説明

シリコーン樹脂組成物、ならびに、これを用いて得られるシリコーン樹脂含有構造体および光半導体素子封止体

【課題】耐硫化性に優れ、かつ、高温下での長期信頼性にも優れるシリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)と、亜鉛化合物(B)と、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)と、を含有し、上記亜鉛化合物(B)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であり、上記ホウ素化合物(C)および/または上記リン酸エステル(D)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である、シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物、ならびに、これを用いて得られるシリコーン樹脂含有構造体および光半導体素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、その構造的特徴から気体透過性が高く、オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂組成物は発光素子封止材等に使用されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−302825号公報
【特許文献2】特開2004−203923号公報
【特許文献3】特開平7−97433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂組成物を用いて形成された封止材で金属を封止した封止体を、腐食性ガス(硫化水素など)雰囲気下に置いた場合、オルガノポリシロキサンの空気透過性が高いがゆえに、腐食性ガスが封止材を透過し、封止されている金属が腐食(例えば、銀の変色)してしまうという問題があった。
【0005】
このような問題に対して、本発明者らは、シリコーン樹脂組成物に特定量の亜鉛化合物を含有させることで、腐食性ガスが捕捉されて、金属の腐食を防止できることを知見した。
【0006】
しかしながら、本発明者らは、亜鉛化合物を含有させたシリコーン樹脂組成物が、高温下での長期信頼性に劣る場合があることを明らかにした。
【0007】
そこで、本発明は、耐硫化性に優れ、かつ、高温下での長期信頼性にも優れるシリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、亜鉛化合物を含有するシリコーン樹脂組成物に、さらに、特定量のホウ素化合物および/またはリン酸エステルを含有させることで、高温下での長期信頼性が良好になることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
【0009】
(1)エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)と、亜鉛化合物(B)と、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)と、を含有し、上記亜鉛化合物(B)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であり、上記ホウ素化合物(C)および/または上記リン酸エステル(D)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である、シリコーン樹脂組成物。
【0010】
(2)上記ホウ素化合物(C)が、ホウ酸エステルである、上記(1)に記載のシリコーン樹脂組成物。
【0011】
(3)上記ホウ素化合物(C)が、下記式(c1)〜(c5)のいずれかで表される化合物である、上記(2)に記載のシリコーン樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(式(c1)〜(c5)中、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アリル基、アリール基、シリル基、または、ホスフィン基を示し、R′は、独立して、2価の炭化水素基を示す。)
【0014】
(4)上記リン酸エステル(D)が、有機亜リン酸エステル(D1)および/または有機リン酸エステル(D2)である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【0015】
(5)上記有機亜リン酸エステル(D1)が下記式(d1)で表され、上記有機リン酸エステル(D2)が下記式(d2)で表される、上記(4)に記載のシリコーン樹脂組成物。
P−(ORd13 (d1)
O=P−(ORd23 (d2)
(式(d1)および(d2)中、Rd1、Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基を示す。)
【0016】
(6)銀を含む部材と、上記部材を覆う、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、を備えるシリコーン樹脂含有構造体。
【0017】
(7)凹部を有する枠体と、上記凹部の底部に配置された光半導体素子と、上記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、上記凹部に充填されて上記光半導体素子と上記部材とを封止する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止材と、を備える光半導体素子封止体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐硫化性に優れ、かつ、高温下での長期信頼性にも優れるシリコーン樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光半導体素子封止体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光半導体素子封止体のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<シリコーン樹脂組成物>
本発明のシリコーン樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)と、亜鉛化合物(B)と、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)と、を含有し、上記亜鉛化合物(B)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であり、上記ホウ素化合物(C)および/または上記リン酸エステル(D)の含有量が、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である、シリコーン樹脂組成物である。
以下、本発明の組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0021】
<オルガノポリシロキサン(A)>
本発明の組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)は、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有する、オルガノポリシロキサン骨格を有するシリコーンである。
【0022】
オルガノポリシロキサン(A)は炭化水素基を有するが、この炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、フェニル基などの芳香族基;アルキル基;アルケニル基;等が挙げられる。
【0023】
オルガノポリシロキサン(A)の態様としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン等が挙げられ、これらのいずれであってもよい。
オルガノポリシロキサン(A)は、ジオルガノポリシロキサンであるのが好ましい。
オルガノポリシロキサン(A)の主鎖は、直鎖、分岐、三次元のいずれであってもよい。
【0024】
オルガノポリシロキサン(A)としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有するオルガノポリジアルキルシロキサンが挙げられる。
オルガノポリシロキサン(A)は、硬化性に優れるという理由から、1分子中に2個以上の反応性官能基を有するオルガノポリジアルキルシロキサンであるのが好ましい。
【0025】
反応性官能基は、オルガノポリシロキサン(A)の末端または両末端に結合することができ、側鎖として結合することができる。
また、反応性官能基は、有機基を介してオルガノポリシロキサン(A)に結合することができる。ここで、有機基としては、特に限定されず、例えば、2価の、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐を含む)、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。
反応性官能基としてのカルボキシ基は、例えば、無水コハク酸基、無水マレイン酸基などの酸無水物基を含む。
【0026】
オルガノポリシロキサン(A)としては、例えば、下記式(a1)で表されるものが挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
式(a1)中、R1は、同一または異なって、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、X1,X2およびX3は、それぞれ独立に、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を示し、反応性官能基は有機基を介してケイ素原子と結合してもよく、その場合、X1,X2およびX3はそれぞれ有機基を含むことができ、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数であり、m+nは1以上の整数であり、a,bおよびcはそれぞれ0以上の整数であり、a+b+cは1以上の整数である。
【0029】
式(a1)中のR1が示す炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基等が挙げられる。
式(a1)中のR1が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、その炭素数を18以下とすることができる。
式(a1)中のR1が示す基としては、メチル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
また、式(a1)中のnは、オルガノポリシロキサン(A)の重量平均分子量に対応する数値とすることができ、m+nは10〜15,000の整数であるのが好ましい。
【0031】
オルガノポリシロキサン(A)の製造方法については、特に限定されず、例えば従来公知の製造方法を用いることができる。
オルガノポリシロキサン(A)の分子量は、500〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、オルガノポリシロキサン(A)の分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0032】
オルガノポリシロキサン(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オルガノポリシロキサン(A)を2種以上併用する場合、2種以上のオルガノポリシロキサン(A)は互いに同じ反応性官能基を有していてもよく、異なる反応性官能基を有していてもよい。
【0033】
また、オルガノポリシロキサン(A)を2種以上併用する場合においては、ある1種類の反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)に対して、その反応性官能基と反応し、硬化剤として働く反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)を組み合わせることもできる。
例えば、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン(A)と、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するオルガノポリシロキサン(A)との組み合わせ;(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(A)と、メルカプト基を有するオルガノポリシロキサン(A)との組み合わせ;等が挙げられる。
【0034】
ある1種類の反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)に対して、その反応性官能基と反応する反応性官能基を有し、硬化剤として働くオルガノポリシロキサン(A)を組み合わせる場合、後者のオルガノポリシロキサン(A)の量は、その反応性官能基が、前者のオルガノポリシロキサン(A)が有する反応性官能基に対して、0.1〜2当量となる量とすることができる。
【0035】
<亜鉛化合物(B)>
本発明の組成物には、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、亜鉛化合物(B)が、0.01〜5質量部含有される。これにより、本発明の組成物は、耐硫化性に優れる。
これは、本発明の組成物を硬化させて得られる封止材において、亜鉛化合物(B)が空気中の腐蝕性ガス(例えば、硫化水素、アミン類などの非共有電子対を有するガス)を捕捉するため、腐蝕性ガスによる金属の腐食(例えば、変色)を防止できるものと考えられる。もっとも、このようなメカニズムは推測であり、たとえ別のメカニズムあっても本発明の範囲内である。
【0036】
亜鉛化合物(B)としては、亜鉛を含む化合物であれば特に限定されず、例えば、亜鉛塩;亜鉛錯体;亜鉛アルコラート;亜鉛華、スズ酸亜鉛などの亜鉛酸化物;亜鉛を含む2元金属塩または錯体;亜鉛を含む多元金属塩および錯体;等が挙げられる。
これらのうち、耐硫化性、透明性により優れるという観点から、亜鉛塩および/または亜鉛錯体であるのが好ましい。
ここで、亜鉛塩としては、亜鉛と酸(無機酸、有機酸を含む。)とから形成される塩であれば特に限定されない。また、亜鉛錯体としては、亜鉛と配位子とから形成されるキレート化合物であれば特に限定されない。
【0037】
亜鉛化合物(B)の具体例としては、下記式(B1)または(B2)で表されるもの;サリチル酸化合物の亜鉛錯体;ジアミン化合物の亜鉛錯体;等が挙げられる。
【0038】
まず、式(B1)は、下記のとおりである。
Zn(O−CO−R22 (B1)
式(B1)中、R2は、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、上述した、式(a1)中のR1が示す炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基と同義である。また、式(B1)中のCOは、カルボニル基(C=O)である。
式(B1)で表される亜鉛化合物(B)が塩である場合、亜鉛塩としては、例えば、下記式(B1′)で表されるものが挙げられる。
【0039】
【化3】

【0040】
式(B1′)中、R2は、式(B1)中のR2と同様である。
式(B1)で表される亜鉛化合物(B)としては、例えば、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート、亜鉛アセチルアセテート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛サリチレート等が挙げられる。
【0041】
次に、式(B2)は、下記のとおりである。
Zn(R3COCHCOR42 (B2)
式(B2)中、R3、R4は、同一または異なって、炭素数1〜18の1価の炭化水素基、アルコキシ基を示す。式(B2)中の(R3COCHCOR4)は、それぞれ、下記式のいずれかであり、「C−O−」で亜鉛と結合する。
【0042】
【化4】

【0043】
式(B2)で表される亜鉛化合物(B)が錯体である場合、亜鉛錯体としては、例えば、下記式(B2′)で表されるものが挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
式(B2′)中、R3、R4は、式(B2)中のR3、R4と同義であり、同一の(R3COCHCOR4)内にあるR3、R4は、入れ替わっていてもよい。
【0046】
式(B2)中のR3、R4が示す炭素数1〜18の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基(式(a1)中のR1が示す炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基と同義)が挙げられる。
式(B2)中のR3、R4が示すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
式(B2)で表される亜鉛化合物(B)としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体等が挙げられる。
【0047】
亜鉛化合物(B)は、耐硫化性をより優れたものとすることができるという理由から、式(B1)もしくは式(B2)で表されるもの、または、これらの併用であるのが好ましく、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート、亜鉛アセチルアセテート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛サリチレート、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体であるのがより好ましい。
亜鉛化合物(B)は、1主単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
亜鉛化合物(B)の製造方法としては、例えば、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛および硝酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種1モルに対して、酸を1.5モル以上3モル未満反応させることによって得られるものを用いることができる。
この際に用いる酸としては、特に限定されず、例えば、リン酸などの無機酸;ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリル酸、2−エチルヘキサン酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸;これらのエステル;等が挙げられる。
【0049】
亜鉛化合物(B)の量は、耐硫化性により優れ、透明性にも優れるという理由から、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、0.1〜1質量部であるのが好ましい。
【0050】
<ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)>
本発明の組成物には、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)が、0.01〜5質量部含有される。これにより、本発明の組成物は、高温下での長期信頼性に優れる。
これは、ホウ素化合物(C)の場合、ホウ素化合物(C)中のホウ素原子がオルガノポリシロキサン(A)中の酸素原子に配位し、オルガノシロキサン(A)と金属等との結合の解裂を阻害するためであると考えられる。また、リン酸エステル(D)の場合、リン酸エステル(D)が亜鉛化合物(B)中の亜鉛原子に配位することにより、亜鉛化合物(B)による密着性阻害が改善されるためであると考えられる。もっとも、このようなメカニズムは推測であり、たとえ別のメカニズムあっても本発明の範囲内である。
【0051】
また、本発明の組成物は、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)が、0.01〜5質量部含有することにより、被着体に対する接着性にも優れる。
【0052】
[ホウ素化合物(C)]
まず、ホウ素化合物(C)について説明する。ここで、「ホウ素化合物」とは、ホウ素を含有する化合物のことをいう。
ホウ素化合物(C)としては、「ホウ素化合物」であれば特に限定されないが、例えば、ホウ素錯体、ホウ酸エステルであるのが好ましい。
【0053】
ホウ素錯体とは、ホウ素原子を有する錯体のことをいい、例えば、三フッ化ホウ素錯体が挙げられる。
三フッ化ホウ素錯体とは、三フッ化ホウ素と、水、アルコール、カルボン酸、酸無水物、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒドなどの化合物とから形成された錯体のことをいう。
三フッ化ホウ素錯体を形成するアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−デカノールなどの炭素数1〜10の第1級アルコール;i−プロパノール、sec−ブタノールなどの炭素数3〜10の第2級アルコール;等が挙げられる。カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、コハク酸などの炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸;等が挙げられる。酸無水物としては、例えば、上記カルボン酸の無水物が挙げられる。エステルとしては、例えば、上記カルボン酸のメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの炭素数1〜6のアルキルエステルが挙げられる。エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。アルデヒドとしては、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
このような三フッ化ホウ素錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル錯体であるのが好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートであるのがより好ましい。
【0054】
ホウ酸エステルとは、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸などのホウ酸と、ヒドロキシ基(−OH)を有する化合物との縮合反応により得られる化合物のことをいう。
ホウ酸エステルとしては、例えば、下記式(c1)〜(c5)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化6】

【0056】
式(c1)〜(c5)中、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アリル基、アリール基、シリル基、または、ホスフィン基を示し、R′は、独立して、2価の炭化水素基を示す。
【0057】
式(c1)〜(c5)中のRが示すアルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0058】
式(c1)〜(c5)中のRが示すアリル基は、2−プロペニル基(−CH2CH=CH2)である。
【0059】
式(c1)〜(c5)中のRが示すアリール基としては、炭素数1〜18のアリール基であるのが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基等が挙げられる。
【0060】
式(c1)〜(c5)中のRが示すシリル基としては、例えば、無置換シリル基;メチルシリル基などのモノアルキルシリル基;ジメチルシリル基などのジアルキルシリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリブチルシリル基などのトリアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基などのアルコキシジアルキルシリル基;ジメトキシメチルシリル基などのジアルコキシアルキルシリル基;トリメトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;等が挙げられる。
【0061】
式(c1)〜(c5)中のRが示すホスフィン基としては、例えば、ジメチルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、ジトリルホスフィン基、ジナフチルホスフィン基等が挙げられる。
【0062】
式(c1)〜(c5)中のR′が示す2価の炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0063】
式(c1)〜(c5)で表されるホウ素化合物(C)としては、例えば、下記式(c6)で表される2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、下記式(c7)で表されるトリス(トリメチルシリル)ボラート、下記式(c8)で表される2,4,6−トリメトキシボロキシン、下記式(c9)で表されるビス(ピナコレート)ジボロン、2−シクロプロピル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(3,5−ジメチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−オキサボロラン等が挙げられる。
ホウ素化合物(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
【化7】

【0065】
これらのうち、本発明の組成物の高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、トリス(トリメチルシリル)ボラート、2,4,6−トリメトキシボロキシン、ビス(ピナコレート)ジボロンであるのが好ましい。
【0066】
[リン酸エステル(D)]
次に、リン酸エステル(D)について説明する。
本発明の組成物に含有されるリン酸エステル(D)は、有機亜リン酸エステル(D1)および/または有機リン酸エステル(D2)であるのが好ましい。
【0067】
本発明において、有機亜リン酸エステル(D1)とは、亜リン酸とアルコールまたはヒドロキシ基を有する芳香族化合物とのエステル(モノエステル、ジエステル、トリエステルを含む。)のことをいう。
【0068】
有機亜リン酸エステル(D1)としては、例えば、下記式(d1)で表されるものが挙げられる。
P−(ORd13 (d1)
式(d1)中、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基を示す。
式(d1)中のRd1が示す炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、各種ペンチル基、ヘキシル基、2エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
式(d1)中のRd1が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
式(d1)中のRd1が示すシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基などのトリアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基などのアルコキシジアルキルシリル基;ジメトキシメチルシリル基などのジアルコキシアルキルシリル基;トリメトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;等が挙げられる。
式(d1)中のRd1としては、オルガノポリシロキサン(A)に対する相溶性に優れるという理由から、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。
【0069】
有機亜リン酸エステル(D1)としては、例えば、亜リン酸トリ2エチルヘキサン、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)等のトリエステル体;これらのトリエステル体を部分的に加水分解したジエステル体またはモノエステル体;等が挙げられる。
【0070】
本発明において、有機リン酸エステル(D2)とは、リン酸とアルコールまたはヒドロキシ基を有する芳香族化合物とのエステル(モノエステル、ジエステル、トリエステルを含む。)のことをいう。
【0071】
有機リン酸エステル(D2)としては、例えば、下記式(d2)で表されるものが挙げられる。
O=P−(ORd23 (d2)
式(d2)中、Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基を示し、式(d1)中のRd2が示す炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基と同義である。
式(d2)中のRd2としては、オルガノポリシロキサン(A)に対する相溶性に優れるという理由から、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。
【0072】
有機リン酸エステル(D2)としては、例えば、プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステルなどのモノエステル;ジプロピルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、ジヘキシルリン酸エステルなどのジエステル;リン酸トリエチル、トリプロピルリン酸エステル、トリブチルリン酸エステル、トリヘキシルリン酸エステル、リン酸トリス(トリメチルシリル)などのトリエステル;ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステルなどのポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル;等が挙げられる。
【0073】
リン酸エステル(D)としては、本発明の透明性の高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、リン酸エステルが好ましく、リン酸エチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(メチルシリル)がより好ましい。
リン酸エステル(D)としては、本発明の透明性の高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、式(d2)で表される有機リン酸エステル(D2)が好ましく、リン酸トリエチル、リン酸トリス(トリメチルシリル)がより好ましい。
リン酸エステル(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)の量は、本発明の組成物の高温下での長期信頼性により優れるという理由から、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのがより好ましい。
なお、リン酸エステル(D)が有機亜リン酸エステル(D1)および有機リン酸エステル(D2)である場合、リン酸エステル(D)の量は、これらの合計である。
【0075】
<その他の成分>
本発明の組成物は、さらに硬化剤を含有することができる。本発明の組成物が含有できる硬化剤としては、特に限定されず、オルガノポリシロキサン(A)が有する反応性官能基の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミン化合物、ポリアミド化合物、ジシアンジアミド、酸無水物、カルボン酸化合物、フェノール樹脂が挙げられる。
【0076】
硬化剤としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂肪族アミン類;メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテルなどの芳香族アミン類;メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物などのメルカプタン類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのフェノール樹脂類;当該フェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類;ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類およびその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類および/またはイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類;アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類;ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどの第3級アミン類;トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;ジシアンジアミド;等が挙げられる。
【0077】
硬化剤の量(オルガノポリシロキサン(A)を硬化剤として使用する場合はその合計量)は、オルガノポリシロキサン(A)が有する反応性官能基に対して硬化剤が有する官能基が0.1〜2当量となる量であるのが好ましい。
【0078】
本発明の組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、ラジカル開始剤(熱ラジカル開始剤、光ラジカル開始剤を含む。)、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、蛍光物質(無機物、有機物を含む。)、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、ビスアルコキシシリルアルカンやカップリング剤などの接着付与剤、イソシアヌレート化合物(密着付与剤)等が挙げられる。
【0079】
添加剤としてのビス(アルコキシシリル)アルカンは接着付与剤であり、2価のアルカン(アルキレン基)と2つのアルコキシシリルとを有する化合物である。本発明の組成物がさらにビス(アルコキシシリル)アルカンを含有する場合接着性、密着性に優れる。アルコキシシリル基はアルコキシ基のほかに例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。2価のアルカンは例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。2価のアルカンは具体的には例えば、イミノ基(−NH−)を有することができる。2価のアルカンはヘテロ原子[例えば、イミノ基(−NH−)]を介して2つのアルキレン基が結合するものであってもよい。ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0080】
【化8】

【0081】
式中、R7〜R8はそれぞれアルキル基であり、R9は酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい2価のアルカン(アルキレン基)であり、aはそれぞれ1〜3の整数である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。R9としての2価のアルカンは炭素原子数1〜10のアルキレン基が挙げられる。2価のアルカンは上記と同義である。
【0082】
ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1−メチルジメトキシシリル−4−トリメトキシシリルブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1−メチルジメトキシシリル−5−トリメトキシシリルペンタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8−ビス(トリメトキシシリル)デカン;ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンのような2価のアルカンが窒素原子を有するものが挙げられる。
【0083】
ビス(アルコキシシリル)アルカンは、式(I)で表されるものが好ましく、ビス(トリアルコキシシリル)アルカンがより好ましく、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンがさらに好ましい。
ビス(アルコキシシリル)アルカンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
ビス(アルコキシシリル)アルカンの量は、上述したオルガノポリシロキサン(A)およびシラン化合物(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましい。
【0085】
添加剤としてのイソシアヌレート化合物はポリイソシアネートの3量体によってイソシアヌレート骨格を形成する化合物であれば特に制限されない。本発明の組成物がさらにイソシアヌレート化合物を含有する場合接着性、密着性に優れる。イソシアヌレート化合物としては例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【化9】

【0087】
式中、Rはそれぞれ有機基または脂肪族不飽和結合を有する一価の炭化水素基である。さらにRはエポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基などを含むことができる。Rはエポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれる少なくとも1種と炭化水素基[例えば、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、不飽和結合を含んでもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。]とを組み合わせたものとすることができる。有機基は上記と同様のものが挙げられる。アルコキシシリル基が有するアルコキシ基は1〜3個とすることができ、アルコキシ基が有する炭素原子数は1以上とすることができる。アルコキシシリル基はアルコキシ基以外に炭化水素基を有することができる。炭化水素基は特に制限されない。
上記式で表されるイソシアヌレート誘導体としては、例えば、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
イソシアヌレート化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアヌレート化合物の量は、上述したオルガノポリシロキサン(A)およびシラン化合物(B)の合計100質量部に対して0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0088】
蛍光物質(無機物)としては、例えば、YAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体等が挙げられる。
【0089】
本発明の組成物は、貯蔵安定性に優れるという理由から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において「実質的に水を含まない」とは、本発明の組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
また、本発明の組成物は、作業環境性に優れるという理由から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において「実質的に溶媒を含まない」とは、本発明の組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0090】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサン(A)、亜鉛化合物(B)、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)、ならびに、必要に応じて使用することができる添加剤等を混合することによって製造する方法が挙げられる。本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。
【0091】
本発明の組成物は、例えば、封止材(例えば、光半導体素子用)として使用できる。本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等が挙げられる。LEDとしては、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED等が挙げられる。
また、本発明の組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0092】
本発明の組成物の被着体としては、例えば、金属(例えば、第11族の金属)、ガラス、ゴム、半導体(例えば、光半導体素子)、ポリフタルアミドなどの樹脂等が挙げられる。なお、第11族の金属としては、銅、銀および金からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明の組成物は、透明性、耐硫化性により優れるという理由から、銀を含む部材の存在下で使用されるのが好ましい。本発明の組成物から得られるシリコーン樹脂層は、被着体と接着することができる。
【0093】
<使用方法>
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、銀を含む部材の存在下で本発明の組成物を硬化させる硬化工程を備える使用方法が挙げられる。以下、当該使用方法を、本発明の組成物の使用方法(以下、「本発明の使用方法」ともいう。)として説明する。
【0094】
本発明の使用方法に用いられる銀を含む部材としては、例えば、銀、銀メッキ等が挙げられ、具体例としては、リフレクタ等が挙げられる。
【0095】
上記硬化工程は、加熱および/または光照射によって、本発明の組成物を硬化させる工程であってもよい。本発明の組成物を加熱する温度としては、80℃〜150℃付近が好ましく、150℃付近がより好ましい。また、本発明の組成物を光照射する際に用いる光としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0096】
<シリコーン樹脂含有構造体>
本発明のシリコーン樹脂含有構造体は、銀を含む部材と、上記部材を覆う、本発明の組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、を備える。上記シリコーン樹脂層は、上記部材を、直接覆ってもよく、別の層(例えば、樹脂層、ガラス層、空気層)を介して覆ってもよい。
【0097】
本発明のシリコーン樹脂含有構造体は、光半導体素子を有するのが好ましい。光半導体素子としては、特に限定されず、例えば、本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子として例示したものが挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂含有構造体が光半導体素子を有する態様としては、例えば、上記シリコーン樹脂層が、光半導体素子を介して、上記部材を覆う態様(すなわち、光半導体素子が、上記シリコーン樹脂層と上記部材との間にある態様);上記シリコーン樹脂層が、並列に配置された光半導体素子と上記部材とを直接覆う態様;等が挙げられる。また、後者の態様においては、間隔を空けて並列に配置された2個の上記部材の間に、光半導体素子が配置されていてもよい。
【0098】
次に、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体(積層体100、積層体200)を、図1および図2に基いて説明する。
図1は、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、積層体100は、銀を含む部材120を備える。部材120の上には、シリコーン樹脂層102が直接的に配置されている。
図2は、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、積層体200は、銀を含む部材220を備える。部材220の上には、光半導体素子203が直接的に配置され、光半導体素子203の上には、シリコーン樹脂層202が直接的に配置されている。なお、シリコーン樹脂層202と光半導体素子203との間に、図示しない透明な層(例えば、樹脂層、ガラス層、空気層等)が配置されていてもよい。
【0099】
<光半導体素子封止体>
本発明の光半導体素子封止体は、凹部を有する枠体と、上記凹部の底部に配置された光半導体素子と、上記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、上記凹部に充填されて上記光半導体素子と上記部材とを封止する、本発明の組成物を硬化させて得られる封止材と、を備える。
銀を含む部材としては、特に限定されず、例えば、本発明の使用方法に用いられる銀を含む部材として例示したものが挙げられる。また、光半導体素子としては、特に限定されず、例えば、本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子として例示したものが挙げられる。本発明の光半導体素子封止体は、1個当たり、1または2以上の上記光半導体素子を有することができる。
【0100】
次に、本発明の光半導体素子封止体について図3〜図5に基いて説明する。
図3は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、光半導体素子封止体300は、凹部302を有する枠体304を備える。凹部302の底面は開口している。そのため、枠体304には、この開口を囲うようにして端部(端部312、端部314)が形成されている。枠体304の下方位置には、外部電極309を有する基板310が配置されている。基板310は、凹部302の底部を形成している。凹部302の底部には、光半導体素子303が配置されている。光半導体素子303は、上面が発光層(図示せず)となる向きで、凹部302に配置される。光半導体素子303の下面は、マウント部材301によって固定される。マウント部材301は、例えば、銀ペースト、樹脂等である。光半導体素子303の各電極(図示せず)と外部電極309とは、導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングされている。
【0101】
凹部302の内側面には、銀を含む部材としてのリフレクタ320が配置されている。凹部302には、封止材308が充填されており、封止材308は、光半導体素子303およびリフレクタ320を封止している。ここで、封止材308は、本発明の組成物を硬化させて得られたものである。
封止材308は、凹部302において、斜線部306まで充填されていてもよい。また、凹部302において308で示す部分を他の透明な層とし、封止材308を斜線部306にのみ配置するようにしてもよい。このような封止材308は、蛍光物質等を含有することができる。
【0102】
なお、光半導体素子封止体300としては、枠体304の端部(端部312、端部314)が一体的に結合し、凹部302の底部を形成する態様であってよい。この態様の場合、リフレクタ320は、凹部302の内側面のみならず、凹部302の底部にも配置される。そして、光半導体素子303は、凹部302の底部に配置されたリフレクタ320の上に配置される。
【0103】
このような光半導体素子封止体300においては、本発明の組成物を硬化させて得られた封止材308が用いられているため、銀を含む部材であるリフレクタ320の腐食(例えば、変色)を抑制することができる。
また、凹部302に充填された封止材308は、低硬度で硬化収縮が小さいため、硬化収縮によって凹部302から剥がれたり、導電性ワイヤー307が断線したりするのを抑制することができる。
【0104】
図4は、本発明の光半導体素子封止体の別の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す光半導体素子封止体400は、図3に示した光半導体素子封止体300の上にレンズ401を配置したものである。レンズ401としては、本発明の組成物を用いて形成されたものを用いることができる。
【0105】
図5は、本発明の光半導体素子封止体のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。図5に示す光半導体素子封止体500においては、ランプ機能を有する樹脂506の内部に、基板510およびインナーリード505が配置されている。基板510は凹部を有する枠体を有し、この凹部の底部には光半導体素子503が配置され、この凹部の内側面にはリフレクタ520が配置され、この凹部には本発明の組成物を硬化させて得られた封止材502が配置されている。
リフレクタ520は、この凹部の底部に配置されていてもよい。光半導体素子503は、基板510上にマウント部材501で固定されている。光半導体素子503の各電極(図示せず)は、導電性ワイヤー507によってワイヤーボンディングされている。樹脂506は、本発明の組成物を用いて形成されてもよい。
【0106】
次に、本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体をLED表示器に利用する場合について、図6に基いて説明する。
図6は、本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を示す模式図である。
図6に示すLED表示器600は、その一部に遮光部材605が配置された筐体604を有する。筐体604の内部には、複数の光半導体素子封止体601がマトリックス状に配置されている。光半導体素子封止体601は、封止材606によって封止されている。
ここで、封止材606としては、本発明の組成物を硬化させて得られる封止材を用いることができる。また、光半導体素子封止体601としては、本発明の光半導体素子封止体を用いることができる。
【0107】
本発明のシリコーン樹脂含有構造体、および、本発明の光半導体素子封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(例えば、ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクター等が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
<シリコーン樹脂組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で用い、これらを真空かくはん機で均一に混合してシリコーン樹脂組成物(以下、単に「シリコーン樹脂組成物」という。)を製造した。
【0110】
<評価>
以下に示す方法で、接着性、高温下での長期信頼性、耐硫化性、透明性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0111】
<接着性>
LEDパッケージ(エノモト社製)に、製造されたシリコーン樹脂組成物を流し込み、後述する硬化条件で硬化させ、硬化時におけるシリコーン樹脂組成物のポリフタル酸アミド(PPA)や銀めっきに対する剥離の有無を、目視にて確認した。
剥離が確認されなかった場合には接着性に優れるものとして「○」と評価し、剥離が確認された場合には接着性に劣るものとして「×」と評価した。
【0112】
<高温下での長期信頼性>
LEDパッケージ(エノモト社製)に、製造されたシリコーン樹脂組成物を流し込み、後述する硬化条件で硬化させた。その後、150℃の条件で500時間経過した後のLEDパッケージ中において、硬化したシリコーン樹脂組成物とポリフタル酸アミド(PPA)や銀めっきとの密着性を目視により確認した。
剥離やクラック等の異常が確認されない場合には、高温下での長期信頼性に優れるものとして「○」と評価し、剥離やクラック等の異常が確認された場合には、高温下での長期信頼性に劣るものとして「×」と評価した。
【0113】
<耐硫化性>
[硬化サンプル作成]
製造されたシリコーン樹脂組成物を、銀メッキ上に厚さ1mm程度になるよう塗布し、後述する硬化条件で硬化させて、耐硫化性評価用の硬化サンプルを得た。
【0114】
[耐硫化性試験]
10Lのデシケーターの底に、粉状に粉砕した硫化鉄10g程度(塩酸0.5mmolに対して大過剰)を置いた。次に、デシケーター内における硫化鉄の上方位置に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)を取り付け、この目皿上に硬化サンプルを置いた。次に、硫化鉄に塩酸0.5mmolを滴下することにより、硫化水素0.25mmol(濃度:理論値として560ppm)を発生させた(反応式:FeS+2HCl→FeCl2+H2S)。
【0115】
[耐硫化性の評価基準]
上述した耐硫化性試験の開始(硫化水素の発生)から24時間後に、目視により硬化サンプルにおける銀の変色を確認した。変色が確認されなかった場合には、耐硫化性に優れるものとして「○」と評価し、変色が確認された場合には、耐硫化性に劣るものとして「×」と評価した。
【0116】
<透明性>
得られたシリコーン樹脂組成物を、後述する硬化条件で硬化させて得られた初期硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準拠して、紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて、波長400nmにおける透過率を測定した。透過率(%)が80%以上であれば、透明性に優れるものとして評価できる。
【0117】
<硬化条件>
・シリコーン樹脂組成物が後述するアミン化合物を含有する場合:150℃で3時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が後述する熱ラジカル重合開始剤を含有する場合:150℃で3時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が後述する光ラジカル重合開始剤を含有する場合:高圧水銀灯照射条件下で積算光量8000mJ/cm2照射
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・オルガノポリシロキサン1:エポキシ変性シリコーン(x−22−163B、信越化学工業社製、重量平均分子量:3,500、反応性官能基:エポキシ基、平均官能基数:2個)
・オルガノポリシロキサン2:下記構造式で表される両末端無水コハク酸変性シリコーン(DMS−Z21、Gelest社製、重量平均分子量:700、平均官能基数2個)
【0121】
【化10】

【0122】
・オルガノポリシロキサン3:エポキシ変性シリコーン(KF105、信越化学工業社製)
・オルガノポリシロキサン4:アミノ変性シリコーン(x−22−161A、信越化学工業社製、重量平均分子量:1,600、平均官能基数:2個)
・オルガノポリシロキサン5:下記のとおり製造したメタクリル化シリコーン(重量平均分子量:35,000、平均官能基数:2個)
両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(ss70、重量平均分子量:28,000、信越化学工業社製)100質量部、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503、信越化学工業社製)4質量部、および触媒として2−エチルへキサン酸スズ(関東化学社製)0.01質量部を反応容器に入れ、圧力を10mmHg、温度を80℃に保ちながら6時間反応させた。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。得られた反応物をオルガノポリシロキサン5とした。
【0123】
・オルガノポリシロキサン6:メルカプト変性シリコーン(KF−2001、信越化学工業社製、重量平均分子量:6,000、平均官能基数:3個)
・オルガノポリシロキサン7:カルボキシ変性シリコーン(x−22−3701E、信越化学工業社製、重量平均分子量:30,000、平均官能基数:7個)
【0124】
・アミン化合物:特殊アミン(サンアプロ社製)
・熱ラジカル重合開始剤:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油社製)
・光ラジカル重合開始剤:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)
【0125】
・亜鉛化合物1(1.6−2EHA−Zn):酸化亜鉛(関東化学社製)1モルに対して2−エチルヘキサン酸(関東化学社製)1.6モルを加えて室温下で撹拌し、透明の均一な液体を得た。得られた液体を1.6−2EHA−Znとした。
・亜鉛化合物2(1.8−2EHA−Zn):2−エチルヘキサン酸の量を1.8モルに代えたほかは、1.6−2EHA−Znと同様にして製造を行い、透明の均一な液体を得た。得られた液体を1.8−2EHA−Znとした。
・亜鉛化合物3(2.0−2EHA−Zn):2−エチルヘキサン酸の量を2.0モルに代えたほかは、1.6−2EHA−Znと同様にして製造を行い、透明の均一な液体を得た。得られた液体を2.0−2EHA−Znとした。
【0126】
・ホウ素化合物1:2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(東京化成工業社製)
・ホウ素化合物2:トリス(トリメチルシリル)ボラート(東京化成工業社製)
・ホウ素化合物3:2,4,6−トリメトキシボロキシン(東京化成工業社製)
・ホウ素化合物4:ビス(ピナコレート)ジボロン(東京化成工業社製)
・ホウ素化合物5:三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(東京化成工業社製)
【0127】
・有機亜リン酸エステル1:亜リン酸トリ2エチルヘキサン(城北化学工業社製)
・有機リン酸エステル1:リン酸トリエチル(東京化成工業)
・有機リン酸エステル2:リン酸トリス(トリメチルシリル)(Gelest社製)
【0128】
第1表に示す結果から、実施例1〜13は、いずれも、耐硫化性および高温下での長期信頼性が優れ、また、透明性、接着性にも優れることが分かった。
これに対して、亜鉛化合物(B)とホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)とをいずれも含有しない比較例1は、耐硫化性および高温下での長期信頼性がともに劣ることが分かった。
また、ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)のみを含有する比較例2〜6は、耐硫化性に劣ることが分かった。なお、亜鉛化合物(B)のみを含有する参考例1〜4は、高温下での長期信頼性に劣っていた。
また、亜鉛化合物(B)の含有量が本発明の範囲の上限値を超える比較例7は、硬化が充分に進行せず、高温下での長期信頼性等を評価することができなかった。さらに、白濁が見られたため耐硫化性の評価を行わなかった(評価を行わなかったものについては、第1表中「−」で示す)。
【符号の説明】
【0129】
100,200 積層体(シリコーン樹脂含有構造体)
102,202 シリコーン樹脂層
120,220 部材
203,303,503 光半導体素子
300,400,500,601 光半導体素子封止体
301,501 マウント部材
302 凹部
304 枠体
306 斜線部
307,507 導電性ワイヤー
308,502,606 封止材(他の透明な層)
309 外部電極
312,314 端部
310,510 基板
320,520 リフレクタ
401 レンズ
506 樹脂
600 LED表示器
604 筐体
605 遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基およびフェノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)と、
亜鉛化合物(B)と、
ホウ素化合物(C)および/またはリン酸エステル(D)と、を含有し、
前記亜鉛化合物(B)の含有量が、前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であり、
前記ホウ素化合物(C)および/または前記リン酸エステル(D)の含有量が、前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である、シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ホウ素化合物(C)が、ホウ酸エステルである、請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ホウ素化合物(C)が、下記式(c1)〜(c5)のいずれかで表される化合物である、請求項2に記載のシリコーン樹脂組成物。
【化1】


(式(c1)〜(c5)中、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アリル基、アリール基、シリル基、または、ホスフィン基を示し、R′は、独立して、2価の炭化水素基を示す。)
【請求項4】
前記リン酸エステル(D)が、有機亜リン酸エステル(D1)および/または有機リン酸エステル(D2)である、請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機亜リン酸エステル(D1)が下記式(d1)で表され、前記有機リン酸エステル(D2)が下記式(d2)で表される、請求項4に記載のシリコーン樹脂組成物。
P−(ORd13 (d1)
O=P−(ORd23 (d2)
(式(d1)および(d2)中、Rd1、Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基を示す。)
【請求項6】
銀を含む部材と、
前記部材を覆う、請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、
を備えるシリコーン樹脂含有構造体。
【請求項7】
凹部を有する枠体と、
前記凹部の底部に配置された光半導体素子と、
前記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、
前記凹部に充填されて前記光半導体素子と前記部材とを封止する、請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止材と、
を備える光半導体素子封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107127(P2012−107127A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257189(P2010−257189)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】