説明

シリコーンオイルの硬化方法

【課題】300nm以下の波長に紫外線吸収域を有する材料に対しても効率的にシリコーンオイルを硬化させることができる硬化方法を提供する。
【解決手段】 波長が300nm未満の光を吸収する材料の一方の側にあるシリコーンオイルを該材料の他方の側からの光照射によって硬化させるにあたり、波長が300〜600nmのフェムト秒レーザを、前記材料を透過させ目的とする箇所に集光して照射することにより、シリコーンオイルを硬化させることを特徴とするシリコーンオイルの硬化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオイルをレーザ照射により硬化させる硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンオイルの硬化は、例えば、ガラス材料等の光学材料を透明性を保って接着する際等に必要とされる。特許文献1には、2枚の石英ガラスの間にシリコーンオイルを塗布した後、Xe2エキシマランプによる紫外線(波長150〜300nm)を照射することによりシリコーンオイルを硬化して接着する技術が記載されている(第10頁段落0041〜42,請求項1,9等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−104046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された波長帯域の紫外線を用いる場合は、300nm以下の波長に吸収域を持つ材料に対しては、透過性が悪く、効率的な硬化が困難であった。これは、300nm以下の波長に吸収域を有する材料に対して150〜300nmの紫外線を照射する結果、弱い光であっても吸収されてしまうためである。
【0005】
300nm以下の波長に紫外線吸収域を持つ材料としては、BK7ガラス(商品名)、ゲルマニウムガラス、ソーダライムガラス、結晶化ガラス、低膨張ガラス等があり、これらを用いた光学素子、光学機器の製作分野においては、この種の材料に対しても効率的にシリコーンオイルを硬化させる得る硬化方法が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、300nm以下の波長に紫外線吸収域を有する材料に対しても効率的にシリコーンオイルを硬化させることができる硬化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、波長が300nm未満の光を吸収する材料の一方の側にあるシリコーンオイルを該材料の他方の側からの光照射によって硬化させるにあたり、波長が300〜600nmのフェムト秒レーザを、前記材料を透過させ目的とする箇所に集光して照射することにより、シリコーンオイルを硬化させることを特徴とするシリコーンオイルの硬化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超短パルスであるフェムト秒レーザを使用し、その波長を300〜600nmとしている。フェムト秒レーザは超短パルスに基づく高いエネルギ強度を有するので、照射レーザのエネルギ強度がシリコーンオイルに固有の強度を超えたときに多光子吸収を生じさせる。その結果、シリコーンオイルは、あたかも照射波のn分の1(ただしnは2以上の整数)波長、すなわち、300nm以下の波長の光の照射を受けたように吸収を生じる。したがって、目的とする箇所にレーザを集光して照射することにより、その箇所で多光子吸収を生じさせ、シリコーンオイルをSiO2に変化させて硬化させることができる。
【0009】
このように、本発明によれば、300nm以下の波長に紫外線吸収域を有する材料に対しても効率的にシリコーンオイルを硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る硬化方法の一実施形態の実施状況を示す図である。
【図2】本発明に係る硬化方法の他の実施形態の実施状況を示す図である。
【図3】図2に示す方法により得られた硬化状態の例を示す写真である。
【図4】図2に示す方法により得られた硬化状態の試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の原理及び実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る硬化方法の一実施形態の実施状況を示す図である。この方法では、ソーダライムガラス板1の上にシリコーンオイル3を塗布し、その上にソーダライムガラス板2を重ねたものを加工対象とし、シリコーンオイルの硬化により2枚のソーダライムガラス板を接着するものである。
【0012】
図外のフェムト秒レーザ発生器で発生したフェムト秒レーザ5は、集光用光学素子6でレーザ5’に集光されて対象箇所に照射される。フェムト秒レーザは、チタンサファイアレーザ、エルビウムまたはイッテルビウムが添加されたファイバレーザ、或いは、イッテルビウム、エルビウム、ネオジウム、クロミウムまたはリチウムが添加された結晶をレーザ媒質とするレーザ、或いは、それらをバリウムボーレート結晶等の非線形光学材料を透過させて波長変換したもの等、様々な種類のものを使用することができ、その波長は300〜600nmの範囲にあるものとされる。波長が300nm未満であると、ソーダライムガラス板2に対してレーザ光の吸収が大きくなりシリコーンオイルの硬化の効率が低下する。一方、波長が600nmを越えるとシリコーンオイル3に対するレーザ光の多光子吸収が減少しシリコーンオイルの硬化の効率が低下するという支障が生じる。
【0013】
集光用光学素子6としては、レンズ、反射鏡、回折光学素子等を使用することができ、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。シリコーンオイルが硬化して接着し得る材料としては、酸化物、半導体、金属、有機材料等を挙げることができ、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。また、その場合はどちらか一方を上記フェムト秒レーザが透過できればよい。
【0014】
また、多光子吸収を生じさせるエネルギ強度を得るのに、1つの光束を用いる他、複数の光束を用い、硬化対象とする箇所で相互に干渉させるようにしてもよい。
【0015】
フェムト秒レーザの波長及びエネルギ強度、並びに集光用光学素子による集光度は、照射するシリコーンオイルにおいて多光子吸収の非線形現象が起きる程度となるように決められる。具体的には、例えば、以下の仕様とすることができる。
・フェムト秒レーザの種類:チタンサファイアレーザの第2高調波
・フェムト秒レーザの波長:400nm
・フェムト秒レーザの出力:50μJ/pulse
・集光用光学素子による集光度:f=50mmシリンドリカルレンズによる集光
【0016】
こうしてフェムト秒レーザを高いエネルギ強度で対象物に照射することにより、シリコーンオイルは、多光子吸収により照射波のn分の1(ただし、nは2以上の整数)の波長、すなわち、300nm以下の光の照射を受けたように吸収を生じ、SiO2に変化して硬化する。
【0017】
図2は、本発明方法の他の実施形態を示しており、シリコーンオイルの硬化を検証するためのものである。ここでは、ソーダライムガラス板11上にシリコーンオイル12を塗布し、前述と同じフェムト秒レーザ13をシリンドリカルレンズにより集光し、ソーダライムガラス板11を透過させ塗布箇所に照射した。シリンドリカルレンズによる集光箇所の幅は50μmとした。その後、照射箇所に圧力0.5メガパスカルのブロアーによる強風を当て、未硬化部分を飛ばすことにより、硬化状況を観察した。図3にそれらの写真を示す。図3の(a), (b), (c), は各々レーザ照射時間を500秒、1000秒、5000秒とした後のシリコーンオイルの変化状態を光学顕微鏡により撮影した写真であり、図3の(a)' (b)' (c)' はこれらの各々にブロアーによる強風を当て、未硬化部分を飛ばした後の状態を光学顕微鏡により撮影した写真である。
【0018】
図3の写真から明らかなように、シリコーンオイルはフェムト秒レーザの照射時間と共に硬化がより広範囲に進行し、硬化部分はブロアーの強風に耐える強度でソーダライムガラス板に接着している。5000秒照射の硬化部分は、幅30μm、高さ1〜2μmであった。
【0019】
図4は、こうして得られた細長い硬化部分を横切るようにして、ピンセットの先端で掻き取った後の状態を光学顕微鏡により撮影した写真である。写真中の矢印は、掻き取り方向を示すために付加したものである。この写真は、硬化部分が掻き取り箇所のみにおいて破壊され、他の部分は形状及び位置を保持し得る保形性と接着強度を有していることを明らかにしている。
【0020】
本発明は、このようにしてシリコーンオイルを硬化することができるので、以下の用途に特に有利に用いることができる。
・基板上でシリコーンオイルを硬化し光学素子、光導波路等の光機能部品を形成する。
・材料の間にシリコーンオイルを介在させた状態で硬化し材料同士を接着する。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1:ソーダライムガラス板
2:ソーダライムガラス板
3:シリコーンオイル
5:フェムト秒レーザ
6:集光用光学素子
11:ソーダライムガラス板
12:シリコーンオイル
13:フェムト秒レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が300nm未満の光を吸収する材料の一方の側にあるシリコーンオイルを該材料の他方の側からの光照射によって硬化させるにあたり、波長が300〜600nmのフェムト秒レーザを、前記材料を透過させ目的とする箇所に集光して照射することにより、シリコーンオイルを硬化させることを特徴とするシリコーンオイルの硬化方法。
【請求項2】
前記シリコーンオイルがガラス材料の間に介在して接着作用をなすことを特徴とする請求項1に記載の硬化方法。
【請求項3】
前記シリコーンオイルが基板上で硬化し光機能部品を形成することを特徴とする請求項1に記載の硬化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264404(P2010−264404A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118943(P2009−118943)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000110859)キヤノンマシナリー株式会社 (179)
【Fターム(参考)】