説明

シリコーン微粒子及びその製造方法

【課題】シリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度が低くても、また粒径が小さくても、凝集性が低く、分散性に優れた、シリコーン微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部と、その表面を被覆するポリオルガノシルセスキオキサン0.5〜25質量部とを有してなり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンは粒状で大きさが60nm以下であることを特徴とするシリコーン微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン微粒子については、ゴム弾性を有する微粒子(シリコーンエラストマー微粒子)や、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂の微粒子が知られており、例えば、電子、電気部品のパッケージングに用いられるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は、電気部品の発熱による膨張によってパッケージに応力がかかっても割れにくくするために、シリコーンエラストマー微粒子を配合することが試みられている。しかし、シリコーンエラストマー微粒子は、凝集性が強く、また、樹脂への分散性が悪いために、応力緩和効果が十分に得られず、樹脂の強度を低下させる問題がある。
【0003】
上記の問題を解決するため、本発明者らが提案した特許文献1におけるシリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子は、ゴム弾性を有し、凝集性が低く、基材への分散性に優れることが特長である。
【0004】
また、特許文献1のシリコーンエラストマー微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子は、凝集性が低く、容易に一次粒子にまでばらけるので、高性能な乾式分級処理が可能である。それに対し、凝集性が強いシリコーンエラストマー微粒子は、分級は困難である。
【0005】
さらに、化粧料にさらさら感、なめらかさ等の使用感及び伸展性を付与する目的で、シリコーン微粒子が用いられているが、特に、特許文献1のシリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子は、柔らかい感触が得られ、かつ凝集性がなく、分散性に優れることから、多くの化粧料に使用されている。
【0006】
しかし、例えば応力緩和効果を向上させるためやより柔らかい感触にするために、特許文献1のシリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子のシリコーンエラストマー球状微粒子部分のゴム硬度を低くしたり、また粒径を小さくしたりすると、凝集性が高くなり、分散性が低下するという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−196815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度が低くても、また粒径が小さくても、凝集性が低く分散性に優れたシリコーン微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部と、その表面を被覆するポリオルガノシルセスキオキサン0.5〜25質量部とを有してなり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンは粒状で大きさが60nm以下であることを特徴とするシリコーン微粒子を提供する。
【0010】
このようなシリコーン微粒子は、凝集性が低く、分散性に優れたものとなる。
【0011】
また、前記シリコーンエラストマー球状微粒子の体積平均粒径を、0.1〜5μmとすることができる。
このようにシリコーン球状微粒子の体積平均粒径が小さくても、本発明のシリコーン微粒子は、凝集性が低いものとすることができる。
【0012】
また、前記シリコーンエラストマー球状微粒子を構成するシリコーンエラストマーのゴム硬度が、タイプEデュロメータによる測定で10以上で、タイプAデュロメータによる測定で30以下とすることができる。
【0013】
このようにシリコーンエラストマー球状微粒子を構成するシリコーンエラストマーのゴム硬度が低くても、本発明のシリコーン微粒子は、凝集性が低く、一次粒子にまでより分散し易いものとすることができる。そのため、例えば樹脂の応力緩和剤用途においては、樹脂の応力緩和効果を高めることができ、化粧料用途においては、柔らかな感触を得ることができるものとなる。
【0014】
また本発明は、水と、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子と、アルカリ性物質と、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子との存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解・縮合させることにより、前記シリコーンエラストマー球状微粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆して、前記本発明のシリコーン微粒子を製造することを特徴とするシリコーン微粒子の製造方法を提供する。
【0015】
このような方法によれば、カチオン性界面活性剤やカチオン性水溶性高分子の作用により、本発明のシリコーン微粒子を効率よく得ることができる。
【0016】
また、前記カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子の配合量を、前記水100質量部に対し、0.001〜1質量部とすることが好ましい。
このような配合量とすることで、粒状のポリオルガノシルセスキオキサンがシリコーンエラストマー微粒子表面を被覆する面積をより多くすることができ、凝集性をさらに低下させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のシリコーン微粒子は、凝集性が低く、分散性に優れたものである。特に、応力緩和効果を向上させるためにシリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度を低くしたり、樹脂の強度等の特性低下を抑えるためや応力緩和効果を向上させるために粒径を小さくしても、凝集性が高くなり、分散性が低下するという問題を起こさない。また、化粧料の使用感を向上させるべくより柔らかい感触にするためにシリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度を低くしても、凝集性が高くなり、分散性が低下するという問題を起こさない。そのため、樹脂の応力緩和剤や化粧料の使用感向上剤として非常に有用である。さらに、乾式による分級を行う場合に、シリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度が低くても、また粒径が小さくても、本発明のシリコーン微粒子は、凝集性が低く、容易に一次粒子にまでばらけるので、高い分級性能が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
上述のように、シリコーンエラストマー球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサンを被覆した従来のシリコーン微粒子は、例えば応力緩和効果向上を図ったり、より柔らかい感触にしようとすると、凝集性が高くなり、分散性が低下するという問題を有していた。
【0019】
そこで本発明者が検討を行った結果、ポリオルガノシルセスキオキサンの被覆性を向上させることにより、凝集性を低下させ、分散性を向上できるのではないかとの考えに想到した。そして、本発明者の更なる鋭意検討、研究の結果、下記のシリコーン微粒子により上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
即ち、本発明は第一に、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部と、その表面を被覆するポリオルガノシルセスキオキサン0.5〜25質量部とを有してなり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンは粒状で大きさが60nm以下であることを特徴とするシリコーン微粒子を提供する。
【0021】
ここで、前記の特許文献1は、シリコーンエラストマー球状微粒子の水分散液に、アルカリ性物質又はアルカリ性水溶液とオルガノトリアルコキシシランを添加し、加水分解・縮合反応させる方法を提案している。しかし、この方法によって得られるシリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した微粒子は、シリコーンエラストマー球状微粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンが粒状に付着しており、その粒の大きさはおよそ100nmとなる。また、本発明者らは、特開2010−132877号公報および特開2010−132878号公報等において、シリコーンエラストマー球状微粒子をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆したシリコーン微粒子に関して提案しているが、それら文献においても、得られるシリコーン微粒子を構成しているポリオルガノシルセスキオキサンの粒の大きさは、およそ100nmである。
【0022】
そのため、本発明者は上述した本発明のシリコーン微粒子を容易に製造する方法についても鋭意検討した。その結果、オルガノトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応工程でカチオン性界面活性剤やカチオン性水溶性高分子が配合されていれば、シリコーンエラストマー球状微粒子表面を被覆する粒状のポリオルガノシルセスキオキサンの径を小さくできることを見出した。
【0023】
本発明は第二に、水と、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子と、アルカリ性物質と、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子との存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解・縮合させることにより、前記シリコーンエラストマー球状微粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆して、前記本発明のシリコーン微粒子を製造することを特徴とするシリコーン微粒子の製造方法を提供する。
【0024】
以下に、本発明について更に詳しく説明する。
[シリコーン微粒子]
本発明のシリコーン微粒子は、シリコーンエラストマー球状微粒子と、その表面を被覆する、粒状で大きさが60nm以下のポリオルガノシルセスキオキサンとを有してなるものであり、ポリオルガノシルセスキオキサンの量はシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部に対し0.5〜25質量部、好ましくは1〜15質量部である。ポリオルガノシルセスキオキサンが0.5質量部未満であると、凝集性が強く、分散性が悪くなり、25質量部より多いと応力緩和性能や柔らかな感触が乏しくなる。
【0025】
(シリコーンエラストマー球状微粒子)
本発明のシリコーン微粒子において、ポリオルガノシルセスキオキサンにより表面が被覆されるシリコーンエラストマー球状微粒子は、体積平均粒径が、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜40μmである。シリコーンエラストマー球状微粒子の体積平均粒径が0.1μm未満であると、得られるシリコーン微粒子は、凝集性が高く一次粒子にまで容易に分散しない。また、シリコーンエラストマー球状微粒子の体積平均粒径が100μmより大きいと、樹脂の応力緩和剤用途においては、基材樹脂の強度等の特性を損なう上、応力緩和効果も十分に発揮されず、化粧料用途においては、さらさら感、なめらかさが低下し、またざらつき感がでる。本発明においては、シリコーンエラストマー球状微粒子の体積平均粒径が小さくても凝集性が低いものであることが特徴であり、さらに好ましくは5μm以下である。
【0026】
なお、体積平均粒径は、粒径に合わせ、顕微鏡法、光散乱法、レーザー回折法、液相沈降法、電気抵抗法等から適宜選択して測定される。また、本明細書において、「球状」とは、微粒子の形状が、真球であるだけでなく、最長軸の長さ/最短軸の長さ(アスペクト比)が平均して、通常、1〜4、好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.6、さらにより好ましくは1〜1.4の範囲にある変形した球でもあることを意味する。微粒子の形状は該微粒子を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
【0027】
シリコーンエラストマー球状微粒子を構成するシリコーンエラストマーは、べたつきがないことが好ましく、そのゴム硬度は、柔らかい方はJIS K 6253に規定されているタイプEデュロメータによる測定で10以上、硬い方はタイプAデュロメータによる測定で、90以下が好ましい。より好ましくはタイプEデュロメータで20以上、タイプAデュロメータで80以下の範囲である。タイプEデュロメータで10未満では、得られるシリコーン微粒子は、凝集性が高く一次粒子にまで分散しづらくなる。また、タイプAデュロメータで90を超えると、樹脂の応力緩和剤用途においては、樹脂の応力緩和効果が低下する恐れがあるし、化粧料用途においては、柔らかな感触が乏しくなる恐れがある。本発明においては、ゴム硬度が低くても凝集性が低いものであることが特徴であり、さらに好ましくはタイプAデュロメータで30以下である。
【0028】
前記シリコーンエラストマーは、例えば式−(RSiO2/2−で示される線状オルガノシロキサンブロックを有する硬化物である。ここで、式中のRは、置換又は非置換の炭素数1〜30の1価炭化水素基であり、nは、5〜5,000の正数である。
【0029】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラシル基、トリアコチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
【0030】
前記シリコーンエラストマーは、硬化性液状シリコーンから得られるものである。その硬化は、メトキシシリル基(≡SiOCH)とヒドロキシシリル基(≡SiOH)等との縮合反応、メルカプトプロピルシリル基(≡Si−CSH)とビニルシリル基(≡SiCH=CH)とのラジカル反応、ビニルシリル基(≡SiCH=CH)とヒドロシリル基(≡SiH)との付加反応によるもの等が例示されるが、反応性の点から、付加反応によるものとすることが好ましい。
【0031】
付加反応による硬化でシリコーンエラストマーとする場合、平均式RSiO(4−a−b)/2で示される一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと平均式RSiO(4−c−d)/2で示される一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとからなる組み合わせ、又は、平均式RSiO(4−a−b)/2で示される一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサンと平均式RSiO(4−c−d)/2で示される一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとからなる組み合わせのいずれか一方において、1価オレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1価オレフィン性不飽和基1個に対しヒドロシリル基が0.5〜2個となるような比率で配合された液状シリコーン組成物を白金族金属系触媒の存在下において付加反応させればよい。
【0032】
ここで、式中のRは、脂肪族不飽和基を除く、置換又は非置換の炭素数1〜30の1価炭化水素基であり、Rは炭素数2〜6の1価オレフィン性不飽和基である。a、bは、0<a<3、0<b≦3、0.1≦a+b≦3で示される正数であり、好ましくは0<a≦2.295、0.005≦b≦2.3、0.5≦a+b≦2.3である。Rは脂肪族不飽和基を除く置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。c、dは0<c<3、0<d≦3、0.1≦c+d≦3で示される正数であり、好ましくは0<c≦2.295、0.005≦d≦2.3、0.5≦c+d≦2.3である。
【0033】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラシル基、トリアコチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられるが、工業的には全R基中の50モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0034】
としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられるが、工業的にはビニル基であることが好ましい。
としては、Rと同じものが例示される。
【0035】
このオレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における動粘度は、100,000mm/sを超えると、後記の製造方法において、分布の狭い粒子を得ることが難しくなることから、100,000mm/s以下が好ましく、より好ましくは10,000mm/s以下である。また、オレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造としては、直鎖状、環状、分岐状いずれであっても良いが、特に直鎖状が好ましい。なお、この動粘度は、オストワルド粘度計による測定値である。
【0036】
前記したように、オレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンは一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも2個有し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンはケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する組み合わせとするか、又は、オレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンは一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも3個有し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンはケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する組み合わせとすることが必要である。ポリシロキサンの構造及び組み合わせをそのようにしないと、得られるエラストマー硬化物はべたつきのあるものとなる。
【0037】
前記の白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる周知の触媒が挙げられ、その具体例としては、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・kHO、HPtCl・kHO、NaHPtCl・kHO、KHPtCl・kHO、NaPtCl・kHO、KPtCl・kHO、PtCl・kHO、PtCl、NaHPtCl・kHO(但し、式中、kは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
【0038】
白金族金属系触媒の配合量はヒドロシリル化反応触媒としての有効量でよく、硬化性液状シリコーン組成物の合計量に対する触媒中の白金族金属の量が質量換算で、通常、0.1〜500ppm程度、好ましくは0.5〜200ppm程度、更に好ましくは1〜100ppm程度となる量である。
【0039】
本発明のシリコーン微粒子を構成するシリコーンエラストマー球状微粒子は、その粒子中に、シリコーンオイル、オルガノシラン、無機系粉末、有機系粉末等を含有していてもよい。
【0040】
シリコーンエラストマー球状微粒子は、公知の方法によって水分散液の形で製造することができる。例えば、付加反応による硬化でシリコーンエラストマーとする場合、前記したオレフィン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる液状シリコーン組成物に界面活性剤と水を添加し、乳化を行い、エマルジョンとした後に白金族金属系触媒を添加して付加反応を行う方法が挙げられる。
【0041】
ここでの界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は両イオン性界面活性剤である。アニオン界面活性剤では、後記するポリオルガノシルセスキオキサンを被覆する工程で使用するカチオン性界面活性剤又はカチオン性水溶性高分子の作用を抑制し、またカチオン性界面活性剤又はカチオン性水溶性高分子を添加した際にシリコーンエラストマー球状微粒子の分散性が損なわれ凝集を起こしてしまう場合もある。
【0042】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0043】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられる。
【0044】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0045】
これらの界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができるが、少量で前記の液状シリコーン組成物を乳化することができ、微細な粒子とすることができるノニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤が多いと、後記の製造方法によってポリオルガノシルセスキオキサンを被覆することが困難となる。界面活性剤の使用量は、液状シリコーン組成物100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。また、0.01質量部未満では微細な粒子とすることが困難となるので、0.01〜20質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0046】
乳化を行うには、一般的な乳化分散機を用いればよく、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型攪拌機、ホモミキサー等の高速回転剪断型攪拌機、ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機、コロイドミル、超音波乳化機等が挙げられる。
【0047】
白金族金属系触媒が水に対する分散性が悪い場合には、界面活性剤に溶解した状態でエマルジョンに添加することが好ましい。界面活性剤としては、前記のものが挙げられ、特にノニオン性界面活性剤が好ましい。
付加反応は、室温で行ってもよいが、反応が完結しない場合には、100℃未満の加熱下で行ってもよい。
【0048】
(ポリオルガノシルセスキオキサン)
本発明のシリコーン微粒子において、シリコーンエラストマー球状微粒子表面を被覆しているポリオルガノシルセスキオキサンは、粒状の形状であり、その粒の径は60nm以下であり、好ましくは40nm以下である。ポリオルガノシルセスキオキサンの粒が60nmより大きいと、凝集性が強く分散性が低くなる傾向になる。ポリオルガノシルセスキオキサンの粒が小さくなると、シリコーンエラストマー微粒子の表面を被覆する面積が多くなり、すなわちシリコーンエラストマー微粒子表面のポリオルガノシルセスキオキサンが占める割合が多くなり、それで凝集性が低下するものと推測される。ポリオルガノシルセスキオキサンの径は該微粒子を電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
尚、ポリオルガノシルセスキオキサンの粒の大きさ(径)は、小さければ小さいほどよく、下限値は特に規定されない。
【0049】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、式 RSiO3/2で示される単位が三次元網目状に架橋したレジン状固体物である。本発明においては、式中のRは、置換又は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。後記の方法によってポリオルガノシルセスキオキサンを被覆するには、このRは50モル%以上がメチル基、ビニル基、又はフェニル基であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0050】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、得られるシリコーン微粒子の非凝集性、分散性等の特性やさらさら感、なめらかさ等の使用感、柔らかい感触を損なわない範囲で、RSiO3/2単位の他に、RSiO2/2単位、RSiO1/2単位、及びSiO4/2単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。このようなポリオルガノシルセスキオキサンにおいて、RSiO3/2単位の含有率は、全シロキサン単位中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
【0051】
[製造方法]
本発明のシリコーン微粒子は、水と、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子と、アルカリ性物質と、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子との存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解・縮合させて、前記シリコーンエラストマー球状微粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆することによって得られる。
【0052】
(シリコーンエラストマー球状微粒子)
シリコーンエラストマー球状微粒子は、体積平均粒径が0.1〜100μmのものとし、例えば前記の水分散液の形で製造されたものを使用するが、その水分散液をそのまま使用してもよいし、さらに水を添加してもよい。なお、シリコーンエラストマー球状微粒子は、水100質量部に対し1〜150質量部となる量が好ましく、より好ましくは5〜70質量部の範囲である。1質量部未満では目的とするシリコーン微粒子の生成効率が低くなる恐れがあるし、150質量部より多くするとシリコーンエラストマー球状微粒子表面にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆させることが困難となり、粒子の凝集、融着が生じることもある。
【0053】
(カチオン性界面活性剤・カチオン性水溶性高分子)
カチオン性界面活性剤やカチオン性水溶性高分子は、シリコーンエラストマー球状微粒子表面を被覆する粒状のポリオルガノシルセスキオキサンの径を小さくする作用がある。
カチオン性界面活性剤、カチオン性水溶性高分子は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよいが、カチオン性界面活性剤は、シリコーン微粒子中に残存していると後工程の熱乾燥処理により臭いがでやすいため、カチオン性水溶性高分子の使用がより好ましい。
【0054】
カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子の添加量は、水100質量部に対し、0.001〜1質量部が好ましく、より好ましくは、0.005〜0.5質量部の範囲である。0.001質量部未満ではポリオルガノシルセスキオキサンの径が小さくなり難く、1質量部より多いとシリコーンエラストマー球状微粒子表面にポリオルガノシルセスキオキサンが被覆され難くなる。
【0055】
カチオン性界面活性剤は特に限定されず、前記と同じものが例示される。
カチオン性水溶性高分子も特に限定されず、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの重合体、ビニルイミダゾリンの重合体、メチルビニルイミダゾリウムクロライドの重合体、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、エピクロルヒドリン/ジメチルアミン重合体、エチレンイミンの重合体、エチレンイミンの重合体の4級化物、アリルアミン塩酸塩の重合体、ポリリジン、カチオンデンプン、カチオン化セルロース、キトサン、及びこれらに非イオン性基やアニオン性基を持つモノマーを共重合する等したこれらの誘導体等が挙げられる。
【0056】
(アルカリ性物質)
アルカリ性物質はオルガノトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応触媒として作用する。アルカリ性物質は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。アルカリ性物質はそのまま添加してもアルカリ性水溶液として添加してもよい。アルカリ性物質は、水、シリコーンエラストマー球状微粒子、及びカチオン性界面活性剤又はカチオン性水溶性高分子を含む水分散液にオルガノトリアルコキシシランを添加する前に配合しておくことが好ましい。オルガノトリアルコキシシラン添加後にアルカリ性物質を添加すると、シリコーンエラストマー球状微粒子表面にポリオルガノシルセスキオキサンが被覆されない場合がある。
【0057】
アルカリ性物質の添加量は、水と、シリコーンエラストマー球状微粒子と、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子と、前記アルカリ性物質とを含む水分散液のpHが好ましくは10.0〜13.0、より好ましくは10.5〜12.5の範囲となる量である。該pHが10.0〜13.0となる量のアルカリ性物質を添加すると、オルガノトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応の進行及びポリオルガノシルセスキオキサンによるシリコーンエラストマー球状微粒子表面の被覆が特に十分なものとなる。
【0058】
アルカリ性物質は特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;又はモノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン類等を使用することができる。なかでも、揮発させることにより、得られるシリコーン微粒子の粉末から容易に除去できることから、アンモニアが最も適している。アンモニアとしては、市販されているアンモニア水溶液を用いることができる。
【0059】
(オルガノトリアルコキシシラン)
オルガノトリアルコキシシランとしては、例えば、式:RSi(ORで表されるものが挙げられる。式中、Rは前記のとおりであり、Rは非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられるが、反応性の点からメチル基であることが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン中にRSiO2/2単位、RSiO1/2単位、及びSiO4/2単位の少なくとも1種を更に導入したい場合には、それぞれに対応するRSi(OR、RSiOR、及びSi(ORの少なくとも1種を添加すればよい(これらの式で、R及びRは前記のとおりである)。ポリオルガノシルセスキオキサンの原料としてRSi(ORとRSi(OR、RSiOR、及びSi(ORの少なくとも1種とを用いる場合、RSi(ORの含有率は、全原料中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
【0060】
オルガノトリアルコキシシランの添加量は、前記したシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部に対しポリオルガノシルセスキオキサンの量が0.5〜25質量部、好ましくは1〜15質量部の範囲になるような量とする。
【0061】
オルガノトリアルコキシシランの添加は、プロペラ翼、平板翼等の通常の攪拌機を用いて攪拌下で行うことが好ましい。オルガノトリアルコキシシランは、一度に添加してもよいが、時間をかけて徐々に添加することが好ましい。また、このときの温度は0〜60℃であることが好ましく、より好ましくは0〜40℃の範囲である。該温度が0〜60℃であると、シリコーンエラストマー球状微粒子表面にうまくポリオルガノシルセスキオキサンを被覆することができる。
【0062】
攪拌は、オルガノトリアルコキシシランの添加後も、オルガノトリアルコキシシランの加水分解・縮合反応が完結するまで継続する。加水分解・縮合反応を完結させるためには、該反応は室温で行っても40〜100℃程度の加熱下で行ってもよい。
【0063】
加水分解・縮合反応後、得られた本発明のシリコーン微粒子の水分散液から水分を除去する。水分の除去は、例えば、反応後の水分散液を常圧下又は減圧下に加熱することにより行うことができ、具体的には、分散液を加熱下で静置して水分を除去する方法、分散液を加熱下で撹拌流動させながら水分を除去する方法、スプレードライヤーのように熱風気流中に分散液を噴霧、分散させる方法、流動熱媒体を利用する方法等が挙げられる。なお、この操作の前処理として、加熱脱水、濾過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で分散液を濃縮してもよいし、必要ならば分散液を水やアルコールで洗浄してもよい。
【0064】
反応後の水分散液から水分を除去することにより得られた生成物が凝集している場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機で解砕することにより、シリコーン微粒子を得ることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、動粘度は25℃において測定した値であり、濃度及び含有率を表す「%」は「質量%」を示す。また、分散性の評価は以下のように行った。
【0066】
〔分散性の評価(メッシュパス量の測定)〕
上から、60メッシュの篩、100メッシュの篩、200メッシュの篩の順に重ね、60メッシュの篩上に微粒子試料を約2g秤取り、粉体特性装置「パウダテスタPT−E型」(ホソカワミクロン(株)製)を用いて、90秒間、振幅1mmの振動を与え、それぞれのメッシュのパス量を測定した。メッシュパス量は%で表し、パス量が多いほど分散性が高いと判断される。
【0067】
〔実施例1〕
下記式(1)で示される、動粘度が600mm/sのメチルビニルポリシロキサン500gと下記式(2)で示される、動粘度が30mm/sのメチルハイドロジェンポリシロキサン20g(オレフィン性不飽和基1個に対しヒドロシリル基が0.90個となる配合量)を容量1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて2,000rpmで撹拌溶解させた。次いで、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=9モル)5gと水150gを加え、ホモミキサーを用いて6,000rpmで撹拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、更に、15分間撹拌を継続した。次いで、2,000rpmで撹拌しながら、水329gを加えたところ、均一な白色エマルジョンが得られた。このエマルジョンを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに移し、15〜20℃に温調した後、撹拌下に塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)1gとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=9モル)1gの混合溶解物を添加し、同温度で12時間撹拌し、シリコーンエラストマー微粒子の水分散液を得た。
【0068】
【化1】

【0069】
得られた水分散液中のシリコーンエラストマー微粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、3μmであった。
【0070】
また、シリコーンエラストマー微粒子を構成するシリコーンエラストマーの硬度を以下のように測定した。上記式(1)で示されるメチルビニルポリシロキサン、上記式(2)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、及び塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)を前記の配合割合で混合し、厚みが10mmになるようアルミシャーレに流し込んだ。25℃で24時間放置後、50℃の恒温槽内で1時間加熱し、べたつきのないシリコーンエラストマーを得た。シリコーンエラストマーの硬度を、デュロメータA硬度計で測定したところ、25であった。
【0071】
前記得られたシリコーンエラストマー球状微粒子の水分散液580gを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量3リットルのガラスフラスコに移し、水2,290g、28%アンモニア水60g、及び40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3g(水100質量部に対しジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体が0.05質量部となる量)を添加した。このときの液のpHは、11.3であった。5〜10℃に温調した後、メチルトリメトキシシラン65g(シリコーンエラストマー球状微粒子100質量部に対し、加水分解・縮合反応後のポリメチルシルセスキオキサンが10.7質量部となる量)を20分かけて滴下し、この間の液温を5〜10℃に保ち、さらに1時間攪拌を行った。次いで、55〜60℃まで加熱し、その温度を保ったまま1時間攪拌を行い、メチルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を完結させた。
【0072】
シリコーンエラストマー微粒子の水分散液中でメチルトリメトキシシランを加水分解、縮合反応させた液を加圧ろ過器を用いて水分約30%に脱水した。脱水物を錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を再度錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を熱風流動乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕し、流動性のあるシリコーン微粒子を得た。
【0073】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が10〜20nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0074】
〔実施例2〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、カチオン化セルロース(商品名:ポイズC−60H、花王(株)製)1.3g(水100質量部に対し0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0075】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が30〜60nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0076】
〔実施例3〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、30%ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名:カチオンBB、日油(株)製)4.4g(水100質量部に対しドデシルトリメチルアンモニウムクロライドが0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0077】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が20〜30nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0078】
〔実施例4〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、30%ポリエチレンイミン(商品名:エポミンP−1000、(株)日本触媒製)4.4g(水100質量部に対しポリエチレンイミンが0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0079】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が30〜40nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0080】
〔実施例5〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、75%ジアルキル(炭素数12〜18)ジメチルアンモニウムクロライド(商品名:コータミンD2345P、花王(株)製)1.8g(水100質量部に対しジアルキル(炭素数12〜18)ジメチルアンモニウムクロライドが0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0081】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が20〜30nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0082】
〔実施例6〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、20%トリポリオキシエチレンステアリルアンモニウムクロライド(商品名:カチナールSPC−20AC、東邦化学工業(株)製)6.6g(水100質量部に対しトリポリオキシエチレンステアリルアンモニウムクロライドが0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0083】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が20〜30nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0084】
〔比較例1〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0085】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径3μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が70〜100nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0086】
〔比較例2〕
実施例1において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3gの代わりに、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名:ニッコールSLS、日光ケミカルズ(株)製)1.3g(水100質量部に対し0.05質量部となる量)を用いた他は、実施例1と同様にしてシリコーン微粒子を得たが、流動性のないものであった。
【0087】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液に比較し大きい粒子が多く、体積平均粒径は17μmであり、凝集性が強いため水に対し一次粒子にまでばらけていないと推測された。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面に付着しているポリメチルシルセスキオキサン粒は少なく、その粒の大きさは100nmであった。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0088】
【表1】

【0089】
〔実施例7〕
下記式(3)で示される、動粘度が10mm/sのメチルビニルポリシロキサン114gと、下記式(4)で示される、動粘度が110mm/sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン400g(オレフィン性不飽和基1個に対しヒドロシリル基が1.04個となる配合量)とを容量1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて2,000rpmで撹拌溶解させた。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=9モル)1gと水100gを加え、ホモミキサーを用いて6,000rpmで撹拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、更に、15分間撹拌を継続した。次いで、2,000rpmで撹拌しながら、水382gを加えたところ、均一な白色エマルジョンが得られた。このエマルジョンを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量1リットルのガラスフラスコに移し、15〜20℃に温調した後、撹拌下に塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)1.6gとポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=9モル)1gの混合溶解物を添加し、同温度で12時間撹拌し、シリコーンエラストマー微粒子の水分散液を得た。
【0090】
【化2】

【0091】
得られた水分散液中のシリコーンエラストマー微粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、電気抵抗法体積平均粒径を粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、12μmであった。
【0092】
また、シリコーンエラストマー微粒子を構成するシリコーンエラストマーの硬度を以下のように測定した。上記式(3)で示されるメチルビニルポリシロキサン、上記式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)を前記の配合割合で混合し、厚みが10mmになるようアルミシャーレに流し込んだ。25℃で24時間放置後、50℃の恒温槽内で1時間加熱し、べたつきのないシリコーンエラストマーを得た。シリコーンエラストマーの硬度を、デュロメータE硬度計で測定したところ、44であった。
【0093】
前記得られたシリコーンエラストマー球状微粒子の水分散液876gを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量3リットルのガラスフラスコに移し、水1,988g、28%アンモニア水57g、及び40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.1g(水100質量部に対しジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体が0.05質量部となる量)を添加した。このときの液のpHは、11.3であった。5〜10℃に温調した後、メチルトリメトキシシラン79g(シリコーンエラストマー球状微粒子100質量部に対し、加水分解・縮合反応後のポリメチルシルセスキオキサンが8.6質量部となる量)を30分かけて滴下し、この間の液温を5〜10℃に保ち、さらに1時間攪拌を行った。次いで、55〜60℃まで加熱し、その温度を保ったまま1時間攪拌を行い、メチルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を完結させた。
【0094】
シリコーンエラストマー微粒子の水分散液中でメチルトリメトキシシランを加水分解、縮合反応させた液を加圧ろ過器を用いて水分約30%に脱水した。脱水物を錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を再度錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を熱風流動乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕し、流動性のあるシリコーン微粒子を得た。
【0095】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径12μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が10〜20nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表2に示す結果が得られた。
【0096】
〔実施例8〕
実施例7において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.1gを、1.2g(水100質量部に対しトリポリオキシエチレンステアリルアンモニウムクロライドが0.02質量部となる量)を用いた他は、実施例7と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0097】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径12μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が20〜30nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表2に示す結果が得られた。
【0098】
〔比較例3〕
実施例7において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)を使用しない以外は、実施例7と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0099】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液に比較し大きい粒子が多く、体積平均粒径は35μmであり、凝集性が強いため水に対し一次粒子にまでばらけていないと推測された。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が100nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表2に示す結果が得られた。
【0100】
【表2】

【0101】
〔実施例9〕
下記式(5)で示される、動粘度が67mm/sのメチルビニルポリシロキサン273gと下記式(6)で示される、動粘度が30mm/sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン42g(オレフィン性不飽和基1個に対しヒドロシリル基が1.08個となる配合量)を容量3リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて2,000rpmで撹拌溶解させた。次いで、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル)1.8g、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=20モル)2.7gと水72gを加え、ホモミキサーを用いて6,000rpmで撹拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、更に、15分間撹拌を継続した。次いで、2,000rpmで撹拌しながら、水2607gを加えた後、ホモジナイザーに40MPaの圧力で2回かけ、均一な白色エマルジョンが得た。このエマルジョンを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量3リットルのガラスフラスコに移し、15〜20℃に温調した後、撹拌下に塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)0.9gとポリオキシエチレンベヘニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル)0.9gの混合溶解物を添加し、同温度で12時間撹拌し、シリコーンエラストマー微粒子の水分散液を得た。
【0102】
【化3】

【0103】
得られた水分散液中のシリコーンエラストマー微粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」((株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.7μmであった。
【0104】
また、シリコーンエラストマー微粒子を構成するシリコーンエラストマーの硬度を以下のように測定した。上記式(5)で示されるメチルビニルポリシロキサン、上記式(6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5%)を前記の配合割合で混合し、厚みが10mmになるようアルミシャーレに流し込んだ。25℃で24時間放置後、50℃の恒温槽内で1時間加熱し、べたつきのないシリコーンエラストマーを得た。シリコーンエラストマーの硬度を、デュロメータA硬度計で測定したところ、51であった。
【0105】
前記得られたシリコーンエラストマー球状微粒子の水分散液2871gを錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量3リットルのガラスフラスコに移し、28%アンモニア水60g、及び40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)3.3g(水100質量部に対しジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体が0.05質量部となる量)を添加した。このときの液のpHは、11.4であった。5〜10℃に温調した後、メチルトリメトキシシラン68g(シリコーンエラストマー球状微粒子100質量部に対し、加水分解・縮合反応後のポリメチルシルセスキオキサンが11.1質量部となる量)を25分かけて滴下し、この間の液温を5〜10℃に保ち、さらに1時間攪拌を行った。次いで、55〜60℃まで加熱し、その温度を保ったまま1時間攪拌を行い、メチルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を完結させた。
【0106】
シリコーンエラストマー微粒子の水分散液中でメチルトリメトキシシランを加水分解、縮合反応させた液を加圧ろ過器を用いて水分約30%に脱水した。脱水物を錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を再度錨型攪拌翼による撹拌装置の付いた容量5リットルのガラスフラスコに移し、水3000gを添加し、30分間攪拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。脱水物を熱風流動乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕し、流動性のあるシリコーン微粒子を得た。
【0107】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」((株)堀場製作所製)粒度分布測定装置を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径0.7μmであった。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が10〜20nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表3に示す結果が得られた。
【0108】
〔比較例4〕
実施例9において、40%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東邦化学工業(株)製)を使用しない以外は、実施例9と同様にしてシリコーン微粒子を得た。
【0109】
得られたシリコーン微粒子を界面活性剤を用いて水に分散させて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」((株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーンエラストマー微粒子の水分散液に比較し大きい粒子が多く、体積平均粒径は1.2μmであり、凝集性が強いため水に対し一次粒子にまでばらけていないと推測された。
また、このシリコーン微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、シリコーンエラストマー球状微粒子表面が80nmの粒状形状のポリメチルシルセスキオキサンで被覆した微粒子となっていることが確認された。
さらに、このシリコーン微粒子について、前記した方法で分散性を調べたところ、表3に示す結果が得られた。
【0110】
【表3】

【0111】
表1〜3に示されるように、実施例1〜9のシリコーン微粒子は、比較例1〜4の微粒子に比較し分散性が高く、特にシリコーンエラストマー微粒子のゴム硬度が低い場合や粒径が小さい場合にも、分散性は従来に比較しはるかに高いため、例えば樹脂や化粧料に配合した際、凝集することなく一次粒子にまで均一に分散し、所望の特性が発揮されることが期待できる。また、乾式分級処理においては、高い分級能が期待できる。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子100質量部と、その表面を被覆するポリオルガノシルセスキオキサン0.5〜25質量部とを有してなり、前記ポリオルガノシルセスキオキサンは粒状で大きさが60nm以下であることを特徴とするシリコーン微粒子。
【請求項2】
前記シリコーンエラストマー球状微粒子の体積平均粒径が、0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン微粒子。
【請求項3】
前記シリコーンエラストマー球状微粒子を構成するシリコーンエラストマーのゴム硬度が、タイプEデュロメータによる測定で10以上で、タイプAデュロメータによる測定で30以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーン微粒子。
【請求項4】
水と、体積平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンエラストマー球状微粒子と、アルカリ性物質と、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子との存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解・縮合させることにより、前記シリコーンエラストマー球状微粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆して、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーン微粒子を製造することを特徴とするシリコーン微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性水溶性高分子の配合量を、前記水100質量部に対し、0.001〜1質量部とすることを特徴とする請求項4に記載のシリコーン微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2013−40241(P2013−40241A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176403(P2011−176403)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】