説明

シリコーンプレポリマーの製造方法

【課題】異なる重合性官能基を有するモノマーの重合速度を揃えて重合することにより、均一な組成を有するプレポリマーを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリロイロキシ基等を有するモノマーからなる群をA群、アクリルアミド基等を有するモノマーからなる群をB群とし、A群、B群それぞれから少なくとも1種類以上のモノマーを選んで共重合させる場合において、少なくとも1種類が親水性モノマーであり、かつ少なくとも1種類のモノマーが分子内に少なくとも一つの反応性官能基を有するモノマーであり、かつ、A群、B群からそれぞれ1種類ずつ選ばれたモノマーaおよびモノマーbにおいて、重合開始から重合終了時間までのモノマーaおよびモノマーbのそれぞれのモノマー消費率(%)の差の平均値を7.15以下になるように重合させることを特徴とするシリコーンプレポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は均一組成を有するシリコーンプレポリマーに関するもので、該シリコーンプレポリマーは高いシュトレール比を示し、光学歪みが小さいことから、光学材料に好適に用いられる。さらにシリコーン成分を含有し、高い酸素透過性を示すことから、眼内レンズ、人工角膜、コンタクトレンズなどに特に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、重合時の収縮が抑制可能であり、また重合後、残存モノマーの抽出工程が不要であるといった利点があることから、コンタクトレンズの重合において、重合性基を有するプレポリマーを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1は主に親水性プレポリマーであるポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)について記載されており、該プレポリマーは水溶性溶媒に可溶である。
【0003】
一方、連続装用に用いるコンタクトレンズ用素材を得る場合には、十分な酸素透過性を得るためシリコーンモノマーを共重合させる方法が知られており、上記特許文献1中でも共重合成分としてシリコーンモノマーを用いてもよいとされ、種々のモノマーが例示されている。しかしながら、上記特許文献1中にはシリコーンモノマーを共重合させた場合の重合組成や重合方法について明記されていない。そのため、例えばシリコーンモノマーとして(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、親水性モノマーとして(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いて共重合させた場合、それらのモノマーの重合性の違いにより、重合初期と後期で得られるコポリマーの組成が異なってしまい、その結果、該コポリマーをプレポリマー化し、さらに重合して得られたポリマーを光学材料に用いようとすると光学歪みが見られるという問題があった。
【0004】
また、重合性の異なる2種類以上のモノマーの重合速度を揃えて共重合させる方法として、モノマーを滴下して加えながら重合させる方法が知られている(例えば、特許文献2)。上記特許文献2ではシリコーンモノマー等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを多く含む溶液を、親水性モノマーである(メタ)アクリルアミド系モノマーを多く含む溶液中に滴下することにより重合速度を揃えて共重合している。しかしながら、特許文献2の方法でコポリマーを共重合して得ようとすると、重合速度の均一性や得られるコポリマーの分子量の再現性が低いという問題があった。これは、特許文献2では重合溶媒への連鎖移動により分子量をコントロールしているが、その重合溶媒が揮発しやすく重合中に組成が変化してしまうことが原因であると推察される。さらに、特許文献2では重合速度の均一性に関する明確な指標がないため、均一性の度合いや再現性を確認するのが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/077792号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0111905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、異なる重合性官能基を有するモノマーの重合速度を揃えて重合することにより、均一な組成を有するプレポリマーを提供することを目的とする。より好ましくは連鎖移動が起こりにくい溶媒と連鎖移動剤を組み合わせた使用、および重合の均一性を示す指標の導入により、分子量および重合速度の均一性の再現性を高めたシリコーンプレポリマーを提供する。本発明のプレポリマーを重合して得られるポリマーは良好なシュトレール比を有することから、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズの原料として特に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) スチリル基、アクリロイロキシ基、メタクリロイロキシ基のいずれかを有するモノマーからなる群をA群、
アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルカーボネート基、ビニルカーバメート基、ビニルアミド基、ビニルエステル基のいずれかを有するモノマーからなる群をB群とし、
A群、B群それぞれから少なくとも1種類以上のモノマーを選んで共重合させる場合において、
少なくとも1種類のモノマーがシリコーンモノマーであり、かつ少なくとも1種類が親水性モノマーであり、かつ少なくとも1種類のモノマーが分子内に少なくとも一つの反応性官能基を有するモノマーであり、
かつ、A群、B群からそれぞれ1種類ずつ選ばれたモノマーaおよびモノマーbにおいて、
重合開始から重合終了時間までのモノマーaおよびモノマーbのそれぞれのモノマー消費率(%)の差の平均値をABC値とした場合、
ABC値が7.15以下になるように重合させることを特徴とするシリコーンプレポリマーの製造方法。
(2) それぞれ前記シリコーンモノマー、前記親水性モノマーおよび前記反応性モノマーを含有する被滴下液および滴下液であって、
被滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA1、被滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB1、滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA2、滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB2とした時に、下式
A1/SB1 < SA2/SB2
を満足する被滴下液および滴下液を用い、
該被滴下液中に該滴下液を重合中に連続的または断続的に添加しながら重合することを特徴とする上記(1)記載のプレポリマーの製造方法。
(3) 前記A群から選ばれるモノマーが(メタ)アクリロイロキシ基を有し、かつB群からえらばれるモノマーが(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴とする上記(1)または(2)記載のプレポリマーの製造方法。
(4) ケイ素原子含有量の合計がプレポリマー固形分に対して10〜30重量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
(5) 前記シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が分子内に極性基を有する極性シリコーンモノマーであり、該極性シリコーンモノマーの含有率がシリコーンプレポリマーの固形分に対して30〜90重量%であることを特徴とする上記(4)記載のプレポリマーの製造方法。
(6) 前記極性基が水酸基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、カーボネート基、カーバメート基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基からなる群から選ばれた基であることを特徴とする上記(5)記載のプレポリマーの製造方法。
(7) 前記極性基が水酸基であることを特徴とする上記(5)記載のプレポリマーの製造方法。
(8) 前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(d)
【0008】
【化1】

【0009】
で表されるモノマーであることを特徴とする上記(5)記載のプレポリマーの製造方法。
(式(d)中、Rは水素またはメチル基を表す。Lは炭素数1〜20のアルキレン基またはアリーレン基を表す。Dはシリコーン基を表す。)
(9) 前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(e)
【0010】
【化2】

【0011】
で表されるモノマーであることを特徴とする上記(5)記載のプレポリマーの製造方法。
(式(e)中、Rは水素またはメチル基を表す。Lは炭素数1〜20のアルキレン基またはアリーレン基を表す。Gは少なくとも1つの水酸基を有する炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。Dはシリコーン基を表す。)
(10)一般式(d)および/または(e)中のDが下記一般式(f)
【0012】
【化3】

【0013】
で表されることを特徴とする上記(8)または(9)記載のプレポリマーの製造方法。
(式(f)中、E 〜E11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。hは0〜200の整数を表し、i、j、kはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表す。ただしh=i=j=k=0の場合を除く。)
(11) 前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(s)
【0014】
【化4】

【0015】
で表されるモノマーであることを特徴とする上記(5)記載のプレポリマーの製造方法。
(式(s)中、nは3〜10の整数を表す。Rは炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。)
(12) 前記親水性モノマーがN,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドからなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
(13) 重合溶媒に1013hPaでの沸点が80℃〜200℃の溶媒を用いることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
(14) 重合溶媒に3級アルコールを用いることを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
(15) 重合後に、前記分子内に少なくとも一つの反応性官能基を有するモノマー由来の反応性官能基と重合性官能基を有する化合物を反応させることにより重合性官能基を導入することにより得られることを特徴とする上記(1)〜(14)記載のプレポリマーの製造方法。
(16) 前記反応性官能基が水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする上記(15)記載のプレポリマーの製造方法。
(17) 前記被滴下液中および/または前記滴下液中に連鎖移動剤を含有することを特徴とする上記(2)記載のプレポリマーの製造方法。
(18) 前記連鎖移動剤がアルキルメルカプタンであることを特徴とする上記(17)記載のプレポリマーの製造方法。
(19) 上記(1)〜(18)のいずれかに記載のプレポリマーを重合して得られることを特徴とする眼用レンズ。
(20) 上記(1)〜(18)のいずれかに記載のプレポリマーを重合して得られることを特徴とするコンタクトレンズ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により、異なる重合性官能基を有するモノマーの重合速度を揃えて重合することで、均一な組成を有するプレポリマーを得ることができる。本発明のプレポリマーを重合して得られるポリマーは良好なシュトレール比を有することから、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズの原料として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】モノマーaおよびモノマーbのモノマー消費率を重合時間に対してプロットしたグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、異なる重合性官能基を有するモノマーの重合速度を揃えて重合することにより、均一な組成を有するシリコーンプレポリマーを得ることができる。
【0019】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、共重合に用いるモノマーを、共重合の際の重合速度により大きく二群に分けている。共重合の際により速く重合するスチリル基、アクリロイロキシ基、メタクリロイロキシ基のいずれかを有するモノマーをA群、より遅く重合する傾向にあるアクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルカーボネート基、ビニルカーバメート基、ビニルアミド基、ビニルエステル基のいずれかを有するモノマーをB群としている。これらのうち、得られるシリコーンプレポリマーを重合して光学材料として用いる場合の透明性、弾性率、含水率の各物性バランスの点で好ましいのは、A群のモノマーが(メタ)アクリロイロキシ基、B群のモノマーが(メタ)アクリルアミド基の組み合わせであり、最も好ましいのはA群のモノマーがメタクリロイロキシ基、B群のモノマーがアクリルアミド基の組み合わせである。
【0020】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、前記A群、B群からそれぞれ1種類ずつ選ばれたモノマーaおよびモノマーbにおいて、重合開始から重合終了時間までのモノマーaおよびモノマーbのそれぞれのモノマー消費率(%)の差の平均値をABC値とする。
【0021】
ABC値の値が小さいほど、A群から選ばれたモノマーaとB群から選ばれたモノマーbの重合速度が重合開始から重合終了時間までよく一致していることを表す。両モノマーが十分均一に重合している場合のABC値の値は7.15以下であり、得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーの組成の均一性が向上することからより広い範囲の組成で透明なシリコーンポリマーが得られやすいという点でより好ましくは6.21以下であり、前記シリコーンポリマーの表面の均一性が向上することから脂質などがポリマー表面に付着するのを抑制できるという点で最も好ましくは5以下である。
【0022】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法において用いられるモノマーのうち、少なくとも1種類はシリコーンモノマーである。また、得られるシリコーンプレポリマーが水系溶媒に溶解しやすくなるために、少なくとも1種類のシリコーンモノマーが、分子内に極性基を有する極性シリコーンモノマーであることが好ましい。その含有率は、少なすぎても多すぎても水系溶媒に対する溶解性が得られないことから、シリコーンプレポリマー固形分に対して30〜90重量%であることが好ましく、40〜80重量%がより好ましく、50〜70重量%が最も好ましい。
【0023】
極性シリコーンモノマー中の極性基の好適な例として、水酸基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、カーボネート基、カーバメート基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基が挙げられる。それらのうち、最も好ましいのは水酸基である。
極性シリコーンモノマーの好適な例をより具体的に示すと、下記一般式(d)
【0024】
【化5】

【0025】
で表されるシリコーンモノマー、下記一般式(e)
【0026】
【化6】

【0027】
で表されるシリコーンモノマー、下記一般式(s)
【0028】
【化7】

【0029】
で表されるシリコーンモノマーが挙げられる。
【0030】
一般式(d)、(e)、(s)中、Rは水素またはメチル基を表す。
【0031】
一般式(d)、(e)中、Lは炭素数1〜20のアルキレン基またはアリーレン基を表す。その例としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。前記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。
【0032】
一般式(d)、(e)中、Dはシリコーン基を表す。その好適な例として、下記一般式(f)
【0033】
【化8】

【0034】
で表されるシリコーン基が挙げられる。
【0035】
一般式(f)中、E〜E11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。
【0036】
一般式(f)中、hは0〜200の整数を表し、i、j、kはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表す(ただし、h=i=j=k=0の場合を除く)。h+i+j+kの合計は、小さすぎると十分な酸素透過性が得られず、大きすぎると親水性モノマーとの相溶性が低下することから、2〜100が好ましく、2〜10がより好ましく、3〜8が最も好ましい。また、得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるポリマーの形状回復性の点で好ましいのは、i=j=k=0である。
【0037】
一般式(e)中、Gは少なくとも1つの水酸基を有する炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。その例として、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
【0038】
一般式(s)中、nは3〜10の整数を表すが、小さすぎると十分な酸素透過性が得られず、大きすぎると親水性モノマーとの相溶性が低下することから、3〜8がより好ましい。
【0039】
一般式(s)中、Rsは炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。その例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。Rsの炭素数が多すぎると相対的にシリコーン含有量が下がり酸素透過性が低下することから、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が最も好ましい。
【0040】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法で得られるシリコーンプレポリマーのケイ素原子含有量は、低すぎるとシリコーンプレポリマーを重合して得られるポリマーが十分な酸素透過性を得られず、高すぎると親水性モノマーとの相溶性が得られなくなることから、プレポリマー固形分に対して10〜30重量%が好ましい。
【0041】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法において用いられるモノマーのうち、少なくとも1種類は親水性モノマーである。その好適な例として、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。それらのうち、シリコーンモノマーとの相溶性と親水性のバランスの点でN,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。
【0042】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法において用いられるモノマーのうち、少なくとも1種類は反応性官能基を有するモノマーである。その好適な例として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ジヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エリスリトール、(メタ)アクリル酸キシリトール、(メタ)アクリル酸ソルビトール、および(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールなどの水酸基を有するモノマー、アリルアミン、2−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸、ビニロキシ酢酸、アリロキシ酢酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸、3−(メタ)アクリロイルブタン酸、4−ビニル安息香酸などのカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。それらのうち、反応性官能基の反応性の高さから好ましいのは水酸基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマーであり、中性であることからシリコーン成分の分解を促進しにくい点でより好ましいのは水酸基を有するモノマーである。
【0043】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、重合速度を揃えるための方法として、初期反応液中においては反応速度の遅いB群のモノマーの濃度を比較的高くし、重合中に、A群のモノマーの濃度が比較的高い滴下液を連続的または断続的に添加しながら重合することが好ましい。
【0044】
すなわち、それぞれ前記シリコーンモノマー、前記親水性モノマーおよび前記反応性モノマーを含有する被滴下液および滴下液であって、
被滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA1、被滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB1、滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA2、滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB2とした時に、下式
A1/SB1 < SA2/SB2
を満足する被滴下液および滴下液を用い、
該被滴下液中に該滴下液を重合中に連続的または断続的に添加しながら重合することが好ましい。
【0045】
モノマー混合液を滴下する場合の滴下時間は、複数の滴下時間条件でABC値を測定しながら使用するモノマーに応じて決定されるべきものであるが、一例としてA群のモノマーがメタクリル酸エステル類、B群のモノマーがアクリルアミド類である場合を挙げると、滴下時間が短すぎる場合は徐々に系中に未重合のモノマーが増えることから重合速度差が顕在化してABC値が増大し、滴下時間が長すぎる場合は生産効率が低下することから、200〜600分が好ましく、230〜500分がより好ましく、250〜450分が最も好ましい。
【0046】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、ある時点でのモノマー消費率(%)は、その時点までに消費されたそれぞれのモノマー量を、最終的に重合原液に加えられるそれぞれのモノマー量で割った値に100をかけた値で表される。
【0047】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法では、重合開始から重合終了時間までの各測定時間におけるモノマーaのモノマー消費率とモノマーbのモノマー消費率の差の合計を測定回数で除算するか、あるいはモノマーaのモノマー消費率およびモノマーbのモノマー消費率を重合時間に対してプロットしたグラフの、重合開始から重合終了時間までの2つのモノマー消費率曲線間の面積を重合終了時間で割った値をABC値と定義する。
後者の方法で用いるモノマーaおよびモノマーbのモノマー消費率を重合時間に対してプロットしたグラフの例を図1に示す。ABC値は数式を用いると次のように表される。
ABC値=(1/T)ΣA
(Tは重合終了時間、Aは各区間におけるグラフ間の面積を表す。)
ただし、重合終了時間はモノマーaおよびモノマーbのモノマー消費率がいずれも97%以上になった時点、または720分のうちのいずれか短い方の時間を重合終了時間と定義する。また、重合終了時間が720分の場合は、0、20、40、60、80、100、120、150、180、240、300、360、720分の各測定時間を必ず含むようにモノマー消費率の測定を行う。重合終了時間が720分より短い場合は上記の測定時間のうち、重合終了時間内に入る点でモノマー消費率の測定を行う。
【0048】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法において、シリコーンプレポリマーを重合する際には重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有する熱重合開始剤を選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられる。その使用量はシリコーンプレポリマーの目標分子量により適宜調整されるが、モノマーに対して0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜3モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が最も好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、得られるシリコーンプレポリマーの分子量をコントロールするために被滴下液中かつ/または滴下液中に連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤の好適な例として、2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール、2−アミノエタンチオール塩酸塩、1−ヘキサンチオール、1−ドデカンチオールなどのアルキルメルカプタン類が挙げられる。また、その使用量はシリコーンプレポリマーの目標分子量により適宜調整されるが、モノマーに対して0.001〜10モル%が好ましく、0.005〜5モル%がより好ましく、0.01〜3モル%が最も好ましい。
【0050】
本発明のシリコーンプレポリマーの製造方法でシリコーンプレポリマーを重合する際、重合溶媒を使用することができる。重合溶媒の沸点は、低すぎると重合中に揮発してモノマー濃度が変化してしまうことから得られるシリコーンプレポリマーの分子量が安定せず、高すぎると重合後の除去が困難になることから、1013hPaでの沸点は80℃〜200℃が好ましく、90℃〜180℃がより好ましい。前記重合溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、テトラヒドロリナロールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中で、シリコーンモノマーと親水性モノマーの両方を溶解しやすいことから好ましいのはアルコール系溶剤であり、ラジカル重合時に溶媒への連鎖移動が起こりにくい利点を考慮すると、連鎖移動剤と組み合わせて使用することにより再現性よく同じ分子量のシリコーンプレポリマーを得ることができる点で、t−ブタノール、t−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの3級アルコール類がより好ましく、さらに好ましいのは、沸点が高すぎないことから重合反応後の除去が容易なt−ブタノール、t−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノールである。
【0051】
本発明の製造方法で得られるシリコーンプレポリマーの分子量は、低すぎると重合収縮の低減効果が得られにくく、高すぎるとシリコーンプレポリマーを重合してポリマーを得る際の重合原液の粘度が高くなりすぎることから、5000〜100万が好ましく、8000〜50万がより好ましく、1万〜15万が最も好ましい。
【0052】
本発明の製造方法で得られるシリコーンプレポリマーは重合後、反応性官能基を有するモノマーの反応性官能基に重合性官能基を有する化合物を反応させて、重合性官能基を導入することにより得ることができる。反応性官能基の好適な例としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルボン酸無水物基を挙げることができる。これらのうち、反応性、および官能基が中性である点で好ましいのは水酸基である。また、重合性官能基を有する化合物を用いる場合の好適な例として、(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸塩化物、(メタ)アクリル酸無水物、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。これらのうち、反応性官能基との反応性が高く、官能基を高効率で導入できる点で好ましいのは(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチルである。
【0053】
本発明の製造方法で得られるシリコーンプレポリマーの官能基化度は、高すぎるとシリコーンプレポリマーを重合して得られるポリマーの弾性率が高くなりすぎ、低すぎると重合が十分に起こらずポリマーが得られないことから、シリコーンプレポリマーの重合に用いられるモノマーの全モル数に対して0.1〜1.5モル%が好ましく、0.2〜1モル%がより好ましく、0.25〜0.7モル%が最も好ましい。
【0054】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合してシリコーンポリマーを得る際は、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有する熱重合開始剤を選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそモノマー成分100重量部に対して1重量部くらいまでの量で使用される。
【0055】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合してシリコーンポリマーを得る際、ポリマー表面に水濡れ性を賦与するため、親水性ポリマーを内部湿潤剤として重合原液中に加えることが好ましい。親水性ポリマーの好適な例として、ポリビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、およびポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ2エチルオキサゾリン、ヘパリンポリサッカリド、ポリサッカリド、およびこれらの混合物およびコポリマー、マクロモノマーが挙げられる。これらのうち、良好な濡れ性を示す点でより好ましいのはポリビニルピロリドン、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールであり、さらに重合原液に対する良好な溶解性を有する点で最も好ましいのはポリビニルピロリドン、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミドである。
【0056】
親水性ポリマーの添加量は、少なすぎると十分な濡れ性が得られず、多すぎるとシリコーンプレポリマーを含む重合原液に対する溶解性が低下することから、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜25重量%がより好ましく、1〜20重量%が最も好ましい。
【0057】
親水性ポリマーの分子量は、小さすぎると十分な濡れ性が得られず、大きすぎると重合原液が高粘度になりすぎることから、1000〜200万が好ましく、1万〜100万がより好ましく、20万〜80万が最も好ましい。
【0058】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合してシリコーンポリマーを得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、テトラヒドロリナロールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中でアルコール系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤は得られたシリコーンポリマーから溶剤を水による洗浄で容易に除去できる点で好ましい。
【0059】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーは、単独で所望の形状に成型して使用することもできるし、他の材料と混合してから成型することもできる。また成型品の表面にコーティングして適用することも好適である。
【0060】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合してポリマーを成型して眼用レンズとして用いる場合、その重合方法、成形方法としては通常次の方法を使用することができる。たとえば一旦、丸棒や板状に成形し、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト法などである。
【0061】
一例として本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーからなる眼用レンズをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
【0062】
シリコーンプレポリマー組成物を、レンズ形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってレンズ形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されたものを用いることができるが、光重合の場合は光学的に透明な素材が好ましく用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。眼用レンズを製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成され、その空隙にシリコーンプレポリマー組成物が充填される。続いて、空隙にシリコーンプレポリマー組成物を充填したモールドに対し、紫外線等の活性光線を照射するか、オーブンや液槽に入れて加熱して、シリコーンプレポリマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0063】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーは、種々の方法で改質処理を行うことができる。用途が眼用レンズであり、かつ上記の内部湿潤剤を用いた水濡れ性賦与を行わない場合は表面の水濡れ性を向上させる改質処理を行うことが好ましい。
【0064】
具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着およびスパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの改質手段の中で、簡便であり好ましいのは塩基処理および酸処理である。
【0065】
塩基処理または酸処理の一例としては、成型品を塩基性または酸性溶液に接触させる方法、成型品を塩基性または酸性ガスに接触させる方法等が挙げられる。そのより具体的な方法としては、例えば塩基性または酸性溶液に成型品を浸漬する方法、成型品に塩基性または酸性溶液または塩基性または酸性ガスを噴霧する方法、成型品に塩基性または酸性溶液をヘラ、刷毛等で塗布する方法、成型品に塩基性または酸性溶液をスピンコート法やディップコート法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、成型品を塩基性または酸性溶液に浸漬する方法である。
【0066】
シリコーンポリマーを塩基性または酸性溶液に浸漬する際の温度は特に限定されないが、通常−50℃〜300℃程度の温度範囲内で行われる。作業性を考えれば−10℃〜150℃の温度範囲がより好ましく、−5℃〜60℃が最も好ましい。
【0067】
シリコーンポリマーを塩基性または酸性溶液に浸漬する時間については、温度によっても最適時間は変化するが、一般には100時間以内が好ましく、24時間以内がより好ましく、12時間以内が最も好ましい。接触時間が長すぎると、作業性および生産性が悪くなるばかりでなく、酸素透過性の低下や機械物性の低下などの悪影響が出る場合がある。
【0068】
塩基としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、各種炭酸塩、各種ホウ酸塩、各種リン酸塩、アンモニア、各種アンモニウム塩、各種アミン類およびポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等の高分子量塩基などが使用可能である。これらの中では、低価格であることおよび処理効果が大きいことからアルカリ金属水酸化物が最も好ましい。
【0069】
酸としては硫酸、リン酸、塩酸、硝酸等の各種無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、フェノール等の各種有機酸、およびポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸などの各種高分子量酸が使用可能である。これらの中では、処理効果が大きく他の物性への悪影響が少ないことから高分子量酸が最も好ましい。
【0070】
塩基性または酸性溶液の溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。中でも経済性、取り扱いの簡便さ、および化学的安定性などの点で水が最も好ましい。溶媒としては、2種類以上の物質の混合物も使用可能である。
【0071】
本発明において使用される塩基性または酸性溶液は、塩基性または酸性物質および溶媒以外の成分を含んでいてもよい。
【0072】
シリコーンポリマーは、塩基処理または酸処理の後、洗浄により塩基性または酸性物質を除くことができる。
【0073】
洗浄溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。
【0074】
洗浄溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合物を使用することもできる。洗浄溶媒は、溶媒以外の成分、例えば無機塩類、界面活性剤、および洗浄剤を含有してもよい。
【0075】
以上のような改質処理は、シリコーンポリマー全体に対して行ってもよく、例えば表面のみに行うなどシリコーンポリマーの一部のみに行ってもよい。表面のみに改質処理を行った場合にはシリコーンポリマー全体の性質を大きく変えることなく表面の水濡れ性のみを向上させることができる。
【0076】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーの酸素透過性は、酸素透過係数70×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)以上が好ましい。
【0077】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーからなる眼用レンズのシュトレール比は0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましい。
【0078】
本発明の製造方法により得られるシリコーンプレポリマーを重合して得られるシリコーンポリマーはコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズに特に好適に用いられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
分析方法
(1)GPC測定
GPC測定は以下の条件で行った。
カラム:TSKgel GMHHR−M×2本
移動相:クロロホルム
カラム温度:40℃
注入量:100μL
検出器:UV検出器(254nm)
流速:1mL/分
サンプル濃度:0.4重量%
標準サンプル:ポリスチレン
(2)モノマー消費率の算出
滴下開始時点を0分として、0、20、40、60、80、100、120、150、180、240、300、360、720分に重合反応液から約100μLずつサンプリングする。以下で用いる変数について、例えばサンプル重量をWs(n)と表記した場合、重合反応液から採取したn番目のサンプルのサンプル重量を表すものとする。したがって、Ws(3)は3番目に採取されたサンプル、すなわち40分の時点で採取されたサンプルの重量を表す。各時点で採取したサンプルの重量を測定後、クロロホルム約2.5〜3.0gで希釈し、0.45μmフィルタでろ過してGPC測定サンプルとする。サンプル重量Ws(n)とクロロホルムの重量Wc(n)から下式によりX(n)を算出する。
X(n)=Ws(n)/Wc(n)
得られたGPC測定サンプルを上記(1)のGPC測定条件で測定する。測定結果中の消費率を求めようとしているモノマーのピーク面積値をAm(n)とする。
【0080】
サンプルを採取した時間をt(n)とし、t(n)の時点で重合原液中に加えられた固形分量(溶媒以外の全モノマー、連鎖移動剤、重合開始剤量の合計)をK(n)、滴下開始時点で初期溶液A中に含まれていた固形分量をK(1)、滴下開始時点でモノマー混合液Bに含まれていた固形分量をK(1)、混合液Bの滴下終了時間をT、滴下開始時点で重合開始剤溶液C中に含まれていた固形分量をK(1)、開始剤溶液Cの滴下終了時間をTとすると、
K(n)=K(1)+(t(n)/T)×K(1)+(t(n)/T)×K(1)
同様の方法で、t(n)の時点で重合原液中に加えられた溶媒量をS(n)、滴下開始時点で初期溶液A中に含まれていた溶媒量をS(1)、開始剤溶液C中に含まれていた溶媒量をS(1)、開始剤溶液Cの滴下終了時間をTとすると、
S(n)=S(1)+(t(n)/T)×S(1)
ただし、上記は溶媒が溶液Aと開始剤溶液Cのみに含まれる場合の例であり、例えば溶液Bにも含まれる場合は(t(n)/T)×M(1)の項を追加する。
上で求めたK(n)、S(n)から下式によりY(n)を算出する。
Y(n)=K(n)/S(n)
さらに、下式によりR(n)を求める。
R(n)=Am(n)/(X(n)×Y(n))
t(n)の時点で重合せずに重合原液中に含まれているモノマー量M(n)は
(n)=(R(n)/R(n−1))×M(n−1) (n>1の場合)
(1)=M(1) (n=1の場合)
一方、t(n)の時点までに重合原液中に加えられたモノマー量M(n)は、
M(n)=M(1)+(t(n)/T)×M(1)
で表される。したがって、最終的に重合原液中に加えられるモノマー量をM(13)とすると、モノマー消費率Z(n)は
Z(n)=(M(n)−M(n))/M(13)×100
で表される。
各モノマーについて、横軸をt(n)、縦軸をZ(n)としてプロットすることにより、モノマー消費率グラフが得られる。
【0081】
実施例1
【0082】
【表1】

【0083】
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
OH−mPDMS:シリコーンモノマー
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
Norbloc:紫外線吸収剤
Blue HEMA:重合性染料
DSH:ドデシルメルカプタン
ADVN:重合開始剤
TAA:t−アミルアルコール
1)モノマー混合液Bの調製
300mLナスフラスコに2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤、2.6g)、下式(r)
【0084】
【化9】

【0085】
で表される染料(0.024g)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、20g)を加え、紫外線吸収剤と染料を溶解させた。次いでメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(19.2g)、n−ドデシルメルカプタン(DSH、0.036g)、下式(j)
【0086】
【化10】

【0087】
で表されるシリコーンモノマー(OH−mPDMS、71.2g)を加えた後、真空ライン、窒素ラインに接続した三方コックを装着し、ナスフラスコ内部を窒素置換した。
【0088】
2)重合溶液Aの調製
500mL四つ口フラスコに0.42gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、7gのDMA、130gのt−アミルアルコール(TAA)と、上記1)で調製したモノマー混合液Bのうち、7.5重量%を加え、メカニカルスターラ、真空ラインとアルゴンラインに接続した三方コックを装着し、フラスコ内部をアルゴン置換した。
【0089】
3)開始剤溶液Cの調製
100mLフラスコに0.42gのADVN、50gのTAAを加えた。真空ラインと窒素ラインに接続した三方コックでフラスコ内部を窒素置換した。
【0090】
4)重合
モノマー混合液Bのフラスコと重合溶液Aのフラスコをチューブポンプを介して接続した。開始剤溶液Cのフラスコと重合溶液Aのフラスコも同様にして接続した。重合溶液Aの四つ口フラスコを60℃に加熱した水浴に浸漬し、5分間撹拌後、モノマー混合液Bと開始剤溶液Cの滴下を開始した。滴下開始後、0分、20分、40分、60分、80分、100分、120分、150分、180分、240分、300分、360分、720分の各時点で反応溶液からサンプルを抜き出し、クロロホルムを加えてGPCサンプルとした。モノマー混合液Bの滴下終了時間は326分、開始剤溶液Cの滴下終了時間は260分であった。720分で加熱を止め、終夜で室温まで冷却した。重合溶液の重量を測定し、減少分を重合中の溶媒飛散量とした。反応液の各サンプルについてGPC測定を行い、OH−mDPMS、DMAのピーク面積を元に、両モノマーの消費率を計算した。重合時間とモノマー消費率のグラフをプロットし、両モノマーの消費率曲線の間の面積の合計を、全重合時間で割った値をABC値と定義した。
【0091】
反応終了後、溶媒をエバポレータで留去した。得られた固形分を60℃に加熱しながらメタノール150mLに溶解し、得られた溶液を40%(v/v)メタノール水溶液300mLに撹拌しながら加え、しばらく静置した。上澄み液を捨て、得られた沈殿物を65%(v/v)メタノール水溶液300mLで1回、75%(v/v)メタノール水溶液300mLで1回洗浄した。得られた固形分を40℃で18時間真空乾燥後、液体窒素を加えて破砕した。40℃、3時間真空乾燥することにより、未官能シリコーンポリマーを得た。
なお、濃度単位「%(v/v)」とは、混合前の状態における特定成分の体積を混合前の状態における各成分の体積の合計で除算し、100倍した値を指す。すなわち、メタノール40mlと水60mlを混合したものを40%(v/v)メタノール水溶液と表す。
【0092】
実施例2〜43
初期溶液A、モノマー混合液B中の初期DMA量、混合液B、溶液Cの滴下時間、開始剤量、連鎖移動剤量を表2のように変えた以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。各実施例のABC値は表2、表3の通りであった。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
実施例44
300mL四つ口フラスコに実施例1で得られた未官能ポリマー30g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)4.5mg、トルエン167mLを加え、窒素ラインに接続した三方コック、メカニカルスターラ、クライゼン管を装着し、クライゼン管の先にリービッヒ冷却管、曲管、ナスフラスコを接続した。窒素気流下で撹拌しながら110℃まで加熱し、約110gのトルエンを留去することにより、反応系から水分を除去した。反応液を60℃まで冷却後、ビスマス(III)(2−エチルヘキサン酸)トルエン溶液0.516mL、メタクリル酸2−イソシアナトエチル(MOI)0.695mLを窒素気流下で加え、100℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を60℃まで冷却し、メタノール20gを加えて30分撹拌した。反応液を50℃でエバポレータを用いて濃縮し、得られた固形分にメタノール70gを加えて溶解させた。得られた溶液を50%(v/v)メタノール水溶液250mLに撹拌しながら加えて静置後、上澄み液を捨てた。得られた固形分を70%(v/v)メタノール水溶液200mL、75%(v/v)メタノール水溶液200mL、80%(v/v)メタノール水溶液200mLで洗浄した。得られた固形分を40℃、18時間で終夜真空乾燥した後、液体窒素を加えて破砕し、40℃、3時間真空乾燥することにより、目的のシリコーンプレポリマーを得た。
ビスマス(2−エチルヘキサン酸)の2−エチルヘキサン酸溶液(Bi:25%、和光純薬)0.1183mL(0.1072g)をトルエン50mLで希釈して調製した。
【0096】
実施例45
ポリビニルピロリドンK90(0.55g)、イルガキュア819(チバスペシャルティーケミカルズ)0.04g、t−アミルアルコール4.34gからなる溶液に、シリコーンプレポリマー3.00gを加え、70℃で加熱しながら混合し、次いで減圧下で脱泡した。溶液をアルゴン下で常圧に戻すことで酸素を除去し、窒素雰囲気下のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ(4−メチル−1−ペンテン))製コンタクトレンズモールドに注いだ。モールドに55℃で光照射(1.6mW/cm2、30分、20W蛍光灯)し、重合させることにより、コンタクトレンズ形状のサンプルを得た。ホウ酸緩衝液(pH7.4〜7.6)中で離型し、バイアルへ移して120℃、30分煮沸した。冷却後、レンズを取り出し、ホウ酸緩衝液中に浸漬した。得られたレンズのシュトレール比を測定したところ、0.97であった。
【0097】
比較例1
表1のモノマー、開始剤、溶媒を500mL四つ口フラスコに滴下ではなく、一括で仕込む以外は実施例1と同様の方法にて重合し、官能基化、レンズ化を行った。重合時のABC値は14.4、得られたレンズのシュトレール比は0.85であった。
【0098】
比較例2
特許文献2(米国特許出願公開第2009/0111905号明細書)の実施例9の方法に従って重合を行ったところ、ABC値は7.6であった。さらに官能基化、レンズ化を行ったところ、得られたレンズのシュトレール比は、本発明の実施例2のシリコーンプレポリマー(ABC値7.15)を重合して得られたレンズのシュトレール比より小さな値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は均一組成を有するシリコーンプレポリマーに関するもので、該シリコーンプレポリマーを重合して得られるポリマーはコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズに特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
T:重合終了時間
S:グラフ間の面積(ΣA
Ra:モノマーaのモノマー消費率
Rb:モノマーaのモノマー消費率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチリル基、アクリロイロキシ基、メタクリロイロキシ基のいずれかを有するモノマーからなる群をA群、
アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルカーボネート基、ビニルカーバメート基、ビニルアミド基、ビニルエステル基のいずれかを有するモノマーからなる群をB群とし、
A群、B群それぞれから少なくとも1種類以上のモノマーを選んで共重合させる場合において、
少なくとも1種類のモノマーがシリコーンモノマーであり、かつ少なくとも1種類が親水性モノマーであり、かつ少なくとも1種類のモノマーが分子内に少なくとも一つの反応性官能基を有するモノマーであり、
かつ、A群、B群からそれぞれ1種類ずつ選ばれたモノマーaおよびモノマーbにおいて、
重合開始から重合終了時間までのモノマーaおよびモノマーbのそれぞれのモノマー消費率(%)の差の平均値をABC値とした場合、
ABC値が7.15以下になるように重合させることを特徴とするシリコーンプレポリマーの製造方法。
【請求項2】
それぞれ前記シリコーンモノマー、前記親水性モノマーおよび前記反応性モノマーを含有する被滴下液および滴下液であって、
被滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA1、被滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB1、滴下溶液中の前記A群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSA2、滴下溶液中のB群に含まれるモノマーのモル濃度の合計をSB2とした時に、下式
A1/SB1 < SA2/SB2
を満足する被滴下液および滴下液を用い、
該被滴下液中に該滴下液を重合中に連続的または断続的に添加しながら重合することを特徴とする請求項1記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記A群から選ばれるモノマーが(メタ)アクリロイロキシ基を有し、かつB群からえらばれるモノマーが(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴とする請求項1または2記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項4】
ケイ素原子含有量の合計がプレポリマー固形分に対して10〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が分子内に極性基を有する極性シリコーンモノマーであり、該極性シリコーンモノマーの含有率がシリコーンプレポリマーの固形分に対して30〜90重量%であることを特徴とする請求項4記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記極性基が水酸基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、カーボネート基、カーバメート基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基からなる群から選ばれた基であることを特徴とする請求項5記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記極性基が水酸基であることを特徴とする請求項5記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(d)
【化1】

で表されるモノマーであることを特徴とする請求項5記載のプレポリマーの製造方法。
(式(d)中、Rは水素またはメチル基を表す。Lは炭素数1〜20のアルキレン基またはアリーレン基を表す。Dはシリコーン基を表す。)
【請求項9】
前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(e)
【化2】

で表されるモノマーであることを特徴とする請求項5記載のプレポリマーの製造方法。
(式(e)中、Rは水素またはメチル基を表す。Lは炭素数1〜20のアルキレン基またはアリーレン基を表す。Gは少なくとも1つの水酸基を有する炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。Dはシリコーン基を表す。)
【請求項10】
一般式(d)および/または(e)中のDが下記一般式(f)
【化3】

で表されることを特徴とする請求項8または9記載のプレポリマーの製造方法。
(式(f)中、E 〜E11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。hは0〜200の整数を表し、i、j、kはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表す。ただしh=i=j=k=0の場合を除く。)
【請求項11】
前記極性シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記一般式(s)
【化4】

で表されるモノマーであることを特徴とする請求項5記載のプレポリマーの製造方法。
(式(s)中、nは3〜10の整数を表す。Rは炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項12】
前記親水性モノマーがN,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドからなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項13】
重合溶媒に1013hPaでの沸点が80℃〜200℃の溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項14】
重合溶媒に3級アルコールを用いることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項15】
重合後に、前記分子内に少なくとも一つの反応性官能基を有するモノマー由来の反応性官能基と重合性官能基を有する化合物を反応させることにより重合性官能基を導入することにより得られることを特徴とする請求項1〜14記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項16】
前記反応性官能基が水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする請求項15記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項17】
前記被滴下液中および/または前記滴下液中に連鎖移動剤を含有することを特徴とする請求項2記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項18】
前記連鎖移動剤がアルキルメルカプタンであることを特徴とする請求項17記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のプレポリマーを重合して得られることを特徴とする眼用レンズ。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載のプレポリマーを重合して得られることを特徴とするコンタクトレンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−153304(P2011−153304A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292171(P2010−292171)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】