説明

シリコーンマイクロエマルション組成物

【課題】カルボキシ変性オルガノポリシロキサンをマイクロエマルション化することにより得られ、従来よりも表面張力が低下したシリコーンマイクロエマルション組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定のカルボキシ変性オルガノポリシロキサン 100質量部、(B)特定のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン 25〜75質量部、(C)アニオン性界面活性剤 0.1〜10質量部、及び(D)水 23〜6000質量部、を含み、エマルション粒子の平均粒径が100nm以下であるシリコーンマイクロエマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン型ノニオン性界面活性剤を用いてカルボキシ変性オルガノポリシロキサンから得られた安定なシリコーンマイクロエマルション組成物に関するものであり、化粧料、ハウスホールド製品などの分野に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来知られているシリコーンマイクロエマルションとしては、例えば、アミノ基含有オルガノポリシロキサンから非イオン性界面活性剤と有機酸を用いて得られるアミノシリコーンマイクロエマルションが挙げられる。その平均粒子径は100nm以下であり、マクロエマルジョンの平均粒子径(100nm超)に比較して非常に小さい。このアミノシリコーンマイクロエマルションは、エマルションの安定性、希釈使用時のせん断安定性、基材への吸着性等に優れるため、繊維処理剤、離型剤、撥水剤、毛髪化粧料などとして広汎な産業分野において使用されてきている(特許文献1)。
【0003】
さらに、アミノ基含有オルガノポリシロキサン以外のオルガノポリシロキサンからマイクロエマルションを得る技術が求められてきている。例えば、ジメチルポリシロキサン鎖の一部にカルボキシ基を有するオルガノポリシロキサンと界面活性剤とを含有し、毛髪への吸着性を高い毛髪化粧料が提案されている(特許文献2)。また、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンからノニオン系界面活性剤および/またはアニオン系界面活性剤を用いて得られる平均粒子径が150nm以下のマイクロエマルジョンを繊維処理剤の主剤として用いることが提案されている(特許文献3)。更に、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンを分岐状のポリオキシエチレンアルキルエ−テル型ノニオン性界面活性剤にて可溶化させて得られる可溶化組成物が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-284959号公報
【特許文献2】特許第4338648号公報
【特許文献3】特開昭63-270875号公報
【特許文献4】国際公開第2010/110047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシリコーンマイクロエマルションは、いずれもアルキル型ノニオン性界面活性剤を利用して得られたものであり、その表面張力を十分に低下させることは容易ではない。シリコーンマイクロエマルションは、化粧料、ハウスホールド製品等のいずれの用途に用いる場合においても、表面張力が低いほうが素材に対する濡れ性が向上し、より効率的に表面を処理することができる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンをマイクロエマルション化することにより得られ、従来よりも表面張力が低下したシリコーンマイクロエマルション組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルキル型ノニオン性界面活性剤の代わりにシリコーン型ノニオン性界面活性剤を利用してカルボキシ変性オルガノポリシロキサンをマイクロエマルション化することで、従来よりも表面張力が低下したシリコーンマイクロエマルション組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)下記一般式[1]のカルボキシ変性オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)下記一般式[2]のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン 25〜75質量部、
(C)アニオン性界面活性剤 0.1〜10質量部、及び
(D)水 48〜6000質量部
を含み、エマルション粒子の平均粒径が100nm以下であるシリコーンマイクロエマルション組成物を提供する。
R2-(R12SiO)m(R2R1SiO)nR12Si-R2 [1]
(式中、R1は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、R2は独立にR1又は−RCOOHであり、R3は二価炭化水素基であり、mは50〜1000の数であり、nは0〜20の数である。但し、少なくとも1つのR2は−RCOOHである。)
R4-(R12SiO)o(R4R1SiO)pR12Si-R4 [2]
(式中、R1は前記のとおりであり、R4は独立にR1又は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5であり、R5は水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又は-(CO)-R6であり、R6は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、oは0〜3の数であり、pは1〜3の数であり、aは2〜5の数であり、bは5〜15の数であり、cは0〜10の数である。但し、少なくとも1つのR4は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5である。)
【0009】
一実施形態において、本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物は(E)成分として塩基を更に含有する。別の実施形態において、本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物は(F)成分として多価アルコールを更に含有する。更に別の実施形態において、0質量%超10質量%以下の本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物と残部の水とからなる希釈系の表面張力は30mN/m以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物は、シリコーン型ノニオン性界面活性剤として(B)成分のポリエーテル変性オルガノポリシロキサンを利用してカルボキシ変性オルガノポリシロキサンをマイクロエマルション化することで得られたものであり、透過率が高く、微細で、安定であり、かつ、アルキル型ノニオン性界面活性剤を用いて得られた従来のシリコーンマイクロエマルション組成物よりも表面張力が低下している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について更に詳しく説明する。なお、本明細書において「平均粒径」とは動的光散乱法により測定された体積基準の50%累積分布径をいう。
【0012】
[(A)成分]
(A)は下記一般式[1]のカルボキシ変性オルガノポリシロキサンである。(A)成分は1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
R2-(R12SiO)m(R2R1SiO)nR12Si-R2 [1]
(式中、R1は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、R2は独立にR1又は−RCOOHであり、R3は二価炭化水素基であり、mは50〜1000の数であり、nは0〜20の数である。但し、少なくとも1つのR2は−RCOOHである。)
【0013】
R1は、好ましくは独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である。R1としては、例えば、非置換又は置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、非置換又は置換の炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、非置換又は置換の炭素原子数2〜20のアルケニル基、非置換又は置換の炭素原子数6〜20のアリール基、非置換又は置換の炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子)、極性基(例えば、アミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基)、極性基含有有機基等で置換した基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましく、更に好ましくは全R1の80モル%以上がメチル基である。
【0014】
R3は好ましくは炭素原子数2〜20の二価炭化水素基であり、例えば、式:−(CH2)x−(式中、xは2〜20の整数)で表わされるものが挙げられる。
【0015】
(A)成分中のカルボキシル基の付加数に特に制限はないが、(A)成分のカルボキシ当量は1000〜5000g/molの範囲であることが好ましい。m及びnは、上記の数値範囲を満たし、かつ、該カルボキシ当量が1000〜5000g/molの範囲になるような数であることが好ましい。
【0016】
[(B)成分]
(B)成分は下記一般式[2]のポリエーテル変性オルガノポリシロキサンである。(B)成分は1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
R4-(R12SiO)o(R4R1SiO)pR12Si-R4 [2]
(式中、R1は前記のとおりであり、R4は独立にR1又は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5であり、R5は水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又は-(CO)-R6であり、R6は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、oは0〜3の数であり、pは1〜3の数であり、aは2〜5の数であり、bは5〜15の数であり、cは0〜10の数である。但し、少なくとも1つのR4は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5である。)
【0017】
R5で表わされる炭素原子数1〜20の炭化水素基の例及び具体例は、R1と同様である。R6としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜10のアラルキル基が挙げられる。R6の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。R5は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はアセチル基であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0018】
o及びp並びにa,b及びcの値により(B)成分のHLB値が変化するが、o及びp並びにa,b及びcは、上記の数値範囲を満たし、かつ、該HLB値が10〜15の範囲になるような数であることが好ましい。
【0019】
上記式[2]のポリオキシアルキレン部分がエチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の両方からなる場合には、これら両単位はブロック重合体及びランダム重合体の何れを形成していてもよい。
【0020】
[(C)成分]
(C)成分はアニオン性界面活性剤であり、1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。(C)成分の具体例としては、N−アシル−L−グルタミン酸ジエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキル(12,14,16)硫酸アンモニウム、アルキル(11,13,15)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(12〜14)硫酸トリエタノールアミン、アルキル硫酸トリエタノールアミン液、アルキル(12,13)硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム液、イセチオン酸ナトリウム、イソステアリン乳酸ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オレイン硫酸トリエタノールアミン、オレイン硫酸ナトリウム、オレイン酸アミドスルホコハク二ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸モルホリン、オレオイルザルコシン、オレオイルメチルタウリンナトリウム、カリウム含有石けん素地、カリウム石けん用素地液、カリ石ケン、カルボキシル化ポリオキシエチレントリドデシルエーテル、カルボキシル化ポリオキシエチレントリドデシルエーテルナトリウム塩(3E.O.)、N−硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、ジウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ステアロイル−L−グルタミン酸二ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液、スルホコハク酸ポリオキシエチレンモノオレイルアミドジナトリウム(2E.O.)液、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム(5E.O.)、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミド、セチル硫酸ナトリウム、石けん用素地、セトステアリル硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸トリエタノールアミン、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ヒマシ油脂肪酸ナトリウム液(30質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム(3E.O.)液、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ジエタノールアミン(3E.O.)液、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン(3E.O.)液、ポリオキシエチレンアルキル(11,13,15)エーテル硫酸トリエタノールアミン(1E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸トリエタノールアミン(3E.O.)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)液、ポリオキシエチレンアルキル(11,13,15)エーテル硫酸ナトリウム(1E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(11〜15)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム(7E.O.)、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム液、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(16E.O.)液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(2 E.O.)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ジエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアミノ酢酸ナトリウム、ミリストイルメチル−β−アラニンナトリウム液、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、薬用石ケン、ヤシ油アルキル硫酸マグネシウム・トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム液、N−ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン液、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪メチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪メチルアラニンナトリウム液、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム液(30質量%)、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸トリエタノールアミン液、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸ミリスチン酸トリエタノールアミン、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン液、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム液などが挙げられる。なお、用語「アルキル」に付記された数字はそのアルキル基の炭素原子数を表す。例えば、「アルキル(12,14,16)硫酸アンモニウム」は、「C12-アルキル硫酸アンモニウム、C14-アルキル硫酸アンモニウム又はC16-アルキル硫酸アンモニウム」を意味する。
【0021】
[(D)成分]
(D)成分は水である。(D)成分としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、脱イオン水等の純水が挙げられる。
【0022】
[(E)成分]
(E)成分は塩基であり、任意成分として本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物に添加してもよい。(E)成分は1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。(E)成分の具体例としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0023】
[(F)成分]
(F)成分は多価アルコール、即ち、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、任意成分として本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物に添加してもよい。(F)成分は1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。(F)成分の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族非環式ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノンなどの脂環式ジオール;1,2-ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどの芳香族ジオール;1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール、ソルビトール、マンニトールなどの糖誘導体、ポリグリセリン(例えば、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリンなど)、ポリペンタエリスリトールなどのポリアルカンポリオールなどが挙げられる。
【0024】
本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物は、(A)成分のカルボキシ変性オルガノポリシロキサンを100質量部、(B)成分のポリエーテル変性オルガノポリシロキサンを25〜75質量部、(C)成分のアニオン性界面活性剤を0.1〜10質量部、(D)成分の水を48〜6000質量部含む。
【0025】
マイクロエマルションとカルボキシ変性オルガノポリシロキサンの特徴を損なわないためには、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、通常、25〜75質量部であり、好ましくは45〜55質量部である。
【0026】
エマルションの安定性と表面張力の上昇防止の観点から、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.1〜10質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。
【0027】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、通常、48〜6000質量部である。
【0028】
(E)成分の塩基はエマルションを増粘させる作用が、(F)成分の多価アルコールはエマルションの粘度を低下させる作用がある。(E)及び(F)成分のいずれか一方を単独で使用することでも本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物の粘度を調整することはできるが、(E)及び(F)成分を併用すると、任意の粘度のエマルションを調製することが更に容易となる。(E)成分の含有量は、(A)成分中のカルボキシル基1モル当量に対し、好ましくは0.1〜1.0モル当量の(E)成分の塩基を与える量である。このような含有量は、例えば、(A)成分100質量部に対し、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部の(E)成分を用いることで実現することができる。(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0029】
本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物は、(A)〜(D)成分並びに場合により(E)および(F)成分を、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ラインミキサー、万能混合機、ウルトラミキサー、プラネタリーミキサー、コンビミックスなどの乳化機を用いて均一に混合することにより調製することができる。全成分を同時に混合してもよいし、転相工程として(D)成分以外と(D)成分の水の一部(転相水)を混合した後に、希釈工程として残りの(D)成分(希釈水)を添加して更に混合してもよい。
【0030】
本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物中のエマルション粒子の平均粒径は、通常、100nm以下であり、好ましくは10〜80nmである。
【0031】
0質量%超10質量%以下の本発明のシリコーンマイクロエマルション組成物と残部の水とからなる希釈系の表面張力は、通常、30mN/m以下であり、好ましくは20〜27mN/mである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。下記例中、部は質量部を、Meはメチル基を意味する。水としてはイオン交換水を用いた。平均粒径はベックマン・コールター株式会社製の動的光散乱法粒子径分布測定装置N4 Plus submicron Particle Size Analyzerにより、透過率は島津製作所社製の紫外可視分光光度計UV-1800(測定波長:500nm)により、表面張力は協和界面科学株式会社製の自動表面張力計FACE(MODEL CBVP-Z)により測定した。外観は目視で観察した。また、粘度は回転粘度計を用いて測定した25℃における値である。なお、オルガノポリシロキサンの平均組成式を下記の記号により示す:
M:(CH3)3SiO1/2
D:(CH3)2SiO2/2
DR:(R)(CH3)SiO2/2
【0033】
[実施例1]
カルボキシ変性オルガノポリシロキサン(平均組成式:M2D280DR16, R=−(CH2)10COOH、カルボキシ当量:3960g/mol)50部に、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンA(平均組成式:M2DR, R=−(CH2)3O(C2H4O)8Me)25部、アニオン性界面活性剤(商品名:エマール20C、花王株式会社製)1部、及び転相水10部を加え混合し、更に希釈水14部を添加し均一に混合して、シリコーンマイクロエマルション組成物を得た。得られたシリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径が36nmで、粘度が5060mPa・sであった。このシリコーンマイクロエマルション組成物100部に水4900部を加えて、2質量%の該組成物と残部の水とからなる希釈系を調製した(前記カルボキシ変性オルガノポリシロキサンの濃度:1質量%)。この希釈系は、表1に示す通り、透過率が89.6%、エマルション粒子の平均粒径が31nm、表面張力が23.2mN/mであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0034】
[実施例2]
実施例1において、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンに塩基(トリエタノールアミン)1.88部(該カルボキシ変性オルガノポリシロキサン中のカルボキシル基1モル当量に対し、1モル当量の該塩基を与える量)を更に加え、希釈水の量を14部から12.12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0035】
[実施例3]
実施例1において、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンに多価アルコール(1,3-ブタンジオール)3部を更に加え、希釈水の量を14部から11部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0036】
[実施例4]
実施例1において、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンに塩基(トリエタノールアミン)1.88部及び多価アルコール(1,3-ブタンジオール)3部を更に加え、希釈水の量を14部から9.12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0037】
[実施例5]
実施例1において、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンAの量を25部から12.5部に変更し、希釈水の量を14部から26.5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0038】
[実施例6]
実施例1において、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンAの量を25部から37.5部に変更し、転相水の量を10部から6部に変更し、希釈水の量を14部から5.5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0039】
[実施例7]
実施例1において、アニオン性界面活性剤の量を1部から0.2部に変更し、希釈水の量を14部から14.8部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0040】
[実施例8]
実施例1において、アニオン性界面活性剤の量を1部から5部に変更し、希釈水の量を14部から10部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表1に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表1に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった。
【0041】
[比較例1]
実施例1において、アニオン性界面活性剤を用いず、希釈水の量を14部から15部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表2に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表2に示す通りであり、室温で1ヵ月放置したところ白濁した。
【0042】
[比較例2]
実施例1において、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンA 25部の代わりにポリエーテル変性オルガノポリシロキサンB(平均組成式:M2D10DR5, R=−(CH2)3O(C2H4O)10Me)25部を用い、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンに塩基(トリエタノールアミン)1.88部及び多価アルコール(1,3-ブタンジオール)3部を更に加え、希釈水の量を14部から9.12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物を調製しようとしたが、転相しなかった。このことは、(B)成分の代わりに(B)成分以外のポリエーテル変性オルガノポリシロキサンを用いても、マイクロエマルションが生成しないことを示している。
【0043】
[比較例3]
実施例1において、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンA(平均組成式:M2DR, R=−(CH2)3O(C2H4O)8Me)25部の代わりにアルキル型ノニオン性界面活性剤A(サンノニックSS70、三洋化成株式会社製)12.5部、アルキル型ノニオン性界面活性剤B(サンノニックSS120、三洋化成株式会社製)6.25部、及びアルキル型ノニオン性界面活性剤C(エマルゲン104P、花王株式会社製)6.25部を用い、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンに塩基(トリエタノールアミン)2.04部(該カルボキシ変性オルガノポリシロキサン中のカルボキシル基1モル当量に対し、1モル当量の該塩基を与える量)及び多価アルコール(1,3-ブタンジオール)3部を更に加え、希釈水の量を14部から8.96部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンマイクロエマルション組成物及び希釈系を調製した。該シリコーンマイクロエマルション組成物は、エマルション粒子の平均粒径及び粘度が表2に示す通りであった。また、該希釈系は、透過率、エマルション粒子の平均粒径、及び表面張力が表2に示す通りであり、室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかったが、表面張力は実施例1〜8よりも高かった。
【0044】
【表1】


1):カルボキシ変性オルガノポリシロキサン(平均組成式:M2D280DR16, R=−(CH2)10COOH)
2):ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンA(平均組成式:M2DR, R=−(CH2)3O(C2H4O)8Me)
3)アニオン性界面活性剤(商品名:エマール20C、花王株式会社製)
4):○ 室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった
× 室温で1ヵ月放置したところ白濁した
【0045】
【表2】


1):カルボキシ変性オルガノポリシロキサン(平均組成式:M2D280DR16, R=−(CH2)10COOH)
2):ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンA(平均組成式:M2DR, R=−(CH2)3O(C2H4O)8Me)
3)ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンB(平均組成式:M2D10DR5, R=−(CH2)3O(C2H4O)10Me)
4)アルキル型ノニオン性界面活性剤A(サンノニックSS70、三洋化成株式会社製)
5)アルキル型ノニオン性界面活性剤B(サンノニックSS120、三洋化成株式会社製)
6)アルキル型ノニオン性界面活性剤C(エマルゲン104P、花王株式会社製)
7)アニオン性界面活性剤(商品名:エマール20C、花王株式会社製)
8):○ 室温で1ヵ月放置しても外観に変化はなかった
× 室温で1ヵ月放置したところ白濁した
9)転相しなかった

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]のカルボキシ変性オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)下記一般式[2]のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン 25〜75質量部、
(C)アニオン性界面活性剤 0.1〜10質量部、及び
(D)水 48〜6000質量部
を含み、エマルション粒子の平均粒径が100nm以下であるシリコーンマイクロエマルション組成物。

R2-(R12SiO)m(R2R1SiO)nR12Si-R2 [1]
(式中、R1は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、R2は独立にR1又は−RCOOHであり、R3は二価炭化水素基であり、mは50〜1000の数であり、nは0〜20の数である。但し、少なくとも1つのR2は−RCOOHである。)

R4-(R12SiO)o(R4R1SiO)pR12Si-R4 [2]
(式中、R1は前記のとおりであり、R4は独立にR1又は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5であり、R5は水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又は-(CO)-R6であり、R6は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、oは0〜3の数であり、pは1〜3の数であり、aは2〜5の数であり、bは5〜15の数であり、cは0〜10の数である。但し、少なくとも1つのR4は-(CH2)aO(C2H4O)b(C3H6O)cR5である。)
【請求項2】
(E)塩基
を更に含有する請求項1に係るシリコーンマイクロエマルション組成物。
【請求項3】
(F)多価アルコール
を更に含有する請求項1又は2に係るシリコーンマイクロエマルション組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に係るシリコーンマイクロエマルション組成物であって、
0質量%超10質量%以下の該シリコーンマイクロエマルション組成物と残部の水とからなる希釈系の表面張力が30mN/m以下である前記シリコーンマイクロエマルション組成物。

【公開番号】特開2012−224599(P2012−224599A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95684(P2011−95684)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】