説明

シリコーンと非水性ヒドロキシル溶媒とのエマルジョン

【課題】新規組成物はユニークな粒度分布の結果として改善された塗布性及び内容をもつパーソナルケア処方中の成分を提供する。
【解決手段】線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサンとのヒドロシリル化付加生成物を含んでなる組成物は非水性有機ヒドロキシル溶媒を利用して非水性エマルジョンを安定化し、キャリア溶媒中の上記付加生成物の分散液を流動有機剪断を含む粉砕プロセスに付す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水性ヒドロキシル溶媒とシリコーンのエマルジョン又はシリコーンの分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは様々な分野において数々の用途を有している。シリコーンは、シーラント、シリコーンゴム、接着剤及び化粧品など多岐にわたる製品に商業的に広く応用されている。シリコーンオイルは、見掛けの艶(もしくは光沢)を増すなどの長所をもつほか化粧組成物にドライかつ滑らかで一様な感触を与える材料であるので、化粧組成物の特に望ましい成分であることが分かっている。低分子量シリコーンは組成物に望ましい性質を与えるものの揮発性で粘度が低く、一方、こうした欠点の克服されたシリコーンは余りに粘稠すぎることから、シリコーンを化粧品全般に広く使用するのは幾分面倒である。
【0003】
例えば、化粧品用途に低粘度シリコーンオイルを利用することが望まれる場合、溶液粘度を増加させるとともに揮発性低分子量シリコーンオイルの蒸発損を遅らせるために増粘剤が使用されてきた。こうした処置は、有効ではあるが、シリコーンオイルの塗布性(spreadability)を減じて肌に重いべとついた感触を残すという欠点をもつ。塗布性及びドライで滑らかな感触は低粘度シリコーンに付随した性質であって、これを化粧品として適用すると組成物に望ましい感触又は手触りを与える。高い揮発性による蒸発損を低減しつつ化粧組成物における低分子量シリコーンオイルの望ましい性質を保持する試みに応用されている材料には、数ある中でも特に、デキストリンの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステル、トリメチルシリル置換ポリビニルアルコール、トリメチルシリル置換多糖類、脂肪酸エステル含有セルロースエーテル、及び有機改質クレー鉱物がある。これらの材料は、低粘度シリコーンオイルの与える軽い感触及び塗布性が変化するという欠点を有しており、こうした性質が組成物から失われるという結果を伴うので、はなから低粘度シリコーンオイルを使用するのが最もよいことが示唆されていた。これらの増粘剤もしくは揮発防止剤のもう一つの短所は、その多くが水溶性であって、水分散液又は水溶液として使用しなければならないことである。そのため疎水性シリコーンオイルと共に水を導入するには乳化剤及び相溶化剤の使用が必要となり、化粧品の処方が複雑になるとともに、成分相の分離に関する処方物の安定性が概して低下する。
【0004】
最近、化粧組成物における低粘度シリコーンオイルの性質を保持するための別の方法が進展をみせており、その方法では低粘度シリコーンオイルをオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル官能化オルガノポリシロキサンとの付加重合生成物と組み合わせる(特許文献1)。かかる処方物に利用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、HSiO1.5(T)基、RSiO1.5(T)基、RHSiO(D)基、RSiO(D)基、RHSiO0.5(M)基及びRSiO1.5(M)基を含んでいる。利用される架橋用ハイドライド化合物はしたがって一般式:Mの化合物である。この架橋用化合物ではT基がハイドライドでもRで置換されたものでもよいとされているが、この技術における優先順位は付加重合がよりスムースに進行することから線状ハイドライド材料のほうが高い。これらの式におけるR基は当技術分野で公知の典型的な有機置換基である。次いで、この架橋付加重合生成物に低分子量シリコーンオイルを加え、剪断力を加えて混合物を処理する。この材料はそれだけで化粧品成分として又は増粘剤として使用でき、グリースの性質を有していて、化粧用途だけでなく広範な工業用潤滑用途に使用することができる。このようにして製造された材料は、揮発性低分子量シリコーンオイルの溶解した低架橋度エラストマーとみなすことができる。前駆物質としての架橋用ハイドライドは好ましくは線状であり、T基が組み込まれていたとしてもほどほどにしか枝分れしていないので、付加重合生成物は、生成ポリマー中に密な架橋網状構造をもたない。線状で低架橋度の網状構造は低分子量シリコーンの増粘効率が低いという短所がある。製品のコストを上昇させることに加えて、高濃度の架橋シリコーンは使用中揮発性の低分子量シリコーンが蒸発する際に多量の残留物を残していくという結果を生じる。デオドラントや発汗抑制剤のような幾つかの化粧用途では、残留物の量が増えることは衣服のしみの一因となるため甚だ不都合である。
【0005】
さらに、線状で低架橋度のシリコーンは、より密に架橋したシリコーンのようには簡単に膜を形成しない。膜形成の欠如は化粧用途において不利である。線状シリコーンの重く余り望ましくない感触に比べて、膜はソフトで滑らかな感触を与えるからである。固体については、粉砕(size reduction)プロセスは概して平均粒度と粒度分布双方の変化をもたらす。大半の固体材料では、粉砕技術は平均粒度を低下させ、ガウス分布の粒度を生じるのが普通である。したがって、粉砕技術に関する技術文献はガウス分布の幅(すなわち粒度分布がどれくらい広いか狭いか)を制御することに主眼をおいている。なお、粒度分布の幅は通例最大頻度の粒度のピーク高さの半分の高さにおける分布ピークの幅で測定される性質である。これは一般に半値幅測定と呼ばれる。
【0006】
エマルジョンも粉砕プロセスに付すことができ、固体プロセスで得られる結果と同様の結果が得られる。第二の液相中に分散した非混和性液体の初期粒度及び粒度分布は平均粒度の小さなものへと変換される。通例、エマルジョン中の不連続相の粒度分布は、粒度分布を粉砕前に測定しようが粉砕後に測定しようが、ガウス分布で最もよく表される。
【0007】
シリコーン又はシリコーン分散液は乳化して水中油型(水が連続相)エマルジョン又は油中水型(油が連続相)エマルジョンとし得るが、他の大量の又は連続溶媒相を使用したエマルジョンは通例コスト及び安定性の問題を生じる。シリコーンの非水性エマルジョンは化粧用途に対して有用なデリバリーシステムであり、とりわけ水の存在が化粧組成物の性状を変えるプロセスを開始させる場合に有用である。非水性シリコーンエマルジョンは公知であるが、アルコールやグリコールのような低分子量ヒドロキシル溶媒を利用したものは通例ベトベト或いはネバネバした感触を有していて皮膚に塗布すると不快である。さらに、かかる材料は普通非水性エマルジョンを調製するのに高エネルギープロセスを応用する必要があり、例えば均質化(homogenization)が必要とされるが、これは材料を一時的に安定にするだけで、換言すれば、数日後には分離してしまうのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4987169号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今回、非水性シリコーン含有エマルジョンを安定化するには、アルケニルオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサン(ハイドライド)、好ましくはMQ樹脂との付加重合で製造した架橋エラストマーを揮発性低分子量シリコーンオイルと組合せればよいことを開示する。流動誘起剪断(flow induced shear)で加工処理すると、かかるエラストマーは、化粧組成物に格好のユニークな粒度分布をもつ成分を与える。かかるエラストマーはエマルジョンの粘度を上げ、その官能特性を向上させる。
【0010】
広くとらえると、本発明は、シリコーン組成物の非水性エマルジョンであって、該組成物が(a)シリコーン、及び(b)非水性有機ヒドロキシル溶媒を含んでなり、該非水性エマルジョンが連続非水性相を含んでなるエマルジョンを提供する。選ぶ材料に応じて、連続相はシリコーン含有相又は非水性有機ヒドロキシル溶媒含有相のいずれかである。本発明のさらに具体的な形態には、アルケニルシリコーン前駆体とハイドロジェンシリコーン前駆体とのヒドロシリル化反応で製造されたシリコーンが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の具体的な実施形態の一つでは、(A)(1)次式:
vivi2−a
[式中、符号xは500を上回る数であり、a+yが1〜約20の範囲内にあるという限定条件の下で、符号yは0〜約20の数であり、符号aは0〜2の数であり、
vi
SiO1/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dは
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dvi
vi=RSiO2/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Mは
M=R10SiO1/2
(R、R及びR10は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義される]の線状アルケニル停止ポリオルガノシロキサンと(2)次式:
(M
[式中、Qは式SiO4/2を有するものであり、MはH113−bSiO1/2
(R11は炭素原子数1〜40の一価炭化水素基であり、符号bは1〜3の数である)として定義され、符号wとzは0.5〜4.0の比を有し、符号jは約2.0〜約100の数である]の樹脂とのヒドロシリル化生成物によって形成されるシリコーンであって、該ヒドロシリル化が(3)25℃で約1000センチストークス未満の粘度を有する第一シリコーンの存在下で実施され、もってASTM D−2240−91によるデュロメーター硬度が5以上のゲルを形成するもの、及び(B)25℃で約1000センチストークス未満の粘度を有する第二シリコーンを含んでなるシリコーン組成物であって、上記ゲルを第二シリコーン中でスラリーとしてその第二シリコーンと共に混合処理に付し、もって上記第二シリコーンと上記ゲルを含んでなる25℃において500〜150000センチストークスの粘度を有する均一液体を生じさせ、該均一液体が上記ゲルの初期平均粒度及び粒度分布を有しており、
a)上記均一液体を圧力に付し、
b)上記均一液体をオリフィスを通しての圧力降下に付し、もって均一液体がオリフィスを通過して均一液体の初期平均粒度が低下し、かつ
c)段階a)と段階b)を繰返すことにより、上記ゲルの粒度分布を調節して該粒度分布が
d)約21〜約26ミクロンの範囲内の極大、
e)約33〜約38ミクロンの範囲内の極大、及び
f)約50〜約60ミクロンの範囲内の極大
を含むようにしたシリコーン組成物であって、該均一液体が非水性有機ヒドロキシル溶媒と乳化し得るシリコーン組成物を提供する。
【0012】
好適な非水性有機ヒドロキシル溶媒は、アルコール類、グリコール類、多価アルコール類及びポリマー状グリコール類又はそれらの混合物で、25℃及びおよそ1気圧で液体であるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
広く述べると、本発明は各種キャリア溶媒中のシリコーン(特にシリコーンエラストマー)の分散液が、2つの非混和性非水性液相間の非水性エマルジョンを安定化するという知見に基づいている。2つの非混和性非水性液相のうちの一つを以下非水性溶媒相と呼ぶが、これはエマルジョンの連続相であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0014】
広くとらえると、本発明は、シリコーン組成物の非水性エマルジョンであって、該組成物が(a)シリコーン、及び(b)非水性有機ヒドロキシル溶媒を含んでなり、該非水性エマルジョンが連続非水性相を含んでなるエマルジョンを提供する。この組成物の具体的な形態には、オルガノポリシロキサンのラジカル重合反応で製造されたシリコーンが含まれる。この組成物のさらに具体的な形態には、アルケニルシリコーン前駆体とハイドロジェンシリコーン前駆体とのヒドロシリル化反応で製造されたシリコーンが含まれる。一般に、アルケニルシリコーン前駆体化合物は1分子当たり平均2以上のアルケニル基を有するオルガノシロキサン又はオルガノポリシロキサンであり、ハイドロジェンシリコーン前駆体は1分子当たり平均2以上の水素化ケイ素基を有するオルガノハイドロジェンシロキサンである。かかる化合物は複数の米国特許、特に米国特許第5506289号、同第5674966号、同第5717010号、同第5571853号及び同第5529837号に記載されており、それらの開示内容は文献の援用によって本明細書に取り込まれる。アルケニル官能基とハイドライド官能基は、米国特許第5698654号に教示されているように、一緒に一分子型自己硬化性分子又は化合物中に導入してもよい。多くの実施形態において、シリコーンエラストマーはキャリアオイル(好ましくはシリコーンオイル)中に分散したエラストマーの粒子を含んでなり、粒子は微粒子でもそうでなくてもよい。
【0015】
本発明の具体的形態の組成物は、(1)次式:
vivi2−a
[式中、符号xは500を上回る数、好ましくは600を上回る数、さらに好ましくは700を上回る数、最も好ましくは800を上回る数であり、a+yが1〜約20、好ましくは1〜約10、さらに好ましくは約1.5〜約10、最も好ましくは約1.5〜約6の範囲内にあるという限定条件の下で、符号yは0〜約20、好ましくは0〜約10、さらに好ましくは0〜約5、最も好ましくは0〜約4の数であり、符号aは0〜2の数であり、Mvi
SiO1/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であって、好ましくはスチリル、アリル及びビニル基、さらに好ましくはアリル及びビニル基、最も好ましくはビニル基であり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)として定義され、Dは
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)として定義され、Dvi
vi=RSiO2/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であって、好ましくはスチリル、アリル及びビニル基、さらに好ましくはアリル及びビニル基、最も好ましくはビニル基であり、Rは独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)として定義され、Mは
M=R10SiO1/2
(R、R及びR10は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)として定義される]の線状アルケニル停止ポリオルガノシロキサンと(2)次式:
(M
[式中、Qは式SiO4/2を有するものであり、MはH113−bSiO1/2(符号bは1〜3の数であり、R11は炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)として定義され、符号wとzは0.5〜4.0、好ましくは0.6〜3.5、さらに好ましくは0.75〜3.0、最も好ましくは1.0〜3.0の比を有し、符号jは約2.0〜約100、好ましくは約2.0〜約30、さらに好ましくは約2.0〜約10、最も好ましくは約3.0〜約5.0の数である]の樹脂とのヒドロシリル化付加生成物、及び(3)シリコーンを含んでなり、(1)と(2)の反応生成物と(3)との混合物を平均粒度分布に影響を与える剪断力に付したものでその分布はあるユニークな性質を有しており、(3)に分散した(1)と(2)の付加生成物は非水性有機ヒドロキシル溶媒中に乳化可能である。
【0016】
上記ヒドロシリル化反応は、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金ヒドロシリル化触媒からなる群から選択されるヒドロシリル化触媒の存在下で実施される。かかる触媒の具体例は、米国特許第2823218号、同第3159601号、同第3159662号及び同第3775452号に記載されているものである。
【0017】
成分(3)のシリコーンは25℃で約1000センチストークス未満の粘度を有する有機ケイ素化合物として定義されるが、好ましくは25℃で約500センチストークス未満の粘度、さらに好ましくは25℃で約250センチストークス未満の粘度、最も好ましくは25℃で約100センチストークス未満の粘度を有するものである。したがって、D、D、D及びD(すなわち、符号fが3〜6の範囲にあるDf、ただし、Dは上記で定義した通りであって、この場合のR及びRは好ましくはメチルである)のような低分子量環状シリコーン、並びに次式:
M’D’M’
[式中、D’上の置換基は上記でDに関して定義したのと同じ置換基から独立に選択されるもので、M’は次式:
121314SiO1/2
(R12、R13及びR14は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル及びメシチル基からなる群、最も好ましくはメチル及びフェニルからなる群から選択されるものである)を有するものであり、符号iは0〜約300、好ましくは0〜約100、さらに好ましくは0〜約50、最も好ましくは0〜約20である]の低分子量線状シリコーンが、このような揮発性シリコーンである。好ましくは、成分(3)は揮発性低分子量シリコーンである。
【0018】
本発明のゲルの調製に用いられる材料を、シリコーン化学の現場で一般に認められている定義に属す構造要素M、D、T及びQを用いた式で定義してきた。個々の分子或いは純粋な化合物としては、上記の各式の符号は整数値(適宜0を含む)しか取り得ない。複数の化合物の複雑な化合物(その各々が上記の分子定義を満足する)としては、そうした混合物を表す符号は整数以外の値(適宜0を含む)を取ることもある。ただし、ある符号についてそのような整数以外の値を取るとしても、その値は、その符号について整数値として規定されているときはその範囲の上限と下限の間にある。例えば、成分(1)の純粋な化合物を表す場合、符号aは0、1又は2の値を取り得る。複数の化合物の混合物としては、成分(1)は符号aについての平均値であり、各々0、1及び2に等しいaをもつ分子種の数に依存する。同じことは成分(2)及び(3)についてもいえる。
【0019】
よって、成分(1)が具体的アルケニル官能化としてビニル官能化シリコーンであって様々なビニル含有化合物の混合物であるときには、定義通り、成分(1)の符号の平均は、ビニル当量に換算して約1500〜約150000、好ましくは約4500〜約110000、さらに好ましくは約10000〜約70000、最も好ましくは約15000〜約45000の範囲にわたる。なお、これらの当量はビニル置換基について特異的な当量であって、別のオレフィン性置換基で置換したときに生じる当量範囲は対比できるが異なっている。同様に、混合物としての成分(2)の符号の平均は、定義通り、ハイドライド当量に換算して約80〜約190、好ましくは約82〜約170、さらに好ましくは約85〜約150、最も好ましくは約87〜約130の範囲にわたる。
【0020】
さらに、成分(1)に存在するアルケニル官能基は1分子当たり平均約2〜約20個のアルケニル基の範囲にあるのが望ましく、好ましくは1分子当たり約1〜約10個のアルケニル基、さらに好ましくは1分子当たり約1.5〜約10個のアルケニル基、最も好ましくは1分子当たり約1.5〜約6個のアルケニル基の範囲内にある。加えて、成分(2)に存在するハイドライド官能基は平均で1分子当たり約2〜約400個のSiH基の範囲にあるのが望ましく、好ましくは1分子当たり約8〜約100個のSiH基、さらに好ましくは1分子当たり約8〜約50個のSiH基、最も好ましくは1分子当たり約8〜約20個のSiH基の範囲内にある。
【0021】
成分(1)と成分(2)(共に純粋な化合物又は混合物として)は成分(3)の存在下で触媒反応してあるポリマー含有量をもつゲルを生じるが、そのおおよそのポリマー含有量は架橋ポリマー約5〜約75重量%、好ましくは架橋ポリマー約10〜約60重量%、さらに好ましくは架橋ポリマー約15〜約40重量%、最も好ましくは架橋ポリマー約20〜約35重量%であり、残余は揮発性の低分子量シリコーンオイルである。この初期生成ゲルが調製されたら、これを追加量の揮発性低分子量シリコーン(すなわち、追加成分(3)、これは初期生成ゲルの調製に使用される成分(3)と異なっていてもよい)と混合し、混合処理もしくは剪断力に付して均一な液体ゲルを生じさせる。この均一な液体ゲルは、架橋ポリマー約1〜約25重量%、好ましくは架橋ポリマー約2〜約20重量%、さらに好ましくは架橋ポリマー約3〜約15重量%、最も好ましくは架橋ポリマー約3〜約10重量%で、残余が揮発性の低分子量シリコーンオイルである成分(3)又は成分(3)の定義を満たす各種化合物の混合物である。
【0022】
初期生成ゲルは十分に粘稠で液体流動は普通観察されない。架橋高分子物質として、最初に生成する25重量%の架橋高分子網状構造をもつゲルは、5以上、好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは15以上のデュロメーター硬度(ASTM D−2240−91)を有する。デュロメーター硬度試験についてのASTM試験値は、正に固体として特徴付け得るほどの十分な流動抵抗を材料がもつことの指標となる。
【0023】
近年、パーソナルケア産業で、非常に低分子量から非常に高分子量までの各種シリコーンポリマーを使用すると広範囲の用途において改善された製品流動性と滑らかでべとつかない感触が得られることが見出だされている。例えば、シリコーンポリマーは、発汗抑制剤/デオドラント、スキンローション、クリーム、ヘアケア製品、化粧品などの処方に用いられている。こうしたシリコーンポリマーはパーソナルケア製品に所望の性能特性を与えるが、これらは伝統的に非シリコーン系増粘剤を含むデリバリーシステム(delivery system)を必要としていた。かかる非シリコーン系増粘剤は、望ましいシリコーン感触に悪い影響を与えるので概して望ましくない。
【0024】
増粘剤に架橋シリコーンポリマーの使用を教示する最近の技術は、滑らかでシルキーな感触や最適増粘効果のための高粘度を始めとする優れた性能特性を生み出す架橋シリコーンポリマー粒子のユニークで望ましい分布を生じさせる必要性についての認識を欠いている。この技術はこれらの粒子の最も望ましい分布を生じさせるための方法を的確に規定していない。さらに、この技術で示唆されている加工処理法の幾つかは、本発明で役立てることのできる架橋シリコーンポリマーのほんのわずかな範囲に限られている。そこで、ポリマー材料の望ましい一段と効率的な使用をもたらすべく架橋シリコーンポリマーの性状が変わると、示唆されているような低レベルの圧縮(コロイドミルなど)、機械的切断剪断(ローター/ステーターミル)又は破断(ハンマーミル)を用いた剪断法は、必要とされる粒度及び分布をもつ望ましい架橋シリコーンポリマー粒子を与えない。さらに、架橋シリコーンポリマーを経済的に加工処理する方法も規定されていない。
【0025】
今回、意外にも、ユニークな粒度分布をもつシリコーン粒子を使用することからなる、キャリアシリコーンオイル用の増粘剤を提供するための方法が見出された。さらに、架橋シリコーンポリマーの経済的な加工処理法の提供に加えて、高流動誘起剪断及び粒子伸長の使用によっても、高粘度及び増粘性を保ちつつ望ましい滑らかでシルキーな感触をもたらすユニークで極めて望ましい粒度分布が生じることが見出された。さらに、この加工処理法はあらゆる範囲の望ましい架橋シリコーンポリマーに適用可能である。
【0026】
増粘剤の幾つかの物理的性質は架橋シリコーンポリマーの化学構造によって決まるが、粒度とその分布が生成物の極めて望ましい増粘性(粘度)と感触性の鍵となる。有効な増粘挙動は、流体粘度を増す大きな粒度の存在の所産である。大粒子の大きさは、使用時に視認できるゲルの球を形成するほど大きな粒子は避ける必要性があることで制限される。優れた感触は、皮膚に塗り広げる際の滑らかさを改善する小さな粒子の発生の所産である。架橋シリコーンポリマーが崩壊して余りに小さな粒子又は均質流体になってしまうと、感触が重くなったりべとついて望ましくない。そこで、優れた感触をもった効果的な増粘剤の調製には幅広い分布の粒子を生じさせる能力が必要とされる。
【0027】
意外なことに、架橋シリコーンポリマーの加工処理に際して、流動誘起剪断及び粒子伸長を殊に高い応力レベルで用いるとユニークな粒度分布を与える。応力を用いて粒子を破壊すると単峰性の分布或いは場合によって双峰性分布が生ずるとの予測が普通であるが、特に高い流動誘起剪断及び粒子伸長は粒度の多峰性分布を与えることが判明した。
【0028】
初期の実験では、本発明で調製した粒子はエラストマー含量5%及び環状シロキサン95%の薄い物質には十分に膨潤しなかった。しかし、エラストマーをさらに希釈してエラストマー含量約3%未満にすると粒子は完全に膨潤する。そこで、本発明で報告する粒度は十分に希釈された粒子についてのものであるが、大半の用途で用いられるものの実際の体積は利用可能な溶媒量に応じて小さい。所定の粒子組成物については、追加溶媒をどれだけ吸収し得るか測定可能であるので、十分に希釈した粒子の大きさが分かれば、あらゆる濃度における粒度を逆算することが可能である。さらに、比較的高いエラストマー濃度で比較的小さな粒子を調製し、後でそれを追加溶媒で膨潤させて大きな粒度とすることも本発明の範囲に属する。
【0029】
本発明の生成物では、粒度分布は複数の往々にして重複した個別の粒度集団を含んでいる。これらが一体となって大粒子と小粒子の幅広い分布を与え、高い効率と粘度並びに良好な感触と潤滑性をもたらす。個々の粒度集団は概して対数正規粒度分布にフィットし、平均約10ミクロンから平均約600ミクロンまでの全域で測定される。特定の用途に対して粒子が完全には膨潤していないとき、粒度の母集団、すなわち粒度分布はそれに応じて小さな粒度を範囲とするようになり、小さな粒度範囲へとシフトする。粒度分布は、膨潤時の約1ミクロン未満から膨潤後の約600ミクロンまでの範囲の連続した複数の識別可能な粒子集団を含む。完全膨潤状態で測定したときの平均粒度範囲が約1〜約500ミクロンをカバーしているのが好ましく、さらに好ましくは溶媒膨潤後約1〜約400ミクロン、最も好ましくは約1〜約300ミクロンを含む。
【0030】
本発明の組成物は、有機高分子エラストマー(好ましくはシリコーンエラストマー)が適当な溶媒中に分散した分散液であることを特徴とするとともに、粒度分布に1)約21〜約26ミクロンの範囲内の極大、2)約33〜約38ミクロンの範囲内の極大及び3)約50〜約60ミクロンの範囲内の極大という3つの極大が存在することを特徴とする粒度分布をもつことを特徴とする。極大として、これら3つの極大は個体数と粒径の関係を示す図で識別可能なピークとして現れる。ここで強調しておくが、本発明の組成物は個体数と粒度の関係を示す図においてこれら3つの極大の他にも極大をもっていてよいが、これら3つの極大は常に有している。粒度分布のその他の特徴に応じて、組成物の主要な性質は、分布が大粒径側に偏ったときのいわゆる堅いクリーム状の感触から、分布がこれら3つの極大周辺に中心をもつときの軽いクリーム状感触、そして分布が小粒径側に偏ったときの重くべとついた感触へと変化する。これらの数値は粒度分布の分析機器法に特異的であり、具体的には300mmレンズを備えたマルヴァーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)を用いる。
【0031】
本発明での使用に好適な架橋シリコーンポリマー粒子の製造プロセスでは、架橋シリコーンポリマーを調製するが、これは往々にして低分子量シリコーン流体中で行われる。この材料を次いで追加の溶媒でさらに膨潤させてもよく、その溶剤は架橋シリコーンポリマーの調製に使用したものと同一でも異なるものでもよい。次にこの架橋シリコーンポリマーを小粒子へと分解するが、これは往々にして追加シリコーン流体中で行われる。ポリマーを小粒子へと分解する卓越した方法が高流動誘起剪断によるものであるということが本発明の知見である。この方法では、最初に架橋シリコーンポリマーとその他に望まれる溶媒を含むスラリーを希釈し、次いで加圧下でオリフィスに通して流動誘起剪断及び粒子伸長を生じさせる。この方法では、材料がオリフィスを通過する際だけでなくオリフィスへの入口領域でも流動誘起剪断及び粒子伸長が起こる。若干の材料はオリフィスの縁に当たって切断されることもあろうが、架橋シリコーンポリマーを最終的に引き裂いて小粒子を生じるのはこの流動誘起剪断及び粒子伸長である。
【0032】
このプロセスにおける流動誘起剪断の大きさ及びプロフィールは、圧力、オリフィスの幾何構造、並びに流体の温度と流動性と剪断特性とをある程度反映した流体粘度を始めとする幾つかのパラメーターで制御される。圧力は、オリフィスを通しての圧力降下として定義し得る。圧力降下が増すと流動誘起剪断も増大して、架橋シリコーンポリマーはより迅速に粉砕されて所望の粒度及び一段と幅広いより望ましい粒度分布を与える。概して、ある所定のオリフィス幾何構造及び流体粘度について、高流動誘起剪断は高い圧力降下に付随する。
【0033】
ある所定の圧力降下におけるオリフィスの幾何構造も高流動誘起剪断の性状を決定する。オリフィスの幾何構造は非常に融通性の高い特性であって、種々の形状及び大きさが可能である。例えば、オリフィスの開口の形は丸形、卵形、矩形、環状のいずれでもよい。かかるオリフィスは完全に開いたものでも、開口部にピンその他の障害物をもつものでもよい。開口は一箇所でも、同一又は異なる幾何構造のものが多数存在していてもよい。概して、同じ圧力降下及び流体粘度においてオリフィスが大きいほど、粒度の分布は幅広く一段と望ましくなる。同様に、流体が通る流路の長さは長短いずれでもよく、直線的でも曲がっていてもよい。概して、オリフィスの長さが短いほど、流動誘起剪断は増し、粒径が小さく分布幅の広い粒子が生じる。オリフィスの大きさもオリフィスへの入口領域での流動誘起剪断に影響する。そこで、口径の大きい管から小さいオリフィスへと材料が流れるように比を大きくするほど粒度分布は広がる。
【0034】
流体粘度も流動誘起剪断を決定する。流体の粘度が増すほど流動誘起剪断は増大し、それに伴って望ましい結果が得られる。粘度は温度に影響されるが、相対的に高い粘度を与える低くて一定の温度が望ましい。同様に、剪断減粘性を示す材料(ある種のシリコーンがそうした挙動を示すことが知られている)はオリフィスでの流動誘起剪断が低く、そのため粒度が増し、分布が狭くなる。本プロセスに供されるエラストマーの初期スラリーの粘度は測定が難しいこともあろうが、加工処理後は粘度の測定が可能であり、最初に数回プロセスを経るとエラストマー分散液の粘度が上昇する。加工処理される材料はエラストマー粒子が溶媒中に分散又は懸濁した分散液又は懸濁液であるから、粘度はいわゆる固形分レベルの影響を受け得る。固形分レベルが上昇するほど、すなわち溶媒の存在量が徐々に減少するにしたがって、流れ抵抗が増し、これはときに粘度上昇として測定できる。
【0035】
これらのパラメーターは全体として流動誘起剪断を決定する際の大きな因子である。個々の環境に応じて、これら3つのパラメーターのいずれか1以上が実際の流動誘起剪断を決定する際の主要(すなわち最も重要な)因子となり得る。高い動的剪断は架橋粒子を所望の粒度及び分布に粉砕するのに十分なものである。場合によっては、これはオリフィスに1回通すだけで達成されることもあるし、所望の粒度に達するのに数回又はそれ以上通過させる必要があることもある。概して、通過回数を減らし粒度分布を広くするのが経済性及び性能面で望ましく、高流動誘起剪断によって得ることができる。
【0036】
流動誘起粒子伸長は、架橋シリコーンポリマーが加圧下でオリフィスに向かって押し流されて大口径の環境から小口径の開口へと流れて収束する際に起きる。粒子はこの領域を通る際に伸長し、小さな粒子が生じる。重要な因子には、圧力、流体粘度、及び供給チャンバーとオリフィスの断面積比がある。圧力が増すと、粒子の伸長度が増して、一段と効率的な粒度破壊が達成される。同様に、流体の粘度が上昇すると粒子伸長度が増す。供給チャンバーとオリフィスの断面積比が増すと、粒子伸長度が増大する。概して、粒子伸長が増大すると、粒子の粉砕効率が増し、所要通過回数が減る。
【0037】
十分な流動誘起剪断及び粒子伸長のための望ましい圧力範囲は500psiを超える。圧力範囲は好ましくは1000psiを超え、さらに好ましくは1500psiを超え、最も好ましくは2000psiを超える。粘度は500ctksを上回るべきである。粘度は好ましくは750ctksを上回り、さらに好ましくは1000ctksを上回り、最も好ましくは5000ctksを上回るべきである。オリフィスの寸法は、十分な圧力を保つ送液系の能力によって制限される。実際問題として、オリフィスの大きさは0.5平方インチ未満であるのが望ましく、好ましくは0.1平方インチ未満、さらに好ましくは0.05平方インチ未満、最も好ましくは0.01平方インチ未満である。
【0038】
これらの作業変数すべての相互作用が一緒になって、エラストマー分散液の平均粒度を減少させかつユニークな粒度分布を生じるプロセスを与える。一般に、非常に高い圧力降下でエラストマー分散液を加工処理しない限り、所望組成物への変換は1回の通過では達成されない。そこで、加えた圧力降下と材料を所望組成物に変換するためにエラストマー分散液を加工処理装置に通さなければならない回数との間にはある相関関係が存在する。このことは次の無次元の関係式に反映され、この関係式によってある所定の圧力降下Pについて条件に適う材料を生じるのに必要な通過回数Nが決定される。
【0039】
=82799P(−1.1696)
この等式はある程度恣意的であり、何をもって条件に適う材料とみなすかの定義によって変わる。粒度分布において1)約21〜約26ミクロンの範囲内の極大、2)約33〜約38ミクロンの範囲内の極大及び3)約50〜約60ミクロンの範囲内の極大の3つのピーク(すなわち3つの極大)で特徴付けられる粒度分布をもつ材料は条件に適う材料とみなされる。
【0040】
さらに、得られる平均粒度S(avg)(マルヴァーンマスターサイザー(商標)で測定)と、圧力降下P、オリフィス断面積O及び通過回数Nとを関連付ける無次元の関係式を作ることができる。
(avg)=K+C+C+C
ここで、Kは切片であり、各Cはそれぞれの変数に付随する係数、すなわち、Cは圧力降下係数、Cはオリフィス断面積係数、Cは通過回数係数である。各種作業範囲を以下の表に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
通過回数Nは圧力降下Pと相関しているので、通過回数についての式を平均粒度式に代入することができる。この数学的代入はプロセスの強い圧力降下依存性を強調する。簡単に述べると、(本発明の組成物を得るための)本発明の方法は、エラストマー分散液を圧力に付し、特定の圧力降下にてオリフィスに通して、平均粒度を減少させるとともに粒度分布にある特定の極大を生じさせるプロセスである。圧力降下及びオリフィスによってかかる変換を達成するプロセスはすべて本発明の方法である。なお、本明細書中でいう圧力降下はポンド毎平方インチ(psi)の次元を有し、オリフィス断面積は平方インチ(in)という次元を有し、粒度もしくは平均粒度はミクロンの次元を有する。オリフィス寸法が減少すると、処理量を維持するため圧力を上げなければならない。そのため、上記の範囲では小さい方のオリフィス寸法を「最大」との見出しを掲げた欄に記載した。小さなオリフィス寸法と大きな圧力は包括的に同じ効果を生じるからである。
【0046】
最後に強調しておくが、プロセス変数の等式の切片と係数は使用する個々の機械に応じて変動し得る。本明細書に挙げたデータは幾つかの特定の機械での相関関係の結果を表すもので、定義もしくは限定をなすものではなく例示的なものである。そこで、プロセス変数をかなり正確に規定したが、切片K及び係数C、C、Cが実際のプロセス変数となるよりも本明細書に記載した値から外れる可能性の方が高い。実際に使用する機械及びプロセス条件並びにプロセス変数関係式の切片及び係数の実際の値とは無関係に、粒度を本明細書に規定したものに変換するプロセスはすべて特許請求の範囲に属する。
【0047】
望ましい粒度の発生は、流動誘起剪断及び粒子伸長を適用する前の粒子の膨潤度によってある程度決定される。粒子が溶媒で膨潤すると、内部応力が発生して、粒子を引き裂くのに必要な剪断及び粒子伸長のレベルが下がる。そのため、加工処理するスラリー中の架橋シリコーンポリマーの膨潤度が高いか濃度が低いほど、内部応力が増して、プロセスの効率が高くなる。架橋ポリマー濃度を固形分60重量%未満に希釈するのが望ましい。架橋シリコーンポリマーを固形分50重量%未満に膨潤又は希釈するのが好ましく、架橋ポリマーを固形分40重量%未満に膨潤するのがさらに好ましく、架橋ポリマーを固形分含量30重量%未満に希釈するのが最も好ましい。
【0048】
初期生成ゲルの流動抵抗は高速混合又は剪断処理によって克服され、得られる組成物もしくは混合物は均一な液体となって25℃で約500〜約150000センチストークスの粘度を有するようになるが、さらに好ましくは得られる組成物もしくは混合物の粘度は25℃で約1000〜約100000センチストークスであり、最も好ましくは得られる組成物もしくは混合物の粘度は25℃で約10000〜約60000センチストークスである。剪断という用語は、組成物に対して力を加えることを意味しており、混合物は二本ロールミル、コロイドミル、ゴーリン(Gaulin)ホモジナイザー、ソノレーター(Sonolator)、ロス(Ross(商標))ミキサー、マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)などを用いて処理される。本発明の方法で加工処理されるエラストマー分散液はエラストマーゲルと低分子量シリコーンからなる。本発明の組成物を得るのに用いられる本発明の方法は、エラストマー分散液又はゲルの分散液又はゲルに適用し得る。これらの組成物を剪断力に付すと、ユニークな粒度分布をもつ本発明の組成物の存在により、パーソナルケアもしくは化粧用に適した改善された塗布性及び質もしくは感触をもつ成分を生じる。
【0049】
これらの材料は、シリコーン自体でも別の適当な溶媒中のシリコーンの分散液であっても、乳化して従来の水中油型又は油中水型エマルジョンを形成し得る。通例、かかる乳化には適当な界面活性剤の添加を要する。さらに重要なことは、これらの新規材料は非水性有機ヒドロキシル溶媒で乳化することができ、この場合、非水性相の一つはエマルジョンの連続相である。かかる非水性有機ヒドロキシル溶媒は、アルコール類、グリコール類、多価アルコール類及びポリマー状グリコール類又はそれらの混合物で、室温(例えば25℃)及び約1気圧で液体であるものからなる群から選択される。好ましくは、非水性有機ヒドロキシル溶媒は、エチレングリコール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、メチルプロパンジオール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン共重合体及びこれらの混合物からなる群から選択される。これらの様々なヒドロキシル非水性溶媒の使用は、非水性エマルジョンから調製される化粧組成物の美的性質に影響するであろう。
【0050】
本発明のエマルジョンの調製に有用な乳化剤は、シリコーン含有乳化剤、ソルビタン化合物から誘導される乳化剤及び脂肪アルコールから誘導される乳化剤からなる群から選択され、さらに好ましくは、乳化剤は脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンオレエート、ソルビタンイソステアレート、ポリグリセリル−3−オレエート、ラウレス−4(laureth−4)やラウレス−7(laureth−7)やデセス−12(deceth−12)やステアレス−10(steareth−10)のようなアルコキシル化アルコール、ジメチコーンコポリオールやセチルジメチコーンコポリオールやラウリルメチコーンコポリオールのようなシリコーン化合物のヒドロキシル化又はアルコキシル化誘導体、ポリグリセリル−4−イソステアリルのようなグリセリルエステル並びにこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、乳化剤はジメチコーンコポリオールであり、これはシリコーンオイル又はシクロメチコーン希釈剤に分散してもしなくてもよい。
【0051】
本発明のエマルジョンを使用し得るパーソナルケア用途には、特に限定されないが、デオドラント類、発汗抑制剤、スキンクリーム、フェイシャルクリーム、ヘアケア製品、例えばシャンプー、ムース、スタイリングジェル、保護クリーム、例えばサンスクリーン、並びにカラー化粧品、例えばリップ製品又は口紅、ファンデーション、頬紅、メークアップ及びマスカラなど、さらにはシリコーン成分の添加が従前行われてきたその他の化粧品がある。これらの化粧組成物はおそらく組成物の外観又は機能を改良するために設計されたその他の材料も含んでいるであろうし、本発明の組成物で調製された化粧組成物それ自体はさらにエモリエント、顔料、着色剤、芳香剤、保存料、ホルモン、薬効化合物、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン、塩類、紫外線(UV)吸収剤及び植物エキスをさらに含有し得る。本発明の組成物は、皮膚に塗布される医薬組成物の局所塗布用ドラッグデリバリーシステムとしての有用性も有している。
【0052】
本明細書で引用したすべての米国特許の開示内容は文献の援用によって本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0053】
例1(調製例):揮発性低分子量シリコーンオイル中での架橋シリコーンポリマーの調製
反応容器内で所定のシリルハイドライド種、所定のビニル種及び揮発性低分子量シリコーンオイルを混合することによって架橋シリコーンポリマーを調製した。かかる混合物に、標準的なヒドロシリル化触媒を加えた。白金触媒存在下でのヒドロシリル化は米国特許第3159601号、同第3159662号、同第3220972号、同第3715334号、同第3775452号及び同第3814730号に記載されており、その開示内容は文献の援用によって本明細書に取り込まれる。ヒドロシリル化触媒を含んだ混合物を加熱して、所定の条件下で反応させた。例えば、(MQ)(w=2、z=1、j=4)1.11g、33750g/当量ビニルの当量のビニル末端シロキサン250g、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン650gをドウミキサーに入れて撹拌した。オクタメチルシクロテトラシロキサン中0.11%の白金触媒100gを加えた。反応系を撹拌し80℃に2時間加熱した。反応を冷却し、生成物を単離した。この一般的手順にしたがって組成物A〜Tを調製した。これらの標品におけるビニルシロキサンは以下の通り種々変えた。
【0054】
1)ジビニルシロキサン(A)はMviviであり、ここでMviはRSiO1/2であるが、Rは(CH=CH)であってR及びRは各々独立にCHであり、かつDはRSiO2/2であるが、R及びRは各々独立にCHであり、xは約450〜約1250である;
2)モノビニルシロキサン(B)はMviMであり、ここでMviはRSiO1/2であるが、Rは(CH=CH)であってR及びRは各々独立にCHであり、かつDはRSiO2/2であるが、R及びRは各々独立にCHであり、yはほぼ200に等しく、MはR10SiO1/2であるが、R、R及びR10は各々独立にCHである;
3)ペンタビニルシロキサン(C)はMDviMであり、ここでMはR10SiO1/2であるが、R、R及びR10は各々独立にCHであり、DはRSiO2/2であるが、R及びRは各々独立にCHであり、iはほぼ200に等しく、DviはDvi=RSiO2/2であるが、Rは(CH=CH)であってRは独立にCHであり、かつkはほぼ5に等しい。
【0055】
【表5】

【0056】
標品A〜Gはヒドロシリル化反応のハイドライド対ビニル比の変化について調べたものである。標品E、H及びIは、ヒドロシリル化反応のビニル成分の分子量の変化について調べたものである。標品E及びJは揮発性低分子量シリコーンオイルの変化について調べたものである。ジビニルシロキサンAというただ1種類のビニルシロキサン化合物しか用いていない表1に示す標品とは対照的に、以下の標品ではジビニルシロキサンAとモノビニルシロキサンBの2種類のビニルシロキサン化合物の混合物を利用した。
【0057】
【表6】

【0058】
標品K〜Oは、一定のハイドライド対ビニル比において、ジビニルシロキサンAとモノビニルシロキサンBの比を変化させたものである。標品P〜Rは、標品K〜Oとは異なる一定のハイドライド対ビニル比において、ジビニルシロキサンAとモノビニルシロキサンBの比を変化させたものである。ジビニルシロキサンAというただ1種類のビニルシロキサン化合物しか用いていない表1に示す標品とは対照的に、以下の標品ではジビニルシロキサンAとペンタビニルシロキサンCの2種類のビニルシロキサン化合物の混合物を利用した。
【0059】
【表7】

【0060】
表3に示す標品は、表2に示す標品とは、架橋物の調製に使用したビニルシロキサンの混合物が異なる。
例2(調製例):揮発性低分子量シリコーンオイルでの架橋ゲルの希釈
例1で製造した架橋ゲルをさらに揮発性低分子量シリコーンオイルで希釈してスラリーとした。希釈に使用した揮発性低分子量シリコーンオイルは架橋ゲルの調製に使用したものと同一又は異なるものであった。スラリーをホモジナイザー内で剪断力に付して、特定の化粧用途に望まれる粘度の透明生成物を生じさせた。剪断力に付したゲル揮発物スラリーの粘度は25℃において約100センチストークスから約100000センチストークスを超えるものまでであった。例えば、400gの標品Eを1600gのD(オクタメチルシクロテトラシロキサン)とブレンドした。標品Eは架橋ポリマーを25重量%、すなわち100g含んでおり、上記のD中のEのスラリーはポリマー濃度5重量%である。このD中5重量%架橋ポリマーの混合物を7000psiの圧でゴーリンホモジナイザーに通した。得られた物質は透明で、25℃で120000センチストークスの粘度を有していた。この一般的手順による他の材料の調製を表4に示す。
【0061】
【表8】

【0062】
これらのデータは以下のことを示している。
1)ハイドライド対アルケニル(ビニル)比がアルケニル1.0に対しハイドライド0.7から1.6へと変化するにしたがい、生成ゲル粘度が増大すること、
2)アルケニル成分の分子量の増加に伴い、架橋部位間
の距離が広がって
(1)揮発性シリコーン添加時の初期生成ポリマーゲルの膨潤能力が高まり、かつ
(2)粘度が増大すること、並びに
3)アルケニル前駆体の平均官能価を1.3から2.0に高めると、架橋密度が増大し、かつ得られる生成物の粘度が高まること。
【0063】
例3(調製例):低架橋密度ゲルと高架橋密度ゲルとの比較
本発明の加工処理ゲルは、ビニル基についての当量がかなり低いビニルシロキサンとMQ樹脂の使用により、高い架橋密度を有している。比較のため、低架橋密度のゲルを調製した。例1のゲルの調製について概略した手順を、(平均)1分子当たり2当量のハイドライドしか含まない線状ハイドライドシロキサン及び1分子当たり2当量のビニル基しか含まないビニルシロキサンについて利用した。例えば、分子量約1818の水素末端シロキサン2.02g及び分子量67500のビニル末端シロキサン75gを425gのオクタメチルシクロテトラシロキサンと混合した。この混合物を前述の通り撹拌して10ppmの白金触媒を加えた。この混合物を80℃に5時間加熱した。生成物を冷却して単離した。粘度は25℃で88.5センチストークスであった。この結果は、低官能価成分で製造したシロキサンポリマーは架橋度が低く、そのため揮発性シロキサンの粘度調節には効率が低いことを実証している。
【0064】
エラストマー固形分含量
生成物中の固体エラストマーパーセントは、秤量試料を150℃のオーブンに45分間入れて重量損を観測することで決定した。
粘度
流動誘起剪断及び伸長の下で加工処理した後のエラストマー/揮発性シロキサン溶液の粘度を、該加工処理試料を4RPMのT−Cスピンドル付きブルックフィールド(Brookfield)RVT粘度計に入れて24時間後に測定した。
【0065】
美的評価
少量の試料を皮膚に塗布し、溶媒が広がって蒸発するまで塗り込むことにより、「ゲル球」の存在についてエラストマー/揮発性シロキサン試料を評価した。このプロセスに際して、加工処理の不十分な材料において望ましくないごく小さなシリコーン球の存在が観察された。
【0066】
粒度
粒度分析は300mmレンズを備えたマルヴァーンマスターサイザー(商標)を用いて行った。なお、測定粒度は、粒度の測定に用いた装置のタイプが異なればそれに伴って変動する。粒度は本来無条件に決定できるものと思われるが、実際には粒度の測定に用いた機械によって左右される。したがって、本明細書に記載した粒度はマルヴァーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)で決定したものであり、他の実施者が別の機械を使用する場合にはそれらの機械をマルヴァーンマスターサイザーで求めた粒度に対して参照又は較正しなければならない。概して環状シロキサン90〜95%にエラストマー5〜10%を膨潤させた所望の材料(10g)を、イソプロパノール(IPA)とデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)の50/50混合物(40g)に溶解した。この溶液を次いでマルヴァーンマスターサイザーの液溜めに予め入れておいた50/50のIPA/D5約500gに加えた。得られた溶液を機器内で5分間循環させ、測定を3度重複して行った。マルヴァーンマスターサイザーでの測定限界は300mmレンズで1から600ミクロンの範囲である。45mmレンズも使用してさらに小さな粒子を探したが、有意の数では発見されなかった。ゲル球を生じ得るような600ミクロンを超える粒子は本方法では視認されなかった。
【0067】
初期の実験では、本発明で調製した粒子はエラストマー含量5%及び環状シロキサン95%のような薄い物質中では十分に膨潤しなかった。しかし、エラストマーをさらに希釈してエラストマー含量約3%未満にすると粒子は完全に膨潤する。そこで、この実験で測定した粒度は十分に希釈された粒子についてのものであるが、大半の用途で用いられるものの実際の体積は利用可能な溶媒量に応じて小さくなる。所定の粒子組成物については、追加溶媒をどれだけ吸収し得るか測定可能であるので、十分に希釈した粒子の大きさが分かれば、あらゆる濃度において粒度を逆算することが可能である。さらに、比較的高いエラストマー濃度で比較的小さな粒子を調製し、次いでそれを追加溶媒で膨潤させて大きな粒度とすることも本発明の範囲に属する。
【0068】
例4(調製例)
エラストマー試料の調製
エラストマー試料の調製を、低分子量揮発性シロキサン、ビニルシロキサン及びシリルハイドライドを混ぜ合わせて混合することによって行った。続いて、白金触媒を添加し、80℃にゆっくりと加熱してエラストマーを硬化させた。この作業は、得られるエラストマーが後の加工処理段階に適合するように小片に分解されるのを促すため、撹拌しながら実施した。
【0069】
例えば、典型的な例では、ハイドライド含量0.92%の[(HMeSiO)SiO]7.28g、ビニル含量0.089%のビニル末端ポリシロキサン1500g及びデカメチルシクロペンタシロキサン4500gを10リットルのドレイス(Drais)ミキサーに入れて20℃で混合した。次いで白金触媒を加え、温度を80℃にゆっくりと上げて2時間保温した。次いで生成物をドレイスミキサーから取り出して、以下の例で使用した。
【0070】
例5(調製例)
希釈
上記で製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンを、高流動誘起剪断及び伸長に付す前に、同一又は異なる低分子量シロキサンでさらに希釈した。一般に、加工処理を容易にするとともに架橋ポリシロキサン粒子に追加の応力を加えるべく、25%エラストマー/揮発性シロキサンを固体エラストマー含量約5〜7%に希釈した。
【0071】
典型的な例では、加工処理前に、25%エラストマー/揮発性シロキサン450gをデカメチルシクロペンタシロキサン1550gに加えて膨潤させた。加工処理後、この溶液の固体エラストマー含量を上記の方法でチェックしたところ5.62%であった。
【0072】
例6(調製例)
ソノレーター加工処理材料
エラストマー/揮発性シロキサンの上記希釈溶液を、オリフィスが一定圧力に維持されるようにポンプでソノレーターユニットに供給した。複数の実験でオリフィスの大きさを変えた。次いで流量を求めるために処理量を測定した。加工処理は回分式通過又は供給チャンバーに再循環することで行い、後者の場合処理量と加工処理時間から通過回数を求めた。試料は所望の時間間隔で試料ループの端から直接採取した。
【0073】
ゴーレン(Gaullen)ホモジナイザー
ゴーレンホモジナイザーは、稀釈試料に対して、供給原料、回分式通過及び経時通過回数に関してソノレーターと同様に操作した。圧力の測定値は、オリフィスピン上の圧力設定によって調節された供給チャンバー内で測定した圧力からとった。
【0074】
マイクロフルイダイザー
マイクロフルイダイザーには、一般に、予め希釈してあり、ローター/ステーターミキサーで1mmを優に超える粒度から平均約1000ミクロンへと粒度を低下させてある材料を供給した。次に材料を回分式通過でマイクロフルイダイザーに送液した。マイクロフルイダイザーは2つのチャンバーを用いて操作した。すべてのケースで、最初はH30Zチャンバーであり、二番目はJ30Yチャンバー又はそれより小型のJ20Yチャンバーのいずれかであった。
【0075】
圧力関連実験
A)上記で製造した25%エラストマー/揮発性シロキサン生成物をペンタメチルシクロペンタシロキサンで固体エラストマー含量約5.5%に希釈した。この材料をソノレーターに300psiで循環し、次の通りサンプリングした。
【表9】


この実験は、低い圧力では、サイクル数を非常に多く増やしても材料が十分に小さな粒子に分解されず、美的基準に適う高粘度の材料を形成しなかったことを示している。
【0076】
B)同様に、デカメチルシクロペンタシロキサンを用いて25%エラストマー/揮発性シロキサンを5.62%に希釈した。この材料をソノレーターで1000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
通過回数 18 30
粘度 40000 33000
美的 僅かなゲル球 ゲル球なし
粒度
ピークの中心及び体積面積%
23.5μm 0.50% 2.54%
36.5 8.04 19.23
53.0 24.23 31.93
65.1 46.30
71.7 66.52
C)上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。この材料をソノレーターで4500psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0077】
通過回数 3 4
粘度
美的 ゲル球なし ゲル球なし
粒度
ピークの中心及び体積%
13.4μm 0.08% 0.28%
23.3 3.70 9.11
36.2 9.37 9.14
52.0 12.46 18.31
71.5 74.40
75.0 63.16
例6のA、B及びCは、圧力の増加による流動誘起剪断及び伸長の増大で、架橋ポリシロキサンを加工処理するための格段に迅速かつ経済的な(少ない通過回数で許容し得る美的基準に達する)方法が提供されることを示している。同時に、生成物の粘度は高流動誘起剪断・伸長試料において劇的に高く、高粘度クリームの維持が重要であるような処方製品で架橋ポリシロキサンの必要量が少なくてすむという点においても顕著な利点である。例6のBとCの粒度の対比から、高流動誘起剪断・伸長にて3回の通過で製造された材料は、低い流動誘起剪断・伸長で製造された同等の試料よりも粒度分布が広い(大粒子及び小粒子共に多い)ことが分かる。この結果は、高流動誘起剪断・伸長試料が大きな粒度による高粘度と小さな粒度による皮膚塗布時の滑らかな感触を共に有するという利点をもっているということである。
【0078】
例7(調製例)
A)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料を上記のゴーリンホモジナイザーで4000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0079】
通過回数 11 45
粘度 2640 20300
美的 ゲル球 少数のゲル球
粒度
ピークの中心及び体積%
23.3 4.32
36.2 11.88
54.3 28.56
88.3 55.23
B)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料を上記のゴーリンホモジナイザーで7000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0080】
通過回数 5
粘度 78100
美的 ゲル球なし
粒度
ピークの中心及び体積%
23.3 5.73
36.2 7.48
52.0 20.26
88.4 66.52
例7のAとBの対比から、圧力の増加によって流動誘起剪断及び伸長が増大すると、ゲル球のない許容し得る生成物を製造するのに必要な通過回数が格段に減ることが分かる。加えて、流動誘起剪断及び伸長が高いと高い粘度が得られる。高流動誘起剪断・伸長にて5回通過させた後の粒度は、低い流動誘起剪断・伸長にて45回通過させた後の粒度よりも幅が広い。この結果は、大きな粒子による高い粘度と小さな粒度による優れた感触及び流動特性をもたらす点で有利である。
【0081】
例8(調製例)
A)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料をマイクロフルイダイザーで6000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0082】
通過回数 1
粘度 <10000
美的 ゲル球
B)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料をマイクロフルイダイザーで18000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0083】
通過回数 1
粘度 >60000
美的 ゲル球なし
C)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料を大きなJ30Yチャンバーを用いたマイクロフルイダイザーで16000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0084】
通過回数 1
粘度 84400
美的 ゲル球なし
粒度
ピークの中心及び体積%
24.3 1.49
36.1 3.91
51.3 6.98
71.2 34.58
117.7 53.03
例8のA、B及びCは、マイクロフルイダイザーにおける圧力を増加して流動誘起剪断及び伸長を増大させると、生成物が所望の高粘度を有する美的基準を満たす材料へと効率的に加工処理されることを示している。高流動誘起剪断・伸長は幅広い粒度分布ももたらす。
【0085】
オリフィス寸法関連実験
例9(調製例)
A)上記の通り調製した25%エラストマー/揮発性シロキサン試料をオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの85/15ブレンドで5%に希釈した。材料を小型のJ20Yチャンバーを用いたマイクロフルイダイザーで16000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0086】
通過回数 1
粘度 172750
美的 ゲル球なし
粒度
ピークの中心及び体積%
23.5 0.12
35.8 0.62
51.9 2.83
72.7 5.10
132.7 91.33
例9と例8Cの対比から、圧力を維持したままオリフィス寸法を減少させると粒度分布の幅が狭くなることが分かる。
【0087】
例10(調製例)
A)上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。材料をオリフィス寸法0.0021のソノレーターで4500psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0088】
通過回数 1
粘度 NA
美的 ゲル球
粒度
ピークの中心及び体積%
23.4 0.69
35.8 2.16
56.7 15.72
111.5 81.43
B)上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。材料をオリフィス寸法0.0008のソノレーターで4500psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0089】
通過回数 1
粘度 NA
美的 ゲル球
粒度
ピークの中心及び体積%
23.4 0.39
35.8 1.63
60.7 22.21
111.5 75.77
【0090】
例11(調製例)
A)上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。材料をオリフィス寸法0.0021のソノレーターで4500psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0091】
通過回数 2
粒度
ピークの中心及び体積%
23.5 1.32
36.4 4.35
51.8 7.90
71.5 20.06
118.9 66.36
B)上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。材料をオリフィス寸法0.0008のソノレーターで4500psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【0092】
通過回数 2
粒度
ピークの中心及び体積%
23.4 1.39
36.4 4.62
52.0 7.84
71.4 21.09
120.0 65.05
例10のAとBは、広いオリフィス寸法で粒度分布の幅が広がったことを実証している。これらの例では、架橋エラストマーは、ゲル球のない所望の美的基準に達するのに十分な剪断に付さず、さらに何回か通過させた。例8のAとBでさらに何回か通過させたところ、各々のオリフィス寸法での粒度分布は粒子がオリフィスを通過する際の粒子の位置のランダム化の結果として類似したものになった。概して、オリフィス寸法の粒度分布に対する影響は、ソノレーターの方がオリフィスの通路長が短いことを反映してマイクロフルイダイザーほど顕著でない。ソノレーターでは通路長が短いため、材料がオリフィスに入る前に圧縮されるので大きな流動誘起剪断及び粒子伸長が生じる。これはいずれのオリフィス寸法についても同様であるので、オリフィス寸法に伴う変化が少ない。
【0093】
粘度関連実験
例12(調製例)
上記の通り製造した25%エラストマー/揮発性シロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサンで5.5%に希釈した。これに粘度350cpsのポリジメチルシロキサンを10重量%添加混合した。このポリジメチルシロキサン油は架橋ポリシロキサンエラストマーに完全には浸透せず、むしろその表面をコートして粘度の劇的な低下を引き起こすことが観察された。この粘度低下は全加工処理段階を通じて観察された。
【0094】
上記材料をオリフィス寸法0.0008のソノレーターで1000psiにて加工処理し、次の通りサンプリングした。
【表10】


同一圧力で実施した例12と例6Bを対比すると、粘度が粒度範囲の生成に臨界的重要性をもつことが分かる。例えば、粘度を約400ctksに下げると、粒度はさらにサイクル数を増やしても大きすぎるまま残り、小粒子は極めてゆっくりとしか生じない。低粘度では、粒子を分解するための流動誘起剪断及び伸長が低い。
【0095】
粒度分布特性実験
本発明の方法で本発明の材料を製造する際、所定圧力での通過回数に応じて、本発明の組成物に必要な3つの粒度範囲を、それらの粒度範囲の割合が異なっていて感触に主観的な差を与えるような割合で、有する材料を製造することができる。
【0096】
【表11】

【0097】
100〜600ミクロンの大きな平均粒度を有する物質は市販ゼラチン食品に似た濃厚なコンシステンシーを有する。皮膚に塗布する際、この物質は皮膚に塗り込むのが困難で、皮膚に広がるというよりはむしろ粘着して、容易には皮膚に潤いを与えず、薄膜も形成しない。
【0098】
【表12】

【0099】
50〜150ミクロンの範囲の中程度の平均粒度を有する物質は滑らかでクリーミーなプディング様コンシステンシーを有する。皮膚に塗布する際、この物質は皮膚に塗り込むときに若干の抵抗を示し、クッション又はスポンジ様の感触を生じて主観的な充足感をもたらす。
【0100】
【表13】

【0101】
小さな平均粒度を有する物質は薄い流体様コンシステンシーを有する。皮膚に塗布する際、この物質は全く或いはほとんど抵抗なく容易に皮膚に広がって、当初は重い又はべとついた感触を生じる。しかし、いったん皮膚に塗布すると、この物質は皮膚に滑らかでシルキーな感触をもたらす。なお、本発明の組成物の3つの例はすべて本発明に特徴的な特定粒度を有している。
【0102】
非水性シリコーンエマルジョンの調製
例13(実施例)
各々下記の組成を有する2つの混合物AとBを一緒にブレンドすることにより、発汗抑制剤又はデオドラントとして有用な透明ゲル無水エマルジョンを調製した。
【0103】
パートA: 材 料 重量%
シクロメチコーン中40.0wt%のジメチ
コーンコポリオール溶液 2.5
膨潤エラストマー(例12のように、シクロ
メチコーン中に膨潤したエラストマーゲル) 7.0
フェニルトリメチコーン 14.5
パートB:
ポリソルベート80(登録商標) 0.25
プロピレングリコール 47.42
プロピレングリコール中30%ZAG 23.33
エタノール 5.00
調製は以下の通り行った。
1)パートAをなす成分を一緒に混合した;
2)プロピレングリコールの3%を後で使用するために取っておき、ポリソルベート80(登録商標)とエタノールをプロピレングリコール中に溶解した;
3)プロピレングリコール中ZAG溶液(30wt%アンモニウムジルコニウムペンタクロロハイドレックスGLY)を上記のポリソルベート80(登録商標)及びエ
タノールプロピレングリコール溶液に添加した;
4)パートA及びパートB双方の屈折率を測定し、パートBの屈折率がパートAの屈折率と0.00010RI単位の範囲内で一致するように様々な屈折率の液体を用いて調整した;
5)屈折率が上記の所望範囲内で一致したら、穏和な剪断混合を用いてパートBをパートAにゆっくりと加え、混合物が濃化されるにしたがって剪断混合を徐々に高め、このようにして撹拌を15分間継続し、かつ
6)エッペンバッハ(Eppenbach;商標)ミキサーのような高速剪断ミキサーで約2分間ホモジナイズした。
【0104】
エマルジョンをなす2相の屈折率を一致させる目的は、分散相の粒度とは無関係に裸眼でみて透明なエマルジョンを調製するためである。そこで、2つの非混和性相の屈折率を一致させることで、本発明の実施形態を透明なものとして調製し得る。これは、適宜高又は低屈折率のいずれかの相に適当な液体成分を添加することによって達成し得る。
【0105】
例14及び15(実施例)
以下の成分を用いて、例13の手順に従った。
パートA: 材 料 重量%
シクロメチコーン中40.0wt%のジメチ
コーンコポリオール溶液 2.5
膨潤エラストマー(例12のように、シクロ
メチコーン中に膨潤したエラストマーゲル) 7.0
フェニルイソプロピルシロキサン 14.5
パートB:
ポリソルベート80(登録商標) 0.25
プロピレングリコール 55.75
プロピレングリコール中35%ZAG4
(35wt%アンモニウムジルコウムペンタ
クロロハイドレックスGLY) 20.00
パートBをパートAに添加した後、試料を2つにほぼ等分し、例14ではホモジナイズを行わず、例15ではエッペンバッハ(商標)ホモジナイザーを用いて約2分間ホモジナイズした。調製した材料はブルックフィールド粘度計を用いて25℃で粘度測定し、室温、40℃及び凍結融解条件下での安定性を試験した。表5は粘度及び安定性を示す。
【0106】
【表14】

【0107】
これらの例は、調製に高剪断ホモジナイズ処理を用いるか否かを問わず、本発明のエマルジョンが安定であることを実証している。
【0108】
例16(比較例)
以下の成分を用いて、例13の手順に従った。
【0109】
パートA: 材 料 重量%
シクロメチコーン中40.0wt%のジメチ
コーンコポリオール溶液 2.5
膨潤エラストマー(シクロメチコーン中に膨
潤したエラストマーゲル) 0.0
シクロメチコーン 7.0
フェニルイソプロピルシロキサン 14.5
パートB:
ポリソルベート80(登録商標) 0.25
プロピレングリコール 55.75
プロピレングリコール中35%ZAG4 20.00
【0110】
【表15】

【0111】
材料の説明
1.シクロメチコーンは一般式((CHSiO)(ただし、xは3〜6)を有する揮発性環状ジメチルシロキサンの混合物である。
2.ジメチコーンコポリオールは、ポリアルキレンで改質された共重合シロキサンであり、式MD500D’6.5M(ただし、M=(CHSiO1/2、D=(CHSiO2/2、及びD’=(CH)SiO((OC20.5(OC15.5OHである)を有する。
3.フェニルトリメチコーンは(C)Si(OSi(CHである。
4.フェニルイソプロピルシロキサンは、M’DM’(ただし、M’は((C)CH(CH)CH)(CHSiO1/2であり、Dはジメチコーンコポリオールについて上記で定義した通りである)又はMD”M(ただし、Mはジメチコーンコポリオールについて上記で定義した通りであり、D”は((C)CH(CH)CH)(CHSiO2/2である)である。
5.膨潤エラストマーゲル(本発明のシリコーン組成物)は、25℃で粘度約1000センチストークス未満の第二のシリコーンの存在下でのMvivi2−aと(Mの付加生成物であって、該付加生成物はゲルであり、ゲルの粒度分布は調節されていて
a)約21〜約26ミクロンの範囲内の極大、
b)約33〜約38ミクロンの範囲内の極大、及び
c)約50〜約60ミクロンの範囲内の極大
を含む。
【0112】
これらの例は膨潤エラストマー分散液を含まないエマルジョンは凍結融解安定性をもたないことを実証している。
【0113】
例17及び18(実施例)
各々下記の組成を有する2つの混合物AとBを一緒にブレンドすることにより、発汗抑制剤として有用な透明固形無水エマルジョンを調製した。
【0114】
パートA: 材 料 重量%
シクロメチコーン中40.0wt%のジメチ
コーンコポリオール溶液 2.5
「Gransil(商標)」として市販の膨
潤エラストマー(米国特許第5571853
号に記載の、シクロメチコーンで膨潤したエ
ラストマーゲル) 7.0
フェニルイソプロピルシロキサン 14.5
パートB:
ポリソルベート80(登録商標) 0.25
プロピレングリコール 55.75
プロピレングリコール中35%ZAG4 20.00
調製は以下の通り行った。
1)パートAをなす成分を一緒に混合した;
2)プロピレングリコールの3%を後で使用するために取っておき、ポリソルベート80(登録商標)とエタノールをプロピレングリコール中に溶解した;
3)プロピレングリコール中のZAG溶液を上記のポリソルベート80(登録商標)及びエタノールプロピレングリコール溶液に添加した;
4)パートA及びパートB双方の屈折率を測定し、パートBの屈折率がパートAの屈折率と0.00010RI単位の範囲内で一致するように様々な屈折率の液体を用いて調整した;
5)屈折率が上記の所望範囲内で一致したら、穏和な剪断混合を用いてパートBをパートAにゆっくりと加え、混合物が濃化されるにしたがって剪断混合を徐々に高め、このようにして撹拌を15分間継続し、かつ
6)エッペンバッハ(Eppenbach;商標)ミキサーのような高速剪断ミキサーで約2分間ホモジナイズした。
【0115】
パートBをパートAに添加した後、試料を2つにほぼ等分し、例14ではホモジナイズを行わず、例15ではエッペンバッハ(商標)ホモジナイザーを用いて約2分間ホモジナイズした。調製した材料はブルックフィールド粘度計を用いて25℃で粘度測定し、室温、40℃及び凍結融解条件下での安定性を試験した。表7は粘度及び安定性を示す。
【0116】
【表16】

【0117】
これらの例は、エラストマーの調製に使用した成分とは無関係に、膨潤エラストマーが非水性エマルジョンの調製を可能にすることを実証している。
【0118】
例19(比較例)
以下の成分を用いて、段階6のホモジナイズ処理以外は例13の手順に従った。
【0119】
パートA: 材 料 重量%
シクロメチコーン中40.0wt%のジメチ
コーンコポリオール溶液 2.5
シクロメチコーン 7.0
フェニルイソプロピルシロキサン 14.5
パートB:
ポリソルベート80(登録商標) 0.25
プロピレングリコール 55.75
プロピレングリコール中35%ZAG4 20.00
例19で調製した材料は1回の凍結融解サイクルで3つの非混和性液層に分離した。これらの結果は、キャリア溶媒中のシリコーンエラストマーの分散液が非水性エマルジョンを安定化することを実証している。さらに、これらの結果は、エラストマー分散液の安定化効果が、エラストマーの調製に使用した前駆体アルケニルシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサン化合物には依存しないことを示唆している。
【0120】
本発明のエマルジョンを使用し得るパーソナルケア用途には、特に限定されないが、デオドラント類、発汗抑制剤、スキンクリーム、フェイシャルクリーム、ヘアケア製品、例えばシャンプー、ムース、スタイリングジェル、保護クリーム、例えばサンスクリーン、並びにカラー化粧品、例えばリップ製品又は口紅、ファンデーション、頬紅、メークアップ及びマスカラなど、さらにはシリコーン成分の添加が従前行われてきたその他の化粧品がある。これらの化粧組成物はおそらく組成物の外観又は機能を改良するために設計されたその他の材料も含んでいるであろうし、本発明の組成物で調製された化粧組成物それ自体はさらにエモリエント、顔料、着色剤、芳香剤、保存料、ホルモン、薬効化合物、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン、塩類、紫外線(UV)吸収剤及び植物エキスをさらに含有し得る。本発明の組成物は、皮膚に塗布される医薬組成物の局所塗布用ドラッグデリバリーシステムとしての有用性も有している。化粧料、パーソナルケア及びドラッグデリバリーシステム組成物を調製することのできる本発明のエマルジョンを含む基礎組成物の非限定的な例として、非水性エマルジョン安定化用エラストマーゲルを含まない同様の標品と対比して以下の例を例示する。
【0121】
【表17】

【0122】
例20及び21の材料は以下の通り一緒に混合した。
1)パートAの成分を一緒に混合し、ついで
2)穏和な剪断混合を用いてパートBをパートAにゆっくりと添加した。
調製した材料はブルックフィールド粘度計を用いて25℃で粘度測定し、室温、40℃及び凍結融解条件下での安定性を試験した。調製した例20及び21は曇っているか半透明で、共にエマルジョンであることを示していた。このことはプロピレングリコール及びシリコーンが連続相と不連続相からなるエマルジョンを形成したこと並びに両相とも非水性であることを示す。表8に粘度及び安定性を示す。
【0123】
【表18】

【0124】
シリコーンオイルで膨潤したシリコーンエラストマーの配合により、別のシリコーンと非水性有機ヒドロキシル溶媒との安定な非水性エマルジョンの調製が可能となり、様々な化粧料及びパーソナルケア組成物用のベースとして有用な基礎組成物を提供するのに役立つとともに、局所的ドラッグデリバリーシステム用の成分を提供するのにも役立つ。安定性は、エラストマーが存在しない標品とは対照的に、3回の凍結融解サイクルでもエマルジョンが保存されることにより改善されている。安定性は、室温で少なくとも3日間並びに40℃で少なくとも7日間、別々の液相に分離せずにエマルジョンが保存されることにより改善されている。このように、本明細書でいう安定性は、所定温度で所定期間(すなわち、所定温度での日数)後に非混和性相の視認できる相分離がないものとして定義される。
【0125】
例22(比較例)及び例23(実施例)
【0126】
【表19】

【0127】
例22及び23の材料は以下の通り一緒に混合した。
1)パートAの成分を一緒に混合し、ついで
2)穏和な剪断混合を用いてパートBをパートAにゆっくりと添加した。
調製した材料はブルックフィールド粘度計を用いて25℃で粘度測定し、室温、40℃及び凍結融解条件下での安定性を試験した。調製した例22及び23は曇っているか半透明で、共にエマルジョンであることを示していた。このことはプロピレングリコール及びシリコーンが連続相と不連続相からなるエマルジョンを形成したこと並びに両相とも非水性であることを示す。表9に粘度及び安定性を示す。
【0128】
【表20】

【0129】
シリコーンオイルで膨潤したシリコーンエラストマーの配合により、別のシリコーンと非水性有機ヒドロキシル溶媒との安定な塩含有(例えばNaCl)非水性エマルジョンの調製が可能となり、様々な化粧料及びパーソナルケア組成物用のベースとして有用な基礎組成物を提供するのに役立つとともに、局所的ドラッグデリバリーシステム用の成分を提供するのにも役立つ。安定性は、エラストマーが存在しない標品とは対照的に、5回の凍結融解サイクルでもエマルジョンが保存されることにより改善されている。安定性は、室温で少なくとも11日間並びに40℃で少なくとも9日間、別々の液相に分離せずにエマルジョンが保存されることにより改善されている。本明細書では安定性は、所定温度で所定期間(すなわち、所定温度での日数)後に非混和性相の視認できる相分離がないものとして定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン組成物を含む非水性エマルジョンであって、当該シリコーン組成物が、
(a)アルケニルシリコーン前駆体とハイドロジェンシリコーン前駆体とのヒドロシリル化反応の反応生成物であるシリコーンエラストマー、及び
(b)エチレングリコール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、メチルプロパンジオール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン共重合体及びこれらの混合物からなる群から選択される非水性有機ヒドロキシル溶媒を含んでなり、
当該非水性エマルジョンが前記非水性有機ヒドロキシル溶媒又はシリコーンオイルからなる連続非水性相を含んでなり、
前記ハイドロジェンシリコーン前駆体が次式を有する樹脂である、エマルジョン。
(M
(式中、Qは式SiO4/2を有するものであり、MはH113−bSiO1/2を有するもので、符号bは1〜3の数であり、R11は炭素原子数1〜40の一価炭化水素基であり、符号w及びzは、w/zが0.5〜4.0の比を有するものであり、符号jは2.0〜100の数である。)
【請求項2】
前記アルケニルシリコーン前駆体が、1分子当たり平均2以上のアルケニル基を有するオルガノシロキサン又はオルガノポリシロキサンである、請求項1記載のエマルジョン。
【請求項3】
シリコーン組成物を含む非水性エマルジョンであって、当該シリコーン組成物が、
(1)(A)(i)次式の線状アルケニル停止ポリオルガノシロキサンと
vivi2−a
[式中、符号xは500を上回る数であり、a+yが1〜20の範囲内にあるという限定条件の下で、符号yは0〜20の数であり、符号aは0〜2の数であり、Mvi
SiO1/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dは
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dvi
vi=RSiO2/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Mは
M=R10SiO1/2
(R、R及びR10は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義される]
(ii)次式:
(M
[式中、Qは式SiO4/2を有するものであり、M
113−bSiO1/2
(R11は炭素原子数1〜40の一価炭化水素基であり、符号bは1〜3の数である)として定義され、符号w及びzは、w/zが0.5〜4.0の比を有するものであり、符号jは2.0〜100の数である]の樹脂とのヒドロシリル化生成物によって形成されるシリコーンであって、該ヒドロシリル化が
(iii)25℃で1000センチストークス未満の粘度を有する第一のシリコーンの存在下で実施され、ゲルを形成したもの、及び
(B)25℃で1000センチストークス未満の粘度を有する第二のシリコーンであって、上記ゲルを第二のシリコーン中でスラリーとし、第二のシリコーンと共に混合処理に付したものであって、
第二のシリコーンが第一のシリコーンと同じ又は異なるもの、並びに
(2)エチレングリコール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、メチルプロパンジオール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン共重合体及びこれらの混合物からなる群から選択される非水性有機ヒドロキシル溶媒を含んでなり、
当該非水性エマルジョンが前記非水性有機ヒドロキシル溶媒又はシリコーンオイルからなる連続非水性相を含んでなるエマルジョン。
【請求項4】
シリコーン組成物を含む非水性エマルジョンであって、当該シリコーン組成物が
(1)(A)(i)次式:
vivi2−a
[式中、符号xは500を上回る数であり、a+yが1〜20の範囲内にあるという限定条件の下で、符号yは0〜20の数であり、符号aは0〜2の数であり、Mvi
SiO1/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dは
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Dvi
vi=RSiO2/2
(Rは炭素原子数2〜10の一価不飽和炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、Mは
M=R10SiO1/2
(R、R及びR10は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義される]の線状アルケニル停止ポリオルガノシロキサンと
(ii)次式:
(M
[式中、Qは式SiO4/2を有するものであり、M
113−bSiO1/2
(R11は炭素原子数1〜40の一価炭化水素基であり、符号bは1〜3の数である)として定義され、符号w及びzは、w/zが0.5〜4.0の比を有するものであり、符号jは2.0〜100の数である]の樹脂とのヒドロシリル化生成物によって形成されるシリコーンであって、該ヒドロシリル化が
(iii)25℃で1000センチストークス未満の粘度を有する第一のシリコーンの存在下で実施され、ゲルを形成したもの、及び
(B)25℃で1000センチストークス未満の粘度を有する第二のシリコーンであって、上記ゲルを第二のシリコーン中でスラリーとして、第二のシリコーンと共に混合処理に付し、第二のシリコーンと上記ゲルを含んでなる25℃において500〜150000センチストークスの粘度を有する均一液体を生じさせ、該均一液体が上記ゲルの初期平均粒度及び粒度分布を有しており、
a)上記均一液体を圧力に付し、
b)上記均一液体をオリフィスを通しての圧力降下に付して、均一液体をオリフィスに通して均一液体の初期平均粒度を低下させ、かつ
c)段階a)と段階b)を繰返すことにより、上記ゲルの粒度分布を調節して粒度分布に
d)21〜26ミクロンの範囲内の極大、
e)33〜38ミクロンの範囲内の極大、及び
f)50〜60ミクロンの範囲内の極大
が存在するようにしたものであって、
第二のシリコーンが第一のシリコーンと同じ又は異なるもの、並びに
(2)エチレングリコール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、メチルプロパンジオール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン共重合体及びこれらの混合物からなる群から選択される非水性有機ヒドロキシル溶媒を含んでなり、
当該非水性エマルジョンが前記非水性有機ヒドロキシル溶媒又はシリコーンオイルからなる連続非水性相を含んでなるエマルジョン。
【請求項5】
第二のシリコーンが、D、D、D、D及びM’D’M’及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3又は4記載のエマルジョン。
ただし、Dは
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義される]として定義され、D’は
SiO2/2
(R及びRは各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)として定義され、M’は
121314SiO1/2
(R12、R13及びR14は各々独立に炭素原子数1〜40の一価炭化水素基である)
として定義され、符号iは0〜300である。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のエマルジョンを含んでなる、化粧組成物。
【請求項7】
当該化粧組成物が、デオドラント、発汗抑制剤、スキンクリーム、フェイシャルクリーム、シャンプー、ムース、スタイリングジェル、保護クリーム、リップ製品又は口紅、ファンデーション、頬紅、メークアップ及びマスカラからなる群から選択される、請求項6記載の化粧組成物。

【公開番号】特開2012−229441(P2012−229441A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179658(P2012−179658)
【出願日】平成24年8月14日(2012.8.14)
【分割の表示】特願2011−242447(P2011−242447)の分割
【原出願日】平成11年3月1日(1999.3.1)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】