である。すなわち、通常のLSI(Large Scale Integrated circuit)製造工程においては、STI形成工程の後にゲート酸化膜形成工程が行なわれるため、製造工程における熱処理温度の問題は生じない。
【0109】
しかし、一部のフラッシュEEPROM(Electrically Erasable Program−mable Read−Only Memory)等の製造工程では、ゲート酸化膜形成工程の後に、STI埋め込み工程が行なわれる場合がある。具体的には、フラッシュEEPROMに含まれるフローティングゲートを形成する工程や、フローティングゲートおよびコントロールゲートを形成する工程の後に、STIを形成する工程が行なわれる場合がある。このような場合、製造工程における熱処理温度の問題が生ずる。
【0110】
図16は、被処理基板に対してフローティングゲートを形成した後、トレンチを形成した場合を示す図である。図16を参照して、被処理基板であるシリコン基板79a上に、後にゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79bを形成し、その上にフローティングゲートを構成する層79cを形成する。次に、ゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79dをフローティングゲートを構成する層79cの上に形成し、その後、エッチングによりトレンチ79eを形成する。次に、CVD装置を用いて、図17に示すように、形成したトレンチ79eの表面を覆うように、シリコン酸化膜から構成されるライナー膜79fを形成する。その後、トレンチ79eの埋め込みを行う。このようにして、素子分離領域を形成する。なお、図示は省略するが、コントロールゲートを形成する場合、すなわち、フローティングゲートとなる層79cを形成後、その上にゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79dを形成し、その上にコントロールゲートを構成する層を形成した後、さらにその上に絶縁層を形成し、その後、エッチングによってトレンチを形成する場合も同様である。
【0111】
このような製造工程については、フローティングゲートを形成する層79cやコントロールゲートを形成する層を形成した後に、一括してエッチングを行ってトレンチ79eを形成した方が、フォトリソグラフィにおけるセルフアライメントを向上させるというメリットがある。昨今における素子微細化の観点から、このようなアライメント誤差を限りなく小さくすることが要求されるため、素子分離領域をこのような順序で形成することがある。
【0112】
しかし、このような形成工程によると、製造工程における熱処理温度の問題が発生する。すなわち、ゲート酸化膜を形成した後にライナー膜を形成する工程順序とすると、熱酸化により形成されるライナー膜の形成工程において、被処理基板が900度程度の高温となるため、既に形成されたフローティングゲートの下層や上層にあるゲート酸化膜が、高温での熱酸化による影響を受ける。具体的には、例えば、素子分離領域におけるゲート酸化膜を形成する層79b、79dの端部が異常酸化され、ゲート酸化膜の横方向の幅が広がってしまうという問題がある。
【0113】
また、上記した従来におけるライナー膜の形成における高温での熱酸化によると、基板全体を高温、例えば、700℃以上とする必要があるため、上記した図16および図17に示すEEPROMの形成工程における場合のみならず、既に半導体装置を構成するメタル配線層が低融点の金属で形成されている場合に、低融点金属の溶融の問題が発生する。そうすると、ライナー膜の形成工程の順序が制約されることになる。具体的には、ライナー膜の形成工程は、メタル配線層の形成工程の前にならざるを得ない。このような形成工程の順序の制約は、昨今の高性能化が求められている半導体装置の製造工程を選択する上で、大きな阻害要因となる。その一例として、ゲート電極の性能向上の観点からゲート電極をポリシリコンに置き換えて低融点の金属を用いる場合、このような金属を用いる工程を、ライナー膜の形成工程の後に行なわなければならないことになる。
【0114】
また、このようなライナー膜の形成工程において、平行平板型プラズマ等を用いて行なった場合、プラズマが高い電子温度を有するため、シリコン基板がプラズマダメージを受けることになる。また、シリコン酸化膜の形成時において、SiOH等に代表される不純物も多く含まれることとなり、熱酸化膜のような絶縁性の高い膜が得られない。
【0115】
ここで、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、以下のように行う。まず、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスを処理容器内に供給する。ここで、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスについては、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下とする。そして、処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する。なお、具体的には、シリコン化合物ガスとしては、TEOSガスを用い、酸化性ガスとしては、酸素ガスを用い、希ガスとしては、アルゴンガスを用いる。また、マイクロ波の導入は、ガスを導入してからであっても、ガスを導入する前であってもよい。
【0116】
すなわち、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む。
【0117】
上記した方法において、マイクロ波プラズマを用いたプラズマ処理によって素子分離領域におけるライナー膜を形成することにより、素子分離領域におけるライナー膜を形成する際に、シリコン基板に対して、プラズマダメージを与えることがない。また、このようにして形成されたライナー膜の膜質は、上記した図10等に示すように、電気的特性等において、熱酸化により形成した膜と同等以上に優れている。
【0118】
また、低温でライナー膜を形成することができるため、既にゲート酸化膜が形成されていたとしても、形成されたゲート酸化膜において端部の異常酸化の問題は生じない。また、低融点金属の溶融の問題を回避できる。そうすると、金属による処理の後に、ライナー膜の形成を行うことができる。すなわち、ライナー膜の形成工程の順序の制約をなくし、半導体装置の製造工程における工程間の順序の自由度が増大させて、より柔軟に製造工程を選択することができる。具体的には、MOSトランジスタを形成した後に、上記したライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成し、その後、トレンチの穴埋めをして素子分離領域としてのSTIを形成することができる。
【0119】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、被処理基板上に素子を形成する工程と、素子を形成した後に、上記したライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含むため、電気的な特性が良好である。
【0120】
ここで、ライナー成膜前にプラズマ処理を行なうことが好ましい。すなわち、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。こうすることにより、いわゆる角部の「丸め効果」を期待できる。すなわち、図15を再び参照して、いわゆる面方位依存性がないプラズマ処理の工程を用いて、トレンチ75の側壁部77aとトレンチ75の底部77bとの間の角部78に形成されるライナー膜を丸めることができる。具体的には、側壁部77aから底部77bにかけて鋭角な部分を有さず、側壁部77aから底部77bにかけてなだらかに連ねるようにしてライナー膜を形成することができる。ライナー膜において角部78を丸めることにより、この部分における電界集中を緩和することができる。なお、図18に、図15のXVIIIで示すトレンチ75の角部78の電子顕微鏡写真を示す。
【0121】
また、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。こうすることにより、形成したライナー膜中において、SiOH等に代表される不純物の少ない膜の形成が可能となる。このような膜は、電気的特性において絶縁性に優れている。
【0122】
ここで、処理温度は450℃以下で行うことができるが、さらに低温、例えば、300℃としたときは、シリコン酸化膜を成膜した後に、プラズマ処理を行なうことがさらに好ましい。すなわち、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む。こうすることにより、SiOH等に代表される不純物の少ない膜の形成が300℃以下で可能となる。また、この場合についても、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。こうすることにより、上記したように角部の「丸め効果」を期待でき、電界が角部に集中することを緩和することができるため、より効果的に異常放電を抑制することができる。
【0123】
また、このようなライナー膜の形成工程は、同一の処理容器内で供給するガスを切替えることにより、複数の処理工程を一連で行なうことができる。すなわち、酸素ガスおよびアルゴンガスを含むプロセスガスを供給しながらマイクロ波プラズマによりトレンチの表面をプラズマ処理し、その後、プラズマを切らずにそのままの状態とし、引き続いてさらにTEOSガスを処理容器内に供給し、プラズマCVDを行なってシリコン酸化物から構成されるライナー膜を形成することができる。また、TEOSガス、酸素ガスおよびアルゴンガスを用いてプラズマCVDを行なってシリコン酸化物から構成されるライナー膜を形成した後、TEOSガスの供給を停止し、酸素ガスの供給量を多くしながら酸素ガスおよびアルゴンガスを供給して、ライナー膜のプラズマ処理を行なうことができる。このように、複数の処理工程を一連で行なうことは、製造工程におけるスループットコスト等の観点からみても非常に有利である。
【0124】
上記したシリコン酸化膜の形成は、フラッシュメモリにおけるゲート酸化膜を形成する際にも適用することができる。図19は、フラッシュメモリの一部を模式的に示す断面図である。まず、図19を参照して、フラッシュメモリ81は、シリコン基板82上に形成されたソース83a、ドレイン83b、フローティングゲート84、およびコントロールゲート85を備える。また、フローティングゲート84とシリコン基板82との間には、第一の絶縁層としてゲート酸化膜86が形成されており、フローティングゲート94とコントロールゲート95との間には、第二の絶縁性としてゲート酸化膜87が形成されている。
【0125】
このようなフラッシュメモリ81の製造方法について簡単に説明すると、まず、被処理基板となるシリコン基板82の主表面の上にゲート酸化膜86を構成する第一の絶縁層を形成し、形成された第一の絶縁層の上にフローティングゲート84を構成する層を形成する。次に、形成されたフローティングゲート84を構成する層の上に、ゲート酸化膜87を構成する第二の絶縁層を形成し、形成された第二の絶縁層の上にコントロールゲート85を構成する層を形成する。ここで、上記したフローティングゲート84とコントロールゲート85との間に形成されるゲート酸化膜87は、以下の方法によって形成される。まず、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスを処理容器内に供給する。ここで、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスについては、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下とする。そして、処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成される第二の絶縁層となるゲート酸化膜87を形成する。
【0126】
このようにして形成されたゲート酸化膜87は、上記したように電気的特性等において、非常に良好である。また、低温での形成が可能であり、製造工程の自由度の観点等において有利となる。同様に、第一の絶縁層となるゲート酸化膜86およびコントロールゲート85の上に形成される絶縁層となるゲート酸化膜についても、同様の方法で製造することにしてもよい。
【0127】
また、上記した図15に示す素子分離領域において、穴埋めしたトレンチの内部にさらにトレンチを設ける構成としてもよい。図20は、この場合における素子分離領域付近を示す拡大断面図である。図20を参照して、MOS型半導体装置91は、シリコン基板92と、第一のトレンチ97aの穴埋めによって形成される素子分離領域93と、フローティングゲート94と、コントロールゲート95と、第一および第二のゲート酸化膜96a、96bとを備える。素子分離領域内には、第一のトレンチ97aの穴埋め層から形成された第二のトレンチ97bが設けられている。
【0128】
このような構成のMOS型半導体装置91においても、上記したシリコン酸化膜の形成が適用される。すなわち、MOS型半導体装置91において、第一および第二のゲート酸化膜、第一および第二のトレンチ97a、97bの表面を覆うライナー膜の形成については、上記した方法が適用される。こうすることにより、電気的特性の良好な酸化膜を形成することができる。
【0129】
また、本技術の本質はマイクロ波RLSAプラズマのもつ低ダメージプラズマの優位性を活かしたプラズマエネルギーのアシストによる低温での高品位CVD成膜を可能にしたという点である。よって、今後、更に本技術を基本と更なる低温、つまり300℃以下におけるCVD成膜技術の発展が容易に期待できる。これは熱に弱い有機材料を含む基板への成膜にも容易に適用することができることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
この発明に係るシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法は、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することが要求される場合に、有効に利用される。
【符号の説明】
【0131】
1 プラズマ処理装置
2 チャンバ
3 天板(誘電体窓)
4 アンテナ
5 導波管
7 冷却ジャケット
30 MOSCAP素子
50 Si基板
53 ゲート絶縁膜
W 被処理基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造過程のトランジスタ素子分離やあるいは配線間の層間絶縁膜にシリコン酸化膜や窒化膜で代表されるような絶縁膜を形成する方法として、一般に750℃以上の高温熱処理が許容される工程においては、高品位絶縁膜の形成には熱CVD法を代表とする方法がある。また、450℃以上750℃以下の高温熱処理が許容される工程においては、常圧CVD法にて形成された熱CVD膜を約420℃から500℃程度の温度で成膜しておいて、その後にその膜質の改質の為に、750℃程度の熱処理を施すことにより絶縁膜の改質を実施するのが一般的である。
【0003】
近年、大規模集積回路LSIやCCDの素子をより高速に動作させ、かつ、低消費電力化を進めるために製造プロセスの微細化を進め、かつ、前述のトランジスタ素子分離やあるいは配線間の層間絶縁膜にシリコン酸化膜や窒化膜で代表されるような絶縁膜をより高品位にする事(つまり、耐圧やリーク電流特性で一般的に示される電気特性をより優れたものにする事)への要求が強くなってきている。一般にトランジスタのゲート配線材料に融点が低い(450℃以下の)メタル(金属材料)を用いたLSIやCMOSイメージセンサー等の半導体素子へのゲート形成工程以降のプロセス(BEOL)については、前述のプラズマやオゾン等による活性酸素のアシストを有する低温CVD法による成膜方法で形成されたCVD酸化膜やCVD窒化膜では、熱CVD法を代表とするHTOCVD膜よりも膜質(ここでは電気的な特性)が劣ることが知られている。また、前述のプラズマCVD法で形成したプラズマCVD膜は、成膜中のプラズマ処理に起因するダメージにより、せっかく形成されたトランジスタの特性が後半工程(BEOL)プロセスにより劣化することが知られている。
【0004】
特許文献1は、酸素欠損の少ない膜を安価かつ容易に形成できる成膜方法を提供している。混合ガスは、有機金属化合物ガス、酸化性ガス、及び希ガスを含む。混合ガス中の希ガスの分圧の割合Prを85%≦Pr<100%とする。混合ガスをプラズマ処理容器内に導入する。プラズマ処理容器内にプラズマを発生させて有機金属ガス及び酸化性ガスをプラズマにて分解させ、被処理基板に金属酸化物膜を形成する技術である。
【0005】
特許文献2は、被処理基板やこの被処理基板に形成されるシリコン系酸化膜に与えるプラズマ損傷を抑制しつつ、被処理基板にシリコン系酸化膜を均一に形成することができる成膜方法を提供している。一分子中に少なくともシリコン原子、炭素原子、及び酸素原子を有する有機シリコン化合物ガスと、酸化性ガスと、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうち少なくとも1種以上を有する希ガスとを含む混合ガスを、希ガスの分圧の割合Prが15%≦Pr≦85%となるように、プラズマ処理容器内に供給する。プラズマ処理容器内にプラズマを発生させて、有機シリコン化合物ガス及び酸化性ガスをプラズマにて分解させ、被処理基板に酸化シリコン膜を形成する技術である。なお、プラズマ源として並行平板型のプラズマ源を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−336019号公報
【特許文献2】特開2005−252012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、希ガスの量を多くし、プラズマ中の電子密度を高めることで良好な膜質となることが記載されている。電子密度を高めるために、分子量の小さい希ガスより、分子量の大きい希ガスであるキセノン(Xe)が最も好ましいとあるが、使用量やコストを考えると、量産には不向きであり、好ましくない。特許文献2においては、シリコン系酸化膜を均一に形成しているが、膜質の成分については考慮されていない。
【0008】
450℃以下で行われるシリコン酸化膜(SiO)の低温プラズマCVD膜形成技術においては、成膜条件の最適化やプラズマからのアシスト方法、原料ガスの工夫がなされてきた。しかし、成膜されたシリコン酸化膜(As Deposition)の膜質は800℃以上で成膜された熱CVD膜(HTOと称されるSiH4系SiO−CVD膜)の膜質より電気的な特性(例えば、耐圧やリーク特性など)が明らかに劣る。またその原因の一つとして、低温プラズマCVD膜形成技術では、シリコン酸化膜の膜中にFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)分析法においてSi−OH、Si−HおよびSiO−CH3等の不純物成分の混入が、また膜中に存在する水分量を検出するTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析において膜中に水素や水分の取り込みまたは有機系不純物の取り込みが確認されていた。
【0009】
しかし、700℃以上の高温下で形成されたCVD膜(例えばHTO膜)は、金属配線を備えた半導体装置への成膜は行えない。近年脚光を浴びている高品質な膜を低温で形成する手法として原子層堆積法(ALD)が代替技術としてあり得るが、成膜速度が非常に遅く、半導体製造工程への適用はスループットの低下につながり、量産を考慮したとき、好ましくない。また、従来の並行平板等のプラズマ源を用いたプラズマCVD成膜においては、成膜中に生じるプラズマチャージングダメージがLSI素子特性の劣化を促進させるという問題があった。また、このプラズマ源を用いた場合、生成したプラズマの電子温度が被処理基板近傍でも数eV〜10数eVと高いため、基板に過剰なダメージを与え、さらにチャンバー内壁をスパッタし、アルミニウム等の金属元素を膜中に取り込んでしまい、欠陥や不純物の少ない膜を成膜することが困難であった。
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属配線を備える半導体装置であっても、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することができるシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法は、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、Si−O−R(アルコキシド基)を含むシリコン化合物ガスであることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスであることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記シリコン化合物ガスは、シリコン原子を有するシラン(水素化ケイ素)ガス、および/または、シラン化合物を含有するシリコン化合物ガスであることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記酸化性ガスは、酸素ガスを含むことを特徴とする。
【0016】
さらに好ましくは、前記酸化性ガスは、オゾンガスを含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記プラズマはスロットアンテナから放射されたマイクロ波により発生したプラズマであることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の20%以上80%以下の割合であることを特徴とする。
【0019】
さらに好ましくは、前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法は、
TEOS(テトラエトキシシラン)ガス、酸素ガス、およびAr(アルゴン)ガスを含み、前記Arガスの分圧比が、前記TEOSガスと前記酸素ガスと前記Arガスを併せたトータルガス圧の20%以上の割合であって、前記TEOSガスと前記酸素ガスの有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にスロットを介してマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0022】
好ましくは、Arガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、前記有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記被処理基板の温度を450℃以下とすることを特徴とする。
【0025】
さらに好ましくは、前記被処理基板の温度を360℃以上390℃以下とすることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、前記プラズマ処理容器内の圧力を、6.67Pa以上133.32Pa以下とすることを特徴とする。
【0027】
本発明の第3の観点に係るシリコン酸化膜は、
本発明の第1または第2の観点に係るシリコン酸化膜の成膜方法で形成することを特徴とする。
【0028】
本発明の第4の観点に係るシリコン酸化膜は、
金属配線を備える被処理基板上に、スロットを介し供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて形成された薄膜であって、
前記薄膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする。
【0029】
本発明の第5の観点に係るシリコン酸化膜は、
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜であって、
P型基板上に形成したEOT(等価酸化膜厚)が7nm±1nmの厚さのシリコン酸化膜に負電位を与え、7MV/cmの大きさの電界を印加して測定したときのリーク電流密度が、1.0×10−7A/cm2以下であることを特徴とする。
【0030】
好ましくは、前記シリコン酸化膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする。
【0031】
本発明の第6の観点に係るシリコン酸化膜は、
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜(SixOy)であって、
組成比(x/y)の膜厚方向の変化量が、±3%以下であることを特徴とする。
【0032】
好ましくは、前記組成比(x/y)の膜厚方向の変化量が、±1%以下であることを特徴とする。
【0033】
本発明の第7の観点に係る半導体装置は、
本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を備えることを特徴とする。
【0034】
本発明の第8の観点に係る半導体装置は、
被処理基板上に450℃以上の熱処理で組成変形を伴うような低融点メタルを含む金属材料を含み、本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を備えることを特徴とする。
【0035】
好ましくは、前記金属材料は、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第9の観点に係る半導体装置の製造方法は、
本発明の第3ないし第6の観点に係るシリコン酸化膜を成膜する工程を含むことを特徴とする。
【0037】
また、この発明の他の局面においては、シリコン化合物を用いた低温での成膜を、素子分離領域(STI:Shallow Trench Isolation)におけるライナー膜の成膜に適用可能である。ここで、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む。
【0038】
好ましくは、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。
【0039】
また、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。
【0040】
さらに好ましい一実施形態として、シリコン化合物ガスは、TEOSガスを含む。
【0041】
さらに好ましい一実施形態として、酸化性ガスは、酸素ガスを含む。
【0042】
さらに好ましい一実施形態として、希ガスは、アルゴンガスを含む。
【0043】
また、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む。
【0044】
好ましくは、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。
【0045】
この発明のさらに他の局面において、半導体装置の製造方法は、被処理基板上に素子を形成する工程と、素子を形成した後に、上記したいずれかのライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0046】
本発明のシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)を備える半導体装置であっても、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【図2】スロット板の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、希ガスの分圧比を変化させたときのTDSの結果である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、酸化性ガスとシリコン化合物ガスの流量比を変化させたときのTDSの結果である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、エッチングレートで規格化した結果である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、処理圧力を変化させたときのTDSの結果である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、被処理基板の温度を変化させたときのTDSの結果である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、リーク耐圧特性を示す。
【図9】MOSCAP素子の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、QbdのWeibullプロットしたものである。
【図11A】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の特性を示す図で、膜質の構成組成比を示す。
【図11B】比較対象である熱CVD法で形成される熱酸化膜の特性を示す図で、膜質の構成組成比を示す。
【図12】本発明の実施の形態1に係るシリコン酸化膜の電気的特徴を示す図で、膜質の組成を示す。
【図13】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。(a)〜(d)は、製造の工程を示す。
【図14】MOS型半導体装置の一部を示す断面図である。
【図15】素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図16】トレンチが形成されたEEPROMにおける素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図17】ライナー膜が形成されたEEPROMにおける素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【図18】図15のXVIIIで示すトレンチの角部の電子顕微鏡写真である。
【図19】フラッシュメモリの一部を模式的に示す断面図である。
【図20】素子分離領域付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。プラズマ処理装置は、RLSAプラズマを用いるプラズマ処理装置であって、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する際に用いられる。図2は、プラズマ処理装置の一部分であるスロット板の一例を示す平面図である。
【0049】
プラズマ処理装置1は、チャンバ2、天板(誘電体窓)3、アンテナ4、導波管5、マイクロ波源6、冷却ジャケット7、基板保持台8、真空ポンプ9、を備える。ガス供給源(図示せず)から壁用ガス通路10、または中央ガス通路11を介して、チャンバ2内へガスを供給することができる。
【0050】
天板3の上にアンテナ4は設けられ、アンテナ4の上に、温調媒体を流通させる流路を備えた冷却ジャケット7が備えられる。アンテナ4はスロット板4a、遅波板(誘電体板)4bとを備える。遅波板4bは、例えばSiO2やAl2O3などの誘電体材料から構成され、冷却ジャケット7とスロット板4aとの間に配置され、マイクロ波の波長を圧縮する。
【0051】
導波管5から給電されたマイクロ波は、アンテナ4の遅波板4b内で定在波が形成される。また、遅波板4b内の波長は、導波管5内での波長に比べて、誘電率の比(導波管内雰囲気の誘電率/誘電体の誘電率)の平方根分に短縮される。例えば2.45GHzのマイクロ波の場合、導波管内での波長は約12.2cmであるのに対し、誘電体(アルミナ)内での波長は約4cm程度となる。
【0052】
図2に示すスロット板は、RLSA(ラジアルラインスロットアンテナ)の一例を示す。スロット板4aは、銅板に金メッキ等が施され、マイクロ波を通過させるための多数のスロット41、42が形成されている。スロット板4aを遅波板4bに隣接して備えることでプラズマを広げることができる。マイクロ波はスロット41、42から下方向に放射され径方向に伝播し、天板3内で反射が繰り返され、干渉して強め合い、定在波が形成される。図示してあるように、スロット41、42は同心円状に、かつ互いに直交するように形成されている。プラズマはスロット41、42の長さ方向に垂直に広がり、天板3直下にプラズマが発生する。励起されたプラズマの電子温度は、誘電体窓である天板3直下で最も高く、天板3から離れるにつれ、低下する。天板3直下は数eV−10数eVとなり、プラズマ励起領域と呼ばれる。被処理基板W付近では、マイクロ波のパワー等にもよるが、1.5eV程度以下である。これは、拡散プラズマ領域と呼ばれる。
【0053】
また、RLSA(ラジアルラインスロットアンテナ)によって生成されるプラズマは、高密度であることが特長である。天板3直下のプラズマ励起領域で1013cm−3程度あり、拡散プラズマ領域の被処理基板W近傍でも、1011cm−3以上と非常に高密度である。本構成によると、高い電子温度の領域でガスが十分に解離され、低電子温度の拡散プラズマ領域で成膜されるため、被処理基板Wにダメージの少ない高品質の成膜が可能となるものと考えられる。
【0054】
導波管5は、アンテナ4に接続されている。導波管5は外側導体5aと内側導体5bからなる軸管の部分と、軸管の上部にある矩形導波部5cとを備える。アンテナ4のスロット板4aは内側導体5bに結合され、その内側導体5bの中心を中央ガス通路11は通る。ガス供給源からガスを導入し、天板3の中央部にあるガス噴射口12からチャンバ2内に、ガスを供給することができる。
【0055】
以下、シリコン酸化膜の成膜方法について、プラズマ処理装置1を用いて説明する。被処理基板Wを基板保持台8に載置する。プラズマを形成する空間Sの、基板保持台8と天板3の距離Zを135mmとし、マイクロ波パワーを3.5kWとする。被処理基板Wの大きさは、直径300mmである。
【0056】
図示していないが、基板保持台8は、ヒータやランプアニールなどの加熱手段を備えており、被処理基板Wを所定の温度に保つことができ、成膜条件により、温度を設定する。例えば、被処理基板Wに金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)が備えられたものである場合、450℃以下の範囲で温度設定しておく。
【0057】
プラズマ処理装置1のチャンバ2は、天板3により塞がれ、真空ポンプ9でチャンバ2の内部を真空(減圧)状態にすることが可能に構成される。例えばチャンバ2内の圧力を、パーティクルが発生しにくい圧力である133.32Pa以下の範囲内の所定の圧力に設定しておく。
【0058】
天板3上には、アンテナ4が結合されている。アンテナ4には、導波管5が接続されている。より詳しくは、スロット板4aは内側導体5bに結合される。遅波板4bは、冷却ジャケット7とスロット板4aとの間に配置され、マイクロ波の波長を圧縮する。
【0059】
2.45GHzのマイクロ波源6から導波管5を通してマイクロ波を供給する。マイクロ波は遅波板4bを介してアンテナ4の径方向に伝播し、スロット板4aのスロットより放射される。マイクロ波は天板3を伝播し、天板3全体に広がり、チャンバ2内に供給される。
【0060】
ガス供給源から、壁用ガス通路10と中央ガス通路11を介して、チャンバ2内にガスが供給される。ガスは、天板3側方を囲むように備えられた壁用ガス通路10から、チャンバ2内に向けて均等に噴射される。また、天板3の直下の中心部分にガス噴射口12からガスが噴射されることで、天板3全体の直下部分に、均等にガスが供給される。このとき供給されるガスは、希ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスと、酸化性ガス、例えば酸素ガスとシリコン化合物ガスが含まれる。シリコン化合物ガスは、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)ガスである。これらのガスの分圧比、流量比等を所定の条件で供給する。
【0061】
プラズマ励起用の希ガスを励起させプラズマ生成し、シリコン化合物ガスを解離し、ラジカル化する。基板保持台8に設置した被処理基板Wにシリコン酸化膜を堆積させ、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)処理を施すことができる。本実施の形態の例では、マイクロ波を供給した後にガスを供給したが、ガスの供給とマイクロ波の供給は、処理条件に応じ、順序が逆であってもよい。被処理基板Wをプラズマ処理装置(チャンバ2)内へ搬入しプラズマ処理後に搬出するという一連の流れを繰り返し、所定枚数の基板に対して、シリコン酸化膜の形成を行う。
【0062】
成膜速度を5〜600nm/minの範囲で任意に調節することで、薄膜10nm以下から厚膜1μm以上まで自由に成膜の膜厚を制御するが事が可能である。プラズマ処理を行う時間、または原料ガスの流量を変化させることで、形成されるCVD膜の厚みを制御することができる。
【0063】
図3には、希ガス(Ar)の分圧比を変化させたときのTDS(Thermal Disorption Spectroscopy)の結果を示した。ここで、Ar分圧比は可変、処理圧力は50.5Pa、ステージ温度は390℃とした。図3の縦軸は、熱酸化膜のTDS値で規格化した値を示す。図中のPE_TEOSは、従来のプラズマCVD法により成膜されたものであり、比較のために示したものである。
【0064】
これによれば、7.5%の分圧のとき、大きなTDS値を示す。少なくとも15%以上75%まではTDS値は小さくなり、膜中に水分、すなわち−Hや−OH基を実質的に含まないことがわかる。
【0065】
ここで、実用に耐える膜の基準としては、熱酸化膜のTDS値を基準として規格化した値でみて、3程度であればよく、その基準値から見積もったとき、希ガスと酸化性ガスとシリコン化合物ガスを併せたトータルガス圧に対して、希ガスの分圧比を10%以上の範囲とするとよいことがわかる。さらに好ましくは、希ガスの分圧比を40%以上75%以下の割合にするとよい。希ガスの分圧比を40%以上とすると、より良好な状態で成膜を行いやすくなる。希ガスは高価なガスであり、成膜の良好さとコストとのバランスを考えながら、希ガスの分圧比を設定する。
【0066】
図4に酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比を種々変化させて成膜したときのTDSの結果を示した。ここで、Ar分圧比は、44%、処理圧力は、50.5Pa、基板処理温度は、390℃とした。
【0067】
これによれば、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が1程度のときは、TDS値は大きな値を示す。一方、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が4〜9程度のとき、TDS値は低い値となり、膜中に水分、すなわち−Hや−OH基を実質的に含まないことがわかる。酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比(酸素ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であれば、実用に十分耐えうる膜を成膜することが可能である。
【0068】
図5に、RLSAプラズマによって成膜した酸化シリコン膜の5%フッ酸(HF)に対するエッチングレートを熱酸化膜に対する5%フッ酸のエッチングレートで規格化した結果を示した。高温でのCVD酸化膜の5%フッ酸に対するエッチングレートが、熱酸化膜のエッチングレートの2倍程度であるから、十分余裕をみて、熱酸化膜のエッチングレートの1.7程度あれば、十分に良好な膜であるということができる。そこで、この1.7を基準として、見積もった好適な酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比は、3.6以上10.8以下である。成膜のしやすさや、品質などを考えると、さらに好適には、酸素ガスとシリコン化合物ガスの流量比は4.0以上6.0以下であることが望ましい。
【0069】
図6に、Ar分圧比を、44%、酸素/TEOS流量比を5.5、基板処理温度を、390℃として、処理圧力を種々変化させたときのTDSの結果を示した。成膜を行ったすべての処理圧力帯に対し、TDS値は良好な値を示した。
【0070】
図7にAr分圧比を44%及び7.5%、酸素/TEOS流量比を5.5、処理圧力を50.5Paとして、被処理基板の温度を種々変化させたときのTDS分析の結果を示す。図中のPE_TEOSは、従来のプラズマCVD法により成膜されたものであり、比較のために示したものである。Ar分圧比を7.5%として被処理基板の温度(基板保持台)の温度を360℃、390℃とした場合には、TDSは大きな値となる。一方、Ar分圧比を44%として、被処理基板の温度(基板保持台)の温度を360℃、390℃とした場合には、良好な低いTDS値を示す。以上から、Arの分圧比が適切な値であれば、被処理基板温度は広く設定できることがわかる。TEOSを用いた成膜においては、Ar分圧比を固定したとき、成膜されたシリコン酸化膜のTDSには大きな差はないが、被処理基板温度を高くするほうがTDS値は小さく良好な膜を得ることができる傾向にあることがわかる。
【0071】
希ガスは、アルゴン(Ar)ガスの他、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス等であってもよい。また、酸化性ガスは、酸素の他に、酸素元素を含むガスとしてオゾンガスや一酸化炭素ガス等を用いてもよい。このときチャンバ内に供給される酸素原子の個数がSi原子数との関係で所定値となるように決定する。有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)は以下に示される。
【0072】
酸化性ガスの有効流量は、以下の式(式1)で与えられる。
【0073】
(酸化性ガスの流量)×(酸化性ガス1分子中に含まれる酸素原子の数)/2…(式1)
シリコン化合物ガス中の有効流量は、以下の式(式2)で与えられる。
【0074】
(シリコン化合物ガスの流量)×(シリコン化合物ガス1分子中に含まれるSi原子の数)…(式2)
有効流量比は、(式1)を(式2)で割った式(式3)で与えられる。
【0075】
((酸化性ガスの流量)×(酸化性ガス1分子中に含まれる酸素原子の数)/2)/((シリコン化合物ガスの流量)×(シリコン化合物ガス1分子中に含まれるSi原子の数))…(式3)
例えばオゾンガスを酸化性ガスとして用いる場合、シリコン化合物の流量が一定であるとき、所定の有効流量比を選るには、オゾンガスの有効流量は酸素ガスの有効流量の1.5倍であるから、酸素ガスを用いる場合に比べて、3分の2倍の流量が適当である。
【0076】
(実施例)
本実施の形態1の成膜方法で形成したシリコン酸化膜の特性を以下のようにして評価した。
【0077】
図8は、EOT(Equivalent Oxide Thickness;等価酸化膜厚)換算で7nm±1nmの膜厚領域において、印加する電界の大きさを変化させた際の電流特性(J)を測定したものである。電界7MV/cm印加した時に膜を流れる電流密度を測定しており、被処理基板WのタイプはP型半導体を用いている。
【0078】
図中のR_TEOSは、本発明のシリコン酸化膜を示しており、WVG膜を、比較対象に示した。電気特性測定用の素子は、電気特性を測定するときに一般的に用いられる、MOSCAPを作成して電流−電圧(I−V)特性を測定した。MOSCAP素子30は図9に示す。
【0079】
MOSCAP素子30は、N型Phosである拡散層31と、ゲート酸化膜32と、P型のシリコン基板33と、から構成される。
【0080】
図8には、ここで測定には、Ar分圧43−75%、圧力50.5Pa、マイクロ波パワーを3.5kWとして形成された、3nm、6nm、8nmの試料を用いた。すべての膜厚の試料においてWVG膜と比較して良好なリーク特性を示すが、7MV/cmの電界を印加した際に6nm、8nmの試料でJ<1.0×10−7A/cm2を示した。
【0081】
図3から図8の結果より、本発明により作成されたシリコン酸化膜は、耐圧やリーク特性に関して、WVG熱酸化膜と同等以上の性能を有していることが分かる。また、7nmよりも薄い領域においても、リークが非常に少ないことも分かる。厚みに関わらずに高いリーク特性を有するので、高い絶縁性が必要とされる、半導体装置に対応することが可能である。本件は、MOS構造における基板をP型かつゲートに印加する電圧を負にすることで得られた評価結果であり、一般に実施される逆の場合、つまり基板をN型かつゲートに印加する電圧を正にすることで得られた評価結果よりも厳しい環境で実施されたことを付け加える。
【0082】
図10にQbd(C/cm2)(CCS;−0.1A/cm2、ゲートサイズ100μm×100μm)の測定結果をWeibullプロットしたものを示した。本発明による酸化膜はR_TEOSである。比較対象として、HTO膜、熱酸化膜、WVG熱酸化膜を記載した。Qbdは、熱酸化膜(Dry−O2法)よりも良く、HTO膜と比べて、2桁近く良いことがわかる。これによっても本発明で形成された膜が、優れたリーク特性を有することが示される。
【0083】
図11には、シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜の組成比をTOF−SIMS法(Time-of-flight secondary ion mass spectrometry;飛行時間型イオン質量分析法)により膜の厚さ方向において調べた結果を記載した。図11aは、本発明のシリコン酸化膜を示しており、図11bは、比較対象である熱CVD法で形成される熱酸化膜を示す。堆積した膜の厚みは、シリコン酸化膜が400nm、熱酸化膜が500nmの場合である。
【0084】
図11aより、RLSAマイクロ波プラズマを用いて成膜されたシリコン酸化膜(SixOy)は、基板側(シリコン基板との界面)から最表面(表面)までシリコンと酸素の組成比(x:y)がほぼ一定(x:y=1:2)であることが分かる。深さ方向においては、膜中のどの部分を比較しても、構成組成比はほとんど変化せず、変化量は3%未満である。深さ方向において、組成比が一定な膜が形成されており、良質な膜であることが分かる。一方、図11bの熱酸化膜では、基板側(界面)ではシリコンが少なく、最表面(表面)に近づくにつれ、シリコンが増加している。そのため、シリコンと酸素の比は深さ方向で異なり、基板側(界面)と最表面(表面)とで、シリコンと酸素の比は最も変化する。
【0085】
さらに、膜質の特徴についてFT−IRにて分析を行った。この結果を図12に示す。
【0086】
図12より、SiOH、SiH、CO、Si−CH3は測定されず、含有率が検出限界以下であった。これは、実質的に当該成分が含まれていないことを示す。このことより、プロセス中の脱ガスによる膜収縮がなく、膜中に残っているメチル基などによるトランジスタ素子への悪影響のおそれがないシリコン酸化膜であることが分かる。
【0087】
LSI製造工程における素子分離形成やゲート形成工程に伴うサイドウォール形成に関しては、特に高品位な絶縁膜(ゲート熱酸化膜を含む)が要求される。ここでの高品位膜の定義は、絶縁膜の絶縁耐圧やリーク電流特性や電気的なストレスによる信頼性特性(Qbd寿命信頼性試験)が優れていることで、その基準は、CVD法で形成された絶縁膜の中では膜質が最高とされている炉型の熱CVD装置で800℃の高温下で成膜したHTO膜(High Temperature Oxide CVD膜)を比較対象とすることが一般的である。より優れたCVD膜を形成する為に、さまざまなプロセス手法による低温CVD膜形成後の膜質改善方法が考案されているが、従来技術ではどのような手法を用いても、結果的には前記HTO膜の膜質を越える450℃以下での低温CVD成膜法は実用化されていない。悪い膜質のCVD膜に後で高温熱処理を施し膜質を改善する手法は、広く用いられているが、この場合は被処理サンプル基板をCVD成膜中は低温に処理できても、その後に熱によるダメージを与えることから意味がない。
【0088】
本発明では、450℃以下の温度でありながら、上記の膜質評価基準において、HTO膜より格段に優れた膜を高速成膜形成できる。その膜質性能は、従来の熱酸化膜と同等以上の性能を有した膜にも及ぶ。そのため、金属配線(金属配線にはメタルゲート等の金属よりなる部分を含んでよい。)を形成後の被処理基板Wであっても、良質なシリコン酸化膜を形成することが可能である。さらに、イオン注入活性層にもダメージを与えずに済み、不用意な熱拡散を防止することができる。低融点メタル材料が予め下地サンプル基板上にある場合は、更に処理温度を下げ、400℃以下とすることが望ましい。
【0089】
これらシリコン酸化膜の特性を評価した結果より、本発明のシリコン酸化膜の成膜方法によれば、従来の熱酸化膜と同等以上の性能を有した膜を形成することができる。本発明の成膜方法で形成したシリコン酸化膜は、膜質が均質で、不純物がなく、耐圧やリーク特性に優れ、電気的特性もよい。
【0090】
また、シリコン酸化膜を形成するにあたり、被処理基板Wの基板の温度を高温にする必要がなく、比較的低い温度(450℃以下)で処理を行うことができる。そのため、被処理基板Wに、金属配線などが備えられた場合であっても、耐圧やリーク特性に優れるシリコン酸化膜を形成することが可能である。
【0091】
(実施の形態2)
図13は本発明の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。実施の形態1に係るシリコン酸化膜の成膜方法を適用したMOS型半導体装置の製造例について、図面を参照して説明する。図1に示したプラズマ処理装置を使用し、RLSAマイクロ波プラズマを用いて成膜を行う。また、Si基板50は、P型半導体基板である。
【0092】
まず、素子分離領域51を形成したSi基板50を準備する(図13(a))。このとき、Si基板50の主面のトランジスタ形成部52は、Si、SiON、SiO等で形成されている。
【0093】
次いで、実施の形態1のシリコン酸化膜の成膜方法で上述したように、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いて、プラズマCVD法により、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜53を形成する(図13(b))。
【0094】
より詳しくは、シリコン酸化膜の製造に用いるガスは、TEOSガスの他、酸素ガスとアルゴンガスである。プラズマを形成するときのアルゴンガスの分圧比は、希ガスとTEOSガスと酸素ガスを併せたトータルガス圧の40%以上75%以下の割合となるようにしておく。酸素ガス/シリコン化合物ガスの流量比は、4.0以上6.0以下に調整しておく。また、プラズマを発生するプラズマ処理室内の圧力は、6.67Pa以上133.32Pa以下の所定の圧力でプラズマを生成する。
【0095】
その後、常法に従ってゲート絶縁膜53上にゲート電極54を形成する(図13(c))。すなわち、ポリシリコン等のゲート電極材料の膜を例えばCVDにより全面に形成した後、フォトリソグラフィ技術によりパターン化したレジスト膜をマスクとしてプラズマエッチングを行うことによりゲート電極54を形成する。その後、側壁酸化膜55の形成およびイオン注入等による不純物拡散領域56を形成し(図13(d))、MOS型半導体装置を得る。
【0096】
ここでは、Si基板50の主面のトランジスタ形成部52は、Si、SiON、SiO等で形成された状態であるが、銅(Cu)やアルミニウム(Al)などの金属配線が設けてあっても構わない。シリコン酸化膜を形成する際に、450℃以下の温度で成膜を行うことができる。
【0097】
本発明により、金属配線を備える半導体装置であっても、低温条件下で、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を形成することができる。従来よりある熱酸化膜などと比較して、シリコンと酸素の組成比が厚さ方向で略一定で、不純物を含まず、リーク特性などの特性は同等以上である。本発明においては、低温で成膜できるため、金属配線を設けた基板であってもよく、より性能のよい半導体装置とできるだけでなく、その半導体装置の設計プロセスの幅が広がる。
【0098】
実施の形態では、プラズマ処理装置は、処理容器の壁側にガス導入口を備えていたが、天板全体にガス噴射口を備えたシャワープレートの機能を有する天板を用いてもよく、下段にシャワープレートを備えるプラズマ処理装置であってもよい。天板(誘電体窓)の直下全体に均一にプラズマを生成することができ、プラズマ拡散領域で薄膜の堆積を均一に行えるプラズマ処理装置であることが好ましい。プラズマ処理装置に備える天板やアンテナのスロット形状などについても、上述した例は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0099】
なお、実施の形態で説明した成膜にかかる条件、例えば製造時のガスの種類や基板温度、成膜の厚みなどは、その範囲内で、使用する半導体装置に併せて自由に設定が可能である。また、シリコン酸化膜の形成は、ゲート酸化膜やライナーなど、半導体装置の使用部位や目的に合わせて任意に選択が可能である。
【0100】
ここで、素子分離領域(STI)において、シリコン酸化膜の形成をライナーに適用した場合について説明する。図14は、MOS型半導体装置の一部を示す断面図である。なお、図14に示すMOS型半導体装置において、導電層をハッチングで示している。
【0101】
図14を参照して、MOS型半導体装置61には、シリコン基板62上に、素子分離領域63、p型ウェル64a、n型ウェル64b、高濃度n型不純物拡散領域65a、高濃度p型不純物拡散領域65b、n型不純物拡散領域66a、p型不純物拡散領域66b、およびゲート酸化膜67が形成されている。ゲート酸化膜67を間に挟むように形成される高濃度n型不純物拡散領域65aおよび高濃度p型不純物拡散領域65bのいずれか一方は、ドレインとなり、他方はソースとなる。
【0102】
また、ゲート酸化膜67の上には、導電層となるゲート電極68が形成されており、ゲート電極68の側部には、絶縁膜となるゲート側壁部69が形成される。さらに、上記したゲート電極68等が形成されたシリコン基板62の上には、絶縁膜71が形成される。絶縁膜71には、高濃度n型不純物拡散領域65aおよび高濃度p型不純物拡散領域65bに連なるコンタクトホール72が形成され、コンタクトホール72内には穴埋め電極73が形成される。さらにその上に導電層となるメタル配線層74が形成される。さらに、絶縁層となる層間絶縁膜(図示せず)および導電層となるメタル配線層を交互に形成し、最後に外部との接点となるパッド(図示せず)を形成する。このようにMOS型半導体装置61が形成されている。
【0103】
上記した素子分離領域63においては、シリコン基板62の主表面から下方側に凹んだトレンチと呼ばれる溝を形成し、このトレンチを、絶縁性を有する部材で穴埋めするようにして形成される。図15は、素子分離領域63付近を示す拡大断面図である。
【0104】
素子分離領域63の形成工程としては、具体的にはまず、シリコン基板62の主表面62aを酸化してSiO2の膜を形成し、後に行なうCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程に要するSiN膜を、CVDによってその上に形成する。その後、フォトレジストにより塗布、露光、および現像を行ってパターンを形成し、これをマスクとしてSiN、SiO2、Siの順にエッチングを行う。このようにして、所定の箇所においてシリコン基板62の主表面62aから下方側に凹んだ溝状のトレンチ75を形成する。そして、このトレンチ75を、絶縁性を有する部材によって埋める。このようにして素子分離領域63を形成する。
【0105】
この場合、界面、具体的には、シリコン基板62とトレンチ75内に埋め込まれる絶縁物との境界面の絶縁性を高めるために、まず、トレンチ75の表面にライナー膜76aと呼ばれる絶縁性のシリコン酸化物の層を形成する。次に、トレンチ75を埋めるようにして、絶縁性の埋め込み膜76bを埋めこむ。このような埋め込み膜76bは、SOD(Spin On Dielectric)塗布膜や、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)CVDにより埋め込まれる。
【0106】
また、高カバレッジが求められる場合には、埋め込み特性も良好である本発明のライナー膜76aを厚く堆積させてから埋め込み膜76bを成膜してもよいし、ライナー膜76aの成膜と同じ工程を用いて埋め込み膜76bを成膜してもよい。
【0107】
ここで、このようなライナー膜76aについては、絶縁性の高い膜が必要とされる。すなわち、例えば、耐圧やリーク特性などの電気的特性が優れた膜質のものを用いる必要がある。このような膜質を備える酸化膜は、従来、熱酸化法によって形成されるのが一般的である。
【0108】
これを具体的に説明すると、従来一般的に、素子分離領域の形成工程は、トランジスタのゲート酸化膜形成工程よりも前の工程であるため、STI埋め込み工程、すなわち、ライナー膜の形成工程およびライナー膜の形成工程の後に行われるトレンチの埋め込み工程に対して、熱処理温度の制限はない。すなわち、STI埋め込み工程において高温熱処理を用いても、ゲート酸化膜が影響を受けることはない。それどころか、STI埋め込み工程を境に、上記した図14に示すp型ウェル64aおよびn型ウェル64bを形成する必要があり、ランプアニール等によりイオン注入後にイオンを活性化させるため、900℃程度の高温熱処理されるのが通常である。すなわち、通常のLSI(Large Scale Integrated circuit)製造工程においては、STI形成工程の後にゲート酸化膜形成工程が行なわれるため、製造工程における熱処理温度の問題は生じない。
【0109】
しかし、一部のフラッシュEEPROM(Electrically Erasable Program−mable Read−Only Memory)等の製造工程では、ゲート酸化膜形成工程の後に、STI埋め込み工程が行なわれる場合がある。具体的には、フラッシュEEPROMに含まれるフローティングゲートを形成する工程や、フローティングゲートおよびコントロールゲートを形成する工程の後に、STIを形成する工程が行なわれる場合がある。このような場合、製造工程における熱処理温度の問題が生ずる。
【0110】
図16は、被処理基板に対してフローティングゲートを形成した後、トレンチを形成した場合を示す図である。図16を参照して、被処理基板であるシリコン基板79a上に、後にゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79bを形成し、その上にフローティングゲートを構成する層79cを形成する。次に、ゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79dをフローティングゲートを構成する層79cの上に形成し、その後、エッチングによりトレンチ79eを形成する。次に、CVD装置を用いて、図17に示すように、形成したトレンチ79eの表面を覆うように、シリコン酸化膜から構成されるライナー膜79fを形成する。その後、トレンチ79eの埋め込みを行う。このようにして、素子分離領域を形成する。なお、図示は省略するが、コントロールゲートを形成する場合、すなわち、フローティングゲートとなる層79cを形成後、その上にゲート酸化膜となるシリコン酸化膜の層79dを形成し、その上にコントロールゲートを構成する層を形成した後、さらにその上に絶縁層を形成し、その後、エッチングによってトレンチを形成する場合も同様である。
【0111】
このような製造工程については、フローティングゲートを形成する層79cやコントロールゲートを形成する層を形成した後に、一括してエッチングを行ってトレンチ79eを形成した方が、フォトリソグラフィにおけるセルフアライメントを向上させるというメリットがある。昨今における素子微細化の観点から、このようなアライメント誤差を限りなく小さくすることが要求されるため、素子分離領域をこのような順序で形成することがある。
【0112】
しかし、このような形成工程によると、製造工程における熱処理温度の問題が発生する。すなわち、ゲート酸化膜を形成した後にライナー膜を形成する工程順序とすると、熱酸化により形成されるライナー膜の形成工程において、被処理基板が900度程度の高温となるため、既に形成されたフローティングゲートの下層や上層にあるゲート酸化膜が、高温での熱酸化による影響を受ける。具体的には、例えば、素子分離領域におけるゲート酸化膜を形成する層79b、79dの端部が異常酸化され、ゲート酸化膜の横方向の幅が広がってしまうという問題がある。
【0113】
また、上記した従来におけるライナー膜の形成における高温での熱酸化によると、基板全体を高温、例えば、700℃以上とする必要があるため、上記した図16および図17に示すEEPROMの形成工程における場合のみならず、既に半導体装置を構成するメタル配線層が低融点の金属で形成されている場合に、低融点金属の溶融の問題が発生する。そうすると、ライナー膜の形成工程の順序が制約されることになる。具体的には、ライナー膜の形成工程は、メタル配線層の形成工程の前にならざるを得ない。このような形成工程の順序の制約は、昨今の高性能化が求められている半導体装置の製造工程を選択する上で、大きな阻害要因となる。その一例として、ゲート電極の性能向上の観点からゲート電極をポリシリコンに置き換えて低融点の金属を用いる場合、このような金属を用いる工程を、ライナー膜の形成工程の後に行なわなければならないことになる。
【0114】
また、このようなライナー膜の形成工程において、平行平板型プラズマ等を用いて行なった場合、プラズマが高い電子温度を有するため、シリコン基板がプラズマダメージを受けることになる。また、シリコン酸化膜の形成時において、SiOH等に代表される不純物も多く含まれることとなり、熱酸化膜のような絶縁性の高い膜が得られない。
【0115】
ここで、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、以下のように行う。まず、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスを処理容器内に供給する。ここで、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスについては、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下とする。そして、処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する。なお、具体的には、シリコン化合物ガスとしては、TEOSガスを用い、酸化性ガスとしては、酸素ガスを用い、希ガスとしては、アルゴンガスを用いる。また、マイクロ波の導入は、ガスを導入してからであっても、ガスを導入する前であってもよい。
【0116】
すなわち、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む。
【0117】
上記した方法において、マイクロ波プラズマを用いたプラズマ処理によって素子分離領域におけるライナー膜を形成することにより、素子分離領域におけるライナー膜を形成する際に、シリコン基板に対して、プラズマダメージを与えることがない。また、このようにして形成されたライナー膜の膜質は、上記した図10等に示すように、電気的特性等において、熱酸化により形成した膜と同等以上に優れている。
【0118】
また、低温でライナー膜を形成することができるため、既にゲート酸化膜が形成されていたとしても、形成されたゲート酸化膜において端部の異常酸化の問題は生じない。また、低融点金属の溶融の問題を回避できる。そうすると、金属による処理の後に、ライナー膜の形成を行うことができる。すなわち、ライナー膜の形成工程の順序の制約をなくし、半導体装置の製造工程における工程間の順序の自由度が増大させて、より柔軟に製造工程を選択することができる。具体的には、MOSトランジスタを形成した後に、上記したライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成し、その後、トレンチの穴埋めをして素子分離領域としてのSTIを形成することができる。
【0119】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、被処理基板上に素子を形成する工程と、素子を形成した後に、上記したライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含むため、電気的な特性が良好である。
【0120】
ここで、ライナー成膜前にプラズマ処理を行なうことが好ましい。すなわち、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む。こうすることにより、いわゆる角部の「丸め効果」を期待できる。すなわち、図15を再び参照して、いわゆる面方位依存性がないプラズマ処理の工程を用いて、トレンチ75の側壁部77aとトレンチ75の底部77bとの間の角部78に形成されるライナー膜を丸めることができる。具体的には、側壁部77aから底部77bにかけて鋭角な部分を有さず、側壁部77aから底部77bにかけてなだらかに連ねるようにしてライナー膜を形成することができる。ライナー膜において角部78を丸めることにより、この部分における電界集中を緩和することができる。なお、図18に、図15のXVIIIで示すトレンチ75の角部78の電子顕微鏡写真を示す。
【0121】
また、素子分離領域63におけるライナー膜76aの形成方法は、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。こうすることにより、形成したライナー膜中において、SiOH等に代表される不純物の少ない膜の形成が可能となる。このような膜は、電気的特性において絶縁性に優れている。
【0122】
ここで、処理温度は450℃以下で行うことができるが、さらに低温、例えば、300℃としたときは、シリコン酸化膜を成膜した後に、プラズマ処理を行なうことがさらに好ましい。すなわち、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、ライナー膜を形成する工程の後に、ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む。こうすることにより、SiOH等に代表される不純物の少ない膜の形成が300℃以下で可能となる。また、この場合についても、素子分離領域におけるライナー膜の形成方法は、ライナー膜を形成する工程の前に、トレンチが形成された被処理基板に対し、トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含むよう構成してもよい。こうすることにより、上記したように角部の「丸め効果」を期待でき、電界が角部に集中することを緩和することができるため、より効果的に異常放電を抑制することができる。
【0123】
また、このようなライナー膜の形成工程は、同一の処理容器内で供給するガスを切替えることにより、複数の処理工程を一連で行なうことができる。すなわち、酸素ガスおよびアルゴンガスを含むプロセスガスを供給しながらマイクロ波プラズマによりトレンチの表面をプラズマ処理し、その後、プラズマを切らずにそのままの状態とし、引き続いてさらにTEOSガスを処理容器内に供給し、プラズマCVDを行なってシリコン酸化物から構成されるライナー膜を形成することができる。また、TEOSガス、酸素ガスおよびアルゴンガスを用いてプラズマCVDを行なってシリコン酸化物から構成されるライナー膜を形成した後、TEOSガスの供給を停止し、酸素ガスの供給量を多くしながら酸素ガスおよびアルゴンガスを供給して、ライナー膜のプラズマ処理を行なうことができる。このように、複数の処理工程を一連で行なうことは、製造工程におけるスループットコスト等の観点からみても非常に有利である。
【0124】
上記したシリコン酸化膜の形成は、フラッシュメモリにおけるゲート酸化膜を形成する際にも適用することができる。図19は、フラッシュメモリの一部を模式的に示す断面図である。まず、図19を参照して、フラッシュメモリ81は、シリコン基板82上に形成されたソース83a、ドレイン83b、フローティングゲート84、およびコントロールゲート85を備える。また、フローティングゲート84とシリコン基板82との間には、第一の絶縁層としてゲート酸化膜86が形成されており、フローティングゲート94とコントロールゲート95との間には、第二の絶縁性としてゲート酸化膜87が形成されている。
【0125】
このようなフラッシュメモリ81の製造方法について簡単に説明すると、まず、被処理基板となるシリコン基板82の主表面の上にゲート酸化膜86を構成する第一の絶縁層を形成し、形成された第一の絶縁層の上にフローティングゲート84を構成する層を形成する。次に、形成されたフローティングゲート84を構成する層の上に、ゲート酸化膜87を構成する第二の絶縁層を形成し、形成された第二の絶縁層の上にコントロールゲート85を構成する層を形成する。ここで、上記したフローティングゲート84とコントロールゲート85との間に形成されるゲート酸化膜87は、以下の方法によって形成される。まず、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスを処理容器内に供給する。ここで、シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含むガスについては、希ガスの分圧比が、シリコン化合物ガスと酸化性ガスと希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、シリコン化合物ガスと酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下とする。そして、処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成される第二の絶縁層となるゲート酸化膜87を形成する。
【0126】
このようにして形成されたゲート酸化膜87は、上記したように電気的特性等において、非常に良好である。また、低温での形成が可能であり、製造工程の自由度の観点等において有利となる。同様に、第一の絶縁層となるゲート酸化膜86およびコントロールゲート85の上に形成される絶縁層となるゲート酸化膜についても、同様の方法で製造することにしてもよい。
【0127】
また、上記した図15に示す素子分離領域において、穴埋めしたトレンチの内部にさらにトレンチを設ける構成としてもよい。図20は、この場合における素子分離領域付近を示す拡大断面図である。図20を参照して、MOS型半導体装置91は、シリコン基板92と、第一のトレンチ97aの穴埋めによって形成される素子分離領域93と、フローティングゲート94と、コントロールゲート95と、第一および第二のゲート酸化膜96a、96bとを備える。素子分離領域内には、第一のトレンチ97aの穴埋め層から形成された第二のトレンチ97bが設けられている。
【0128】
このような構成のMOS型半導体装置91においても、上記したシリコン酸化膜の形成が適用される。すなわち、MOS型半導体装置91において、第一および第二のゲート酸化膜、第一および第二のトレンチ97a、97bの表面を覆うライナー膜の形成については、上記した方法が適用される。こうすることにより、電気的特性の良好な酸化膜を形成することができる。
【0129】
また、本技術の本質はマイクロ波RLSAプラズマのもつ低ダメージプラズマの優位性を活かしたプラズマエネルギーのアシストによる低温での高品位CVD成膜を可能にしたという点である。よって、今後、更に本技術を基本と更なる低温、つまり300℃以下におけるCVD成膜技術の発展が容易に期待できる。これは熱に弱い有機材料を含む基板への成膜にも容易に適用することができることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
この発明に係るシリコン酸化膜の成膜方法、シリコン酸化膜、半導体装置および半導体装置の製造方法は、優れた性質を有する酸化シリコンからなる薄膜を低温CVD法により形成することが要求される場合に、有効に利用される。
【符号の説明】
【0131】
1 プラズマ処理装置
2 チャンバ
3 天板(誘電体窓)
4 アンテナ
5 導波管
7 冷却ジャケット
30 MOSCAP素子
50 Si基板
53 ゲート絶縁膜
W 被処理基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項2】
前記シリコン化合物ガスは、Si−O−R(アルコキシド基)を含むシリコン化合物ガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項3】
前記シリコン化合物ガスは、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスであることを特徴とする請求項2に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項4】
前記シリコン化合物ガスは、シリコン原子を有するシラン(水素化ケイ素)ガス、および/または、シラン化合物を含有するシリコン化合物ガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項5】
前記酸化性ガスは、酸素ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項6】
前記酸化性ガスは、オゾンガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項7】
前記プラズマはスロットアンテナから放射されたマイクロ波により発生したプラズマであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項8】
前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の20%以上80%以下の割合であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項9】
前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項10】
前記有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項11】
TEOS(テトラエトキシシラン)ガス、酸素ガス、およびAr(アルゴン)ガスを含み、前記Arガスの分圧比が、前記TEOSガスと前記酸素ガスと前記Arガスを併せたトータルガス圧の20%以上の割合であって、前記TEOSガスと前記酸素ガスの有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にスロットを介してマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項12】
前記Arガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする請求項11に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項13】
前記有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項11に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項14】
前記被処理基板の温度を450℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項15】
前記被処理基板の温度を360℃以上390℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項16】
前記プラズマ処理容器内の圧力を、6.67Pa以上133.32Pa以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項17】
請求項1に記載の成膜方法で形成することを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項18】
金属配線を備える被処理基板上に、スロットを介し供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて形成された薄膜であって、
前記薄膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項19】
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜であって、
P型基板上に形成したEOT(等価酸化膜厚)が7nm±1nmの厚さのシリコン酸化膜に負電位を与え、7MV/cmの大きさの電界を印加して測定したときのリーク電流密度が、1.0×10−7A/cm2以下であることを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項20】
前記シリコン酸化膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする請求項19に記載のシリコン酸化膜。
【請求項21】
請求項17に記載のシリコン酸化膜を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項22】
被処理基板上に450℃以上の熱処理で組成変形を伴うような低融点メタルを含む金属材料を含み、請求項17に記載のシリコン酸化膜を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項23】
前記金属材料は、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)であることを特徴とする請求項24に記載の半導体装置。
【請求項24】
請求項17に記載のシリコン酸化膜を成膜する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項25】
素子分離領域におけるライナー膜の形成方法であって、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、前記トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む、ライナー膜の形成方法。
【請求項26】
前記ライナー膜を形成する工程の前に、前記トレンチが形成された被処理基板に対し、前記トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項27】
前記ライナー膜を形成する工程の後に、前記ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項28】
前記シリコン化合物ガスは、TEOSガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項29】
前記酸化性ガスは、酸素ガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項30】
前記希ガスは、アルゴンガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項31】
素子分離領域におけるライナー膜の形成方法であって、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、前記トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、
前記ライナー膜を形成する工程の後に、前記ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む、ライナー膜の形成方法。
【請求項32】
前記ライナー膜を形成する工程の前に、前記トレンチが形成された被処理基板に対し、前記トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項33に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項33】
半導体装置の製造方法であって、
被処理基板上に素子を形成する工程と、
前記素子を形成した後に、請求項27に記載のライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項2】
前記シリコン化合物ガスは、Si−O−R(アルコキシド基)を含むシリコン化合物ガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項3】
前記シリコン化合物ガスは、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスであることを特徴とする請求項2に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項4】
前記シリコン化合物ガスは、シリコン原子を有するシラン(水素化ケイ素)ガス、および/または、シラン化合物を含有するシリコン化合物ガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項5】
前記酸化性ガスは、酸素ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項6】
前記酸化性ガスは、オゾンガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項7】
前記プラズマはスロットアンテナから放射されたマイクロ波により発生したプラズマであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項8】
前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の20%以上80%以下の割合であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項9】
前記希ガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項10】
前記有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項11】
TEOS(テトラエトキシシラン)ガス、酸素ガス、およびAr(アルゴン)ガスを含み、前記Arガスの分圧比が、前記TEOSガスと前記酸素ガスと前記Arガスを併せたトータルガス圧の20%以上の割合であって、前記TEOSガスと前記酸素ガスの有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内にスロットを介してマイクロ波を供給する工程と、
前記マイクロ波により生成されたプラズマで、被処理基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項12】
前記Arガスの分圧比は、前記トータルガス圧の40%以上75%以下の割合であることを特徴とする請求項11に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項13】
前記有効流量比(酸素ガス/TEOSガス)が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項11に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項14】
前記被処理基板の温度を450℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項15】
前記被処理基板の温度を360℃以上390℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項16】
前記プラズマ処理容器内の圧力を、6.67Pa以上133.32Pa以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項17】
請求項1に記載の成膜方法で形成することを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項18】
金属配線を備える被処理基板上に、スロットを介し供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて形成された薄膜であって、
前記薄膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項19】
マイクロ波励起プラズマを用いて形成されたシリコン酸化膜であって、
P型基板上に形成したEOT(等価酸化膜厚)が7nm±1nmの厚さのシリコン酸化膜に負電位を与え、7MV/cmの大きさの電界を印加して測定したときのリーク電流密度が、1.0×10−7A/cm2以下であることを特徴とするシリコン酸化膜。
【請求項20】
前記シリコン酸化膜に、実質的に不純物成分(Si−OH、Si−H、およびSiO−CH3)が含まれないことを特徴とする請求項19に記載のシリコン酸化膜。
【請求項21】
請求項17に記載のシリコン酸化膜を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項22】
被処理基板上に450℃以上の熱処理で組成変形を伴うような低融点メタルを含む金属材料を含み、請求項17に記載のシリコン酸化膜を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項23】
前記金属材料は、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)であることを特徴とする請求項24に記載の半導体装置。
【請求項24】
請求項17に記載のシリコン酸化膜を成膜する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項25】
素子分離領域におけるライナー膜の形成方法であって、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板を450℃以下とした状態で、前記トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程とを含む、ライナー膜の形成方法。
【請求項26】
前記ライナー膜を形成する工程の前に、前記トレンチが形成された被処理基板に対し、前記トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項27】
前記ライナー膜を形成する工程の後に、前記ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項28】
前記シリコン化合物ガスは、TEOSガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項29】
前記酸化性ガスは、酸素ガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項30】
前記希ガスは、アルゴンガスを含む、請求項27に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項31】
素子分離領域におけるライナー膜の形成方法であって、
シリコン化合物ガス、酸化性ガス、および希ガスを含み、前記希ガスの分圧比が、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスと前記希ガスを併せたトータルガス圧の10%以上の割合であって、前記シリコン化合物ガスと前記酸化性ガスの有効流量比(酸化性ガス/シリコン化合物ガス)が3以上11以下であるプロセスガスをプラズマ処理容器内に供給する工程と、
前記プラズマ処理容器内に供給されたマイクロ波により生成されたプラズマを用いて、トレンチが形成された被処理基板の表面温度を300℃以下とした状態で、前記トレンチの表面にシリコン酸化膜から構成されるライナー膜を形成する工程と、
前記ライナー膜を形成する工程の後に、前記ライナー膜の表面にプラズマ処理を行なう工程とを含む、ライナー膜の形成方法。
【請求項32】
前記ライナー膜を形成する工程の前に、前記トレンチが形成された被処理基板に対し、前記トレンチの表面にプラズマ処理を行なう工程を含む、請求項33に記載のライナー膜の形成方法。
【請求項33】
半導体装置の製造方法であって、
被処理基板上に素子を形成する工程と、
前記素子を形成した後に、請求項27に記載のライナー膜の形成方法によりライナー膜を形成する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図18】
【公表番号】特表2011−524075(P2011−524075A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544497(P2010−544497)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/JP2009/059106
【国際公開番号】WO2009/139485
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/JP2009/059106
【国際公開番号】WO2009/139485
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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