説明

シリコーン分散物及びその製造方法

【課題】粘度の高いシリコーン油を含む微細な分散粒子を高濃度に含有するシリコーン分散物、及び、該シリコーン分散物を高効率で製造可能な製造方法の提供。
【解決手段】(a)20質量%以上45質量%以下の25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、(b)10質量%以上20質量%以下のポリエーテル変性シリコーン、及び、(c)5質量%以上の炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物、を含有し、分散物中における分散粒子の平均粒子径が100nm以下であるシリコーン分散物、並びに、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン分散物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン油は、化粧料に油分として配合することによる感触改善や保護皮膜形成、各種基材の表面改質などの多種の目的に使用されている。シリコーン油は非水溶性であるため、水性の製品に配合する場合には、シリコーン油を含む分散物として配合することが一般的である。
【0003】
シリコーン油などの油分を含む分散物に関しては、分散剤を使用して油分を分散してなる分散物が開示されている。例えば、特許文献1には、室温で液状のオルガノポリシロキサン、ポリエーテルで変性された特定構造を有するシリコーン系乳化剤、及び水を含有するエマルジョン組成物が開示される。特許文献2には、低級アルコールを主体とした外相中に、特定構造のポリエーテル変性シリコーンである乳化剤を用いて、シリコーン油などの各種油分を分散させたアルコール・水中油型乳化組成物が開示される。特許文献3には、非水性極性溶媒及び炭化水素流体やシリコーン溶媒などの非極性溶媒と、オキシアルキレン含有ポリアジアルガノシロキサンである両新媒性物質とを用いてなるマイクロエマルションが開示される。特許文献4には、低粘度のシリコーン油、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系界面活性剤、及び親水性界面活性剤を特定比率で含有し透明ないし半透明な水中油型乳化化粧料が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−51634号公報
【特許文献2】特許3417567号明細書
【特許文献3】特表2005−509048号公報
【特許文献4】特許3484300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護皮膜形成や基材の表面改質などを目的として、シリコーン油を分散物中に配合する場合、粘度の高いシリコーン油を用いることが、分散物の安定性や化粧料等に用いた場合には皮膚等に対する低刺激性の観点から有用である。かかる場合において、分散物の色味等の外観を変化させることなく、分散物中にシリコーン油を配合するには、シリコーン油を含む分散粒子は微粒子化されていることが望ましい。また、生産性の面からは、有効成分であるシリコーン油は、分散物中に極力高濃度に配合されることが望ましい。
【0006】
このように、粘度の高いシリコーン油が、微細な分散粒子として高濃度に配合されたシリコーン分散物が要求されている。しかしながら、シリコーン油の粘度が高くなると、微細な分散粒子とすることは極めて困難となることから、かかる分散物は未だ提供されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、前記状況に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、粘度の高いシリコーン油を微細な分散粒子として高濃度に含有するシリコーン分散物、及び、該シリコーン分散物を高効率で製造可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1>(a)20質量%以上45質量%以下の25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、(b)10質量%以上20質量%以下のポリエーテル変性シリコーン、及び、(c)5質量%以上の炭炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物、を含有し、分散物中における分散粒子の平均粒子径が100nm以下であるシリコーン分散物。
<2> 前記分散体の平均粒子径が、80nm以下である前記<1>に記載のシリコーン分散物。
<3> 前記炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物が、室温(25℃)下において水と等質量で混合した際に、水との相溶性を有する化合物である前記<1>又は<2>に記載のシリコーン分散物。
<4> 前記ポリエーテル変性シリコーンが、親水性基として、ポリオキシエチレン基を有する前記<1>〜<3>のいずれかに記載のシリコーン分散物。
<5> 前記シリコーンオイルの25℃で測定した動粘度が、50mm/s以上5,000mm/s以下である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシリコーン分散物。
<6> 前記シリコーン油が、ポリジメチルシロキサンである前記<1>〜<5>のいずれかに記載のシリコーン分散物。
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のシリコーン分散物の製造方法であって、25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン、及び炭炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物、を含む混合物を高圧乳化により乳化分散すること、を含むシリコーン分散物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘度の高いシリコーン油を含む微細な分散粒子を高濃度に含有するシリコーン分散物、及び、該シリコーン分散物を高効率で製造可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシリコーン分散物及びその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
(1)シリコーン分散物
本発明のシリコーン分散物(以下、適宜「本発明の分散物」とも称する。)は、(a)20質量%以上45質量%以下の25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、(b)10質量%以上20質量%以下ポリエーテル変性シリコーン、及び(c)5質量%以上の炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物(以下、適宜「特定アルコール化合物」とも称する)、を含有し、分散物中における分散粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の分散物は、上記構成を有することにより、粘度の高いシリコーン油を、平均粒子径が100nm以下の微細な分散粒子として、分散物中に高濃度に含有させることができる。
【0014】
本発明の分散物における上記の特徴は、(a)高粘度のシリコーン油及び(b)ポリエーテル変性シリコーンと共に、(c)特定アルコール化合物を用いることにより、高粘度のシリコーン油を高濃度で分散物に含有させる場合であっても、平均粒子径が100nm以下の微細な分散粒子を含む分散物が形成可能であるという、本発明者の知見に基づくものである。
即ち、特定アルコール化合物を用いることなく、高粘度のシリコーン油とポリエーテル変性シリコーンを用いて分散物を調製する場合、シリコーン油の含有量が多くなるにしたがって、分散が困難となり、分散粒子の粒子径が増大してしまう。分散粒子の粒子径の増大は、分散物に濁りを生じさせることから、分散物の色味や透明性などの外観が損なわれるといった問題が生じる。これに対し、本発明の分散物では、高粘度のシリコーン油を、特定量のポリエーテル変性シリコーンと特定アルコール化合物と共に含有させることで、高粘度のシリコーン油を高濃度に含有させる場合であっても、平均粒子径100nm以下の微細な分散粒子として安定に分散させることができるというものである。
【0015】
本発明の分散物は、水相(特定アルコール相又は特定アルコール・水混合相)に、シリコーン油を少なくとも含有する分散粒子を分散させて油相として構成された分散物(O/W型分散物)であることが好ましい。
【0016】
本発明の分散物における分散粒子は、平均粒子径が100nm以下であり、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることが更に好ましい。分散粒子の平均粒子径の下限値については、特に限定はされないが、10nm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明における分散粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。
粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における分散粒子の粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用すること好ましい。
動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0018】
本発明における分散粒子の粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(製品名、大塚電子(株)製)を用いて測定した値であり、具体的には、以下のように計測した値を採用する。
即ち、本発明における分散粒子の粒子径は、本発明の分散物から分取した試料に含まれるシリコーン油成分の濃度が0.3質量%になるように純水で希釈を行い、上記装置(FPAR−1000)を用いて標準測定条件で測定したときの、キュムラント解析により得られる平均粒径として求めることができる。
【0019】
以下、本発明のシリコーン分散物が必須及び任意に含む各種の成分について説明する。
【0020】
(A)シリコーン油
本発明の分散物は、25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油を含有する。該シリコーン油の動粘度は、50mm/s以上5,000mm/s以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明におけるシリコーン油の粘度は、日本工業規格が定める測定方法(JIS Z 8803)により求めることができる。
【0022】
本発明の分散物が含有するシリコーン油は、25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下という高い粘度を有するシリコーン油であり、本発明の分散物においては該シリコーン油を、平均粒子径100nm以下の微細な分散粒子として高濃度に含有させることができる。動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下であるシリコーン油を微細な分散粒子として、分散物中に高濃度に含有することは、分散物中からのシリコーン油の揮発が抑制されることにより、シリコーン油の含有により奏せられる所期の効果が分散物の外観等を変化させることなく持続的に得られると共に、優れた経時安定性をも発揮する。
このため、例えば、本発明の分散物を保護皮膜形成や基材の表面改質などに適用した場合には、持続性のある保護皮膜の形成や表面改質を得ることができる。また、本発明の分散物を化粧料などに適用した場合においては、皮膚刺激性を低減させることができる。
【0023】
本発明に適用されるシリコーン油の例としては、直鎖状、一部分岐した鎖状、又は分岐状のポリオルガノシロキサン、及び、該ポリオルガノシロキサンが有するアルキル基の一部又は全部を、シラノール基、ビニル基、アルコキシル基、エポキシ基、メタクリル基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール基、又はアミノ基等の官能基により置換した変性シリコーン油が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンの例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等が挙げられる。
【0024】
更に、シリコーン油としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のSH200 C Fluid(動粘度:20〜5000mm/sのもの)、2−2078 Fluid、信越化学工業(株)製のKF−96(動粘度:20〜10000mm/sのもの)、KF−50−100CS、KF−50−1000cs、KF−53、KF−54、KF−8004、KF−867S、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X22−164E、X−22−167B、X−22−162C、X−22−1821、X−21−5841、KF−9701、KF−857、KF−862、KF−868、KF−859、KF−101、KF−102、KF−1002、KF−2001、KF−2004、KF−99、KF−8012、KF−8008、X−22−161A、X−22−161B(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0025】
シリコーン油としては、化粧料等に使用する際に良好な使用感を付与できる点から、ポリジメチルシロキサンであることが特に好ましい。
【0026】
シリコーン油は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の分散物におけるシリコーン油の含有量としては、分散物の全質量に対し、20質量%以上45質量%以下であり、25質量%以上40質量%以下がより好ましく、30質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。
シリコーン油の含有量が、20質量%未満であると、特定アルコール化合物を含有することによる微粒子化効果が不十分となり、45質量%を超えると、分散物の経時安定性が損なわれる。
【0028】
(B)ポリエーテル変性シリコーン
本発明の分散物は、ポリエーテル変性シリコーンを含有する。ポリエーテル変性シリコーンは、本発明の分散物において、分散剤として機能しうる成分である。
【0029】
本発明においてポリエーテル変性シリコーンとは、分子構造中に、疎水性のポリオルガノシロキサン鎖と親水性基であるポリオキシアルキレン基とを有する共重合体である。
ポリエーテル変性シリコーンが有するポリオキシアルキレン基は、ポリオルガノシロキサン鎖の末端及び/又は側鎖に導入されていることが好ましい。該ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられ、化粧料に使用する際に良好な保湿性を付与できる点からは、ポリオキシエチレン基であることがより好ましい。
【0030】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、等の共重合体が挙げられる。
【0031】
更に、ポリエーテル変性シリコーンとしては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のSH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、SH3749、BY22−008、BY25−337、BY25−339、FZ−2222、FZ−2233、FZ−2250、信越化学工業(株)製のKF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6016、KF−6017、KF−6004、KF−6028、KF−6038、KF−6043、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSF4440、SF1188A、SILSOFT305、SILSOFT430、SILSOFT440、SILSOFT475、SILSOFT805、SILSOFT810、SILSOFT840、SILSOFT870、SILSOFT875、SIOSOFT880、SILSOFT895(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0032】
ポリエーテル変性シリコーンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の分散物におけるポリエーテル変性シリコーンの含有量は、分散物の全質量に対し、10質量%以上20質量%以下の範囲であり、10質量%以上18質量%以下の範囲であることが好ましく、12質量%以上18質量%以下の範囲であることがより好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、10質量%未満であると、分散粒子の微粒子化効果が不十分となる。一方、ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、20質量%を超えると、分散粒子の微粒子化効果が不十分となるだけでなく、分散物の粘度が著しく上昇してしまい、例えば化粧料などに適用した際に使用感を損なう。
【0034】
本発明の分散物の利点の一つとしては、分散剤の含有量を従来のシリコーン分散物に比してより低く設定した場合においても、微細な粒子径の分散粒子が得られることが挙げられる。
例えば、シリコーン分散物を化粧料等に適用する場合であれば、皮膚等に対する刺激性低減の観点から、分散剤は極力低濃度で含有されることが望まれるが、本発明の分散物においては、分散剤の含有量を従来に比して、より低くすることができることから、より皮膚刺激性の低い分散物とすることができる。
【0035】
(C)炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物
本発明の分散物は、炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物(特定アルコール化合物)を含有する。特定アルコール化合物は、本発明の分散物において、水相を構成する水性媒体の一つとして含有されることが好ましい。
【0036】
特定アルコール化合物は、炭素原子を1〜6含む有機残基と1つ又は2つのヒドロキシ基とから構成される化合物である。
ヒドロキシ基数が1又は2の範囲外のアルコール化合物では、分散粒子の微粒子化の効果が得られない。また、炭素原子数が1〜6の範囲外のアルコール化合物では、水溶性が不十分か、水溶性があっても分散物の粘度が高くなってしまい、化粧料等に使用する場合の使用感を損なう。
特定アルコールが含む有機残基が含む炭素原子数は1〜6であり、炭素原子数3〜6の有機残基であることがより好ましい。
また、炭素原子を1〜6含む有機残基の分子構造としては、脂肪族残基、カルボン酸エステル残基、脂肪族エーテル残基、脂肪族ケトン残基、脂肪族アルデヒド残基等が挙げられる。
【0037】
本発明の分散物は、水相を構成する水性媒体として、特定アルコール化合物のみを含むものであってもよく、特定アルコール化合物と水との混合媒体であってもよいが、特定アルコール化合物と水との混合媒体であることが好ましい。かかる観点から、特定アルコール化合物は、室温(25℃)下において水と等質量で混合した際に、水との相溶性を有する化合物であることが好ましい。
【0038】
本発明の分散物が、特定アルコール化合物及び水の双方を含有する場合、その含有比率としては、特定アルコール化合物/水(質量比)が、1/15〜95/1が好ましく、1/10〜8/1がより好ましく、1/8〜3/1がさらに好ましい。
【0039】
特定アルコール化合物の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、メトキシメタノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、メトキシペンタノール、エトキシメタノール、エトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシブタノール、プロポキシメタノール、プロポキシエタノール、プロポキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロプロピルカルビノール、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、酢酸ヒドロキシエチル、アンヒドロエリトリトール、グリセロールホルマール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジヒドロキシアセトン、モノアセチン、グリコール酸メチル、乳酸メチルがより好ましく、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパノール、モノアセチン、乳酸メチルが更に好ましい。
【0040】
特定アルコール化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の分散物における特定アルコール化合物の含有量は、分散物の全質量に対し、5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましい。また、特定アルコール化合物の含有量の上限は、前記シリコーン油及びポリエーテル変性シリコーンの含有量の範囲と整合する範囲において特に制限されない。特定アルコール化合物の含有量としては、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
特定アルコール化合物の含有量が、5質量%未満であると、分散粒子の微粒子化効果が不十分となる。
【0042】
また、本発明の分散物におけるポリエーテル変性シリコーンと特定アルコール化合物との含有比率としては、ポリエーテル変性シリコーン/特定アルコール化合物(質量比)で、
1/7〜4/1が好ましく、1/7〜3/1がより好ましく、1/6〜1/1がさらに好ましい。
【0043】
(D)他の成分
本発明の分散物は、上述した(A)〜(C)の各成分の他に、本発明の効果を損ねない範囲において、種々の他の成分を含むことができる。
【0044】
他の成分としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩等の保湿剤、流動パラフィン、スクワラン、高級アルコール、各種エステル油等の油分、ポリビニルピロリドン等の樹脂類、大豆蛋白、ゼラチン、コラーゲン、絹フィブロイン、エラスチン等の蛋白又は蛋白分解物、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、各種アミノ酸、ビオチン、パントニン誘導体等の賦活剤、γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線錯乱剤、香料、色剤などが挙げられる。
【0045】
本発明の分散物は、例えば、化粧料、表面処理剤、表面保護剤、艶出し剤などの広範囲な用途に適用することができる。
【0046】
本発明の分散物は、以下に詳述する高圧乳化による乳化分散処理を適用したシリコーン分散物の製造方法(本発明の製造方法)により、好適に製造することができる。
【0047】
(2)シリコーン分散物の製造方法
本発明のシリコーン分散物の製造方法(以下、適宜、「本発明の製造方法」と称する。)は、25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、及びポリエーテル変性シリコーンを含む油相と、炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物を含む水相と、を高圧乳化により乳化分散すること、を含む。
本発明の製造方法により、高粘度のシリコーン油を含む平均粒子径が100nm以下の分散粒子を含有する前述した本発明の分散物を、高効率に製造することができる。
【0048】
本発明の製造方法としては、例えば、a)特定アルコール化合物((c)成分)及び水を混合してなる水性媒体に、必要により任意成分を溶解させて、水相を得、b)シリコーン油((a)成分)、及びポリエーテル変性シリコーン((b)成分)を混合して、油相を得て、c)得られた水相と油相とを混合して、高圧乳化により乳化分散を行い、分散物を得る、ステップからなる製造方法が好ましい。
【0049】
本発明の製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明の分散物の含有成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0050】
乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜70/30が好ましく、0.5/99.5〜60/40がより好ましく、1/99〜50/50が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないため分散物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を70/30以下とすることにより、分散物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0051】
乳化分散は、1ステップの乳化操作により行ってもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが、均一で微細な分散粒子が得られることから好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置、超音波分散機、等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作(粗分散)に加えて、高圧ホモジナイザーを通して乳化操作する2種以上の乳化装置を併用することが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴(分散粒子)に揃えることができる。また、乳化操作は、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
【0052】
高圧ホモジナイザーには、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するチャンバー型高圧ホモジナイザー及び均質バルブを有する均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。これらの中では、均質バルブ型高圧ホモジナイザーは、処理液の流路の幅を容易に調節することができるので、操作時の圧力及び流量を任意に設定することができ、その操作範囲が広いため特に食品や化粧品などの乳化分野で広く用いられている。これに対し、操作の自由度は低いが、圧力を高める機構が作りやすいため、超高圧を必要とする用途にはチャンバー型高圧ホモジナイザーが用いられる。
【0053】
チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0054】
高圧ホモジナイザーによる分散は、液体が非常に狭い(小さな)間隙を高速度で通過する際に発生する大きな剪断力によるものと考えられる。この剪断力の大きさは、ほぼ圧力に比例し、高圧になればなるほど液体中に分散された粒子にかかる剪断力すなわち分散力は強くなる。しかし、液体が高速で流れるときの運動エネルギーの大半は熱に変わるため、高圧になればなるほど液体の温度は上昇し、これによって分散液成分の劣化や粒子の再凝集が促進されることがある。従って、高圧ホモジナイザーの圧力は最適点が存在するが、その最適点は分散される物、狙うべく粒径によっても異なると考えられる。
【0055】
本発明において乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、有効成分の安定性の観点から0〜100℃であることが好ましい。
本発明において、ホモジナイザーの圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50MPa〜250MPa、更に好ましくは100MPa〜250MPaで処理することが好ましい。また、乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0057】
(実施例1)
1.油相の調製
下記の成分を、マグネチックスターラーを用いて、25℃で、5分間混合し、油相を調製した。
・シリコーン油(商品名:SH200 C Fluid100cs(動粘度:100mm/s)、ポリジメチルシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製) ・・・20部
・ポリエーテル変性シリコーン(商品名:SH3773M、PEG−12ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製) ・・・10部
【0058】
2.水相の調製
下記の成分を、マグネチックスターラーを用いて、25℃で、1分間混合し、水相を調製した。
・ジプロピレングリコール ・・・15部
・水 ・・・55部
【0059】
3.粗分散
上記にて調製した水相及び油相を混合した混合液を、(株)日本精機製作所製の超音波分散機「UL−600」を用いて1分間粗分散することにより粗分散液を得た。
【0060】
4.高圧乳化
得られた粗分散液を、アルティマイザーHJP−25005(株式会社スギノマシン製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
【0061】
以上により、実施例1のシリコーン分散物を調製した。
【0062】
[実施例2〜19、比較例1〜11]
実施例1において、油相及び水相の調製に用いた各成分の種類及び量を、下記表1〜表3に示す種類及び量に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜19、比較例1〜11の各シリコーン分散物を調製した。
【0063】
なお、各実施例及び比較例に用いた特定アルコール化合物としては、全て和光純薬工業(株)より販売されている試薬(和光一級グレード)を用いた。
【0064】
実施例5〜7、比較例8〜9に用いたポリエーテル変性シリコーンは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社より入手できるTSF4440(商品名、PEG−9ジメチコン)である。
【0065】
<評価>
−粒子径測定−
上記で得られたシリコーン分散物1.0gを分取し、(a)シリコーン油の濃度が0.3質量%になるように適宜純水で希釈した後、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行った。得られた分散物の水希釈液に含まれる分散粒子の粒子径について、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を使用して測定した。
結果を、下記表1〜表3に示す。

【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表1〜表3に示されるように、実施例の各シリコーン分散物は、分散粒子がいずれも100nm以下の平均粒子径を有するものであることがわかる。
一方、特定アルコール化合物を用いていない比較例1〜3のシリコーン分散物では、100nm以下の微細な平均粒子径を達成できず、シリコーン油の含有量が増加するにしたがって分散粒子の粒子径が粗大化していることが分かる。
また、比較例1、4〜8の結果からは、シリコーン油の含有量が低い領域では、特定アルコール化合物の使用の有無にかかわらず、分散粒子の粒子径はほとんど変化していない。このことは、特定アルコール化合物の使用は、実施例のシリコーン分散物のごとく、シリコーン油の含有量が高い領域において、高粘度のシリコーン油の微粒子化に特異的な効果を発揮することを示している。
更に、比較例5〜8の結果より、ポリエーテル変性シリコーンと特定アルコール化合物の含有比率が特定の範囲内でない場合、分散粒子の微粒子化効果は不十分であることがわかる。
以上の結果から、高粘度のシリコーン油を100nm以下に微粒子化するためには、(a)シリコーン油、(b)ポリエーテル変性シリコーン、(c)特定アルコール化合物を特定の含有比率にて用いることが必須であることが確認された。
【0070】
また、実施例2、8〜16及び比較例3、10、11の結果からは、特定アルコール化合物以外のアルコール化合物を用いても、分散粒子の微粒子化効果は得られないことがわかる。このことは、特定アルコール化合物が分散粒子の微粒子化に特異的な効果を発揮することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20質量%以上45質量%以下の25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、
(b)10質量%以上20質量%以下のポリエーテル変性シリコーン、及び、
(c)5質量%以上の炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物、
を含有し、分散物中における分散粒子の平均粒子径が100nm以下であるシリコーン分散物。
【請求項2】
前記分散粒子の平均粒子径が80nm以下である請求項1に記載のシリコーン分散物。
【請求項3】
前記炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物が、室温(25℃)下において水と等質量で混合した際に、水との相溶性を有する化合物である請求項1又は請求項2に記載るシリコーン分散物。
【請求項4】
前記ポリエーテル変性シリコーンが、親水性基としてポリオキシエチレン基を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシリコーン分散物。
【請求項5】
前記シリコーン油の25℃で測定した動粘度が、50mm/s以上5,000mm/s以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシリコーン分散物。
【請求項6】
前記シリコーン油が、ポリジメチルシロキサンである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシリコーン分散物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のシリコーン分散物の製造方法であって、
25℃で測定した動粘度が20mm/s以上10,000mm/s以下のシリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン、及び炭素数1〜6であり且つヒドロキシ基数が1又は2であるアルコール化合物、を含む混合物を高圧乳化により乳化分散すること、
を含むシリコーン分散物の製造方法。

【公開番号】特開2012−153802(P2012−153802A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14197(P2011−14197)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】