説明

シリコーンゴム系硬化性組成物、成形体、医療用チューブ、及びシリカフィラーの表面処理方法

【課題】引張り強度及び引裂き強度に優れたシリコーンゴムが得られる、シリコーンゴム系硬化性組成物、並びに該シリコーンゴム組成物に適したシリカフィラーの表面処理方法を提供する。
【解決手段】ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラー(C)と、を含有することを特徴とするシリコーンゴム系硬化性組成物、該組成物を用いてなる成形体、該成形体より構成される医療用チューブ、並びにシリカフィラーを、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理する方法であって、シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記シランカップリング剤を混合攪拌し、50℃〜200℃の温度で5分〜24時間加熱処理することを特徴とする、表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム系硬化性組成物、該シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた成形体、該成形体で構成される医療用チューブ、及びシリカフィラーをシランカップリング剤で表面処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、難燃性、化学的安定性、耐候性、耐放射線性、電気特性等に優れていることから、幅広い分野において様々な用途に使用されている。特に、シリコーンゴムは、生理的に不活性であると共に、生体に触れた場合の体組織に対する反応が少ないため、医療用各種カテーテル等、医療器具の材料としても利用されている。
【0003】
医療用カテーテルは、胸腔や腹腔等の体腔、消化管や尿管等の菅腔部、血管等に挿入し、体液の排出や、薬液、栄養剤及び造影剤等の注入点滴に用いられる管であり、生体適合性の他、耐傷付き性(耐引裂き性)、耐キンク性(引張り強度)、透明性、柔軟性(引張り伸び性)等が要求される。医療用カテーテルの具体的用途としては、例えば、術後の血液や膿等の排液除去用吸引器のドレナージチューブや、経皮的内視鏡下胃ろう造設術(PEG)等の術後の栄養摂取用チューブ等が挙げられる。また、カテーテル用の極細チューブ状のシリコーンゴムを製造するためには、シリコーンゴム材料であるシリコーンゴム組成物には押出し成形性が求められる。
【0004】
医療用カテーテルの材料としては、シリコーンゴムの他、軟質ポリ塩化ビニル等も一般的に使用されている。ポリ塩化ビニル等と比較して、シリコーンゴムは、生体適合性及び柔軟性の点において優れるものの、引裂き強度や引張り強度等の強度面、特に引裂き強度の向上が求められている。引裂き強度が充分でないと、施術中の針や刃物等による傷によってカテーテルが破けたり、或いは、引張り強度が充分でないと、カテーテルが折れ曲がって降伏して閉塞(キンク)し、排出されるべき体液や注入されるべき薬液等のカテーテル内の流通が滞ってしまう。
【0005】
そこで、シリコーンゴムの引裂き強度や引張り強度を高めるべく、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜7)。
例えば、特許文献1では、高粘度及び低ビニル基含有量のオルガノポリシロキサン(生ゴム(A))を主体とし、これに、低粘度及び高ビニル基含有量のオルガノポリシロキサン(シリコーンオイル(B))、ビニル基含有オルガノポリシロキサン共重合体(ビニル基含有シリコーンレジン(C))、オルガノ水素シロキサン(架橋剤(D))、白金又は白金化合物(硬化触媒(E))、及び微粉末シリカ(充填剤(F))を配合した硬化性シリコーンゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−331079号公報
【特許文献2】特開平7−228782号公報
【特許文献3】特開平7−258551号公報
【特許文献4】米国特許3,884,866号公報
【特許文献5】米国特許4,539,357号公報
【特許文献6】米国特許4,061,609号公報
【特許文献7】米国特許3,671,480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコーンゴムに高い引裂き性を付与するための具体的な方法としては、シリカ微粒子等の無機充填材の添加、架橋密度の疎密化(シリコーンゴムの系中に架橋密度が高い領域と低い領域とを分布させる)等が挙げられる。架橋密度の疎密化による引き裂き性の向上は、架橋密度の高い領域が、引裂き応力に対する抗力として作用するためと考えられる。
しかしながら、さらなるシリコーンゴムの機械的強度、特に引張り強度及び引裂き強度の向上が求められている。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、優れた引張り強度及び引裂き強度を兼備したシリコーンゴムが得られる、シリコーンゴム系硬化性組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記機械的強度に優れたシリコーンゴムに適したシリカフィラーの表面処理方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(20)に記載の本発明により達成される。
【0010】
(1) ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラー(C)と、を含有することを特徴とするシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0011】
(2) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、下記式(1)で示されるものである上記(1)に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(式(1)中、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数であり、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、複数あるR及びRの少なくとも1つ以上がアルケニル基である。)
【0014】
(3) 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、下記式(2)で示されるものである上記(1)又は(2)に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
(式(2)中、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
【0017】
(4) 前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤が、下記式(3)である、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0018】
【化3】

【0019】
(式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換である二価のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、X、Y、Zはハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐したアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基を表し、X、Y、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つはアルコキシ基もしくはハロゲン原子である。)
【0020】
(5) 前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤が、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシランから選ばれる少なくとも1種である、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0021】
(6) 前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)は、シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤を混合攪拌し、加熱処理されたものである、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【0022】
(7) 前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されるシリカフィラーは、比表面積が50〜500m/g、平均一次粒子径が100nm以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【0023】
(8) 熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)をさらに含有する、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【0024】
(9) 前記熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)が、100℃で5分間熱硬化させた硬化物のJIS K6253(2006)におけるデュロメーター硬さがA40以下である上記(8)に記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【0025】
(10) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第一のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第二のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する上記(1)乃至(9)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0026】
(11) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度が、4000〜8000の範囲である、上記(1)乃至(10)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0027】
(12) 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)はビニル基を有しないものである、上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0028】
(13) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.01〜50重量部、前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)を10〜100重量部の割合で含有する、上記(1)乃至(12)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0029】
(14) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜50重量部、前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)を10〜100重量部、前記熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を5〜45重量部の割合で含有する、上記(8)乃至(12)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0030】
(15) 触媒量の白金又は白金化合物をさらに含有する、上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0031】
(16) 硬化後の物性が、
JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが6.3N/mm以上であり、
JIS K6252(2001)によるクレセント形試験片の引裂き強さが35N/mm以上である、
シリコーンゴムを与える、上記(1)乃至(15)いずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【0032】
(17) 上記(1)乃至(16)のいずれかのシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体。
【0033】
(18) 上記(17)の成形体で構成されることを特徴とする医療用チューブ。
【0034】
(19) シリカフィラーを、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理する方法であって、シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記シランカップリング剤を混合攪拌し、50℃〜200℃の温度で5分〜24時間加熱処理することを特徴とする、表面処理方法。
【0035】
(20) シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記シランカップリング剤を噴霧しながら混合攪拌し、窒素雰囲気下70℃〜150℃の温度で5分〜1時間加熱処理する、上記(19)に記載の表面処理方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、機械的強度に優れるものであり、特に優れた引張り強度及び引裂き強度を両立したものである。従って、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体及び該成形体で構成される医療用チューブは引張り強度及び引裂き強度等の機械的強度が高い。すなわち、本発明によれば、耐キンク性及び耐傷付き性に優れたシリコーンゴム製医療用カテーテルを提供することが可能である。
また、本発明のシリカフィラーの表面処理方法によれば、シリコーンゴムの引き裂き強度を確保しつつ、引張り強度及び硬度の向上が可能なシリカフィラーを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラー(C)と、を含有することを特徴とする。
【0038】
シリコーンゴムの機械的強度の向上を目的として、シリコーン系硬化性組成物にシリカフィラーを添加させることはしばしばなされているが、今回、本発明者らの鋭意検討の結果、特定のマトリックスを含むシリコーンゴムにおいて、特定のシランカップリング剤で表面処理したシリカフィラーを添加することによって、引張り強度及び引裂き強度を向上できることが見出された。
すなわち、本発明者らは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)及び直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含み架橋密度が高い領域と低い領域とが分布するマトリックス中に、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤による表面処理が予め施されたシリカフィラー(C)[以下、単に、シリカフィラー(C)ということがある]を含有させることによって、シリコーンゴムの機械的強度、特に引張り強度及び引裂き強度の向上が達成されることを見出した。
【0039】
本発明において、シリコーンゴムの引張り強度及び引裂き強度が向上した理由は、以下のように推測される。
【0040】
すなわち、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)及び直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させて得られるシリコーンゴムにおいて、シリカフィラーは、充填量の増加に伴い、その補強効果が増し、シリコーンゴムを高弾性率を示す固い材料にすることができるというメリットがある一方、高充填していくことで、シリコーンゴムの破断伸びが低下していき、引裂き強度は低下していくというデメリットを有している。
本発明においては、シリカフィラーとして、シリカフィラーに予めメタクリロキシ基を有するシランカップリング剤による表面処理を施したもの(C)を用いることによって、上記のようなシリカフィラーのデメリットを払拭し、シリコーンゴムの特性向上に成功した。
シリカフィラー(C)は、予め、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤による表面処理が施されているため、その表面にメタクリロキシ基が導入されている。シリカフィラーの表面に導入されたメタクリロキシ基は、シリコーンゴムのマトリックスと共有結合し、ゴムマトリックス−フィラーネットワークを形成する。その結果、引裂き強度の低下を抑制しつつ、シリコーンゴムの初期弾性率及び引張り強度の向上が可能である。
【0041】
以上のように、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることで得られるシリコーンゴムは、優れた引裂き強度及び引張り強度を呈する。従って、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いることによって、耐キンク性及び耐傷付き性に優れたシリコーンゴム成形体、特にシリコーンゴム製カテーテルを得ることができる。
【0042】
以下、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を構成する各成分について詳しく説明する。本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須成分とするものである。また、以下では(C)成分の製造方法として、本発明の表面処理方法を説明する。
【0043】
(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分であり、直鎖構造を有する重合体である。ビニル基を含有し、該ビニル基が加硫時の架橋点となる。
【0044】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、0.01〜15モル%、さらに0.05〜12モル%であることが好ましい。ここで、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。但し、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
【0045】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度は特に限定されないが、通常、3000〜10000の範囲であり、好ましくは4000〜8000の範囲である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の比重は、通常、0.9〜1.1の範囲である。
【0046】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)としては、下記式(1)で表される構造を有するものが好ましい。
【0047】
【化4】

【0048】
(式(1)中、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数であり、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、複数あるR及びRの少なくとも1つ以上がアルケニル基である。)
【0049】
式(1)において、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0050】
また、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0051】
また、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0052】
式(1)中のR及びRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
尚、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。R、及びRについても同様である。
但し、複数あるR及びRの少なくとも1つ以上がビニル基を有する、すなわち、複数あるR及びRの少なくとも1つ以上がアルケニル基である。
【0053】
m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を構成する繰り返し単位の数であり、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数である。mは、好ましくは40〜700であり、nは、好ましくは3600〜8000である。
式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の具体的構造としては、下記式(1−1)で表されるものが挙げられる。
【0054】
【化5】

【0055】
式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又はビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
【0056】
本発明においては、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを含有することが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができるからである。すなわち、より効果的にシリコーンゴムの引裂き強度を高めることができる。
具体的には、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、例えば、上記式(1−1)において、Rがビニル基である単位及び/又はRがビニル基である単位を、0.05〜0.2モル%含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、Rがビニル基である単位及び/又はRがビニル基である単位を、0.5〜12モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを用いることが好ましい。
【0057】
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が0.1〜0.15モル%であることが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)は、ビニル基含有量が、0.8〜8.0モル%であることが好ましい。
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを組み合わせて配合する場合、(A1)と(A2)の比率は特に限定されないが、通常、重量比でA1:A2が1:0.05〜1:0.6、特に1:0.08〜1:0.5であることが好ましい。
第1及び第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)及び(A2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有し、且つ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンのビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋するものである。シリコーンゴムのマトリックス中に架橋密度が高い領域を形成する。
【0059】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は特に限定されない。シリコーンゴム系硬化性組成物において、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)のヒドリド基量が、0.5〜5モルとなる量が好ましく、さらに好ましくは1〜3.5モルとなる量である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が20000以下であることが好ましく、特に重量平均分子量が7000以下であることが好ましい。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の重量平均分子量は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0060】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、通常、ビニル基を有しないものであることが好ましい。分子内の架橋反応が進行する可能性があるからである。
【0061】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)としては、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
【0062】
【化6】

【0063】
(式(2)中、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
【0064】
式(2)において、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0065】
また、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0066】
尚、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
【0067】
また、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0068】
式(1)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
【0069】
m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。好ましくは、mは0〜150の整数、nは(150−m)の整数である。
【0070】
(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(C)メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー
シリカフィラー(C)は、予め、シリカフィラーを、メタクリロキシ基[CH=C(CH)C(O)O−]を有するシランカップリング剤(以下、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤ということがある)で表面処理したものである。
【0072】
ここで、シリカフィラーをメタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理するとは、シリカフィラー表面に存在する、ケイ素原子に結合したヒドロキシル基(シラノール基 Si−OH)を、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤由来のメタクリロキシ基含有シリル基を含有する官能基に置換する処理、或いは、シリカフィラー表面に、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤由来のメタクリロキシ基含有シリル基を含有する官能基を付加する処理を意味する。ここで、メタクリロキシ基含有シリル基とは、メタクリロキシ基を含有する官能基がケイ素原子に結合した構造、すなわち、メタクリロキシ基が直接又は連結基を介して間接的にケイ素原子に結合した構造を有する基を意味する。また、メタクリロキシ基含有シリル基を含有する官能基とは、メタクリロキシ基含有シリル基そのもの、又は、メタクリロキシ基含有シリル基をその一部として含む基を意味する。
【0073】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤は、メタクリロキシ基を含有する官能基と加水分解基とがシリル基(ケイ素原子)に結合した構造を有しており、加水分解条件において、加水分解基が加水分解してヒドロキシル基が生成する。ここで、メタクリロキシ基を含有する官能基とは、メタクリロキシ基そのもの、若しくは、メタクリロキシ基をその一部として含む基を意味する。本発明においてメタクリロキシ基含有シランカップリング剤は、典型的には、メタクリロキシ基及び加水分解基が、直接又は連結基を介して間接的に、ケイ素原子に結合した構造を有しており、加水分解条件において、加水分解基が加水分解し、ケイ素原子にヒドロキシル基が結合したシラノールが生成する。
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤の加水分解基の加水分解によって生成したヒドロキシル基(典型的にはシラノール)は、シリカフィラーの表面に存在する上記ヒドロキシル基と脱水縮合反応し、メタクリロキシ基含有シリル基を含有する官能基と、シリカフィラーのケイ素原子とが、酸素(O)を介して共有結合される。典型的には、シランカップリング剤のメタクリロキシ基含有シリル基のケイ素原子と、シリカフィラーのケイ素原子とが、酸素(O)を介して共有結合される。
以上のようにして、シリカフィラーの表面に存在していたシラノール基のヒドロキシル基が、メタクリロキシ基含有シリル基を含有する官能基で置換される。
【0074】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されるシリカフィラーとしては、例えば、乾式シリカや湿式シリカ等を用いることができ、シリコーンゴム系硬化性組成物の押出成型性の観点から、特に乾式シリカが好ましい。メタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されるシリカフィラーは、市販品を用いることができ、例えば、乾式シリカとしてアエロジル(日本アエロジル)、Cab-O-Sil(キャボットジャパン)等、湿式シリカとしてニプシル(東ソーシリカ)等が挙げられ、中でも、シリコーンゴム系硬化性組成物の押出成型性の観点からアエロジルが好ましい。
【0075】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤としては、メタクリロキシ基を含有すると共に、加水分解条件においてヒドロキシル基を生成し、シリカフィラー表面に存在するシラノール基のヒドロキシル基と脱水縮合反応が可能な加水分解基を有するものであれば、特に限定されない。具体例としては、下記式(3)で表わされるものが挙げられる。
【0076】
【化7】

【0077】
(式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換である二価のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、X、Y、Zはハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐したアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基を表し、X、Y、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つはアルコキシ基もしくはハロゲン原子である。)
【0078】
は、直鎖構造を有していても分岐構造を有していていもよく、好ましくは、炭素数1〜3の置換又は非置換の二価のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の二価のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基等の二価のアリール基が好ましい。アルキル基、アリール基に導入される置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0079】
ケイ素原子に結合するX、Y、Zのうち、少なくとも1つは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐したアルコキシ基、或いはハロゲン基であり、加水分解してヒドロキシル基を生成する。ハロゲン原子としては、特に塩素が好ましい。炭素数1〜18のアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルコキシ基が特に好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。アルキル基、及びフェニル基に導入される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
X、Y及びZは、少なくとも1つが加水分解基(ハロゲン原子又はアルコキシ基)であればよいが、加水分解反応速度の観点から、少なくとも2つ以上が加水分解基であることが好ましい。具体的には、X、Y及びZの3つのうち1つがアルキル基又はフェニル基で残り2つがハロゲン原子及び/又はアルコキシ基、3つともハロゲン原子、3つともアルコキシ基の組み合わせが挙げられる。
【0080】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0081】
シリカフィラー(C)は、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基のヒドロキシル基の全てが、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤に由来するメタクリロキシ基含有官能基で置換されることが好ましい。シリコーンゴム系硬化性組成物においてゴムマトリックスを構成する成分(例えば、成分(A)、(B)、(D)等)とシリカフィラー(C)との混練性が向上し、架橋不良を起こすことなくシリコーンゴムの付加反応を進行させることができるからである。
【0082】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤による、シリカフィラーの表面処理方法は、特に限定されないが、次のような本発明の表面処理方法が好ましい。
すなわち、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤による表面処理前のシリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部のメタクリロキシ基含有シランカップリング剤を混合攪拌し、加熱処理する方法である。
シリカフィラーをメタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理する際、シリカフィラーとメタクリロキシ基含有シランカップリング剤との重量比が上記範囲であることによって、未処理のシリカフィラー表面に存在するシラノールによるシリコーンゴム系硬化性組成物の高粘度化、混練性の低下がないこと、さらにシリコーンゴムマトリックス成分の架橋反応を阻害することなくシリカフィラーをシリコーンゴムへ充填することができること、これらの結果、シリコーンゴムの引き裂き強度を確保しつつ、引張り強度及び硬度の向上が可能であること、が本発明者らによって見出された。
シリコーンゴムの硬度は、例えば医療用カテーテルの材料としてシリコーンゴムを用いる場合には重要となる場合がある。硬度の高い材料からカテーテルを構成することによって、目的部位(たとえば、胸腔)へカテーテルを挿入する際、挿入抵抗によるカテーテルの変形を抑制したり、耐キンク性が向上させたり、カテーテルの閉塞を抑制することができるからである。
より具体的には、上記加熱処理の温度としては、加水分解反応速度の観点から、50〜200℃、特に70〜150℃が好ましい。
また、上記加熱処理の時間としては、5分〜24時間、特に5分〜1時間であることが好ましい。
また、上記加熱処理の雰囲気としては、不活性雰囲気であることが好ましい。不活性雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等が挙げられる。
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤とシリカフィラーとの混合攪拌方法としては、例えば、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤を、シリカフィラーに対して噴霧しながら行うことが好ましい。
また、表面処理前のシリカフィラーに対するメタクリロキシ基含有シランカップリング剤の量は、表面処理前のシリカフィラー100重量部に対して、該シランカップリング剤が0.1〜15重量部であることが好ましく、特に5〜15重量部であることが好ましい。
【0083】
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されるシリカフィラーは、比表面積が、50m/g以上、特に100m/g以上であることが好ましい上記下限値以上の比表面積を有することによって、充填剤としての補強効果が期待できる。上記比表面積は、特に、50〜500m/gの範囲内であることが好ましい。
シリカフィラーの比表面積は、常法、例えば、BET比表面積法等によって測定することができる。
【0084】
また、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されるシリカフィラーは、平均一次粒子径が、100nm以下、中でも20nm以下であることが好ましい。上記上限値以下の平均一次粒子径を有することによって、高い透明性を有するシリコーンゴムを得ることができる。
メタクリロキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されるシリカフィラーの平均一次粒子径は、常法によって測定することができる。
【0085】
シリカフィラー(C)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、異なるメタクリロキシ基含有シランカップリング剤を用いて表面処理したシリカフィラー(C)を組み合わせてもよい。
【0086】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は上記(A)〜(C)成分以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、下記熱硬化性ポリエーテル重合体(D)や、下記白金又は白金化合物(E)が挙げられる。
【0087】
(D)熱硬化性ポリエーテル系重合体
熱硬化性ポリエーテル系重合体は、エーテル骨格を有し、加硫時の加熱によって硬化してシリコーンゴムに高い引き裂き強度を付与することができる。
熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を添加することで、ゴムマトリックス中に、架橋密度が高い領域と低い領域とを、より効果的に分布させることが可能となり、その結果、シリコーンゴムの引裂き強度の向上が可能である。
また、シリカフィラー(C)と熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を併用することで、架橋密度の高い領域と低い領域の分布による引裂き強度を向上させると共に、ゴムマトリックスとシリカフィラーとの共有結合がさらに形成され、ゴムマトリックス−シリカフィラーのネットワークにより、シリコーンゴムの引張り強度及び硬度を向上可能であることを見出した。
【0088】
熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)は、直鎖構造あるいは分岐状構造を有する重合体である。
熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)は、100℃で5分間熱硬化させた硬化物のJIS K6253(2006)におけるデュロメータ硬さが、A40以下であれば、具体的な構造は特に限定されない。ここで、上記デュロメータ硬さは、熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を100℃で5分間熱硬化させた硬化物に対して、JIS K6253(2006)に準じてタイプAデュロメータを用いて測定することができる。
【0089】
(E)白金又は白金化合物
白金又は白金化合物(E)は、加硫の触媒として作用する成分であり、その添加量は触媒量である。具体的な成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸又は塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。触媒成分である白金又は白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(E)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
【0091】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、通常、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.01〜50重量部、シリカフィラー(C)を10〜100重量部の割合で含有することが好ましい。特に、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜10重量部、及びシリカフィラー(C)を30〜70重量部の割合で含有することが好ましい。
【0092】
また、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物が、熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を含有する場合には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜50重量部、シリカフィラー(C)を10〜100重量部、及び熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を5〜45重量部の割合で含有することが好ましい。特に、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.5〜30重量部、シリカフィラー(C)を30〜70重量部、及び熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を10〜35重量部の割合で含有することが好ましい。さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.5〜30重量部、シリカフィラー(C)を30〜70重量部、及び熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を15〜25重量部の割合で含有することが好ましい。
【0093】
白金又は白金化合物(E)の含有量は、触媒量であり、適宜設定することができるが、具体的には、(A)〜(D)の合計量100重量部に対して0.05〜5重量部、特に0.1〜1重量部の範囲が好ましい。
【0094】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記成分を、任意の混練装置により、均一に混合することによって得られる。混練装置としては、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等が挙げられる。
また、触媒である白金又は白金化合物(E)は、ハンドリング性の観点から、予め、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)に分散させることが好ましい。
【0095】
以上のようにして得られた本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、例えば、80〜170℃、好ましくは80〜120℃で、5〜15分間加熱することによってシリコーンゴムを得ることができる。
【0096】
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによって、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが6.3N/mm以上である、シリコーンゴムを得ることが可能である。
上記引張り強さは、試験片の厚みを1mmとする以外は、JIS K6251(2004)に準拠して、本発明のシリコーン系硬化性組成物を硬化して作製した試験片を用いて測定することができる。
【0097】
また、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによって、JIS K6252(2001)によるクレセント形試験片の引裂き強さが35N/mm以上である、シリコーンゴムを得ることが可能である。
上記引裂き強さは、試験片の厚みを1mmとする以外は、JIS K6252(2001)に準拠して、本発明のシリコーン系硬化性組成物を硬化して作製した試験片を用いて測定することができる。
【0098】
上記のような引張り強さ及び引裂き強さを有するシリコーンゴムを用いることで、機械的強度、特に、引張り強さ及び引裂き強さに優れた成形体を得ることができる。そして、このような成形体を用いることによって、耐キンク性及び耐傷付き性に優れたシリコーンゴム製医療用チューブ(例えばカテーテル)を得ることができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物の一形態を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0100】
実施例及び比較例において使用した原材料は以下の通りである。
(A):第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)、ビニル基含有量0.13モル%、以下の合成スキームにより合成。
(B):直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、モメンティブ製「TC25D」
(C1):未処理シリカ微粒子(c1)[日本アエロジル製、「アエロジェル130」、比表面積130m/g、一次平均粒径16nm]をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで下記方法により表面処理したシリカフィラー
(c2):ジメチルジクロロシランで表面処理したシリカフィラー(日本アエロジル製「アエロジェルR972」、比表面積130m/g、一次平均粒径16nm)
(D):熱硬化性ポリエーテル系重合体(100℃で5分間熱硬化させた硬化物のJIS K6253(2006)におけるデュロメータ硬さが、A40以下)
(E)白金:モメンティブ製「TC−25A」
【0101】
[第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の合成]
下記式(4)に従って、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を合成した。
具体的には、Arガス置換した、冷却管及び攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン 74.7g(252mmol)、2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン 0.086g(0.25mmol)及びカリウムシリコネート 0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。3時間後、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを得た(Mn=277,734、Mw=573,906、IV値(dl/g)=0.89)。
【0102】
【化8】

【0103】
[シリカフィラー(C1)の製造]
窒素雰囲気下、表面処理を行っていない未処理のシリカフィラー(c1)100重量部に対して、12.5重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを噴霧した後、100℃で30分間、加熱処理した。
【0104】
[実施例1]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A)直鎖状のビニル基含有オルガノポリシロキサン37gに、(C1)シリカフィラー20gを添加し、ニーダーを用いて室温下で均一になるまで混練してマスターバッチを調製した。このマスターバッチ57gに、(D)熱硬化性ポリエーテル系重合体を3.0gと、(E)白金を成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して0.5重量部となる量と、(B)直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して6.0重量部となる量と、を加え混合し、2本ロールを用いて均一になるまで混練しシリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
【0105】
(シリコーンゴム系硬化性組成物の評価)
<引張り強度>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、100℃、10MPaで10分間プレスし、1mmのシート状に成形した。
得られたシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さ、切断時伸び及び50%伸び引張り応力(50%モジュラス)を測定した。ただし、試験片の厚みは、1mmとした。結果を表1に示す。
<引裂き強度>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、100℃、10MPaで10分間プレスし、1mmのシート状に成形した。
得られたシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6252(2001)に準拠してクレセント形試験片を作製し、JIS K6252(2001)によるクレセント形試験片の引裂き強さを測定した。ただし、試験片の厚みは、1mmとした。結果を表1に示す。
<硬度>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、100℃、10MPaで10分間プレスし、1mmのシート状に成形した。
得られたシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K 6253(2006)に準拠して、タイプAデュロメータ硬さを測定した。
【0106】
【表1】

【0107】
[実施例2]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A)直鎖状のビニル基含有オルガノポリシロキサン34gに、(C1)シリカフィラー20gを添加し、ニーダーを用いて室温下で均一になるまで混練してマスターバッチを調製した。このマスターバッチ54gに、(D)熱硬化性ポリエーテル系重合体を6gと、(E)白金を成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して0.5重量部となる量と、(B)直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して6.0重量部となる量と、を加え混合し、2本ロールを用いて均一になるまで混練しシリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
また、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例3]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A)直鎖状のビニル基含有オルガノポリシロキサン28gに、(C1)シリカフィラー20gを添加し、ニーダーを用いて室温下で均一になるまで混練してマスターバッチを調製した。このマスターバッチ48gに、(D)熱硬化性ポリエーテル系重合体を12gと、(E)白金を成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して0.5重量部となる量と、(B)直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを成分(A)、(C1)及び(D)の合計量100重量に対して6.0重量部となる量と、を加え混合し、2本ロールを用いて均一になるまで、混練しシリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
また、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例1]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A)直鎖状のビニル基含有オルガノポリシロキサン34gに、(c2)シリカフィラー20gを添加し、ニーダーを用いて室温下で均一になるまで混練してマスターバッチを調製した。このマスターバッチ54gに、(D)熱硬化性ポリエーテル系重合体を6gと、(E)白金を成分(A)、(c1)及び(D)の合計量100重量に対して0.5重量部となる量と、(B)直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを成分(A)、(c1)及び(D)の合計量100重量に対して2.0重量部となる量と、を加え混合し、2本ロールを用いて均一になるまで混練しシリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
また、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
[結果]
表1に示すように、比較例1のシリコーンゴム系硬化性組成物より得られたシリコーンゴムは、引裂き強度に優れるものの、硬度、50%伸び引張り応力(初期弾性率)及び引張強度が低く、不十分であった。これは、シリコーンゴムのマトリックス中に架橋密度が高い領域と低い領域が形成されたため優れた引裂き強度が得られた一方、ゴムマトリックスとフィラーのネットワークが形成されていないため、硬度、50%伸び引張り応力(初期弾性率)、引張強度が低くなったと考えられる。
これに対して、実施例1〜3のシリコーンゴム系硬化性組成物より得られたシリコーンゴムは、引張強度が6.0N/mm以上、且つ、引裂強度が35N/mm以上であり、優れた引張強度及び引裂強度を示した。これは、ゴムマトリックスとフィラーのネットワークが形成され且つシリコーンゴムマトリックス中に架橋密度が高い領域と低い領域が形成されたことによると考えられる。特に、実施例2のシリコーン樹脂組成物を硬化して得られたシリコーンゴムは、49.0N/mmという高い引裂強度を示した。また、実施例1〜3のシリコーンゴムは、いずれも、切断時伸び、硬度、50%伸び引張り応力にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラー(C)と、を含有することを特徴とするシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項2】
前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、下記式(1)で示されるものである請求項1に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【化1】

(式(1)中、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数であり、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、複数あるR及びRの少なくとも1つ以上がアルケニル基である。)
【請求項3】
前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、下記式(2)で示されるものである請求項1又は2に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【化2】

(式(2)中、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
【請求項4】
前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤が、下記式(3)である、請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換である二価のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基であり、X、Y、Zはハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐したアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基を表し、X、Y、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つはアルコキシ基もしくはハロゲン原子である。)
【請求項5】
前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤が、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至4のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項6】
前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)は、シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤を混合攪拌し、加熱処理されたものである、請求項1乃至5のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【請求項7】
前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されるシリカフィラーは、比表面積が50〜500m/g、平均一次粒子径が100nm以下である、請求項1乃至6のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【請求項8】
熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)をさらに含有する、請求項1乃至7のいずれかに記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)が、100℃で5分間熱硬化させた硬化物のJIS K6253(2001)におけるデュロメーター硬さがA40以下である請求項8に記載のシリコーンゴム硬化性組成物。
【請求項10】
前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第一のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第二のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する請求項1乃至9のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項11】
前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度が、4000〜8000の範囲である、請求項1乃至10のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項12】
前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)はビニル基を有しないものである、請求項1乃至11のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項13】
前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.01〜50重量部、前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)を10〜100重量部の割合で含有する、請求項1乃至12のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項14】
前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜50重量部、前記メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤によって表面処理されたシリカフィラー(C)を10〜100重量部、前記熱硬化性ポリエーテル系重合体(D)を5〜45重量部の割合で含有する、請求項8乃至12のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項15】
触媒量の白金又は白金化合物をさらに含有する、請求項1乃至14のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項16】
硬化後の物性が、
JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが6.3N/mm以上であり、
JIS K6252(2001)によるクレセント形試験片の引裂き強さが35N/mm以上である、
シリコーンゴムを与える、請求項1乃至15いずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体。
【請求項18】
請求項17に記載の成形体で構成されることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項19】
シリカフィラーを、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理する方法であって、シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記シランカップリング剤を混合攪拌し、50℃〜200℃の温度で5分〜24時間加熱処理することを特徴とする、表面処理方法。
【請求項20】
シリカフィラー100重量部に対し、0.1〜15重量部の前記シランカップリング剤を噴霧しながら混合攪拌し、窒素雰囲気下70℃〜150℃の温度で5分〜1時間加熱処理する、請求項19に記載の表面処理方法。

【公開番号】特開2012−172114(P2012−172114A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37541(P2011−37541)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】