説明

シリコーンミスト抑制剤及びそれを含むコーティング組成物

【課題】 保存安定性に優れた、無溶剤型剥離紙用シリコーン用のミスト抑制剤を提供する。
【解決手段】
無溶剤型シリコーンコーティング組成物用のミスト抑制剤であって、
(a)下記で表されるポリオルガノシロキサン(1)の残基からなる構成単位と、
【化1】


1は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基でありnは10〜1500である、
(b)1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基からなる構成単位と、
を有するポリオルガノシロキサン(I)からなるミスト抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンミスト抑制剤及びそれを含むコーティング組成物に関する。ミスト抑制剤は、シリコーンコーティング組成物を用いて紙をコーティングする際に発生するシリコーンミストを抑制するために該コーティング剤に添加して使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
作業環境の安全及び衛生等の面から、剥離紙用無溶剤型シリコーン組成物が使用されており、各種のものが知られている(例えば特許文献1〜4)。
【0003】
無溶剤型シリコーン組成物の塗工は高速で行われるが、コーターヘッド部分でミストと呼ばれるシリコーンが霧状に飛散する。近年、塗工の高速化に伴い、このミスト量が多くなり、問題となっている。そこで、ミストを低減する方法として種々検討されており、例えば、オキシアルキレン変性されたシリコーン化合物を無溶剤型シリコーンに添加する方法が知られている(特許文献5)。
【0004】
また、アルケニル基含有シロキサンとポリオルガノハイドロジェンシロキサンのどちらかが大過剰(SiH基/アルケニル基のモル比又はその逆数が4.6以上)存在する混合物を予め白金触媒等で反応させた部分的付加物を含む組成物を無溶剤型シリコーンに添加することにより、高速塗工時のミスト量が低減できることが知られている(特許文献6及び7)。
【特許文献1】特開昭49−47426号公報
【特許文献2】特開昭50−141591号公報
【特許文献3】特公昭52−39791号公報
【特許文献4】特開昭57−77395号公報
【特許文献5】米国特許第5625023号公報
【特許文献6】特表2004−501262号公報
【特許文献7】特表2004−501264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献6及び7記載の組成物はミストの抑制効果に優れる。しかし、該組成物中には、反応性に富むSiH結合とPt触媒とが残存するため、経時でミスト抑制剤自身が増粘する。該組成物がシリコーンコーティング組成物に添加された後に、該コーティグ組成物に制御剤が含まれていても、経時でコーティング組成物の増粘やゲル化を起こし得る。そこで、本発明は、保存安定性の優れたミスト抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定の構成単位を有するポリオルガノシロキサンが、ミスト抑制作用に優れるだけでなく、保存安定性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち本発明は、 無溶剤型シリコーンコーティング組成物用のミスト抑制剤であって、
(a)下記で表されるポリオルガノシロキサン(1)の残基からなる構成単位と、
【化1】

1は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基でありnは10〜1500である、
(b)1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基からなる構成単位と、
を有するポリオルガノシロキサン(I)からなるミスト抑制剤である。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明のミスト抑制剤は、ミスト抑制効果に優れる。さらに、Pt触媒を用いることなく調製することができるので、残存Pt触媒に因る上記問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のミスト抑制剤を構成するポリオルガノシロキサン(I)の構成単位(a)は、下記のポリオルガノシロキサン(1)の残基からなる。該残基には、SiOH結合の少なくとも一方がSiO−となっているもの、及び、両方がSiO−となっているものが包含され、好ましくは、両末端がSiO−である。
【化2】

上式においてR1は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基、好ましくはメチル基又はフェニル基であり、nは50〜1000、好ましくは100〜300である。
【0009】
構成単位(b)は、1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基であり、好ましくは、下記平均組成式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基からなる。該残基には少なくとも一部のSiH結合のHが反応してSi−になっているものが含まれる。
【化3】

式(2)において、R2は互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基、好ましくはメチル基又はフェニル基であり、kは2以上の数であり、好ましくは 20 以上、となる数であり、mは 0以上の数であり、且つ、ポリオルガノシロキサン(1)中のSiOH結合に対する全SiH結合、即ち、α+k+βの合計、のモル数比(SiH/SiOH)が10以上である。
【0010】
ポリオルガノシロキサン(I)は、オルガノポリシロキサン(1)と1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとをスズ化合物触媒(II)の存在下で縮合反応させて作ることができる。該縮合反応の反応条件には特に制約はないが、典型的には20〜100℃で1〜20時間程度で反応する。
【0011】
スズ化合物触媒(II)としては、縮合反応を促進するための公知のスズ化合物を使用することができ、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート等挙げられる。該スズ化合物の添加量は、触媒として有効な量であればよいが、通常、オルガノポリシロキサン(1)と1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの総重量に対して、50〜1000ppmの範囲で添加される。スズ化合物触媒(II)は、従来の付加反応触媒、典型的には白金触媒、と異なり、未反応のSi-Hと共に反応生成物中に残存していても、増粘等の問題を起こし難い。従って、上述の縮合反応で得られる反応生成物を精製することなくミスト抑制剤として供しても実用上何ら問題はない。
【0012】
本発明のミスト抑制剤は、無溶剤型シリコーンコーティング組成物100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは2〜10 質量部の範囲で配合することができる。該ミスト抑制剤の添加量が、前記下限値より少ないと十分なミスト抑制効果が得られず、上限値より多くなると、ミスト抑制剤に残存するSiHが、コーティング組成物中の成分と反応してコーティング層の剥離力を増大させる場合があるので好ましくない。
【0013】
本発明のミスト抑制剤は、種々の無溶剤型シリコーンコーティング組成物と共に使用することができるが、好ましくは、下記(III)〜(V)を含むものと共に使用される。
(III)ケイ素原子に結合されたアルケニル基を、1分子中に少なくとも2個、且つ、
100g中に0.002〜0.60molで含有し、25℃での粘度が50〜
100000mPa・sであるポリオルガノシロキサンを100質量部、
(IV)1分子中にSiH結合を少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、ポリオルガノシロキサン(II)中のアルケニル基のモル数に対するSiH結合のモル数比(SiH/SiVi)が0.5〜5に相当する質量部、及び
(V)触媒量の白金族金属系化合物。
【0014】
ポリオルガノシロキサン(III)は、ケイ素原子に結合されたアルケニル基を1分子中に少なくとも2つ、且つ、100g中に0.002〜0.60mol、好ましくは 0.005〜0.3molとなるような量で含む。アルケニル基量が前記下限値に満たないと実用的な硬化速度が得られない場合があり、前記上限値を越えると剥離力が大きくなる過ぎる場合がある。
【0015】
好ましくは、ポリオルガノシロキサン(III)として下記平均式(3)で表されるものが使用される。
【化4】

式中、R3は同一または異種の、置換されていてよい炭化水素基、R4は−(CH2c−CH=CH2(cは0〜6)で表されるアルケニル基であり、aは0≦a≦3、bは0<b≦3、a+bは1≦a+b≦3である。
【0016】
上記R3としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基等のアリール基;又は、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基などで置換した基、例えば、クロルメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、フェノール基、ヒンダードフェノール基等が例示される。本発明においては、炭素数1〜8のアルキル基及びフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましく、全R3の50mol%がメチル基であることが好ましい。
【0017】
好ましくは、aは0.5≦a≦2.5、bは0.0002≦b≦1、a+bは1.5≦a+b≦2.5である。
【0018】
4としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が上げられるが、不飽和結合が末端にあるもの、即ち、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、4‐ペンテニル基等が好ましく、より好ましくはビニル基及びアリル基である。
【0019】
ポリオルガノシロキサン(III)は、直鎖状及び分岐状のどちらでもよい。又、その末端は、例えば、メチル基、水酸基、アルケニル基、フェニル基、アクリロキシアルキル基等のいずれの有機基であってもよいが、好ましくはアルケニル基である。また、ポリオルガノシロキサン(III)の粘度は、25℃において50〜100000mPa・s、好ましくは100〜2000mPa・sである。
【0020】
次にポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)は1分子中にSiH結合を2個以上有し、このSiH結合とポリオルガノシロキサン(III)のアルケニル基とが付加反応することによって硬化皮膜が形成される。ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)として好ましいのは、下記平均式(4)で示されるものである。
【化5】

式中、R5は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を含まない炭素数1〜8のものである。
【0021】
5としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、好ましくは全R5の80%はメチル基である。
【0022】
また、d、eは0.5≦d≦1.5、0.5≦e≦1.5、0≦d+e≦3.0、特に0.8≦d≦1.0、0.8≦e≦1.0、1.6≦d+e≦2.0であることが好ましい。
【0023】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)の配合量は、SiH結合のモル数がポリオルガノシロキサン(III)中のアルケニル基モル数の0.5〜5倍、好ましくは 1〜3倍 に相当する質量部になるようにすれば良い。配合量が前記下限値量以下では、硬化が不十分となり、また前記上限値を超えると、剥離力が大きくなり過ぎる場合がある。
【0024】
次に、白金族金属系化合物(V)としては、ポリオルガノシロキサン(III)とポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)との付加反応を促進するための触媒であり、公知の付加反応触媒が使用できる。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましく用いられる。この白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。これら白金族金属系触媒の添加量は触媒量であるが、良好な硬化皮膜を得ると共に、経済的な見地からポリオルガノシロキサン(III)、及びポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)の総重量に対して、白金系金属量として1〜1000ppmの範囲とすることが好ましい。なお、(III)〜(V)は、夫々、1種でも2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
本発明のミスト抑制剤は、上述のとおり、上記ポリオルガノシロキサン(III)100質量部に対して0.1〜10質量部で添加される。添加の際には、ポリオルガノシロキサン(III)とポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)と、ミスト抑制剤と、所望により任意成分と、を予め均一に混合した後、白金触媒(V)を加えて調製することが好ましい。白金触媒は、コーティング直前、例えば30分前、に添加してもよい。なお、本発明のミスト剤も、コーティング直前に添加してもよい。しかし、作業効率の点から予め配合しておくことが望ましく、本発明の抑制剤であれば、そのように予め配合しておいても、増粘等の問題が無いので有利である。
【0026】
コーティング組成物には、例えば白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などの制御剤として公知のものを配合することができる。斯かる制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシランまたはシロキサンあるいはハイドロジェンシランまたはシロキサンとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロム化合物等が挙げられる。
【0027】
また、この制御剤としての化合物の配合量は、良好な処理浴安定性が得られる量であればよく、一般にポリオルガノシロキサン(III)及びポリオルガノハイドロジェンシロキサン(IV)の100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部で使用される。
【0028】
一方、剥離力を制御する目的でシリコーンレジン、シリカ、又はSiH結合やアルケニル基を有さないポリオルガノシロキサンなどを、本発明の効果を妨げない範囲の量で添加することができる。
【0029】
このようにして調製されたシリコーンコーティング組成物(VI)は、各種基材に塗布し熱硬化させる。基材としては、特に限定はなく、一般に剥離紙に使用されている種々の基材が使用可能であり、例えばグラシン紙、クレーコート紙、上質紙、ポリエチレンラミネート紙やプラスチックフィルム等が上げられる。また、シリコーン組成物の塗工量にも特に制限はないが、通常、0.05〜3.0g/m2程度であればよい。なお、上記シリコーン組成物の硬化は、50〜200℃で行うことが好ましく、加熱時間は1秒〜5分とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1 ミスト抑制剤の調製
下記式で示される、両末端にシラノール基を有するポリオルガノシロキサン
【化6】

300質量部(SiOHモル数 0.05 )と、下記平均式で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンの320質量部(SiHモル数1.92)を良く混合し、
【化7】

該混合物に、ジオクチルスズジアセテートを0.45質量部を添加して混合し、攪拌しながら85℃で2時間反応させて、粘度約180mP・sの淡黄色透明な液体(以下「M−1」と言う)を得た。
【0031】
比較例1
従来のミスト抑制剤を、特許文献7(特表2004-501264)の記載に従い下記の様に合成した。
下記平均式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン360質量部と、
【化8】

下記平均式で表されるオルガノポリシロキサン300 重量部(SiH/SiVi比= 40 )をよく混合し、塩化白金酸0.5重量%のトルエン溶液2部を加えた後、
【化9】

30℃で20時間反応させて、ミスト抑制剤R−1を得た。R−1は、粘度約1200mP・sであった。
【0032】
経時安定性試験
M−1及びR−1を、夫々、50℃の条件下で3週間保存した後、その粘度を測定した。前者は約190mP・s(5%増)であり、後者は2100mPa・s(75%増)であった。
ここから、本発明のミスト抑制剤は、保存安定性に優れていることが分かる。
【0033】
実施例2 コーティング組成物の調製
25℃における粘度が400mPa・sであり、かつビニル価が0.02mol/100gである両末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン98質量部、下記平均式で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン2.0質量部、
【化10】

エチニルシクロヘキサノール0.3質量部を均一に混合し、さらに、前記で合成したM−1を1.0質量部添加した。ミスト発生実験30分前に、塩化白金酸とビニルシロキサンの錯塩を2質量部(白金原子として約100ppm)を添加して、さらに均一に混合し、ミスト発生実験に使用した。
【0034】
実施例3 コーティング組成物の調製
ミスト抑制剤(M−1)を4.0質量部混合した点を除き、実施例2と同様に組成物を調製してミスト発生実験に供した。
【0035】
比較例2
本発明のミスト抑制剤M−1を添加しない以外は、実施例2と同様にコーティング組成物を作成して、ミスト発生実験に供した。
【0036】
ミスト発生実験
図1に示す5本のロールから成るコーターヘッドを用いて実験を行った。ロールDとEの間に前記で調製した各シリコーン組成物(実施例2、3、比較例2)を置き、各ロールを表1のスピードになるように調整した。ロールAとBの間から発生する霧状のシリコーン粒子(ミスト)量をトランステック株式会社製パーテイクルカウンター8520DustTrak(商標)を用い1分間測定した。
【表1】

表2に、比較例2の組成物で発生したミスト量を100としたときの、実施例2及び3の各組成物におけるミストの減少率、 [(比較例2のミスト量‐実施例2又は3のミスト量)/比較例2のミスト量]×100、を表示した。
【表2】

表2から、本発明のミスト抑制剤(M−1)を含有することにより、高速塗工時のミストの発生量を顕著に低減できることが分かる。
【0037】
実施例4 コーティング組成物の調製
ミスト抑制剤M−1を2.0質量部配合した点を除き、実施例2と同様にして組成物を調製し、下記の剥離力及び残留接着率の測定を行った。
【0038】
実施例5 コーティング組成物の調製
ミスト抑制剤M−1を6.0質量部配合した点を除き、実施例2と同様に組成物を調製し、下記の剥離力及び残留接着率の測定を行った。
【0039】
参考例1 コーティング組成物の調製
ミスト抑制剤(M−1)を12.0質量部配合した点を除き、実施例2と同様に組成物を調製し、下記の剥離力及び残留接着率の測定を行った。
【0040】
剥離力及び残留接着率測定用硬化皮膜の生成
シリコーン組成物を調製直後、ポリエチレンラミネート紙にシリコーン組成物を1.0g/m2となるように塗布し、160℃の熱風式乾燥機中で10秒加熱し、硬化皮膜を形成した。
【0041】
剥離力の測定
上記の方法で得られた硬化皮膜の表面に、アクリル系粘着剤 BPS−5127(東洋インキ株式会社製)を塗布して100℃で3分間加熱した。次に、粘着剤を塗布した面に上質紙を貼り合わせ、得られた積層フィルムから、5cm幅× 18cm長さの試料を切り出し、これを室温で1日間エージングさせたものを試料とした。引っ張り試験機を用いて該試料の積層フィルムの、硬化皮膜からアクリル系粘着剤層を180°の角度で剥離速度0.3m/分で剥離するのに要した力を測定して剥離力とした。
【0042】
残留接着率
上記の方法で得られた硬化皮膜の表面に、ポリエステルテープ(ニットー31B、日東電工株式会社製)を貼り合せ、1976Paの荷重をかけ、70℃で20時間加熱処理してから、このテープを剥がした。剥離されたテープをステンレス板に貼り付け、引っ張り試験機を用いて該テープをステンレス板から剥離するのに要した力を上記剥離力試験と同様の方法で測定した。
参照試料として、ポリエステルテープをステンレス板に貼り付け、該テープをステンレス板から剥離するのに要した力を測定し、該参照力に対する上記の剥離力の百分率を残留接着率とした。数値が大きいものほど、硬化皮膜からテープへのシリコーン成分の移行が少なく、硬化皮膜が剥離性に優れることを示す。
【表3】

実施例4、5から、本発明のミスト抑制剤(M−1)を含有した場合でも、粘着剤を剥離することができ、本発明の組成物が剥離紙用ミスト抑制剤として有用なことがわかった。参考例に示すように、該ミスト抑制剤の濃度が高い場合には、剥離性を低下させる場合があるが、剥離紙以外の用途においてミスト発生を抑制する目的で使用するのには何ら問題は無い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上示したように、本発明のミスト抑制剤は、ミストの抑制効果だけでなく、保存安定性に優れ、コーティング用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ミスト発生実験で使用した5本のロールから成るコーターヘッドの概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ミスト
2 シリコーンコーティング組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無溶剤型シリコーンコーティング組成物用のミスト抑制剤であって、
(a)下記で表されるポリオルガノシロキサン(1)の残基からなる構成単位と、
【化1】

1は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基でありnは10〜1500である、
(b)1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基からなる構成単位と、
を有するポリオルガノシロキサン(I)からなるミスト抑制剤。
【請求項2】
粘度が100〜3000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載のミスト抑制剤。
【請求項3】
構成単位(b)が、下記平均式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンの残基からなることを特徴とする請求項1又は2記載のミスト抑制剤、
【化2】

2は、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、kは2以上の数であり、mは0以上の数であり、α及びβは0〜3の整数であり、且つ、ポリオルガノシロキサン(1)中のSiOH結合のモル数に対する全SiH結合のモル数比(SiH/SiOH)が10以上となる数である。
【請求項4】
無溶剤型シリコーンコーティング組成物用のミスト抑制剤を製造する方法であって、
下記式で表されるポリオルガノシロキサン(1)と、
【化3】

1は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基でありnは10〜1500である、
1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを、(II)スズ化合物触媒の存在下で反応させる方法。
【請求項5】
1分子中に少なくとも2個のSiH結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、下記式で表されることを特徴とする請求項4記載の方法
【化4】

2は、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、kは2以上の数であり、mは0以上の数であり、α及びβは0〜3の整数であり、且つ、ポリオルガノシロキサン(1)中のSiOH結合のモル数に対する全SiH結合のモル数比(SiH/SiOH)が10以上となる数である。
【請求項6】
下記を含む無溶剤型シリコーン組成物と、
(III)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつアルケニル基含有量が0.002〜0.60mol/100gであり、25℃での粘度が50〜100000mPa・sのオルガノポリシロキサン 100質量部
(IV)SiH結合を少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンで、SiH結合のモル数がオルガノポリシロキサン(III)中のアルケニル基の0.5〜5倍モルに相当する質量部、及び
(V)触媒量の白金族金属系化合物、
請求項1〜3のいずれか1項記載のミスト抑制剤と、
を含有することを特徴とするコーティング組成物。
【請求項7】
ミスト抑制剤を、オルガノポリシロキサン(III)100質量部に対して、0.1〜10質量部含むことを特徴とする請求項6記載のコーティング組成物。
【請求項8】
オルガノポリシロキサン(III)が、下記平均式(3) で表されるものであることを特徴とする請求項6または7に記載のコーティング組成物、
【化5】

式中、R3は同一または異種の置換されていてよい炭化水素基、
4は−(CH2c−CH=CH2(cは0〜6の整数)で表されるアルケニル基であり、aは0≦a≦3、bは0<b≦3、及び1≦a+b≦3である。
【請求項9】
オルガノハイドロジエンシロキサン(IV)が、下記平均式(4)表されるものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載のコーティング組成物、
【化6】

式中R5は脂肪族不飽和結合を含まない、炭素数1〜8の置換されていてよい一価の炭化水素基であり、d、eは0.7≦d≦2.1、0.001≦e≦1.0、かつ0.8≦d+e≦2.6を満たす数である。

【図1】
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【公開番号】特開2006−290919(P2006−290919A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109083(P2005−109083)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】