説明

シリコーン樹脂フィルム、その調製方法、及びナノ材料充填シリコーン組成物

【課題】透明性、機械的特性(引張強度、弾性率など)及び熱的特性(熱膨張係数、ガラス転移温度など)の全てに優れたシリコーン樹脂フィルムを与えるシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物であって、前記縮合硬化型シリコーン組成物が、式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂、又は溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂及び(B)縮合触媒を含み、ナノ材料充填シリコーン組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年1月19日に出願された米国仮出願第60/760,261号の利益を主張する。米国仮出願第60/760,261号は、参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、シリコーン樹脂フィルムの調製方法に関し、特に、縮合硬化型シリコーン組成物とカーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物で離型ライナー(release liner)をコーティングすること、及びコーティングされた離型ライナーのシリコーン樹脂を硬化することを含む方法に関する。また、本発明は、前記方法により調製されたシリコーン樹脂フィルム、及びナノ材料充填シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
シリコーン樹脂は、熱安定性が高く、耐湿性が良好で、柔軟性に優れ、耐酸化性が高く、誘電率が低く、透明性が高い等の特性の独特な組み合わせにより、様々な用途において有用である。例えば、シリコーン樹脂は、自動車産業、電子産業、建設産業、家電産業及び航空宇宙産業において保護又は誘電体コーティングとして幅広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン樹脂コーティングは、様々な基材を保護、絶縁又は結合するために使用し得るけれども、自立性(free standing)シリコーン樹脂フィルムは、引裂強度が低く、脆性が高く、ガラス転位温度が低く、そして熱膨張係数が高いために、実用性が限定されている。そういうわけで、改良された機械的及び熱的特性を有する自立性シリコーン樹脂フィルムに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の概要]
本発明は、ナノ材料充填シリコーン組成物で離型ライナーをコーティングする工程であって、前記シリコーン組成物が、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含み、前記縮合硬化型シリコーン組成物が、式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)を有するシリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有する)、又は(A)水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有するシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有するシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対する前記シリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01〜1.5である)及び(B)縮合触媒を含み、式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R又は加水分解性基であり;mは2〜1,000であり、wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8である工程と、前記コーティングされた離型ライナーの前記シリコーン樹脂を硬化する工程とを含むシリコーン樹脂フィルムの調製方法に関する。
【0006】
また、本発明は、前記方法により調製されたシリコーン樹脂フィルムに関する。
【0007】
さらに、本発明は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物であって、前記縮合硬化型シリコーン組成物が、式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)を有するシリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有する)、又は(A)水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有するシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有するシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対する前記シリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01〜1.5である)及び(B)縮合触媒を含み、式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R又は加水分解性基であり;mは2〜1,000であり、wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8であるナノ材料充填シリコーン組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料がない同様のシリコーン組成物から調製されるシリコーン樹脂フィルムに比べて、低熱膨張係数、高引張強度及び高弾性率(high modulus)を有する。また、充填(すなわち、カーボンナノ材料含有)及び無充填シリコーン樹脂フィルムは、同程度のガラス転位温度を有しているけれども、充填シリコーン樹脂フィルムは、そのガラス転位に対応する温度範囲において、より小さい弾性率の変化を示す。
【0009】
本発明のシリコーン樹脂フィルムは、高熱安定性、柔軟性、機械的強度及び透明性を有するフィルムを要求する用途において有用である。例えば、シリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子黒板、タッチスクリーン、耐火性壁紙及び耐衝撃性窓ガラスの不可欠な構成要素として使用され得る。また、フィルムは、透明又は不透明電極用の適切な基材でもある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発明の詳細な説明]
本明細書において、用語「シリコーン樹脂中の、水素、ヒドロキシ又は加水分解性基であるR基のモル%」とは、シリコーン樹脂中のR基の全モル数に対するシリコーン樹脂中のケイ素結合水素、ヒドロキシ又は加水分解性基のモル数の比に100を乗じたものとして定義される。また、用語「シリコーン樹脂中の、ヒドロキシ又は加水分解性基であるR基のモル%」とは、シリコーン樹脂中のR基の全モル数に対するシリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基のモル数の比に100を乗じたものとして定義される。
【0011】
本発明によるナノ材料充填シリコーン組成物は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含む。
【0012】
縮合硬化型シリコーン組成物は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含有する縮合硬化型シリコーン組成物であり得る。典型的には、縮合硬化型シリコーン組成物は、前記のシリコーン樹脂と、任意に、ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤及び/又は縮合触媒とを含む。
【0013】
縮合硬化型シリコーン組成物のシリコーン樹脂は、典型的に、Tシロキサン単位、或いはM及び/又はDシロキサン単位と組み合わせたT及び/又はQシロキサン単位を含有するコポリマーである。さらに、シリコーン樹脂は、縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態について以下に記載されるゴム変性シリコーン樹脂でもあり得る。
【0014】
第一の実施形態によれば、縮合硬化型シリコーン組成物は、式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)
を有するシリコーン樹脂を含む。式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、−OH又は加水分解性基であり;wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8である。また、シリコーン樹脂は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有する。
【0015】
により表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、1〜10個の炭素原子、或いは1〜6個の炭素原子、或いは1〜4個の炭素原子を典型的に有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分枝又は非分枝構造を有し得る。Rにより表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシル等のアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル及びメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル及びナフチル等のアリール;トリル及びキシリル等のアルカリール;ベンジル及びフェネチル等のアラルキル;ビニル、アリル及びプロペニル等アルケニル;スチリル及びシンナミル等のアリールアルケニル;並びにエチニル及びプロピニル等のアルキニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Rにより表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、及び2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本明細書では、用語「加水分解性基」とは、触媒の存在又は非存在下のいずれにおいても、室温(約23±2℃)〜100℃の任意温度で数分(例えば、30分)内にケイ素結合基が水と反応してシラノール(Si−OH)基を形成することを意味する。Rにより表される加水分解性基の例としては、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、及び−ONHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。式中、Rは、C〜Cのヒドロカルビル又はC〜Cのハロゲン置換ヒドロカルビルである。
【0017】
により表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、1〜8個の炭素原子、或いは3〜6個の炭素原子を典型的に有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分枝又は非分枝構造を有し得る。Rにより表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル等の非分枝及び分枝アルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル及びメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル;トリル及びキシリル等のアルカリール;ベンジル及びフェネチル等のアラルキル;ビニル、アリル及びプロペニル等のアルケニル;スチリル等のアリールアルケニル;並びにエチニル及びプロペニル等のアルキニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Rにより表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル及びジクロロフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
シリコーン樹脂の式(I)において、下付きのw、x、y及びzはモル分率である。下付きのwは、0〜0.8、或いは0.02〜0.75、或いは0.05〜0.3の値を典型的に有し;下付きのxは、0〜0.6、或いは0〜0.45、或いは0〜0.25の値を典型的に有し;下付きのyは、0〜0.99、或いは0.25〜0.8、或いは0.5〜0.8の値を典型的に有し;下付きのzは、0〜0.35、或いは0〜0.25、或いは0〜0.15の値を典型的に有する。また、y+z/(w+x+y+z)の比は、典型的に0.2〜0.99、或いは0.5〜0.95、或いは0.65〜0.9である。さらに、w+x/(w+x+y+z)の比は、典型的に0〜0.80、或いは0.05〜0.5、或いは0.1〜0.35である。さらにまた、yが0の場合、w+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8、或いは0.1〜0.5である。
【0019】
典型的に、シリコーン樹脂中のR基の少なくとも10モル%、或いは少なくとも50モル%、或いは少なくとも80モル%は、水素、ヒドロキシ又は加水分解性基である。
【0020】
シリコーン樹脂は、500〜50,000、或いは500〜10,000、或いは1,000〜3,000の数平均分子量(Mn)を典型的に有する。ここで、分子量は、低角度光散乱検出器、又は屈折率検出器及びシリコーン樹脂(MQ)標準物質を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。
【0021】
シリコーン樹脂の25℃での粘度は、典型的に0.01〜100,000Pa・s、或いは0.1〜10,000Pa・s、或いは1〜100Pa・sである。
【0022】
シリコーン樹脂は、RSiO3/2単位(すなわち、T単位)、或いはRSiO1/2単位(すなわち、M単位)及び/又はRSiO2/2単位(すなわち、D単位)と組み合わせたRSiO3/2単位(すなわち、T単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわち、Q単位)を含有し得る。ここで、R及びRは、上記に記載及び例示されている通りである。例えば、シリコーン樹脂は、T樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であり得る。
【0023】
シリコーン樹脂の例としては、以下の式:(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(MeSiO1/20.8(SiO4/20.2、(MeSiO3/2)0.67(PhSiO3/20.33、(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.40(PhSiO2/20.1(PhMeSiO2/20.05、(PhSiO3/2)0.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、及び(PhSiO3/2)0.4(MeSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.5を有する樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、Mはメチルであり、Phはフェニルであり、丸括弧の外の下付き数値はモル分率を意味し、下付きnは、シリコーン樹脂が500〜50,000の数平均分子量を有するような値をもつ。また、上記式において、単位の順序は特定されない。
【0024】
縮合硬化型シリコーン組成物の第一の実施形態は、それぞれ上記したような単一のシリコーン樹脂、又は2つ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物を含有し得る。
【0025】
ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を含有するシリコーン樹脂の調製方法は当該技術分野において公知であり、これらの樹脂の多くは商業的に利用可能である。シリコーン樹脂は、トルエン等の有機溶媒中で、シラン前駆物質の適当な混合物を共加水分解することにより典型的に調製される。例えば、式RSiXを有するシラン及び式RSiXを有するシランをトルエン中で共加水分解することにより、シリコーン樹脂を調製し得る。式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、又は加水分解性基であり;Xは加水分解性基であり;ただし、Rが加水分解性基である場合、Xは加水分解反応においてRよりも反応性が高い。水性の塩酸及びシリコーン加水分解物を分離し、そして加水分解物を水で洗浄して残りの酸を除去し、温和な(mild)縮合触媒の存在下で加熱して必要な粘度に樹脂を「具体化(body)」(すなわち、凝縮)する。所望により、有機溶媒中で樹脂を縮合触媒でさらに処理し、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を低減することもできる。
【0026】
縮合硬化型シリコーン組成物の第一の実施形態は、以下に記載するように、シリコーン樹脂が硬化し、低熱膨張係数、高引張強度及び高弾性率を有する硬化シリコーン樹脂を形成することを追加的な成分が妨げないという条件で、追加的な成分を含み得る。追加的な成分の例としては、接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;UV安定剤;難燃剤;流量調整添加剤(flow control additives);有機溶媒;架橋剤;及び縮合触媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
例えば、シリコーン組成物は、架橋剤及び/又は縮合触媒をさらに含み得る。架橋剤は、式RSiX4−qを有し得る。式中、Rは、C〜Cヒドロカルビル又はC〜Cハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、qは0又は1である。Rにより表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル、及びXにより表される加水分解性基は、上記に記載及び例示されている通りである。
【0028】
架橋剤の例としては、MeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH]、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、及びSi(OC等のアルコキシシラン;CHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、及びCH=CHSi(OCOCH等のオルガノアセトキシシラン;CHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCH、及びCH=CHSi[O−N=C(CH)CHCH等のオルガノイミノオキシシラン;CHSi[NHC(=O)CH及びCSi[NHC(=O)CH等のオルガノアセトアミドシラン;CHSi[NH(s−C)]及びCHSi(NHC11等のアミノシラン;並びにオルガノアミノオキシシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
架橋剤は、それぞれ上記したような単一のシラン、又は2つ以上の異なるシランの混合物であり得る。また、三及び四官能性シランの調製方法は、当該技術分野において公知であり、これらのシランは商業的に利用可能である。
【0030】
存在する場合、シリコーン組成物中の架橋剤の濃度は、シリコーン樹脂を硬化(架橋)するのに十分な濃度である。架橋剤の正確な量は、所望の硬化の程度に依存し、シリコーン樹脂中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基のモル数に対する架橋剤中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比が増加するにつれて一般に増加する。典型的に、架橋剤の濃度は、シリコーン樹脂中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基1モルあたり、0.2〜4モルのケイ素結合加水分解性基を与えるのに十分な量である。架橋剤の最適な量は、通常の実験により容易に決定され得る。
【0031】
上述したように、縮合硬化型シリコーン組成物の第一の実施形態は、少なくとも1つの縮合触媒をさらに含み得る。縮合触媒は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進してSi−O−Si結合を形成するのに典型的に使用される任意の縮合触媒であり得る。縮合触媒の例としては、アミン;鉛、錫、亜鉛及び鉄とカルボン酸との錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、縮合触媒は、ジラウリン酸錫、錫ジオクトエート(tin dioctoate)及びテトラブチル錫等の錫(II)及び錫(IV)化合物;並びにチタンテトラブトキシド(titanium tetrabutoxide)等のチタン化合物から選択され得る。
【0032】
存在する場合、縮合触媒の濃度は、シリコーン樹脂の全重量に対して、典型的に0.1〜10%(w/w)、或いは0.5〜5%(w/w)、或いは1〜3%(w/w)である。
【0033】
第二の実施形態によれば、縮合硬化組成物は、(A)水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有するシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有するシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂と、(B)縮合触媒とを含む。ここで、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R又は加水分解性基であり;mは2〜1,000であり、wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8であり;シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対するシリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比は、0.01〜1.5である。
【0034】
成分(A)は、水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有する少なくとも1つのシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂である。ここで、R、w、x、y、z、y+z/(w+x+y+z)及びw+x/(w+x+y+z)は、式(I)を有するシリコーン樹脂に関して上記に記載及び例示された通りである。R及びRにより表される加水分解性基は、Rに関して上記に記載及び例示された通りである。mは、2〜1,000の値を有する。ただし、シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し、シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し、シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対するシリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比は0.01〜1.5である。本明細書において、用語「溶解性反応生成物」とは、成分(A)を調製するための反応の生成物が、有機溶媒に混和でき、沈殿物や懸濁液を形成しないことを意味する。
【0035】
シリコーン樹脂(i)において、典型的に少なくとも10モル%、或いは少なくとも50モル%、或いは少なくとも80モル%のR基が、ヒドロキシ又は加水分解性基である。
【0036】
シリコーン樹脂(i)は、500〜50,000、或いは500〜10,000、或いは1,000〜3,000の数平均分子量(Mn)を典型的に有する。ここで、分子量は、低角度光散乱検出器、又は屈折率検出器及びシリコーン樹脂(MQ)標準物質を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。
【0037】
シリコーン樹脂(i)の25℃での粘度は、典型的に0.01〜100,000Pa・s、或いは0.1〜10,000Pa・s、或いは1〜100Pa・sである。
【0038】
シリコーン樹脂(i)は、RSiO3/2単位(すなわち、T単位)、或いはRSiO1/2単位(すなわち、M単位)及び/又はRSiO2/2単位(すなわち、D単位)と組み合わせたRSiO3/2単位(すなわち、T単位)及び/又はSiO4/2単位(すなわち、Q単位)を含有し得る。ここで、R及びRは、上記に記載及び例示されている通りである。例えば、シリコーン樹脂(i)は、T樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であり得る。
【0039】
シリコーン樹脂(i)として使用するのに適切なシリコーン樹脂の例としては、以下の式:(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(PhSiO3/20.40(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、及び(PhSiO3/2)0.3(SiO4/20.1(MeSiO2/20.2(PhSiO2/20.4を有する樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、Mはメチルであり、Phはフェニルであり、丸括弧の外の下付き数値はモル分率を意味し、下付きnは、シリコーン樹脂が500〜50,000の数平均分子量を有するような値をもつ。また、上記式において、単位の順序は特定されない。
【0040】
シリコーン樹脂(i)は、式(II)をそれぞれ有する単一のシリコーン樹脂、又は2つ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であり得る。
【0041】
シリコーン樹脂(i)として使用するのに適切なシリコーン樹脂の調製方法は、当該技術分野において公知であり、これらの樹脂の多くは商業的に利用可能である。例えば、シリコーン樹脂は、式(I)を有するシリコーン樹脂に関して上述したように、トルエン等の有機溶媒中で、シラン前駆物質の適当な混合物を共加水分解することにより典型的に調製される。
【0042】
また、有機ケイ素化合物は、式(II)を有するシリコーン樹脂の加水分解性前駆物質(ii)でもあり得る。本明細書において、用語「加水分解性前駆物質」とは、式(II)を有するシリコーン樹脂の調製のための原料(前駆物質)として使用するのに適切な加水分解性基を有するシランのことを言う。加水分解性前駆物質は、式:RSiX、RSiX、RSiX及びSiXにより表され得る。ここで、RはC〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Rは、R又は加水分解性基であり、Xは加水分解性基である。加水分解性前駆物質の例としては、MeViSiCl、MeSiCl、MeSi(OEt)、PhSiCl、MeSiCl、MeSiCl、PhMeSiCl、SiCl、PhSiCl、PhSi(OMe)、MeSi(OMe)、PhMeSi(OMe)、及びSi(OEt)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルである。
【0043】
加水分解性基を有するシランの調製方法は当該技術分野において公知であり、これらの化合物の多くは商業的に利用可能である。
【0044】
シリコーンゴムの式(III)において、R及びRは、上記に記載及び例示した通りであり、下付きmは、2〜1,000、或いは4〜500、或いは8〜400の値を典型的に有する。
【0045】
式(III)を有するシリコーンゴムの例としては、式:(EtO)SiO(MeSiO)55Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)16Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)386Si(OEt)、及び(EtO)MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)を有するシリコーンゴムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、Meはメチルであり、Etはエチルである。
【0046】
式(III)を有するシリコーンゴムは、式(III)をそれぞれ有する単一のシリコーンゴム、又は2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であり得る。例えば、シリコーンゴムは、式(III)中のmの値により示されるdp(重合度)が約15の第一のシリコーンゴム、及びdpが約350の第二のシリコーンゴムを含み得る。
【0047】
ケイ素結合加水分解性基を含有するシリコーンゴムの調製方法は当該技術分野において公知であり、これらの化合物の多くは商業的に利用可能である。
【0048】
成分(A)のゴム変性シリコーン樹脂の調製において使用される縮合触媒は、縮合硬化型シリコーン組成物の第一の実施形態について上記に記載及び例示した通りである。特に、チタン化合物は、成分(A)の調製における使用のための適切な縮合触媒である。
【0049】
有機溶媒は、少なくとも1つの有機溶媒である。有機溶媒は、成分(A)を調製するための条件下(下記で記載する)で有機ケイ素化合物、シリコーンゴム又はゴム変性シリコーン樹脂と反応せず、且つ前述の成分と混和性である任意の非プロトン又は双極性非プロトン有機溶媒であり得る。
【0050】
有機溶媒の例としては、n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン及びドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等の環状エーテル;メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;トリクロロエタン等のハロゲン化アルカン;ブロモベンゼン及びクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有機溶媒は、それぞれ上記で定義したような単一の有機溶媒、又は2つ以上の異なる有機溶媒を含む混合物であり得る。
【0051】
有機ケイ素化合物、シリコーンゴム、縮合触媒及び有機溶媒は、あらゆる順序で混合し得る。典型的に、有機ケイ素、シリコーンゴム及び有機溶媒は、縮合触媒の導入前に混合される。
【0052】
式(II)を有するシリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対するシリコーン樹脂中のケイ素結合加水分解性基のモル比は、典型的に0.01〜1.5、或いは0.05〜0.8、或いは0.2〜0.5である。
【0053】
反応混合物中の水の濃度は、ケイ素化合物中のR基の性質、及びシリコーンゴムにおけるケイ素結合加水分解性基の性質に依存する。有機ケイ素化合物が加水分解性基を含有する場合、水の濃度は、有機ケイ素及びシリコーンゴムにおける加水分解性基の加水分解をもたらすのに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、混合された有機ケイ素化合物及びシリコーンゴム中の加水分解性基1モルあたり、典型的に0.01〜3モル、或いは0.05〜1モルである。有機ケイ素化合物が加水分解性基を含有しない場合、微量(例えば、100ppm)の水だけが、反応混合物に要求される。微量の水は、反応物及び/又は溶媒に通常存在する。
【0054】
縮合触媒の濃度は、有機ケイ素化合物とシリコーンゴムとの縮合反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的に、縮合触媒の濃度は、有機ケイ素化合物の重量を基準として、0.01〜2%(w/w)、或いは0.01〜1%(w/w)、或いは0.05〜0.2%(w/w)である。
【0055】
有機溶媒の濃度は、反応混合物の全重量を基準として、典型的に10〜95%(w/w)、或いは20〜85%(w/w)、或いは50〜80%(w/w)である。
【0056】
反応は、室温(約23±2℃)〜180℃、或いは室温〜100℃の温度で典型的に行われる。
【0057】
反応時間は、有機ケイ素化合物やシリコーンゴムの構造、及び温度等のいくつかの要因に依存する。成分は、縮合反応を完結するのに十分な時間の間に典型的に反応し得る。これは、29Si NMR分光分析により決定される場合に、シリコーンゴム中にもともと存在するケイ素結合加水分解性基の少なくとも95モル%、或いは少なくとも98モル%、或いは少なくとも99モル%が縮合反応において消費されるまで、成分が反応し得ることを意味する。反応時間は、室温(約23±2℃)〜100℃の温度にて、典型的に1〜30時間である。最適な反応時間は、以下の実施例の項に記載される方法を用いる通常の実験により決定され得る。
【0058】
縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態における単離又は精製なしにゴム変性シリコーン樹脂を使用することができ、蒸発のような従来の方法によって溶媒の大部分から樹脂を分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱し得る。
【0059】
縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態の成分(B)は、少なくとも1つの縮合触媒である。ここで、触媒は、シリコーン組成物の第一の実施形態に関して上記に記載及び例示した通りである。特に、亜鉛化合物及びアミンは、本シリコーン組成物の成分(B)として使用するのに適している。
【0060】
成分(B)の濃度は、成分(A)の重量を基準として、典型的に0.1〜10%(w/w)、或いは0.5〜5%(w/w)、或いは1〜3%(w/w)である。
【0061】
縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態は、以下に記載するように、シリコーン樹脂が硬化し、低熱膨張係数、高引張強度及び高弾性率を有する硬化シリコーン樹脂を形成することを追加的な成分が妨げないという条件で、追加的な成分を含み得る。追加的な成分の例としては、接着促進剤、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、流量調整添加剤(flow control additives)、架橋剤、及び有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
例えば、縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態は、式RSiX4−qを有する架橋剤をさらに含み得る。式中、R、X及びqは、第一の実施形態の架橋剤に関して上記に記載及び例示された通りである。架橋剤は、それぞれ上記したような単一のシラン、又は2つ以上の異なるシランの混合物であり得る。
【0063】
存在する場合、縮合硬化型シリコーン組成物の第二の実施形態における架橋剤の濃度は、成分(A)のゴム変性シリコーン樹脂を硬化(架橋)するのに十分な濃度である。架橋剤の正確な量は、所望の硬化の程度に依存し、ゴム変性シリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基のモル数に対する架橋剤中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比が増加するにつれて一般に増加する。典型的に、架橋剤の濃度は、ゴム変性シリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基1モルあたり、0.2〜4モルのケイ素結合加水分解性基を与えるのに十分な濃度である。架橋剤の最適な量は、通常の実験によって容易に決定し得る。
【0064】
ナノ材料充填シリコーン組成物のカーボンナノ材料は、約200nm未満の物理的寸法(例えば、粒径、繊維径、層厚)を少なくとも1つ有する任意のカーボン材料であり得る。カーボンナノ材料の例としては、量子ドット、中空球及びフラーレン等の約200nm未満の三次元を有するカーボンナノ粒子;ナノチューブ(例えば、単層ナノチューブ及び多層ナノチューブ)及びナノ繊維(例えば、軸方向に整列した(axially aligned)ナノ繊維、プレートレット(platelet)ナノ繊維、ヘリンボーン(herringbone)ナノ繊維又はフィッシュボーン(fishbone)ナノ繊維)等の約200nm未満の二次元を有する繊維状カーボンナノ材料;カーボンナノプレートレット(例えば、膨張グラファイト、グラフェンシート(graphene sheet))等の約200nm未満の一次元を有する層状カーボンナノ材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カーボンナノ材料は、導電性又は半導体であり得る。
【0065】
また、カーボンナノ材料は、高温下で上記カーボンナノ材料を酸化性酸又は酸の混合物で処理して調製された酸化カーボンナノ材料でもあり得る。例えば、40〜150℃の温度で1〜3時間、濃硝酸及び濃硫酸(1:3v/v、25mL/gカーボン)の混合物中でカーボンナノ材料を加熱することによってカーボンナノ材料を酸化し得る。
【0066】
カーボンナノ材料は、それぞれ上記したような単一のカーボンナノ材料、又は少なくとも2つの異なるカーボンナノ材料を含む混合物であり得る。
【0067】
カーボンナノ材料の濃度は、ナノ材料充填シリコーン組成物の全重量を基準として、典型的に0.0001〜99%(w/w)、或いは0.001〜50%(w/w)、或いは0.01〜25%(w/w)、或いは0.1〜10%(w/w)、或いは1〜5%(w/w)である。
【0068】
カーボンナノ材料の調製方法は、当該技術分野において公知である。例えば、カーボンナノ粒子(例えば、フラーレン)及び繊維状カーボンナノ材料(例えば、ナノチューブ及びナノ繊維)は、以下の方法:アーク放電、レーザーアブレーション(laser ablation)、触媒化学蒸着の少なくとも1つを使用することにより調製され得る。アーク放電プロセスでは、二つのグラファイトロッドの間のアーク放電が、ガス雰囲気に応じて、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ及びフラーレンを形成する。レーザーアブレーション法では、チューブ炉中で、金属触媒を入れたグラファイトターゲットにレーザーを照射して単層ナノチューブ及び多層ナノチューブを形成する。触媒化学蒸着法では、500〜1,000℃の温度(及び異なる圧力)で、金属触媒を含有するチューブ炉にカーボン含有ガス又はガス混合物を導入してカーボンナノチューブ及びナノ繊維を形成する。カーボンナノプレートレットは、グラファイトのインターカレーション及び剥離(exfoliation)によって調製し得る。
【0069】
ナノ材料充填シリコーン組成物は、シリコーン樹脂及びカーボンナノ材料を単一部分に含有する一部形式の(one-part)組成物、或いはこれらの成分を2つ以上の部分に含む多部形式の(multi-part)組成物であり得る。シリコーン組成物が縮合触媒を含有する場合、組成物は、典型的に、シリコーン樹脂と縮合触媒とが別々の部分にある二部形式の組成物である。
【0070】
本発明によるシリコーン樹脂フィルムの調製方法は、
上記の縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物で離型ライナーをコーティングする工程、及び
前記コーティングされた離型ライナーの前記シリコーン樹脂を硬化する工程
を含む。
【0071】
シリコーン樹脂フィルムの調製方法の第1工程において、離型ライナーは、ナノ材料充填シリコーン組成物でコーティングされる。ここで、ナノ材料充填シリコーン組成物は、上記に記載及び例示した通りである。
【0072】
離型ライナーは、以下で記載するように、シリコーン樹脂を硬化した後に、損傷を与えることなくシリコーン樹脂フィルムを剥離することによって除去し得る表面を有する任意の硬質又は柔軟性材料であり得る。離型ライナーの例としては、シリコン、石英;石英ガラス;酸化アルミニウム;セラミックス;ガラス;金属箔;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニルフルオリド等のフルオロカーボンポリマー;ナイロン等のポリアミド;ポリイミド;ポリ(メチルメタクリレート)等のポリエステル;エポキシ樹脂;ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;並びにポリエーテルスルホンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、離型ライナーは、シリコーン離型剤(release agent)等の離型剤で処理した表面を有する、上記で例示したような材料でもあり得る。
【0073】
スピンコーティング、ディッピング、スプレー、はけ塗り(ブラッシング)又はスクリーン印刷等の従来のコーティング技法を用い、離型ライナーをナノ材料充填シリコーン組成物でコーティングし得る。シリコーン組成物の量は、以下で記載する方法の第2工程において、1〜500μmの厚さを有する硬化シリコーン樹脂フィルムを形成するのに十分な量である。
【0074】
シリコーン樹脂フィルムの調製方法は、以下で記載する硬化の第2工程の前に、第1工程のコーティングされた離型ライナーに第2の離型ライナーを適用して組立品(assembly)を形成することをさらに含み得る。ここで、第2の離型ライナーは、コーティングと接触し、且つ組立品を圧縮している。過剰のシリコーン組成物及び/又は取り込まれた空気を除去するため、並びにコーティングの厚さを低減するために組立品を圧縮し得る。ステンレス鋼製ローラー、液圧プレス、ゴム製ローラー又は張り合わせロールセット(laminating roll set)等の従来の装置を使用することによって組立品を圧縮し得る。組立品は、1,000Pa〜10MPaの圧力及び室温(約23±2℃)〜50℃の温度範囲で典型的に圧縮される。
【0075】
シリコーン樹脂フィルムの調製方法の第2工程において、コーティングされた離型ライナーのシリコーン樹脂が硬化される。シリコーン樹脂を硬化するための条件は、樹脂中のケイ素結合基の性質に依存する。例えば、シリコーン樹脂がケイ素結合水素原子又は加水分解性基を含有しない場合、コーティングを加熱することによってシリコーン樹脂を硬化(すなわち、架橋)し得る。例えば、50〜250℃の温度で1〜50時間の間、コーティングを加熱することによってシリコーン樹脂を典型的に硬化し得る。ナノ材料充填シリコーン組成物が縮合触媒を含む場合、より低温(例えば、室温(約23±2℃)〜200℃)でシリコーン樹脂を典型的に硬化し得る。
【0076】
また、シリコーン樹脂がケイ素結合水素原子を含有する場合(例えば、シリコーン組成物の第一の実施形態のシリコーン樹脂)、100〜450℃の温度で0.1〜20時間の間、コーティングを湿気又は酸素に曝すことによってシリコーン樹脂を硬化し得る。ナノ材料充填シリコーン組成物が縮合触媒を含有する場合、より低温(例えば、室温(約23±2℃)〜400℃)でシリコーン樹脂を典型的に硬化し得る。
【0077】
さらに、シリコーン樹脂がケイ素結合加水分解性基を含有する場合、室温(約23±2℃)〜250℃、或いは100〜200℃の温度で1〜100時間の間、コーティングを湿気に曝すことによってシリコーン樹脂を硬化し得る。例えば、およそ室温(約23±2℃)〜150℃の温度で0.5〜72時間の間、30%の相対湿度にコーティングを曝すことによってシリコーン樹脂を典型的に硬化し得る。熱の適用、高湿度への曝露、及び/又は組成物への縮合触媒の添加によって硬化を加速し得る。
【0078】
シリコーン樹脂は、大気圧又は減圧下で硬化し得る。例えば、コーティングが第1の離型ライナーと第2の離型ライナーとの間に囲まれていない場合、シリコーン樹脂は空気中の大気圧で典型的に硬化される。或いは、コーティングが第1の離型ライナーと第2の離型ライナーとの間に囲まれている場合、シリコーン樹脂は減圧下で典型的に硬化される。例えば、シリコーン樹脂は、1,000〜20,000Pa、或いは1,000〜5,000Paの圧力下で加熱され得る。シリコーン樹脂は、従来の真空バック法(vacuum bagging process)を使用する減圧下で硬化し得る。典型的な方法において、コーティングされた離型ライナー上にブリーダー(bleeder;例えば、ポリエステル)を適用し、ブリーザ(breather;例えば、ナイロン、ポリエステル)をブリーダー上に適用し、真空ノズルを備えた真空バックフィルム(vacuum bagging film;例えば、ナイロン)をブリーザ上に適用し、組立品をテープで密封し、密封された組立品に真空(例えば、1,000Pa)を適用し、必要ならば真空組立品を上述のようにして加熱する。
【0079】
方法は、離型ライナー(単数又は複数)から硬化シリコーン樹脂を分離する工程をさらに含み得る。離型ライナーから離れるフィルムを機械的に剥がすことによって、離型ライナーから硬化シリコーン樹脂を分離し得る。
【0080】
本発明の方法は、シリコーン樹脂フィルムの少なくとも一部にコーティングを形成することをさらに含み得る。コーティングの例としては、ヒドロシリル化硬化型シリコーン樹脂又は縮合硬化型シリコーン樹脂を硬化することにより調製される硬化シリコーン樹脂;有機シルセスキオキサン樹脂のゾルを硬化することにより調製される硬化シリコーン樹脂;インジウム錫酸化物、二酸化ケイ素及び二酸化チタン等の無機酸化物;窒化ケイ素及び窒化ガリウム等の無機窒化物;銅、銀、金、ニッケル及びクロム等の金属;並びにアモルファスシリコン、微結晶シリコン及び多結晶シリコン等のシリコンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本発明のシリコーン樹脂フィルムは、10〜99%(w/w)、或いは30〜95%(w/w)、或いは60〜95%(w/w)、或いは80〜95%(w/w)の硬化シリコーン樹脂を典型的に含む。また、シリコーン樹脂フィルムは、1〜500μm、或いは15〜500μm、或いは15〜300μm、或いは20〜150μm、或いは30〜125μmの厚さを典型的に有する。
【0082】
シリコーン樹脂フィルムは、クラック(亀裂)が入ることなしに3.2mm以下の直径を有する円筒形鋼マンドレル上でフィルムを曲げ得るような柔軟性を典型的に有する。ここで、柔軟性は、ASTM規格D522−93aの方法Bに記載されたものに準じて決定される。
【0083】
シリコーン樹脂フィルムは、線形の低熱膨張係数(CTE)、高引張強度及び高弾性率を有する。例えば、フィルムは、室温(約23±2℃)〜200℃の温度で0〜80μm/m℃、或いは0〜20μm/m℃、或いは2〜10μm/m℃のCTEを典型的に有する。また、フィルムは、25℃で5〜200MPa、或いは20〜200MPa、或いは50〜200MPaの引張強度を典型的に有する。さらに、シリコーン樹脂フィルムは、25℃で0.3〜10GPa、或いは1〜6GPa、或いは3〜5GPaのヤング率を典型的に有する。
【0084】
シリコーン樹脂フィルムの透明性は、硬化シリコーン樹脂の組成、フィルムの厚さ、並びにカーボンナノ材料の種類及び濃度等の多くの要因に依存する。シリコーン樹脂フィルムは、電磁スペクトルの可視領域において、少なくとも50%、或いは少なくとも60%、或いは少なくとも75%、或いは少なくとも85%の透明性(%透過率)を典型的に有する。
【0085】
本発明のシリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料のない同様のシリコーン組成物から調製されたシリコーン樹脂フィルムと比べて、低熱膨張係数、高引張強度及び高弾性率を有する。また、充填(すなわち、カーボンナノ材料含有)及び無充填シリコーン樹脂フィルムは、同程度のガラス転位温度を有しているけれども、充填シリコーン樹脂フィルムは、そのガラス転位に対応する温度範囲において、より小さい弾性率の変化を示す。
【0086】
本発明のシリコーン樹脂フィルムは、高熱安定性、柔軟性、機械的強度及び透明性を有するフィルムを要求する用途において有用である。例えば、シリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子黒板、タッチスクリーン、耐火性壁紙及び耐衝撃性窓ガラスの不可欠な構成要素として使用され得る。また、フィルムは、透明又は不透明電極用の適切な基材でもある。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明のナノ材料充填シリコーン組成物、方法及びシリコーン樹脂フィルムをさらに説明するために示されるが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明を限定するものとは解釈されない。特に記載のない限り、実施例における全ての部及びパーセントは重量基準である。以下の方法及び材料は実施例で使用された。
【0088】
(機械的特性の測定)
ヤング率、引張強度及び引張破断歪は、100−Nロードセルを備えたMTSアライアンスRT/5試験フレームを用いて測定した。ヤング率、引張強度及び引張歪は、実施例4及び5の試験片のために室温(約23±2℃)で測定した。
【0089】
25mmの間隔をあけて配置され、且つ1mm/分のクロスヘッド速度で引っ張られる2つの空気圧グリップに試験片を取り付けた。負荷及び変位データを連続的に収集した。負荷−変位曲線の最も勾配が急な初期区域の傾きをヤング率とした。ヤング率(GPa)、引張強度(MPa)及び引張歪(%)について報告された値はそれぞれ、同じシリコーン樹脂フィルムからの異なるダンベル状試験片に対してなされた3つの測定の平均を表す。
【0090】
負荷−変位曲線上の最高点は、次の等式に従って引張強度を計算するために使用された。
σ=F/(wb)
ここで、
σ=引張強度、MPa
F=最大力、N
w=試験片の幅、mm
b=試験片の厚さ、mm
である。
【0091】
引張破断歪は、次の等式に従い、試験前後のグリップ分離の差を初期分離で割ることによって見積もられた。
ε=100(l−l)/l
ここで、
ε=引張破断歪、%
=グリップの最終分離、mm
=グリップの初期分離、mm
【0092】
ピログラフ(Pyrograf(登録商標))−IIIグレードHHT−19カーボンナノ繊維(ピログラフ・プロダクツ・インコーポレイテッド(Pyrograf Products, Inc;オハイオ州セダービル)により販売)は、100〜200nmの直径及び30,000〜100,000mmの長さを有する、加熱処理(3,000℃以下)されたカーボンナノ繊維である。
【0093】
メリネックス(Melinex(登録商標))516(帝人デュポンフィルム(バージニア州ホープウェル)により販売)は、スリップ(slip)用に前処理された100μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0094】
SDC MP101クリスタルコート樹脂(SDCテクノロジーズ・インコーポレイテッド(カリフォルニア州アナハイム)により販売)は、メタノール、2−プロパノール、水および酢酸(約1〜2%)の混合物中にMeSiO3/2単位及びSiO4/2単位から本質的に成るシリコーン樹脂31%(w/w)を含有する溶液である。
【0095】
ダウコーニング(登録商標)4−3136バインダー樹脂(ダウコーニング・コーポレイション(ミシガン州ミッドランド)により販売)は、キシレン中のシラノール官能性シリコーン樹脂である。ここで、樹脂は、式:(PhSiO3/20.40(MeSiO3/20.45(PhMeSiO2/20.05(PhSiO2/20.1を有し、且つ約2〜3%(w/w)のケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基を含有する。
【0096】
ダウコーニング(登録商標)805樹脂(ダウコーニング・コーポレイション(ミシガン州ミッドランド)により販売)は、キシレン中にシラノール官能性シリコーン樹脂50%(w/w)を含有する溶液である。ここで、樹脂は、式:(PhMeSiO2/20.39(PhSiO2/20.07(PhSiO3/20.35(MeSiO3/20.19を有し、且つ約1%(w/w)のケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基を含有する。
【0097】
ダウコーニング(登録商標)Y−177触媒(ダウコーニング・コーポレイション(ミシガン州ミッドランド)により販売)は、n−ブタノール及びトルエン中のカルボン酸亜鉛塩(約6%)及びコリン2−エチルヘキサノエート(choline 2-ethylhexanoate;約3%)の混合物である。
【0098】
(実施例1)
この実施例は、化学的に酸化されたカーボンナノ繊維の調製を説明する。凝縮器、温度計、テフロン(登録商標)被覆マグネチックスターラー棒、及び温度コントローラを備えた500mLの3口フラスコ中で、ピログラフ(登録商標)−IIIカーボンナノ繊維(2.0g)、12.5mLの濃硝酸、及び37.5mLの濃硫酸を順次混合した。混合物を80℃に加熱し、この温度で3時間保持した。次に、1ガロンの円筒型容器中のドライアイスの層上にフラスコを置き、混合物を冷却した。ナイロン膜(0.8μm)を含有するブフナー漏斗に混合物を注ぎ、真空ろ過によってカーボンナノ繊維を集めた。ろ液のpHが洗浄水のpHと等しくなるまで、膜上に残留するナノ繊維を脱イオン水で数回洗浄した。最後の洗浄の後、真空を連続して適用しつつ漏斗中でさらに15分間カーボンナノ繊維を保持した。次に、フィルター膜上に支持されたナノ繊維を100℃のオーブン内に1時間置いた。カーボンナノ繊維をフィルター膜から除去し、乾燥密封ガラス瓶(dry sealed glass jar)中で保存した。
【0099】
(実施例2)
実施例1の酸化カーボンナノ繊維(0.155g)及び50.0gのSDC MP101クリスタルコート樹脂をガラス瓶中で混合した。超音波浴中に瓶を30分間置いた。次に、混合物を2,000rpmで30分間遠心分離にかけた。上澄み分散液(supernatant dispersion;1.0g)を、6.0gのメチルイソブチルケトン中の4.0gのダウコーニング(登録商標)4−3136バインダー樹脂の溶液10gと混合した。次に、この混合物を1,500rpmで30分間遠心分離にかけた。上澄みをきれいな瓶に移し、真空(45mmHg)下、50℃で90分間保持し、メチルイソブチルケトンのほとんどを除去した。
【0100】
(実施例3)
実施例1の酸化カーボンナノ繊維(0.015g)、及び5.7gのメチルイソブチルケトン中の10.6gのダウコーニング(登録商標)805樹脂の溶液16.3gをガラス瓶中で混合した。超音波浴中に瓶を115分間置いた。次に、混合物を1,500rpmで30分間遠心分離にかけた。上澄みをきれいな瓶に移し、真空(45mmHg)下、50℃で90分間保持し、メチルイソブチルケトンのほとんどを除去した。
【0101】
(実施例4)
実施例2のシリコーン組成物(11.0g)を0.05gのダウコーニング(登録商標)Y−177触媒と混合した。得られた組成物(2.0g)をメリネックス(登録商標)516PETフィルム(8インチ(20.32cm)×11インチ(27.94cm))の表面(離型剤処理されたもの)に適用した。コーティングされたPETフィルムを、ドラフト内で一晩中、室温にて放置した。次に、コーティングされたフィルムを、次のサイクル:室温〜120℃は20℃/分、120℃で30分、120℃〜160℃は2℃/分、160℃で60分、160℃〜200℃は2℃/分、200℃で60分に従い、オーブン内で加熱した。オーブンを止め、コーティングされたフィルムをオーブン内で室温に冷却した。コーティングされたPETフィルム及びコーティングされていないPETフィルムの弾性率、引張り強度及び引張破断歪を室温にて測定した。表1に示されるシリコーン樹脂フィルムについての対応する特性は、コーティングされたPETフィルムの値からコーティングされていないPETフィルムの値を引くことによって計算された。
【0102】
(実施例5)
実施例2のシリコーン組成物を実施例3のシリコーン組成物に変えたこと以外は実施例4の方法に従い、シリコーン樹脂フィルムを調製した。シリコーン樹脂フィルムの機械的特性を表1に示す。
【0103】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物であって、前記縮合硬化型シリコーン組成物が、
式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)を有するシリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有する)、又は
(A)水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有するシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有するシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対する前記シリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01〜1.5である)及び(B)縮合触媒
を含み、式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R又は加水分解性基であり;mは2〜1,000であり、wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8であるナノ材料充填シリコーン組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノ粒子、繊維状カーボンナノ材料及び層状カーボンナノ材料から選択される請求項1に記載のナノ材料充填シリコーン組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノ材料の濃度が、前記ナノ材料充填シリコーン組成物の全重量を基準として0.001〜50%(w/w)である請求項1に記載のナノ材料充填シリコーン組成物。
【請求項4】
ナノ材料充填シリコーン組成物で離型ライナーをコーティングする工程であって、前記シリコーン組成物が、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化型シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含み、前記縮合硬化型シリコーン組成物が、
式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)を有するシリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂は、ケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有する)、又は
(A)水、縮合触媒及び有機溶媒の存在下にて、(i)式:(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)を有するシリコーン樹脂及び(ii)(i)の加水分解性前駆物質から選択される有機ケイ素化合物と、式:RSiO(RSiO)SiR (III)を有するシリコーンゴムとを反応させて溶解性反応生成物を形成することにより調製されたゴム変性シリコーン樹脂(前記シリコーン樹脂(II)は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーンゴム(III)は、ケイ素結合加水分解性基を1分子あたり平均少なくとも2つ有し;前記シリコーン樹脂(II)中のケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基に対する前記シリコーンゴム(III)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01〜1.5である)及び(B)縮合触媒
を含み、式中、Rは、C〜C10のヒドロカルビル又はC〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;Rは、R、−H、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R、−OH又は加水分解性基であり;Rは、R又は加水分解性基であり;mは2〜1,000であり、wは0〜0.8であり;xは0〜0.6であり;yは0〜0.99であり;zは0〜0.35であり;w+x+y+z=1であり;y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり;w+x/(w+x+y+z)は0〜0.8であり;ただし、yが0の場合にw+x/(w+x+y+z)は0.05〜0.8である工程と、
前記コーティングされた離型ライナーの前記シリコーン樹脂を硬化する工程と
を含むシリコーン樹脂フィルムの調製方法。
【請求項5】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノ粒子、繊維状カーボンナノ材料及び層状カーボンナノ材料から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンナノ材料の濃度が、前記ナノ材料充填シリコーン組成物の全重量を基準として0.001〜50%(w/w)である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法により調製されたシリコーン樹脂フィルム。

【公開番号】特開2013−82938(P2013−82938A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3443(P2013−3443)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2008−551258(P2008−551258)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】