説明

シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂シート、光半導体素子装置、および、シリコーン樹脂シートの製造方法。

【課題】均一に半硬化させることができるシリコーン樹脂組成物、そのシリコーン樹脂組成物を半硬化させて得られるシリコーン樹脂シート、そのシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止層を有する光半導体素子装置、および、シリコーン樹脂シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】
シリコーン樹脂組成物に、少なくとも2つの不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサンと、不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤とを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の封止などに用いられるシリコーン樹脂組成物、そのシリコーン樹脂組成物を半硬化させて得られるシリコーン樹脂シート、そのシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止層を有する光半導体素子装置、および、シリコーン樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(LED)などの光半導体素子を封止するための封止材料として、透明性に優れるシリコーン樹脂が用いられている。
【0003】
そのような封止材料として、例えば、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有するシリコーン樹脂組成物が知られている(例えば、下記特許文献1〜3参照。)。
【0004】
このようなシリコーン樹脂組成物は、通常、室温では液状であり、白金触媒の存在下で加熱されることにより、オルガノポリシロキサンのアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基とが付加反応され、硬化される。
【0005】
そして、このようなシリコーン樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止するには、例えば、光半導体素子が配置されるハウジング内にシリコーン樹脂組成物を充填し、硬化させる方法が知られている。
【0006】
しかし、この方法では、液状のシリコーン樹脂組成物の粘度などが作業環境によって変動する場合があり、シリコーン樹脂組成物を安定して充填することが困難な場合がある。
【0007】
そこで、例えば、環状エーテル含有基(具体的には、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタン基)を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤とを含有する封止シート用組成物を、加熱、乾燥して光半導体用封止シートを作製し、その光半導体用封止シートを用いて光半導体素子を封止する方法が提案されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開2009−84511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、上記した特許文献1〜3に記載されるようなシリコーン樹脂組成物を用いて、上記した特許文献4に記載されるように、光半導体用封止シートを作製する場合には、アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応を制御して、シリコーン樹脂組成物を半硬化状態とすることが検討される。
【0010】
しかし、その場合には、シリコーン樹脂組成物中において、アルケニル基とヒドロシリル基との反応を制御することが困難であるため、シリコーン樹脂組成物を均一に半硬化させることが困難である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、均一に半硬化させることができるシリコーン樹脂組成物、そのシリコーン樹脂組成物を半硬化させて得られるシリコーン樹脂シート、そのシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止層を有する光半導体素子装置、および、シリコーン樹脂シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明のシリコーン樹脂組成物は、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサンと、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤とを含有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物では、前記ヒドロシリル化抑制剤が、第四級アンモニウムヒドロキシドを含有することが好適である。
【0014】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、上記のシリコーン樹脂組成物を半硬化させることにより得られることを特徴としている。
【0015】
また、本発明のシリコーン樹脂シートでは、7g/mmの圧力で加圧した後の厚みが、加圧前の厚みの0.1〜10%であることが好適である。
【0016】
また、本発明の光半導体素子装置は、光半導体素子と、上記のシリコーン樹脂シートを硬化させることにより得られ、前記光半導体素子を封止する封止層とを備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明のシリコーン樹脂シートの製造方法は、上記のシリコーン樹脂組成物を基材に塗工する工程と、前記基材に塗工された前記シリコーン樹脂組成物を、20〜200℃で、0.1〜120分加熱する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシリコーン樹脂組成物によれば、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサンと、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤とを含有している。
【0019】
そのため、第1オルガノポリシロキサンのエチレン系不飽和炭化水素基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基とのヒドロシリル化反応を、ヒドロシリル化抑制剤で抑制しながら、第1オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基と、第1オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基との縮合反応を進行させることができる。
【0020】
その結果、シリコーン樹脂組成物を均一に半硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、光半導体素子装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、必須成分として、第1オルガノポリシロキサンと、第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤とを含有する。
【0023】
第1オルガノポリシロキサンは、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と、少なくとも2つのヒドロシリル基(H−Si≡、下記式(1)参照)とを1分子中に併有する。第1オルガノポリシロキサンは、具体的には、下記式(1)で示される水素末端エチレン系不飽和炭化水素基側鎖含有オルガノポリシロキサン、下記式(2)で示されるエチレン系不飽和炭化水素基末端水素側鎖含有オルガノポリシロキサンまたは下記式(3)で示される水素・エチレン系不飽和炭化水素基側鎖含有オルガノポリシロキサンを含む。
【0024】
式(1):
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、A〜Eは、構成単位を示し、AおよびEは、末端単位を示し、B〜Dは、繰り返し単位を示す。Rは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示し、Rは、1価のエチレン系不飽和炭化水素基を示す。また、aは、0または1以上の整数であり、bは、0または1以上の整数であり、cは、2以上の整数である。)
式(2):
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、F〜Jは、構成単位を示し、FおよびJは、末端単位を示し、G〜Iは、繰り返し単位を示す。Rは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示し、Rは、1価のエチレン系不飽和炭化水素基を示す。また、aは、0または1以上の整数であり、bは、2以上の整数であり、cは、0または1以上の整数である。)
式(3):
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、K〜Oは、構成単位を示し、KおよびOは、末端単位を示し、L〜Nは、繰り返し単位を示す。Rは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示し、Rは、1価のエチレン系不飽和炭化水素基を示す。また、aは、0または1以上の整数であり、bは、2以上の整数であり、cは、2以上の整数である。)
飽和炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、例えば、炭素数3〜6のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
【0031】
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10のアリール基(フェニル基、ナフチル基)などが挙げられる。
【0032】
上記式(1)〜(3)において、Rで示される1価の炭化水素基の炭素数は、例えば、1〜20、好ましくは、1〜10である。
【0033】
上記式(1)〜(3)において、Rは、同一または互いに異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
【0034】
上記式(1)〜(3)において、Rで示される1価の炭化水素基として、好ましくは、透明性、熱安定性および耐光性の観点から、直鎖状のアルキル基、さらに好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基、とりわけ好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0035】
上記式(1)〜(3)において、Rで示されるエチレン系不飽和炭化水素基としては、置換または非置換のエチレン系不飽和炭化水素基が挙げられ、例えば、アルケニル基、シクロアルケニル基などが挙げられる。
【0036】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などの炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0037】
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基などの炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0038】
上記式(1)〜(3)において、Rで示されるエチレン系不飽和炭化水素基の炭素数は、その硬化物の透明性および耐熱性の観点から、例えば、2〜20、好ましくは、2〜10である。
【0039】
上記式(1)〜(3)において、Rは、同一または相異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
【0040】
上記式(1)〜(3)において、Rで示されるエチレン系不飽和炭化水素基としては、ヒドロシリル基との反応性の観点から、好ましくは、アルケニル基、より好ましくは、炭素数2〜5のアルケニル基、さらに好ましくは、ビニルが挙げられる。
【0041】
上記式(1)では、aは、例えば、0〜10000、好ましくは、0〜1000であり、bは、例えば、0〜1000、好ましくは、0〜100であり、cは、例えば、2〜1000、好ましくは、2〜100である。
【0042】
上記式(2)では、aは、例えば、0〜10000、好ましくは、1〜1000であり、bは、例えば、2〜1000、好ましくは、2〜100であり、cは、例えば、0〜1000、好ましくは、0〜100である。
【0043】
上記式(3)では、aは、例えば、0〜10000、好ましくは、0〜1000であり、bは、例えば、2〜1000、好ましくは、2〜100であり、cは、例えば、2〜1000、好ましくは、2〜100である。
【0044】
第1オルガノポリシロキサンとしては、例えば、直鎖状の、ビニル末端ポリメチルヒドロシロキサン(上記式(2)に相当)、ビニル末端メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(上記式(2)に相当)、ビニル末端ポリフェニル(ジメチルヒドロキシ)シロキサン(上記式(2)に相当)、ビニル末端メチルヒドロシロキサン−フェニルメチルシロキサン共重合体(上記式(2)に相当)、ビニル末端メチルヒドロシロキサン−オクチルメチルシロキサン共重合体(上記式(2)に相当)、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(上記式(1)に相当)、水素末端ポリビニルメチルシロキサン(上記式(1)に相当)などが挙げられる。なお、第1オルガノポリシロキサンとしては、上記した直鎖状の分子構造を有するものに限られず、例えば、環状、分岐状、三次元網目状などの分子構造を有してもよい。
【0045】
これらの第1オルガノポリシロキサンのうち、好ましくは、上記式(1)に示される水素末端エチレン系不飽和炭化水素基側鎖含有オルガノポリシロキサン、より好ましくは、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体が挙げられる。
【0046】
また、これら第1オルガノポリシロキサンは、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0047】
第1オルガノポリシロキサン中のエチレン系不飽和炭化水素基の含有量(単位質量当たりのエチレン系不飽和炭化水素基のモル数)は、その硬化物の強靭性と可撓性の観点から、例えば、0.005〜10mmol/g、好ましくは、0.01〜5mmol/gである。
【0048】
第1オルガノポリシロキサン中のエチレン系不飽和炭化水素基の含有量が0.005mmol/g未満であれば、その硬化物の強靭性が不十分となる場合がある。また、エチレン系不飽和炭化水素基の含有量が10mmol/gを超過すると、その硬化物の可撓性が不十分となる場合がある。
【0049】
第1オルガノポリシロキサン中のヒドロシリル基の含有量(単位質量当たりのヒドロシリル基のモル数)は、例えば、0.01〜10mmol/g、好ましくは、0.1〜5mmol/gである。
【0050】
第1オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、5000〜50000である。
【0051】
また、第1オルガノポリシロキサンの粘度(25℃)は、その硬化物の強靭性の観点から、例えば、100〜500000mPa・s、好ましくは、300〜100000mPa・sである。第1オルガノポリシロキサンの粘度は、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0052】
第1オルガノポリシロキサンは、シリコーン樹脂組成物100質量部中に、例えば、0.1〜99.9質量部、好ましくは、1〜99質量部で配合される。
【0053】
第2オルガノポリシロキサンは、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する。第2オルガノポリシロキサンは、具体的には、下記式(4)で示される水素末端オルガノポリシロキサン、または、下記式(5)で示される水素側鎖含有オルガノポリシロキサンを含む。
【0054】
式(4):
【0055】
【化4】

【0056】
(式中、P〜Sは、構成単位を示し、PおよびSは、末端単位を示し、QおよびRは、繰り返し単位を示す。Rは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。また、mは、0または1以上の整数であり、nは、2以上の整数である。)
式(5):
【0057】
【化5】

【0058】
(式中、T〜Wは、構成単位を示し、TおよびWは、末端単位を示し、UおよびVは、繰り返し単位を示す。Rは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。また、mは、0または1以上の整数であり、nは、0または1以上の整数である。)
上記式(4)、(5)において、Rで示される1価の炭化水素基としては、上記した第1オルガノポリシロキサンのRと同様の炭化水素基が挙げられる。
【0059】
上記式(4)では、mは、例えば、0〜10000、好ましくは、0〜1000であり、nは、例えば、2〜1000、好ましくは、2〜100である。
【0060】
上記式(5)では、mは、例えば、0〜10000、好ましくは、0〜1000であり、nは、例えば、0〜1000、好ましくは、0〜100である。
【0061】
第2オルガノポリシロキサンとしては、例えば、直鎖状の、ジメチルヒドロシリル末端ポリジメチルシロキサン(上記式(5)に相当)、ジメチルヒドロシリル末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体(上記式(5)に相当)、ジメチルヒドロシリル末端ポリメチルフェニルシロキサン(上記式(5)に相当)、ジメチルヒドロシリル末端ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン共重合体(上記式(5)に相当)、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体(上記式(4)に相当)、トリメチルシロキシ末端ポリメチルヒドロシロキサン(上記式(4)に相当)などが挙げられる。なお、第2オルガノポリシロキサンとしては、上記した直鎖状の分子構造を有するものに限られず、例えば、環状、分岐状、三次元網目状などの分子構造を有してもよい。
【0062】
これらの第2オルガノポリシロキサンのうち、好ましくは、上記式(4)に示される水素側鎖含有オルガノポリシロキサン、より好ましくは、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体が挙げられる。
【0063】
また、これら第2オルガノポリシロキサンは、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0064】
第2オルガノポリシロキサン中のヒドロシリル基の含有量(単位質量当たりのヒドロシリル基のモル数)は、その硬化物の強靭性と可撓性の観点から、例えば、0.005〜10mmol/g、好ましくは、0.01〜5mmol/gである。
【0065】
第2オルガノポリシロキサン中のヒドロシリル基の含有量が0.005mmol/g未満であれば、その硬化物の強靭性が不十分となる場合がある。また、ヒドロシリル基の含有量が10mmol/gを超過すると、その硬化物の可撓性が不十分となる場合がある。
【0066】
第2オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、5000〜50000である。
【0067】
また、第2オルガノポリシロキサンの粘度(25℃)は、その硬化物の強靭性の観点から、例えば、100〜500000mPa・s、好ましくは、300〜100000mPa・sである。第2オルガノポリシロキサンの粘度は、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0068】
第2オルガノポリシロキサンは、シリコーン樹脂組成物100質量部中に、例えば、0.1〜99.9質量部、好ましくは、1〜99質量部で配合される。
【0069】
また、第2オルガノポリシロキサンは、その硬化物の強靭性の観点から、第1オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば、0.1〜1000質量部、好ましくは、1〜100質量部、より好ましくは、10〜90質量部、より一層好ましくは、20〜50質量部の配合割合で配合される。
【0070】
また、シリコーン樹脂組成物中における、第1オルガノポリシロキサンのエチレン系不飽和炭化水素基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基とのモル比(エチレン系不飽和炭化水素基/ヒドロシリル基)は、例えば、1/50〜50/1、好ましくは、1/5〜5/1である。
【0071】
また、シリコーン樹脂組成物中における、第1オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基とのモル比(第1オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基/第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基)は、例えば、1/100〜50/1、好ましくは、1/70〜5/1である。
【0072】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金カルボニル錯体、白金アセチルアセテートなどの白金触媒、例えば、パラジウム触媒、例えば、ロジウム触媒などが挙げられる。
【0073】
これらヒドロシリル化触媒のうち、その硬化物の透明性、シリコーン樹脂組成物への相溶性、および、触媒活性の観点から、好ましくは、白金触媒、さらに好ましくは、白金オレフィン錯体、白金カルボニル錯体が挙げられ、具体的には、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。
【0074】
ヒドロシリル化触媒は、第1オルガノポリシロキサンのエチレン系不飽和炭化水素基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基とをヒドロシリル化させる。
【0075】
なお、ヒドロシリル化触媒は、公知の溶媒(トルエンなど)溶液として調製されていてもよい。
【0076】
ヒドロシリル化触媒は、第1オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば、1.0×10−4〜0.5質量部、好ましくは、1.0×10−3〜0.5質量部の配合割合で、シリコーン樹脂組成物に配合される。
【0077】
ヒドロシリル化触媒は、シリコーン樹脂組成物中における第1オルガノポリシロキサンのエチレン系不飽和炭化水素基の含有量1mmol/gに対して、例えば、1.0×10−6〜5.0×10−3mmol、好ましくは、1.0×10−5〜5.0×10−3mmolの配合割合で、シリコーン樹脂組成物に配合される。
【0078】
ヒドロシリル化抑制剤としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、などのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのトリアルキルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0079】
これらヒドロシリル化抑制剤は、単独(1種類のみ)で使用することもでき、2種以上併用することもできる。
【0080】
また、これらヒドロシリル化抑制剤のうち、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、より一層好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0081】
また、ヒドロシリル化抑制剤は、触媒活性や入手の容易さの観点から、水溶液またはアルコール溶液として用いることが好適であり、その硬化物の透明性、取り扱い性の観点から、アルコール溶液として用いることが好適である。
【0082】
ヒドロシリル化抑制剤は、ヒドロシリル化触媒を安定化して、エチレン系不飽和炭化水素基とヒドロシリル基とのヒドロシリル化を抑制する。また、ヒドロシリル化抑制剤は、ヒドロシリル基が水と反応することにより生成するシラノール基の縮合反応を促進する。
【0083】
ヒドロシリル化抑制剤は、ヒドロシリル化触媒100質量部に対して、例えば、1.0×10〜1.0×10質量部、好ましくは、1.0×10〜1.0×10質量部の配合割合で、シリコーン樹脂組成物に配合される。
【0084】
ヒドロシリル化抑制剤の配合割合が1.0×10未満であると、十分な硬化抑制効果を得られない場合がある。また、ヒドロシリル化抑制剤の配合割合が1.0×10を超過すると、シリコーン樹脂組成物を硬化させることが困難になる場合や、その硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0085】
なお、シリコーン樹脂組成物には、任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、充填材を添加することができる。
【0086】
充填材としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、層状マイカ、カーボンブラック、珪藻土、ガラス繊維、蛍光体(ランタノイド系元素で賦活された、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体および酸窒化物蛍光体など)などの無機充填材、例えば、これら無機充填材を、オルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、オルガノシラザンなどの有機ケイ素化合物により表面処理した有機ケイ素処理充填材が挙げられる。
【0087】
充填材は、第1オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは、1〜50質量部の割合で、シリコーン樹脂組成物に配合される。
【0088】
また、シリコーン樹脂組成物には、その他の任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、防カビ剤などの添加剤を適宜の割合で添加することができる。
【0089】
そして、シリコーン樹脂組成物を調製するには、上記した配合割合で、第1オルガノポリシロキサンと、第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤と、必要により、充填材などの上記の任意成分とを配合し、例えば、0〜60℃で、例えば、1〜120分、攪拌し、混合する。
【0090】
このシリコーン樹脂組成物によれば、少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサンと、エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、ヒドロシリル化抑制剤とを含有している。
【0091】
そのため、第1オルガノポリシロキサンのエチレン系不飽和炭化水素基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基とのヒドロシリル化反応を、ヒドロシリル化抑制剤で抑制しながら、第1オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基と、第2オルガノポリシロキサンのヒドロシリル基との縮合反応を進行させることができる。
【0092】
その結果、シリコーン樹脂組成物を均一に半硬化させることができる。
【0093】
また、このシリコーン樹脂組成物は、ヒドロシリル化抑制剤が、第四級アンモニウムヒドロキシドを含有している。
【0094】
そのため、ヒドロシリル化触媒を安定化して、エチレン系不飽和炭化水素基とヒドロシリル基とのヒドロシリル化を抑制しながら、ヒドロシリル基が水と反応することにより生成するシラノール基の縮合反応を促進することができる。
【0095】
その結果、エチレン系不飽和炭化水素基とヒドロシリル基とのヒドロシリル化を抑制しながら、シリコーン樹脂組成物を半硬化させることができる。
【0096】
次いで、本発明のシリコーン樹脂シートの製造方法について説明する。
【0097】
シリコーン樹脂シートを製造するには、まず、上記のシリコーン樹脂組成物を基材に塗工する。
【0098】
基材としては、例えば、表面が離型処理された離型シート(例えば、PETなどの有機ポリマーフィルム)、例えば、セラミックス、例えば、金属板などが挙げられる。
【0099】
シリコーン樹脂組成物を基材に塗工する方法としては、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法を採用できる。
【0100】
シリコーン樹脂組成物の塗工膜厚は、例えば、0.1〜100mm、好ましくは、0.1〜5mmである。
【0101】
次いで、基材に塗工されたシリコーン樹脂組成物を、例えば、20〜200℃、好ましくは、40〜150℃で、例えば、0.1〜120分、好ましくは、1〜60分、加熱する。
【0102】
これにより、基材に塗工されたシリコーン樹脂組成物を、半硬化(Bステージ状態)させて、シリコーン樹脂シートを得る。
【0103】
得られたシリコーン樹脂シートの厚みは、例えば、100〜10000μm、好ましくは、100〜3000μmである。
【0104】
また、得られたシリコーン樹脂シートの硬さは、7g/mmの圧力で加圧した後の厚みが、加圧前の厚みの、例えば、0.1〜10%、好ましくは、0.1〜5%となるような硬さである。なお、このとき(作製直後)、シリコーン樹脂シートの、加圧前の厚みに対する加圧後の厚みの百分率を、作製直後のシート硬度とする。
【0105】
また、得られたシリコーン樹脂シートを5℃で24時間保存した後の、そのシリコーン樹脂シートの硬さは、7g/mmの圧力で加圧した後の厚みが、加圧前の厚みの、例えば、0.1〜10%、好ましくは、0.1〜5%となるような硬さである。なお、このとき(5℃で24時間保存後)、シリコーン樹脂シートの、加圧前の厚みに対する加圧後の厚みの百分率を、保存後のシート硬度とする。
【0106】
また、得られたシリコーン樹脂シートの、作製直後のシート硬度に対する、保存後のシート硬度の百分率(硬度保持率)は、例えば、100〜200%、好ましくは、100〜150%である。
【0107】
このシリコーン樹脂シートによれば、シリコーン樹脂組成物を半硬化させることにより得られているので、均一な半硬化状態が実現されており、取り扱い性の向上を図ることができる。
【0108】
また、このシリコーン樹脂シートによれば、その硬さが、所定の硬さに調整されているため、より取り扱い性の向上を図ることができる。
【0109】
そして、本発明のシリコーン樹脂シートは、封止材料や充填材料などとして各種産業分野において有効に用いることができる。とりわけ、本発明のシリコーン樹脂シートは、光半導体素子装置の封止材料として好適に用いられる。
【0110】
次いで、得られたシリコーン樹脂シートを硬化させて得られる封止層7を備える光半導体素子装置1について説明する。
【0111】
光半導体素子装置1は、回路基板2と、光半導体素子としての発光ダイオード3とを備えている。
【0112】
回路基板2は、ベース基板4、および、ベース基板4の上面に形成される配線パターン5を備えている。回路基板2には、外部からの電力が供給される。
【0113】
ベース基板4は、平面視略矩形平板状に形成されており、例えば、アルミニウムなどの金属材料、例えば、アルミナなどのセラミック材料、例えば、ポリイミドなどの樹脂材料などから形成されている。
【0114】
配線パターン5は、発光ダイオード3の端子と、発光ダイオード3に電力を供給するための電源(図示せず)の端子(図示せず)とを電気的に接続している。配線パターン5は、例えば、銅、鉄などの導体材料から形成されている。
【0115】
発光ダイオード3は、ベース基板4の上に設けられている。各発光ダイオード3は、配線パターン5に電気的に接合(ワイヤボンディング実装またはフリップチップ実装)されている。発光ダイオード3は、回路基板2からの電力により発光する。
【0116】
そして、光半導体素子装置1は、発光ダイオード3を封止する封止層7を備えている。
【0117】
封止層7は、ベース基板4の上側に、発光ダイオード3を被覆するように積層される。
【0118】
封止層7を形成するには、まず、得られたシリコーン樹脂シートをベース基板4の上に積層し、例えば、ラミネータを用いて、例えば、100〜200℃、好ましくは、120〜180℃の温度、および、例えば、0.01〜10MPa、好ましくは、0.1〜1MPaの圧力で、例えば、2〜600秒、圧着する。
【0119】
次いで、ベース基板4の上に圧着されたシリコーン樹脂シートを、例えば、120〜250℃、好ましくは、150℃〜200℃で、例えば、0.5〜48時間、好ましくは、1〜24時間、加熱する。
【0120】
これにより、シリコーン樹脂シートを硬化させて、封止層7を得る。
【0121】
この光半導体素子装置1によれば、封止層7が、シリコーン樹脂シートを硬化させることにより得られているため、発光ダイオード3を容易に封止することができる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を各実施例および各比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
1.シリコーン樹脂シートの作製
実施例1
水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.079mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.04mmol/g、数平均分子量47000、粘度(25℃)8100mPa・s)30gに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液14.3μL(0.013mmol)を添加し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体:ヒドロシリル基含有量7.14mmol/g、数平均分子量2000)1.00gと、白金−カルボニル錯体溶液(白金濃度2質量%)1.9μLとを加えた。
【0123】
なお、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のビニル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(ビニル基/ヒドロシリル基)は、1/3であった。
【0124】
また、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量/オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量)は、1/5.95であった。
【0125】
次いで、それらを25℃で0.1時間攪拌し、混合して、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0126】
得られたシリコーン樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ社製、SS4C)上に、塗工膜厚600μmで塗工し、80℃で3〜10分加熱してシリコーン樹脂組成物を半硬化させ、シリコーン樹脂シートを作製した。
【0127】
実施例2
水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.079mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.04mmol/g、数平均分子量47000、粘度(25℃)8100mPa・s)に代えて、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.13mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.04mmol/g、数平均分子量48000、粘度(25℃)14000mPa・s)を用い、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量を1.63gにした以外は、上記した実施例1と同様にして、シリコーン樹脂シートを作製した。
【0128】
なお、実施例2においても、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のビニル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(ビニル基/ヒドロシリル基)は、1/3であった。
【0129】
また、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量/オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量)は、1/9.70であった。
【0130】
実施例3
水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.079mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.04mmol/g、数平均分子量47000、粘度(25℃)8100mPa・s)に代えて、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.84mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.037mmol/g、数平均分子量61000、粘度(25℃)4500mPa・s)を用い、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量を10.6gにした以外は、上記した実施例1と同様にして、シリコーン樹脂シートを作製した。
【0131】
なお、実施例3においても、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のビニル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(ビニル基/ヒドロシリル基)は、1/3であった。
【0132】
また、水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量とのモル比(水素末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体のヒドロシリル基含有量/オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基含有量)は、1/68.2であった。
【0133】
比較例1
ビニル末端ポリジメチルシロキサン20g(0.71mmol)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体:ヒドロシリル基含有量7.14mmol/g、数平均分子量2000)0.80g、白金−カルボニル錯体溶液(白金濃度2質量%)0.036ml、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン0.028ml(0.081mmol)を配合し、室温(20℃)で10分間攪拌、混合し、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0134】
得られたシリコーン樹脂組成物を、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステル社製、50μm)上に、塗工膜厚500μmで塗工し、80℃で6分加熱してシリコーン樹脂組成物を半硬化させ、シリコーン樹脂シートを作製した。
【0135】
比較例2
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを配合しない以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物を調整した。
【0136】
得られたシリコーン樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ社製、SS4C)上に、塗工膜厚600μmで塗工し、135℃で5分加熱したところ、シリコーン樹脂組成物は硬化しなかった。
【0137】
また、200℃で5分加熱したところ、シリコーン樹脂組成物は、内部は液状のままで表面のみ硬化した。
【0138】
比較例2では、半硬化のシリコーン樹脂シートを作製することはできなかった。
2.評価
各実施例および各比較例のシリコーン樹脂シートについて、下記の評価を実施した。
(1)硬さ試験
作製直後の各実施例および各比較例のシリコーン樹脂シートについて、デジタル測長計(MS−5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mmの圧力で、その厚み方向に加圧した。
【0139】
シリコーン樹脂シートの表面から加圧方向下流側へセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、下記の式により、シリコーン樹脂シートの加圧部分における、加圧前の厚みに対する加圧後の厚みの百分率を計算し、得られた値をシート硬度とした。結果を表1に示す。
【0140】
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/シリコーン樹脂シートの加圧前の厚み(μm)}]×100
シート硬度の値が高いほど、シリコーン樹脂シートが固いことを示す。
(2)保存安定性試験
各実施例および各比較例のシリコーン樹脂シートを、5℃で24時間保存し、上記の硬さ試験と同様にして、シート硬度を求めた。
【0141】
作製直後のシリコーン樹脂シートのシート硬度に対する、保存後のシリコーン樹脂シートのシート硬度の百分率を計算し、得られた値を硬度保持率とした。結果を表1に示す。
【0142】
硬度保持率の値が100%に近いほど、シリコーン樹脂シートの保存安定性が優れている。
(3)シリコーン樹脂シートの状態評価
各実施例および各比較例のシリコーン樹脂シートに液状成分(未反応成分)が残存しているか、目視および触感で確認し、下記の評価基準に基づいて判定した。結果を表1に示す。
○:液状成分が残存していない。
×:液状成分が残存している。
【0143】
【表1】

【符号の説明】
【0144】
1 光半導体素子装置
3 発光ダイオード
7 封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのエチレン系不飽和炭化水素基と少なくとも2つのヒドロシリル基とを1分子中に併有する第1オルガノポリシロキサンと、
エチレン系不飽和炭化水素基を含まず、少なくとも2つのヒドロシリル基を1分子中に有する第2オルガノポリシロキサンと、
ヒドロシリル化触媒と、
ヒドロシリル化抑制剤と
を含有することを特徴とする、シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ヒドロシリル化抑制剤が、第四級アンモニウムヒドロキシドを含有することを特徴とする、請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物を半硬化させることにより得られることを特徴とする、シリコーン樹脂シート。
【請求項4】
7g/mmの圧力で加圧した後の厚みが、加圧前の厚みの0.1〜10%であることを特徴とする、請求項3に記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項5】
光半導体素子と、
請求項3または4に記載のシリコーン樹脂シートを硬化させることにより得られ、前記光半導体素子を封止する封止層と
を備えることを特徴とする、光半導体素子装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物を基材に塗工する工程と、
前記基材に塗工された前記シリコーン樹脂組成物を、20〜200℃で、0.1〜120分加熱する工程と
を含むことを特徴とする、シリコーン樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−10807(P2013−10807A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131537(P2011−131537)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】