説明

シリコーンゴムの親水性付与方法

【解決手段】分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム表面の全面又は一部をメタン及び酸素を含む混合気体存在下でプラズマ重合することにより親水性を付与することを特徴とするシリコーンゴムの親水性付与方法。
【効果】本発明によれば、シリコーンゴム表面を簡単に、しかも長期間に亘り親水化付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム硬化物表面に親水性を付与する親水性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、シリコーンゴム表面は疎水性を有しているが、使用用途によっては親水性を有するシリコーンゴム表面が求められ、特に付加硬化型シリコーンゴム組成物のシリコーンゴム硬化物表面を簡易にかつ長期間に亘って親水化することが望まれている。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−831号公報
【特許文献2】特開昭61−293226号公報
【特許文献3】特開平6−219868号公報
【特許文献4】特開平8−227001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、付加硬化型シリコーンゴム組成物のシリコーンゴム硬化物表面を簡単に、しかも長期間に亘って親水化することを可能にするシリコーンゴム表面の親水性付与方法及びこの方法により親水化されたシリコーンゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、疎水性を有するシリコーンゴム表面を親水化させるには、酸素プラズマやアルゴンプラズマ等が行われているが、親水化されている時間が短く作業性の点で問題がある。
そこで、本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーンゴムを親水化させる手段としてメタンと酸素を含む混合気体を用いるプラズマ重合によって行うことが有効であることを知見した。この方法は、接触角は酸素プラズマのように急激に上昇するわけではなく、ゆっくりと上昇していくが、分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子中にRSiO3/2単位(Rは水素原子又は脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基)及び/又はSiO2単位を有し、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン)を用いて架橋させた付加硬化型シリコーンゴムにおいては、この接触角の上昇を抑制可能とし、長期間に亘って親水性を保持できることを見出したものである。
【0006】
従って、本発明は下記のシリコーンゴムの親水化付与方法及び親水化シリコーンゴムを提供する。
<1> 分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム表面の全面又は一部をメタン及び酸素を含む混合気体存在下でプラズマ重合することにより親水性を付与することを特徴とするシリコーンゴムの親水性付与方法。
<2> 付加硬化型シリコーンゴム組成物が、
(A)下記式
o−SiR1pO−(SiR12O)n−(SiR1(X)O)m−SiR1p−Xo (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基であり、oとpはそれぞれ0〜3までの整数でありかつo+pは3、mは0又は1以上の整数、nは0又は1以上の整数である。但し、oが0の場合、mは2以上の整数である。)
で表される1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン
50〜100質量部、
(B)分子中に、式:R23SiO1/2(R2は同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の1価炭化水素基)で示されるシロキサン単位と式SiO4/2で示されるシロキサン単位を有する1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンレジン 50〜0質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である。)
(C)R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得る、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基)
(A)成分と(B)成分のアルケニル基の合計に対して
ケイ素原子に結合した水素原子の割合が0.3〜10となる量、
(D)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
を含有する付加硬化型シリコーンゴム組成物である<1>記載の親水性付与方法。
<3> 付加硬化型シリコーンゴム組成物が、更に(E)硬化制御剤を含有する<2>記載の親水性付与方法。
<4> メタン及び酸素を含む混合気体が、メタンと空気の混合物又はメタンと酸素の混合物であることを特徴とする<1>、<2>又は<3>記載の親水性付与方法。
<5> <1>〜<4>のいずれかに記載の方法により表面の全面又は一部が親水性付与されたシリコーンゴム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シリコーンゴム表面を簡単に、しかも長期間に亘り親水化付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のシリコーンゴム親水性付与方法は、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化することにより得られたシリコーンゴムをメタン及び酸素を含む混合気体存在下でプラズマ重合するものである。
この場合、付加硬化型シリコーンゴム組成物としては、架橋剤のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして分岐構造を有するものが配合され、ヒドロシリル化反応で硬化するものであれば、いずれのものであってもよいが、特には下記(A)〜(D)成分を含有し、必要により(E)成分やその他の成分を含む付加硬化型シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0009】
(A)アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン
このオルガノポリシロキサンはこの組成物の主剤であり、1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有し下記式で表される。
o−SiR1pO−(SiR12O)n−(SiR1(X)O)m−SiR1p−Xo (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基であり、oとpはそれぞれ0〜3までの整数であり、かつo+pは、必ず3となり、mは0又は1以上の整数、nは0又は1以上の整数である。但し、oが0の場合、mは2以上の整数である。)
【0010】
(A)成分のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の炭素数2〜8のものが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。
【0011】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基(R1)としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0012】
(A)成分は、液状であっても生ゴム(ガム)状でもあってもよく、m+nは、10〜10,000、特に100〜2,000であることが好ましい。また、m/(m+n)は、0〜0.2、特に0〜0.1であることが好ましい。また、作業性からは液状であることが好ましく、25℃における粘度は、100〜500,000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、特に300〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、この粘度は回転粘度計による測定値である。
【0013】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフエニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0014】
(B)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンレジン
(B)成分は、分子中に、式:R23SiO1/2(R2は同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の1価炭化水素基)で示されるシロキサン単位と式SiO4/2で示されるシロキサン単位を有する1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンレジンである。
2としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ビニル基等のアルケニル基が例示され、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、メチル基、ビニル基が特に好ましい。
【0015】
また、R23SiO1/2単位とSiO4/2単位との割合(R23SiO1/2単位/SiO4/2単位)は、モル比で0.6〜1.2であることが好ましい。
上記オルガノポリシロキサンレジンは、上記R23SiO1/2単位、SiO4/2単位に加えて、レジンの50モル%以下、特に30モル%以下の割合でR2SiO3/2単位やR22SiO2/2単位を含んでも差し支えない。
【0016】
このようなオルガノポリシロキサンレジンとしては例えば、(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位と(CH2=CH)SiO3/2単位とSiO4/2単位からなるレジン(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位と(CH3)SiO3/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位と(CH32SiO2/2単位とSiO4/2単位からなるレジン等が挙げられる。
(B)成分は、固体状でも液状でもよいが、固体状のものを用いる場合は、(A)成分に溶解させて使用することが好ましい。
【0017】
(A)成分と(B)成分の配合割合は、(A)成分50〜100質量部、(B)成分50〜0質量部(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である。)であることが好ましい。より好ましくは(A)成分70〜100質量部、(B)成分30〜0質量部であるシリコーンゴムに高硬度や強度が必要な場合は、(B)成分を併用することが有効であるが、(B)成分の割合が多すぎるとゴム弾性が損なわれることがある。
【0018】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明においては、架橋剤として分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することが重要である。分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子中にRSiO3/2単位(Rは水素原子又はR1と同様の基)及び/又はSiO4/2単位を有し、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2つ以上有するものであれば何ら制限されない。
【0019】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして好ましくは、R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位とを有し、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(但し、式中、R3は前記のR1として例示した非置換又は置換の1価炭化水素基と同様のものである。)である。より具体的な構造としては、1個のSiO4/2単位に対して、R32(H)SiO1/2単位の個数が1.2〜2.5の範囲が好ましい。なお、1分子中にSiO4/2単位を1個以上含むが、この個数に特に制約はない。しかし、この構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、液状でも固体状でもよいが、取扱い性を考慮すると室温下で液体であることが好ましく、その粘度はオストワル度粘度計による測定で1〜1,000mm2/sであることが好ましく、より好ましくは、5〜500mm2/s、特に好ましくは10〜200mm2/sである。
(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分のアルケニル基の合計に対してケイ素原子に結合した水素原子の割合が0.3〜10、好ましくは0.5〜5となる量である。
【0020】
(D)白金族金属系触媒
白金族金属系触媒は、前記の(A)成分及び(B)成分に含まれるアルケニル基と、(C)成分に含まれるケイ素原子に結合する水素原子との付加(ヒドロシリル化)反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の白金系、ロジウム系、パラジウム系触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
【0021】
(D)成分の使用量は、所謂触媒量でよく、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対する白金族金属の質量換算で、0.1〜1,000ppm、特には0.5〜500ppm程度である。
【0022】
また、本発明で使用する付加硬化型シリコーンゴム組成物には、作業性を向上させるために、(E)硬化制御剤を添加してもよい。硬化制御剤は、所望の硬化条件以外で本発明の組成物が硬化するのを抑制することができる限り、特に制限はない。その具体例としては、アセチレンアルコール系化合物、トリアリルイソシアヌレート系化合物、低分子量ビニル基含有ポリシロキサン、アルキルマレエート類、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール又はこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
硬化制御剤の配合量は、必要な可使時間が確保できる量であればよいが、通常(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部、特には0.01〜2質量部である。
【0024】
その他の成分として、補強性のある微粉末状のシリカを配合することが好ましい。この微粉末シリカは硬化物の機械的強度を補強するためのもので、従来シリコーンゴムに使用されている公知のものでよく、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカ、石英粉末、ケイ藻土等がある。これら1種又は2種以上併用してもよい。これらのシリカ粒子は通常BET法による比表面積が50m2/g以上、特に50〜500m2/g程度のものが一般的である。このような微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、本発明組成物に良好な流動性を付与させるためメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。
【0025】
更に、本発明で使用する組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分以外に、必要に応じて、例えば、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤;ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック等の非補強性無機充填剤を配合することができる。これらの無機充填剤の使用量は、該無機充填剤を除く成分の合計量100質量部当り、通常、0〜200質量部である。また、耐熱性向上剤、離型剤、抗菌・防カビ剤等の公知の添加剤も添加することができる。
【0026】
本発明で使用する付加硬化型シリコーンゴム組成物の成形方法としては、従来から知られたいずれの成形方法によってもよく、また硬化は通常加熱硬化であるが、室温硬化可能な付加硬化型シリコーンゴム組成物であっても本発明の親水性付与方法は有効である。
本発明は、このようにして得られたシリコーンゴム表面を、親水性を付与するためメタン及び酸素を含む混合気体存在下でプラズマ重合する。
この場合、メタン及び酸素を含む混合気体としてはメタンと空気の混合物又はメタンと酸素の混合物を用いることができる。メタンと空気を混合させる割合は、1容量のメタンに対して、空気は0.01〜5容量が好ましく、より好ましくは0.05〜3容量、特に好ましくは0.1〜2容量である。また、メタンと酸素を混合させる割合は、1容量のメタンに対して、0.01〜3容量が好ましく、より好ましくは0.05〜2容量、特に好ましくは0.1〜1.5容量である。メタンに対する酸素の割合が多すぎても少なすぎても親水性の付与が不十分となることがある。
【0027】
プラズマ重合させる場合の条件は、十分な親水性付与ができる範囲で自由に選択できるが、混合気体の圧力は、0.01〜50Pa、特に0.1〜10Pa程度が好ましく、処理時間は、10秒〜1時間、特に1〜20分程度が好ましく、使用電力は1〜500W、特に20〜80W程度が好ましい。
なお、プラズマ重合装置としては市販のものを使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例及び比較例に使用したシリコーンエラストマーの成分を記載し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、プラズマ重合には、神港精機株式会社製「プラズマ重合装置」を用いた。プラズマ処理を施すシリコーンエラストマーをベルジャー内(反応容器:容積105L)に入れ、ベルジャー内を0.1Pa程度まで真空にしたあと10分程度保持する。次に反応性ガス(メタン及び酸素の混合気体)を流し続け、所定圧力になるように反応性ガスを真空ポンプによって引いた。
また下記例において、粘度は、(A)成分及びその相当成分は回転粘度計、(C)成分及びその相当成分はオストワルド粘度計により測定した。
【0029】
[実施例、比較例]
下記成分を用いて付加硬化型シリコーンゴム組成物を調製した。
(A)一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン100質量部
Vi(Me)2Si−(OSiMe2n−OSi(Me)2Vi
(式中、Meはメチルであり、Viはビニル基であり、nは該シロキサンの25℃における粘度が5,000mPa・sとなるような数である。)
で表されるビニル基含有の直鎖状オルガノポリシロキサン。
【0030】
(B)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンレジン
(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジンであり、(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比が7:1:10であり、ビニル基を0.085モル/100g有する固体状のレジン
【0031】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C−1)
1つのSiO4/2単位(Q)に対して、(CH32(H)SiO1/2単位(MH)の個数が1.5個を含む、つまりMH4.53を構造中に有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度35mm2/g)
【0032】
(C−2)
1つのSiO4/2単位に対して、(CH32(H)SiO1/2単位の個数が1.2個を含む、つまりMH4.84を構造中に有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度60mm2/g)
【0033】
(C−3)
1つのSiO4/2単位に対して、(CH32(H)SiO1/2単位の個数が1.8個を含む、つまりMH63.3を構造中に有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度40mm2/g)
【0034】
(C’)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも2個以上含有する分岐構造を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C’−1)
M−DH25−D75−M
(C’−2)
M−D18−DH20−M
但し、M :(CH33SiO1/2
H:(CH3)(H)SiO2/2
D :(CH32SiO2/2
【0035】
(D)触媒量のヒドロシリル化反応触媒
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体/トルエン溶液
白金元素含有量0.5質量%
【0036】
(E)硬化制御剤
1,3,5,7−テトラメチルテトラビニルシクロシロキサン
【0037】
実験方法
上記の原料を用いてシリコーンゴム組成物を製造した。(A)成分、(B)成分、(D)成分を混合・攪拌してから、(E)成分を添加・攪拌し、最後に(C)成分を添加・攪拌した。これを真空脱泡機に入れて完全に泡を無くしてから、プレス成形(150℃/30分)にて厚さ1mmのシリコーンゴムを成形した。
【0038】
このようにして得られたシリコーンゴムをプラズマ処理した。プラズマ処理の条件は2水準で行った。
条件(1):メタンと空気の組み合わせ
処理圧力を4Paとし、ベルジャー内に投入する混合気体はメタン2ml/min、空気1ml/minとした。周波数を15kHzとし、消費電力は32Wとした。
条件(2):メタンと酸素の組み合わせ
処理圧力を4Paとし、ベルジャー内に投入する混合気体はメタン2ml/min、空気0.51ml/minとした。周波数を15kHzとし、消費電力は32Wとした。
【0039】
このようにして得られたシリコーンエラストマーの表面の接触角を、接触角計(協和界面科学社製DM−701)を用い、測定方法はθ/2法とした。使用した液体はイオン交換水であった。プラズマ処理後30分と処理後大気中下で1週間及び1ヶ月保管した後の3回測定を行った。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム表面の全面又は一部をメタン及び酸素を含む混合気体存在下でプラズマ重合することにより親水性を付与することを特徴とするシリコーンゴムの親水性付与方法。
【請求項2】
付加硬化型シリコーンゴム組成物が、
(A)下記式
o−SiR1pO−(SiR12O)n−(SiR1(X)O)m−SiR1p−Xo (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基であり、oとpはそれぞれ0〜3までの整数でありかつo+pは3、mは0又は1以上の整数、nは0又は1以上の整数である。但し、oが0の場合、mは2以上の整数である。)
で表される1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン
50〜100質量部、
(B)分子中に、式:R23SiO1/2(R2は同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の1価炭化水素基)で示されるシロキサン単位と式SiO4/2で示されるシロキサン単位を有する1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンレジン 50〜0質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である。)
(C)R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得る、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基)
(A)成分と(B)成分のアルケニル基の合計に対して
ケイ素原子に結合した水素原子の割合が0.3〜10となる量、
(D)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
を含有する付加硬化型シリコーンゴム組成物である請求項1記載の親水性付与方法。
【請求項3】
付加硬化型シリコーンゴム組成物が、更に(E)硬化制御剤を含有する請求項2記載の親水性付与方法。
【請求項4】
メタン及び酸素を含む混合気体が、メタンと空気の混合物又はメタンと酸素の混合物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の親水性付与方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の方法により表面の全面又は一部が親水性付与されたシリコーンゴム。