説明

シリコーン含有結合によって架橋された不均質タンパク質ネットワーク、およびそれらを生成する方法

不均質架橋剤によって架橋された生体適合性不均質タンパク質性ネットワークを生成するための方法、および新規な不均質架橋されたネットワーク。好ましい不均質架橋剤は、シリコーンベースである。シリコーン含有架橋剤によって連結されたケラチンネットワークを作製するための方法は、反応性ペンダント基を含む複数のα−ケラチン分子を、該架橋剤上の第1反応性官能基と該α−ケラチン分子の第1基上の1以上の第1反応性部分を含む第1反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効な条件下で該架橋剤に曝露させる工程を包含し、該条件はまた、該架橋剤上の第2反応性官能基と、α−ケラチン分子の第2基上の1以上の第2反応性部分を含む第2反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、以下の出願の優先日を主張する:2002年4月26日出願の米国特許出願第10/133,885号。必要とされ得る場合、優先権が主張される関連出願は、2002年4月22日出願の米国特許出願第10/127,523号、2002年4月10日出願の米国特許出願第10/119,477号;および2002年7月5日出願の米国仮出願第60/393,958号。関連出願は、米国仮出願第60/324,709号の利益を主張する、2002年9月25日出願の出願番号第10/254,364号である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、グルタルアルデヒド以外の不均質架橋剤(好ましくは、シリコーンベースの架橋剤)によって架橋された生体適合性不均質タンパク質性ネットワークを生成するための方法に関する。ネットワークを形成する際に使用するための好ましいタンパク質は、α−ケラチン、または高分子量ケラチン(HMWK)である。架橋剤は、好ましくは、ケラチン分子上に存在している反応性ペンダント基と反応し、そして副産物を生じないか、生体適合性副産物(例えば、水素、水および二酸化炭素)を産生するか、またはネットワークから除去され得る副産物を生じるかのいずれかである。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
タンパク質(例えば、ケラチンタンパク質)は、損傷を受けた上皮組織を治癒する際に有益である。残念なことに、ケラチンタンパク質の化学的特性および操作特性は、酸化科学および還元化学、ならびに側鎖タンパク質架橋を使用して達成されるものに比較的限定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンパク質ベースの材料の可能な用途が拡大され得るように、幅広い範囲の化学的特性および操作特性を有するフィルムを形成するための、タンパク質およびタンパク質(好ましくは、α−ケラチン)を架橋する方法についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
シリコーンベースの架橋剤によって連結されたケラチンネットワークを作製するための方法が提供され、この方法は、反応性ペンダント基を含む複数のα−ケラチン分子を、この架橋剤上の第1反応性官能基とこのα−ケラチン分子の第1基上の第1反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効な条件下で、多官能性シリコーンベース架橋剤に曝露させる工程を包含し、この条件はまた、この架橋剤上の第2反応性官能基と、α−ケラチン分子の第2基上の第2反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効である。
【0006】
また提供されるのは、シリコーンベース架橋剤の複数の分子上の第1反応性官能基と複数の第1α−ケラチン分子上の第1反応性ペンダント基との間の第1共有結合、およびこのシリコーンベース架橋剤の複数の分子上の第2反応性官能基と複数の第2α−ケラチン分子上の第2反応性ペンダント基との間の第2共有結合を含むタンパク質間架橋を含むα−ケラチン分子から本質的になるタンパク質性材料を含むネットワークである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、(好ましくは、不均質タンパク質性ネットワークまたはフィルムを形成するために、グルタルアルデヒド以外の不均質架橋剤を使用して)タンパク質を架橋するための方法に関する。本明細書中で使用される場合、用語「不均質」とは、(好ましくは、少なくとも約50kDa(好ましくは、約50kDa〜約85kDa)の比較的高い分子量を有するタンパク質分子またはそれらの誘導体を含む)タンパク質性ネットワークまたはフィルムをいう。このタンパク質分子は、シリコーンベースの架橋材料によって連結される。
【0008】
本明細書中に記載される方法は、広範な種々のタンパク質を処理してネットワーク構造(好ましくはエラストマーフィルム)を形成するために用いられ得る。天然に存在する適切なタンパク質の例としては、ケラチン、コラーゲンおよびエラスチンが挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。タンパク質は、天然物であっても、合成物であっても、または組換え物であってもよい。好ましいタンパク質は、システイン含有量が比較的高い。最も好ましいタンパク質は、ケラチンタンパク質であり、さらにより好ましくはα−ケラチンタンパク質(時々、高分子量ケラチン(HMWK)とも呼ばれる)である。
【0009】
ケラチンタンパク質の好ましい供給源は、毛または毛皮である。毛は、動物またはヒトの毛であり得る。ケラチンは、脊椎動物の表皮細胞において見出される、硬化および不溶化したタンパク質として、大まかに定義される。ヒトの毛は、ほぼ完全にケラチンから構成される。
【0010】
ヒトの毛は、小皮を有し、これは、鱗片状の重なり合う外形で配置された平坦な細胞から作製された堅い管状外層である。毛の内側の大部分は、皮質と呼ばれ、そして線維性ケラチンが高密度に充填された細長い細胞から構築される。線維性ケラチンは、細線維といわれる束状に配置され、そしてαへリックス三次構造を保有する。細線維は、無定形ケラチンマトリックスと結合される。
【0011】
無定形ケラチンマトリックスおよび細線維は、機能および組成が変動する。このマトリックスは、細線維を一緒に保持する「接着剤」である。このマトリックス「接着剤」は、硫黄含有量が高く、そして代表的に約10kDa〜約15kDaの平均分子量を有する低分子量ケラチン(LMWK)から構成される。細線維は、比較的低い硫黄含有量を有するが、代表的に約50kDa〜約85kDaのより高い平均分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)から構成される。HMWKおよびLMWKは、化学的特性(例えば、反応性および溶解度)が変動する。
【0012】
ケラチンは、それらの構造的完全性を、ポリペプチド鎖の三次元ネットワークを形成するジスルフィド架橋の存在によって大部分与えられる。このネットワーク構造によって、ケラチンが不溶性になる。しかし、ケラチンは、ジスルフィド結合切断によりこの三次元構造を破壊することによって水溶性にされ得る。ジスルフィド結合の切断は、酸化的、還元的、または両方の型の結合切断のいくつかの組合せを使用してのいずれかで行われ得る。例えば、過酸化水素を用いた酸化的結合切断により、シスチンから生成されるスルホン酸残部が形成される。ジスルフィド結合の切断のための過酸化水素を使用して産生される材料は、非常にイオン性であり、そして優れた水溶性を有する。例えば、メルカプトエタノールを用いる還元的結合切断により、シスチンから作り出されるシステイン残部が形成される。この還元技術を用いて生成される材料は、非常に反応性であり、そして容易に再架橋される。
【0013】
(ジスルフィド結合の切断およびケラチン抽出)
このタンパク質(好ましくは、α−ケラチン)は、架橋反応を生じるための反応媒体中にこれらを充分に可溶性にする任意の様式で、加工および/または単離され得る。以下に記載の多数の反応は、無水溶媒を必要とする。当業者は、無水溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドンなどが挙げられるがこれらに限定されない多数の溶媒を包含することを認識する。一般に、この反応は、少なくともいくらかの水の存在を必要とする。
【0014】
(システイン残基の酸化/還元)
原料物質(例えば、ヒトの毛)としてケラチンを使用する好ましい実施形態では、毛は、適切な酸化剤によって酸化される。適切な酸化剤としては、過酸化水素、過酢酸、ペルカルボネート、ペルスルホネート、二酸化塩素、過酸化ナトリウムおよび過酸化カルシウム、ペルボレートおよびハイポクロリドが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。これらのオキシダントは、約35%までの(好ましくは約0.1%〜約10%の)濃度で用いられる。酸化は、好ましくは、還流温度で行われる。
【0015】
好ましい実施形態において、毛は、小皮を破壊して、ケラチン原料物質を膨潤させるために、約0.1%〜約10%の(最も好ましくは1%の)過酸化水素(H)で処理される。このプロセスはまた、シスチン残基のうちの一部分をスルホン酸基に変換する。酸化の量は、他の酸化反応条件を一定に保ちながら、酸化時間を(好ましくは、約0時間〜約4時間)変動させることによって制御され得る。これらの条件としては、オキシダントの濃度および種類、温度、および抽出媒体のケラチン原料物質に対する比が挙げられる。反応が完了すると、酸化した毛は、濾過され、そして(好ましくは、脱イオン水を用いて)リンスされる。濾液を廃棄し、そして毛を乾燥させる。
【0016】
他の酸化条件が一定に保たれる場合、スルホン酸残基へのシスチンの変換速度は、酸化のために使用される時間量にほぼ比例する。得られる酸化したケラチン固体中の残りのシスチンは、還元技術を使用して、他の硫黄含有部分へと変換される。好ましくは、ジスルフィド架橋されたシスチン基は、チオール基に変換され、チオール基は、独自の有用性を有するか、または種々の化学技術を使用して改変され得る。
【0017】
(還元剤を用いた反応)
酸化される場合、酸化された毛は、好ましくは、還元剤で処理される。酸化されたケラチンタンパク質の、還元剤を用いた処理は、シスチンからのシステインの形成を促進するが、予め酸化された基を不変のままにする傾向がある。適切な還元剤としては、チオグリコール酸およびその塩、メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、チオグリセロール、チオ乳酸、グルタチオン、システイン、硫化ナトリウムおよび水硫化ナトリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい還元剤は、チオグリコール酸およびメルカプトエタノールであり、最も好ましくはチオグリコール酸である。
【0018】
酸化された毛を還元剤で処理するために、予め酸化された毛は、代表的には約10Nまでの、好ましくは約0.1N〜約1Nの濃度で;pH約7よりも高い、好ましくは9以上の、最も好ましくは9のpHにて;約25℃〜約80℃、好ましくは約60℃の温度にて、好ましくは約1〜約72時間、最も好ましくは24時間の期間にわたって、還元剤中に懸濁される。この反応は、不活性雰囲気(好ましくは、窒素)の下で生じる。液体画分は、公知の手段((好ましくは、不活性雰囲気下での)濾過またはカニューレ挿入および/もしくは遠心分離が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない)を使用して、あらゆる残りの固体から分離される。好ましい分離方法は、濾過である。一旦固体が除去されると、可溶性ケラチンタンパク質は、水混和性非溶媒の添加によって、または噴霧乾燥によって、溶液から単離される。水混和性非溶媒としては、再度、不活性雰囲気下での、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサンなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい非溶媒は、エタノールである。沈澱物は、公知の手段(好ましくは、濾過およびさらなる非溶媒アリコートを用いたリンスによる)を使用して、非溶媒から分離される。得られるケラチンタンパク質は、公知の技術(好ましくは、減圧下で、室温にて一晩)を使用して乾燥される。このプロセスは、スルホン酸基およびチオール基の両方を有するケラチンをもたらす。
【0019】
チオールは、アルコールと類似した反応性を保有し、そして多数の公知の有機化学反応(例えば、本明細書中に参考として援用される、McMurry,J.,Organic Chemistry,Brooks/Cole Publishing Co.,Monterey,CA(1984);Scudder,P.H.,Electron Flow in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,New York,NY(1992);Stowell,J.C.,Intermediate Organic Chemistry,John Wiley & Sons,New York,NY(1994)に記載される化学反応)を実施するために用いられ得る。チオールに対するスルホン酸の比は、酸化の後に残っている一級反応部位の量によって主に制御される。もちろん、還元率はまた、試薬濃度、反応温度および曝露時間によって影響を受ける。
【0020】
(還元的/還元的抽出)
還元化学はまた、ケラチンにおけるジスルフィド結合切断について公知である;本明細書中に参考として援用される、Wardell,J.L.,「Preparation of Thiols」,The Chemistry of the Thiol Group,Patai,S.(編),163−353頁,John Wiley & Sons,New York,NY(1974)を参照のこと。HMWKはまた、本明細書中に参考として援用されるCrewther,W.G.,Fraser,R.D.B.,Lennox,F.G.,およびLindley,H.,「The Chemistry of Keratins」,Advances in Protein Chemistry,Anfinsen,C.B.,Jr.,Anson,M.L.,Edsall,J.T.,およびRichards,F.M.(編),Academic Press,New York,191−346頁(1965)に記載されるように、少なくとも2つの還元的抽出を用いて、毛から抽出され得る。
【0021】
適切な還元剤としては、チオグリコール酸およびその塩、メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、チオグリセロール、チオ乳酸、グルタチオン、システイン、硫化ナトリウムおよび水硫化ナトリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい還元剤は、チオグリコール酸およびメルカプトエタノールであり、最も好ましくはチオグリコール酸である。
【0022】
所望のタンパク質を選択的に還元および抽出するために、毛(または他のタンパク質供給源)は、約0.1N〜約10N(好ましくは1.0N)の濃度で、還元剤中に懸濁される。毛線維の穏やかな膨潤は、約9以上のpHで(好ましくは、約9〜約10.5のpHで)達成される。それゆえ、最初の還元は、約20℃〜約100℃(好ましくは約25℃)の温度で起こる。最初の還元を達成するために必要な時間は、約4時間〜約24時間であり、最も好ましくは約12時間である。この反応は、不活性雰囲気(好ましくは窒素)下で生じる。液体画分は、公知の手段((好ましくは、不活性雰囲気下での)濾過、カニューレ挿入および/または遠心分離が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない)を使用して、残りの固体から分離される。好ましい分離方法は、濾過である。
【0023】
第2抽出は、適切な膨潤剤(好ましくは、尿素、塩基(例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム))を使用して、還元した固体について実施される。この第2抽出のための最も好ましい膨潤剤は、濃縮した尿素である。この第2抽出は、還元した線維状α−ケラチンを小皮の内部から効果的に取り出す。この第2抽出は、約1M〜約10Mの尿素(好ましくは、約7Mの尿素)にて、少なくとも約1時間(好ましくは、約1時間〜約72時間、最も好ましくは約24時間)の期間にわたって行われる。この第2抽出は、室温で行われるが、約20℃〜約100℃(好ましくは、約25℃)の温度で起こり得る。液体画分は、公知の手段を用いて空のインタクトな小皮から分離される。適切な手段としては、(好ましくは、不活性雰囲気下での)濾過、カニューレ挿入および/または遠心分離が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい分離方法は、濾過である。
【0024】
一旦小皮が除去されると、抽出されたケラチンタンパク質は、さらなる使用のために溶液中で保持され得るか、または、これらは、水混和性非溶媒への添加によって、もしくは噴霧乾燥によって、この溶液から単離され得る。水混和性非溶媒としては、再度、不活性雰囲気下での、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサンなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい非溶媒は、エタノールである。沈澱物は、公知の手段(好ましくは、濾過およびさらなる非溶媒アリコートを用いたリンスによる)を使用して、非溶媒から分離される。沈澱したタンパク質は、公知の技術(好ましくは、減圧下で、室温にて一晩)を使用して乾燥される。この乾燥したケラチンタンパク質は、粉砕されて粉末(時々、「HMWK粉末」といわれる)にされる。
【0025】
(シリコーンベースの架橋剤)
最も好ましい実施形態では、架橋剤は、多官能性シリコーンベース材料である。シリコーンは、多数の医療適用において用いられている生体適合性材料の一ファミリーである。シリコーンゲルシーティング(一形態の軽く架橋されたシリコーンポリマー)は、創傷治癒を促進して、肥大した瘢痕形成の程度を低下させる。シリコーン化学の技術は、多くの架橋様式が開発されているので、特にエラストマー形成に関して、多彩でかつ役立つ。本明細書中に参考として援用される、Thomas,D.R.,「Cross−linking of Polydimethylsiloxanes」,Siloxane Polymers,Clarson,S.J.およびSemlyen,J.A.(編),PTR Prentice Hall,New Jersey,567−615頁(1993)。これらの架橋化学の多くは、少なくともある程度のシリコーンを含むコポリマーおよび互いに浸透しているネットワークが生成されるように、他の系における使用のために適応され得る。シリコーン生体材料の有益な創傷治癒の性質は、それらの柔軟な化学とともに、これらを、ケラチンベースの生体材料を架橋するための理想的な候補とする。
【0026】
シリコーンは、生物学的系において、生体不活性であり、そして弾性がある。生体不活性な架橋剤は、それが一部である系の生物学的秘密(biological stealth)を維持するという利点を有する。ケラチンと、シリコーンベースの架橋剤との組合せは、ケラチンの固有の生体適合性を損なうことなく、両方の生体材料の損傷治癒効力を合わせる。
【0027】
適切なシリコーン架橋剤またはポリシロキサンは、繰り返されるSi−O結合を有する分子である:
【0028】
【化9】

ここで、nは、約1〜約50であり、そして、R、R、RおよびRは、非常に多種多様な基であり得、ここで、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2つは、連結されるタンパク質分子上の反応性ペンダント基に対して反応性である官能基として定義される「反応性官能基」を含む。適切な反応性官能基は、反応性不飽和炭素−炭素結合、反応性酸素、反応性窒素、反応性硫黄および反応性ハロゲンからなる群から選択される1以上の反応性部分を含む。好ましい反応性官能基としては、反応性不飽和炭素−炭素結合、ヒドリド基、ヒドロキシル基、アルキルアミン基、アルキルメルカプト基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基(ここで、このアルキル部分は、約1個〜約6個の炭素原子を含む)が挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。好ましいトリフルオロアルキル基は、トリフルオロプロピル基である;好ましいアルコキシ基は、エポキシ基であり、そして好ましい不飽和炭素−炭素結合は、ビニル基である。
【0029】
適切なR基、R基、R基、およびR基(これらのうちのいくつかは、反応性官能基であり、これらのうちのいくつかはそうではない)の例としては、以下が挙げられるがかならずしもこれらに限定されない:水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基(本明細書中では時々、「アルキルエーテル」といわれる)。好ましいヘテロアルキル基としては、アセトキシ基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1以上のアルキル置換基を必要に応じて含むシラン基、およびそれらの組合せが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましいアルコキシ基としては、エポキシ基が挙げられるが、必ずしもこれに限定されない。
【0030】
好ましくは、RおよびRは、連結されるタンパク質分子(好ましくは、α−ケラチン分子)上の補完的官能基と反応するのに適合している反応性官能基を含む部分である。好ましい実施形態では、RおよびRは、独立して、水素、約1個〜約6個の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、約2個〜約6個の炭素原子を有するアルケニル基、ヒドリド基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を含むアルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルアミン基、アルキルメルカプト基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロ基、アセトキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される。より好ましい実施態様では、RおよびRの両方は、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む。最も好ましくは、RおよびRは、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される同じ部分を含む。
【0031】
好ましい実施形態では、RおよびRは、独立して、水素、シクロアルキル基、ビニル基、ヒドリド基、トリフルオロアルキル基、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルメルカプト基およびアルキルアミン基からなる群から選択される;ただし、RまたはRの一方がビニル基である場合、RまたはRの他方は、ヒドリド基以外の基であり;そして、RまたはRの一方がヒドリド基である場合、RまたはRの他方はビニル基以外の基である。さらにより好ましい実施形態では、RおよびRは、好ましくは、比較的不活性な基である。最も好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、アルキル基であり、より好ましくは、メチル基である。
【0032】
市販のシリコーン製品としては、以下が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない:例えば、Gelest,Inc.、Tullytown,PAから入手可能であるか、または公知の方法(例えば、本明細書中に参考として援用される、Thomas,D.R.,「Cross−linking of Polydimethylsiloxanes」,Siloxane Polymers,Clarson,S.J.およびSemlyen,J.A.(編),PTR Prentice Hall,New Jersey,567−615頁(1993)に記載される方法)を用いて作製され得る、ビニル官能性、アルコキシ官能性(好ましくはエポキシ官能性)、アルキルアミン官能性、ヒドロキシル官能性、およびアルキルメルカプト官能性のポリシロキシポリマーおよびポリシロキシコポリマー。最も好ましい市販のビニル官能性製品は、約363〜約5,500の範囲の分子量で一般に入手可能であり、好ましい分子量は、約500〜約3500である。
【0033】
好ましい架橋剤は、以下でより詳細に考察されるエポキシシクロヘキシルコポリマーである。より好ましいのは、以下でより詳細に考察されるエポキシプロポキシプロピル末端シリコーンである。最も好ましい架橋剤は、ビニル末端シリコーンである。これらの架橋剤は、例えば、Gelest,Inc.,Tullytown,Pa.から入手され得るか、または公知の手順を用いて調製され得る。
【0034】
(エポキシシクロヘキシル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーは、一般に、約500〜約50,000の範囲の分子量で入手可能であり、好ましい分子量は、約650〜約3500である。(エポキシシクロヘキシル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーは、以下の一般構造を有する:
【0035】
【化10】

ここで、mおよびnは、約5〜約50の合計に加えられる;RおよびRは、この節の最初に与えられたシリコーン架橋剤についての一般式において末端基RおよびRとして列挙された基のうちのいずれかであり得、そしてR、およびR〜Rは、この節の最初に与えられたシリコーン架橋剤についての一般式においてSi置換基RおよびRとして列挙された置換基のいずれかであり得る。好ましくは、RおよびR〜Rは、約1個〜約6個の炭素原子までを有するアルキル基からなる群から選択される。Rは、好ましくはメチル基であり;R〜Rは、好ましくは、メチル基である。好ましい(エポキシシクロヘキシル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(これは、Gelestから市販される)は、以下の一般構造を有する:
【0036】
【化11】

好ましいシリコーンベースの架橋剤は、タンパク質分子上の反応性基と反応して、生体適合性副産物(好ましくは、水素、水、二酸化炭素および/あるいは容易に代謝もしくは排出されるか、このネットワークから除去されるか、または少なくとも人体に有毒ではない、任意の他の生体適合性副産物)を生成する。適切なシリコーンベースの架橋剤は、2以上の同じ反応性官能基、または2以上の異なる反応性官能基のいずれかを有する。好ましいシリコーンベースの架橋剤は、2以上の同じ官能基を有する。
【0037】
(ネットワーク形成)
アミノ酸残基に含まれる、チオールおよび他の化学的部分は、タンパク質ネットワーク(好ましくは、エラストマーフィルムの特性を有するネットワーク)を形成するための、架橋反応のための不安定な部位としての有用性を有する。好ましいネットワークは、HMWKタンパク質を使用して作製される。
【0038】
一旦、所望の架橋剤が決定されると、タンパク質(好ましくは、HMWKタンパク質)は、適切な溶媒中に溶解される。大部分の反応については、好ましい溶媒は、水性溶媒である。シリコーンベースの架橋剤の場合、好ましい溶媒は、塩基を含む無水溶媒である。好ましくは、約2gのHMWK粉末は、適切な塩基を含む溶媒中で混合され、そしてこの混合は、撹拌され、そしてケラチンを溶解するために有効な温度(代表的には、60℃を超えない)まで加熱される。この溶液のpHは、適切な塩基を使用して、約9〜11に維持される。適切な塩基としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム(好ましくは、水酸化アンモニウム)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。ケラチンに対して少なくとも約5wt.%(好ましくは約10wt.%)の多官能性架橋剤がこの混合物に添加され、ネットワーク前駆体溶液が形成される。架橋剤に依存して、触媒またはプロモーターが添加され得る。このネットワーク前駆体溶液は、適切な表面または型に(好ましくは約1mm〜約10mmからの厚さになるように)散布され、そして適切なエネルギー(例えば、加熱ランプ、オートクレーブ、マイクロ波またはUVランプ)への曝露によって硬化される。シリコーンベースの架橋剤を含むフィルムを作製するための好ましい実施形態では、この溶液は、約1時間〜約8時間(好ましくは、約2時間)の期間にわたってUVランプ(λ=365ナノメートル)下で照射され、次いで約30分〜約300分(好ましくは、約4時間)の期間にわたって少なくとも約60℃の温度を生じるために有効な加熱ランプ下で乾燥される。
【0039】
あるいは、このケラチンは、水に溶解され、そしてシリコーンは、水混和性有機溶媒の別々の溶液に溶解される。適切な有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドが挙げられる。次いで、これらの2つの溶液は混合され、そしてフィルムが、得られる混合物から成形される。
【0040】
(架橋反応)
タンパク質の架橋およびネットワーク形成は、一般に、少なくとも二官能性であるかまたは少なくとも2つの反応性基を有するシリコーンベースの架橋剤を用いて、2つの異なるケラチン分子上の反応性ペンダント基間を架橋する場合に生じる。このシリコーンベースの反応物は、ケラチン分子間に架橋(すなわち、タンパク質間架橋)をつくり、従って、三次元ネットワークを生成する。
【0041】
タンパク質は、アミノ酸を含み、アミノ酸は、一般に以下の式を有する:
【0042】
【化12】

表1は、例えば、ヒトの毛で見出されるアミノ酸残基をまとめ、そして各残基に関連した「R」基を示す。
【0043】
【表1−1】

【0044】
【表1−2】

ヒトの毛において最も豊富なアミノ酸はシステインであり、これは、ジスルフィド架橋されたシスチン基の形態で見出される。上記で考察されるように、この基は、他の硫黄含有部分(最も顕著にはチオール)へと変換され得る。チオールは、理論的に、多くの化学技術(例えば、本明細書中に参考として援用される、S.Patai(編),the Chemistry of the Thiol Group,第1部および第2部,John Wiley & Sons,New York,NY(1974)に記載される技術)を使用して、架橋剤の反応性末端と反応し得る。他の反応シナリオ(例えば、ポリマー合成に関する反応シナリオ)はまた、チオール基および他のペンダント基を所望の官能性残基(本明細書中に参考として援用される、Rempp,P.およびMerrill,E.W.,Polymer Synthesis,Huethig & Wepf Verlag Basel,Heidelberg,Germany(1986);Young,R.J.およびLovell,P.A.,Introduction to Polymers,Chapman & Hall,London (1991);Odian,G.,Principles of Polymerization,John Wiley & Sons,New York,NY (1991)に記載される官能性残基を包含する)の組み合わせに変換するために有用である。
【0045】
システインに加えて、以下のアミノ酸は、反応性ペンダント基として有用であり得る、窒素または酸素を含むペンダント基を有する;アルギニン、セリン、グルタミン酸、トレオニン、アスパラギン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジン。このタンパク質がα−ケラチンである場合、架橋するための反応性ペンダント基を含む好ましいアミノ酸残基は、システイン、アルギニン、セリンおよびグルタミン酸であり、最も好ましくはシステインおよびアルギニンである。
【0046】
このシリコーンベースの架橋剤は、少なくとも2つの反応性官能基を含む。便宜のために、本明細書において記載されている架橋剤は、時々、「二」官能性といわれる。しかし、架橋剤が、二官能性のみであると明らかに請求されないかまたは明らかに言及されない場合、これは、本明細書中に記載される架橋剤がまた、多官能性(例えば、二官能性、三官能性、四官能性など)であり得ると理解されるべきである。
【0047】
本発明を特定の理論または作用機構に限定しないが、明確に請求されない限り、以下は、不均質な架橋されたタンパク質ネットワークを生成する際に関与する架橋化学である。
【0048】
(チオエーテルの生成)
好ましい還元的改変は、チオレートアニオンの形成、続いて適切な脱離基を使用した求核置換であり、チオエーテル(好ましくは、アルコキシ官能性チオエーテル(またはチオエステル))を生じる。好ましいアルコキシ官能性チオエーテルは、エポキシ官能性チオエーテルである。一般的反応を以下に示す:
【0049】
【化13】

ここで、RおよびRは、水素およびタンパク質分子のN末端部分の残部からなる群から選択される実体を含む;Rは、タンパク質分子のカルボキシ末端部分の残部を含む;そしてRは、チオエーテル(好ましくは、アルコキシ官能性チオエーテル)を形成するために適合した基である。適切なR基は、「置換末端」を含み、これは、硫黄、および架橋剤と反応する「反応性端」と結合する。適切な置換末端としては、約1個〜約8個の炭素原子を有する、非置換のアルキル基、非置換のアルキレン基、ハロ置換アルキル基およびハロ置換アルキレン基(共鳴ハイブリッド(例えば、アリル基)が挙げられる)、ならびに非置換のアリール基およびハロ置換アリール基が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。適切な反応性末端としては、アシル基、および約1個〜約50個の繰返し基を含むポリアルキルエーテル、シラン基およびシリコーン基が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい反応性末端としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基およびアルコキシド基が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。最も好ましい反応性末端は、エポキシド基である。上記の式では、Xは、任意の適切な脱離基であり得る。適切な脱離基としては、ハライド基、トシレート基、アセテート基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびアミン基が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましいX基は、ハライドであり、最も好ましくは塩素である。最も好ましい実施形態では、XRは、エピクロルヒドリンである。
【0050】
チオレートアニオンは、チオールから生成され得るか、または反応性求核剤との反応によって水溶性タンパク質供給原料(好ましくは、ケラチン供給原料)からより直接的に生成され得る。適切な求核剤としては、アルキルおよびアリール官能性の、硫化物塩、スルホネート、イソシアネート、チオシアネート、ハライド、水硫化物、水酸化物、アルコキシド、アジ化合物、およびアセテートが挙げられ、好ましくはアルキルおよびアリールの硫化物塩、水硫化物、水酸化物、アルコキシド、アジ化合物およびアセテートが挙げられる。最も好ましい求核剤は、硫化ナトリウムである。
【0051】
RXがエピクロルヒドリンである反応を以下に示す:
【0052】
【化14】

ここで、RおよびRは、システインが一部である水溶性タンパク質分子の残部である。
【0053】
上記のエポキシド官能基化水溶性タンパク質(好ましくは水溶性ケラチン)を形成するために、水溶性ケラチン供給源材料が、(好ましくは、上記の通り)最初に生成される。次いで、水溶性ケラチンは、約9〜約11のpHの水溶液中の「RX」(好ましくは、エピクロルヒドリン)の溶液に曝露される。このRXは代表的に、ケラチンに対して約20モルパーセントまで(好ましくは、ケラチンに対して約5〜約10モルパーセント、最も好ましくは約10モル%)の濃度である。このpHは、約7より大きく、好ましくは約9より大きい。この温度は、約20℃〜約100℃であり、好ましくは約60℃である。この反応は、約1時間〜約72時間(最も好ましくは約24時間)の時間にわたって続けられる。この結果は、エポキシ化されたチオール基である。
【0054】
最も好ましい実施形態では、エポキシ化されたケラチンは、Gelest,Inc.(Tullytown,PA)から入手可能である、多官能性のシリコーンベースの架橋剤(例えば、アミン官能性シリコーン)を使用して、エラストマーへと硬化される。この反応は、以下の通りである:
【0055】
【化15】

ここで、RおよびRは、エポキシ官能基化システインを保有する水溶性タンパク質「A」の残部であり;RおよびRは、エポキシ官能基化システインを保有する水溶性タンパク質Bの残部である;RおよびRは好ましくは、約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基(最も好ましくは、n−プロピレン基)であり;そしてRおよびRは、独立して、シリコーン架橋剤についての一般式における上記の基(特に、それらのRおよびR)から選択される。最も好ましくは、RおよびRは、比較的不活性な基(例えば、メチル基)である。水溶性タンパク質分子Aと水溶性タンパク質分子Bとが同じ分子であることは理論的に可能であるが、タンパク質Aとタンパク質Bとが、本明細書中に記載される実施形態の全てにおいて異なる分子(好ましくは、異なる水溶性α−ケラチン分子)であることが好ましい。
【0056】
この反応を実施するために、ケラチンは水に溶解され、そしてシリコーンは、別の水溶性有機溶媒中に溶解される。適切な有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドが挙げられる。この2つの溶液は、必要な場合、適切な触媒と混合され、そしてこの混合物は、フィルムに成形される。フィルムの乾燥は、風乾によって達成され得るか、または熱もしくは真空の適用によって加速され得る。この硬化は、エネルギー(好ましくは、熱、照射またはそれらの組合せ)源への曝露によって達成される。
【0057】
(反応性ペンダント基へのフリーラジカル付加)
不飽和炭化水素へのフリーラジカル付加のような付加反応は、チオール基の変換のための別の潜在的達成方法を表す。種々のビニル官能性シリコーンは、例えば、適切な触媒の存在下でチオールを改変するために用いられ得る。フリーラジカル触媒は、熱エネルギーまたは電磁エネルギーによって開始され得る。この反応シナリオを以下に示す:
【0058】
【化16】

チオールがケラチンの分子に付着する場合、そしてアリル誘導体のR基がシリコーンであるならば、ケラチン−シリコーンコポリマーが形成される。シリコーンが少なくとも二官能性である(例えば、ビニル末端ポリジメチルシロキサンである)場合、ネットワークまたはエラストマーの構造がもたらされる。
【0059】
この反応を実施するために、適切な量のケラチン粉末は、(好ましくは、適切な塩基を含む)無水溶媒中に溶解される。ビニル末端シリコーン流体は、適切な量のフリーラジカルイニシエーター(好ましくは、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物(Aldrich,Milwaukee,WI))とともに、適切な完全な溶解後に添加される。他の適切なフリーラジカルイニシエーターとしては、フリーラジカルフォトイニシエーター(ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィン酸化物、ベンゾフェノン/アミン、チオキサントン(thioxanthone)/アミン、チタノセン(titanoocene)および特定のシランが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。添加されるビニル官能性シリコーン流体の量は、用いられるケラチンの量に対して、約1重量パーセント〜約20重量パーセントであり、好ましくは、約10重量パーセントである。粘性溶液は、適切な型において成形される。研究目的のために、適切な型は、テフロン(登録商標)TMでコーティングされたペトリ皿である。粘性溶液は、所望の特性を有するエラストマーフィルムを産生するのに有効な時間にわたって硬化される。硬化は、エネルギー(好ましくは、熱、照射またはそれらの組合せ)源への曝露によって達成される。好ましい実施形態では、粘性流体は、約1時間〜約4時間(好ましくは約2時間)の期間にわたって、UVランプ(λ=365nm)下で照射され、次いで、少なくとも約60℃の温度を生じるのに有効な加熱ランプ下で約30分間〜約300分間(好ましくは4時間)の期間にわたって乾燥される。
【0060】
(縮合によるチオールの変換)
例えば、エステル交換のような縮合反応を用いて、シリコーンベースの架橋剤のチオエステルを生成し得る。エステル交換反応の例をスキーム3に示す。
【0061】
【化17】

ここで、RおよびRは、水素およびタンパク質分子のN末端部分の残部からなる群から選択される実体を含み;Rは、タンパク質分子のカルボキシ末端部分の残部を含み;Rは、適切な脱離基であり;そして、Rは、シリコーンベースの実体を含む。適切なR基としては、水素、約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基、およびアリール基(ベンジル基が挙げられる)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。Rはまた、シリコーン基を含み得る。
【0062】
がシリコーン基である場合、その基は、好ましくは以下の一般構造を有する:
【0063】
【化18】

ここで、n、R、RおよびRは、シリコーン架橋剤についての一般式における上記の対応する基と同じである。
【0064】
がシリコーンベースの実体を含む場合、以下は例示的な反応である:
【0065】
【化19】

ここで、nは、約1〜約50であり;R、R、およびRは、第1水溶性タンパク質分子の残部であり;R、R、およびRは、第2水溶性タンパク質分子の残部であり;RおよびRは、好ましくは、約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1以上のアルキル基を含むアルコキシ基、ポリマー鎖(RおよびR10)の残部と同じペンダント置換基を有するシリル基、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;そしてRおよびR10は、独立して、適切なシリコーン架橋剤についての一般式中の上記の基(特に、それらのRおよびR)から選択される。最も好ましいRおよびRは、比較的不活性な基(例えば、メチル基)である。
【0066】
この反応を実施するために、ケラチンは水に溶解され、そしてシリコーンは別の水混和性有機溶媒に溶解される。適切な有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの2つの溶液は、必要な場合は適切な触媒とともに混合され、そして、この混合物は、フィルムに成形される。フィルムの乾燥は、風乾によって達成され得るか、または熱もしくは真空の適用によって加速され得る。この硬化は、エネルギー(好ましくは、熱、照射またはそれらの組合せ)源への曝露によって達成される。
【0067】
(アミン基の付加)
反応性アミン基とオキシラン化合物との間での付加反応は、触媒の助けを借りずに容易に生じる。好ましいオキシラン化合物は、以下の一般構造を有するジエポキシドである:
【0068】
【化20】

ここで、nは約5〜約50であり;RおよびRは、独立して、適切なシリコーン架橋剤についての一般式における上記の基(特に、RおよびR)から選択される。最も好ましくは、RおよびRは、比較的不活性な基(例えば、メチル基)であり;そしてRおよびRは、このフィルムの所望の特徴を妨害しない実質的に任意の部分である。好ましくは、RおよびRは、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を含むアルコキシ基、および約1個〜約6個の炭素原子を有する1以上のアルキル置換基(最も好ましくはメチル基)を必要に応じて含むシラン基、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0069】
より好ましいオキシランは、以下の一般構造を有する:
【0070】
【化21】

ここで、nは約5〜約50であり;RおよびRは、独立して、シリコーンベースの架橋剤に関して上記の基(特に、RおよびR)から選択される。最も好ましくは、RおよびRは、比較的不活性な基(例えば、メチル基)であり;そしてRおよびRは、フィルムの所望の特徴を妨害しない実質的に任意の部分である。好ましくは、RおよびRは、約1個〜約6個の炭素原子(好ましくは約1個〜約3個の炭素原子)を有するアルキル基からなる群から選択される。RおよびRは、約1個〜約6個の炭素原子(好ましくは約1個〜約3個の炭素原子)を有するアルキル基、約1個〜約6個の炭素原子を有する1以上のアルキル置換基(最も好ましくは1以上のメチル置換基)を必要に応じて含むシラン基、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0071】
最も好ましいオキシラン化合物は、以下に示す構造を有する、Gelest,Inc.,Tullytown,PAから入手可能な、エポキシプロポキシプロピル末端ポリ(ジメチルシロキサン)である:
【0072】
【化22】

ジエポキシ−シリコーンベースの架橋剤とアルギニンとの架橋反応は、以下の通りである:
【0073】
【化23】

ここで、RおよびRは、1のタンパク質分子の残部を表す;RおよびRは、別のタンパク質分子(好ましくは、異なるα−ケラチン分子)の残部を表す。
【0074】
この反応を実施するために、可溶化したケラチンは、オキシラン末端シリコーンを含む溶液(例えば、Gelest,Inc.,Tullytown,PAから入手可能な溶液)に、代表的にはケラチンに関して約20モルパーセントまでの濃度(好ましくは、ケラチンに関して5モルパーセントと10モルパーセントとの間)にて、7を超える(好ましくは9を超える)かまたは7未満(好ましくは6未満)のpHにて、約0℃〜約100℃(好ましくは、約30℃)の温度にて、好ましくは約0時間〜約72時間(最も好ましくは約24時間)の期間にわたって曝露される。
【0075】
ジエポキシドがシステイン残基と反応する場合、同様の反応が生じる:
【0076】
【化24】

ここで、RおよびRは、第1タンパク質分子の残部であり、そしてRおよびRは第2タンパク質分子(好ましくは、異なるα−ケラチン分子)の残部である。RおよびRは、アルギニンとの反応に関してちょうど記載された対応する部分である。
【0077】
当業者は、本明細書中に記載された架橋剤の多くが、反応性窒素原子、硫黄原子または酸素原子を含むペンダント基を有する種々のアミノ酸残基と反応すると認識する。それゆえ、ジエポキシドの一方の末端はシステイン残基と反応し得、一方、ジエポキシドの他方の末端は、以下のようにアルギニン残基と反応する:
【0078】
【化25】

ここで、RおよびRは、一方のタンパク質分子の残部を表し;RおよびRは、別のタンパク質分子(好ましくは、異なるα−ケラチン分子)の残部を表し;RおよびRは、フィルムの所望の特徴を妨害しない任意の部分であり得る。好ましくは、RおよびRは、約1個〜約6個の炭素原子(より好ましくは、約1個〜約3個の炭素原子)を有する、プロポキシプロピル基およびアルキル基からなる群から選択され;そしてRおよびRは、独立して、シリコーン架橋剤に関する上記の基(特に、それらのRおよびR)から選択される。最も好ましくは、RおよびRは、比較的不活性な基(例えば、メチル基)である。
【0079】
架橋剤によって連結されるアミノ酸残基の正体は、タンパク質分子の間での充分な量の架橋が生じて所望の特性を有するフィルムを生成するという必要条件ほどには重要ではない。好ましい実施形態において、架橋は、エラストマーフィルムを生成する。
【0080】
(ネットワーク特性)
上記に見られるように、三次元のケラチンベースネットワークは、種々の化学を使用して形成され得る。好ましくは、このようなネットワークの「溶解速度」は、フィルムの架橋密度、ならびに官能基(特に、架橋部位に隣接した官能基)のレベルおよび種類を制御することによって制御可能である。例えば、以下の特徴のうちの1つを有する架橋剤の使用は、得られるネットワークの溶解速度を減らす:より多くの加水分解性結合(例えば、エステル結合)とは反対に、S−C結合を形成する架橋剤;架橋部位に相当な立体障害を導入する架橋剤;疎水性である架橋剤。得られるネットワークまたはフィルムの「溶解速度」は、そのフィルムが、約7のpHを有する水性緩衝液への露出の際に加水分解にどれくらい長く抵抗するかについて決定することで測定される。所望の「溶解速度」は、そのフィルムが用いられる適用に依存する。
【0081】
本発明は、以下の実施例を参照してよりよく理解される。以下の実施例は、例示に過ぎない。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
500gの清浄な、乾燥ヒト毛を、8.35Lの1w/v % Hを含む12Lフラスコ中に配置し、そして穏やかに煮沸させた。この反応物を、180分間にわたって、還流して、攪拌せずに加熱した。この毛を濾過し、脱イオン水でリンスし、そして風乾した。
【0083】
100gの酸化した毛を、水酸化アンモニウムを用いてpH9に調整した1Lの1Mチオグリコール酸溶液を含む2Lフラスコ中に配置した。この反応物を、窒素雰囲気下で、攪拌しながら24時間にわたって60℃まで加熱した。
【0084】
固体と液体抽出物との混合を、アルゴン雰囲気下の瓶に注いだ。瓶を封止し、遠心分離して、固体を分離した。液体を、窒素下で8倍過剰の冷エタノール中にカニューレ挿入し、そして沈澱物が形成された。沈澱物を濾過し、エタノールを用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥させた。乾燥固体を、乳鉢および乳棒を用いて粉砕して粉末にした。
【0085】
3gのケラチン粉末を、1mLの30%水酸化アンモニウムを含む15mLのジメチルスルホキシド(dimethysulfoxide)(DMSO)中に溶解した。完全に溶解した後、0.3gのビニル末端シリコーン流体(カタログ番号DMS−V03;Gelest,Inc.,Tullytown,PA)および0.1gのアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物(Aldrich,Milwaukee,WI)を添加した。この粘性溶液を、TeflonTMでコーティングしたペトリ皿上で成形し、そしてUVランプ(λ=365nm)下で2時間にわたって硬化させた。このフィルムを、加熱ランプ下で4時間にわたってさらに乾燥させた。このプロセスにより、良質のエラストマーフィルムが得られた。
【0086】
(実施例2)
175gの清浄な乾燥毛を、水酸化カリウムを用いてpH10.2に調整した、3.5Lの1Mメルカプトエタノールを含む4Lガラス反応器中に配置した。この溶液を、窒素下で21時間にわたって攪拌し、その後、この固体を濾過によって分離した。次いで、還元した毛を、窒素下で、室温にて24時間、2.3の7M尿素水溶液で抽出した。
【0087】
この反応物を遠心分離し、そして液体を濾過し、次いで濃塩酸の添加により、pH7に中和した。中和したケラチン溶液を10倍過剰のエタノールへと滴下して、沈澱させた。沈澱物を濾過し、エタノールでリンスし、そして減圧下で乾燥した。乾燥した固体を、乳鉢および乳棒を使用して粉砕して粉末にした。
【0088】
5gの粉砕したケラチン粉末を、攪拌、超音波処理、およびわずかな加熱の助けを借りて、60gの30%水酸化アンモニウム溶液中に溶解した。完全な溶解後、水酸化アンモニウムを、動的窒素パージの助けを借りてエバポレートした。この溶液の半分に対して、0.05gのアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物および2gのイソプロピルアルコール中の0.5gのビニル末端シリコーン(カタログ番号DMS−V03;Gelest,Inc.,Tullytown,PA)の溶液を添加した。約30分間の攪拌後、濃い溶液をTeflon(登録商標)でコーティングしたペトリ皿上で成形し、そしてUVランプ下で約3時間にわたって硬化させた。次いで、このフィルムを、加熱ランプ下で約1時間にわたって乾燥させた。このフィルムを、脱イオン水中に24時間にわたって配置し、そして溶解しなかった。
【0089】
当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの改変が本発明になされ得ることを認識する。本明細書中に記載される実施形態は、例示のみであることを意図し、本発明を限定するとは解釈すべきでない。本発明は、特許請求の範囲において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン含有架橋剤によって連結されたケラチンネットワークを作製するための方法であって、該方法は、反応性ペンダント基を含む複数のα−ケラチン分子を、該架橋剤上の第1反応性官能基と該α−ケラチン分子の第1基上の1以上の第1反応性部分を含む第1反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効な条件下で該架橋剤に曝露させる工程を包含し、該条件はまた、該架橋剤上の第2反応性官能基と、α−ケラチン分子の第2基上の1以上の第2反応性部分を含む第2反応性ペンダント基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効である、方法。
【請求項2】
ネットワークであって、該ネットワークは、シリコーン含有架橋剤の複数の分子上の第1反応性官能基と複数の第1タンパク質分子上の第1反応性ペンダント基との間の第1共有結合、および該架橋剤の複数の分子上の第2反応性官能基と複数の第2タンパク質分子上の第2反応性ペンダント基との間の第2共有結合を含むタンパク質間架橋を含むタンパク質分子から本質的になるタンパク質性材料を含む、ネットワーク。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の方法またはネットワークであって、ここで、前記架橋剤が、シリコーンを含んでおり、以下の一般構造:
【化1】

を有し、ここで、
nは、約1〜約50であり;そして
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つは、少なくとも1つの反応性官能基を含み、該反応性官能基は、反応性不飽和炭素−炭素結合、反応性酸素、反応性窒素、反応性硫黄および反応性ハロゲンからなる群から選択される反応性部分を含む、方法またはネットワーク。
【請求項4】
請求項3に記載の方法またはネットワークであって、ここで、R、R、RおよびRが、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および1以上の反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基ならびにその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される、方法またはネットワーク。
【請求項5】
前記反応性部分が、エポキシ基およびビニル基からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項6】
前記架橋剤が、エポキシ基を含む第1反応性官能基およびエポキシ基を含む第2反応性官能基を少なくとも含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項7】
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つが、エポキシ基を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項8】
およびRが、前記エポキシ基を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項9】
前記架橋剤が、ビニル基を含む第1反応性官能基およびビニル基を含む第2反応性官能基を少なくとも含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項10】
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つが、前記ビニル基を含む、請求項3〜5および請求項9のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項11】
およびRが、前記ビニル基を含む、請求項10に記載の方法またはネットワーク。
【請求項12】
およびRのうちの少なくとも1つが、アルキル基である、請求項3〜11のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項13】
およびRのうちの少なくとも1つが、メチル基である、請求項3〜11のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項14】
前記α−ケラチン分子が、前記架橋剤上の第1反応官能基および第2反応官能基と前記共有結合的タンパク質間架橋を形成するに有効なエポキシド基を含む、請求項1および請求項3〜4のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項15】
前記タンパク質性材料が、ケラチン、コラーゲンおよびエラスチンからなる群から選択される、請求項2〜14のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項16】
前記タンパク質性材料が、ケラチンを含む、請求項2〜15に記載のいずれかのネットワーク。
【請求項17】
請求項2〜16のいずれかに記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化2】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
およびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
およびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびRは、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される反応した基である、ネットワーク。
【請求項18】
請求項2〜16のいずれかに記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化3】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
およびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
およびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびRは、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される反応した基である、ネットワーク。
【請求項19】
請求項2〜17のいずれかに記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化4】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
およびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
およびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびRは、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される反応した基である、ネットワーク。
【請求項20】
請求項2〜17に記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化5】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
およびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
およびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびRは、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される、ネットワーク。
【請求項21】
請求項2〜17に記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化6】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
およびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
およびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびRは、水素;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される反応した基である、ネットワーク。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれかに記載のネットワークであって、RおよびRが、独立して、水素、約1個〜約6個の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、約2個〜約6個の炭素原子を有するアルケニル基、ヒドリド基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を含むアルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルアミン基、アルキルメルカプト基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロ基、アセトキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される、反応した基である、ネットワーク。
【請求項23】
およびRが、n−プロポキシプロピル基を含む、請求項17〜22のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項24】
請求項2〜16のいずれかに記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化7】

を含み、ここで、nは、1〜50であり;そして
AおよびBは、第1タンパク質分子および第2タンパク質分子の残部である、ネットワーク。
【請求項25】
請求項17〜24のいずれかに記載のネットワークであって、RおよびRが、独立して、水素、シクロアルキル基、ビニル基、ヒドリド基、トリフルオロアルキル基、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルメルカプト基およびアルキルアミン基からなる群から選択される、反応した基であり;ただし、RまたはRの一方がビニル基である場合、RまたはRの他方は、ヒドリド基以外の基であり;そして、RまたはRの一方がヒドリド基である場合、RまたはRの他方はビニル基以外の基である、ネットワーク。
【請求項26】
およびRのうちの少なくとも1つが、アルキル基である、請求項17〜25のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項27】
およびRのうちの少なくとも1つが、メチル基である、請求項17〜26のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項28】
請求項2〜16のいずれかに記載のネットワークであって、該ネットワークは、以下の架橋:
【化8】

を含み、ここで、
nは、1〜50であり;
、RおよびRは、第1タンパク質分子の残部であり;
、RおよびRは、第2タンパク質分子の残部であり;そして
、R、RおよびR10は、約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基およびヘテロアルキル基であって、該基は、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含み、ここで、該ヘテロアルキル基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;約2個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状、および分枝鎖状のアルケニル基およびヘテロアルケニル基、ならびにそれらのメルカプト官能基化バージョンならびにそれらの共鳴ハイブリッドであって、該基が、非置換の基および少なくとも1つの反応性官能基によって置換された基の両方を含む、基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、環状、直鎖状および分枝状のアルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基およびヘテロアルケニル基を含む、カルボキシル基およびその塩、エステルおよびアミドであって、ここで、該へテロ基が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、基;芳香族基;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールおよびアルケノール;約1個〜約6個の炭素原子を有する、アルカノールアミドおよびアルケノールアミド;ならびにそれらの組み合わせ;合計約1個〜約6個の、炭素原子、ヒドリド基およびヒドロキシル基を有する1以上のアルキル部分を含むアルコキシ基からなる群から選択される、ネットワーク。
【請求項29】
前記ヘテロアルキル基が、アセトキシ基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1以上のアルキル置換基を必要に応じて含むシラン基およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3〜28のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項30】
およびRが、独立して、水素、約1個〜約6個の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、約2個〜約6個の炭素原子を有するアルケニル基、ヒドリド基、合計約1個〜約6個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を含むアルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルアミン基、アルキルメルカプト基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロ基、アセトキシ基およびエポキシ基からなる基から選択される、反応した基である、請求項28〜29のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項31】
請求項28〜30のいずれかに記載のネットワークであって、RおよびR10が、独立して、水素、シクロアルキル基、ビニル基、ヒドリド基、トリフルオロアルキル基、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルメルカプト基およびアルキルアミン基からなる群から選択される、反応した基であり;ただし、RまたはRの一方がビニル基である場合、RまたはRの他方は、ヒドリド基以外の基であり;そして、RまたはRの一方がヒドリド基である場合、RまたはRの他方はビニル基以外の基である、ネットワーク。
【請求項32】
およびR10のうちの少なくとも1つが、アルキル基である、請求項28〜31のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項33】
およびR10のうちの少なくとも1つが、メチル基である、請求項28〜32のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項34】
およびRが、約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基およびジメチルシロキシ基からなる群から選択される、請求項28〜33のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項35】
前記タンパク質分子が、ケラチン分子である、請求項2〜34のいずれかに記載のネットワーク。
【請求項36】
前記第1反応性官能基および前記第2反応性官能基が、独立して、アルキルアミン基およびアルキルメルカプト基からなる群から選択され、ここで、該アルキル部分が、約1個〜約6個の炭素原子を有する、請求項1〜35のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項37】
nが、5〜50である、請求項1〜36のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項38】
シリコーン含有架橋剤によって連結されたケラチンネットワークを作製する方法であって、該方法は、以下:
反応性ペンダント基を含むα−ケラチン分子を、複数の該反応性ペンダント基と該求核置換剤とが反応し、それによりペンダントエポキシド基を含む複数のα−ケラチン分子を生成することを誘導するために有効な条件下で、少なくとも1つの末端エポキシドを含む求核置換剤に曝露させる工程;
ペンダントエポキシド基を含む該複数のα−ケラチン分子を、シリコーン含有架橋剤で処理する工程であって、該架橋剤は、第1反応性官能基および第2反応性官能基を少なくとも含み、該処理は、該架橋剤上の第1反応性官能基と、α−ケラチン分子の第1基上の第1ペンダントエポキシド基との間での共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効な条件下で行われ、該条件はまた、該架橋剤上の第2反応性官能基と、α−ケラチン分子の第2基上の第2ペンダントエポキシド基との間で共有結合的タンパク質間架橋を形成するために有効である、工程を包含する、方法。
【請求項39】
前記反応性ペンダント基が、チオレートアニオンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記求核置換剤が、エピクロルヒドリンである、請求項38または39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記架橋されたケラチンネットワークが、約7のpHを有する水性緩衝液への少なくとも24時間の曝露の際に、加水分解に抵抗する、請求項1〜40のいずれかに記載の方法またはネットワーク。
【請求項42】
前記ケラチン分子が、ヒトの毛由来である、請求項1〜41のいずれかに記載の方法またはネットワーク。

【公表番号】特表2006−508027(P2006−508027A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584148(P2003−584148)
【出願日】平成15年4月10日(2003.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/011102
【国際公開番号】WO2003/087195
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(503345514)ケラプラスト テクノロジーズ, リミテッド (3)
【Fターム(参考)】