説明

シリコーンプレポリマー溶液

ある局面において、本発明は、シリコーンプレポリマー及び溶媒を含むシリコーンプレポリマー組成物に関する。平均ケイ素含有量が高く、そのことによって所望の酸素透過性が達成される可溶性シリコーンプレポリマーを提供することができる。溶媒の分子構造を選択して改変することによって、溶媒に親水性と疎水性の所望のバランスを与えることができ、その結果、眼への刺激が最小限か又は皆無で、且つ透明性の高い生成物を示す成形ポリマーフィルム及び成形品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2007年12月27日に提出した米国出願第61/017,158号及び2008年4月1日に提出した米国出願第12/060,536号の利益を主張するものであり、これら両出願は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、1950年代から視力の改善のために商業的に使用されている。現在のコンタクトレンズの多くは、少量の架橋剤存在下でヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びビニルピロリドン等の親水性モノマーを重合させることにより形成されるヒドロゲルでできている。
【0003】
連続装用コンタクトレンズを製造する際には、レンズ内の酸素透過性を増大させるためにシリコーンモノマーを含むと有利になる。しかしながら、反応混合物中のシリコーンモノマーの量が増加するにつれて、従来の溶媒系による溶解はより困難になり、得られる材料は通常は疎水性である。
【0004】
非水溶媒を用いて疎水性材料を溶解させる場合、通常溶媒は抽出等によって後で除去されなければばらない。それゆえに、溶媒を水に取り換える工程がたびたび利用される。また、シリコーンプレポリマーを十分に溶解できる溶媒はいくつかあるが、これらの溶媒はコンタクトレンズ装用者の眼を刺激する恐れがある。したがって、このような溶媒を完全に除去することが必須となる。さらに、溶媒の中には(例えば、ポリ(エチレングリコール))、コンタクトレンズ装用者の眼をそれほど刺激せず、均一で透明なシリコーンプレポリマー溶液を提供するものもある。しかしながら、このような溶液中で作製したポリマーフィルムは、水に浸すと不透明になってしまう。すなわち、このような溶媒中で重合を行うと、通常は澄んでいないポリマーフィルムが生じてしまう。
【0005】
したがって、これらの欠点を克服し効果的に重合組成物を提供する方法及び組成物であって、モノマー及び/又はプレポリマーが水溶性溶媒に溶けやすく、その結果、十分な酸素透過性を示し、眼への刺激が最小限か又は皆無で、且つ透明性の高い生成物を示す成形ポリマーフィルム及び成形品が生じる方法及び組成物に対する需要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に具体化されて明白に記載されるように、本発明は、ある局面において、シリコーンプレポリマー及び溶媒を含むシリコーンプレポリマー組成物に関する。
【0007】
さらなる局面において、本発明は、含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、シリコーンプレポリマーの平均ケイ素含有量が該シリコーンプレポリマーの約10重量%〜約30重量%であるシリコーンプレポリマーと、含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%である溶媒とを含むシリコーンプレポリマー組成物に関する。
【0008】
さらなる局面において、本発明は式(1s):
【0009】
【化1】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、Gは、式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基と、
【0010】
【化2】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、m=1〜50の整数、と定義される)、式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基
【0011】
【化3】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、n=1〜50の整数、と定義され、R12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)とを含み、m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)で表される構造を有する溶媒化合物に関する。
【0012】
さらなる局面において、本発明は式(2s):
【0013】
【化4】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、R25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、nは1〜50の整数を表し、R25及びR26の中の炭素原子の数はrと定義され、(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)で表される構造を有する溶媒化合物に関する。
【0014】
さらなる局面において、本発明は、開示された組成物からのプレポリマーを重合させることによって製造されるポリマーに関する。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、開示されたポリマーから製造される、コンタクトレンズ等の眼用レンズに関する。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、開示された方法の生成物に関する。
【0017】
本発明のさらなる利点については、一部は以下の記載に説明されており、また一部はその記載から自明であるか、又は本発明を実施することにより理解することができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲中に具体的に指摘される要素及び組合せにより実現且つ達成されるであろう。上述の一般的記載及び以下の詳細な説明の両者は、例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されるところの本発明を限定するものではない、ということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、本明細書に組み込まれその一部を構成するものであるが、数種類の態様を図示するものであり、また開示された組成物及び方法を記述と共に例示するものである。
【0019】
【図1】R(1/Q)対厚さ(lm)のプロットを示す。
【0020】
【図2】酸素透過性測定用装置を示す。
【0021】
【図3】酸素透過性の測定に用いる電極ユニットの構造を示す。
【0022】
【図4】酸素透過性測定設備の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明及びそれに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0024】
本発明の化合物、組成物、製品、装置、及び/又は方法が開示され説明される前に、それらは、特に明記しない限り特定の合成方法に限定されるものではなく、又は特に明記しない限り特定の試薬に限定されるものではなく、それ自体当然様々に変化し得る、ということを理解されたい。また本明細書で用いる用語は、単に特定の態様を記載するためのものであって、限定することを意図するものではない、ということも理解されたい。本発明の実施又は試験においては、本明細書に記載する方法及び材料と類似しているか又は同等であるいずれの方法及び材料を用いてもよいが、典型的な方法及び材料を以下に記載する。
【0025】
本明細書で言及する全ての文献は、それらの文献が引用されている方法及び/又は材料について開示及び記述する目的で、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書で議論する文献は、もっぱら本願出願日に先行する開示のために提供される。本明細書においては、先行発明により本発明がこれらの文献に先行していない、と自認するものとして解釈されるべき点は全くない。さらに、本明細書中に提示される文献の日付は、実際の発行日と相違する可能性があり、それらについては個別に確認する必要があるかもしれない。
A.定義
【0026】
本願明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる、単数形の「1つの(a)」「1つの(an)」及び「該(the)」には、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、複数形の指示対象も包含される。したがって、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」、又は「1つの残基(a residue)」には、2以上のかかる成分、ポリマー又は残基等の混合物も包含される。
【0027】
本明細書では、範囲は「約」ある特定の値から、そして/又は「約」別の特定の値まで、のように表現されることがある。そのような範囲が表現される場合、別の態様にはその特定の値からそして/又はその他の特定の値までが包含される。同様に、「約」なる先行詞を用いることによって数値が近似値で表現される場合、特定の数値が別の態様を形成するということが理解されるであろう。さらに、範囲のそれぞれの端点が、もう一方の端点と関連して有意でもあり、またもう一方の端点と無関係でも有意であるということが理解されるであろう。また、本明細書には多くの数値が開示されていること、及び各数値は、その数値自体に加えて「約」その特定の値としてここに開示されていることが理解される。例えば、「10」なる数値が開示されている場合、「約10」も開示されているものとする。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13、及び14も開示されているものとする。
【0028】
本明細書で用いる化学種の「残基」という用語は、特定の反応スキーム又はその後得られる処方物(formulation)若しくは化学製品中の化学種の結果物である部分を指し、該部分が実際にその化学種から得られるかどうかは関係ない。したがって、ポリエステル中のエチレングリコール残基とは、ポリエステル中の1つ以上の−OCHCHO−単位を指し、該ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されたかどうかは関係ない。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基とは、ポリエステル中の1つ以上の−CO(CHCO−部分を指し、セバシン酸又はそのエステルを反応させてポリエステルを得たことによって該残基が得られるかどうかは関係ない。
【0029】
「有機残基」という用語は、炭素含有残基、即ち、少なくとも1個の炭素原子を含む残基を定義し、限定するものではないが、上記に定義した炭素含有基、炭素含有残基、又は炭素含有ラジカルを含む。有機残基は種々のヘテロ原子を含んでいるか、又は酸素、窒素、硫黄、リン等を含むヘテロ原子を介して別の分子と結合していてもよい。有機残基の例としては、限定的ではないが、アルキル基又は置換アルキル基、アルコキシ基又は置換アルコキシ基、一置換又は二置換のアミノ基、アミド基等が挙げられる。有機残基は、好ましくは、1〜18個の炭素原子、1〜15個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を含んでいてもよい。さらなる局面において、有機残基は、2〜18個の炭素原子、2〜15個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、2〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0030】
「残基」という用語に非常に近い同義語に「ラジカル」という用語があるが、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、この語は、本明細書に記載される分子の断片、基、又は下部構造を指し、該分子がいかに作製されるかは関係ない。例えば、ある特定の化合物中の2,4−チアゾリジンジオンラジカルは、該化合物を調製するのにチアゾリジンジオンを用いるかどうかに関係なく、以下の構造を有する。
【0031】
【化5】

いくつかの実施形態において、ラジカル(例えば、アルキル)は1つ以上の「置換ラジカル」がそれに結合することによってさらに修飾されてもよい(即ち、置換アルキル)。任意のラジカル中の原子の数は、本明細書の他の箇所に相反する記載がない限り、本発明にとって重要ではない。
【0032】
本明細書で定義され用いられる用語「有機ラジカル」は、1個以上の炭素原子を含む。有機ラジカルは、例えば、1〜26個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有していてもよい。さらなる局面において、有機ラジカルは、2〜26個の炭素原子、2〜18個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子を有していてもよい。有機ラジカルは、多くの場合、該有機ラジカルの炭素原子の少なくともいくつかに水素が結合している。無機原子を含まない有機ラジカルの一例として、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルラジカルがある。いくつかの実施形態において、有機ラジカルは、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、リン等を含む1〜10の無機ヘテロ原子が結合しているか、又はそれらが有機ラジカル中で結合していてもよい。有機ラジカルの例としては、限定するものではないが、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、複素環式又は置換複素環式ラジカルが挙げられ、これらの語は本明細書の他の箇所で定義される。ヘテロ原子を含む有機ラジカルの非限定的ないくつかの例としては、アルコキシラジカル、トリフルオロメトキシラジカル、アセトキシラジカル、ジメチルアミノラジカル等が挙げられる。
【0033】
本明細書で定義され用いられる用語「無機ラジカル」は、炭素原子を含まないため炭素以外の原子のみを含む。無機ラジカルは、水素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、セレン、並びにフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素等のハロゲンから選択される原子が結合した組合せを含み、これらは独立して存在しているか、又は化学的に安定した組合せで互いに結合していてもよい。無機ラジカルは、10個以下、又は好ましくは1〜6個若しくは1〜4個の互いに結合した上記の無機原子を有する。無機ラジカルの例としては、限定するものではないが、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、チオール、硫酸塩、リン酸塩、及び同様の一般に公知の無機ラジカルが挙げられる。周期表の金属元素(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド金属、又はアクチニド金属等)の金属イオンは、硫酸塩、リン酸塩、又は同様のアニオン性無機ラジカル等のアニオン性無機ラジカルに対して、薬剤的に許容できるカチオンとして働くこともあるが、上記の無機ラジカル中においては、このような金属元素は結合していない。無機ラジカルは、本明細書中の他の箇所に具体的に記載がない限り、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズ、鉛、若しくはテルル等のメタロイド元素、又は希ガス元素を含まない。
【0034】
本明細書で用いる「随意の」又は「随意に」という用語は、続いて記載される現象又は状況が起こっても起こらなくてもよく、その記載に、前記現象又は状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0035】
本明細書で用いる「ポリマー」という用語は、比較的高分子量の天然又は合成の有機化合物を指し、その構造は反復した小単位であるモノマー(例えば、ポリエチレン、ゴム、セルロース)によって表すことができる。合成ポリマーは、典型的には、モノマーの付加重合又は縮合重合によって形成される。
【0036】
本明細書で用いる「共重合体」という用語は、2つ以上の相異なる反復単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例えば限定するものではないが、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体であってもよい。特定の局面においては、ブロック共重合体の様々なブロックセグメントはそれ自体が共重合体を含んでいてもよい、ということも意図される。
【0037】
本明細書で用いる「オリゴマー」という用語は、反復単位数が2から10の間、例えば、2〜8、2〜6、又は2〜4である、比較的低分子量のポリマーを指す。ある局面において、オリゴマーの集団は、平均反復単位数が約2〜約10、例えば、約2〜約8、約2〜約6、又は約2〜約4であってよい。
【0038】
本明細書で用いる「プレポリマー」という用語は、比較的低分子量、普通はモノマーと最終ポリマー又は樹脂の中間の分子量のポリマーであって、配合添加剤と混合してもよく、形成過程の間の、又は過程後のさらなる重合によって硬化させることができるポリマーを指す。
【0039】
本明細書で用いる「分子量」(MW)という用語は、統一原子質量単位u(炭素−12の原子1個の質量の12分の1に等しい)に対する、物質の1つの分子の質量を指す。
【0040】
本明細書で用いる「数平均分子量」(M)という用語は、個々のポリマーの分子量の一般的、平均的な平均値を指す。Mは、n個のポリマー分子の分子量を測定し、その重量を合計し、nで割ることによって求めることができる。Mは次の式で算出できる。
【0041】
【数1】

式中、Nは分子量Mの分子の数である。ポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー、粘度測定法(マーク−ホウインクの式)、光散乱、分析用超遠心法、蒸気圧浸透圧測定法、末端基滴定法、及び束一的性質によって求めることができる。
【0042】
本明細書で用いる「重量平均分子量」(M)という用語は、ポリマーの分子量の別の指標を指す。Mは次の式で算出できる。
【0043】
【数2】

式中、Nは分子量Mの分子の数である。直観的には、重量平均分子量がwで、ランダムにモノマーを選んだ場合、そのモノマーが属するポリマーの重量は平均するとwになる。重量平均分子量は、光散乱、小角中性子散乱(SANS)、X線散乱、及び沈降速度によって求めることができる。
【0044】
本明細書で用いる「多分散性」及び「多分散性指数」という用語は、重量平均と数平均の比(M/M)を指す。
【0045】
本明細書で用いる「開始剤」及び「ラジカル開始剤」という用語は、穏やかな条件下でラジカル種を生成し、ラジカル重合反応を促進することができる物質を指す。これらの物質は通常、結合解離エネルギーが小さい結合を有する。例としては、ハロゲン分子、アゾ化合物、及び有機過酸化物が挙げられる。例えば、塩素は紫外線照射によって塩素ラジカル(Cl・)を2個生じる。アゾ化合物(R−N=N−R’)は、加熱、及び/又は照射によって、炭素中心ラジカルの前駆体2個(R・及びR’・)と窒素ガスとになり得る。例えば、AIBN及びABCNは、それぞれイソブチロニトリルラジカル及びシクロヘキサンカルボニトリルラジカルを生じる。有機過酸化物はそれぞれペルオキシド結合(−O−O−)を有するが、この結合は容易に開裂して酸素中心ラジカルを2個生ずる。例えば、ジ−t(第三)−ブチルペルオキシド(tBuOOtBu)はt−ブタノイルラジカル(tBuO・)を2個生じ、このラジカルはアセトンを失ってメチルラジカル(CH・)になる。過酸化ベンゾイル((PhCOO))はベンゾイルオキシルラジカル(PhCOO・)を生成し、それぞれ二酸化炭素を失ってフェニルラジカル(Ph・)に変換される。
【0046】
本明細書で用いる「極性部分」という用語は、極性基を有する官能基又は分子の一部を指す。極性基とは、電子の分布が不均等で、それによって静電相互作用に関与することが可能になる官能基である。好適な極性基としては、ヒドロキシル基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、カーボネート基、カルバメート基、スルホンアミド基、スルホ基、ホスホン基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシエトキシエチル基が挙げられる。
【0047】
本明細書で用いる「極性シリコーン含有残基」という用語は、少なくとも1つのシリコーン官能基及び少なくとも1つの極性部分を含む残基を指す。
【0048】
本明細書で用いる「重合性部分」及び「重合性残基」という用語は、重合反応又は架橋反応を起こして、分子量のより高い化合物及び/又はより高度に架橋した構造を形成することができる化学官能性を指す。好適な例としては、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、ビニルカーボネート基、ビニルカルバメート基、アリルカーボネート基、又はアリルカルバメート基が挙げられる。
【0049】
本明細書で用いる「シロキサニル」という用語は、少なくとも1つのSi−O−Si結合を有する構造を指す。したがって、例えば、シロキサニル基とは少なくとも1つのSi−O−Si基を有する基を意味し、またシロキサニル化合物とは少なくとも1つのSi−O−Si基を有する化合物を意味する。
【0050】
本明細書で用いる「シロキサニルモノマー」という用語は、少なくとも1つの重合性炭素−炭素不飽和結合を有するシロキサニル化合物を指す。ある局面において、重合性炭素−炭素不飽和結合は、アルキルアクリロイル部分(例えば、アクリロイル部分又はメタクリロイル部分)の一部であってよい。
【0051】
本明細書で用いる「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを意図している。広い局面においては、許容される置換基としては、有機化合物の、非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。置換基の実例としては、例えば、以下に記載するものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ又は複数であってもよく、同一又は異なっていてもよい。本開示の目的のため、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容される置換基を有していてもよい。明示的に開示されない限り、本開示は、有機化合物の許容される置換基によって、いかなる形でも限定されることを意図していない。また、「置換」又は「〜で置換された」という用語には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容された原子価に従ったものであり、その置換の結果、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離等により自発的に変換を起こさない化合物が生じるという、暗黙の条件が含まれる。
【0052】
本明細書で用いる「置換されていてもよい」という用語は、主題化合物、基、ラジカル、残基、又は部分の、置換及び非置換の両方の改変体も含む。即ち、ある局面において、主題化合物、基、ラジカル、残基、又は部分は置換されていてもよい。さらなる局面において、主題化合物、基、ラジカル、残基、又は部分は置換されていなくてもよい。
【0053】
種々の用語を定義するに際し、種々の具体的な置換基を表すために本明細書では包括的記号として「A」、「A」、「A」及び「A」を用いる。これらの記号はいずれの置換基であってもよく、本明細書に開示されるものに限定されるものではなく、ある例ではある特定の置換基と定義されていても、別の例では他の置換基と定義されることもある。
【0054】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、炭素原子数が1〜24個、例えば、炭素原子数が1〜12個若しくは炭素原子数が1〜6個の、分岐又は非分岐の飽和炭化水素基を指し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等が挙げられる。またアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。「低級アルキル」基とは、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0055】
明細書を通じて、「アルキル」は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すのに総体的に用いられる。しかしながら、置換アルキル基は、アルキル基上の具体的な置換基(1つ又は複数)を特定することによって、本明細書において具体的に指されることもある。例えば、「ハロゲン化アルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルコキシアルキル」という用語は、以下に記載される1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルキルアミノ」という用語は、以下に記載される1つ以上のアミノ基等で置換されたアルキル基を具体的に指す。ある例で「アルキル」を用いて、別の例で「アルキルアルコール」等の具体的な用語を用いた場合でも、「アルキル」という用語が「アルキルアルコール」等の具体的な用語を指していない、ということを意味しているわけではない。
【0056】
この手法は本明細書に記載される他の基についても用いられる。即ち、「シクロアルキル」等の用語が非置換及び置換シクロアルキル部分の両方を指す一方で、該置換部分がさらに本明細書において具体的に特定されることがある。例えば、ある特定の置換シクロアルキルを指して、例えば「アルキルシクロアルキル」と言う場合がある。同様に、ある置換アルコキシを指して、例えば「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に言う場合や、ある特定の置換アルケニルが、例えば「アルケニルアルコール」である場合等がある。この場合もやはり、「シクロアルキル」等の総括的用語と「アルキルシクロアルキル」等の具体的用語を用いる手法は、総括的用語が具体的用語を含まないということを示唆することを意味するものではない。
【0057】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子からなる非芳香族炭素環である。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義したシクロアルキル基の1種であり、「シクロアルキル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、限定するものではないが、窒素、酸素、硫黄、又はリン等のヘテロ原子と置き換わったものである。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0058】
本明細書で用いる「ポリアルキレン基」という用語は、互いに連結した2つ以上のCH基を有する基である。ポリアルキレン基は式―(CH―で表されることができ、ここで「a」は2〜500の整数である。
【0059】
本明細書で用いる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語は、エーテル結合を介して結合したアルキル基又はシクロアルキル基を指す。即ち「アルコキシ」基は、―OAと定義することができ、ここでAは上記で定義したアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」には、すぐ上に記載したアルコキシ基のポリマーも含まれる。即ちアルコキシは、―OA―OA又は―OA―(OA―OA等のポリエーテルであってもよく、ここで、「a」は、1〜200の整数であり、A、A、及びAは、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0060】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式を有する、炭素原子数2〜24の炭化水素基である。(A)C=C(A)等の非対称構造体は、E異性体及びZ異性体の両方を含むことが意図されている。このことは、非対称アルケンが存在する本明細書中の構造式において推測できるか、又は結合記号C=Cによって明確に示される。アルケニル基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0061】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子からなり、且つ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、即ちC=C、を含む非芳香族炭素環である。シクロアルケニル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義したシクロアルケニル基の1種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、限定するものではないが、窒素、酸素、硫黄、又はリン等のヘテロ原子と置き換わったものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0062】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する、炭素原子数2〜24の炭化水素基である。アルキニル基は、置換されていなくてもよいし、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0063】
本明細書で用いる「シクロアルキニル」という用語は、少なくとも7個の炭素原子からなり、且つ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む非芳香族炭素環である。シクロアルキニル基の例としては、限定するものではないが、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義したシクロアルケニル基の1種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、限定するものではないが、窒素、酸素、硫黄、又はリン等のヘテロ原子と置き換わったものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0064】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等を含むいずれかの炭素系芳香族基を含む基である。「アリール」という用語には「ヘテロアリール」も含まれるが、「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子がその環内に組み込まれた芳香族基を含む基と定義される。ヘテロ原子の例としては、限定するものではないが、窒素、酸素、硫黄、及びリンが挙げられる。同様に、「非ヘテロアリール」という用語は、「アリール」という用語にも含まれるが、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含む基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、限定するものではないが、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、又はチオール等を含む1つ以上の基で置換されていてもよい。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールとは、ナフタレンのように縮合環構造を介して互いに結合した2つのアリール基、又はビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合を介して結合した2つのアリール基を指す。
【0065】
本明細書で用いる「アルデヒド」という用語は、式―C(O)Hで表される。本明細書を通じて、「C(O)」はカルボニル基、即ちC=Oの省略表記である。
【0066】
本明細書で用いる「アミン」又は「アミノ」という用語は、式NAで表され、ここでA、A、及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、水素、又は置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基であってよい。
【0067】
本明細書で用いる「カルボン酸」という用語は、式―C(O)OHで表される。
【0068】
本明細書で用いる「エステル」という用語は、式―OC(O)A又は―C(O)OAで表され、ここでAは、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよい。本明細書で用いる「ポリエステル」という用語は、式―(AO(O)C−A−C(O)O)―又は―(AO(O)C−A−OC(O))―で表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよく、「a」は1〜500の整数である。「ポリエステル」とは、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物と少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物との反応により生成される基を記載するために用いられる用語である。
【0069】
本明細書で用いる「エーテル」という用語は、式AOAで表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよい。本明細書で用いる「ポリエーテル」という用語は、式―(AO−AO)―で表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよく、「a」は1〜500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0070】
本明細書で用いる「ハロゲン化物」及び「ハロ」という用語は、ハロゲン類、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0071】
本明細書で用いる「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、式―OHで表される。
【0072】
本明細書で用いる「ケトン」及び「ケト」という用語は、式AC(O)Aで表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよい。
【0073】
本明細書で用いる「アジド」という用語は、式―Nで表される。
【0074】
本明細書で用いる「ニトロ」という用語は、式―NOで表される。
【0075】
本明細書で用いる「ニトリル」及び「シアノ」という用語は、式―CNで表される。
【0076】
本明細書で用いる「シリル」という用語は、式―SiAで表され、ここでA、A、及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、水素、又は置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってよい。
【0077】
本明細書で用いる「スルホ−オキソ」という用語は、式―S(O)A、―S(O)、―OS(O)、又は―OS(O)OAで表され、ここでAは、本明細書に記載されるような、水素、又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であってよい。本明細書を通じて、「S(O)」はS=Oの省略表記である。本明細書で用いる「スルホニル」という用語は、式―S(O)で表されるスルホ−オキソ基を指すために用いられ、ここでAは、本明細書に記載されるような、水素、又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であってよい。本明細書で用いる「スルホン」という用語は、式AS(O)で表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であってよい。本明細書で用いる「スルホキシド」という用語は、式AS(O)Aで表され、ここでA及びAは、互いに独立して、本明細書に記載されるような、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であってよい。
【0078】
本明細書で用いる「チオール」という用語は、式―SHで表される。
【0079】
相反する記述がない限り、楔又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、考えられる各異性体、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ混合物やスケールミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を意図している。
【0080】
本発明の組成物を調製するために用いられる成分、及び本明細書に開示される方法において用いられる組成物自体が開示されている。これら及び他の材料が本明細書に開示されているが、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合、これらの化合物の、個々の、及び集合的な様々な組合せ並びに順序はそれぞれ明確に開示されていないかもしれないが、本明細書においてそれぞれ具体的に意図されて記載されているということが理解される。例えば、ある特定の化合物が開示されて議論され、該化合物を含む数多くの分子に施すことができる数々の修飾が議論される場合、相反する記載が具体的にない限り、該化合物とその修飾の考えられる一つ一つ全ての組合せ及び順序が具体的に意図されている。したがって、あるクラスの分子A、B、及びC、並びにあるクラスの分子D、E、及びFが開示され、組合せ分子の例、A−Dが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれは個別且つ集合的に意図されている。つまり、組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、及びC−Fが開示されていると見なされる。同様に、これらのいずれのサブセット又は組合せも開示されている。したがって、例えば、A−E、B−F、及びC−Eのサブグループも開示されていると見なされることになる。この概念は、限定するものではないが、本発明の組成物の作製方法及び使用方法における工程等を含む本出願の全ての局面に適用される。したがって、様々な実施可能なさらなる工程が存在する場合、これらのさらなる工程の一つ一つが、本発明の方法のいずれかの具体的な態様又は態様の組合せで実施できるものと理解される。
【0081】
本明細書に開示される組成物は特定の機能を有するということが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関連する同一の機能を実行できる種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が典型的には同一の結果を達成することが理解される。
B.シリコーンプレポリマー組成物
【0082】
シリコーンポリマーの調製において、出発材料としてプレポリマーを用いると、重合工程中の収縮を抑制できるだけでなく、残留モノマーを抽出する必要性がなくなる。シリコーンポリマーからコンタクトレンズを形成する際には、得られるポリマーにおいて十分な酸素透過性を得るために、プレポリマーのケイ素含有量を増やすことが望ましい場合がある。しかしながら、このようなプレポリマーを水溶性溶媒中に溶解させることは困難な場合がある。
【0083】
非水溶媒には、このようなシリコーンプレポリマーを溶解させるために使用できるものがいくつかある。しかしながら、これらは眼に刺激を与える恐れがある。したがって、後で非水溶媒を除去して水と取り替えることが必須となり得る。いくつかの水溶性溶媒(例えば、ポリ(エチレングリコール))は、眼をそれほど刺激せず、均一なシリコーンプレポリマー溶液を提供することができる。しかしながら、シリコーンプレポリマー−ポリ(エチレングリコール)溶液を重合させることによって作製したポリマーフィルムは、水に浸すと不透明になってしまう。
【0084】
対照的に、開示されたシリコーンプレポリマー組成物は、出発材料として重合に好適な均一で透明な溶液中に、ケイ素含有量が高いプレポリマーを含む。その上、これらのシリコーンプレポリマー組成物から生成されるポリマーからは、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜等を含む眼用レンズとして使用するための、眼に優しい透明なフィルムが得られる。
C.化合物
【0085】
ある局面において、本発明は、シリコーンプレポリマーの含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、シリコーンプレポリマーの平均ケイ素含有量が該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%であり、溶媒の含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%である、シリコーンプレポリマー組成物に関する。
【0086】
ある局面において、溶媒は式(1s):
【0087】
【化6】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、Gは、式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基と、
【0088】
【化7】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、m=1〜50の整数、と定義される)、式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基
【0089】
【化8】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、n=1〜50の整数、と定義され、R12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)とを含み、m及びnは、互いに独立して0〜50の整数を表し、m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)で表される構造を有する化合物である。
【0090】
ある局面において、該溶媒は式:
【0091】
【化9】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、R25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、nは1〜50の整数を表し、R25及びR26の中の炭素原子の数はrと定義され、(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)で表される構造を有する化合物である。
【0092】
さらなる局面において、本発明は、シリコーンプレポリマーの含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、シリコーンプレポリマーの平均ケイ素含有量が該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%であり、溶媒の含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%である、シリコーンプレポリマー組成物に関し、この溶媒は式(1s):
【0093】
【化10】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、Gは、式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基と、
【0094】
【化11】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、m=1〜50の整数、と定義される)、式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基
【0095】
【化12】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、n=1〜50の整数、と定義され、R12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)とを含み、m及びnは、互いに独立して0〜50の整数を表し、m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)で表される構造を有する化合物から選択されるか、又は式(2s):
【0096】
【化13】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、R25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、nは1〜50の整数を表し、R25及びR26の中の炭素原子の数はrと定義され、(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)で表される構造を有する化合物から選択される。
【0097】
これら2つの溶媒の混合物も使用可能であることが意図されている。即ち、ある局面において、本発明は、シリコーンプレポリマーの含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、シリコーンプレポリマーの平均ケイ素含有量が該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%であり、溶媒混合物の含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%である、シリコーンプレポリマー組成物に関し、この溶媒混合物は式(1s):
【0098】
【化14】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、Gは、式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基と、
【0099】
【化15】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、m=1〜50の整数、と定義される)、式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基
【0100】
【化16】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、n=1〜50の整数、と定義され、R12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)とを含み、m及びnは、互いに独立して0〜50の整数を表し、m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)で表される構造を有する化合物を含み、且つ式:
【0101】
【化17】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、R25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、nは1〜50の整数を表し、R25及びR26の中の炭素原子の数はrと定義され、(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)で表される構造を有する化合物を含む。様々な局面において、式(1s)で表される構造を有する溶媒は、全溶媒の約5重量%〜約95重量%で、溶媒混合物中に存在してよい。例えば、式(1s)で表される構造を有する溶媒は、全溶媒混合物の約10%〜約90%、約20%〜約80%、約30%〜約70%、約40%〜約60%、又は約50%で存在してよい。様々な局面において、式(2s)で表される構造を有する溶媒は、全溶媒の約5重量%〜約95重量%で、溶媒混合物中に存在してよい。例えば、式(2s)で表される構造を有する溶媒は、全溶媒混合物の約10%〜約90%、約20%〜約80%、約30%〜約70%、約40%〜約60%、又は約50%で存在してよい。溶媒混合物はさらに共溶媒を含み得るということも意図されている。
【0102】
さらなる局面において、シリコーンプレポリマー溶液は、開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)をさらに含む。
【0103】
さらなる局面において、組成物は、組成物の約1重量%〜約20重量%、例えば、約1重量%〜約10重量%、約1重量%〜約8重量%、約1重量%〜約5重量%、又は約1重量%〜約3重量%のポリ(ビニルピロリドン)をさらに含む。
D.溶媒
【0104】
シリコーンプレポリマー組成物において適切な溶媒を選択し使用することで、モノマー及び/又はプレポリマーの溶媒和を促進することが可能になる。さらに、シリコーンプレポリマー組成物において適切な溶媒を選択し使用することで、水溶性溶媒が得られる。さらには、シリコーンプレポリマー組成物において適切な溶媒を選択し使用することで、眼への刺激が最小限か又は皆無で、且つ透明性の高い生成物を示す成形ポリマーフィルム及び成形品を生ずることが可能である。
【0105】
理論に拘束されることを望むものではないが、生じる成形生成物の透明度は、選択される溶媒の親水性と疎水性のバランスに関係していると考えられている。特定の局面において、溶媒分子(例えば、可変有機残基溶媒)の骨格の構造を選択して改変すること、及び/又は溶媒分子(例えば、可変有機末端基溶媒)の末端の構造を選択して改変することによって、溶媒に親水性と疎水性の所望のバランスを与えることができる。
【0106】
溶媒中の親水性と疎水性のバランスは、同じ溶媒分子中で、溶媒分子(例えば、可変有機残基)の骨格の構造を選択して改変すること、及び溶媒分子(例えば、可変有機末端基)の末端の構造を選択して改変することによって実現できる、ということも意図されている。溶媒中の親水性と疎水性のバランスは、同じ溶媒混合物中の異なる溶媒分子中で、溶媒分子(例えば、可変有機残基溶媒)の骨格の構造を選択して改変すること、及び溶媒分子(例えば、可変有機末端基溶媒)の末端の構造を選択して改変することによって実現できる、ということも意図されている。
1.可変有機残基溶媒
【0107】
ある局面において、溶媒分子の骨格の構造を選択して改変することによって、溶媒に親水性と疎水性の所望のバランスを与えることができる。
a.構造
【0108】
ある局面において、溶媒は式(1s):
【0109】
【化18】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、Gは、式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基と、
【0110】
【化19】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、m=1〜50の整数、と定義される)、式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基
【0111】
【化20】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の数は、n=1〜50の整数、と定義され、R12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)とを含み、m及びnは、互いに独立して0〜50の整数を表し、m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)で表される構造を有する化合物である。
【0112】
ある局面において、mは、1〜50、1〜30、1〜20、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、又は1〜2の整数であってよい。m単位は連続単位である必要はない、ということが理解される。即ち、その高分子構造は事実上ブロック状であってもよいが、ブロック状である必要はない。
【0113】
ある局面において、nは、1〜50、1〜30、1〜20、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、又は1〜2の整数であってよい。n単位は連続単位である必要はない、ということが理解される。即ち、その高分子構造は事実上ブロック状であってもよいが、ブロック状である必要はない。
【0114】
ある局面において、m/(m+n)は約0.05〜約0.95、約0.1〜約0.9、約0.15〜約0.85、約0.2〜約0.8、約0.25〜約0.75、約0.3〜約0.7、約0.35〜約0.65、約0.4〜約0.6、約0.45〜約0.55、又は約0.5であってよい。さらなる局面において、m/(m+n)は約0.05〜約0.5又は約0.5〜約0.95であってよい。
【0115】
ある局面において、R11及びR13は、互いに独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル残基、又は炭素数1〜20のアリール残基を表す。さらなる局面において、R11及びR13は両方とも水素である。さらなる局面において、R11及びR13の一方は水素であり、もう一方は炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基である。さらなる局面において、R11及びR13の一方は水素を表し、R11及びR13のもう一方は炭素数1〜10のアルキル残基又は炭素数1〜10のアリール残基を表す。さらなる局面において、R11及びR13の一方又は両方は、炭素数1〜20のアルキル残基、例えば、炭素数1〜16のアルキル残基、炭素数1〜12のアルキル残基、炭素数1〜10のアルキル残基、炭素数1〜8のアルキル残基、炭素数1〜6のアルキル残基、又は炭素数1〜4のアルキル残基を表す。例えば、R11及びR13のそれぞれは、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシルを含んでもよい。R11及びR13はそれぞれ互いに独立して、置換されていても置換されていなくてもよく、直鎖状でも環状でもよく、また分岐状でも非分岐状でもよい、ということが理解される。
【0116】
さらなる局面において、R11及びR13の一方又は両方は、炭素数1〜20のアリール残基、例えば、炭素数1〜16のアリール残基、炭素数1〜12のアリール残基、炭素数1〜10のアリール残基、炭素数1〜8のアリール残基、又は炭素数1〜6のアリール残基を表す。例えば、R11及びR13のそれぞれは、互いに独立して、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、チオフェニル、ピロリル、フラニル、又はピリジニルを含んでもよい。R11及びR13はそれぞれ互いに独立して、置換されていても置換されていなくてもよく、直鎖状でも環状でもよく、また分岐状でも非分岐状でもよい、ということが理解される。さらなる局面において、R11及びR13の一方は炭素数1〜20のアルキル残基であり、もう一方は炭素数1〜20のアリール残基である。さらなる局面において、R11及びR13は、炭素数1〜20のアルキルシリル(例えば、トリメチルシリル又はt−ブチルジメチルシリル)基であるように選択されてもよい。
【0117】
ある局面において、各式(1つ又は複数)で表される溶媒中のエチレンオキシド残基(1つ又は複数)及び―R12−O−基(1つ又は複数)は、ランダムに共重合する。
【0118】
ある局面において、R12は、3〜20個の炭素原子、例えば、3〜16個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、3〜8個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、4個の炭素原子、又は3個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルを含む。ある局面において、R12は、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はトリメチレンオキシドの残基である。さらなる局面において、R12は、炭素数3〜20のアルキレン残基又は炭素数3〜20のアリーレン残基を表す。
【0119】
ある局面において、溶媒は式(1s)で表される構造を有し、R12は式(1s2−1):
【0120】
【化21】

(式中、R14は炭素数1〜18のアルキル残基又は炭素数1〜18のアリール残基を表す。例えば、R14は、置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル残基又はアリール残基、置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル残基又はアリール残基、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル残基又はアリール残基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル残基又はアリール残基、置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル残基又はアリール残基、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル残基又はアリール残基、又は置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル残基又はアリール残基、であってよい。さらなる局面において、R14は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシルであってよい)で表される構造を有する。
【0121】
ある局面において、式(1s)の酸素原子と炭素原子の比は0.37以下である。例えば、(酸素原子の数)/(炭素原子の数)は、約0.35未満、約0.30未満、約0.25未満、約0.20未満、約0.15未満、又は約0.10未満であってよい。
【0122】
さらなる局面において、溶媒の数平均分子量は、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、又は300以下である。
【0123】
さらなる局面において、溶媒は1種以上の追加のコモノマーを含む。
【0124】
ある局面において、溶媒は、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)[ポリ(EG+PG)]ランダムコポリマー、(50:50)モノ(n−ブチル)エーテルを含む。
【0125】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
b.作製方法
【0126】
ある局面において、開示された溶媒は、市販されているか、又は市販の材料から得ることができる。当業者であれば、開示された溶媒の調製方法を理解するであろう。例えば、開示された溶媒は、エチレンオキシドや置換エチレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)といったオキシランの共重合等の公知の化学反応、又は開環メタセシス反応によって調製することができる。
【0127】
ある局面において、開示された溶媒の多くは、エチレンオキシド系コポリマーのアルキル化によって調製できる。以下に示す通り、8,11,14−トリメチル−3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタデカン−1,17−ジオールを、例えば臭化プロピルでアルキル化して、5,8,11,14−テトラメチル−4,7,10,13,16,19,22−ヘプタオキサペンタコサンを得ることができる。
【0128】
【化22】

【0129】
同じ反応に2つ以上のハロゲン化アルキルを用いてもよい、ということが意図されている。1モル等量より大きい、又は1モル等量未満のハロゲン化物を加えてもよく、反応生成物(又は反応生成物の混合物)は出発材料の化学量論で制御することができる、ということも理解される。
【0130】
さらなる局面において、ポリ(エチレングリコール/ブチレングリコール)コポリマー、ジアルキルエーテルが調製できる。
【0131】
【化23】

【0132】
さらなる局面において、重合及びアルキル化の両方を用いる複合反応スキームを使用してもよい。
【0133】
【化24】

【0134】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
2.可変有機末端基溶媒
【0135】
ある局面において、溶媒分子の末端の構造を選択して改変することによって、溶媒に親水性と疎水性の所望のバランスを与えることができる。
a.構造
【0136】
ある局面において、溶媒は式(2s):
【0137】
【化25】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、R25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、nは1〜50の整数を表し、R25及びR26の中の炭素原子の数はrと定義され、(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)で表される構造を有する化合物である。
【0138】
ある局面において、nは、1〜50、1〜30、1〜20、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、又は1〜2の整数であってよい。
【0139】
ある局面において、R21からR24は、互いに独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル残基、又は炭素数1〜20のアリール残基を表す。さらなる局面において、R21からR24の1つ以上は、炭素数1〜20のアルキル残基、例えば、炭素数1〜16のアルキル残基、炭素数1〜12のアルキル残基、炭素数1〜10のアルキル残基、炭素数1〜8のアルキル残基、炭素数1〜6のアルキル残基、又は炭素数1〜4のアルキル残基を表す。例えば、R21からR24のそれぞれは、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシルを含んでもよい。R21からR24はそれぞれ互いに独立して、置換されていても置換されていなくてもよく、直鎖状でも環状でもよく、また分岐状でも非分岐状でもよい、ということが理解される。さらなる局面において、R21からR24のうちの2つ以上が互いに結合して環構造を形成する。
【0140】
ある局面において、R21からR24の全ては水素である(即ち、エチレングリコール残基)。さらなる局面において、R21からR24のうちの3つは水素であり、残りは炭素数1〜4のアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである(即ち、プロピレングリコール、ブチレングリコール、又は高級グリコール残基)。
【0141】
ある局面において、R25及びR26は、互いに独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル残基、又は炭素数1〜20のアリール残基を表す。さらなる局面において、R25及びR26の一方は水素であり、もう一方は炭素数3〜20のアルキル残基又は炭素数3〜20のアリール残基である。さらなる局面において、R25及びR26の一方は水素を表し、R25及びR26のもう一方は炭素数3〜10のアルキル残基又は炭素数3〜10のアリール残基を表す。さらなる局面において、R25及びR26の一方又は両方は、炭素数1〜20のアルキル残基、例えば、炭素数1〜16のアルキル残基、炭素数1〜12のアルキル残基、炭素数1〜10のアルキル残基、炭素数1〜8のアルキル残基、炭素数1〜6のアルキル残基、又は炭素数1〜4のアルキル残基を表す。例えば、R25及びR26のそれぞれは、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシルを含んでもよい。R25及びR26はそれぞれ互いに独立して、置換されていても置換されていなくてもよく、直鎖状でも環状でもよく、また分岐状でも非分岐状でもよい、ということが理解される。
【0142】
さらなる局面において、R25及びR26の一方又は両方は、炭素数1〜20のアリール残基、例えば、炭素数1〜16のアリール残基、炭素数1〜12のアリール残基、炭素数1〜10のアリール残基、炭素数1〜8のアリール残基、又は炭素数1〜6のアリール残基を表す。例えば、R25及びR26のそれぞれは、互いに独立して、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、チオフェニル、ピロリル、フラニル、又はピリジニルを含んでもよい。R25及びR26はそれぞれ互いに独立して、置換されていても置換されていなくてもよく、直鎖状でも環状でもよく、また分岐状でも非分岐状でもよい、ということが理解される。さらなる局面において、R25及びR26の一方は炭素数1〜20のアルキル残基であり、もう一方は炭素数1〜20のアリール残基である。さらなる局面において、R25及びR26は、炭素数1〜20のアルキルシリル(例えば、トリメチルシリル又はt−ブチルジメチルシリル)基であるように選択されてもよい。
【0143】
さらなる局面において、溶媒は式(2s)で表される構造を有し、ここで(n+1)/(2n+r)は0.40以下である。例えば、溶媒は、(n+1)/(2n+r)が0.38以下、0.35以下、0.32以下、0.30以下、0.25以下、又は0.20以下になるように選択されてもよい。種々のnに対するR25及びR26の最小合計炭素数、及びそれに対応する(n+1)/(2n+r)を以下の表に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
さらなる局面において、溶媒の数平均分子量は、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、又は300以下である。
【0146】
さらなる局面において、溶媒は1種以上の追加のコモノマーを含む。
【0147】
ある局面において、溶媒は、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノnブチルエーテル、又はトリエチレングリコールモノi−プロピルエーテルのうちの1つ以上を含む。
【0148】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
b.作製方法
【0149】
ある局面において、開示された溶媒は、市販されているか、又は市販の材料から得ることができる。当業者であれば、開示された溶媒の調製方法を理解するであろう。
【0150】
ある局面において、開示された溶媒の多くは、アルキレンオキシド系コポリマーのアルキル化によって調製できる。以下に示す通り、2,5,8,11,14−ペンタメチル−3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタデカン−1,17−ジオールを、例えば臭化プロピルでアルキル化して、5,8,11,14,17,20−ヘキサメチル−4,7,10,13,16,19,22−ヘプタオキサペンタコサンを得ることができる。
【0151】
【化26】

【0152】
同じ反応に2つ以上のハロゲン化アルキルを用いてもよい、ということが意図されている。1モル等量より大きい、又は1モル等量未満のハロゲン化物を加えてもよく、反応生成物(又は反応生成物の混合物)は出発材料の化学量論で制御することができる、ということも理解される。
【0153】
さらなる局面において、炭素数1〜20のアルキルシリル(例えば、トリメチルシリル又はt−ブチルジメチルシリル)基を用いてもよい。
【0154】
【化27】

【0155】
さらなる局面において、ポリ(エチレングリコール/ブチレングリコール)コポリマー、ジアルキルエーテルが調製できる。
【0156】
【化28】

【0157】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
3.溶媒和
【0158】
ある局面において、開示された溶媒は、シリコーンプレポリマー及び/又はプレポリマーの優れた溶媒和を示す。溶媒和は、溶媒のサンプルを用いて多くの異なるポリマー又はプレポリマーを溶解させる試験によって測定することができる。ポリマー又はプレポリマーが溶解したかどうか、膨張したかどうか、又は変化していないかどうかを観察することにより、プレポリマーが任意の溶媒系で溶解するかどうか、及びどの程度溶解するかを確認することが可能である。Hansen Solubility Parameters; A User's Handbook, Charles M. Hansen、43〜53頁、CRC Press 2000を参照のこと。例えば、質量既知のプレポリマーを、過剰量の任意の溶媒系に一定時間(例えば、10分間)さらしてもよい。混合物は、所望により、超音波処理されても、且つ/又は高温にさらされてもよい。その後、溶解しなかったいずれのプレポリマーもデカンテーション又は濾過によって除去することができ、溶媒系中に溶解した割合を算出することができる。
【0159】
溶媒和は、以下の実施例のプロトコルを使って測定できる(wt%は60wt%固溶体に対する例であることに注意):(1)Irgacure 819(光重合開始剤、0.42wt%)及びプレポリマー(55.38wt%)を溶媒中に添加して混合物を形成する。(2)混合物をタッチミキサーと超音波処理によってよく混合する。(3)混合物を70℃のオーブンに約1時間入れる。(4)混合物をオーブンから取出し、へらで混合する。(5)混合物をさらに40分間オーブンに入れる。(6)工程4及び5を繰り返す。(7)混合物をオーブンから取り出した時に混合物が透明で相分離が見られない場合は「可溶性」と考えられる。混合物が濁っているか又は相分離が見られる場合は「不溶性」と考えられる。
4.共溶媒
【0160】
開示された溶媒を1種以上の共溶媒と組み合わせて用いてもよい、ということが意図されている。ある局面において、共溶媒のアイデンティティ及び量は、開示された溶媒中でのプレポリマー又はポリマーの溶解度が低下しないように選択される。好適な共溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、及びそれらの混合物等の水溶性溶媒が挙げられる。さらに好適な共溶媒としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、及びアセトニトリルが挙げられる。
E.プレポリマー
【0161】
ある局面において、本発明は、1種以上のシリコーンプレポリマーに関する。より具体的には、望ましくない収縮、伸長、並びに従来のシリコーンモノマー及び関連する従来の重合技術が抱える関連する問題が、比較的低分子量で低多分散性の架橋性プレポリマーからヒドロゲルを生産することによって克服できる化合物を開示する。さらに、所望の酸素透過性のみならず、水溶液又はPEG/PVP等の親水性溶液中での十分な溶解度を提供する構造を有する開示されたプレポリマーが調製される。
1.構造
【0162】
ある局面において、プレポリマーは、下記式:
【0163】
【化29】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、Aはシロキサニル基を表す)で表される構造を有する少なくとも1つのシリコーン含有残基;及び下記式
【0164】
【化30】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、Pは少なくとも1つの重合性部分を含む有機基を表す)で表される構造を有する少なくとも1つの重合性残基を含む化合物又は化合物の集合体であってよい。ここで、プレポリマーは、該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%のケイ素含有量を有し;少なくとも1種のシリコーン含有残基のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの極性部分をさらに含む極性シリコーン含有残基であり;プレポリマーは、該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%の極性シリコーン含有残基含有量を有する。
a.シロキサニル基
【0165】
ある局面において、開示されたプレポリマーは1つ以上のシロキサニル基を含む。特に具体的な記載のない限り、シロキサニル基は当業者に公知のいずれのシロキサニル基であってもよい。
【0166】
さらなる局面において、少なくとも1つのAは、下記式:
【0167】
【化31】

(式中、Lは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し、Dはシロキサニル基を表す)で表される構造を有する。またさらなる局面において、少なくとも1つのAは、下記式:
【0168】
【化32】

(式中、Gは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し(これらのアルキル残基及びアリール残基は少なくとも1つのヒドロキシル基をさらに含む)、Lは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し、Dはシロキサニル基を表す)で表される構造を有する。
【0169】
さらなる局面において、Dは下記式:
【0170】
【化33】

(式中、EからE11は、互いに独立して、水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル残基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール残基を表し;hは0〜200の整数を表し;i、j、及びkは、互いに独立して、0〜20の整数を表すが、h、i、j、及びkは同時にゼロであることはない)で表される構造を有する。
【0171】
さらなる局面において、少なくとも1つのAは、下記式:
【0172】
【化34】

(式中、nは3〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表す)で表される構造を有する。
【0173】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
b.親水性残基
【0174】
ある局面において、開示されたプレポリマーは1つ以上の親水性残基を含む。
特に具体的な記載のない限り、親水性残基は当業者に公知のいずれの親水性残基であってもよい。特定の局面において、親水性残基は開示されたプレポリマーに存在していなくてもよい。
【0175】
さらなる局面において、プレポリマーは、下記式:
【0176】
【化35】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、Bは親水基を表す)で表される構造を有する少なくとも1つの親水性残基をさらに含んでもよい。
【0177】
さらなる局面において、親水性残基は、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、又はN−ビニルイミダゾールのうちの1つ以上の残基を含む。
【0178】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
c.極性部分
【0179】
ある局面において、開示されたプレポリマーは1つ以上の極性部分を含む。特に具体的な記載のない限り、極性部分は当業者に公知のいずれの極性部分であってもよい。さらなる局面において、極性部分はヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、カーボネート、カルバメート、スルホンアミド、スルホ基、ホスホン基、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、ヒドロキシエチル、又はヒドロキシエトキシエチルであってもよい。
【0180】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
d.重合性残基
【0181】
ある局面において、開示されたプレポリマーは1つ以上の重合性残基又は基を含む。特に具体的な記載のない限り、重合性残基は当業者に公知のいずれの重合性残基であってもよい。さらなる局面において、重合性残基は、1つ以上のエチレン性不飽和部分、例えば、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、ビニルカーボネート基、ビニルカルバメート基、アリルカーボネート基、又はアリルカルバメート基を含む。
【0182】
さらなる局面において、重合性残基は、下記式:
【0183】
【化36】

(式中、Rは水素又はメチルを表し;Zは置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル残基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール残基を表し、これらのアルキル及びアリールは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、又はカルボン酸無水物基のうちの少なくとも1つをさらに含む)で表される構造を有する単位と、少なくとも1つの重合性残基を有する少なくとも1種の化合物とを反応させることによって得られる。
【0184】
さらなる局面において、Zは:
【0185】
【化37】

ハロゲノカルボニル基、(メタ)アクリロイルオキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基、2−アミノエトキシカルボニル基、4−ハロゲノカルボフェニル基、4−カルボキシフェニル基、又は4−(炭素数1〜20アルキルオキシカルボニル)フェニル基のうちの1つ以上を含む。
【0186】
ある局面において、少なくとも1つの重合性基を有する化合物は、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、
【0187】
【化38】

(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル無水物、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニル安息香酸ハロゲン化物、4−ビニル安息香酸無水物、又は4−ビニル安息香酸エステルである。
【0188】
さらなる局面において、少なくとも1つの重合性部分は下記式:
【0189】
【化39】

(式中、Rは水素又はメチルを表す)で表される構造を有する。
【0190】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
e.末端基
【0191】
開示されたプレポリマーは、該プレポリマーを調製するために用いる重合反応を開始及び停止した結果生じる末端基を有していてもよい、ということが理解される。例えば、プレポリマーは、開始反応の結果生じる末端基であって、式:
【0192】
【化40】

(式中、A、B、及びPは、本明細書に記載されるような、シロキサニル基、親水基、及び重合性基を表す)で表される構造を有する末端基を有していてもよい。上記構造において、記号INは、例えばアゾ開始剤又はペルオキシド開始剤等の、開始剤の残基を表す。
【0193】
プレポリマーはまた、停止反応の結果生じる末端基であって、式:
【0194】
【化41】

(式中、A、B、及びPは、本明細書に記載されるような、シロキサニル基、親水基、及び重合性基を表す)で表される構造を有する末端基を有していてもよい。上記構造において、記号Tは、例えば水又は他のプロトン性溶媒から抽出した水素原子等の、停止剤の残基を表す。
【0195】
開示されたプレポリマーは、コモノマーとの類似開始反応及び停止反応の結果生じる類似末端基を有していてもよい、ということもまた理解される。
【0196】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
2.ケイ素含有量
【0197】
ある局面において、開示されたプレポリマーのケイ素含有量は約10重量%〜約30重量%であってよい。さらなる局面において、開示されたプレポリマーのケイ素含有量は約13重量%〜約20重量%であってよい。例えば、ケイ素含有量は約15%〜約20%、約13%〜約18%、約15%〜約18%、約13%、約15%、約18%、又は約20%であってよい。開示されたケイ素含有量は、シリコーンプレポリマーの集団の平均ケイ素含有量を表し得る、ということも理解される。
【0198】
さらなる局面において、極性シリコーン単位の総量は、プレポリマーの固形分に対して約50重量%〜約80重量%であってよい。例えば、極性シリコーン単位の総量は、約55%〜約80%、約60%〜約80%、約50%〜約75%、約50%〜約70%、約60%〜約70%、又は約55%〜約75%であってよい。開示された極性シリコーン単位の総量は、シリコーンプレポリマーの集団の平均総量を表し得る、ということも理解される。
【0199】
さらなる局面において、重合性単位の含有量は、プレポリマーに対して、約0.1〜15mol%であってよい。例えば、重合性単位の含有量は約0.25mol%〜約15mol%、約0.5mol%〜約15mol%、約1mol%〜約15mol%、約0.1mol%〜12mol%、約0.1mol%〜約10mol%、約0.1mol%〜約5mol%、又は約0.1mol%〜約10mol%であってよい。開示された重合性単位の含有量は、シリコーンプレポリマーの集団の重合性単位の平均含有量を表し得る、ということも理解される。
【0200】
開示された局面、実施例、又は種のいずれか1つ又は複数を所望により本発明から除外してもよい、ということが理解される。
【0201】
3.溶解度
ある局面において、開示されたプレポリマーは、例えば、水溶液、又はPEG/PVP等の親水性溶液中で優れた溶解性を示す。溶解度は、プレポリマーのサンプルが多くの異なる溶媒中で保存される溶解度試験によって測定できる。ポリマーが溶解したかどうか、膨張したかどうか、又は変化していないかどうかを観察することにより、プレポリマーが任意の溶媒系で溶解するかどうか、及びどの程度溶解するかを確認することが可能である。Hansen Solubility Parameters; A User's Handbook, Charles M. Hansen、43〜53頁、CRC Press 2000を参照のこと。例えば、質量既知のプレポリマーを、過剰量の任意の溶媒系に一定時間(例えば、10分間)さらしてもよい。混合物は、所望により、超音波処理されても、且つ/又は高温にさらされてもよい。その後、溶解しなかったいずれのプレポリマーもデカンテーション又は濾過によって除去することができ、溶媒系中に溶解した割合を算出することができる。
【0202】
溶解度は、以下の実施例のプロトコルを使って測定できる(wt%は60wt%固溶体に対する例であることに注意):(1)Irgacure 819(光重合開始剤、0.42wt%)及びプレポリマー(55.38wt%)をPEG(40wt%)/PVP(4.2wt%)溶液中に添加する。(2)混合物をタッチミキサーと超音波処理によってよく混合する。(3)混合物を70℃のオーブンに約1時間入れる。(4)混合物をオーブンから取出し、へらで混合する。(5)混合物をさらに40分間オーブンに入れる。(6)工程4及び5を繰り返す。(7)混合物をオーブンから取り出した時に混合物が透明で相分離が見られない場合は「可溶性」と考えられる。混合物が濁っているか又は相分離が見られる場合は「不溶性」と考えられる。
【0203】
ある局面において、プレポリマーの溶解度は、水溶性溶媒中で、該プレポリマーの固形分に対して約50重量%以上であってよい。例えば、溶解度は少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%であってよい。ある局面において、溶解度はプレポリマー組成物の平均分子量に影響される場合がある、ということが理解される。即ち、ある一定量以下の分子量を有するプレポリマーは溶解しやすくなる場合があり、一方で、ある一定量以上の分子量を有するプレポリマーはあまり溶解しやすくならない場合がある。
【0204】
ある局面において、プレポリマーの溶解度は、約1重量%〜約20重量%(例えば、約1重量%〜約5重量%、約5重量%〜約10重量%、約2重量%〜約8重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、又は約9重量%)のポリビニルピロリドンを含む水溶性溶媒中で、該プレポリマーの固形分に対して約50重量%以上(例えば、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、又は少なくとも約90重量%)であってよい。
【0205】
開示されたプレポリマーと共に使用するのに好適な溶媒系としては、開示された溶媒が挙げられる。さらに好適な共溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、及びそれらの混合物等の水溶性溶媒が挙げられる。
4.分子量
【0206】
ある局面において、開示されたプレポリマーの平均分子量は、約10kD〜約1000kD、例えば、約10kD〜約500kD、約10kD〜約300kD、又は約10kD〜約200kDであってよい。ある局面において、開示されたプレポリマーの多分散性(M/M)は、約1.00〜約10.00であってよい。例えば、多分散性は、約1.00〜約9.00、約1.00〜約8.00、約1.00〜約7.00、約1.00〜約6.00、又は約1.00〜約5.00であってよい。さらなる局面において、多分散性は、約8未満、例えば、約7.5未満、約7未満、約6.5未満、約6未満、約5.5未満、約5未満、約4.5未満、又は約4未満であってよい。
5.コモノマー
【0207】
開示されたプレポリマーは、該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%のケイ素含有量、及び該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%の極性シリコーン含有残基含有量を維持する限り、さらなるコモノマー由来の残基をさらに含んでもよい、ということもまた意図されている。このようなコモノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、片方の末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、及び側鎖に複数の(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン等の多官能性(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、及びN−メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー;マレイミド;N−ビニルピロリドン等の複素環式ビニルモノマー;3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン、片方の末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、並びに下記の式(C1−1)から(C6−1)及び(C1−2)から(C6−2)で表される化合物が挙げられる。
【0208】
【化42】

【0209】
本発明での使用に適した他のシリコーン含有成分としては、ポリシロキサン基、ポリアルキレンエーテル基、ジイソシアネート基、ポリフッ素化炭化水素基、ポリフッ素化エーテル基、及び多糖基を含むマクロマー等の、国際公開公報第WO96/31792号に記載されている成分が挙げられる。米国特許第5,321,108号、同第5,387,662号、及び同第5,539,016号には、極性を有するフッ素化グラフト又は2つのフッ素で置換された末端炭素原子に水素原子が結合している側鎖を有するポリシロキサンが記載されている。米国特許公開第2002/0016383号公報には、エーテル結合及びシロキサニル結合を含む親水性のシロキサニルメタクリレート、並びにポリエーテル基及びポリシロキサニル基を含む架橋性モノマーが記載されている。
【0210】
ある態様において、コモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、化合物C1−1、C2−1、C3−1、C4−1、C5−1、C6−1、C1−2、C2−2、C3−2、C4−2、C5−2、C6−2、ポリシロキサンマクロマー、エーテル結合及びシロキサニル結合を含む親水性シロキサニルメタクリルレート、並びにそれらの組合せ等が挙げられる。
【0211】
そのようなモノマーのさらに好ましい例としては、2−プロペン酸、2−メチル−2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(シグマ社);モノメタクリルオキシプロピル及びモノ−n−ブチルを末端とするポリジメチルシロキサン(mPDMS;MW 800〜1000(M));ビス−3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(acPDMS)(MW 1000及び2000、それぞれゲレスト(Gelest)製及びデグサ(Degussa)製のアクリル化ポリジメチルシロキサン);ゲレスト製の、メタクリルオキシプロピルを末端とするポリジメチルシロキサン(MW 550〜700)(maPDMS);並びに、モノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル及びモノ−ブチルを末端とするポリジメチルシロキサン(mPDMS−OH)が挙げられる。
F.プレポリマーの作製方法
【0212】
ある局面において、本発明はプレポリマーの調製方法に関する。プレポリマーに関連して開示された化合物、構造、及び部分も、開示された方法に関連して使用してもよい、ということが理解される。
【0213】
ある局面において、開示されたプレポリマーは、以下の工程を含む方法によって調製することができる:シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーを含む混合物を準備する工程(ここで、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの極性部分をさらに含む極性シリコーン含有モノマー、重合性基を有する少なくとも1種のモノマー、所望により少なくとも1種のコモノマー(例えば、HEMA)、また所望により親水基を有する少なくとも1種のモノマーである);該混合物を反応温度(例えば、約50℃〜約60℃)で反応時間(例えば、約2時間〜約6時間)加熱することにより、且つ/又は該混合物をラジカル開始剤(例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))にさらすことによりモノマーを反応させ、それにより、モノマーを重合させて非官能性中間体ポリマーを得る工程;該非官能性中間体ポリマーを、エチレン性不飽和部分(例えば、アクリロイル部分)を有する反応性化合物(例えば、2−イソシアネートエチルメタクリレート)、所望により重合禁止剤(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、及び所望により触媒(例えば、ジブチルスズジラウリル酸)と化合させる工程;反応性化合物によって該非官能性中間体ポリマーに官能性をもたせ、それにより、プレポリマーを得る工程(ここで混合物中のモノマーの相対的比率は、ケイ素含有量がプレポリマーの約10重量%〜約30重量%、極性シリコーン含有残基の含有量がプレポリマーの約30重量%〜約90重量%であるプレポリマーが得られるように選択される)。さらなる局面において、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーと、重合性基を有する少なくとも1種のモノマーは、同一のモノマーであってもよい。
【0214】
さらなる局面において、開示されたプレポリマーは、以下の工程を含む方法によって調製することができる:シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーを含む混合物を準備する工程(ここで、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの極性部分をさらに含む極性シリコーン含有モノマー、重合性基を有する少なくとも1種のモノマー(例えば、重合性の異なる2つの重合性基を有するビニルメタクリレート)、所望により少なくとも1種のコモノマー(例えば、HEMA)、また所望により親水基を有する少なくとも1種のモノマーである);該混合物を反応温度(例えば、約50℃〜約60℃)で反応時間(例えば、約2時間〜約6時間)加熱することにより、且つ/又は該混合物をラジカル開始剤(例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))にさらすことによりモノマーを反応させ、それにより、プレポリマーを得る工程(ここで混合物中のモノマーの相対的比率は、ケイ素含有量がプレポリマーの約10重量%〜約30重量%、極性シリコーン含有残基の含有量がプレポリマーの約30重量%〜約90重量%であるプレポリマーが得られるように選択される)。
【0215】
中間体ポリマーの生成後、及び/又はプレポリマーの生成後に、(例えば、留去することにより)溶媒を除去してもよい、ということが理解される。中間体ポリマー及びプレポリマーの一方又は両方は、例えば、洗浄、濾過、及び/又は蒸留によって精製することができる、ということもまた理解される。精製は、所望により重合禁止剤(例えば、アルキルヒドロキノン及びヒドロキシナフタレンのうちの1種以上)の存在下で、例えば、従来の蒸留、又は減圧蒸留(例えば、薄膜蒸留)によって行うことができる。即ち、さらなる局面において、開示されたプレポリマーは、減圧蒸留等の蒸留で低分子量不純物を除去することにより精製することができる。このような精製方法には、(1)プレポリマー混合物又は粗製プレポリマーを準備する工程、及び(2)アルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含む少なくとも1種の重合禁止剤の存在下で、該プレポリマー混合物又は該粗製プレポリマーから低分子量不純物を減圧蒸留する工程が含まれていてもよい。さらなる局面において、該方法には、蒸留されたシロキサニルモノマーを回収する工程がさらに含まれる。モノマーは、例えば回収容器中に回収することができる。ある局面において、重合禁止剤は、アルキルヒドロキノン及びヒドロキシナフタレンのうちの1種以上を含んでもよい。
【0216】
典型的には、中間体ポリマー又はプレポリマーが形成された後に、実質的に全ての未反応の反応物及び副産物が除去される。「実質的にすべての」とは、精製後に約0.1重量%未満しか残存しないことを意味する。これは、限外濾過等の従来の方法で行うことができる。しかしながら、水で膨潤させ、そして水ですすいで、実質的に全ての望ましくない成分(例えば、調製の際に用いる、単量体の、オリゴマーの、又は重合体の開始化合物及び触媒、並びに中間体ポリマー又はプレポリマーの調製中に形成される副産物)を除去することにより、中間体ポリマー又はプレポリマーを精製することが可能である。洗浄は脱イオン水で行ってもよく、条件は、表面積対体積比の大きな中間体ポリマー又はプレポリマー粒子が得られるように選択してもよい。これは、中間体ポリマー又はプレポリマーを凍結乾燥すること、中間体ポリマー又はプレポリマーから薄膜を作製すること、中間体ポリマー又はプレポリマーを棒状体に押し出すこと、中間体ポリマー又はプレポリマー溶液を脱イオン水中に噴霧すること、及びその他の同様の方法によって行うことができ、これらの方法は当業者には公知である。
【0217】
さらなる局面において、重合性残基は、下記式:
【0218】
【化43】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、Zは置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル残基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール残基を表し、これらのアルキル及びアリールは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、又はカルボン酸無水物基のうちの少なくとも1つをさらに含む)で表される構造を有する単位と、少なくとも1つの重合性残基を有する少なくとも1種の化合物とを反応させることによって得ることができる。
G.ポリマー、組成物、及びその用途
【0219】
ある局面において、例えば、熱開始若しくは光開始重合反応又は架橋反応によってポリマーをさらに調製するために、プレポリマーを用いることができる。したがって、さらなる局面において、本発明は、開示されたプレポリマーの1種以上を重合又は架橋させることによって得られるポリマーに関する。即ち、ある局面において、本発明は、開示された組成物からのプレポリマーを重合させることによってポリマーを得る工程を含む、ポリマーの生成方法に関する。
【0220】
さらに、開示されたポリマーを用いて、コンタクトレンズ、眼内レンズ、及び人工角膜等の眼用レンズ;ステント、インプラント、及びカテーテル;並びにその他の光学機器等の医療用具を製造することができる。したがって、さらなる局面において、本発明は、開示されたプレポリマーの1種以上を重合又は架橋させることによって得られる、眼用レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、ステント、インプラント、カテーテル、又はその他の光学機器に関する。
【0221】
本発明は、重合させることよって、所望の酸素透過性、親水性、及び破壊耐性を有するプラスチック成形体を作製することができる材料を提供する。該プラスチック成形体は、ドラッグデリバリーに使用される薬剤吸着剤、並びにコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして有用である。中でもコンタクトレンズに特に好適である。
【0222】
ある局面において、該組成物から、プラスチック成形体を作製するための材料を得ることができる。この材料は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性モノマーとの親和性に優れており、該材料を重合させることによって、酸素透過性、親水性、及び低弾性係数等の性質の所望の組合せ、並びに優れた光学的特性を有する製品が形成され、プラスチック成形体を生産することができる。
【0223】
本発明により、プラスチック成形体を作製するための材料を提供することができる。該材料は、限定するものではないが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、及びこれらの組合せ等の親水性モノマーとの親和性に優れており、該材料を重合させることによって、酸素透過性、親水性、及び低弾性係数等の性質の所望の組合せ、並びに優れた光学的特性を有するプラスチック成形体を生産することができる。
1.成形品
【0224】
ある局面において、本発明の化合物及び組成物を用いて、本発明の組成物の少なくとも1種を含む成形品を提供することができる。さらなる局面において、本発明の化合物及び組成物を用いて、本発明の組成物の少なくとも1種を含む眼用レンズを提供することができる。またさらなる局面において、本発明の化合物及び組成物を用いて、本発明の組成物の少なくとも1種を含むコンタクトレンズを提供することができる。
【0225】
コンタクトレンズ等の成形品は、開示されたプレポリマーを、単独で、又は本明細書に記載の1種以上の他のコモノマー若しくは材料とともにさらに重合又は架橋させることにより作製することができる。成形品、特に眼用レンズを作製するためには、重合混合物中にさらなる材料が含まれていてもよい。例えば、良好な機械特性、並びに消毒液及び洗浄液に対する良好な耐性を得るため、分子中に2つ以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する架橋剤が含まれていてもよい。共重合させる全モノマーに対する架橋剤の割合は、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、さらに好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。特定の局面においては、開示されたプレポリマーが重合性部分を含むため、さらなる架橋剤は省略してもよい。
【0226】
所望の酸素透過性と親水性を同時に実現するという観点からすると、作製されたプラスチック成形体における本発明のプラスチック成形体作製用材料の割合は、他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合させない場合には、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。1種以上の他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合させる場合には、作製されたプラスチック成形体における本発明の材料及び他のシロキサニル基含有重合性材料(1種又は複数)の合計量の割合は、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。
2.添加剤
【0227】
プラスチック成形体は、限定するものではないが、UV吸収剤、着色剤、色素剤、湿潤剤、易滑剤、医薬成分及び栄養補助成分、相溶化成分、抗菌化合物、離型剤、並びにこれらの組合せ等を含むさらなる成分を含有してもよい。前記のいずれも、非反応性の形態、重合性の形態、及び/又は共重合した形態で組み込むことができる。
3.重合手順
【0228】
成形品を作製するための重合又は架橋においては、重合を行い易くするために、過酸化物及びアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合には、良好な反応温度で最適な分解特性を示す開始剤を選択する。一般に、10時間半減期温度が約40℃〜約120℃であるアゾ開始剤及び過酸化物開始剤が好ましい。光開始剤の例としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化化合物、及び金属塩が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は組み合わせて用いることができる。重合開始剤(1種又は複数)の量は、重合混合物に対して最大約1重量%であってよい。
【0229】
本発明のプラスチック成形体作製用材料の(共)重合においては、重合溶媒を用いることができる。溶媒としては、種々の有機及び無機溶媒を用いることができる。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、及びノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;並びに石油系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、又はこれらの溶媒の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
4.成形手順
【0230】
本発明の成形品作製用原料の重合方法、及びプラスチックの成形方法として、公知の方法を用いることができる。例えば、材料を一旦重合させ、丸棒又はプレートの形状に成形し、次いで、得られた丸棒又はプレートを切削等により所望の形状へ加工する方法、モールド重合法、及びスピンキャスト重合法を用いることができる。
【0231】
例として、開示されたプレポリマーから眼用レンズを製造する工程を次に記載する。まず初めに、2つのモールドパーツ間にある一定の形状を有する空隙にプレポリマー組成物を充填し、光重合又は熱重合を行って、該組成物をモールド間の空隙の形状に成形する。モールドは、樹脂、ガラス、セラミック、金属等でできている。光重合の場合、光透過性材料が用いられるが、通常は樹脂又はガラスが用いられる。眼用レンズを製造する場合、対向する2つのモールドパーツ間に空隙が形成され、この空隙に材料組成物を充填する。空隙の形状及び材料組成物の特性によっては、眼用レンズに一定の厚みを持たせ、空隙に充填した材料組成物の漏出を防ぐために、ガスケットを用いてもよい。材料組成物を充填した空隙を含有するモールドは、続いて紫外線、可視光線、又はこれらの組合せ等の化学線を照射されるか、材料組成物を加熱するためにオーブン又は液槽に入れられ、それによって重合が行われる。2種類の重合方法を組み合わせて用いてもよい。即ち、光重合の後に熱重合を行ってもよいし、又は熱重合の後に光重合を行ってもよい。光重合の実施形態においては、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えば、FL15BL、東芝)の光のように紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以内)照射する。熱重合を行う場合には、眼用レンズの光学的均一性、高品質、及び高い再現性を考慮すると、数時間から数十時間かけて徐々に組成物を加熱して室温から約60℃〜約200℃の温度にする条件を用いることが好ましい。
【0232】
開示されたプレポリマーから作製される成形品は、例えば約130゜以下、より好ましくは約120°以下、さらに好ましくは約100°以下の動的接触角(前進時、浸漬速度:約0.1mm/秒)を有していてもよい。成形品の含水率は約3%〜約50%が好ましく、約5%〜約50%がより好ましく、約7%〜約50%がさらに好ましい。
【0233】
一般に、コンタクトレンズに関しては、酸素透過性は高いほど望ましい。ある局面において、酸素透過係数[×10−11(cm/秒)mLO/(mL・hPa)]は約50以上が好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上がさらに好ましい。ある局面において、酸素透過係数は少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約105、又は少なくとも約110であってよい。引張弾性率は約0.01〜約30MPaが好ましく、約0.1〜約7MPaがより好ましい。引張伸びは約50%以上が好ましく、約100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいほど耐破損性が高くなるため、プラスチック成形体は引張伸びが大きいことが好ましい。これらの特性は、国際公開公報第WO03/022321号に開示されている試験方法を用いて測定することができる。
H.実験
【0234】
以下の実施例は、当業者に対し、特許請求の範囲に記載される化合物、組成物、製品、装置、及び/又は方法の作製方法と評価方法を十分に開示し説明するために記載されており、単に本発明を例示することを意図するものであって、本願発明者らが自己の発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。数(例えば、量、温度等)に関しては正確を期するため努力をしたが、ある程度の誤差やずれは考慮すべきである。他に断りがない限り、「部」は重量部であり、温度は℃表記又は周囲温度であり、圧力は大気圧又はその前後である。
1.分析方法
【0235】
分子量:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)装置は、40℃のカラム・オーブン、パーキンエルマー(PE)Nelson 900 A/Dを備えたパーキンエルマーLC-410ポンプ、及びseries 200 autosamplerで構成されている。検出器は、RIメルク(RI Merck)L7490であってよい。カラムの組合せは、2種類のトーソー・ハース(TosoHaas)社製 TSK-Gelカラム(G4000PW+G2500PW)及びガードカラムからなっていてもよい。溶離液は、メタノール−水(75/25 wt/wt)で作製し、50mM塩化ナトリウム(NaCl)に調整することができる。流速は0.5mL/分でよい。注入量は150μLであり、実行時間は60分でよい。検量線は、分子量ピークが960000〜194のPEG及びPEOを標準対照として用いた3次回帰で得ることができる。これらの標準ポリマーはポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories Inc)(アマースト、マサチューセッツ州)から購入できる(キャリブレーションキット PEG-10部品番号2070-0100;PEO-10部品番号2080-0101)。ピーク分子量194の標準対照PEGを添加すると明確な位置でフローシグナルが得られ、これを内部標準又は凝視点として用いることができる。NaClも同様の役割を果たすことが可能で、添加すると第2の凝視点が得られる。ピーク積分は手動で行うことができる。積分開始点及び終了点は、全ベースライン上の有意差から手動で決定できる。注入溶液は、2mg/mLのポリマー濃度を得るために60mM NaClに調整されたメタノール−水75/25 wt/wtで調製することができる。ピークフロー基準を得るために、濃度1mg/mlのサンプルにテトラエチレングリコールを加えてもよい。該溶液を0.5μm使い捨てフィルター上で濾過してから注入を行う。ポリマー試料の多分散性(P)は、P=M/Mと定義できる。ピーク分子量(M)は、分子量分布曲線における最も高いピークの分子量である。
【0236】
酸素透過性:サンプルの酸素透過度は、理化精機工業(株)製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて測定した。フィルム状サンプルの酸素透過係数を35℃の水中で測定した(温度調節器は図示せず)。3mmの8面体型MAGMIXマグネチックスターラー(三田村理研工業)を用いて800rpmで撹拌を行った。厚さの異なる4種類のフィルム状サンプルを調製した(0.1mm、0.2mm、0.3mm、及び0.4mm; 直径16mm)。厚さの異なる4種類のサンプルを測定し、全ての例のPmを求めた(図1参照);縦型ダイヤルゲージは目盛り0.001mmのものを使用;精度はおよそ+/−0.003mm。サンプルの1つを電極にセットした。電極中には電解液として0.5N KCl(水溶液)を注入した(図2〜4参照)。該電極を蒸留水(pH=7、体積=800ml)中にセットした。まず初めに、ゼロ調整するため、窒素バブリング下での電流(流速=100mL/分;電流(i)は平衡状態になった後に測定)を測定した。次いで、酸素バブリング下での電流を測定した。Rは次式により計算した:R=(Ps×N×F×A)/i[cm 秒 mmHg/mL(STP)](ここで、Ps=760mmHg(大気圧)、N=4(電極における反応に関与する電子数)、F=96500クーロン/mol(ファラデー定数)、A=電極の面積(cm)、i=電流測定値(uA))。Rは定数(比例ではない)部分に関与するため、Pmを求めるためには測定とプロットを複数回行う必要がある(図1参照)。R対サンプル厚さをプロットした。傾きの逆数が酸素透過係数(Pm)である。
【0237】
酸素透過性試験において、酸素を透過する材料の面積がサンプルの一方の表面ともう一方の表面で異なる場合、通常はエッジ補正が検討される。本測定法では、フィルム状サンプルに隣接してセットしたリングの穴の面積(図3左上部参照)が白金電極の面積と同じであるため、エッジ補正は必要ない。
【0238】
含水率:およそ10mm×10mm×0.2mmの大きさのフィルム状のサンプルを使用した。サンプルを40℃で16時間、真空乾燥器内で乾燥し、サンプルの重量(Wd)を測定した。その後、サンプルを、恒温槽内の40℃の純水に一晩以上浸漬させ、表面の水分をキムワイプで拭き取った後、重量(Ww)を測定した。含水率は以下の式で計算した:
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
【0239】
引張試験:およそ19.5mm×15mm×0.2mmの大きさのフィルム状のサンプルを使用した。引張弾性率は、オリエンテック製のTensilon RTM-100型を使って測定した。引張速度は100mm/分、つかみ間距離は5mmとした。
2.シリコーンプレポリマーA1の合成
【0240】
温度計、三方コック、及び機械式撹拌機を備えつけた300mL三つ口フラスコに、33.44gの以下の式(h)で表されるシリコーンモノマー(SiMAA):
【0241】
【化44】

36.00gの以下の式(i)で表されるシリコーンモノマー:
【0242】
【化45】

13.32gのN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、6.12gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、0.10gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2.04gの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV吸収剤)、0.0204gの以下の式(r)で表される色素:
【0243】
【化46】

1.00gの1−ドデシルメルカプタン(DSH)、及び93.00gのt−アミルアルコール(TAA)を加え、雰囲気をアルゴンに置換した。混合物をアルゴン雰囲気下、50℃で0.5時間、次いで60℃で4.5時間撹拌し、それによりモノマーを重合させた。反応完了後、溶媒をエバポレーターで留去した。得られた固形物を加熱下のメタノール150mLに溶解させ、得られた溶液を300mLの40%(v/v)メタノール水溶液に撹拌しながら加えた。得られた混合物を静置し、上清を取り除いた。得られた沈殿物を65%(v/v)メタノール水溶液300mLで一度、75%(v/v)メタノール水溶液300mLで一度洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、次いで液体窒素を加えた後で微粉砕し、その後40℃で3時間乾燥させ非官能性ポリマーを得た。
【0244】
300mL四つ口フラスコに、65gの得られた非官能性ポリマー、69mgの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及び220gの1,4−ジオキサンを加え、機械式撹拌機、窒素ラインにつながった連結管、及びクライゼン管を取り付け、リービッヒ冷却器、吸引管、及びナス型フラスコをクライゼン管の先端に接続した。窒素ガス流下で混合物を撹拌しながら温度を110℃まで上げ、1,4−ジオキサン約110gが留出するまで110℃の温度を保ち、それによって反応系から水分を除去した。混合物を60℃まで冷却した後、30μLのジブチルスズラウリン酸(DBTDL)及び1.27gの2−イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)を窒素ガス流下で加え、得られた混合物を60℃で3時間反応させた。反応完了後、50mLのメタノールを加え、混合物を15分間撹拌した。反応溶液を50℃のエバポレーター内で濃縮し、得られた濃縮物に100mLのメタノールを加えると均一な溶液が形成された。得られた溶液を70%(v/v)メタノール水溶液300mLに撹拌しながら加え、混合物を静置し、その後上清を取り除いた。沈殿物を85%(v/v)メタノール水溶液300mLで2回さらに洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、次いで液体窒素を加えた後で微粉砕し、その後40℃で3時間乾燥させ所望のシリコーンポリマーを得た。
3.実施例A1
【0245】
0.30gのポリビニルピロリドンK90と0.03gのIrgacure 819(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)を2.87gのモノn−ブチルポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ランダムコポリマー(平均分子量:200)に溶解させた溶液3.20gに、3.97gのシリコーンプレポリマーA1を加え、70℃で加熱しながらこれらの物質を混合し、その後、減圧することで脱気した。溶解性は目視により観察され、結果を表2に示した。
【0246】
得られたシリコーンプレポリマー溶液をアルゴン雰囲気下で脱酸素化し、窒素下(酸素0.5%未満)、55℃のグローブボックス内で、周縁部に薄膜(厚さ0.8μm)を有するガラスプレート上に注いだ。該シリコーンプレポリマー溶液をもう1枚のガラスプレートで覆い、蛍光灯(λmax:420nm)の光を照射し(1.6mW/cm、10分間)、プレポリマーを重合させた。重合後、2枚のガラスプレートを分離し、ホウ酸塩緩衝液(pH7.4〜7.6)中で超音波処理しポリマーフィルムを取り出した。フィルムを121℃で30分間殺菌することによってフィルムサンプルを得た。フィルムサンプルの透明度を表2に示す。
4.比較例A1〜A6
【0247】
重合の溶媒を表2に示すように変えたことを除き、実施例A1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表2に示した。
【0248】
【表2】

5.シリコーンプレポリマーB1の合成
【0249】
温度計、三方コック、及び機械式撹拌機を備えつけた300mL三つ口フラスコに、100.32gの以下の式(h)で表されるシリコーンモノマー(SiMAA):
【0250】
【化47】

108.00gの以下の式(i)で表されるシリコーンモノマー(OH−mPDMS):
【0251】
【化48】

46.44gのN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、18.36gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、0.279gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、6.12gの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV吸収剤)、0.0612gの以下の式(r)で表される色素:
【0252】
【化49】

2.232gの1−ドデシルメルカプタン(DSH)、及び279.24gのt−アミルアルコール(TAA)を加え、雰囲気をアルゴンに置換した。混合物をアルゴン雰囲気下、50℃で0.5時間、次いで60℃で4.5時間撹拌し、それによりモノマーを重合させた。反応完了後、溶媒をエバポレーターで留去した。得られた固形物を加熱下のメタノール450mLに溶解させ、得られた溶液を900mLの40%(v/v)メタノール水溶液に撹拌しながら加えた。得られた混合物を静置し、上清を取り除いた。得られた沈殿物を65%(v/v)メタノール水溶液900mLで一度、75%(v/v)メタノール水溶液900mLで一度洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、次いで液体窒素を加えた後で微粉砕し、その後40℃で3時間乾燥させ非官能性ポリマーを得た。
【0253】
300mL四つ口フラスコに、65gの得られた非官能性ポリマー、0.01gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及び220gの1,4−ジオキサンを加え、機械式撹拌機、窒素ラインにつながった連結管、及びクライゼン管を取り付け、リービッヒ冷却器、吸引管、及びナス型フラスコをクライゼン管の先端に接続した。窒素ガス流下で混合物を撹拌しながら温度を110℃まで上げ、1,4−ジオキサン約110gが留出するまで110℃の温度を保ち、それによって反応系から水分を除去した。混合物を60℃まで冷却した後、30μLのジブチルスズラウリン酸(DBTDL)及び1.733gの2−イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)を窒素ガス流下で加え、得られた混合物を60℃で3時間反応させた。反応完了後、50mLのメタノールを加え、混合物を15分間撹拌した。反応溶液を50℃のエバポレーター内で濃縮し、得られた濃縮物に100mLのメタノールを加えると均一な溶液が形成された。得られた溶液を70%(v/v)メタノール水溶液300mLに撹拌しながら加え、混合物を静置し、その後上清を取り除いた。沈殿物を85%(v/v)メタノール水溶液300mLで2回さらに洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、次いで液体窒素を加えた後で微粉砕し、その後40℃で3時間乾燥させ所望のシリコーンポリマーを得た。
6.実施例B1
【0254】
0.30gのポリビニルピロリドンK90と0.03gのIrgacure 819(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)を2.87gのエチレングリコールモノn−ブチルエーテルに溶解させた溶液3.20gに、3.97gのシリコーンプレポリマーB1を加え、70℃で加熱しながらこれらの物質を混合し、その後、減圧することで脱気した。溶解性は目視により観察され、結果を表3に示した。
【0255】
得られたシリコーンプレポリマー溶液をアルゴン雰囲気下で脱酸素化し、窒素下(酸素0.5%未満)、55℃のグローブボックス内で、周縁部に薄膜(厚さ0.8μm)を有するガラスプレート上に注いだ。該シリコーンプレポリマー溶液をもう1枚のガラスプレートで覆い、蛍光灯(λmax:420nm)の光を照射し(1.6mW/cm、10分間)、プレポリマーを重合させた。重合後、2枚のガラスプレートを分離し、ホウ酸塩緩衝液(pH7.4〜7.6)中で超音波処理しポリマーフィルムを取り出した。フィルムを121℃で30分間殺菌することによってフィルムサンプルを得た。フィルムサンプルの透明度を表3に示す。
7.実施例B2〜B6
【0256】
重合の溶媒を表3に示すように変えたことを除き、実施例B1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表3に示した。
8.比較例B1〜B4
【0257】
重合混合物の溶媒を表3に示すように変えたことを除き、実施例B1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表3に示した。
【0258】
【表3】

9.シリコーンプレポリマーB2〜B7の合成
【0259】
重合混合物の組成を表4に示すように変えたことを除き、実施例B1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表3に示した。
【0260】
【表4】

10.実施例B7〜B10
【0261】
重合混合物の溶媒を表5に示すように変えたことを除き、実施例B1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表5に示した。
11.比較例B5及びB6
【0262】
重合混合物の溶媒を表5に示すように変えたことを除き、実施例B1と同様の操作を繰り返した。重合混合物の透明度とフィルムサンプルの透明度を表5に示した。
【0263】
【表5】

【0264】
本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、本発明に種々の修飾及び変更を行うことが可能であることは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明の他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と精神はこれに続く請求項に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、その平均ケイ素含有量がシリコーンプレポリマーの約10重量%〜約30重量%であるシリコーンプレポリマーと、
b.含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%であり、式(1s)で表される構造を有する溶媒とを含む組成物。
【化1】

(式中、R11及びR13は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し;
Gは:
1.式(1s1)で表される構造を有する少なくとも1つの基:
【化2】

(ここで、式(1s1)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の総数はmと定義され、
mは1〜50の整数である);及び
2.式(1s2)で表される構造を有する少なくとも1つの基:
【化3】

(ここで、式(1s2)で表される構造を有するGの中の基(1つ又は複数)の総数はnと定義され、
nは1〜50の整数であり、
12は3〜20個の炭素原子を含む二価の有機ラジカルである)を含み、
m/(m+n)は約0.05〜約0.95である)。
【請求項2】
開始剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、該組成物の約1重量%〜約20重量%のポリ(ビニルピロリドン)含有量をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
11及びR13が、互いに独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル残基、又は炭素数1〜20のアリール残基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
12が炭素数3〜20のアルキレン残基又は炭素数3〜20のアリーレン残基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式(1s)における(酸素原子の数)/(炭素原子の数)が0.37以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
12が、式(1s2−1):
【化4】

(式中、R14は炭素数1〜18のアルキル残基又は炭素数1〜18のアリール残基を表す)
で表される構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒の数平均分子量が450以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
11及びR13の一方が水素を表し、R11及びR13のもう一方が炭素数1〜10のアルキル残基又は炭素数1〜10のアリール残基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
m/(m+n)が約0.2〜約0.8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
各式(1つ又は複数)で表される溶媒中のエチレンオキシド残基(1つ又は複数)及び―R12−O−基(1つ又は複数)がランダムに共重合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記シリコーンプレポリマーが、
a.式(a)で表される構造を有する少なくとも1つのシリコーン含有残基:
【化5】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Aはシロキサニル基を表す);及び
b.式(p)で表される構造を有する少なくとも1つの重合性残基:
【化6】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Pは少なくとも1つの重合性部分を含む有機基を表す)を含み;
該少なくとも1つのシリコーン含有残基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの極性部分をさらに含む極性シリコーン含有残基であり;かつ
該プレポリマーの極性シリコーン含有残基含有量が、該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリコーンプレポリマーが、下記式(b):
【化7】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Bは親水基を表す)
で表される構造を有する少なくとも1つの親水性残基をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物からのプレポリマーを重合させ、それによりポリマーを得る工程を含む、ポリマーの生成方法。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスによって生成されるポリマー。
【請求項16】
請求項15に記載のポリマーを含む眼用レンズ。
【請求項17】
請求項15に記載のポリマーを含むコンタクトレンズ。
【請求項18】
a.含有量が組成物の約20重量%〜約95重量%であり、その平均ケイ素含有量がシリコーンプレポリマーの約10重量%〜約30重量%であるシリコーンプレポリマーと、
b.含有量が組成物の約5重量%〜約80重量%であり、式(2s)で表される構造を有する溶媒とを含む組成物。
【化8】

(式中、R21からR24は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、
25及びR26は、互いに独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を含む有機ラジカルを表し、
nは1〜50の整数を表し、
25及びR26中の炭素原子の総数はrと定義され、
(n+1)/(2n+r)は約0.45以下である)。
【請求項19】
開始剤をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、該組成物の約1重量%〜約20重量%のポリ(ビニルピロリドン)含有量をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
21からR24が、互いに独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル残基、又は炭素数1〜20のアリール残基を表すか、又はR21からR24のうちの2つ以上が互いに結合して環構造を形成する、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
25及びR26が、互いに独立して、水素、又は炭素数1〜20のアルキル残基若しくは炭素数1〜20のアリール残基を表す、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
21からR24の全てが水素を表す、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
25及びR26の一方が水素を表し、R25及びR26のもう一方が炭素数3以上のアルキル残基又は炭素数3以上の芳香族残基を表す、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
(n+1)/(2n+r)が0.40以下である、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
前記溶媒の数平均分子量が450以下である、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
前記シリコーンプレポリマーが、
a.式(a)で表される構造を有する少なくとも1つのシリコーン含有残基:
【化9】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Aはシロキサニル基を表す);及び
b.式(p)で表される構造を有する少なくとも1つの重合性残基:
【化10】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Pは少なくとも1つの重合性部分を含む有機基を表す)を含み;
該少なくとも1つのシリコーン含有残基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの極性部分をさらに含む極性シリコーン含有残基であり;かつ
該プレポリマーの極性シリコーン含有残基含有量が、該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%である、
請求項18に記載の組成物。
【請求項28】
前記シリコーンプレポリマーが、下記式(b):
【化11】

(式中、Rは水素又はメチルを表し、
Bは親水基を表す)
で表される構造を有する少なくとも1つの親水性残基をさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
請求項18に記載の組成物からのプレポリマーを重合させ、それによりポリマーを得る工程を含む、ポリマーの生成方法。
【請求項30】
請求項29に記載のプロセスによって生成されるポリマー。
【請求項31】
請求項30に記載のポリマーを含む眼用レンズ。
【請求項32】
請求項30に記載のポリマーを含むコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511850(P2011−511850A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540888(P2010−540888)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/088287
【国際公開番号】WO2009/086444
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】