説明

シリコーンマイクロエマルションの調製

平均エマルション粒径が1ナノメートル〜140ナノメートルである、(A)ポリシロキサンと、(B)不活性シロキサン流体及び不活性有機流体から選択される不活性流体とを含有する水中油型マイクロエマルションを製造する機械的方法が開示される。該プロセスは、i)不活性流体、好適な触媒、及び任意に末端ブロック化剤の存在下における、シラン又はシロキサンを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合によって、ポリシロキサンを含有する混合物を含む油相を調製する工程と、ii)必要とされる場合、重合プロセスをクエンチさせる工程であって、不活性流体が得られるポリシロキサンを含有する混合物中に実質的に保持される、工程と、iii)必要であれば、1つ又は複数の界面活性剤を油相中に混合する工程と、iv)水を油相に添加した後に、混合物に攪拌又は剪断を適用し、水中油型マイクロエマルションをもたらす、工程と、v)任意に、より多くの水を添加することによって水中油型マイクロエマルションを希釈する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中シリコーンマイクロエマルションの調製に関し、該プロセスから生成される得られるマイクロエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエマルションは当該技術分野においてよく知られている。かかるシリコーンエマルションは、(i)機械的な乳化等のプロセスによって、又は(ii)乳化重合によって生成することができる。しかしながら、25℃における粘度が1000000mPa・sより大きいシリコーン(即ち、高分子量のもの)に関しては、それらのエマルションの調製が事実上、乳化重合に限られてしまう。対照的に、低粘度、このため低分子量を有するシリコーンのエマルションは機械的に容易に得ることができる。
【0003】
エマルションは、ポリシロキサン粒子のサイズ及びエマルションの外観によって分類され得る。典型的に、当該技術分野では3つのカテゴリーのエマルションが認識されている。これらは、標準エマルション、微細エマルション及びマイクロエマルションである。本明細書中で単独で用いられる用語「エマルション」は、3つの別個のタイプのシリコーンエマルションを包含している。
【0004】
標準エマルションは、大きい粒径(典型的に300ナノメートルより大きい)を特徴とし、ヒトの目には不透明であるように見える(光不透過性)。標準エマルションは最も一般的には、濃白色の外観を有するものとして識別される。微細エマルションは、300ナノメートル〜140ナノメートルのより小さい粒径を特徴とし、青みがかった白色のものから極めてわずかに半透明のものまで視覚的に一様でない組成物として識別される。マイクロエマルションは、140ナノメートル未満の粒径を有するものであると特徴付けられ、半透明のものから透明なものまで視覚的に一様でない。これは、マイクロエマルションが、可視光の波長よりも小さな構造を含有するためである。マイクロエマルションは、それらの半透明から透明な外観に起因して、明澄度を必要とする用途に使用することができるため、多くの場合に好まれる。また、マイクロエマルションは、クリーミング又は沈降に対して最も安定であるという利点を有する。
【0005】
乳化重合は典型的に、反応性シリコーンオリゴマー又はシランモノマー、界面活性剤、重合触媒及び水を組み合わせることを伴う。混合物を攪拌し、標準エマルション、微細エマルション又はマイクロエマルションが形成されるまで、シリコーンオリゴマー又はシランモノマーを重合させる。典型的には、アルコキシシラン又は環状シロキサンを、反応性モノマー及びオリゴマーとして使用する。シリコーン反応物質の組合せは、得られるエマルション中にコポリマーを形成するのにも使用され得る。
【0006】
機械的な乳化は通常、ポリシロキサンを得ると共に、ホモジナイザ又は強力な攪拌等の機械的手段を使用して、水中にシロキサンを乳化させることを伴う。典型的には、界面活性剤を、ポリシロキサン又は水に添加して、乳化プロセスを促進させる。機械的な乳化は、2つの一般的な方法、即ち、直接乳化及び反転による乳化を使用する。直接乳化プロセスでは、攪拌しながら油相を水性相に添加して、粗エマルションを形成し、その後、均質化装置において粗エマルションに高い剪断をかけ、粒径を小さくする。直接的な機械的方法は、エマルションが安定であるのに十分に粒径を小さくするために、比較的低い粘度(25℃で103mPa・s〜104mPa・s未満)の油相にとって好適である。標準エマルション(0.3マイクロメートルより大きい粒径)が典型的に作製される。とりわけ出発ポリマーが、例えば25℃で104mPa・sより大きい高粘度を有し、特に25℃で106mPa・sの粘度を有するものである場合、直接的な機械的な乳化によって、微細エマルション又はマイクロエマルションが生成されるのはまれである。これは、少なくとも一部では、このようなポリマーを混合するのに必要なエネルギー、さらなる成分(例えば界面活性剤)を混合物中に導入することの難しさ、及び例えばマイクロエマルションを形成するために必要とされる得られる粒径に起因する。
【0007】
反転による機械的な乳化は、出発エマルションの連続相が最終的なエマルション中で分散相となり、また逆も同様となる転相現象を伴う。転相は、界面活性剤の親和性の変化、又は水と油との比率等の組成の変化のいずれかによって誘起される。したがって、例えば、反転法によって水中油型エマルションを生成するために、攪拌しながら水を油相に添加して、転相を誘導し、水中油型エマルション最終生成物を得ることができる。反転法は一般的に、高圧押出機等の特殊な装置を使用しない限り、容易な実用プロセス操作では、油相粘度が25℃で100000mPa・s未満に限定されることを要する。さらに、油相粘度が25℃で10000mPa・s未満である場合には一般的に小さな粒径のマイクロエマルションのみを生成することができる。
【0008】
シリコーンマイクロエマルションの調製は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載されている。特許文献7には、アミノ官能性ポリシロキサンを調製する方法が提示されており、該方法は、アミノアルキル基とSiに結合した少なくとも1つのアルコキシ基とを含有するアミノシラン(A)と、カルボン酸及びシラノール官能性ポリシロキサン(B)とを反応させることを含み、カルボン酸(C)の量は、(C)のカルボン酸基と、アミノシラン(A)のアミノ基とのモル比が1:1未満となるようなものであり、シラノール官能性ポリシロキサン(B)の量は、(B)のシラノール基と、アミノシラン(A)のSiに結合したアルコキシ基とのモル比が1:1より大きくなるようなものであり、これにより、アミノシラン(A)は、(A)と(B)との間のシロキサン縮合重合反応のための触媒として作用するカルボン酸塩へと少なくとも部分的に変換される。
【0009】
シリコーンガム及びシリコーンエラストマー等の幾つかのシリコーンの高い粘度のために、それらのエマルションの調製は事実上、乳化重合に限定される。高分子量シリコーンマイクロエマルションはとりわけ、乳化重合法を使用することに制限される。しかしながら、乳化重合では、生成され得るポリマーが或る特定のタイプに、水へのモノマーの溶解度の要件が或る特定のレベルに、及び使用することができる界面活性剤が限られた種類に制限される。対照的に、低粘度、このため低分子量を有するシリコーンは、多種多様な乳化剤を使用して機械的な乳化によって容易に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1031344号
【特許文献2】欧州特許第1427772号
【特許文献3】欧州特許第1221455号
【特許文献4】米国特許第6475974号
【特許文献5】米国特許第4620878号
【特許文献6】欧州特許第0755959号
【特許文献7】米国特許第7238768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
乳化におけるこの問題点を克服する一方法は、低粘度の流体キャリア中に高分子量シリコーンを希釈させることである。また、不活性非反応流体の存在下における高分子量シリコーンの重合は本質的に、取扱いのし易さ及び分子量の制御の観点から利点を有する。
【0012】
本出願人の同時係属中の出願である、本出願の優先日後に公開された国際公開第2008045427号は、ポリシロキサン含有ポリマーを有するシリコーン水中油型エマルションの調製を記載している。該方法は、不活性オルガノポリシロキサン及び/又は有機流体、好適な触媒、及び任意に末端ブロック化剤の存在下における、シロキサンを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合によって、ポリシロキサン含有ポリマーを調製することを含む。必要であれば、1つ又は複数の界面活性剤を、ポリシロキサン含有ポリマー中に導入して、均質な油相を形成し、均質な油相に水を添加して、油中水型エマルションを形成し、水中油型エマルションへの油中水型エマルションの反転を起こさせるように油中水型エマルションに剪断を適用し、任意に、より多くの水を添加することによって水中油型エマルションを希釈してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示によると、平均エマルション粒径が1ナノメートル〜140ナノメートルである、(A)ポリシロキサンと、(B)不活性シロキサン流体及び不活性有機流体から選択される不活性流体とを含有する水中油型マイクロエマルションを製造する機械的方法であって、
i)不活性流体、好適な触媒、及び任意に末端ブロック化剤の存在下における、シラン又はシロキサンを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合によって、ポリシロキサンを含有する混合物を含む油相を調製する工程と、
ii)必要とされる場合、重合プロセスをクエンチさせる工程であって、不活性流体が得られるポリシロキサンを含有する混合物中に実質的に保持される、クエンチさせる工程と、
iii)必要であれば、1つ又は複数の界面活性剤を油相中に混合する工程と、
iv)水を油相に添加した後に、混合物に攪拌又は剪断を適用する工程であって、水中油型マイクロエマルションをもたらす、添加した後に攪拌又は剪断を適用する工程と、
v)任意に、より多くの水を添加することによって水中油型マイクロエマルションを希釈する工程と、
を含む、水中油型マイクロエマルションを製造する機械的方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中で使用される場合、「含む(comprising)」の概念は、この最も広い意味において「含む(include)」及び「から成る(consist of)」の観念を意味し、包含するように使用される。本明細書中に言及される粘度測定値は全て、特に指定のない限り、25℃で測定したものである。
【0015】
本発明者等による開示の目的上、マイクロエマルションは、140ナノメートル未満、代替的には100ナノメートル未満の平均直径を有する構造を含有する。
【0016】
本出願の目的で、不活性流体は、如何なる他の構成成分に対しても非反応性であるように意図される実質的に不揮発性の流体であり、即ち、工程(i)の重合反応に化学的に関与せず、又は、工程(i)〜工程(vi)のいずれかにおいて導入される複数の添加剤とも化学的に相互作用しない。本不活性流体は乳化前に除去されない。それゆえ、不活性流体は、マイクロエマルション中に実質的に存在していることとなる。
【0017】
本開示は、オルガノポリシロキサン及び/又は有機流体から選択される1つ又は複数の不活性流体と組み合わせて、広い粘度範囲を有するシリコーンポリマーを含む混合物から、安定なマイクロエマルションを製造する安価な技法を提供する。本発明による不活性流体は典型的に、不揮発性であるが、低粘度の流体である。1つの特別な利点は、シリコーンポリマーを含有するこのような混合物(従来通りに調製した場合、それらの高い分子量のために、極めて高い、例えば25℃で1000000mPa・sより大きい粘度を有すると考えられる)からマイクロエマルションを調製するのに、不活性流体を利用することができ、不活性流体の存在下で重合した場合、得られる混合物の全体的な粘度が極めて低いため、不活性流体が存在しない場合に行うよりも、界面活性剤等(必要であれば)を、乳化前に混合物中に導入することが非常に容易となることである。これらの不活性流体の全てではなくとも大半からそれ自体でマイクロエマルションを製造することは、不可能とは言えないまでも極めて困難であるため、これは驚くべき結果であった。したがって、このような不活性流体の導入は、本開示の組成物中に導入した場合に、マイクロエマルションの形成を妨げるであろうことが予想された。しかし驚くべきことに、本発明者等は予想に反して、不活性流体が、これらのマイクロエマルションの調製に対して悪い影響を有することなく、本発明が、これらの組合せの安定なマイクロエマルションを機械的に生成する予想外に単純な方法を提供すること、さらには、結果として得られるマイクロエマルションが長期間安定なままであることを見出した。
【0018】
ポリシロキサン含有ポリマーは、1分子当たり複数のオルガノシロキサン基又はポリオルガノシロキサン基を含むポリマーを意味することが意図され、ポリマー鎖中にオルガノシロキサン基又はポリオルガノシロキサン基のみを実質的に含有するポリマー、及びポリマー鎖中に主鎖がオルガノシロキサン基及び/又は有機高分子基を両方含有するポリマーを含むことが意図される。このようなポリマーは、ホモポリマーであっても、又は限定するものではないが、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーであってもよい。
【0019】
本発明によれば、ポリシロキサンポリマーは、不活性流体の存在下で重合され、一般式:
(3-a)1aSiO[(R2SiO)b]SiR(3-a)1a (1)
(式中、各Rは、同一又は異なっており、アルキル基、置換アルキル基、又は任意に置換されたフェニル基であり、R1は、水素、ヒドロキシ基、加水分解性基又は不飽和有機基であり、aは0又は1であり、bは少なくとも200、代替的には少なくとも500、又は代替的には少なくとも1500の整数である)を有し得る。本発明によるポリシロキサンポリマーはまた、分岐が、乳化前にシロキサンポリマーと不活性流体との巨視的な相分離をもたらさないレベルまでの分岐度を含み得る(故に、RSiO3/2構造の単位及び/又はSiO4/2の単位をさらに含有する)。
【0020】
本出願の目的で、炭化水素基に関して使用される場合、「置換された」は、炭化水素基中の1つ又は複数の水素原子を別の置換基で置き換えたことを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;クロロメチル、ペルフルオロブチル、トリフルオロエチル及びノナフルオロヘキシル等のハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル及びカルボキシル等の酸素原子含有基;窒素原子;アミン、アミノ官能基、アミド官能基及びシアノ官能基等の窒素原子含有基;硫黄原子;並びに、メルカプト基等の硫黄原子含有基;並びに、ポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
Rがアルキル基である場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、及びミリシル基等の任意の好適なアルキル基を含み得る。Rはまた、シクロブチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、キセニル基及びナフチル基等のアリール基;ベンジル基及び2−フェニルエチル基等のアラルキル基;トリル基、キシリル基及びメシチル基等のアルカリール基を含んでいてもよい。
【0022】
代替的には、存在する場合、本開示による置換アルキル基が、ケイ素−炭素結合又はケイ素−酸素−炭素結合を介してケイ素に結合する少なくとも1つの極性基を含有していてもよい。好適な極性基は、ケイ素−炭素結合又はケイ素−酸素−炭素結合を介してケイ素に結合する、アミン、アミン塩、アミド、カルビノール、カルボン酸、カルボン酸塩、フェノール、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸(phosphate acids)、及びリン酸塩等の置換基を含有していてもよく、又は極性基はヒドロキシル基であってもよい。Rが1個〜18個の炭素原子を含有する炭化水素基であることが好ましい。
【0023】
極性基がアミンである場合、これは、非置換アミン基−NH2、−NH(CH2n'CH3(式中、n’は0又は1〜6の整数である)及び−N((CH2n'CH32(式中、n’は上記の通りである)等のアルキル置換アミン基、−NH(CH2n''NH2(式中、n’’は1〜6の整数である)、−NH(CH26NH2及び−NH(CH2n'' N(CH32等のアミノアルキル置換アミン基から選択され得る。これらの同じアミン官能基の塩も本開示で使用され得る。このような塩の例としては、アルキルカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩、塩化物及び臭化物等のハロゲン化物塩、並びにアミンと有機酸との他の中和生成物が挙げられる。
【0024】
存在する場合、本開示のアミン官能性ポリシロキサン構成成分は、高い極性のペンダントアミノアルキル修飾基を有するシリコーン流体である。特に好ましいアミン官能性ポリシロキサンとしては、アミノプロピル、アミノブチル又はジアミノペンダント鎖で、完全に又は部分的に終端置換される、反応性及び非反応性の加水分解性誘導体及び非加水分解性誘導体が挙げられる。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、使用されるアミン官能性ポリシロキサンは式:
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、R’は、1個〜4個の炭素のアルキル基、又はフェニル基を示すが、但し、R’基の総数の少なくとも50パーセントがメチルであり、Qは、式−R’’Z(式中、R’’は3個〜6個の炭素原子の二価アルキレン基であり、Zは、−NR2’’’及び−NR’’’(CH2bNR2’’’から成る群から選択される一価基であり、ここで、R’’’は、水素、又は1個〜4個の炭素のアルキル基を示し、bは2〜6の値を有する正の整数である)のアミン官能性置換基を示し、zは0又は1の値を有し、xは25〜3000の平均値を有し、zが1である場合、yは0〜100の平均値を有し、zが0である場合、yは1〜100の平均値を有するが、但し、いずれの場合でも、yはxの平均値の10分の1以下の平均値を有する)を有する。この実施形態は、例えば、線形ヒドロキシル終端シロキサンオリゴマーとアミン官能性ジアルコキシシランとの重合から得られるアミン官能性ポリシロキサンを利用してもよい。
【0028】
代替的に、本開示による不活性流体の存在下における、シロキサン又はシランを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合から得られるアミン官能性ポリシロキサンは、極性ペンダントアミノアルキル修飾基を有する分岐シリコーン流体である。このような分岐アミン官能性シリコーンは、SiO3/2単位を含有する反応性シロキサン及び/又は反応性シランの反応生成物であり得る。ここに開示の範囲を限定するものではないが、一例は、線形ヒドロキシル終端シロキサンオリゴマーと、アミン官能性トリアルコキシシランとの重合であると考えられる。
【0029】
本開示による不活性流体の存在下における、シロキサン又はシランを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合から得られる別の好適なポリシロキサンは、第四級アンモニウム基を有する少なくとも1つの基を含有するポリシロキサンである。これは、アンモニウム官能基を有する少なくとも1つの反応物質を伴う、シロキサン又はシランの重合によって得ることができる。代替的に、ポリシロキサン中の第四級アンモニウム官能基は、不活性流体の存在下における、シロキサン又はシランを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合から得られるアミンポリシロキサンのアミン官能基を四級化することによって得ることができる。
【0030】
存在する場合、アミン基又は第四級アンモニウム基の量は代替的に、アミン基又は第四級アンモニウム基を含有する基に結合するポリシロキサン中のケイ素原子の数の1モルパーセント〜20モルパーセント、代替的には2モルパーセント〜10モルパーセントである。
【0031】
アミド官能性極性基の2つのタイプは一般式
−(CH2n''N(C(=O)R4')R5'及び−(CH2n''C(=O)NR5'2
(式中、n’’は先に記載した通りであり、R4'は1個〜6個の炭素原子を含有する一価アルキル基であり、R5'は、水素、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基から成る群から選択される)、並びに
−(CH2n''NHC(=O)R4'
によって例証することができる。
【0032】
ポリオルガノシロキサン上の極性基はまたカルビノール形態であってもよい。概して、好適なカルビノール基の例は一般式
−(CH2n''O(C24O)e'(C36O)f'
(式中、n’’は先に記載した通りであり、e’及びf’は共に0より大きいかこれに等しい)によって表すことができる。e’及びf’が共に0に等しい場合、カルビノール基は単純なアルコール基である。e’が0よりも大きい場合、カルビノールは、エチレングリコール部分を含有し、f’が0よりも大きい場合、カルビノールはプロピレングリコール部分を含有する。
【0033】
他の好適な極性基又は置換基としては、カルボン酸及びそれらの塩が挙げられる。これらの極性基は、1つ又は複数のCOOH基又はそれらの塩を含有し得る。本開示における使用に好適なカルボン酸塩を形成することができるカチオンの例としては、Na+、K+、Li+、NH4+及びピリジニウムイオンが挙げられる。
【0034】
極性基はまた、一般式
−(CH2n''6w'(OH)5-w'
(式中、n’’は先に記載した通りであり、w’は0〜4である)
によって表されるフェノールタイプのものであってもよい。
【0035】
本開示のポリオルガノシロキサン中に組み込むのに好適な他の極性基又は置換基としては、スルホン酸(sulphonic acid)塩及び硫酸塩が挙げられる。このような極性基の例は、スルホン酸塩については一般式
−(CH2n''SO3X’
及び硫酸塩については一般式
−(CH2n''OSO3X’
(式中、X’は、Na+、K+、Li+及びNH4+等の好適なカチオンである)によって例証される。
【0036】
極性基はまた、一般式
−(CH2n''P(OH)2
又は
−(CH2n''P(OX)2
(それぞれ式中、n’’及びX’は先に記載した通りである)のリン酸及びリン酸塩の形態であってもよい。
【0037】
ポリシロキサン含有ポリマーがオルガノポリシロキサン分子鎖を実質的に有するのが好ましいが、ポリシロキサン含有ポリマーは代替的に、シロキサン基の少なくとも1つのブロックを含むブロックコポリマー主鎖、及び任意の好適な有機系ポリマー主鎖を含む有機構成成分を含有していてもよく、例えば有機ポリマー主鎖は、例えば、ポリスチレン及び/又は置換ポリスチレン(ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ビニルメチルスチレン)、ジエン、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)及びポリ(p−トリメチルシリル−α−メチルスチレン)等)を含み得る。ポリマー主鎖中に組み入れられ得る他の有機構成成分としては、アセチレン終端オリゴフェニレン、ビニルベンジル終端芳香族ポリスルホンオリゴマー、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルをベースとするモノマー、ポリアルキレン、ポリウレタン、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミド等が挙げられ得る。
【0038】
しかしながらおそらく、ポリシロキサン含有ポリマー中の最も好ましい有機系ポリマーブロックは、ポリオキシアルキレンをベースとするブロックである。オキシアルキレン単位はポリオキシアルキレンモノマー全体を通して必ずしも同一でなく、単位毎に異なっていてもよい。例えば、ポリオキシアルキレンブロックは、オキシエチレン単位(−C24−O−)、オキシプロピレン単位(−C36−O−)又はオキシブチレン単位(−C48−O−)、又はそれらの混合物から成り得る。代替的に、ポリオキシアルキレンポリマー主鎖は、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から主に成る。
【0039】
ポリシロキサン含有ポリマー中の他のポリオキシアルキレンブロックとしては、例えば、構造
−[−R2−O−(−R3−O−)d−Pn−C(R42−Pn−O−(−R3−O−)e−R2]−
(式中、Pnは1,4−フェニレン基であり、各R2は、同一又は異なっており、2個〜8個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、各R3は、同一又は異なっており、エチレン基、プロピレン基又はイソプロピレン基であり、各R4は、同一又は異なっており、水素原子又はメチル基であり、下付き文字d及びeはそれぞれ3〜30の範囲の正の整数である)の単位が挙げられ得る。
【0040】
別の実施形態では、本発明によって調製されるポリシロキサンポリマーが、250℃未満の沸点を有する揮発性シロキサンを低含有量で含有する。これは、蒸発、若しくはポリシロキサンポリマーから揮発性種を抽出することによって、又は低揮発性含有量をもたらす重合条件を使用することによって、達成することができる。このような条件は、限定するものではないが、低温における重合、又は平衡化よりも縮合反応に有利に働く触媒の使用であり得る。
【0041】
不活性流体は、本発明によれば、不活性シロキサン流体及び不活性有機流体から選択される。不活性流体は、オルガノポリシロキサン増量剤及び/若しくは可塑剤、並びに/又は有機増量剤若しくは可塑剤、又は3個〜20個のケイ素原子を含む環状シロキサンから選択され得る。好ましくは、不活性流体は、25℃で0.65mPa・s〜25℃で10000mPa・sの粘度を有する。
【0042】
本明細書中における、用語「増量剤」及び/又は「可塑剤」についての言及は、配合することによってシリコーンシーラント組成物を「増量」及び/又は「可塑化」するのに役立つ、シリコーンをベースとする組成物、例えば室温硬化シーラントに通常使用される添加剤を指している。可塑剤及び増量剤(場合により、加工助剤又は二次可塑剤と称されることもある)は、シーラント配合物の特性に実質的に悪い影響を及ぼすことなく、シーラント組成物を希釈し、基本的にシーラントをより経済的に競合するものとするために使用される。典型的に可塑剤を導入する場合、シーラント配合物の特性は改善され得る。
【0043】
好適な不活性液体としては、或る程度の置換を含み得るトリアルキルシリル終端ポリジアルキルシロキサン及びその誘導体が挙げられるが、但し、不活性流体中の任意の置換された基は重合反応に関与しないものとする。不活性流体上の置換された基は代替的に、炭化水素基に関する置換された基の先の定義において特定されたものと同じものである。代替的に、各アルキル基は、同一であっても異なっていてもよく、1個〜8個の炭素原子を含み、代替的にはメチル基又はエチル基であり、代替的に25℃で0.65mPa・s〜100000mPa・s、又は代替的に25℃で10mPa・s〜1000mPa・sの粘度を有する。
【0044】
不活性流体は、任意の好適な有機増量剤/有機可塑剤を含んでいてもよい。しかしながら、鉱油増量剤及び鉱油可塑剤が特に好ましい。例としては、少なくとも12個、例えば12個〜25個の炭素原子を含有する線形若しくは分岐状アルケン等の線形若しくは分岐状一不飽和炭化水素、又はそれらの混合物;並びに/又は、線形(例えばn−パラフィン系)鉱油、分岐状(イソパラフィン系)鉱油、環状(従来技術によってはナフテン系と称される)鉱油を含む鉱油留分、及びそれらの混合物が挙げられる。代替的に、利用される炭化水素は、1分子当たり、少なくとも10個、代替的に少なくとも12個、又は代替的に20個より多い炭素原子を含む。
【0045】
代替的な鉱油増量剤としては、アルキル脂環式化合物、低分子量のポリイソブチレン、リン酸エステル、ポリマーに非反応性であるポリアルキルベンゼンを含むアルキルベンゼンが挙げられる。代替的な種類の増量剤は、一価、二価及び多価カルボン酸のエステルである。
【0046】
鉱油留分の任意の好適な混合物は、本開示において不活性流体として利用してもよいが、高分子量増量剤(例えば220g/molより大きい)が特に好ましい。例としては、アルキルシクロヘキサン(分子量が220g/molより大きい);1%〜99%、代替的には15%〜80%のn−パラフィン系及び/又はイソパラフィン系炭化水素(線形/分岐状パラフィン系)、及び1%〜99%、代替的には85%〜20%の環状炭化水素(ナフテン系)、及び最大3%、代替的には最大1%の芳香族炭素原子を含有する、パラフィン系炭化水素並びにそれらの混合物が挙げられる。環状パラフィン系炭化水素(ナフテン系炭化水素)は、環状及び/又は多環式炭化水素を含有していてもよい。鉱油留分の任意の好適な混合物、例えば、
(i)60%〜80%のパラフィン系炭化水素、及び20%〜40%のナフテン系炭化水素、及び最大1%の芳香族炭素原子、
(ii)30%〜50%、代替的には35%〜45%のナフテン系油、並びに70%〜50%のパラフィン系油及び/又はイソパラフィン系油、
(iii)60wt%を超えるナフテン系炭化水素、少なくとも20wt%の多環式ナフテン系炭化水素、及び235℃より高いASTM D−86の沸点を有する炭化水素流体、
(iv)炭化水素100重量部に基づき、40重量部を超えるナフテン系炭化水素、並びに60重量部未満のパラフィン系及び/又はイソパラフィン系炭化水素を有する炭化水素流体
を含有する混合物を使用してもよい。
【0047】
代替的に、鉱油をベースとする増量剤又はその混合物は、下記のパラメータ
(i)150g/mol、代替的には200より大きい分子量、
(ii)230℃以上の初留点(ASTM D 86に準ずる)、
(iii)0.9以下の粘度密度定数(ASTM 2501に準ずる)、
(iv)平均して、1分子当たり少なくとも12個の炭素原子、代替的には1分子当たり12個〜30個の炭素原子、
(v)70℃以上のアニリン点、代替的に、アニリン点は80℃〜110℃である(ASTM D 611に準ずる)、
(vi)増量剤の20重量%〜70重量%のナフテン含有量、鉱油をベースとする増量剤は、増量剤の30重量%〜80重量%のパラフィン含有量を有する(ASTM D 3238に準ずる)、
(vii)−50℃〜60℃の流動点(ASTM D 97に準ずる)、
(viii)40℃で1cSt〜20cStの動粘度(ASTM D 445に準ずる)、
(ix)0.7〜1.1の比重(ASTM D 1298に準ずる)、
(x)20℃で1.1〜1.8の屈折率(ASTM D 1218に準ずる)、
(xi)15℃における700kg/m3より大きい密度(ASTM D 4052に準ずる)、及び/又は
(xii)100℃より高く、代替的には110℃より高い引火点(ASTM D 93に準ずる)、
(xiii)少なくとも+30のセイボルト色度(ASTM D 156に準ずる)、
(xiv)250ppm以下の含水量、
(xv)2.5ppm未満の硫黄含有量(ASTM D 4927に準ずる)
の少なくとも1つを含む。
【0048】
他の有機増量剤は、例として、脂肪酸及び脂肪酸エステルを挙げることができ、使用に好適なアルキルベンゼン化合物としては、重質アルキレートアルキルベンゼン又はアルキル脂環式化合物が挙げられる。増量剤及び/又は可塑剤として有用なアルキル置換アリール化合物の例は、アルキル、及び場合によっては他の置換基で置換されたアリール基、とりわけベンゼンを有し、少なくとも200の分子量を有する化合物である。
【0049】
使用に好適なアルキルベンゼン化合物としては、重質アルキレートアルキルベンゼン又はアルキル脂環式化合物が挙げられる。増量剤及び/又は可塑剤として有用なアルキル置換アリール化合物の例は、アルキル、及び場合によっては他の置換基で置換されたアリール基、とりわけベンゼンを有し、少なくとも200の分子量を有する化合物である。このような増量剤の例は、米国特許第4,312,801号に記載されており、その内容は参照により本明細書中に援用される。これらの化合物は、一般式(2)、(3)、(4)及び(5)
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、R6は1個〜30個の炭素原子のアルキル鎖であり、R7〜R16はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ニトリル基、アミン基、アミド基、アルキルエーテル基等のエーテル基、又はアルキルエステル基等のエステル基から選択され、nは1〜25の整数である)によって表すことができる。
【0052】
これらのうち、式(2)中、R7、R8、R9、R10及びR11はそれぞれ、水素であり、R6は、C10〜C13アルキル基である。このような化合物の特に有用な供給源は、いわゆる「重質アルキレート」であり、これらは油蒸留後の油精製装置から回収可能なものである。一般的に、230℃〜330℃の範囲の温度で蒸留を行うと、より軽い留分が蒸留除去された後に残る留分中に重質アルキレートが存在する。
【0053】
アルキル脂環式化合物の例は、220を超える分子量を有する置換シクロヘキサンである。このような化合物の例は、欧州特許第0842974号に記載されており、その内容は参照により本明細書中に援用される。このような化合物は、一般式(6)
【0054】
【化3】

【0055】
(式中、R17は、1個〜25個の炭素原子の線状又は分岐状アルキル基であり、R18及びR19は独立して、水素、又はC1~25直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基から選択される)によって表すことができる。
【0056】
代替的に、不活性流体は、好適な非鉱物系の天然油又はその混合物、即ち、動物、種子及び堅果に由来し、鉱油に由来しない(即ち、石油又は石油をベースとする油に由来しない)もの、例えば、アーモンド油、アボカド油、牛脂、ボラージオイル(borrage oil)、バター脂、キャノーラ油、カルダノール、カシューナッツ油、カシューナッツ殻液、ヒマシ油(castor oil)、シトラスシードオイル、ココアバター、ヤシ油、タラ肝油、コーン油、綿実油、クフェア油、月見草油、麻油、ホホバ油、ラード、アマニ油、マカダミア油、メンハーデン油、オート油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、落花生油、けし油、ナタネ油、米ぬか油、サフラワー油(safflower oil)、サフラワー油(高オレイン酸)、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ヒマワリ油(高オレイン酸)、トール油、ティーツリー油、ロート油、クルミ油、えの油、脱水ヒマシ油、杏油、松の実油、ククイナッツ油、アマゾンナッツ油、アーモンド油、ババス油、アルガン油、ブラッククミン油、ベアベリー油、カロフィラム油、カメリナ油、ニンジン油、ベニバナ油(carthamus oil)、カボチャ油(cucurbita oil)、ヒナギク油、ブドウ種子油、ホラハ油(foraha oil)、ホホバ油、クイーンズランド油(queensland oil)、オノエテラ油(onoethera oil)、ヒマシ油(ricinus oil)、タマヌ油、ツクマ油(tucuma oil)、並びに/又は、ピルチャード油、イワシ油及びニシン油等の魚油のようなものを含み得る。増量剤は代替的に、上記のものの混合物、及び/又は上記のものの1つ若しくは複数の誘導体を含み得る。
【0057】
広範な種類の天然油誘導体が利用可能である。これらとしては、エステル交換天然植物油、煮アマニ油等のボイル天然油、吹込天然油及びスタンド天然油が挙げられる。好適なエステル交換天然植物油の一例は、バイオディーゼル油として知られており、水酸化ナトリウム触媒又は水酸化カリウム触媒の存在下、ナタネ等の種子から機械的に抽出された天然植物油と、メタノールとを反応させて、利用する供給物に依る或る範囲のエステルを生成することにより生成されるエステル交換生成物である。例としては、例えば、オレイン酸メチル(CH3(CH27CH=CH(CH27CO2CH3)が挙げられ得る。
【0058】
熱重合されたか若しくは加熱重合された(thermally polymerised or heat polymerised)油としても知られているスタンド天然油は、高温において空気の非存在下で生成される。該油は、油中に天然に存在する二重結合間で架橋することにより重合する。これらの結合は炭素−炭素型のものである。スタンド油は、薄い色をしており、酸性度が低い。それらは、吹込油よりも広範な粘度を伴って生成することができ、粘度がより安定である。一般的に、スタンド油は、アマニ油及びダイズ油から生成されるが、他の油をベースとして製造することができる。スタンド油は、表面コーティング産業において広く使用される。
【0059】
吹込油は、酸化、増粘及び酸化的に重合された油としても知られており、空気を油に吹き込むことにより高温で生成される。また、該油は、二重結合間で架橋することにより重合するが、この場合、この架橋結合中に酸素分子が組み込まれる。過酸化物、過酸化水素、及びヒドロキシル基も存在する。吹込油は、スタンド油よりも広範な油から生成され得る。一般的に、吹込油は、スタンド油に比べて、色がより暗く、より高い酸性度を有する。使用される広範な原材料のために、吹込油は、多くの多様な産業における使用を見出しており、例えば、吹込アマニ油は、表面コーティング産業において使用されており、吹込ナタネ油は潤滑剤中に使用されていることが多い。
【0060】
組成物中に含まれ得る不活性流体の量は、組成物が置かれている目的、対象とされる不活性流体(複数可)の分子量等の要因に依ることとなる。しかしながら概して、不活性流体(複数可)の分子量が高いほど、本組成物において寛容される量は少なくなるが、このような高分子量不活性流体は、揮発性がより低いというさらなる利点を有する。典型的な組成物は、最大70%、又は代替的に最大50%の不活性流体(複数可)を含有することとなる。より好適なポリマー生成物は、5%w/w〜60%w/wの不活性流体(複数可)を含む。
【0061】
本開示によるプロセスの工程(i)において調製されるようなポリシロキサン含有ポリマーは、種々の経路により生成されていてもよく、生成されるこれらポリマーは、ポリマーに必要とされる終端基化を与えることとなる化合物を用いてエンドキャップ(end-capped)されているが、但し、ポリマー若しくはその前駆体、及び/又は中間体は、重合プロセス中に上記の不活性流体に希釈されるものとする。上記ポリマーの調製に至る好ましい経路は、
(i)重縮合
(ii)開環/平衡化
(iii)重付加
(iv)鎖伸長
を含む。
【0062】
(i)重縮合(即ち、水、アンモニア又はメタノール等の低分子量副生成物(複数可)の脱離を伴う複数のモノマー及び/又はオリゴマーの重合)。いずれの好適な重縮合反応経路を利用してもよい。
【0063】
出発原料の縮合可能な末端基間で予想される反応の種類は代替的に、例えば、水又はメタノール等の遊離と相互作用し得るヒドロキシル末端基及び/又は加水分解性末端基を有する化合物の相互作用に包括的に関連する。しかしながら、本開示による組成物の硬化プロセスについて考慮され得る他の相互作用を下記のリストに示す:
1)有機ハロシリル基と有機アルコキシシリル基との縮合
2)有機ハロシリル基と有機アシルオキシシリル基との縮合
3)有機ハロシリル基と有機シラノールとの縮合
4)有機ハロシリル基とシラノレートとの縮合
5)有機ヒドロシリル基と有機シラノール基との縮合
6)有機アルコキシシリル基と有機アシルオキシシリル基との縮合
7)有機アルコキシシリル基と有機シラノール基との縮合
8)有機アミノシリル基と有機シラノールとの縮合
9)有機アシルオキシシリル基とシラノレート基との縮合
10)有機アシルオキシシリル基と有機シラノールとの縮合
11)有機オキシモシリル基と有機シラノール基との縮合
12)有機エノキシシリル基と有機シラノールとの縮合
13)1つ又は複数のヒドロシラン官能基を含むシロキサン化合物と、少なくとも1つのアルコキシシラン官能基を含有するシロキサン化合物との縮合であって、炭化水素副生成物を生成する、縮合。
【0064】
代替的に、縮合反応は、ヒドロキシル末端基及び/又はアルコキシ末端基を有するモノマー/オリゴマー、並びに中間体間で起こり、これにより、副生成物として水又はアルコールを生成するものである。
【0065】
重合プロセスのための好ましい方法は、例えば
(3-f)5fSiO(R2SiO)gSiR(3-f)5f
(3-f)5fSiO(RR1SiO)hSiR(3-f)5f
(3-f)5fSiO[(R2SiO)j(RR5SiO)k]SiR(3-f)5f
を含む式(1)の直鎖状前駆体及び/又は分岐状オルガノポリシロキサンの重合である。式中、Rは先に定義した通りであり、R5は、−OH、又は1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、代替的にメトキシ基又はエトキシ基であり、fは、0又は1、代替的に1であり、gは2〜100の整数であり、hは2〜100であり、jは1〜100の整数であり、kは1〜100の整数である。幾つかの分岐が、ポリマー鎖における他の基の存在に伴って起きることがあるが、典型的にこれは最小に保たれる。
【0066】
上記の出発原料は代替的に、25℃で10mPa・s〜5000mPa・sの粘度を有する。
【0067】
上記のプロセスの多くが触媒の存在を必要とする。錫、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、アルミニウム、ガリウム又はゲルマニウム、及びジルコニウムをベースとする触媒、例えばオルガノ錫金属触媒を含むいずれの好適な重縮合触媒を利用してもよく、鉄、コバルト、マンガン、鉛及び亜鉛の2−エチルヘキソエート(2-ethylhexoates)を代替的に使用してもよい。
【0068】
錫触媒は、酒石酸トリエチル錫、オクタン酸錫、オレイン酸錫、ナフテン酸錫、ブチル錫トリ−2−エチルヘキソエート、錫ブチレート、カルボメトキシフェニル錫トリスベレート、イソブチル錫トリセロエート、及びジオルガノ錫塩、とりわけジオルガノ錫ジカルボキシレート化合物(ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジブチレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ビスネオデカノエート、ジブチル錫ジベンゾエート、第一錫オクトエート、ジメチル錫ジネオデコノエート、ジブチル錫ジオクトエート等)を含み得る(include as)。ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテートが特に好ましい。
【0069】
チタネート触媒は、一般式Ti[OR204及びZr[OR204のそれぞれによる化合物を含んでいてもよく、式中、各R20は、同一であっても異なっていてもよく、一価の、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表し、これらの脂肪族炭化水素基は1個〜10個の炭素原子を含有する線形又は分岐状であってもよい。任意にチタネートは、部分的に不飽和な基を含有していてもよい。しかしながら、R20の好ましい例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、及び2,4−ジメチル−3−ペンチル等の分岐状第二級アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、各R20が同一である場合、R20は、イソプロピル基、分岐状第二級アルキル基又は第三級アルキル基であり、特に、第三級ブチルである。例としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、又は、例えば、ジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のキレート化されたチタネート又はジルコネートが挙げられる。好適な触媒のさらなる例は、欧州特許第1254192号及び/又は国際公開第200149774号に記載されており、これらの内容は参照により本明細書中に援用される。使用される触媒の量は、使用される硬化系に依るが、典型的には全組成物の0.01重量%〜3重量%である。
【0070】
使用され得る他の縮合触媒は、プロトン酸、ルイス酸、有機塩基及び無機塩基、金属塩、並びに有機金属錯体である。本開示における重合に好適なルイス酸触媒(「ルイス酸」は、共有結合を形成するように電子対を取り上げる任意の物質である)としては、例えば、三フッ化ホウ素、FeCl3、AlCl3、ZnCl2及びZnBr2が挙げられる。
【0071】
より好ましくは、式R21SO3H(式中、R21は、例えば、ヘキシル基若しくはドデシル基等の、6個〜18個の炭素原子を代替的に有するアルキル基、フェニル基等のアリール基、又はジノニルナフチル若しくはジドデシルナフチル等のアルカリール基を表す)の酸性縮合触媒等の縮合特異的触媒である。任意に水を添加してもよい。代替的に、R21は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)等の6個〜18個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルカリール基である。他の縮合特異的触媒としては、n−ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジン、ルビジウム若しくはセシウムのカルボキシレート、マグネシウム、カルシウム若しくはストロンチウムの水酸化物、並びに、当該技術分野において、例えば、英国特許第895091号、英国特許第918823号、及び欧州特許第0382365号に言及されているような他の触媒が挙げられる。また好ましくは、塩化ホスホニトリルをベースとする触媒、例えば、米国特許第3839388号、米国特許第4564693号、又は欧州特許第215470号に従って調製されるものであり、また、英国特許第2252975号に記載されているような、一般式[X(PX2=N)pPX3+[M2(m-n+1)IIIm-(式中、Xはハロゲン原子を示し、M2は、ポーリングのスケールに従い1.0〜2.0の電気陰性度を有する元素であり、RIIIは最大12個の炭素原子を有するアルキル基であり、pは1〜6の値を有し、mはM2の価数又は酸化状態であり、nは0〜m−1の値を有する)を有する、ハロゲン化ホスホニトリルイオンをベースとする触媒である。
【0072】
代替的に、触媒は、下記の一般式:
1−PCl2=N(−PCl2=N)q−PCl2−O
(式中、
1は、酸素を介してリンに結合した有機ケイ素基、塩素原子、又はヒドロキシル基を表し、
qは0又は1〜8の整数を表す)を有する、有機ケイ素基を含有する酸素含有クロロホスファゼンを含み得る。触媒は、上記のもの及び/又はこれらの互変異性体の縮合生成物も含み得る(Z1がヒドロキシル基である場合、触媒は、互変異性体形態で存在する)。
【0073】
本開示における触媒として使用され得るさらなる代替的な触媒は、任意の好適な化合物であり、国際公開第01/79330号に規定されているような、少なくとも1つの四置換ホウ素原子を含むアニオン、及び、少なくとも1つのシラノール基との相互作用が可能なプロトンの供給源をもたらすものである。
【0074】
触媒の活性は代替的に、触媒と反応して触媒を不活性にする中和剤を使用することによってクエンチされる。典型的に、酸タイプの縮合触媒の場合、中和剤は、モノ/ジ及びトリアルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン(MEA)及びトリエタノールアミン(TEA)等のアミンのような好適な塩基である。DBSA触媒を使用する系の場合、代替的なクエンチ手段が、DBSAを吸収し安定ポリマーを残すことが見出されているアルミナシリケートゼオライト材料を含む。大抵の場合、触媒残渣は、ポリマー生成物中に残るか、又は、適切な場合には、濾過方法若しくは代替方法により除かれることがある。ホスファゼンをベースとする触媒の場合、望ましい粘度に達すると、プロセスにおいて得られる有機ケイ素化合物の粘度が、下記手順により一定に保たれ得る。手順としては、使用される触媒、又は、有機ケイ素化合物と反応させて縮合及び/若しくは平衡化並びに同様のものが施されることによりこの触媒から形成される反応生成物によって、有機ケイ素化合物の縮合及び/又は平衡化を促進させ、これをホスファゼンに関して今日に至るまで使用されている阻害剤又は不活性化剤(例えば、トリイソノニルアミン、n−ブチルリチウム、リチウムシロキサノレート、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン及び酸化マグネシウム)の添加によって阻害又は不活性化させる。
【0075】
適切な場合には、重合反応を停止させ、これにより、平均分子量を制限する任意の好適な末端ブロック化剤を、ポリマー(a)中に適切な末端基を導入するのに使用してもよい。
【0076】
(II)平衡化/開環
開環重合等の平衡重合プロセス用の出発原料は、シクロシロキサン(環状シロキサンとしても知られている)である。有用な環状シロキサンはよく知られており、市販材料である。それらは、一般式(R22SiO)r(式中、各R22は、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基から選択され、rは、3〜12の値を有する整数を示す)を有する。R22は、置換、例えば、これまでに記載したような極性基を含有し得る。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、トリフルオロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルであり得る。アルケニル基は、例えば、ビニル、アリル、プロペニル及びブテニルであり得る。アリール基及びアラルキル基は、例えば、フェニル、トリル及びベンゾイルであり得る。好ましい基は、メチル、エチル、フェニル、ビニル及びトリフルオロプロピルである。代替的に全てのR22基のうちの少なくとも80%が、メチル基若しくはフェニル基であり、代替的にメチルである。代替的に、rの平均値は3〜6である。好適な環状シロキサンの例は、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シクロペンタ(メチルビニル)シロキサン、シクロテトラ(フェニルメチル)シロキサン、シクロペンタメチルヒドロシロキサン、及びそれらの混合物である。市販の特に好適な一材料は、オクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンとを含む混合物である。典型的には水分がモノマー中に存在する。存在する水は、ポリマー上のOH末端基を形成し、それによりさらなる重合を防ぐことによって末端ブロッカーとして作用する。
【0077】
任意の好適な触媒を使用してもよい。これらとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ金属水酸化物とアルコールとの錯体、カリウムシラノレート、セシウムシラノレート、ナトリウムシラノレート及びリチウムシラノレート、又はトリメチルカリウムシラノレート等のアルカリ金属シラノレートが挙げられる。利用され得る他の触媒としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムとシロキサン四量体との反応により誘導される触媒、及び、本明細書中で先に記載したような、ホウ素をベースとする触媒が挙げられる。
【0078】
しかしながら、平衡化タイプの反応に最も好ましい触媒は、本明細書中で先に記載したような、ハロゲン化ホスホニトリル、ホスファゼン酸及びホスファゼン塩基である。
【0079】
必要な場合には、ポリマーの分子量を制限する手段としてかつ/又は官能基を付加するように、得られるポリマーを末端ブロック化してもよい。この末端ブロック化機能は、上記のように、水によって達成され得る一方、他の好適な末端ブロック化剤は、希釈されたポリマー中で調製された得られるポリマー構成要素の終端基と反応して、必要とされる末端基を生成することが可能な1つの基を有するシランを含む。
【0080】
(III)重付加
本明細書の目的で、「重付加」プロセス又は「付加重合」プロセスは、縮合反応とは異なり、水又はアルコール等の副生成物が重合中、そのモノマー及びオリゴマーの同時反応物質から生じない重合プロセスである。好ましい付加重合経路は、好適な触媒の存在下での、不飽和有機基、例えばアルケニル基又はアルキニル基と、Si−H基との間のヒドロシリル化反応である。この経路では、シロキサンを含有するモノマー及び/又はオリゴマーはむろんのこと、好適なシランを利用してもよい。
【0081】
典型的に、重付加経路は、不活性流体(例えば、増量剤及び/又は可塑剤)、好適な触媒、及び任意に末端ブロック化剤の存在下で、付加反応の経路を介して
(i)オルガノポリシロキサン又は
(ii)シランと、1つ又は複数のオルガノポリシロキサンポリマーと
を反応させ、必要とされる場合、重合プロセスをクエンチすることにより、ブロックコポリマーを形成するのに利用される。
【0082】
オルガノポリシロキサン又はシラン(a)は、
付加タイプの反応を経ることが可能な少なくとも1つの基を含有するシラン(a)(ii)、及び付加タイプの反応を経ることが可能な基を含有するオルガノポリシロキサンモノマー(a)(i)から選択される。
【0083】
オルガノポリシロキサン又はシラン(a)は、ポリマー(b)との適切な付加反応を経ることが可能であるような置換基を含有していなければならない。好ましい付加反応は、不飽和基とSi−H基との間のヒドロシリル化反応である。
【0084】
好ましくは、シラン(a)(ii)が、(b)との付加タイプの反応を経ることが可能な、少なくとも1つ、代替的には2つの基を有する。付加反応がヒドロシリル化反応である場合、シランは、不飽和構成要素を含有していてもよいが、好ましくは少なくとも1つのSi−H基を含有する。代替的に、各シランが1つ又は複数のSi−H基を含有する。1つ又は複数のSi−H基に加え、好ましいシランは、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシマト基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等を含んでいてもよい。これらのうち、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシマト基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基が、好ましい。水素化ケイ素の実用的な例は、ハロシランである、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン及びフェニルジクロロシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン及びフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルジアセトキシシラン及びフェニルジアセトキシシラン等のアシルオキシシラン;並びに、ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン及びビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランの等のケトキシマトシランである。それらのうち、ハロシラン及びアルコキシルシランが好ましい。特に好ましいシランとしては、例えば、メチルジメトキシシラン(H−Si(−CH3)(−OCH32)が挙げられる。
【0085】
当然のことながら、シラン(a)(ii)と(b)との間の付加反応は、ポリマーの鎖伸長プロセスをもたらすか、又は、予め必要とされた末端基を用いてポリマーを末端ブロック化する手段としてもたらされ、この場合、伸長剤は、シラン(a)(ii)と組み合わせて、即ち、付加反応直前に添加されてもよく、若しくは、ポリマー(b)の重合中に存在していてもよく、よってこのような場合には伸長剤の存在下で重合された伸長されたポリマー(b)にシラン(a)(ii)を添加する。
【0086】
オルガノポリシロキサンモノマー(a)(i)は代替的に、直鎖状モノマーの形態であるが幾らか分岐を有していてもよく、式(1a)
R’a'SiO4-a'/2 (1a)
(式中、各R’は、同一であっても異なっていてもよく、1個〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1個〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基、又は最大18個の炭素原子を有する炭化水素オキシ基を示し、a’は、平均して、1〜3、代替的に1.8〜2.2の値を有する)の単位を含むオルガノポリシロキサンである。代替的に、各R’は、同一又は異なっており、限定するものではないが、水素;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシル等のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチル等のアリール;並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニル等のハロゲン化炭化水素基によって例証される。代替的には、R’基の少なくとも幾つかが極性置換を含有する。代替的には、これらポリジオルガノシロキサンは、ポリジアルキルシロキサン又は代替的にポリジメチルシロキサンである。(a)がオルガノポリシロキサンモノマーである場合、該オルガノポリシロキサンモノマーは、付加反応プロセスを介して、(b)の少なくとも2つの基、典型的にはその終端基と反応性である少なくとも1つの基を有していなければならない。代替的に、オルガノポリシロキサン(a)(i)が、1分子当たり少なくとも1つのSi−H、代替的には1分子当たり少なくとも2つのSi−H基を含む。代替的に、オルガノポリシロキサン(a)(i)は、式H(R’’)2SiO1/2(式中、各R’’は、炭化水素基若しくは置換炭化水素基であり、代替的にはアルキル基である)のシロキサン基で末端ブロック化される。代替的に、オルガノポリシロキサン(a)(i)は、25℃で10mPa・s〜5000mPa・sの粘度を有する。
【0087】
オルガノポリシロキサンポリマー(b)は代替的に、式(1b)
R’’’a'SiO4-a'/2 (1b)
(式中、各R’’’は、同一であっても異なっていてもよく、1個〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1個〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基、又は最大18個の炭素原子を有する炭化水素オキシ基を示し、a’は先に記載した通りである)の単位を含む、直鎖状及び/又は分岐状オルガノポリシロキサンである。R’’’基が水素基となり得ないことが好ましい。代替的に、各R’’’は、同一又は異なっており、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシル等のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチル等のアリール;並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、及びジクロロフェニル等のハロゲン化炭化水素基によって例証される。
【0088】
オルガノポリシロキサンポリマー(b)は、任意の好適なオルガノポリシロキサンポリマー主鎖を含み得るが、代替的には線形又は分岐状であり、付加反応の経路を介して、オルガノポリシロキサン又はシラン(a)中の上述の基と反応する少なくとも1つ、代替的には少なくとも2つの置換基を含む。好ましくは、ポリマー(b)の上記付加反応性の置換基が終端基である。オルガノポリシロキサン又はシラン(a)が少なくとも1つのSi−H基を含む場合、オルガノポリシロキサンポリマー(b)上の好ましい置換基は、これらSi−H基と相互作用するように設計されており、代替的には不飽和基(例えば、アルケニル終端、例えば、エテニル終端、プロペニル終端、アリル終端された(CH2=CHCH2−))であるか、又はCH2=C(CH3)−CH2−基等のアクリル若しくはアルキルアクリルで終端されている。アルケニル基の代表的な非限定的な例は、下記の構造:H2C=CH−、H2C=CHCH2−、H2C=C(CH3)CH2−、H2C=CHCH2CH2−、H2C=CHCH2CH2CH2−、及びH2C=CHCH2CH2CH2CH2−によって示される。アルキニル基の代表的な非限定的な例は、下記の構造:HC≡C−、HC≡CCH2−、HC≡CC(CH3)−、HC≡CC(CH32−、HC≡CC(CH32CH2−によって示される。代替的には、不飽和有機基が、アクリレート、メタクリレート等の有機官能性炭化水素、例えば、アルケニル基及び/又はアルキニル基であり得る。アルケニル基が特に好ましい。
【0089】
オルガノポリシロキサン又はシラン(a)が付加反応性基を1つだけ含み、(b)がオルガノポリシロキサン又はシラン(a)と反応する2つの付加反応性基を含む場合、得られる生成物が、「ABA」タイプのポリマー生成物となる。一方で、オルガノポリシロキサン又はシラン(a)が2つの付加反応性基を含み、(b)がオルガノポリシロキサン又はシラン(a)と反応する2つの付加反応性基を含む場合、2つの構成成分間の相互作用によって(AB)nブロックコポリマーがもたらされ、ここで、ポリマーの長さは、2つの構成要素の相対量によって大きく左右される。
【0090】
当然のことながら、ポリマー主鎖中に有機基を含有するオルガノポリシロキサンポリマーを使用することによって、又は、オルガノポリシロキサンポリマー(b)を、例えばアルケニル終端ポリエーテルに置き換えることによって、シリコーン有機コポリマーを調製するのに、このヒドロシリル化経路を利用してもよい。それゆえ、本開示の明示による線形非加水分解性(AB)nブロックコポリマーは、アルケニル終端ポリエーテルと、SiH終端ジアルキルシロキサン流体との触媒によるヒドロシリル化によって調製することができる。結果として得られるコポリマーは、炭素−酸素結合(即ち、プロピレンオキシ基)にケイ素を介して結合したポリオキシアルキレンブロックの組合せであり、末端ブロック化基は、アリル基、プロペニル基、及び/又は水素(ジアルキル)シロキシ基から成る群から選択される(存在する構成要素の相対量に依存する)。
【0091】
選ばれる付加反応がヒドロシリル化反応である場合、任意の好適なヒドロシリル化触媒を利用してもよい。このようなヒドロシリル化触媒は、SiH終端オルガノポリシロキサンのケイ素結合した水素原子と、ポリオキシエチレン上の不飽和炭化水素基との反応を促進させる任意の金属含有触媒によって例証される。金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム又は白金によって例証される。
【0092】
ヒドロシリル化触媒は、下記のもの:塩化白金酸、アルコール修飾塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、炭素担体上に吸着された白金微粒子、Pt(Al23)等の金属酸化物担体上に担持された白金、白金黒、白金アセチルアセトネート、白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)、PtCl2、PtCl4により例示されるハロゲン化第一白金、Pt(CN)2、ハロゲン化第一白金と、エチレン、プロピレン及びオルガノビニルシロキサンにより例示される不飽和化合物との錯体、スチレンヘキサメチル二白金によって例証される。このような貴金属触媒は、米国特許第3,923,705号に記載されており、白金触媒を示すように参照により本明細書中に援用される。1つの好ましい白金触媒は、Karstedtの触媒であり、これは、Karstedtの米国特許第3,715,334号及び同第3,814,730号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。Karstedtの触媒は、トルエン等の溶媒中に1重量%の白金を典型的に含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。別の好ましい白金触媒は、塩化白金酸と、終端脂肪族不飽和を含有する有機ケイ素化合物との反応生成物である。これは、米国特許第3,419,593号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。触媒として最も好ましいものは、例えば米国特許第5,175,325号に記載されているような、塩化第一白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和錯体である。
【0093】
RhCl3(Bu2S)3等のルテニウム触媒、並びにルテニウム1,1,1−トリフルオロアセチルアセトネート、ルテニウムアセチルアセトネート及びトリルテニウムドデカカルボニル又はルテニウム1,3−ケトエノレート等のルテニウムカルボニル化合物を代替的に使用してもよい。
【0094】
本開示における使用に好適な他のヒドロシリル化触媒としては、例えば、[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX43[(R32S]3、(R23P)2Rh(CO)X4、(R23P)2Rh(CO)H、Rh24244、HaRhbオレフィンcCld、Rh(O(CO)R33-n(OH)n(式中、X4は、水素、塩素、臭素又はヨウ素であり、Y4は、メチル又はエチル等のアルキル基、CO、C814又は0.5 C812であり、R3は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、R2は、アルキル基、アリール基又は酸素置換基であり、aは0又は1であり、bは1又は2であり、cは1〜4の整数(両端を含む)であり、dは2、3又は4であり、nは0又は1である)等のロジウム触媒が挙げられる。また、Ir(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z2)(En)22、又は(Ir(Z2)(ジエン)]2(式中、Z2は、塩素、臭素、ヨウ素又はアルコキシであり、Enはオレフィンであり、ジエンはシクロオクタジエンである)等の任意の好適なイリジウム触媒を使用してもよい。
【0095】
組成物百万部当たりわずか0.001重量部(ppm)の元素白金族金属に相当する量でヒドロシリル化触媒を本組成物に添加してもよい。代替的には、組成物中のヒドロシリル化触媒の濃度が、元素白金族金属の少なくとも1百万分率に相当する値をもたらし得るものである。元素白金族金属の約3百万分率〜50百万分率に相当する値をもたらす触媒濃度が一般的に好ましい量である。
【0096】
典型的に、(a)が少なくとも2つのSi−H基を有する場合、典型的に、プロセスは、(a)と(b)とのおよそ1:1のモル比を使用して行われる。しかしながら、過剰な(a)又は(b)を用いてプロセスを行うことによっても有用な材料は調製され得るが、これは、材料のあまり効率的でない使用と見なされるであろう。典型的に、不飽和を含有する材料(b)は、反応におけるSi−Hの全ての消費を確実なものとするようにわずかに過度で使用される。本開示において使用されるポリマー(b)が代替的に不飽和末端基で終端されるため、この経路を介してポリマーを生成する場合に、末端ブロック化剤が典型的に必要とされない。しかしながら、必要であれば、末端ブロック化剤を利用してもよい。
【0097】
任意にヒドロシリル化経路を重合に利用する場合には、好適なヒドロシリル化触媒阻害剤が必要とされることがある。任意の好適な白金族タイプの阻害剤を使用してもよい。1つの有用なタイプの白金触媒阻害剤は、米国特許第3,445,420号に記載されており、或る特定のアセチレン阻害剤及びそれらの使用を示すように参照により本明細書中に援用される。好ましい種類のアセチレン阻害剤は、25℃において白金をベースとする触媒の活性を抑えるアセチレンアルコール、とりわけ、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び/又は1−エチニル−2−シクロヘキサノールである。第2のタイプの白金触媒阻害剤は、米国特許第3,989,667号に記載されており、或る特定のオレフィンシロキサン、それらの調製、及びそれらの白金触媒阻害剤としての使用を示すように参照により本明細書中に援用される。第3のタイプの白金触媒阻害剤としては、1分子当たり3つ〜6つのメチルビニルシロキサン単位を有するポリメチルビニルシクロシロキサンが挙げられる。
【0098】
これらのヒドロシリル化触媒を含有する組成物は典型的に、特に阻害剤を使用していれば、70℃以上の温度で加熱して実用的な速度で硬化することを要する。室温硬化は典型的に、架橋剤及び阻害剤が2つのパートのうちの1つのパートの中にあり、かつ白金が他のパートの中にある、2パート系の使用により、このような系を用いて達成される。白金の量を増加すると室温で硬化することが可能である。白金触媒阻害剤の最適濃度は、高温で本組成物を硬化させるに必要とされる時間間隔を過剰に延ばすことなく、常温での望ましい貯蔵安定性又はポットライフをもたらすものである。この量は広く様々な値をとり、使用される特定の阻害剤に応じて決まる。白金1モル当たり阻害剤1モル程度の低い阻害剤濃度は、例によっては、約70℃を上回る温度における望ましいレベルの貯蔵安定性及び十分に短い硬化期間をもたらすこととなる。他の場合では、白金1モル当たり、最大10モル、50モル、100モル、500モル、又はこれよりも大きい阻害剤濃度が必要とされ得る。所定の組成物中の特定の阻害剤に関する最適濃度は、日常的な実験作業により求めることができる。
【0099】
このような反応を高めると知られている追加成分を、ヒドロシリル化反応に添加することができる。これらの成分としては、白金をベースとする触媒と組み合わせて緩衝効果を有する酢酸ナトリウム等の塩が挙げられる。
【0100】
このタイプの重合に関して、使用されるヒドロシリル化触媒の量は、室温又は室温より高い温度において:
(a)少なくとも1つ、代替的には少なくとも2つのSi−H基を含有していなければならない(i)オルガノポリシロキサン又は(ii)シランと;
(b)1つ又は複数のオルガノポリシロキサンポリマー又は各分子終端に不飽和炭化水素基を有するポリオキシエチレン等のそれに関する(therefore)代替物との
間の反応を加速させるに十分な量さえ存在すれば、狭く限定されることはない。この触媒の実際の量は、利用される特定の触媒に応じて決められ、容易に予測可能なものではない。しかしながら、白金含有触媒に関して、その量は、構成成分(a)及び構成成分(b)百万重量部毎に白金1重量部程度の少量であり得る。触媒は、構成成分(a)及び構成成分(b)百万部当たり10重量部〜120重量部の量で添加することができるが、典型的には、(a)及び(b)百万部当たり10重量部〜60重量部の量で添加される。
【0101】
適切な場合には、ヒドロシリル化経路を介して得られるポリマーを、硬化剤としてオルガノ水素シロキサンと組み合わせてヒドロシリル化反応触媒により、硬化及び/又は架橋することもできるが、但し、生成される各ポリマー分子は、オルガノ水素シロキサンと架橋するのに好適な少なくとも2つの不飽和基を含有するものとする。本組成物の硬化を達成するために、オルガノ水素シロキサンは、1分子当たり2つより多くのケイ素結合した水素原子を含有していなければならない。オルガノ水素シロキサンは、例えば、1分子当たり約4個〜20個のケイ素原子を含有し、25℃で最大約10Pa・sの粘度を有し得る。オルガノ水素シロキサン中に存在するケイ素結合した有機基は、別の状況でエチレン不飽和又はアセチレン不飽和を含まない、1個〜4個の炭素原子の置換アルキル基及び非置換アルキル基を含み得る。
【0102】
(IV)鎖伸長
この場合、予め調製した最終ポリマー組成物中に鎖伸長剤を添加するよりもむしろ、鎖伸長重合工程中、伸長剤をポリマー中に混合する。典型的に、ポリマー出発原料は、選ばれた鎖伸長材料との相互作用に好適な末端基を有するオルガノポリシロキサンである。典型的に、ポリマー末端基は、加水分解可能であるか又は付加反応(典型的に、ヒドロシリル化)に好適であるかのいずれかであり、鎖伸長材料は、ポリマーを鎖伸長させる好適な反応性基を有することに基づき選ばれる。ヒドロキシル末端基及び/又は加水分解性末端基を有する鎖伸長ポリマーに好ましい鎖伸長材料は、これまでに記載したようなものである。
【0103】
ヒドロシリル化経路を介する付加反応に好適なアルケニル基又はSi−H基(典型的に、末端基)を有する予め形成されたポリマーに関して、鎖伸長剤は、選ばれたポリマー上の付加反応性基それぞれと付加反応する2つの基を含有するであろう。
【0104】
このような鎖伸長剤としては、例えば:
・2つのアルケニル基を含むシラン、ジヒドロシラン、2〜25の重合度及び1終端基当たり少なくとも1つのSi−アルケニル結合を有するポリジアルキルシロキサン、
・2〜25の重合度及び1終端基当たり少なくとも1つのSi−H結合を有するポリジアルキルシロキサン、ここで、各アルキル基は独立して1個〜6個の炭素原子を含む;
・一般式
【0105】
【化4】

【0106】
(式中、Rはこれまでに記載した通りであり、jは1、2又は3であり、kは0又は1であり、j+kは2又は3である)を有する有機ケイ素化合物
が挙げられ得る。
【0107】
これらは、下記式(ViMe2SiO)2SiVi(OMe)1、(ViMe2SiO)1SiVi(OMe)2、(ViMe2SiO)2SiVi(OEt)1、(ViMe2SiO)1SiVi(OEt)2、(ViMe2SiO)3Si(OMe)1、(ViMe2SiO)2Si(OMe)2、(ViMe2SiO)3Si(OEt)1、及び(ViMe2SiO)2Si(OEt)2を有する化合物により例示される。本明細書中で使用される場合、Viはビニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0108】
鎖伸長反応を触媒するのに使用される触媒は、行うべき反応により定められる。起こる反応が縮合反応である場合には、これまでに記載したような任意の好適な縮合触媒を利用し得る。起こる反応がヒドロシリル化反応である場合には、これまでに記載したような任意の好適なヒドロシリル化触媒を利用し得る。
【0109】
必要とされる場合には、ポリマーが加水分解性終端基を含有し、縮合に関して上記したような末端ブロック化剤を利用して、適切な終端基を得てもよい。必要とされる場合には、ポリマーが付加反応可能な終端基を含有し、重付加に関して上記したような末端ブロック化剤を利用して、適切な終端基を得てもよい。
【0110】
プロセスは、任意の好適な混合機においてバッチ方式で又は連続的に行うことができる。重縮合の場合には、例えば、メチルトリメトキシシランのような加水分解性シランを用いて化学的に乾燥させることによって、又は、エバポレーション技法、凝集技法若しくは遠心技法を用いた物理的な分離によって、発生した水を除去することができる。
【0111】
鎖伸長は、好ましいバッチモード又は連続モードの操作に関するプロセスに好適な任意の温度及び圧力で行われ得る。それゆえ、ホスファゼンを触媒とする方法の場合、重合は、50℃〜200℃、又は代替的には80℃〜160℃の温度で起こり得る。さらに、縮合中に形成される副生成物、例えば、水、HCl又はアルコールの除去を促進させるために、有機ケイ素化合物の縮合及び/又は平衡化を80kPa未満の圧力で行ってもよい。縮合副生成物の除去に関する代替方法としては、例えば、メチルトリメトキシシラン(適切な場合)のような加水分解性シランを用いて化学的に乾燥させることによる、又は、エバポレーション技法、凝集技法若しくは遠心技法を用いた物理的な分離による除去が挙げられる。
【0112】
プロセスは、任意の好適な混合機においてバッチ方式で又は連続的に行うことができる。重縮合の場合には、例えば、メチルトリメトキシシランのような加水分解性シランを用いて化学的に乾燥させることによって、又は、エバポレーション技法、凝集技法若しくは遠心技法を用いた物理的な分離によって、発生した水を除去することができる。
【0113】
また、当然のことながら、上記に従う2つの異なる反応の組合せを使用して、本発明によるポリシロキサンポリマーを生成してもよい。例えば、開環/平衡化反応後に、最終的なポリシロキサンポリマーを得るのに際して、不活性流体の存在下、及び不活性流体混合物の存在下の両方で、重付加反応を行ってもよい。
【0114】
本発明のプロセス中の重合度は、分子量が増大した生成されるオルガノポリシロキサンが、出発オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)の少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍の重量平均分子量を有するようなものであることが好ましい。Mwはゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定することができる。分子量が増大した生成されるオルガノポリシロキサンのMwは、好ましくは少なくとも10000、より好ましくは少なくとも100000であり、1000000以上と大きくてもよい。
【0115】
典型的に、乳化前のポリシロキサンポリマーと不活性流体との混合物の粘度は、25℃で100mPa・s〜100000mPa・sの粘度範囲内であり、代替的には、エマルション中のポリシロキサンポリマーの粘度は25℃で1000mPa・sより大きい。
【0116】
本開示では1つ又は複数の界面活性剤を使用することができる。これらは、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性のタイプを含む好適な種類の界面活性剤から選択され得る。制限するものではないが、2つの界面活性剤の組合せは、安定なエマルションを生成する上でより効果的であり、この場合、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の組合せ、カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の組合せ、又は2つの非イオン性界面活性剤の組合せが好適である。一般原則は、油相により溶解性の1つの界面活性剤(低親水性−親油性バランス(HLB))と、水相により溶解性の別の界面活性剤(高HLB)とを有し、組み合わされた親和性が水性相に対してより高い(全HLBが10より大きい)こととする。
【0117】
上記に適合する任意の好適な界面活性剤又は界面活性剤の組合せを利用し得る。界面活性剤は概して、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤であり得るが、本発明のプロセスを行う全ての手順が、全ての界面活性剤と共に使用され得るわけではない。使用される界面活性剤の量は、界面活性剤に応じて様々な値をとる。マイクロエマルションでは、これは、油相の重量までか又はこれよりもさらに大きいものとなり得るが、界面活性剤の量が大きいと、商業における生成物の経済的な価値が低下する。一般的には、目標とするエマルションの粒径を得るのに可能な限り少ない量で界面活性剤を使用する。好ましくかつ実用的な量は、ポリシロキサンと不活性流体とを含む油相の重量に基づき5%〜50%である。
【0118】
非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドと、C12~18アルコール又は代替的にはC12~16アルコール等の長鎖脂肪アルコール又は脂肪酸との縮合体、エチレンオキシドとアミン又はアミドとの縮合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、エチレンとプロピレンオキシドとの縮合生成物、グリセロール、スクロース、ソルビトールのエステル、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フッ素系界面活性剤、脂肪アミンオキシド、ポリエチレングリコール長鎖(12〜18C、代替的には12〜16C)アルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー、及びアルキル多糖、例えば、米国特許第5,035,832号に記載されているような構造R24−O−(R25O)s−(G)tの物質(式中、R24は、線形若しくは分岐状アルキル基、線形若しくは分岐状アルケニル基、又はアルキルフェニル基を表し、R25はアルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、sは0又は正の整数を示し、tは正の整数を表す)が挙げられるが、これらに制限されない。非イオン性界面活性剤は加えて、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルメチルエーテル等のポリマー界面活性剤を含む。
【0119】
好適な市販の非イオン性界面活性剤の代表例としては、Uniqema(ICI Surfactants)(Wilmington, Delaware)によりBRIJ(登録商標)という商品名で販売されているポリオキシエチレン脂肪アルコールが挙げられる。幾つかの例は、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして知られるエトキシル化アルコールであるBRIJ(登録商標)35、及びポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして知られる別のエトキシル化アルコールであるBRIJ(登録商標)30である。幾つかのさらなる非イオン性界面活性剤としては、Dow Chemical Company(Midland, Michigan)によりTERGITOL(登録商標)という商標で販売されているエトキシル化アルコールが挙げられる。幾つかの例は、エトキシル化トリメチルノナノールとして知られるエトキシル化アルコールであるTERGITOL(登録商標)TMN−6;並びに、種々のエトキシル化アルコール、即ち、TERGITOL(登録商標)15−S−5、TERGITOL(登録商標)15−S−12、TERGITOL(登録商標)15−S−15、及びTERGITOL(登録商標)15−S−40という商標で販売されているC12〜C14第二級アルコールエトキシレートである。ケイ素原子を含有する界面活性剤も使用することができる。本開示による他の好適な非イオン性界面活性剤は、ALFONIC(登録商標)、GENAPOL(登録商標)、LUTENSOL(登録商標)、NEODOL(登録商標)、RENEX、SOFTANOL、SURFONIC(登録商標)、TRYCOL及びVOLPOという名称で市販されている。
【0120】
好適な両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩及びベタインが挙げられる。具体例としては、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシ硫酸コカミドプロピル、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノ酪酸、及びイミダゾリニウムカルボキシル化合物が挙げられる。好適な両性界面活性剤の代表例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩及びベタインが挙げられる。
【0121】
カチオン性界面活性剤の例としては、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、各アルキル置換基中に少なくとも8個の炭素原子を有するアルキルトリメチルアンモニウム及びジアルキルジメチルアンモニウムハライド又はジアルキルジメチルアンモニウムアセテート又はジアルキルジメチルアンモニウムヒドロキシド)、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化獣脂トリメチルアンモニウム、及び水酸化ココトリメチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム、並びにこれらの物質の対応する塩、脂肪アミン及び脂肪酸アミド並びにそれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリン及びポリプロパノールポリエタノールアミンの第四級アンモニウム塩基が挙げられるが、これらに制限されない。好適なカチオン性界面活性剤の他の代表例としては、アルキルアミン塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩が挙げられる。
【0122】
好適なアニオン性界面活性剤の例としては、スルホン酸(sulfonic acids)及びそれらの塩(アルキル置換基中に少なくとも6個の炭素原子を有する、アルキル、アルキルアリール、アルキルナフタレン及びアルキルジフェニルエーテルスルホン酸並びにそれらの塩を含む)、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩又はアミン塩;ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの硫酸エステル;長鎖カルボン酸界面活性剤及びそれらの塩(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、並びにそれらのアルカリ金属塩及びアミン塩)、硫酸ラウリル等の硫酸アルキル、アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー等のポリマー、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸及びミリスチルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及び塩;モノアルキルポリオキシエチレンエーテルの硫酸エステル;アルキルナフチルスルホン酸;アルカリ金属スルホレシネート(sulforecinates)、ヤシ油酸のスルホン化モノグリセリド等の脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル、スルホン化一価アルコールエステルの塩、アミノスルホン酸のアミド、脂肪酸ニトリルのスルホン化生成物、スルホン化芳香族炭化水素、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、オクタヒドロアントラセンスルホン酸ナトリウム、アルカリ金属アルキルスルフェート、硫酸エステル、及びスルホン酸アルカリール(alkarylsulfonates)が挙げられるが、これらに制限されない。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属セッケン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルキルアリール、長鎖脂肪アルコールスルフェート、オレフィンスルフェート及びオレフィンスルホネート、硫酸モノグリセリド、硫酸エステル、スルホン化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、アルキルタウレート、及びアルキルサルコシネートが挙げられる。好ましいアニオン性界面活性剤の一例は、Bio−Soft(登録商標)N−300という名称で市販されている。Bio−Soft(登録商標)N−300は、Stephan Company(Northfield, Illinois)により販売されているトリエタノールアミン線形アルキレートスルホネート組成物である。
【0123】
上記の界面活性剤は、個々に又は組み合わせて使用してもよい。
【0124】
本開示の好ましい一実施形態では、重合触媒が、さらには、乳化プロセスに関係のある界面活性剤又界面活性剤のうちの1つとなることを前提として選択される。界面活性剤として作用し得る特に好ましい触媒群は、例えば、DBSA等の酸性縮合触媒である。
【0125】
本開示によるマイクロエマルション中に使用される界面活性剤の特定量は、重要なものでないが、安定なマイクロエマルションをもたらすようなものとすべきである。概してこれは、マイクロエマルション中の油−水液滴の界面領域を覆うが、単層による被覆をもたらすに過ぎない十分量の界面活性剤分子の量でなければならない。理論に拘束されるものではないが、概して、140ナノメートル未満の粒径を有するマイクロエマルションにするためには、油相(ポリシロキサン+不活性流体)の重量に基づき2wtパーセント〜100wtパーセント、代替的には5%〜50%、又は代替的には20%〜50%の界面活性剤が好適である。当業者は、粒径が小さいほど、より多くの界面活性剤が必要となることを認識している。
【0126】
本開示によるマイクロエマルションは、不活性流体の存在下における、シロキサン又はシランを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合から得られるポリシロキサンを含有する油相と、上述の不活性流体及び1つ又は複数の界面活性剤とを均質になるまで混合し、混合物を攪拌しながら、油相と界面活性剤とを含有するこの混合物に水を添加して、水中油型マイクロエマルションとすることによって生成される。代替的には、使用される界面活性剤(単数又は複数)を初めに、油相に添加する適切な量の水中に溶解又は分散してもよく、攪拌しながら、界面活性剤を含有する水相を油相に添加して、水中油型マイクロエマルションとする。その後、さらなる水を添加してマイクロエマルションを希釈してもよい。さらに代替的には、2種類以上の界面活性剤を使用する場合、より油溶性の界面活性剤を初めに油相と組み合わせ、より水溶性の界面活性剤を水相と組み合わせてもよく、その後、攪拌しながら水相を油相に添加すると、水中油型マイクロエマルションとなる。
【0127】
本発明による組成物を乳化するのに用いられる攪拌又は均質化は、任意の好適な機械的手段、例えばホモジナイザ、ソノレータ、ローターステータ、コロイドミル等の使用によるものであり得る。
【0128】
如何なる特定のプロセス条件にも拘束されることを望むものではないが、当業者は、或る特定の様式、並びに油相、界面活性剤及び水相の量的な組合せが、可能な限り最小粒径のエマルションをもたらす上で他のものよりも効果的に作用することを認識している。マイクロ乳化パートに関する本開示による好ましい方法は、下記工程を含む。
i)ポリシロキサンと不活性流体とを含有する油相と、界面活性剤(複数可)とを組合せ、均質になるまで混合する
ii)十分量の水を、界面活性剤(複数可)を含有する油相に添加し、強力な攪拌により内容物を混合して、半透明又は透明な混合物を得る
iii)十分量の水中に、上記の半透明又は透明な混合物を分散させて、水中油型マイクロエマルションとする
iv)任意に、所望の油相含有量(固形分(solid content))に達するまでさらなる水でマイクロエマルションを希釈する。
【0129】
工程ii)中、水の「十分量」は、半透明又は透明な混合物をもたらすと考えられる量である。これよりも少なければ、不透明な混合物が生じると考えられる。まさしく十分であるが、油相、界面活性剤及び水の混合物を半透明から透明の状態にするに過ぎない水の量に照準を定める必要がある。この半透明又は透明な混合物は典型的に、高粘度又はゲル状のものである。概して、水の量は、油相(界面活性剤を含まない)の重量に基づき5%〜100%である。澄んだ油濃縮物を形成するのに必要な水の量は、使用される具体的なポリオルガノシロキサン及び界面活性剤、並びにそれらの相対量に応じて決まる。典型的に、半透明の油濃縮物を形成するのに必要とされる水の量は、油相100重量部当たり5重量部〜50重量部の範囲内であろう。具体的なポリオルガノシロキサン及び界面活性剤の組合せは、半透明の油濃縮物を形成するのに、これらの一般的なガイドラインが示唆するよりも多く又はそれよりも少ない水を必要とすることがある。「強力な攪拌」は、数ある種々の混合装置、例えば、インペラ型ミキサ、高速スピニングカップ及びローターステータ剪断装置によってもたらすことができる。
【0130】
工程iii)中、工程ii)から得られる半透明又は透明な混合物は全体として又は徐々に、水相を一定に攪拌しながら、十分量の水に添加することができる。代替的には、工程ii)からの半透明又は透明な混合物に水を急激に添加した後に、半透明又は透明な混合物が全て完全に水中に分散するまで、結果として得られる内容物を混合する。得られるエマルションが水中油型であるのに十分な水さえ存在すれば、工程ii)からの半透明又は透明な混合物を分散させる水の正確な量は重要でなく、半透明又は透明な混合物を水で滴定すること(titrating)は避けるべきである。
【0131】
最終的なマイクロエマルションは、エマルションの総重量に基づき5重量パーセント〜55重量パーセントの油相を含有し得る。典型的に、本開示のマイクロエマルションは、10重量パーセント〜40重量パーセントの油相を含有する。油相含有量が少ないマイクロエマルションを調製することはできるが、このようなエマルションは経済的に魅力がないことが分かっている。
【0132】
代替的に、本発明によるマイクロエマルションは、ポリシロキサンと不活性流体とを含有する油相、界面活性剤(複数可)及び水を組み合わせ、界面活性剤の曇り点よりも高い温度に、油と界面活性剤と水との混合物を加熱して、油中水型エマルションを生成し、続いて油中水型エマルションを冷却し、相転移を誘導して水中油型マイクロエマルションとすることによって調製することができる。
【0133】
一実施形態では、アミノ官能性ポリシロキサンを調製する本開示によるプロセスが提供されており、該プロセスは、不活性流体の存在下で、アミノアルキル基と、Siに結合した少なくとも1つのアルコキシ基とを含有するアミノシラン(A)と、カルボン酸(C)及びシラノール官能性ポリシロキサン(B)とを反応させることを含み、カルボン酸(C)の量は、(C)のカルボン酸基と、アミノシラン(A)のアミノ基とのモル比が1:1未満となるようなものであり、シラノール官能性ポリシロキサン(B)の量は、(B)のシラノール基と、アミノシラン(A)のSiに結合したアルコキシ基とのモル比が1:1より大きくなるようなものであり、これにより、アミノシラン(A)は、(A)と(B)との間のシロキサン縮合重合反応のための触媒として作用するカルボン酸塩へと少なくとも部分的に変換される。
【0134】
本開示で提供されるマイクロエマルションは概して、クリーミング又は沈降に対して、標準エマルションよりも安定であり、澄んだパーソナルケア製品又は化粧品等の多くの用途において、必要とされる光学的な透明度をもたらす。織布用途等の他の用途では、基材中へのエマルションの堆積及び浸透が、粒径が小さいことによりマイクロエマルションの使用によって改善される。
【実施例】
【0135】
当業者による本開示の理解がより容易なものとなるように、以下の実施例を提示する。特に指定のない限り、部及びパーセントは全て重量によるものであり、粘度は全て25℃におけるものである。ポリマー生成物の粘度測定は、10rpmの速度でBrookfieldの粘度計、スピンドル6を用いて行った。
【0136】
実施例1
パートA
11cmのTeflonパドルが取り付けられた攪拌棒、熱電対及び冷却器を備える3リットル容の三つ口丸底フラスコ中で、986.4グラムのデカメチルシクロペンタシロキサン、60の重合度の8.4グラムのトリメチルシロキシ終端メチル水素シロキサン、5.10グラムのヘキサメチルジシロキサン、及び100グラムのC12〜15アルキルベンゾエートを混合した。これ以降、混合物を窒素ブランケットで覆った。この混合物に、シリンジを介して1グラムのトリフルオロメタンスルホン酸を添加した。内容物を65℃に加熱し、4時間300RPMで一定に攪拌しながらこの温度に保った。次に、40グラムの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を添加し、混合物を20℃に冷却した。この混合物を10ミクロンの濾紙を用いて濾過し、NaHCO3を除去した後、120℃に加熱し、真空下で揮散させて揮発性環状シロキサンを除去した。これにより、29Si NMRによって測定した場合、348の重合度の90wt%のシロキサンポリマーと、不活性流体である10wt%のC12〜15アルキルベンゾエートとを含有する澄んだ混合物が得られた。
【0137】
パートB
11cmのTeflonパドルが取り付けられた攪拌棒、熱電対、冷却器を備える1リットル容の三つ口丸底フラスコ中で、195グラムのパートAからの生成物、22.2グラムのポリ((エチレンオキシド)10(プロピレンオキシド)4)モノアリルエーテル、10グラムのイソプロパノール、及び0.1グラムの酢酸ナトリウムを混合した。混合物を300RPMで攪拌し、窒素ブランケット下で70℃に加熱した。この混合物に、1%の元素白金を含有する0.22グラムのDow Corningの営業秘密である白金錯体を添加した。反応は発熱性のものであった。1時間15分間一定に攪拌しながらこの混合物を84℃に維持し、その後、40℃に冷却した。真空を適用して、混合物中のイソプロパノールを揮散除去(strip off)した。最終生成物は、91wt%のトリメチルシロキシ終端ポリジメチルメチル(プロピル(ポリ(EO)(PO)アセテート)シロキサンと、不活性流体である9wt%のC12〜15アルキルベンゾエートとを含有する。
【0138】
パートC
12グラムのパートBからの生成物に、2.5グラムのGenapol(登録商標)UD050、3.5グラムのGenapol(登録商標)UD110、及び5.0グラムの水を添加した。この混合物を、30秒間3500RPMでSpeedMixer(商標)(DAC 150 FVZ)において混合した。次に、12グラムの水を2回に分けて混合物に添加し、各添加後に、上述と同じ混合手順を行った。これにより、30.8ナノメートル付近の直径を中心とする単峰性(mono-modal)の粒径分布を有し、体積モードでNanotrac(商標)粒径分析器によって測定した場合に、粒子の90%が46.7ナノメートル未満の範囲にある、澄んだ(透明な)水中油型マイクロエマルションが得られた。
【0139】
パートD
10グラムのパートBからの生成物に、2.0グラムのHostapur(登録商標)SAS−30(30%活性界面活性剤)、3.0グラムのGenapol(登録商標)UD050、及び3.5グラムの水を添加した。この混合物を、30秒間3500RPMでSpeedMixer(商標)(DAC 150 FVZ)において混合した。次に、12グラムの水を2回に分けて混合物に添加し、各添加後に、上述と同じ混合手順を行った。これにより、15.4ナノメートル付近の直径を中心とする単峰性の粒径分布を有し、体積モードでNanotrac(商標)粒径分析器によって測定した場合に、粒子の90%が25.1ナノメートル未満の範囲にある、無色透明の(透明な)水中油型マイクロエマルションが得られた。
【0140】
本実施例では、開環/平衡化(パートA)後に重付加(パートB)を介して、有機不活性流体(C12〜15アルキルベンゾエート)の存在下でポリシロキサンを重合させた。その後、不活性流体を保存する得られるポリマー混合物を、非イオン性界面活性剤を用いてマイクロエマルションへと乳化させ(パートC)、またアニオン性界面活性剤を用いてマイクロエマルションへと乳化させた(パートD)。本実施例において不活性流体を使用することの利得は、ポリシロキサンの重合度が高く、それゆえ粘度が高いことから、揮発分の揮散を容易なものとしかつ乳化を容易なものとするのに十分に低い、パートAにおける生成物の粘度が維持されることであった。さらに、不活性流体は、多くの場合化粧品において皮膚軟化剤又は保湿剤として使用されるため、それ自体が付加的な性能の利得をもたらし得る。
【0141】
実施例2
25℃で70mPa・sの粘度を有する80gのジメチルヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサン、20gのHydroseal(登録商標)G 250H、3gのオクタン酸、及び6gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシランの混合物を、24時間室温(RT)でマグネチックスターラを用いて混合した。9gのLutensol(登録商標)T08を、15gの上記の混合物に添加し、Hausschildのデンタルミキサにおいて20秒間3000rpmで混合した。さらに1.0gの水を添加し、同じ条件下で混合を繰り返した。水のさらなる添加及びその後の混合を、合計で26gの水が添加されるまで行うと、30%の活性含有率(active content)を有する澄んだゲルが得られた。3%の活性含有率への水でのさらなる希釈によって、わずかに青みがかった澄んだエマルションが得られ、この粒径は、D(v、0.1)nm=61.1、D(v、0.5)nm=100.2(体積モードでNanotrac粒径分析器により測定)であった。
【0142】
実施例3
25℃で70mPa・sの粘度を有する80.0gのジメチルヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサン、20gのHydroseal(登録商標)G 250H、3.1gのオクタン酸、及び6.0gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシランの混合物を、24時間50℃の温度でマグネチックスターラを用いて混合した。得られた均質な混合物の粘度は25℃で7400mPas(20RPMの速度でBrookfieldのRVDV−I+粘度計スピンドル5を使用)であった。
【0143】
6.1gのLutensol(登録商標)T08を、15gの上記の得られた混合物中に混合し、Hausschildのデンタルミキサにおいて20秒間3000rpmで混合した。さらに1.1gの水を添加し、同じ条件下で混合を繰り返した。毎回その後の混合を伴う水のさらに連続する添加を、合計で26gの水が添加されるまで行うと、30%の活性含有率を有するマイクロエマルションが得られ、この粒径は、D(v、0.1)nm=63.3、D(v、0.5)nm=94.6(体積モードでNanotrac粒径分析器を用いて測定)であった。
【0144】
実施例4
25℃で70mPa・sの粘度を有する80.0gのジメチルヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサン、20gのIsopar(登録商標)L(Exxonにより供給)、3.0gのオクタン酸、及び6.0gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシランの混合物を、24時間50℃でマグネチックスターラを用いて混合した。得られた均質な混合物の粘度は25℃で370mPa・s(BrookfieldのRVDV−I+粘度計、スピンドル4、速度100RPM)であった。
【0145】
Hausschildのデンタルミキサにおいて20秒間3000rpmで、6.0gのLutensol(登録商標)T08を、15.0gの上記の得られた混合物中に混合した。さらに1.1gの水を添加し、同じ条件下で混合を繰り返した。毎回その後の混合を伴う水のさらに連続する添加を、合計で26.2gの水が添加されるまで行うと、およそ30%の活性含有率を有するマイクロエマルションが得られ、この粒径は、D(v、0.1)nm=75.5、D(v、0.5)nm=108.5(体積モードでNanotrac粒径分析器を用いて測定)であった。
【0146】
実施例5
SpeedMixer(商標)(DAC 150 FVZ)において、90センチポアズ(cP)(90mPa・s)の粘度を有する18gのヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサン、73%の3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、15%のクロロプロピルトリメトキシシラン及び12%のドデシルアルコールから成る5gの混合物、並びに2gの鉱油(Hydroseal G 250H)を、均質になるまで混合した。均質な混合物の粘度は80cP(80mPa・s)であった。この均質な混合物に、0.3gの1,1,3,3−テトラメチルグアニジン及び0.2gのオクタン酸を添加し、再度、均質になるまで混合を行った。得られた混合物を50℃で20時間貯蔵して重合させ、その後、室温まで冷却した。重合した混合物の粘度は、2534cP(2534mPa・s)であった。
【0147】
19gの上記の重合した混合物に、2.34gのウンデセス−5(Genapol(登録商標)UD050)及び5.53gのウンデセス−11(Genapol(登録商標)UD110)を添加し、内容物をSpeedMixer(商標)において3500RPMで22秒間回転させた。3.0gの水を添加し、この混合物をスパチュラによって攪拌すると、澄んだ状態から濁りを帯びた状態の混合物が形成し、その後、この混合物を同じ条件下で回転させた。水をさらに2回(各々3.0g)添加し、毎回その後に、同じ条件下で回転させた。混合物は澄んだ状態の高粘性となった。さらに21gの水を添加した後に、同じ条件下で回転させると、わずかに青みがかった濁りを有する澄んだ水性マイクロエマルションとなった。マイクロエマルションは、37.3ナノメートルのメジアン粒子直径を有する単峰性の粒径分布を有しており、体積モードでNanotrac(商標)(UPA150)粒径分析器を用いて測定した場合に、粒子の90%が57.0ナノメートルより小さいものであった。
【0148】
比較例1
実施例1のパートBからの生成物の代わりに、12グラムのC12〜15アルキルベンゾエートを代用した以外は、実施例1のパートCの手順を繰り返した。これにより、371nm周辺を中心とする単峰性の粒径分布を有する不透明な白色エマルションが得られた。
【0149】
比較例2
実施例1のパートBからの生成物の代わりに、10グラムのC12〜15アルキルベンゾエートを代用した以外は、実施例1のパートDの手順を繰り返した。これにより、294nm周辺を中心とする単峰性の粒径分布を有する不透明な白色エマルションが得られた。
【0150】
比較例3
実施例5で不活性流体として鉱油を含有していた重合したシロキサン混合物の代わりに、19グラムの鉱油(Hydroseal(登録商標)G250H)を代用した以外は、実施例5の乳化パートを繰り返した。乳化を試みた後も油と水とが分離したままであったため、これによって如何なるエマルションも得られなかった。
【0151】
これらの比較例から、全てではないがこれらの不活性流体の大半からそれ自体でマイクロエマルションを製造することは、不可能とは言えないまでも極めて困難であることが例証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均エマルション粒径が1ナノメートル〜140ナノメートルである、(A)ポリシロキサンと、(B)不活性シロキサン流体及び不活性有機流体から選択される不活性流体とを含有する水中油型マイクロエマルションを製造する方法であって、
a)不活性流体、好適な触媒、及び任意に末端ブロック化剤の存在下における、シラン又はシロキサンを含有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合によって、ポリシロキサンを含有する混合物を含む油相を調製する工程と、
b)必要とされる場合、重合プロセスをクエンチさせる工程であって、前記不活性流体が前記得られるポリシロキサンを含有する混合物中に実質的に保持される、工程と、
c)必要であれば、1つ又は複数の界面活性剤を前記油相中に混合する工程と、
d)水を前記油相に添加した後に、前記混合物に攪拌又は剪断を適用して、水中油型マイクロエマルションをもたらす、工程と、
e)任意に、より多くの水を添加することによって前記水中油型マイクロエマルションを希釈する工程と、
を含む、水中油型マイクロエマルションを製造する方法。
【請求項2】
重縮合、鎖伸長、重付加及び開環の群から選択される重合プロセスを介して、前記シロキサンを含有するポリマーを調製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合後の前記ポリシロキサンが、250℃未満の沸点のシロキサンを0.5重量%未満含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記重合触媒が、乳化に用いられる前記界面活性剤の一部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記均質な油相が、25℃で100mPa・s〜1000000mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、式
(3-a)1aSiO[(R2SiO)b]SiR(3-a)1a
(式中、各Rは、同一又は異なっており、1個〜8個の炭素原子を含有するアルキル基、1個〜6個の炭素原子を含有する置換アルキル基、又はフェニル基であり、R1は、ヒドロキシ基、加水分解性基、不飽和有機基であり、aは0又は1であり、bは少なくとも200の値に等しい整数である)
を有するシロキシ単位を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサンが1つ又は複数の置換アルキル基を含み、該置換アルキル基の各々が、ケイ素−炭素結合又はケイ素−酸素−炭素結合を介してケイ素に結合する少なくとも1つの極性基を含有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
bが少なくとも1500の値に等しいことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサンが、1つ又は複数の[RSiO3/2]単位及び/又は[SiO4/2]単位をさらに含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により得られる、水中油型マイクロエマルション。
【請求項11】
エマルションの平均粒径が1ナノメートル〜140ナノメートルである、(A)ポリシロキサンと(B)不活性流体とを含有する、水中油型マイクロエマルション。
【請求項12】
前記不活性流体(B)が、25℃で0.65mPa・s〜10000mPa・sの粘度を有するトリアルキルシリル終端ポリジアルキルシロキサン、2個〜20個のケイ素原子を有する環状シロキサン、ポリイソブチレン、アルキルベンゼン、鉱油又はホワイトオイル、脂肪族又は芳香族のエステル及びエーテル、グリセリド、脂肪アルコール、並びに天然油又は天然油誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項10又は11に記載のエマルション。
【請求項13】
前記ポリシロキサン(A)が、塩基性窒素を含有する、SiC結合基を有する1つ又は複数のシロキサン単位を含有することを特徴とする、請求項10又は11に記載のエマルション。
【請求項14】
前記ポリシロキサン(A)が、第四級アンモニウム基を含有する、SiC結合基を有する1つ又は複数のシロキサン単位を含有することを特徴とする、請求項10又は11に記載のエマルション。
【請求項15】
化粧品及びパーソナルケア製品における、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法に従って調製されるエマルションの使用。
【請求項16】
塗料、建築用途、織物繊維処理、皮の塗油、布の柔軟仕上げ、洗濯用途におけるファブリックケア、ヘルスケア、ホームケア、剥離剤、水系コーティング、油による抵抗低減、特に、原油ピペリン、潤滑、及びセルロース材料の切断促進における、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法に従って調製されるエマルションの使用。

【公表番号】特表2011−524426(P2011−524426A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505002(P2011−505002)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/002233
【国際公開番号】WO2009/128883
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】