説明

シリコーン樹脂組成物、およびこれを用いる光半導体封止体

【課題】透明性に優れるシリコーン樹脂組成物、およびこれを用いる光半導体封止体。
【解決手段】1分子中に1つ以上の反応基を有する屈折率が1.42〜1.51のシリコーン樹脂と、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカとを含有するシリコーン樹脂組成物、およびLEDチップが当該シリコーン樹脂組成物で封止されている光半導体封止体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物、およびこれを用いる光半導体封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充填剤を含んだシリコーン樹脂組成物が提案されているが(例えば、特許文献1)、充填剤を含んだシリコーン樹脂組成物は白濁するため透明性が必要とされる用途には不適当であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−256008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、透明性に優れるシリコーン樹脂組成物および光半導体封止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、1分子中に1つ以上の反応基を有する屈折率が1.42〜1.51のシリコーン樹脂と、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカとを含有するシリコーン樹脂組成物が透明性に優れ、LEDチップが当該シリコーン樹脂組成物で封止されている光半導体封止体が透明性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜5を提供する。
1. 1分子中に1つ以上の反応基を有する屈折率が1.42〜1.51のシリコーン樹脂と、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカとを含有するシリコーン樹脂組成物。
2. 前記疎水性シリカの量が、前記シリコーン樹脂および前記疎水性シリカの合計量中の10〜90質量%である上記1に記載のシリコーン樹脂組成物。
3. 前記反応基が、シラノール基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハイドロジェンシリル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
4. 前記シリコーン樹脂が、下記平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
{式中、R1、R2、およびR3は同じかもしくは相異なる、アルキル基、アリール基、前記反応基であり、Xは水素原子もしくはアルキル基であり、aは正数であり、bは0もしくは正数であり、cは0もしくは正数であり、dは0もしくは正数であり、eは0もしくは正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.8の数である。}
で示されるシリコーンレジン、
または(メタ)アクリロイル基当量が450g/mol以下で(メタ)アクリロイル基が両末端、片末端、側鎖、もしくは側鎖および両末端に結合されたポリジメチルシロキサンである上記1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
5. LEDチップが上記1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物で封止されている光半導体封止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシリコーン樹脂組成物および本発明の光半導体封止体は透明性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の光半導体封止体の別の一例を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。まず本発明のシリコーン樹脂組成物について以下に説明する。
本発明のシリコーン樹脂組成物は、1分子中に1つ以上の反応基を有する屈折率が1.42〜1.51のシリコーン樹脂と、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカとを含有する組成物である。本発明のシリコーン樹脂組成物を以下「本発明の組成物」という。
【0010】
シリコーン樹脂について以下に説明する。本発明の組成物に含有されるシリコーン樹脂は、1分子中に1つ以上の反応基を有し、屈折率が1.42〜1.51であり、主鎖がシロキサン骨格を有する。
【0011】
シリコーン樹脂の屈折率は、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、分散性に優れるという観点から、1.43〜1.48であるのが好ましい。本発明において屈折率は、株式会社アタゴ多波長アッベ屈折計DR−M2/1550をもちいて測定した。
【0012】
シリコーン樹脂が有する反応基は特に制限されない。
なかでも、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性、硬化性に優れるという観点から、シラノール基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハイドロジェンシリル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
また、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱着色安定性、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、シラノール基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、およびハイドロジェンシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0013】
シラノール基はケイ素原子に1個以上のヒドロキシ基が結合するものであれば特に制限されない。例えば、ジメチルシラノール基のようなジアルキルシラノール基が挙げられる。
アルコキシシリル基はケイ素原子に1個以上のアルコキシ基が結合するものであれば特に制限されない。例えば、トリメトキシシリル基のようなトリアルコキシ基;メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基のようなジアルコキシ基;ジメチルメトキシシリル基、ジエチルメトキシシリル基のようなモノアルコキシ基が挙げられる。
ハイドロジェンシリル基はケイ素原子に1個以上の水素原子が結合するものであれば特に制限されない。例えば、ハイドロジェンアルキルシリル基が挙げられる。
【0014】
反応基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子および/または炭化水素基を介して主鎖と結合することができる。炭化水素基としては例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基であってもよい。
【0015】
反応基の数はシリコーン樹脂1分子中、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性、耐クラック性に優れるという観点から、2〜6個であるのが好ましい。
反応基はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
シリコーン樹脂の主鎖はポリシロキサン骨格を有するものであれば特に制限されない。シリコーン樹脂の主鎖は例えばアルキル基、アリール基を有することができる。シリコーン樹脂の主鎖としては例えばポリジメチルシロキサン(ジメチルシリコーン)が挙げられる。
シリコーン樹脂は反応基をシリコーン樹脂の両末端、片末端、側鎖、およびこれらの組み合わせで有することができる。
【0017】
シリコーン樹脂は、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、
下記平均単位式:(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
{式中、R1、R2、およびR3は同じかもしくは相異なる、アルキル基、アリール基、前記反応基であり、Xは水素原子もしくはアルキル基であり、aは正数であり、bは0もしくは正数であり、cは0もしくは正数であり、dは0もしくは正数であり、eは0もしくは正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.8の数である。}で示されるシリコーンレジンが好ましい。
【0018】
上記平均単位式で示されるシリコーンレジンにおいて、アルキル基としては例えばメチル基、エチル基が挙げられる。アリール基としては例えばフェニル基が挙げられる。反応基は上記と同義である。
【0019】
シリコーン樹脂としては例えば、反応基が両末端、片末端、側鎖およびこれらの組み合わせで主鎖に結合し、主鎖がポリジメチルシロキサンであるものが挙げられる。
シリコーン樹脂は透明性に優れるという観点から、その反応基当量が450g/mol以下であるのが好ましい。
なかでも、透明性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基当量が450g/mol以下で(メタ)アクリロイル基が両末端、片末端、側鎖、もしくは側鎖および両末端に結合されたポリジメチルシロキサンが好ましい。
なお本発明において「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちの一方または両方であることを意味する。
【0020】
シリコーン樹脂としての、(メタ)アクリロイル基当量が450g/mol以下で(メタ)アクリロイル基が両末端、片末端、側鎖、もしくは側鎖および両末端に結合されたポリジメチルシロキサンにおいて、(メタ)アクリロイル基当量は、透明性により優れるという観点から、190〜450g/molであるのが好ましい。
【0021】
シリコーン樹脂の数平均分子量は、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性に優れるという観点から、1000〜100000であるのが好ましい。なお、本発明において数平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによってポリスチレン換算で表わされるものとする。
シリコーン樹脂はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。シリコーン樹脂はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0022】
疎水性シリカについて以下に説明する。本発明の組成物に含有される疎水性シリカは、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカである。
本発明の組成物は疎水性シリカを含有することによって透明性、耐熱性に優れチクソ性を付与することができる。また、疎水性シリカを本発明の組成物に充填して硬化収縮を抑制することができる。
本発明の組成物は疎水性シリカを多量に含有することができる。疎水性シリカを本発明の組成物に多量に充填する場合、硬化収縮を特に抑制することができ、透明性が維持され、組成物を混合することが可能で作業性に優れる。
【0023】
疎水性シリカの平均粒径は、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、200〜1nmであるのが好ましく、50〜20nmであるのがより好ましい。
【0024】
疎水性シリカは球状であればよい。本発明においてアモルファスまたは不定形なシリカ(例えば、ヒュームドシリカ)は疎水性シリカから除かれる。
疎水性シリカはシリコーン樹脂中において疎水性シリカの1粒子が独立して分散するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。また、疎水性シリカは表面が疎水処理されたシリカ球状微粒子であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
疎水性シリカはその製造について特に制限されない。例えば、ゾルゲル法が挙げられる。疎水性シリカはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
疎水性シリカの量は、透明性により優れ、硬化収縮を抑制し、耐熱性、作業性に優れるという観点から、シリコーン樹脂および疎水性シリカの合計量中の10〜90質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、疎水性シリカ以外の充填剤、ラジカル開始剤、触媒(例えばジブチルスズラウレートのような錫触媒)、硬化剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、シリコーン樹脂と、疎水性シリカと、必要に応じて使用することができる添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0028】
本発明の組成物は例えば加熱、光によって硬化することができる。
加熱温度は、透明性により優れ、耐熱性、耐光性に優れ、硬化収縮を抑制するという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
本発明の組成物を硬化させる際に使用される光は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物を硬化させることによって得られる硬化物は、透明性、耐熱性に優れ、硬化収縮しにくい。
【0030】
本発明において透明性は以下のとおり評価された。
本発明の組成物を加熱して硬化させる場合、本発明の組成物を150℃の条件下で加熱した。
本発明の組成物を光照射で硬化させる場合、本発明の組成物に光照射装置(商品名:GS UVSYSTEM TYPE S250―01、ジーエス・ユアサ ライティング社製。光源としてメタルハイドロランプを使用し、積算光量1,800mJ/cm2で照射した。)で波長250〜380nmの紫外線を光量120mW/cmで40秒間照射し、積算光量1800mJ/cm2として、硬化物を得た(組成物を光照射で硬化させる場合は以下同様。)。
得られた硬化物(硬化物の厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて硬化物の透過率を測定する。透過率が、70%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物の硬化収縮は以下のとおり評価された。
本発明の組成物を加熱して硬化させる場合、本発明の組成物2gを容器に入れこれを150℃の条件下で24時間加熱し、硬化物を得た。
本発明の組成物を光照射で硬化させる場合、本発明の組成物2gを容器に入れこれを上記と同様にして硬化させ、硬化物を得た。
<収縮率の測定>
比重の測定には島津製作所社製マイクロメリティックスアキュピック1330を用いて、硬化前における組成物の比重、ならびに硬化後における硬化物の比重および重さを測定し、[(硬化前体積−硬化後体積)/硬化前体積]×100により体積収縮率を求めた。
体積収縮率は硬化物にクラックやハガレが発生しにくいという観点から、10%以下が好ましく5%以下がより好ましい。体積収縮率が10%より大きい場合クラックやハガレが発生するおそれがある。
【0032】
本発明の組成物の用途としては、例えば、光半導体封止用材料、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料が挙げられる。
本発明の組成物を適用することができる光半導体は特に制限されない。例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、被着体に本発明の組成物を付与し、本発明の組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0033】
次に本発明の光半導体封止体について以下に説明する。
本発明の光半導体封止体は、LEDチップが本発明のシリコーン樹脂組成物で封止されているものである。
【0034】
本発明の光半導体封止体に使用される組成物は本発明の組成物であれば特に制限されない。本発明の光半導体封止体において組成物として本発明の組成物を使用することによって、本発明の光半導体封止体は透明性、耐熱性に優れ硬化収縮を抑制することができる。
【0035】
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップは、発光素子として発光ダイオードを有する電子回路であれば特に制限されない。
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。例えば、白色、青色、赤色、緑色が挙げられる。本発明の光半導体封止体は、LEDチップからの硬化時に硬化収縮を抑制することができ、クラック、ハクリを抑制、さらに耐熱性、耐光性に優れる)という観点から、白色LEDに対して適用することができる。
白色LEDは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。また、LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LEDが挙げられる。
本発明の光半導体封止体は、1個の光半導体封止体の内部にLEDチップを少なくとも1個以上有するものであり、2個以上のLEDチップを有することができる。
【0036】
本発明の光半導体封止体の製造方法としては、例えば、LEDチップに本発明の組成物を付与する付与工程と、前記組成物を硬化させてLEDチップを封止する硬化工程とを有するものが挙げられる。
【0037】
付与工程において、LEDチップに組成物を付与し、前記組成物が付与されたLEDチップを得る。付与工程において使用されるLEDチップは上記と同義である。付与工程において使用される組成物は本発明の組成物であれば特に制限されない。付与の方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0038】
次に、硬化工程において、前記組成物を硬化させてLEDチップを封止することによって、本発明の光半導体封止体を得ることができる。硬化は例えば加熱、光照射によって行うことができる。硬化工程における加熱温度は上記と同義である。光照射は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0039】
本発明の光半導体封止体の態形としては、例えば、硬化物が直接LEDチップを封止しているもの、砲弾型、表面実装型、複数のLEDチップの間および/または表面を封止するもの、光半導体封止体の間および/または表面を封止するものが挙げられる。
【0040】
本発明の光半導体封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明の光半導体封止体は添付の図面に限定されない。
【0041】
図1は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
図1において、光半導体封止体200は基板210の上にパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部にキャビティー202が設けられている。キャビティー202内には、LEDチップ203と硬化物202とが配置されている。硬化物202および/または斜線部206を本発明の組成物を硬化させたものとすることができる。
LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。LEDチップ203の各電極(図示せず。)と外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
【0042】
図2は、本発明の光半導体封止体の別の一例を模式的に示す図である。
図2において、LED表示器400は、LEDチップ401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、LEDチップ401を硬化物406で封止し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。本発明の組成物を硬化物406に使用することができる。また、LEDチップ401として例えば図1に示すような本発明の光半導体封止体を使用することができる。
【0043】
本発明の光半導体封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<シリコーン樹脂の製造>
(A−3)の製造法
窒素気流中で三口フラスコに信越化学社製シラノール基を有するシリコーンレジンKR−242A(シラノール基を有するシリコーンレジン)、重量平均分子量4000)100g、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503、信越化学工業社製)120g、酢酸0.1gを投入し80℃48hr攪拌し120℃3hr程度減圧することによって残渣のメタクリルオキシプロピルメトキシシラン残渣を取除きメタクリル化シリコーンレジンとした。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端のシラノール基が消失し、両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。得られたポリジメチルシロキサンをシリコーン樹脂(A)−3とする。
【0045】
(A−6)の製造法
両端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量28,000、商品名ss70、信越化学工業社製)100質量部、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM503、信越化学工業社製。以下同様。)4質量部、および触媒として2エチルヘキサノエートスズ(関東化学社製)0.01質量部を反応容器に入れ、圧力を10mmHg、温度を60℃に保ちながら6時間反応させた。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端のシラノール基が消失し、両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。得られたポリジメチルシロキサンをシリコーン樹脂(A)−6とする。
シリコーン樹脂(A)−6の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で35,000であった。
【0046】
<評価>
以下に示す方法で、透過率、透明性、硬化収縮、クラック、作業性について評価した。結果を第1表に示す。
【0047】
1.透過率
(1)加熱硬化の場合(組成物が錫触媒またはカチオン重合開始剤を含有する場合)
下記のようにして得られた組成物を電気オーブンに入れて150℃の条件下で加熱し硬化物を得た。
(2)光照射による硬化の場合(組成物がラジカル開始剤を含有する場合)
下記のようにして得られた組成物に上記と同様の光照射装置を用いて上記と同様の条件で光照射し、硬化物を得た。
(3)透過率の測定
得られた硬化物(硬化物の厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて硬化物の透過率を測定した。
【0048】
2.透明性
上記透過率の評価で製造された硬化物と同じ硬化物を目視で観察して、硬化物が透明である場合を「○」、透明ではない場合を「×」とした。
【0049】
3.硬化収縮
本発明の組成物2gを、透過率を評価する際と同様にして、加熱硬化または光硬化させ、硬化物を得た。
<収縮率の測定>
比重の測定には島津製作所社製マイクロメリティックスアキュピック1330を用いて、硬化前における組成物の比重、ならびに硬化後における硬化物の比重および重さを測定し、[(硬化前体積−硬化後体積)/硬化前体積]×100により体積収縮率を求めた。
体積収縮率は硬化物にクラックやハガレが発生しにくいという観点から、10%以下が好ましく5%以下がより好ましい。体積収縮率が10%より大きい場合クラックやハガレが発生するおそれがある。
【0050】
4.作業性
硬化性樹脂組成物の作業性の評価は、作業性に問題がなく取り扱える(組成物が均一に混合できる)場合は○、作業性が悪く取り扱えない場合は×とした。
【0051】
<サンプルの作製(透過率、透明性の評価用)>
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図3は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
図3において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
型8を用いてスペーサー1の内部6に組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行った。
【0052】
組成物6が充填された型8を上記の各評価の条件で加熱して組成物6を硬化させ、厚さ2mmの硬化物6(初期硬化物)を製造した。得られた硬化物6を透過率、透明性の評価用のサンプルとして用いた。
【0053】
<シリコーン樹脂組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し組成物を製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
第1表に示されている各成分の詳細は、以下のとおりである。
【表2】


なお、シリコーン樹脂(A)−1〜3、7の主鎖は分岐型ポリシロキサンレジンである。シリコーン樹脂(A)−4〜6,8,9は、主鎖が直鎖状ポリジメチルシロキサンであり、(A)−4、6は両末端にメタクリロイル基、(A)−5は両末端にシラノール基、(A)−8は両末端に脂環式エポキシ基、(A)−9は両末端にアルコキシル基を有する。
【0056】
第1表に示す結果から明らかなように、屈折率が1.42未満または1.51を超えるシリコーン樹脂を含有する比較例1〜3、平均粒径が200nmを超える疎水性シリカを含有する比較例4は白濁し透明性に劣った。ヒュームドシリカを多量に含有する比較例5、6はヒュームドシリカを組成物中に混合できないため作業性が悪かった。また比較例5、6は硬化せずこのため比較例5、6については透明性等他の評価ができなかった。疎水性シリカを含有しない比較例7、8は、クラックが生じた。
これに対して、実施例1〜5は、透明で、多量の疎水性シリカを含有することができ、硬化収縮を抑制することでき耐熱性に優れ、作業性に優れ、クラックを発生させにくい。
本発明のシリコーン樹脂組成物は、透明性を保持しつつ充填剤を添加できるため、無色透明でチクソ性に優れ、硬化収縮を抑制しクラックを発生させにくい。
本発明によれば、無色透明で、耐熱性に優れ、硬化収縮を抑制してクラックを生じにくい光半導体封止体を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 スペーサー 3 ガラス
5 PETフィルム
6 本発明の組成物(内部、硬化後硬化物6となる)
8 型
200、400 本発明の光半導体封止体
201 マウント部材
202 キャビティー、硬化物 203 LEDチップ
204 パッケージ 206 斜線部
207 導電性ワイヤー
209 外部電極 210 基板
401 LEDチップ 404 筐体
405 遮光部材 406 硬化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1つ以上の反応基を有する屈折率が1.42〜1.51のシリコーン樹脂と、平均粒径が200nm以下の球状の疎水性シリカとを含有するシリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記疎水性シリカの量が、前記シリコーン樹脂および前記疎水性シリカの合計量中の10〜90質量%である請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応基が、シラノール基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハイドロジェンシリル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂が、下記平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
{式中、R1、R2、およびR3は同じかもしくは相異なる、アルキル基、アリール基、前記反応基であり、Xは水素原子もしくはアルキル基であり、aは正数であり、bは0もしくは正数であり、cは0もしくは正数であり、dは0もしくは正数であり、eは0もしくは正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.8の数である。}
で示されるシリコーンレジン、
または(メタ)アクリロイル基当量が450g/mol以下で(メタ)アクリロイル基が両末端、片末端、側鎖、もしくは側鎖および両末端に結合されたポリジメチルシロキサンである請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
LEDチップが請求項1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物で封止されている光半導体封止体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162741(P2011−162741A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30092(P2010−30092)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】